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特開2024-11965マウスピース型矯正装置及びマウスピース型矯正装置の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011965
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】マウスピース型矯正装置及びマウスピース型矯正装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61C 7/08 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
A61C7/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114335
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】520154416
【氏名又は名称】ホワイトラインテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112737
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 考晴
(74)【代理人】
【識別番号】100140914
【弁理士】
【氏名又は名称】三苫 貴織
(74)【代理人】
【識別番号】100136168
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 美紀
(74)【代理人】
【識別番号】100172524
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 大輔
(72)【発明者】
【氏名】堀米 伸康
(72)【発明者】
【氏名】松下 浩之
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA20
4C052JJ01
(57)【要約】
【課題】簡易な構成で、対合歯に強く押圧される歯を確実に圧下させることが可能なマウスピース型矯正装置及びマウスピース型矯正装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係るマウスピース10は、装着者の歯50に装着された状態で、装着者の歯50の咬合面のうち対合歯によって他の領域よりも強く押圧される領域52に対応する部分において、咬合面に向かって、又は、対合歯に向かって突出して形成された突起部12を有し、装着者が上顎と下顎を閉じたとき、突起部12が上顎の歯50と下顎の歯50の間に挟まれた状態となり、突起部12に対応する領域52が圧下される。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の歯に装着された状態で、前記装着者の歯の咬合面のうち前記歯の対合歯によって他の領域よりも強く押圧される領域に対応する部分において、前記咬合面に向かって、又は、前記対合歯に向かって突出して形成された突起部を有するマウスピース型矯正装置。
【請求項2】
マウスピース型矯正装置を装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データに基づいて、マウスピース型矯正装置を形成するステップを備え、
前記マウスピース型矯正装置を形成するステップにおいて、前記3次元形状データが有する形状寸法、又は、前記3次元形状データに基づいて作成される前記マウスピース型矯正装置の形状に関するマウスピース形状データが有する形状寸法に基づいて、前記装着者の歯に装着された状態で、前記装着者の歯の咬合面のうち前記歯の対合歯によって他の領域よりも強く押圧される領域に対応する部分において、前記咬合面に向かって、又は、前記対合歯に向かって突出して形成された突起部を有する前記マウスピース型矯正装置を形成するマウスピース型矯正装置の製造方法。
【請求項3】
前記マウスピース型矯正装置を形成するステップにおいて、前記3次元形状データが有する形状寸法に対して、前記突起部を有する前記マウスピース型矯正装置に対応した型に関する型形状データを作成するステップを有する請求項2に記載のマウスピース型矯正装置の製造方法。
【請求項4】
作成された前記型形状データに基づいて、歯型模型を3次元造形装置によって形成する請求項3に記載のマウスピース型矯正装置の製造方法。
【請求項5】
前記歯型模型に対して前記マウスピース型矯正装置の材料である樹脂材料が圧着されて前記マウスピース型矯正装置が形成される請求項4に記載のマウスピース型矯正装置の製造方法。
【請求項6】
作成された前記型形状データに基づいて、前記マウスピース型矯正装置の形状に関する3次元造形用マウスピース形状データを作成するステップを更に備え、
作成された前記3次元造形用マウスピース形状データに基づいて、前記マウスピース型矯正装置を3次元造形装置によって形成する請求項3に記載のマウスピース型矯正装置の製造方法。
【請求項7】
前記マウスピース型矯正装置を形成するステップにおいて、前記マウスピース形状データが有する形状寸法に基づいて、前記突起部を有する前記マウスピース型矯正装置の形状に関する3次元造形用マウスピース形状データを作成するステップを有し、
作成された前記3次元造形用マウスピース形状データに基づいて、前記マウスピース型矯正装置を3次元造形装置によって形成する請求項2に記載のマウスピース型矯正装置の製造方法。
【請求項8】
前記3次元形状データが3次元スキャナーによって取得される請求項2から7のいずれか1項に記載のマウスピース型矯正装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マウスピース型矯正装置及びマウスピース型矯正装置の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
口腔内に設置され歯列矯正に用いられる歯列矯正装置には、様々なタイプのものがあり、例えば、ワイヤー矯正装置、拡大床装置やマウスピース型矯正装置などがある。
【0003】
マウスピース型矯正装置による矯正では、移動後の歯の位置や向きを考慮してマウスピース(アライナーとも呼ばれる。以下「アライナー」という。)が形成される。複数の段階ごとに少しずつ異なる形状を有するアライナーに取り換えられることによって、矯正前の歯列が目標とする歯列へ調整される。
【0004】
アライナーは、複数の歯からなる歯列に装着されたとき、歯列を矯正できるように各歯に対して圧力を付与できる弾性力を有する。
【0005】
下記の特許文献1には、マウスピースが着用されない歯と咬合する第2の咬合面において、他の部分よりも肉厚に形成される膨らみ部を有することで、骨格や姿勢の歪みを矯正する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6537117号公報
【特許文献2】特許第6049120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上顎と下顎を閉じたとき、上顎側の歯の咬合面と下側の歯の咬合面が適切に咬み合わないという症状がある。原因の一つとして、上顎と下顎を閉じたとき、上顎側の歯の一部又は下顎側の歯の一部が対合歯と強く当接することが挙げられる。図8には、歯50において、対合歯と強く当接する部分の一例をグレーの領域52で示している。特に、濃いグレーの領域は、周囲よりも更に強く対合歯と当接する領域を示している。
【0008】
例えば、上記の特許文献2では、歯の表面にアタッチメントを取り付けて、歯とアタッチメントの上にアライナーを装着することで、所定の方向に歯を移動させるという技術が開示されている。しかし、歯にアタッチメントが取り付けられる場合であっても、所定の方向に歯を移動させるには歯に負荷される力が不十分な場合がある。そのため、従来のアライナーやアタッチメントだけでは、上述した上顎側の歯の一部又は下顎側の歯の一部が対合歯と強く当接することによる、適切でない咬み合わせが解消しづらいことがある。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、簡易な構成で、対合歯に強く押圧される歯を確実に圧下させることが可能なマウスピース型矯正装置及びマウスピース型矯正装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のマウスピース型矯正装置及びマウスピース型矯正装置の製造方法は以下の手段を採用する。
すなわち、本発明に係るマウスピース型矯正装置は、装着者の歯に装着された状態で、前記装着者の歯の咬合面のうち前記歯の対合歯によって他の領域によりも強く押圧される領域に対応する部分において、前記咬合面に向かって、又は、前記対合歯に向かって突出して形成された突起部を有する。
【0011】
この構成によれば、マウスピース型矯正装置において突起部が形成されており、突起部は、マウスピース型矯正装置が装着者の歯に装着された状態で、装着者の歯の咬合面のうち対合歯によって他の領域によりも強く押圧される領域に対応する部分において、歯の咬合面に向かって、又は、歯の対合歯に向かって突出している。これにより、マウスピース型矯正装置を装着している装着者が上顎と下顎を閉じたとき、突起部が上顎の歯と下顎の歯の間に挟まれた状態となり、突起部に対応する領域が圧下される。すなわち、突起部によって、装着者の歯の咬合面のうち対合歯に強く押圧される領域が歯根側へ押し下げられる。そして、マウスピースの装着が継続されることによって、対合歯によって強く押圧される歯が圧下し、適切でない咬み合わせが解消する。
【0012】
本発明に係るマウスピース型矯正装置の製造方法は、マウスピース型矯正装置を装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データに基づいて、マウスピース型矯正装置を形成するステップを備え、前記マウスピース型矯正装置を形成するステップにおいて、前記3次元形状データが有する形状寸法、又は、前記3次元形状データに基づいて作成される前記マウスピース型矯正装置の形状に関するマウスピース形状データが有する形状寸法に基づいて、前記装着者の歯に装着された状態で、前記装着者の歯の咬合面のうち前記歯の対合歯によって他の領域よりも強く押圧される領域に対応する部分において、前記咬合面に向かって、又は、前記対合歯に向かって突出して形成された突起部を有する前記マウスピース型矯正装置を形成する。
【0013】
上記発明において、前記マウスピース型矯正装置を形成するステップにおいて、前記3次元形状データが有する形状寸法に対して、前記突起部を有する前記マウスピース型矯正装置に対応した型に関する型形状データを作成するステップを有してもよい。
【0014】
上記発明において、作成された前記型形状データに基づいて、歯型模型を3次元造形装置によって形成してもよい。
【0015】
上記発明において、前記歯型模型に対して前記マウスピース型矯正装置の材料である樹脂材料が圧着されて前記マウスピース型矯正装置が形成されてもよい。
【0016】
上記発明において、作成された前記型形状データに基づいて、前記マウスピース型矯正装置の形状に関する3次元造形用マウスピース形状データを作成するステップを更に備え、作成された前記3次元造形用マウスピース形状データに基づいて、前記マウスピース型矯正装置を3次元造形装置によって形成してもよい。
【0017】
上記発明において、前記マウスピース型矯正装置を形成するステップにおいて、前記マウスピース形状データが有する形状寸法に基づいて、前記突起部を有する前記マウスピース型矯正装置の形状に関する3次元造形用マウスピース形状データを作成するステップを有し、作成された前記3次元造形用マウスピース形状データに基づいて、前記マウスピース型矯正装置を3次元造形装置によって形成してもよい。
【0018】
上記発明において、前記3次元形状データが3次元スキャナーによって取得されてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、簡易な構成で、対合歯に強く押圧される歯を確実に圧下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るマウスピースの製造方法で用いられる装置を示す構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係るマウスピースの製造方法を示すフローチャートである。
図3】本発明の第2実施形態に係るマウスピースの製造方法で用いられる装置を示す構成図である。
図4】本発明の第2実施形態に係るマウスピースの製造方法を示すフローチャートである。
図5】本発明の第2実施形態に係るマウスピースの製造方法における3次元造形用マウスピース形状データの作成方法を示すフローチャートである。
図6】本発明の第2実施形態に係るマウスピースの製造方法における3次元造形用マウスピース形状データの作成方法の変形例を示すフローチャートである。
図7】本発明の第1又は第2実施形態に係るマウスピースを示す部分拡大断面図である。
図8】複数の歯からなる歯列の一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
[第1実施形態]
以下に、本発明の第1実施形態に係るマウスピース型矯正装置(以下「マウスピース」という。)の製造方法について、図面を参照して説明する。
【0022】
本実施形態に係るマウスピースの製造方法では、例えば、図1に示すように、3Dスキャナー(3次元スキャナー)1、3Dプリンター(3次元造形装置)2、これらを動作させるための情報処理装置3,4及び歯型模型5などが用いられる。情報処理装置3,4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0023】
情報処理装置3は、3Dスキャナー1で取得された3次元形状データに対して演算処理を行い、歯型模型5の形状に関する3次元造形用型形状データを作成する。本実施形態における3次元造形用型形状データは、本発明に係る型形状データの一例である。情報処理装置4は、3次元造形用型形状データに基づいて、3Dプリンター2の動作を実行させる。
【0024】
歯型模型5は、3Dプリンター2によって形成される。歯型模型5は、矯正による移動後の歯の位置や向きが考慮された装着者の歯列の形状に対応しており、マウスピースを形成するための成形型として用いられる。
【0025】
本実施形態では、マウスピースを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データが取得され、取得された3次元形状データに基づいて歯型模型5が形成される。本実施形態では、取得された3次元形状データに基づいて、歯型模型5が3Dプリンター2によって造形されて作成される。3Dプリンター2による3次元造形方法は、限定されないが、例えば液槽光重合(光造形)法である。そして、歯型模型5が形成された後、マウスピースの材料である樹脂材料が歯型模型5に対して圧着されることによって、マウスピースが形成される。
【0026】
図2に示すように、まず、3Dスキャナー1によるスキャンによって、装着者の歯を含む口腔内の形状、すなわち、歯列及び上顎又は下顎の形状が3次元形状データとして取得される(ステップS11)。3次元形状データには、装着者の実際の歯などの形状寸法に関する情報が含まれる。取得された3次元形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。歯型模型5に関する3次元造形用型形状データを作成するための情報処理装置3(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元形状データを取得する。
【0027】
次に、歯型模型5が3Dプリンター2によって造形されるように、歯型模型5の形状に関する3次元造形用型形状データを作成する(ステップS12)。このとき、3次元形状データにおける装着者の実際の歯などの形状寸法が演算処理されることによって、後述するとおり、3次元造形用型形状データには、実際の歯などの形状寸法に関する情報、矯正による移動後の歯の位置や向きに関する情報に加えて、突起部12(図7参照)の位置や形状に関する情報が含まれる。
【0028】
3次元造形用型形状データは、歯型模型5の外形に関するデータであり、取得された3次元形状データに基づいて、例えば3次元CADソフトウェアを用いて作成される。作成された3次元造形用型形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。3Dプリンター2を動作させるための情報処理装置4(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元造形用型形状データを取得する。
【0029】
その後、作成された歯型模型5に関する3次元造形用型形状データに基づいて、3Dプリンター2によって歯型模型5を造形する(ステップS13)。3Dプリンター2は、例えば情報処理装置4によって、動作が制御される。3Dプリンター2による造形が完了すると、3Dプリンター2によって造形された造形物からサポート部を除去するなどの仕上げが行われて、歯型模型5が完成する。歯型模型5の材料は、歯型模型5の材料として通常用いられる材料、特に3Dプリンター2によって造形されるときの歯型模型5に適した材料が適用される。
【0030】
歯型模型5が完成した後、マウスピースの材料である樹脂材料(例えば合成樹脂製シート材)が、歯型模型5に加熱しながら圧着される。これにより、歯型模型5の形状に対応してマウスピースが形成される(ステップS14)。歯型模型5にフィットするように樹脂材料が成形された後、仕上げが行われることによって、マウスピースが完成する。マウスピースの材料は、マウスピースの材料として通常用いられるものが適用される。
【0031】
次に、歯型模型5に関する3次元造形用型形状データの作成方法と、3次元造形用型形状データに基づく歯型模型5の形成方法について説明する。
【0032】
3次元造形用型形状データは、3次元形状データが有する実際の歯の形状寸法そのままの値ではなく、移動後の歯の位置や向きを反映しつつ、マウスピース10(図7参照)に形成される突起部12に対応する形状が付与されることによって作成される。突起部12は、マウスピース10が装着者の歯50に装着された状態で、装着者の歯50の咬合面のうち歯50の対合歯によって他の領域よりも強く押圧される領域52に対応する部分において、歯50の咬合面に向かって、又は、歯50の対合歯に向かって突出している。なお、マウスピース10において、突起部12は一つのみ形成されてもよいし、二つ以上形成されてもよい。
【0033】
突起部に対応する形状が付与されて3次元造形用型形状データが作成されることから、3Dプリンター2によって、歯の形状と突起部の形状を有する歯型模型5が形成される。
【0034】
そして、このように形成された歯型模型5に対して樹脂材料を圧着することによって、歯50に対応する形状と突起部12の形状を有するマウスピース10が形成される。これにより、マウスピース10を装着している装着者が上顎と下顎を閉じたとき、突起部12が上顎の歯と下顎の歯の間に挟まれた状態となり、突起部12に対応する領域が他の領域よりも強く押圧される。その結果、装着者の歯50の咬合面のうち歯50の対合歯に強く押圧される領域が歯根側へ押し下げられる。そして、マウスピース10の装着が継続されることによって、対合歯によって強く押圧される歯50が圧下し、適切でない咬み合わせが解消する。
【0035】
突起部12の形状は、例えば半球形状である。突起部12が形成される位置は、図8におけるグレーの領域52で示されるような、歯50において対合歯に強く当接される領域が検出されることで決定される。歯50において対合歯によって他の領域よりも強く当接される領域は、3Dスキャナー1によって取得された3次元形状データ、又は、咬合紙などによって検出される。
【0036】
図7(A)及び図7(B)に示すように、突起部12は、マウスピース10の内面、すなわち、マウスピース10が装着される歯50と対向する面において、装着される歯50側に形成される。この場合、突起部12は、歯50の咬合面に向かって突出している。または、図7(C)及び図7(D)に示すように、突起部12は、マウスピース10の外面、すなわち、マウスピース10が装着される歯50の対合歯側に形成される。この場合、突起部12は、マウスピース10が装着される歯50の対合歯に向かって突出している。
【0037】
なお、装着者がマウスピース10を初めて装着する際、マウスピース10と共にスポンジ状部材(例えばチューイ)を突起部12に添えて咬むとよい。これにより、突起部12の周囲のマウスピース10が適切に変形して、歯50とマウスピース10の間に形成されやすい隙間を解消できる。
【0038】
[第2実施形態]
以下に、本発明の第2実施形態に係るマウスピースの製造方法について、図面を参照して説明する。上述した第1実施形態では、3Dプリンター2によって歯型模型5を形成して、その後、歯型模型5に樹脂材料を圧着させてマウスピースを形成する場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。本実施形態で後述するとおり、歯型模型5を形成せずに3Dプリンター2によってマウスピースを形成してもよい。
【0039】
本実施形態に係るマウスピースの製造方法では、例えば、図3に示すように、3Dスキャナー(3次元スキャナー)1、3Dプリンター(3次元造形装置)2、及び、これらを動作させるための情報処理装置3,4などが用いられる。情報処理装置3,4は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、及びコンピュータ読み取り可能な記憶媒体等から構成されている。そして、各種機能を実現するための一連の処理は、一例として、プログラムの形式で記憶媒体等に記憶されており、このプログラムをCPUがRAM等に読み出して、情報の加工・演算処理を実行することにより、各種機能が実現される。なお、プログラムは、ROMやその他の記憶媒体に予めインストールしておく形態や、コンピュータ読み取り可能な記憶媒体に記憶された状態で提供される形態、有線又は無線による通信手段を介して配信される形態等が適用されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記憶媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM、DVD-ROM、半導体メモリ等である。
【0040】
情報処理装置3は、3Dスキャナー1で取得された3次元形状データに対して演算処理を行い、3次元造形用マウスピース形状データを作成する。情報処理装置4は、3次元造形用マウスピース形状データに基づいて、3Dプリンター2の動作を実行させる。
【0041】
本実施形態では、マウスピースを装着する装着者の歯の形状を含む口腔内の3次元形状データが取得され、取得された3次元形状データに基づいてマウスピースが3Dプリンター2によって造形され作成される。3Dプリンター2による3次元造形方法は、限定されないが、例えば液槽光重合(光造形)法である。すなわち、歯型模型5が形成されることなく、マウスピースの材料である樹脂材料を適用して3Dプリンター2がマウスピースを形成する。
【0042】
図4に示すように、まず、3Dスキャナー1によるスキャンによって、装着者の歯を含む口腔内の形状、すなわち、歯列及び上顎又は下顎の形状が3次元形状データとして取得される(ステップS21)。3次元形状データには、装着者の実際の歯などの形状寸法に関する情報が含まれる。取得された3次元形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。マウスピースに関する3次元造形用マウスピース形状データを作成するための情報処理装置3(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元形状データを取得する。
【0043】
次に、マウスピースが3Dプリンター2によって造形されるように、マウスピースの形状に関する3次元造形用マウスピース形状データを作成する(ステップS22)。このとき、3次元形状データにおける装着者の実際の歯などの形状寸法が演算処理されることによって、後述するとおり、3次元造形用マウスピース形状データには、実際の歯などの形状寸法に関する情報、矯正による移動後の歯の位置や向きに関する情報に加えて、突起部の位置や形状に関する情報が含まれる。
【0044】
3次元造形用マウスピース形状データは、マウスピースの外形に関するデータであり、取得された3次元形状データに基づいて、例えば3次元CADソフトウェアを用いて作成される。作成された3次元造形用マウスピース形状データは、一時的に記憶装置に記録される。記憶装置は、メモリ、ハードディスクなどの記憶媒体を有し、ローカルに設置されたパーソナルコンピュータ又はインターネットなどを介して接続されたサーバ装置などに内蔵されてもよい。3Dプリンター2を動作させるための情報処理装置4(例えばパーソナルコンピュータなど)は、記憶装置から3次元造形用マウスピース形状データを取得する。
【0045】
その後、作成された3次元造形用マウスピース形状データに基づいて、3Dプリンター2によってマウスピースを造形する(ステップS23)。3Dプリンター2は、例えば情報処理装置4によって、動作が制御される。3Dプリンター2による造形が完了すると、3Dプリンター2によって造形された造形物からサポート部を除去するなどの仕上げが行われて、マウスピースが完成する。マウスピースの材料は、マウスピースの材料として通常用いられる材料、特に3Dプリンター2によって造形されるときのマウスピースに適した材料が適用される。
【0046】
次に、3次元造形用マウスピース形状データの作成方法について説明する。
【0047】
3次元造形用マウスピース形状データは、3次元形状データが有する実際の歯の形状寸法そのままの値ではなく、マウスピースの形状に関するマウスピース形状データが有する形状寸法に対して、マウスピースに形成される突起部に関する形状が付与されることによって作成される。なお、マウスピース形状データは、3次元形状データに基づいて作成されるものである。
【0048】
すなわち、図5に示すように、まず、3次元形状データに基づいて、実際の歯に対応するように、実際の歯の形状寸法を有する仮想上の基準マウスピースが情報処理装置3において作成される(ステップS31)。この結果、基準マウスピースに関するマウスピース形状データが取得される(ステップS32)。そして、仮想上の基準マウスピースのマウスピース形状データに対して、マウスピースに形成される突起部に関する形状のデータが付与されることによって、3次元造形用マウスピース形状データが作成される(ステップS33)。
【0049】
図7に示すように、造形されるマウスピース10には突起部12が形成される。突起部12は、マウスピース10が装着者の歯50に装着された状態で、装着者の歯50の咬合面のうち歯50の対合歯に強く押圧される領域52に対応する部分において、歯50の咬合面に向かって、又は、歯50の対合歯に向かって突出している。
【0050】
上述した第2実施形態では、実際の歯の形状寸法を有する仮想上の基準マウスピースを作成して、作成された基準マウスピースに対して、マウスピースに形成される突起部に関する形状のデータが付与されることによって、3次元造形用マウスピース形状データが作成される場合について説明したが、本実施形態において、3次元造形用マウスピース形状データの作成手順はこの方法に限定されない。
【0051】
例えば、第1実施形態と異なり、第2実施形態と同様に、歯型模型を実際には形成しないが、情報処理装置3において仮想上のマウスピース用型を作成して、仮想上のマウスピース用型が有する形状寸法に対して、マウスピースに形成される突起部に対応する形状が付与されるようにしてもよい。そして、仮想上のマウスピース用型に対応するようにマウスピースの形状に関する3次元造形用マウスピース形状データが作成される。
【0052】
以下、この例について、第2実施形態に係る3次元造形用マウスピース形状データの作成方法の変形例として説明する。
【0053】
本変形例において、3次元造形用マウスピース形状データは、3次元形状データが有する実際の歯の形状寸法そのままの値ではなく、移動後の歯の位置や向きを反映しつつ、マウスピースに形成される突起部に対応する形状が付与されることによって作成される。例えば、情報処理装置3において、仮想上のマウスピース用型において突起部に対応する形状が付与されるように、3次元形状データが作成される。
【0054】
図6に示すように、情報処理装置3において、3次元形状データが有する形状寸法に対して、矯正による移動後の歯の位置や向きを反映しつつ、マウスピースに形成される突起部に対応する形状が付与される。これにより、移動後の歯の位置や向きが反映された歯の形状寸法に突起部に対応する形状を有する仮想上のマウスピース用型が作成される(ステップS41)。これにより、仮想上のマウスピース用型の型形状データが取得される(ステップS42)。本変形例における仮想上のマウスピース用型の型形状データは、本発明に係る型形状データの一例である。
【0055】
次に、型形状データに基づいて、仮想上のマウスピース用型に対応するように、情報処理装置3において、仮想上のマウスピースが作成される(ステップS43)。この結果、移動後の歯の位置や向きが反映された歯の形状寸法に突起部に対応する形状を有する3次元造形用マウスピース形状データが作成される(ステップS44)。
【0056】
突起部に対応する形状に基づいて3次元造形用マウスピース形状データが作成されることから、3Dプリンター2によって、突起部を有するマウスピースが形成される。
【0057】
なお、上述した第1及び第2実施形態では、歯型模型5や3Dプリンター2によって形成されるマウスピースにおいて、装着者の歯に対応する部分と共に突起部が形成される場合について説明したが、本発明はこの例に限定されない。すなわち、突起部を有さない通常のマウスピースがまず形成されて、その後に、突起部がマウスピースに付与されてもよい。例えば、プライヤーなどの器具を用いてマウスピースの一部を窪ませることによって、突起部が形成される。突起部は、マウスピースが装着される歯の咬合面に向かって突出するように形成されてもよいし、マウスピースが装着される歯の対合歯に向かって突出するように形成されてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 :3Dスキャナー
2 :3Dプリンター
3 :情報処理装置
4 :情報処理装置
5 :歯型模型
10 :マウスピース(マウスピース型矯正装置)
12 :突起部
50 :歯
52 :領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8