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特開2024-11966ポリウレタンの製造法およびそれに用いられるウレタン化反応用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011966
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】ポリウレタンの製造法およびそれに用いられるウレタン化反応用組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 18/22 20060101AFI20240118BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 18/62 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 18/76 20060101ALI20240118BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
C08G18/22
C08G18/10
C08G18/62 004
C08G18/76 057
C08G18/65 011
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114336
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004307
【氏名又は名称】日本曹達株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107984
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 雅紀
(74)【代理人】
【識別番号】100182305
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 鉄平
(74)【代理人】
【識別番号】100096482
【弁理士】
【氏名又は名称】東海 裕作
(74)【代理人】
【識別番号】100131093
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 真
(74)【代理人】
【識別番号】100150902
【弁理士】
【氏名又は名称】山内 正子
(74)【代理人】
【識別番号】100141391
【弁理士】
【氏名又は名称】園元 修一
(74)【代理人】
【識別番号】100221958
【弁理士】
【氏名又は名称】篠田 真希恵
(74)【代理人】
【識別番号】100192441
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 仁
(72)【発明者】
【氏名】山手 太軌
(72)【発明者】
【氏名】河西 拓也
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕輝
(72)【発明者】
【氏名】阿部 悟
【テーマコード(参考)】
4J034
【Fターム(参考)】
4J034BA08
4J034DA01
4J034DB03
4J034DB07
4J034GA06
4J034HA01
4J034HA07
4J034HC12
4J034HC64
4J034HC67
4J034HC71
4J034JA42
4J034KA01
4J034KB02
4J034KC16
4J034KD04
4J034KD08
4J034KE02
4J034QB11
4J034QB14
(57)【要約】
【課題】
本発明は、安定化剤を使用しなくても、ポリウレタン用有機金属化合物の保存安定性に優れる方法を提供し、ひいては、ポリウレタンの製造を好適に行うことのできる方法を提供することを課題とする。
【解決手段】
本発明は、ポリウレタンの製造において、(A)液状の鎖延長剤、および、(B)β-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、グリコール、およびヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも1つを有する有機金属化合物を含有するウレタン化反応用組成物を調製することを特徴とする。
このウレタン化反応用組成物は、1,2-構造/1,4-構造のモル比率が55/45~100/0であり両末端に水酸基を有するポリブタジエン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートおよび鎖延長剤からポリウレタンを製造する方法に好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)液状の鎖延長剤、および、
(B)β-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、グリコール、およびヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも1つを有する有機金属化合物、
を含有するウレタン化反応用組成物。
【請求項2】
鎖延長剤が、1,4-ブタンジオール及び/又はトリメチロールプロパンである請求項1に記載のウレタン化反応用組成物。
【請求項3】
前記有機金属化合物が、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、
またはトリブトキシ-モノアセチルアセトナートジルコニウムである請求項1または2に記載のウレタン化反応用組成物。
【請求項4】
1,2-構造/1,4-構造のモル比率が55/45~100/0であり両末端に水酸基を有するポリブタジエンおよび3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートを混合して、プレポリマーを得る工程、および、
前記プレポリマーおよび請求項1に記載のウレタン化反応用組成物を混合する工程
を有するポリウレタンの製造方法。
【請求項5】
前記ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)が、500~10,000である請求項4に記載のポリウレタンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はポリウレタンの製造法に関する。特に、本発明は、ポリウレタンの製造に用いられる鎖延長剤と触媒を含有する安定な組成物およびそれを用いたポリウレタンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
水酸基変性ポリブタジエンとジイソシアネート化合物を用いるポリウレタン材料が知ら れている(たとえば、特許文献1、2、3、4)。
しかしながら、これらのポリウレタンは、機械的物性が射出成型に適していない点や、耐水性が悪い点が問題となることがあったので、本発明者らは、射出成型に適した機械的物性と優れた耐水性を有する、1,2-構造/1,4-構造のモル比率が55/45~95/5であり両末端に水酸基を有するポリブタジエンと、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートと、鎖延長剤とを反応させて得たポリウレタンを提供した(特許文献5)。
特許文献5においては、ポリウレタンの合成反応において使用する触媒として、ジメチルエタノールアミン、トリエチレンジアミンなどの第3級アミン類、スタナスオクテート、オクチル酸カリウム、ジブチルスズジラウレートなどの金属触媒などが挙げられているが、これらの触媒の使用量が多すぎると発熱が激しく、反応をコントロールしにくい上に、ゲル化物が生成したり、着色したポリウレタンが得られたりするという問題があることも記載されている。
【0003】
他方、特許文献6には、イソシアネート若しくはブロックイソシアネートと、ポリオールとのウレタン化反応に用いるウレタン化反応触媒として、亜鉛、アルミニウム、カルシウム、ジルコニウム及びマグネシウムよりなる群から選ばれる少なくとも1種の特定金属元素のアセチルアセトン化合物が記載されている。
金属アセチルアセトン化合物は、常温常圧で固体であり、ポリウレタン原料に対して溶解性が低く、それらと混合しても不均一になるため、ウレタン化反応も不均一に進行することになり、ウレタン化反応触媒としては不向きであり、また、金属アセチルアセトン化合物は、一般に低級アルコール以外の汎用有機溶媒に対しての溶解性も低いため、このような汎用溶媒の存在下に、ポリウレタン原料を混合しても依然として不均一であるため、有機溶媒を含有するウレタン化反応触媒としても使用し難かった。そこで、β-ジケトンやβ-ケトエステルなどの安定化剤と共に溶剤と混合することにより、金属アセチルアセトン化合物が溶剤に均一に溶解状態にすることができたことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009-120722号公報
【特許文献2】特開平6-184367号公報
【特許文献3】特開平4-241881号公報
【特許文献4】特表2011-530336号
【特許文献5】特開2021-17476号公報
【特許文献6】特開2015-136678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献6においては、触媒である金属アセチルアセトン化合物を溶媒に均一に溶解させるためには、安定化剤を必要とする。
本発明は、触媒である金属アセチルアセトン化合物等有機金属化合物の保存安定性に優れる方法を提供し、ひいては、ポリウレタン、特に、ポリブタジエン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートおよび鎖延長剤からポリウレタンを好適に製造することのできる方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、上記課題を鋭意検討の結果、金属アセチルアセトン化合物など特定の有機金属化合物を液状のポリウレタン用鎖延長剤と共に混合することにより、有機金属化合物が沈殿することなく保存安定性が優れることを見出した。
【0007】
すなわち、本発明は
(1)(A)液状の鎖延長剤、および、
(B)β-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、グリコール、およびヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも1つを有する有機金属化合物、
を含有するウレタン化反応用組成物、
(2)鎖延長剤が、1,4-ブタンジオール及び/又はトリメチロールプロパンである(1)に記載のウレタン化反応用組成物、
(3)前記有機金属化合物が、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、
またはトリブトキシ-モノアセチルアセトナートジルコニウムである(1)または(2)に記載のウレタン化反応用組成物、
(4)1,2-構造/1,4-構造のモル比率が55/45~100/0であり両末端に水酸基を有するポリブタジエンおよび3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートを混合して、プレポリマーを得る工程、および、
前記プレポリマーおよび(1)に記載のウレタン化反応用組成物を混合する工程
を有するポリウレタンの製造方法、
(5)前記ポリブタジエンの数平均分子量(Mn)が、500~10,000である(4)に記載のポリウレタンの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のウレタン化反応用組成物は、触媒である金属アセチルアセトン化合物などの特定の有機金属化合物の保存安定性に優れる。その結果、特に、1,2-構造/1,4-構造のモル比率が55/45~100/0であり両末端に水酸基を有するポリブタジエン、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートおよび鎖延長剤からポリウレタンを製造する方法に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
1ポリウレタン
本発明に係るポリウレタンは、両末端に水酸基を有するポリブタジエンと、3,3’- ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートと、鎖延長剤とを反応させて得られるものである。その結果、本発明に係るポリウレタンは、1,2-構造/1,4-構造のモル比率が55/45~95/5であり、両末端に水酸基を有するポリブタジエン由来の構造、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート由来の構造及び鎖延長剤由来の構造を含有する。各構造単位は、ポリウレタン製造における周知の結合様式により結合している。
【0010】
(両末端に水酸基を有するポリブタジエン)
両末端に水酸基を有するポリブタジエンは、1,2-構造/1,4-構造のモル比率が 、好ましくは55/45~95/5、より好ましくは70/30~95/5である。1,2-構造/1,4-構造のモル比率は、例えば、1H-NMRで測定して算出することができる。1,2-構造/1,4-構造のモル比率の調整法は、公知の方法で行うことができる。例えば、ブタジエンを重合する際に使用する触媒の種類や重合副資材を選択することによって1,2-構造/1,4-構造のモル比率をコントロールすることができる。両末端に水酸基を有するポリブタジエン中の二重結合は、その全部が、あるいはその一 部が水素添加されていてもよい。好ましくは、両末端に水酸基を有するポリブタジエン中の二重結合は、水素添加されていないものであるのが好ましい。また、ポリブタジエン成分の数平均分子量(Mn)は、好ましくは500~10,000 、より好ましくは1,000~7,000である。前記数平均分子量(Mn)は、ポリスチレンを標準物質として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定したものである。その測定条件は、移動相THF(テトラヒドロフラン)、移動相流量1mL/分、カラム温度40℃、試料注入量40μL、試料濃度2重量%である。両末端に水酸基を有するポリブタジエンとしては、市販品を用いることができる。具体的には、Nisso-PB-G-1000(日本曹達社製)、Nisso-PB-G-2000(日本曹達社製)、Nisso-PB-G-3000(日本曹達社製)、Nisso-PB-GI-1000(日本曹達社製)、Nisso-PB-GI-2000(日本 曹達社製)、Nisso-PB-GI-3000(日本曹達社製)などを挙げることができる。これらは1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0011】
(3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート)
本発明に用いられる3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート( 以下、TODIと記載することがある)は、下記式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0012】
TODIは、市販品を用いることができる。具体的には、日本曹達社製TODIを挙げることができる。 反応時に使用するTODIの量は、Rレシオの値が、好ましくは1~10、より好ましくは2~5、さらに好ましくは2.1~3.8となるように設定する。なお、Rレシオは 、両末端に水酸基を有するポリブタジエンに由来する水酸基のモル数に対するTODIに 由来するイソシアナト基のモル数の比である。
【0013】
(鎖延長剤)
本発明において用いられる鎖延長剤は、主として、低分子ポリオールまたは低分子ポリアミンであり、好ましくは低分子ポリオールである。
【0014】
低分子ポリオールとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコ ール、1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル -2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパ ンジオール、2-ブチル-2-ヘキシル-1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、 1,5-ペンタンジオール、2-メチル-2,4-ペンタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、2,5-ジメチル-2,5-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル -1,8-オクタンジオール及び1,9-ノナンジオール等の脂肪族グリコール;ビス( ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂環族グリコール;キシリレングリコール、ビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香環を有するグリコール、トリメチロールプロパン、1,2,4-ブタントリオール等のトリオール等が挙げられる。
【0015】
低分子ポリアミンとしては、2,4-トリレンジアミン、2,6-トリレンジアミン、 キシリレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン等の芳香族ジアミン;エチレンジアミン、1,2-プロピレンジアミン、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、2-ブチル- 2-エチル-1,5-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、2,2,4-又は 2,4,4-トリメチルヘキサンジアミン、1,8-オクタンジアミン、1,9-ノナン ジアミン、1,10-デカンジアミン等の脂肪族ジアミン;1-アミノ-3-アミノメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジアミン、イソプロピリデンシクロヘキシル-4,4’-ジアミン、1,4-ジアミノシクロヘ キサン、1,3-ビスアミノメチルシクロヘキサン等の脂環族ジアミン等が挙げられる。
【0016】
反応時に使用する鎖延長剤の量は、NCOインデックスの値が、好ましくは0.2~10、より好ましくは0.5~1.25、さらに好ましくは0.9~1.1となるように設定する。なお、NCOインデックスは、両末端に水酸基を有するポリブタジエンに由来する水酸基と鎖延長剤に由来する水酸基との合計モル数に対するTODIに由来するイソシアナト基のモル数の比である。
【0017】
(ポリウレタンの製造方法) 本発明に係るポリウレタンは、その製法において特に制限されず、例えば、プレポリマー法やワンショット法によって製造することができるが、プレポリマー法により製造することが好ましい。プレポリマー法では、両末端に水酸基を有するポリブタジエンとTODIとを先ず反応させて末端イソシアナト基を有するウレタンプレポリマーを得て、これに鎖延長剤の一部または全部および触媒を含有する組成物(下記ウレタン化反応用組成物)、さらに鎖延長剤の残部を反応させてポリウレタンを得る方法である。ワンショット法は、両末端に水酸基を有するポリブタジエンとTODIと鎖延長剤の一部または全部および触媒を含有する組成物(下記ウレタン化反応用組成物)さらに鎖延長剤の残部とをほぼ同時に反応器に添加して反応させてポリウレタンを得る方法である。反応は、反応原料を十分に攪拌することができる程度の粘度になるまで反応原料の温度を上げることによって行うことができる。反応時の具体的な温度は、好ましくは室温~120℃、さらに好ましくは、60~100℃である。反応時の温度が低すぎると反応の進行が遅く、製造に要する時間が長くなる傾向がある。反応時の温度が高すぎると副反応が生じたり、可使時間が短くなったりして、成型加工処理が困難になる傾向がある。この反応は溶剤無しでも、溶剤中でも行うことができる。溶剤としては反応に不活性なものを用いることが好ましい。溶剤としては、トルエン、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチ ルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、テトラヒドロフランなどを挙げることができる 。
【0018】
(触媒)
本発明に用いられる触媒は、β-ジケトン化合物、β-ケトエステル化合物、アルカノールアミン化合物、グリコール化合物、およびヒドロキシカルボン酸化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物が金属元素に配位結合している有機金属化合物である。
金属元素には、上記化合物以外に有機基が結合していてもよい。
金属種は、ポリウレタン合成用触媒に用いられる金属であって、β-ジケトン化合物、β-ケトエステル化合物、アルカノールアミン化合物、グリコール化合物またはヒドロキシカルボン酸化合物と錯体を形成することができる金属元素、たとえば、チタン、ジルコニウム、亜鉛、鉄、カルシウム、マグネシウム等が挙げられるが、好ましくは、チタン、ジルコニウムである。金属種は、1種または2種以上の混合物であってもよい。
β-ジケトン化合物としては、アセチルアセトン、へキサン-2,4-ジオン、ヘプタン-2,4-ジオン、ヘプタン-3,5-ジオン、オクタン-2,4-ジオン、ノナン-2,4-ジオン、5-メチル-へキサン-2,4-ジオン、ベンゾイルアセトン、ヘキサフルオロアセチルアセトン等が挙げられる。
β-ケトエステル化合物としては、アセト酢酸メチル、アセト酢酸n-プロピル、アセト酢酸イソプロピル、アセト酢酸n-ブチル、アセト酢酸sec-ブチル、アセト酢酸t-ブチル等が挙げられる。
アルカノールアミン化合物としては、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、N-ジメチルエタノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール、トリイソプロパノールアミン、2-アミノ-2-メチル-1,3-プロパンジオール、3-アミノ-1,2-プロパンジオール、3-ジメチルアミノ-1,2-プロパンジオール、トリス(ヒドロキシメチルアミノ)メタン等が挙げられる。
グルコール化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール等の脂肪族グリコール;ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等の脂環族グリコール;キシリレングリコール及びビス(ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等の芳香環を有するグリコール等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸類は、分子内に少なくとも1個のヒドロキシル基および少なくとも1個のカルボキシ基を有するものであり、たとえば、グリコール酸、乳酸、α-オキシ-n-酪酸、α-オキシイソ吉草酸、2-エチル-2-オキシブタン酸、ヒドロアクリル酸、β-オキシ酪酸、α-オキシアクリル酸、タルトロン酸、オキシメチルマロン酸、リンゴ酸、オキシグルタル酸、クエン酸、グリセリン酸、酒石酸等が挙げられる。
前記配位子は、1種または2種以上の混合物であってもよい。
【0019】
上記化合物以外に結合していてもよい有機基としては、特に限定はないが、例えば、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、イソブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、ペントキシ基、ヘキソキシ基等のアルコキシ基等 が挙げられる。。上記アルコキシ基の炭素数は、特に限定はないが、通常1~10個の範囲で可能である。
有機金属化合物として、金属種がチタンとジルコニウムの場合のβジケトン化合物、特に、アセチルアセトン化合物について、具体的には、以下の化合物が挙げられる。
テトラキスアセチルアセトナートチタン、テトラキスアセチルアセトナートジルコニウム、トリブトキシ-モノアセチルアセトナートチタン、トリブトキシ-モノアセチルアセトナートジルコニウム、ジメトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジメトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジエトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジエトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジノルマルプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジノルマルプロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、ジノルマルブトキシビス(アセチルアセトナート)チタン、ジノルマルブトキシビス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノメトキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノメトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノエトキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノエトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノノルマルプロポキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノノルマルプロポキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノイソプロポキシトリス(アセチルアセトナート)チタン、モノイソプロポキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム、モノノルマルブトキシトリス(アセチルアセトナート)チタンまたはモノノルマルブトキシトリス(アセチルアセトナート)ジルコニウム等。
これらは、1種または2種以上の混合物であってもよい。
触媒の使用量は両末端に水酸基を有するポリブタジエンとTODIと鎖延長剤との合計量に対して、好ましくは1~1000ppm、より好ましくは5~800ppmである。触媒の使用量が少なすぎると反応が遅くなり、製造に要する時間が長くなる。触媒の使用量が多すぎると発熱が激しく、反応をコントロールしにくい上に、ゲル化物が生成したり、着色したポリウレタンが得られたりすることがある。本発明のポリウレタンには、本発明の効果を損なわない範囲で適宜その他の添加剤を加えることができる。その他の添加剤としては、難燃剤、劣化防止剤、可塑剤等を挙げることができる。
【0020】
(ウレタン化反応用組成物)
上記ポリウレタンの製造に、以下のウレタン化反応用組成物が用いられる。
本発明のウレタン化反応用組成物は、以下の(A)及び(B)を含有する。
(A)液状の鎖延長剤、および、
(B)β-ジケトン、β-ケトエステル、アルカノールアミン、グリコール、およびヒドロキシカルボン酸から選ばれる少なくとも1つを有する有機金属化合物(触媒)
【0021】
本発明の鎖延長剤および有機金属化合物は、上記ポリウレタンの項で説明したとおりである。
本発明の鎖延長剤は、室温下で液状であるものであっても、融点以上に加温したときに液状となるものであってもよい。いずれの場合も、液状の鎖延長剤と有機金属化合物とを混合する。加温したときに液状となる鎖延長剤を使用する場合は、液状を維持することのできる温度に加温したウレタン化反応用組成物をポリウレタンの合成に使用する。
このような組成物とすることにより、有機金属化合物(触媒)は、沈殿することなく保存安定性がよい。
(A)及び(B)の配合割合は、触媒の沈殿が生じない範囲であれば特に制限はないが、通常、(A):(B)=99.9 :0.1~70:30(重量比)である。
また、当該ウレタン化反応用組成物は、沈殿が生じない限り、他の成分を含有してもよい。
以下の実施例を示すが、本発明の技術的範囲はこれらに限定されない。
【実施例0022】
1 ウレタン化反応組成物の製造
[実施例1、2および比較例1~3]
1,4-ブタンジオール 2.98g、トリメチロールプロパン 0.53g、各金属化合物を0.0936gを混合して、60℃で1時間静置後の混合溶液の状態を下の基準で評価した。結果を表1に示す。
〇:透明で均一に溶解している。
△:不溶物が存在し、濁っている。
×:ゲル化している。
【0023】
【表1】
【0024】
2 ポリウレタンの製造
(実施例3、4および比較例4、5)
各原料の仕込み量と結果を表2に示す。300mLセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有する水素化ポリブタジエン(NISSO-PB-GI2000:日本曹達社製)を仕込み、オイルバスで130℃に加温しながら、200rpmで約30分間撹拌した。その後、系内に窒素を導入して常圧とした。続いて、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI:日本曹達社製)を仕込み、130℃で30分間撹拌することでプレポリマーを作製した。次いで、あらかじめ60℃で加温していた1,4-ブタンジオール(東京化成社製)とトリメチロールプロパン(東京化成社製)と各触媒の混合液を仕込み、N雰囲気下で撹拌(内温は約130℃)した。ゲル化するまでの時間を計測した。
【0025】
【表2】
【0026】
(実施例5)ポリウレタンA(T-50触媒使用)の製造
300mLセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有する水素化ポリブタジエン(NISSO-PB-GI2000:日本曹達社製)78.51gを仕込み、オイルバスで130℃に加温しながら、200rpmで約30分間撹拌した。その後、系内に窒素を導入して常圧とした。続いて、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI:日本曹達社製)18.44gを仕込み、130℃で30分間撹拌することでプレポリマーを作製した。3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートの使用量は、Rレシオの値が、2.1となるように設定した。次いで、あらかじめ60℃で加温していた1,4-ブタンジオール(東京化成社製)2.59gとトリメチロールプロパン(東京化成社製)0.46gとT-50(日本曹達製、ジ-i-プロポキシビス(アセチルアセトナト)チタン)0.0264gの混合液を仕込み、3分間撹拌することでポリウレタン反応を行った。1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンの使用合計量は、NCOインデックスの値が、1.05となるように設定した。得られたポリウレタン反応物を、あらかじめ100℃に加温したSUS型に流し込み、100℃で40分間加熱した。その後、120℃で、さらに24時間加熱することで約2mm厚のポリウレタンシートを得た。
【0027】
実施例6)ポリウレタンB(ZR-181触媒使用)の製造
300mLセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有する水素化ポリブタジエン(NISSO-PB-GI2000:日本曹達社製)78.51gを仕込み、オイルバスで130℃に加温しながら、200rpmで約30分間撹拌した。その後、系内に窒素を導入して常圧とした。続いて、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI:日本曹達社製)18.44gを仕込み、130℃で30分間撹拌することでプレポリマーを作製した。3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートの使用量は、Rレシオの値が、2.1となるように設定した。次いで、あらかじめ60℃で加温していた1,4-ブタンジオール(東京化成社製)2.59gとトリメチロールプロパン(東京化成社製)0.46gとZR-181(日本曹達製、トリブトキシ・モノアセトナトジルコニウム)0.0446gの混合液を仕込み、3分間撹拌することでポリウレタン反応を行った。1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンの使用合計量は、NCOインデックスの値が、1.05となるように設定した。得られたポリウレタン反応物を、あらかじめ100℃に加温したSUS型に流し込み、100℃で40分間加熱した。その後、120℃で、さらに24時間加熱することで約2mm厚のポリウレタンシートを得た。
【0028】
比較例6)ポリウレタンC(触媒なし)の製造
300mLセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有する水素化ポリブタジエン(NISSO-PB-GI2000:日本曹達社製)78.51gを仕込み、オイルバスで130℃に加温しながら、200rpmで約30分間撹拌した。その後、系内に窒素を導入して常圧とした。続いて、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI:日本曹達社製)18.49gを仕込み、130℃で30分間撹拌することでプレポリマーを作製した。3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートの使用量は、Rレシオの値が、2.1となるように設定した。次いで、あらかじめ60℃で加温していた1,4-ブタンジオール(東京化成社製)2.55gとトリメチロールプロパン(東京化成社製)0.45gの混合液を仕込み、5分間撹拌することでポリウレタン反応を行った。1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンの使用合計量は、NCOインデックスの値が、1.05となるように設定した。得られたポリウレタン反応物を、あらかじめ100℃に加温したSUS型に流し込み、100℃で40分間加熱した。その後、120℃で、さらに24時間加熱することで約2mm厚のポリウレタンシートを得た。
【0029】
比較例7)ポリウレタンD(TEDA触媒使用)の製造
300mLセパラブルフラスコに、両末端に水酸基を有する水素化ポリブタジエン(NISSO-PB-GI2000:日本曹達社製)78.16gを仕込み、オイルバスで130℃に加温しながら、200rpmで約30分間撹拌した。その後、系内に窒素を導入して常圧とした。続いて、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネート(TODI:日本曹達社製)18.79gを仕込み、130℃で30分間撹拌することでプレポリマーを作製した。3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニレンジイソシアネートの使用量は、Rレシオの値が、2.1となるように設定した。次いで、あらかじめ60℃で加温していた1,4-ブタンジオール(東京化成社製)2.59gとトリメチロールプロパン(東京化成社製)0.46gとTEDA(東京化成社製、トリエチレンジアミン)0.0061gの混合液を仕込み、5分間撹拌することでポリウレタン反応を行った。1,4-ブタンジオールとトリメチロールプロパンの使用合計量は、NCOインデックスの値が、1.05となるように設定した。得られたポリウレタン反応物を、あらかじめ100℃に加温したSUS型に流し込み、100℃で40分間加熱した。その後、120℃で、さらに24時間加熱することで約2mm厚のポリウレタンシートを得た。
【0030】
[ショア硬度測定]
西東京精密社製のデュロメーターAおよびDを用いて計測した。
[引張試験]
ポリウレタンシートから打ち抜きでダンベル片を作製し、そのダンベル片を用いて測定した。島津製作所社製 5 kNロードセルと1 kN引張試験冶具を装着した卓上型精密万能試験機 AGS-Jを用いて以下の条件で測定した。試験速度:500 mm/min、標線間距離:20 mm、チャック間距離:50 mm。
【0031】
【表3】