(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119660
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20240827BHJP
G06F 3/04845 20220101ALI20240827BHJP
G06F 18/2433 20230101ALI20240827BHJP
G06N 3/0455 20230101ALI20240827BHJP
【FI】
G05B23/02 302Z
G06F3/04845
G06F18/2433
G06N3/0455
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026719
(22)【出願日】2023-02-22
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-06-25
(71)【出願人】
【識別番号】399035766
【氏名又は名称】エヌ・ティ・ティ・コミュニケーションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 耀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 浩二
(72)【発明者】
【氏名】泉谷 知範
(72)【発明者】
【氏名】切通 恵介
【テーマコード(参考)】
3C223
5E555
【Fターム(参考)】
3C223AA01
3C223AA05
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223EB01
3C223FF05
3C223FF22
3C223FF26
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
5E555AA22
5E555AA57
5E555BA02
5E555BA36
5E555BA42
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5E555BC14
5E555CB05
5E555DB53
5E555DB56
5E555DC31
5E555DC35
5E555EA19
5E555EA20
5E555FA00
(57)【要約】
【課題】プラントの運転を支援する機械学習モデルの出力に異常がある場合に、当該以上の要因に関する情報をユーザに知らせること。
【解決手段】計算部153は、入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルにおける、説明変数の要因の再構成誤差を計算する。表示制御部154は、再構成誤差が閾値以上である場合、予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルにおける、前記説明変数の要因の再構成誤差を計算する計算部と、
前記再構成誤差が閾値以上である場合、前記予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる表示制御部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記計算部は、前記説明変数の要因を表す第1のベクトルと、前記第1のベクトルをオートエンコーダに入力して得られた第2のベクトルとの誤差を前記再構成誤差として計算する
ことを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、時刻ごとの前記説明変数を画面の領域に表示させ、前記領域における、前記再構成誤差が閾値以上である時刻及び説明変数に対応する部分を強調表示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記説明変数の要因に類似する要因、及び、前記説明変数の要因に対して追加されたコメントを画面に表示させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルにおける、前記説明変数の要因の再構成誤差を計算する計算工程と、
前記再構成誤差が閾値以上である場合、前記予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる表示制御工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項6】
入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルにおける、前記説明変数の要因の再構成誤差を計算する計算ステップと、
前記再構成誤差が閾値以上である場合、前記予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる表示制御ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
人間の行動に関する情報を用いて、人間による行動を模倣する機械学習モデルを作る模倣学習という技術が知られている。
【0003】
模倣学習の実現方法として、観測されたデータを大量に蓄積しておき、蓄積されたデータの中から要求点の近傍のデータを抽出し、当該抽出したデータを用いて機械学習モデルの逐次学習を行うJust-In-Time(JIT)法という技術が知られている(例えば、非特許文献1を参照)。
【0004】
また、近年では運転データ等を入力とする機械学習モデルを用いて、操作対象となる設備、工場、プラント等の制御内容を決定する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】山本 茂、「Just-In-Time予測制御:蓄積データに基づく予測制御」、計測と制御 第 52 巻 第 10 号 2013 年 10 月号(https://www.jstage.jst.go.jp/article/sicejl/52/10/52_878/_pdf/-char/ja)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、プラントの運転を支援する機械学習モデルの出力に異常がある場合に、当該以上の要因に関する情報をユーザが知ることができない場合があるという問題がある。
【0008】
例えば、従来の技術では、機械学習モデルの出力に異常がある場合に、異常の原因、及びプラントの状態をユーザに通知することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、情報処理装置は、入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルにおける、前記説明変数の要因の再構成誤差を計算する計算部と、前記再構成誤差が閾値以上である場合、前記予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる表示制御部と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、プラントの運転を支援する機械学習モデルの出力に異常がある場合に、当該以上の要因に関する情報をユーザに知らせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1は、情報処理装置の概要を説明する図である。
【
図2】
図2は、情報処理装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、情報処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、コメントについて説明する図である。
【
図6】
図6は、要因モデルについて説明する図である。
【
図7】
図7は、情報処理プログラムを実行するコンピュータの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本願に係る情報処理装置、情報処理方法及び情報処理プログラムの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0013】
[第1の実施形態]
[第1の実施形態の構成]
図1に示すように、情報処理装置10は、プラントにおける製品の生産工程の管理及び制御を行うためのシステムに含まれる。プラントには、化学製品を生産するための化学プラントが含まれる。
【0014】
図1に示すように、情報処理装置10は、プラント20aからセンサデータ等を受け取る。そして、情報処理装置10は、受け取ったデータを基に、最適な操作量(操作推奨値)を予測するための予測モデルの訓練、及び訓練済みの予測モデルを使った操作推奨値の予測を行う。
【0015】
情報処理装置10は、プラント20bから収集されたデータを説明変数として訓練済みの予測モデルに入力する。そして、情報処理装置10は、入力された説明変数に基づき、操作推奨値を目的変数として予測モデルに出力させる。
【0016】
情報処理装置10は、プラント20aにおいて実際にオペレータが行った操作を予測モデルに学習させることで、模倣学習を行う。
【0017】
例えば、予測モデルは、特定の工程において、過去にオペレータが投入した原材料の投入量を学習する。そして、予測モデルは、操作推奨値として原材料の投入量を出力する。オペレータは、予測モデルの出力に従って原材料の投入量を設定することで、過去のオペレータの操作を模倣することができる。
【0018】
このような模倣学習を行う予測モデルにより、プラントの運転支援だけでなく、オペレータの技術伝承、操作の最適化、ひいては操作の完全自動化が実現可能になる。
【0019】
また、情報処理装置10は、予測モデルの異常を検知し、さらに、予測モデルの要因に関する情報を通知する。
【0020】
プラントの環境の変化に応じて、予測モデルが出力する操作推奨値が適切でなくなることがあり得る。また、説明変数が変化し、予測モデルが適切な操作推奨値を出力できなくなる場合がある。このような場合、予測モデルに異常が発生しているということができる。情報処理装置10は、このような予測モデルの異常を検知する。
【0021】
また、要因は、例えば、予測モデルに入力される各説明変数の、予測モデルによって出力された目的変数に対する寄与度である。予測モデルに異常が発生した場合、要因に変化が生じることが考えられる。情報処理装置10は、要因の変化を基に予測モデルの異常を検知し、さらに要因に関する情報をオペレータ等のユーザに提供する。
【0022】
情報処理装置10は、操作推奨値、予測モデルの異常検知の結果、及び要因に関する情報を、ユーザが使用する端末装置21に対して出力する。ユーザ(特にオペレータ)は、操作推奨値に従ってプラント20bを操作する。また、ユーザは、端末装置21を介して予測モデルの異常に関する情報を確認し、確認した情報に応じて対策を取ることができる。
【0023】
情報処理装置10は、サーバ、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置である。また、端末装置21は、パーソナルコンピュータ、タブレット型端末及びスマートフォン等の情報処理装置である。
【0024】
なお、プラント20bはプラント20aと同一であってもよいし、同様の構成及び機能を持つ異なるプラントであってもよい。
【0025】
図2を用いて、情報処理装置10について詳細に説明する。
図2は、情報処理装置の構成例を示す図である。
【0026】
図2に示すように、情報処理装置10は、通信部11、入力部12、表示部13、記憶部14及び制御部15を有する。
【0027】
通信部11は、ネットワークを介して、他の装置との間でデータ通信を行う。例えば、通信部11はNIC(Network Interface Card)である。
【0028】
入力部12は、データの入力を受け付ける。入力部12は、マウス及びキーボード等の入力装置と接続されるインタフェースであってもよい。
【0029】
表示部13は、画面を出力する。表示部13は、ディスプレイ等の表示装置であってもよいし、表示装置と接続されるインタフェースであってもよい。また、表示部13は、端末装置21に画面を表示させてもよい。
【0030】
記憶部14は、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、光ディスク等の記憶装置である。なお、記憶部14は、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ、NVSRAM(Non Volatile Static Random Access Memory)等のデータを書き換え可能な半導体メモリであってもよい。
【0031】
記憶部14は、情報処理装置10で実行されるOS(Operating System)や各種プログラムを記憶する。記憶部14は、収集データ履歴DB141、要因履歴DB142、コメントDB143及びモデル情報144を記憶する。
【0032】
収集データ履歴DB141は、プラント20a又はプラント20bから収集されたデータが時刻とともに格納されたDBである。収集データ履歴DB141は、予測モデルの説明変数を含む。また、収集データ履歴DB141は、予測モデルの目的変数を含んでいてもよい。
【0033】
例えば、説明変数は、センサ等によって取得された時刻、温度、圧力、CO2濃度及び設定値を含む。また、目的変数は、例えば設定値である。設定値は、オペレータの操作によって設定される値である。設定値は、実際に設定された値を正規化した値であってもよい。設定値は機器の操作内容を特定するための値である。例えば、設定値は、操作量と言い換えられてもよい。
【0034】
要因履歴DB142は、予測モデルによる予測が行われた際の、予測モデルの要因の履歴が格納される。
【0035】
コメントDB143は、要因履歴DB142に格納された要因に対して追加されたコメントを記憶する。
【0036】
モデル情報144は、機械学習モデルを構築するためのパラメータ等の情報である。機械学習モデルは、予測モデルと要因モデルを含む。予測モデルは、収集されたデータを入力とし、操作量を出力する。要因モデルは、予測モデルの要因を入力とし、予測モデルの異常を検知するための値を出力する。
【0037】
例えば、機械学習モデルがニューラルネットワークである場合、モデル情報144は、各層の重み及びバイアスを含む。また、機械学習モデルが回帰モデルである場合、モデル情報144はパラメータとして回帰係数を含む。
【0038】
制御部15は、情報処理装置10全体を制御する。制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)等の電子回路や、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路である。
【0039】
また、制御部15は、各種の処理手順を規定したプログラムや制御データを格納するための内部メモリを有し、内部メモリを用いて各処理を実行する。また、制御部15は、各種のプログラムが動作することにより各種の処理部として機能する。例えば、制御部15は、収集部151、更新部152、計算部153、及び表示制御部154を有する。
【0040】
収集部151は、プラント20a又はプラント20bからデータを収集する。収集部151は、収集したデータを収集データ履歴DB141に格納する。
【0041】
更新部152は、機械学習モデル(予測モデル及び要因モデル)のパラメータを更新する。例えば、更新部152は、予測モデルによって出力された設定値と、実際にオペレータが設定した設定値との差分が最小化されるように、モデル情報144に含まれる予測モデルのパラメータを更新する。
【0042】
計算部153は、予測モデルに説明変数(収集されたデータ)を入力することにより目的変数(設定値)を計算する。例えば、計算部153は、予測モデルに、履歴DB122の温度、圧力、及びCO2濃度を入力し、設定値を出力させる(予測処理)。
【0043】
また、計算部153は、要因モデルに要因を入力し、異常を検知するための値を計算する(異常検知処理)。要因モデル及び異常検知の方法については後述する。
【0044】
表示制御部154は、表示部13を制御し、ユーザに情報を提供するための画面を表示させる。
【0045】
[第1の実施形態の処理の流れ]
図3を用いて、情報処理装置10の処理の流れを説明する。
図3は、情報処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【0046】
まず、収集部151は、プラント20a又はプラント20bからセンサ値等のデータを収集する(ステップS1)。収集部151は、収集したデータを、時刻とともに収集データ履歴DB141に格納する。収集部151によって収集されるデータには、少なくとも予測モデルの説明変数が含まれる。
【0047】
次に、情報処理装置10は、予測処理(ステップS2)を実行する。予測処理では、計算部153は、モデル情報144を基に構築した予測モデル144aに、収集データ履歴DB141に格納された説明変数を入力する。例えば、説明変数は、温度、圧力、CO2濃度等を含む。
【0048】
計算部153は、予測モデル144aに目的変数である操作量を出力させるとともに、要因の推論を行う(ステップS3)。
【0049】
予測モデル144aは、事前に訓練済みの線形モデル又はMLP(Multilayer perceptron)モデルであってもよいし、JITであってもよい。予測モデル144aがJITである場合、収集データ履歴DB141に格納された過去のデータが利用されるため、事前の訓練は不要である。
【0050】
例えば、予測モデル144aが重回帰モデルである場合、計算部153は、予測モデル144aの要因として、各説明変数の寄与率(回帰分析における回帰係数)を計算する。
【0051】
ここで、表示制御部154は、予測モデル144aによって出力された操作量を表示する(ステップS4)。例えば、表示制御部154は、ユーザが使用する端末装置21に操作量を表示する画面を提供する。
【0052】
続いて、情報処理装置10は、異常検知処理(ステップS5)を実行する。異常検知処理では、計算部153は、モデル情報144を基に構築した要因モデル144bに、予測モデル144aの要因を入力する。予測モデル144aの要因は、要因履歴DB142に格納されているものとする。そして、要因モデル144bは、入力された要因を再構成する。計算部153は、要因モデル144bに入力された要因と、再構成された要因との誤差(再構成誤差)を計算する(ステップS6)。
【0053】
再構成誤差が閾値以上である場合、情報処理装置10は、予測モデル144aに異常が発生していることを検知する(ステップS7、Yes)。一方、再構成誤差が閾値以上でない場合、情報処理装置10は、予測モデル144aに異常が発生していることを検知せずに(ステップS7、No)、ステップS1に戻りデータの収集を続行する。
【0054】
異常が検知された場合、表示制御部154は、管理画面において異常部分(例えば、所定の期間の時系列データにおける、異常が検知された時刻又は期間)を強調表示し(ステップS8)、また、異常の詳細を表示する(ステップS9)。管理画面については後に説明する。
【0055】
また、情報処理装置10は、要因履歴DB142に格納された要因の履歴のうち、異常が検知されたときの要因と類似する要因の履歴を検索し(ステップS10)、コメントDB143に格納されたコメントとともに表示する(ステップS11)機能を提供する。さらに、情報処理装置10は、コメントDB143に格納された要因に対し、ユーザがコメントを追加する機能を提供する(ステップS12)。
【0056】
図4を用いて、コメントを追加する機能について説明する。
図4は、コメントについて説明する図である。
【0057】
図4に示すように、コメントDB143には、時刻、説明変数、窓内ラグと対応付けられて、ユーザが入力したコメントが格納される。
【0058】
ここで、情報処理装置10は、
図3で示した予測処理を1分ごとに行うものとする。その際、情報処理装置10は、現在を含む過去n回(n分)のデータを入力として用いる。また、情報処理装置10は、1回のデータ収集のたびに、複数の説明変数(
図4の例では5個)のそれぞれの値を収集する。これにより、1分ごとに、各説明変数に対応するインデクスからなる窓の幅がnである時系列データ(以降、窓データ)が得られることになる。
【0059】
このため、コメントDB143の時刻、説明変数、窓内ラグにより、コメントの対象のデータが特定される。例えば、
図4に示すように、時刻「2022-10-20 15:24:00」、「2022-10-20 15:25:00」、「2022-10-20 22:45:00」に対応する窓データが存在しているものとする。また、n=10であるものとする。このとき、各窓データには、5(説明変数の数)×10(n=10)=50個のデータが含まれる。
【0060】
時刻「2022-10-20 15:24:00」における、説明変数「BB2222」の窓内ラグ「1」のデータは、時刻「2022-10-20 15:24:00」の窓データのうち、先頭から左に「1」番目の列(右端の列)の、2行目(説明変数「BB2222」の行)のデータ(セル)に相当する。そして、当該データには、「定期修理開始」というコメントが追加されている。
【0061】
表示制御部154は、
図3のステップS10において、
図4に示す窓データ及びコメントDB143を画面に表示させる。すなわち、表示制御部154は、説明変数の要因に類似する要因、及び、説明変数の要因に対して追加されたコメントを画面に表示させる。なお、このとき、表示制御部154は、行列形式で表現される窓内の要因の要素をベクトルに再構成し、当該再構成したベクトル間のユークリッド距離により要因間の類似度を求めることができる。表示制御部154は、ユークリッド距離に限らず、コサイン類似度等の他の尺度により類似度を求めてもよい。
【0062】
これにより、例えば時刻「2022-10-20 15:24:00」に行われた予測処理で異常が検知された場合、同じタイミングで「定期修理開始」が発生したという情報がユーザに提供される。これにより、情報処理装置10は、ユーザが異常の原因を推測し、対応を決定することを支援することができる。
【0063】
図5は、管理画面の例を示す図である。表示制御部154は、ステップS8及びS9において、管理画面131を表示する。
【0064】
管理画面131の領域131aには、時刻ごとの予測モデル144aの出力値(操作量)が、折れ線グラフにより表示される。
【0065】
管理画面131の領域131bには、時刻ごとの予測モデル144aに入力された複数の説明変数の値のそれぞれが、折れ線グラフにより表示される。
【0066】
管理画面131の領域131cには、時刻ごとの予測モデル144aに入力された複数の説明変数の再構成誤差のそれぞれに対応するセルを含む窓データが表示される。領域131cには、現在時刻に対応する窓データが表示される。表示制御部154は、再構成誤差が大きい説明変数及び時刻に対応するセルを強調表示する。例えば、表示制御部154は、セルの塗りつぶしの色を特定の色(例えば赤色)に変化させることで強調表示を行う。
【0067】
このように、表示制御部154は、時刻ごとの説明変数を画面の領域131cに表示させ、領域131cにおける、再構成誤差が閾値以上である時刻及び説明変数に対応する部分を強調表示する。
【0068】
管理画面131の領域131dには、要因が類似する過去の時刻及び関連する情報(例えば、目的変数の測定値)がテーブル形式で表示される。なお、表示制御部154は、
図4の場合と同様に、類似する要因を、ベクトル間のユークリッド距離等により検索することができる。
図5の例では、領域131dに、時刻「2022-10-20 15:24:00」及び「2022-10-20 15:25:00」が表示されている。また、領域131dの時刻は、クリックにより選択可能である。
【0069】
管理画面131の領域131eには、領域131dで選択された時刻の前後の所定の期間における、説明変数の折れ線グラフが表示される。
【0070】
管理画面131の領域131fには、領域131dで選択された時刻に対応する窓データが表示される。表示制御部154は、説明変数として、多変量時系列データを時間幅で持った窓で切り取った入力を与える場合、
図3のステップS8において、当該窓を領域131fに表示し、さらに異常が検知された説明変数の窓内の位置(例えば、時刻)を強調表示する。また、表示制御部154は、領域131fの窓データのうち、コメントDB143にコメントが追加済みのデータに対応するセルを強調表示する。
【0071】
図6を用いて、要因モデル144bについて説明する。
図6は、要因モデルについて説明する図である。
【0072】
図6に示すように、要因モデル144bは、AE(Autoencoder)である。すなわち、要因モデル144bは、入力された各説明変数の要因からなるベクトル(例えば、C
t=(0.2,0.1,0.6,0.9,0.3))が入力されると、エンコーダ(AEの前半部分)により当該ベクトルの次元を削減し、さらにデコーダ(AEの後半部分)により次元を基に戻したベクトル(例えば、C
t
*=(0.2,0.1,0.5,0.9,0.3))を生成する。
【0073】
計算部153は、要因モデル144bに入力されたベクトルcと、要因モデル144bによって出力されたベクトルc*との再構成誤差(loss)を、(1)式のように計算する。
【0074】
【0075】
このように、計算部153は、入力された複数の説明変数(例えば、センサデータ)を基に目的変数(例えば、操作量)を出力する予測モデル144aにおける、説明変数の要因(例えば、寄与度)の再構成誤差を計算する。
【0076】
また、要因モデル144bは、予測モデル144aが正常であるときの要因を用いて、教師なし学習により学習済みである。すなわち、予測モデル144aが正常であるときの要因が要因モデル144bに入力された場合、再構成誤差は小さくなる。
【0077】
一方で、予測モデル144aが正常であるときの要因が要因モデル144bに入力された場合、再構成誤差は大きくなる。
【0078】
情報処理装置10は、このような再構成誤差の性質を利用して、再構成誤差が閾値異常である場合に異常を検知する。
【0079】
また、表示制御部154は、再構成誤差が閾値以上である場合、予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる(例えば、管理画面131の領域131c)。
【0080】
[第1の実施形態の効果]
これまで説明してきたように、計算部153は、入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルにおける、説明変数の要因の再構成誤差を計算する。表示制御部154は、再構成誤差が閾値以上である場合、予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる。これにより、情報処理装置10は、例えばプラントの運転を支援する機械学習モデルの出力に異常がある場合に、当該以上の要因に関する情報をユーザに知らせることができる。
【0081】
また、計算部153は、説明変数の要因を表す第1のベクトルと、第1のベクトルをオートエンコーダに入力して得られた第2のベクトルとの誤差を再構成誤差として計算する。これにより、情報処理装置10は、教師なし学習により訓練可能なオートエンコーダを使って予測モデルの異常を検知することができる。
【0082】
表示制御部154は、時刻ごとの説明変数を画面の領域に表示させ、領域における、再構成誤差が閾値以上である時刻及び説明変数に対応する部分を強調表示する。これにより、ユーザは予測モデルに異常が発生した時刻及び関連する説明変数を直感的に把握することができる。
【0083】
表示制御部154は、説明変数の要因に類似する要因、及び、説明変数の要因に対して追加されたコメントを画面に表示させる。これにより、情報処理装置10は、ユーザが異常の原因を推測し、対応を決定することを支援することができる。
【0084】
[システム構成等]
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示のように構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散及び統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。さらに、各装置にて行われる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU(Central Processing Unit)及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。なお、プログラムは、CPUだけでなく、GPU等の他のプロセッサによって実行されてもよい。
【0085】
また、実施形態において説明した各処理のうち、自動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行うこともでき、あるいは、手動的に行われるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行うこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0086】
[プログラム]
一実施形態として、情報処理装置10は、パッケージソフトウェアやオンラインソフトウェアとして上記の情報処理を実行する情報処理プログラムを所望のコンピュータにインストールさせることによって実装できる。例えば、上記の情報処理プログラムを情報処理装置に実行させることにより、情報処理装置を情報処理装置10として機能させることができる。ここで言う情報処理装置には、デスクトップ型又はノート型のパーソナルコンピュータが含まれる。また、その他にも、情報処理装置には、タブレット型端末、スマートフォン、携帯電話機やPHS(Personal Handyphone System)等の移動体通信端末、さらには、PDA(Personal Digital Assistant)等のスレート端末等がその範疇に含まれる。
【0087】
また、情報処理装置10は、ユーザが使用する端末装置をクライアントとし、当該クライアントに上記の情報処理に関するサービスを提供するサーバとして実装することもできる。例えば、サーバは、プラントで収集されたデータを入力とし、予測モデルの異常検知結果を出力とする情報処理サービスを提供するサーバ装置として実装される。この場合、サーバは、Webサーバとして実装することとしてもよいし、アウトソーシングによって上記の情報処理に関するサービスを提供するクラウドとして実装することとしてもかまわない。
【0088】
図7は、情報処理プログラムを実行するコンピュータの構成例を示す図である。コンピュータ1000は、例えば、メモリ1010、CPU1020を有する。また、コンピュータ1000は、ハードディスクドライブインタフェース1030、ディスクドライブインタフェース1040、シリアルポートインタフェース1050、ビデオアダプタ1060、ネットワークインタフェース1070を有する。これらの各部は、バス1080によって接続される。
【0089】
メモリ1010は、ROM(Read Only Memory)1011及びRAM(Random Access Memory)1012を含む。ROM1011は、例えば、BIOS(Basic Input Output System)等のブートプログラムを記憶する。ハードディスクドライブインタフェース1030は、ハードディスクドライブ1090に接続される。ディスクドライブインタフェース1040は、ディスクドライブ1100に接続される。例えば磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能な記憶媒体が、ディスクドライブ1100に挿入される。シリアルポートインタフェース1050は、例えばマウス1110、キーボード1120に接続される。ビデオアダプタ1060は、例えばディスプレイ1130に接続される。
【0090】
ハードディスクドライブ1090は、例えば、OS1091、アプリケーションプログラム1092、プログラムモジュール1093、プログラムデータ1094を記憶する。すなわち、情報処理装置10の各処理を規定するプログラムは、コンピュータにより実行可能なコードが記述されたプログラムモジュール1093として実装される。プログラムモジュール1093は、例えばハードディスクドライブ1090に記憶される。例えば、情報処理装置10における機能構成と同様の処理を実行するためのプログラムモジュール1093が、ハードディスクドライブ1090に記憶される。なお、ハードディスクドライブ1090は、SSD(Solid State Drive)により代替されてもよい。
【0091】
また、上述した実施形態の処理で用いられる設定データは、プログラムデータ1094として、例えばメモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶される。そして、CPU1020は、メモリ1010やハードディスクドライブ1090に記憶されたプログラムモジュール1093やプログラムデータ1094を必要に応じてRAM1012に読み出して、上述した実施形態の処理を実行する。
【0092】
なお、プログラムモジュール1093やプログラムデータ1094は、ハードディスクドライブ1090に記憶される場合に限らず、例えば着脱可能な記憶媒体に記憶され、ディスクドライブ1100等を介してCPU1020によって読み出されてもよい。あるいは、プログラムモジュール1093及びプログラムデータ1094は、ネットワーク(LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等)を介して接続された他のコンピュータに記憶されてもよい。そして、プログラムモジュール1093及びプログラムデータ1094は、他のコンピュータから、ネットワークインタフェース1070を介してCPU1020によって読み出されてもよい。
【符号の説明】
【0093】
10 情報処理装置
11 通信部
12 入力部
13 表示部
14 記憶部
15 制御部
151 収集部
152 更新部
153 計算部
154 表示制御部
【手続補正書】
【提出日】2024-02-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルであって、観測されたデータの中から抽出したデータを用いて逐次学習が行われる予測モデルにおける、前記説明変数の要因を表す第1のベクトルと、前記第1のベクトルを要因モデルに入力して得られたベクトルであって、前記第1のベクトルと次元が等しい第2のベクトルと、の誤差を再構成誤差として計算する計算部と、
前記再構成誤差が閾値以上である場合、前記予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる表示制御部と、
を有することを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、時刻ごとの前記説明変数を画面の領域に表示させ、前記領域における、前記再構成誤差が閾値以上である時刻及び説明変数に対応する部分を強調表示することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記説明変数の要因に類似する要因、及び、前記説明変数の要因に対して追加されたコメントを画面に表示させることを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
情報処理装置によって実行される情報処理方法であって、
入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルであって、観測されたデータの中から抽出したデータを用いて逐次学習が行われる予測モデルにおける、前記説明変数の要因を表す第1のベクトルと、前記第1のベクトルを要因モデルに入力して得られたベクトルであって、前記第1のベクトルと次元が等しい第2のベクトルと、の誤差を再構成誤差として計算する計算工程と、
前記再構成誤差が閾値以上である場合、前記予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる表示制御工程と、
を含むことを特徴とする情報処理方法。
【請求項5】
入力された複数の説明変数を基に目的変数を出力する予測モデルであって、観測されたデータの中から抽出したデータを用いて逐次学習が行われる予測モデルにおける、前記説明変数の要因を表す第1のベクトルと、前記第1のベクトルを要因モデルに入力して得られたベクトルであって、前記第1のベクトルと次元が等しい第2のベクトルと、の誤差を再構成誤差として計算する計算ステップと、
前記再構成誤差が閾値以上である場合、前記予測モデルが異常であることを示す情報を画面に表示させる表示制御ステップと、
をコンピュータに実行させることを特徴とする情報処理プログラム。