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特開2024-119667計画作成装置、計画作成プログラム、および計画作成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119667
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】計画作成装置、計画作成プログラム、および計画作成方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 46/00 20060101AFI20240827BHJP
   B22D 11/16 20060101ALI20240827BHJP
   G05B 19/418 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B22D46/00
B22D11/16 Z
G05B19/418 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026732
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000191076
【氏名又は名称】日鉄ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】前久 景星
(72)【発明者】
【氏名】山本 政
(72)【発明者】
【氏名】吾郷 正俊
(72)【発明者】
【氏名】足立 巧
(72)【発明者】
【氏名】永井 秀稔
【テーマコード(参考)】
3C100
4E004
【Fターム(参考)】
3C100AA12
3C100AA16
3C100BB05
3C100BB13
3C100EE10
4E004MC30
(57)【要約】
【課題】計算規模を抑制しながら、キャスト枠設計をより精度よく行う技術を提供する。
【解決手段】計画作成装置(10)は、連続鋳造により鋳造しようとする第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画の初期解を取得する初期解取得部(41)と、初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を一回以上実行する近傍探索部(42)と、探索処理の各回において探索された近傍解のうち初期解よりも評価が高い解を出力する解出力部(43)と、を含む。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続鋳造により鋳造しようとする第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、前記第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画を作成する計画作成装置であって、
前記編成計画の初期解を取得する初期解取得部と、
前記初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を一回以上実行する近傍探索部と、
前記探索処理の各回において探索された前記近傍解のうち前記初期解よりも評価が高い解を出力する解出力部と、
を含む、計画作成装置。
【請求項2】
前記初期解取得部は、前記初期解を、前記第一の数の仮想鋼材が製造条件に基づいて集約された、前記第一の数より少ない第三の数の単位グループを編成単位として作成することにより取得する、
請求項1に記載の計画作成装置。
【請求項3】
前記編成計画における各キャスト枠は、一以上の鋼種グループを含み、各鋼種グループは、当該鋼種グループに対応する鋼種が関連付けられた一以上の仮想鋼材を含み、
前記近傍探索部は、前記近傍解として、前記初期解または他の近傍解から、少なくとも一つの仮想鋼材を、当該仮想鋼材を含む鋼種グループに対して鋼種が類似する他の鋼種グループであって、前記制約条件を満たす他の鋼種グループに移動した近傍解を探索する、
請求項1または2に記載の計画作成装置。
【請求項4】
前記近傍探索部は、仮想鋼材と、当該仮想鋼材を移動する場合に移動先の候補となる前記他の鋼種グループとを関連付けた探索リストを作成し、当該探索リストに基づいて前記近傍解を探索する、
請求項3に記載の計画作成装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の計画作成装置としてコンピュータを機能させるための計画作成プログラムであって、
前記初期解取得部、前記近傍探索部、および前記解出力部としてコンピュータを機能させるための計画作成プログラム。
【請求項6】
連続鋳造により鋳造しようとする第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、前記第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画を作成する計画作成方法であって、
前記編成計画の初期解を取得する初期解取得ステップと、
前記初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を一回以上実行する近傍探索ステップと、
前記探索処理の各回において探索された前記近傍解のうち前記初期解よりも評価が高い解を出力する解出力ステップと、
を含む、計画作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャスト枠設計を行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造により複数の鋼材を製造する際には、予め、製造予定の複数の鋼材に対応する複数の仮想鋼材を、それぞれが連続鋳造単位である複数のキャスト枠に集約する計画作業(以下、キャスト枠設計)が行われる。連続鋳造では、溶鋼のチャージ数を増やすことにより、鋼種切り替え時の不良部発生数を少なくしたり、鋳造再開に要する準備時間を短く(回数を少なく)したりすることができる。このため、一のキャスト枠には、できるだけ多くの仮想鋼材を含めることが望ましい。一方、製造予定の複数の鋼材の中には、製造条件(成分、形状、熱延希望日等)が異なるものが混在する。このため、同一のキャスト枠内に含めることのできる仮想鋼材には制限がある。すなわち、キャスト枠設計においては、こうしたトレードオフを考慮しつつ仮想鋼材を集約することが求められる。また、キャスト枠設計では、数百~千といった多数の仮想鋼材を扱うのが一般的である。仮想鋼材の数が増えれば、一のキャスト枠に含まれる仮想鋼材の組み合わせ数は膨大なものとなる。
【0003】
そこで、従来から、コンピュータを用いてキャスト枠設計を行う各種技術が提案されている。特許文献1には、グラフネットワークを用いてキャスト枠設計を行う技術が記載されている。当該技術は、各仮想鋼材をノードで表し、同じキャスト枠に含めることが可能な仮想鋼材に対応するノード間をエッジで接続し、各エッジに評価に応じた重みを付したグラフネットワークを作成する。また、当該技術は、当該グラフネットワークから、評価の高いノード群をキャスト枠として抽出することによりキャスト枠の編成計画を作成する。特許文献2には、キャスト枠設計を集合分割問題として定式化することによりキャスト枠設計を行う技術が記載されている。当該技術は、製造条件が類似する複数の仮想鋼材をまとめた単位グループを作成し、当該単位グループを編成単位として最適な組み合わせを求解することにより、キャスト枠の編成計画を作成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-133755号公報
【特許文献2】特開2020-107277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載された技術では、仮想鋼材の数が多くなるほど、グラフネットワークを生成する計算量が増加するとともに、グラフネットワークから抽出可能なノード群の組み合わせ数も増加するため、計算規模が膨大になるという問題がある。特許文献2に記載された技術では、複数の仮想鋼材をまとめた単位グループを編成単位とすることで計算規模を低減できるが、当該単位グループより細かい単位でキャスト枠を編成できないため、キャスト枠設計の精度に改善の余地がある。
【0006】
本発明の一態様は、上述の課題を解決するためになされたもので、計算規模を抑制しながら、キャスト枠設計を精度よく行う技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る計画作成装置は、連続鋳造により鋳造しようとする第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、前記第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画を作成する計画作成装置であって、前記編成計画の初期解を取得する初期解取得部と、前記初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を一回以上実行する近傍探索部と、前記探索処理の各回において探索された前記近傍解のうち前記初期解よりも評価が高い解を出力する解出力部と、を含む。
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る計画作成プログラムは、上述した計画作成装置としてコンピュータを機能させるための計画作成プログラムであって、前記初期解取得部、前記近傍探索部、および前記解出力部としてコンピュータを機能させる。
【0009】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る計画作成方法は、連続鋳造により鋳造しようとする第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、前記第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画を作成する計画作成方法であって、前記編成計画の初期解を取得する初期解取得ステップと、前記初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を一回以上実行する近傍探索ステップと、前記探索処理の各回において探索された前記近傍解のうち前記初期解よりも評価が高い解を出力する解出力ステップと、を含む。
【発明の効果】
【0010】
本発明の一態様によれば、計算規模を抑制しながら、キャスト枠設計を精度よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態におけるキャスト枠の編成計画の一例を示す模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係る計画作成装置の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る計画作成方法の流れを説明するフロー図である。
図4図3に示す初期解作成処理を説明するための模式図である。
図5】本発明の一実施形態における類似鋼種グループリストおよび探索リストの一例を示す図である。
図6図3に示す近傍探索処理により得られた最適解を初期解と比較する模式図である。
図7】本発明の一実施形態を用いた実験において作成された初期解の精度および得られた最適解の精度を比較した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔実施形態〕
以下、本発明の一実施形態に係る計画作成装置10について、詳細に説明する。計画作成装置10は、連続鋳造により鋳造しようとする第一の数(2以上)の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、第一の数より少ない第二の数(1以上)のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画を作成する装置である。
【0013】
<キャスト枠の編成計画>
図1は、キャスト枠の編成計画の一例を示す模式図である。編成計画は、キャスト枠編成の対象となる複数の仮想鋼材の鋳造順番を定めたものである。図1に示すように、編成計画は、複数のキャスト枠C1、C2、…を含む。各キャスト枠C1、C2、…を特に区別しない場合には、単にキャスト枠と記載する。キャスト枠は、鋼材の連続鋳造を行う単位である。各キャスト枠は、複数の仮想鋼材SLAB1、SLAB2、…を含んでいる。各仮想鋼材SLAB1、SLAB2、…を特に区別しない場合には、単に仮想鋼材と記載する。仮想鋼材とは、鋳造しようとする鋼材を示す情報である。例えば、仮想鋼材は、鋳造しようとする鋼材を識別する識別情報を有し、鋼種、形状、重量、等といった、キャスト枠設計に必要となる情報が関連付けられている。図1には、二つのキャスト枠を示しているが、一度に作成する編成計画に含まれるキャスト枠の個数は一つであってもよいし、三以上であってもよい。
【0014】
各キャスト枠は、一以上の鋼種グループを含み、各鋼種グループは、当該鋼種グループに対応する鋼種が関連付けられた一以上の仮想鋼材を含む。鋼種グループとは、同じ鋼種としてみなせる仮想鋼材のグループである。例えば、図1では、キャスト枠C1は、3つの鋼種グループGR1、GR2、GR3を含み、キャスト枠C2は、2つの鋼種グループGR4、GR5を含む。各鋼種グループGR1、GR2、…を特に区別しない場合には、単に鋼種グループと記載する。鋼種グループには、鋼種が対応付けられている。鋼種とは、換言すると材質である。同一の鋼種に対応する鋼種グループの個数は、1または複数である。例えば、図1に示すように、鋼種グループGR1、GR4に、同一の鋼種Aが対応付けられ、鋼種グループGR2、GR5に、鋼種Aとは異なる鋼種Bが対応付けられ、鋼種グループGR3に、鋼種A、Bとは異なる鋼種Cが対応付けられていてもよい。各キャスト枠においては、含まれる鋼種グループの順序、および、各鋼種グループに含まれる仮想鋼材の順序が定められている。これらの順序は、対応する鋼材をこの順に連続鋳造することを示している。
【0015】
また、各鋼種グループは、一以上のチャージを含む。一チャージとは、連続鋳造を行う装置に投入される鍋一杯分の溶鋼である。例えば、図1では、鋼種グループGR1はチャージCH1、CH2を含み、鋼種グループGR2はチャージCH3を含み、鋼種グループGR3はチャージCH4、CH5、CH6を含み、鋼種グループGR4はチャージCH7、CH8を含み、鋼種グループGR5はチャージCH9を含む。また、チャージCH1には、SLAB1~SLAB4の仮想鋼材が割り当てられている。チャージに仮想鋼材が割り当てられるとは、当該チャージにより投入された溶鋼により当該仮想鋼材に対応する鋼材を鋳造することを指す。各チャージCH1、CH2、…を特に区別しない場合には、単にチャージと記載する。
【0016】
例えば、各キャスト枠は、制約条件を満たすよう設計されてもよい。制約条件とは、例えば、キャスト枠の数、各キャスト枠に含むことができる鋼種グループの数、チャージ数、隣り合う仮想鋼材の巾差/巾比等に関する条件、等を含む。
【0017】
このようなキャスト枠の編成計画は、請求余剰を含み得る。図1の例では、領域Rは、請求余剰を示している。請求余剰は、一チャージで鋳造可能な鋼材の合計重量から、当該チャージに割り当てられた仮想鋼材に対応する鋼材の合計重量を差し引いた量である。請求余剰が大きいキャスト枠は製造コストが高くなるため、請求余剰は小さいことが望ましい。例えば、図1では、領域Rが示す請求余剰は、チャージCH8の大部分を占めており、製造コストを高くする一因となる。本実施形態に係る計画作成装置10は、精度の高い編成計画を作成することにより、一例としてこのような請求余剰を少なくすることができる。
【0018】
<計画作成装置の構成>
図2は、計画作成装置10の構成を示すブロック図である。図2に示すように、計画作成装置10は、入力部1と、出力部2と、記憶部3と、演算部4と、を含む。
【0019】
[入力部]
入力部1は、外部から取得した情報を演算部4に入力する。入力部1の一例としては、例えば、他の装置から情報を受信する通信モジュール、他の装置と接続される端子、記録媒体から情報を読み込むドライブ、ユーザが操作する操作機器、またはこれらの組み合わせが挙げられる。操作機器の一例としては、キーボード、マウス、タッチパネル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0020】
[出力部]
出力部2は、演算部4が生成した情報を外部に出力する。出力部2の一例としては、例えば、他の装置に情報を送信する通信モジュール、他の装置と接続される端子、記録媒体へ情報を書き込むドライブ、画像を表示するディスプレイ、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0021】
[記憶部]
記憶部3は、計画作成プログラム、および、当該計画作成プログラムを演算部4が実行する際に使用する各種のデータを記憶する。
【0022】
[演算部]
演算部4は、計画作成装置10の各部を統括して制御する。また、演算部4は、記憶部3に記憶された計画作成プログラムを実行することにより、初期解取得部41と、近傍探索部42と、最適解出力部43と、として機能する。最適解出力部43は、特許請求の範囲に記載した解出力部の一例である。
【0023】
初期解取得部41は、編成計画の初期解を取得する。初期解は、第一の数の仮想鋼材が製造条件に基づいて集約された、第一の数より少ない第三の数の単位グループを編成単位として編成されたものである。ここで、第三の数は自然数である。なお、第三の数は、二以上であってもよい。これにより、後述するように初期解取得部41が初期解を作成する処理を行う場合には、当該処理の計算量を削減することができる。例えば、単位グループは、製造条件が類似する仮想鋼材を集約したものであってもよい。製造条件とは、一つの編成単位として扱うことが可能な条件を示す。製造条件の一例としては、成分、重量、形状、納期、熱延希望日、等に関する条件が挙げられる。なお、製造条件は、これらの例に限らず、一つの編成単位として扱ってよい複数の仮想鋼材を一つの単位グループとするための条件であれば、その他の条件であってもよい。なお、ある単位グループに含まれる仮想鋼材の個数と、他の単位グループに含まれる仮想鋼材の個数とは、同じであってもよいし異なっていてもよい。初期解においては、単位グループより小さい単位でキャスト枠が編成されていないため、単位グループより小さい単位で編成する場合と比べて請求余剰が大きくなっている可能性がある(詳細は図6を用いて後述する)。
【0024】
例えば、初期解取得部41は、そのような初期解を示す情報を、入力部1を介して取得してもよく、初期解を作成することにより取得してもよい。本実施形態では、初期解を作成する場合を中心に説明する。初期解を作成する処理には、公知の技術を採用可能である。一例として、初期解取得部41は、初期解を、第一の数の仮想鋼材が製造条件に基づいて集約された、第一の数より少ない第三の数の単位グループを編成単位として作成することにより取得する。初期解を作成する処理の具体例については、後述する「計画作成方法S10の流れ」において説明する。
【0025】
近傍探索部42は、初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を1回以上実行する。例えば、近傍探索部42は、まず、初期解を現在解とする。また、近傍探索部42は、現在解から、少なくとも一つの仮想鋼材に紐づくキャスト枠及び鋼種グループを制約条件のもとで変更した近傍解を探索することにより、近傍解を新たな現在解とする(すなわち、現在解を更新する)探索処理を一回以上実行する。制約条件としては、「キャスト枠の編成計画」において前述した制約条件と同一の条件が用いられてもよいし、少なくとも一部が異なる条件が用いられてもよい。また、制約条件としては、前述した制約条件と全て異なる条件が用いられてもよい。つまり、初期解が単位グループを編成単位として作成されている場合であっても、近傍探索部42は仮想鋼材の単位で上記の変更を行う。よって、初期解と近傍解とは、少なくとも1か所において仮想鋼材の並び(位置)が異なる部分が存在することによって、解が異なっている。ここで、一回目の探索処理においては、近傍探索部42は、初期解の近傍解を探索する。また、2回目以降の探索処理が行われる場合もある。2回目以降の探索処理においては、近傍探索部42は、前回の探索処理において更新した現在解の近傍解を探索する。なお、複数の近傍解を探索する場合に、そのうちの少なくとも一部を初期解から探索してもよい。
【0026】
具体的には、近傍探索部42は、現在解(初期解、または、他の近傍解)から、少なくとも一つの仮想鋼材を、当該仮想鋼材を含む鋼種グループに対して鋼種が類似する他の鋼種グループであって、制約条件を満たす他の鋼種グループに移動した近傍解を探索する。例えば、移動先となる他の鋼種グループの鋼種は、移動元である当該鋼種グループの鋼種と同一であってもよいし、当該仮想鋼材が出鋼可能な類似の鋼種であってもよい。「当該仮想鋼材が出鋼可能な類似の鋼種」とは、例えば、当該仮想鋼材より上位の鋼種であってもよい。なお、探索処理の過程において、既に移動元の鋼種が当該仮想鋼材より上位となっている可能性もある、この場合、移動先の鋼種は、少なくとも当該仮想鋼材の鋼種と同一または上位であれば、移動元の鋼種より上位であってもよいし、移動元の鋼種より下位であってもよい。本実施形態では、制約条件は、そのような他の鋼種グループに仮想鋼材を移動することで、当該類似する鋼種を流用することができる。例えば、近傍探索部42は、仮想鋼材と、当該仮想鋼材を移動する場合に移動先の候補となる他の鋼種グループとを関連付けた探索リストを作成し、当該探索リストに基づいて近傍解を探索してもよい。なお、探索リストは、第一の数の仮想鋼材のうち、少なくとも一つの仮想鋼材について移動先の候補を含んでいればよい。
【0027】
また、近傍探索部42は、探索した近傍解を採用するか否かを判断し、採用すると判断した場合には、近傍解を新たな現在解とする。なお、近傍探索部42は、近傍解が現在解より改善されている場合に加えて、改善されていない場合でも後述する判断基準を満たす場合には、近傍解を新たな現在解とする。現在解を更新する処理の具体例については、後述する「計画作成方法S10の流れ」において説明する。
【0028】
ここで、移動先となり得る他の鋼種グループは、移動前の鋼種グループと同じキャスト枠に含まれていてもよいし、異なるキャスト枠に含まれていてもよい。いずれの場合も、仮想鋼材を移動させる探索処理においては、初期解における各キャスト枠に含まれる鋼種グループの順序は変更されない。鋼種グループの順序を変更しない範囲で近傍解を探索することで、近傍解を探索する処理の計算規模を抑制することができる。
【0029】
最適解出力部43は、探索処理の各回において探索された近傍解のうち初期解より評価が高い解を出力する。出力する解の個数は、1つであってもよいし、例えば評価が高いものから規定数など複数であってもよい。本例示的実施形態では、最適解出力部43は、探索された近傍解のうち最も評価が高い最適解を出力するものとする。ここで、各回において近傍探索部42により更新された現在解は、必ずしも前回より改善されているとは限らない。換言すると、更新を繰り返すほど現在解が改善されるとは限らない。そのため、最適解出力部43は、各回において探索された近傍解(現在解として採用された近傍解)のうち最適解を特定して出力する。例えば、最適解出力部43は、初期解を仮の最適解として記憶する。また、最適解出力部43は、近傍探索部42が探索処理を行う度に、更新された現在解の評価指標が仮の最適解の評価指標よりも良いか否かを評価し、良い場合には、当該更新された現在解を新たな仮の最適解として記憶する。また、最適解出力部43は、所定の終了条件が満たされた場合に記憶している仮の最適解を、編成計画の最適解として出力する。なお、評価指標の一例としては、キャスト枠数、各キャスト枠に含まれる鋼種の数、各キャスト枠に含まれるチャージ数等の各項目から算出される評価指標が挙げられる。
【0030】
<計画作成方法の流れ>
以上のように構成された計画作成装置10は、本実施形態に係る計画作成方法S10を実行する。図3は、計画作成方法S10の流れを説明するフロー図である。図3に示すように、計画作成方法S10は、初期解作成処理S100と、近傍探索処理S200と、を含む。
【0031】
[初期解作成処理]
初期解作成処理S100は、初期解を、単位グループを編成単位として作成することにより取得する初期解取得ステップの一例である。ここでは、初期解作成処理S100の一例として、集合分割問題により求解する例について説明する。
【0032】
初期解作成処理S100は、ステップS110~S130を含む。以下では、ステップS110~S130について、図3に加えて図4を参照して説明する。図4は、初期解作成処理S100を示す模式図である。
【0033】
ステップS110は、単位グループを作成するステップである。ステップS110において、初期解取得部41は、鋳造しようとする第一の数の仮想鋼材を、製造条件に基づいて集約した第三の数の単位グループを作成する。第三の数は第一の数より小さい数である。また、第三の数は第二の数より大きい数である。これにより、集合分割問題により定式化する集合の要素数を削減する。単位グループは、初期解作成において分割されることのない最小単位であり、単位グループに含まれる仮想鋼材は必ず同じキャスト枠に含まれる。製造条件としては、上述したように、対応する鋼材の成分、重量、形状、熱延希望日、納期等に関する条件が挙げられる。例えば、初期解取得部41は、製造条件が類似する複数の仮想鋼材を同一の単位グループに集約する。
【0034】
ここで、同一の単位グループに含める仮想鋼材を決定するための製造条件の類似性の判断基準について説明する。計算規模を抑制するとの観点からは、単位グループの個数である第三の数はより少ないことが望ましく、そのためには、製造条件の類似性の判断基準をより緩やかにして1つの単位グループに含める仮想鋼材の数を多くすることが望ましい。一方で、初期解の精度を高くすることで、その後の近傍探索により求める最適解の精度を高くすることができる。また、初期解の精度をより高くすることにより、その後の近傍探索における繰り返し処理の回数を削減して計算規模を抑制できる可能性もある。初期解の精度を高くするとの観点からは、単位グループの個数である第三の数はより多いことが望ましい。そのためには、製造条件の類似性の判断基準をより厳しくして1つの単位グループに含める仮想鋼材の数を少なくすることが望ましい。したがって、製造条件の類似性の判断基準は、これらの両方の観点を考慮して設定される。
【0035】
ステップS120は、キャスト枠の候補(以降、キャスト枠候補と記載)を列挙するステップである。ステップS120において、初期解取得部41は、集合分割問題の対象となる複数のキャスト枠候補を列挙する。キャスト枠候補は、第三の数の単位グループの一部または全部の組み合わせのうち枠成立条件を満たす組み合わせである。枠成立条件としては、隣り合う仮想鋼材の巾差や、キャスト枠に含むことができるチャージ数などが挙げられる。また、初期解取得部41は、各キャスト枠候補について評価値を計算する。評価値としては、キャスト枠候補に含まれる鋼種グループの数や、請求余剰量などが挙げられる。この段階においては、あるキャスト枠候補に含まれる単位グループが、他のキャスト枠候補に重複して含まれていても構わない。
【0036】
ステップS130は、集合分割問題を求解することにより初期解を求めるステップである。ステップS130において、初期解取得部41は、複数のキャスト枠候補と当該キャスト枠候補に含まれる単位グループとの関係を集合分割問題として定式化し、当該集合分割問題を求解することにより初期解を作成する。集合分割問題の求解においては、複数のキャスト枠候補において単位グループが重複しないキャスト枠候補の組み合わせのうち評価指標が高い組み合わせが初期解として採用される。評価指標は、組み合わせに含まれる各キャスト枠候補の評価値から算出される。したがって、初期解は、第一の数の仮想鋼材を重複がないよう第二の数のキャスト枠に集約したものとなる。
【0037】
また、初期解取得部41は、採用した初期解を示す情報を、編成計画の現在解として記憶部3に記憶する。また、初期解取得部41は、初期解を求める過程で算出した各キャスト枠の評価値を、記憶部3に記憶する。また、初期解取得部41は、各キャスト枠の評価値を用いて算出した初期解の評価指標を、現在の評価指標として記憶部3に記憶する。記憶部3に記憶したこれらの評価値および現在の評価指標は、後述する近傍探索処理S200において参照される。
【0038】
ここで、初期解作成処理S100を集合分割問題により定式化する例について、次式(1)~(5)を用いて説明する。まず、次式(1)に示す記号Nを、仮想鋼材の単位グループの集合として定義する。
【数1】
式(1)においてnは自然数である。単位グループi(i=1、2、…、n)は、初期解作成において分割されることのない仮想鋼材の纏まりを指し、初期解作成における最小単位となる。また、Nの部分集合で実行可能なキャスト枠候補S_jの集合として、次式(2)に示す記号Mを定義する。なお、キャスト枠候補S_jは、Nの部分集合のうち後述する枠成立条件を満たす部分集合をいう。
【数2】
式(2)においてmは自然数である。
【0039】
次に、決定変数x[j]を定義する。x[j]は、キャスト枠候補S_jを集合Mの要素として選択する場合は1、そうでない場合は0の値をとる2値変数である。キャスト枠候補S_jは、n個の要素を持つベクトルであり、その第i要素であるS_j[i]は、キャスト枠候補S_jが単位グループiを含む場合は1、含まない場合は0の値をとる。
【0040】
また、制約条件として、枠成立条件、および、制約式を設定する。枠成立条件は、例えば、次の制約(i)~(iii)を示す条件を含む。
【0041】
(i)隣接巾移行量(隣り合う鋼材の巾差/巾比)に関する制約
(ii)キャスト容量(キャスト枠に含むことができるチャージ数)に関する制約
(iii)異鋼種連々数(キャスト枠に含むことができる鋼種グループ数)に関する制約
なお、初期解作成処理S100において用いる制約条件は、近傍探索部42が用いる前述の制約条件と同一であってもよいし、少なくとも一部が異なっていてもよい。
【0042】
また、制約式は、次式(3)で表される。
【数3】
式(3)は、Nの各要素iが複数のキャスト枠に重複することを禁止する制約を表している。
【0043】
また、目的関数として、次式(4)を定義する。
【数4】
式(4)は、選択したキャスト枠候補S_jの評価値c_jの総和(評価指標ともいう)を最小化することを表す。キャスト枠候補S_jの評価値c_jは、1または複数の項目に基づき計算され、値が小さいほど評価が良いことを示す。このような評価指標は、例えば、(i)選択したキャスト枠候補数が少ない方が良く、(ii)各キャスト枠候補に含まれる鋼種グループの数が少ない方が良く、(iii)各キャスト枠候補に含まれる請求余剰量が少ない方が良い値が算出される。但し、上記評価指標は任意であり、後述する組余り重量なども含めて、上記(i)~(iii)などの少なくとも一つが考慮されていても良い。
【0044】
したがって、キャスト枠候補集合Mに対する集合分割問題MP(M)は、次式(5)のように0-1計画問題として定式化できる。初期解取得部41は、次式(5)を求解することにより得られたMの部分集合を、初期解として取得する。
【数5】
なお、初期解取得部41が初期解を作成する処理は、上述した例に限られない。
【0045】
[近傍探索処理]
続いて、近傍探索処理S200について説明する。近傍探索処理S200は、近傍解を探索する近傍探索ステップ、および編成計画の解を出力する解出力ステップの一例である。近傍探索処理S200の開始前においては、編成計画の現在解として、初期解が記憶部3に記憶されている。また、最終的に出力すべき最適解の初期値として、初期解が記憶部3に記憶されている。ここでは、近傍探索処理S200の一例として、発見的手法の一つである焼きなまし法により最適解を求める例について説明する。
【0046】
図3に示すように、近傍探索処理S200は、ステップS210~S280を含む。ステップS210は、類似鋼種グループリストを作成するステップである。ステップS210において、近傍探索部42は、編成計画の現在解に含まれる各仮想鋼材と、当該仮想鋼材を含む鋼種グループに対して鋼種が類似する他の鋼種グループとを関連付けた類似鋼種グループリストを作成する。図5は、類似鋼種グループリストおよび後述する探索リストの一例を示す図である。図5では、例えば、仮想鋼材SLAB1と、鋼種グループGR1、GR2、GR3とが関連付けられている。例えば、編成計画の現在解において仮想鋼材SLAB1が鋼種グループGR0に含まれるとすると、鋼種グループGR1、GR2、GR3の鋼種は、いずれも鋼種グループGR0の鋼種に類似する鋼種であり、例えば、同一の鋼種、または、当該仮想鋼材を出鋼可能な類似の鋼種である。
【0047】
ステップS220は、類似鋼種グループリストから探索リストを作成するステップである。ステップS220において、近傍探索部42は、類似鋼種グループリストにおいて、各仮想鋼材を、当該仮想鋼材に関連付けられた他の鋼種グループに仮に移動した場合に制約条件の一部が満たされるか否かを判定する。また、近傍探索部42は、当該仮想鋼材と、制約条件の一部を満たすと判定した当該他の鋼種グループとを関連付けて、探索リストに追加する。制約条件としては、例えば、初期解作成処理S100において用いた上述の枠成立条件を採用してもよいが、これに限られない。また「制約条件の一部」としては、当該制約条件のうち、簡易に判定可能な条件を採用してもよい。「簡易に判定可能」とは、例えば、仮想鋼材の移動を行わなくても判定できることであってもよい。また、「簡易に判定可能」とは、判定に係る計算コストが小さいことであってもよい。このような条件を、以下、「簡易な制約条件」とも記載する。簡易な制約条件の一例として、「移動先の鋼種グループにおける余白(請求余剰部分)の容量が、当該仮想鋼材の重量以上であること」との条件が挙げられる。当該条件は、移動先の余白の容量と、当該仮想鋼材の重量とのみを参照して判定でき、簡易な制約条件の一例となり得る。これに対して、例えば、移動先または移動元の鋼種グループにおける仮想鋼材の並びに基づき判定する条件は、簡易な制約条件としては適切でない可能性がある。以下では、簡易な制約条件は、移動先に関する条件を含み、移動元に関する条件は含まない例を中心に説明する。ただし、簡易な制約条件の内容は、上述した例に限られない。
【0048】
図5の例では、例えば、類似鋼種グループリストにおける仮想鋼材SLAB1を鋼種グループGR2に仮に移動した場合、仮の移動先の鋼種グループGR2を含むキャスト枠が簡易な制約条件を満たすとする。この場合、探索リストには、仮想鋼材SLAB1と鋼種グループGR2とが関連付けられて追加される。また、例えば、仮想鋼材SLAB1を鋼種グループGR1に仮に移動した場合、仮の移動先の鋼種グループGR1を含むキャスト枠が簡易な制約条件を満たさないとする。この場合、探索リストには、仮想鋼材SLAB1と鋼種グループGR1とを関連付けた情報は追加されない。以降、探索リストにおいて仮想鋼材に関連付けられた他の鋼種グループを、移動先候補とも記載する。つまり、近傍探索部42は、類似鋼種グループリストのうち、簡易な制約条件を満たすものを抽出して探索リストを作成する。
【0049】
なお、ステップS210における類似鋼種グループリストを作成する処理は、省略されてもよい。この場合、ステップS220において、近傍探索部42は、次のようにして探索リストを作成する。すなわち、近傍探索部42は、編成計画に含まれる1以上の仮想鋼材について、当該仮想鋼材に対して鋼種が類似する他の鋼種グループを抽出し、当該他の鋼種グループに当該仮想鋼材を仮に移動した場合に簡易な制約条件が満たされるか否かを判定する。そして、近傍探索部42は、簡易な制約条件が満たされると判定した場合に、当該仮想鋼材と、当該他の鋼種グループとを関連付けて探索リストに追加する。
【0050】
ステップS210~S220により探索リストを作成する処理は、一般的な焼きなまし法には含まれていない処理である。本実施形態は、探索リストを作成することにより、一般的な焼きなまし法を採用する場合と比べて、続くステップS230における近傍操作において制約条件に関する処理量を減らすことができ、処理を高速化できる。例えば、図5に示す探索リストを参照することにより、近傍操作においては、制約条件を満たすか否かを判定する処理(制約チェック)は、制約条件のうち簡易な制約条件以外(以下、未チェックの制約条件と記載)について行えばよい。なお、探索リストの作成処理において制約チェックをどの程度行うか(すなわち、簡易な制約条件としてどの条件を適用するか)は、上述した具体例に限られない。
【0051】
ステップS230は、探索リストにしたがって近傍操作を行うステップである。ステップS230において、近傍探索部42は、探索リストから仮想鋼材および移動先候補の組み合わせを1つ選択し、移動元の鋼種グループを含むキャスト枠、および移動先候補の鋼種グループを含むキャスト枠が、それぞれ、制約条件のうち未チェックの制約条件を満たすか否か判断する。各キャスト枠の少なくとも一方が当該未チェックの制約条件を満たさない場合には、ステップS250の処理が実行される。各キャスト枠が何れも当該未チェックの制約条件を満たす場合には、近傍探索部42は、編成計画の現在解から、選択した仮想鋼材を移動先候補に移動したものを近傍解として評価指標を算出する。
【0052】
近傍解の評価指標の算出処理の具体例について説明する。記憶部3には、編成計画の現在解(S200を初回に実行する場合は初期解)についての評価指標と、当該現在解に含まれる各キャスト枠の評価値とが記憶されている。そこで、近傍探索部42は、仮想鋼材の移動元の鋼種グループを含むキャスト枠について、当該仮想鋼材が移動により含まれなくなった場合の評価値を算出し、記憶部3を更新する。また、近傍探索部42は、仮想鋼材の移動先の鋼種グループを含むキャスト枠について、当該仮想鋼材が移動により含まれた場合の評価値を算出し、記憶部3を更新する。また、近傍探索部42は、記憶部3に記憶された各キャスト枠の評価値を用いて、式(4)に準じて近傍解の評価指標を算出する。
【0053】
ステップS240は、当該近傍解を採用するか否かを判断するステップである。ステップS240において、近傍探索部42は、近傍解の評価指標が、現在の評価指標よりも良い場合は近傍解を採用すると判断する。また、近傍探索部42は、近傍解の評価指標が、現在の評価指標より悪いか又は同じ場合、確率αに基づいて近傍解を採用すると判断する。確率αは、例えば次式(6)で表される。
【数6】
式(6)において、ΔEは、近傍解の評価指標と現在の評価指標との差を示す。温度Tは、探索処理(当該ステップS210~S270)を繰り返すほど小さくなるパラメータである。なお、この例では、評価指標は小さいほど良いことを示す。つまり、近傍解は、温度Tが高いほど、また改悪度合いが小さいほど、採用されやい。
【0054】
ステップS240において近傍解を採用しないと判断した場合、ステップS250が実行される。ステップS250において、近傍探索部42は、探索リストの探索を終了したか否かを判断する。具体的には、近傍探索部42は、探索リストにまだ近傍操作を行っていない仮想鋼材および移動先候補の組み合わせがある場合は探索を終了していないと判断し、そのような組み合わせが無い場合は探索を終了したと判断する。ステップS250でNoと判断した場合、近傍探索部42は、次の仮想鋼材および移動先候補の組み合わせについて、ステップS230からの処理を繰り返す。ステップS250でYesと判断した場合、後述するステップS270が実行される。
【0055】
ステップS240において近傍解を採用すると判断した場合、ステップS260が実行される。ステップS260は、現在解を更新するステップである。ステップS260において、近傍探索部42は、採用した近傍解を新たな現在解とすることにより、現在解を更新する。また、近傍探索部42は、記憶部3に記憶した現在の評価指標を、近傍解の評価指標に更新する。また、近傍探索部42は、更新後の評価指標が仮の最適解の評価指標よりも良い場合には、当該更新後の現在解を仮の最適解として更新する。
【0056】
ステップS270において、近傍探索部42は、温度Tを更新する。温度Tは、例えば、次式(7)を用いて更新される。
【数7】
式(7)において、cは冷却率として設定された係数である。また、近傍探索部42は、終了条件が満たされるか否かを判断する。終了条件とは、例えば、現在解が更新されておらず、かつ、温度Tが閾値を下回ることであってもよい。ステップS270においてNoと判断された場合、近傍探索部42は、ステップS210からの処理を繰り返す。ステップS270においてYesと判断された場合、次のステップS280が実行される。
【0057】
ステップS280において、最適解出力部43は、記憶部3に記憶されている編成計画の最適解を出力部2に出力する。出力される最適解は、探索処理の各回において探索された近傍解(すなわち、現在解として採用された近傍解)のうち、最も評価指標が高いとの評価条件を満たすものである。なお、最適解出力部43は、初期解より評価指標が高い近傍解であれば、必ずしも最も評価指標が高いものに限らず、その他の近傍解を出力してもよい。その他の近傍解の一例としては、初期解より評価指標が高いものからランダムに選択したもの、初期解より評価指標が高く且つ最後に探索されたもの、等が挙げられる。また、最適解出力部43は、初期解より評価指標が高い近傍解のうち、1つに限らず複数の近傍解を出力してもよい。複数の近傍解は、例えば、評価指標が高いものから所定数の近傍解であってもよいし、初期解より評価指標が高い全ての近傍解であってもよい。ただし、最適解出力部43の出力は、上述した例に限られない。
【0058】
<具体例>
図6は、近傍探索処理S200を実行することにより得られた最適解を初期解と比較した図である。図6において、上段は、初期解に含まれるキャスト枠C1-1を示し、下段は、最適解に含まれるキャスト枠C1-2を示す。キャスト枠C1-2は、キャスト枠C1-1が変更されたものである。初期解におけるキャスト枠C1-1は、鋼種グループGR1、GR2、GR3、GR4を含む。鋼種グループGR3およびGR4の鋼種は同一である。最適解におけるキャスト枠C1-2は、同様に鋼種グループGR1、GR2、GR3、GR4を含むが、鋼種グループGR3、GR4の内容が変化している。
【0059】
初期解において鋼種グループGR4に含まれる仮想鋼材の数は8であり、そのうち3の仮想鋼材(斜線パターン)は、最適解において鋼種グループGR3に移動している。また、最適解における鋼種グループGR4には、図示しない他のキャスト枠から移動された1の仮想鋼材(ドットパターン)が含まれている。最適解における鋼種グループGR4に含まれる仮想鋼材の数は、初期解の8から6に削減されることで、チャージ数が一つ削減されている。その結果、鋼種グループGR4の請求余剰を示す領域R2は、C1-1よりもC1-2の方が小さくなっており、最適解の方が初期解よりも、鋼種グループGR4における請求余剰が削減されている。
【0060】
また、最適解における鋼種グループGR3には、鋼種グループGR4から移動された3の仮想鋼材(斜線パターン)と、図示しない他のキャスト枠から移動された2の仮想鋼材(ドットパターン)とが含まれている。最適解における鋼種グループGR3に含まれる仮想鋼材の数は、初期解の17から22に増加することで、初期解における請求余剰分が増加分に有効に割り当てられている。その結果、鋼種グループGR3の請求余剰を示す領域R1は、C1-1よりもC1-2の方が小さくなっており、最適解の方が初期解よりも、鋼種グループGR3における請求余剰も削減されている。
【0061】
<実験結果>
計画作成装置10を用いて計画作成方法S10を実行する実験を29のケースについて行った。各ケースでは、編成計画を作成する対象となる「第一の数の鋼材」が互いに異なる。図7は、当該29のケースの実験において作成された初期解の精度および得られた最適解の精度を比較した図である。例えば、ケース2は、編成計画を作成する対象となる鋼材の数(第一の数)が353であり、その総重量は7686トンである。また、当該ケース2において初期解では、請求余剰が1492トン発生していたところ、最適解における請求余剰は1152トンに削減されている。また、当該ケース2において初期解から最適解を求める処理に要した処理時間は3.8秒である。また、29のケースの平均をとると、初期解における請求余剰の平均は8564トン、最適解における請求余剰の平均は6991トン、処理時間の平均は8.1秒である。つまり、当該実験では、平均して8秒程度の処理時間で、初期解における請求余剰の量を約18%(1573/8564×100)削減することができた。このような実験結果から、本実施形態に係る計画作成装置10および計画作成方法S10により初期解を改善した精度のよい最適解を得られることがわかる。
【0062】
〔変形例〕
上述した実施形態では、初期解取得部41が初期解を作成するものとして説明した。これに限らず、初期解取得部41は、入力部1を介して初期解を取得してもよい。例えば、初期解取得部41は、計画担当者(人)によって作成された初期解を取得してもよいし、他の装置が作成した初期解を取得してもよい。また、初期解取得部41は、集合分割問題として定式化する以外の定式化により初期解を取得してもよいし、定式化以外の手法により得られた編成計画案を初期解として取得してもよい。また、取得する初期解は、上述した実施形態のような単位グループを編成単位として作成されたものに限らず、個々の仮想鋼材を編成単位として作成されたものであってもよい。
【0063】
また、上述した実施形態では、近傍探索部42が行う一回の探索処理において移動する仮想鋼材の数(以下、移動数とも記載)は、一であるものとして説明した。これに限らず、各回の探索処理における移動数は複数であってもよい。
【0064】
この場合、一回の探索処理で移動する複数の仮想鋼材のうちの少なくとも一つの移動元の鋼種グループは、当該一回の探索処理で移動する複数の仮想鋼材のうちの他の移動元の鋼種グループと異なっていてもよい。また、一回の探索処理で移動する複数の仮想鋼材のうち少なくとも一つの移動先の鋼種グループは、当該一回の探索処理で移動する複数の仮想鋼材のうちの他の移動先の鋼種グループと異なっていてもよい。これにより、一回の探索処理で一つの仮想鋼材を移動する場合と比べて、近傍探索に係る計算量を削減することができる。
【0065】
また、一回の探索処理で移動する複数の仮想鋼材の移動元の鋼種グループは全て同一であり、かつ、移動先の鋼種グループは全て同一であってもよい。換言すると、一回の探索処理において、複数の仮想鋼材の単位で移動を行ってもよい。なお、この場合、移動する単位に含める仮想鋼材の数(以降、単位数とも記載)は、初期解を作成するときに用いた単位グループに含まれる仮想鋼材の数より小さいことが望ましい。これにより、初期解の編成単位より小さい単位で当該初期解を調整することができ、より精度の高い最適解を得ることができる。
【0066】
また、探索処理を複数回実行する場合、ある回における移動数または単位数は、他の回における移動数または単位数と同じであってもよいし、異なっていてもよい。後者の場合、例えば、近傍探索部42は、探索処理の繰り返し数が多くなる(例えば、温度Tが下がる)ほど、移動数および単位数の一方または両方を小さくするようにしてもよい。例えば、探索処理の初回から所定条件を満たすまでの各回においては移動数または単位数をn1とし、その後所定条件を満たした場合に、移動数または単位数をn1より小さいn2に変更してもよい。所定条件とは、例えば、温度Tが閾値以下となる、更新前および更新後の評価指標の差が閾値以下になる、等であってもよいが、これに限られない。これにより、最適解に近づくに伴いきめ細かな調整を行うことができ、計算量を削減しつつ,より精度の高い最適解を得ることができる。
【0067】
また、上述した実施形態では、近傍解の探索において初期解における鋼種グループの順序を変更しないものとして説明した。これに限らず、近傍探索部42は、鋼種グループの順序を変更した近傍解を探索してもよい。例えば、近傍探索部42は、移動元の鋼種グループが空になる場合等において、当該移動元の鋼種グループを削除してもよい。この場合、当該移動元の鋼種グループを含んでいたキャスト枠における鋼種グループの順序は、探索前とは異なる順序になる。また、例えば、近傍探索部42は、移動先の鋼種グループとして、新規の鋼種グループを生成してもよい。この場合、当該新規の鋼種グループを含むキャスト枠における鋼種グループの順序は、探索前とは異なる順序になる。これにより、より精度の高い最適解を得ることができる。
【0068】
また、上述した実施形態では、近傍探索部42は、現在解において何れかの鋼種グループに含まれる仮想鋼材の少なくとも一つを移動対象とするものとして説明した。これに限らず、近傍探索部42は、現在解に含まれる組余り仮想鋼材の少なくとも一つを移動対象として、当該仮想鋼材と鋼種が類似する鋼種グループに移動してもよい。ここで、組余り仮想鋼材について説明する。キャスト枠の編成計画では、全ての仮想鋼材が制約条件を満足することが困難な場合がある。この場合、どのキャスト枠にも組み込むことができない仮想鋼材を組余り仮想鋼材として、鋳造対象から外すことを許容した編成計画が作成される。近傍探索部42は、組余り仮想鋼材を含む現在解については、たとえば当該組余り仮想鋼材の重量を反映させた評価指標を算出する。これにより、組余り仮想鋼材を削減しつつ、より精度の高い最適解を得ることができる。また、近傍探索部42は、類似鋼種グループリストおよび探索リストに、組余り仮想鋼材を加えて探索処理を行ってもよい。
【0069】
また、上述した実施形態では、近傍探索部42は、仮想鋼材および移動先候補の組み合わせを予め抽出した探索リストを作成して近傍解を探索するものとして説明した。これに限らず、近傍探索部42は、探索リストを作成せずに、仮想鋼材および移動先候補の組み合わせを抽出しながら近傍解を探索してもよい。
【0070】
また、上述した実施形態では、近傍探索部42は、焼きなまし法を用いて編成計画の近傍解を探索するものとして説明したが、近傍解を探索する手法はこれに限られず、他の公知の手法を採用可能である。例えば、近傍探索を探索する手法としては、ローカルサーチ、遺伝的アルゴリズム、アントコロニー最適化などといった、発見的手法を採用してもよい。
【0071】
<本実施形態の効果>
以上説明した本実施形態および変形例に係る計画作成装置10および計画作成方法S10によれば、第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画の初期解を取得し、初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を1回以上実行し、探索処理の各回において探索された近傍解のうち初期解よりも評価が高い解を出力する。
【0072】
これにより、初期解の精度を改善した編成計画を得ることができる。また、本実施形態において編成計画の解を得るための近傍探索にかかる計算量は、同等の解を得るために初めから編成計画を作成する計算量よりも少ないことが期待できる。このため、本実施形態は計算量を抑制することができる。
【0073】
また、本実施形態においては、第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画の初期解を取得し、初期解を現在解とする。また、本実施形態においては、現在解から、少なくとも一つの仮想鋼材に関して当該現在解を制約条件のもとで変更した近傍解を探索することにより、当該近傍解を新たな現在解とする探索処理を一回以上実行し、探索処理の各回において探索された近傍解のうち評価が最も高い最適解を出力する。
【0074】
これにより、少なくとも一つの仮想鋼材の単位で初期解を調整できるため、初期解の精度を改善した最適解を得ることができる。また、本実施形態において初期解から最適解を得るための近傍探索にかかる計算量は、同等の最適解を得るために初めから編成計画を作成する計算量よりも少ないことが期待できる。このため、本実施形態は計算量を抑制することができる。
【0075】
また、本実施形態においては、上述した編成計画の初期解を、第一の数の仮想鋼材が製造条件に基づいて集約された、第一の数より少ない第三の数の単位グループを編成単位として作成することにより取得する。このように作成した初期解は、単位グループを編成単位とする場合において集合分割問題の最適解であるため比較的精度のよい編成計画である。本実施形態は、このように精度が比較的良い初期解から近傍探索を行うことで、精度が低い解から近傍探索を行う場合に比べて、より少ない計算量でさらに精度の良い最適解を得ることができる。一方で、初期解は、単位グループより小さい単位では編成されていないことによる精度の問題を含む可能性があるが、本実施形態は、そのような初期解の精度の問題を近傍探索により改善することができる。また、初期解の作成にかかる計算量は、単位グループを編成単位として行うことにより一の仮想鋼材の単位で初期解を作成する計算量よりも少なくなる。このため、本実施形態において初期解作成処理および近傍探索処理を合わせた計算量は、最初から一の仮想鋼材の単位で編成計画を作成して最適解を得る場合の計算量よりも少なく、全体として精度が高い解をより短時間で求めることができる。
【0076】
また、本実施形態においては、編成計画に含まれる少なくとも一つの仮想鋼材を、当該仮想鋼材を含む鋼種グループに対して鋼種が類似する他の鋼種グループであって、制約条件を満たす他の鋼種グループに移動した近傍解を探索する。これにより、初期解に含まれる各キャスト枠における鋼種グループの順序が維持される。その結果、鋼種グループの順序を変更するケースを考慮しないので、近傍解を探索する計算量をさらに抑制できる。
【0077】
また、本実施形態においては、編成計画に含まれる仮想鋼材と、当該仮想鋼材を移動する場合に移動先となり得る他の鋼種グループとを関連付けた探索リストを作成し、当該探索リストに基づいて近傍解を探索する。その結果、制約条件を満たさない近傍解については探索処理を行わなくてよいので、計算量をさらに抑制できる。
【0078】
また、本実施形態においては、キャスト枠の編成計画にかかる計算量を抑制しながら、精度の良い編成計画を作成することができる、との効果を奏する。その結果、コンピュータが消費するエネルギーを削減することができる。さらには、精度の良い編成計画に基づく製鋼により製造コストを削減することができるので、製鋼において消費するエネルギーを削減することができる。したがって、本実施形態は、例えば、国連が提唱する持続可能な開発目標(SDGs)の目標7「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」等の達成にも貢献するものである。
【0079】
〔ソフトウェアによる実現例〕
計画作成装置10(以下、「装置」と呼ぶ)の機能は、当該装置としてコンピュータを機能させるためのプログラムであって、当該装置の各制御ブロック(特に演算部4に含まれる各部)としてコンピュータを機能させるためのプログラムにより実現することができる。
【0080】
この場合、上記装置は、上記プログラムを実行するためのハードウェアとして、少なくとも一つの制御装置(例えばプロセッサ)と少なくとも一つの記憶装置(例えばメモリ)を有するコンピュータを備えている。この制御装置と記憶装置により上記プログラムを実行することにより、上記各実施形態で説明した各機能が実現される。
【0081】
上記プログラムは、一時的ではなく、コンピュータ読み取り可能な、1または複数の記録媒体に記録されていてもよい。この記録媒体は、上記装置が備えていてもよいし、備えていなくてもよい。後者の場合、上記プログラムは、有線または無線の任意の伝送媒体を介して上記装置に供給されてもよい。
【0082】
また、上記各制御ブロックの機能の一部または全部は、論理回路により実現することも可能である。例えば、上記各制御ブロックとして機能する論理回路が形成された集積回路も本発明の範疇に含まれる。この他にも、例えば量子コンピュータにより上記各制御ブロックの機能を実現することも可能である。
【0083】
また、上記各実施形態で説明した各処理は、AI(Artificial Intelligence:人工知能)に実行させてもよい。この場合、AIは上記制御装置で動作するものであってもよいし、他の装置(例えばエッジコンピュータまたはクラウドサーバ等)で動作するものであってもよい。
【0084】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0085】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係る計画作成装置は、連続鋳造により鋳造しようとする第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、前記第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画を作成する計画作成装置であって、前記編成計画の初期解を取得する初期解取得部と、前記初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を一回以上実行する近傍探索部と、前記探索処理の各回において探索された前記近傍解のうち前記初期解よりも評価が高い解を出力する解出力部と、を含む。上記構成によれば、編成計画を最初から一つの仮想鋼材の単位で作成する場合と比較して、計算規模を抑制することができる。また、少なくとも一つの仮想鋼材の単位で初期解を調整するので、精度のよい編成計画を作成することができる。その結果、計算規模を抑制しながら、キャスト枠設計をより精度よく行うことができる。
【0086】
本発明の態様2に係る計画作成装置は、態様1において、前記初期解取得部は、前記初期解を、前記第一の数の仮想鋼材が製造条件に基づいて集約された、前記第一の数より少ない第三の数の単位グループを編成単位として作成することにより取得する。上記構成によれば、単位グループの編成単位において比較的精度のよい初期解を生成することができる。また、これにより、精度の低い初期解をもとに近傍探索を行う場合に比べて少ない計算量で、さらに最適な最適解を得ることができる。
【0087】
本発明の態様3に係る計画作成装置は、態様1または2において、前記編成計画における各キャスト枠は、一以上の鋼種グループを含み、各鋼種グループは、当該鋼種グループに対応する鋼種が関連付けられた一以上の仮想鋼材を含み、前記近傍探索部は、前記近傍解として、前記初期解または他の近傍解から、少なくとも一つの仮想鋼材を、当該仮想鋼材を含む鋼種グループに対して鋼種が類似する他の鋼種グループであって、前記制約条件を満たす他の鋼種グループに移動した近傍解を探索する。上記構成によれば、鋼種グループの順序を変更しない範囲で近傍解を探索するので、鋼種グループの順序も変更した近傍解も探索する場合と比べて、計算量を削減することができる。
【0088】
本発明の態様4に係る計画作成装置は、態様3において、前記近傍探索部は、仮想鋼材と、当該仮想鋼材を移動する場合に移動先の候補となる前記他の鋼種グループとを関連付けた探索リストを作成し、当該探索リストに基づいて前記近傍解を探索する。上記構成によれば、移動先となり得ない他の鋼種グループについて近傍解を探索する処理を省略できるので、計算量を削減することができる。
【0089】
本発明の態様5に係る計画作成プログラムは、態様1から4の何れか1つに記載の計画作成装置としてコンピュータを機能させるための計画作成プログラムであって、前記初期解取得部、前記近傍探索部、および前記解出力部としてコンピュータを機能させる。上記構成によれば、態様1から4の何れかと同様の効果を奏する。
【0090】
本発明の態様6に係る計画作成方法は、連続鋳造により鋳造しようとする第一の数の鋼材に対応する第一の数の仮想鋼材を、前記第一の数より少ない第二の数のキャスト枠に集約したキャスト枠の編成計画を作成する計画作成方法であって、前記編成計画の初期解を取得する初期解取得ステップと、前記初期解とは少なくとも一部が異なる近傍解であって、制約条件を満たす近傍解を探索する探索処理を一回以上実行する近傍探索ステップと、前記探索処理の各回において探索された前記近傍解のうち前記初期解よりも評価が高い解を出力する解出力ステップと、を含む。上記構成によれば、態様1と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0091】
10 計画作成装置
1 入力部
2 出力部
3 記憶部
4 演算部
41 初期解取得部
42 近傍探索部
43 最適解出力部
SLAB 仮想鋼材
GR 鋼種グループ
CH チャージ
R 領域(鋼種グループの請求余剰の領域)
R1 領域(鋼種グループ3の請求余剰の領域)
R2 領域(鋼種グループ4の請求余剰の領域)
C1、C2 キャスト枠
C1-1 初期解
C1-2 最適解
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7