(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119674
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】セラミックスヒータ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05B 3/74 20060101AFI20240827BHJP
H05B 3/10 20060101ALI20240827BHJP
H05B 3/20 20060101ALI20240827BHJP
H05B 3/28 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H05B3/74
H05B3/10 A
H05B3/20 309
H05B3/20 328
H05B3/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026748
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099793
【弁理士】
【氏名又は名称】川北 喜十郎
(74)【代理人】
【識別番号】100154586
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 正広
(72)【発明者】
【氏名】北林 徹夫
(72)【発明者】
【氏名】下嶋 浩正
【テーマコード(参考)】
3K034
3K092
【Fターム(参考)】
3K034AA02
3K034AA03
3K034AA15
3K034BA06
3K034BB06
3K034CA02
3K092PP20
3K092QA06
3K092QB02
3K092QB04
3K092QC02
3K092VV22
(57)【要約】
【課題】セラミックスヒータの均温性の悪化を抑制するための技術を提供する。
【解決手段】
セラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設されたヒータ電極121~123とを備えている。ヒータ電極121~123は、それぞれ、同心状に配置された円形状又は円環形状の発熱領域121H~123Hを形成している。発熱領域122Hの外縁と、発熱領域122Hの径方向の外側に位置する部分を有する発熱領域123Hの同心度が90%以上である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面及び前記上面と上下方向において対向する下面を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された複数のヒータ電極と、を備え、
前記複数のヒータ電極は、それぞれ、円形状又は円環形状の発熱領域を有し、
前記複数のヒータ電極の前記発熱領域は、前記セラミックス基材の前記上面の中心に対して同心状に配置され、
前記複数の発熱領域のうち、第1の発熱領域と、半径方向において前記第1の発熱領域の外側に位置する部分を有する第2の発熱領域について、
前記第1の発熱領域の外縁と前記第2の発熱領域の内縁との間の前記半径方向の距離を、前記中心を通り、且つ、互いに直交する2本の直線に沿って4箇所測ったときの最大値に対する最小値の比が、90%以上であることを特徴とするセラミックスヒータ。
【請求項2】
前記複数のヒータ電極は、0.1mm以下の平行度で配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項3】
前記複数のヒータ電極の前記複数の発熱領域のうち、少なくとも二つの発熱領域は前記上下方向において互いに重なっていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項4】
前記複数の発熱領域の数は、3以上であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のセラミックスヒータ。
【請求項5】
前記複数の発熱領域のうち、少なくとも2以上の発熱領域は同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項6】
前記複数の発熱領域のうち、少なくとも2以上の発熱領域は同一平面上に配置されていることを特徴とする請求項4に記載のセラミックスヒータ。
【請求項7】
前記複数のヒータ電極は、前記上下方向の最大厚さが0.2mm以下の金属メッシュにより形成されていることを特徴とする請求項1に記載のセラミックスヒータ。
【請求項8】
上面及び下面の平行度が0.1mm以下である、円板状のセラミックス成形体又はセラミックス仮焼体を準備する工程と、
前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体の前記上面の外径よりも小さく、且つ、互いに外径の異なる複数の円形状又は円環形状のヒータ電極を準備する工程と、
前記セラミックス成形体又は前記セラミックス仮焼体の前記上面又は前記下面に、対応する前記複数のヒータ電極を配置したときに、前記の複数のヒータ電極の外縁との間隔が0.2mm以下となるような外形を有する複数の凹部を形成する工程と、
前記複数のヒータ電極を、対応する前記複数の凹部にそれぞれ配置する工程とを含むことを特徴とするセラミックスヒータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンウェハ等の基板を保持して加熱するセラミックスヒータ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ウェハなどの基板を保持して加熱するセラミックスヒータの一例として、異なる2つの発熱領域に対応する2つのヒータ電極が埋設されているセラミックスヒータが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のセラミックスヒータにおいては、2つのヒータ電極は略同心円状に配置されている。同心状に配置された複数のヒータ電極に同心のズレが生じた場合には、セラミックスヒータの均温性を悪化させる恐れがある。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、セラミックスヒータの均温性の悪化を抑制するための技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の態様に従えば、上面及び前記上面と上下方向において対向する下面を有する円板状のセラミックス基材と、
前記セラミックス基材に埋設された、又は前記セラミックス基材の前記下面に配置された複数のヒータ電極と、を備え、
前記複数のヒータ電極は、それぞれ、円形状又は円環形状の発熱領域を有し、
前記複数のヒータ電極の前記発熱領域は、前記セラミックス基材の前記上面の中心に対して同心状に配置され、
前記複数の発熱領域のうち、第1の発熱領域と、半径方向において前記第1の発熱領域の外側に位置する部分を有する第2の発熱領域について、
前記第1の発熱領域の外縁と前記第2の発熱領域の内縁との間の前記半径方向の距離を、前記中心を通り、且つ、互いに直交する2本の直線に沿って4箇所測ったときの最大値に対する最小値の比が、90%以上であることを特徴とするセラミックスヒータが提供される。
【発明の効果】
【0007】
セラミックスヒータの径方向の温度分布の均一性を向上させるためには、径方向の内側と外側に配置された発熱領域の同心度を一定値以上することが好ましい。発熱領域の同心度が小さい場合、円周方向に沿って2つの発熱領域の間の距離のばらつきが大きくなるため、面積当たりの発熱量(ワット密度)に差が生じ、円周方向において温度不均一となる恐れがある。上記態様においては、径方向の内側と外側に配置された発熱領域の同心度が90%以上である。そのため、2つの発熱領域の間において、円周方向に沿った温度の不均一を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、セラミックスヒータ100の斜視図である。
【
図2】
図2はセラミックス基材110の縦断面を模式的に表した図である。
【
図3】
図3(a)は、仮想面Aにおけるセラミックス基材110の断面を模式的に表した図であり、
図3(b)は、仮想面Bにおけるセラミックス基材110の断面を模式的に表した図である。
【
図4】
図4は、セラミックス基材110の下面113に接合用凸部114が設けられている場合を示す説明図である。
【
図5】
図5(a)~(d)は、セラミックス基材110の製造方法の流れを示す図である。
【
図6】
図6はヒータ電極122とヒータ電極123とがオーバーラップした状態を示す
図2相当図である。
【
図7】
図7は3つのヒータ電極221~223が埋設されたセラミックス基材110の
図2相当図である。
【
図8】
図8(a)は3つのヒータ電極221~223が埋設されたセラミックス基材110の
図3(a)相当図であり、
図8(b)は、3つのヒータ電極221~223が埋設されたセラミックス基材110の
図3(b)相当図である。
【
図9】
図9は、実施例1~3及び比較例1、2の結果をまとめた表である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態に係るセラミックスヒータ100について、
図1、2を参照しつつ説明する。本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、シリコンウェハなどの半導体ウェハ(以下、単にウェハ10という)の加熱に用いられるセラミックスヒータである。なお、以下の説明においては、セラミックスヒータ100が使用可能に設置された状態(
図1の状態)を基準として上下方向5が定義される。
図1に示されるように、本実施形態に係るセラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、シャフト160とを備える。また、
図2、3(a)、3(b)に示されるように、セラミックス基材110には、ヒータ電極121~123と、導電性部材131~133と、接続部分141~145と、端子151~154とが埋め込まれている。
【0010】
<セラミックス基材110>
セラミックス基材110は、直径12インチ(約300mm)、厚さ25mmの円形の板状の形状を有する部材であり、セラミックス基材110の上面111には加熱対象であるウェハ10が載置される。なお、
図1では図面を見やすくするためにウェハ10とセラミックス基材110とを離して図示している。セラミックス基材110は、例えば、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成することができる。
【0011】
図2はセラミックス基材110の縦断面を模式的に表した図である。
図2において点線で示されている仮想面A、Bは、いずれも上下方向5に直交する水平面である。仮想面A、Bは、上下方向5において、セラミックス基材110の上面111と下面113との間にあり、仮想面Aは仮想面Bの上方に位置している。
図3(a)は、仮想面Aにおけるセラミックス基材110の断面を模式的に表した図であり、
図3(b)は、仮想面Bにおけるセラミックス基材110の断面を模式的に表した図である。
図2、3(a)、3(b)に示されるように、セラミックス基材110の内部には、3つのヒータ電極121~123と、3つの導電性部材131~133と、5つの接続部分141~145と、4つの端子151~154とが埋設されている。
【0012】
<ヒータ電極121~123>
ヒータ電極121~123について、
図2、3(a)、3(b)を参照しつつ説明する。ヒータ電極121~123は、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(融点2000℃以上の高融点金属)を帯状に裁断することにより形成されている。ヒータ電極121~123をヒータ電極として使用する場合には、抵抗値を確保するために最大厚さ0.2mm以下の金属メッシュを用いることが好適である。金属メッシュを用いる場合において、ヒータ電極121~123の厚さはワイヤーの交点部分を除き0.03mm~0.2mmであることがさらに好ましい。ヒータ電極121~123の抵抗値は、約2Ω~20Ωであることが好ましい。ヒータ電極121~123は、例えば、Moメッシュ(線径0.1mm、平織#50メッシュ)の素材を所定のパターンに裁断することにより形成することができる。タングステン、モリブデンの純度は99%以上であることが好ましい。また、帯状に裁断されたヒータ電極121~123の幅は2.5mm~20mmであることが好ましく、5mm~15mmであることがさらに好ましい。本実施形態においては、ヒータ電極121~123は、それぞれ、
図3(a)、3(b)に示される形状に裁断されているが、ヒータ電極121~123の形状はこれには限られず、適宜変更しうる。なお、セラミックス基材110の内部にはヒータ電極121~123に加えて、あるいは、ヒータ電極121~123に代えて、ウェハ10をクーロン力により上面111に引き付けるための静電チャック電極及びセラミックス基材110の上方にプラズマを発生させるためのプラズマ電極のうち少なくとも一方が埋設されていてもよい。
【0013】
図3(a)に示されるように、ヒータ電極121はセラミックス基材110の仮想面Aの略中央に配置されており、ヒータ電極122はヒータ電極121の外側を取り囲むように配置されている。ヒータ電極121は、略円環形状のリング部121aと、直線状に延びる2つの直線部121bとを含んでいる。リング部121aは、
図3(a)の上側において開いた円環形状を有しており、2つの直線部121bは、開いた円環状のリング部121aの両端から
図3(a)の下方に向かって延びている。ヒータ電極122は、ヒータ電極121のリング部121aの外側を取り囲むように配置された2つの半円の円環形状の内側リング部122aと、2つの内側リング部122aの外側を取り囲むように配置された、略円環形状の外側リング部122bと、2つの内側リング部122aと外側リング部122bを繋ぐように直線状に延びる2つの直線部122cとを含んでいる。外側リング部122bは、
図3(a)の左側が開いた円環形状を有している。2つの直線部122cは、外側リング部122bの両端と、2つの内側リング部122aとをそれぞれ繋ぐように、
図3(a)の左右方向に延びている。
【0014】
図3(b)に示されるように、ヒータ電極123はセラミックス基材110の仮想面Bの外周部分に配置されている。ヒータ電極123は、
図3(b)の上側が開いた略円環形状のリング部123aを含んでいる。仮想面Aと仮想面Bとを重ねた場合において、ヒータ電極123は、ヒータ電極121及びヒータ電極122の外側に配置されており、ヒータ電極121とヒータ電極122とヒータ電極123とは互いに重ならないように同心状に配置されている。ヒータ電極123の外径はヒータ電極121、122の外径よりも大きい。これにより、セラミックス基材110には、ヒータ電極121、ヒータ電極122、ヒータ電極123にそれぞれ対応した3つの発熱領域(上下方向において、ヒータ電極121による第1発熱領域121Hと、ヒータ電極122による第2発熱領域122Hと、ヒータ電極123による第3発熱領域123H)が形成される(
図3(a)、3(b)参照)。なお、ヒータ電極122とヒータ電極123とは上下方向5においてオーバーラップして配置されていてもよい。
【0015】
<導電性部材131~133>
次に、導電性部材131~133について、
図2、3(a)、3(b)を参照しつつ説明する。
図3(b)に示されるように、導電性部材131~133は同一の仮想面Bに配置されている。導電性部材131~133は、ヒータ電極123の内側において略円形の領域を占めるように、互いに重なり合わないように並べられている。導電性部材131は略半円形状であり、
図3(b)において、ヒータ電極123の内側の領域の左半分を占めている。導電性部材131の、右側の略中央部には、矩形状の切り欠き131Cが形成されている。導電性部材132は、中心角が約90°の扇形形状を有しており、導電性部材131の下半分と向かい合うように、導電性部材131の右側に配置されている。導電性部材133は、中心角が約90°の扇形形状を有しており、導電性部材131の上半分と向かい合うように、導電性部材131の右側に配置されている。
【0016】
導電性部材131~133の合計面積は、ヒータ電極121~123のうち、最も外径の大きいヒータ電極123の外径によって規定される仮想円の面積の40%以上であることが好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。また、導電性部材131の面積、導電性部材132の面積、及び導電性部材133の面積はいずれも、上記仮想円の面積をヒータ電極121~123の数(3つ)で割った面積の40%以上であることが好ましく、55%以上であることがさらに好ましい。
【0017】
導電性部材131~133は、ヒータ電極121~123と同様に、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔等の耐熱金属(融点2000℃以上の高融点金属)を所定の形状に裁断することにより形成されている。なお、導電性部材131~133は、ヒータ電極121~123と同じ金属材料で形成されることが好ましい。この場合には、製造が容易になるとともに、焼成時の収縮率の違いに起因するひずみを抑制することができる。後述のように、導電性部材131は、端子152及び接続部分144と接続されている(
図3(b)参照)。導電性部材131の、端子152と接続されている部分と接続部分144との間の抵抗は約0.01Ω~1Ωであり、ヒータ電極121~123のいずれの抵抗よりも小さい。導電性部材132は、端子153及び接続部分143と接続されている(
図3(b)参照)。導電性部材132の、端子153と接続されている部分と接続部分143との間の抵抗は約0.01Ω~1Ωであり、ヒータ電極121~123のいずれの抵抗よりも小さい。導電性部材133は、端子154及び接続部分141、142、145と接続されている(
図3(b)参照)。導電性部材133の、端子154と接続されている部分と接続部分141との間の抵抗、端子154と接続されている部分と接続部分142との間の抵抗、端子154と接続されている部分と接続部分145との間の抵抗は、いずれも、約0.01Ω~1Ωであり、ヒータ電極121~123の抵抗よりも小さい。
【0018】
<接続部分141~145>
次に、接続部分141~145について、
図2、3(a)、3(b)を参照しつつ説明する。
図2に示されるように、接続部分141、142は仮想面Aと仮想面Bとの間に配置されている。接続部分141、142の下端は導電性部材133に電気的に接続されている。なお、以下の説明においては、電気的に接続されていることを、単に接続されていると称する。接続部分141の上端はヒータ電極121の直線部121bに接続され、接続部分142の上端はヒータ電極122のリング部122aに接続されている。接続部分143も接続部分141、142と同様に、仮想面Aと仮想面Bとの間に配置されている(
図3(a)、3(b)参照)。接続部分143の下端は導電性部材132に接続され、接続部分143の上端はヒータ電極122のリング部122aに接続されている。これらの接続部分141~143は、仮想面Aと仮想面Bとを接続するビア構造である。また、
図3(b)に示されるように、接続部分144、145は仮想面Bに配置されている。接続部分144、145の一端(
図3(b)の上側の端部)はヒータ電極123に接続されている。接続部分144の他端(
図3(b)の下側の端部)は導電性部材131に接続され、接続部分145の他端(
図3(b)の下側の端部)は導電性部材133に接続されている。接続部分144、145は、複数のヒータ電極121~123及び導電性部材131~133と同じ素材(タングステン(W)、モリブデン(Mo)、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金のワイヤーを織ったメッシュや箔)により形成されている。これにより、接続部分144は導電性部材131及びヒータ電極123と一体化しており、接続部分145は導電性部材133及びヒータ電極123と一体化している。
【0019】
<端子151~154>
次に、端子151~154について、
図2、3(a)、3(b)を参照しつつ説明する。
図2に示されるように、端子151の上端はヒータ電極121の直線部121b(
図3(a)参照)に接続されている。端子151の上端は、ヒータ電極121の直線部121bと接触していてもよい。あるいは、端子151の上端とヒータ電極121の直線部121bとが、タングステン、モリブデン、又は、これらの少なくとも1つを含む合金によって形成されたペレットを介して接触していてもよい。後述の端子152~154についても同様である。端子151は、ヒータ電極121の直線部121bから下方に向かって延び、さらに後述のシャフト160の中空の円筒部161の中空の部分を通って下方に延びている。なお、
図3(b)に示されるように、仮想面Bに配置されている導電性部材131の右側の略中央部には、矩形状の切り欠き131Cが形成されている。端子151は仮想面Bの切り欠き131Cが形成された部分を通って下方に延びているため、端子151と導電性部材131とは電気的に導通していない。
【0020】
図2に示されるように、端子154の上端は仮想面Bに配置された導電性部材133に接続されている。端子154は、導電性部材133から下方に向かって延び、端子151と同様に、シャフト160の円筒部161の中空の部分を通って下方に延びている。同様に、端子152の上端は仮想面Bに配置された導電性部材131に接続されている(
図3(b)参照)。端子152は、導電性部材131から下方に向かって延び、端子151と同様に、シャフト160の円筒部161の中空の部分を通って下方に延びている。また、端子153の上端は仮想面Bに配置された導電性部材132に接続されている(
図3(b)参照)。端子153は、導電性部材132から下方に向かって延び、端子151と同様に、シャフト160の円筒部161の中空の部分を通って下方に延びている。つまり、シャフト160の円筒部161の中空の部分には、4つの端子151~154が配置されている。
【0021】
<シャフト160>
次にシャフト160について、
図1、2、4を参照しつつ説明する。
図1、2に示されるように、セラミックス基材110の下面113には、シャフト160が接続されている。シャフト160は中空の略円筒形状の円筒部161と、円筒部161の下方に設けられた大径部162(
図1参照)を有する。大径部162は、円筒部161の径よりも大きな径を有している。以下の説明において、円筒部161の長手方向をシャフト160の長手方向6として定義する。
図1に示されるように、セラミックスヒータ100の使用状態において、シャフト160の長手方向6は上下方向5と平行である。
【0022】
図2に示されるように、シャフト160の円筒部161の内部(内径より内側の領域)には長手方向6(
図1参照)に延びる貫通孔が形成されており、上述のように、ヒータ電極121~123に電力を供給するための端子151~154が配置されている。これにより、端子151~154を介してヒータ電極121~123に電力が供給される。
【0023】
なお、セラミックス基材110の下面113に、シャフト160との接合のための凸部114(以下、接合用凸部114と呼ぶ)を設けることができる(
図4参照)。接合用凸部114の形状は、接合されるシャフト160の上面の形状と同じであることが好ましく、接合用凸部114の直径は100mm以下であることが好ましい。接合用凸部114の高さ(下面113からの高さ)は、0.2mm以上であればよく、1mm以上であることが好ましい。特に高さの上限に制限はないが、製作上の容易さを勘案すると、接合用凸部114の高さは20mm以下であることが好ましい。また、接合用凸部114の下面は、セラミックス基材100の下面113に平行であることが好ましい。接合用凸部114の下面の表面粗さRaは1.6μm以下であればよい。なお、接合用凸部114の下面の表面粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。
【0024】
円筒部161の上面は、セラミックス基材110の下面113(接合用凸部114が設けられている場合には、接合用凸部114の下面)に固定されている。なお、シャフト160は、セラミックス基材110と同じように、窒化アルミニウム、炭化ケイ素、アルミナ、窒化ケイ素等のセラミックス焼結体により形成されてもよい。あるいは、断熱性を高めるために、セラミックス基材110より熱伝導率の低い材料で形成されてもよい。また、円筒部161の上面に、円筒部161の下方に設けられた大径部162と同様な拡径部163が設けられてもよい。
【0025】
<セラミックスヒータ100の製造方法>
次に、セラミックスヒータ100の製造方法について説明する。以下では、セラミックス基材110及びシャフト160が窒化アルミニウムで形成される場合を例に挙げて説明する。
【0026】
まず、セラミックス基材110の製造方法について説明する。
図5(a)に示されるように、窒化アルミニウムの造粒粉にバインダーを加えてCIP成型し、円板状に加工して、窒化アルミニウムのセラミックス成形体510を作製する。なお、セラミックス成形体510の厚さのばらつきが0.1mm以下となるようにセラミックス成形体510を加工する。詳細には、セラミックス成形体510の上面及び下面の平行度が0.1mm以下となるように円板状のセラミックス成形体510を形成する。次に、
図5(b)に示されるように、セラミックス成形体510の脱脂処理を行い、バインダーを除去する。
【0027】
図5(c)に示されるように、脱脂されたセラミックス成形体510に、ヒータ電極121を埋設するための凹部521と、ヒータ電極122を埋設するための凹部522と、ヒータ電極123を埋設するための凹部523と、導電性部材131~133を埋設するための凹部531と、プリフォーム143Pを挿入するための貫通孔を形成する。プリフォーム143Pは、タングステン、モリブデン、又は、これらの少なくとも1つを含む合金によって形成された多孔質材である。なお、凹部521、522、523、531の形状は、埋設されるヒータ電極121などの形状とほぼ同じである。このとき、凹部521とヒータ電極121とのクリアランスが0.2mm以下となるように、凹部521を加工する。同様に、凹部522とヒータ電極122とのクリアランスが0.2mm以下となるように、凹部522を加工し、凹部523とヒータ電極123とのクリアランスが0.2mm以下となるように凹部523を加工し、凹部531と導電性部材131~133とのクリアランスが0.2mm以下となるように凹部531を加工する。なお、端子153(
図3(b)参照)と重なる位置にタングステン、モリブデン、又は、これらの少なくとも1つを含む合金によって形成されたペレットを埋設してもよい。なお、脱脂されたセラミックス成形体510に上記のような凹部を形成することには限られず、セラミックス成形体510を仮焼してセラミックス仮焼体を作製し、セラミックス仮焼体に上記のような凹部を形成することもできる。
【0028】
セラミックス成形体510(又はセラミックス仮焼体)の凹部521にヒータ電極121を配置し、凹部522にヒータ電極122を配置し、凹部523にヒータ電極123を配置し、凹部531に導電性部材131~133を配置する。さらに、貫通孔にプリフォーム143Pを配置し、複数のセラミックス成形体510(又はセラミックス仮焼体)を積層する。ペレットを埋設した場合には、必要に応じて、ヒータ電極122とペレットとの間に、タングステン、モリブデン等の高融点金属の粉末をペーストにして塗布してもよい。これにより、ヒータ電極122とペレットとの間の密着性を高めることができる。他の電極及び導電性部材についても同様である。なお、凹部521、522、523、531及び貫通孔は予めセラミックス成形体510に形成しておいてもよい。次に、
図5(d)に示されるように、積層された複数のセラミックス成形体510(又はセラミックス仮焼体)をプレスした状態で焼成し、セラミックス焼成体を作製する。焼成の際に加える圧力は、1MPa以上であることが好ましい。また、1800℃以上の温度で焼成することが好ましい。このとき、プリフォーム143Pに所定の圧力が加えられた状態で焼成されることにより、多孔質のプリフォーム143Pは緻密なビア構造となって接続部分143が形成される。その後、端子153を形成するために、ヒータ電極122までの止まり穴加工を行う。他の電極及び導電性部材についても同様である。なお、ペレットを埋設した場合には、ペレットまでの止まり穴加工を行えばよい。
【0029】
このようにして形成されたセラミックス基材110の上面111に対して外形加工を行う。セラミックス基材110の下面113には、下面113から突出した接合用の凸部114(
図4参照)が設けられてもよい。
【0030】
次に、シャフト160の製造方法及びシャフト160とセラミックス基材110との接合方法について説明する。まず、バインダーを数wt%添加した窒化アルミニウムの造粒粉Pを静水圧(1MPa程度)で成形し、成形体を所定形状に加工する。なお、シャフト160の外径は、30mm~100mm程度である。シャフト160の円筒部161の端面には円筒部161の外径より大きい径を有するフランジ部163が設けられてもよい(
図4参照)。円筒部161の長さは例えば、50mm~500mmにすることができる。成形体を所定形状に加工した後、成形体を窒素雰囲気中で焼成する。例えば、1900℃の温度で2時間焼成する。そして、焼成後に焼結体を所定形状に加工することによりシャフト160が形成される。円筒部161の上面とセラミックス基材110の下面113とを、1600℃以上、1MPa以上の一軸圧力下で、拡散接合により固定することができる。この場合には、セラミックス基材110の下面113の表面粗さRaは0.4μm以下であることが好ましく、0.2μm以下であることがさらに好ましい。また、円筒部161の上面とセラミックス基材110の下面113とを、接合剤を用いて接合することもできる。接合剤として、例えば、10wt%のY
2O
3を添加したAlN接合材ペーストを用いることができる。例えば、円筒部161の上面とセラミックス基材110の下面113との界面に上記のAlN接合剤ペーストを15μmの厚さで塗布し、上面111に垂直な方向(シャフト160の長手方向6)に5kPaの力を加えつつ、1700℃の温度で1時間加熱することにより、接合することができる。あるいは、円筒部161の上面とセラミックス基材110の下面113とを、ねじ止め、ろう付け等によって固定することもできる。
【0031】
<ヒータ電極121~123の給電経路>
図2、3(a)に示されるように、端子151は、ヒータ電極121の一端(
図3(a)の左側の直線部121b)と接続されている。ヒータ電極121の他端(
図3(a)の右側の直線部121b)は、接続部分141と接続されている。
図3(b)に示されるように、接続部分141は導電性部材133と接続されており、さらに導電性部材133は端子154と接続されている。これにより、端子151から、ヒータ電極121、接続部分141、導電性部材133を通って端子154に至る電気回路が形成される。端子154をグランド端子として、端子151と端子154に外部電源を接続することにより、ヒータ電極121に通電することができる。すなわち導電性部材133はグランド接続されている。これにより、セラミックス基材110には、ヒータ電極121による第1発熱領域121Hが形成される。第1発熱領域121Hは
図3(a)において、グレーの領域として図示されている。
【0032】
図3(b)に示されるように、端子153は、導電性部材132と接続され、導電性部材132は接続部分143と接続されている。
図3(a)に示されるように、接続部分143はヒータ電極122の一端と接続され、ヒータ電極122の他端は接続部分142と接続されている。
図3(b)に示されるように、接続部分142は導電性部材133と接続されており、さらに導電性部材133は端子154と接続されている。これにより、端子153から、導電性部材132、接続部分143、ヒータ電極122、接続部分142、導電性部材133を通って端子154に至る電気回路が形成される。端子154をグランド端子として、端子153と端子154に外部電源を接続することにより、ヒータ電極122に通電することができる。すなわち、導電性部材133はグランド接続されている。また導電性部材133と同一平面に配置されている導電性部材132は外部電源に接続されている。この給電経路により、セラミックス基材110の上面111には、ヒータ電極122と重なる第2発熱領域122Hが形成される。第2発熱領域122Hは
図3(a)において、グレーの領域として図示されている。
【0033】
図3(b)に示されるように、端子152は、導電性部材131と接続され、導電性部材131は接続部分144と接続されている。さらに、接続部分144はヒータ電極123の一端と接続され、ヒータ電極123の他端は接続部分145と接続されている。接続部分145は導電性部材133と接続されており、さらに導電性部材133は端子154と接続されている。これにより、端子152から、導電性部材131、接続部分144、ヒータ電極123、接続部分145、導電性部材133を通って端子154に至る電気回路が形成される。端子154をグランド端子として、端子153と端子154に外部電源を接続することにより、ヒータ電極123に通電することができる。すなわち導電性部材133はグランド接続されている。また導電性部材133と同一平面に配置されている導電性部材131は外部電源に接続されている。この給電経路により、セラミックス基材110の上面111には、ヒータ電極123と重なる第3発熱領域123Hが形成される。第3発熱領域123Hは
図3(a)において、グレーの領域として図示されている。
【実施例0034】
以下、本発明について実施例1~3及び比較例1、2を用いて更に説明する。但し、本発明は、以下に説明する実施例に限定されない。なお、
図9には実施例1~3及び比較例1、2の結果をまとめた表が示されている。
【0035】
[実施例1]
実施例1のセラミックスヒータ100について説明する。実施例1のセラミックスヒータ100は、上記の実施形態において説明したセラミックスヒータの製造方法によって製造されたものである。電極配置や電極の形状等は、上記の実施形態において説明したセラミックスヒータ100と同様であり、実施例1のセラミックスヒータ100は、ヒータ電極121、122とヒータ電極123とが異なる平面上に形成された二層構造の電極構成を有している。
【0036】
以下の手順により、電極の配置位置の評価を行った。X線透過装置を用いてセラミックスヒータ100のセラミックス基材110の透過像を撮影した。得られたX線透過画像に基づいて、最も内側に配置されているヒータ電極121の外縁と、ヒータ電極121の外側に配置されているヒータ電極122の内縁との間の径方向の距離(以下、電極間隙という)を測定し、ヒータ電極121とヒータ電極122との同心度を算出した。同様に、ヒータ電極122の外縁と、ヒータ電極122の外側に配置されているヒータ電極123の内縁との間の電極間隙を測定し、ヒータ電極122とヒータ電極123との同心度を算出した。詳細には、セラミックス基材110の上面111の中心を通る、2本の直交する直線L1、L2(45°-225°に傾いた直線L1と、135°-315°に傾いた直線L2)に沿った電極間隙を測定し、測定した電極間隙の最大値に対する電極間隙の最小値の比を算出し、同心度とした。
【0037】
さらに、超音波探傷装置を用いて、セラミックス基材110の上面111からヒータ電極122、123までの距離の測定を行い、同一平面に配置されていないヒータ電極122とヒータ電極123との距離を測定し、平行度を算出した。具体的には、以下の手順で平行度を算出した。
図3(a)に示されるように、直線L1とヒータ電極122の外側リング部122bとの交点を点P1、P4とし、直線L2とヒータ電極122の外側リング部122bとの交点を点P2、P3とする。また、
図3(b)に示されるように、直線L1とヒータ電極123のリング部123aとの交点を点P5、P8とし、直線L2とヒータ電極123のリング部123aとの交点を点P6、P7とした。そして、[1]セラミックス基材110の上面111から点P1までの距離と、上面111から点P5までの距離との距離差と、[2]セラミックス基材110の上面111から点P2までの距離と、上面111から点P6までの距離との距離差と、[3]セラミックス基材110の上面111から点P3までの距離と、上面111から点P7までの距離との距離差と、[4]セラミックス基材110の上面111から点P4までの距離と、上面111から点P8までの距離との距離差とを算出し、[1]~[4]で求めた4つの距離差のうち、最大値と最小値との差を平行度として算出した。
【0038】
実施例1においては、ヒータ電極121の外縁と、ヒータ電極122の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第1電極間隙)は4.9mm~5.1mmであった。すなわち、電極間隙の最小値は4.9mm、電極間隙の最大値は5.1mmであった。ヒータ電極121とヒータ電極122との同心度(
図9の表における第1同心度)は96.1%であった。また、ヒータ電極122の外縁と、ヒータ電極123の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第2電極間隙)は4.8mm~5.2mmであった。ヒータ電極122とヒータ電極123との同心度(
図9の表における第2同心度)は92.3%であった。また、ヒータ電極122とヒータ電極123との平行度は0.05mmであった。
【0039】
また、実施例1のセラミックスヒータ100をプロセスチャンバに設置し、以下の手順でセラミックスヒータ100の温度評価を行った。セラミックスヒータ100に直径300mmの温度評価用のシリコンウェハを載置し、セラミックスヒータ100のヒータ電極121~123に不図示の外部電源を接続した。そして、定常状態でシリコンウェハの上面の温度が500℃となるように外部電源の出力電力を調整した。その後、温度評価用のシリコンウェハの温度分布を赤外線カメラで計測した。上記の2つの直線L1、L2の直上の位置に対応するシリコンウェハの温度を計測し、その最大値と最小値との温度差ΔTを、温度分布として評価した。実施例1においては、温度差ΔTは1.4℃であり、良好と判定された。なお、温度評価用のシリコンウェハは、直径300mmのシリコンウェハの上面に厚さ30μmの黒体膜をコーティングしたものである。黒体膜とは、放射率(輻射率)が90%以上である膜であり、例えば、カーボンナノチューブを主原料とする黒体塗料をコーティングすることにより成膜することができる。
【0040】
[実施例2]
実施例2のセラミックスヒータ100は、実施例1のセラミックスヒータ100と同様に、異なる平面上に形成された二層構造の電極構成を有しているが、ヒータ電極122とヒータ電極123とが上下方向5においてオーバーラップしている点が異なっている(
図6参照)。
【0041】
実施例2のセラミックスヒータ100について、実施例1と同様の手順で電極の配置位置の評価と、電極の平行度の測定と、温度評価とを行った。実施例2においては、ヒータ電極121の外縁と、ヒータ電極122の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第1電極間隙)は4.9mm~5.1mmであった。ヒータ電極121とヒータ電極122との同心度(
図9の表における第1同心度)は96.1%であった。また、ヒータ電極122の外縁と、ヒータ電極123の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第2電極間隙)は4.9mm~5.1mmであった。ヒータ電極122とヒータ電極123との同心度(
図9の表における第2同心度)は96.1%であった。また、ヒータ電極122とヒータ電極123との平行度は0.04mmであった。
【0042】
実施例1と同様の手順で、実施例2のセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例2においては、温度差ΔTは1.4℃であり、良好と判定された。
【0043】
[実施例3]
実施例3のセラミックスヒータ100は、実施例1、2のセラミックスヒータ100と異なり、同一平面に配置されたヒータ電極221~223を備えている。
図7、
図8(a)、8(b)に示されるように、セラミックス基材110の仮想面Aには3つのヒータ電極221~223が配置され、仮想面Bには3つの導電性部材231~233が配置されている。ヒータ電極221~223の素材は上述のヒータ電極121~123と同じであり、導電性部材231~233の素材は上述の導電性部材151~153と同じであるので、説明を省略する。
【0044】
図7、8(a)に示されるように、端子251は、ヒータ電極221の一端と接続されている。ヒータ電極221の他端は、接続部分241と接続されている。
図8(b)に示されるように、接続部分241は導電性部材233と接続されており、さらに導電性部材233は端子254と接続されている。これにより、端子251から、ヒータ電極221、接続部分241、導電性部材233を通って端子254に至る電気回路が形成される。端子254をグランド端子として、端子251と端子254に外部電源を接続することにより、ヒータ電極221に通電することができる。これにより、セラミックス基材110には、ヒータ電極221による第1発熱領域221Hが形成される。第1発熱領域221Hは
図7(a)において、グレーの領域として図示されている。
【0045】
図8(b)に示されるように、端子253は、導電性部材232に接続されており、さらに導電性部材232は接続部分243と接続されている。接続部分243はヒータ電極222の一端と接続されている。ヒータ電極222の他端は、接続部分242と接続されている。
図8(b)に示されるように、接続部分242は導電性部材233と接続されており、さらに導電性部材233は端子254と接続されている。これにより、端子253から、導電性部材232、接続部分243、ヒータ電極222、接続部分242、導電性部材233を通って端子254に至る電気回路が形成される。端子254をグランド端子として、端子253と端子254に外部電源を接続することにより、ヒータ電極222に通電することができる。これにより、セラミックス基材110には、ヒータ電極222による第2発熱領域222Hが形成される。第2発熱領域222Hは
図8(a)において、グレーの領域として図示されている。
【0046】
図8(b)に示されるように、端子252は、導電性部材231に接続されており、さらに導電性部材231は接続部分245と接続されている。接続部分245はヒータ電極223の一端と接続されている。ヒータ電極223の他端は、接続部分244と接続されている。
図8(b)に示されるように、接続部分244は導電性部材233と接続されており、さらに導電性部材233は端子254と接続されている。これにより、端子252から、導電性部材231、接続部分245、ヒータ電極223、接続部分244、導電性部材233を通って端子254に至る電気回路が形成される。端子254をグランド端子として、端子252と端子254に外部電源を接続することにより、ヒータ電極223に通電することができる。これにより、セラミックス基材110には、ヒータ電極223による第3発熱領域223Hが形成される。第3発熱領域223Hは
図8(a)において、グレーの領域として図示されている。
【0047】
実施例3のセラミックスヒータ100について、実施例1と同様の手順で電極の配置位置の評価と、温度評価とを行った。実施例3においては、ヒータ電極221の外縁と、ヒータ電極222の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第1電極間隙)は4.9mm~5.1mmであった。ヒータ電極221とヒータ電極222との同心度(
図9の表における第1同心度)は96.1%であった。また、ヒータ電極222の外縁と、ヒータ電極223の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第2電極間隙)は4.9mm~5.1mmであった。ヒータ電極222とヒータ電極223との同心度(
図9の表における第2同心度)は96.1%であった。
【0048】
実施例1と同様の手順で、実施例3のセラミックスヒータ100の温度評価を行った。実施例3においては、温度差ΔTは1.5℃であり、良好と判定された。
【0049】
[比較例1]
比較例1のセラミックスヒータは、上記の実施形態において説明したセラミックスヒータの製造方法とは異なり、電極を埋設するための凹部を成形体に形成する際に、凹部と電極とのクリアランスが0.2mm以下になるように調整されておらず、クリアランスが0.2mmよりも大きくなっている。なお、電極配置や電極の形状等は、実施例1のセラミックスヒータ100と同様である。
【0050】
比較例1のセラミックスヒータについて、実施例1と同様の手順で電極の配置位置の評価と、電極の平行度の測定と、温度評価とを行った。比較例1においては、ヒータ電極121の外縁と、ヒータ電極122の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第1電極間隙)は4.7mm~5.3mmであり、実施例1と比べて電極間隙の最大値と最小値との差が大きくなっていた。ヒータ電極121とヒータ電極122との同心度(
図9の表における第1同心度)は88.7%であり、実施例1と比べて小さくなっていた。また、ヒータ電極122の外縁と、ヒータ電極123の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第2電極間隙)は4.7mm~5.3mmであり、実施例1と比べて電極間隙の最大値と最小値との差が大きくなっていた。ヒータ電極122とヒータ電極123との同心度(
図9の表における第2同心度)は88.7%であり、実施例1と比べて小さくなっていた。また、ヒータ電極122とヒータ電極123との平行度は0.11mmであり、実施例1と比べて大きくなっていた。
【0051】
実施例1と同様の手順で、比較例1のセラミックスヒータ100の温度評価を行った。比較例1においては、温度差ΔTは2.1℃であり、良好ではないと判定された。
【0052】
[比較例2]
比較例2のセラミックスヒータは、比較例1と同様に、電極を埋設するための凹部を成形体に形成する際に、凹部と電極とのクリアランスが0.2mm以下になるように調整されておらず、クリアランスが0.2mmよりも大きくなっている。なお、電極配置や電極の形状等は、実施例3のセラミックスヒータ100と同様である。
【0053】
比較例2のセラミックスヒータについて、実施例1~3と同様の手順で電極の配置位置の評価と、温度評価とを行った。比較例2においては、ヒータ電極121の外縁と、ヒータ電極122の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第1電極間隙)は4.7mm~5.3mmであり、実施例3と比べて電極間隙の最大値と最小値との差が大きくなっていた。ヒータ電極121とヒータ電極122との同心度(
図9の表における第1同心度)は88.7%であり、実施例3と比べて小さくなっていた。また、ヒータ電極122の外縁と、ヒータ電極123の内縁との間の電極間隙(
図9の表における第2電極間隙)は4.6mm~5.4mmであり、実施例3と比べて電極間隙の最大値と最小値との差が大きくなっていた。ヒータ電極122とヒータ電極123との同心度(
図9の表における第2同心度)は85.2%であり、実施例3と比べて小さくなっていた。
【0054】
実施例1~3と同様の手順で、比較例2のセラミックスヒータ100の温度評価を行った。比較例1においては、温度差ΔTは2.3℃であり、良好ではないと判定された。
【0055】
<実施形態の作用効果>
上記実施形態及び実施例1~3において、セラミックスヒータ100は、セラミックス基材110と、セラミックス基材110に埋設されたヒータ電極121~123(又はヒータ電極221~223)とを備えている。ヒータ電極121~123は、それぞれ、円形状又は円環形状の発熱領域121H~123Hを形成している。ヒータ電極221~223は、それぞれ、円形状又は円環形状の発熱領域221H~223Hを形成している。発熱領域121H~123H及び発熱領域221H~223Hは、セラミックス基材110の上面111の中心に対して同心状に配置されている。発熱領域122Hの外縁と、発熱領域122Hの径方向の外側に位置する部分を有する発熱領域123Hの内縁との間の、径方向の距離を、上面111の中心を通り、且つ、互いに直交する2本の直線L1、L2に沿って4箇所測ったときの、最大値に対する最小値の比である同心度が90%以上である。また、発熱領域121Hの外縁と、発熱領域122Hの内縁との間の、径方向の距離を、上面111の中心を通り、且つ、互いに直交する2本の直線L1、L2に沿って4箇所測ったときの、最大値に対する最小値の比である同心度が90%以上である。いずれの場合も、同心度は90%以上100%以下であることが好ましい。
【0056】
発熱領域222Hの外縁と、発熱領域222Hの径方向の外側に位置する部分を有する発熱領域223Hの内縁との間の、径方向の距離を、上面111の中心を通り、且つ、互いに直交する2本の直線L1、L2に沿って4箇所測ったときの、最大値に対する最小値の比である同心度が90%以上である。また、発熱領域221Hの外縁と、発熱領域222Hの内縁との間の、径方向の距離を、上面111の中心を通り、且つ、互いに直交する2本の直線L1、L2に沿って4箇所測ったときの、最大値に対する最小値の比である同心度が90%以上である。いずれの場合も、同心度は90%以上100%以下であることが好ましい。
【0057】
径方向の温度分布の均一性を向上させるために、径方向の内側と外側に配置された発熱領域の同心度を一定値以上とすることが好ましい。発熱領域の同心度が小さい場合、円周方向に沿って2つの発熱領域の間の距離のばらつきが大きくなるため、面積当たりの発熱量(ワット密度)に差が生じ、円周方向において温度不均一となる恐れがある。上記実施形態においては、径方向の内側と外側に配置された発熱領域の同心度が90%以上である。そのため、2つの発熱領域の間において、円周方向に沿った温度の不均一を抑制することができる。なお、セラミックス基材110の外縁と、最も外側のヒータ電極123の外縁との同心度は90%以上であることが好ましい。
【0058】
上記実施形態及び実施例1、2において、ヒータ電極122とヒータ電極123との平行度は0.1mm以下であった。異なる平面に配置されているヒータ電極間の平行度が大きい場合には、セラミックス基材110の上面111に対して供給される熱量が均等でなくなり、上面111の温度分布が不均一になる可能性がある。異なる平面に配置されているヒータ電極間の平行度を0.1mm以下とすることにより、セラミックス基材110の上面111の均温性を向上させることができる。異なる平面に配置されているヒータ電極間の平行度は0.0mm以上0.1mm以下が好ましい。
【0059】
上記実施例2において、ヒータ電極122とヒータ電極123とが上下方向5において互いに重なっていた。これにより、ヒータ電極122の発熱領域122Hとヒータ電極123の発熱領域123Hとを上下方向5にオーバーラップさせることができる。この場合には、セラミックス基材110の上面111の、発熱領域122Hと発熱領域123Hとの間に対応する領域において、発熱領域に覆われない領域が生じることを抑制することができ、温度が局所的に下がる箇所が発生することを抑制することができる。その結果、セラミックス基材110の上面111の均温性を向上させることができる。
【0060】
上記実施形態及び実施例1~3において、セラミックス基材110に3つのヒータ電極121~123(ヒータ電極221~223)が埋設されていることに起因して、セラミックス基材110には、3つの発熱領域121H~123Hが形成されている。なお、セラミックス基材110に4つ以上のヒータ電極を埋設して、セラミックス基材110に4つ以上の発熱領域を形成することもできる。発熱領域の数を3つ以上にすることにより、セラミックス基材110の上面111における径方向の均温性を向上させることができ、温度分布を細かく調整することができる。
【0061】
上記実施形態及び実施例1~3において、3つのヒータ電極121~123(ヒータ電極221~223)のうち、少なくとも2つのヒータ電極は同一平面上に配置されている。これにより、少なくとも2つの発熱領域が同一平面上に配置されている。3以上の発熱領域を有するマルチゾーンヒータにおいて、少なくとも2以上の発熱領域を同一平面に配置することにより、各ヒータ電極の配置や、外部電源との結線手段を容易化することができる。
【0062】
上記実施形態及び実施例1~3において、3つのヒータ電極121~123(ヒータ電極221~223)を最大厚さが0.2mm以下の金属メッシュにより形成することができる。ヒータ電極を、金属メッシュにより形成する場合には、焼成時にメッシュ電極が面内で微小に変位することができる。これにより、セラミックス基材とヒータ電極との境界で生じる内部応力が抑制されるとともに、メッシュ開口部でセラミックス同士の焼結が生じ、ヒータ電極の変形が抑制される。その結果ヒータ電極の形状を所定の形状に維持することが容易になる。
【0063】
上記実施形態において、セラミックスヒータ100の製造方法は、上面及び下面の平行度が0.1mm以下である、円板状のセラミックス成形体510(又はセラミックス仮焼体)を準備する工程と、前記セラミックス成形体510(又はセラミックス仮焼体)の上面の外径よりも小さく、且つ、互いに外径の異なる複数の円形状又は円環形状のヒータ電極121~123を準備する工程と、セラミックス成形体510(又はセラミックス仮焼体)の上面又は下面に、対応する複数のヒータ電極121~123を配置したときに、複数のヒータ電極121~123の外縁との間隔が0.2mm以下となるような外形を有する複数の凹部521~523を形成する工程と、複数のヒータ電極121~123を、対応する複数の凹部521~523にそれぞれ配置する工程とを備えている。
【0064】
このような製造方法によって、ヒータ電極121~123が所望の位置に埋設されたセラミックスヒータ100を製造することができる。
【0065】
上記実施形態において、セラミックス基材110の下面113に、筒状のシャフト160が設けられている。そして、端子151~154は、シャフト160の外径よりも内側に配置されている。この場合には、筒状のシャフト160の内側と外側を気密封止することにより、端子151~154をシャフト160の外部環境から保護することができる。また、筒状のシャフト160を設けることにより、セラミックス基材110が外部の装置等と直接接触することを避けることができる。これにより、セラミックス基材110を周囲から断熱することができ、セラミックス基材110の均熱性を高めることができる。
【0066】
<変更形態>
上述の実施形態は、あくまで例示に過ぎず、適宜変更しうる。例えば、セラミックス基材110、シャフト160の形状、寸法は上記実施形態のものには限られず、適宜変更しうる。また、セラミックス基材110に埋設される電極、導電性部材、接合部分、端子の形状、寸法、数等は適宜変更しうる。
【0067】
上記実施形態においては、ヒータ電極121~123として、モリブデン、タングステン、モリブデン及び/又はタングステンを含む合金を用いていたが、本発明はそのような態様には限られない。例えば、モリブデン、タングステン以外の金属又は合金を用いることもできる。
【0068】
上記実施形態においては、セラミックスヒータ100はセラミックス基材110に埋設された3つのヒータ電極121~123(又は3つのヒータ電極221~223)を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、セラミックスヒータ100のセラミックス基材110に埋設されている電極の数は、2つ又は4つ以上であってもよい。
【0069】
上記実施形態においては、セラミックスヒータ100はシャフト160を備えていたが、本発明はそのような態様には限られず、セラミックスヒータ100は必ずしもシャフト160を備えていなくてもよい。
【0070】
以上、発明の実施形態及びその変更形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記の記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に多様な変更または改良を加えることが当業者に明らかである。そのような変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが請求の範囲の記載からも明らかである。
【0071】
明細書、及び図面中において示した製造方法における各処理の実行順序は、特段に順序が明記されておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるので無い限り、任意の順序で実行しうる。便宜上、「まず、」「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するわけではない。