(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119681
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】パーティション用部材及びそれを用いたパーティション
(51)【国際特許分類】
E04B 2/74 20060101AFI20240827BHJP
A61L 9/014 20060101ALI20240827BHJP
E04B 1/82 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
E04B2/74 551Z
A61L9/014
E04B1/82 W
E04B2/74 561H
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026757
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】513007930
【氏名又は名称】テクナード株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166800
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 裕治
(74)【代理人】
【識別番号】100167438
【弁理士】
【氏名又は名称】原田 淳司
(72)【発明者】
【氏名】原 真澄
【テーマコード(参考)】
2E001
4C180
【Fターム(参考)】
2E001DF04
2E001DH21
2E001FA07
2E001GA12
2E001HD03
4C180AA02
4C180BB03
4C180BB04
4C180BB06
4C180BB07
4C180BB08
4C180BB15
4C180CC04
4C180CC15
4C180EA13X
4C180EA14X
4C180EA22X
4C180EA23X
4C180EA26X
4C180EA28X
4C180EA29X
4C180MM06
(57)【要約】
【課題】消臭性と吸音性を両立することができるパーティション用部材及びそれを用いたパーティションを提供する。
【解決手段】消臭部材と吸音部材とを備えたパーティション用部材100であって、消臭部材は、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する消臭層を備えた消臭シート1からなり、吸音部材は、エアーキャップ20とポリウレタンフォーム30との複合部材を備えるパーティション用部材100。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消臭部材と吸音部材とを備えたパーティション用部材であって、
前記消臭部材は、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する消臭層を備えた消臭シートからなり、
前記吸音部材は、エアーキャップとポリウレタンフォームとの複合部材を備える
パーティション用部材。
【請求項2】
請求項1に記載のパーティション用部材を用いたパーティション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パーティション用部材及びそれを用いたパーティションに関し、さらに詳しくは、消臭性と吸音性を両立することができるパーティション用部材及びそれを用いたパーティションに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、パーティションは、部屋や講堂等の空間を仕切る、取りはずしが可能な壁(簡易間仕切り、衝立)として使用されることが多い。
【0003】
簡易間仕切りとしては、例えば、「長辺の長さが短辺の長さの2倍である長方形の主表面を有し、発泡材で形成された共通のパネルを複数用いて組み立て可能な簡易間仕切りであって、床板として、1つ以上の前記パネルが用いられ、壁板として、複数の前記パネルが用いられ、前記パネルは、一方の短辺の中央部分に形成された短辺側凸部と、前記一方の短辺における前記短辺側凸部の設置位置に対応する他方の短辺の位置において、前記短辺側凸部の形状に対応して形成された短辺側凹部と、一方の長辺に形成された少なくとも1つの長辺側凸部と、前記一方の長辺における前記長辺側凸部の設置位置に対応する他方の長辺の位置において、前記長辺側凸部の形状に応じて形成された少なくとも1つの長辺側凹部と、を有する簡易間仕切り。」(特許文献1)等が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のパーティションは、台風や地震による大規模な自然災害の発生による避難場所でのプライバシーの確保をするための簡易的な間仕切りであるため、吸音性や消臭性に劣っていた。
【0006】
そこで、本発明ではこのような背景の下において、消臭性と吸音性を両立することができるパーティション用部材及びそれを用いたパーティションを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
しかるに本発明者は、かかる事情に鑑み鋭意研究を重ねた結果、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する消臭層を備えた消臭シートからなる消臭部材を使用することで、消臭性と吸音性を両立することができることを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]
消臭部材と吸音部材とを備えたパーティション用部材であって、
前記消臭部材は、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する消臭層を備えた消臭シートからなり、
前記吸音部材は、エアーキャップとポリウレタンフォームとを備える、
パーティション用部材。
[2]
[1]に記載のパーティション用部材を用いたパーティション。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する消臭層を備えた消臭シートからなる消臭部材を使用することで、消臭性と吸音性を両立することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一態様に係るパーティション用部材の概略構成を示す断面図である。
【
図2】
図1の消臭シートの概略構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の一態様に係るパーティションの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一態様に係るパーティション用部材について、図面を参照して説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0012】
図1は、本発明の一態様に係るパーティション用部材の概略構成を示す断面図である。
図2は、
図1の消臭シートの概略構成を示す断面図である。
【0013】
本実施形態のパーティション用部材の全体構成について、主に
図1を用いて説明する。
本実施形態のパーティション用部材100は、
図1に示すように、エアーキャップ20とポリウレタンフォーム30との複合部材を備えた吸音部材と、消臭シート1とからなる消臭部材とを備えている。
【0014】
<<消臭部材>>
主に
図2を用いて説明する。
本実施形態の消臭部材は、
図2に示す消臭シート1から構成されている。
【0015】
<消臭シート>
主に
図2を用いて説明する。
消臭シート1は、
図2に示すように、基材シート2と基材シート3とが重ね合わせられ、その重ね合わせられた面4,5同士の間に、多数の粒状をなすシリカゲル6が挟持されて消臭層9が形成されてなる。
【0016】
消臭シート1は、例えば、基材シート2と基材シート3との間に、多数の粒状をなすシリカゲル6を挟み、縫合や熱溶着等により固定して消臭層9を形成することにより作製することができる。
【0017】
〔基材シート〕
基材シート2,3は、特に限定はないが、通気性を備え、空気や湿分を透過可能なものが好ましく、例えば不織布、織布、編物等が用いられる。基材シート2,3の材質としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂等の合成樹脂、レーヨン等が使用できる。基材シート2はウェブ7の集合体であり、同じく基材シート3はウェブ8の集合体である。
【0018】
〔消臭層〕
消臭層9は、
図2に示すように、基材シート2,3間において層状(図では4層)をなし、基材シート2,3の対向面4,5間に全体に亘り均一に分布してなる多数のシリカゲル6の集合体である。シリカゲル6を上下両側から矜持した状態において、基材シート2,3の対向面4,5は、
図2において拡大して示すように、基材シート2,3の構成素材であるウェブ7,8により互いに縫合されている。
【0019】
シリカゲル6を固定するために、基材シート2と基材シート3との重合部分にはシリカゲル6を上下両側から挟持した状態においてニードルパンチが複数箇所に亘って施されている。すなわち各ニードルパンチの箇所において基材シート2と基材シート3のウェブ7,8同士が機械的に絡み合うことにより、その絡み合った各箇所付近に基材シート2と基材シート3とが接合され固定されている。これにより、ウェブ7,8により対向面4と対向面5との間が縫合された基材シート2と基材シート3にてシリカゲル6は層状をなしたまま移動不能に挟着保持されている。
【0020】
〔シリカゲル〕
【0021】
シリカゲルは水分の他に空気中に飛散する臭いの元であるアンモニア、トリメチルアミン、硫化水素、メルカプタンや、加齢臭の原因となるノネナールガス等も吸着する消臭機能を有する。
また、シリカゲルは、調湿機能や吸湿機能に優れているため、湿度を一定以上に保つことができる。
【0022】
シリカゲル6の粒は、多数の微細貫通孔を有しており、高湿度雰囲気下では表面吸着又は毛細管現象により空気中の水分を吸収し、乾燥雰囲気下では吸収した水分を放出し得る機能を有している。そのため、かかる消臭機能及び吸湿機能を良好にするべく、本実施形態におけるシリカゲル6には微細空間容積が0.5~1.0ml/g及び表面積が650~350m2/gの範囲内にあるものが好ましい。
【0023】
また、微細貫通孔の孔径は30~120オングストロームのものが消臭機能等を良好に発揮する上で好ましい。
【0024】
このように、多数のシリカゲル6の粒が基材シート2と基材シート3とに挟持されることで、高い消臭性、防湿性、調湿性を長時間に亘って保つことができる。
【0025】
また、微細貫通孔の孔径は30~120オングストロームのものが消臭機能等を良好に発揮する上で好ましい。
【0026】
<<吸音部材>>
主に
図1を用いて説明する。
本実施形態の吸音部材は、
図1に示すように、エアーキャップ20とポリウレタンフォーム30との複合部材を備えるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0027】
<エアーキャップ>
本実施形態におけるエアーキャップ20は、特に限定はないが、エア(空気)の詰まった直径1cm程度の突起が沢山ついたシート状の気泡緩衝材(例えば、川上産業社製のプチプチ(登録商標))が好ましい。
本実施形態における、エアーキャップ20の厚みは特に限定はないが、通常、5~10mmである。
【0028】
<ポリウレタンフォーム(ポリウレタンフォーム)>
本実施形態における、ポリウレタンフォーム30は、NCO(イソシアネート)基を有するポリイソシアネートと、OH(ヒドロキシル)基を有するポリオール(ポリエーテル系、ポリエステル系)とを、触媒、発泡剤、整泡剤等と一緒に混合して、泡化反応と樹脂化反応を同時に行わせて得られるプラスチック発泡体である。
本実施形態におけるポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォーム(軟質ウレタンフォーム)、硬質ポリウレタンフォーム(硬質ウレタンフォーム)の何れを使用することもできるが、防音性の点から、軟質ウレタンフォームが好ましい。軟質ウレタンフォームの発砲倍率は50倍が好ましい。また、ポリウレタンフォームは、ポリエーテル系、ポリエステル系の何れも使用できる。本実施形態におけるポリウレタンフォームは、具体的には、エバーライト(商品名)が好ましい。
本実施形態における、ポリウレタンフォーム30の厚みは特に限定はないが、10mmが好ましい。
【0029】
<粘着層40>
主に
図1を用いて説明する。
本実施形態においては、
図1に示すように、エアーキャップ20とポリウレタンフォーム30とを積層するため、エアーキャップ20とポリウレタンフォーム30との間に粘着層40を介在させている。
粘着剤としては、特に限定はないが、例えば、水性接着剤(例えば、酢酸ビニル、EVA、アクリル等の合成樹脂ポリマーを水中に均一に分散させたエマルショ系接着剤等)があげられる。
なお、両面テープ等でエアーキャップ20とポリウレタンフォーム30とを接着しようとすると、音が乱反射して防音部材としての性能が劣るため好ましくない。
【0030】
<複合部材>
主に
図1を用いて説明する。
本実施形態における複合部材は、粘着層40を介して、エアーキャップ20とポリウレタンフォーム30とを接着させた部材である。
【0031】
<<パーティション用部材の作製>
本実施形態のパーティション用部材100の作製方法は特に限定はないが、例えばつぎのようにして作製することができる。すなわち、粘着層40を介してエアーキャップ20とポリウレタンフォーム30とを接着させた複合部材(吸音部材)と、2枚の基材シートの間にシリカゲルを含有する消臭層を備えた消臭シート1とを準備し、フレームラミネート加工等により、ポリウレタンフォーム30と消臭シート1とを接着することにより、本実施形態のパーティション用部材100を作製することができる。
【0032】
本実施形態のパーティション用部材100は、エアーキャップ20での音の減衰効果、さらに背後のポリウレタンフォーム30での減衰効果という二重の減衰効果によって、特に低周波領域において極めて高い吸音率(垂直入射吸音率)を示す、また、中域(315~1250Hz)では反射の要素が拡大し吸音率は低下するが、さらに高周波領域では再び高い吸音率を示す。
【0033】
〔垂直入射吸音率〕
垂直入射吸音率は、JIS-A1405に準じて測定することができる。試料を管の一端に取り付け、他端から純音を出すと、入射波と反射波の干渉により、管に定在波が生じる。このとき試料での吸収の程度によって決まる、管内の音を測定し垂直入射吸音率を求めることができる。
【0034】
つぎに、本実施形態のパーティション用部材を用いたパーティションの全体構成について、主に
図3を用いて説明する。
図3は、本発明の一態様に係るパーティションの平面図である。
【0035】
<<パーティション>>
本実施形態のパーティション200は、例えば、
図3に示すように、縦のフレーム51と横のフレーム52とで区切られたスペース61,62に、本実施形態のパーティション用部材100をそれぞれ嵌め込んで連結したものである。
図3のパーティション200は、上下のスペース61,62に2分割されているが、本実施形態のパーティション200の大きさ(幅、高さ)は特に限定はなく、使用する場所、使用目的に応じて適宜設定される。
また、本実施形態のパーティション200の縦のフレーム51の下端には、高さ調整を行うためのアジャスター53が取り付けられているが、キャスター等により移動可能にすることもできる。
また、本実施形態のパーティションは、パーティション200を複数個連結して使用することもできる。
なお、連結手段は特に限定はないが、例えば金具、ファスナー等があげられる。
【0036】
<フレーム>
フレーム51,52の素材については特に限定はなく、例えばアルミ素材、スチール素材、アクリル素材等を使用することができる。
フレームの厚みは、パーティション用部材100の厚みと略同等か少し厚みのある方が、実施形態のパーティション200を嵌め込んで連結しやすいため好ましい。
【0037】
スペース61,62に本実施形態のパーティション200を嵌め込む場合、パーティション用部材100のエアーキャップ20側、消臭シート1側のどちらを表側にしても差し支えない。
本実施形態のパーティション200は、災害時の簡易トイレ等の簡易間仕切りに利用することもできる。トイレ等の簡易間仕切りに使用する場合は、消臭シート1側がトイレ側になるようパーティション200を設置すればよい。
また、本実施形態のパーティション200は、消臭部材と吸音部材とからなり、隙間がなく秘匿性が高いため、トイレ等の簡易間仕切りに好適に使用することができる。
【0038】
<変形例>
以上、一実施形態に係るパーティション用部材及びそれを用いたパーティションを説明したが、本発明はこの実施形態に限られるものではなく、例えば、以下のような変形例であってもよい。また、実施形態と変形例とを組み合わせたものでもよいし、変形例同士を組み合わせたものでもよい。また、実施形態や変形例に記載していない例や要旨を逸脱しない範囲の設計変更があっても本発明に含まれる。
【0039】
〔吸音部材〕
本実施形態の吸音部材は、エアーキャップとポリウレタンフォームとを備えるが、必ずしもこれに限定されるものではなく、エアーキャップとポリウレタンフォーム以外に他の吸音材料を備えていてもよく、もしくはエアーキャップとポリウレタンフォームに代えて他の吸音材料を使用しても差し支えない。
【0040】
〔消臭部材〕
本実施形態では消臭部材として消臭シートを使用したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、消臭シート以外に他の消臭材料を備えていてもよく、もしくは消臭シート1に代えて他の消臭料を使用しても差し支えない。
【0041】
〔消臭層〕
消臭層の材質としてシリカゲルを使用したが、消臭機能を有するものであればシリカゲルに限定されるものではなく、例えば、ゼオライト、トルマリン等の天然多孔石、備長炭等の炭材や活性炭、パーライト、ケイ酸ソーダ等が使用することもできる。これらは単独でもしくは2種以上併用することができる。
【0042】
本実施形態においては、ポリウレタンフォーム30と消臭シート1との接着は、フレームラミネート加工により行ったが、これに限定されるものではなく、水性接着剤(例えば、酢酸ビニル、EVA、アクリル等の合成樹脂ポリマーを水中に均一に分散させたエマルショ系接着剤等)等の粘着剤等を使用しても差し支えない。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明のパーティション用部材及びそれを用いたパーティションは、消臭性と吸音性を両立することができるため、災害時の簡易トイレ等の簡易間仕切りに利用することもできる。