(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119691
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】測定ユニット及びフィルタ装置
(51)【国際特許分類】
G01N 17/00 20060101AFI20240827BHJP
B01D 29/07 20060101ALI20240827BHJP
G01L 13/00 20060101ALI20240827BHJP
G01N 33/28 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N17/00
B01D29/06 510A
G01L13/00 B
G01N33/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026772
(22)【出願日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発/革新的センシング技術開発/極限環境の液体管理をIoT化する革新的粘性センサの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】若林 正法
【テーマコード(参考)】
2F055
2G050
4D116
【Fターム(参考)】
2F055AA39
2F055BB05
2F055CC02
2F055CC06
2F055DD01
2F055EE27
2F055FF34
2F055FF45
2F055GG25
2G050AA02
2G050EB02
4D116AA09
4D116BB01
4D116BC13
4D116BC23
4D116BC25
4D116BC44
4D116BC47
4D116BC76
4D116BC77
4D116DD05
4D116FF16B
4D116GG12
4D116GG13
4D116KK04
4D116QA13C
4D116QA13D
4D116QA13F
4D116QA28C
4D116QA28D
4D116QB03
4D116QB17
4D116QB24
4D116QB26
4D116QB32
4D116QC04B
4D116QC05B
4D116QC15B
4D116VV04
(57)【要約】
【課題】1つの部材を取り付けるだけで、差圧と、フィルタ装置の濾過対象の液体の劣化の程度を測定することができる。
【解決手段】液体を濾過する濾材を有するフィルタ装置に設けられる柱状の柱状部を有する筐体と、筐体に設けられており、濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部と、液体の粘度を測定する粘度センサと、液体の温度を測定する温度センサと、を備える。柱状部の内部には両端が覆われた中空部が設けられており、中空部には粘度センサ及び温度センサが設けられており、筐体には中空部と筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を濾過する濾材を有するフィルタ装置に設けられる柱状の柱状部を有する筐体と、
前記筐体に設けられており、前記濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部と、
前記液体の粘度を測定する粘度センサと、
前記液体の温度を測定する温度センサと、
を備え、
前記柱状部の内部には、両端が覆われた中空部が設けられており、
前記中空部には、前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられており、
前記筐体には、前記中空部と前記筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられている
ことを特徴とする測定ユニット。
【請求項2】
前記中空部は、柱状であり、前記柱状部の中心軸に沿って設けられており、
前記差圧検出部は、前記中空部の内部に移動可能に設けられたスプールを有し、
前記中空部は、前記スプールにより第1空間及び第2空間に分割されており、
前記第1空間には、前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられており、
前記連通孔は、前記第1空間と前記筐体の外部の空間とを連通する複数の第1連通孔と、前記第2空間と前記筐体の外部の空間とを連通する1つの第2連通孔と、を有する
ことを特徴とする請求項1に記載の測定ユニット。
【請求項3】
前記第1連通孔は、2つであり、前記中心軸に沿って見たときに前記中心軸を通る直線に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項2に記載の測定ユニット。
【請求項4】
前記第1空間は、前記第1連通孔を介して前記上流側と連通し、
前記第2空間は、前記第2連通孔を介して前記下流側と連通し、
前記スプールは、前記第1空間と前記第2空間とを連通する連通部を有し、
前記連通部の断面積は、前記第1連通孔及び前記第2連通孔の断面積より小さい
ことを特徴とする請求項2又は3に記載の測定ユニット。
【請求項5】
前記連通部は、前記スプールの外周面に設けられた溝又は前記スプールに設けられた孔である
ことを特徴とする請求項4に記載の測定ユニット。
【請求項6】
前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられた基板を有し、
前記基板は、前記中空部の端面に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の測定ユニット。
【請求項7】
前記柱状部に設けられており、ICタグと通信可能なアンテナを備え、
前記アンテナは、前記柱状部の先端近傍に設けられており、
前記差圧検出部、前記粘度センサ及び前記温度センサは、前記アンテナよりも前記柱状部の根元側に設けられている
ことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の測定ユニット。
【請求項8】
液体を濾過する濾材と、
前記濾材が内部に設けられたフィルタケースと、
前記フィルタケースに設けられた測定ユニットと、
を備え、
前記測定ユニットは、
前記フィルタケースに取り付けられた柱状の柱状部を有する筐体と、
前記筐体に設けられており、前記濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部と、
前記柱状部に設けられており、前記液体の粘度を測定する粘度センサと、
前記柱状部に設けられており、前記液体の温度を測定する温度センサと、
を備え、
前記柱状部の内部には、両端が覆われた中空部が設けられており、
前記中空部には、前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられており、
前記筐体には、前記中空部と前記筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられている
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項9】
前記中空部は、柱状であり、前記柱状部の中心軸に沿って設けられており、
前記差圧検出部は、前記中空部の内部に移動可能に設けられたスプールを有し、
前記中空部は、前記スプールにより第1空間及び第2空間に分割されており、
前記第1空間には、前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられており、
前記連通孔は、前記第1空間と前記筐体の外部の空間とを連通する複数の第1連通孔と、前記第2空間と前記筐体の外部の空間とを連通する1つの第2連通孔と、を有する
ことを特徴とする請求項8に記載のフィルタ装置。
【請求項10】
前記第1連通孔は、2つであり、前記中心軸に沿って見たときに前記中心軸を通る直線に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項9に記載のフィルタ装置。
【請求項11】
前記第1空間は、前記第1連通孔を介して前記上流側と連通し、
前記第2空間は、前記第2連通孔を介して前記下流側と連通し、
前記スプールは、前記第1空間と前記第2空間とを連通する連通部を有し、
前記連通部の断面積は、前記第1連通孔及び前記第2連通孔の断面積より小さい
ことを特徴とする請求項9又は10に記載のフィルタ装置。
【請求項12】
前記連通部は、前記スプールの外周面に設けられた溝又は前記スプールに設けられた孔である
ことを特徴とする請求項11に記載のフィルタ装置。
【請求項13】
前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられた基板を有し、
前記基板は、前記中空部の端面に沿って設けられている
ことを特徴とする請求項8から12のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【請求項14】
前記濾材の上端面を覆うように設けられた上プレートと、
前記上プレートに設けられたICタグと、を備え、
前記測定ユニットは、ICタグと通信可能なアンテナを有し、
前記アンテナは、前記柱状部の先端近傍に設けられており、
前記柱状部は、前記アンテナが前記フィルタケースの内部に位置するように前記フィルタケースに設けられている
ことを特徴とする請求項8から13のいずれか一項に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定ユニット及びフィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、略柱形状のケースと、ケースに設けられ、ICタグと通信可能なアンテナを有するアンテナ部と、ケースに設けられたセンサと、を備えた測定ユニットが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ装置で濾過を行う液体、特に添加物が添加された油や燃料では、使用時間により添加物が劣化し、部品に悪影響を及ぼすおそれがあるため、液体の劣化の程度を測定したいという要求がある。しかしながら、特許文献1に記載の発明では、測定ユニットにより、ICタグの読み取りと、濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧(以下、単に「差圧」という)の測定とが同時に可能であるが、フィルタ装置で濾過を行う液体の劣化の程度を測定することはできない。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、1つの部材を取り付けるだけで、差圧とフィルタ装置の濾過対象の液体の劣化の程度を測定することができる測定ユニット及びフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係る測定ユニットは、例えば、液体を濾過する濾材を有するフィルタ装置に設けられる柱状の柱状部を有する筐体と、前記筐体に設けられており、前記濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部と、前記液体の粘度を測定する粘度センサと、前記液体の温度を測定する温度センサと、を備え、前記柱状部の内部には、両端が覆われた中空部が設けられており、前記中空部には、前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられており、前記筐体には、前記中空部と前記筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の別の態様に係るフィルタ装置は、例えば、液体を濾過する濾材と、前記濾材が内部に設けられたフィルタケースと、前記フィルタケースに設けられた測定ユニットと、を備え、前記測定ユニットは、前記フィルタケースに取り付けられた柱状の柱状部を有する筐体と、前記筐体に設けられており、前記濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部と、前記柱状部に設けられており、前記液体の粘度を測定する粘度センサと、前記柱状部に設けられており、前記液体の温度を測定する温度センサと、を備え、前記柱状部の内部には、両端が覆われた中空部が設けられており、前記中空部には、前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられており、前記筐体には、前記中空部と前記筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る測定ユニット及びフィルタ装置によれば、筐体の柱状部がフィルタ装置に設けられており、筐体にはフィルタ装置が有する濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部が設けられている。筐体の内部に両端が覆われた中空部が設けられており、中空部に粘度センサ及び温度センサが設けられている。筐体には、中空部と筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられている。これにより、1つの部材を取り付けるだけで、差圧と、フィルタ装置の濾過対象の液体の劣化の程度(粘度及び温度から求められる)を測定することができる。
【0009】
前記中空部は、柱状であり、前記柱状部の中心軸に沿って設けられており、前記差圧検出部は、前記中空部の内部に移動可能に設けられたスプールを有し、前記中空部は、前記スプールにより第1空間及び第2空間に分割されており、前記第1空間には、前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられており、前記連通孔は、前記第1空間と前記筐体の外部の空間とを連通する複数の第1連通孔と、前記第2空間と前記筐体の外部の空間とを連通する1つの第2連通孔と、を有してもよい。このように、スプールで中空部を第1空間及び第2空間に分割して第1空間に温度センサ及び粘度センサを設けることで、温度センサ及び粘度センサを設けるスペースを別途設ける必要がなく、筐体を小型化することができる。
【0010】
前記第1連通孔は、2つであり、前記中心軸に沿って見たときに前記中心軸を通る直線に沿って設けられていてもよい。第1空間に濾過対象の液体が流入及び流出しやすくなる。
【0011】
前記第1空間は、前記第1連通孔を介して前記上流側と連通し、前記第2空間は、前記第2連通孔を介して前記下流側と連通し、前記スプールは、前記第1空間と前記第2空間とを連通する連通部を有し、前記連通部の断面積は、前記第1連通孔及び前記第2連通孔の断面積より小さくてもよい。また、前記連通部は、前記スプールの外周面に設けられた溝又は前記スプールに設けられた孔であってもよい。すなわち、連通部を介して液体を第1空間から第2空間に導く。これにより、第1空間に作動油が流入しやすくなる。
【0012】
前記粘度センサ及び前記温度センサが設けられた基板を有し、前記基板は、前記中空部の端面に沿って設けられていてもよい。これにより、温度センサ及び粘度センサを中空部に露出させて、作動油の状態を正確に把握することができる。
【0013】
前記柱状部に設けられており、ICタグと通信可能なアンテナを備え、前記アンテナは、前記柱状部の先端近傍に設けられており、前記差圧検出部、前記粘度センサ及び前記温度センサは、前記アンテナよりも前記柱状部の根元側に設けられていてもよい。これにより、ICタグとアンテナを近づけることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、1つの部材を取り付けるだけで、差圧とフィルタ装置の濾過対象の液体の劣化の程度を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】リターンフィルタ1及び測定ユニット2の概略を示す断面図である。
【
図2】リターンフィルタ1及び測定ユニット2の概略を示す断面斜視図である。
【
図3】測定ユニット2の概略を示す断面斜視図である。
【
図6】制御部100の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図10】測定ユニット4の概略を示す断面図である。
【
図11】測定ユニット4Aの概略を示す斜視図である。
【
図12】測定ユニット4Aの概略を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。以下の実施の形態では、作動油を貯留するタンクに設けられたリターンフィルタを例に説明するが、本発明のフィルタ装置はリターンフィルタに限られず、例えば燃料フィルタに用いることができる。また、本実施の形態では、濾過対象の液体として作動油を例に説明するが、濾過対象の液体は作動油に限られず、添加物を含む様々な液体、例えば燃料(石油系、エタノール系)でもよい。
【0017】
<第1の実施の形態>
図1は、リターンフィルタ1及び測定ユニット2の概略を示す断面図である。
図2は、リターンフィルタ1及び測定ユニット2の概略を示す断面斜視図であり、リターンフィルタ1の要部を拡大表示している。
図1では断面を示すハッチングを一部省略する。
【0018】
リターンフィルタ1は、主として、測定ユニット2と、ケース10と、フィルタエレメント20と、ヘッド30と、ICタグ40と、を有する。測定ユニット2は、リターンフィルタ1に取り付けて使用される。ICタグ40は、アンテナ80(後に詳述)と通信可能であるとともに、アンテナ80から受信した電波を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする小型の電子部品である。なお、ICタグ40は必須ではない。
【0019】
ケース10は、耐腐食性の高い金属(例えば、ステンレス)により形成されており、タンク120の上面からタンク120の内部に突出するように設けられる。なお、
図1では、ケース10がタンク120と一体化されているが、ケース10がタンク120と別部品で形成されていてもよい。
【0020】
ケース10は、有底筒形状であり、上端面が開口している。ケース10は、内部が空洞であり、上端の開口を覆うようにヘッド30が設けられている。ケース10及びヘッド30(本発明のフィルタケースに相当)の内部には、フィルタエレメント20等が設けられている。
【0021】
ケース10は、底面11を有する。底面11を貫通するように、流出部12が設けられる。流出部12は、フィルタエレメント20の内部の空間(空間S2)とケース10の外部の空間とを連通する。
【0022】
ケース10の側面には、流入部13が設けられる。流入部13は、ケース10の内部かつフィルタエレメント20の外部の空間(空間S1)に作動油を流入させる。
【0023】
フィルタエレメント20は、有底筒形状(ここでは、有底円筒形状)の部材であり、ケース10及びヘッド30により形成される内部空間に設けられる。フィルタエレメント20は、主として、濾材21と、内筒22と、プレート24と、プレート25とを有する。
【0024】
濾材21は、液体を濾過する部材であり、両端に開口を有する筒形状(ここでは、円筒形状)の部材である。濾材21は、合成樹脂や紙等を用いた濾紙をひだ折りにし、ひだ折りにした濾紙の両端を連結して円筒状にすることによって形成される。濾材21の内側には、略全域に作動油が通過する孔が形成された内筒22が設けられる。なお、内筒22は必須ではない。また、濾材21の外側に、略全域に作動油が通過する孔が形成された外筒が設けられていてもよい。
【0025】
濾材21の上側の端には、樹脂製のプレート24が設けられる。プレート24は濾材21及び内筒22の上端面を覆う。プレート24と濾材21とは、接着剤により接着されている。接着剤は、樹脂、ゴム、エラストマーを主材料とする様々な種類の有機接着剤を用いることができる。
【0026】
プレート24は、主として、濾材21が下側に当接するように、濾材21の上端面に沿って設けられた略円板形状の板状部24aと、板状部24aの外周縁に設けられた筒状部24bと、板状部24aの内周縁に設けられた筒状部24cと、板状部24aに設けられた凸部24dと、を有する。筒状部24bは、板状部24aから下向きに(底面11に向けて)突出している。筒状部24cは、板状部24aから上向き(濾材21とは反対側に向けて)及び下向きに突出している。
【0027】
凸部24dは、板状部24aから上向きに突出している。凸部24dには、ICタグ40が設けられている。
【0028】
濾材21の下側の端には、プレート25が設けられる。プレート25は濾材21及び内筒22の下端面を覆う略中空円板形状の部材である。プレート25の上側の面には、濾材21が挿入される凹部25aが形成される。凹部25aと濾材21とは、接着剤により接着されている。
【0029】
プレート25の略中央に形成された孔25bには、流出部12が挿入される。孔25bと流出部12とは、シール部材(例えば、Oリング)91によりシールされる。
【0030】
ヘッド30は、ケース10の上端面の開口部を覆うように、ケース10及びプレート24(ここでは、筒状部24c)に設けられる。
【0031】
ヘッド30は、耐腐食性の高い金属(例えば、ステンレス)により形成される。ヘッド30は、主として、筒状部31と、カバー32と、取付部33とを有する。筒状部31は、円筒形状であり、ケース10に固定されている。カバー32は、略板状の部材であり、筒状部31の上側(+z側)に、筒状部31の中空部を覆うように設けられている。カバー32は、筒状部31に対して着脱可能である。カバー32と筒状部31とは、シール部材(例えば、Oリング)93によりシールされている。
【0032】
カバー32には、取付部33が設けられている。取付部33は、略筒状の部材であり、カバー32から下向きに突出している。取付部33の先端(底面11側の端)には、バルブ47が設けられている。取付部33は筒状部24cに挿入されており、バルブ47は空間S2に挿入されている。取付部33と筒状部24cとは、シール部材(例えば、Oリング)92によりシールされている。通常バルブ47は閉じているが、濾材21が目詰まりしてケース10内の圧力が高くなると、バルブ47が開き、空間S1から空間S2に作動油が流れることで、リターンフィルタ1の破損が防止される。バルブ47は既に公知であるため、説明を省略する。
【0033】
筒状部31の内径は、プレート24の外径より大きい。筒状部31の側面には、当該側面を貫通する孔31aが形成される。孔31aに測定ユニット2を挿入して固定することで、筒状部31に測定ユニット2が設けられる。筒状部31(孔31a)と測定ユニット2とは、シール部材(例えば、Oリング)94、95によりシールされている。
【0034】
ヘッド30には、空間S2と孔31aとを連通する流路35が設けられている。流路35は、取付部33に形成された孔33a、カバー32に形成された孔32a、カバー32と筒状部31との間の空間30a及び筒状部31に形成された孔31bにより構成されている。流路35の一端(孔33aの一端)が空間S2に開口し、他端(孔31bの一端)が孔31aの側面に開口する。
【0035】
次に、測定ユニット2について説明する。
図3は、測定ユニット2の概略を示す断面斜視図である。
図4は、測定ユニット2の概略を示す断面図である。
図4では断面を示すハッチングを一部省略する。
【0036】
測定ユニット2は、主として、筐体50と、差圧検出部60と、センサ部70と、アンテナ80とを有する。以下、筐体50の長手方向をz方向とし、z方向に直交する2方向をx方向及びy方向とする。また、x方向とy方向とは直交する。ただし、アンテナ80は必須ではない。
【0037】
筐体50は、主として、ケース51と、カバー52、53と、挿入部材54と、固定部材55とを有する。ケース51は、リターンフィルタ1に取り付けられる(
図2参照)柱状の柱状部51v、51wを有する。柱状部51vは、孔31aに挿入されている。また、柱状部51wは、筒状部31の孔31aが設けられた端面に当接している。
【0038】
カバー52、53は、有底円柱形状であり、ケース51の両端にそれぞれ設けられている。カバー52は、ケース51の一方(+z側)の端を覆うように設けられており、カバー53は、ケース51の他方(-z側)の端を覆うように設けられている。ケース51とカバー52とは、シール部材(例えば、Oリング)96によりシールされており、ケース51とカバー53とは、シール部材(例えば、Oリング)97によりシールされている。
【0039】
ケース51には、穴51aと、穴51bと、孔51cと、穴51dと、溝51eと、孔51fと、孔51gと、穴51kとが設けられている。ケース51の両端はそれぞれ端面51m、51nである。
【0040】
穴51a、穴51b及び穴51dと一体となっており、穴51dは端面51nに開口する。穴51bは、穴51dよりも端面51m側(+z側)に設けられており、穴51aは、穴51bよりも端面51m側に設けられている。穴51bの直径は穴51aの直径より大きく、穴51dの直径は穴51bの直径より大きい。孔51cは、一端が穴51bの底面に開口し、他端が端面51nに開口する。穴51kは端面51mに開口する。
【0041】
穴51dには、溝51eが設けられている。穴51d及び穴51bには挿入部材54が設けられており、溝51eには固定部材55が設けられている。挿入部材54は、小径部54aと、小径部54aより直径が大きい大径部54bとを有する。大径部54bが穴51dに挿入されており、小径部54aが穴51bに挿入されている。穴51d及び穴51bに挿入部材54を挿入した状態で溝51eに固定部材55を取り付けることで、穴51aの端面51n側の端を覆う。その結果、両端が覆われた中空部S3が柱状部51v、51wの内部に設けられる。
【0042】
中空部S3には、差圧検出部60が設けられている。差圧検出部60は、主として、検出ユニット61と、スプール62と、磁石63と、弾性部材64と、を有する。
【0043】
スプール62は、円柱形状であり、中空部S3の内部をz方向に移動可能に設けられている。外周面62bが穴51bに沿って摺動することで、スプール62がz方向に移動する。
【0044】
スプール62は、中空部S3を空間S4(本発明の第2空間に相当)と空間S5(本発明の第1空間に相当)とに分割する。空間S4には孔51f(本発明の第2連通孔に相当)の一端が開口する。ケース51と挿入部材54とは、シール部材(例えば、Oリング)98によりシールされている。したがって、中空部S3には作動油が流入しない。
【0045】
孔51fは、柱状部51vの側面を径方向(ここでは、x方向)に貫通しており、孔51fの他端は、柱状部51vの外周面に開口している。その結果、孔51fは、孔31b(
図1、2参照)と空間S4とを連通する。すなわち、空間S4は、孔51f及び流路35の一端(孔33aの一端)を介して空間S2(濾材21の下流側)と連通する。また、空間S5には、孔51g(本発明の第1連通孔に相当、後に詳述)の一端が開口する。
【0046】
弾性部材64は、例えばコイルばねであり、一端がスプール62に設けられ、他端が穴51bの底面に設けられる。弾性部材64は、スプール62に-z方向の力を付勢する。磁石63は、スプール62の穴51aの底面と対向する面、すなわちスプール62の端面51m側の面に設けられている。
【0047】
検出ユニット61は、穴51bの内部に設けられている。検出ユニット61は、z方向の位置が調整可能である。
【0048】
検出ユニット61には、磁界検出素子61aが設けられている。磁界検出素子61aは、磁石63により形成される磁界の変化を検出する。磁界検出素子61aは、リードスイッチ、ホール素子等を用いることができる。磁界検出素子61aの検出結果は、図示しない信号線を介して測定ユニット2の外部に出力される。リードスイッチ及びホール素子はすでに公知であるため、説明を省略する。
【0049】
また、中空部S3(ここでは、空間S5)には、センサ部70が設けられている。センサ部70は、液体の温度を測定する温度センサ71(
図6参照、後に詳述)及び液体の粘度を測定する粘度センサ72(
図6参照、後に詳述)を有する。なお、粘度センサ72は、例えば、山本泰之・松本壮平 「MEMS技術を用いた超小型粘度センサー」(「計測と制御」 第54巻 第5号 2015年5月号 351-355頁)に開示されているMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)等で構成することができる。
【0050】
本実施の形態では、センサ部70は、温度センサ71及び粘度センサ72が実装された基板を有し、基板は、中空部S3の端面に沿って、すなわち挿入部材54に設けられている。その結果、温度センサ71及び粘度センサ72は空間S5に露出している。作動油の状態を正確に把握するために、温度センサ71及び粘度センサ72は、近傍に(たとえば、隣接して)配置することが望ましい。また、基板は図示しないアクチュエータを有し、基板全体又は一部が振動可能である。
【0051】
ケース51には中心軸axに沿った孔51cが設けられており、挿入部材54には中心軸axに沿った孔54cが設けられている。孔51c及び孔54cの内部に設けられた線により、基板85とセンサ部70とが電気的に接続されている。これにより、温度センサ71、粘度センサ72及びアクチュエータに電気が供給されるとともに、温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果が基板85に伝達される。
【0052】
図5は、測定ユニット2の概略を示す断面図である。
図4と
図5は、測定ユニット2を切断する切断面の角度が異なる。
図5では断面を示すハッチングを一部省略する。
図5では、スプール62が最も-z側に位置している。
【0053】
孔51gの一端は穴51a及び穴51dにより形成された中空部S3、具体的にはスプール62の下側(-z側)、すなわち、空間S5に開口している。また、孔51gの他端は、柱状部51vの外周面に開口している。孔51gは、柱状部51vの側面を径方向に貫通している。
【0054】
柱状部51vの外側にはカバー53が設けられている。カバー53には、カバー53の側面を径方向に貫通する孔53aが設けられている。孔53aは、孔51gと連通している。
【0055】
孔51g及び孔53a(本発明の第1連通孔に相当)は、2つであり、中心軸axに沿って見たときに中心軸axを通る直線l1に沿って、すなわち180°おきに設けられている。そのため、
図5では2つの孔51g及び孔53aが露出している。孔51g及び孔53aを介して空間S5に作動油を流入させるが、孔51g及び孔53aを180°おきに2個設けることで、空間S5に作動油が流入及び流出しやすくなる。また、作動油を流し、空間S5に存在する作動油を順次入れ替えることができる。ただし、孔51g及び孔53aは180°おきに限定されない。
【0056】
図2に示すように、カバー53と孔31aとの間には、隙間gが形成されている。したがって、空間S5は、孔51g及び孔53aと、隙間gとを介して空間S1(濾材21の上流側)と連通する。
【0057】
図3~5の説明に戻る。カバー53の内側の空間であって、カバー53とケース51とにより形成された空間には、アンテナ80が設けられている。このため、アンテナ80が測定ユニット2の先端に設けられており、差圧検出部60及びセンサ部70はアンテナ80よりもケース51(柱状部51v、51w)の根元側に設けられている。
【0058】
アンテナ80は、アンテナ80の一方の面(例えば、カバー53と対向する面)に形成された配線パターン(アンテナコイルパターン)を含む。なお、ケース51とカバー53とはシール部材97によりシールされているため、アンテナ80に作動油が接触することはない。
【0059】
孔51c内に設けられたアンテナ線は、一端がアンテナコイルパターンに接続されており、アンテナ線の他端は基板85に接続されている。基板85には、図示しないICチップ等が実装されている。ICタグ40からの電波を受信すると、アンテナ線を介して基板85において受信信号を生成し、図示しない信号線を介して測定ユニット2の外部に信号が出力される。同様に、温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果も基板85に伝達される。
【0060】
次に、このように構成されたリターンフィルタ1及び測定ユニット2の機能について、
図1、4、5を用いて説明する。
【0061】
作業機械のエンジンが稼動すると、
図1の二点鎖線矢印で示すように、ケース10の内部の空間S1に作動油が流入する。空間S1に流入した作動油は、濾材21の外側から内側へ向って流れ、濾材21により作動油中の塵埃等が除去される。濾過後の作動油は空間S2に流出する。その後、濾過後の作動油は、流出部12からタンク内部に流出する。
【0062】
ケース10内に作動油が充填されたら、
図3、4に示す測定ユニット2の差圧検出部60が濾材21の上流側の圧力(空間S1)と下流側(空間S2)の圧力との差圧を検出する。空間S2は、孔51f及び流路35を介して空間S4と連通しており、空間S2、S4は低圧側である。また、空間S1は、孔51g、孔53a及び隙間gを介して空間S5と連通しており、空間S1、S5は高圧側である。
【0063】
濾材21の目詰まり等が発生せず、高圧側(空間S1、S5)の圧力が低い状態では、弾性部材64の付勢力により、スプール62は挿入部材54側に押されており、磁石63が穴51aの底面から最も遠い位置にある。
【0064】
濾材21の目詰まり等により空間S1の圧力が高くなると、弾性部材64の付勢力に抗して、スプール62が穴50aの底面側に移動する。検出ユニット61は磁石63の移動による磁界の変化を検出し、検出結果を外部機器に送信する。検出結果が空間S1と空間S2との差圧が一定以上、すなわち濾材21の目詰まりが所定量を超えて発生している場合には、外部機器は、フィルタエレメント20の交換を促す表示を行う。
【0065】
濾材21の目詰まりは、フィルタエレメント20の稼働時間と略比例するため、ICタグ40でフィルタエレメント20の稼働時間を測定し、アンテナ80がICタグ40の読み取りを行い、この読取結果を測定ユニット2から外部機器に送信することができる。また、交換後のフィルタエレメントとしてICタグ40が設けられていない模造品等が使用された場合には、ICタグ40が読み取れないため、外部機器はエラー表示をしたり、フィルタ装置を動作不可にしたりすることができる。また、例えば交換後のフィルタエレメント20に設けられたICタグ40を読み取ることで、外部機器は、所定のフィルタエレメント以外のフィルタエレメントが設けられていることを判定することも可能である。
【0066】
また、測定ユニット2が有するセンサ部70は、作動油の温度及び粘度を測定する。空間S5には、孔51g、孔53a及び隙間gを介して作動油が流入するため、温度センサ71及び粘度センサ72に作動油が接触する。これにより作動油の温度及び粘度が測定される。孔51g及び孔53aが180°おきに2個設けられているため、空間S5に作動油が流入及び流出しやすくなる。
【0067】
また、センサ部70の基板は図示しないアクチュエータを有するため、基板の全体又は一部が振動し、空間S5への作動油の流入及び流出がさらに容易になる。そのため、空間S5に存在する作動油が順次入れ替わり、現時点における作動油の温度及び粘度が測定可能である。温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果は、基板85に伝達される。
【0068】
基板85には、処理を行う制御部100を有する。
図6は、制御部100の電気的な構成を示すブロック図である。制御部100は、機能的には、主として、測定データ取得部101と、劣化検知部102と、記憶部103とを有する。
【0069】
なお、制御部100の機能構成要素は、処理内容に応じてさらに多くの構成要素に分類されてもよいし、1つの構成要素が複数の構成要素の処理を実行してもよい。
【0070】
測定データ取得部101は、センサ部70が有する温度センサ71及び粘度センサ72から測定結果を取得する。温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果は、測定データ取得部101から劣化検知部102に出力される。
【0071】
記憶部103には、任意の温度(例えば、30℃)のときの作動油の粘度、温度と粘度との関係等(以下、粘度に関する情報)が格納されている。劣化検知部102は、粘度に関する情報を記憶部103から取得し、この情報と温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果に基づいて作動油の劣化の程度を検知する。作動油の特性として、作動油に添加されている添加剤が劣化すると、作動油の温度が同じであっても粘度が高くなったり低くなったりする(例えば、消泡材が劣化すると粘度が低下する)。したがって、劣化検知部102は、温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果から温度が30℃のときの粘度を算出し、算出した粘度が記憶部103に格納された正常な粘度と一定値以上乖離していたときに、作動油が劣化していることを検知する。劣化検知部102は、検知結果を、図示しない信号線を介して測定ユニット2の外部に出力する。
【0072】
例えば、制御部100は、基板85に実装されたICで構成することができる。また、処理部は、情報処理を実行するためのCPU(Central Processing Unit)などの演算装置、RAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などの記憶装置を含むコンピュータシステム等によって構成されていてもよい。例えば、温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果を図示しない信号線を介して外部のコンピュータシステムに出力し、コンピュータシステムで作動油の劣化の程度を検知してもよい。
【0073】
本実施の形態によれば、測定ユニット2が差圧検出部60、温度センサ71及び粘度センサ72を有し、温度センサ71及び粘度センサ72が中空部S3(空間S5)に設けられており、孔51g及び孔53aを介して中空部S3(空間S5)に作動油が流入する構成としたため、測定ユニット2を1つ取り付けるだけで、差圧と、作動油の劣化の程度(温度及び粘度から求められる)を測定することができる。
【0074】
また、本実施の形態によれば、スプール62で中空部S3を空間S4、S5に分割し、空間S5に温度センサ71及び粘度センサ72を設けることで、温度センサ71及び粘度センサ72を設けるスペースを別途設ける必要はなく、筐体50を小型化することができる。
【0075】
また、本実施の形態によれば、2個の孔51g及び孔53aを直線l1に沿って、すなわち180°おきに設けることで、空間S5に作動油が流入及び流出しやすくなる。
【0076】
また、本実施の形態によれば、温度センサ71及び粘度センサ72を有する基板を空間S5の端面(挿入部材54)に設けることで、空間S5に作動油が流入した作動油が温度センサ71及び粘度センサ72に確実に当たるようにし、作動油の温度及び粘度を正確に測定することができる。
【0077】
また、本実施の形態によれば、センサ部70の基板にアクチュエータを設けることで、基板を振動させ、孔51g及び孔53aが細くても空間S5に作動油を流入させることができる。これにより、筐体50、すなわち測定ユニット2を小型化することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、アンテナ80を測定ユニット2の先端に設けることで、ICタグ40とアンテナ80を近づけることができる。これにより、検出精度が高くなる。
【0079】
<第2の実施の形態>
本発明の第2の実施の形態は、センサ部70が振動する基板を有し、孔51g及び孔53aを細くして測定ユニット2を小型化したが、センサ部70が振動する基板を有しなくてもよい。以下、第2の実施の形態にかかる測定ユニット3について説明する。測定ユニット3は、測定ユニット2と同様、リターンフィルタ1に取り付けて使用するものである。なお、第1の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0080】
図7は、測定ユニット3の概略を示す斜視図である。
図8は、測定ユニット3の概略を示す断面図である。
図8では断面を示すハッチングを一部省略する。測定ユニット3は、主として、筐体50Aと、差圧検出部60と、センサ部70Aと、アンテナ80とを有する。
【0081】
筐体50Aは、主として、ケース51Aと、カバー52、53Aと、挿入部材54Aと、固定部材55とを有する。ケース51Aは、略円柱形状であり、リターンフィルタ1に取り付けられる(
図2参照)柱状の柱状部51x、51wを有する。柱状部51xは孔31aに挿入されている。柱状部51xは、高さ(z方向の高さ)が柱状部51vと異なるが、その他は同様である。
【0082】
カバー53Aは、有底円柱形状であり、ケース51Aの-z側の端を覆うように設けられている。カバー53Aは、孔53aを有しない点及び側面の高さが高い点でカバー53と異なるが、その他は同様である。また、挿入部材54Aは、高さが高い点で挿入部材54と異なるが、その他は同様である。
【0083】
ケース51Aには、穴51aと、穴51iと、孔51cと、穴51dと、溝51eと、孔51fと、孔51hとが設けられている。ケース51Aの両端はそれぞれ端面51m、51nである。穴51iは、穴51bと深さが異なるが、それ以外は穴51bと同様である。穴51iには、穴51d及び溝51eが設けられている。
【0084】
孔51h(本発明の第1連通孔に相当)は、柱状部51xの側面を径方向に貫通する孔である。孔51hは、測定ユニット2の孔51g(
図3~5等参照)よりも断面積が大きい。孔51hの一端は穴51a及び穴51dにより形成された中空部S3、具体的にはスプール62の下側(-z側)、すなわち、空間S5に開口している。また、孔51hの他端は、柱状部51xの外周面に開口している。なお、
図7、8では、孔51hは角孔であるが、角孔には限られず、例えば丸孔でもよい。
【0085】
孔51hは、2つであり、中心軸axに沿って見たときに中心軸axを通る直線l2に沿って、すなわち180°おきに設けられている。そのため、
図8では2つの孔51hが露出している。孔51hを180°おきに2個設けることで、空間S5に作動油が流入及び流出しやすくなる。また、作動油の流れにより、空間S5に存在する作動油を順次入れ替えることができる。
【0086】
センサ部70Aは、温度センサ71及び粘度センサ72を有する。例えば、センサ部70Aは、温度センサ71及び粘度センサ72が実装された基板を有する。なお、センサ部70Aは、基板がアクチュエータを有しない点でセンサ部70と異なる。
【0087】
筐体50A(柱状部51x及びカバー53A)と孔31aとの間には、隙間が形成されている。したがって、空間S5は、この隙間と孔51hとを介して空間S1(濾材21の上流側)と連通する。
【0088】
作業機械のエンジンが稼動すると、作動油は、ケース10の内部の空間S1に流入し、濾材21の外側から内側へ向って流れ、濾材21により作動油中の塵埃等が除去され、濾過後の作動油は空間S2に流出する。その後、濾過後の作動油は、流出部12からタンク内部に流出する。ケース10内に作動油が充填されたら、測定ユニット3が有する差圧検出部60が濾材21の上流側の圧力(空間S1)と下流側(空間S2)との差圧を検出する。
【0089】
また、測定ユニット3が有するセンサ部70Aは、作動油の温度及び粘度を測定する。空間S5には、孔51h及び筐体50Aとの間の隙間を介して作動油が流入するため、温度センサ71及び粘度センサ72に作動油が接触する。これにより作動油の温度及び粘度が測定される。孔51hが180°おきに2個設けられているため、空間S5に作動油が流入及び流出しやすくなる。孔51hは断面積が大きいため、センサ部70Aにアクチュエータがなくても、孔51hを介して作動油が空間S5に流入及び流出することができる。
【0090】
本実施の形態によれば、測定ユニット3が差圧検出部60、温度センサ71及び粘度センサ72を有し、温度センサ71及び粘度センサ72が中空部S3(空間S5)に設けられており、孔51hを介して中空部S3(空間S5)に作動油が流入する構成としたため、測定ユニット3を1つ取り付けるだけで、差圧と作動油の劣化の程度を測定することができる。
【0091】
また、本実施の形態によれば、孔51hを大きくすることで、空間S5に温度センサ71及び粘度センサ72を設けるだけで作動油の温度及び粘度を測定することができる。すなわち、アクチュエータが不要であり、センサ部70Aを簡単な構成とすることができる。
【0092】
<第3の実施の形態>
本発明の第3の実施の形態は、スプールに空間S4と空間S5とを連通する連通部を設ける形態である。以下、第3の実施の形態にかかる測定ユニット4について説明する。測定ユニット4は、測定ユニット2と同様、リターンフィルタ1に設けるものである。なお、第1、2の実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付し、説明を省略する。
【0093】
図9は、測定ユニット4の概略を示す斜視図である。
図10は、測定ユニット4の概略を示す断面図である。
図10では断面を示すハッチングを一部省略する。測定ユニット4は、主として、筐体50と、差圧検出部60Aと、センサ部70Aと、アンテナ80とを有する。
【0094】
差圧検出部60Aは、主として、検出ユニット61と、スプール62Aと、磁石63と、弾性部材64と、を有する。
【0095】
スプール62Aは、円柱形状であり、中空部S3の内部に移動可能に設けられている。スプール62Aは、溝62aを有する点でスプール62と異なり、その他はスプール62と同様である。
【0096】
溝62a(本発明の連通部に相当)は、スプール62Aの中空部S3と当接する外周面62bに設けられている。溝62aは、スプール62Aの延設方向(z方向)に沿って、空間S4と空間S5とを連通する。溝62aの断面積が孔51f及び孔51gの断面積より小さいため、空間S4、S5の圧力差でスプール62Aがz方向に移動可能である。
【0097】
なお、本実施の形態では、2つの溝62aが180°おきに設けられているが、溝62aの数および配置はこれに限られない。
【0098】
作業機械のエンジンが稼動すると、作動油は、ケース10の内部の空間S1に流入し、濾材21の外側から内側へ向って流れ、濾材21により作動油中の塵埃等が除去され、濾過後の作動油は空間S2に流出する。その後、濾過後の作動油は、流出部12からタンク内部に流出する。ケース10内に作動油が充填されたら、測定ユニット4が有する差圧検出部60Aが濾材21の上流側の圧力(空間S1)と下流側(空間S2)との差圧を検出する。また、測定ユニット4が有するセンサ部70Aは、作動油の温度及び粘度を測定する。
【0099】
空間S4と空間S5とを連通する溝62aがスプール62Aに設けられているため、作動油を溝62aを介して空間S5から空間S4に導く。そのため、孔51g及び孔53aを介して空間S5に作動油が流入しやすくなる。
【0100】
本実施の形態によれば、測定ユニット4が差圧検出部60A、温度センサ71及び粘度センサ72を有し、温度センサ71及び粘度センサ72が中空部S3(空間S5)に設けられており、孔51hを介して中空部S3(空間S5)に作動油が流入する構成としたため、測定ユニット4を1つ取り付けるだけで、差圧と作動油の劣化の程度を測定することができる。
【0101】
また、本実施の形態によれば、溝62aを設けることで、空間S5に温度センサ71及び粘度センサ72を設けるだけで作動油の温度及び粘度を測定することができる。すなわち、アクチュエータが不要であり、センサ部70Aを簡単な構成とすることができる。また、スプール62Aの外周面を削るだけで溝62aが形成できるため、加工が容易である。
【0102】
なお、本実施の形態では、空間S4と空間S5とを連通する連通部として溝62aを設けたが、連通部はこれに限られない。
図11は、変形例にかかる測定ユニット4Aの概略を示す斜視図である。
図12は、測定ユニット4Aの概略を示す断面図である。
図12では断面を示すハッチングを一部省略する。測定ユニット4Aは、主として、筐体50と、差圧検出部60Bと、センサ部70Aと、アンテナ80とを有する。
【0103】
差圧検出部60Bは、主として、検出ユニット61と、スプール62Bと、磁石63と、弾性部材64と、を有する。
【0104】
スプール62Bは、円柱形状であり、中空部S3の内部を移動可能に設けられている。スプール62Bは、孔62cを有する点でスプール62と異なり、その他はスプール62と同様である。
【0105】
孔62c(本発明の連通部に相当)は、スプール62Bの内部に設けられており、空間S4と空間S5とを連通する。孔62cの断面積が孔51f及び孔51gの断面積より小さいため、空間S4、S5の圧力差でスプール62Bがz方向に移動可能である。
【0106】
なお、孔62cの形状はこれに限られず、孔62cの一端がスプール62Bの底面62dに開口し、他端が外周面62eに開口して、孔62cが空間S4と空間S5とを連通すればよい。
【0107】
本変形例によれば、孔62cを設けることで、空間S5に作動油が流入しやすくなる。したがって、アクチュエータが不要であり、センサ部70Aを簡単な構成とすることができる。
【0108】
また、本変形例によれば、孔62cの長さ(流路長さ)、形状等の変更が容易であり、流路コントロールを適切に行うことができる。例えば、スプール62Aのように溝62aを未濾過の作動油が流れる場合には、作動油の汚染度が高い場合等に穴51bの内壁が作動油に含まれる塵埃で摩耗するおそれがあるが、孔62cに未濾過の作動油を流す本変形例ではそのおそれはない。
【0109】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0110】
また、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「円筒形状」とは、厳密に円筒形状の場合には限られず、例えば円筒形状と同一視できる場合を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0111】
また、「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0112】
1 :リターンフィルタ
2、3、4、4A:測定ユニット
10 :ケース
11 :底面
12 :流出部
13 :流入部
20 :フィルタエレメント
21 :濾材
22 :内筒
24 :プレート
24a :板状部
24b、24c:筒状部
24d :凸部
25 :プレート
25a :凹部
25b :孔
30 :ヘッド
30a :空間
31 :筒状部
31a、31b:孔
32 :カバー
32a :孔
33 :取付部
33a :孔
35 :流路
40 :ICタグ
47 :バルブ
50 :筐体
50A :筐体
51、51A:ケース
51a、51b、51d、51i、51k:穴
51c、51f、51g、51h:孔
51e :溝
51m、51n:端面
51v、51w、51x:柱状部
52、53、53A:カバー
53a :孔
54、54A:挿入部材
54a :小径部
54b :大径部
54c :孔
55 :固定部材
60、60A、60B:差圧検出部
61 :検出ユニット
61a :磁界検出素子
62、62A、62B:スプール
62a :溝
62b、62e:外周面
62c :孔
62d :底面
63 :磁石
64 :弾性部材
70、70A:センサ部
71 :温度センサ
72 :粘度センサ
80 :アンテナ
85 :基板
91、92、93、94、95、96、97、98:シール部材
100 :制御部
101 :測定データ取得部
102 :劣化検知部
103 :記憶部
120 :タンク