(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119693
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】フィルタ装置
(51)【国際特許分類】
B01D 24/00 20060101AFI20240827BHJP
B01D 29/11 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01D29/00 D
B01D29/10 501C
B01D29/10 510E
B01D29/10 530B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026774
(22)【出願日】2023-02-22
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2020年、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「IoT社会実現のための革新的センシング技術開発/革新的センシング技術開発/極限環境の液体管理をIoT化する革新的粘性センサの開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000178675
【氏名又は名称】ヤマシンフィルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100170070
【弁理士】
【氏名又は名称】坂田 ゆかり
(72)【発明者】
【氏名】北島 信行
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 順基
(72)【発明者】
【氏名】若林 正法
【テーマコード(参考)】
4D116
【Fターム(参考)】
4D116AA07
4D116AA18
4D116BB01
4D116BC13
4D116BC27
4D116BC44
4D116BC46
4D116BC47
4D116BC75
4D116BC76
4D116BC77
4D116DD05
4D116FF16B
4D116GG12
4D116GG13
4D116HH23C
4D116QA13D
4D116QA13E
4D116QA13F
4D116QA14D
4D116QA14E
4D116QA14F
4D116QB03
4D116QB17
4D116QB19
4D116QB23
4D116QB24
4D116QB26
4D116QB31
4D116QB32
4D116QB35
4D116QB50
4D116QC04A
4D116QC04B
4D116QC05A
4D116QC06
4D116QC15A
4D116QC50
4D116VV02
4D116VV04
(57)【要約】
【課題】フィルタの内部のICタグに対し、金属を挟んで無線伝送を行うことができる。
【解決手段】液体を濾過する濾材と、第1アンテナコイルを含むICタグとを有するフィルタエレメントと、フィルタエレメントが内部に設けられたフィルタケースと、フィルタケースに設けられており、第2アンテナコイルを含むアンテナを有する測定ユニットと、を備え、第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとの間で磁界共振結合による伝送を行うフィルタ装置である。フィルタケースは、内部空間をフィルタエレメントが設けられた第1領域と設けられていない第2領域とに区切る隔壁であって、金属で形成された隔壁を有する。測定ユニットは、フィルタケースに取り付けられた筐体を有し、筐体がフィルタケースに設けられた状態では、筐体の先端が前記第2領域に挿入されており、アンテナとICタグとは隔壁を挟んで設けられている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を濾過する濾材と、第1アンテナコイルを含むICタグとを有するフィルタエレメントと、
前記フィルタエレメントが内部に設けられたフィルタケースと、
前記フィルタケースに設けられており、第2アンテナコイルを含むアンテナを有する測定ユニットと、を備え、
前記第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとの間で磁界共振結合による伝送を行うフィルタ装置であって、
前記フィルタケースは、内部空間を前記フィルタエレメントが設けられた第1領域と設けられていない第2領域とに区切る隔壁であって、金属で形成された隔壁を有し、
前記測定ユニットは、前記フィルタケースに取り付けられた筐体を有し、
前記筐体が前記フィルタケースに設けられた状態では、前記筐体の先端が前記第2領域に挿入されており、
前記アンテナと前記ICタグとは、前記隔壁を挟んで設けられている
ことを特徴とするフィルタ装置。
【請求項2】
前記ICタグ及び前記アンテナを含む無線伝送部を備え、
前記無線伝送部は、前記ICタグ及び前記アンテナにそれぞれ接続された第1共振回路及び第2共振回路を有し、
前記第1共振回路及び前記第2共振回路は、それぞれ、SP方式の共振回路である
ことを特徴とする請求項1に記載のフィルタ装置。
【請求項3】
前記測定ユニットは、前記液体の粘度又は温度を測定するセンサを有し、
前記筐体は、前記フィルタケース又は前記第2領域に挿入される挿入部を有し、
前記アンテナは、前記挿入部の先端近傍に設けられており、
前記センサは、前記挿入部に形成された中空部の内部に設けられており、
前記筐体には、前記中空部と前記筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ装置。
【請求項4】
前記フィルタエレメントは、前記濾材の上端面を覆う上プレートを有し、
前記ICタグは、円環形状であり、前記上プレートに設けられており、
前記第1アンテナコイルは、前記ICタグの内周面又は外周面に沿って巻回されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のフィルタ装置。
【請求項5】
前記測定ユニットは、前記濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部をさらに備える
ことを特徴とする請求項3に記載のフィルタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フィルタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、無線送電を行うフィルタシステムが開示されている。このフィルタシステムでは、無線受電器がフィルタ本体に関連付けられ、無線受電器がフィードバックチャンネル回路を含んでいる。フィードバックチャンネル回路は、受信アンテナ、無線受電器と電気的に連通する制御回路、及び制御回路と連通するフィードバックチャンネル回路であって、受信アンテナから分離されたチャンネルを介し送信するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フィルタ装置においては、フィルタエレメント、すなわち金属製の筐体の内部に各種情報を記憶させたICタグを配置し、ICタグからの情報を取得して各種の管理を行っている。しかしながら、特許文献1に記載の発明を含む従来技術では、筐体がステンレス等の金属である場合には無線で伝送をすることができない。したがって、金属の筐体を超えて無線伝送を行うために、筐体の一部にスリット等を設けることが一般的に行われていた。
【0005】
しかしながら、筐体にスリット等を余分に設けることで、応力疲労による筐体の破損といった問題が発生し得る。また、筐体設計の自由度が低下する。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、金属を挟んで無線伝送を行うことができるフィルタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明に係るフィルタ装置は、例えば、液体を濾過する濾材と、第1アンテナコイルを含むICタグとを有するフィルタエレメントと、前記フィルタエレメントが内部に設けられたフィルタケースと、前記フィルタケースに設けられており、第2アンテナコイルを含むアンテナを有する測定ユニットと、を備え、前記第1アンテナコイルと前記第2アンテナコイルとの間で磁界共振結合による伝送を行うフィルタ装置であって、前記フィルタケースは、内部空間を前記フィルタエレメントが設けられた第1領域と設けられていない第2領域とに区切る隔壁であって、金属で形成された隔壁を有し、前記測定ユニットは、前記フィルタケースに取り付けられた筐体を有し、前記筐体が前記フィルタケースに設けられた状態では、前記筐体の先端が前記第2領域に挿入されており、前記アンテナと前記ICタグとは、前記隔壁を挟んで設けられていることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るフィルタ装置によれば、アンテナとICタグとが金属の隔壁を挟んで設けられており、ICタグの第1アンテナコイルとアンテナの第2アンテナコイルとの間で磁界共振結合による伝送を行う。これにより、金属を挟んで無線伝送を行うことができる。
【0009】
前記測定ユニットは、前記液体の粘度又は温度を測定するセンサを有し、前記筐体は、前記フィルタケース又は前記第2領域に挿入される挿入部を有し、前記アンテナは、前記挿入部の先端近傍に設けられており、前記センサは、前記挿入部に形成された中空部の内部に設けられており、前記筐体には、前記中空部と前記筐体の外部の空間とを連通する連通孔が設けられていてもよい。これにより、液体をモニタすることができる。
【0010】
前記フィルタエレメントは、前記濾材の上端面を覆う上プレートを有し、前記ICタグは、円環形状であり、前記上プレートに設けられており、前記第1アンテナコイルは、前記ICタグの内周面又は外周面に沿って巻回されていてもよい。これにより、第1アンテナコイルを大型化し、無線伝送の効率を高くすることができる。
【0011】
前記測定ユニットは、前記濾材の上流側の圧力と下流側の圧力との差圧を検出する差圧検出部をさらに備えてもよい。これにより、測定ユニットに複数の機能を盛り込み、省スペース化することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、金属を挟んで無線伝送を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図2】フィルタ装置1の概略を示す断面斜視図である。
【
図3】フィルタ装置1の概略を示す断面斜視図であり、フィルタ装置1の要部を拡大表示している。
【
図4】無線伝送部50の電気的な構成を示すブロック図である。
【
図5】共振回路54a、51bの一例を示す図であり、(A)はSS方式の概略を示す図であり、(B)はSP方式の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。フィルタ装置は、油、燃料、尿素水等の液体に含まれる塵埃等を除去するものである。本実施の形態では、濾過装置として作動油に含まれる塵埃等を除去する作動油ラインフィルタを例に説明するが、濾過装置は作動油ラインフィルタに限られず、例えばリターンフィルタや燃料フィルタにも用いることができる。また、本実施の形態では、濾過対象の液体として作動油(鉱物系)を例に説明するが、濾過対象の液体は作動油に限られず、添加物を含む様々な液体、例えば燃料(石油系、エタノール系など)でもよい。
【0015】
<第1の実施の形態>
図1は、フィルタ装置1の概略を示す斜視図である。
図2は、フィルタ装置1の概略を示す断面斜視図である。
図2では断面を示すハッチングを省略する。
【0016】
フィルタ装置1は、主として、フィルタケース19と、フィルタエレメント20と、測定ユニット40と、無線伝送部50と、を有する。測定ユニット40は、フィルタ装置1に取り付けて使用される。無線伝送部50は、フィルタエレメント20に設けられたICタグ51と、測定ユニット40に設けられたアンテナ52とを有し、ICタグ51のアンテナコイル51a(後に詳述)とアンテナ52のアンテナコイル52a(後に詳述)との間で磁界共振結合による伝送を行う。
【0017】
フィルタケース19は、ケース10及びヘッド30を含む。ケース10及びヘッド30は、耐腐食性の高い金属により形成されている。
【0018】
ケース10は、主として、ケース本体11と、隔壁12とを有する。ケース本体11は、有底筒形状であり、上端面が開口している。ケース本体11は、内部が空洞であり、上端の開口を覆うようにヘッド30が設けられている。
【0019】
隔壁12は、ケース本体11の上端面の開口を覆うように設けられている。したがって、隔壁12は、ケース本体11にヘッド30が取り付けられたフィルタケース19の内部空間を、フィルタエレメント20が設けられた領域(本発明の第1領域、空間S1)と設けられていない領域(本発明の第2領域、空間S2、S3)とに区切る。
【0020】
なお、隔壁12は、ケース本体11に設けられた取付部13によりケース本体11に設けられているが、隔壁12の取り付け方はこれに限られない。また、隔壁12は、フィルタケース19に設けられていればよく、例えばヘッド30に設けられていてもよい。
【0021】
隔壁12は筒状部12aを有し、筒状部12aにはフィルタエレメント20が挿入されている。筒状部12aとフィルタエレメント20とは、シール部材(例えば、Oリング)92によりシールされている。ケース本体11の底面11aとフィルタエレメント20との間には、コイルばね等の弾性部材15が設けられている。弾性部材15は、フィルタエレメント20を筒状部12aに向けて押圧する。これにより、ケース本体11の底面11a、側面11b及び隔壁12により囲まれた空間にフィルタエレメント20が設けられる。
【0022】
フィルタエレメント20は、主として、濾材21と、内筒22と、外筒23と、プレート24と、プレート25とを有する。
【0023】
濾材21は、液体を濾過する部材であり、両端に開口を有する筒形状(ここでは、円筒形状)の部材である。濾材21は、合成樹脂や紙等を用いた濾紙をひだ折りにし、ひだ折りにした濾紙の両端を連結して円筒状にすることによって形成される。ただし、濾材21の形態はこれに限られない。
【0024】
濾材21の内側には、略全域に燃料が通過する孔が形成された内筒22が設けられる。また、濾材21の外側に、帯状の外筒23が設けられている。なお、内筒22及び外筒23は必須ではない。
【0025】
濾材21の上側の端には、プレート24(本発明の上プレートに相当)が設けられている。プレート24は濾材21及び内筒22の上端面を覆う。プレート24と濾材21とは、接着剤により接着されている。接着剤は、樹脂、ゴム、エラストマーを主材料とする様々な種類の有機接着剤を用いることができる。
【0026】
プレート24の下側には、濾材21が設けられている。また、プレート24の上側には、ICタグ51が設けられている。すなわち、ICタグ51は、隔壁12の近傍に設けられている。
【0027】
ICタグ51は、アンテナ52(後に詳述)と通信可能であるとともに、アンテナ52から受信した電波を用いて、内蔵したメモリのデータを非接触で読み書きする小型の電子部品である。
【0028】
ICタグ51は、円環形状であり、プレート24と同心円状に設けられている。また、ICタグ51は、アンテナコイル51a(本発明の第1アンテナコイルに相当)を有する。アンテナコイル51aは、ICタグ51の内周面又は外周面に沿って巻回されている。また、ICタグ51には、変調回路が搭載されている。
【0029】
なお、プレート24におけるICタグ51の配置はこれに限られない。例えば、プレート24が樹脂で形成されている場合には、インサート成形等によりプレート24の内部にICタグ51を設けてもよい。
【0030】
濾材21の下側の端には、プレート25が設けられる。プレート25は濾材21及び内筒22の下端面を覆う。濾材21は、プレート25の上側に設けられている。プレート25と濾材21とは、接着剤により接着されている。
【0031】
ヘッド30は、ケース10の上端面を覆うように、ケース10に設けられる。ケース10とヘッド30とは、シール部材(例えば、Oリング)91によりシールされている。
【0032】
ヘッド30は、主として、筒状部12aに挿入される筒状部31と、ケース10に取り付けられる外周部32とを有する。また、筒状部31には、流出部33の一部となる中空部31aが形成されている。
【0033】
外周部32がケース10に固定されると、筒状部31が筒状部12aに挿入され、フィルタエレメント20の内部の空間(空間S3)と流出部33とが連通する。また、ヘッド30には図示しない流入部が設けられており、流入部は筒状部31、外周部32及び隔壁12により囲まれた空間S1に作動油を流入させる。流入部と流出部33との間には、バイパスバルブ39が設けられている。
【0034】
空間S1に流入した作動油は、隔壁12に設けられた孔12bを介して、ケース本体11及び隔壁12により囲まれた空間かつフィルタエレメント20の外側の空間(空間S2)に流入する。
【0035】
ヘッド30には、測定ユニット40が設けられている。以下、測定ユニット40について説明する。
図3は、フィルタ装置1の概略を示す断面斜視図であり、フィルタ装置1の要部を拡大表示している。
図3では断面を示すハッチングを省略する。
【0036】
測定ユニット40は、主として、筐体80と、差圧検出部60と、センサ部70と、アンテナ52とを有する。このように、測定ユニット40に複数の機能を盛り込むことで、ヘッド30に1つの測定ユニット40を設ければよく、省スペース化が可能である。以下、筐体80の長手方向をz方向とし、z方向に直交する2方向をx方向及びy方向とする。また、x方向とy方向とは直交する。
【0037】
筐体80は、主として、ケース81と、カバー82、83と、挿入部材84とを有する。ケース81は、フィルタ装置1に取り付けられる(
図2参照)柱状の柱状部81v、81wを有する。柱状部81vは、ヘッド30の孔35(
図2参照)に挿入されている。また、柱状部81wは、孔35が設けられた端面に当接している。ケース81と孔35とは、複数のシール部材(例えば、Oリング)96、97、98によりシールされている。
【0038】
カバー82、83は、有底円柱形状であり、ケース81の両端にそれぞれ設けられている。カバー82は、ケース81の一方(+z側)の端を覆うように設けられており、カバー83は、ケース81の他方(-z側)の端を覆うように設けられている。
【0039】
ケース81には、穴81a及び穴81bが設けられている。穴81a、81bには、差圧検出部60及び挿入部材84が設けられている。挿入部材84は、穴81bの開口部近傍に設けられており、挿入部材84と穴81bとの間はシール部材(例えば、Oリング)99によりシールされている。
【0040】
穴81a、81b及び挿入部材84により囲まれた空間には、差圧検出部60が設けられている。差圧検出部60は、主として、検出ユニット61と、スプール62と、磁石63と、弾性部材64と、を有する。
【0041】
スプール62は、円柱形状であり、穴81a、81bの内部をz方向に移動可能に設けられている。スプール62は、穴81a、81b及び挿入部材84により囲まれた空間を空間S4と空間S5とに分割する。空間S4には孔81cの一端が開口する。空間S5には孔81dの一端が開口する。
【0042】
弾性部材64は、例えばコイルばねであり、一端がスプール62に設けられ、他端が穴81bの底面に設けられる。弾性部材64は、スプール62に+z方向の力を付勢する。磁石63は、スプール62の穴81aの底面と対向する面に設けられている。
【0043】
検出ユニット61は、穴81eの内部に設けられている。検出ユニット61は、z方向の位置が調整可能である。
【0044】
検出ユニット61には、磁界検出素子(図示省略)が設けられている。磁界検出素子は、磁石63により形成される磁界の変化を検出する。磁界検出素子は、リードスイッチ、ホール素子等を用いることができる。磁界検出素子の検出結果は、図示しない信号線を介して測定ユニット40の外部に出力される。リードスイッチ及びホール素子はすでに公知であるため、説明を省略する。
【0045】
孔81c、81dは、柱状部81vの側面を径方向(ここでは、x方向)に貫通しており、孔81c、81dの他端は、柱状部81vの外周面に開口している。その結果、孔81cは、孔35、すなわち空間S1(
図2参照)と空間S4とを連通し、孔81dは、穴34を介して空間S3(
図2参照)と空間S5とを連通する。これにより、空間S1と空間S3との圧力差によりスプール62及び磁石63がz方向に移動して、濾材21上流側と下流側の差圧が検出可能となる。
【0046】
柱状部81vの先端にはカバー83が設けられている。柱状部81v及びカバー83は、本発明の挿入部に相当する。カバー83の内側の空間及び挿入部材84及び穴81bにより形成された空間(空間S6、本発明の中空部に相当)には、アンテナ52及びセンサ部70が設けられている。
【0047】
アンテナ52は、カバー83の底面、すなわち本発明の挿入部の先端近傍に設けられている。ただし、アンテナ52の位置はこれに限られない。要するに、アンテナ52とICタグ51とが隔壁12を挟んで設けられていればよい。
【0048】
また、アンテナ52は、アンテナ52の一方の面(例えば、カバー83と対向する面)に形成された配線パターン(アンテナコイル52a(本発明の第2アンテナコイルに相当)を含む、
図5参照)を含む。
図3では、配線パターンの図示を省略する。
【0049】
アンテナ線53は、一端がアンテナコイルに接続されており、他端は基板54に接続されている。基板54には、図示しないICチップ等が実装されている。ICタグ51からの電波を受信すると、アンテナ線を介して基板54において受信信号を生成し、図示しない信号線を介して測定ユニット40の外部に信号が出力される。
【0050】
センサ部70は、アンテナ52よりもケース81(柱状部81v、81w)の根元側に設けられている。センサ部70は、センサとして、液体の温度を測定する温度センサ及び液体の粘度を測定する粘度センサを含む。カバー83の孔83a(本発明の連通孔に相当)を介して空間S6に作動油が供給されるため、センサ部70は作動油の温度や粘度を正確に測定することができる。温度センサ71及び粘度センサ72における測定結果も基板54に伝達される。ただし、センサ部70が有するセンサはこれに限られず、温度センサ又は粘度センサを有していればよい。
【0051】
図4は、無線伝送部50の電気的な構成を示すブロック図である。ICタグ51は、アンテナコイル51aと、アンテナコイル51aに接続された共振回路51bを含む。また、アンテナ52はアンテナコイル52aを含み、基板54は共振回路54aを含む。アンテナコイル52aは、共振回路54aに接続されている。
【0052】
図5は、共振回路51b、54aの一例を示す図であり、(A)はSS方式の共振回路の概略を示す図であり、(B)はSP方式の共振回路の概略を示す図である。SS方式は、一次巻線(アンテナコイル52a)及び二次巻線(アンテナコイル51a)ともにコンデンサを直列に接続する。SP方式は、一次巻線にコンデンサを直列に接続し、二次巻線にコンデンサを並列に接続する。
【0053】
なお、SP方式を用いた金属壁を超えた無線伝送は、例えば、大塚麻以・居村岳広・藤本博志・堀洋一 「金属壁を介したワイヤレス電力伝送の高効率化に向けた回路構成に関する基礎検討」(社団法人電子情報通信学会「信学技報」 第116巻 398号 2017年1月 33-38頁)に開示されている技術を用いることができる。
【0054】
次に、このように構成されたフィルタ装置1の機能について
図2等を用いて説明する。作業機械のエンジンが稼動すると、ケース10の内部の空間S1に作動油が流入する。空間S1から空間S2に流入した作動油は、濾材21の外側から内側へ向って流れ、濾材21により作動油中の塵埃等が除去される。濾過後の作動油は空間S3に流出する。その後、濾過後の作動油は、流出部33から流出する。
【0055】
ケース10内に作動油が充填されたら、測定ユニット40の差圧検出部60が濾材21の上流側の圧力(空間S2)と下流側(空間S3)の圧力との差圧を検出する。検出ユニット61は、磁石63の移動による磁界の変化を検出し、検出結果を外部機器に送信する。検出結果が空間S2と空間S3との差圧が一定以上、すなわち濾材21の目詰まりが所定量を超えて発生している場合には、外部機器は、フィルタエレメント20の交換を促す表示を行う。
【0056】
濾材21の目詰まりは、フィルタエレメント20の稼働時間と略比例するため、ICタグ51でフィルタエレメント20の稼働時間を測定し、アンテナ52がICタグ51の読み取りを無線で行う無線データ伝送を行い、この読取結果を測定ユニット40から外部機器に送信する。なお、濾材21の目詰まりは、フィルタエレメント20の稼働時間と略比例するが、濾材はフィルタの種類によって異なるため、ICタグ51から濾材21の情報(シリアル番号)を取得し、濾材21の情報と稼働時間を共に外部機器に送信し、濾材21の寿命データと稼働時間と比較する事で、より適切に濾材21の状態を把握することができる。
【0057】
また、ICタグ51の読み取り結果のうちの濾材21の情報を測定ユニット40から外部機器に送信することで、正しくない濾材(模倣品を含む)がフィルタ装置1に用いられているか否かを確認することができる。
【0058】
さらに、アンテナ52からICタグ51へ電力を無線で伝送する、すなわち、無線給電することができる。また、ICタグ51は電源(図示省略)を内蔵してもよく、この場合アンテナ52はICタグ51との間で無線通信のみを行うことができる。
【0059】
本実施の形態によれば、金属で形成された隔壁12を挟んでICタグ51とアンテナ52とを配置し、ICタグ51のアンテナコイル51a及びアンテナ52のアンテナコイル52aをSP方式の共振回路51b、54aに接続することで、金属で形成された隔壁を挟んで無線伝送(無線給電を含む)を行うことができる。
【0060】
また、本実施の形態によれば、センサ部70を測定ユニット40のアンテナ52よりも根元側に形成された中空部(空間S6)の内部に設け、孔83aを介して空間S6に作動油を供給するようにしたため、センサ部70で作動油をモニタすることができる。
【0061】
また、本実施の形態によれば、円環形状のICタグ51をプレート24に設け、アンテナコイル51aをICタグ51の内周面又は外周面に沿って巻回することで、アンテナコイル51aを大型化し、無線伝送の効率を高くすることができる。また、ICタグ51を円環形状とすることで、ICタグ51とアンテナ52との位置合わせが不要になり、フィルタエレメント20の機械的制約(取付向き、位置等)を回避することができる。
【0062】
また、本実施の形態では、アンテナ52とICタグ51とが隔壁12を挟んで設けられているが、ICタグ51及びアンテナ52は隔壁12に隣接して設けることが望ましい。
【0063】
以上、この発明の実施形態を、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。例えば、上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、実施形態の構成に他の構成の追加、削除、置換等をすることが可能である。
【0064】
また、「略」とは、厳密に同一である場合のみでなく、同一性を失わない程度の誤差や変形を含む概念である。例えば、「円筒形状」とは、厳密に円筒形状の場合には限られず、例えば円筒形状と同一視できる場合を含む概念である。また、例えば、単に直交、平行、一致等と表現する場合において、厳密に直交、平行、一致等の場合のみでなく、略平行、略直交、略一致等の場合を含むものとする。
【0065】
また、「近傍」とは、基準となる位置の近くのある範囲(任意に定めることができる)の領域を含むことを意味する。例えば、端近傍という場合に、端の近くのある範囲の領域であって、端を含んでもいても含んでいなくてもよいことを示す概念である。
【符号の説明】
【0066】
1 :フィルタ装置
10 :ケース
11 :ケース本体
11a :底面
11b :側面
12 :隔壁
12a :筒状部
12b :孔
13 :取付部
15 :弾性部材
19 :フィルタケース
20 :フィルタエレメント
21 :濾材
22 :内筒
23 :外筒
24 :プレート
25 :プレート
30 :ヘッド
31 :筒状部
31a :中空部
32 :外周部
33 :流出部
34 :穴
35 :孔
39 :バイパスバルブ
40 :測定ユニット
50 :無線伝送部
51 :ICタグ
51a :アンテナコイル
51b :共振回路
52 :アンテナ
52a :アンテナコイル
53 :アンテナ線
54 :基板
54a :共振回路
60 :差圧検出部
61 :検出ユニット
61a :磁界検出素子
62 :スプール
63 :磁石
64 :弾性部材
70 :センサ部
71 :温度センサ
72 :粘度センサ
80 :筐体
81 :ケース
81a、81b、81e:穴
81c、81d:孔
81v、81w:柱状部
82、83:カバー
83a :孔
84 :挿入部材
91、92、96~99:シール部材