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特開2024-119699二次電池ユニット充電状態推定装置、二次電池ユニット充電状態推定方法及び二次電池ユニット充電状態推定プログラム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119699
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】二次電池ユニット充電状態推定装置、二次電池ユニット充電状態推定方法及び二次電池ユニット充電状態推定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/367 20190101AFI20240827BHJP
   G01R 31/392 20190101ALI20240827BHJP
   G01R 31/387 20190101ALI20240827BHJP
   G01R 31/3828 20190101ALI20240827BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240827BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01R31/367
G01R31/392
G01R31/387
G01R31/3828
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H02J7/00 X
【審査請求】未請求
【請求項の数】33
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023026781
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】507317502
【氏名又は名称】エリーパワー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100166914
【弁理士】
【氏名又は名称】山▲崎▼ 雄一郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 嵩大
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA02
2G216BA17
2G216BA22
2G216BA64
2G216BA72
2G216CB51
5G503AA06
5G503BA01
5G503BB01
5G503EA05
5G503GD03
5H030AA10
5H030AS01
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】      (修正有)
【課題】測定時のパラメータを基に、二次電池の充電率を追従性良くリアルタイムで推定することができる二次電池ユニットの充電状態推定装置、充電状態推定方法及び充電状態推定プログラムを提供する。
【解決手段】少なくとも一つの電池セルを有する二次電池ユニットの充電率(SOC)または充放電可能電力(SOP)を下記式1または式2を用いて推定する二次電池ユニット充電状態推定装置であって、前記二次電池ユニットから得られる測定時の物理量に基づく指標を変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量(FCCadj)を算出する。


【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つの電池セルを有する二次電池ユニットの充電率(SOC)または充放電可能電力(SOP)を下記式1または式2を用いて推定する二次電池ユニット充電状態推定装置であって、
前記二次電池ユニット充電状態推定装置は前記二次電池ユニットの補正満充電容量(FCCadj)算出する補正満充電容量算出手段を具備し、
前記補正満充電容量算出手段は、
前記二次電池ユニットから得られる測定時の物理量に基づく指標を変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数1】
【数2】
【請求項2】
前記補正満充電容量算出手段は、
第1補正係数算出手段を有し、
前記第1補正係数算出手段は、下記4つの指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を含む第1関数により求められる第1補正係数を算出し、
前記補正満充電容量算出手段は、前記第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出すること
を特徴とする請求項1に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
第1指標: 前記二次電池ユニットの充放電電流であって、測定時の前記充放電電流の電流値(I)に基づく第1指標(I)
第2指標: 前記二次電池ユニットの入出力電力であって、測定時の前記入出力電力の電力値(P)に基づく第2指標(P)
第3指標: 前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)に基づく第3指標(T)
第4指標: 前記二次電池ユニットの測定時の健全度(SOH)に基づく第4指標(S)
【請求項3】
前記補正満充電容量算出手段は、
前記第1指標(I)または前記第2指標(P)を変数とするワイブル関数、前記第3指標(T)を変数とするワイブル関数、および、前記第4指標(S)を変数とするワイブル関数、のうちから任意の複数の関数を選択し、
これら複数の関数同士について所定の四則演算を行うことで、前記第1補正係数を演算する
ことを特徴とする請求項2に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【請求項4】
前記補正満充電容量算出手段は、
第2補正係数算出手段を有し、
前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度に基づく指標(T)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【請求項5】
前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する
ことを特徴とする請求項4に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数3】
【請求項6】
前記補正満充電容量算出手段は、
前記第1補正係数算出手段と第2補正係数算出手段を有し、
前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【請求項7】
前記補正満充電容量算出手段は、
前記第1補正係数算出手段と第2補正係数算出手段を有し、
前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項3に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【請求項8】
第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期時の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する
ことを特徴とする請求項7に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数4】
【請求項9】
前記補正満充電容量算出手段は、下記式4および式5により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項8に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数5】
【数6】
【請求項10】
前記補正満充電容量算出手段は、下記式6および式7により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項8に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数7】
【数8】
【請求項11】
前記補正満充電容量算出手段は、下記式8および式9により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項8に記載の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数9】
【数10】
【請求項12】
少なくとも一つの電池セルを有する二次電池ユニットの充電率(SOC)または充放電可能電力(SOP)を下記式1または式2を用いて推定する二次電池ユニット充電状態推定方法であって、
前記二次電池ユニットの補正満充電容量(FCCadj)算出し、
前記二次電池ユニットから得られる測定時の物理量に基づく指標を変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数11】
【数12】
【請求項13】
下記4つの指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を含む第1関数により求められる第1補正係数を算出し、
前記第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出すること
を特徴とする請求項12に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
第1指標: 前記二次電池ユニットの充放電電流であって、測定時の前記充放電電流の電流値(I)に基づく第1指標(I)
第2指標: 前記二次電池ユニットの入出力電力であって、測定時の前記入出力電力の電力値(P)に基づく第2指標(P)
第3指標: 前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)に基づく第3指標(T)
第4指標: 前記二次電池ユニットの測定時の健全度(SOH)に基づく第4指標(S)
【請求項14】
前記第1指標(I)または前記第2指標(P)を変数とするワイブル関数、前記第3指標(T)を変数とするワイブル関数、および、前記第4指標(S)を変数とするワイブル関数、のうちから任意の複数の関数を選択し、
これら複数の関数同士について所定の四則演算を行うことで、前記第1補正係数を演算する
ことを特徴とする請求項13に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【請求項15】
前記二次電池ユニットの測定時の温度に基づく指標(T)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項12に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【請求項16】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する
ことを特徴とする請求項15に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数13】
【請求項17】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項13に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【請求項18】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項14に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【請求項19】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期時の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する
ことを特徴とする請求項18に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数14】
【請求項20】
下記式4および式5により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項19に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数15】
【数16】
【請求項21】
下記式6および式7により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項19に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数17】
【数18】
【請求項22】
下記式8および式9により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する
ことを特徴とする請求項19に記載の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数19】
【数20】
【請求項23】
少なくとも一つの電池セルを有する二次電池ユニットの充電率(SOC)または充放電可能電力(SOP)を下記式1または式2を用いて推定する二次電池ユニット充電状態推定プログラムであって、
前記二次電池ユニットから得られる測定時の物理量に基づく指標を変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数21】
【数22】
【請求項24】
下記4つの指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を含む第1関数により求められる第1補正係数を算出し、
前記満充電容量算出手段は、前記第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項23に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
第1指標: 前記二次電池ユニットの充放電電流であって、測定時の前記充放電電流の電流値(I)に基づく第1指標(I)
第2指標: 前記二次電池ユニットの入出力電力であって、測定時の前記入出力電力の電力値(P)に基づく第2指標(P)
第3指標: 前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)に基づく第3指標(T)
第4指標: 前記二次電池ユニットの測定時の健全度(SOH)に基づく第4指標(S)
【請求項25】
前記第1指標(I)または前記第2指標(P)を変数とするワイブル関数、前記第3指標(T)を変数とするワイブル関数、および、前記第4指標(S)を変数とするワイブル関数、のうちから任意の複数の関数を選択し、
これら複数の関数同士について所定の四則演算を行うことで、前記第1補正係数を演算する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項24に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【請求項26】
前記二次電池ユニットの測定時の温度に基づく指標(T)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項23に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【請求項27】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項26に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数23】
【請求項28】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項24に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【請求項29】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、
前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項25に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム
【請求項30】
前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期時の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項29に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数24】
【請求項31】
下記式4および式5により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項30に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数25】
【数26】
【請求項32】
下記式6および式7により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項30に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数27】
【数28】
【請求項33】
下記式8および式9により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする請求項30に記載の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数29】
【数30】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池ユニット充電状態推定装置、二次電池ユニット充電状態推定方法及び二次電池ユニット充電状態推定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リチウムイオン電池といった、充電と放電とを繰り返すことのできる二次電池(バッテリ)が、様々な機器や装置で用いられている。この二次電池の充電率(SOC:State Of Charge)を推定する手法の一例として、例えば、充電電流と放電電流とを積算して充電率を推定する手法、いわゆる電流積算法があり、下記式の通りである。
【数1】
【0003】
この手法では、前回求めた充電率を基準に、今回と前回の間に電池に入出力された電荷量Qを満充電時の電池容量(FCC:Full Charge Capacity)で割った充放電した電荷の変化量を加算することで充電率を求めることができる。
【0004】
充電率(SOC)は、二次電池に蓄えられている電気の残量(残容量)を満充電時の充電容量である満充電容量で割った値を、パーセンテージで表したものである。この充電率は、二次電池の充電容量がゼロの場合に0%となり、二次電池の充電容量が満充電容量と等しい場合に100%となる。
【0005】
従来、予め設定された満充電容量(固定値)を用いて充電率が推定されていた。
しかしながら、充電率の推定に用いられる満充電容量(FCC)は、電池の劣化等に伴って変動する値である。また、電池の容量は測定時の温度や電流値大きさ等の影響で実際に電池に充電されている容量が変化することがある。
このため、正確な充電率を得るためには、電池に入出力された電荷量または満充電容量を各種条件の変化に応じて補正すること望ましい。
【0006】
近年、充電率(SOC)をより正確に推定するために、満充電容量を適宜推定するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
この特許文献1には、電池の満充電容量又は放電可能容量のいずれかに基づいて電池の充電率を推定するかを判定するSOC判定部と、満充電容量を推定する満充電容量推定部と、放電可能容量を推定する放電容量推定部と、満充電容量又は放電可能容量に基づいて電池の充電率を推定する電流積算推定部とを備える構成が開示されている。そして引用文献1には、満充電容量推定部が、所定期間における充電量の変化値と、変化に要した所定期間における電流積算値とに基づいて満充電容量を推定することが記載されている。
また、充放電時の電気量に対応する充放電区間容量を予め決められた補正係数のテーブルを用いて補正を行い、満充電容量を推定する方法が記載されている。
また、放電レートと劣化度合によるマップを用いて、満充電容量を補正する方法も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2016/129212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
充電率(SOC)の推定に用いられる満充電容量を推定して適宜変更することで、充電率の推定精度の向上を図ることはできる。しかしながら、特許文献1に記載のような方法では、充電率の推定の際の電流値や温度等によって、推定充電率がずれてしまうという問題がある。また、より正確な推定をしようとすると、補正係数のテーブル等や補正マップ等をたくさん用意しなくてはならず、データ量が大きくなってしまうという問題もある。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、測定時のパラメータを基に、二次電池の充電率(SOC)を追従性良くリアルタイムで推定することができる二次電池ユニットの充電状態推定装置、充電状態推定方法及び充電状態推定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決する本発明の態様は、少なくとも一つの電池セルを有する二次電池ユニットの充電率(SOC)または充放電可能電力(SOP)を下記式1または式2を用いて推定する二次電池ユニット充電状態推定装置であって、前記二次電池ユニット充電状態推定装置は前記二次電池ユニットの補正満充電容量(FCCadj)算出する補正満充電容量算出手段を具備し、前記補正満充電容量算出手段は、前記二次電池ユニットから得られる測定時の物理量に基づく指標を変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数2】
【数3】
【0012】
第2の態様は、前記補正満充電容量算出手段は、第1補正係数算出手段を有し、前記第1補正係数算出手段は、下記4つの指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を含む第1関数により求められる第1補正係数を算出し、前記補正満充電容量算出手段は、前記第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第1の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
第1指標: 前記二次電池ユニットの充放電電流であって、測定時の前記充放電電流の電流値(i)に基づく第1指標(I)
第2指標: 前記二次電池ユニットの入出力電力であって、測定時の前記入出力電力の電力値(P)に基づく第2指標(P)
第3指標: 前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)に基づく第3指標(T)
第4指標: 前記二次電池ユニットの測定時の健全度(SOH)に基づく第4指標(S)
【0013】
第3の態様は、前記補正満充電容量算出手段は、前記第1指標(I)または前記第2指標(P)を変数とするワイブル関数、前記第3指標(T)を変数とするワイブル関数、および、前記第4指標(S)を変数とするワイブル関数、のうちから任意の複数の関数を選択し、これら複数の関数同士について所定の四則演算を行うことで、前記第1補正係数を演算することを特徴とする第2の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【0014】
第4の態様は、前記補正満充電容量算出手段は、第2補正係数算出手段を有し、前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度に基づく指標(T)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第1の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【0015】
第5の態様は、前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出することを特徴とする第4の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数4】
【0016】
第6の態様は、前記補正満充電容量算出手段は、前記第1補正係数算出手段と第2補正係数算出手段を有し、前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第2の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【0017】
第7の態様は、前記補正満充電容量算出手段は、前記第1補正係数算出手段と第2補正係数算出手段を有し、前記第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第3の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【0018】
第8の態様は、第2補正係数算出手段は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期時の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する
ことを特徴とする第7の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数5】
【0019】
第9の態様は、容量算出手段は、下記式4および式5により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第8の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数6】
【数7】
【0020】
第10の態様は、前記補正満充電容量算出手段は、下記式6および式7により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第8の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数8】
【数9】
【0021】
第11の態様は、前記補正満充電容量算出手段は、下記式8および式9により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第8の態様の二次電池ユニット充電状態推定装置。
【数10】
【数11】
【0022】
第12の態様は、少なくとも一つの電池セルを有する二次電池ユニットの充電率(SOC)または充放電可能電力(SOP)を下記式1または式2を用いて推定する二次電池ユニット充電状態推定方法であって、前記二次電池ユニットの補正満充電容量(FCCadj)算出し、
前記二次電池ユニットから得られる測定時の物理量に基づく指標を変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数12】
【数13】
【0023】
第13の態様は、下記4つの指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を含む第1関数により求められる第1補正係数を算出し、前記第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出すること
を特徴とする第12の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
第1指標: 前記二次電池ユニットの充放電電流であって、測定時の前記充放電電流の電流値(i)に基づく第1指標(I)
第2指標: 前記二次電池ユニットの入出力電力であって、測定時の前記入出力電力の電力値(P)に基づく第2指標(P)
第3指標: 前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)に基づく第3指標(T)
第4指標: 前記二次電池ユニットの測定時の健全度(SOH)に基づく第4指標(S)
【0024】
第14の態様は、前記第1指標:(I)または前記第2指標(P)を変数とするワイブル関数、前記第3指標(T)を変数とするワイブル関数、および、前記第4指標(S)を変数とするワイブル関数、のうちから任意の複数の関数を選択し、これら複数の関数同士について所定の四則演算を行うことで、前記第1補正係数を演算することを特徴とする第13の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【0025】
第15の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度に基づく指標(T)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第12の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【0026】
第16の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出することを特徴とする第15の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数14】
【0027】
第17の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第13の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【0028】
第18の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第14の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【0029】
第19の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期時の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出することを特徴とする第18の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数15】
【0030】
第20の態様は、下記式4および式5により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第19の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数16】
【数17】
【0031】
第21の態様は、下記式6および式7により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第19の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数18】
【数19】
【0032】
第22の態様は、下記式8および式9により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出することを特徴とする第19の態様の二次電池ユニット充電状態推定方法。
【数20】
【数21】
【0033】
第23の態様は、少なくとも一つの電池セルを有する二次電池ユニットの充電率(SOC)または充放電可能電力(SOP)を下記式1または式2を用いて推定する二次電池ユニット充電状態推定プログラムであって、前記二次電池ユニットから得られる測定時の物理量に基づく指標を変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数22】
【数23】
【0034】
第24の態様は、下記4つの指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を含む第1関数により求められる第1補正係数を算出し、前記満充電容量算出手段は、前記第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第23の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
第1指標: 前記二次電池ユニットの充放電電流であって、測定時の前記充放電電流の電流値(i)に基づく第1指標(I)
第2指標: 前記二次電池ユニットの入出力電力であって、測定時の前記入出力電力の電力値(P)に基づく第2指標(P)
第3指標: 前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)に基づく第3指標(T)
第4指標: 前記二次電池ユニットの測定時の健全度(SOH)に基づく第4指標(S)
【0035】
第25の態様は、前記第1指標(I)または前記第2指標(P)を変数とするワイブル関数、前記第3指標(T)を変数とするワイブル関数、および、前記第4指標(S)を変数とするワイブル関数、のうちから任意の複数の関数を選択し、これら複数の関数同士について所定の四則演算を行うことで、前記第1補正係数を演算する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第24の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【0036】
第26の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度に基づく指標(T)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第23の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【0037】
第27の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第26の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数24】
【0038】
第28の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第24の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【0039】
第29の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)を変数とするワイブル関数から求められる第2補正係数を算出し、前記第1補正係数および前記第2補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第25の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【0040】
第30の態様は、前記二次電池ユニットの測定時の温度(Temp)と、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期時の電池容量の関係から導き出される係数を変数とする下記式3により求められる第2補正係数を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第29の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数25】
【0041】
第31の態様は、下記式4および式5により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第30の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数26】
【数27】
【0042】
第32の態様は、下記式6および式7により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させる
ことを特徴とする第30の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数28】
【数29】
【0043】
第33の態様は、下記式8および式9により求められる第1補正係数を用いて初期満充電容量(FCC)を補正することで前記補正満充電容量(FCCadj)を算出する手順を、コンピュータを機能させて実行させることを特徴とする第30の態様の二次電池ユニット充電状態推定プログラム。
【数30】
【数31】
【発明の効果】
【0044】
本発明では、二次電池ユニットの充電率(SOC)を測定時のパラメータを基に、追従性良くリアルタイムで推定することができる。さらに、本発明は所定の計算式により求めることができるので、補正係数のテーブル等や補正マップ等をシステムに記憶させる量を減らすことができ、システムの負荷を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】蓄電池システムの制御部の一例を示す機能ブロック図である。
図2】本発明の方法を説明する図であり、温度とFCC比との関係を示す図である。
図3】本発明の方法を説明する図であり、実測データの記録を用いたワイブルプロットによる予測線を示す図である。
図4】試験例1における二次電池ユニットのSOCと電流値との関係を示す図である。
図5】試験例1における二次電池ユニットの電流値の変化を示す図である。
図6】試験例1における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図7】試験例1における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図8】試験例1における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図9】試験例2における二次電池ユニットのSOCと電流値との関係を示す図である。
図10】試験例2における二次電池ユニットの電流値の変化を示す図である。
図11】試験例2における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図12】試験例2における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図13】試験例2における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図14】試験例3における二次電池ユニットのSOCと電流値との関係を示す図である。
図15】試験例3における二次電池ユニットの電流値の変化を示す図である。
図16】試験例3における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図17】試験例3における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図18】試験例3における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図19】試験例4における二次電池ユニットのSOCと電流値との関係を示す図である。
図20】試験例4における二次電池ユニットの電流値の変化を示す図である。
図21】試験例4における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図22】試験例4における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
図23】試験例4における二次電池ユニットのSOCと電圧値との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
本発明の対象となる二次電池ユニットは、単体又は複数の電池セルを備え、電力を充放電可能に構成されている。二次電池ユニットとしては、例えば、リチウムイオン電池、ニッケル水素電池、ニッケルカドニウム電池、鉛電池等を用いることができる。また、複数の電池セルは、蓄電池として求められる機能・能力に基づいて接続され、直列で接続されたものであってもよく、また並列で接続されたものであってもよい。
【0047】
このような蓄電池システムの電力調整装置では、制御部によって発電装置で発電された直流電力を二次電池ユニット及びインバータを介して交流化して負荷に所望のタイミング及び割合で供給する制御が行われる。また、電力調整装置では、制御部によって商用電源から供給された交流電力を負荷及びインバータを介して直流化して二次電池ユニットに所望のタイミングで供給する制御が行われる。
【0048】
ここで、電力調整装置の制御部の一例を図1を参照して説明する。なお、図1は、制御部40の概略構成を示す機能ブロック図である。
【0049】
図1に示すように、制御部40は、電力調整装置の全体を制御するものであり、発電装置監視部41と、蓄電池監視部42と、充放電制御部43と、を具備する。
【0050】
蓄電池監視部42は、二次電池ユニット2の充放電電流値、電圧値、二次電池ユニット2の温度である電池温度、稼働時間等を測定する。充放電電流値には、二次電池ユニット2の充電時の電流値である充電電流値と、二次電池ユニット2の放電時の電流値である放電電流値と、が含まれる。
【0051】
蓄電池監視部42は、電池セル2a毎又は複数の電池セル2aで構成された電池セル群毎に、電圧値、電流値、電池温度等を監視する監視装置(CMU:Cell Monitor Unit)としても機能させてもよい。そして蓄電池監視部42は、電池セル2aまたは複数の電池セル群の充放電電流値、電圧値、電池温度等の異常を検知し、異常の発生を充放電制御部43に伝える。
【0052】
測定する二次電池ユニット2の電流値は、組電池としての電流値でもよいし、単電池の電流値でもよい。システムの大きさや測定する目的に合わせて、測定する対象を適宜選択することができる。
【0053】
測定する二次電池ユニット2の温度は、組電池の温度でもよいし、単電池の温度でもよい。システムの大きさや測定する目的に合わせて、測定する対象を適宜選択することができる。
【0054】
蓄電池監視部42は、上記測定結果等に基づいて二次電池ユニット2の充電率(SOC)、充放電可能電力(SOP)等を推定する。例えば、本実施形態では、蓄電池監視部42は、充電率推定装置としての充電率推定部100を有し、詳しくは後述するが、この充電率推定部100が二次電池ユニット2の補正満充電容量(FCCadj)や充電率(SOC)を所定間隔で推定する。また蓄電池監視部42は、二次電池ユニット2の健全度(SOH)についても、充電率(SOC)と同じタイミングで推定する。
【0055】
なお、このような発電装置監視部41、蓄電池監視部42及び充放電制御部43は、電力調整装置3を構成する中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)、記憶手段の一例である読み出し及び書き込み可能なメモリ(RAM:Random Access Memory)、各種プログラムなど格納するための読み出し専用のメモリ(ROM:Read Only Memory)によって実現することができる。
【0056】
例えば、蓄電池監視部42のROMには、補正満充電容量(FCCadj)を推定する補正満充電容量推定プログラムや充電率(SOC)や充放電可能電力(SOP)を推定する充電率推定プログラムがインストールされており、これらの推定プログラムがRAMに読み込まれ、コンピュータであるCPUにより実行される。つまり、これら満充電容量推定プログラム及び充電率推定プログラムは、満充電容量を推定する手順や、充電率を推定する手順を、CPUを機能させて実行させるものである。
【0057】
以下、蓄電池監視部42が有する充電率推定部100について説明する。
充電率推定部100は、二次電池ユニット2の充放電電流値等の上記測定結果のデータを取得し、このデータに基づいて二次電池ユニット2の充電率を推定する。詳しくは、充電率推定部100は、下記式(1)により二次電池ユニット2の充電率(SOC)または下記式(2)により充放電可能電力(SOP)の推定を行う。つまり充電率推定部100は、いわゆる電流積算法により二次電池ユニット2の充電率または充放電可能電力(SOP)の推定を行う。
充放電可能電力(SOP)は電池容量(Ah)に電圧(V)をかけた電力量(Wh)を基準として充放電可能電力な電力を求めるものであり、電流と同時に測定した電圧を掛け合わせることで求めることができる。今後の説明において、充電率(SOC)で行っている場合でも、充放電可能電力(SOP)にも適用可能である。
【0058】
【数32】
【数33】
【0059】
ここで、充電率推定部100は、上述のように二次電池ユニット2の充電率の推定を所定間隔で行っており、上記式(1)中のSOClastは、充電率推定部100が前回推定した二次電池ユニット2の充電率である。すなわちSOClastは、充電率推定部100によって推定された二次電池ユニット2の充電率の前回値である。また上記式(1)中のiは、二次電池ユニット2の充放電電流値であり、上記式(1)中の(t-tk-1)は、前回の推定から現在までの経過時間である。
【0060】
k ×(t-tk-1)は、前回の推定から現在までの二次電池ユニットに出入りした電荷量Qに相当するので、ikは測定している充放電電流の電流値推移を考慮するものである。電流値は経時的に計測することでその値を使用することができるし、条件が合えば、測定時の値、平均値、中央値、最大値、最小値等の代表値を使用することもできる。前回の推定から現在まで時間間隔が短い場合や電流値の変化が少ない場合は、データ量を小さくできることから、測定時の電流値を使用することが好ましい。
【0061】
ここで、測定しデータを取るタイミングは、システムの使用状況や目的に合わせて適宜選択すればよい。充電と放電が変わる場合、電流値が大きく変化する場合、または、温度急激に変わった場合等、何らかの物理量が変化した点でデータを取っても良いし、一定時間ごとにデータをとっても良い。正確なSOC推定を行いたい場合であれば、短い時間ごとに測定を行うことが好ましい。測定したデータは稼働時間と紐づけて、記憶しておく必要がある。
【0062】
上記式(1)中のFCCadj(FCC adjust)は、二次電池ユニット2の充電率の各推定時における二次電池ユニット2の満充電容量の補正値(以下、補正満充電容量という)である。充電率推定部100は、満充電容量推定装置としての補正満充電容量推定部110を含んで構成されており、満充電容量(FCCadj)は、この補正満充電容量推定部110によって推定(算出)される。
【0063】
補正満充電容量推定部110は、二次電池ユニット2の充放電電流値iと、現在の二次電池ユニット2の温度であるユニット温度Tempと、二次電池ユニット2の健全度SOHとを同じタイミングで測定し、それぞれに基づく指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量を算出する。
【0064】
温度(Temp)は経時的に計測することでその値を使用することができるし、条件が合えば、測定時の値、平均値、中央値、最大値、最小値等の代表値を使用することもできる。前回の推定から現在まで時間間隔が短い場合や温度の変化が少ない場合は、データ量を小さくできることから、測定時の温度を使用することが好ましい。
【0065】
より詳しくは、補正満充電容量推定部110は、電流値取得手段111と、ユニット温度取得手段112と、健全度取得手段113と、補正満充電容量算出手段115と、を有する。
【0066】
電流値取得手段111は、二次電池ユニット2の充電及び放電時の電流値である充放電電流値として、現在の充放電電流値iを取得する。ユニット温度取得手段112は、二次電池ユニット2の温度であるユニット温度として、現在のユニット温度Tempを取得する。健全度取得手段113は、二次電池ユニット2の現在の健全度SOHを取得する。
【0067】
健全度(SOH)の取得方法は特に限定されるものではないが、例えば、予め用意した基準セル等から得たSOC-OCVカーブまたは充放電容量-OCVカーブを用意しておき、OCVの値から測定時のSOCや充放電容量を求め、現在の電流積算の電荷量から求められるSOCや容量値と比較することにより健全度(SOH)を導き出すことができ、経過時間、サイクル数、使用環境、電池セルの状態等から予め実験により、導き出すこともできる。また、健全度(SOH)はワイブルプロットを用いた方法で導き出すことも可能である。
【0068】
本実施形態では、上述のように、蓄電池監視部42が、監視装置(CMU)として機能し、充放電電流値i、入出力電力値p、ユニット温度Temp等の検出を行うと共に、健全度SOHの推定を行っている。このため、電流値取得手段111、ユニット温度取得手段112及び健全度取得手段113は、蓄電池監視部42が検出した充放電電流値i及びユニット温度Tempを所定のタイミングで取得すると共に、蓄電池監視部42が推定した健全度SOHを所定のタイミングで取得する。
【0069】
充放電電流値i、入出力電力値p、ユニット温度Temp等の検出を行うと共に、健全度SOH等の測定しデータを取得するタイミングは、システムの使用状況や目的に合わせて適宜選択すればよい。上記データを取得するタイミングで同時に行っても良いし、必要があれば、各データを個別に取得しても良い。
【0070】
なお充放電電流値i、入出力電力値p、ユニット温度Temp及び健全度SOHの取得方法は特に限定されず、例えば、充放電電流値i、入出力電力値p、ユニット温度Temp及び健全度SOHの推定を、補正満充電容量推定部110が行うようにしてもよい。
【0071】
補正満充電容量算出手段115は、第1補正係数(CF1)を用いて補正満充電容量を算出する。同じタイミングで、二次電池ユニット2の充放電電流値iと、二次電池ユニットの入出力電力値pと、二次電池ユニット2の温度であるユニット温度Tempと、二次電池ユニット2の健全度SOHとを求め、
第1指標(I):測定時の充放電電流の電流値(i)に基づく指標
第2指標(P):測定時の入出力電力の電力値(p)に基づく指標
第3指標(T):測定時の二次電池ユニットの温度(Temp)に基づく指標
第4指標(S):測定時の二次電池ユニットの健全度(SOH)に基づく指標
のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を用いて第1補正係数(CF1)を算出する。ただし、第1指標(I)と第2指標(P)はどちらか一方のみを使用するほうが好ましい。
【0072】
指標の代表例としては、以下の式のようなものが挙げられる。
【数34】
【0073】
第1補正係数(CF1)を算出するには、例として、下記のような式が挙げられる。
【数35】
【0074】
式11~式18において、χ(1), χ(2), χ(3) には、第1指標(I)、または、第2指標(P)、第3指標(T)、および、第4指標(S)のうちのいずれかの指標が重複しないように設定される。
また、式11~式18の右側の式はm、ηを求めるためのフィッティングの式であり、prm(1), prm(2), prm(3), ・・・,prm(8) はフィッティング時に得られる任意の数である。
【0075】
また、補正満充電容量算出手段115は、測定時の充放電電流値(i)に基づく第1指標(I)を変数とするワイブル関数、または、測定時の入出力電力の電力値(p)に基づく第2指標(P)を変数とするワイブル関数、測定時の二次電池ユニットの温度(Temp)に基づく第3指標(T)を変数とするワイブル関数、および、測定時の二次電池ユニットの健全度(SOH)に基づく第4指標(S)を変数とするワイブル関数のうちから任意の複数の関数を選択し、これら複数の関数同士について所定の四則演算を行うことで、第1補正係数を求めてもよい。
【数36-1】
【数36-2】
【0076】
ここで、式21~式40において、prm(1)~prm(6)は、FCCadj = FCC×CF1×CF2の関係から導く。すなわち、過去の実験データの容量をFCCadjとし、初期容量(FCC)、実験時の第1指標、第3指標、第4指標を代入して、フィッティングをかけることで求めることができる。よって、過去の実験データがあるときに可能となる。
【0077】
補正満充電容量算出手段115は、第2指標を変数とするワイブル関数を含む第2関数により求められる第2補正係数に基づいて、補正満充電容量を算出してもよい。
【0078】
補正満充電容量算出手段115は、下記式(a)に示すように第2補正係数(CF2)を第2関数により演算する。下記式(b)に示すように、初期満充電容量(FCCと第2補正係数(第2関数)とを乗算して補正満充電容量(FCCadj)を算出する。
第2補正係数は、予め用意された二次電池ユニットの温度と電池ユニットの初期の電池容量の関係から導き出される。
【0079】
【数37】
【0080】
二次電池ユニット2の初期満充電容量(FCC)は、二次電池ユニット2の未使用時の容量や同種類の基準セルを用いた実験により予め求められた値である。
初期満充電容量(FCC)は、充放電する電流値を小さくして、充電または放電を行うことにより、得ることができる。電流値のレートは0.01C以下で測定することが好ましい。電池の充放電容量は測定温度で影響を受けるが、室温付近であればよい。また、可能であれば推定される近似値等を用いてもよい。近似の方法として、温度違いの満充電容量を複数とり、それらの関係をプロットし最高値を用いる方法や、温度および電流のレート違いを複数とり、最小二乗法等を使う方法等を用いることができる。
【0081】
また、上記式(a)における第2補正係数に用いられる係数mstd_T、ηstd_Tは、同種類の基準セルを用いた実験により予め求められた値であり、例えば、次のように算出する。
【0082】
ワイブル関数は、自然対数を2回とって式を変換すると、1次関数の式として表される。例えば、ワイブル関数の一例としての下記式(c)について、自然対数を2回とり、式を変換すると、下記式(d)に示すような1次関数の式として表される。したがって、この式中の係数からワイブル関数のパラメータm、ηを算出することができる。
【0083】
【数38】
【0084】
そこで上記式(3)中の第2関数についても、この手法を用いて各係数mstd_T、ηstd_Tを求めている。具体的には、基準セルの電池ユニット温度であるユニット温度Tempと、FCC比との関係を実験的に求める。FCC比とは、実験時に測定された満充電容量の設定容量FCCに対する比率である。温度Tempを変化させたときの二次電池ユニット2の満充電容量の変化を実験的に測定し、その測定結果からユニット温度とFCC比との関係を求める。図2は、実験的に求められたユニット温度とFCC比との関係を示すグラフである。図2に示すように、比の値は、ユニット温度Tempが高くなるほど徐々に低くなる傾向を示す。
【0085】
このように実験的に求めたユニット温度とFCC比との関係から、ワイブルプロットを作成する。すなわち、横軸をln(ユニット温度)とし、縦軸をln(ln(1/FCC比))としてワイブルプロットしたグラフを作成する。そして、このグラフのプロットを回帰分析(例えば、最小二乗法)などのフィッティング手法で、FCC比は図3に示すような直線の予測線を求め、この予測線の傾き及び切片から、第2関数に用いられる係数mstd_T、ηstd_Tを求める。
【0086】
フィッティング手法として、最小二乗法を上げたが、非線形レーベンバーグ・マルカート法なども使用することができる。フィッティング手法は、シミュレーションソフトや表計算ソフトを用いて実施できる。
【0087】
補正満充電容量算出手段115は、初期満充電容量(FCC)と第1補正係数と第2補正係数とを乗算して補正満充電容量を算出する。第1補正係数と第2補正係数の両方を用いることで、より正確な二次電池ユニット2の充電率を求めることができる。
【0088】
ここから、第1補正係数(CF1)の具体的な求め方を説明する。
【0089】
例えば、本実施形態では、補正満充電容量算出手段115は、下記式(e)に示すように、表すことができる。
χ(1)、χ(3)には、第1指標(I)または第2指標(P)、第3指標(T)、および、第4指標(S)のうちのいずれかの指標が重複しないように設定される。
例えば、充放電電流値iを基に構成される第1指数を変数χ(1)とするワイブル関数と、健全度SOHを基に構成される第4指標を変数χ(3)と、を乗算することによって第1補正係数(CF1)を演算する。
【0090】
【数39】
【0091】
補正満充電容量算出手段115は、この第1関数に用いられる係数m,ηを、第1補正係数CF1を演算する第1関数に変数として用いられた指標以外の指標を変数とする第3関数により算出する。χ(2)にはχ(1)、χ(3)に用いられた指標とは異なる、指標が設定される。
上述のように第1関数でχ(1)、χ(3) に充放電電流値iを基に構成される第1指数と健全度SOHを基に構成される第4指標を変数としている場合、それ以外の指標、つまり、第3指標を変数とする第3関数により算出する。例えば、本実施形態では、補正満充電容量算出手段115は、第1関数に用いられる係数m、ηを、下記式(f)に示す第3関数により算出する。
【0092】
【数40】
【0093】
std_T、ηstd_Tを求めた場合と同様で、容量と式(8)に用いたx(2)に使用した指標の関係をワイブルプロットして、フィッティングすることで算出する。このフィッティング手法は、シミュレーションソフトや表計算ソフトを用いて実施できる。prm(1)~prm(4)に関しては、フィッティングに伴って得られる値である。
【0094】
本実施形態では、上記式(e)及び式(f)を用いて第1補正係数を算出したが、他の式を用いて第1補正係数を算出することもできる。第1補正係数を算出するための式としては、例えば、下記式(g)と式(h)との組み合わせ、
【0095】
【数41】
【0096】
【数42】
【0097】
式(h)は係数m、ηがln(m),ln(η)の形で算出される。この場合、ln(m)、ln(η)の値に、expを用いて係数m、ηを算出し、式(g)に用いることもできる。
さらには、係数m、ηをmとln(η)の組み合わせにして求めてもよい。
他の係数m、ηを求める場合でも、組み合わせをmとln(η)、ln(m)とln(η)に変更することは可能である。
【0098】
また、なお本実施形態では、上記式(e)及び式(f)を用いて第1補正係数を算出したが、他の式を用いて第1補正係数を算出することもできる。下記式(i)と式(j)との組み合わせ、下記式(k)と式(l)との組み合わせ等を挙げることができる。
【数43】
【0099】
係数m,ηは、容量と式(j)、式(l)のパラメータの関係を用いて、シミュレーションソフト等を用いて、同時フィッティングすることで求めることができる。
【0100】
さらには、第1補正係数は、下記式(m)、下記式(n)等を用いて算出を挙げることもできる。下記式(m)又は式(n)にて第1補正係数を算出する場合、各式中のパラメータprm(1)~prm(6)は、FCCadj = FCC×CF1×CF2 関係から導く。
過去の実験データの容量をFCCadj、初期容量(FCC)、実験時の第1指標、第3指標、第4指標を用いて、フィッティングすることで求めることができる。
【0101】
【数44】
【0102】
<試験例>
所定条件下で二次電池ユニット2に対する充電又は放電を行い、その間に、下記実施例1~12及び比較例1,2の充電率推定装置において、それぞれ補正満充電容量を算出すると共に、算出した補正満充電容量に基づいて二次電池ユニット2の充電率を推定(算出)する試験(試験例1~4)を実施した。
【0103】
(実施例1~12)
実施例1~12の充電率推定装置では、下記表1に示すように、第1補正係数CF1の算出式として上記式(e)~(n)のうちの何れかを用いると共に、表1に示す変数x(x(1),x(2),x(3))を用いて補正満充電容量FCCadjを算出する。また、この補正満充電容量FCCadjを用いて二次電池ユニット2の充電率を推定する。
【0104】
【表1】
【0105】
(比較例1)
比較例1の充電率推定装置では、満充電容量を固定値(例えば、初期満充電容量FCC)として、二次電池ユニット2の充電率を推定(算出)する。
【0106】
(比較例2)
比較例2の充電率推定装置では、予め記憶されているマップに基づいて満充電容量を推定(算出)すると共に、その満充電容量に基づいて二次電池ユニット2の充電率を推定(算出)する。
【0107】
<試験例1>
下記表2に示すように、実施温度10℃、SOH=87.6%の条件で、実際の最終到達充電率(実final SOC)が100%となるまで二次電池ユニット2に対する充電を行った。図4及び図5は、その間の二次電池ユニット2における電流値の変化を示すグラフである。
【0108】
そして、二次電池ユニット2の充電中、充電率推定装置において二次電池ユニット2の補正満充電容量FCCadjを算出し、その補正満充電容量FCCadjを用いて、二次電池ユニット2の充電率の推定(算出)を行った。図6図8は、充電中における二次電池ユニットの実際の充電率(実SOC)、実施例1,3~5及び比較例1,2にて推定した充電率と、二次電池ユニットの電圧との変化を示すグラフである。また試験結果の一つとして、充電後の充電率である最終到達充電率(final SOC)を下記表3に示す。
【0109】
<試験例2>
下記表2に示すように、実施温度20℃、SOH=87.6%の条件で、実際の最終到達充電率(実final SOC)が100%となるまで二次電池ユニット2に対する充電を行った。図9及び図10は、その間の二次電池ユニット2における電流値の変化を示すグラフである。
【0110】
そして、二次電池ユニット2の充電中、充電率推定装置において二次電池ユニット2の補正満充電容量FCCadjを算出し、その補正満充電容量FCCadjを用いて、二次電池ユニット2の充電率の推定(算出)を行った。図11図13は、充電中における二次電池ユニットの実際の充電率(実SOC)、実施例1,3~5及び比較例1,2にて推定した充電率と、二次電池ユニットの電圧との変化を示すグラフである。また試験結果の一つとして、充電後の充電率である最終到達充電率(final SOC)を下記表3に示す。
【0111】
<試験例3>
下記表2に示すように、実施温度10℃、SOH=87.6%の条件で、実際の最終到達充電率(実final SOC)が0%となるまで二次電池ユニット2の放電を行った。図14及び図15は、その間の二次電池ユニット2における電流値の変化を示すグラフである。なお図14において、電流値は図中矢印で示すように右側から左側に向かって変化する。
【0112】
そして、二次電池ユニット2の放電中、充電率推定装置において二次電池ユニット2の補正満充電容量FCCadjを算出し、その補正満充電容量FCCadjを用いて、二次電池ユニット2の充電率の推定(算出)を行った。図16図18は、放電中における二次電池ユニットの実際の充電率(実SOC)、実施例1,3~5及び比較例1,2にて推定した充電率と、二次電池ユニットの電圧との変化を示すグラフである。これら図16図18において、電圧値は図中矢印で示すよう右側から左側に向かって変化する。また試験結果の一つとして、放電後の充電率である最終到達充電率(final SOC)を下記表3に示す。
【0113】
<試験例4>
下記表2に示すように、実施温度20℃、SOH=87.6%の条件で、実際の最終到達充電率(実final SOC)が0%となるまで二次電池ユニット2の放電を行った。図19及び図20は、その間の二次電池ユニット2における電流値の変化を示すグラフである。なお図19において、電流値は図中矢印で示すように右側から左側に向かって変化する。
【0114】
そして、二次電池ユニット2の放電中、充電率推定装置において二次電池ユニット2の補正満充電容量FCCadjを算出し、その補正満充電容量FCCadjを用いて、二次電池ユニット2の充電率の推定(算出)を行った。図21図23は、放電中における二次電池ユニットの実際の充電率(実SOC)、実施例1,3~5及び比較例1,2にて推定した充電率と、二次電池ユニットの電圧との変化を示すグラフである。これら図21図23において、電圧値は図中矢印で示すよう右側から左側に向かって変化する。また試験結果の一つとして、放電後の充電率である最終到達充電率(final SOC)を下記表3に示す。
【0115】
【表2】
【0116】
【表3】
【0117】
表3に示すように、試験例1~4において、実施例1~12の最終到達充電率の値は、何れも、満充電容量として固定値を用いた比較例1の最終到達充電率の値と比較して、実際の最終到達充電率に近い値となった。したがって、実施例1~12では、二次電池ユニット2の充電率を、比較例1よりも高精度に推定(算出)することができている。さらに言えば、実施例1~12では、充電率の算出に用いられる二次電池ユニット2の満充電容量の値を、比較例1よりも高精度に推定することができている。
【0118】
また実施例1~12の最終到達充電率の値は、マップに基づいて満充電容量を推定(算出)した比較例2の最終到達充電率と同程度、又はそれよりも実際の最終到達充電率よりも近い値となっている。したがって、実施例1~12では、比較例2と比べても、同程度又はそれよりも高い精度で満充電容量及び充電率を推定(算出)することができている。
【0119】
比較例2のようにマップを用いる場合、データ数を増やすことで、満充電容量及び充電率の推定値と、実際の満充電容量及び充電率との誤差は小さくすることはできる。しかしながら、データ記憶容量の増加が必要となり、また満充電容量等の算出に時間を要するといったデメリットが生じてしまう。
【0120】
上述したように本発明では、二次電池ユニット2の測定時の充放電電流値iと、測定時のユニット温度Tempと、二次電池ユニット2の測定時の健全度SOHとのそれぞれに基づく指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を用いて補正満充電容量を算出し、この補正満充電容量を用いて充電率を推定するようにした。これにより、二次電池ユニット2の補正満充電容量の推定精度を高めることができ、さらに、この補正満充電容量を用いて二次電池ユニット2の充電率に推定することで、充電率の推定精度も高めることができる。
また、本発明では測定で得た物理量を用いて、充電率を精度よく推定することができるので、リアルタイムで追従性よく充電率の推定ができる。また、補正係数のテーブル等や補正マップ等をたくさん用意しておく必要もなく、データ量が少なくて済むため、二次電池ユニットを載せた移動体や複合システム等でも、システムに組み込みやすくなる。
【0121】
例えば、二次電池ユニット2の充電率が比較的低い状態で、電力負荷が大きい状況では、二次電池ユニット2における充電率の実際の値と推定値との誤差が生じ易いが、本発明によれば、このような状況においても二次電池ユニット2の充電率を比較的高精度にすることができる。
【0122】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではない。
【0123】
例えば、上述の実施形態では、式(7)~式(16)を用いて第1補正係数を算出する例を説明したが、これらの式はあくまで一例であり、第1補正係数の算出に用いる式は、これらに限定されるものではない。第1補正係数は、上述したように、二次電池ユニットの設定容量を、第1指標、第2指標、第3指標及び第4指標のうちの少なくとも一つを変数とするワイブル関数を含む第1関数を用いて算出すればよい。
【符号の説明】
【0124】
30…インバータ、 31…第1スイッチ、 32…第2スイッチ、 33…第3スイッチ、 34…第4スイッチ、 35…第5スイッチ、 40…制御部、 41…発電装置監視部、 42…蓄電池監視部、 43…充放電制御部、 50…分岐点、 100…充電率推定部、 110…補正満充電容量推定部、 111…電流値取得手段、 112…ユニット温度取得手段、 113…健全度取得手段、 115…補正満充電容量算出手段
図1
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