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▶ 鈴木 計芳の特許一覧

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  • 特開-歯科用ハンドピース 図1
  • 特開-歯科用ハンドピース 図2
  • 特開-歯科用ハンドピース 図3
  • 特開-歯科用ハンドピース 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119706
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】歯科用ハンドピース
(51)【国際特許分類】
   A61C 1/05 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A61C1/05 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023039100
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】504230246
【氏名又は名称】鈴木 計芳
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 計芳
【テーマコード(参考)】
4C052
【Fターム(参考)】
4C052AA11
4C052BB03
4C052CC12
(57)【要約】
【課題】 歯科医師がエアタービン式の歯科用ハンドピースを用いて、チェアユニットのペダルを操作して虫歯の切削を行う際の、耳障りな騒音を低減させる。
【解決手段】 歯科用ハンドピースの筐体30内に於いて、タービン1のタービン翼10をトロイダル式に成るものとした。圧搾空気によって回転されるこのトロイダル式のタービン翼10の回転出力が、切削用刃具2を回転させる。タービン翼10をトロイダル式のものにした点に特長を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
歯の切削用刃具を回転させるためのエアタービンを備えた筐体と、この筐体に取り付けた前記エアタービンのための給気通路や排気通路を内蔵するハンドル側筐体とから成り、前記エアタービンのタービン翼がトロイダル式に成る、歯科用ハンドピース。
【請求項2】
前記切削用刃具が前記タービン翼の回転軸に着脱自在に設けられている、請求項1に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項3】
前記タービン翼がアルミニウム合金製に成るものである、請求項1または請求項2に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項4】
前記タービン翼がセラミックス製に成るものである、請求項1または請求項2に記載の歯科用ハンドピース。
【請求項5】
前記タービン翼が重金属製に成るものである、請求項1または請求項2に記載の歯科用ハンドピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はエアタービンの回転音が低減された歯科用ハンドピースに関する。
【背景技術】
【0002】
エアタービン式の歯科用ハンドピースは、コンプレッサからの圧搾空気によりエアタービン内部の羽車を高速回転させて、この羽車に一般的には同軸で取り付けられている切削用刃具によって、虫歯の切削や除去を行う器具である。より詳しくは、筐体と、該筐体に内蔵された、歯の切削用刃具が設けられたエアタービンと、この筐体に取り付けた、エアタービンのための給気通路や排気通路などを内蔵するハンドル側筐体と、から成るものが一般的である。さらに洗浄水の噴霧口への洗浄水路や噴霧気路が設けられているものもある。なお噴霧気路に排気通路が接続される構成とする場合もある。
【0003】
上記給気通路の給気口には、コンプレッサからの圧搾空気が、チェアユニットのペダル等を含んで給気量を制御するための給気回路の、供給口に接続された給気チューブを介して供給される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような歯科用ハンドピースでは、コンプレッサからの圧搾空気がエアタービン内部の羽車を高速回転させるために、エアタービンからは耳障りな高音を発生するが、これは歯科医師や患者にとっての騒音であると共に、患者には恐怖心を感じさせるものとなっている。患者には歯科治療に安心感を持ってもらいたいのにも拘らず、なのである。
【0005】
従ってこの発明の課題は、エアタービン式の歯科用ハンドピースから出る音をより低減させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
こに課題の解決に当たって当発明者は、航空機にトロイダルプロペラと言う技術があることを想起した。プロペラの先端部に発生する大きな渦を翼端渦と言って推力にとってはその効率を下げる原因となっている。これがトロイダルプロペラになると、ある意味翼端が存在しないのであるから、翼端渦のような大きな渦が抑えられる上、静音効果が得られるのである。
【0007】
このように回転動力に接続されて回転して、空気や水を後方へ送り出すトロイダルプロペラの作用を応用して、歯科用ハンドピースの筐体内に納めたエアタービンのタービン翼をトロイダル式に成るものとする。そしてこのタービン翼にエアーを供給して、タービン翼の回転出力で、筐体外に突出させた歯の切削用刃具を回転させるように構成すれば良いことに想到した。以下では主として空気流に係るトロイダル式のタービン翼を備えた歯科用ハンドピースに付いて説明するが、水流式の歯科用ハンドピースに付いても同じようにして構成することが出来るため、これもまたこの発明の権利範囲内のものであるとする。
【0008】
そこでこの発明は、歯の切削用刃具を回転させるためのエアタービンを備えた筐体と、この筐体に取り付けた前記エアタービンのための給気通路や排気通路を内蔵するハンドル側筐体とから成り、前記エアタービンのタービン翼がトロイダル式に成る、歯科用ハンドピースとすることによって、上記の課題を首尾よく解決することに成功した。
【0009】
筐体内に於いてトロイダル式のタービン翼は、歯科医師の操作によりコンプレッサから供給される圧搾空気のよって回転される。このタービン翼の回転軸に切削用刃具を接続することで、回転出力を切削用刃具に取り出すのである。この際には上述した大きな渦流の発生が抑制されており、不快な騒音が少なくなると言う効果を奏する。なお翼端渦と言う推力にとってその効率を下げる原因となっているものであるが、この発明の歯科用ハンドピースでは、その翼端渦を抑制することが切削用刃具の回転効率を上げることにも寄与するものと考えられる。
【0010】
次に、前記切削用刃具が前記タービン翼の回転軸に着脱自在に設けられているものとすることが出来る。この構成によって、歯科医師は好みや状況に応じて、切削用刃具を着脱して使い分けることが可能になる。
【0011】
さて、前記タービン翼をアルミニウム合金製に成るものとすることが出来る。一般的にエアタービン式の歯科用ハンドピースは、歯科医師の繊細にして絶妙な手業の妨げとならないように、より軽量であることが求められている。このためエアタービン内部の羽車には、例えば比重が2.6~2.8のアルミニウム合金などの軽金属製のものが使用されている。この発明の歯科用ハンドピースでもこれに倣うと良い。
【0012】
しかしながら現実に治療に当る歯科医師が、チェアユニットのペダルを操作して虫歯の切削を行っている内に、切削用刃具の回転がもっとパワフルだったら良いのにと思うような限界に至ることもある。そこで前記タービン翼がセラミックス製に成るものとすることが出来る。すなわちエアタービン式の歯科用ハンドピースに備えられた、従来より用いられて来た軽金属製のタービンの羽車、例えば純粋アルミニウム製(比重2.7)やジュラルミン製(比重2.8)などの各種アルミニウム合金製(比重2.6~2.8)の羽車を取り外して、この発明のセラミックス製(比重3.0~6.0)のタービン翼に、新しく付け替えるのである。この発明のトロイダル式のタービン翼に利用が可能なセラミックスには、例えば比重3.0のフォルステライト(2MgO・SiO)、比重3.16の炭化ケイ素(SiC)、比重3.3の窒化ケイ素(Si)、また比重3.4の窒化アルミ(AlN)、比重3.8のアルミナ(Al)、比重4.9のイットリア(Y)、また比重6.0のジルコニア(ZrO)、金属複合材料である比重6.0のサーメット(TiC・TiN)を上げる。セラミックをトロイダル式のタービン翼にする複雑形状成形技術が存在している。
【0013】
またさらに大きな慣性力を得たいのであれば、上記同様に前記タービン翼が重金属製に成るものとすることが出来る。すなわちエアタービン式の歯科用ハンドピースに備えられた、従来より用いられて来た軽金属製のタービンの羽車を取り外して、この発明の重金属製のタービン翼に新しく付け替えると良い。重金属には比重4以上の鉄(比重7.9)、ニッケル(比重8.8)、銅(比重8.9)などを適宜選択して良い。またこれ等の合金を用いることも可能である。クロム製や鉛製のものであれば、全体に銀やニッケルなどと言った無害な金属による鍍金を施すことが望まれる。あるいはエアタービンのタービン翼部分を重金属製にして、それ以外の部位をセラミックス製にした構成とすることが可能である。
【0014】
このようにして、歯科用ハンドピース側のエアタービンの回転軸に別途弾み車を付加するスペースを確保するなどの大幅な改良を施す必要がなく、チェアユニットの大幅な改良によってチェアユニット側で空気圧を高めるようにする必要もなく、多大なコストを掛けずに課題を解決することに成功している。エアタービンのタービン翼をセラミックス製のものや重金属製のものにして、弾み車の役目を担わせた点が重要である。
【0015】
セラミックス製のタービン翼や重金属製のタービン翼は、上述したアルミニウム合金製のタービン翼に比して回転当初こそ幾分回転が重いものの、間もなく力強く頼もしい回転トルクが得られるようになる。従って、セラミックス製や重金属製のタービン翼に設けた切削用刃具の回転が従来よりもパワフルなものになるのである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、歯科用ハンドピースのエアタービンに、この発明のトロイダル式のタービン翼を適用することによって、大きな渦流の発生が抑制されており、不快な騒音が少なくなると言う効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】実施例1のエアタービン式の歯科用ハンドピースの説明図である。
図2】実施例1のトロイダル式のタービン翼の説明図である。
図3】実施例2のエアタービン式の歯科用ハンドピースの説明図である。
図4】実施例3のトロイダル式のタービン翼の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下ではこの発明の実施例を図面に基づいて説明するが、この発明はこれ等に限定されるものではない。
【実施例0019】
図2に表したエアタービン1のタービン翼10は、ジュラルミン(比重2.8)を材料として成るものである。3Dプリンタにより所望のタービン翼10を得る。このタービン翼10は回転軸21を回転中心として形成され、下部には同軸の切削用刃具2が一体的に設けられている。この切削用刃具2の先端部はやすり部20と為されている。
【0020】
タービン翼10はトロイダル式に成るものである。すなわち同じ傾斜方向の2枚の回転翼10A、10Bの各々の先端部を接続してブリッジ部10Cを設けることにより、捻りが加わった環状となり、実質的に先端部を無くしている。回転翼10A、10Bに添って発生する空気の渦は小さいのに対して、上記先端部で発生する空気の渦は大きいのであるが、先端部が存在せずにブリッジ部10Cとなっているため、ブリッジ部10Cには回転翼10A、10Bと同様の小さい空気の渦が発生する。このような渦の発生状況が騒音が低減する理由となる。
【0021】
なおこの実施例のタービン翼10は4回対称に4枚設けられているが、3回対称に3枚としたり2回対称に2枚とするなど、任意に設計することが出来る。
【0022】
図1に表した歯科用ハンドピース3は、切削用刃具2を回転させるためのエアタービン1を備えた筐体30と、この筐体に取り付けた、エアタービン1のための給気通路34や排気通路35を内蔵するハンドル側筐体31とから成る。切削用刃具2が一体的に設けられた回転軸21に取り付けられているジュラルミン製のタービン翼10は、筐体30内でボールベアリング32によって回転自在である。切削用刃具2は筐体30の底部の開口部33から筐体30外に突出している。
【0023】
歯科医師が把持する所のハンドル側筐体31では、給気パイプ4が接続された給気通路34が、エアタービン1のタービン翼10の上方に向けて設けられている。エアタービン1のタービン翼10の下方には、排気のための排気パイプ40が接続された排気通路35が設けられている。給気パイプ4も排気パイプ40もチェアユニットに接続される。
【実施例0024】
この実施例はその殆どの構成を上述の実施例1の構成に倣うものであるが、図3に表したように、エアタービン5のタービン翼50がセラミックスを材料として成るものである点で異なる。また以下の点でも異なる。
【0025】
歯科医師が把持する所のハンドル側筐体31では、給気パイプ4が接続された給気通路34が、エアタービン5のタービン翼50の上方に向けて設けられている。またエアタービン5はタービン翼50の下方に於いて、排気のために噴霧口37に通じているが、この噴霧口37には、歯の冷却のための水を通す給水通路36が接続され、またこの給水通路36には給水パイプ41が接続されている。すなわちエアタービン1からの排気が給水通路36からの水に合流して、噴霧口37からは霧状の冷却水が放出されるように構成されている。
【0026】
エアタービン5ではセラミックス製のタービン翼50それ自体が弾み車の役割を担っており、給気通路34からの圧搾空気により高速回転を行って、パワフルな駆動力を発揮する。なおエアタービン5の排気のための排気専用通路をハンドル側筐体31の給気パイプ4に添設するような構成も可能である。
【0027】
この実施例のジルコニア(ZrO)製のタービン翼50は、これまでと同じエアタービン5のスペースに納めることが出来、それ自体が弾み車の役割を担い得るものであるために、他に弾み車を必要としない。すなわちこれだけで力強く頼もしい回転トルクが得られる効果がある。従ってタービン翼50に設けた切削用刃具2の回転も、従来よりもよりパワフルなものになるのである。またタービン翼50の回転により発生する音は、従来の不快な騒音のようではなくなっている。
【実施例0028】
エアタービン式の歯科用ハンドピースのエアタービン6に組み込まれる、図4にて表した重金属製のタービン翼60は、ニッケル(比重8.8)を材料として成るものである。タービン翼60の回転軸21の下部には鎖線で表した挿着穴22が形成されており、ここに上記回転軸21に同軸となるようにして切削用刃具2が挿着固定される。切削用刃具2の先端部にはやすり部20が設けられている。またニッケル製のタービン翼60は、筐体内でボールベアリング32により回転自在となるものである。切削用刃具2は筐体の底部の開口部から筐体外に突出するように構成されている。この辺りの構成は実施例1の構成に倣うものである。
【0029】
エアタービンの内部では重金属製のタービン翼60自体が弾み車の役割を担っており、圧搾空気により高速回転を行ってパワフルな駆動力を発揮する。これがタービン翼60と軽金属製のタービン翼、例えば純粋アルミニウム製(比重2.7)や、ジュラルミン製(比重2.8)などの各種アルミニウム合金製(比重2.6~2.8)のタービン翼との違いである。またタービン翼60の回転により発生する音は従来に比して静音である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
この発明によってエアタービン式の歯科用ハンドピースに静音の効果が得られるようになり、患者も恐怖心が和らぎ安心感が得られ、歯科医師も技能的・心理的な余裕を持てるようになり、以て産業の発達に寄与することが出来た。
【符号の説明】
【0031】
1 エアタービン
10 タービン翼
2 切削用刃具
20 やすり部
21 回転軸
22 挿着穴
3 歯科用ハンドピース
30 筐体
31 ハンドル側筐体
32 ボールベアリング
33 開口部
34 給気通路
35 排気通路
36 給気通路
37 噴霧口
4 給気パイプ
40 排気パイプ
41 給水パイプ
5 エアタービン
50 タービン翼
6 エアタービン
60 タービン翼
図1
図2
図3
図4