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▶ 三浦 公亮の特許一覧

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  • 特開-折り畳み用紙 図1
  • 特開-折り畳み用紙 図2
  • 特開-折り畳み用紙 図3
  • 特開-折り畳み用紙 図4
  • 特開-折り畳み用紙 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119707
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】折り畳み用紙
(51)【国際特許分類】
   B42D 15/04 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B42D15/04 Z
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2023039101
(22)【出願日】2023-02-22
(71)【出願人】
【識別番号】591048139
【氏名又は名称】三浦 公亮
(72)【発明者】
【氏名】三浦 公亮
(57)【要約】
【課題】折り畳み用紙で、A4判の用紙に印刷後、即ミウラ折りに変換できる。
【解決の手段】 ミウラ折りパターンが指定された用紙で、そのベースラインは、折りおよび反転折り加工等により回転ヒンジ性を完成しておき、他方斜辺で構成されるジグザグラインは、スリットや筋押し加工等で、回転ヒンジ化への準備をし、このような設計の折り畳み用紙。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースラインとなる辺、その上に小さい方の内角が、90度より僅かに小さい角度である斜辺で規定される平行四辺形を単位とし、該平行四辺形の、ベースラインに沿った隙間ない併進と、そのベースラインを鏡とする鏡像の繰り返しで規定される、一点を中心とする4個の同一の平行四辺形で構成されるモジュールの敷き詰めである、所謂ミウラ折りパターンが指定された紙・シートにおいて、そのベースラインは、折りおよび反転折り加工等により回転ヒンジ性を完成しておき、他方斜辺で構成されるジグザグラインは、スリットや筋押し加工等で、回転ヒンジ化への準備をし、かくて形成された折り畳み用紙あるいはシート。
【請求項2】
請求項1の範囲に於いて、用紙A列またはB列定型版において、長手方向5個,短手方向3個の基本平行四辺形配列の設計による折り畳み用紙あるいはシート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次元の情報(文、画像、地図、設計図等)を、ミウラ折りという折畳構造の形状に、「自然に導かれた操作で」変換できるよう設計された、折り畳み用紙に関するものである。
【背景技術】
【0002】
紙などの折り畳みの問題を数学的に抽象すると、「二次元の平面シートを、より小さい単位のシート片の積層に変換する」ことである。その典型的な例は、紙地図であるが、紙に限らず一般の積層シートなどもその例である。紙・シートの厚さを限りなくゼロに近づけた場合の、代表的な理論解は、Developable Double Corrugation Surface, 学名Miura-ori,ミウラ折りと呼ばれている。
【0003】
【非特許文献1】Miura,K. and Pellegrino、S. Forms and Concepts for Lightweight Structures,Cambridge University Press,2020,Chapter 7.
【0004】
現在市販の地図に利用されている折り畳みを代表的する一つの原理は、ミウラ折りの単位平行四辺形の周縁を「折り」で繋げることによって実現するものである。これを「ミウラ折り変換」という。その特性である、折りが全面に連動することから、四辺形用紙の対角コーナーを引くだけで一挙に開き、戻すことで畳み込まれる性質、折り目の山谷を記憶している性質、折り目が反転しないことによる耐久性等の独特の性質により、一つの有用な分野を形成している。
【0005】
上記のような有用な性質にもかかわらず、その工業的な量産は容易ではない。また中心的な用途である地図の世界でも、情報の電子化が進み、紙地図の利用が激減している。一方では、紙地図の特性である広い一覧性、容易に記入し、記録されるなどの優れた特性を失われるのは残念である。また、紙に代わる電子ペーパーの開発も未完である。
【0006】
そこで、ミウラ折り変換容易な特性を組み込んだプリンタ用紙が開発できれば、地図情報のダウンロード、プリンタによる印刷、、ユーザーによるミウラ折り変換で、課題を解決することが提案された。(特許文献1)。しかし、その技術によっても、一般の人にはまだ難しさが残り、より洗練された設計の開発が待たれている。
【0007】
【特許文献1】特願2021-127827
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
二次元の広がりと薄さを本質とする紙・シート類であって、対象の情報をプリントした紙・シート類を、自然な流れに沿う手動で、小さく畳み、かつ展開の容易な形式に、変換できる用紙を求める。以下、簡便の為、特別な場合を除き、「紙・シート」を「紙」で代表させる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
ベースラインとなる辺、その上に小さい方の内角が、90度より僅かに小さい角度である斜辺で規定される平行四辺形を単位とし、該平行四辺形の、ベースラインに沿った隙間ない併進と、そのベースラインを鏡とする鏡像の繰り返しで規定される、一点を中心とする4個の同一の平行四辺形で構成される基本領域の敷き詰めである、所謂ミウラ折りパターンが指定された紙・シートにおいて、そのベースラインは、折りおよび反転折り加工等により回転ヒンジ性を完成しておき、他方斜辺で構成されるジグザグラインは、スリットや筋押し加工等で、回転ヒンジ化への準備をし、かくて形成された紙・シート。
【0009】
用紙A列またはB列定型版において、長手方向5個、短手方向3個の基本平行四辺形配列の設計による折り畳み用紙あるいはシート。
【発明の効果】
【0010】
ここで生成された紙・シートにおいて、ミウラ折りのジグザグラインは、スリット加工により山折り又は谷折りが準備された状態であり、一方ベースラインは、折りおよび反転折り加工等により、折り目は回転ヒンジとして完成した状態にある。この初期待機状態で、任意のジグザグラインを手動で、例えば山折りにすると、その折り情報が隣接の領域に伝播し、平坦折りに関する前川の定理を充たす折りの山谷が自動的に選択され、該隣接の折り目が起動する。この情報伝達と起動は、減衰しながらも隣接領域に次々と伝わり、それに従うことで、結果として、全領域のミウラ折りが完成する。この過程の詳細を、以下に図を援用しながら説明する。
【0011】
図1は、本発明に対応する基本的な例を示す。図1では、基本となる、小さい内角が90度より僅かに小さい平行四辺形と、それの併進と鏡映で形成される用紙の例を示す。(図では、見やすさ優先し、角度を大きく記載した。)多くの場合周縁に適宜マージンを付加して、長方形の用紙とする。図1で、一点鎖線はスリット加工であり、二点鎖線は折り及び反転折り等で回転ヒンジが形成されている。勿論この基本例の拡張は自由である。
【0012】
図2は、本発明で形成されるべき、用紙上の山折り、谷折りを示したものである。このような折り目の形成で、用紙は、後記図5に提示のかたちに、平らに畳み込むことができる。
【0013】
平坦折り(平らに畳めること)については、以下の前川の定理がある。
「単頂点折紙の、頂点から出る山折り線の数M、谷折り線の数をVとすると、
M-V=±2
が成立しなければならない。(図3)。
ミウラ折りの場合は、頂点に集まる折り目の総数は4である。さらに、図1から明らかに、ジグザグの折り目は、ストレートの折り目に関して常に対称であるから、可能な折り目は、図3の中で、▲1▼と▲2▼に限られる。
【0014】
図1に戻って、ミウラ折り固有の単位平行四辺形(小さい方の内角θ)15個で構成される用紙の例を確認する。前記のように、ミウラ折りのジグザグラインはスリット(一点鎖線)が加工され、ベースラインは回転ヒンジ(二点鎖線)が形成されている。
【0015】
減衰を含めた折りの伝播状況を、図4に示す。最初に、左端の縦の「ジグザグライン」を摘まんで山折りにする。すると縦に並ぶ二つの頂点周りの山折り、谷折りは、前記図3の▲1▼と▲2▼に決定される(図4―1)。言うまでもなく、それ以外の解は存在しない。この結果は、これの右側の次の「ジグザグライン」の左半分が決定されていることになり、ジグザグラインは谷折りになる(図4-2)、同様に、図4―3と続き、以下同様にすべての折り目が決定される。
【0016】
上記のルールのもとで、ミウラ折りの縦のモジュール群の起動が、横に隣接のモヂュール群に伝わり、さらに隣接というように、右端までミウラ折りになる。この変形の伝達を容易にする主役は、予め回転ヒンジとなっているベースラインである。こうして、左端部から始めた折りの操作の繰り返しで、ほぼ自然に全体の折りが、でき上がっていく。換言すれば、紙自体に示される変形をフォローすることで自然にでき上がっていく。その過程で、マニュアルなどを参照する要はない。
【0017】
まとめると、図1で提案した用紙では、はじめにスタートした折りの山谷の変形情報が、次々に隣接領域に先行して現れるので、ユーザーはそれに従って操作すればよいのである。この折りの情報伝達プロセスは、生体におけるシナプスによる情報伝達のアナロジーと言っても良いだろう。実際、双方とも「凸と凹」の形を通して情報が伝達されるからである。また、ベースラインの回転ヒンジ化は、複数の平行線群であるので、加工工程が比較的単純となる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
紙あるいはシートに、ミウラ折りの、ジグザグラインについてはスリット加工を行い、ベースラインについては、折りおよび反転折り加工等で回転ヒンジを完成した状態とする。その結果、紙あるいはシートは、人の手による簡単な手順で、ミウラ折りに変換される。
【実施例0019】
ミウラ折り固有の単位平行四辺形(小さい方の内角θ)15個で構成される用紙が以上の説明の様に、ほぼ自動的に折り畳まれる(図5)。この例は、用紙A列またはB列定型版において、長手方向5個,短手方向3個の基本平行四辺形配列の設計による折り畳み用紙の典型に近い。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の基本的な構想は、二次元の広がりを本質とする情報・要素等の、記録・閲覧・携帯に適する、紙・シート等の形態であり、本発明を利用すれば、あらゆる二次元画像データをダウンロードし、本発明の用紙にプリントし、携帯、閲覧、記入、保存することを、安価で実現できる。勿論、上記の流れでなく、メーカーサイドで、同様の印刷と紙加工を施し、その状態のままで、消費者に提供するルートも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】:本発明で提案する用紙
図2】:ミウラ折りの、山折り、谷折りの配列
図3】:平坦折りに関する前川の定理を充たす折り目の山谷
図4】:折りの情報伝達の流れ
図5】:折り畳みの経過の3次元画像
【符号の説明】
【0022】
山折り:実線
谷折り:破線
スリット:一点鎖線
ベースライン(回転ヒンジ):二点鎖線
θ:ミウラ折りの単位平行四辺形の小さい内角
E1,E2,E3,E4:単頂点からでる折り目
M:単頂点折紙における山折りの数
V:単頂点折紙における谷折りの数
図1
図2
図3
図4
図5