(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119716
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】太陽電池及びその製造方法、太陽光発電モジュール
(51)【国際特許分類】
H01L 31/068 20120101AFI20240827BHJP
H01L 31/18 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
H01L31/06 300
H01L31/04 440
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023105399
(22)【出願日】2023-06-27
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-05
(31)【優先権主張番号】202310172661.1
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】519095522
【氏名又は名称】ジョジアン ジンコ ソーラー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100128347
【弁理士】
【氏名又は名称】西内 盛二
(72)【発明者】
【氏名】▲張▼ 彼克
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲夢▼微
(72)【発明者】
【氏名】金 井升
(72)【発明者】
【氏名】張 ▲シン▼宇
【テーマコード(参考)】
5F251
【Fターム(参考)】
5F251AA01
5F251CB18
5F251DA03
5F251DA20
5F251GA04
5F251GA15
5F251HA03
(57)【要約】
【課題】本願は太陽電池及びその製造方法、太陽光発電モジュールに関する。
【解決手段】太陽電池は、半導体基板と、エミッタ電極及び第1パッシベーション層と、トンネル層と、トンネル層の表面に位置する第1ドープ導電層及びブロック層と、トンネル層の表面に位置する第2ドープ導電層と、第2ドープ導電層の表面に位置する第2パッシベーション層と、第2パッシベーション層を貫通して第2ドープ導電層とコンタクトを形成する第2電極、および、第1パッシベーション層を貫通してエミッタ電極とコンタクトを形成する第1電極と、を含み、第1ドープ導電層はトンネル層とブロック層との間に位置し、第1ドープ導電層及びブロック層はメタライズ領域に対応し、第2ドープ導電層は非メタライズ領域のトンネル層及びブロック層を覆い、ブロック層は第2ドープ導電層におけるドープ元素の第1ドープ導電層への遷移をブロックするために用いられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
対向して設けられた第1表面および第2表面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の第1表面に位置するエミッタ電極及び第1パッシベーション層と、
前記半導体基板の第2表面に位置するトンネル層と、
前記トンネル層の表面に位置する第1ドープ導電層及びブロック層と、
前記トンネル層の表面に位置する第2ドープ導電層と、
前記第2ドープ導電層の表面に位置する第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層を貫通して前記第2ドープ導電層とコンタクトを形成する第2電極、および、前記第1パッシベーション層を貫通して前記エミッタ電極とコンタクトを形成する第1電極と、を含み、
前記第1ドープ導電層は、前記トンネル層と前記ブロック層との間に位置し、前記第1ドープ導電層及び前記ブロック層は、メタライズ領域に対応し、
前記第2ドープ導電層は、非メタライズ領域の前記トンネル層及び前記ブロック層を覆い、前記ブロック層は、前記第2ドープ導電層におけるドープ元素の前記第1ドープ導電層への遷移をブロックするために用いられる、ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第2ドープ導電層のドープ濃度は、前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1ドープ導電層の幅と前記ブロック層の幅との比は、1:(1~2)である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1ドープ導電層とコンタクトする前記トンネル層の表面面積をS1とし、前記第1ドープ導電層とコンタクトする前記トンネル層の表面面積と前記第2ドープ導電層とコンタクトするトンネル層の表面面積との和をS2とすると、S1:S2=1:(5~50)である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1ドープ導電層におけるドープ元素は、ホウ素、リン、ガリウム及びヒ素の少なくとも一つを含み、及び/又は、前記第1ドープ導電層のドープ濃度は、1E18cm-3~1.5E21cm-3である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第1ドープ導電層の厚さは、20nm~150nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第2ドープ導電層におけるドープ元素は、ホウ素、リン、ガリウム及びヒ素のうちの少なくとも一つを含み、及び/又は、前記第2ドープ導電層のドープ濃度は、5E18cm-3~2E21cm-3である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記第2ドープ導電層の厚さは、20nm~200nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記ブロック層の材質は、シリコン酸化物、シリコン炭化物、シリコン窒化物及びマグネシウムフッ化物のうちの少なくとも一つを含み、及び/又は、前記ブロック層の厚さは、0.5nm~4nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記第1ドープ導電層の厚さは、前記第2ドープ導電層の厚さよりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記非メタライズ領域に位置する第2ドープ導電層のドープ濃度は、前記メタライズ領域に位置する第2ドープ導電層のドープ濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記第1ドープ導電層から前記トンネル層に向かう方向に沿って、前記第1ドープ導電層のドープ濃度が順次減少する、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項13】
前記トンネル層が位置する平面に平行する方向において、前記第2ドープ導電層に向かう前記第1ドープ導電層のドープ濃度は、前記第2ドープ導電層から離反する前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項14】
太陽電池の製造方法であって、
対向して設けられた第1表面および第2表面を有する半導体基板を提供するステップと、
テクスチャリングされた前記半導体基板の第1表面にエミッタ電極を形成するステップと、
前記半導体基板の第2表面にトンネル層を形成するステップと、
前記トンネル層の表面に第1非導電層を形成し、前記第1非導電層は、メタライズ領域及び非メタライズ領域に対応するステップと、
前記第1非導電層の表面にブロック層を形成し、前記ブロック層は、メタライズ領域に対応するステップと、
前記第1非導電層及び前記ブロック層の表面に第2非導電層を形成し、前記第2非導電層に対してドープ処理を行い、これによって前記第2非導電層及び非メタライズ領域に位置する前記第1非導電層を第2ドープ導電層に変換し、メタライズ領域に位置する前記第1非導電層を第1ドープ導電層に変換し、前記第2ドープ導電層のドープ濃度が前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きくなるステップと、
前記第2ドープ導電層の表面に第2パッシベーション層を形成し、前記エミッタ電極の表面に第1パッシベーション層を形成するステップと、
前記第2パッシベーション層の表面に第2電極を形成し、前記第1パッシベーション層の表面に第1電極を形成するステップと、を含む、ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項15】
太陽光発電モジュールであって、
カバープレートと、封止材層と、太陽電池ストリングとを含み、前記太陽電池ストリングは、請求項1~13のいずれか一項に記載の太陽電池又は請求項14に記載の製造方法により製造された太陽電池を含む、ことを特徴とする太陽光発電モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、太陽電池の技術分野に関し、具体的には、太陽電池及びその製造方法、太陽光発電モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池技術の継続的な発展に伴い、金属コンタクト領域での再結合損失は、太陽電池の変換効率の更なる向上を制約する重要な要因の一つとなっている。太陽電池の変換速度を向上させるために、一般的に、パッシベーションコンタクトによって太陽電池をパッシベーションして、太陽電池の内部と表面との再結合を低減させる。一般的なパッシベーションコンタクト電池には、ヘテロ接合(Heterojunction with Intrinsic Thin-layer、HIT)電池とトンネル酸化層パッシベーションコンタクト(Tunnel Oxide Passivated Contact、TOPCon)電池がある。しかしながら、従来の電池のパッシベーション構造では、パッシベーション性能の向上に限界があるため、パッシベーションコンタクト電池の変換効率の向上が求められ、かつ量産しにくくなっている。
【0003】
したがって、パッシベーションコンタクト電池のパッシベーション性能を如何にして向上させるかは、太陽光発電産業において最も解決の急がれる課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑みて、本願は、メタライズ領域のパッシベーション性能が低いことを改善するとともに、キャリアの横方向輸送能力を確保することができる太陽電池及びその製造方法、太陽光発電モジュールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1態様によれば、本願は、太陽電池を提供し、当該太陽電池は、
対向して設けられた第1表面及び第2表面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の第1表面に位置するエミッタ電極及び第1パッシベーション層と、
前記半導体基板の第2表面に位置するトンネル層と、
前記トンネル層の表面に位置する第1ドープ導電層及びブロック層と、
前記トンネル層の表面に位置する第2ドープ導電層と、
前記第2ドープ導電層の表面に位置する第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層を貫通して前記第2ドープ導電層とコンタクトを形成する第2電極、および、前記第1パッシベーション層を貫通して前記エミッタ電極とコンタクトを形成する第1電極と、を含み、
前記第1ドープ導電層は、前記トンネル層と前記ブロック層との間に位置し、前記第1ドープ導電層及び前記ブロック層は、メタライズ領域に対応し、
前記第2ドープ導電層は、非メタライズ領域の前記トンネル層及び前記ブロック層を覆い、前記第2ドープ導電層のドープ濃度は、前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きくなる。
【0006】
第2態様によれば、本願は、太陽電池の製造方法を提供し、当該太陽電池の製造方法は、
対向して設けられた第1表面および第2表面を有する半導体基板を提供するステップと、
テクスチャリングされた前記半導体基板の第1表面にエミッタ電極を形成するステップと、
前記半導体基板の第2表面にトンネル層を形成するステップと、
前記トンネル層の表面に第1非導電層を形成し、前記第1非導電層は、メタライズ領域及び非メタライズ領域に対応するステップと、
前記第1非導電層の表面にブロック層を形成し、前記ブロック層は、メタライズ領域に対応するステップと、
前記第1非導電層及び前記ブロック層の表面に第2非導電層を形成し、前記第2非導電層に対してドープ処理を行うことで、前記第2非導電層及び非メタライズ領域に位置する前記第1非導電層を第2ドープ導電層に変換し、メタライズ領域に位置する前記第1非導電層を第1ドープ導電層に変換し、前記第2ドープ導電層のドープ濃度が前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きくなるステップと、
前記第2ドープ導電層の表面に第2パッシベーション層を形成し、前記エミッタ電極の表面に第1パッシベーション層を形成するステップと、
前記第2パッシベーション層の表面に第2電極を形成し、前記第1パッシベーション層の表面に第1電極を形成するステップと、を含む。
【0007】
第3態様によれば、本願の実施例は、太陽光発電モジュールを提供し、当該太陽光発電モジュールは、カバープレートと、封止材層と、太陽電池ストリングとを含み、前記太陽電池ストリングは、第1態様に記載の太陽電池又は第2態様に記載の製造方法で製造された太陽電池を複数含む。
【発明の効果】
【0008】
本願の技術案では、少なくとも以下の有益な効果を有する。
本願は、電池の第2表面のメタライズ領域のみに低濃度の第1ドープ導電層及びブロック層を設け、電池の第2表面全面に濃度の高い第2ドープ導電層を設けることにより、一方では、濃度の低い第1ドープ導電層がトンネル層とコンタクトして、トンネル層に対するドープ元素のパッシベーションの影響を低減し、メタライズ領域の再結合電流密度J0,metalを低減することができ、同時に濃度の低い第1ドープ導電層と半導体基板との間の擬フェルミ準位の差qVDが小さく、理論開回路電圧の向上に有利であり、太陽電池の光電変換効率の向上に有利であり、また、濃度の高い第2ドープ導電層がメタライズ領域及び非メタライズ領域に存在することにより、電池背面のキャリアの横方向輸送速度を確保することができ、さらに、非メタライズ領域にある第2ドープ導電層と半導体基板との間の距離が近いため、低濃度の第1ドープ導電層及びブロック層を設けることで第2ドープ導電層と半導体基板との間の距離が遠すぎることによって第2ドープ導電層のバンドベンディング効果が低下しすぎることを回避して、キャリアの選択輸送を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
本願の実施例又は従来技術の技術案をより明確に説明するために、以下、実施例又は従来技術の記述に使用が必要な図面を簡単に紹介し、明らかに、以下の記述における図面は、本願のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労働をせずに、これらの図面に基づいて他の図面を得ることもできる。
【
図3】本願の太陽電池の製造フローチャートである。
【
図4】本願に係る、半導体基板に第1エミッタ電極を形成する場合の構成模式図である。
【
図5】本願に係る、半導体基板の第2表面にトンネル層を形成する場合の構成模式図である。
【
図6】本願に係る、トンネル層の表面に第1非導電層を形成する場合の構成模式図である。
【
図7】本願に係る、第1非導電層の表面にブロック層を形成する場合の構成模式図である。
【
図8】本願に係る、非メタライズ領域に位置する第1非導電層及びブロック層の表面に第2非導電層を形成する場合の構成模式図である。
【
図9】本願に係る、
図8で形成された構造に対してドープ処理を行った後の構成模式図である。
【
図10】本願に係る、半導体基板に第1パッシベーション層及び第2パッシベーション層を形成した後の構成模式図である。
【
図11】本願の太陽光発電モジュールの構成模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本願の技術案をより良く理解するために、以下に添付の図面を参照して本願の実施例を詳細に説明する。
【0011】
説明される実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全ての実施例ではないことが理解されるべきである。本願の実施例に基づいて、当業者が創造的な労働をせずに取得し得る他の実施例は、すべて本願の保護範囲に属するものとする。
【0012】
本願の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明するためのものに過ぎず、本願を限定するものではない。本願の実施例及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「一種」、「一つ」、「前記」及び「当該」は、文脈が他の意味を明確に示さない限り、複数形も含むことが意図されている。
【0013】
本明細書において使用される用語「及び/又は」は、関連対象を説明する関連関係に過ぎず、3つの関係が存在しうることを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在すること、AとBが同時に存在すること、Bが単独で存在するという3つの状況を示すことができるということを理解すべきである。また、本文における文字「/」は、一般的に、前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0014】
結晶シリコン太陽電池の表面パッシベーションを最適化することは、その効果を向上させる重要な手段の一つである。近年、理論技術の発展と人々のより良いパッシベーション効果に対する追求に伴い、トンネル酸化層パッシベーションコンタクト(tunnel oxide passivated contact、TOPCon)構造は、そのより高い理論効率により注目されている。TOPCon構造は、超薄酸化シリコンと高濃度ドープシリコン薄膜からなり、良好なパッシベーション効果を有して電界パッシベーション効果を形成し、TOPCon技術を用いて製造された結晶シリコン電池の効率が26%以上に達した。
【0015】
従来のTOPCon電池は、ploy-Si(多結晶シリコン)をドープ層として使用し、まず化学気相堆積(CVD)の方法により一層の非晶質シリコン(a-Si:H)を堆積し、次いでアニール処理によりa-Si:Hをploy-Siに変換することにより、結晶化度を大幅に向上させ、さらにploy-Siをドープして活性化し、TOPCon電池の導電性を向上させることが多く、研究者は、シリコン基板と収集層との間の擬フェルミ準位の差qVDが開回路電圧の上限を決定する物理量であり、qVDが大きいほど、電池の開回路電圧Vocの上限も高くなることを発見した。従来のドープ多結晶シリコン層のドープ濃度は一定の高さに達する必要があり、このように金属電極と良好なコンタクトを形成することができるが、高ドープ濃度の多結晶シリコン層は同様に、リンが酸化層に拡散するとトンネル層のパッシベーション効果に影響を与えてしまい、かつ、ドープ多結晶シリコンとシリコン基板のqVDが小さいため、理論開回路電圧の上限が低く、TOPCon電池の変換効率の向上が制限されるという2つの問題がある。
【0016】
これに鑑みて、本願の実施例は、太陽電池を提供し、
図1は、本願の実施例による太陽電池の構成模式図であり、当該太陽電池は、
対向して設けられた第1表面および第2表面を有する半導体基板1と、
半導体基板1の第1表面に位置するエミッタ電極2及び第1パッシベーション層3と、
半導体基板1の第2表面に位置するトンネル層4と、
トンネル層4の表面に位置する第1ドープ導電層5及びブロック層6と、
トンネル層4の表面に位置する第2ドープ導電層7と、
第2ドープ導電層7の表面に位置する第2パッシベーション層8と、
エミッタ電極2とコンタクトする第1電極9及び第2ドープ導電層7とコンタクトする第2電極10と、を含み、
第1ドープ導電層5は、トンネル層4とブロック層6との間に位置し、第1ドープ導電層5及びブロック層6は、メタライズ領域に対応し、
第2ドープ導電層7は、非メタライズ領域のトンネル層4及びブロック層6を覆い、第2ドープ導電層7のドープ濃度は、第1ドープ導電層5のドープ濃度より大きくなる、
【0017】
上記技術案において、本願は、電池の第2表面のメタライズ領域のみに低濃度の第1ドープ導電層5及びブロック層6を設け、電池の第2表面全面に濃度の高い第2ドープ導電層7を設けることにより、一方では、濃度の低い第1ドープ導電層5がトンネル層4とコンタクトし、トンネル層4に対するドープ元素のパッシベーションの影響を低減し、メタライズ領域の再結合電流密度J0,metalを低減することができ、同時に濃度の低い第1ドープ導電層5と半導体基板1との間の擬フェルミ準位の差qVDが小さく、理論開放電圧の向上に有利であり、太陽電池の光電変換効率の向上に有利であり、また、濃度の高い第2ドープ導電層7がメタライズ領域及び非メタライズ領域に存在することにより、電池背面のキャリアの横方向輸送速度を確保することができ、さらに、非メタライズ領域にある第2ドープ導電層7と半導体基板1との間の距離が近いため、低濃度の第1ドープ導電層5及びブロック層6を設けることで第2ドープ導電層7と半導体基板1との間の距離が遠すぎることによって第2ドープ導電層7のバンドベンディング効果が低下しすぎることを回避して、キャリアの選択輸送を確保することができる。太陽電池の背面のトンネル層4に全面の低ドープ導電層、全面のブロック層6及び全面の高ドープ導電層の順に設けてパッシベーション効果を向上させることに比べて、本願の局在化されたドープ導電層の設計は、メタライズ領域のパッシベーション効果を向上させることができるだけでなく、キャリアの横方向輸送効率を確保することができ、電池効率を効果的に向上させることが可能となる。
【0018】
いくつかの実施形態では、半導体基板1の第1表面は、太陽電池の正面であってもよく、太陽電池の背面であってもよく、半導体基板1の第1表面が太陽電池の正面である場合、半導体基板1の第2表面は、太陽電池の背面であり、これに対して、半導体基板1の第1表面が太陽電池の背面である場合、半導体基板1の第2表面は、太陽電池の正面であり、理解されるように、太陽電池の正面は、太陽に面する表面(すなわち、受光面)であり、太陽電池の背面は、太陽に背向する表面(すなわち、非受光面)である。以下では、いずれも、半導体基板1の第1表面を太陽電池の正面とし、半導体基板1の第2表面を太陽電池の背面とする場合を例にして説明する。
【0019】
当業者にとって、メタライズ領域とは、太陽電池の第2電極10が第2パッシベーション層8を貫通してドープ導電層とコンタクト(直接又は間接コンタクト)を形成する領域を指し、場合によっては、電極形成過程における導電金属微粒子が電極主構造に遊離して間接コンタクトを形成することがあり、非メタライズ領域とは、第2電極10が第2パッシベーション層8を貫通してドープ導電層とコンタクトを形成する領域以外の他の領域又はメタライズ領域以外の領域を指す。
【0020】
いくつかの実施形態では、半導体基板1は、N型結晶シリコン基板(又はシリコンウェハ)であり、P型結晶シリコン基板(シリコンウェハ)であってもよい。結晶シリコン基板(シリコン基板)は、例えば、多結晶シリコン基板、単結晶シリコン基板、微結晶シリコン基板又は炭化ケイ素基板のうちの一つであり、本願の実施例は、半導体基板1の具体的なタイプについて限定されない。半導体基板1のドープ元素は、リン、窒素などであってよい。
【0021】
いくつかの実施形態では、半導体基板1の厚さは、60μm~240μmであり、具体的には、60μm、80μm、90μm、100μm、120μm、150μm、200μm又は240μmなどであってもよく、ここで限定されない。
【0022】
いくつかの実施形態では、エミッタ電極2は、均一なドープ深さを有するエミッタ電極構造であってもよく、又は、異なるドープ濃度及びドープ深さを有する選択的エミッタ電極構造であってもよく、具体的には、選択的エミッタ電極2は、金属電極に対応する高ドープエミッタ電極領域であり、他の領域は、低ドープエミッタ電極領域である。エミッタ電極2領域は、半導体基板1の表面内に位置してもよく、半導体基板1の表面外に位置して独立したエミッタ電極2構造を形成してもよい。半導体基板1がN型の場合、エミッタ電極2はP型であり、半導体基板1とエミッタ電極2とはPN接合を形成する。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1パッシベーション層3の材質は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの単層酸化層又は多層構造を含んでもよいが、これらに限定されず、第1パッシベーション層3は、半導体基板1に対して良好なパッシベーション効果を生じることができ、電池の変換効率の向上に寄与する。なお、第1パッシベーション層3は、入射光の反射を低減させる役割を果たすこともでき、いくつかの実施例では、反射防止層と呼ばれることもできる。
【0024】
いくつかの実施形態では、第1パッシベーション層3の厚さの範囲は、10nm~120nmであり、具体的には、10nm、20nm、30nm、42nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm又は120nmなどであってもよく、もちろん、上記範囲内の他の値であってもよく、ここで限定されない。
【0025】
いくつかの実施形態では、トンネル層4は、薄い酸化物層であり、例えば、酸化シリコン又は金属酸化物であってもよく、かつ、他の追加元素、例えば窒素を含んでもよい。例示的に、トンネル層4は、酸化シリコン層、酸化アルミニウム層、酸窒化シリコン層、酸化モリブデン層、酸化ハフニウム層のうちの一種又は複数種の積層構造であってもよい。他の実施例において、トンネル層4は、酸素含有窒化シリコン層、酸素含有炭化シリコン層などであってもよい。このトンネル層4は、実際の効果で完全なトンネルバリアを備えなくてもよく、例えば、ピンホールのような欠陥を含むため、他の電荷キャリア輸送メカニズム(例えばドリフト、拡散)がトンネル効果に対して支配的になることがある。
【0026】
いくつかの実施形態では、トンネル層4の厚さは、0.5nm~2nmであり、具体的には、0.5nm、0.8nm、1nm、1.2nm、1.5nm、1.8nm又は2nmなどであってもよく、本願の薄いトンネル層4は、多数キャリアの輸送を阻止して、少数キャリアのトンネル収集を促進することに有利である。
【0027】
いくつかの実施形態では、第1ドープ導電層5の材質は、多結晶シリコン、微結晶シリコン及び炭化ケイ素などの半導体材料を含み、本願の実施例は、第1ドープ導電層5の具体的なタイプについて限定されない。好ましくは、第1ドープ導電層5の材質は、多結晶シリコンを含み、すなわち、第1ドープ導電層5は、第1ドープ多結晶シリコン層であり、第2ドープ導電層7は、第2ドープ多結晶シリコン層である。
【0028】
いくつかの実施形態では、第1ドープ導電層5におけるドープ元素は、ホウ素、リン、ガリウム及びヒ素のうちの少なくとも一つを含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、第1ドープ導電層5のドープ濃度は、1E18cm-3~1.5E21cm-3であり、具体的には、1E18cm-3、3E18cm-3、8E18cm-3、1E19cm-3、5E19cm-3、1E20cm-3、5E20cm-3、8E20cm-3、1E21cm-3または1.5E21cm-3などであってもよい。
【0030】
具体的には、第1ドープ導電層5におけるドープ元素がリンであり、その材質が多結晶シリコンである場合、第1ドープ導電層5は、リンドープ多結晶シリコン層であり、リンドープ多結晶シリコン層におけるリン元素の濃度は、1E19cm-3~1.5E21cm-3であり、具体的には、1E19cm-3、5E19cm-3、1E20cm-3、5E20cm-3、8E20cm-3、1E21cm-3又は1.5E21cm-3などであってもよい。リンドープ多結晶シリコン層におけるリンの濃度を上記範囲内に制御することで、優れたパッシベーション及び金属コンタクト性能を得ることに有利であり、理解されるように、リンドープ多結晶シリコン層におけるリンの濃度とは、リンドープ多結晶シリコン層においてシリコン格子位置のみを占めるドープ元素リンの濃度を指す。
【0031】
第1ドープ導電層5におけるドープ元素がヒ素であり、その材質が多結晶シリコンである場合、第1ドープ導電層5は、ヒ素ドープ多結晶シリコン層であり、ヒ素ドープ多結晶シリコン層におけるヒ素元素の濃度は、1E19cm-3~1.5E21cm-3であり、具体的には、1E19cm-3、5E19cm-3、1E20cm-3、5E20cm-3、8E20cm-3、1E21cm-3又は1.5E21cm-3などであってもよい。ヒ素ドープ多結晶シリコン層中のヒ素の濃度を上記範囲内に制御することで、優れたパッシベーション及び金属コンタクト性能を得ることに有利である。
【0032】
第1ドープ導電層5におけるドープ元素がホウ素であり、その材質が多結晶シリコンである場合、第1ドープ導電層5は、ホウ素ドープ多結晶シリコン層であり、ホウ素ドープ多結晶シリコン層におけるホウ素元素の濃度は、1E18cm-3~4.5E19cm-3であり、具体的には、1E18cm-3、5E18cm-3、1E19cm-3、2E19cm-3、3E19cm-3、4E19cm-3又は4.5E19cm-3などであってもよい。ホウ素ドープ多結晶シリコン層におけるホウ素の濃度を上記範囲内に制御することで、優れたパッシベーション性能を得るとともに、金属電極とのコンタクトを確保することに有利である。
【0033】
第1ドープ導電層5におけるドープ元素がガリウムであり、その材質が多結晶シリコンである場合、第1ドープ導電層5は、ガリウムドープ多結晶シリコン層であり、ガリウムドープ多結晶シリコン層におけるガリウム元素の濃度は、1E18cm-3~4.5E19cm-3であり、具体的には、1E18cm-3、5E18cm-3、1E19cm-3、2E19cm-3、3E19cm-3、4E19cm-3又は4.5E19cm-3などであってもよい。ガリウムドープ多結晶シリコン層におけるガリウムの濃度を上記範囲内に制御することで、優れたパッシベーション性能を得るとともに、金属電極とのコンタクトを確保することに有利である。
【0034】
いくつかの実施形態では、第1ドープ導電層5の厚さは、20nm~150nmであり、具体的には、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm又は150nmなどであってもよい。
【0035】
いくつかの実施形態において、本願のブロック層6は、メタライズ領域に位置する第1ドープ導電層5への第2ドープ導電層7におけるドープ元素の遷移をブロックするための膜層構造であり、ドープ元素のメタライズ領域のトンネル層4への拡散を低減し、第2ドープ導電層7におけるドープ元素のドープ濃度を向上させ、さらにフィールドパッシベーション能力を向上させることができる。ブロック層6の材質は、シリコン酸化物(例えば、SiOxであってもよい)、シリコン炭化物(例えば、SiCであってもよい)、シリコン窒化物(例えば、SiNxであってもよい)、および、マグネシウムフッ化物(例えば、MgF2であってもよい)のうちの少なくとも一つを含む。上記材料におけるドープイオンの拡散速度は、多結晶シリコンにおけるドープイオンの拡散速度よりも遥かに低く、具体的には、多結晶シリコンにおいて結晶粒界が多いとともに、多結晶シリコン本体Si-Siの四面体格子構造は、ブロック層に対して不純物原子の拡散により適し、ブロック層において、例示的に、SiCは、その非晶質に起因して不純物元素の拡散が遅く、SiOxは、自身の格子特性に起因して不純物元素の拡散が遅いため、不純物元素が該ブロック層に長時間滞在し、ゆっくり拡散するため、ブロック作用を果たす。
【0036】
本実施例では、ブロック層6のブロック能力は、熱拡散したドープイオンが第1ドープ導電層からトンネル層に向かう方向に遷移可能な最長距離で定義され、ドープイオンが遷移可能な最長距離が短いほど、ブロック層6のブロック能力が強くなり、ドープイオンが遷移可能な最長距離が長いほど、ブロック層6のブロック能力が弱くなる。
【0037】
いくつかの実施形態では、トンネル層4に平行な方向、すなわち
図1におけるX軸方向に沿って、第1ドープ導電層5の幅とブロック層6の幅との比は1:(1~2)であり、具体的には、1:1、1:1.2、1:1.5、1:1.7又は1:2などであってもよく、好ましくは、第1ドープ導電層5の幅とブロック層6の幅との比は1:1.2であり、
図2は、本願の実施例に係る第1ドープ導電層5の幅とブロック層6の幅との比が1:1.2である太陽電池の構成模式図である。理解されるように、いくつかの実施例において、ブロック層6のトンネル層4における正投影は、第1ドープ導電層5のトンネル層4における正投影と重なり、他のいくつかの実施例において、ブロック層6のトンネル層4における正投影は、第1ドープ導電層5のトンネル層4における正投影と部分的に重なり、上記比率の制限の下であれば、第1ドープ導電層5におけるドープ濃度が低い範囲内にあることを確保することができ、ドープ元素のトンネル層4に対するパッシベーション影響を低減することができ、理論開放電圧の向上に有利であり、太陽電池の変換効率をさらに向上させることができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、ブロック層6の厚さは、0.5nm~4nmであり、例えば、0.5nm、1nm、2nm、3nm又は4nmなどであってもよい。ブロック層6の厚さ方向とは、第1ドープ導電層5からトンネル層4に向かう方向であり、ブロック層6の厚さを上記範囲内に制御することにより、第1ドープ導電層5におけるドープ濃度が低くなるように、トンネル層4が位置する表面に垂直な方向に沿ったドープ元素が第1ドープ導電層5に入ることをブロックすることができる。ブロック層6の厚さが0.5nmよりも小さくなると、ブロック層6のブロック能力が悪く、低い濃度の第1ドープ導電層5を得ることができず、ブロック層6の厚さが4nmよりも大きくなると、ブロック層6がキャリアのZ軸方向における輸送に対して大きなブロックを発生し、キャリアの効率的な輸送を確保できなくなる。
【0039】
いくつかの実施形態では、第2ドープ導電層7は、非メタライズ領域のトンネル層4及びブロック層6を覆い、第2ドープ導電層7の材質は、多結晶シリコン、微結晶シリコン及び炭化ケイ素などの半導体材料を含み、本願の実施例は、第2ドープ導電層7の具体的なタイプについて限定されない。好ましくは、第2ドープ導電層7の材質は、多結晶シリコンを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、第2ドープ導電層7におけるドープ元素は、ホウ素、リン、ガリウム及びヒ素のうちの少なくとも一つを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、第2ドープ導電層7のドープ濃度は、5E18cm-3~2E21cm-3であり、具体的には、5E18cm-3、8E18cm-3、1E19cm-3、5E19cm-3、1E20cm-3、5E20cm-3、8E20cm-3、1E21cm-3又は2E21cm-3などであってもよい。
【0042】
具体的には、第2ドープ導電層7におけるドープ元素がリンであり、その材質が多結晶シリコンである場合、第2ドープ導電層7は、リンドープ多結晶シリコン層となり、リンドープ多結晶シリコン層におけるリン元素の濃度は、5E19cm-3~2E21cm-3であり、具体的には、5E19cm-3、1E20cm-3、5E20cm-3、8E20cm-3、1E21cm-3又は2E21cm-3などであってもよい。リンドープ多結晶シリコン層におけるリンの濃度を上記範囲内に制御することにより、キャリアの横方向輸送を確保することができ、フィルファクターの向上に有利であり、理解されるように、リンドープ多結晶シリコン層におけるリンの濃度とは、リンドープ多結晶シリコン層においてシリコン格子位置のみを占めるドープ元素リンの濃度を指す。
【0043】
第2ドープ導電層7におけるドープ元素がヒ素であり、その材質が多結晶シリコンである場合、第2ドープ導電層7は、ヒ素ドープ多結晶シリコン層となり、ヒ素ドープ多結晶シリコン層におけるヒ素元素の濃度は、5E19cm-3~2E21cm-3であり、具体的には、5E19cm-3、1E20cm-3、5E20cm-3、8E20cm-3、1E21cm-3又は2E21cm-3などであってもよい。ヒ素ドープ多結晶シリコン層におけるヒ素の濃度を上記範囲内に制御することにより、キャリアの横方向輸送を確保することができ、フィルファクターの向上に有利である。
【0044】
第2ドープ導電層7におけるドープ元素がホウ素であり、その材質が多結晶シリコンである場合、第2ドープ導電層7は、ホウ素ドープ多結晶シリコン層となり、ホウ素ドープ多結晶シリコン層におけるホウ素元素の濃度は、5E18cm-3~5E19cm-3であり、具体的には、5E18cm-3、1E19cm-3、2E19cm-3、3E19cm-3、4E19cm-3又は5E19cm-3などであってもよい。ホウ素ドープ多結晶シリコン層におけるホウ素の濃度を上記範囲内に制御することで、優れたパッシベーション性能を得るとともに、金属電極とのコンタクトを確保することに有利である。
【0045】
第2ドープ導電層7におけるドープ元素がガリウムであり、その材質が多結晶シリコンである場合、第2ドープ導電層7は、ガリウムドープ多結晶シリコン層となり、ガリウムドープ多結晶シリコン層におけるガリウム元素の濃度は、5E18cm-3~5E19cm-3であり、具体的には、5E18cm-3、1E19cm-3、2E19cm-3、3E19cm-3、4E19cm-3又は5E19cm-3などであってもよい。ガリウムドープ多結晶シリコン層におけるガリウムの濃度を上記範囲内に制御することで、優れたパッシベーション性能を得るとともに、金属電極とのコンタクトを確保することに有利である。
【0046】
いくつかの実施形態では、第2ドープ導電層7の厚さは、20nm~200nmであり、具体的には、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm、150nm、160nm、170nm、180nm、190nm又は200nmなどであってもよい。理解されるように、第1ドープ導電層5が局所的なメタライズ領域のみに対応し、第2ドープ導電層7が第1ドープ導電層5を覆い、且つ第2ドープ導電層7が電池の背面全体に対応する(すなわち、メタライズ領域及び非メタライズ領域に対応する)ため、第1ドープ導電層5の厚さは、第2ドープ導電層7の厚さよりも小さい。
【0047】
いくつかの実施形態では、第1ドープ導電層5とコンタクトするトンネル層4の表面面積をS1とし、第1ドープ導電層5とコンタクトするトンネル層4の表面面積と第2ドープ導電層7とコンタクトするトンネル層4の表面面積との和をS2とすると、S1:S2=1:(5~50)であり、具体的には、1:5、1:10、1:20、1:30、1:40、1:45又は1:50などであってもよく、上記範囲内であれば、ドープ導電層のメタライズ領域におけるパッシベーション性能を確保できるとともに、ドープ導電層の他の領域におけるキャリアの横方向輸送を確保でき、電池の光電変換効率の向上に有利である。S1:S2が1:5よりも大きくなると、第1ドープ導電層5の比率が多すぎるため、多結晶シリコン層におけるキャリアの横方向の輸送が大きく阻害され、電池のフィルファクターが影響を受け、光電変換効率が低下し、S1:S2が1:50よりも小さくなると、第2ドープ導電層7の比率が多すぎるため、金属領域のキャリアの再結合速度が上昇し、パッシベーション効果が著しく低下し、電池の開回路電圧が影響を受け、光電変換効率が低下する。
【0048】
いくつかの実施形態において、本願の実施例は、本願の実施例に係る太陽電池を製造するための太陽電池の製造方法をさらに提供し、ドープ導電層を製造する過程において、まず、トンネル層4を覆う第1非導電層11を製造し、次に、メタライズ領域にブロック層6を製造し、次に、非メタライズ領域を覆うトンネル層4及びブロック層6の表面に第2非導電層12を製造し、最後に、ドープ処理を行うことで、第2非導電層12及び非メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第2ドープ導電層7に変換し、メタライズ領域に位置する前記第1非導電層11を第1ドープ導電層5に変換し、ブロック層6の存在によって、ドープ処理過程の進行に伴って、ドープ元素が第1非導電層11に入って第1ドープ導電層5に変化する抵抗が大きくなり、第1ドープ導電層5からトンネル層4に向かう方向に沿って、第1ドープ導電層5のドープ濃度が順次減少し、このようにすることで、トンネル層4に対するドープ元素の拡散をできるだけ低減することができ、メタライズ領域のパッシベーション性能の向上に有利である。
【0049】
いくつかの実施形態において、ドープ処理の過程において、メタライズ領域のブロック層6の存在によって、ドープ元素の第1非導電層11方向への輸送が阻止され、メタライズ領域に位置する第2非導電層12において多くのドープ元素が存在し、非メタライズ領域において、ブロック層6によるブロックがないため、ドープ元素が非メタライズ領域全体に均一に拡散することができ、非メタライズ領域に位置する第1非導電層11及び第2非導電層12におけるドープ元素が少なく、すなわち、非メタライズ領域に位置する第2ドープ導電層7のドープ濃度がメタライズ領域に位置する第2ドープ導電層7のドープ濃度よりも大きく、このようにすることで、第2ドープ導電層7における第2電極10とコンタクトする領域の濃度が大きく、キャリアの横方向輸送及び第2ドープ導電層7と第2電極10との良好なコンタクトの形成に有利である。
【0050】
いくつかの実施形態では、トンネル層4が位置する平面層に平行な方向に沿って、第1ドープ導電層5の両側がそれぞれ第2ドープ導電層7と境を接するため、ドープ処理過程において、第2ドープ導電層7におけるドープ元素もトンネル層4が位置する平面層に平行な方向に沿って拡散して第1ドープ導電層5に入って、第2ドープ導電層7に向かう第1ドープ導電層5のドープ濃度を第2ドープ導電層7から離反する第1ドープ導電層5のドープ濃度よりも大きくする。
【0051】
本願の実施例に係る太陽電池の製造方法は、TOPCon電池を製造するために用いられ、以下、本願の実施例における図面を参照しながら、本願のTOPCon電池の製造方法を明瞭かつ完全に記述し、記述される実施例は、本願の一部の実施例に過ぎず、全部の実施例ではないと理解されるべきである。
【0052】
本願の実施例は、
図3に示されるように、太陽電池の製造方法を提供し、本願に係る太陽電池の製造方法は、下記のステップを含む。
【0053】
ステップS100では、半導体基板1を提供し、半導体基板1は、対向して設けられた第1表面及び第2表面を含む。
【0054】
ステップS200では、テクスチャリングされた半導体基板1の第1表面にエミッタ電極2を形成する。
【0055】
ステップS300では、半導体基板1の第2表面にトンネル層4を形成する。
【0056】
ステップS400では、トンネル層4の表面に第1非導電層11を形成し、第1非導電層11は、メタライズ領域及び非メタライズ領域に対応する。
【0057】
ステップS500では、第1非導電層11の表面にブロック層6を形成し、ブロック層6は、メタライズ領域に対応する。
【0058】
ステップS600では、第1非導電層11及びブロック層6の表面に第2非導電層12を形成し、第2非導電層12に対してドープ処理を行い、これによって第2非導電層12及び非メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第2ドープ導電層7に変換し、メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第1ドープ導電層5に変換し、第2ドープ導電層7のドープ濃度が第1ドープ導電層5のドープ濃度よりも大きくなる。
【0059】
ステップS700では、第2ドープ導電層7の表面に第2パッシベーション層8を形成し、エミッタ電極2の表面に第1パッシベーション層3を形成する。
【0060】
ステップS800では、第2パッシベーション層8の表面に第2電極10を形成し、第1パッシベーション層3の表面に第1電極9を形成する。
【0061】
上記技術案において、本願は、半導体基板1の第2表面に第1非導電層11、ブロック層6及び第2非導電層12をこの順で形成してから、ドープ処理を行い、ブロック層6の存在によって、ドープ処理の過程においてドープ元素がブロック層6とトンネル層4との間の第1非導電層11に少なく入り、これによって第2非導電層12及び非メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第2ドープ導電層7に変換し、メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第1ドープ導電層5に変換し、且つ第2ドープ導電層7のドープ濃度が第1ドープ導電層5のドープ濃度よりも大きく、第2非導電層12及び非メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第2ドープ導電層7に変換し、メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第1ドープ導電層5に変換し、第2ドープ導電層7のドープ濃度が第1ドープ導電層5のドープ濃度よりも大きい。一方では、濃度が低い第1ドープ導電層5は、トンネル層4とコンタクトするため、トンネル層4に対するドープ元素のパッシベーション影響を低減することができるとともに、濃度が低い第1ドープ導電層5と半導体基板1との間の擬フェルミ準位の差qVDが小さいため、理論開放電圧の向上に有利であり、太陽電池の光電変換効率の向上に有利であり、また、濃度が高い第2ドープ導電層7は、メタライズ領域及び非メタライズ領域に存在するため、電池背面のキャリアの横方向輸送速度を確保することができ、さらに、非メタライズ領域に位置する第2ドープ導電層7と半導体基板1との間の距離が近いため、低濃度の第1ドープ導電層5及びブロック層6を設けることで第2ドープ導電層7と半導体基板1との間の距離が遠すぎることによって第2ドープ導電層7のバンドベンディング効果が低下しすぎることを回避して、キャリアの選択的輸送を確保することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、半導体基板1の第1表面を太陽電池の正面とし、半導体基板1の第2表面を太陽電池の背面とする場合を例にして、本願の太陽電池の製造方法を明瞭かつ完全に記述する。
【0063】
ステップS100では、半導体基板1を提供し、半導体基板1は、対向して設けられた第1表面及び第2表面を含む。
【0064】
いくつかの実施形態では、半導体基板1は、N型結晶シリコン基板(又はシリコンウェハ)であり、P型結晶シリコン基板(シリコンウェハ)であってもよい。結晶シリコン基板(シリコン基板)は、例えば、多結晶シリコン基板、単結晶シリコン基板、微結晶シリコン基板又は炭化ケイ素基板のうちの一つであり、本願の実施例は、半導体基板1の具体的なタイプについて限定されない。半導体基板1のドープ元素は、リン、窒素等であってもよい。
【0065】
いくつかの実施形態では、半導体基板1の厚さは、110μm~250μmであり、具体的には、半導体基板1の厚さは、110μm、120μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μm又は250μmなどであってもよく、本願の実施例は、半導体基板1の厚さについて限定されない。
【0066】
ステップS200では、
図4に示されるように、テクスチャリングされた半導体基板1の第1表面にエミッタ電極2を形成する。
【0067】
いくつかの実施形態では、テクスチャ又は表面テクスチャ構造(例えばピラミッド構造)を形成するために、半導体基板1の正面にテクスチャリング処理を行ってもよい。テクスチャリング処理の方式は、化学エッチング、レーザーエッチング、機械法及びプラズマエッチングなどであってもよく、ここでは限定されない。例示的に、NaOH溶液を用いて半導体基板1の前面をテクスチャリング処理することができ、NaOH溶液の腐食に異方性があるため、ピラミッドテクスチャ構造を製造することができる。
【0068】
理解されるように、テクスチャリング処理により、半導体基板1の表面にテクスチャ構造を持たせ、光閉じ込め効果を生じさせ、太陽電池による光線の吸収数を増加させて、太陽電池の変換効率を向上させることができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、テクスチャリング処理の前に、表面の金属及び有機汚染物質を除去するために、半導体基板1を洗浄するステップをさらに含むことができる。
【0070】
いくつかの実施形態では、高温拡散、ペーストドープ又はイオン注入のうちのいずれか一つ又は複数の方法によって半導体基板1の正面にエミッタ電極2を形成することができる。具体的には、ホウ素源によりホウ素原子を拡散させてエミッタ電極2を形成する。ホウ素源は、例えば、三臭化ホウ素を用いて拡散処理することにより、結晶シリコンの微結晶シリコン相を多結晶シリコン相に変換することができる。半導体基板1の表面に比較的高い濃度のホウ素を有するため、通常、ホウ珪酸ガラス層(BSG)が形成され、このホウ珪酸ガラス層は、金属ゲッタリング作用を有し、太陽電池の正常な動作に影響を与えるため、後に除去する必要がある。
【0071】
いくつかの実施例では、エミッタ電極2は、均一なドープ深さを有するエミッタ電極2構造であってもよく、又は、異なるドープ濃度及びドープ深さを有する選択的エミッタ電極2構造であってもよい。
【0072】
ステップS300では、
図5に示されるように、半導体基板1の第2表面にトンネル層4を形成する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本願の実施例は、トンネル層4を形成する具体的な操作方式について限定されない。例示的には、オゾン酸化法、高温熱酸化法、硝酸酸化法のいずれか一つを用いて半導体基板1の後表面を酸化トンネルすることができる。トンネル層4は、酸化シリコン層、酸化アルミニウム層及び酸窒化シリコン層のうちの一種又は複数種であってもよい。
【0074】
ステップS400では、
図6に示されるように、トンネル層4の表面に第1非導電層11を形成し、第1非導電層11は、メタライズ領域及び非メタライズ領域に対応する。
【0075】
いくつかの実施形態では、第1非導電層11は、低温堆積の方式で行われ、具体的には、非晶質シリコン層は、化学気相成長法(CVD)、物理気相成長法(PVD)又は原子層堆積法(ALD)のうちのいずれか一種又は複数種の方法で製造されてもよく、本願は、ドープ非晶質シリコン層400の製造方法について限定されない。それに応じて、堆積に用いられる装置は、CVD装置、PVD装置、ALD装置などであってもよい。
【0076】
いくつかの実施形態では、低温堆積の温度は、100℃~300℃であり、低温堆積の温度は、具体的に、100℃、110℃、120℃、150℃、170℃、200℃、220℃、250℃又は300℃などであってもよく、低温堆積の温度を上記範囲内に限定することで、非導電膜層の形成に有利であり、局所的な非導電材料を結晶化させ、さらに電池の光電性能を向上させることもできる。
【0077】
いくつかの実施形態では、第1非導電層11の厚さは、20nm~150nmであり、具体的には、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、110nm、120nm、130nm、140nm又は150nmなどであってもよい。
【0078】
ステップS500では、
図7に示されるように、第1非導電層11の表面にブロック層6を形成し、ブロック層6は、メタライズ領域に対応する。
【0079】
いくつかの実施形態では、シリコン酸化物、シリコン炭化物、シリコン窒化物及びマグネシウムフッ化物などのガス雰囲気下で、第1非導電層11の表面に局所レーザ処理を行って、メタライズ領域に対応するブロック層6を形成する。局所レーザ処理は、従来のマスクの処理方法に比べて、本願の局所レーザ処理プロセスが簡単であり、生産能力が高く、量産しやすい。もちろん、他の方式によって局在化されたブロック層6を形成してもよく、本願は特に限定されず、ブロック層6を形成する過程において、ブロック層6は、完全にメタライズ領域内に位置してもよく、強いブロック作用を得るために、その一部が非メタライズ領域の内部に位置してもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、レーザ処理に用いられるレーザ光は、パルス幅が1ps~100nsであり、具体的には、1ps、100ps、500ps、1ns、5ns、10ns、50ns又は100nsであってもよい。
【0081】
いくつかの実施形態では、レーザ光の波長は、250nm~532nmであり、具体的には、250nm、280nm、300nm、350nm、400nm、480nm、500nm又は532nmであってもよい。
【0082】
いくつかの実施形態では、レーザ処理のパワーは、20mJ/cm2~500mJ/cm2であり、具体的には、20mJ/cm2、50mJ/cm2、80mJ/cm2、100mJ/cm2、150mJ/cm2、200mJ/cm2、300mJ/cm2、400mJ/cm2又は500mJ/cm2であってもよく、青緑波長域での吸収が良いシリコン窒化物などについて、小さいパワーのレーザ光で処理することが可能であり、シリコン酸化物などのバンドギャップが広い材料について、大きいパワーのレーザ光で処理する必要がある。
【0083】
いくつかの実施形態では、レーザ処理の周波数は、100kHz~160kHzであり、具体的には、100kHz、300kHz、800kHz、1000kHz、1300kHz又は1600kHzであってもよい。
【0084】
いくつかの実施形態では、レーザ処理のパルス照射回数は、1~5回である。
【0085】
ステップS600では、第1非導電層11及びブロック層6の表面に第2非導電層12を形成し、得られた構造が
図8に示され、第2非導電層12に対してドープ処理を行い、得られた構造が
図9に示される。
【0086】
上記ステップにおいて、第2非導電層12に対してドープ処理を行う過程において、ドープ元素が
図1に示すZ軸方向に沿って拡散し、すなわち、メタライズ領域において、ドープ元素が第2非導電層12→ブロック層6→第1非導電層11の順に輸送され、輸送過程において、ブロック層6の存在によって、第2非導電層12から第1非導電層11へのドープ元素の拡散が難しくなり、ドープの圧力の作用で、依然として一部のドープ元素が第1非導電層11に拡散することができ、このようにすることで、第2非導電層12及び非メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第2ドープ導電層7に変換し、メタライズ領域に位置する第1非導電層11を第1ドープ導電層5に変換し、且つ第2ドープ導電層7のドープ濃度が第1ドープ導電層5のドープ濃度よりも大きい。理解されるように、第1ドープ導電層5の厚さは、すなわち第1非導電層11の厚さとなり、第2ドープ導電層7の厚さは、すなわち第1非導電層11の厚さに第2非導電層12の厚さを加えた厚さとなる。
【0087】
いくつかの実施形態では、ドープ処理の過程において、ドープ処理過程の進行に伴い、ドープ元素が第1非導電層11に入って第1ドープ導電層5になる抵抗がますます大きくなり、これによって第1ドープ導電層5からトンネル層4に向かう方向に沿って、第1ドープ導電層5のドープ濃度が順に減少する。
【0088】
いくつかの実施形態において、ドープ処理の過程において、メタライズ領域ブロック層6の存在によって、ドープ元素の第1非導電層11方向への輸送が阻止され、メタライズ領域に位置する第2非晶質シリコンに多くのドープ元素が存在し、非メタライズ領域において、ブロック層6によるブロックがないため、ドープ元素が非メタライズ領域全体に均一に拡散することができ、非メタライズ領域に位置する第1非導電層11及び第2非導電層12におけるドープ元素が少なくなり、すなわち、非メタライズ領域に位置する第2ドープ導電層7のドープ濃度がメタライズ領域に位置する第2ドープ導電層7のドープ濃度よりも大きくなる。
【0089】
いくつかの実施形態では、トンネル層4が位置する平面層に平行な方向に沿って、第1ドープ導電層5の両側がそれぞれ第2ドープ導電層7と境を接するため、ドープ処理過程において、第2ドープ導電層7におけるドープ元素もトンネル層4が位置する平面層に平行な方向に沿って拡散して第1ドープ導電層5に入って、第2ドープ導電層7に向かう第1ドープ導電層5のドープ濃度を第2ドープ導電層7から離れる第1ドープ導電層5のドープ濃度より大きくする。
【0090】
いくつかの実施形態において、ドープ処理は、高温堆積拡散法を採用し、その具体的な製造過程は、下記の通りである。高温機器に窒素ガスを20min導入して炉管内の空気をすべて排出し、高温機器を600℃~1100℃に昇温させ、ドープ源が混合された不活性ガス、例えばAr/N2などを導入し、5min~50min高温反応させ、さらに酸素ガスを導入し、続いて600℃~1100℃で5min~60min酸化反応させ、酸化後に高温機器を室温まで降温させればよい。
【0091】
いくつかの実施形態では、ドープ処理のドープ元素は、ホウ素、ガリウム、リン及びヒ素のうちの少なくとも一つを含む。ドープ処理のドープ源は、ホウ素源、ガリウム源、リン源及びヒ素源のうちの少なくとも一つを含み、典型的には、ホウ素源は、例えば、BCl3、BBr3、B2H4、有機ホウ素源、および高濃度ホウ素単体を含む固体シリコンのうちの少なくとも一つであってもよく、ガリウム源は、例えば、トリメチルガリウム、及び高濃度ガリウム単体を含む固体シリコンであってもよく、リン源は、例えば、POCl3、PH3、有機リン源、および高濃度リン単体を含む固体シリコンのうちの少なくとも一つであってもよいが、これらに限定されない。ヒ素源は、例えば、AsH3、およびヒ素単体を高濃度に含む固体シリコンであってもよい。
【0092】
いくつかの実施形態では、ドープ元素の導電型は、半導体基板1のドープ元素の導電型と同じである。例えば、半導体基板1がN型基板である場合、ドープされた元素は、N型ドープ元素であり、例えば、リン元素又はヒ素元素であり、形成されたドープ層は、リンドープ層又はヒ素ドープシリコン層であってもよく、半導体基板1がP型基板である場合、ドープされた元素は、P型ドープ元素であり、例えば、ホウ素元素又はガリウム元素であり、形成されたドープ層は、ホウ素ドープ層又はガリウムドープ層である。
【0093】
ステップS700では、
図10に示されるように、第2ドープ導電層7の表面に第2パッシベーション層8を形成し、エミッタ電極2の表面に第1パッシベーション層3を形成する。
【0094】
いくつかの実施形態では、第1パッシベーション層3は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの単層酸化層又は多層構造を含んでもよいが、これらに限定されない。当然ながら、第1パッシベーション層3は、他のタイプのパッシベーション層を採用してもよく、本願は、第1パッシベーション層3の具体的な材質について限定されず、上記第1パッシベーション層3は、半導体基板1に対して良好なパッシベーション及び反射防止効果を生じることができ、電池の変換効率の向上に寄与する。
【0095】
いくつかの実施形態では、第2パッシベーション層8は、酸化シリコン、窒化シリコン、酸窒化シリコン、酸化アルミニウムなどの単層酸化層又は多層構造を含んでもよいが、これらに限定されない。例えば、第2パッシベーション層8は、窒化シリコンからなり、窒化シリコン薄膜層は、反射防止膜の役割を果たすことができ、かつ当該窒化シリコン薄膜は、良好な絶縁性、緻密性、安定性及び不純物イオンに対する遮蔽能力を有し、窒化シリコン薄膜層は、半導体基板1に対してパッシベーション作用を生じて、太陽電池の光電変換効率を顕著に改善することができる。
【0096】
ステップS800では、第2パッシベーション層8の表面に第2電極10を形成し、第1パッシベーション層3の表面に第1電極9を形成する。
【0097】
いくつかの実施形態では、半導体基板1の正面にペーストを用いて正面メイングリッド及び正面サブグリッドを印刷し、乾燥させて対応する第1電極9を形成し、半導体基板1の背面にペーストを用いて背面メイングリッド及び背面サブグリッドを印刷し、乾燥させて対応する第2電極10を形成し、最後に乾燥後の電池セルを焼結して、太陽電池を製造する。
【0098】
本願の実施例では、第1電極9及び第2電極10の具体的な材質について限定されない。例えば、第1電極9は、銀電極又は銀/アルミニウム電極であり、第2電極10は、銀電極又は銀/アルミニウム電極である。
【0099】
第3態様では、本願の実施例は、上記した太陽電池が電気的に接続されることによって形成された電池ストリングを含む太陽光発電モジュール1000を提供する。
【0100】
具体的には、
図11に示されるように、太陽光発電モジュール1000は、第1カバープレート200、第1封止接着層300、太陽電池ストリング、第2封止接着層400及び第2カバープレート500を含む。
【0101】
いくつかの実施形態では、太陽電池ストリングは、導電テープを介して接続された複数の前記太陽電池100を含み、太陽電池100同士の接続方式は、部分的に積層されてもよく、つなぎ合わせされてもよい。
【0102】
いくつかの実施形態では、第1カバープレート200、第2カバープレート500は、透明又は不透明のカバープレート、例えば、ガラスカバープレート、プラスチックカバープレートであってもよい。
【0103】
第1封止接着層300の両側は、それぞれ第1カバープレート200、電池ストリングに接触して貼り付けられ、第2封止接着層400の両側は、それぞれ第2カバープレート500、電池ストリングに接触して貼り付けられる。第1封止接着層300、第2封止接着層400は、それぞれエチレン-酢酸ビニル共重合体(EVA)接着フィルム、ポリエチレンオクテン共重合体(POE)接着フィルム又はポリエチレンテレフタレート(PET)接着フィルムであってもよい。
【0104】
太陽光発電モジュール1000は、太陽光発電モジュール1000の積層中に積層ずれの現象の発生を防止するために、側面完全包囲式封止、すなわち、封止テープを採用して太陽光発電モジュール1000の側面を完全に被覆して封止するという方式を採用してもよい。
【0105】
太陽光発電モジュール1000は、太陽光発電モジュール1000の一部の縁部に固定封止される縁封止部材をさらに含む。当該縁封止部材は、太陽光発電モジュール1000におけるコーナーに近い縁に固定封止することができる。縁封止部材は、耐高温テープであってもよい。当該耐高温テープは、優れた耐高温特性を有し、積層過程において分解又は脱落することがなく、太陽光発電モジュール1000の確実な封止を確保することができる。耐高温テープの両端は、それぞれ第2カバープレート500及び第1カバープレート200に固定される。当該耐高温テープの両端は、それぞれ第2カバープレート500及び第1カバープレート200に接着されてもよく、その中央部は、太陽光発電モジュール1000の側辺に対する位置制限を図ることができ、太陽光発電モジュール1000の積層過程における積層ずれを防止できる。
【0106】
以上は、本願の好ましい実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神と原則内で行われたいかなる修正、同等置換、改良などは、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0107】
1-半導体基板
2-エミッタ電極
3-第1パッシベーション層
4-トンネル層
5-第1ドープ導電層
6-ブロック層
7-第2ドープ導電層
8-第2パッシベーション層
9-第1電極
10-第2電極
11-第1非導電層
12-第2非導電層
1000-太陽光発電モジュール
100-太陽電池
200-第1カバープレート
300-第1封止接着層
400-第2封止接着層
500-第2カバープレート
【手続補正書】
【提出日】2023-11-21
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池であって、
対向して設けられた第1表面および第2表面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の第1表面に位置するエミッタ電極及び第1パッシベーション層と、
前記半導体基板の第2表面に位置するトンネル層と、
前記トンネル層の表面に位置する第1ドープ導電層及びブロック層と、
前記トンネル層の表面に位置する第2ドープ導電層と、
前記第2ドープ導電層の表面に位置する第2パッシベーション層と、
前記第2パッシベーション層を貫通して前記第2ドープ導電層とコンタクトを形成する第2電極、および、前記第1パッシベーション層を貫通して前記エミッタ電極とコンタクトを形成する第1電極と、を含み、
前記第1ドープ導電層は、前記トンネル層と前記ブロック層との間に位置し、前記第1ドープ導電層及び前記ブロック層は、メタライズ領域に対応し、
前記第2ドープ導電層は、非メタライズ領域の前記トンネル層及び前記ブロック層を覆い、前記ブロック層は、前記第2ドープ導電層におけるドープ元素の前記第1ドープ導電層への遷移をブロックするために用いられ、前記第2ドープ導電層のドープ濃度は、前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きい、ことを特徴とする太陽電池。
【請求項2】
前記第1ドープ導電層の幅と前記ブロック層の幅との比は、1:(1~2)である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項3】
前記第1ドープ導電層とコンタクトする前記トンネル層の表面面積をS1とし、前記第1ドープ導電層とコンタクトする前記トンネル層の表面面積と前記第2ドープ導電層とコンタクトするトンネル層の表面面積との和をS2とすると、S1:S2=1:(5~50)である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項4】
前記第1ドープ導電層におけるドープ元素は、ホウ素、リン、ガリウム及びヒ素の少なくとも一つを含み、及び/又は、前記第1ドープ導電層のドープ濃度は、1E18cm-3~1.5E21cm-3である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項5】
前記第1ドープ導電層の厚さは、20nm~150nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項6】
前記第2ドープ導電層におけるドープ元素は、ホウ素、リン、ガリウム及びヒ素のうちの少なくとも一つを含み、及び/又は、前記第2ドープ導電層のドープ濃度は、5E18cm-3~2E21cm-3である、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項7】
前記第2ドープ導電層の厚さは、20nm~200nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項8】
前記ブロック層の材質は、シリコン酸化物、シリコン炭化物、シリコン窒化物及びマグネシウムフッ化物のうちの少なくとも一つを含み、及び/又は、前記ブロック層の厚さは、0.5nm~4nmである、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項9】
前記第1ドープ導電層の厚さは、前記第2ドープ導電層の厚さよりも小さい、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項10】
前記非メタライズ領域に位置する第2ドープ導電層のドープ濃度は、前記メタライズ領域に位置する第2ドープ導電層のドープ濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項11】
前記第1ドープ導電層から前記トンネル層に向かう方向に沿って、前記第1ドープ導電層のドープ濃度が順次減少する、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項12】
前記トンネル層が位置する平面に平行する方向において、前記第2ドープ導電層に向かう前記第1ドープ導電層のドープ濃度は、前記第2ドープ導電層から離反する前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きい、ことを特徴とする請求項1に記載の太陽電池。
【請求項13】
太陽電池の製造方法であって、
対向して設けられた第1表面および第2表面を有する半導体基板を提供するステップと、
テクスチャリングされた前記半導体基板の第1表面にエミッタ電極を形成するステップと、
前記半導体基板の第2表面にトンネル層を形成するステップと、
前記トンネル層の表面に第1非導電層を形成し、前記第1非導電層は、メタライズ領域及び非メタライズ領域に対応するステップと、
前記第1非導電層の表面にブロック層を形成し、前記ブロック層は、メタライズ領域に対応するステップと、
前記第1非導電層及び前記ブロック層の表面に第2非導電層を形成し、前記第2非導電層に対してドープ処理を行い、これによって前記第2非導電層及び非メタライズ領域に位置する前記第1非導電層を第2ドープ導電層に変換し、メタライズ領域に位置する前記第1非導電層を第1ドープ導電層に変換し、前記第2ドープ導電層のドープ濃度が前記第1ドープ導電層のドープ濃度よりも大きくなるステップと、
前記第2ドープ導電層の表面に第2パッシベーション層を形成し、前記エミッタ電極の表面に第1パッシベーション層を形成するステップと、
前記第2パッシベーション層の表面に第2電極を形成し、前記第1パッシベーション層の表面に第1電極を形成するステップと、を含み、
前記ブロック層は、前記第2ドープ導電層におけるドープ元素の前記第1ドープ導電層への遷移をブロックするために用いられる、ことを特徴とする太陽電池の製造方法。
【請求項14】
太陽光発電モジュールであって、
カバープレートと、封止材層と、太陽電池ストリングとを含み、前記太陽電池ストリングは、請求項1~12のいずれか一項に記載の太陽電池を含む、ことを特徴とする太陽光発電モジュール。