(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119718
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】音高表示装置、音高表示方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G10G 7/02 20060101AFI20240827BHJP
G04F 5/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G10G7/02 100
G04F5/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123163
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2023026275
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100206391
【弁理士】
【氏名又は名称】柏野 由布子
(72)【発明者】
【氏名】氏原 竜也
【テーマコード(参考)】
5D182
【Fターム(参考)】
5D182DD05
(57)【要約】
【課題】画像を頼りに音高を調整しながら演奏することを抑制し、さらに演奏後に演奏音の音高を確認しやすくする。
【解決手段】本開示の一態様は、表示部と、入力された音信号の音高を検出する音高検出部と、音高検出部により検出された音高に基づいて標準音高を検出する標準音高検出部と、標準音高および音高を記録する記録部と、音高検出部により音高を検出したことに応じて、音高を示す画像を、音高検出部により検出された音高と標準音高との差分に対応した表示部の位置に表示させる表示制御部と、を備え、表示制御部は、音高検出部で音高が検出されなかった場合に、記録部に記録されている標準音高および音高に基づいて、音高の変化範囲を示す画像を標準音高との差分に対応した表示部の位置に表示させる、音高表示装置である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示部と、
入力された音信号の音高を検出する音高検出部と、
前記音高検出部により検出された前記音高に基づいて標準音高を検出する標準音高検出部と、
前記標準音高および前記音高を記録する記録部と、
前記音高検出部により前記音高を検出したことに応じて、前記音高を示す画像を、前記音高検出部により検出された前記音高と前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示させる表示制御部と、を備え、
前記表示制御部は、前記音高検出部で音高が検出されなかった場合に、前記記録部に記録されている前記標準音高および前記音高に基づいて、前記標準音高を示す画像および前記音高の変化範囲を示す画像を前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示させる、音高表示装置。
【請求項2】
前記表示制御部は、前記記録部に記録されている前記音高のうち最高値および最低値を表す画像を、前記音高の変化範囲を示す画像として表示させる、請求項1に記載の音高表示装置。
【請求項3】
前記表示制御部は、前記標準音高を中心とした所定範囲に含まれる音高の入力が開始したときの音高を表す画像と、前記標準音高を中心とした所定範囲に含まれる音高の入力が終了したときの音高を表す画像と、を区別して前記音高の変化範囲を示す画像を表示させる、請求項1または2に記載の音高表示装置。
【請求項4】
前記表示制御部は、前記音高の変化範囲を示す画像に含まれる音高に対応した画像を、前記標準音高を中心とした所定範囲に含まれる音高の入力が開始した時から終了した時までの期間における音高の演奏時間の長さに基づいて区別して表示させる、請求項1または2に記載の音高表示装置。
【請求項5】
前記表示制御部は、前記標準音高を中心とした第1の音高範囲内で前記音高を示す画像を前記表示部の表示領域に表示させる第1の表示モードと、前記第1の音高範囲から前記標準音高を中心とした一部を抽出した第2の音高範囲内で前記音高を示す画像を前記表示領域に表示させる第2の表示モードとを切り換える、
請求項1または2に記載の音高表示装置。
【請求項6】
ユーザの操作を受け付ける操作部を備え、
前記表示制御部は、前記操作部により前記音高の変化範囲を示す画像を表示させる操作を受け付けた場合に、前記音高の変化範囲を示す画像を前記表示部に表示させる、
請求項1または2に記載の音高表示装置。
【請求項7】
入力された音信号の音高を検出し、
検出された前記音高に基づいて標準音高を検出し、
前記標準音高および前記音高を記録し、
前記音高を検出したことに応じて、前記音高を示す画像を、前記音高と前記標準音高との差分に対応した表示部の位置に表示し、
前記音高が検出されなかった場合に、記録されている前記標準音高および前記音高に基づいて、前記標準音高を示す画像および前記音高の変化範囲を示す画像を前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示する、
音高表示方法。
【請求項8】
音高表示装置のコンピュータに、
入力された音信号の音高を検出させ、
検出された前記音高に基づいて標準音高を検出させ、
前記標準音高および前記音高を記録させ、
前記音高を検出したことに応じて、前記音高を示す画像を、前記音高と前記標準音高との差分に対応した表示部の位置に表示させ、
前記音高が検出されなかった場合に、記録されている前記標準音高および前記音高に基づいて、前記音高の変化範囲を示す画像を前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示させる、
処理を実行させる、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音高表示装置、音高表示方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、楽器などの調律を行うために、入力された音の高さ(音高)と所定の標準音高(音階)との偏差を示すチューナー機能を備えた電子機器が知られている。特許文献1には、演奏音の音高と所定の標準音高との偏差に応じて移動する第一画像、および指定されたテンポに応じて所定の周期で移動する第二画像、を表示部に表示させるチューナーメトロノームが記載されている。
【0003】
非特許文献1には、チューナー、メトロノーム、基準音を出力するサウンド機能、分析機能を持つTEチューナーと呼ばれるスマートフォンアプリが記載されている。分析機能は、音の波形を表示させること、および音高の細かい変化を表示させる機能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】soundydays.com、吹奏楽に役立つチューナーアプリ「TEチューナー」“音のある毎日”、[online]、2018年7月24日、インターネット<URL:https://soundydays.com/2018/07/24/tetuner/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のチューナーメトロノームは、演奏中にリアルタイムで偏差を表示させており、非特許文献1のTEチューナーは、現時点から所定期間だけ遡った期間における音高の時間的な変化を表示させているので、演奏音を標準音高に合わせるために演奏者がリアルタイムに表示される画像を見ながら演奏をしてしまう。すなわち、演奏者は画像に集中するあまり自身の聴覚で演奏音の音高を感じながら演奏することができないという弊害がある。
【0007】
非特許文献は、音の波形および音高を時系列で表示されるため、音の波形および音高が変化した範囲を確認するためには時系列を遡るようにスクロール操作をする必要があり、一目では音の波形および音高の変化範囲が分かりづらいという問題がある。
【0008】
本開示の一つの態様は、画像を頼りに音高を調整しながら演奏することを抑制し、さらに演奏後に演奏音の音高を確認しやすくすることを目的とする。特に、本開示のひとつの態様は、ロングトーンの演奏時に音高の揺れを確認するために、画像を頼りに音高を調整しながら演奏することを抑制することができる、音高表示装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は上述した課題を解決するためになされたもので、本開示の一態様は、表示部と、入力された音信号の音高を検出する音高検出部と、前記音高検出部により検出された前記音高に基づいて標準音高を検出する標準音高検出部と、前記標準音高および前記音高を記録する記録部と、前記音高検出部により前記音高を検出したことに応じて、前記音高を示す画像を、前記音高検出部により検出された前記音高と前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示させる表示制御部と、を備え、前記表示制御部は、前記音高検出部で音高が検出されなかった場合に、前記記録部に記録されている前記標準音高および前記音高に基づいて、前記音高の変化範囲を示す画像を前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示させる、音高表示装置である。
【0010】
本開示の一態様は、入力された音信号の音高を検出し、検出された前記音高に基づいて標準音高を検出し、前記標準音高および前記音高を記録し、前記音高を検出したことに応じて、前記音高を示す画像を、前記音高と前記標準音高との差分に対応した表示部の位置に表示し、前記音高検出部で音高が検出されなかった場合に、記録されている前記標準音高および前記音高に基づいて、前記音高の変化範囲を示す画像を前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示する、音高表示方法である。
【0011】
本開示の他の態様は、音高表示装置のコンピュータに、入力された音信号の音高を検出させ、検出された前記音高に基づいて標準音高を検出させ、前記標準音高および前記音高を記録させ、前記音高を検出したことに応じて、前記音高を示す画像を、前記音高と前記標準音高との差分に対応した表示部の位置に表示させ、前記音高検出部で音高が検出されなかった場合に、記録されている前記標準音高および前記音高に基づいて、前記音高の変化範囲を示す画像を前記標準音高との差分に対応した前記表示部の位置に表示させる、処理を実行させる、プログラムである。
【発明の効果】
【0012】
本開示の一つの態様は、画像を頼りに音高を調整しながら演奏することを抑制し、さらに演奏後に演奏音の音高を確認しやすくすることができる。特に、本発明の一態様によれば、ロングトーンを演奏しているときに、画像を頼りに音高を調整しながら演奏することを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】実施の形態におけるチューナー装置の一例を示すブロック図である。
【
図2】実施の形態における表示部に表示される画像の一例を示す図である。
【
図3】実施の形態における音高の変化範囲を表示した一例を示す図である。
【
図4】実施の形態におけるチューナー装置の動作手順の一例を示す図である。
【
図5】実施の形態における音高の変化に対する表示部における表示の変化の一例を示す図である。
【
図6】実施の形態における表示部に表示させる画像の他の例を示す図である。
【
図7】実施の形態における表示部に表示させる画像の他の例を示す図である。
【
図8】実施の形態における表示部に表示させる画像の他の例を示す図である。
【
図9】実施の形態における音高の変化に対する表示部における表示の変化の他の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を適用した音高表示装置、音高表示方法、およびプログラムを、図面を参照して説明する。
【0015】
図1は、実施の形態におけるチューナー装置1の一例を示すブロック図である。実施の形態においてチューナー装置1は、例えば管楽器の演奏音を入力するが、これに限定されず、弦楽器等の他の楽器であってもよい。チューナー装置1は、例えば、表示部10と、表示制御部20と、操作部30と、音高検出部40と、標準音高検出部50と、記録部60とを備える。表示部10は、チューナー装置1の筐体に取り付けられた液晶ディスプレイである。操作部30は、チューナー装置1の筐体に取り付けられたボタンおよびボタンが操作されたことを検出する検出機構等を含む。表示制御部20は、表示部10に表示信号を出力することで表示部10に表示される画像を制御する。表示制御部20、音高検出部40、標準音高検出部50、といった機能部は、例えばプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等により実現されてよい。
【0016】
音高検出部40にはマイク(不図示)により生成された音信号が入力される。音高検出部40は、入力された音信号の音高を検出する。音高は、楽器等から発せられる音の高さを示す。音高検出部40は、音高を示す音高情報を表示制御部20、標準音高検出部50、および記録部60に出力する。音高検出部40は、音高が検出されている状態から音高が検出されない状態に変化した場合、終了検出信号を記録部60に出力する。
【0017】
標準音高検出部50は、音高検出部40により検出された音高に基づいて標準音高を検出する。標準音高検出部50は、複数の標準音高のうち音高検出部40に検出された音高に最も近い標準音高を検出する。標準音高検出部50は、標準音高を示す標準音高情報を表示制御部20および記録部60に出力する。
【0018】
記録部60は、例えば、一時的に情報を記録し、記録した情報を消去する記憶装置である。記録部60は、標準音高検出部50から入力した標準音高情報、および音高検出部40から入力した音高情報を記録する。記録部60は、例えば、音高検出部40により音高を検出している期間において、標準音高を中心とした所定範囲に含まれる複数の音高情報を記録する。記録部60は、終了検出信号を入力した場合に、表示制御部20にデータ出力後、記録している標準音高情報および音高情報を消去する。
【0019】
表示制御部20は、音高検出部40により音高を検出したことに応じて、音高を示す音高画像を、音高検出部40により検出された音高と標準音高検出部50により検出された標準音高との差分に対応した表示部10の位置に表示させる。さらに表示制御部20は、音高検出部40で音高が検出されなかった場合に、記録部60に記録されている標準音高および音高に基づいて、標準音高を示す標準音高画像、および音高の変化範囲を示す画像を、変化範囲と標準音高との差分に対応した表示部10の位置に表示させる。なお、表示制御部20は、表示部10に、音高画像、標準音高画像、音高の変化範囲を示す画像に加えて、指定されたテンポに同期して移動するメトロノーム画像を表示させてよい。
【0020】
操作部30は、ユーザの操作を受け付ける。操作部30は、受け付けた操作を示す操作信号を表示制御部20に出力する。表示制御部20は、例えば音高の変化範囲を示す画像を表示させる操作を受け付ける。
【0021】
図2は、実施の形態における表示部10に表示される画像の一例を示す図である。表示部10は、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)、プロジェクタ等の各種表示装置であってよい。実施の形態において表示部10は、実施の形態ではセグメント方式の表示装置であるが、これに限定されず、例えばドットマトリクス方式の表示装置であってもよい。
【0022】
表示制御部20は、表示部10の表示領域に、音高画像11と、メトロノーム画像12と、モード画像13と、標準音高画像14と、周波数画像15と、セントを示す目盛り画像16と、テンポ画像17とを表示させる。音高画像11は、音高検出部40により検出された音高を示す画像である。
図2では標準音高画像14である「A」の直下、プラスマイナス0の位置を指している。メトロノーム画像12は、指定されたテンポで左右に移動する画像である。モード画像13は、表示制御部20における動作モードを示す画像である。モード画像13には、チューナーモードを表すモード画像13Aと、メトロノームモードを表すモード画像13Bとが含まれる。標準音高画像14は、標準音高検出部50により検出された標準音高に対応する音名を示す画像である。周波数画像15は、標準音高をどのような周波数に設定しているかを示す画像である。目盛り画像16は、音高検出部40により検出された音高と標準音高との差に対応した目盛りを示す画像である。テンポ画像17は、指定されたテンポの数値を示す画像である。
【0023】
表示制御部20は、入力された音高と標準音高との差に応じて音高画像11を移動させる。また、表示制御部20は、指定されたテンポに応じて所定の周期でメトロノーム画像12を移動させる。表示制御部20に表示される音高画像11、およびメトロノーム画像12の形状は、円形状や多角形状など任意であってよい。実施の形態における音高画像11およびメトロノーム画像12の形状は、直線状または針状である。音高画像11、およびメトロノーム画像12は、表示部10において音高画像11、メトロノーム画像12の長手方向に直交する方向(音高画像11、およびメトロノーム画像12の幅方向)に移動するように表示される。音高画像11、およびメトロノーム画像12の線幅は互いに等しいが、これに限定されず、互いに異なっていてもよい。
【0024】
音高画像11およびメトロノーム画像12の移動方向は互いに並行方向であるが、これに限定されず、互いに異なっていてよい。音高画像11およびメトロノーム画像12の移動方向は、仮想の基準点RPを中心とする周方向D1となっている。これに伴い、直線状に形成された音高画像11およびメトロノーム画像12の長手方向は、基準点RPを中心とする径方向D2に一致している。
【0025】
メトロノーム画像12は、指定されたテンポに応じて周方向D1の所定範囲内において往復移動するが、これに限定されず、例えば周方向D1の一方側にのみ移動してもよい。同様に、実施の形態の音高画像11は、周方向D1の所定範囲内で移動する。このため、周方向D1における音高画像11およびメトロノーム画像12の移動範囲MR1およびMR2は、各々円弧状又は扇状の領域で示すことができる。周方向D1における音高画像11およびメトロノーム画像12の移動範囲MR1およびMR2は、180度よりも小さいが、これに限定されず、任意であってよい。
【0026】
メトロノーム画像12の移動範囲MR2は、音高画像11の移動範囲MR1よりも狭いが、これに限定されず、音高画像11の移動範囲MR1とメトロノーム画像12の移動範囲MR2は互いに等しくてもよく、互いに異なっていてよい。
【0027】
音高画像11の移動範囲MR1とメトロノーム画像12の移動範囲MR2とは、基準点RPを中心とする径方向D2において隣り合ってよい。音高画像11の移動範囲MR1は、例えば径方向D2においてメトロノーム画像12の移動範囲MR2の内側に隣り合ってもよいが、本実施形態ではメトロノーム画像12の移動範囲MR2の外側に隣り合っている。
【0028】
図3は、実施の形態における音高の変化範囲を表示した一例を示す図である。表示制御部20は、音高検出部40で音高が検出されなかった場合に、
図3に示すように、標準音高を音名として示す標準音高画像14および音高の変化範囲を示す音高範囲画像18を表示させる。この図における一例としての標準音高画像14は「A」の音を示す。標準音高画像14で表示される音名は、標準音高として検出された音高に応じて図示した「A」以外に他の音名にも変化する。また、標準音高画像14で表示される音名は、それぞれに対応して1またはオクターブ違いの複数の標準音高が定まる。音高範囲画像18は、標準音高画像14で表示する音名に対応した標準音高を検出している期間において記録部60に記録された音高情報に対応した複数の音高画像11を含むようにしてもよいし、複数の音高情報に基づいて音高範囲画像18を作成するようにしてもよい。
【0029】
図4は、実施の形態におけるチューナー装置の動作手順の一例を示す図である。まず表示制御部20は、チューナー装置1の動作モードを判定する(ステップS100)。表示制御部20は、チューナー装置1の動作モードとして、チューナーモード、および表示部10の表示モード(後述)を判定してよい。
【0030】
次に音高検出部40は、音高を検出したか否かを判定する(ステップS102)。音高検出部40により音高を検出していない場合(ステップS102:NO)、チューナー装置1はステップS100に処理を戻す。音高検出部40により音高を検出した場合(ステップS102:YES)、音高検出部40は、検出した音高を示す音高情報を記録部60に記録させる(ステップS104)。次に標準音高検出部50は、音高検出部40により検出された音高に基づいて標準音高を検出し、標準音高を示す標準音高情報を記録部60に記録させる(ステップS106)。次に表示制御部20は、
図3に示したように、音高と標準音高との差分に対応した位置に、音高画像11を表示する(ステップS108)。なお、表示制御部20は、ステップS108において、音高画像11以外のメトロノーム画像12、標準音高画像14等の画像を、任意のタイミングで表示すればよい。
【0031】
次に表示制御部20は、音高の検出が継続しているか否かを判定する(ステップS110)。表示制御部20は、音高の検出が継続しているか否かを判定することにより、ロングトーンの演奏が継続していか否かを判定することができる。音高の検出が継続している場合、すなわちロングトーンの演奏が継続している場合(ステップS110:YES)、ステップS104に処理を戻す。表示制御部20は、音高の検出が継続していない場合、すなわちロングトーンの演奏が継続していない場合(ステップS110:NO)、
図3に示した音高範囲画像18を表示させる(ステップS112)。音高範囲画像18の表示は記録部60に記録された複数の音高情報を同時に表示するようにしてもよく、また、記録部60に記録された複数の音高情報を元に音高範囲画像18を作成しそれを表示するようにしてもよい。表示制御部20は、音高範囲画像18を表示させてから一定時間が経過したか否かを判定する(ステップS114)。一定時間は例えば2秒であるが、これに限定されず、2秒よりも長くても短くてもよく、ユーザの操作に応じて設定された時間であってよい。表示制御部20は、音高範囲画像18を表示させてから一定時間が経過したと判定した場合(ステップS114:YES)、音高範囲画像18の消去、および記録部60におけるデータの初期化を行い(ステップS118)、ステップS100に処理を戻す。表示制御部20は、音高範囲画像18を表示させてから一定時間が経過していない場合(ステップS114:NO)、音高を検出したか否かを判定する(ステップS116)。表示制御部20は、音高を検出していない場合(ステップS116:NO)、ステップS114に処理を戻し、音高を検出した場合(ステップS116:YES)、音高範囲画像18の消去、および記録部60におけるデータの初期化を行い(ステップS120)、ステップS104に処理を戻す。
【0032】
図5は、実施の形態において、ロングトーンの演奏時における音高の変化に対する表示部10における表示の変化の一例を示す図である。例えば演奏者が、時刻t0から時刻t4に亘り、管楽器のロングトーンの演奏を行ったとする。時刻t1において、表示制御部20は、音高検出部40により検出された音高および標準音高検出部50により検出された標準音高に基づいて、
図5(a)に示すように音高画像11および標準音高画像14を表示させる。音高画像11は、音高と標準音高との差分に対応した位置に表示される。時刻t2、t3のように演奏された音の標準音高が変化せず音高が変化したとき、表示制御部20は、
図5(b)、(c)に示すように音高画像11および標準音高画像14を表示させる。時刻t4において標準音高と音高が一致したとき、表示制御部20は、
図5(d)に示すように音高画像11および標準音高画像14を表示させる。時刻t4の経過後、演奏が終了すると、表示制御部20は、音高検出部40により音高の検出が終了したと判定し、
図5(e)に示すように標準音高画像14および音高範囲画像18を表示させる。音高範囲画像18は、時刻t0から時刻t4において検出された標準音高情報および音高情報に基づいて表示される画像であって、時刻t0から時刻t4において検出された音高の変化範囲を示す画像である。時刻t0から時刻t4に亘る音高と標準音高との差分に対応し、音高画像11が表示された位置と対応した位置に音高範囲画像18が表示される。その後、演奏が開始されると、表示制御部20は、
図5(f)に示すように標準音高画像14および音高画像11を表示させる。
【0033】
以上のように、実施の形態のチューナー装置1によれば、表示部10と、入力された音信号の音高を検出する音高検出部40と、音高検出部40により検出された音高に基づいて標準音高を検出する標準音高検出部50と、標準音高および音高を記録する記録部60と、音高検出部40により音高を検出したことに応じて、音高を示す画像を、音高検出部40により検出された音高と標準音高との差分に対応した表示部10の位置に表示させる表示制御部20と、を備える。このチューナー装置1において、表示制御部20は、音高検出部40で音高が検出されなかった場合に、記録部60に記録されている標準音高および音高に基づいて、標準音高を示す画像および音高の変化範囲を示す画像を範囲と標準音高との差分に対応した表示部10の位置に表示させる音高表示装置を実現することができる。このようなチューナー装置1によれば、音高検出部40で音高が検出されなかったことを条件として音高の変化範囲を表示させるので、演奏終了後に音高の履歴を表示させることができる。また、このチューナー装置1によれば、音高の表示位置と音高範囲の表示位置とを揃えることができる。この結果、チューナー装置1によれば、リアルタイムに音高画像11を頼りに音高を調整しながら演奏することを抑制し、さらに演奏後に演奏音の音高を確認しやすくすることができる。この結果、チューナー装置1によれば、演奏者の耳合わせの精度を高めることができる。特に、実施の形態のチューナー装置1によれば、ロングトーンの演奏中に、リアルタイムに音高画像11を見ながら演奏してしまうことを抑制することができる。
【0034】
図6は、実施の形態における表示部10に表示させる画像の他の例を示す図である。
表示制御部20は、記録部60に記録されている音高のうち最高値および最低値を表す画像11A、11Bを、音高の変化範囲を示す音高範囲画像18として表示させてよい。表示制御部20は、最高値および最低値を表す画像11A、11Bを2つの画像として表示させていているが、これに限定されず、音高の最高値から最低値までの間を塗りつぶした1つの画像を音高範囲画像18として表示させてよい。これにより、チューナー装置1によれば、演奏中に変動した音高の最高値および最低値を表す画像で表示させることにより、演奏者に分かり易く変動幅を認識させることができる。
【0035】
図7は、実施の形態における表示部10に表示させる画像の他の例を示す図である。
表示制御部20は、標準音高を中心とした所定範囲に含まれる音高の入力が開始したときの音高を表す画像(18A、「画像S」)と、標準音高を中心とした所定範囲に含まれる音高の入力が終了したときの音高を表す画像(18A、「画像E」)と、を区別して音高の変化範囲を示す音高範囲画像18を表示させてよい。表示制御部20は、音高の入力が開始したときの音高を示す画像S、音高の入力が終了したときの音高を示す画像Eを表示させたが、これに限定されず、画像を見たユーザが認識することができる形態であれば、例えば、画像の色、濃度、星等のマークであってもよい。これによりチューナー装置1によれば、演奏開始時の音高と演奏終了時の音高とを演奏者に分かり易く認識させることができる。
【0036】
図8は、実施の形態における表示部10に表示させる画像の他の例を示す図である。
表示制御部20は、音高の変化範囲を示す音高範囲画像18に含まれる音高に対応した画像を、標準音高を中心とした所定範囲に含まれる音高の入力が開始した時から終了した時までの期間における音高の演奏時間の長さに基づいて区別して表示させてよい。表示制御部20は、例えば、最も演奏時間の長さが長かった音高の音高画像11に対応した位置に、星形のマーク画像18Bを表示させる。記録部60は、音高検出部40により音高を検出している期間において一定期間ごとに音高情報を記録し、表示制御部20は、音高情報の記録数に応じて音高の演奏時間の長さを算出することができる。音高変化があった時に記録部60で計時を開始し、音高情報と共に、その音高が継続した時間を(付帯)記録し、表示する時は同じ高さの音高情報に付帯している時間情報を合計してもよい。なお、表示制御部20は、演奏時間を区別する画像として星形のマーク画像18Bを表示させたが、これに限定されず、演奏時間に基づいて区別したい音高画像11の色、濃度を他の音高画像11から変化させてよい。これによりチューナー装置1によれば、演奏中で演奏時間の長かった音高を演奏者に分かり易く認識させることができる。
【0037】
図9は、実施の形態において、ロングトーンの演奏時における音高の変化に対する表示部10における表示の変化の他の一例を示す図である。
表示制御部20は、例えば操作信号に従って第1の表示モードと第2の表示モードを切り換えてよい。第1の表示モードは、
図2よび
図3等に示したように、標準音高を中心とした第1の音高範囲内(+50セント~-50セント)で音高を示す画像を表示部10の表示領域に表示させる表示モードである。第2の表示モードは、
図9(a)~(f)に示すように第1の音高範囲から標準音高を中心とした一部を抽出した第2の音高範囲内(+25セント~-25セント)で音高を示す画像を表示領域に表示させる表示モードである。第1の表示モードは通常モードと読み替えてよく、第2の表示モードはフォーカスモードと読み替えてよい。
【0038】
例えば演奏者が管楽器を演奏することにより、
図9に示したように、音高検出部40により時刻t0から時刻t4に亘り音高が検出され、時刻t4から時刻t6において音高が途切れ、時刻t6から演奏が再開されたとする。時刻t1において、表示制御部20は、音高検出部40により検出された音高および標準音高検出部50により検出された標準音高に基づいて、
図9(a)に示すように第2の音高範囲内で音高画像11および標準音高画像14を表示させる。音高画像11は、音高と標準音高との差分に対応した位置に表示される。時刻t2、t3のように演奏された音の標準音高が変化せず音高が変化したとき、表示制御部20は、
図9(b)、(c)に示すように音高画像11および標準音高画像14を表示させる。時刻t4において標準音高と音高が一致したとき、表示制御部20は、
図9(d)に示すように音高画像11および標準音高画像14を表示させる。時刻t4の経過後、演奏が終了すると、表示制御部20は、音高検出部40により音高の検出が終了したと判定し、
図9(e)に示すように標準音高画像14および音高範囲画像18を表示させる。音高範囲画像18は、時刻t0から時刻t4において検出された標準音高情報および音高情報に基づいて表示される画像であって、時刻t0から時刻t4において検出された音高の変化範囲を示す画像である。時刻t0から時刻t4に亘る音高と標準音高との差分に対応し、音高画像11が表示された位置にと対応した位置に音高範囲画像18が表示される。
図9(e)における音高範囲画像18は、
図5(e)に示したよりも多くの音高画像11を含んでいる。その後、演奏が開始されると、表示制御部20は、
図9(f)に示すように標準音高画像14および音高画像11を表示させる。
【0039】
チューナー装置1によれば、第2の表示モードにおいて第1の表示モードにおける音高画像11の範囲を拡大した音高範囲画像18を表示させることができる。この結果、チューナー装置1によれば、第2の表示モードにおいて、リアルタイムで音高画像11の揺れる範囲を、第1の表示モードよりも拡大することができる。さらに、チューナー装置1によれば、第2の表示モードに切り換えることにより、より細やかに標準音高に対する音高の差、および音高範囲画像18を表示させることができる。
【0040】
チューナー装置1は、ユーザの操作を受け付ける操作部30を備え、表示制御部20は、操作部30により音高範囲画像18を表示させる操作を受け付けた場合に、音高範囲画像18を表示部10に表示させてよい。表示制御部20は、演奏前に受け付けた操作に基づいて音高範囲画像18を表示させる表示モードを設定してよく、演奏後に受け付けた操作に基づいて音高範囲画像18を表示させてよい。これによりチューナー装置1は、音高範囲画像18を表示させるか否かを操作によって変更することができ、利便性を高くすることができる。
【0041】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0042】
1…チューナー装置、10…表示部、11…音高画像、11A…画像、11B…画像、12…メトロノーム画像、13…モード画像、13A…モード画像、13B…モード画像、14…標準音高画像、15…周波数画像、16…画像、17…テンポ画像、18…音高範囲画像、18B…マーク画像、20…表示制御部、30…操作部、40…音高検出部、50…標準音高検出部、60…記録部