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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119719
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】注出キャップ
(51)【国際特許分類】
   B65D 47/20 20060101AFI20240827BHJP
   B65D 47/40 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65D47/20 111
B65D47/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123837
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2023026612
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006909
【氏名又は名称】株式会社吉野工業所
(74)【代理人】
【識別番号】100156867
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 欣浩
(72)【発明者】
【氏名】坂本 智
【テーマコード(参考)】
3E084
【Fターム(参考)】
3E084AA04
3E084AA12
3E084AA37
3E084AB01
3E084BA03
3E084CA01
3E084CB02
3E084DA01
3E084DB12
3E084EA04
3E084EB02
3E084FA02
3E084FB01
3E084GA06
3E084GB06
3E084HB02
3E084HD04
3E084KA05
3E084KB01
3E084LA18
3E084LB02
3E084LB07
3E084LC01
3E084LD03
3E084LD16
3E084LF10
(57)【要約】
【課題】内容物を引き戻す効果をより向上させることができる注出キャップを提案する。
【解決手段】注出キャップ1は、キャップ本体4と、連通口2cを有する隔壁2aと、連通空間Kを区画形成する周壁3aと、連通口2cに挿入され内側が連通空間Kに通じる筒状壁3d、筒状壁3dから外側に突出するフランジ3h、及び周壁3aとつながる弾性部3jを有し、フランジ3hが隔壁2aに着座して連通口2cを閉鎖する一方、弾性部3jが弾性変形して注出開口4eに近づく向きに筒状壁3dが前進する際はフランジ3hが隔壁2aから離反して連通口2cを解放する弁体3cと、筒状壁3dの内側に配され、注出開口4eに近づく前進位置と注出開口4eから離れる後退位置との間で移動可能であって、前進位置から後退位置へ移動すると連通空間K内の内容物を筒状壁3dの内側に引き戻す移動弁5と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に装着され該容器の収容空間に収めた内容物を外界に注出させる注出開口を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体の内側に設けられ、前記収容空間からの内容物が通過する連通口を有する隔壁と、
前記連通口を取り囲んで前記注出開口と前記連通口と通じさせる連通空間を区画形成する周壁と、
前記連通口に挿入され内側が前記連通空間に通じる筒状壁、該筒状壁から外側に突出するフランジ、及び前記周壁とつながる弾性部を有し、該フランジが前記隔壁に着座して前記連通口を閉鎖する一方、該弾性部が弾性変形して前記注出開口に近づく向きに該筒状壁が前進する際は該フランジが該隔壁から離反して該連通口を解放する弁体と、
前記筒状壁の内側に配され、前記注出開口に近づく前進位置と該注出開口から離れる後退位置との間で移動可能であって、前記前進位置から前記後退位置へ移動すると前記連通空間内の内容物を該筒状壁の内側に引き戻す移動弁と、を備える注出キャップ。
【請求項2】
前記キャップ本体は、前記移動弁が前記前進位置へ移動した状態において前記筒状壁からの該移動弁の抜け出しを阻止するストッパーを有する請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項3】
前記キャップ本体は、前記注出開口を先端に有する注出筒を有し、
前記移動弁は、前記後退位置へ移動した状態では前記注出筒に非挿入であり、前記前進位置へ移動した状態では該注出筒に挿入される先端部を有する請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項4】
前記筒状壁は、前記後退位置へ移動した前記移動弁の後端部に対向する位置において、該筒状壁における前記注出開口側に位置する部位よりも内径が小さくなる小径部分を有する請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項5】
前記注出開口を覆って前記キャップ本体に開閉可能に保持される蓋体を有し、
前記蓋体は、閉蓋時に前記移動弁に接触して該移動弁を前記後退位置へ移動させた状態で維持する棒状部を備える請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項6】
前記筒状壁は、前記後退位置へ移動した前記移動弁に対して全周に亘って接触するシール部を有する請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項7】
前記キャップ本体は、前記後退位置へ移動した前記移動弁の先端部を取り囲む環状部を有する請求項1に記載の注出キャップ。
【請求項8】
前記棒状部は、該棒状部の軸線から離れる向きに撓み変形可能であって、閉蓋時に前記移動弁に接触して該移動弁を前記後退位置へ移動させた状態で維持する弾性片を有する請求項5に記載の注出キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の口部に装着して使用される注出キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
内容物を収容した容器の口部に装着されて注出開口から内容物を注出させる注出キャップが既知である。
【0003】
このような注出キャップとして、例えば特許文献1には、弾性変形可能な容器の口部に装着される吐出キャップが示されている。
【0004】
特許文献1の注出キャップは、その内部に、筒状壁と筒状壁の内側を移動可能な球状の移動弁を備えている。この移動弁は、容器の収容空間から内容物を吐出させる際は注出開口に向けて移動し、内容物の吐出が終了すると筒状壁に設けた連通口に向けて移動するものであり、このような構成によって注出開口付近の内容物を注出キャップの内側に引き戻すサックバック機能を実現している。サックバック機能を備える注出キャップによれば、注出開口付近に内容物が溜まったままになる状態を防止することができる。
【0005】
ところで注出キャップには、蓋体を閉めた際に注出開口に挿入されるシール用の棒状部を備えているものがあり、このような棒状部によって、注出開口から注出キャップの内部への空気の侵入を防止している。ここで、注出開口付近に内容物が溜まっていると挿入された棒状部で内容物が溢れて周囲を汚してしまうおそれがあるが、サックバック機能を有する場合は溜まった内容物が注出キャップの内側に引き戻されているため、このような不具合を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2016-159942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、このような移動弁を設けた場合でも、例えば内容物の性状や使用状況、使用される周囲の環境等の要因で移動弁が意図した通りに移動せず、内容物が注出キャップの内側へ十分に引き戻されないことがあった。
【0008】
このような点に鑑み、本発明は、内容物を引き戻す効果をより向上させることができる注出キャップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、容器の口部に装着され該容器の収容空間に収めた内容物を外界に注出させる注出開口を有するキャップ本体と、
前記キャップ本体の内側に設けられ、前記収容空間からの内容物が通過する連通口を有する隔壁と、
前記連通口を取り囲んで前記注出開口と前記連通口と通じさせる連通空間を区画形成する周壁と、
前記連通口に挿入され内側が前記連通空間に通じる筒状壁、該筒状壁から外側に突出するフランジ、及び前記周壁とつながる弾性部を有し、該フランジが前記隔壁に着座して前記連通口を閉鎖する一方、該弾性部が弾性変形して前記注出開口に近づく向きに該筒状壁が前進する際は該フランジが該隔壁から離反して該連通口を解放する弁体と、
前記筒状壁の内側に配され、前記注出開口に近づく前進位置と該注出開口から離れる後退位置との間で移動可能であって、前記前進位置から前記後退位置へ移動すると前記連通空間内の内容物を該筒状壁の内側に引き戻す移動弁と、を備える注出キャップである。
【0010】
前記キャップ本体は、前記移動弁が前記前進位置へ移動した状態において前記筒状壁からの該移動弁の抜け出しを阻止するストッパーを有することが好ましい。
【0011】
前記キャップ本体は、前記注出開口を先端に有する注出筒を有し、
前記移動弁は、前記後退位置へ移動した状態では前記注出筒に非挿入であり、前記前進位置へ移動した状態では該注出筒に挿入される先端部を有することが好ましい。
【0012】
前記筒状壁は、前記後退位置へ移動した前記移動弁の後端部に対向する位置において、該筒状壁における前記注出開口側に位置する部位よりも内径が小さくなる小径部分を有することが好ましい。
【0013】
前記注出開口を覆って前記キャップ本体に開閉可能に保持される蓋体を有し、
前記蓋体は、閉蓋時に前記移動弁に接触して該移動弁を前記後退位置へ移動させた状態で維持する棒状部を備えることが好ましい。
【0014】
前記筒状壁は、前記後退位置へ移動した前記移動弁に対して全周に亘って接触するシール部を有することが好ましい。
【0015】
前記キャップ本体は、前記後退位置へ移動した前記移動弁の先端部を取り囲む環状部を有することが好ましい。
【0016】
前記棒状部は、該棒状部の軸線から離れる向きに撓み変形可能であって、閉蓋時に前記移動弁に接触して該移動弁を前記後退位置へ移動させた状態で維持する弾性片を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の注出キャップにおいて、連通口は収容空間と通じていて、注出開口と連通口とは連通空間で通じている。また注出キャップは、連通口に挿入され内側が連通空間に通じる筒状壁、フランジ、及び弾性部を有する弁体と、筒状壁の内側に配される移動弁を備えている。そして内容物を注出させる際に前進位置に移動していた移動弁は、内容物の注出を停止すると前進位置から後退位置へ移動するため、注出開口付近の内容物を、連通空間を介して筒状壁の内側に引き戻すことができる。また収容空間の内容物が、解放された連通口を通過して注出開口から注出される状態において、弁体の弾性部は弾性変形していて、筒状壁は注出開口に近づく向きに前進している。そして内容物の注出を停止させると、弾性部は復元し、筒状壁は注出開口から離れる向きに後退する。すなわち本発明の注出キャップによれば、筒状壁が後退する際に、連通空間の内容物を連通口から収容空間に引き戻すことも可能であるため、内容物を引き戻す効果をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る注出キャップの第一実施形態を示した側面視での断面図である。
図2図1に示した注出キャップにおける内容物を注出させる直前の断面図である。
図3図2に示した状態の後、外層体を押圧して移動弁が前進位置へ移動した状態での断面図である。
図4図3に示した状態の後、筒状壁が前進して内容物が注出される状態での断面図である。
図5図4に示した状態の後、外層体への押圧を止めて筒状壁が後退して連通口が閉鎖された状態での断面図である。
図6図5に示した状態の後、移動弁が後退位置へ移動した状態での断面図である。
図7】本発明に係る注出キャップの第二実施形態を示した側面視での断面図である。
図8A図7の部分拡大断面図である。
図8B図8AのA-Aに沿う断面図である(但し棒状部における弾性片のみ示す)。
図8C図8Aに示した環状部とストッパーに関する矢印Bに沿う矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら、本発明に係る注出キャップの一実施形態について説明する。なお本明細書等における上下方向とは、図示した軸線O(後述する筒状壁3dの軸線)に沿う方向である。また径方向とは、軸線Oに対して垂直な面内で軸線Oと直交する方向であり、周方向とは、この面内で軸線Oを中心として周回する方向である。
【0020】
図1は、本発明に係る注出キャップの第一実施形態を示している。本実施形態の注出キャップ1は、中栓2、弁部材3、キャップ本体4、移動弁5、蓋体6を備えていて、容器10に装着される。注出キャップ1を構成する各部材、及び容器10は、基本的に軸線Oを中心とする形状で形作られている。
【0021】
まず容器10について説明する。本実施形態の容器10は、所謂、二重容器(デラミ容器、積層剥離容器と称されることもある)であって、内層体11と外層体12で構成される。
【0022】
内層体11は、薄手の合成樹脂によって形成されていて減容変形可能であって、その内側には内容物を収容可能な収容空間Sが設けられている。
【0023】
外層体12は、軸線Oに沿って延在する円筒状の口部12aを備えている。口部12aの外周面には、雄ねじ部12bが設けられている。また口部12aは、口部12aを径方向に貫通する通気口12cを備えている。更に口部12aは、通気口12cが開口する部位において、上下方向に延在して雄ねじ部12bを分断する切欠き12dを備えている。図示は省略するが、口部12aの下方には中空状の胴部と、胴部の下端を閉鎖する底部が設けられていて、外層体12はボトル状の形態をなしている。また本実施形態の外層体12は合成樹脂製であって、胴部は可撓性を有している。
【0024】
そして内層体11と外層体12との相互間には、通気口12cに通じる内部空間Nが形成されている。
【0025】
中栓2は、口部12aの上方に位置し、口部12aを覆って収容空間Sを閉鎖する隔壁2aを備えている。隔壁2aは、上方を開口させた環状凹部2bを備えている。また隔壁2aは、環状凹部2bの径方向内側では上方に向けて径方向内側に傾くように延在していて、その中央部には、平面視で円形になる貫通孔(連通口2c)が設けられている。
【0026】
また中栓2は、隔壁2aの外縁から上方に向けて延在する外縁壁2dを備えている。隔壁2aと外縁壁2dとの連結部には、これらを貫通する空気用連通口2eが設けられている。そして隔壁2aの下面には、内層体11と液密に接触する環状のシール壁2fが設けられている。
【0027】
弁部材3は、弾性を有する素材(例えば軟質ポリエチレン(低密度ポリエチレン)やエラストマー等)で形成されている。弁部材3は、軸線Oを中心とする円筒状であって下端部が環状凹部2bによって支持される周壁3aを備えている。また周壁3aの径方向外側には、軸線Oを中心とする薄肉のドーナツ板状であって、上下方向に弾性変形可能な空気弁3bが設けられている。
【0028】
また弁部材3は、周壁3aの内側に弁体3cを備えている。弁体3cは、連通口2cに挿入される円筒状の筒状壁3dを備えている。筒状壁3dは、上側に位置する部位の内径に対して下側に位置する部位の内径が小さくなっている。以下、筒状壁3dにおける上側に位置する部位を大径部分3eと称し、筒状壁3dにおける下側に位置する部位を小径部分3fと称する。大径部分3eと小径部分3fがつながる部位には、断面視において段状になるシール部3gが設けられている。
【0029】
また弁体3cは、筒状壁3dの上端から径方向外側に向けて延在する環状のフランジ3hを備えている。そしてフランジ3hと周壁3aの間には、平面視で円弧状に延在していて一端部がフランジ3hにつながっていて他端部が周壁3aにつながるアーム状の弾性部3jが設けられている。弾性部3jは、上下方向に弾性変形可能であって、筒状壁3dは周壁3aに対して上下方向に移動することができる。なお弁部材3は、図1に示すように通常時はフランジ3hの下面が隔壁2aの上面に接触(着座)して連通口2cを閉鎖しているが、収容空間Sの圧力が高まると、周壁3aは前進(上昇)してフランジ3hが隔壁2aから離反し、連通口2cは解放される。
【0030】
キャップ本体4は、弁部材3の上方に位置する天壁4aと、天壁4aの外縁に一体に連結するとともに口部12aを取り囲む外周壁4bとを備えている。天壁4aの中央部(筒状壁3dの直上)には、天壁4aを貫通する貫通孔4cが設けられていて、天壁4aの上面には、貫通孔4cを取り囲む注出筒4dが設けられている。ここで、注出筒4dの上端に設けられた開口を注出開口4eと称する。
【0031】
そして天壁4aの下面には、下方を開口させた形状をなし周壁3aの上端部が支持される環状凹部4fが設けられている。ここで、周壁3aの内側において隔壁2aと天壁4aの間に区画形成される空間を、連通空間Kと称する。連通空間Kは、連通口2cと注出開口4eに通じている。また連通空間Kは、上述した筒状壁3dの内側にも通じている。天壁4aの下面において環状凹部4fの内側には、リブ状のストッパー4mが設けられている。本実施形態のストッパー4mは、周方向に間隔をあけて合計3個設けられている。なお、ストッパー4mの数は適宜選択可能である。
【0032】
また天壁4aの下面には、空気弁3bの外縁部が接触する段部4gが設けられている。更に天壁4aは、段部4gの径方向内側において、その表裏を貫通する外気導入口4hを備えている。また天壁4aの上面における外縁部には、径方向外側に向けて凸状になるように形作られ蓋体6を保持する保持凸部4jが設けられている。
【0033】
そして外周壁4bは、その内周面に雄ねじ部12bに適合する雌ねじ部4kを備えている。なお外周壁4bの下端部は、キャップ本体4を口部12aに装着した状態において、口部12aの外周面に気密に接触している。
【0034】
またキャップ本体4を口部12aに装着した状態において、上述した外気導入口4hから通気口12cに至る間には、空気用連通口2eから切欠き12dを経由する、或いは、空気用連通口2eから雄ねじ部12bと雌ねじ部4kとの間に形成される螺旋状の隙間を経由する通路(空気通路T)が設けられている。なお、切欠き12dを設けることで空気通路Tを通る空気が流れやすくなるが、これを省略してもよい。
【0035】
移動弁5は、本実施形態では全体的に棒状になる形状で形作られている。移動弁5は、円柱状になる後端部5aと、上方に向かって縮径するように延在して上端面が傾斜した形状になる先端部5bを備えている。後端部5aと先端部5bがつながる部位には、後端部5aの外径よりも大径になる膨出部5cが設けられている。
【0036】
移動弁5は、筒状壁3dの内側に配され、注出開口4eに近づく前進位置(図3参照)と、注出開口4eから離れる後退位置(図1参照)との間で移動可能である。移動弁5が後退位置に移動した状態において、後端部5aは小径部分3fに対向する位置にあり、膨出部5cはシール部3gに対して全周に亘って接触している。また移動弁5が後退位置に移動した状態において、後端部5aの下端は小径部分3fの下端開口から収容空間Sに向けて突出している。
【0037】
蓋体6は、天壁4aの上方に位置する頂壁6aと、頂壁6aに一体に連結する蓋体外周壁6bとを備えている。
【0038】
頂壁6aの中央部における下面には、棒状部6cが設けられている。本実施形態の棒状部6cは、外周面が円形状であって頂壁6aに連結する大径棒状部6dと、外周面が大径棒状部6dよりも小径の円形状であって下端面が傾斜した小径棒状部6eを備えている。棒状部6cは、図1に示すように閉蓋時において、注出開口4eから注出筒4dの内側を通過して更に貫通孔4cに挿入される。なお貫通孔4cに挿入された大径棒状部6dは、貫通孔4cの内面に密に接触する。また閉蓋時において、小径棒状部6eの下端面は、移動弁5における先端部5bの上端面に接触し、膨出部5cはシール部3gに対して押し付けられた状態にある。
【0039】
蓋体外周壁6bの内周面には、保持凸部4jに係合する保持凹部6fが設けられている。また蓋体外周壁6bの外周面には、キャップ本体4の外周壁4bに一体に連結する屈曲可能なヒンジ部6gが設けられている。
【0040】
このような構成になる注出キャップ1から内容物を注出するにあたっては、図1に示した閉蓋状態の蓋体6を図2に示したように開蓋状態へ変位させ、また容器10を傾倒状態に変位させる。
【0041】
そして外層体12の胴部を押圧すると、内部空間Nが加圧されて収容空間Sの圧力が高まり、その圧力が移動弁5の後端部5aに加わるため、移動弁5は図3に示すように注出開口4eに近づくように前進する。本実施形態の移動弁5は、図2に示すように先端部5bが注出筒4dに挿入されていない位置から、図3に示すように先端部5bが注出筒4dに挿入される位置まで大きく前進する。移動弁5の前方にはストッパー4mが設けられていて、前進した移動弁5はストッパー4mに接触した位置(前進位置)で停止する。なお、移動弁5の膨出部5cは、前進位置において筒状壁3dの内側にあって、筒状壁3dから抜け出していないため、移動弁5が後退する際に膨出部5cが筒状壁3dの上端に引っ掛かる等の不具合が生じることはない。
【0042】
また内部空間Nが加圧されると、その圧力は筒状壁3dやフランジ3hにも加わるため、筒状壁3dは、弾性部3jの弾性力に抗して図4に示すように注出開口4eに近づくように前進する。なお、筒状壁3dの前方にはストッパー4mが設けられていて、前進した筒状壁3dはストッパー4mに接触するため、筒状壁3dが過剰に移動することはない。このように筒状壁3dが前進した状態においては、フランジ3hが隔壁2aから離反して連通口2cは解放された状態にある。従って収容空間Sの内容物は、連通口2cを通過して連通空間Kに導入され、また弾性部3jの周囲、隣り合うストッパー4mの間、及び注出筒4dの内側を通って注出開口4eから外界へ注出される。なお、筒状壁3dと移動弁5との間には隙間があいているが、膨出部5cが設けられている部位でこの隙間は狭くなっているため、収容空間Sの内容物は、基本的には筒状壁3dと移動弁5との間は通過せず、連通口2cを通過して外界へ注出される。また、内容物が注出される際に内部空間Nは加圧されるが、通気口12cと外気導入口4hとをつなぐ空気通路Tは、空気弁3bが段部4gに接触して閉鎖されているため、内部空間Nの空気が外界へ漏れ出すことはない。
【0043】
その後、外層体12への押圧を解除して胴部が復元し始めると、内部空間Nの容積が増えることから内部空間Nは減圧状態になる。すなわち外界と内部空間Nとの間に圧力差が生じるため、外気は、段部4gから離反するように空気弁3bを弾性変形させつつ、外気導入口4hからキャップ本体4の内側に導入され、更に空気通路Tを通って内部空間Nへ導入される。これにより内層体11を減容変形させたまま、外層体12を復元させることができる。
【0044】
また外層体12への押圧を解除して加圧されていた収容空間Sの圧力が下がると、弾性部3jの弾性力に抗して連通空間K内で前進していた筒状壁3dが元の位置まで後退するため、連通空間K内の内容物は筒状壁3dとともに移動して、その一部は連通口2cを通過して収容空間Sへ引き戻される。これにより、注出筒4dの内側に溜まった内容物を、連通空間Kに引き戻すことができる。また筒状壁3dが後退すると、図5に示すようにフランジ3hが隔壁2aに接触するため、連通口2cを再び閉鎖することができる。
【0045】
また収容空間Sの圧力が下がることにより、図6に示すように移動弁5が筒状壁3dに対して後退する。これにより筒状壁3dの上方内側には、移動弁5が移動した分のスペースが形成されることになるため、このスペース分に相当する分の内容物を注出筒4dの内側の空間から連通空間Kを介して筒状壁3d内へ引き戻すことができる。
【0046】
このように本実施形態では、注出筒4dの内側に溜まった内容物をキャップ本体4の内側に引き戻す効果が筒状壁3dと移動弁5の両方で得られるため、従来に比してこの効果を向上させることができる。
【0047】
なお、収容空間Sの圧力が下がった際に移動弁5が図6に示す後退位置まで移動しないことがあっても、図1に示すように蓋体6を閉蓋状態に変位させると、蓋体6における小径棒状部6eの下端面が移動弁5における先端部5bの上端面に接触して移動弁5を後退位置まで移動させるため、注出筒4dの内側に溜まった内容物をキャップ本体4の内側に引き戻す効果が確実に発揮される。また蓋体6を閉蓋状態に変位させた際には、先端部5bに小径棒状部6eが接触して膨出部5cはシール部3gに対して押し付けられるため、収容空間Sをより確実に密閉することができる。なお、移動弁5が後退位置へ移動した際、後端部5aは小径部分3fに対向する位置にあって両者の隙間は狭くなっていることから、筒状壁3dに対する移動弁5の傾きを抑えることができる。従って、蓋体6を閉蓋状態に変位させた際、小径棒状部6eの下端面を先端部5bの上端面に安定的に接触させることができる。
【0048】
次に図7図8A図8Cを参照しながら本発明に係る注出キャップの第二実施形態である注出キャップ1Aについて説明する。なお、上述した第一実施形態の注出キャップ1と機能が共通する部分については、図面に同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0049】
本実施形態の注出キャップ1Aは、上述したキャップ本体4と蓋体6に替えてキャップ本体4Aと蓋体6Aを備えるものである。
【0050】
キャップ本体4Aは、図7図8Aに示すように、ストッパー4mにつながる環状部4nを備えている。図8Cに示すように本実施形態のストッパー4mは、周方向に間隔をあけて合計3個設けられていて、環状部4nはこれらストッパー4mの径方向内側下端部につながっている。本実施形態の環状部4nは円環状であるが、環状部4nの形状はこれに限られず、平面視で多角形状になる環状でもよい。環状部4nは、図7図8Aに示すように移動弁5が後退位置へ移動した状態において、移動弁5の先端部5bが挿入されるところに設けられている。
【0051】
蓋体6Aは、上述した棒状部6cに関し、大径棒状部6dの先端部に弾性片6hを設けたものである。弾性片6hは厚みが薄くなっていて、軸線Oから離れる向きに撓み変形可能である。本実施形態の弾性片6hは、図8Bに示すように周方向に間隔をあけて合計3個設けられている。また弾性片6hの下端面は、図8Aに示すように上方に向かうにつれて縮径するように傾斜している。弾性片6hの下端面は、図7図8Aに示すように蓋体6Aを閉蓋させた際に、移動弁5における先端部5bの上端面に接触するように構成されている。
【0052】
このような形態になる注出キャップ1Aは、移動弁5が後退位置へ移動した状態において先端部5bが環状部4nに挿入されているため、移動弁5の傾きを抑制することができる。従って移動弁5を軸線Oに沿って安定的に移動させることができる。
【0053】
そして蓋体6Aを閉蓋させて弾性片6hが移動弁5の先端部5bに接触する際、例えば製造時や組み立て時のばらつきによっては意図した以上に弾性片6hが先端部5bに近づくおそれがある。ここで弾性片6hは、軸線Oから離れる向きに撓み変形可能であるため、このような場合でも弾性片6hが撓んで移動弁5が下方に過剰に押し込まれることがない。
【0054】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は係る特定の実施形態に限定されるものではなく、上記の説明で特に限定しない限り、特許請求の範囲に記載された本発明の趣旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。例えば上述した実施形態の構成は、適宜追加、削除が可能であり、また一の実施形態の構成を他の実施形態に設けることも可能である。また、上記の実施形態における効果は、本発明から生じる効果を例示したに過ぎず、本発明による効果が上記の効果に限定されることを意味するものではない。
【0055】
例えば本実施形態の移動弁5は棒状であるが、他の形状(例えば球状)でもよい。また筒状壁3dは、円筒状になるものに限られず、角筒状でもよい。
【0056】
また本発明に係る注出キャップは、内層体を持たない容器に装着することも可能である。なお、二重容器は内層体が基本的に復元せず、それ故、注出筒に内容物が溜まったままになりやすいことから、本発明に係る注出キャップを装着する容器としては、二重容器が特に好適である。
【符号の説明】
【0057】
1、1A:注出キャップ
2:中栓
2a:隔壁
2b:環状凹部
2c:連通口
2d:外縁壁
2e:空気用連通口
2f:シール壁
3:弁部材
3a:周壁
3b:空気弁
3c:弁体
3d:筒状壁
3e:大径部分
3f:小径部分
3g:シール部
3h:フランジ
3j:弾性部
4、4A:キャップ本体
4a:天壁
4b:外周壁
4c:貫通孔
4d:注出筒
4e:注出開口
4f:環状凹部
4g:段部
4h:外気導入口
4j:保持凸部
4k:雌ねじ部
4m:ストッパー
4n:環状部
5:移動弁
5a:後端部
5b:先端部
5c:膨出部
6、6A:蓋体
6a:頂壁
6b:蓋体外周壁
6c:棒状部
6d:大径棒状部
6e:小径棒状部
6f:保持凹部
6g:ヒンジ部
6h:弾性片
10:容器
11:内層体
12:外層体
12a:口部
12b:雄ねじ部
12c:通気口
12d:切欠き
K:連通空間
N:内部空間
O:軸線
S:収容空間
T:空気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C