(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119721
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】手押し車
(51)【国際特許分類】
B62B 3/02 20060101AFI20240827BHJP
B62B 5/06 20060101ALI20240827BHJP
B62B 5/00 20060101ALI20240827BHJP
B60B 33/06 20060101ALI20240827BHJP
A47C 13/00 20060101ALI20240827BHJP
A61G 5/08 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B62B3/02 B
B62B5/06 C
B62B5/00 J
B60B33/06 Z
A47C13/00 Z
A61G5/08 703
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023129577
(22)【出願日】2023-08-08
(31)【優先権主張番号】P 2023026342
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】306020818
【氏名又は名称】トヨタテクニカルディベロップメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114306
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 史郎
(74)【代理人】
【識別番号】100148655
【弁理士】
【氏名又は名称】諏訪 淳一
(72)【発明者】
【氏名】水野 由一
【テーマコード(参考)】
3B095
3D050
【Fターム(参考)】
3B095EA00
3B095EB02
3D050AA03
3D050BB04
3D050CC05
3D050DD03
3D050EE08
3D050EE15
3D050FF00
3D050GG04
3D050KK15
(57)【要約】
【課題】高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることを課題とする。
【解決手段】本体と一体化した前脚部30と、本体から後方に引き出された後脚部40によって本体を支えることにより、使用者がハンドル部10を持って負担の無い姿勢で歩行補助カート1の前押しを行うことができる。また、後脚部40は、左右のキャスター60の間の幅が本体の幅より広くなっているため、使用者の足とキャスター60が干渉しにくくなっている。また、後脚部40を本体に折り畳むことにより、本体をコンパクトにして省スペースな後ろ引きを行うことができる。なお、この後脚部40を本体に折り畳んだ状態で、本体を垂直に立てて横押しすることもできる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚とを有する四輪の手押し車であって、
前記一対の後脚を本体に折り畳む折り畳み形態から前記一対の後脚を前記本体から展開する展開形態に移行可能であり、
前記一対の後脚の展開形態において、進行方向に向かって前記本体を前方方向に押す前押し、前記進行方向に向かって前記本体を横向きの状態で押す横押し、及び、前記進行方向に向かって前記本体を引く後ろ引きが可能である
手押し車。
【請求項2】
前記一対の後脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度が垂直である請求項1に記載の手押し車。
【請求項3】
前記一対の後脚は、
前記折り畳み形態から前記展開形態に展開する場合に、前記一対の後脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度が垂直となる状態を維持しつつ、前記一対の後脚に設けられたキャスター間の間隔を前記本体の間隔より広げるようにスライド可能である請求項2に記載の手押し車。
【請求項4】
前記一対の後脚は、
前記本体に設けられた所定のパイプの内側に収納可能である請求項1に記載の手押し車。
【請求項5】
前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度を任意の角度に調整可能である請求項1に記載の手押し車。
【請求項6】
前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度の角度調整、又は、前記一対の後脚の前記パイプの内側への収納を、所定のワイヤー又はロッドでのリンクにより操作可能とする請求項4又は5に記載の手押し車。
【請求項7】
所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚とを有する四輪の手押し車であって、
前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度を任意の角度に調整可能である
手押し車。
【請求項8】
前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度の角度調整を、所定のワイヤー又はロッドでのリンクにより操作可能とする請求項7に記載の手押し車。
【請求項9】
所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚と、ハンドルグリップとを有する四輪の手押し車であって、
前記ハンドルグリップを基部として、進行方向に向かって傾斜したひじ置き部を有する
手押し車。
【請求項10】
所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚とを有する四輪の手押し車であって、
前記一対の後脚を本体に折り畳む折り畳み形態から前記一対の後脚を前記本体から展開する展開形態に移行可能であり、
前記折り畳み形態において、本体に取り付けられる座面に設けられた中段ハンドルが引き出されたならば、座面に接続されたハンドルステーにより前記一対の後脚が引き出され、前記中段ハンドルを解放して前記一対の後脚が接地されたならば、前記展開形態となる
手押し車。
【請求項11】
前記展開状態にて、前記座面が水平になる位置まで前記中段ハンドルが後方に引き出されたならば、前記座面が着座可能に固定される請求項10に記載の手押し車。
【請求項12】
前記展開形態にて、前記座面に設けられた上段ハンドルが持ち上げられたならば、前記一対の後脚が自重により所定の折り畳み位置に収納され、前記折り畳み形態となる請求項10に記載の手押し車。
【請求項13】
前記折り畳み形態にて、前記座面が所定の位置に押し込まれたならば、前記座面により前記一対の後脚が本体に押圧された状態で固定される請求項10~12のいずれか一つに記載の手押し車。
【請求項14】
前記展開形態にて、前記座面に設けられた下段ハンドルを引き出して進行方向に倒すことにより荷台となる請求項10~12のいずれか一つに記載の手押し車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることができる手押し車に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の高齢化社会の進展に伴い、年齢とともに筋力や心身の活力が低下し、介護が必要になりやすい健康と要介護の間の虚弱な状態(以下、「フレイル」と言う)が社会問題になりつつある。このため、フレイル対策の技術が注目されている。
【0003】
例えば特許文献1には、ハンドルは下端部に設けた軸を基準として前後方向に揺動することができ、しかも付勢されたバネ力にてハンドルは常時後方側に傾斜して車輪に設けたブレーキが作動し、持ち手を握って前方へ押す時にはハンドルは前方へ傾斜してブレーキが解除し、このように車輪に設けた制動機構がハンドルの前後方向揺動に連動するよう構成したシルバーカーの制動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のものは、歩行者が緊急停止を行う場合に有効な技術であるものの、例えば高齢者がカートを前押し、横押し、後ろ引きする際の歩きやすさを向上させるものではない。その結果、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来技術の課題を解決するためになされたものであって、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることができる手押し車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明は、所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚とを有する四輪の手押し車であって、前記一対の後脚を本体に折り畳む折り畳み形態から前記一対の後脚を前記本体から展開する展開形態に移行可能であり、前記一対の後脚の展開形態において、進行方向に向かって前記本体を前方方向に押す前押し、前記進行方向に向かって前記本体を横向きの状態で押す横押し、及び、前記進行方向に向かって前記本体を引く後ろ引きが可能である。
【0008】
また、本発明は、上記発明において、前記一対の後脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度が垂直である。
【0009】
また、本発明は、上記発明において、前記一対の後脚は、前記折り畳み形態から前記展開形態に展開する場合に、前記一対の後脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度が垂直となる状態を維持しつつ、前記一対の後脚に設けられたキャスター間の間隔を前記本体の間隔より広げるようにスライド可能である。
【0010】
また、本発明は、上記発明において、前記一対の後脚は、前記本体に設けられた所定のパイプの内側に収納可能である。
【0011】
また、本発明は、上記発明において、前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度を任意の角度に調整可能である。
【0012】
また、本発明は、上記発明において、前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度の角度調整、又は、前記一対の後脚の前記パイプの内側への収納を、所定のワイヤー又はロッドでのリンクにより操作可能とする。
【0013】
また、本発明は、所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚とを有する四輪の手押し車であって、前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度を任意の角度に調整可能である。
【0014】
また、本発明は、上記発明において、前記一対の前脚に設けられたキャスターのステアリング軸角度の角度調整を、所定のワイヤー又はロッドでのリンクにより操作可能とする。
【0015】
また、本発明は、所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚と、ハンドルグリップとを有する四輪の手押し車であって、前記ハンドルグリップを基部として、進行方向に向かって傾斜したひじ置き部を有する。
【0016】
また、本発明は、所定のキャスターが設けられた一対の前脚と、前記キャスターが設けられた一対の後脚とを有する四輪の手押し車であって、前記一対の後脚を本体に折り畳む折り畳み形態から前記一対の後脚を前記本体から展開する展開形態に移行可能であり、前記折り畳み形態において、本体に取り付けられる座面に設けられた中段ハンドルが引き出されたならば、座面に接続されたハンドルステーにより前記一対の後脚が引き出され、前記中段ハンドルを解放して前記一対の後脚が接地されたならば、前記展開形態となる。
【0017】
また、本発明は、上記発明において、前記展開状態にて、前記座面が着座可能になる位置まで前記中段ハンドルが後方に引き出されたならば、前記座面が着座可能に固定される。
【0018】
また、本発明は、上記発明において、前記展開形態にて、前記座面に設けられた上段ハンドルが持ち上げられたならば、前記一対の後脚が自重により所定の折り畳み位置に収納され、前記折り畳み形態となる。
【0019】
また、本発明は、上記発明において、前記折り畳み形態にて、前記座面が所定の位置に押し込まれたならば、前記座面により前記一対の後脚が本体に押圧された状態で固定される。
【0020】
また、本発明は、上記発明において、前記展開形態にて、前記座面に設けられた下段ハンドルを引き出して進行方向に倒すことにより荷台となる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る歩行補助カートの概要の説明図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る歩行補助カートの使用方法の説明図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る歩行補助カートの直進安定性を向上する方法の説明図である。
【
図4】
図4は、実施形態1に係る後脚部のキャスターの間隔を拡張する方法の説明図である。
【
図5】
図5は、実施形態1に係る後脚部のキャスターの間隔を拡張する方法の一例を示す図(その1)である。
【
図6】
図6は、実施形態1に係る後脚部のキャスターの間隔を拡張する方法の一例を示す図(その2)である。
【
図7】
図7は、実施形態1に係る後脚部の折り畳み方法の説明図である。
【
図8】
図8は、実施形態1に係る後脚部の折り畳み方法の一例を示す図(その1)である。
【
図9】
図9は、実施形態1に係る後脚部の折り畳み方法の一例を示す図(その2)である。
【
図10】
図10は、実施形態1に係る前脚部のステアリング軸角度の調整方法の説明図(その1)である。
【
図11】
図11は、実施形態1に係る前脚部のステアリング軸角度の調整方法の説明図(その2)である。
【
図12】
図12は、実施形態1に係る前脚部のステアリング軸角度の調整方法の一例を示す図(その1)である。
【
図13】
図13は、実施形態1に係る前脚部のステアリング軸角度の調整方法の一例を示す図(その2)である。
【
図14】
図14は、実施形態1に係る手元操作により前脚部のステアリング軸角度の調整を行う方法の説明図である。
【
図15】
図15は、実施形態1に係る手元操作により後脚部を折り畳む方法の説明図である。
【
図16】
図16は、実施形態1に係るキャスターの構成の一例を示す図である。
【
図17】
図17は、実施形態1に係るひじ置きにより歩行支持力を向上する方法の説明図である。
【
図18】
図18は、実施形態1に係るひじ置きパイプの固定方法の一例を示す図(その1)である。
【
図19】
図19は、実施形態1に係るひじ置きパイプの固定方法の一例を示す図(その2)である。
【
図20】
図20は、実施形態2に係る歩行補助カートの概要の説明図(その1)である。
【
図21】
図21は、実施形態2に係る歩行補助カートの概要の説明図(その2)である。
【
図22】
図22は、実施形態2に係る後脚部の引き出し方法の説明図である。
【
図23】
図23は、実施形態2に係る後脚部の折り畳み方法の説明図(その1)である。
【
図24】
図24は、実施形態2に係る後脚部の折り畳み方法の説明図(その2)である。
【
図25】
図25は、実施形態2に係る後脚部の引き出し時における前脚キャスター部の固定方法の説明図である。
【
図26】
図26は、実施形態2に係る後脚部の引き出し時における後脚キャスター部の固定方法の説明図である。
【
図27】
図27は、実施形態2に係る後脚部の引き出し時における座面の設置方法の説明図である。
【
図28】
図28は、実施形態2に係る後脚部の引き出し時における荷台の設置方法の説明図である。
【
図29】
図29は、実施形態2に係る後脚部の折り畳み時における本体サイズの最小化方法の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[実施形態1]
以下に、本実施形態1に係る手押し車の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、本実施形態1では、本発明を歩行補助カートに適用した場合について説明することとする。
【0024】
<実施形態1に係る歩行補助カート1の概要>
まず、本実施形態1に係る歩行補助カート1の概要について説明する。
図1は、本実施形態1に係る歩行補助カート1の概要を説明するための説明図である。
【0025】
図1(a)に示すように、本実施形態1に係る歩行補助カート1は、本体と一体化した前脚部30と、本体から後方に引き出された後脚部40によって本体を支えることにより、使用者がハンドル部10を持って負担の無い姿勢で歩行補助カート1の前押しを行うことができる。
【0026】
また、歩行補助カート1を背面視した
図1(b)に示すように、後脚部40は、左右のキャスター60の間の幅が本体の幅より広くなっているため、使用者の足とキャスター60が干渉しにくくなっている。
【0027】
また、歩行補助カート1を側面視した
図1(c)に示すように、後脚部40を本体に折り畳むことにより、本体をコンパクトにして省スペースな後ろ引きを行うことができる。なお、この後脚部40を本体に折り畳んだ状態で、本体を垂直に立てて横押しすることもできる。
【0028】
このように、本実施形態1に係る歩行補助カート1は、後脚部40を本体から引き出し、又は、折り畳めるよう構成したので、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることができる。
【0029】
<実施形態1に係る歩行補助カート1の使用方法>
次に、歩行補助カート1の使用方法について説明する。
図2は、本実施形態1に係る歩行補助カート1の使用方法の説明図である。歩行補助カート1には、前押し、後引き及び横押しの使用方法がある。
【0030】
前押しの場合は、
図2(a)に示すように、前脚部30と、本体から後方に引き出された後脚部40が本体を支え、使用者がハンドル部10を持って、本体の前面方向に押すことにより使用する。前押しにおいては、使用者は本体の重さを支えることなく、負担の無い姿勢で歩くことができる。
【0031】
後引きの場合は、
図2(b)に示すように、後脚部40を本体に折り畳むことにより本体をコンパクトにして省スペースな状態とし、使用者がハンドル部10を持って、本体の背面方向に引くことにより使用する。
【0032】
横押しの場合は、
図2(c)に示すように、後脚部40を本体に折り畳むことにより本体をコンパクトにして省スペースな状態とし、使用者がハンドル部10を持って、本体の側面方向に押すことにより使用する。
【0033】
このように、歩行補助カート1は、状況に合わせて使用方法を切り替えることができる。例えば、歩行能力の低い使用者、疲労時、長距離の移動時等においては前押しで使用し、店舗内や短距離の移動、バスや電車内においては、後引き又は横押しで使用する。なお、いずれの使用方法においても、荷物入れ部50は大きく傾かないため、荷物を入れたまま使用することができる。
【0034】
<実施形態1に係る歩行補助カート1の直進安定性を向上する方法>
次に、歩行補助カート1の直進安定性を向上する方法について説明する。
図3は、本実施形態1に係る歩行補助カート1の直進安定性を向上する方法の説明図である。ここでは、後脚部40を本体に折り畳んだ場合及び引き出した場合の直進安定性の向上方法について説明する。
【0035】
図3(a)に示すように、後脚部40を本体に折り畳んだ場合は、本体が垂直に立っており、本体の進行方向に合わせて、前脚キャスター部31及び後脚キャスター部41が旋回してその向きを変える。具体的には、
図3(a)の破線内部分を拡大した
図3(b)に示すように、後脚キャスター部41のステアリング軸が垂直であるため、キャスター60は自由に旋回することができる。なお、
図3(a)の前脚キャスター部31も同様に、ステアリング軸が垂直であるため、進行方向に合わせて自由に旋回することができる。
【0036】
図3(c)に示すように、後脚部40を本体から引き出した場合は、本体の進行方向以外へのキャスター60の旋回性を制限する。具体的には、
図3(c)の破線内部分を拡大した
図3(d)に示すように、後脚キャスター部41のステアリング軸が垂直ではなく、一定の角度を保持しているため、進行方向以外へのキャスター60の旋回性が制限される。
【0037】
このように、歩行補助カート1は、後脚部40を本体に折り畳んだ場合はステアリング軸を垂直にし、後脚部40を本体から引き出した場合はステアリング軸が垂直ではなく、一定の角度を保持するため、それぞれにおいて直進安定性を向上することができる。
【0038】
<実施形態1に係る後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する方法>
次に、後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する方法について説明する。
図4は、本実施形態1に係る後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する方法の説明図である。
【0039】
図4(a)に示すように、後脚部40を本体から引き出した場合、後脚部40のキャスター60がハンドル部10よりも後方に位置するため、ハンドル部10に荷重をかけても歩行補助カート1は後傾しない。また、
図4(b)に示すように、後脚部40のキャスター60の間隔を本体の幅と同じとした場合に、この状況を上面視すると、後脚部40のキャスター60の間隔はd1である。
【0040】
一方、歩行補助カート1では、
図4(c)に示すように、後脚部40を本体から引き出す際に後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する。この場合の後脚部40のキャスター60の間隔はd2(d1<d2)である。
【0041】
このように、歩行補助カート1は、後脚部40のキャスター60の間隔を拡張することにより、使用者の足元スペースの横幅が広くなり、使用者の足とキャスター60とを干渉しにくくすることができる。
【0042】
<実施形態1に係る後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する方法の一例>
次に、後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する方法の一例について説明する。
図5及び
図6は、本実施形態1に係る後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する方法の一例を示す図である。ここでは、後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する場合、直進安定性を向上するために、後脚キャスター部41のステアリング軸が垂直であることを前提とする。後脚部40のキャスター60の間隔を拡張する方法として、後脚部40をスライドして引き出す方法及び八の字に引き出す方法を説明する。
【0043】
図5(a)に示すように、後脚部40をスライドして引き出す方法は、後脚部40を本体に折り畳んだ状態では、後脚キャスター部41のステアリング軸が垂直である。この場合の後脚部40のキャスター60の間隔はd1である。
【0044】
図5(b)に示すように、後脚部40を本体から引き出した状態でも、後脚キャスター部41のステアリング軸が垂直である。この場合の後脚部40のキャスター60の間隔はd2(d1<d2)である。
【0045】
図6(a)に示すように、後脚部40を八の字に引き出す方法は、後脚部40を本体に折り畳んだ状態では、後脚キャスター部41のステアリング軸が垂直ではない。この場合の後脚部40のキャスター60の間隔はd1である。
【0046】
図6(b)に示すように、後脚部40を本体から引き出した状態では、後脚キャスター部41のステアリング軸が垂直である。この場合の後脚部40のキャスター60の間隔はd2(d1<d2)である。
【0047】
このように、歩行補助カート1は、後脚部40をスライドして引き出す方法及び八の字に引き出す方法により、後脚部40のキャスター60の間隔を拡張することができる。
【0048】
<実施形態1に係る後脚部40の折り畳み方法>
次に、後脚部40の折り畳み方法について説明する。
図7は、本実施形態1に係る後脚部40の折り畳み方法の説明図である。
【0049】
図7(a)は、後脚部40を本体に折り畳んだ状況を側面視した場合を示している。破線部分で示すように、後脚部40は背面パイプ20の内側に収納されるため、本体の背面厚さを最小にすることができる。これにより、本体サイズの所定値内で、荷物入れ部50の容量を最大化することができる。
【0050】
また、
図7(b)は、後脚部40を本体に折り畳んだ状況を背面視した場合を示している。後脚部40が背面パイプ20の内側に収納されている。
【0051】
このように、歩行補助カート1は、後脚部40を背面パイプ20の内側に収納することにより、本体サイズの所定値内で、荷物入れ部50の容量を最大化することができる。
【0052】
<実施形態1に係る後脚部40の折り畳み方法の一例>
次に、後脚部40の折り畳み方法の一例について説明する。
図8及び
図9は、本実施形態1に係る後脚部40の折り畳み方法の一例を示す図である。ここでは、後脚部40の折り畳み方法として、後脚部40をスライドして折り畳む方法及び八の字形状の後脚部40により折り畳む方法を説明する。
【0053】
図8(a)に示すように、後脚部40をスライドして折り畳む方法は、後脚部40を本体から引き出した状態では、後脚部40と背面パイプ20との接続部は、本体の側面側に位置している。
【0054】
具体的には、
図8(a)の破線内部分を拡大した
図8(b)に示すように、背面パイプ20を構成する背面横パイプ21と後脚部40とが、背面横パイプ21の本体側面側で接続されている。
【0055】
図8(c)に示すように、後脚部40を折り畳む場合は、後脚部40を本体の内側方向にスライドすることにより、背面パイプ20の内側に収納する。
【0056】
具体的には、
図8(c)の破線内部分を拡大した
図8(d)に示すように、後脚部40を背面横パイプ21の本体内側方向にスライドさせる。この際、傾斜していた背面パイプ20を垂直に立てることにより、後脚部40が自重で背面パイプ20の内側に収納される。
【0057】
図9(a)に示すように、八の字形状の後脚部40により折り畳む方法は、後脚部40を本体から引き出した状態では、後脚部40が八の字に開いた状態である。この場合の後脚部40と背面パイプ20との接続部は、本体の側面側に位置している。
【0058】
具体的には、
図9(a)の破線内部分を拡大した
図9(b)に示すように、背面横パイプ21と後脚部40とが、背面横パイプ21の本体側面側で接続されている。
【0059】
図9(c)に示すように、後脚部40を折り畳む場合は、後脚部40を本体方向に引き込むことにより、背面パイプ20の内側に収納する。この場合の後脚部40と背面パイプ20との接続部は本体の側面側であり、折り畳み前の状態と変化ない。
【0060】
具体的には、
図9(c)の破線内部分を拡大した
図9(d)に示すように、背面パイプ20を垂直に立てて後脚部40を本体方向に引き込む。後脚部40は八の字形状であるために、背面パイプ20と干渉することなく、その内側に収納される。
【0061】
このように、歩行補助カート1は、後脚部40をスライドして折り畳む方法及び八の字形状の後脚部40により折り畳む方法により、後脚部40を背面パイプ20の内側に収納することができる。
【0062】
<実施形態1に係る前脚部30のステアリング軸角度の調整方法>
次に、前脚部30のステアリング軸角度の調整方法について説明する。
図10及び
図11は、本実施形態1に係る前脚部30のステアリング軸角度の調整方法の説明図である。
【0063】
図10(a)は、後脚部40を本体から引き出した状況を側面視した場合を示している。歩行補助カート1の旋回性や直進性は、前脚部30のステアリング軸角度によって左右される。このため、この前脚部30のステアリング軸角度の調整を行う。
【0064】
具体的には、
図10(a)の破線内部分を拡大した
図10(b)に示すように、前脚部30を構成する前脚キャスター部31及び前脚横パイプ32において、前脚横パイプ32を回転することにより、前脚キャスター部31のステアリング軸角度を調整する。
【0065】
例えば、
図11(a)に示すように、前脚キャスター部31のステアリング軸角度を進行方向に対して負の角度に調整した場合、歩行補助カート1の直進開始に大きな力を必要とする。
【0066】
また、
図11(b)に示すように、前脚キャスター部31のステアリング軸角度を進行方向に対して垂直に調整した場合、歩行補助カート1の直進開始時及び進行時に旋回性が良好となる。
【0067】
また、
図11(c)に示すように、前脚キャスター部31のステアリング軸角度を進行方向に対して正の角度に調整した場合、歩行補助カート1の進行時の旋回に大きな力が必要となる。
【0068】
このように、歩行補助カート1は、前脚部30のステアリング軸角度の調整を行うことにより、直進開始の容易性や進行時の旋回性及び直進性を調整することができる。
【0069】
<実施形態1に係る前脚部30のステアリング軸角度の調整方法の一例>
次に、前脚部30のステアリング軸角度の調整方法の一例について説明する。
図12及び
図13は、本実施形態1に係る前脚部30のステアリング軸角度の調整方法の一例を示す図である。
【0070】
図12に示すように、前脚キャスター部31のステアリング軸角度を調整するには、前脚横パイプ32を所定の角度分回転させる。前脚横パイプ32は、角度ロック用ギア33を角度ロック用ピン35でロックされていれば、回転の角度が固定される。
【0071】
角度ロック用ピン35によるロックを解除した状態で、前脚横パイプ32を所定の角度分回転させて、前脚キャスター部31のステアリング軸角度を調整する。前脚横パイプ32の角度を当初の状態に復帰する場合は、角度ロック用ピン35によるロックを解除した状態で、角度ロック用ギア33に装着された角度復帰用コイルバネ34により復帰する。
【0072】
例えば、
図13(a)に示すように、角度ロック用ギア33が角度復帰位置にあれば、前脚キャスター部31のステアリング軸角度が進行方向に対して負の角度となる。
【0073】
また、
図13(b)に示すように、角度ロック用ギア33が角度中間位置にあれば、前脚キャスター部31のステアリング軸角度が進行方向に対して垂直となる。
【0074】
また、
図13(c)に示すように、角度ロック用ギア33が角度最大位置にあれば、前脚キャスター部31のステアリング軸角度が進行方向に対して正の角度となる。
【0075】
このように、歩行補助カート1は、前脚横パイプ32を所定の角度分回転させ、角度ロック用ピン35によって角度ロック用ギア33をロックすることにより、前脚部30のステアリング軸角度の調整を行うことができる。
【0076】
<実施形態1に係る手元操作により前脚部30のステアリング軸角度の調整を行う方法>
次に、手元操作により前脚部30のステアリング軸角度の調整を行う方法について説明する。
図14は、本実施形態1に係る手元操作により前脚部30のステアリング軸角度の調整を行う方法の説明図である。
【0077】
図14に示すように、ハンドル部10の手元付近にロック解除用ワイヤー引付用グリップ36を設置し、このロック解除用ワイヤー引付用グリップ36と角度ロック用ピン35をロック解除用ワイヤー37で接続する。手元のロック解除用ワイヤー引付用グリップ36を引き付けることにより、角度ロック用ピン35によるロックを解除することができる。
【0078】
また、ハンドル部10の手元付近に角度調整用ワイヤー引付用グリップ38を設置し、この角度調整用ワイヤー引付用グリップ38と角度ロック用ギア33を角度調整用ワイヤー39で接続する。手元の角度調整用ワイヤー引付用グリップ38を引き付けることにより、前脚横パイプ32を所定の角度分回転させることができる。
【0079】
このように、歩行補助カート1は、ハンドル部10の手元付近に設置したロック解除用ワイヤー引付用グリップ36及び角度調整用ワイヤー引付用グリップ38を用いて、
前脚横パイプ32を所定の角度分回転させ、角度ロック用ピン35によって角度ロック用ギア33をロックすることにより、前脚部30のステアリング軸角度の調整を行うことができる。
【0080】
<実施形態1に係る手元操作により後脚部40を折り畳む方法>
次に、手元操作により後脚部40を折り畳む方法について説明する。
図15は、本実施形態1に係る手元操作により後脚部40を折り畳む方法の説明図である。ここでは、後脚部40をスライドして折り畳む方法の場合について説明する。
【0081】
図15(a)に示すように、ハンドル部10の手元付近にワイヤー引上グリップ42を設置し、このワイヤー引上グリップ42と後脚部40を折畳ワイヤー44で接続する。なお、ワイヤー引上グリップ42を引き上げる方向を調整するため、ワイヤー摺動ローラー43を設置する。
【0082】
図15(b)に示すように、手元のワイヤー引上グリップ42を引き上げることにより、後脚部40をスライドさせ、背面パイプ20の内側に収納することができる。
【0083】
このように、歩行補助カート1は、ハンドル部10の手元付近に設置したワイヤー引上グリップ42を用いて、後脚部40をスライドさせ、背面パイプ20の内側に収納することができる。
【0084】
<実施形態1に係るキャスター60の構成の一例>
次に、キャスター60の構成の一例について説明する。
図16は、本実施形態1に係るキャスター60の構成の一例を示す図である。ここでは、平付式キャスター及び差込式キャスターについて説明する。
【0085】
図16(a)に示すように、平付式キャスターは、金具61、車軸63及び車輪64で構成される。金具61の取付部62の上面は平面となっており、この取付部62を歩行補助カート1の本体底部にねじ等で固定する。また、取付部62の上面から車輪64の最下部までの高さが取付高となる。
【0086】
取付部62の中心部を通り、歩行補助カート1の本体底部と垂直となる直線がステアリング軸である。平付式キャスターは、このステアリング軸を回転軸として、360度回転する。
【0087】
車軸63を通る歩行補助カート1の本体底部と垂直となる直線と、ステアリング軸とのずれが偏心であり、この偏心があるために、進行方向への直進性が生まれる。
【0088】
図16(b)に示すように、差込式キャスターは、金具61、車軸63及び車輪64で構成される。金具61の取付部65の上部は突起状となっており、この突起状の部分を歩行補助カート1の本体底部に差し込むことにより固定する。また、取付部65の突起状の部分の下部から車輪64の最下部までの高さが取付高となる。
【0089】
取付部65の中心部を通り、歩行補助カート1の本体底部と垂直となる直線がステアリング軸である。差込式キャスターは、このステアリング軸を回転軸として、360度回転する。
【0090】
平付式キャスター及び差込式キャスターには、ストッパを取り付けることができ、このストッパの一例として、車輪ストッパ及び旋回ストッパがある。車輪64の材質の一例として、ゴムやウレタンなどがある。車輪64の材質の一例として、シングル、ダブル、球状などがある。軸受け方法の一例として、ラジアル軸受け及びスラスト軸受けがあり、いずれか一方又は双方を採用することができる。
【0091】
このように、キャスター60は、ステアリング軸を回転軸として、360度回転することができるとともに、偏心を構成することによって進行方向への直進性を確保している。この特性から、キャスター60は、一般的に自在キャスターと呼ばれる。
【0092】
なお、後脚部40のキャスター60において自在キャスターを用いた場合には、一般的な自在キャスターの使用方法ではステアリング軸が垂直であり、このステアリング軸の回転により進行方向が固定ではなくなるため、今回の歩行補助カート1のように、後脚部40のキャスター60が固定輪であることが望ましいカートの後輪にそのまま使用することができない。このため、後脚部40の展開形態ではステアリング軸を意図的に傾斜させることにより、キャスター60の旋回性を制限するよう構成している。
【0093】
また、本実施形態1では、前脚部30のキャスター60の旋回性を使用場面やユーザーの好みに合わせて調整するよう構成している。自在キャスターは、このステアリング軸が垂直である場合、キャスター60の旋回性と進行方向への直進性が良好となるが、ステアリング軸が傾斜すると、旋回性、直進性が悪化する。このため、前脚部30のキャスター60のステアリング軸の角度を調整する機構を採用することにより、カート本体が傾斜してもカート本体の旋回性、直進性を良好に保つ、または意図的にステアリング軸を傾斜させることで、使用者の望むように旋回性を抑制することを可能とした。
【0094】
<実施形態1に係るひじ置きパイプ12により歩行支持力を向上する方法>
次に、ひじ置きパイプ12により歩行支持力を向上する方法について説明する。
図17は、本実施形態1に係るひじ置きパイプ12により歩行支持力を向上する方法の説明図である。
【0095】
図17(a)に示すように、ハンドル部10の手元付近にひじ置きパイプ12を設置することにより、使用者の腕やひじを支持して良好な歩行姿勢を保ちやすくすることができる。
【0096】
具体的には、
図17(b)に示すように、使用者は、ハンドルグリップ11を握るとともに、ひじ置きパイプ12に設置されたひじ置きパッド13の上にひじを置いて歩行補助カート1を使用する。
【0097】
このように、歩行補助カート1は、ハンドル部10の手元付近にひじ置きパイプ12を設置することにより、使用者の体重免荷がしやすくなると同時に体幹揺動を抑制し、前傾姿勢となりにくく良好な歩行姿勢を保ちやすくすることができる。
【0098】
<実施形態1に係るひじ置きパイプ12の固定方法の一例>
次に、ひじ置きパイプ12の固定方法の一例について説明する。
図18及び
図19は、本実施形態1に係るひじ置きパイプ12の固定方法の一例を示す図である。ここでは、ひじ置きパイプ12の固定方法として、らせん形状による固定方法及び組付形状による固定方法を説明する。
【0099】
図18に示すように、らせん形状による固定方法は、取付対象のパイプに対する取付部分におけるひじ置きパイプ12の形状をらせん形状とし、取付部分に適度な摩擦力を有する素材を使用することにより固定する。
【0100】
図19に示すように、組付形状による固定方法は、ひじ置きパイプ12に組付部14を設け、この組付部14が取付部分に適度な摩擦力を有する素材を使用することにより固定する。
【0101】
このように、歩行補助カート1は、ひじ置きパイプ12の固定方法として、らせん形状による固定方法及び組付形状による固定方法を採用することにより、取付対象のパイプに特別な固定機構を設けることなく、簡便に取り付けることができる。
【0102】
なお、上記の実施形態1では、歩行補助具としての手押し車に対して適用する構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、スーツケース、買い物キャリアカート又はベビーカーとしての手押し車に対して適用するよう構成することもできる。
【0103】
[実施形態2]
ところで、上記の実施形態1では、歩行補助カートの後脚部を本体から引き出し、又は、折り畳める構成について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0104】
歩行補助カートの所定のハンドルを操作することにより、後脚部の引き出し及び折り畳みを簡単に行い、人が座るための座面及び荷物を置くための荷台を設置するよう構成することもできる。また、後脚部の折り畳み時に、歩行補助カート本体の厚みを最小限にするよう構成することもできる。
【0105】
本実施形態2では、所定のハンドルを操作することにより、後脚部の引き出し及び折り畳みを簡単に行い、人が座るための座面及び荷物を置くための荷台を設置するとともに、本体の厚みを最小限にする歩行補助カートについて説明する。
【0106】
<実施形態2に係る歩行補助カート100の概要>
まず、本実施形態2に係る歩行補助カート100の概要について説明する。
図20及び
図21は、本実施形態2に係る歩行補助カート100の概要を説明するための説明図である。
【0107】
図20(a)に示すように、本実施形態2に係る歩行補助カート100は、本体部101と一体化した前脚部130と、本体部101から後方に引き出された後脚部140によって本体を支えることにより、使用者がハンドル部110を持って負担の無い姿勢で歩行補助カート100の前押しを行うことができる。
【0108】
また、歩行補助カート100の背面には背面部120が取り付けられており、この背面部120は、上段ハンドル121、中段ハンドル122及び下段ハンドル123を有している。
【0109】
図20(b)に示すように、上段ハンドル121及び中段ハンドル122を操作することにより、後脚部140の引き出し及び折り畳みを行うことができる。具体的には、後脚部140の折り畳み時に、中段ハンドル122を引き出すことにより、後脚部140を後方に引き出すことができる。この際、歩行補助カート100の進行方向への安定性を確保するため、後脚キャスター部170が旋回しないよう固定される。
【0110】
また、後脚部140の引き出し時に、上段ハンドル121を引き上げることにより、後脚部140を折り畳むことができる。この際、歩行補助カート100の進行方向の自由度を確保するため、後脚キャスター部170は旋回することが可能となる。
【0111】
図21(a)に示すように、後脚部140の引き出し時に、スライド部124内の中段ハンドル122を後方にスライドすることにより、座面部125を所定の位置に持ち上げて固定することができる。この固定された座面部125に、使用者は腰かけることができる。
【0112】
図21(b)に示すように、後脚部140の引き出し時に、下段ハンドル123を引き出して前方に回転して固定することにより、荷台部126が荷台となり、この荷台部126に荷物を置くことができる。
【0113】
図21(c)に示すように、後脚部140の折り畳み時は、後脚部140及び背面部120が本体部101の厚み内に収納される。これにより、歩行補助カート100の本体サイズの所定値内で、荷物入れ設置空間の容量を最大化することができる。
【0114】
このように、本実施形態2に係る歩行補助カート100は、所定のハンドルを操作することにより、後脚部140の引き出し及び折り畳みを簡単に行い、人が座るための座面及び荷物を置くための荷台を設置するとともに、本体の厚みを最小限にするよう構成したので、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることができる。
【0115】
<実施形態2に係る後脚部140の引き出し方法>
次に、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し方法について説明する。
図22は、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し方法の説明図である。
【0116】
図22(a)に示すように、後脚部140の折り畳み時には、背面部120及び後脚部140は本体部101に収納されている。後脚部140を引き出す際には、中段ハンドル122を引き出す。
【0117】
図22(b)に示すように、中段ハンドル122を引き出すことにより、この中段ハンドル122に取り付けられたハンドルステー127が後脚部140を引き出す。
図22(c)に示すように、中段ハンドル122を更に上方に引き上げることにより、後脚部140は最大位置まで引き出される。なお、引出制限ステー128により、後脚部140の引き出しの最大位置を制限する。
【0118】
図22(d)に示すように、中段ハンドル122を離すことにより、後脚部140は地面に接地する。そして、中段ハンドル122を元の位置まで押し戻すことにより、背面部120が本体部101に固定される。
【0119】
<実施形態2に係る後脚部140の折り畳み方法>
次に、本実施形態2に係る後脚部140の折り畳み方法について説明する。
図23及び
図24は、本実施形態2に係る後脚部140の折り畳み方法の説明図である。
【0120】
図23(a)に示すように、後脚部140の引き出し時には、背面部120は本体部101に収納されている。後脚部140を折り畳む際には、上段ハンドル121を引き上げる。
図23(b)に示すように、上段ハンドル121を引き上げることにより、後脚部140が地面から持ち上がる。
【0121】
図23(c)に示すように、後脚部140が地面から持ち上がると、後脚部140は、自重で本体部101に収納される。この際、後脚部140を支持しているハンドルステー127の作用によって背面部120が一時的に持ち上がるが、後脚部140の折り畳み動作に支障はない。
【0122】
図23(d)に示すように、背面部120を元の位置まで押し戻すことにより、背面部120及び後脚部140が本体部101に固定される。
図24に示すように、後脚部140の折り畳み時は、座面部125の両端が後脚部140を本体部101の方向に押さえつけることにより、後脚部140が折り畳み状態に固定される。
【0123】
<実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における前脚キャスター部160の固定方法>
次に、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における前脚キャスター部160の固定方法について説明する。
図25は、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における前脚キャスター部160の固定方法の説明図である。
【0124】
図25(a)に示すように、前脚部130に第1アーム131が、前脚キャスター部160に第2アーム132が取り付けられ、この第1アーム131及び第2アーム132は、それぞれの取り付け部分を軸として回転することができる。なお、第2アーム132は、前脚キャスター部160に固定されており、第2アーム132が回転する場合は、前脚キャスター部160も同様に回転する。
【0125】
また、第1ワイヤ133が後脚部140及び第1アーム131に、第2ワイヤ134が第1アーム131及び第2アーム132に、それぞれ取り付けられている。
【0126】
図25(b)に示すように、後脚部140を引き出す際に、後脚部140に取り付けられた第1ワイヤ133が第1アーム131を引っ張ることにより、第1アーム131が回転して取付角度を変化させる。そして、この変化分だけ第2ワイヤ134が第2アーム132を引っ張ることにより、第2アーム132が回転して取付角度を変化させる。この際、前脚キャスター部160も同様に取付角度を変化させ、前脚キャスター部160のステアリング軸の角度を前方方向に傾斜させる。
【0127】
このように、前脚キャスター部160のステアリング軸の角度を前方方向に傾斜させることで、ステアリング軸の角度を垂直もしくは正の角度とすることが可能となるため、歩行補助カート100の進行方向の旋回性および安定性が適正となる角度に固定することが可能となる。
【0128】
<実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における後脚キャスター部170の固定方法>
次に、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における後脚キャスター部170の固定方法について説明する。
図26は、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における後脚キャスター部170の固定方法の説明図である。
【0129】
図26(a)に示すように、後脚部140の先端部分には旋回固定ピン141が、後脚キャスター部170の上面部分には旋回固定穴171及びキャスター軸172がそれぞれ設置されている。このキャスター軸172が後脚部140に挿入されることにより、後脚キャスター部170及び後脚部140が接続され、後脚キャスター部170は自由に旋回することができる。なお、後脚キャスター部170は、後脚部140との接続間隔を所定の間隔(例えば、15mm)まで自由にスライドさせることができる。
【0130】
図26(b)に示すように、後脚部140の折り畳み時では、本体部101に取り付けられたキャスター受け具135が後脚キャスター部170と後脚部140との間に入り込み、旋回固定ピン141の長さより大きい接続間隔を後脚キャスター部170と後脚部140との間で維持する。これにより、後脚キャスター部170の旋回の自由度を確保することができる。
【0131】
図26(c)に示すように、後脚部140の引き出し時に後脚キャスター部170が接地したならば、後脚部140の自重によって後脚キャスター部170と後脚部140との接続間隔が最小となる。
【0132】
図26(d)に示すように、後脚キャスター部170と後脚部140との接続間隔が最小となった際に、後脚キャスター部170が旋回して旋回固定ピン141が旋回固定穴171に挿入されたならば、後脚部140のステアリング軸が固定される。これにより、歩行補助カート100の進行方向への安定性を確保することができる。
【0133】
<実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における座面の設置方法>
次に、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における座面の設置方法について説明する。
図27は、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における座面の設置方法の説明図である。
【0134】
図27(a)に示すように、後脚部140の引き出し時において、背面部120が本体部101に収納されている状態から中段ハンドル122を引き出す。
【0135】
図27(b)に示すように、スライド部124内の中段ハンドル122を後方にスライドすることにより、座面部125を所定の位置に持ち上げて固定することができる。この固定された座面部125を座面として、使用者は腰かけることができる。
【0136】
図27(c)に示すように、ハンドル部110は、本体部101にスライドして収納することができる。これにより、使用者はハンドル部110に接触することなく、座面部125に腰かけることができる。
【0137】
<実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における荷台の設置方法>
次に、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における荷台の設置方法について説明する。
図28は、本実施形態2に係る後脚部140の引き出し時における荷台の設置方法の説明図である。
【0138】
図28(a)に示すように、後脚部140の引き出し時において、下段ハンドル123を引き出して前方に回転して固定することにより、荷台部126が荷台となり、この荷台部126に荷物を置くことができる。
【0139】
図28(b)に示すように、中段ハンドル122を引き出して座面部125を所定の位置に持ち上げて固定することにより、荷台部126及び座面部125の双方を荷台として、大きな荷物を置くこともできる。
【0140】
<実施形態2に係る後脚部140の折り畳み時における本体サイズの最小化方法>
次に、本実施形態2に係る後脚部140の折り畳み時における本体サイズの最小化方法について説明する。
図29は、本実施形態2に係る後脚部140の折り畳み時における本体サイズの最小化方法の説明図である。
【0141】
図29(a)に示すように、後脚部140を支持する後脚支持パイプ129aは、その形状が一直線となっている。このために、後脚部140の折り畳み時においては、後脚部140を本体部101の厚み内に収納することができない。
【0142】
図29(b)に示すように、八の字の形状となる後脚支持パイプ129bの場合は、後脚部140の折り畳み時においては、後脚支持パイプ129bの八の字の形の中央部が上方に突き出る形となる。
【0143】
図29(c)に示すように、後脚部140の折り畳み時の歩行補助カート100を横から見ると、後脚部140及び背面部120が本体部101の厚み内に収納される。これにより、歩行補助カート100の本体サイズの所定値内で、荷物入れ設置空間の容量を最大化することができる。
【0144】
上述してきたように、本実施形態2に係る歩行補助カート100は、所定のハンドルを操作することにより、後脚部140の引き出し及び折り畳みを簡単に行い、人が座るための座面及び荷物を置くための荷台を設置するとともに、本体の厚みを最小限にするよう構成したので、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図ることができる。
【0145】
なお、上記の各実施形態で図示した各構成は機能概略的なものであり、必ずしも物理的に図示の構成をされていることを要しない。すなわち、各装置の分散・統合の形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散・統合して構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明に係る手押し車は、高齢者又は身体に異常がある者等の外出頻度を高め、歩行量の増加による健康維持・促進を図る場合に適している。
【符号の説明】
【0147】
1 歩行補助カート
10 ハンドル部
11 ハンドルグリップ
12 ひじ置きパイプ
13 ひじ置きパッド
14 組付部
20 背面パイプ
21 背面横パイプ
30 前脚部
31 前脚キャスター部
32 前脚横パイプ
33 角度ロック用ギア
34 角度復帰用コイルバネ
35 角度ロック用ピン35
36 ロック解除用ワイヤー引付用グリップ
37 ロック解除用ワイヤー
38 角度調整用ワイヤー引付用グリップ
39 角度調整用ワイヤー
40 後脚部
41 後脚キャスター部
42 ワイヤー引上グリップ
43 ワイヤー摺動ローラー
44 折畳ワイヤー
50 荷物入れ部
60 キャスター
61 金具
62、65 取付部
63 車軸
64 車輪
100 歩行補助カート
101 本体部
110 ハンドル部
120 背面部
121 上段ハンドル
122 中段ハンドル
123 下段ハンドル
124 スライド部
125 座面部
126 荷台部
127 ハンドルステー
128 引出制限ステー
129a、129b 後脚支持パイプ
130 前脚部
131 第1アーム
132 第2アーム
133 第1ワイヤ
134 第2ワイヤ
135 キャスター受け具
140 後脚部
141 旋回固定ピン
160 前脚キャスター部
170 後脚キャスター部
171 旋回固定穴
172 キャスター軸