(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119723
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】水性コーティング組成物及びその使用
(51)【国際特許分類】
C09D 201/00 20060101AFI20240827BHJP
C09D 7/61 20180101ALI20240827BHJP
C09D 7/65 20180101ALI20240827BHJP
C09D 133/00 20060101ALI20240827BHJP
C09D 175/04 20060101ALI20240827BHJP
C09D 131/04 20060101ALI20240827BHJP
C09D 1/00 20060101ALI20240827BHJP
C09D 183/00 20060101ALI20240827BHJP
C23C 28/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D7/61
C09D7/65
C09D133/00
C09D175/04
C09D131/04
C09D1/00
C09D183/00
C23C28/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023142291
(22)【出願日】2023-09-01
(31)【優先権主張番号】22193722.0
(32)【優先日】2022-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】521292928
【氏名又は名称】エヴァルト デルケン アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100228005
【弁理士】
【氏名又は名称】澤田 英之
(72)【発明者】
【氏名】ライナー ヴァルク
(72)【発明者】
【氏名】ニコル マッテ
(72)【発明者】
【氏名】アンゲラ クラインコレス
(72)【発明者】
【氏名】ハンナ スモル
(72)【発明者】
【氏名】アナスタシア フォン ライン
(72)【発明者】
【氏名】マルティン クンカ
(72)【発明者】
【氏名】マルセル ロート
(72)【発明者】
【氏名】ゲーアハルト ロイスマン
(72)【発明者】
【氏名】エムレ コカック
(72)【発明者】
【氏名】インゴ クリュッペル
【テーマコード(参考)】
4J038
4K044
【Fターム(参考)】
4J038AA011
4J038BA212
4J038DF052
4J038DJ022
4J038DJ052
4J038DK002
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4K044AA01
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4K044BB03
4K044BC01
4K044BC02
4K044CA11
4K044CA18
4K044CA53
(57)【要約】
【課題】締め付け部品の摩擦の係数の正確な設定を可能にし、及び更にはPTFEを使用せずに管理し、好ましくはフッ素重合体を完全に不要とする、コーティング組成物を提供すること。
【解決手段】本発明は、調節可能な摩擦の係数を有するコーティングの製造のためのコーティング組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
調節可能な摩擦の係数を有するコーティング、特にトップコート、を製造するための水性コーティング組成物であって、前記組成物が以下を含有することを特徴とする、水性コーティング組成物。
(a)有機及び/又は無機結合剤、
(b)コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、及び
(c)プレートレット形状の粒子。
【請求項2】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、6~40wt.%、特に9~33wt.%、好ましくは11~27wt.%、より好ましくは13~22wt.%の量の前記結合剤を含むことを特徴とする、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
前記コーティング組成物が有機及び無機結合剤を含むことを特徴とする、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
前記有機結合剤が、有機重合体を含有するか、又は有機重合体からなり、特に前記有機重合体が、アクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、並びにそれらの混合物及び共重合体の群より選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
前記重合体が、アクリル酸、アクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエステル、メタクリル酸、メタクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエステル、フマル酸、マレイン酸、並びにそれらの混合物及び共重合体、特にアクリル酸、アクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエステル、メタクリル酸、及びメタクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエステル、並びにそれらの混合物及び共重合体の群より選択されるモノマーより得ることができることを特徴とする、請求項4に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
前記無機結合剤が、シラン、シラン加水分解物、シリケート、ポリシリコナート、及びそれらの混合物より選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
前記潤滑剤が、有機潤滑剤、無機潤滑剤、及びそれらの混合物、好ましくは有機潤滑剤の群より選択されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
前記潤滑剤が、ワックス、プラスチック粒子、特にポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、及びそれらの混合物、微粉化硫黄、並びにそれらの混合物、好ましくはワックス、の群より選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、1.3~20wt.%、特に2~15wt.%、好ましくは3~12wt.%、より好ましくは4~10wt.%、より好ましくは4.5~8wt.%の量の前記潤滑剤を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
前記プレートレット形状の粒子が、金属フレーク、グラフェン、黒鉛、窒化ホウ素、モリブデンジスルフィド、ガラスフレーク、層状シリケート、及びそれらの混合物の群より選択されることを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、3~15wt.%、特に4~12wt.%、好ましくは4~10wt.%、より好ましくは5~8wt.%の量の前記プレートレット形状の粒子を含有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
前記コーティング組成物が、フッ素含有化合物を含まないこと、特に有機フッ素含有化合物を含まないことを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載のコーティング組成物。
【請求項13】
金属基材、特に陰極腐食防止コーティングが施された金属基材、上に、調節可能な摩擦の係数を有するコーティングを製造するためのトップコートとしての、請求項1~12のいずれか1項に記載のコーティング組成物の使用。
【請求項14】
選択的に調節することができる摩擦の係数を有するコーティングの製造方法であって、以下を特徴とする、コーティングの製造方法。
(a)第一の方法工程において、陰極腐食防止コーティングを少なくとも一部の領域に備えた基材を提供すること、
(b)前記第一の方法工程(a)に続く第二の方法工程において、請求項1~13のいずれか1項に記載のコーティング組成物を少なくとも前記基材の一部の領域に適用すること、及び
(c)前記第二の方法工程(b)に続く第三の方法工程において、前記第二の方法工程(b)で適用したコーティング組成物を乾燥させること。
【請求項15】
前記コーティングされた基材の摩擦の係数が、DIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して決定され、0.09~0.16の範囲内で設定されることを特徴とする、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
特に、請求項1~12のいずれか1項のコーティング組成物を用いて、又は請求項14又は15に記載の方法に従って、得ることができるコーティングを有する金属基材であって、前記コーティングが、前記コーティングに基づき、少なくとも4.5wt.%の量の潤滑剤を含有する、金属基材。
【請求項17】
前記コーティングが、前記コーティングに基づき、4.5~35wt.%、特に5~30wt.%、好ましくは10~25wt.%、より好ましくは12~22wt.%、特に好ましくは15~20wt.%の量の前記潤滑剤を含有することを特徴とする、請求項16に記載の金属基材。
【請求項18】
前記コーティングが、前記コーティングに基づき、1~30、特に10~30wt.%、好ましくは15~25wt.%、より好ましくは17~22wt.%の量の前記プレートレット形状の粒子を有することを特徴とする、請求項16又は17に記載の金属基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング技術分野、特に、大量バルク材料のためのコーティングに関する。
特に、本発明は、調節可能な摩擦の係数を有するコーティングの製造のための水性コーティング組成物に関する。更に、本発明は、調節可能な摩擦の係数を有するコーティングの製造方法及び調節可能な摩擦の係数を有するコーティングの製造のための水性コーティング組成物の使用に関する。最後に、本発明は、コーティングされた基材に関する。
【背景技術】
【0002】
締結具、特に、ボルト、ナット及びねじのような小型部品は、部品、特に金属部品の機械的締結に使用され、産業的に加工することができるように、再現可能な特定の摩擦係数を有する必要がある。
摩擦の係数(the coefficient of friction)μは、摩擦係数(the frictional coefficient)としても知られており、垂直抗力に対する摩擦力の比率を示し、摩擦係数が高いほど、摩擦力が高い。摩擦力が高いほど、締め付け過程において、より少ないエネルギーで、ねじは弾性的又は組成的に伸び、いわゆる予圧力が減少する。予圧力は、通常ボルト接合部の信頼性能を確保するために明記され、それが理由で摩擦の係数は決められた範囲内を動く必要がある。これは、ボルト、ねじ、ナット、又はリベットすらも含む材料を締め付ける場合に特に重要である。なぜなら、これらは部品の純粋に機械的な締め付けに使用されるからである。一方で、複合物の意図しない緩みを防ぐために摩擦は十分に高くなければならないが、同時に完全な物質-物質間の結合を可能にするのに十分低くなければならない。
加えて、摩擦の係数は、例えば、規定されたトルクを有するねじ又は常に同じ強度を有するボルトリベットのための、工業的な、特にロボットを使用した加工を可能にするため、できる限り一定に設定しなければならない。このような理由で、小型の締め付け部品は、しばしばトップコート形態で特別なコーティング組成物を用いて実際にコーティングされ、その組成物は所望の方法で部品の滑り及び摩擦特性を設定及び影響することが意図されている。
【0003】
ねじ又はボルトにおける所望の滑り及び摩擦特性は、通常DIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して決定され、ここでは、0.09~0.16のウィンドウの摩擦の係数μは、ドイツ自動車製造協会(VDA)により特にねじについて明示される。
所望の摩擦の係数を設定するため、特定のトップコート組成物は、通常フッ素化プラスチック粒子、特にポリフルオロテトラエチレン(PTFE)又はポリビニリデンフロリド(PVDF)ベースの粒子を含む。
しかし、過又は部分的フッ素化化合物の使用は、いくつかの深刻な欠点がある。一方で、フッ素重合体は比較的高価であり、及び他方で、それらは環境保護の観点から避けられるべきとされる。フッ素化化合物、特にPTFEの製造中で、これらの化合物の製造のために相当量のペルフルオロオクタン酸(PFOA)が通常製造又は使用される。ペルフルオロオクタン酸は、事実上自然分解されず、生体内に蓄積し、特に、肝臓損傷、生殖毒性及び発癌性を有する。ペルフルオロオクタン酸及びその前駆化合物の製造は、それ故、数少ない例外のもと、2020年7月4日よりヨーロッパ連合で禁止された。
加えて、PTFEの製造又は使用もまた、ポリフッ素化副生成物及び分解生成物を発生させるが、それらは可能であれば環境中に放出してはならない。
このような理由から、可能な限りポリフッ素化プラスチックを他の材料に置き換える努力が行われている。しかし、ポリフッ素化又はペルフッ素化プラスチックは、特に疎水性の濡れ又は非濡れ特性、化学的及び物理的影響への耐性、及び優れた滑り特性の観点で、特別な及び時に傑出した物性を有するため、このような代替はしばしば容易ではない。
【0004】
特にねじ結合部で生じる問題の一つは熱放出挙動であるが、これは高温下で多くのプラスチックの滑り特性が変化するからである。特に、多くのプラスチックの滑り特性は、加熱されると向上する。しかし、そうでなければ意図しない結合の緩みのリスクがあるため、このことはねじ結合部では望ましくない。ペルフッ素化プラスチック、特にPTFE及びPVDFは、このような問題となる挙動を示さないか又はほんの限られた程度であるため、それらは依然として、標的とする方法における締結具の滑り又は摩擦特性の設定のために今日においても材料として選択される。PTFEは、特に高融点により特徴づけられ、それにより高温領域における摩擦挙動を最適化することが可能となる。
特に高速でねじが締められる際に生じる他の問題として、いわゆるスティックスリップ効果がある。この場合、ねじは締め付ける間は滑らかに動かないが、代わりに張り付いたり、滑り始める。これにより、一方ではトルクの不確かさが、及び他方では予圧の不確かさがもたらされ、次に操作中における潜在的な失敗のリスクにつながりうる。スティックスリップ効果は、それ故に可能な限り避けなければならず、それが理由でボルトの滑り及び接着特性は特に正確かつ均一に設定しなければならない。現状、スティックスリップ効果は、フッ素重合体を含むトップコートを用いることでのみ大幅に防ぐことができる。
しかし、フッ素重合体の短所の一つは、疎水性であるが故に溶媒ベースの系で好んで使用するべきである点が挙げられる。しかし、環境的及び職業的安全性の理由で、水系がますます好まれる。
他の問題として、フッ素重合体トップコートを使用した時でさえ摩擦の係数の値がしばしば広範な変動にさらされる点が挙げられ、即ち、例えば、同じトップコートでコーティングされた個々のねじにおける摩擦の係数が各々大きく異なる。この場合、ボルト結合部の質を更に増加するため、摩擦の係数の値の散布をより小幅に制限するトップコートが望ましい。
【発明の概要】
【0005】
今日まで、最先端技術でも、小型締結具の摩擦係数を特に目標通りに設定することを可能とし、及びフッ素重合体を使用せず、好ましくは完全にフッ素重合体を使用せずに管理し、及び狭義に定義された摩擦係数ウィンドウ、熱放出及びスティックスリップ挙動に関する要件を満たしながらそのようにする、水系コーティング系を欠いていた。
従って、本発明の目的の一つは、部品、特に、ねじ、ナット、ボルト、又はリベット等の締め付け部品の摩擦の係数の正確な設定を可能にし、及び更にはPTFEを使用せずに管理し、好ましくはフッ素重合体を完全に不要とする、コーティング組成物を提供することである。
更に、少なくとも大量の有機溶媒を含まず、及び好ましくは有機溶媒を含まないコーティング系を提供することが、本発明の目的である。
本発明の更なる目的は、スティックスリップ効果を大幅に防ぐコーティング系を提供することである。
最後に、本発明の目的は、摩擦の係数のばらつきを最小化することである。
このように、発明の第一態様に従った本発明の主題は、請求項1に従った水性コーティング組成物である。発明のこの態様における更に有利な実施形態は、関連する従属項の主題である。
更に、本発明の第二態様に従った本発明の他の主題は、請求項13に従ったコーティング組成物の使用である。
更に、本発明の第三態様に従った本発明の更なる主題は、請求項14に従ったコーティングの製造方法である。更に、発明のこの態様における有利な実施形態は、関連する従属項の主題である。
最後に、本発明の第四態様に従った本発明の更なる主題は、請求項16に従った金属基材である。発明のこの態様における更なる有利な実施形態は、関連する従属項の主題である。
【0006】
言うまでもなく、特定の特性、特徴、実施形態及び利点等は、(不要な重複を避ける目的で)本発明の1つの態様のみに関して以下に明記されており、明確な言及を必要とすることなく、本発明の他の態様に関して当然適切に適用される。
加えて、以下に言及する全ての値又はパラメーターデータ等は、原則、決定することができるか、或いは標準化された若しくは明確に述べられた決定方法又はこの分野の当業者に周知の決定方法で決定することができる点が適用される。
更に、言うまでもなく、全ての重量又は量に関連するパーセントは、合計が100%となるように、当業者により選択される。
このように述べられた条件の下、本発明は、以下に、より詳細に説明する。
図面は、以下のことを示す。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】亜鉛フレークコーティング及びその後の本発明のトップコートでコーティングしたねじの摩擦の係数のリスト。
【
図2】亜鉛フレークコーティング及び市販のPTFEを含むトップコートでコーティングしたねじの摩擦の係数のリスト。
【発明を実施するための形態】
【0008】
このように、本発明の主題は、-本発明の第一態様に従って-調節可能な摩擦の係数を有するコーティング、特にトップコート、を製造するための水性コーティング組成物であり、ここで前記組成物は以下を含有する。
(a)有機及び/又は無機結合剤
(b)前記コーティング組成物に基づき、少なくとも1.3wt.%量の潤滑剤
及び
(c)プレートレット形状の粒子
出願人が驚くことに見出したように、摩擦の係数が明確に調節可能なトップコート用の水性コーティング組成物は、少なくとも1つの定義された量の潤滑剤及びプレートレット形状の粒子が前記組成物に加えられた場合、市販の有機又は無機結合剤に基づき得ることができる。有機及び無機結合剤の混合物を使用した場合に、特に良好な結果が得られる。本発明の組成物は、特にフッ素重合体、特にPTFEを含まない。
驚くことに、本発明のコーティング組成物は、前記トップコートに硬化した後に、PTFE含有トップコート組成物と同等の滑り及び摩擦特性を示すが、ねじのようなコーティングされた締結具の摩擦の係数の測定値の変動は、先行技術にこれまで用いられたフッ素化、特にPTFE含有、コーティング組成物より顕著に低い。
【0009】
更に、本発明のトップコート系は、高温下、特に高乾燥温度下でさえも、一貫した摩擦の係数を示す。潤滑剤含有トップコートは、特にワックスを含む場合、温度に曝された後により高い摩擦の係数を有するため、これは驚くべきことである。特に、このことは、前記潤滑剤、特にワックス、は、乾燥工程中に気相を通過するか、又は熱分解するという事実の結果である。驚くことに、潤滑剤に加え、プレートレット形状の粒子を含むトップコートは、このような摩擦の係数の増加を示さない。理論に束縛されることを望むものではないが、このことは、おそらく、前記プレートレット形状の粒子が拡散障壁として働く一方、酸素の前記コーティングへの浸透を遅らせ、その結果前記潤滑剤の分解を遅らせる一方で、揮発性の又は昇華性の潤滑剤を用いた場合に、前記潤滑剤が気相を通過することを防ぐという事実の結果である。
本発明のコーティング組成物は、このように、特に、今日まで使用されるPTFE含有トップコート組成物より、大幅に低い変動で、遥かに正確な摩擦の係数を設定することを可能とする。この効果は、有機及び無機バインダーの混合物を用いた場合に、特に前記有機バインダーがアクリレート系バインダー、即ち、アクリル若しくはポリアクリレート又はそれらの共重合体(アクリレートが好ましい)に基づき構成され、及び下記に説明する通り、前記無機バインダーがケイ素含有バインダーである場合に、特に顕著である。
本発明のコーティング組成物は、水性媒体中で容易に配合することができ、及び、更にPTFEを含まなくてもよい。好ましくは、それらは、フッ素重合体を全く含まなくてもよい。
従って、本発明は、溶媒及びフッ化重合体の両方を含まない、特にPTFEを含まない系において、摩擦の係数を工業生産に必要な値に設定することのできるトップコートを容易な利用を可能とする。従って、本発明のコーティング組成物は、今日まで知られている通常のフッ素重合体含有溶剤系システムより、環境的観点及び労働安全的観点の両方から優れる。加えて、本発明のコーティング組成物でコーティングされる基材、特に、ねじ、ナット、ボルト等の締結手段は、今日まで使用されるPTFE含有の系よりも、摩擦の係数における顕著に低い変動を示す。
潤滑剤及びプレートレット形状の顔料を前記結合剤に加える場合に、滑り特性が顕著に向上し、特に高温でさえ、摩擦の係数を安定に設定することができることが見出された。
【0010】
本発明との関連で、潤滑剤は、コーティングの摩擦学的特性を変化する、特に摩擦を減弱する化学物質又は混合物質を意味するものと理解される。本発明との関連で、潤滑剤は、液状又は固形状の形態のいずれかで存在することができ、ここで、固形の潤滑剤の使用が好ましい。
本発明との関連で、ワックスは、通常20°Cで混錬可能であり、固形物から脆く硬いものであり、粗いものから細かい結晶性であり、半透明から不透明であるがガラス状ではなく、40°Cを上回ると分解することなく溶融する、特に天然物又は人工的に得られた物質として理解される。融点をわずかにでも上回ると、ワックスは、通常、比較的低い粘度となり、糸を引かないものとなる。ワックスは、主にそれらが通常、約50~90°Cの間、例外的に最大約200°Cで溶融低粘度状態に変化し、灰形成化合物を実質的に含まない点で、同様の合成製品又は天然物とは異なる。ワックスはペースト又はゲルを形成し、通常、燃焼してすすを出しながら燃える炎を生じる。それらの起源によって、ワックスは、3つの群、即ち、天然ワックス、半合成ワックス及び合成ワックスに分類される。天然ワックスは、特に、カンデリラワックス、カルナバワックス、又はモンタンワックス等の植物ワックス、蜜蝋、ラノリン、及びブラッシング脂等の動物ワックス、セレシン及びオゾケライト等のミネラルワックス、並びに、特にワセリン、灯油ワックス及びマイクロワックス等の石油化学ワックスから成る。半合成ワックスは、特に、モンタンエステルワックス及び水素化ジョジョバワックス等の硬いワックスである。合成ワックスは、例えば、ポリアルキレンワックス又はポリエチレングリコールワックスである。
【0011】
本発明との関連で、プレートレット形状の粒子はフレーク状粒子と呼ばれることも多く、厚みが長さ及び幅よりもかなり小さい、即ち、1つの空間方向の広がりが他の2つの空間方向よりもかなり小さい粒子として理解される。通常、アスペクト比、即ち、粒子の長さ又は幅と粒子厚みの比は、2:1~100:1、特に4:1~50:1、好ましくは5:1~20:1、好ましくは8:1~15:1の範囲内である。
前述した通り、工業生産、特にロボットによるねじ締めにおいては、コーティングされた締結具、特にねじの滑り特性又は摩擦の係数は、再現可能な様式で同等の値を常にとることが不可欠である。この理由により、VDAガイドライン235-101は、締結手段、特にボルト、ナット、及びねじの摩擦の係数μが位置することのできる、いわゆる摩擦係数ウィンドウを規定している。この摩擦係数ウィンドウは、0.09~0.16の摩擦係数μの範囲をカバーする。摩擦係数は、DIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して決定される。他の摩擦係数ウィンドウが規定され、望まれる場合、これらもまた本明細書に記載された発明により満たすことができる。
【0012】
本発明の範囲内で、本発明のコーティング組成物でコーティングされた、表面又はコーティングされた基材が、0.09~0.16の範囲内のDIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して決定された摩擦の係数μを有する場合が好ましい。
ねじの場合、摩擦の係数は、ねじ山及び平らな表面の両方、特にねじの頭部で決定される。ワークピース、特にねじ部品が、ねじ山において、平らにコーティングされた表面、例えばねじの頭部、と異なる摩擦の係数を有するため、この二重の決定が必要である。例えば、内部支持体として設計されたねじは、ナット又はねじのワッシャーの上にあるねじの頭部よりも、ねじ山でより高い摩擦の係数を有し、及びその結果としてより劣る滑り特性を有する。ねじが外側の担体である場合、摩擦の係数は、ねじ山よりも頭部の方が高い。
ワークピース全体の摩擦係数の決定に両方の領域(ねじ山及び平らな表面)の摩擦係数の計測が含まれるため、潤滑剤を含まないコーティングでコーティングされたワークピースは、望ましくない高い摩擦の係数を有することが多く、そのため、例えば結合工程で追加の潤滑剤を使う必要がある。しかし、本発明に従うと、潤滑剤の使用を省くことができる。
本発明の範囲内で、ねじ山のある部品、例えばねじについて、ねじ山及び平らな表面の両方の摩擦の係数が、それぞれ0.09~0.16の摩擦の係数μという上述した摩擦係数ウィンドウ内に位置することが好ましくは提供される。
【0013】
DIN EN ISO 16047:2013-01に記載の試験規則は単一の締め付けに適用されることから、複数の締め付けのための試験の準備がVDA 235-203に準拠した試験シートで更に特定される。
本発明の範囲内で、0.09~0.16の摩擦の係数μについての上述した摩擦係数ウィンドウがまた、ねじ山及び平らな表面の両方における複数の締め付けの場合に満たされることが好ましくは更に提供される。
加えて、ワークピース、特に締結具、例えばねじ又はボルトの熱緩み挙動もまた、特にそれらが集合体、例えばエンジンの近くに組み込まれている場合に重要である。この理由のために、VDA試験シート235-203は、150°Cにおける温度負荷での試験の準備を規定しており、ここでは0.06の摩擦の係数μがアンダーシュートしない必要がある。
本発明の範囲内では、従って、本発明のコーティング組成物によりコーティングされたワークピースが、VDA試験シート235-203に準拠して、150°Cで0.06以上の摩擦の係数μを有する場合が好ましい。この摩擦係数ウィンドウは、好ましくは、合計の摩擦係数と、ねじ山のあるワークピースの場合はねじ山及び平らな表面との両方について満たされる。
前述で開示した通り、本発明のコーティング組成物は、結合剤を含む。前記コーティング組成物が前記結合剤を含む量は、正確な要件及びそれぞれの意図された用途に従い、広い範囲内で変化することができる。しかし、典型的には、前記コーティング組成物は、前記コーティング組成物に基づき、6~40wt.%、特に9~33wt.%、好ましくは11~27wt.%、より好ましくは13~22wt.%の量の前記結合剤を含む。
【0014】
前述と同様に、前記結合剤は、有機バインダー、無機バインダー、及びそれらの混合物より選択されてもよい。好ましくは、前記コーティング組成物は、少なくとも1つの有機結合剤を含有する。なお、更に本発明との関連で、前記コーティング組成物は、有機結合剤及び無機結合剤を含有することが好ましい。このように、本発明との関連で、前記コーティング組成物が有機及び無機結合剤の混合物を含有する場合が好ましい。
前記コーティング組成物が有機及び無機結合剤を含む場合、前記コーティング組成物は実質的に任意の量で前記有機結合剤を含んでもよい。しかし、前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、2~20wt.%、特に3~15wt.%、好ましくは4~12wt.%、より好ましくは5~10wt.%の量の前記有機結合剤を含む場合が十分に実証されている。
前記コーティング組成物は、好ましくは前記有機結合剤に加えて無機結合剤を含む。無機結合剤を添加することで、特に、前記コーティングの耐摩耗性及び機械的耐久性が向上する。加えて、無機コーティングを使用することはまた、それらが大型の工業規模で安価に製造する又は得ることができることが多いので、商業的にも望ましい。
前記コーティング組成物が有機及び無機結合剤を含む場合、前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、4~20wt.%、特に6~18wt.%、好ましくは7~15wt.%、より好ましくは8~13wt.%の量の前記無機結合剤を含む場合が十分に実証されている。
【0015】
次に有機結合剤について述べると、これは様々な適切な結合剤より選択することができる。
典型的には、前記有機結合剤は、有機重合体を含有するか、又は有機重合体からなる。好ましくは、前記有機結合剤は有機重合体からなる。
前記有機重合体は、アクリレート、ポリウレタン、ポリビニルアセテート、並びにそれらの混合物及び共重合体からなる群より選択されてもよい。好ましくは、前記重合体は、アクリレート、ポリウレタン、並びにそれらの混合物及び共重合体、特にアクリレート及びアクリレート(actylate)の共重合体、からなる群より選択される。本発明との関連で、前記重合体がアクリレートである場合に、特に良好な結果が得られる。
本発明との関連で、アクリレートをベースとする有機結合剤は、特に純粋なアクリレートが、このように好ましく使用され、しばしばポリアクリレート又はアクリルとも称される。アクリレート又はポリアクリレート又はアクリルは、アクリル酸若しくはメタクリル酸又はそれらのエステルの重合体である。アクリル系バインダーは、特に水性媒体において容易に配合され、及び優れたフィルム形成特性を有する。
【0016】
本発明との関連で、それ故に、前記重合体が、アクリル酸、アクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエステル、メタクリル酸、メタクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエステル、フマル酸、マレイン酸、及びそれらの混合物からなる群より選択されるモノマーより得ることができる場合が十分に実証されている。これに関連して、前記重合体が、アクリル酸、アクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエーテル、メタクリル酸、及びメタクリル酸とC1-~C10-アルコールとのエステル、並びにそれらの混合物からなる群より選択されるモノマーより得ることができる場合に、特に良好な結果が得られる。
なお、本発明との関連で、前記重合体が、アクリル酸、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、アクリル酸ブチルエステル、アクリル酸イソブチルエステル、アクリル酸2-エチルヘキシルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル、メタクリル酸ブチルエステル、メタクリル酸イソブチルエステル、及びメタクリル酸ヘキシルエステルからなる群より選択されるモノマーより得ることができる場合が更に好ましい。これに関連して、前記重合体が、アクリル酸、アクリル酸メチルエステル、アクリル酸エチルエステル、メタクリル酸、メタクリル酸メチルエステル、メタクリル酸エチルエステル及びそれらの混合物、好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸及びそれらの混合物の群より選択されるモノマーより得ることができる場合が特に十分に実証されている。
【0017】
前記重合体の分子量に関する限り、これは当然幅広い範囲にわたり変化することができる。しかし、前記重合体が、2,000~250,000 g/mоl、特に5,000~200,000 g/mоl、好ましくは10,000~150,000 g/mоl、より好ましくは15,000~100,000 g/mоlの範囲の重量平均分子量Mwを有する場合が十分に実証されている。
本発明との関連で示される重合体化合物の分子量は、個々の重合体化合物の質量をそれらの質量分率で加重した、重量平均分子量Mwを指す。分子量又は分子量分布は、様々な標準化された手順及び方法、例えば、光散乱、レオロジー、質量分析、浸透クロマトグラフィー等、により決定することができる。しかし、分子量分布を決定するために使用される方法は当業者によく知られており、更なる説明を必要としない。例えば、使用される重合体の分子量は、特にDIN 55672に基づいてポリメチルメタクリレート又はポリスチレンを標準として、特にGPC法により決定することができる。
【0018】
無機結合剤は、通常ケイ素含有結合剤である。
好ましくは、前記有機結合剤は、シラン、シラン加水分解物、シリケート、ポリシリコナート、及びそれらの混合物より選択される。
これに関連して、前記無機結合剤が、特にトリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシラン、好ましくはビニルシラン、アミンシラン、フェノキシシラン、及び/又はエポキシシラン、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、シラン加水分解物、コロイド状のケイ酸、水ガラス、又はシリケート、特にリチウム水ガラス、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラス、及びそれらの混合物等のシランの群より選択される場合に、特に良好な結果が得られる。特に、好ましく用いることができるシランは、シラン変性シリケートの製造で以下に言及するものである。
本発明の好ましい実施形態によると、前記無機結合剤は、特にリチウム化合物を含まない。本発明との関連で、通常であれば好んで用いられる、リチウムポリシリケート(リチウム水ガラス)を使用しない場合に、特に良好なコーティング及び滑り特性を得ることができる。特に自動車分野におけるリチウムイオン電池及びリチウムイオン蓄電池の使用の増大により、リチウムの需要及び、それに続くリチウムの価格が上昇すると予測されることから、このことは本発明の注目すべき利点である。
好ましくは、前記無機結合剤は、特にトリアルコキシシラン及びテトラアルコキシシラン、好ましくはビニルシラン、アミンシラン、フェノキシシラン、及び/又はエポキシシラン、テトラエチルオルトシリケート(TEOS)、テトラメチルオルトシリケート(TMOS)、シラン加水分解物、コロイド状ケイ酸(シリカゾル)、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラス、及びそれらの混合物等のシランの群より選択される。より好ましくは、前記無機結合剤は、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラス、及びそれらの混合物の群より選択される。
【0019】
本発明のより好ましい実施形態によると、前記無機結合剤は、水ガラス及び/又はコロイド状ケイ酸と、シラン加水分解物及び/又はシランとの混合物を含有するか又はそれらからなる。好ましくは、前記無機結合剤は、水ガラス及び/又はコロイド状ケイ酸と、シラン加水分解物及び/又はシランとの混合物を含有する。これらの混合物はまた、アルカリ性のpH値で炭酸化を示さない。
この実施形態によると、前記有機結合剤は、前記シラン加水分解物及び/又はシランに対して、15:1~1:2、特に1:1~1:1.5、好ましくは5:1~1:1、より好ましくは4:1~1:1、の範囲の重量比の前記水ガラス及び/又は前記コロイド状のケイ酸を含む場合が好ましい。
同様に、この実施形態によると、前記無機結合剤が、特に前記有機結合剤と混合する前に、11未満、特に9未満、好ましくは8.5未満のpHに設定される場合が十分に実証されている。好ましくは、前記無機結合剤は、特に前記有機結合剤と混合する前に、8未満、特にpH5~pH7.5の範囲のpH値に設定されている。
水ガラス及び/又はコロイド状ケイ酸と、シラン加水分解物及び/又はシランの混合物において、かなり弱い又は少ない炭酸化、即ち空気からの二酸化炭素の吸収とそれに続くカーボネートの生成が、特にアルカリ性の範囲のpH値で確認される。炭酸化は、特にトップコートの場合、トップコートの濁りが原因で、表面特性、特に外観の望ましくない低下をもたらす。次いで、コーティングは埃っぽく見えることが多く望ましくない。記載される混合物の他の利点は、前記シリケート又はケイ酸を沈殿させることなく、前記無機結合剤及び/又は前記コーティング組成物のpHを酸性の範囲に設定することができる点である。
【0020】
前記無機結合剤がシラン変性シリケート化合物又はシラン変性水ガラスである場合に、これに関連して特に良好な結果が得られる。前記シラン変性シリケート化合物又はシラン変性水ガラスは、通常、少なくとも1種のシランを少なくとも1種のシリケート存在下、pH8以上で少なくとも部分的に加水分解する及び/又は縮合することにより得ることができる。
同様に、シラン変性シリケート化合物又はシラン変性水ガラスが用いられる場合、炭酸化は観察されず、及びシリケートが沈殿することなく前記無機結合剤又はコーティング組成物のpHを7以下の値に設定することができる。この場合、pHは酸を添加することにより調節することができる。中性又は酸性のpH領域における前記シラン変性シリケート化合物又は前記シラン変性水ガラスの使用は、特にカーボネートの形態における二酸化炭素の吸収が酸性領域でかなり減少するため、好ましい。
【0021】
好ましくは、シラン変性シリケート又はシラン変性水ガラスの製法方法は、8以上、特に11超のpHで、シリケート化合物又は水ガラス存在下、シランが少なくとも部分的に加水分解されてシラン変性シリケート又は水ガラスを得て、及びその後、特に酸を添加することで、pHを8.5未満、特に8未満、好ましくは4~7の範囲内の値に設定するように実施される。
酸性化の間に、pHの値を2~4に設定することもでき、前記シラン変性シリケート化合物又はシラン変性水ガラスの沈殿又は凝集を伴うことなく、達成及び保持することができる。
アルカリ性水溶液中でシリケート存在下、シランの部分的な加水分解又は縮合が起こる場合にのみ、有益な効果が既に見られる。しかし、シラン変性シリケート化合物又はシラン変性水ガラスを形成するためのシリケート存在下でのシランの加水分解又は縮合は、しばしば、アルカリ中で完全に行われる。アルカリ性水溶液中でのシラン及びシリケートの部分的な加水分解は、必要であれば、pH7以下へと酸性化した後、完全に加水分解するまで継続することができる。
更にこの実施形態によると、特に前述した化合物であるリチウム水ガラス、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラス、及びそれらの混合物、好ましくは、ナトリウム水ガラス、カリウム水ガラス、及びそれらの混合物を、水ガラス又はシリケートとして使用する。
シラン変性シリケート化合物又は水ガラスの製造のため、エポキシ官能、フェノキシ官能、ビニル官能、又はアミノ官能シランが有利に使用される。より好ましくは、少なくとも1つのSi-C結合、即ちケイ素及び炭素原子の結合、を有するシランが使用される。異なるシランが互いに混合して使用されてもよい。特に好適なシランは、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、及び3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル-トリメトキシシラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノ-メチルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリルオキシメチル)メチルジメトキシシラン、メタクリルオキシメチルトリメトキシシラン、3-メタクリルオキシプロピルトリアセトキシシラン、N-メチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート、N-トリメトキシシリルメチル-O-メチルカルバメート、N-ジメトキシ(メチル)シリルメチル-O-メチルカルバメート、トリス-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]-イソシアヌレート、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、(シクロヘキシル)メチルジメトキシシラン、ジシクロペンチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、トリアセトキシエチルシラン、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンが挙げられる。
【0022】
前記シラン変性シリケートの製造に際して、シラン及びシリケートは、各々2:1~1:10、特に1:1~1:5、好ましくは1:1~1:3、より好ましくは1:1~1:2の重量比で有利に使用される。前記シランは、単独化合物として又はシラン混合物として使用することができ、及び同様のことが前記シリケートにも適用される。シラン変性シリケート又は水ガラスの製造における更なる詳細として、WO 2016/107791 A1を参照することができ、その開示内容は、本発明に完全に包含される。
本発明との関連で有機及び無機結合剤の混合物が使用される場合、前記無機及び有機結合剤が、互いに特定の重量比で使用される場合に、特に良好な結果が得られる。本発明との関連で、有機結合剤に対する無機結合剤の重量比が、コーティング組成物中の無機結合剤の重量及び有機結合剤の重量に基づき、1:1.2~3:1、特に1:1~2:1、好ましくは1.1:1~1.8:1、より好ましくは1.1:1~1.4:1の範囲内で変化する場合に、特に良好な結果が得られる。このように、本発明との関連で、所定の過剰量の無機結合剤が使用される場合が好ましい。
【0023】
前述した通り、前記コーティング組成物は潤滑剤を含む。前記潤滑剤は、好ましくは、有機潤滑剤、無機潤滑剤、及びその混合物からなる群より選択される。しかし、本発明との関連で、前記潤滑剤が有機潤滑剤である場合に、特に良好な結果が得られる。
本発明との関連で使用される潤滑剤は、通常、粒子形態である。この点で、前記潤滑剤は、典型的には、マイクロメートルの範囲で絶対粒子サイズを有する。
本発明との関連で、前記潤滑剤が、ワックス、プラスチック粒子、特にポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミドイミド(PAI)、及びそれらの混合物、微粉化硫黄、並びにそれらの混合物、からなる群より選択される場合に、特に良好な結果が得られる。本発明との関連で、前記潤滑剤がワックスである場合に、特に良好な結果が得られる。
前記潤滑剤がワックスである場合、前記ワックスが、天然ワックス、半合成ワックス、合成ワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択される場合が十分に実証されている。好ましくは、前記ワックスは合成ワックスである。
【0024】
同様に、本発明との関連で、前記ワックスが、蜜蝋、カルナウバワックス、モンタンワックス、変性モンタンワックス、アミドワックス、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、HDPEワックス(高密度ポリエチレンワックス)、酸化HDPEワックス、エチレンビニルアセテートワックス、ポリエチレングリコールワックス、ポリエステルワックス、Fischer-Tropschワックス、及びそれらの混合物、好ましくはポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、酸化HDPEワックス、エチレンビニルアセテートワックス、ポリエチレングリコールワックス、ポリエステルワックス、Fischer-Tropschワックス、及びそれらの混合物、からなる群より選択される場合が好ましい。
これに関連して、前記ワックスが、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス、HDPEワックス、酸化HDPEワックス、Fischer-Tropschワックス、及びそれらの混合物からなる群より選択される場合に、特に良好な結果が得られる。
本発明との関連で、更により好ましくは、前記ワックスはポリエチレンワックス(PEワックス)である。
ワックス、特に合成ワックス、好ましくはポリエチレンワックスを潤滑剤として用いて、特に前記コーティング組成物の滑り及び摩擦特性を優れたものに設定することができる。特に、有機結合剤、無機結合剤、ワックスベース潤滑剤、及びプレートレット形状の顔料の組合せが、特に複数締め付け下及び熱的ストレス下でも、優れた及び一貫した摩擦の係数を示す。
【0025】
ここで、前記コーティング組成物が前記潤滑剤を含む量に関して、これは、前記コーティング組成物に基づき、少なくとも1.3wt.%である。しかし、前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、1.3wt.%超、特に2wt.%超、好ましくは3wt.%超、より好ましくは4wt.%超、特により好ましくは4.5wt.%超の量の前記潤滑剤を含む場合が有利であることが見いだされている。
同様に、前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、20wt.%未満、特に15wt.%未満、好ましくは12wt.%未満、より好ましくは8wt.%未満の量の前記潤滑剤を含む場合に、良好な結果が得られる。
更に、発明との関連で、前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、1.3~20wt.%、特に2~15wt.%、好ましくは3~12wt.%、より好ましくは4~10wt.%、特に好ましくは4.5~8wt.%の量の前記潤滑剤を含む場合が好ましい。
【0026】
本発明との関連で、前記コーティング組成物が、フッ素含有化合物を含まないこと、特に有機フッ素含有化合物を含まないことが、有利に提供される。更により好ましくは、本発明との関連で、前記コーティング組成物が、フッ素重合体粒子を含まないこと、特にPTFE及びPVDFを含まないことが、提供される。
関心事であるフッ素重合体粒子の使用を含まず、選択的に調節可能な摩擦の係数を有するコーティング組成物を提供することができる点が、本発明の優れた利点である。特に、本発明との関連で、フッ素化有機化合物を全く使用することなく使用することができ、優れた滑り及び摩擦特性を有するコーティング組成物を提供することが可能である。更に、本発明の範囲内で、摩擦の係数のばらつき、即ちフッ素重合体粒子を含むコーティング組成物と比較したコーティング組成物の摩擦の係数の測定値のばらつき、を顕著に低減することが可能である。
【0027】
更に、本発明の範囲内において、前記コーティング組成物がプレートレット形状の粒子を含む。前記プレートレット形状の粒子が、金属フレーク、グラフェン、黒鉛、窒化ホウ素、モリブデンジスルフィド、ガラスフレーク、層状シリケート、及びそれらの混合物の群より選択される場合が十分に実証されている。層状シリケートは、好ましくは、雲母、滑石、ベントナイト、カオリン、及びそれらの混合物の群より選択される。これに関連して、金属フレークは、好ましくは、アルミニウムフレーク、亜鉛フレーク、銅フレーク、及びそれらの混合物の群より選択される。
好ましくは、前記プレートレット形状の粒子は金属フレークであり、特にアルミニウムフレーク、亜鉛フレーク、銅フレーク、及びそれらの混合物の群より選択される。前記プレートレット形状の粒子がアルミニウムフレークである場合がより好ましい。
好ましくは、前記コーティング組成物は、前記コーティング組成物に基づき、3~15wt.%、特に4~12wt.%、好ましくは4~10wt.%、より好ましくは5~8wt.%の量の前記プレートレット形状の粒子を含有する。
前記コーティング組成物中でプレートレット形状の粒子を使用することにより、前記コーティングされた基材の摩擦の係数及び滑り特性を正確に設定することができ、及び、特に、スティックスリップ効果を更により避けることができる。更に、摩擦の係数の増加を観察することなく、高温で前記コーティング組成物を硬化させることも可能である。
【0028】
潤滑剤に対するプレートレット形状の粒子の重量比が、コーティング組成物中のプレートレット形状の粒子の重量及び潤滑剤の重量に基づき、0.8:1~1.8~1、特に1:1~1.6:1、好ましくは1.1:1~1.4:1の範囲内で変化する場合に、特に良好な結果が得られる。
更に、結合剤に対するプレートレット形状の粒子の特定の比率が存在する場合に、非常に良好な結果が得られる。このように、結合剤に対するプレートレット形状の粒子の重量に基づいた比率が、コーティング組成物中のプレートレット形状の粒子の重量及び結合剤の重量に基づき、1:2~1:17、特に1:2.4~1:9、好ましくは1:2.5~1:4、より好ましくは1:2.7~1:3.2の範囲内である場合が十分に実証されている。
本発明との関連で、前記コーティング組成物が、少なくとも1つの増粘剤及び/又はレオロジー添加剤を含有することが更に提供されてもよい。
増粘剤及び/又はレオロジー添加剤は、特に、粘度及び流れ又は本発明の組成物を基材に適用することができる層厚さえも設定する役割を果たす。
前記コーティング組成物が増粘剤及び/又はレオロジー添加剤を含む場合、前記コーティング組成物は、通常、前記コーティング組成物に基づき、0.01~5wt.%、特に0.05~3wt.%、好ましくは0.1~2wt.%の量の前記増粘剤及び/又は前記レオロジー添加剤を含む。
前記増粘剤及び/又は前記レオロジー添加剤は、様々な適切な化合物及び化合物クラスより選択することができる。しかし、前記増粘剤及び/又は前記レオロジー添加剤が、エチルセルロース、ケイ酸、シリケート、及びそれらの混合物の群より選択される場合が十分に実証されている。より好ましくは、前記増粘剤及び/又は前記レオロジー添加剤はケイ酸、特にヒュームドシリカである。
【0029】
本発明の更に好ましい実施形態に従うと、前記コーティング組成物は以下を含有する
(a)結合剤、
(b)前記コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、特にワックス、
(c)プレートレット形状の粒子、特に金属フレーク、及び
(d)増粘剤及び/又はレオロジー添加剤。
本発明のこのような好ましい実施形態については、本発明のコーティング組成物の更なる実施形態及び特徴との関連で前述した全ての利点、特徴及び特別な特性は、適宜適用される。
【0030】
加えて、前記コーティング組成物が少なくとも1つの更なる添加剤を含有することが提供されてもよい。
前記コーティング組成物が更なる添加剤を含有する場合、前記コーティング組成物は、前記コーティング組成物に基づき、0.01~5wt.%、特に0.05~3wt.%、好ましくは0.1~2wt.%の量の前記更なる添加剤を含有する。
これに関連して、前記更なる添加剤が、湿潤剤、防腐剤、安定剤、酸、及び/又は塩基、消泡化合物、フィルム形成剤、レベリング剤、UV吸収剤、充填剤、pH安定化剤、及びpH調節剤からなる群より選択される場合に、特に良好な結果が得られる。
従って、本発明の好ましい実施形態に従うと、前記コーティング組成物が以下を含有することが提供される
(a)結合剤、
(b)前記コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、特にワックス、
(c)プレートレット形状の粒子、特に金属フレーク、
(d)増粘剤及び/又はレオロジー添加剤、及び
(e)更なる添加剤。
本発明のこのような特有の及び好ましい実施形態については、本発明の更なる実施形態及び特徴との関連で前述した全ての利点、特徴及び特別な特性は、適宜適用される。
【0031】
更に、前記コーティング組成物が充填剤を含有することが提供されてもよい。
前記コーティング組成物が充填剤を含有する場合、前記コーティング組成物は、前記コーティング組成物に基づき、典型的には、1.3~50wt.%、特に1~40wt.%、好ましくは5~35wt.%、より好ましくは10~30wt.%の量の前記充填剤を含有する。
前記充填剤が、カルシウムカーボネート、バリウムサルフェート、滑石、及びそれらの混合物より選択される場合に、特に良好な結果が得られる。
従って、本発明の更なる実施形態に従うと、前記コーティング組成物が以下を含有することが提供される
(a)結合剤、
(b)前記コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、特にワックス、
(c)プレートレット形状の粒子、特に金属フレーク、
(d)増粘剤及び/又はレオロジー添加剤、
(e)更なる添加剤、及び
(f)充填剤。
本発明のこのような特有の実施形態については、本発明の他の実施形態及び特徴との関連で前述した全ての利点、特徴及び特別な特性は、適宜適用される。
【0032】
前述した通り、本発明との関連で、前記コーティング組成物が有機結合剤及び無機結合剤を含有する場合に最も良好な結果が得られる。このように、本発明との関連で、前記コーティング組成物が以下を含有する場合に、特に良好な結果が得られる
(a1)有機結合剤、
(a2)無機結合剤
(b)前記コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、及び
(c)プレートレット形状の粒子。
前記コーティング組成物は、ほぼ任意の量の前記有機結合剤を含んでもよい。しかし、前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、2~20wt.%、特に3~15wt.%、好ましくは4~12wt.%、より好ましくは5~10wt.%の量の前記有機結合剤を含む場合が十分に実証されている。
更に、前記コーティング組成物が、前記コーティング組成物に基づき、4~20wt.%、特に6~18wt.%、好ましくは7~15wt.%、より好ましくは8~13wt.%の量の前記無機結合剤を含む場合が十分に実証されている。
無機結合剤を使用することで、特にコーティングの耐摩耗性及び機械特性が向上する。加えて、無機コーティングはしばしば大規模な工業スケールで高価でなく調製又は入手することができるので、無機コーティングを使用することは商業的にも望ましい。前記コーティング組成物が無機結合剤を含む場合、前記無機結合剤は典型的にはケイ素含有結合剤である。
【0033】
更に、有機結合剤に対するプレートレット形状の粒子の重量比が、コーティング組成物中のプレートレット形状の粒子の重量及び有機結合剤の重量に基づき、1:0.8~1:5、特に1:1~1:3、好ましくは1:1~1:2、より好ましくは1:1.1~1:1.4の範囲内である場合が十分に実証されている。
同様に、無機結合剤に対するプレートレット形状の粒子の重量比が、コーティング組成物中のプレートレット形状の粒子の重量及び無機結合剤の重量に基づき、1:1.2~1:12、特に1:1.4~1:6、好ましくは1:1.5~1:2、より好ましくは1:1.6~1:1.8の範囲内である場合が十分に実証されている。
本発明のこのような好ましい実施形態については、本発明のコーティング組成物の更なる実施形態及び特徴との関連で前述した全ての利点、特徴及び特別な特性は、適宜適用される。
【0034】
本発明の更なる好ましい実施形態によると、前記コーティング組成物は以下を含有する
(a1)有機結合剤、ここで、特に、前記有機結合剤は、アクリレート及びアクリレート共重合体からなる群より選択される重合体を含有し、
(a2)無機結合剤、特にケイ素含有結合剤、
(b)前記コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、特にワックス、
(c)プレートレット形状の粒子、特に金属フレーク、及び
(d)増粘剤及び/又はレオロジー添加剤。
本発明のこのような好ましい実施形態については、本発明のコーティング組成物の更なる実施形態及び特徴との関連で前述した全ての利点、特徴及び特別な特性は、適宜適用される。
本発明の更なる好ましい実施形態によると、前記コーティング組成物は以下を含有する
(a1)有機結合剤、ここで、特に、前記有機結合剤は、アクリレート及びアクリレート共重合体からなる群より選択される重合体を含有し、
(a2)無機結合剤、特にケイ素含有結合剤、
(b)前記コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、特にワックス、
(c)プレートレット形状の粒子、特に金属フレーク、及び
(d)増粘剤及び/又はレオロジー添加剤、及び
(e)更なる添加剤。
本発明のこのような好ましい実施形態については、本発明のコーティング組成物の更なる実施形態及び特徴との関連で前述した全ての利点、特徴及び特別な特性は、適宜適用される。
本発明の更なる好ましい実施形態によると、前記コーティング組成物は以下を含有する
(a1)有機結合剤、ここで、特に、前記有機結合剤は、アクリレート及びアクリレート共重合体からなる群より選択される重合体を含有し、
(a2)無機結合剤、特にケイ素含有結合剤、
(b)前記コーティング組成物に基づき少なくとも1.3wt.%の量の潤滑剤、特にワックス、
(c)プレートレット形状の粒子、特に金属フレーク、及び
(d)増粘剤及び/又はレオロジー添加剤、及び
(e)更なる添加剤、及び
(f)充填剤。
本発明のこのような特定の実施形態については、本発明の更なる実施形態及び特徴との関連で前述した全ての利点、特徴及び特別な特性は、適宜適用される。
【0035】
前述した通り、本発明の組成物は、水系組成物であり、つまり、本発明の組成物は、溶媒又は分散剤として水を含む。典型的には、本発明の組成物は、前記コーティング組成物に基づき、40~98wt.%、特に50~95wt.%、好ましくは60~90wt.%、より好ましくは60~85wt.%の量の水を含む。
加えて、前記コーティング組成物は、好ましくは、少量の有機溶媒及び揮発性有機化合物(VOC)のみを含有する。典型的には、前記コーティング組成物は、前記コーティング組成物に基づき、3wt.%未満、特に1wt.%未満、好ましくは0.5wt.%未満、より好ましくは0.3wt.%未満、特に好ましくは0.1wt.%未満の量の有機溶媒及び揮発性有機化合物を含む。好ましくは、前記コーティング組成物は、有機溶媒及び揮発性有機化合物を含まない。
ここで、本発明のコーティング組成物の粘度に関する限り、これは幅広い範囲で変化してもよい。しかし、本発明との関連で、前記コーティング組成物が、2~5,000mPas、特に5~1,000mPas、好ましくは5~500mPas、より好ましくは10~100mPas、特に好ましくは30~50mPasの範囲内の20°CにおけるBrookfield動的粘度を有する場合に、特に良好な結果が得られる。上述の範囲の粘度で、特に薄く且つ均一なトップコートコーティングを得ることができる。
【0036】
本発明の更なる主題は、-本発明の第二態様に従って-金属基材、特に陰極腐食防止コーティングが施された金属基材、上に、選択的に調節可能な摩擦の係数を有するコーティングを製造するためのトップコートとしての前述のコーティング組成物の使用である。
本発明のこの態様における更なる詳細について、本発明の他の態様における説明を参照することができ、それは本発明の使用に従い適用される。
【0037】
また、本発明の更なる主題は、-本発明の第三態様に従って-選択的に調節することができる摩擦の係数を有するコーティングの製造方法であり、ここで
(a)第一の方法工程において、陰極腐食防止コーティングを少なくとも一部の領域に備えた基材を提供し、
(b)前記第一の方法工程(a)に続く第二の方法工程において、請求項1~14のいずれか1項に記載のコーティング組成物を少なくとも前記基材の一部の領域に適用し、及び
(c)前記第二の方法工程(b)に続く第三の方法工程において、前記第二の方法工程(b)で適用したコーティング組成物を乾燥させる。
本発明との関連で、特に、前記第二の方法工程(b)で前記基材に適用されたコーティング組成物を、前記第三の方法工程(c)で硬化及び/又は架橋する場合が好ましい。
典型的には、前記基材は金属を含有する、又は金属からなる。好ましくは、前記基材は金属からなる。これに関連して、前記金属が、鉄、アルミニウム、マグネシウム、並びにそれらの混合物及び合金からなる群より選択される場合に、特に良好な結果が得られる。
本発明との関連で、前記金属が、鉄及びその合金、特に鋼鉄、より選択される場合が好ましい。
本発明との関連で、基材は、前記コーティング組成物でコーティングすることができる物品を意味する。
典型的には、本発明との関連で、前記基材は、シート、成形品、小型部品、及びそれらの混合物より選択される。
これに関連して、前記基材が、小型部品、好ましくは大量バルク材料、であり、特に、ねじ、ナット、ボルト、ワッシャー、リベット、及びそれらの混合物より選択される場合が好ましい。
本発明との関連で、前記基材がねじ又はナット、特にボルトである場合が好ましい。
【0038】
本発明のコーティング組成物及び本発明の方法の特定の利点、即ち摩擦の係数の特定の設定は、ねじの場合に特に効果的である。
前記陰極腐食防止コーティングに関して、それが少なくとも一部の領域に、好ましくは表面全体にわたって、前記基質に適用される限り、これは、通常、亜鉛、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、並びにそれらの混合物及び合金からなる群より選択される金属を含有する。
好ましくは、前記陰極腐食防止コーティングは亜鉛及びその合金を含有する。
本発明との関連で、前記陰極腐食防止コーティングが、亜鉛含有コーティング、特に電気めっき亜鉛コーティング、特に電気めっき亜鉛-ニッケルコーティング、溶融亜鉛めっきコーティング、亜鉛粉末コーティング、特に亜鉛塗料、及び亜鉛フレークコーティング、の群より選択される場合が十分に実証されている。好ましくは、前記陰極腐食防止コーティングは、電気めっき亜鉛コーティング、特に電気めっき亜鉛-ニッケルコーティング、亜鉛粉末コーティング、及び亜鉛フレークコーティングの群より選択される。亜鉛粉末コーティング及び亜鉛フレークコーティングは、特に亜鉛合金も含有してもよい。好ましくは、前記亜鉛合金は、亜鉛に加えてアルミニウム及び/又はマグネシウム、好ましくはアルミニウム及びマグネシウム、を含有する。
本発明との関連で、方法工程(b)で、前記コーティング組成物が、1~12μm、特に1~10μm、好ましくは1~8μm、更に好ましくは2~8μm、非常に好ましくは2~7μmの範囲の層厚で、基材又は陰極腐食防止コーティングに適用される場合が十分に実証されている。
【0039】
前記コーティング組成物は、任意の適切な方法により、方法工程(b)において適用することができる。
しかし、通常、方法工程(b)において、前記コーティング組成物は、噴霧、ブラシがけ、スクレイピング、圧延塗布(rolling)、ディッピング、又はディップスピニング(dip spining)を用いて前記基材に適用する。方法工程(b)において、ディッピング、又はディップスピニングを用いて前記コーティング組成物を適用する場合に特に良好な結果が得られる。ディッピング、又はディップスピニングは、特に大量バルク材料、例えば小型部品、へのコーティングに適する。本発明の範囲内において、前記コーティング組成物を前記基材又は前記陰極腐食防止コーティングの表面全体に適用する場合が好ましい。
方法工程(c)において前記コーティング組成物を乾燥する温度は、選択した基材、そこに適用する陰極腐食防止コーティング、及び適用するコーティング組成物によって広範囲にわたり変化することができる。
しかし、方法工程(c)において、前記コーティング組成物を、20~300°C、特に30~250°C、好ましくは40~200°C、より好ましくは50~180°C、更に好ましくは55~160°C、最も好ましくは60~150°Cの範囲の温度で乾燥する場合が有用であると実証されている。
上記の温度で、通常、結合剤系の急速乾燥又は硬化及び/又は架橋を行い、前記有機結合剤の分解は回避される。
同様に、方法工程(c)において、前記コーティング組成物を、1~30分、特に2~25分、好ましくは3~20分、より好ましくは5~15分の時間で乾燥する場合に都合がよいことが見出されている。
【0040】
前述した通り、本発明の範囲内において、目的の様式で、得られるコーティング、特にトップコート、の摩擦の係数を設定することが可能である。従って、前記コーティング組成物を適用することにより、DIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して決定される、コーティングされた基材の摩擦の係数が、0.09~0.16の範囲内で設定される場合に、特に良好な結果が得られる。特に、前記コーティング組成物の個々の成分、特に有機及び無機結合剤の量、潤滑剤の種類及び量、並びにプレートレット形状の粒子の量、を調和させることにより、摩擦係数を設定する。
本発明のこの態様における更なる詳細については、本発明の他の態様における前述の説明を参照することができ、それは本発明の使用に関して適切に適用される。
【0041】
最後に、本発明の更なる主題は、-本発明の第四態様に従って-特に前述したコーティング組成物を用いて、又は前述した方法に従って、得ることができるコーティングを有する金属基材であって、前記コーティングが、前記コーティングに基づき、少なくとも4.5wt.%の量の潤滑剤を含有する。
前記コーティングが、前記コーティングに基づき、4.5wt.%超、特に5wt.%超、好ましくは10wt.%超、より好ましくは12wt.%超、特に好ましくは15wt.%超の量の前記潤滑剤を有する場合が有利であることが実証されている。
同様に、前記コーティングが、前記コーティングに基づき、35wt.%未満、特に30wt.%未満、好ましくは25wt.%未満、より好ましくは22wt.%未満、特に好ましくは20wt.%未満の量の前記潤滑剤を有する場合に、良好な結果が得られる。
更に、本発明との関連で、前記コーティングが、前記コーティングに基づき、4.5~35wt.%、特に5~30wt.%、好ましくは10~25wt.%、より好ましくは12~22wt.%、特に好ましくは15~20wt.%の量の前記潤滑剤を有する場合が好ましい。
通常、前記基材は依然として、前記コーティング、特に前記トップコート、特にベースコート形態、中の陰極腐食防止コーティングを含有する。
この場合、前記コーティング、特に前記トップコートは、好ましくは、1~10μm、特に1~8μm、好ましくは1~7μm、より好ましくは2~7μm、特に好ましくは2~6μmの範囲の層厚を有する。
【0042】
典型的には、前記コーティング、特に前記トップコートは、前記コーティング、特に前記トップコートに基づき、30~90wt.%、特に39~90wt.%、好ましくは45~80wt.%、より好ましくは50~70wt.%、特に好ましくは55~65wt.%の量の前記結合剤を有する。
本発明の範囲内で有機及び無機結合剤の混合物を使用する場合、前記コーティング、特に前記トップコートが、前記コーティング、特に前記トップコートに基づき、5~35wt.%、特に9~35wt.%、好ましくは15~32wt.%、より好ましくは20~30wt.%、特に好ましくは25~30wt.%の量の前記有機結合剤を含む場合が十分に実証されている。
同様に、本発明との関連で、前記コーティング、特に前記トップコートが、前記コーティング、特に前記トップコートに基づき、25~75wt.%、特に30~60wt.%、好ましくは30~50wt.%、より好ましくは30~40wt.%、特に好ましくは32~35wt.%の量の前記無機結合剤を含む場合が好ましい。
有機結合剤に対する無機結合剤の重量比が、前記コーティング、特に前記トップコートにおける無機結合剤の重量及び有機結合剤の重量に基づき、1:1~2.25:1、特に1.1:1~2.0:1、好ましくは1.2:1~1.5:1の範囲内である場合が更に十分に実証されている。
前記コーティング、特に前記トップコートが、前記コーティングに基づき、1~30、特に10~30wt.%、好ましくは15~25wt.%、より好ましくは17~22wt.%の量の前記プレートレット形状の粒子を有する場合もまた好ましい。
【0043】
潤滑剤に対するプレートレット形状の粒子の重量比が、前記コーティング、特に前記トップコートにおけるプレートレット形状の粒子の重量及び潤滑剤の重量に基づき、0.8:1~1.8:1、特に1:1~1.6:1、好ましくは1.1:1~1.4:1の範囲内である場合に、特に良好な結果が得られる。
更に、結合剤に対するプレートレット形状の粒子の特別な比率が示される場合に、非常に良好な結果を得ることができる。このように、結合剤に対するプレートレット形状の粒子の重量比が、前記コーティング、特に前記トップコートにおけるプレートレット形状の粒子の重量及び結合剤の重量に基づき、1:2~1:17、特に1:2.4~1:9、好ましくは1:2.5~1:4、より好ましくは1:2.7~1:3.2の範囲内である場合が十分に実証されている。
前記コーティングが有機及び無機結合剤の混合物を含む場合、有機結合剤に対するプレートレット形状の粒子の重量比が、前記コーティング、特に前記トップコートにおけるプレートレット形状の粒子の重量及び有機結合剤の重量に基づき、1:0.8~1:5、特に1:1~1:3、好ましくは1:1~1:2、より好ましくは1:1.1~1:1.4の範囲内である場合が十分に実証されている。
同様に、無機結合剤に対するプレートレット形状の粒子の重量比が、前記コーティング、特に前記トップコートにおけるプレートレット形状の粒子の重量及び無機結合剤の重量に基づき、1:1.2~1:12、特に1:1.4~1:6、好ましくは1:1.5~1:2、より好ましくは1:1.6~1:1.8の範囲内である場合が十分に実証されている。
更に、前記コーティングされた基材の摩擦の係数が、DIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して決定され、0.09~0.16の範囲内で変化する場合が好ましい。
本発明の基材における更なる詳細については、本発明の他の態様における上述の説明を参照することができ、それは本発明の基材に関して適切に適用される。
本発明の主題は、例示的かつ非限定的な方法で実施例を参照して以下に明記する。
【実施例0044】
本発明及びその利点を更に説明するため、本発明のトップコート組成物を用いて一連の試験を実施する。この目的のために、前記コーティング組成物を最初にねじに適用し、及び硬化する。その後、前記ねじの滑り及び摩擦特性を決定する。その後、その結果を、PTFEを含む先行技術のトップコート組成物でコーティングしたねじの摩擦の特性と比較する。
【0045】
1.本発明のトップコート
トップコート1を製造するための本発明のコーティング組成物1は、有機結合剤として純粋なアクリレートを、並びに無機結合剤としてシラン加水分解物及びリチウム水ガラスの混合物を含有する。コーティング組成物1は、更に、潤滑剤として微粉化PEワックスを、及びプレートレット形状の粒子としてアルミニウムフレークを、及び更なる添加剤を含有する。
組成物を以下の表1に示す。
【表1】
【0046】
2.本発明のトップコートとPTFEを含むトップコートとの比較例
各々の場合に、内部支持体として設計された5個のM 10×65ねじを、最初に潤滑及び滑り特性を有さない亜鉛フレークベースコート(Dorken社の製品DELTA-PROTEKT KL 120)で10μmの層厚にコーティングする。
次に、本発明のトップコート又はPTFEを含むトップコートを、この方法でコーティングしたねじに適用し、及び硬化する。各々の場合の層厚は、約3μmである。Dorken社の製品DELTA-PROTEKT VH 301.1 GZは、無機及び有機結合剤の混合物並びに潤滑剤としてのPTFEを含有しており、PTFE含有トップコートとして使用する。
次に、DIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して、合わせ面として鋼鉄を用いて、摩擦の係数を決定する。前記ボルトを各5回締め付け及び緩ませる。頭部(μ
head)及びねじ山(μ
thread)における摩擦の係数を測定し、並びにその後合計の摩擦の係数(μ
total)を決定する。
個別に測定した値を、本発明のトップコートについて表2に、及び比較例について表3に示す。
【表2】
【表3】
【0047】
図1及び2において、表2及び3に示す測定値に対する、測定値の範囲、中央値の25%百分位数、及び75%百分位数が描かれる。
図1及び2において、μ
bはねじの頭部における測定された摩擦の係数を表し、μ
thはねじ山における測定された摩擦の係数を、及びμ
totは合計の摩擦の係数を表す。
本発明のトップコート(
図1)及び先行技術のPTFE含有の製品(
図2)は、いずれもねじ頭部及びねじ山の両方で決定される摩擦の係数並びに合計の摩擦の係数においても要求される摩擦の係数の範囲内である0.09~0.16に収まり、ここで本発明のトップコートは、先行技術の製品より、個々に測定された値のばらつきが顕著に小さいことが分かる。
【0048】
3.焼付け温度の影響
更なる一連の試験において、インナービームとして設計された5個のM 10×65ボルトを、亜鉛フレークベースコート(Dorken社の製品DELTA-PROTEKT KL 100)でコーティングする。硬化後、層厚は約10μmである。
このようにコーティングしたねじを、その後表1に従ったコーティング組成物1でコーティングする。硬化後のコーティング重量は2.5~5g/m2である。硬化温度は60~200°Cで変化させ、及び硬化時間はいずれの場合も20分である。その後、DIN EN ISO 16047:2013-01に準拠して、鋼鉄をカウンター層として用いて、摩擦の係数を決定する。摩擦係数の測定データは、表4に示す。
【表4】
G:層重量、g/m
2
T:焼付け温度、℃
期待した通り、摩擦の係数はほぼ一定であり、及び高温の焼付け温度でも増加しないことが分かる。