(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119728
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】インクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240827BHJP
B41J 2/18 20060101ALI20240827BHJP
B41J 2/175 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B41J2/17
B41J2/18
B41J2/175 305
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023161224
(22)【出願日】2023-09-25
(31)【優先権主張番号】P 2023025978
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100135013
【弁理士】
【氏名又は名称】西田 隆美
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀明
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 勇斗
(72)【発明者】
【氏名】辻 孝則
(72)【発明者】
【氏名】小川 晃広
(72)【発明者】
【氏名】浜口 暢
(72)【発明者】
【氏名】中川 美樹
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA28
2C056EB03
2C056EB16
2C056EB30
2C056EB50
2C056EC03
2C056EC16
2C056EC40
2C056FA04
2C056FA13
2C056KA01
2C056KB16
2C056KB26
2C056KB37
2C056KC02
2C056KC20
(57)【要約】
【課題】循環流路を有するインクジェット装置において、過熱によるインクの劣化を低減する技術を提供する。
【解決手段】インクジェット印刷装置1は、循環ポンプ71と、補充ポンプ72と、制御部9とを備える。循環ポンプ71は、接続配管65におけるヒーター74と回収タンク52との間に位置し、回収タンクのインクを前記供給タンクへ送液する。補充ポンプ72は、補充配管66において、補充タンク53のインクを接続配管65へ送液する。補充配管66は、接続配管65におけるヒーター74と回収タンク52との間の接続箇所655に接続されている。制御部9は、ヒーター74の作動時に、ヒーター74を通過するインクの流量が、限界流量以上となるように、循環ポンプ71および補充ポンプ72を制御する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷装置であって、
インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、
前記吐出ヘッドへ供給されるインクを貯留する供給タンクと、
前記吐出ヘッドから回収されたインクを貯留する回収タンクと、
前記供給タンクと前記回収タンクとを接続する接続配管と、
前記接続配管に位置し、前記接続配管内のインクを加熱するヒーターと、
前記接続配管における前記ヒーターと前記回収タンクとの間に位置し、前記回収タンクのインクを前記供給タンクへ送液する循環ポンプと、
前記供給タンクに補充されるインクを貯留する補充タンクと、
前記補充タンクと前記接続配管とを接続する補充配管と、
前記補充配管において、前記補充タンクのインクを前記接続配管へ送液する補充ポンプと、
前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する制御部と、
を備え、
前記補充配管は、前記接続配管における前記ヒーターと前記回収タンクとの間の位置に接続されており、
前記制御部は、前記ヒーターの作動時に、前記ヒーターを通過するインクの流量が、限界流量以上となるように、前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する、インクジェット印刷装置。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記供給タンクに貯留されたインクの量である供給タンク残量を検出する供給タンク残量検出部と、
前記回収タンクに貯留されたインクの量である回収タンク残量を検出する回収タンク残量検出部を備え、
前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量、および、前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量に基づいて、前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する、インクジェット印刷装置。
【請求項3】
請求項2に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量以上であり、且つ前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量が第1回収残量以上の場合、前記循環ポンプの流量を基本循環流量とし、前記補充ポンプの流量を基本補充流量とし、
前記基本循環流量と前記基本補充流量の和は、前記限界流量以上である、インクジェット印刷装置。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量未満の場合、前記循環ポンプの流量を基本循環流量より大きい第1循環流量とする、インクジェット印刷装置。
【請求項5】
請求項4に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量未満の場合、前記補充ポンプの流量を前記基本補充流量とし、
前記第1循環流量と前記基本補充流量の和は、前記限界流量以上である、インクジェット印刷装置。
【請求項6】
請求項3または請求項4に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量が第1回収残量未満の場合、前記循環ポンプの流量を前記基本循環流量より小さい第2循環流量とし、且つ前記補充ポンプの流量を前記基本補充流量より大きい第1補充流量とし、
前記第2循環流量と前記第1補充流量の和は、前記限界流量以上である、インクジェット印刷装置。
【請求項7】
請求項6に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量が第1回収残量未満であり、且つ前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量より大きい第2供給残量以上の場合、前記循環ポンプの流量を前記基本循環流量より小さい第3循環流量とし、且つ前記補充ポンプの流量を前記第1補充流量より小さい第2補充流量とし、
前記第3循環流量と関第2補充流量の和は、前記限界流量以上である、インクジェット印刷装置。
【請求項8】
請求項3または請求項4に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記供給タンクから前記ヘッドへ向けてインクを送る送液部、
をさらに備える、インクジェット印刷装置。
【請求項9】
請求項8に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記制御部は、前記基本循環流量と前記基本補充流量の和が、前記送液部によって前記供給タンクから前記吐出ヘッドへ送られるインクの流量となるように、前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する、インクジェット印刷装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記送液部は、前記供給タンクの内圧を前記回収タンクの内圧より大きくする、インクジェット印刷装置。
【請求項11】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記限界流量は、50ml/min以上である、インクジェット印刷装置。
【請求項12】
請求項1または請求項2に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記ヒーターに流入する前記インクの温度を計測する温度センサ、
をさらに備え、
前記限界流量は、前記温度センサによって計測された温度に応じて変更される、インクジェット印刷装置。
【請求項13】
請求項12に記載のインクジェット印刷装置であって、
前記温度センサによって計測された計測温度が所定の閾値温度よりも低い場合の限界流量は、前記計測温度が前記閾値温度を超える場合の限界流量よりも大きい、インクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示される主題は、インクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェット印刷装置において、印刷媒体に対してインクを吐出する吐出ヘッドへインクを供給し、さらに吐出ヘッドから吐出されなかったインクを回収して、再び吐出ヘッドへ供給する、循環流路が設けられる場合がある。このようなインクの循環流路が設けられたインクジェット印刷装置は、例えば特許文献1に記載されている。
【0003】
特許文献1のインク供給装置は、インクタンクからヘッドへインクを供給するとともに、ヘッドからインクタンクへインクを回収することによって、インクを循環させている。供給ポンプは、インクタンクからヘッドへインクを供給する供給流路の圧力(送液量)を制御し、回収ポンプは、ヘッドからインクタンクへインクを回収する回収流路の圧力(送液量)を制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、インクジェット印刷装置に使用されるインクには、加熱により粘度が変化するものがある。このようなインクをインクタンクからヘッドまで円滑に送り、且つヘッドから安定に吐出させるため、ヒーターによって吐出前のインクを予め加熱し、適切な温度範囲に保つ場合がある。
【0006】
しかしながら、ヒーターが高温の状態で、インクの流れが停止あるいは低速になると、ヒーターの熱によりインクが高温に加熱され、その結果、インクの劣化が進んでしまうおそれがあった。
【0007】
本発明の目的は、循環流路を有するインクジェット装置において、過熱によるインクの劣化を低減する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、第1態様は、インクジェット印刷装置であって、インクを吐出するノズルを有する吐出ヘッドと、前記吐出ヘッドへ供給されるインクを貯留する供給タンクと、前記吐出ヘッドから回収されたインクを貯留する回収タンクと、前記供給タンクと前記回収タンクとを接続する接続配管と、前記接続配管に位置し、前記接続配管内のインクを加熱するヒーターと、前記接続配管における前記ヒーターと前記回収タンクとの間に位置し、前記回収タンクのインクを前記供給タンクへ送液する循環ポンプと、前記供給タンクに補充されるインクを貯留する補充タンクと、前記補充タンクと前記接続配管とを接続する補充配管と、前記補充配管において、前記補充タンクのインクを前記接続配管へ送液する補充ポンプと、前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する制御部と、を備え、前記補充配管は、前記接続配管における前記ヒーターと前記回収タンクとの間の位置に接続されており、前記制御部は、前記ヒーターの作動時に、前記ヒーターを通過するインクの流量が、限界流量以上となるように、前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する。
【0009】
第2態様は、第1態様のインクジェット印刷装置であって、前記供給タンクに貯留されたインクの量である供給タンク残量を検出する供給タンク残量検出部と、前記回収タンクに貯留されたインクの量である回収タンク残量を検出する回収タンク残量検出部を備え、前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量、および、前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量に基づいて、前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する。
【0010】
第3態様は、第2態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量以上であり、且つ前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量が第1回収残量以上の場合、前記循環ポンプの流量を基本循環流量とし、前記補充ポンプの流量を基本補充流量とし、前記基本循環流量と前記基本補充流量の和は、前記限界流量以上である。
【0011】
第4態様は、第3態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量未満の場合、前記循環ポンプの流量を基本循環流量より大きい第1循環流量とする。
【0012】
第5態様は、第4態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量未満の場合、前記補充ポンプの流量を前記基本補充流量とし、前記第1循環流量と前記基本補充流量の和は、前記限界流量以上である。
【0013】
第6態様は、第3態様または第4態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量が第1回収残量未満の場合、前記循環ポンプの流量を前記基本循環流量より小さい第2循環流量とし、且つ前記補充ポンプの流量を前記基本補充流量より大きい第1補充流量とし、前記第2循環流量と前記第1補充流量の和は、前記限界流量以上である。
【0014】
第7態様は、第6態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記回収タンク残量検出部によって検出された前記回収タンク残量が第1回収残量未満であり、且つ前記供給タンク残量検出部によって検出された前記供給タンク残量が第1供給残量より大きい第2供給残量以上の場合、前記循環ポンプの流量を前記基本循環流量より小さい第3循環流量とし、且つ前記補充ポンプの流量を前記第1補充流量より小さい第2補充流量とし、前記第3循環流量と前記第2補充流量の和は、前記限界流量以上である。
【0015】
第8態様は、第3態様または第4態様のインクジェット印刷装置であって、前記供給タンクから前記ヘッドへ向けてインクを送る送液部をさらに備える。
【0016】
第9態様は、第8態様のインクジェット印刷装置であって、前記制御部は、前記基本循環流量と前記基本補充流量の和が、前記送液部によって前記供給タンクから前記吐出ヘッドへ送られるインクの流量となるように、前記循環ポンプおよび前記補充ポンプを制御する。
【0017】
第10態様は、第8態様または第9態様のインクジェット印刷装置であって、前記送液部は、前記供給タンクの内圧を前記回収タンクの内圧より大きくする。
【0018】
第11態様は、第1態様または第2態様のインクジェット印刷装置であって、前記限界流量は、50ml/min以上である。
【0019】
第12態様は、第1態様または第2態様のインクジェット印刷装置であって、前記ヒーターに流入する前記インクの温度を計測する温度センサ、をさらに備え、前記限界流量は、前記温度センサによって計測された温度に応じて変更される。
【0020】
第13態様は、第12態様のインクジェット印刷装置であって、前記温度センサによって計測された計測温度が所定の閾値温度よりも低い場合の前記限界流量は、前記計測温度が前記閾値温度を超える場合の限界流量よりも大きい。
【発明の効果】
【0021】
第1態様から第13態様のインクジェット印刷装置によれば、インクの過熱による、インクの劣化を低減できる。
【0022】
第2態様のインクジェット印刷装置によれば、供給タンクのインク残量および回収タンクのインク残量が適切な量となるように、循環ポンプおよび補充ポンプを制御できる。
【0023】
第3態様のインクジェット印刷装置によれば、基本循環流量と前記基本補充流量の和を、前記限界流量以上とすることで、インクの劣化を低減できる。
【0024】
第4態様のインクジェット印刷装置によれば、回収タンクから供給タンクへインクを補充できる。
【0025】
第5態様のインクジェット印刷装置によれば、第1循環流量と基本補充流量の和を、前記限界流量以上とすることによって、インクの劣化を低減できる。
【0026】
第6態様のインクジェット印刷装置によれば、回収タンク残量の低下を回避するために循環ポンプの流量を低下させたとしても、補充ポンプの流量を大きくすることで、ヒーターの流量を限界流量より大きくすることができる。
【0027】
第7態様のインクジェット印刷装置によれば、供給タンクが溢れることを回避しつつ、過熱によるインクの劣化を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成を示す図である。
【
図2】1つのインク供給部および1つの吐出ヘッドの構成を概念的に示す図である。
【
図3】吐出ヘッドおよびインク供給部の一部を示す斜視図である。
【
図4】制御部とインクジェット印刷装置の各部との接続を示すブロック図である。
【
図5】制御部が実行する循環処理の流れを示す図である。
【
図6】制御部が実行する循環処理の流れを示す図である。
【
図7】制御部が実行する循環処理の流れを示す図である。
【
図8】循環処理におけるインク供給部の各状態を示す図である。
【
図9】循環処理におけるインク供給部の各状態を示す図である。
【
図10】循環処理におけるインク供給部の各状態を示す図である。
【
図11】循環処理におけるインク供給部の各状態を示す図である。
【
図12】循環処理におけるインク供給部の各状態を示す図である。
【
図13】循環処理におけるインク供給部の各状態を示す図である。
【
図14】ヒーターに進入するインクの温度と限界流量との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、この実施形態に記載されている構成要素はあくまでも例示であり、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。図面においては、理解容易のため、必要に応じて各部の寸法や数が誇張又は簡略化して図示されている場合がある。
【0030】
<実施形態>
図1は、実施形態に係るインクジェット印刷装置1の構成を示す図である。インクジェット印刷装置1は、長尺帯状の連続紙10を搬送しつつ、複数のヘッドユニット35から連続紙10へ向けて水性のインクの液滴を吐出することにより、連続紙10の表面に文字や画像を記録する、インクジェット方式の印刷機である。連続紙10は、印刷媒体の一例である。なお、印刷媒体は、単票紙であってもよいし、プラスチックフィルム、段ボール、金属箔、またはガラス製の基材等であってもよい。また、インクジェット印刷装置1においてヘッドユニット35が吐出するインクは、例えば水性インクである。ただし、ヘッドユニット35が吐出するインクは、油性インクまたはUVインクなどであってもよい。
【0031】
図1に示されるように、インクジェット印刷装置1は、巻き出しローラ11と、巻き取りローラ12と、搬送部2と、印刷部3と、制御部9とを備える。
【0032】
巻き出しローラ11は、ロール状に巻かれた連続紙10を保持している。巻き出しローラ11は、回転することによって連続紙10を繰り出し、搬送部2に連続紙10を供給する。巻き取りローラ12は、連続紙10をロール状に巻き取る。インクジェット印刷装置1では、巻き出しローラ11および巻き取りローラ12によって、連続紙10がロールtoロールで搬送される。
【0033】
搬送部2は、巻き出しローラ11から供給された連続紙10を、巻き取りローラ12へ搬送する。搬送部2は、駆動ローラ21と、ニップローラ23と、複数の搬送ローラ25とを有する。駆動ローラ21は、モータに接続されており、モータの動力によって能動回転する。ニップローラ23は、駆動ローラ21とともに連続紙10を挟み込む。ニップローラ23は、連続紙10を介して駆動ローラ21を押圧することにより、駆動ローラ21が連続紙10を搬送するためのグリップ力を発生させる。複数の搬送ローラ25は、受動回転する。なお、複数の搬送ローラ25のうち少なくとも一部は、能動回転可能に構成されていてもよい。
【0034】
印刷部3は、4つのヘッドユニット35と、4つのインク供給部4とを有する。4つのヘッドユニット35は、互いに同様の構造を有し、4つのインク供給部4は、互いに同様の構造を有する。
【0035】
4つのヘッドユニット35は、互いに搬送方向に間隔を空けて配列されている。4つのヘッドユニット35はそれぞれ、ノズル83から連続紙10の表面に向けてインクの液滴を吐出する。4つのヘッドユニット35は、互いに異なる色(例えば、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラック)のインクを吐出することによって、連続紙10の表面に、それぞれ単色画像を記録する。4つの単色画像の重ね合わせにより、連続紙10の上面に、多色画像が形成される。
【0036】
図2は、1つのインク供給部4および1つのヘッドユニット35の構成を概念的に示す図である。本実施形態では、各ヘッドユニット35は、複数の吐出ヘッド80を有する。本例では、各ヘッドユニット35は、5つの吐出ヘッド80を有する。複数の吐出ヘッド80は、互いに同じ構造を有する。
図2では、1つの吐出ヘッド80のみを詳細に図示されており、残りの4つの吐出ヘッド80を、簡略化して図示されている。
図2に示されるように、吐出ヘッド80は、筐体81と、内部タンク82と、複数のノズル83とを有する。
【0037】
筐体81は、吐出ヘッド80の外枠を形成する。内部タンク82は、筐体81の内部に配設され、インクを一時的に貯留することが可能である。複数のノズル83は、筐体81の下部において、互いに連続紙10の搬送方向および幅方向に等間隔に配列されている。複数のノズル83は、内部タンク82とそれぞれ連通する。また、各ノズル83は、ピエゾ素子831と、インク室832と、吐出口830とを有する。ピエゾ素子831は、圧力発生素子である。インク室832は、内部タンク82に連通する。
【0038】
内部タンク82のインクは、インク室832へ流下する。そして、ピエゾ素子831によって、インク室832内のインクが加圧されることにより、吐出口830からインクの液滴が吐出される。なお、インクの吐出方式は、圧力発生素子としてヒーターを用いる、いわゆるサーマル方式であってもよい。
【0039】
インク供給部4は、ヘッドユニット35へインクを供給し、且つヘッドユニット35から吐出されなかったインクを回収することによって、インクを循環させる装置である。4つのインク供給部4の構造は互いに同じである。
【0040】
図2に示されるように、インク供給部4は、供給タンク51と、回収タンク52と、補充タンク53と、供給側マニフォールド61と、複数(本実施形態では、5つ)の供給側分岐配管62と、複数(本実施形態では、5つ)の回収側分岐配管63と、回収側マニフォールド64と、接続配管65と、補充配管66と、循環ポンプ71と、補充ポンプ72と、逆流防止開閉弁73と、ヒーター74と、第1フィルタ75と、第2フィルタ76と、脱気ユニット77とを有する。
【0041】
供給タンク51は、ヘッドユニット35へ供給されるインクを一時的に貯留するための容器である。供給タンク51は、内部室を有する。内部室は、インクを一時的に貯留することが可能である。
【0042】
供給タンク51には、4つの液面センサ511,512,513,514が取り付けられている。液面センサ511~514は、制御部9と電気的に接続されている。液面センサ511~514は、供給タンク51の内部室に貯留されたインクの液面の高さをそれぞれ検出し、制御部9に信号を出力する。液面センサ511は液面の高さが供給レベルL11以上か検出し、液面センサ512は液面の高さが供給レベルL12以上か否かを検出し、液面センサ513は液面の高さが供給レベルL13以上か否かを検出し、液面センサ514は液面の高さが供給レベルL14以上か否かを検出する。供給レベルL12は供給レベルL11より高いレベルであり、供給レベルL13は供給レベルL12より高いレベルであり、供給レベルL14は供給レベルL13より高いレベルである。液面の高さは、貯留されているインクの残量を示しており、液面の高さ(レベル)が高いほど、インクの残量が多い。液面センサ511~514は、供給タンク51におけるインクの残量(以下、「供給タンク残量」)を検出する、「供給タンク残量検出部」の一例である。液面センサ511~514は、静電容量式のレベルセンサである。ただし、供給タンク残量検出部は、液面反射型のレベルセンサなどであってもよい。
【0043】
供給側マニフォールド61および5つの供給側分岐配管62は、供給タンク51と、1つのヘッドユニット35が有する5つの吐出ヘッド80と、を接続している。
図3は、ヘッドユニット35およびインク供給部4の一部を示す斜視図である。なお、
図3では、ヘッドユニット35が有する5つの吐出ヘッド80のうちの1つのみが図示され、供給側マニフォールド61に繋がる5つの供給側分岐配管62のうちの1つのみが図示され、回収側マニフォールド64に繋がる5つの回収側分岐配管63のうちの1つのみが図示されている。
【0044】
図2および
図3に示されるように、供給側マニフォールド61の上流端は、供給タンク51の内部室に連通接続されている。5つの供給側分岐配管62は、供給側マニフォールド61から分岐する。供給側マニフォールド61は、供給側分岐配管62より太い管である。各供給側分岐配管62の上流端は、供給側マニフォールド61の内部通路に連通されている。各供給側分岐配管62の下流端は、1つの吐出ヘッド80の内部タンク82に連通接続されている。なお、供給側マニフォールド61または供給側分岐配管62は、開閉弁またはフィルタ等を有していてもよい。
【0045】
5つの回収側分岐配管63および回収側マニフォールド64は、1つのヘッドユニット35が有する5つの吐出ヘッド80と、回収タンク52とを接続している。
図2および
図3に示されるように、5つの回収側分岐配管63は、回収側マニフォールド64から分岐する細管である。各回収側分岐配管63の上流端は、1つの吐出ヘッド80の内部タンク82に連通接続されている。各回収側分岐配管63の下流端は、回収側マニフォールド64の内部通路に連通接続されている。回収側マニフォールド64の下流端は、回収タンク52の内部室に連通接続されている。回収側マニフォールド64は、回収側分岐配管63より太い管である。なお、回収側分岐配管63または回収側マニフォールド64は、開閉弁またはフィルタ等を有していてもよい。
【0046】
回収タンク52は、ヘッドユニット35から回収されたインクを一時的に貯留する。回収タンク52は、インクを貯留する内部室を有する。
【0047】
回収タンク52には、3つの液面センサ521、522,523が取り付けられている。液面センサ521~523は、制御部9と電気的に接続されている。液面センサ521~523は、回収タンク52の内部室に貯留されているインクの液面の高さを検出する。液面センサ521は液面の高さが第1レベルL21以上か否かを検出し、液面センサ522は液面の高さが回収レベルL22以上か否かを検出し、液面センサ523は液面の高さが回収レベルL23以上か否かを検出する。回収レベルL22は回収レベルL21より高いレベルであり、第3回収レベルL23は第2回収レベルL22より高いレベルである。液面センサ521~523は、回収タンク52におけるインクの残量(以下、「回収タンク残量」と称する。)を検出する、「回収タンク残量検出部」の一例である。液面センサ521~523は、静電容量式のレベルセンサである。ただし、回収タンク残量検出部は、液面反射型のレベルセンサなどであってもよい。
【0048】
図2に示されるように、インク供給部4は、圧力差形成部55を有する。圧力差形成部55は、供給タンク51および回収タンク52に接続されている。圧力差形成部55は、供給タンク51の内部室の圧力(内圧)と、回収タンク52の内部室の圧力(内圧)とを、調整することによって、供給タンク51の内部室と回収タンク52の内部室との間に圧力差を形成する。
【0049】
詳細には、圧力差形成部55は、加圧部551と減圧部553とを有する。加圧部551および減圧部553は、制御部9によって制御される。加圧部551は、供給タンク51の内部室に気体を供給することなどによって、供給タンク51の内圧を大気圧より大きい正圧とする。減圧部553は、回収タンク52の内部室から気体を吸引することなどによって、回収タンク52の内圧を大気圧より小さい負圧とする。
【0050】
圧力差形成部55が形成する差圧により、供給タンク51に貯留されたインクが、供給側マニフォールド61および各供給側分岐配管62を経由して、各吐出ヘッド80の内部タンク82に送られる。また、圧力差形成部55が形成する差圧により、各吐出ヘッド80から吐出されなかったインクが、各回収側分岐配管63および回収側マニフォールド64を経由して、回収タンク52に送られる。
【0051】
接続配管65は、供給タンク51の内部室と、回収タンク52の内部室と、を連通可能に接続している。
図2に示されるように、接続配管65の上流端は、回収タンク52の内部室に連通接続されている。また、接続配管65の下流端は、供給タンク51の内部室に連通接続されている。接続配管65には、循環ポンプ71と、逆流防止開閉弁73と、ヒーター74と、第2フィルタ76と、脱気ユニット77とが取り付けられている。なお、接続配管65における、逆流防止開閉弁73とヒーター74との間の接続箇所655には、補充配管66が接続されている。
【0052】
循環ポンプ71は、インクを回収タンク52から供給タンク51へ送る送液動作を実行する。循環ポンプ71は、接続配管65の内部通路において、回収タンク52から供給タンク51へ向かうインクの流れを生成する。循環ポンプ71は、好ましくは、駆動時に粉塵等の異物が発生し難いダイヤフラムポンプである。循環ポンプ71の流量は、制御部9によって出力される制御信号によって、複数段階の大きさで変更される。循環ポンプ71の流量は、少なくともゼロ(第2循環流量)、ゼロより大きい基本循環流量、および、基本循環流量より大きい高循環流量(第1循環流量)の3段階で変更される。
【0053】
逆流防止開閉弁73は、接続配管65において、循環ポンプ71よりも下流側、且つ接続箇所655よりも上流側に位置する。逆流防止開閉弁73が閉じると、接続配管65が遮断される。すなわち、逆流防止開閉弁73が閉じた状態では、接続箇所655から循環ポンプ71へと向かうインクの逆流が防止される。逆流防止開閉弁73が開くと、接続配管65が連通される。
【0054】
ヒーター74は、接続配管65を通過するインクを加熱する。ヒーター74は、接続配管65における、接続箇所655と供給タンク51との間に位置する。ヒーター74は、温度センサ741を有する。温度センサ741は、ヒーター74に流入するインクの温度を計測する。なお、温度センサ741は、ヒーター74を通過したインクの温度を計測してもよい。ヒーター74は、制御部9と電気的に接続されている。ヒーター74は、温度センサ741によって計測された温度を示すデータを、制御部9へ出力する。制御部9は、温度センサ741によって計測された温度に基づいてヒーター74を制御する。
【0055】
第2フィルタ76は、接続配管65における、接続箇所655と供給タンク51との間に位置する。第2フィルタ76は、接続配管65内を流れるインクを濾過し、インク中に含まれる異物を除去する。第2フィルタ76の濾過径(第2フィルタ76の目の大きさ)は、例えば、4~6μmである。
【0056】
脱気ユニット77は、接続配管65における、接続箇所655と供給タンク51との間に位置する。本実施形態の脱気ユニット77は、例えば、中空糸膜脱気モジュールである。脱気ユニット77は、接続配管65内を流れるインク中の気泡を除去する。
【0057】
補充タンク53は、供給タンク51へ補充されるインクを貯留する。補充タンク53は、インクを貯留することが可能な内部室を有する。補充タンク53は、上記の供給タンク51と回収タンク52との間を循環するインクの循環流路の外部に位置する。
【0058】
補充配管66は、補充タンク53の内部室と、接続配管65と、を連通可能に接続する。
図2に示すように、補充配管66は、上流端において、補充タンク53の内部室に接続されている。また、補充配管66は、下流端の接続箇所655において、接続配管65と接続されている。接続箇所655は、接続配管65における、循環ポンプ71と、供給タンク51との間に位置する。接続箇所655は、接続配管65における、逆流防止開閉弁73と、供給タンク51との間に位置する。また、補充配管66には、補充ポンプ72と、第1フィルタ75とが取り付けられている。
【0059】
補充ポンプ72は、補充タンク53から接続配管65へインクを送る送液動作を実行する。補充ポンプ72は、例えば、ダイヤフラムポンプである。補充ポンプ72の流量は、制御部9によって出力される制御信号によって、複数段の大きさに変更される。以下、補充ポンプ72の流量を、「補充流量」と称する。補充流量は、少なくとも、ゼロである基本補充流量、基本補充流量より大きい高補充流量(第1補充流量)、および、基本補充流量より大きく且つ高補充流量より小さい低補充流量(第2補充流量)の3段階で変更される。
【0060】
第1フィルタ75は、補充配管66における、補充ポンプ72と接続箇所655との間に位置する。第1フィルタ75は、補充配管66を流れるインクを濾過し、インク中に含まれる異物を除去する。第1フィルタ75の濾過径(第1フィルタ75の目の大きさ)は、例えば、10~30μm程度である。すなわち、第1フィルタ75の濾過径は、第2フィルタ76の濾過径以上である。ただし、第1フィルタ75の濾過径は、第2フィルタ76の濾過径未満であってもよい。
【0061】
制御部9は、インクジェット印刷装置1の各部を制御するための情報処理装置である。
図1に示されるように、制御部9は、CPU等のプロセッサ91と、RAM等のメモリ92と、ハードディスクドライブ等の記憶部93と、を有する。記憶部93は、連続紙10を搬送しつつ印刷処理を実行する処理、および、ヘッドユニット35へインクを供給する処理を実行するためのプログラム931を記憶している。また、記憶部93は、連続紙10に印刷するべき画像を示す印刷データ933を記憶している。
【0062】
図4は、制御部9とインクジェット印刷装置1の各部との接続を示すブロック図である。
図4に示されるように、制御部9は、搬送部2、各ヘッドユニット35、各インク供給部4の循環ポンプ71、補充ポンプ72、逆流防止開閉弁73、ヒーター74、液面センサ511~514、液面センサ521~523、温度センサ741、加圧部551及び減圧部553と、通信可能に接続されている。制御部9は、プログラム931に従って、これらの各部を動作制御する。これにより、連続紙10の搬送および印刷処理が進行し、且つ各吐出ヘッド80の内部タンク82へインクが供給される。
【0063】
<循環処理>
図5~7は、制御部9が実行する循環処理の流れを示す図である。循環処理は、インク供給部4においてインクを循環させるための処理である。
図8~13は、循環処理におけるインク供給部4の各状態を示す図である。
【0064】
循環処理の間、圧力差形成部55は、供給タンク51からヘッドユニット35へ、一定量のインクを送る。以下の説明では、圧力差形成部55によって供給タンク51からヘッドユニット35へ送られるインクの流量(供給側マニフォールド61を通過するインクの流量)を、「送液流量」と称する。送液流量は、例えば400ml/minである。
【0065】
循環処理の間、制御部9は、ヒーター74を作動させることによって、ヒーター74を通過するインクを加熱する。なお、ヒーター74が高温である場合において、ヒーター74におけるインクの流れが停止または低速になると、ヒーター74の熱でインクが高温となり、その結果、インクの劣化が進むおそれがある。このようなインクの過熱を回避するため、制御部9は、ヒーター74におけるインクの流量が、限界流量以上となるように、循環ポンプ71および補充ポンプ72を制御する。つまり、限界流量とは、ヒーター74でインクが過熱して劣化することを抑制することができる程度のインクの流量を意味している。限界流量は、例えば、50ml/minである。ただし、限界流量は、50ml/min以上の値としてもよい。限界流量は、ヒーター74の種類およびインクの種類に応じて変動し得る。
【0066】
循環処理が開始されると、まず、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量とし、補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)とする(
図5:ステップS1)。基本循環流量は、例えば400ml/minである。循環ポンプ71の基本循環流量と、補充ポンプ72の基本補充流量(ゼロ)は、圧力差形成部55の送液流量と一致している。吐出ヘッド80からのインクが吐出されていない状態で、循環ポンプ71の流量を基本循環流量、補充ポンプ72の流量を基本補充流量とすると、供給タンク残量および回収タンク残量は、それぞれほぼ一定に保たれる。なお、基本循環流量と基本補充流量との和が送液流量と一致していることは必須ではなく、互いに異なっていてもよい。
【0067】
ステップS1の後、制御部9は、供給タンク残量が供給レベルL12未満か判定する(
図5:ステップS11)。ステップS11によって供給タンク残量が供給レベルL12未満であると判定された場合(ステップS11においてYES)、制御部9は、回収タンク残量が回収レベルL22以上か判定する(
図5:ステップS12)。
【0068】
ステップS12によって回収タンク残量が回収レベルL22以上と判定された場合(ステップS12においてYES)、制御部9は、循環ポンプ71の流量を、基本循環流量より大きい高循環流量とする(
図5:ステップS13)。高循環流量は、例えば420ml/minである(
図8参照)。
【0069】
ステップS12によって回収タンク残量が回収レベルL22以上でないと判定された場合(ステップS12においてNO)、制御部9は、循環ポンプ71の流量をゼロとし、補充ポンプ72の流量を高補充流量とする(
図5:ステップS14)。補充ポンプ72の高補充流量は、例えば700ml/minである(
図9参照)。なお、ステップS14において、制御部9は、補充ポンプ72を駆動する前に、逆流防止開閉弁73を閉じる。これにより、補充タンク53から補充されるインクは、回収タンク52ではなく、ヒーター74へ、引いては供給タンク51へ送られる。
【0070】
ステップS13またはステップS14の後、制御部9は、供給タンク残量が供給レベルL13以上か判定する(
図5:ステップS15)。ステップS15によって供給タンク残量が供給レベルL13以上と判定された場合(ステップS15においてYES)、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量とし、補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)とする(
図5:ステップS16)。なお、ステップS16において、逆流防止開閉弁73が閉じられている場合は、制御部9は、逆流防止開閉弁73を開けてから、循環ポンプ71を駆動させる。ステップS15によって供給タンク残量が供給レベルL13以上でないと判定された場合(ステップS15においてNO)、制御部9は、ステップS15を繰り返し実行する。
【0071】
供給タンク残量が供給レベルL13以上の場合、供給タンク残量は充分に大きい。このため、
図8に示されるように、ステップS16によって、供給タンク51に対する回収タンク52または補充タンク53からのインクの補充が停止される。
【0072】
ステップS11によって供給タンク残量が供給レベルL12未満ではないと判定された場合(ステップS11においてNO)、制御部9は、供給タンク残量が供給レベルL13未満か判定する(
図6:ステップS21)。ステップS21によって供給タンク残量が供給レベルL13未満と判定された場合(ステップS21においてYES)、制御部9は、回収タンク残量が回収レベルL22以上か判定する(
図6:ステップS22)。ステップS22によって回収タンク残量が回収レベルL22以上と判定された場合(ステップS22においてYES)、制御部9は、循環ポンプ71の流量を、基本循環流量より大きい高循環流量とする(
図6:ステップS23)。高循環流量は、例えば420ml/minである(
図10参照)。
【0073】
また、ステップS22によって回収タンク残量が回収レベルL22以上でないと判定された場合(ステップS22においてNO)、制御部9は、循環ポンプ71の流量をゼロとし、補充ポンプ72の流量を高補充流量とする(
図6:ステップS24)。高補充流量は、例えば700ml/minである(
図11参照)。なお、ステップS24において、制御部9は、補充ポンプ72を駆動する前に、逆流防止開閉弁73を閉じる。これにより、補充タンク53から補充されるインクは、回収タンク52ではなく、ヒーター74へ、引いては供給タンク51へ送られる。
【0074】
ステップS23またはステップS24の後、制御部9は、供給タンク残量が供給レベルL13以上か判定する(
図6:ステップS25)。ステップS25によって供給タンク残量が供給レベルL13以上と判定された場合(ステップS25においてYES)、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量とし、補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)とする(
図6:ステップS26)。なお、ステップS26において、逆流防止開閉弁73が閉じられている場合、制御部9は、逆流防止開閉弁73を開けてから、循環ポンプ71を駆動させる。ステップS25によって供給タンク残量が供給レベルL13以上でないと判定された場合(ステップS25においてNO)、制御部9は、ステップS25を繰り返し実行する。
【0075】
ステップS25において、供給タンク残量が供給レベルL13以上である場合、供給タンク残量が充分に大きい。このため、制御部9は、ステップS26を実行することによって、供給タンク51に対する回収タンク52または補充タンク53からのインクの補充を停止させる(
図11参照)。
【0076】
ステップS21によって供給タンク残量が供給レベルL13未満でないと判定された場合(ステップS21においてNO)、制御部9は、供給タンク残量がL13以上か判定する(
図7:ステップS31)。ステップS31によって供給タンク残量がL13以上と判定された場合(ステップS31においてYES)、制御部9は、回収タンク残量が回収レベルL22以上か判定する(
図7:ステップS32)。
【0077】
ステップS32によって回収タンク残量が回収レベルL22以上と判定された場合(ステップS32においてYES)、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量とし、補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)とする((
図7:ステップS33)。
【0078】
図12に示されるように、供給タンク残量が供給レベルL13以上であり、且つ回収タンク残量が回収レベルL22以上の場合、供給タンク残量および回収タンク残量は充分多い。このため、供給タンク51および回収タンク52に対するインクの補充は不要である。このため、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量(400ml/min)とし、補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)とする。このとき、ヒーター74におけるインクの流量は、基本循環流量と同じである。
【0079】
ステップS32によって回収タンク残量が回収レベルL22以上でないと判定された場合(ステップS32においてNO)、制御部9は、循環ポンプ71の循環流量をゼロとし、補充ポンプ72の流量を低補充流量とする(
図7:ステップS34)。低補充流量は、例えば300ml/minである(
図13参照)。ステップS34により、ヒーター74を通過するインクの流量は、低補充流量と同じ大きさとなる。
【0080】
ステップS34の後、制御部9は、回収タンク残量が回収レベルL22以上か判定する(
図7:ステップS35)。回収タンク残量が回収レベルL22以上と判定された場合(ステップS35においてYES)、上述したステップS33を実行する。一方、回収タンク残量が回収レベルL22以上でないと判定された場合(ステップS35においてNO)、制御部9はステップS35を繰り返し実行する。
【0081】
ステップS33の後、制御部9は、ステップS11を再び実行する。
【0082】
ステップS16またはステップS26の後、制御部9は、循環を停止させるか否かを判定する(
図5:ステップS2)。ステップS2によって循環を停止させると判定された場合(ステップS2においてYES)、制御部9は、循環ポンプ71の駆動を停止させる(ステップS3)。ステップS2によって循環を停止させると判定された場合(ステップS
2においてNO)、制御部9は、ステップS11を再び実行する。循環処理の説明は以上である。
【0083】
<効果>
インクジェット印刷装置1によれば、制御部9は、ヒーター74の作動時に、ヒーター74を通過するインクの流量が限界流量以上となるように、循環ポンプ71および補充ポンプ72を制御する。これにより、過熱によるインクの劣化を低減できる。
【0084】
また、インクジェット印刷装置1によれば、制御部9は、液面センサ511~514によって検出された供給タンク残量、および、液面センサ521~523によって検出された回収タンク残量に基づいて、循環ポンプ71および補充ポンプ72を制御する。これにより、供給タンク51のインク残量および回収タンク52のインク残量が適切な量となるように、循環ポンプおよび補充ポンプを制御できる。
【0085】
図12に示されるように、供給タンク残量が第1供給残量(供給レベルL12)以上であり、且つ回収タンク残量が第1回収残量(回収レベルL22)以上の場合、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量(400ml/min)とし、補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)とする(ステップS35)。基本循環流量および基本補充流量の和は、限界流量以上である。これにより、過熱によるインクの劣化を低減できる。
【0086】
図8に示されるように、供給タンク残量が第1供給残量(供給レベルL12)未満の場合、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量(400ml/min)より大きい第1循環流量(420ml/min)とする。これにより、回収タンクから供給タンクへインクを補充できる。
【0087】
図8に示されるように、供給タンク残量が第1供給残量(供給レベルL12)未満の場合、制御部9は、補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)とする。また、第1循環流量と基本補充流量の和は、限界流量以上である。これにより、過熱によるインクの劣化を低減できる。
【0088】
図9または
図11に示されるように、回収タンク残量が第1回収残量(供給レベルL12)未満の場合、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量(400ml/min)より小さい第2循環流量(ゼロ)とし、且つ補充ポンプ72の流量を基本補充流量(ゼロ)より大きい第1補充流量(700ml/min)とする。第2循環流量と第1補充流量の和は、限界流量以上である。回収タンク残量の低下を回避するために循環ポンプ71の流量を低下させたとしても、補充ポンプ72の流量を大きくすることで、ヒーターの流量を限界流量より大きくすることができる。
【0089】
図13に示されるように、回収タンク残量が第1回収残量(供給レベルL12)未満であり、且つ供給タンク残量が第1供給残量(供給レベルL12)より大きい第2供給残量(供給レベルL13)以上の場合、制御部9は、循環ポンプ71の流量を基本循環流量(400ml/min)より小さい第3循環流量(ゼロ)とし、補充ポンプ72の流量を第1補充流量(700ml/min)より小さい第2補充流量(300ml/min)とする。第3循環流量と第2補充流量の和は、限界流量以上である。これにより、供給タンクが溢れることを回避しつつ、過熱によるインクの劣化を低減できる。
【0090】
なお、上記説明では、ステップS14,S24またはS34において、制御部9は、循環ポンプ71の流量を、ゼロとしている。しかしながら、制御部9は、循環ポンプ71の流量をゼロより大きくかつ基本循環流量より小さい低循環流量としてもよい。また、連続紙10に対して吐出ヘッド35からインクを吐出する印刷処理を行っている場合、制御部9は、ステップS14において、循環ポンプ71の流量を、ゼロより大きい流量としてもよい。この場合、循環ポンプ71の流量をゼロとする場合よりも、供給タンク51に多くのインクが補充されるため、供給タンク51のインクが不足することを回避できる。したがって、印刷処理を適切に行うことができる。
【0091】
限界流量(下限流量)は、不変であってもよいし、変更可能であってもよい。限界流量は、ヒーター74に進入するインクの温度に応じて、段階的に変更されてもよい。
【0092】
図14は、ヒーター74に進入するインクの温度と限界流量との関係を説明するための図である。
図14(A)は、ヒーター74に流入するインクの温度が33℃である場合を示している。
図14(B)は、ヒーター74に流入するインクの温度が20℃の場合を示している。なお、ヒーターに流入するインクの温度は、温度センサ741によって計測される。
【0093】
例えば、制御部9は、
図14(A)に示されるように、温度センサ741によって計測された温度(計測温度。ここでは33℃)が所定の閾値温度を超える場合、限界流量を比較的小さいFR_L1とする。一方、制御部9は、
図14(B)に示されるように、温度センサ741によって計測された温度(ここでは、20℃)が所定の閾値温度よりも低い場合、限界流量をFR_L1よりも大きいFR_L2としてもよい。
【0094】
図15は、インク供給部4の状態を示す図である。
図15(A)は、通常循環時のインク供給部4の状態を示す図であり、
図15(B)は、冷間立上げ時のインク供給部4の状態を示す図である。
【0095】
図15(A)の状態は、
図8に示されるステップS13の状態と同じであり、例えば印刷時の状態である。この状態では、ヒーター74に流入するインクの温度は、33℃であり、ヒーター74の温度設定が36℃となっている。この状態では、
図14(A)において説明したように、限界流量は、比較的小さいFR_L1に設定される。
【0096】
一方、
図15(B)に示されるように、インクジェット印刷装置1の冷間立上げ時の場合、ヒーター74に流入するインクの温度は、室温と同程度の温度(例えば、20℃)である。この場合、
図14(B)において説明したように、限界流量は、通常循環時よりも大きいFR_L2に変更される。
【0097】
このような冷間立上げ時の場合、インクの温度を迅速に上げるため、制御部9は、ヒーター74の温度設定を比較的高温(例えば、50℃)にする。また、制御部9は、変更された限界流量FR_L2に応じて、循環ポンプ71の流量設定を通常循環時の値(例えば、420ml)よりも大きい値(例えば、600ml)とする。このように、ヒーター74に流入するインクの温度に応じてヒーター74の温度設定が高温にされた場合でも、限界流量の増加に応じて循環ポンプ71の流量設定が増加されることで、インクの過熱を有効に回避できる。
【0098】
なお、
図14に示されるように、ヒーター74は、ヒーター74に流入するインクの温度を計測する温度センサ741に加えて、ヒーター74から流出するインクの温度を計測する温度センサ742をさらに有していてもよい。この場合、ヒーター74は、温度センサ741,742によって計測された温度を示すデータを制御部9に適宜送信する。そして、制御部9は、温度センサ741,742によって計測された温度を用いて、ヒーター74を制御してもよい。
【0099】
制御部9がヒーター74を制御するため、例えば、温度センサ741,742毎に、目標温度があらかじめ設定されていてもよい。そして、温度センサ741,742によって計測される温度がそれぞれの目標温度となるように、制御部9がヒーター74を制御してもよい。また、温度センサ741,742に対して、1つの目標温度があらかじめ設定されていてもよい。そして、温度センサ741,742によって計測される温度の平均値がその目標温度となるように、制御部9がヒーター74を制御してもよい。
【0100】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において、例示であって、この発明がそれに限定されるものではない。例示されていない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。上記各実施形態及び各変形例で説明した各構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わせたり、省略したりすることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 インクジェット印刷装置
10 連続紙
35 ヘッドユニット
51 供給タンク
511~514 液面センサ(供給タンク残量検出部)
52 回収タンク
521~523 液面センサ(回収タンク残量検出部)
53 補充タンク
55 圧力差形成部(送液部)
65 接続配管
66 補充配管
71 循環ポンプ
72 補充ポンプ
74 ヒーター
9 制御部