(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011975
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】磁気センサ装置
(51)【国際特許分類】
G01R 33/09 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
G01R33/09
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114350
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001357
【氏名又は名称】弁理士法人つばさ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山脇 和真
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 州平
【テーマコード(参考)】
2G017
【Fターム(参考)】
2G017AA02
2G017AA03
2G017AC06
2G017AD55
2G017BA09
(57)【要約】
【課題】高い測定精度を有すると共に、さらなる薄型化に対応可能である磁気センサ装置を提供する。
【解決手段】この磁気センサ装置は、表面を有するセンサ基板と、表面に設けられ、1以上の磁気センサ素子を含むセンサ素子部とを備える。センサ基板は、表面に平行な平面視において、対向する2つの短辺と、対向する2つの長辺と、表面と略直交する厚さ方向の全部または一部がそれぞれ面取りされた4つの角部とを含む略八角形の外縁を有する。センサ基板の長辺の長さに対する、角部の長辺に沿った長さの比が0.39以下である。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面を有するセンサ基板と、
前記表面に設けられ、1以上の磁気センサ素子を含むセンサ素子部と
を備え、
前記センサ基板は、前記表面に平行な平面視において、対向する2つの短辺と、対向する2つの長辺と、前記表面と略直交する厚さ方向の全部または一部がそれぞれ面取りされた4つの角部とを含む略八角形の外縁を有し、
前記センサ基板の長辺の長さに対する、前記角部の前記長辺に沿った長さの比が0.39以下である
磁気センサ装置。
【請求項2】
表面を有するセンサ基板と、
前記表面に設けられ、1以上の磁気センサ素子を含むセンサ素子部と
を備え、
前記センサ基板は、前記表面に平行な平面視において、対向する2つの短辺と、対向する2つの長辺と、前記表面と略直交する厚さ方向の全部または一部がそれぞれ面取りされた4つの角部とを含む略八角形の外縁を有し、
前記平面視において、前記センサ基板の長辺の長さに対する、前記センサ基板の外縁から前記センサ素子部までの最短距離の比が0.28以上である
磁気センサ装置。
【請求項3】
前記平面視において、
前記センサ基板の外縁から前記センサ素子部までの最短距離が0.015mm以上である
請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項4】
前記平面視において、
前記センサ基板の長辺の長さに対する、前記センサ基板の外縁から前記センサ素子部までの最短距離の比が0.28以上である
請求項1に記載の磁気センサ装置。
【請求項5】
前記平面視において、前記センサ基板の面積に対する前記センサ素子部の面積の比が0.69以下である
請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項6】
前記センサ素子部は、前記平面視において複数の頂点を含む略多角形状を有しており、
前記複数の頂点の少なくとも一部は、前記センサ基板のうちの面取りされた複数の角部と対向している
請求項1記載の磁気センサ装置。
【請求項7】
前記センサ基板を支持する支持基板をさらに備え、
前記支持基板はASIC(特定用途向け集積回路)を有し、
前記センサ基板は、前記ASICと前記センサ素子部とを電気的に接続する電気配線を有する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の磁気センサ装置。
【請求項8】
前記センサ基板の厚さが200μm以下である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の磁気センサ装置。
【請求項9】
前記磁気センサ素子はTMR素子である
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の磁気センサ装置。
【請求項10】
面取りされた前記角部は、直線状の外縁、または、前記センサ基板の中央から遠ざかる方向へ湾曲した外縁を有する
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の磁気センサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気センサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、種々の用途で、外部磁界の所定の方向の成分を検出するための磁気センサ装置が利用されている。磁気センサとしては、基板上に磁気検出素子を設けるようにしたものが知られている。磁気検出素子としては、例えば磁気抵抗効果素子が用いられる。
【0003】
例えば特許文献1には、支持体に一体に設けられた第1の磁気センサ、支持体、第1の磁界発生器および第2の磁界発生器を備えた磁気センサ装置が開示されている。特許文献1の磁気センサ装置では、第1の磁界発生器により第1の付加的磁界を発生すると共に第2の磁界発生器により第2の付加的磁界を発生することによって、外部磁界を第1の磁気センサによって精度よく検出するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、磁気センサを有する磁気センサ装置については、高い測定精度を有することに加え、より薄型であることが望まれる。
【0006】
よって、高い測定精度を有すると共に、さらなる薄型化に対応可能である磁気センサ装置が望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施態様としての磁気センサ装置は、表面を有するセンサ基板と、表面に設けられ、1以上の磁気センサ素子を含むセンサ素子部とを備える。センサ基板は、表面に平行な平面視において(すなわち、表面に平行な平面に直交する方向から見て)、対向する2つの短辺と、対向する2つの長辺と、表面と略直交する厚さ方向の全部または一部がそれぞれ面取りされた4つの角部とを含む略八角形の外縁を有する。センサ基板の長辺の長さに対する、角部の長辺に沿った長さの比が0.39以下である。
【0008】
本発明の一実施態様としての磁気センサ装置では、センサ基板が、それぞれ面取りされた複数の角部を含む略多角柱状をなしている。このため、外力が印加された場合の、角部への応力集中が緩和される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一実施態様としての磁気センサ装置によれば、センサ基板が高い機械的強度を有する形状であることにより、センサ基板の薄型化が可能となる。また、センサ基板の角部への応力集中が緩和されるので、センサ基板に載置されたセンサ素子部に対する歪みも緩和され、測定精度への影響も低減される。よって、高い測定精度を確保しつつ、さらなる薄型化に対応することができる。
なお、本発明の効果はこれに限定されるものではなく、以下に記載のいずれの効果であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の一実施の形態に係る角度センサ装置の全体構成例を表す第1の斜視図である。
【
図1B】本発明の一実施の形態に係る角度センサ装置の全体構成例を表す第2の斜視図である。
【
図2】
図1Aに示した角度センサ装置の断面図である。
【
図3A】
図1Aに示したセンサチップの外観を表す斜視図である。
【
図3B】
図1Aに示したセンサチップの平面構成例を表す平面図である。
【
図4】
図1に示した角度センサ装置の回路図である。
【
図5A】
図1Aに示した角度センサ装置の製造方法の一工程を表す説明図である。
【
図6A】実施例1~7の角度センサ装置の角度検出誤差を表す特性図である。
【
図6B】実施例1~7の角度センサ装置における、センサ基板の長辺の長さに対するセンサ基板の外縁からセンサ素子部までの最短距離の比を表す特性図である。
【
図7】本発明の第1変形例としての角度センサ装置のセンサ基板を表す平面図である。
【
図8A】本発明の第2変形例としての角度センサ装置のセンサチップの外観を表す斜視図である。
【
図8B】本発明の第3変形例としての角度センサ装置のセンサチップの外観を表す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
0.経緯
1.一実施の形態:磁気抵抗効果素子を有する角度センサ装置の例。
1.1 角度センサ装置1の構成
1.2 角度センサ装置1の製造方法
1.3 作用および効果
2.実施例
【0012】
<0.経緯>
従来、外部磁場の変化を検知するなどしてある物体の姿勢や回転角度などを検出する角度センサ装置が使用されている。そのような角度センサ装置は、回転動作などの姿勢が変化する動作を行う物体に取り付けられ、その物体と共に回転動作等を行うことが多い。そのため、角度センサ装置自体の軽量化が求められている。また、より高度の測定精度も要求されることから、より多数のセンサ素子を限られた領域内に高密度で実装することが望まれる。
【0013】
そこで本出願人は、上記課題に鑑みて検討および改良を重ねた結果、高い測定精度を有すると共に、さらなる薄型化に対応することのできる角度センサ装置を提供するに至った。
【0014】
<1.第1の実施の形態>
[1.1 角度センサ装置1の構成]
最初に、
図1Aから
図4を参照して、本発明の一実施の形態としての角度センサ装置1の構成について説明する。角度センサ装置1は、本発明の「磁気センサ装置」に対応する一具体例である。
【0015】
図1Aおよび
図1Bは、角度センサ装置1の全体構成例を表す斜視図である。
図2は、角度センサ装置1の任意の断面を模式的に表す断面図である。
図1Bに示したように、角度センサ装置1は、支持基板2と、センサチップ3と、配線層4と、はんだボール5とを備えている。
図2に示したように、センサチップ3は、支持基板2に積層配置されている。より具体的には、センサチップ3は、支持基板2の表面2FSに設けられている。センサチップ3は、配線層4に覆われている。支持基板2の表面2FSと反対側の裏面2BSには、保護膜6が設けられていてもよい。
【0016】
なお、
図1A~
図2などに示したように、本実施の形態では、支持基板2およびセンサチップ3は、互いに直交するX軸方向およびY軸方向を含むXY面に沿ってそれぞれ広がっている。また、本実施の形態では、支持基板2およびセンサチップ3の厚さ方向をZ軸方向としている。
【0017】
(支持基板2)
支持基板2は、例えばASIC(特定用途向け集積回路)を有する基板である。支持基板2の表面2FSには、端子部21,22が設けられている。
【0018】
(センサチップ3)
図3Aは、センサチップ3の外観を模式的に表す斜視図である。
図3Aに示した構成例では、センサチップ3は、略八角形の平面形状を有する略八角柱状の外観を有している。センサチップ3は、センサ基板31と、センサ素子部32と、保護層33とを有する。
図3Bは、センサチップ3のレイアウトを模式的に表す平面図である。但し、
図3Bでは、保護層33の記載を省略している。センサ基板31は、例えばシリコン基板である。センサ基板31は、支持基板2とセンサチップ3との積層方向(Z軸方向)に相当する厚さ方向の全体に亘ってそれぞれ面取りされた複数の角部Cを含む、略多角柱状の外観を有している。なお、センサ基板31は、Z軸方向と略直交する表面31FSを有している。本発明でいう「面取りされた」とは、平面視において、他の輪郭線に対して平行および垂直のいずれでもない斜め方向に延在する輪郭線を含む形状を有する状態をいう。
図3Aおよび
図3Bの構成例では、センサ基板31は、4つの角部C1~C4を含む略八角柱状の外観を有している。また、
図3Aおよび
図3Bの構成例では、面取りされた複数の角部C1~C4は、いずれも、X軸方向およびY軸方向の双方に対して略45°の角度で傾斜する直線状の外縁3XYを有している。したがって、センサ基板31は、平面視において、例えばX軸方向に延びる2つの外縁3Xと、Y軸方向に延びる2つの外縁3Yと、それら2つの外縁3Xと2つの外縁3Yとを繋ぐ4つの傾斜した外縁3XYとを含む略八角形状の輪郭を有している。
【0019】
センサ素子部32は、センサ基板31の表面31FS上の中央領域に設けられている。センサ素子部32は、1以上の磁気センサ素子Eを含んでいる。磁気センサ素子Eは、例えばトンネル磁気抵抗効果素子(以下、TMR素子という。)である。センサ素子部32は、複数のセンサ素子群を有している。
図3Bの構成例では、センサ素子部32は、マトリックス状に配列された4つのセンサ素子群G1~G4を有している。センサ素子群G1~G4は、それぞれ、例えばマトリックス状に配列された4つの磁気センサ素子E1~E4を含んでいる。磁気センサ素子E1~E4は、例えば複数のTMR膜と、それら複数のTMR膜を直列接続する複数の配線とによって構成されている。磁気センサ素子E1~E4は、例えば
図4に示したフルブリッジ回路8の抵抗部R1~R4を構成している。なお、
図4は、角度センサ装置1の回路構成例を表す回路図である。角度センサ装置1は、例えばフルブリッジ回路8と、差分検出器AMPと、演算回路9とを有している。角度センサ装置1は、フルブリッジ回路8の接続点T1から得られる電位と接続点T2から得られる電位との差分に基づき、センサチップ3に対する外部磁場の変化を検出可能に構成されている。
【0020】
フルブリッジ回路8は、4つの抵抗部R1~R4を含んでいる。抵抗部R1は磁気センサ素子E1により構成され、抵抗部R2は磁気センサ素子E2により構成され、抵抗部R3は磁気センサ素子E3により構成され、抵抗部R4は磁気センサ素子E4により構成されている。フルブリッジ回路8は、直列接続された抵抗部R1および抵抗部R2と、直列接続された抵抗部R3および抵抗部R4とが、互いに並列接続されてなるものである。より具体的には、フルブリッジ回路8は、抵抗部R1の一端と抵抗部R2の一端とが接続点T1において接続され、抵抗部R3の一端と抵抗部R4の一端とが接続点T2において接続され、抵抗部R1の他端と抵抗部R4の他端とが接続点T3において接続され、抵抗部R2の他端と抵抗部R3の他端とが接続点T4において接続されている。接続点T3は電源Vccと接続されており、接続点T4は接地端子GNDと接続されている。接続点T1および接続点T2は、それぞれ、差分検出器AMPの入力側端子と接続されている。
【0021】
抵抗部R1~R4は、それぞれ、検出対象である信号磁場の変化を検出可能である。例えば抵抗部R1,R3は、+Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が減少し、-Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が増加する。一方、抵抗部R2,R4は、+Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が増加し、-Y方向の信号磁場の印加により抵抗値が減少する。したがって、抵抗部R1,R3と抵抗部R2,R4とは、信号磁場の変化に応じて互いに例えば180°位相の異なる信号を出力する。フルブリッジ回路8から取り出された信号は差分検出器AMPに流入する。差分検出器AMPは、接続点T3と接続点T4との間に電圧が印加されたときの接続点T1と接続点T2との間の電位差、すなわち、抵抗部R1および抵抗部R4のそれぞれに生ずる電圧降下の差分を検出し、差分信号SLとして演算回路9へ向けて出力するようになっている。
【0022】
センサ素子部32は、平面視において複数の頂点Vを含む略多角形状の輪郭を有している。ここで、複数の頂点Vの少なくとも一部は、センサ基板31のうちの面取りされた複数の角部Cと対向している。
図3Aおよび
図3Bの構成例では、センサ素子部32は、平面視において4つの頂点V1~V4を含む略矩形(長方形もしくは正方形)状の輪郭を有している。頂点V1~V4は、それぞれ、センサ基板31の面取りされた4つの角部C1~C4とそれぞれ対向している。
【0023】
センサチップ3では、厚さ方向(Z軸方向)と直交するXY面内方向において、センサ基板31の外縁からセンサ素子部32までの最短距離Dは0.015mm以上である。
図3Aおよび
図3Bの構成例では、4つの角部C1~C4の外縁3XYと、センサ素子部32の4つの頂点V1~V4との距離D1~D4が互いに等しく、いずれも最短距離Dとなっている。
【0024】
センサ基板31は、X軸方向に長さLXを有すると共にY軸方向に長さLYを有する。
図3Bでは、長さLXと長さLYとが互いに実質的に等しい場合を例示しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、長さLXと長さLYとが互いに異なっていてもよい。長さLXおよび長さLYは、例えばいずれも0.64mm程度である。その場合、4つの角部C1~C4における、X軸方向の長さLCXおよびY軸方向の長さLCYは、それぞれ0mm超0.2mm以下であるとよい。また、XY面内方向において、センサ基板31の長辺、すなわち外縁3Xもしくは外縁3Yのいずれか長いほうの長さL3Xもしくは長さL3Yに対する、センサ基板31の外縁3XYからセンサ素子部32までの最短距離Dの比(D/L3X)または比(D/L3Y)が0.28以上であるとよい。なお、センサチップ3の厚さZ3は、例えば200μm以下であるとよい。
【0025】
また、センサチップ3では、センサ基板31の長辺の長さ、すなわち、長さL3Xおよび長さL3Yのうちの長いほうに対する、角部C1~C4の長辺に沿った長さLCX(LCY)の比(LCX/L3X(またはLCY/L3Y))が0.39以下であるとよい。
【0026】
また、センサチップ3では、厚さ方向と直交する平面視において、すなわちXY面内において、センサ基板31の面積に対するセンサ素子部32の面積の比が0.69以下であるとよい。
【0027】
(配線層4)
配線層4は、
図2に示したように、例えば3層の樹脂層4A~4Cからなる積層構造を有する。樹脂層4A~4Cは、例えばポリイミドにより構成されており、センサチップ3を覆うように設けられている。配線層4には配線群7が埋設されている。配線群7は、例えば配線71および配線72を有する。配線71は、支持基板2の端子部21とはんだボール5とを電気的に接続している。配線72は、支持基板2の端子部22とセンサチップ3とを電気的に接続している。
【0028】
[1.2 角度センサ装置1の製造方法]
続いて、
図2に加えて
図5Aから
図5Gを参照して、本発明の一実施の形態としての角度センサ装置1の製造方法について説明する。
図5Aから
図5Gは、角度センサ装置1の製造方法の一例における各工程を表す模式図である。
【0029】
まず、
図5Aに示したように、例えばシリコン基板からなるセンサ基板31を用意したのち、その表面31FSに、センサ素子部32がそれぞれ埋設された保護層33を複数形成する。その際、隣り合う保護層33同士が離間するように、すなわち隙間33Gが生じるように、複数の保護層33を形成する。複数の保護層33の外縁は、それぞれ例えば略八角形の平面形状を有するようにする。
【0030】
次に、
図5Bに示したように、隙間33Gに露出しているセンサ基板31の表面31FSを掘り下げて溝31Uを形成する。溝31Uの形成には、例えば反応性イオンエッチング(RIE)を用いることができる。その際、センサ基板31の外縁が保護層33の外縁と実質的に同じ略八角形の平面形状を有するように溝31Uを形成する。
【0031】
次に、
図5Cに示したように、センサ素子部32の表面にテープ34を貼り付けたのち、回転する砥石などを用いてセンサ基板31の裏面を研磨し、センサ基板31の厚さ方向の一部を全体に亘って除去する。研磨は溝31Uの底面に達するまで行う。こうすることにより、
図5Dに示したように、個片化されたセンサチップ3が複数形成される。この段階では、個片化された複数のセンサチップ3は、テープ34に貼りついた状態となっている。なお、
図5Dは、
図5Cに示したセンサチップ3およびテープ34の姿勢と天地が反対となっている。
【0032】
次に、
図5Eに示したように、ピックアップコレット35をセンサ基板31の裏面31BSに吸着させた状態で、テープ34の一部をピン36により突き上げることにより、センサチップ3を1つずつピックアップする。
【0033】
そののち、
図5Fに示したように、ボンディングコレット37によりセンサチップ3の保護層33の表面33FSを吸着保持させると共にピックアップコレット35をセンサ基板31から離脱させる。なお、
図5Fは、
図5Eに示したセンサチップ3の姿勢と天地が反対となっている。
【0034】
次いで、
図5Gに示したように、用意した支持基板2の表面2FSに、センサ基板31の裏面31BSを接着剤などにより接着する。これにより、センサチップ3を支持基板2に固定する。
【0035】
続いて、ポリイミドなどの樹脂により、支持基板2に設けられたセンサチップ3を覆うように配線層4を形成する。そののち、フォトリソグラフィ法により配線層4の一部を選択的に除去し、めっき法などにより配線71,72を形成する。最後に、はんだボール5を形成する。必要に応じて保護膜6を支持基板2の裏面2BSに形成するようにしてもよい。
【0036】
以上により、本実施の形態の角度センサ装置1が完成する。
【0037】
[1.3 作用および効果]
本実施の形態の角度センサ装置1によれば、センサ基板31が、それぞれ面取りされた複数の角部Cを含む略多角柱状をなしている。このため、センサ基板31に外力が印加された場合に、角部Cへの応力集中が緩和される。よって、センサ基板31は、高い機械的強度を有する形状であるので、センサ基板31の薄型化が可能となる。
【0038】
ところが、センサ基板31が、仮に4つの角部が面取りされていない矩形状の平面形状を有する四角柱状である場合、センサ基板31に外力が印加されると4つの角部に応力が集中することになる。このため、例えば製造過程において、
図5Eに示したように個片化されたセンサチップ3をピックアップする際にピン36による突き上げがなされると、センサチップ3が割れてしまうことがある。これに対し本実施の形態では、センサ基板31が面取りされた形状を有するので、そのような破損を回避することができる。
【0039】
また、角度センサ装置1では、センサ基板31の角部Cへの応力集中が緩和されるので、センサ基板31に載置されたセンサ素子部に対する歪みも緩和され、測定精度への影響も低減される。したがって、角度センサ装置1によれば、高い測定精度を確保しつつ、さらなる薄型化に対応することができる。
【0040】
<2.実施例>
(実施例1~7)
次に、
図1などに示した上記一実施の形態の角度センサ装置1の性能について調査した。具体的には、
図3A,3Bなどに示したセンサチップ3を備えた角度センサ装置1を作製し、最大の角度誤差[°]をシミュレーションにより求めた。但し、センサ基板31において、長さLXおよび長さLYをいずれも0.64mmとし、角部C1~C4の長さLCX,LCYをそれぞれ0.02~0.14mmとした。すなわち、比(LCX/L3X)および比(LCY/L3Y)を0.03から0.39程度とした。また、センサチップ3の厚さZ3を200μmとした。シミュレーションにより求めた比(LCX/L3X)および比(LCY/L3Y)と角度誤差[°]との関係を
図6Aに示す。さらに、
図6Bに、比(LCX/L3X)および比(LCY/L3Y)と比(D/L3X)および比(D/L3Y)との関係を示す。
【0041】
(比較例1)
面取りされた角部を有しないこと除き、すなわち長さLCX,LCYをいずれも0mmとしたことを除き、他の条件は実施例1~7と同様のセンサチップ3を備えた角度センサ装置1を作製し、実施例1~7と同様の評価を実施した。その結果を
図6Aおよび
図6Bに併せて示す。
【0042】
(比較例2,3)
センサ基板31において、長さLXおよび長さLYをいずれも0.64mmとし、角部C1~C4の長さLCX,LCYをそれぞれ0.16mmおよび0.20mmとした。すなわち、比(LCX/L3X)および比(LCY/L3Y)を0.50および0.83程度とした。そのこと除き、他の条件は実施例1~7と同様のセンサチップ3を備えた角度センサ装置1を作製し、実施例1~7と同様の評価を実施した。その結果を
図6Aおよび
図6Bに併せて示す。
【0043】
図6Aに示した結果から、面取りされた角部の長さLCX,LCYが0より大きく0.14mm以下であれば、すなわち、比(LCX/L3X(またはLCY/L3Y))が0.39以下であれば、面取りされた角部を有しない矩形状のセンサチップを備えた比較例1よりも角度誤差を低減できることがわかった。また、
図6Bに示したように、比(D/L3X(または(D/L3Y))が0.28以上であれば、比(LCX/L3X(またはLCY/L3Y))を0.39以下とすることができることがわかった。
【0044】
以上説明した実施形態および実施例は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態等に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。すなわち、本発明は上記実施の形態等に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。
【0045】
例えば上記実施の形態の角度センサ装置1では、平面形状が略八角形のセンサ基板31を例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。センサ基板の外縁の平面形状は、7以下、または9以上の頂点を有する多角形状であってもよい。また、面取りされた複数の角部は、直線状の外縁を有するものに限定されるものではなく、例えば
図7に示した第1変形例としてのセンサ基板31Aのように、センサ基板の中央から遠ざかる方向へ湾曲した外縁を有するものであってもよい。
【0046】
また、上記実施の形態の角度センサ装置1のセンサチップ3では、角部C1~C4が、表面31FSと略直交する厚さ方向の全部が面取りされているが、本開示はこれに限定されるものではない。例えば
図8Aに示した第2変形例としてのセンサチップ3Aのように、角部C1~C4においてセンサ基板31の厚さ方向の一部のみが面取りされたものであってもよい。さらには、
図8Bに示した第3変形例としてのセンサチップ3Bのように、角部C1~C4におけるセンサ基板31の面取り部分の幅が徐々に変化するものであってもよい。すなわち、センサ基板31の表面31FSの輪郭が面取り部分を含んでいればよい。
【0047】
また、本願発明は以下のような構成を取り得るものである。
(1)
表面を有するセンサ基板と、
前記表面に設けられ、1以上の磁気センサ素子を含むセンサ素子部と
を備え、
前記センサ基板は、前記表面に平行な平面視において、対向する2つの短辺と、対向する2つの長辺と、前記表面と略直交する厚さ方向の全部または一部がそれぞれ面取りされた4つの角部とを含む略八角形の外縁を有し、
前記センサ基板の長辺の長さに対する、前記角部の前記長辺に沿った長さの比が0.39以下である
磁気センサ装置。
(2)
表面を有するセンサ基板と、
前記表面に設けられ、1以上の磁気センサ素子を含むセンサ素子部と
を備え、
前記センサ基板は、前記表面に平行な平面視において、対向する2つの短辺と、対向する2つの長辺と、前記表面と略直交する厚さ方向の全部または一部がそれぞれ面取りされた4つの角部とを含む略八角形の外縁を有し、
前記平面視において、前記センサ基板の長辺の長さに対する、前記センサ基板の外縁から前記センサ素子部までの最短距離の比が0.28以上である
磁気センサ装置。
(3)
前記平面視において、
前記センサ基板の外縁から前記センサ素子部までの最短距離が0.015mm以上である
上記(1)または(2)に記載の磁気センサ装置。
(4)
前記平面視において、
前記センサ基板の長辺の長さに対する、前記センサ基板の外縁から前記センサ素子部までの最短距離の比が0.28以上である
上記(1)に記載の磁気センサ装置。
(5)
前記平面視において、前記センサ基板の面積に対する前記センサ素子部の面積の比が0.69以下である
上記(1)から(4)のいずれか1つに記載の磁気センサ装置。
(6)
前記センサ素子部は、前記平面視において複数の頂点を含む略多角形状を有しており、
前記複数の頂点の少なくとも一部は、前記センサ基板のうちの面取りされた複数の角部と対向している
上記(1)から(5)のいずれか1つに記載の磁気センサ装置。
(7)
前記センサ基板を支持する支持基板をさらに備え、
前記支持基板はASIC(特定用途向け集積回路)を有し、
前記センサ基板は、前記ASICと前記センサ素子部とを電気的に接続する電気配線を有する
上記(1)から(6)のいずれか1つに記載の磁気センサ装置。
(8)
前記センサ基板の厚さが200μm以下である
上記(1)から(7)のいずれか1つに記載の磁気センサ装置。
(9)
前記磁気センサ素子はTMR素子である
上記(1)から(8)のいずれか1つに記載の磁気センサ装置。
(10)
面取りされた前記角部は、直線状の外縁、または、前記センサ基板の中央から遠ざかる方向へ湾曲した外縁を有する
上記(1)から(9)のいずれか1つに記載の磁気センサ装置。
【符号の説明】
【0048】
1…角度センサ装置、2…支持基板、3,3A,3B…センサチップ、31…センサ基板、32…センサ素子部、32A~32D…センサ素子群、33…保護層、34…テープ、4…配線層、5…はんだボール、6…保護膜、7…配線群、71,72…配線、8…フルブリッジ回路。