(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119755
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ペデレックの発進挙動を最適化する運転者トルク信号の修正
(51)【国際特許分類】
B62M 6/45 20100101AFI20240827BHJP
【FI】
B62M6/45
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024019125
(22)【出願日】2024-02-13
(31)【優先権主張番号】10 2023 201 380.0
(32)【優先日】2023-02-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】レック,ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】バウムゲルトナー,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】マネバルト,メルリン マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ゼゴヴィッツ,ミヒャエル
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ペデレックの運転者トルクを最適化する方法を提供する。
【解決手段】制御装置は、電動自転車の運転者により加えられる運転者入力モーメント3を受信し、かつ/または呼び出し、出力モーメント6を運転者入力モーメント3に基づいて、運転者入力モーメント3の第1の値範囲4a内では第1のルールに則って、運転者入力モーメント3の第2の値範囲4b内では第2のルールに則って、かつ運転者入力モーメント3の第3の値範囲4c内では第3のルールに則って求め、アシストモーメントを出力モーメント6に基づいて求め、かつ駆動部をアシストモーメントにしたがって動作制御すべく、形成されており、第2の値範囲4bは、第1の値範囲4aと、第3の値範囲4cとに直接接続しており、第1のルールと、第2のルールと、第3のルールとは、互いに相違しており、かつ第2のルールは、運転者入力モーメント3を入力パラメータとする連続関数である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動自転車(1)の駆動部の制御装置(1a)であって、
前記制御装置(1a)は、
前記電動自転車(1)の運転者により加えられる運転者入力モーメント(3)を受信し、かつ/または呼び出し、
出力モーメント(6)を前記運転者入力モーメント(3)に基づいて、前記運転者入力モーメント(3)の第1の値範囲(4a)内では第1のルールに則って、前記運転者入力モーメント(3)の第2の値範囲(4b)内では第2のルールに則って、かつ前記運転者入力モーメント(3)の第3の値範囲(4c)内では第3のルールに則って求め、
アシストモーメントを前記出力モーメント(6)に基づいて求め、かつ
前記駆動部(1c)を前記アシストモーメントにしたがって動作制御すべく、
形成されており、
前記第2の値範囲(4b)は、前記第1の値範囲(4a)と、前記第3の値範囲(4c)とに直接接続しており、
前記第1のルールと、前記第2のルールと、前記第3のルールとは、互いに相違しており、かつ
前記第2のルールは、前記運転者入力モーメント(3)を入力パラメータとする連続関数である、
電動自転車(1)の駆動部の制御装置(1a)。
【請求項2】
前記第1のルールにしたがう第1の出力モーメント(6a)と、前記第2のルールにしたがう第2の出力モーメント(6b)と、前記第3のルールにしたがう第3の出力モーメント(6c)とが、連続的に互いに接続していることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置(1a)。
【請求項3】
前記第1のルールは、前記第1の値範囲(4a)内の前記運転者入力モーメント(3)に、ゼロの値の第1の出力モーメント(6a)を割り当てることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項4】
前記第2のルールは、より高次の多項式関数、特に3次の多項式関数であることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか一項に記載の制御装置(1a)。
【請求項5】
前記第3のルールは、前記運転者入力モーメント(3)を入力パラメータとする一次関数、特に傾きが1の一次関数であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか一項に記載の制御装置(1a)。
【請求項6】
前記第2の値範囲(4b)の下側の境界値(41)が、5Nmであり、前記第2の値範囲(4b)の上側の境界値(42)が、10Nmであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか一項に記載の制御装置(1a)。
【請求項7】
前記第2の出力モーメント(6b)が、前記第2の値範囲(4b)の前記上側の境界値(42)に有する傾きと、前記第3の出力モーメント(6c)が、前記第3の値範囲(4c)の下側の境界値(42)に有する傾きとが、同じであることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか一項に記載の制御装置(1a)。
【請求項8】
前記第1の出力モーメント(6a)が、前記第1の値範囲(4a)の上側の境界値(41)に有する傾きと、前記第2の出力モーメント(6b)が、前記第2の値範囲(4b)の前記下側の境界値(41)に有する傾きとが、同じであることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか一項に記載の制御装置(1a)。
【請求項9】
前記運転者入力モーメント(3)が、前記第3の値範囲(4c)の前記下側の境界値(42)より下に降下すると、前記出力モーメント(6)は、前記運転者入力モーメント(3)に基づいて、第4の値範囲(4d)内で第4のルールに則って算出され、
前記第4の値範囲(4d)は、前記第3の値範囲(4c)に接続しており、かつ
前記第4のルールと、前記第2のルールとは、異なっている、
ことを特徴とする、請求項1から8までのいずれか一項に記載の制御装置(1a)。
【請求項10】
自転車(1)であって、
前記自転車(1)を駆動する電気式の駆動部(1c)と、
前記自転車(1)の運転者により加えられる運転者入力モーメント(3)を求めるセンサ(1b)と、
請求項1から9までのいずれか一項に記載の制御装置(1a)と、
を備え、
前記制御装置(1a)は、前記駆動部(1c)を動作制御すべく、かつ前記センサ(1b)の信号を受信すべく、形成されている、
自転車(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ペデレックの運転者トルクを最適化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電動自転車は、アシストするトルクを電動自転車の駆動部に加えることで、電動自転車の運転者をアシストする。このために、まず、運転者によりペダルに加えられる運転者モーメントを特定する。アシストするトルクは、運転者モーメントとアシスト係数とから定まる。
【0003】
臨界的なのは、この場合、発進状況である。発進状況において、まず、運転者モーメントがかかっているにもかかわらず、アシストするトルクが提供されない。加えて、アシストするトルクは、さらに別の条件によって差し止められることがある。このことは、運転者がコントロール下で自転車に騎乗するのを容易にする。運転者モーメントの閾値の到達と、場合によっては存在するさらなる条件の充足とにより、アシストするトルクが急に加えられる。この場合、上記の算出に則ったアシストするトルクが生じる。
【0004】
特許文献1は、発進状況において、運転者をアシストするトルクを、時間に依存して増大させる電動自転車を示している。特許文献2は、発進の認識を伴う電動自転車を記載しており、この場合は、規定の速度が超過されると、運転者をアシストするトルクが追加される。特許文献3は、発進の認識を伴う電動自転車を記載しており、この場合は、発進状況中、電動自転車の運転者に対抗モーメントが提供される。これにより、抵抗と、アシストなしの機械式の自転車の挙動がシミュレートされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】欧州特許出願公開第3053820号明細書
【特許文献2】欧州特許第273630号明細書
【特許文献3】国際公開第2020/002687号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
電動自転車の駆動部の本発明に係る制御装置は、アシストするトルクの、運転者にとってより心地のよい上昇を可能にし、自転車の運転者のアシストなしの状態から、運転者のアシストありの状態へのより確実な移行を可能にする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
制御装置は、電動自転車の運転者により加えられる運転者入力モーメントを受信し、かつ/または呼び出し、出力モーメントを運転者入力モーメントに基づいて、運転者入力モーメントの第1の値範囲内では第1のルールに則って、運転者入力モーメントの第2の値範囲内では第2のルールに則って、かつ運転者入力モーメントの第3の値範囲内では第3のルールに則って求め、かつアシストモーメントを出力モーメントに基づいて求めるべく、形成されている。例えば、アシストモーメントを求めるべく、出力モーメントを表す信号は、ローパスフィルタ処理され、かつ付加的な係数が適用される。アシストモーメントの具体的な求め方は、特に、駆動部の具体的な構成および/または設計に依存しており、基本的に公知である。この求め方の具体的な実施は、本発明に関係しないため、それについて詳しく立ち入ることはしない。
【0008】
制御装置は、駆動部をアシストモーメントにしたがって動作制御すべく、形成されている。第2の値範囲は、第1の値範囲と、第3の値範囲とに直接接続している。第1のルールと、第2のルールと、第3のルールとは、互いに相違している。第2のルールは、運転者入力モーメントを入力パラメータとする連続関数である。
【発明の効果】
【0009】
このことは、出力モーメント、ひいては、運転者をアシストするアシストモーメントの、運転者入力モーメントに応じた適合を可能にする。接続している第1の値範囲と、第2の値範囲と、第3の値範囲とにより、運転者のアシストの2つの状態間の移行は、間断なくマッピングされる。それぞれ異なるルールにより、出力モーメントに基づくアシストモーメントによる運転者のアシストのそれぞれ異なる状態がマッピングされる。第2のルールは、連続関数であるので、運転者のアシストの2つの状態間の突然の移行は、防止される。このことは、発進状況における運転者のための自転車の可制御性を改善する。これにより事故リスクは、減少し、かつ走行快適性は、改善する。出力モーメントの、第2のルールにより生じる連続的な推移は、アシストモーメントを運転者出力モーメントに基づいて求めることとは無関係に、アシストの2つの状態間の、運転者にとってより心地のよい移行を可能にする。
【0010】
従属請求項は、本発明の好ましい発展形を示している。
【0011】
好ましくは、第1のルールにしたがう第1の出力モーメントと、第2のルールにしたがう第2の出力モーメントと、第3のルールにしたがう第3の出力モーメントとが、連続的に互いに接続している。これにより、出力モーメントの推移中の、第1の値範囲と、第2の値範囲と、第3の値範囲との間の移行における飛躍的変化は、回避される。このことは、運転者のための自転車の可制御性を改善し、事故リスクを低減し、運転者のための走行快適性を改善する。
【0012】
特に好ましくは、第1のルールは、第1の値範囲内の走行入力モーメントに、ゼロの値の第1の出力モーメントを割り当てる。第1の値範囲は、これにより、発進状況における、出力モーメントによる運転者のアシストが実施されない状態を表している。このことは、運転者が、自転車のコントロール下にない加速を危惧することなく、自転車に支障なく騎乗することを可能にする。このことは、自転車の可制御性を向上させ、走行快適性を改善し、自転車に騎乗する瞬間の運転者の事故リスクを低減する。
【0013】
有利には、第2のルールは、より高次の多項式関数、特に3次の多項式関数である。多項式関数により、複雑なルールも、1つの関数にマッピングされ得る。このことは、関数の所望の特性を簡単に多項式関数の適合により達成することを可能にする。特に3次の多項式関数により、第2の値範囲内の出力モーメントのロジスティック曲線が達成され得る。特に3次の多項式関数の推移は、運転者により2次または1次の多項式関数と比較して心地よいと感じられる。3次より高次の多項式関数は、同じく出力モーメントの心地のよい推移を可能にするが、運転者の感じ方が僅かに3次の多項式関数にしたがう出力モーメントの推移とは相違し、かつより手間のかかる算出となる。特に、第1の出力モーメントと、第2の出力モーメントと、第3の出力モーメントとの間の連続的な移行との関連において、3次の多項式関数を基にした第2の出力モーメントの推移は、特に心地のよい推移をなす。このことは、第1の出力モーメントおよび第3の出力モーメントに対する移行の近傍に、第2の出力モーメントの僅かな変化率を有する、第2の出力モーメントの推移から生じる。
【0014】
特に有利には、第3のルールは、運転者入力モーメントを入力パラメータとする一次関数、特に傾きが1の一次関数である。第3の値範囲は、発進状況を離脱した運転者の通常のアシストを表す。一次関数により、第3の出力モーメントに基づくアシストモーメントによる、運転者にとって予測可能なアシストが提供される。このことは、第3の値範囲内での運転者による自転車の良好な可制御性を可能にする。このことから、改善された走行快適性および低減された事故リスクが生じる。
【0015】
好ましくは、第2の値範囲の下側の境界値が、5Nmであり、第2の値範囲の上側の境界値が、10Nmである。したがって、第1の値範囲は、5Nmの上側の境界値を有し、第3の値範囲は、10Nmの下側の境界値を有している。第2の値範囲のこれらの境界値は、運転者により、アシストが僅かな、またはない状態の、第1の値範囲と、アシストがある状態の、第3の値範囲との間の移行に関し、特に心地よいと感じられる。下側の境界値および上側の境界値は、運転者入力モーメントの測定の根底にあるセンサの精度に応じて適合され得る。
【0016】
特に好ましくは、第2の運転者出力モーメントが、第2の値範囲の上側の境界値に有する傾きと、第3の運転者出力モーメントが、第3の値範囲の下側の境界値に有する傾きとが、同じである。したがって、出力モーメントの推移中、第2の出力モーメントと第3の出力モーメントとの間の移行において、折曲は、生じない。このことは、運転者にとって予期しないアシストの挙動を防止し、運転者による自転車の可制御性を改善する。このことは、事故リスクを低減し、運転者のための走行快適性を改善する。
【0017】
有利には、第1の運転者出力モーメントが、第1の値範囲の上側の境界値に有する傾きと、第2の運転者出力モーメントが、第2の値範囲の下側の境界値に有する傾きとが、同じである。したがって、出力モーメントの推移中、第1の出力モーメントと第2の出力モーメントとの間の移行において、折曲は、生じない。このことは、運転者にとって予期しないアシストの挙動を防止し、運転者による自転車の可制御性を改善する。このことは、事故リスクを低減し、運転者のための走行快適性を改善する。
【0018】
特に有利には、運転者入力モーメントが、第3の値範囲の下側の境界値より下に降下すると、運転者出力モーメントは、運転者入力モーメントに基づいて、第4の値範囲内で第4のルールに則って算出される。第4の値範囲は、第3の値範囲に接続している。第4のルールと、第2のルールとは、互いに相違している。これにより、出力モーメントに基づくアシストモーメントによる運転者のアシストは、運転者が発進状況にあるか、または運転者が既に走行しているかに応じて、区別され得る。このことは、運転者が、直ちにアシストを失うことなく、運転者入力モーメントを短期的に減少させることを可能にする。
【0019】
好ましくは、第4のルールは、同じくより高次の多項式関数を有している。この場合、この多項式関数は、第2の値範囲の上側の境界値より低い運転者モーメントで初めて開始する。これにより、入力モーメントに対する出力モーメントのヒステリシスが生じる。このことは、運転者により特に心地よいと感じられる。
【0020】
特に好ましくは、第4のルールは、時間的に変化してもよい。第4のルールは、規定された時間セクション、特に、自転車が発進状況にない時間セクションにわたって、第1のルールおよび/または第2のルールから、第1の値範囲および/または第2の値範囲および/または第3の値範囲のための任意の別の関数、特に一次関数に近似し得る。第4のルールの適合により、出力モーメントの、第4のルールから生じる推移は、運転者の期待に適合される。運転者は、発進状況からの時間的な間隔が増すにつれ、運転者出力モーメントに基づくアシストモーメントの線形の降下を想定する。これにより、第4のルールは、ユーザの、時間的に変化する期待に適応する。ユーザは、このような挙動を、時間にわたって固定的な第4のルールより直観的であると捉える。
【0021】
さらに本発明は、自転車を包含している。自転車は、自転車を駆動する電気式の駆動部と、自転車の運転者により加えられる運転者入力モーメントを求めるセンサと、先の実施の形態の1つによる制御装置と、を備えている。制御装置は、駆動部を動作制御すべく、かつセンサの信号を受信すべく、形成されている。このことは、先の実施の形態の利点を有する自転車を可能にする。
【0022】
以下に、本発明の実施例について添付の図面を参照しながら詳しく説明する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の一実施例による制御装置を備える自転車の概略図である。
【
図2】本発明の第1の実施の形態による運転者モーメントに対する出力モーメントの推移の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施例による制御装置1aを備える自転車1の概略図を示している。
【0025】
自転車1は、自転車1を駆動する電気式の駆動部1cと、自転車1の運転者により加えられる運転者入力モーメント3を求めるセンサ1bと、第1の実施例による制御装置1aと、を備えている。センサ1bは、例えば自転車1のペダリング軸内に配置されている。制御装置1aは、駆動部1cを動作制御すべく、かつセンサ1bの信号を受信すべく、形成されている。このことは、以下に
図2で挙げる制御装置1aの利点を伴う自転車1を可能にする。このために制御装置1aは、線路1dによりセンサ1bと駆動部1cとに接続されている。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施の形態による運転者モーメント3に対する出力モーメント6の推移の概略図を示している。縦座標2は、出力モーメント6を示している。
【0027】
制御装置1aは、電動自転車1の運転者により加えられる運転者入力モーメント3を受信し、かつ/または呼び出し、出力モーメント6を運転者入力モーメント3に基づいて、運転者入力モーメント3の第1の値範囲4a内では第1のルールに則って、運転者入力モーメント3の第2の値範囲4b内では第2のルールに則って、かつ運転者入力モーメント3の第3の値範囲4c内では第3のルールに則って求め、かつアシストモーメントを出力モーメント6に基づいて求めるべく、形成されている。制御装置1aは、駆動部をアシストモーメントにしたがって動作制御すべく、形成されている。第2の値範囲4bは、第1の値範囲4aと、第3の値範囲4cとに直接接続している。第1のルールと、第2のルールと、第3のルールとは、互いに相違している。第2のルールは、運転者入力モーメント3を入力パラメータとする連続関数である。
【0028】
このことは、駆動部のアシストモーメントを算出するベースとなる出力モーメント6の、運転者入力モーメント3に応じた適合を可能にする。接続している第1の値範囲4aと、第2の値範囲4bと、第3の値範囲4cとにより、運転者のアシストの2つの状態間の移行は、間断なくマッピングされる。それぞれ異なるルールにより、出力モーメント6に基づくアシストモーメントによる運転者のアシストのそれぞれ異なる状態がマッピングされる。第2のルールは、連続関数であるので、運転者のアシストの2つの状態間の突然の移行は、防止される。このことは、発進状況における運転者のための自転車1の可制御性を改善する。これにより事故リスクは、減少し、かつ走行快適性は、改善する。出力モーメント6の、第2のルールにより生じる連続的な推移は、アシストの2つの状態間の、運転者にとってより心地のよい移行を可能にする。
【0029】
第1のルールにしたがう第1の出力モーメント6aと、第2のルールにしたがう第2の出力モーメント6bと、第3のルールにしたがう第3の出力モーメント6cとが、連続的に互いに接続している。これにより、出力モーメント6の推移中の、第1の値範囲4aと、第2の値範囲4bと、第3の値範囲4cとの間の移行における飛躍的変化は、回避される。このことは、アシストモーメントを出力モーメントに基づいて求めることとは無関係に、運転者のための自転車1の可制御性を改善し、事故リスクを低減し、運転者のための走行快適性を改善する。
【0030】
第1のルールは、第1の値範囲4a内の走行入力モーメントに、ゼロの値の第1の出力モーメント6aを割り当てる。第1の値範囲4aは、これにより、発進状況における、出力モーメント6に基づくアシストモーメントによる運転者のアシストが実施されない状態を表している。このことは、運転者が、自転車1のコントロール下にない加速を危惧することなく、自転車1に支障なく騎乗することを可能にする。このことは、自転車1の可制御性を向上させ、走行快適性を改善し、自転車1に騎乗する瞬間の運転者の事故リスクを低減する。
【0031】
第2のルールは、より高次の多項式関数、特に3次の多項式関数である。多項式関数により、複雑なルールも、1つの関数にマッピングされ得る。このことは、関数の所望の特性を簡単に多項式関数の適合により達成することを可能にする。特に3次の多項式関数により、第2の値範囲4b内の出力モーメント6のロジスティック曲線が達成され得る。特に3次の多項式関数の推移は、運転者により2次または1次の多項式関数と比較して心地よいと感じられる。3次より高次の多項式関数は、同じく出力モーメント6の心地のよい推移を可能にするが、運転者の感じ方が僅かに上記出力モーメント6の推移とは相違し、かつより手間のかかる算出となる。特に、第1の出力モーメント6aと、第2の出力モーメント6と、第3の出力モーメント6との間の連続的な移行との関連において、3次の多項式関数を基にした第2の出力モーメント6bの推移は、特に心地のよい推移をなす。このことは、第1の出力モーメント6aおよび第3の出力モーメント6に対する移行の近傍に、第2の出力モーメント6bの僅かな変化率を有する、第2の出力モーメント6bの推移から生じる。
【0032】
第3のルールは、運転者入力モーメント3を入力パラメータとする一次関数、特に傾きが1の一次関数である。第3の値範囲は、発進状況を離脱した運転者の通常のアシストを表す。一次関数により、第3の出力モーメント6による、運転者にとって予測可能なアシストが提供される。このことは、第3の値範囲4c内での運転者による自転車1の良好な可制御性を可能にする。このことから、改善された走行快適性および低減された事故リスクが生じる。
【0033】
第2の値範囲4bの下側の境界値41が、5Nmであり、第2の値範囲4bの上側の境界値42が、10Nmである。したがって、第1の値範囲4aは、5Nmの上側の境界値41を有し、第3の値範囲4cは、10Nmの下側の境界値42を有している。第2の値範囲4bのこれらの境界値41,42は、運転者により、アシストが僅かな、またはない状態の、第1の値範囲4aと、アシストがある状態の、第3の値範囲4cとの間の移行に関し、特に心地よいと感じられる。下側の境界値41および上側の境界値42は、運転者入力モーメントの測定の根底にあるセンサの精度に応じて適合され得る。
【0034】
第2の出力モーメント6が、第2の値範囲4bの上側の境界値42に有する傾きと、第3の出力モーメント6が、第3の値範囲4cの下側の境界値42に有する傾きとが、同じである。したがって、出力モーメント6の推移中、第2の出力モーメント6と第3の出力モーメント6との間の移行において、折曲は、生じない。このことは、運転者にとって予期しないアシストの挙動を防止し、運転者による自転車1の可制御性を改善する。このことは、事故リスクを低減し、運転者のための走行快適性を改善する。
【0035】
第1の出力モーメント6が、第1の値範囲4aの上側の境界値41に有する傾きと、第2の出力モーメント6が、第2の値範囲4bの下側の境界値41に有する傾きとが、同じである。したがって、出力モーメント6の推移中、第1の出力モーメント6aと第2の出力モーメント6との間の移行において、折曲は、生じない。このことは、運転者にとって予期しないアシストの挙動を防止し、運転者による自転車1の可制御性を改善する。このことは、事故リスクを低減し、運転者のための走行快適性を改善する。
【0036】
運転者入力モーメント3が、第3の値範囲4cの下側の境界値42より下に降下すると、出力モーメント6は、運転者入力モーメント3に基づいて、第4の値範囲4d内で第4のルールに則って算出される。第4の値範囲4dは、第3の値範囲4cに接続している。第4のルールと、第2のルールとは、互いに相違している。これにより、出力モーメント6に基づくアシストモーメントによる運転者のアシストは、運転者が発進状況にあるか、または運転者が既に走行しているかに応じて、区別され得る。このことは、運転者が、直ちにアシストを失うことなく、運転者モーメント3を短期的に減少させることを可能にする。
【0037】
第4のルールは、同じくより高次の多項式関数である。この場合、この多項式関数は、第2の値範囲4bの上側の境界値42より低い運転者モーメント3で初めて開始する。これにより、入力モーメントに対する出力モーメント6のヒステリシスが生じる。このことは、運転者により特に心地よいと感じられる。
【0038】
特に好ましくは、第4のルールは、時間的に変化してもよい。第4のルールは、規定された時間セクション、特に、自転車(1)が発進状況にない時間セクションにわたって、第1のルールおよび/または第2のルールから、第1の値範囲4aおよび/または第2の値範囲4bおよび/または第3の値範囲4cのための任意の別の関数、特に一次関数に近似し得る。第4のルールの適合により、出力モーメント6の、第4のルールから生じる推移は、運転者の期待に適合される。運転者は、発進状況からの時間的な間隔が増すにつれ、出力モーメント6に基づくアシストモーメントの線形の降下を想定する。これにより、第4のルールは、ユーザの、時間的に変化する期待に適応する。ユーザは、このような挙動を、時間にわたって固定的な第4のルールより直観的であると捉える。
【符号の説明】
【0039】
1 自転車
1a 制御装置
1b センサ
1c 電気式の駆動部
1d 線路
2 縦座標
3 運転者入力モーメント
4a 第1の値範囲
4b 第2の値範囲
4c 第3の値範囲
4d 第4の値範囲
6 出力モーメント
6a 第1の出力モーメント
6b 第2の出力モーメント
6c 第3の出力モーメント
41 境界値
42 境界値
【手続補正書】
【提出日】2024-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動自転車(1)の駆動部の制御装置(1a)であって、
前記制御装置(1a)は、
前記電動自転車(1)の運転者により加えられる運転者入力モーメント(3)を受信し、かつ/または呼び出し、
出力モーメント(6)を前記運転者入力モーメント(3)に基づいて、前記運転者入力モーメント(3)の第1の値範囲(4a)内では第1のルールに則って、前記運転者入力モーメント(3)の第2の値範囲(4b)内では第2のルールに則って、かつ前記運転者入力モーメント(3)の第3の値範囲(4c)内では第3のルールに則って求め、
アシストモーメントを前記出力モーメント(6)に基づいて求め、かつ
前記駆動部(1c)を前記アシストモーメントにしたがって動作制御すべく、
形成されており、
前記第2の値範囲(4b)は、前記第1の値範囲(4a)と、前記第3の値範囲(4c)とに直接接続しており、
前記第1のルールと、前記第2のルールと、前記第3のルールとは、互いに相違しており、かつ
前記第2のルールは、前記運転者入力モーメント(3)を入力パラメータとする連続関数である、
電動自転車(1)の駆動部の制御装置(1a)。
【請求項2】
前記第1のルールにしたがう第1の出力モーメント(6a)と、前記第2のルールにしたがう第2の出力モーメント(6b)と、前記第3のルールにしたがう第3の出力モーメント(6c)とが、連続的に互いに接続していることを特徴とする、請求項1に記載の制御装置(1a)。
【請求項3】
前記第1のルールは、前記第1の値範囲(4a)内の前記運転者入力モーメント(3)に、ゼロの値の第1の出力モーメント(6a)を割り当てることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項4】
前記第2のルールは、より高次の多項式関数、特に3次の多項式関数であることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項5】
前記第3のルールは、前記運転者入力モーメント(3)を入力パラメータとする一次関数、特に傾きが1の一次関数であることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項6】
前記第2の値範囲(4b)の下側の境界値(41)が、5Nmであり、前記第2の値範囲(4b)の上側の境界値(42)が、10Nmであることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項7】
前記第2の出力モーメント(6b)が、前記第2の値範囲(4b)の前記上側の境界値(42)に有する傾きと、前記第3の出力モーメント(6c)が、前記第3の値範囲(4c)の下側の境界値(42)に有する傾きとが、同じであることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項8】
前記第1の出力モーメント(6a)が、前記第1の値範囲(4a)の上側の境界値(41)に有する傾きと、前記第2の出力モーメント(6b)が、前記第2の値範囲(4b)の前記下側の境界値(41)に有する傾きとが、同じであることを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項9】
前記運転者入力モーメント(3)が、前記第3の値範囲(4c)の前記下側の境界値(42)より下に降下すると、前記出力モーメント(6)は、前記運転者入力モーメント(3)に基づいて、第4の値範囲(4d)内で第4のルールに則って算出され、
前記第4の値範囲(4d)は、前記第3の値範囲(4c)に接続しており、かつ
前記第4のルールと、前記第2のルールとは、異なっている、
ことを特徴とする、請求項1または2に記載の制御装置(1a)。
【請求項10】
自転車(1)であって、
前記自転車(1)を駆動する電気式の駆動部(1c)と、
前記自転車(1)の運転者により加えられる運転者入力モーメント(3)を求めるセンサ(1b)と、
請求項1または2に記載の制御装置(1a)と、
を備え、
前記制御装置(1a)は、前記駆動部(1c)を動作制御すべく、かつ前記センサ(1b)の信号を受信すべく、形成されている、
自転車(1)。
【外国語明細書】