IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 伊藤鉄工株式会社の特許一覧 ▶ 株式会社長谷工コーポレーションの特許一覧

<>
  • 特開-災害用トイレ装置 図1
  • 特開-災害用トイレ装置 図2
  • 特開-災害用トイレ装置 図3
  • 特開-災害用トイレ装置 図4
  • 特開-災害用トイレ装置 図5
  • 特開-災害用トイレ装置 図6
  • 特開-災害用トイレ装置 図7
  • 特開-災害用トイレ装置 図8
  • 特開-災害用トイレ装置 図9
  • 特開-災害用トイレ装置 図10
  • 特開-災害用トイレ装置 図11
  • 特開-災害用トイレ装置 図12
  • 特開-災害用トイレ装置 図13
  • 特開-災害用トイレ装置 図14
  • 特開-災害用トイレ装置 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119766
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】災害用トイレ装置
(51)【国際特許分類】
   A47K 11/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A47K11/00 113
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023193
(22)【出願日】2024-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2023026637
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000118590
【氏名又は名称】伊藤鉄工株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000150615
【氏名又は名称】株式会社長谷工コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002011
【氏名又は名称】弁理士法人井澤国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100072039
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 洵
(74)【代理人】
【識別番号】100123722
【弁理士】
【氏名又は名称】井澤 幹
(74)【代理人】
【識別番号】100157738
【弁理士】
【氏名又は名称】茂木 康彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 光男
(72)【発明者】
【氏名】藤繁 俊五
(72)【発明者】
【氏名】木村 洋
(72)【発明者】
【氏名】菅原 正道
(72)【発明者】
【氏名】関口 拓也
【テーマコード(参考)】
2D036
【Fターム(参考)】
2D036AA03
2D036BA32
2D036BA37
2D036CA01
2D036CB03
(57)【要約】
【課題】多大な建設コストかけることなく設置することができる災害用トイレを提供する。
【課題を解決するための手段】
災害用トイレ装置は、仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、分離部は、蓋体に吊り下げるとともに、開口部から落下するし尿を固形分と液体とに分離するというものである。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、
し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、
前記分離部は、前記蓋体に吊り下げるとともに、前記開口部から落下するし尿を固形分と液体とに分離する災害用トイレ装置。
【請求項2】
仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、
前記蓋体を載置するための枠部と、
し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、
前記分離部は、前記枠部に吊り下げるとともに、前記開口部から落下するし尿を固形分と液体とに分離する災害用トイレ装置。
【請求項3】
仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、
前記蓋体を載置するための枠部と、
し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、
前記枠部は、内方に突出する突出部と、
ボルトと、当該ボルトと螺合する吊り下げ部材と、を有し、
前記突出部は、下方に連通する孔である孔部と、を有し、
前記孔部に前記ボルトを挿入しつつ、前記突出部の下部に、前記吊り下げ部材を配置するともに、当該ボルトと螺合し、
前記吊り下げ部材は、環状に縫着した前記分離部における上端部に取り付けた吊り下げ用のフックと、取り外し可能に取り付けることで、前記分離部は、前記枠部に吊り下げることができる災害用トイレ装置。
【請求項4】
仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、
前記蓋体を載置するための枠部と、
し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、
前記枠部は、内方に突出する突出部と、
ボルトと、当該ボルトと螺合するアイナットと、を有し、
前記突出部は、下方に連通する孔である孔部と、を有し、
前記孔部に前記ボルトを挿入しつつ、前記突出部の下部に、前記アイナットを配置するともに、当該ボルトと螺合し、
前記アイナットは、環状に縫着した前記分離部における上端部に取り付けた吊り下げ用のフックと、取り外し可能に取り付けることで、前記分離部は、前記枠部に吊り下げることができる災害用トイレ装置。
【請求項5】
前記分離部は、開口し、平面視環状を呈する上部と、平面視環状を呈するとともに、下方に配置する下部と、を有し、
前記上部から前記下部にかけて縮径する請求項1から4のいずれかに記載の災害用トイレ装置。
【請求項6】
前記分離部は、開口する上部と、下方に配置する下部と、
前記上部と前記下部に貼り付ける本体部と、を有し、
前記本体部は、前記上部から前記下部にかけて縮径するとともに、網目状を呈する請求項請求項1から4のいずれかに記載の災害用トイレ装置。
【請求項7】
前記分離部は、開口する上部と、中間部と、下方に配置する下部と、
前記上部と前記下部に貼り付ける本体部と、を有し、
前記本体部は、前記上部から前記下部にかけて縮径するとともに、網目状を呈し、
前記網目状の網目の間隔は4ミリメートルから10ミリメートル間隔である請求項1から4のいずれかに記載の災害用トイレ装置。
【請求項8】
仮設便器と、前記仮設便器を覆うテントと、を有し、
前記仮設便器は前記蓋体に設置するとともに、
前記分離部は、開口する上部と、中間部と、下方に配置する下部と、
前記上部と前記下部に貼り付ける本体部と、を有し、
前記本体部は、前記上部から前記下部にかけて縮径するとともに、網目状を呈し、
前記網目状の網目の間隔は4ミリメートルから10ミリメートル間隔である請求項1から4のいずれかに記載の災害用トイレ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地震等の災害が発生したときに使用する災害用トイレ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来は、地震等の災害が発生したときに使用する災害用トイレとして、いわゆる仮設トイレが知られている。この仮設トイレでは、貯蔵タンクにし尿を貯蔵し、一定期間使用したのちは、バキュームカーによってそのし尿を回収することで使用し続けることができる。
【0003】
しかしながら地震等の災害時は広域にわたることが多く、このような仮設トイレでは数に限りがあり、多くに被災者がその仮設トイレを使用できるとは限らない。また、地震等によって道路が破壊されている場合がありそのような場合は、バキュームカーによりし尿の回収を行うことができない。
【0004】
例えば、特開2009-77773号公報において、「地中に埋設しておき災害発生時に利用する災害用トイレであって、し尿の投入口、及び投入口を介して投入される屎尿を流す流路を有する流路コンクリートブロックと、前記流路に連通し底版面が当該流路よりも低位置にある溜桝コンクリートブロックとを連結している災害用トイレ。」が開示されている。
【0005】
しかしながら、上述の災害用トイレは、屎尿を流す流路を有する流路コンクリートブロックを、あらかじめ地中に埋設しておくというものである。すなわち、通常時には使用しないものの常設のトイレと同様にあらかじめ流路コンクリートブロックと、溜桝コンクリートブロックとを埋設しておく必要があるために多大な建設コストがかかるとともに、その設置場所についても、制限がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009-77773号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は前記の点に着目してなされたもので、その課題は、多大な建設コストかけることなく設置することができる災害用トイレを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、第1観点の災害用トイレ装置は、仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、分離部は、蓋体に吊り下げるとともに、開口部から落下するし尿を固形分と液体とに分離するというものである。
【0009】
また、第2観点の災害用トイレ装置は、仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、蓋体を載置するための枠部と、し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、分離部は、枠部に吊り下げるとともに、開口部から落下するし尿を固形分と液体とに分離するというものである。
【0010】
また、第3観点の災害用トイレ装置は、仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、蓋体を載置するための枠部と、し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、枠部は、内方に突出する突出部と、ボルトと、当該ボルトと螺合する吊り下げ部材と、を有し、突出部は、下方に連通する孔である孔部と、を有し、孔部にボルトを挿入しつつ、突出部の下部に、吊り下げ部材を配置するともに、当該ボルトと螺合し、吊り下げ部材は、環状に縫着した前記分離部における上端部に取り付けた吊り下げ用のフックを取り外し可能に取り付けることで、分離部は、前記枠部に吊り下げることができるというものである。
【0011】
また、第4観点の災害用トイレ装置は、仮設便器を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部を具備する蓋体と、蓋体を載置するための枠部と、し尿を固形分と液体とに分離する分離部と、を有し、枠部は、内方に突出する突出部と、ボルトと、当該ボルトと螺合するアイナットと、を有し、突出部は、下方に連通する孔である孔部と、を有し、孔部にボルトを挿入しつつ、突出部の下部に、アイナットを配置するともに、当該ボルトと螺合し、アイナットは、環状に縫着した前記分離部における上端部に取り付けた吊り下げ用のフックを取り外し可能に取り付けることで、分離部は、前記枠部に吊り下げることができるというものである。
【0012】
また、第5観点の災害用トイレ装置は、第1観点から第4観点において、分離部は、開口する上部と、下方に配置する下部と、上部と下部に貼り付ける本体部と、を有し、本体部は、前記上部から前記下部にかけて縮径するとともに、網目状を呈するというものである。
【0013】
また、第6観点の災害用トイレ装置は、第1観点から第4観点において、分離部は、開口する上部と、中間部と、下方に配置する下部と、上部と下部に貼り付ける本体部と、を有し、本体部は、上部から下部にかけて縮径するとともに、網目状を呈し、網目状の網目の間隔は4ミリメートルから10ミリメートル間隔であるというものである。
【0014】
また、第7観点の災害用トイレ装置は、第1観点から第4観点において、仮設便器と、仮設便器を覆うテントと、を有し、仮設便器は蓋体に設置するとともに、分離部は、開口する上部と、中間部と、下方に配置する下部と、上部と下部に貼り付ける本体部と、を有し、本体部は、上部から下部にかけて縮径するとともに、網目状を呈し、網目状の網目の間隔は4ミリメートルから10ミリメートル間隔であるというものである。
【0015】
また、第8観点の災害用トイレ装置は、第1観点から第4観点において、仮設便器と、前記仮設便器を覆うテントと、を有し、仮設便器は蓋体に設置するとともに、分離部は、開口する上部と、中間部と、下方に配置する下部と、上部と下部に貼り付ける本体部と、を有し、本体部は、上部から下部にかけて縮径するとともに、網目状を呈し、網目状の網目の間隔は4ミリメートルから10ミリメートル間隔であるというものである。
【発明の効果】
【0016】
本発明は以上のように構成され、かつ、作用するものであるから、多大な建設コストかけることなく設置することができる災害用トイレを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施例の災害用トイレ装置の側面図である。
図2】一部を省略した蓋体と蓋枠部との概念平面図である。
図3】Aは蓋体の平面図である。Bは、蓋体の背面図である。Cは、AのIII-III線断面図である。
図4】Aは、蓋枠部の平面図である。Bは、AのIV-IV線断面図である。
図5】Aは、分離部の平面図である。Bは、分離部の側面図である。
図6】Aは、分離部を蓋体に吊り下げた状態を示す部分拡大図である。Bは、分離部を蓋体に吊り下げた状態を示す他の実施例の部分拡大図である。
図7】第2実施例の災害用トイレ装置の側面図である。
図8】一部を省略した蓋体と枠部との概念平面図である。
図9】Aは蓋体の平面図である。Bは、AのIX-IX線断面図である。
図10】Aは、枠部の平面図である。Bは、AのX-X線断面図である。
図11】Aは、分離部を枠部における枠取付部に吊り下げた状態を示す部分拡大図である。Bは、分離部を枠部における枠取付部に吊り下げた状態を示す他の実施例の部分拡大図である。Cは、Jの字状のフック形状を呈する枠取付部に吊り下げた状態を示す部分拡大図である。Dは、第2枠取付部に、吊り下げた状態を示す部分拡大図である。
図12】Aは、高圧洗浄機のホースを取り付け、水を噴射することで分離部に滞留した固形分を溶解しつつマンホールから、図示しない下水道に排出する様子を示した状態図側面図である。Bは、蓋部における開口部に、仮の蓋である仮蓋部を取り付けた状態の平面状態図である。
図13】第3実施例の災害用トイレ装置の側面図である。
図14】Aは、枠部の平面図である。Bは、AのXIV-XIV線断面図である。
図15】分離部を枠部における枠取付部に吊り下げた状態を示す部分拡大図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図示の実施形態を参照して、第1実施例の災害用トイレ装置10について説明する。本実施例の災害用トイレ装置10は、蓋体20と、その蓋体20に取り付ける分離部100とを有する。また、蓋枠部50を有することが好ましい。蓋枠部50はマンホール300の上端部301に配置され、マンホール枠として使用されるものであり、その蓋体20を載置することができるというものである。なお、第1実施例の災害用トイレ装置10に使用する蓋枠部50は従来周知のものであってもよい。
【0019】
第1実施例の災害用トイレ装置10は、仮設便器200を、蓋体20上に載置するとともに、その外部からの視線を遮るために仮設便器200をテント250で囲うように設置することが好ましい。なお仮設便器200は、伊藤鉄工株式会社製のYT型が好ましい。また、テント250も同様に伊藤鉄工株式会社製のALT型が好ましい。また、仮設便器200は、し尿が通過するための図示しない通路を有し、その通路は、蓋体20における開口部24と連通するように接続されている。また、仮設便器200は、台となる基部210を有し、その基部210は、上述のテント250と接続されている。
【0020】
蓋体20はいわゆるマンホール蓋として使用されるものであり、円盤状を呈するものである。また、蓋体20の表面21は、滑り止め模様としての凸凹状の凹凸部22を多数有している。また、蓋体20は、開口する開口部24を有している。蓋体20の開口部24は平面視矩形状を呈し、仮設便器200を配置したときに排せつされるし尿を、後述する分離部100に落下させるためのものである。すなわち、蓋体20は、仮設便器200を設置したときに、その仮設便器200と、連通する開口部24を具備するというものである。
【0021】
また、開口部24は、開口部24を閉塞するための蓋となる図示しない開口蓋部を有する場合がある。不使用時には開口部24を開口蓋部で閉塞することで、通常のマンホール蓋として使用することができる。また、開口蓋部は、平面視矩形状を呈するものであることが好ましい。
【0022】
また、蓋体20の裏面25は、後述する分離部100における吊り下げ用のフック118を吊り下げる係合部28を4か所有している。係合部28は、蓋体20の外縁である外縁部23の近傍に配置し、後述する4か所の吊り下げ用のフック118の位置に対応するように、平面視円形状の外縁部23においてその蓋部20の平面視において、中心Cとの角度がそれぞれ90度ずつずれた位置、例えば、45度、135度、225度、315度の方向に配置している。なお、係合部28は、孔部28aを有しており、その孔部28aに、フック118を係合し、後述する分離部100を、蓋体20に吊り下げることができる。
【0023】
蓋枠部50は、開口する枠開口部51とその枠開口部51の周囲に、蓋体20を載置するための蓋接触部52とを有するものである。なお上述の通り蓋枠部50は従来周知のものであってもよい。
【0024】
分離部100は、いわば籠状のものであって、網状の本体部110を有する。本体部110の網目の間隔が4ミリメートルから10ミリメートルのものが好ましい。し尿のうち、固形分(大便)を一時的に保持するとともに液体(小便)を下方に流すというものであり、その後固形部については清掃する際に容易に流すことができるからである。なお、これについては後述する。
【0025】
また、分離部100の上端に配置する開口する上部130と、下端に配置する下部160と、その間に配置する中間部140を有している。また、上部130と、中間部140と、下部160に貼り付けるように上述の本体部110を有している。
【0026】
また、分離部100は、上部130から中間部140を経て下部160にかけて徐々に縮径する構成である。すなわち本体部110は側面視においてテーパー状を呈している。
【0027】
また、上部130は、分離部100を持ち上げるための取っ手となる取っ手部131を4か所配置している。
【0028】
本体部110は、網目状を呈することが好ましく、網目の間隔が4ミリメートルから10ミリメートルのものが好ましい。固形分を一時的に保持することができるからである。なお、これについては後述する。
【0029】
また、上部130は平面視円形状を呈し横に広がることを阻止するためのものであり、ロープを環状に構成したものであることが好ましい。また、中間部140は平面視円形状を呈し、ロープを環状に構成したものであることが好ましい。また、下部160は平面視円形状を呈し、ロープを環状に構成したものであることが好ましい。また、上部130、中間部140、下部160にかけて徐々に縮径するように構成されている。また、環状の下部160の内側は網状の下部網部165を有している。よって、環状を呈する上部130と中間部140と下部160とに網目状の本体部110を取り付けることで、分離部100を構成することができる。したがって分離部100は、側面視において上部130が大であり、下部160が小のいわばテーパー状を呈している。
【0030】
上述の通り、上部130、中間部140、下部160はそれぞれ例えば、ポリエチレン製が好ましく、そのポリエチレン製のロープのうちポリエチレン製のロープを環状に構成した場合にあっては伸びが少なく、その形状を維持することができるとともに、不使用においては、折りたたんで収納することができる。
【0031】
本体部110は、側面ロープ115を4本有している。この側面ロープ115は、下部160に配置され、中間部140を経て、上部130の上方に至るものでありその上端116は、吊り下げ用のフック118を着脱可能に取り付けることができる。この4本の側面ロープ115は、本体部110における平面視において、45度、135度、225度、315度の方向にそれぞれ配置されており、本体部110を補強している。また、側面ロープ115の上端である上端部116は、環状に縫着し、吊り下げ用のフック118を取り外し可能に取り付けることができる。
【0032】
また、この4本の側面ロープ115のうち、45度と225度の方向に配置した側面ロープ115は、下部160において一体となり、135度と315度の方向に配置した側面ロープ115は、下部160において一体となっている。したがって、それらは平面視において下部網部165において十字に交差するように配置されている。
【0033】
分離部100は蓋体20に吊り下げることができる。すなわち、蓋体20における係合部28に、分離部100における吊り下げ用のフック118を吊り下げることで、蓋体20に分離部100を吊り下げることができる。なお、係合部28は、孔部28aを有しているものでもよいが(図3B参照)、環状の第2係合部28′に、吊り下げ用の第2フック118′を取り付けることもできる(図6A参照)。また、環状の第3係合部28″に、吊り下げ用の第3フック118″を取り付けることもできる(図6A参照)。
【0034】
次に、第2実施例の災害用トイレ装置12について説明する。第2実施例の災害用トイレ装置12は、蓋体20'と、マンホール300の上端部301に配置される枠部70と、その枠部70に取り付ける分離部100とを有する。ここで蓋体20と蓋体20′との相違は、蓋体20′は、係合部28を有していない点である。すなわち、蓋体20′は、仮設便器200を設置したときに、その仮設便器200と、連通する開口部24を具備するというものである。その他は同様の構成であるので同様の符号を付しその説明を省略する場合がある。また、分離部100は、第1実施例の災害用トイレ装置10における分離部100と同様であるのでその説明は、省略する場合がある。
【0035】
枠部70は、マンホール300の上端部301に配置され、マンホール枠として使用されるものであり、その蓋体20を載置することができるというものである。枠部70は、開口する枠開口部71とその枠開口部71の周囲に、蓋体20′を載置するための蓋接触部72とを有するものである。また、分離部100を釣り下げるように取り付ける枠取付部75を4か所有する。4か所の枠取付部75は、枠開口部71から内部に突出するように、その平面視において、中心Cとの角度がそれぞれ90度ずつずれた位置、例えば、45度、135度、225度、315度の方向に配置している。4か所の枠取付部75は、フック部118を介して、または直接分離部100における側面ロープ115の上端である上端部116に配置した吊り下げ用のフック118と、取り外し可能に取り付けることができる。
【0036】
分離部100は枠部70に吊り下げることができる。すなわち、枠部70における枠取付部75、75′は、リング状を呈しているものでも好ましいが(図11、B参照、)その枠取付部75、75′に、分離部100における吊り下げ用のフック部118のみならず第2フック118′を取り付けることもできる(図11A参照)。また、第3フック118″を取り付けることもできる(図11B参照)。
【0037】
なお、枠取付部75、75′は、リング状を呈しているものでも好ましいが(図11、B参照、)、Jの字状のフック形状を呈する枠取付部76や、側面ロープ115の上端116を直接取り付ける第2枠取付部77であっても好ましい(図11C、D参照)。
【0038】
次に、第3実施例の災害用トイレ装置13について説明する。第3実施例の災害用トイレ装置13は、上述の仮設便器200を設置したときに、当該仮設便器と連通する開口部24を具備する蓋体20'と、マンホール300の上端部301に配置される枠部170と、その枠部170に取り付ける分離部100とを有する。また、第3実施例の災害用トイレ装置13は、さらに、ボルト260と、当該ボルト260と螺合する吊り下げ部材270と、を有する。このように吊り下げ部材270は、ボルト260と螺合する図示しない雌螺子部分を有する。
【0039】
分離部100はすでに説明した通りであり、その分離部100は枠部170に吊り下げることができる。すなわち、枠部170は、内方に突出する突出部171を有し、その突出部171は、下方に連通する孔である孔部172を有する。また孔部172にはボルト260を挿入することができ、吊り下げ部材270がその突出部170の下部171aにおいてそのボルト260と螺合することができる。
【0040】
また、吊り下げ部材270は環状を呈する環状部271を有し、その環状部271に分離部100における吊り下げ用の第2フック118′を吊り下げることで、上述の通り、その分離部100は枠部170に取り外し可能に吊り下げることができる。
【0041】
なお、吊り下げ部材270は、その向きを自在に変更し、その位置をボルト260によって突出部170に固定することができるので、例えば、図示するように環状部271をマンホール300に対し垂直に配置し、ボルト260と螺合して固定することによって、その環状部271の向きをそのマンホール300に対し垂直に固定することができるので、分離部100における吊り下げ用の第2フック118′を、その環状部271に容易に取り付けることができる。
【0042】
このように、第3実施例の災害用トイレ装置13における枠部170は、内方に突出する突出部171と、を有し、その突出部171は、下方に連通する孔である孔部172とを有し、その孔部172にボルト260を挿入しつつ、その突出部171の下部171aに、吊り下げ部材270を配置するともにそのボルト260と螺合する。また、その吊り下げ部材270は、環状を呈する環状部271と、を有し、その環状部271に、分離部100における吊り下げ用の第2フック118′を折り外し可能に吊り下げることで、分離部100は、枠部170に吊り下げることができる。このような構成を有するので、第3実施例の災害用トイレ装置13は、開口部24から落下するし尿を固形分と液体とに分離することができる。なお吊り下げ部材270はアイナットが好ましい。アイナットは、ボルト260と螺合する図示しない雌螺子部分を有するとともに、環状を呈する環状部を有することが好ましい。
【0043】
なお、第3実施例の災害用トイレ装置13は、第2実施例の災害用トイレ装置12と同様に、仮設便器200を、蓋体20′上に載置するとともに、その外部からの視線を遮るために仮設便器200をテント250で囲うように設置することが好ましい。なお仮設便器200は、伊藤鉄工株式会社製のYT型が好ましい。また、テント250も同様に伊藤鉄工株式会社製のALT型が好ましい。また、仮設便器200は、し尿が通過するための図示しない通路を有し、その通路は、蓋体20'における開口部24と連通するように接続されている。また、仮設便器200は、台となる基部210を有し、その基部210は、上述のテント250と接続されている。なお使用中を示す表示251を有していても好ましい(図13参照)。
【0044】
第1実施例の災害用トイレ装置10および第2実施例の災害用トイレ装置12における分離部100に適用する網目の大きさについて以下の実験をした。この実験は、分離部100として使用する網目の大きさによってその分離部100が水と固形分を分離し、その固形分が、どの程度その分離部100に残留するかを見出すためのものである。なお、し尿に代えて、液体である水(小便の代用、液体)と固形分である味噌(大便の代用、固形分)を混合したものを使用した。なお、経験的に大便の粘度が同様のものと考えられていることから、味噌を使用したものである。
【0045】
水0.1リットルと味噌200gを1回分として、それを10回分、網目のサイズが、4ミリメートル間隔のもの、10ミリメートル間隔のもの、14ミリメートル間隔のもの、に投入したときの残留量を計測した表である。
【0046】
【0047】
尚、上記の実験1、2、3においてそれぞれ水と味噌の混合物の重量に相違があるのは、投入時の誤差によるものである。もっともそれを差し引いても、網目の間隔4ミリメートルと網目の間隔10ミリメートルのものについてはほぼ差がなかったことが判明した。なお14ミリメートルのものは、残留量が少なく固形分が流出していることが判明した。
【0048】
このように網目の間隔4ミリメートルから網目の間隔10ミリメートルであれば、し尿のうち液体(水、代用の小便)が落下するものの、ほとんどの固形分(味噌、代用の大便)は、残留するので、このような網目のものを、分離部100における本体部110と、下部160の内側の下部網部165に適用することで、固形分と液体を分離しつつ、固形分を分離部100に残留させることができる。したがって、第1実施例の災害用トイレ装置10および第2実施例の災害用トイレ装置12は、固形分を分離部100に残留させつつマンホール300内にその液体を落下させることで、分離部100に補足されるし尿全体の量を、落下させた液体の分だけ減少させることができる。したがって分離部100に滞留するし尿が減少することで使用回数の増加を図ることができる。
【0049】
なお、ここでいう網目の間隔とは、網目を構成する縦糸同士の間隔と横糸同士の間隔が、それぞれ4ミリメートルから10ミリメートルの間隔が好ましいが、例えば、横糸同士の間隔が12ミリメートル縦糸同士の間隔が10ミリメートルのものも網目が10ミリメートルの間隔に含まれるものである。上述の実験結果の範囲内と考えられるからである。
【0050】
次に、使用後の第2実施例の災害用トイレ装置12の清浄方法について説明する。なお第1実施例についてもおおむね同様なので、その説明を省略する場合がある。仮設便器200とテント250を取り外し、蓋部20′における開口部24から、仮の蓋である仮蓋部500を取り付ける。仮蓋部500は、孔となる孔部510を有し、その孔部510から、水や高圧洗浄機のホース600を取り付け、水を噴射することで分離部100に滞留した固形分G(大便)を溶解しつつマンホール300から、図示しない下水道に排出する。このために、トイレ装置を使用する排せつ時においては水洗用水の確保や水源の設置が必ずしも必要ではなくなる。なお、図示しないが第1実施例の災害用トイレ装置12についても蓋部20における開口部24に、仮の蓋である仮蓋部500を取り付ける以降の洗浄工程は上述の通りである(図12A、B参照)。なお、固形分Gは、大便のみならず、トイレットペーパーが含まれる場合がある。
【0051】
また、上述のとおり、水や高圧洗浄機のホースを取り付け、水を噴射することで容易に洗浄することができるので、上下水道復旧時にバキュームカーでし尿を取り除く必要がなく、容易に通常の状態に回復することができる。また、第1実施例の災害用トイレ装置10および、第2実施例の災害用トイレ装置12はマンホール300に容易に取り付けることができるので、従来の災害用トイレに必要とされた水洗用の設備が不要となり、設置コストを大幅に削減することができる。このように第1実施例の災害用トイレ装置10および第2実施例の災害用トイレ装置12は、従来の災害用トイレにおいて水の無いマンホール内に汚物を落とすと、汚物がマンホール内に堆積し、上水復旧時に排水を流せなくなるという問題を解決することができる。また、さらに堆積した汚物が固化した場合、バキュームカーでの回収が困難となるという問題をも解決することができる。また、汚物がマンホール内に堆積した場合において、上水が復旧したときにその汚物の堆積よる排水障害(閉塞)を回避することができる。なお、第3実施例の災害用トイレ装置13も同様である。
【0052】
また、第1実施例の災害用トイレ装置10および第2実施例の災害用トイレ装置12における分離部100は、不使用時には取り外して保管することで通常のマンホール蓋、あるいは、その蓋を載置する枠として使用することができる。なお、第3実施例の災害用トイレ装置13も同様である。
【符号の説明】
【0053】
10 第1実施例の災害用トイレ装置
12 第2実施例の災害用トイレ装置
13 第3実施例の災害用トイレ装置
20 20′蓋体
24 開口部
50 蓋枠部
100 分離部
130 上部
140 中間部
160 下部
170 枠部
171 突出部
171a 下部
172 孔部
200 仮設便器
250 テント
260 ボルト
270 吊り下げ部材
271 環状部
300 マンホール
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15