(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119768
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】運搬具
(51)【国際特許分類】
B65D 67/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B65D67/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024023393
(22)【出願日】2024-02-20
(31)【優先権主張番号】P 2023026465
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023169303
(32)【優先日】2023-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】523064217
【氏名又は名称】有限会社グリーン企画
(74)【代理人】
【識別番号】100134706
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 俊彦
(72)【発明者】
【氏名】小路 保夫
【テーマコード(参考)】
3E067
【Fターム(参考)】
3E067AA14
3E067AB79
3E067AB90
3E067AC03
3E067BA11A
3E067BA17A
3E067BB05A
3E067BB11A
3E067BB15A
3E067BB16A
3E067EE38
3E067EE59
3E067FC02
3E067HA03
(57)【要約】
【課題】運搬対象物の多少に関わらず運搬が容易な運搬具を提供する。
【解決手段】運搬具10は、可撓性のシート部13と、一対の端部ポール15と、中央ポール16とを備える。シート部13は、矩形状に形成されている。一対の端部ポール15は、シート部13の両端に互いに平行に設けられ、シート部13の端縁13Eaに沿って延びている。中央ポール16は、シート部13の第1シート面13Aまたは第2シート面13Bを垂直方向から見たときに、端部ポール15と平行に延びている。中央ポール16は、シート部13の中央に配されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
矩形状に形成された可撓性のシート部と、
前記シート部の両端に互いに平行に設けられ、前記シート部の端縁に沿って延びた一対の端部ポールと、
前記シート部のシート面を垂直方向から見たときに前記端部ポールと平行に延びて前記シート部の中央に配された中央グリップ部材と
を備える運搬具。
【請求項2】
前記シート部の前記端縁から突出し、前記端部ポールを挿脱可能に環状に形成され、挿入された前記端部ポールを保持する保持部と、
前記保持部の内面に設けられ、前記端部ポールの一端を前記保持部に固定する面ファスナと
を備える請求項1に記載の運搬具。
【請求項3】
前記中央グリップ部材は棒状に形成された中央ポールである請求項1または2に記載の運搬具。
【請求項4】
前記中央ポールは、前記端部ポールと同等の長さで前記端部ポールと平行に延びている請求項3に記載の運搬具。
【請求項5】
前記中央ポールは、前記シート面から少なくとも20mmの距離に配されている請求項3または4に記載の運搬具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬具に関する。
【背景技術】
【0002】
植木の剪定などによって生じる枝など、長尺、かつ、長さや形状などが不揃いな物をまとめて運搬する場合には、まとめる作業や、運搬先において排出する作業等に手間がかかる。そこで、例えば特許文献1には、平面状の布シートと、一対の芯棒とを備えるごみ運搬具が提案されている。一対の芯棒は、布シートの両端に、それぞれグリップ部を露出させて取り付けられている。芯棒としては、直線状のものとクランク状に曲がっているものとが記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、平面状の生地と、生地に設けられた2本のスリングと、各スリングを結ぶ形で取り付けられた外グリップとを備えるごみ運搬具が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実用新案登録第3113052号公報
【特許文献2】実用新案登録第3108885号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に記載されるごみ運搬具は、ごみの運搬量、すなわち、運搬する対象物(以下、運搬対象物と称する)の量の増加に対応する技術であり、運搬対象物の量が少ない場合には持ちにくかったり、荷が路面に接触して引きずられてしまうことがある。
【0006】
そこで、本発明は、運搬対象物の多少に関わらず運搬が容易な運搬具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の運搬具は、可撓性のシート部と、一対の端部ポールと、中央グリップ部材とを備える。シート部は矩形状に形成されている。端部ポールは、シート部の両端に互いに平行に設けられ、シート部の端縁に沿って延びている。中央グリップ部材は、シート部のシート面を垂直方向から見たときに、端部ポールと平行に延びてシート部の中央に配されている。
【0008】
運搬具は、シート部の前記端縁から突出し、端部ポールを挿脱可能に環状に形成され、挿入された端部ポールを保持する保持部と、保持部の内面に設けられ、端部ポールの一端を保持部に固定する面ファスナとをさらに備えることが好ましい。
【0009】
中央グリップ部材は棒状に形成された中央ポールであることが好ましい。中央ポールは、端部ポールと同等の長さで端部ポールと平行に延びていることが好ましい。
【0010】
中央ポールは、シート面から少なくとも20mmの距離に配されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、運搬対象物の多少に関わらず運搬が容易である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の実施形態である運搬具の説明図である。
【
図2】運搬具の概略図であり、(A)は第1シート面側の平面図、(B)は一部断面側面図、(C)は第2シート面側の平面図である。
【
図10】中央ポールの別の実施形態の概略図である。
【
図11】別の実施形態である運搬具の概略斜視図である。
【
図12】別の実施形態である運搬具の概略斜視図である。
【
図13】別の実施形態である運搬具の説明図である。
【
図14】別の実施形態である運搬具の第1シート面側の概略平面図である。
【
図15】別の実施形態である運搬具の第2シート面側の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1において運搬具10は、本発明の実施形態の一例であり、木の枝、葉、工具の他、ごみが収容された状態のごみ袋など、各種の運搬対象物Mを運搬するためのものである。運搬具10は、可撓性のシート部13と、シート部13の対向する両端に取り付けられた2本の端部ポール15及びシート部13の概ね中央に取り付けられた中央ポール16(
図2参照)等で構成され、
図1に示すように運搬対象物Mの一例である木の枝は、シート部13の一方のシート面(以下、第1シート面と称する)13Aに載せられてシート部13でくるまれるようにして運搬される。また、一方の端部ポール15と他方の端部ポール15との間の概ね中央の位置で、第1シート面側を谷折りにしてシート部13を半分に折って使用(以下、半幅使用と称する)することもできる。この場合には、第1シート面13Aと反対側の第2シート面13B(
図2参照)が、2つ折りにされたシート部13の両表面になるので、この第2シート面13B上に運搬対象物Mが載せられてくるまれるようにして運搬される。このように、運搬具10は、シート部13を広げて運搬対象物Mをくるむ全幅使用と、2つ折り状態でくるむ半幅使用とのいずれの態様でも運搬対象物Mをくるむことができるようにしている。これにより、運搬対象物Mの量が多い場合には全幅使用、少ない場合には半幅使用にし、運搬対象物Mの多少に関わらず容易に運搬することができる。
【0014】
端部ポール15及び中央ポール16は、直線状に延びた棒状に形成されており、作業者が把持するグリップ部材として機能するとともに、シート部13を迅速に扱うハンドリング部材として機能する。例えば、運搬対象物Mを上に載せる前には、一方の端部ポール15の一部が把持され、当該端部ポール15を変位させることにより、シート部13が迅速に広げられる。また、例えば運搬対象物Mが載せられた後には、一方の端部ポール15の一部が把持されて持ち上げられることで、シート部13の当該端部ポール15側の全域が持ち上げられるので、くるむ作業が迅速になされる。端部ポール15及び中央ポール16は、シート部13から取り外して分離することができる。これにより、運搬具10の使用時には端部ポール15及び中央ポール16がシート部13に取り付けられ、運搬具10の持ち運びや保管の際には端部ポール15及び中央ポール16が取り外されてシート部13は折り畳まれ、または丸められて、コンパクトになる。
【0015】
図2に示すように、端部ポール15が延びた方向をX方向、X方向に直交し、第1シート面に沿った方向をY方向、X方向及びY方向に直交した厚み方向をZ方向とする。シート部13は矩形状に形成されている。シート部13のサイズは特に限定されず、予定する運搬対象物M(
図1参照)のサイズ、運搬する通路(運搬路)の幅、及び運搬具10を用いる作業者の体格等に応じて設定すればよい。例えば、作業者として体格が大柄な作業者を想定する場合よりも、体格が小柄で非力な作業者を想定する場合にはより小さなサイズに設定する。大柄な作業者を想定する場合には、端部ポール15が設けられる両端における端縁13Eaの長さ、すなわちX方向における長さL1を例えば1000mm以上1400mm以下の範囲内とすることが好ましく、1200mm以上1400mm以下の範囲内などとしてもよく、端縁13Eaと直交する端縁13Ebの長さ、すなわちY方向における長さL2を例えば1500mm以上1700mm以下の範囲内とすることが好ましい。また、小柄な作業者を想定する場合には、大柄な作業者を想定する場合よりも小さいサイズにし、例えば長さL1を1000mm以上1200mm以下の範囲内、長さL2を1100mm以上1300mm以下の範囲内にすることが好ましい。本例では、大柄な作業者を想定して運搬具10のシート部13は、長さL1を1300mm、長さL2を1600mmとしている。ただし、小柄な作業者を想定する場合には、別例として、長さL1を1200mm、長さL2を1100mmとして、大柄な作業者を想定する場合よりも小サイズに形成し、取り扱い性(ハンドリング)の良さを確認している。なお、長さL1は、長さL2よりも小さく、かつ、L2/2よりも大きいことが、後述のように種々の運搬態様を採れる観点で好ましい。
【0016】
シート部13のY方向で対向する両端には、一対の端部ポール15のそれぞれを保持する保持部(以下、端部ポール保持部と称する)21A~21Dが端縁13EaからY方向に突出して形成されている。端部ポール保持部21A~21Dは、可撓性のシート材を折り返し、折り返した各端部を、第1シート面13Aと第1シート面13Aの反対側の第2シート面13Bとにそれぞれ固定することで、端部ポール15が挿脱されるように環状に形成されている。シート材とシート部13との固定方法は特に限定されず、例えば接着剤での接着、溶着、あるいは糸での縫い合わせなどを挙げることができる。シート材の折り返し部分は、上述のように端部ポール15を挿脱、及び挿入された端部ポール15を保持するためのものであるから、環状に形成されていればよく、折り目の有無は問わない。
【0017】
端部ポール保持部21A~21Dのうち2つの端部ポール保持部21A、21Dは、一方向に延びた端縁13Eaの各端に設けられており、端部ポール保持部21Aには端部ポール15の一端が、端部ポール保持部21Dには他端が挿脱される。ここで、端縁13Eaが延びた方向、すなわちX方向における端部ポール保持部21A~21Dの各長さをL3とする。端部ポール保持部21A、21Dの長さL3は、特に限定されず、運搬対象物Mの梱包作業中及び運搬中に端部ポール15が外れることなく安定して保持される程度の長さにすればよく、例えば220mm以上300mm以下の範囲内とすることが好ましく、本例では、260mmとしている。
【0018】
環状に形成された端部ポール保持部21Aと端部ポール保持部21Dとのいずれか一方の内面21sには、挿入された端部ポール15を抜けないように固定するための面ファスナ22が設けられ、他方は、挿入された端部ポール15が一端から抜けないように、接着剤での接着、溶着、あるいは糸での縫い合わせなどにより閉じられていることが好ましい。本例では端部ポール保持部21Aに面ファスナ22が設けられ、端部ポール保持部21Dは一端が閉じられている。面ファスナ22は、互いに脱着する雄型面ファスナ部(図示無し)及び雌型面ファスナ部(図示無し)とを有する。雄型面ファスナ部と雌型面ファスナ部とは、端部ポール15を挿脱する際には剥がした状態にし、挿入された端部ポール15を固定する場合には雄型面ファスナ部と雌型面ファスナ部とを素子同士の係合によりはり合わせる。
【0019】
端部ポール保持部21B、21Cは、端部ポール保持部21A、21Dに挿入されて支持されている端部ポール15が運搬中などにおいて端部ポール保持部21A、21Dから外れてしまうことを抑制するためのものである。X方向における端部ポール保持部21B、21Cの各長さL3は、特に限定されず、本例では60mmとしている。端部ポール保持部21A、21B、21C、21Dの各間において、端部ポール15は露呈しており、この露呈部15eは、作業者が把持するグリップ部として機能するとともに、運搬などの作業中において運搬対象物Mを梱包した状態の運搬具10をバランスよく持つことができる機能をもつ。運搬対象物MはX方向上で把持した場合に荷の重心がX方向において偏りが生じる。例えば、根元に重心がある植木などを運搬する場合には、植木の根元をX方向における一端側に向け、幹の延びた方向をX方向に沿う姿勢で植木が梱包される。このように梱包された場合の運搬時にはX方向において根元が位置する一端側に重心が生じる。このように重心に偏りがある場合には、X方向に沿って端部ポール15の露呈部15eを持ち替える必要が生じる。その際、露呈部15eをできるだけ大きくとれるように露呈部15eのX方向における長さL4及び長さL3を設定することが好ましく、本例でもそのようにしている。したがって、X方向における端部ポール保持部21A~21Dの各長さL3は、作業者が把持できるような露呈部15eを形成し、また露呈部15eの持ち替えを考慮して設定するとよい。長さL4は、200mm以上450mm以下の範囲内が好ましく、この例では、220mmとしている。長さL4が200mm以上であることにより、両手分の幅が確保されて両手でも一の露呈部15eをより把持しやすい。また長さL4が450mm以下であることにより、作業者として平均的な体格の肩幅以下となり、両手で一の露呈部15eを把持した場合にも持ち上げる際や運搬時において力を入れやすい。この例では、長さL4は220mmとし、この長さL4を有する露呈部15eを3つ設けている。
【0020】
この例では、端部ポール保持部21A~21Dを、シート部13と別体のシート材により形成している。しかし、端部ポール保持部はこの例に限られない。例えば、矩形状のシート部と、このシート部から突出した突出部(図示無し)とが一体となったシート材を準備する。そして突出部を折り返し、折り返した先端が矩形状のシート部に固定されることで、端部ポール保持部が形成されてもよい。
【0021】
シート部13のY方向における中央には、中央ポール16を保持する保持部(以下、中央ポール保持部と称する)23A~23Dが第2シート面13Bから突出して形成されている。中央ポール保持部23A~23Dは、端部ポール保持部21A~21Dと同様に可撓性のシート材を用いて形成され、当該シート材は中央に中央ポール16を挿脱するための環状部を形成するように、各端部を第2シート面13Bにそれぞれ固定されている。この固定方法についても特に限定されず、例えば接着剤での接着、溶着、あるいは糸での縫い合わせなど、いずれの手法を用いてもよい。
【0022】
中央ポール保持部23A~23Dのうち2つの中央ポール保持部23A、23Dは、X方向における各端に設けられており、中央ポール保持部23Aには中央ポール16の一端が、中央ポール保持部23Dには他端が挿脱される。X方向における中央ポール保持部23A~23Dの各長さをL5とする。中央ポール保持部23A、23Dの長さL5は、特に限定されず、運搬対象物Mの梱包作業中及び運搬中に中央ポール16が外れることなく安定して保持される程度の長さにすればよく、端部ポール保持部21A、21Dと同じく、例えば220mm以上300mm以下の範囲内とすることが好ましく、本例では、260mmとしている。
【0023】
環状に形成された中央ポール保持部23Aと端部ポール保持部23Dとのいずれか一方の内面23sには、挿入された中央ポール16を抜けないように固定するための面ファスナ22が設けられ、他方は、挿入された中央ポール16が一端から抜けないように、接着剤での接着、溶着、あるいは糸での縫い合わせなどにより閉じられていることが好ましい。本例では中央ポール保持部23Aに面ファスナ22が設けられ、中央ポール保持部23Dは一端が閉じられている。
【0024】
X方向において中央ポール保持部23Aと中央ポール保持部23Dとの間に設けられた中央ポール保持部23B、23Cは、中央ポール保持部23A、23Dに挿入されて支持されている中央ポール16が運搬中などにおいて中央ポール保持部23A、23Dから外れてしまうことを抑制するためのものである。X方向における中央ポール保持部23B、23Cの各長さL5は、特に限定されず、本例では端部ポール保持部21B、21Cと同じ長さ、すなわち60mmとしている。中央ポール保持部23A、23B、23C、23Dの各間において、中央ポール16は露呈しており、この露呈部16eも露呈部15eと同様に作業者が把持するグリップ部として機能する。したがって、X方向における中央ポール保持部23A~23Dの各長さL5は、作業者が把持できるような露呈部16eが形成されるように設定するとよい。この例では、X方向における露呈部16eの長さL6は露呈部15eと同じ長さとしている。
【0025】
シート部13、端部ポール保持部21A~21D、中央ポール保持部23A~23Dは、運搬具10の運搬具本体を構成しており、素材は互いに同じであってもよいし異なってもよい。素材は、運搬対象物Mの運搬に耐えられる素材であって、できるだけ軽量のものが好ましく、複数の材料からなる複合素材であってもよい。例えば、ポリエチレンで形成されたポリエチレンターポリン(Polyethylene tarpaulin、ブルーシートとも呼ばれるものがある)、塩化プロピレン、ポリエステル、ポリプロピレン、これらポリマー素材に繊維を複合化させた複合素材などが挙げられる。
【0026】
端部ポール15及び中央ポール16のX方向における各端は、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dを介して地表面または床面などとの接触する頻度が、運搬具10の他の部位よりも高い。そこで、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dは、補強材(図示無し)を備えることが好ましい。補強材は、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dとして上述したシート材を第1シート材とするときに、第1シート材上にさらに設けられた第2シート材である。このように、第1シート材と第2シート材との二重構造にして端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dを構成する。これにより、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dは、端部ポール15及び中央ポール16と地表面などと接触して摩擦が生じても、擦り切れることが抑制され、擦り切れによる亀裂も生じにくい。
【0027】
第1シート材と第2シート材である補強材とは、X方向における長さが等しくてよい。ただし、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dの最も擦り切れやすい部位は、端部ポール15及び中央ポール16の各端が当たる部分であるから、補強材は第1シート材と同サイズにする必要はなく、端部ポール15及び中央ポール16の各端が当たる部分を覆うことができるサイズであればよい。例えば、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dの長さL3を上述の220mm以上300mm以下の範囲内とする場合には、補強材のX方向における長さを50mm以上80mm以下の範囲内にするなど、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dの長さL3よりも短くしてもよい。
【0028】
補強材は、第1シート材になる上記の素材と同じ素材で形成してもよいし、自動車のシートベルトに用いられ、ポリエステルまたはナイロン(ポリアミド)の繊維を織ってシート状に形成したポリエステル織シート材またはナイロン織シート材で構成してもよい。
【0029】
一対の端部ポール15は、シート部13のY方向において対向する両端に、互いに平行に設けられ、シート部13の端縁13Eaに沿って延びている。これにより、シート部13は、端部ポール15の変位に伴い、シート部13は当該端部ポール15が設けられている端縁13Ea側のX方向における全域が変位するので、シート部13に対してX方向における全域で均一な力が付与される。その結果、各種の作業、例えば、運搬対象物Mをくるむ梱包作業、くるんだ運搬対象物Mをシート部13の外側から押圧することによりコンパクトにする押圧作業、くるまれた運搬対象物Mがシート部13から脱落しないように運搬する運搬作業、運搬先において運搬対象物Mを排出する排出作業等が、迅速かつ確実になされ、優れたハンドリング性を示す。
【0030】
端部ポール15の長さは、端縁13Eaの長さL1と同じ、または長さL1にできるだけ近い長さとすることが、シート部13のX方向における全域を変位させやすい観点で好ましい。この例では、端部ポール保持部21A、21D内において固定されるように長さL1よりも短くしている。上記のようなシート部13のハンドリング性と端部ポール保持部21A、21D内での固定との両観点から、端部ポール15の長さは、(L1-100mm)以上(L1-10mm)以下の範囲内が好ましく、(L1-95mm)以上(L1-15mm)以下の範囲内がより好ましく、(L1-90mm)以上(L1-20mm)以下の範囲内がさらに好ましい。
【0031】
中央ポール16は、第2シート面13Bに設けられ、この場合には、シート部13を広げて運搬対象物Mを載置する際の載置面は第1シート面13Aとされる。したがって、中央ポール16を第1シート面13Aに設けている場合には、シート部13を広げて運搬対象物Mを載置する際の載置面は第2シート面13Bとされる。中央ポール16は、第1シート面13Aまたは第2シート面13Bを垂直方向から見たときに、端部ポール15と平行に延びており、シート部13のY方向における中央に配されている。これにより、例えば半幅使用の際には、中央ポール16は全幅使用の際の端部ポール15と同様にシート部13のX方向における全域を変位させる。そのため、半幅使用の際に、前述のような梱包作業、押圧作業、運搬作業、排出作業等の各種作業がしやすい。また、全幅使用の際には、例えば排出作業において、外部側となっている第2シート面13Bの中央ポール16を持ち上げることにより、くるまれた運搬対象物Mを排出することができる。中央ポール16はY方向における中央に配されているから、持ち上げる際には、端部ポール15を把持して持ち上げる場合よりも低い位置に持ち上げるだけで運搬対象物Mが払い出されるので、中央ポール16が設けられていない場合に比べて排出作業が極めて楽である。
【0032】
中央ポール16の長さは、端部ポール15と同等の長さであることが好ましい。これにより、シート部13を、X方向における全域に渡って変位させやすいとともに、半幅使用において前述の押圧作業及び運搬作業をする際にX方向において均一に力を付与しやすく、荷がより容易にコンパクトにまとめられるとともにその状態が保持される。
【0033】
中央ポール16は、第2シート面13Bから少なくとも20mmの距離L7に配されていることが好ましい。これにより、中央ポール16とシート部13との間の隙間に手指が挿入されやすく、中央ポール16の把持がより容易になる。
【0034】
端部ポール15及び中央ポール16は、軽量化の観点から中空部が形成された断面円形のパイプとしており、端部は開口していてもよいし閉塞していてもよい。素材は互いに同じでもよいし、異なってもよい。素材としては、軽量化の観点からポリマー(樹脂)、アルミニウムなど挙げられ、ポリマーと金属との複合材料でもよく、想定する運搬対象物Mの重量などに応じた強度を有するものとする。
【0035】
上記構成の作用を説明する。全幅使用での梱包の際には、第1シート面13Aが上向きとなるように広げられたシート部13に運搬対象物Mが載置されると、
図3(A)に示すように、一方の端部ポール15A側に位置した作業者にとって手前側(
図3(A)における右側)の第1端部ポール15Aと奥側(
図3(A)における左側)に位置する第2端部ポール15Bとが引き上げられる。次に、
図3(B)に示すように、第1端部ポール15Aを作業者にとって奥側へ変位させることにより、シート部13が丸められ運搬対象物Mに外力が付与される。この際、各端部ポール15は、端縁13Ea(
図2参照)に沿って延びているから、シート部13の手前側の端縁13EaはX方向(
図2参照)の全域に渡り迅速に奥側に変位し、奥側の端縁13EaはX方向全域に渡り手前側に寄せられるので、運搬対象物Mが迅速にくるまれるとともに押圧される。また、作業者は、第1端部ポール15A及び第2端部ポール15Bを把持した状態で第2シート面13B側から膝などで容易に押圧することができるので、押圧作業の効率もよい。続いて、
図3(C)に示すように、手前から奥へと転がすことにより、運搬対象物Mは運搬具10にくるまれて梱包状態になる。運搬具10は中央ポール16を備えるから、転がす際に中央ポール16が把持されてこれを上方奥側へと変位させることにより容易に転がすことができるので、容易に梱包状態となる。
【0036】
半幅使用の際には、運搬具10を前述のように2つ折りにするから、中央ポール16が全幅使用の際の上記第1端部ポール15Aと第2端部ポール15Bとのいずれかに代わりとして作用する。
【0037】
運搬作業では、例えば運搬対象物Mが比較的少量の場合において全幅使用とする際には、作業者の手に把持されてぶら下げるようにして運搬する態様と、例えば腰部または肩に担ぐようにして運搬する態様などの種々の運搬態様が採られる。ぶら下げるようにして運搬する態様としては、例えば
図4(A)に示すように、第1端部ポール15A及び第2端部ポール15Bが作業者により片手に把持され、中央ポール16が下方に位置した状態で運搬される態様がある。また、運搬具10は中央ポール16を備えるから、
図4(B)に示すように、第1端部ポール15Aが内部に巻き込まれた状態で、第2端部ポール15Bが一方の片手に、中央ポール16が他方の片手により把持され、ぶら下げて運搬する態様を採ることができる。また、
図4(C)に示すように、第1端部ポール15Aが内部に巻き込まれた状態で、第2端部ポール15Bを一方の片手に、中央ポール16を他方の片手により把持されて腰部に引き上げた姿勢で運搬する態様を採ることができる。さらに、
図4(D)に示すように、第1端部ポール15Aが内部に巻き込まれた状態で、第2端部ポール15Bが頭上に挙げた片手で把持され、中央ポール16が他方の片手により下方から支持されることにより肩に担ぐようにして運搬することができる。さらに、半幅使用の際には、
図4(E)に示すように、第1端部ポール15A及び第2端部ポール15Bが片手に把持され、中央ポール16が他方の片手に把持されることにより、腰部に引き上げた姿勢で運搬される。
【0038】
また、第1端部ポール15Aと第2端部ポール15Bとが近接する程度に、運搬対象物Mがシート部13の全域で梱包される程度の量である場合には、全幅使用とする。そして、例えば
図5(A)に示すように、第1端部ポール15A及び第2端部ポール15Bが作業者の片手に把持され、中央ポール16が下方に位置した状態とすることで運搬作業が行われる。また、運搬具10は中央ポール16を備えるから、
図5(B)に示すように、第1端部ポール15Aと第2端部ポール15Bとが一方の片手に、中央ポール16が他方の片手により把持され、ぶら下げて運搬する態様を採ることができる。また
図5(C)に示すように、中央ポール16が頭上に挙げた片手で把持され、第1端部ポール15Aと第2端部ポール15Bとが他方の片手により下方から支持されることにより肩に担ぐようにして運搬することができる。
【0039】
運搬対象物Mの量が多い場合には、
図6(A)に示すように、第1端部ポール15Aが一方の片手に、第2端部ポール15Bが他方の片手に把持され、中央ポール16が下方に位置した状態で運搬される態様を採ることができる。また、運搬具10は中央ポール16を備えるから、
図6(B)に示すように、第1端部ポール15Aが一方の脇下で腕と胴部により支持された状態で、第2端部ポール15Bが一方の片手に、中央ポール16が他方の片手により把持されることにより、腰部に担いで運搬する態様を採ることができる。さらに、
図6(C)に示すように、第1端部ポール15Aが肩上に配された状態で第2端部ポール15Bが頭上に挙げた片手で把持され、中央ポール16が他方の片手により下方から支持されることにより肩に担ぐようにして運搬することができる。
【0040】
排出作業のうち、例えば地面などの低い位置に排出する際には、
図7(A)に示すように、第2端部ポール15Bは把持が解除され、かつ第1端部ポール15Aが引き上げられる。次に、
図7(B)に示すように、中央ポール16が把持されて第1端部ポール15Aの把持が解除されることにより、シート部13にくるまれていた運搬対象物Mの運搬具10による梱包が解かれる。そして、
図7(C)に示すように中央ポール16が下方から腰部に引き上げられ、中央ポール16が把持され、かつ、端部ポール15A、15Bの把持が解除された状態にされることにより運搬対象物Mが排出される。このように、中央ポール16が設けられていることにより、第1端部ポール15Aまたは第2端部ポール15Bを引き上げるよりも低い高さに中央ポール16を引き上げるだけで容易に排出され、排出作業が楽である。なお、運搬対象物Mを梱包した状態の運搬具10を腰部に引き上げた状態から、中央ポール16が把持され、かつ、端部ポール15A、15Bの把持が解除されることで、直接
図7(C)に示す上記のように運搬対象物Mの排出することも可能である。
【0041】
また、パッカー車Pの荷入れ部Piに排出する際には、
図8(A)に示すように、中央ポール16が把持された状態で、第1端部ポール15A及び第2端部ポール15Bが荷入れ口に配され、
図8(B)に示すように中央ポール16が引き上げられることで運搬対象物Mが排出される。中央ポール16が設けられていることにより、引き上げ高さが前述のように低く抑えられているから、パッカー車Pの荷入れ部Piのように地面よりも高い位置への排出も容易である。また、シート部13の端縁13Ea(
図2参照)が前述のように1400mm以下の長さL1にされているから、広く用いられているパッカー車Pの荷入れ口内に容易に案内されるので、パッカー車Pへの排出が容易である。
【0042】
上記の例では4つの端部ポール保持部21A~21Dを設けているが、端部ポール保持部の数はこの例に限定されない。例えば、端部ポール保持部21Aと端部ポール保持部21Dとの間の端部ポール保持部の数を0、1、または3以上にしてもよい。
【0043】
図9に示す運搬具40は、端部ポール保持部を2つとした一例である。この例では、端部ポール保持部21Aと端部ポール保持部21Dとの間の端部ポール保持部の数を0としている。なお、
図2と同様の部材については
図2と同じ符号を付し、説明を略す。この例では、前述の運搬具10よりも小サイズに形成することにより、相対的に小柄な体格の作業者にとって取り扱いが容易になるようにしている。具体的には、シート部13のX方向における長さL1を1200mm、Y方向における長さL2を1100mmとしている。ただし、長さL1及び長さL2は、運搬具10と同じにしてもよく、特に限定されない。本例では、シート部13に運搬対象物Mの荷重のずれ(偏り)をバランス調整することがよりしやすくなるようにL1及びL2を設定してある。
【0044】
端部ポール保持部をこの例のように2つとした場合の長さL3及び長さL5は特に限定されないが、好ましくは375mm以上500mm以下の範囲内である。これにより、運搬対象物Mの梱包作業中及び運搬中に端部ポール15がより確実に外れることなく安定して保持されるとともに、露呈部15eについて、X方向における長さL4が両手分の幅として十分に確保され、両手で露呈部15eを把持した場合にも持ち上げる際や運搬時において力を入れやすい。この例では、端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23DのX方向における長さL3、L5をそれぞれ400mmとし、露呈部15e、16eのX方向における長さL4、L6をそれぞれ300mmにしている。しかし、これら長さL3~L6はこの例に限定されない。この例の端部ポール保持部21A、21D及び中央ポール保持部23A、23Dも、上述の補強材を備えることが好ましい。
【0045】
上記の各例では、中央ポール16の長さを端部ポール15の長さと同等としているが、中央ポール16はX方向に延びていれば端部ポール15よりも短くてもよい。ただし、シート部13に対してX方向における全域に渡って力を作用させる観点、及び、運搬作業時において荷を安定して保持する観点等から、中央ポール16の長さは端部ポール15と同様に端縁13Eaと同じ、またはできるだけ近い長さとする方が好ましい。
【0046】
上記の各例では直線状に延びた中央ポール16としているが、これに代えて、
図10に示すようにクランク状に曲がった棒状の中央ポール56であってもよい。中央ポール56は、X方向における中央がコ字状に曲げられて、X方向に延びたグリップ部が形成されている。このような中央ポール56も中央ポール16と同様に機能する。
【0047】
上記の各例では、シート部13のY方向における中央のグリップ部材(以下、中央グリップ部材と称する)として中央ポール16(
図2、9参照)、56(
図10参照)を設けているが、中央グリップ部材としてはこれらに限られない。
図11に示す運搬具60は、
図2に示す運搬具10の中央ポール16を他の中央グリップ部材に置き換えたものであり、中央グリップ部材として、帯状のシート部材であるベルト(以下、中央ベルトと称する)61をシート部13に設けている。中央ベルト61は、第2シート面13Bに配され、端部ポール15と平行、すなわちX方向に延びている。中央ベルト61は、一方の端縁13Ebから他方の端縁13Ebにわたり延びており、長手方向における両端部とこれら両端部よりも内側の2部位とにおいて、シート部13に固定されている。固定されている固定部について、一方の端縁13Eb側から順に固定部F1、固定部F2、固定部F3、固定部F4とするときに、これら固定部F1~F4は、シート部13のX方向における中央に関して対称に設けられている。
【0048】
固定部F1~F4の各間は、シート部13と固定されていない非固定部であり、これにより、手指をシート部13との間に
図11の矢印で示すように挿入することができ、作業者によって把持されるグリップ部G1~G3として形成されている。このため、中央ベルト61も前述の中央ポール16、56と同様に、シート部13を迅速に扱うハンドリング部材としても機能する。
【0049】
固定部F2と固定部F4との間のグリップ部G2は、たるみをもたせ、すなわち、X方向における固定部F2と固定部F3との距離よりも、200mm以上300mm以下の範囲内で長く形成している。これにより、中央ポール16,56と同様に、Y方向における中央に手指が入りやすく、より把持しやすい。したがって、作業者の手に把持されてぶら下げるようにして運搬する作業、運搬対象物M(
図1参照)がくるまれたシート部13を手前に引き寄せる場合などの作業などに特に好適である。この例では、固定部F1と固定部F2との間のグリップ部G1、及び、固定部F3と固定部F4との間のグリップ部G3は、グリップ部G2とは異なり、たるみをもたせていない。これにより、例えば、半幅使用の際に腰部に担ぐようにして運搬する場合に、運搬具60がより安定する。
【0050】
グリップ部G1~G3のX方向における長さL8は特に限定されず、前述の長さL4(
図2参照)と同程度、すなわち200mm以上450mm以下の範囲内が好ましく、本例では300mmとしている。また、この例では、固定部F1、固定部F4のX方向における長さは100mm、固定部F2、固定部F3のX方向における長さは50mmとしているが、これらの各長さも特に限定されない。中央ベルト61を形成する素材は、前述の第1シート及び補強材に用いる素材と同じものを挙げることができる。なお、
図9に示す運搬具40の中央ポール16を中央ベルト61に代えてもよい。
【0051】
図12に示す運搬具70は、中央ベルト61よりも短い中央ベルト71を、
図9に示す運搬具40の中央ポール16に代えて用いたものである。中央ベルト71は、長手方向、すなわちX方向における両端がシート部13に固定されており、これら固定部F5、F6の間がグリップ部G4となっている。グリップ部G4のX方向における長さL8、すなわち、この例では固定部F5と固定部F6との距離は、300mmとしている。ただし、グリップG4の長さL8もグリップG1~G3(
図11参照)の長さと同様に特に限定されず、好ましくは200mm以上450mm以下である。グリップG4も前述のグリップ部G2と同様にたるみをもたせて形成しており、これにより手指を挿入しやすく、より把持しやすい。
図2に示す運搬具10の中央ポール16を中央ベルト71に代えてもよい。
【0052】
なお、
図11及び
図12において、中央ベルト61、71以外の部材については厚みを略して図示している。中央ベルト61、71を設けた運搬具60、70は、中央ポール16、56を設けた運搬具10、40と比べて構成部材が少なく、製造が容易であることから、低コストで製造することができるという利点がある。
【0053】
シート13の端縁13Ebに、巾着(巾着袋)の開口部のように絞める構成を設けてもよい。その一例として、
図13に示す運搬具80は一対の端縁13Eb(
図14,
図15参照)のうちの一方側に、紐81と、紐81を通す紐通し部82(
図14,
図15参照)とを設け、紐81を引き出すことにより当該一方側を絞めることができるようになっている。これにより絞めた状態の当該一方側は袋状になるので、この袋状になった部分が運搬対象物Mの落下を抑制するストッパとして機能する。したがって、第1シート面13A上に運搬対象物Mを堆積させてもシート13外へ崩れ出ること、及び、くるまれた状態で運搬されている間にシート13から落下することがより確実に抑制される。
【0054】
運搬具80の紐通し部82は、
図14~
図16に示すように、シート13の一対の端縁13Ebのうちの一方から突出して設けられており、可撓性を有する。紐通し部82は、シート状に形成された可撓性の紐通し部材が端縁13Ebに沿って折り曲げられ、その先端を端縁13Ebに略並行に縫い付けるなどして固定することで筒状にされ、その中空部82hに紐81が通されている。なお、中空部82hは、1枚のシート状の紐通し部材を上記のように折り曲げて形成してもよいし、複数枚を適宜縫い合わせるなどして形成してもよい。
【0055】
紐通し部82は、
図15に示すように、中空部82hから第2シート面13B側へ貫通する紐通し穴82tが端縁13Ebに沿って、すなわちY方向に並んで5個形成されている。また、シート13の紐通し部82が設けられている端縁Ebの近傍かつX方向における両端部にも紐通し穴13tが形成されている。紐81は、これらの紐通し穴82t、13tに通されており、紐通し部82の第2シート面13B側において引き出されることによりシート13の端縁13Eb側が袋状に絞められる。紐81は、第2シート面13B側と中空部82hとを交互に通るように配され、X方向における紐通し部82の中央の紐通し穴82tからU字状にたるむように設けられている。このたるみ部分は、紐81を引き出す際に把持される引出部分となり、この例では、引き出した状態でたるみ部分を固定するストッパ85が設けられている。ストッパ85は必ずしも設けなくてもよいが、運搬中などにたるみ部分の長さが短く戻らないようにできることから設けることが好ましい。紐81の両端は、紐通し穴13tにおいて第2シート面13B側で結び目が形成されることで抜けによる脱離が防止されている。このように、紐81は、紐通し部82において第2シート面13Eb側と中空部82hとに配されており、第1シート面13A側は紐通し部82によって覆われていて露呈しておらず、また、両端の結び目も第2シート面13B側に位置するから、紐81と運搬対象物Mとの絡まりが抑制される。
【0056】
紐通し穴82tの個数は、5個に限定されないが、上記のたるみ部をY方向における略中央に形成する観点では奇数個が好ましい。また、紐81を引き出して端縁13Eb側を絞めた際に、当該端縁13Ebと紐通し部82とにより容易かつ確実に袋状になる観点では、結び目をシート13の第2シート面13B側に形成し、第1シート面13Aと紐通し部82の第1シート面13A側の面が合わさることが好ましい。そのためには本例のように5個、もしくは9個、13個、・・・というように、1+4n(ただしnは1以上の自然数)個にすることが好ましい。
【0057】
この例では、長さL2より長い紐81を用いており、紐81の径は概ね5mm、紐通し穴82t、13tの径は概ね8mm以上10mm以下の範囲内としているが、紐81及び紐通し穴82t、13tの径は特に限定されない。紐通し穴82tのピッチ(中心間距離)P1を概ね300mmの等ピッチにしているが、ピッチP1は任意であり、また互いに異なっていてもよい。また、紐通し穴82t、13tには、環状の金具であるハトメ(鳩目)86を設けることが好ましく、本例でもそのようにしており、これにより紐通し穴82t、13tにおける裂けなどを抑制している。紐81及び紐通し部82は、一対の端縁Ebの他方にも設けて、両方を袋状に絞められる運搬具としてもよい。
【0058】
紐通し部82には、中空部82hを画定する内面と紐81との摩擦を低減するための切れ込み87を設けることがより好ましく、本例でもそのようにしている。可撓性のある紐通し部82に切れ込み87があることにより、紐81を引き出す際及びシート13を広げて紐81を戻し入れる際に、切れ込み87が開口し、紐81と紐通し部82の内面との接触領域が小さく抑えられ、紐81の引き出し及び戻し入れが円滑かつ容易になる。切れ込み87の裂けを防止するために、周囲を補強材で補強してもよい。
【0059】
切れ込み87は、複数の紐通し穴82tの端縁13Eb側に、Y方向に延びて形成されており、Y方向における長さL9は、紐通し部82のX方向における長さの1/4以上3/4以下の範囲内とすることが好ましく、本例では概ね1/2としている。これにより、紐81の引き出し及び戻し入れが円滑かつ容易になる効果はより確実になるとともに、紐81の絡まりが抑制される。切れ込み87は、開口して、中空部82hを画定する内面と紐81との摩擦を低減するためのものであるから、スリット状の開口部に換えてもよい。
【0060】
運搬具80は、長さL1が1300mm、長さL2が1500mm、長さL3及び長さL5が450mmであり、シート13に紐通し穴13tを設けている点、面ファスナ22を中央ポール保持部23AのX方向における全域に設けている点、紐81及び紐通し部82を設けている他は、運搬具40と同様である。運搬具10、60、80にも同様に、紐81及び紐通し部82を設けてもよい。
【符号の説明】
【0061】
10、40、60、70、80 運搬具
13 シート部
13A、13B 第1シート面、第2シート面
13Ea 端縁
15 端部ポール
16、56 中央ポール
21A~21D 端部ポール保持部
21s 内面(端部ポール保持部21Aの内面)
22 面ファスナ
23A~23D 中央ポール保持部
23s 内面
61、71 中央ベルト
M 運搬対象物