(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119776
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】SiC光触媒粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 27/224 20060101AFI20240827BHJP
B01J 35/39 20240101ALI20240827BHJP
B01J 37/00 20060101ALI20240827BHJP
B01J 35/61 20240101ALI20240827BHJP
B01J 35/40 20240101ALI20240827BHJP
【FI】
B01J27/224 M
B01J35/39
B01J37/00 Z
B01J35/61
B01J35/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024024667
(22)【出願日】2024-02-21
(31)【優先権主張番号】P 2023025690
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100187702
【弁理士】
【氏名又は名称】福地 律生
(74)【代理人】
【識別番号】100162204
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 学
(74)【代理人】
【識別番号】100195213
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 健治
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】関 和明
(72)【発明者】
【氏名】土岐 隆太郎
(72)【発明者】
【氏名】楠 一彦
【テーマコード(参考)】
4G169
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169AA08
4G169BB15A
4G169BB15B
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169CC33
4G169EA01X
4G169EA01Y
4G169EB18X
4G169EB18Y
4G169EC30
4G169FB27
4G169FB32
4G169FC06
4G169HA01
4G169HB10
4G169HC09
4G169HD03
4G169HE09
4G169HF10
(57)【要約】
【課題】ファセット面を有し、かつ、積層欠陥密度が低い、SiC光触媒粒子の製造方法を開示する。
【解決手段】本開示のSiC光触媒粒子の製造方法は、溶融したケイ素源(S1)と、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とを含む融液(L1)を得ること、並びに、前記融液(L1)に炭素(C1)を溶解させて、前記融液(L1)に含まれるケイ素と前記炭素(C1)とを液相反応させることにより、ファセット面を有する固体のSiC光触媒粒子を得ること、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融したケイ素源(S1)と、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とを含む融液(L1)を得ること、並びに、
前記融液(L1)に炭素(C1)を溶解させて、前記融液(L1)に含まれるケイ素と前記炭素(C1)とを液相反応させることにより、ファセット面を有する固体のSiC光触媒粒子を得ること、
を含む、SiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項2】
前記融液(L1)が、添加元素源(M1)を含み、かつ
前記添加元素源(M1)が、金属単体及び金属元素を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項3】
ケイ素源(S2)を加熱して融液(L2)を得ること、
前記融液(L2)に炭素(C2)を溶解させて、前記融液(L2)に含まれるケイ素と前記炭素(C2)とを液相反応させることにより、固体の炭化ケイ素(SC2)を得ること、並びに、
前記固体の炭化ケイ素(SC2)を砕くことで、前記固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得ること、を含む、
請求項1に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項4】
前記固体の炭化ケイ素(SC2)を得た後に、前記固体の炭化ケイ素(SC2)とともに存在する残部の少なくとも一部を除去すること、を含む、
請求項3に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項5】
前記融液(L2)が、添加元素源(M2)を含み、かつ
前記添加元素源(M2)が、金属単体及び金属元素を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項3に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項6】
前記固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の平均粒子径が、0.01μm以上200μm以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項7】
前記固体のSiC光触媒粒子のBET比表面積が、0.01m2/g以上20.0m2/g以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項8】
前記固体のSiC光触媒粒子の積層欠陥密度が、10.00%以下である、
請求項1~5のいずれか1項に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項9】
前記液相反応を生じさせるにあたり、前記ケイ素源(S1)が溶融した後、前記融液(L1)が目標温度に達するまで、前記融液(L1)を昇温させること、を含む、
請求項1~5のいずれか1項に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項10】
前記融液(L1)の温度が前記目標温度に達した後の温度平衡時間が、0時間以上2時間以下である、
請求項9に記載のSiC光触媒粒子の製造方法。
【請求項11】
第1ファセット面と、前記第1ファセット面を囲む少なくとも1種以上の第2ファセット面とを有し、
10.00%以下の積層欠陥密度を有し、かつ
0.01m2/g以上20.0m2/g以下のBET比表面積を有する、
SiC光触媒粒子。
【請求項12】
0.05m2/g以上10.0m2/g以下のBET比表面積を有する、
請求項11に記載のSiC光触媒粒子。
【請求項13】
0.10m2/g以上5.0m2/g以下のBET比表面積を有する、
請求項11に記載のSiC光触媒粒子。
【請求項14】
5.00%以下の積層欠陥密度を有する、
請求項11~13のいずれか1項に記載のSiC光触媒粒子。
【請求項15】
1.00%以下の積層欠陥密度を有する、
請求項11~13のいずれか1項に記載のSiC光触媒粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、特に光照射による水の分解に適したSiC光触媒粒子及びその製造方法を開示する。
【背景技術】
【0002】
光触媒による有機物分解あるいは水分解の技術は広く知られているところである。従来からこの用途に用いる半導体材料として酸化チタン(TiO2)などが広く知られているところであるが、エネルギー変換効率が低いという問題があるため、他の候補材料に注目が集まっている。中でも炭化ケイ素(SiC)は入手が容易な元素で構成されており、化学的安定性も期待が持てる。そのため、SiCが光触媒として注目されてきた。
【0003】
SiCには、3C-SiC、4H-SiC、6H-SiCなどの多形が存在する。このうち、4H-SiCや6H-SiCの製造方法としては、成長温度が2000℃を超える昇華再結晶法によるバルク単結晶成長が知られている。また、3C-SiCの製造方法としては、化学気相成長(Chemical Vapor Deposition:CVD)法を用いて異種基板上に単結晶あるいは多結晶のウエハ状の3C-SiCを成長させる方法が知られている。ここで用いる異種基板は、単結晶を製造する場合では、ケイ素(Si)や異種多形(4H-SiCや6H-SiC)であることが多い。
【0004】
一方で、光触媒を用いて水を分解する場合の操作性を考慮すると、光触媒は粒子状であることが望ましい。粒子状の光触媒は、それ自体を水に分散させて使用することもできるし、或いは、基材に塗布する等してパネルとして使用することも可能である。
【0005】
前述のように、4H-SiCや6H-SiCのバルク単結晶は昇華再結晶法で作製され、3C-SiCの単結晶又は多結晶ウエハはCVD法で作製される。しかしながら、これら方法により得られるSiCは、光触媒として実用的な形態とはいえず、また、製造コストが高く、生産性が低いという問題もある。
【0006】
一方、光触媒用途ではないが、SiC粉末の製造方法として、シリカ熱炭素還元法が知られている(例えば、非特許文献1)。熱炭素還元法は簡便で安価な方法である。熱炭素還元法によるSiCの製造では、シリカなどのケイ素を含む酸化物とカーボンブラックなどの炭素源とを混合して混合物を得て、当該混合物を加熱して熱炭素還元反応を生じさせることでSiCを生成させる。しかしながら、熱炭素還元法により製造されたSiCは、光触媒としての水分解能力が低い。本発明者の知見によれば、熱炭素還元法により得られるSiCについて、その水分解能力が低いことの主な要因は、SiCの積層欠陥密度が高いことにある。
【0007】
SiC以外の光触媒粒子としては、例えば、非特許文献2に開示されている、AlをドープしたSrTiO3(以下、SrTiO3:Al)が知られている。該光触媒粒子は、結晶方位を反映した略平坦なファセットを有する。光触媒による水分解においては、光触媒表面に対して、助触媒と呼ばれる金属あるいは金属酸化物等の微粒子を担持することがある。助触媒は光照射によって生成された電荷のトラップや光触媒粒子表面での酸化還元反応を促進する役割がある。前記光触媒粒子表面に形成したファセットは面方位によって、水素生成用の助触媒と酸素生成用の助触媒とをそれぞれ選択的に担持することができる可能性があり、光触媒による水分解の実用化において重要な構成要素である。
【0008】
ファセットを有する結晶を得るために、しばしば溶液を用いた合成方法が用いられる。例えば、非特許文献3に、液相中におけるオストワルド熟成を利用した、ファセットを有するSiC粒子の製造法が開示されている。具体的には、非特許文献3においては、SiとSiCの粉末とをNa3PO4を含む塩基性水溶液に分散させ、フッ化水素酸によって洗浄して、乾燥させた後、乳鉢と乳棒で混合し、Si溶媒中のSiCの体積分率を20vol%から30vol%に調整し、混合粉末からペレットを作製している。その後、誘導炉によりSiC粉末ペレット/市販4H-SiCウエハ/poly-SiC基板の順に重ねて、Ar-20%H2の雰囲気で加熱を行うことでファセット面を有するSiC粒子を合成している。
【0009】
他の方法として、非特許文献4に、黒鉛坩堝にSi融液を形成し、温度勾配を設けた環境下で加熱することで、温度が相対的に高い領域でSi融液中に黒鉛坩堝からCが溶質としてSi融液に溶解することでSi及びCを含む溶液となり、温度が相対的に低い領域でSiCを析出させる製造方法が開示されている。該製造方法では、長辺の長さが数mmの直方体状のファセット面を有する結晶を得ることができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】日本セラミックス協会学術論文誌 99 [9] 768 (1991)
【非特許文献2】T.Takata、J.Jiang、Y.Sakata、M.Nakabayashi、N.Shibata、V.Nandal、K.Seki、T.Hisatomi and K.Domen、Nature 581 2020 411-414
【非特許文献3】T.Narumi、D.Chaussende、T.Yoshikawa、CrystEngSomn.22 2020 3489-3496
【非特許文献4】T.Ujihara、R.Maekawa、R.Tanaka、K.Sasaki、K.Kuroda and Y.Takeda、J.Cryst.Growth、310 2008 1438-1442
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
前述のように、有機物分解あるいは水分解のための光触媒は、ファセットを有して、かつ、低い積層欠陥密度であることが望ましい。CVD法や昇華再結晶法で製造される単結晶又は多結晶のSiCは、製造コストが高く、生産性が低いという問題がある。また、粒子を得るために粉砕等の処理を行うと、ファセット面を有する粒子を得ることができない。一方で、非特許文献1に開示されているような熱炭素還元法で製造されるSiCは、セラミックスの焼結用原料として用いられているものの、積層欠陥密度が高く、光触媒として用いたとしても水分解能力が低いという問題がある。
【0012】
また、非特許文献3に開示の方法では、ファセット面を有する粒子を合成できるものの、その生産性が低い。また、非特許文献3に開示の方法にあっては、積層欠陥密度に関しても改善の余地がある。また、非特許文献4に開示の方法では、大きな結晶が得られるものの、光触媒粒子としての利用は困難である。
【0013】
以上の通り、ファセット面を有し、かつ、低い積層欠陥密度を有するSiC光触媒粒子を製造することが可能な新たな技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願は上記課題を解決するための手段として、以下の複数の態様を開示する。
<態様1>
溶融したケイ素源(S1)と、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とを含む融液(L1)を得ること、並びに、
前記融液(L1)に炭素(C1)を溶解させて、前記融液(L1)に含まれるケイ素と前記炭素(C1)とを液相反応させることにより、ファセット面を有する固体のSiC光触媒粒子を得ること、
を含む、SiC光触媒粒子の製造方法。
<態様2>
前記融液(L1)が、添加元素源(M1)を含み、かつ
前記添加元素源(M1)が、金属単体及び金属元素を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
態様1のSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様3>
ケイ素源(S2)を加熱して融液(L2)を得ること、
前記融液(L2)に炭素(C2)を溶解させて、前記融液(L2)に含まれるケイ素と前記炭素(C2)とを液相反応させることにより、固体の炭化ケイ素(SC2)を得ること、並びに、
前記固体の炭化ケイ素(SC2)を砕くことで、前記固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得ること、を含む、
態様1又は2のSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様4>
前記固体の炭化ケイ素(SC2)を得た後に、前記固体の炭化ケイ素(SC2)とともに存在する残部の少なくとも一部を除去すること、を含む、
態様3のSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様5>
前記融液(L2)が、添加元素源(M2)を含み、かつ
前記添加元素源(M2)が、金属単体及び金属元素を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
態様3又は4のSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様6>
前記固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の平均粒子径が、0.01μm以上200μm以下である、
態様1~5のいずれかのSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様7>
前記固体のSiC光触媒粒子のBET比表面積が、0.01m2/g以上20.0m2/g以下である、
態様1~6のいずれかのSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様8>
前記固体のSiC光触媒粒子の積層欠陥密度が、10.00%以下である、
態様1~7のいずれかのSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様9>
前記液相反応を生じさせるにあたり、前記ケイ素源(S1)が溶融した後、前記融液(L1)が目標温度に達するまで、前記融液(L1)を昇温させること、を含む、
態様1~8のいずれかのSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様10>
前記融液(L1)の温度が前記目標温度に達した後の温度平衡時間が、0時間以上2時間以下である、
態様9のSiC光触媒粒子の製造方法。
<態様11>
第1ファセット面と、前記第1ファセット面を囲む少なくとも1種以上の第2ファセット面とを有し、
10.00%以下の積層欠陥密度を有し、かつ
0.01m2/g以上20.0m2/g以下のBET比表面積を有する、
SiC光触媒粒子。
<態様12>
0.05m2/g以上10.0m2/g以下のBET比表面積を有する、
態様11のSiC光触媒粒子。
<態様13>
0.10m2/g以上5.0m2/g以下のBET比表面積を有する、
態様11のSiC光触媒粒子。
<態様14>
5.00%以下の積層欠陥密度を有する、
態様11~13のいずれかのSiC光触媒粒子。
<態様15>
1.00%以下の積層欠陥密度を有する、
態様11~13のいずれかのSiC光触媒粒子。
【発明の効果】
【0015】
本開示の技術によれば、CVD法や昇華再結晶法のような高価な製造法によらず、ファセット面を有し、かつ、積層欠陥密度が低いSiC光触媒粒子を、生産性よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図2】溶液成長法でSiC光触媒を製造する際に用いられる装置の一例を概略的に示している。
【
図3】溶液成長法でSiC光触媒を製造する際の合成温度および冷却速度の測定に用いられる装置の一例を概略的に示している。
【
図16】SiC光触媒粒子を製造する際の温度条件の一例について説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について詳しく説明する。
【0018】
1.SiC光触媒粒子の製造方法
本実施形態に係るSiC光触媒粒子の製造方法について説明する。SiCは、常圧では固体と化学組成が一致した融液が存在しない。そのため、SiCを合成するにあたっては、状態図における液相線(溶解度曲線)を利用する溶液成長法が用いられることがある。本実施形態においても溶液成長法を利用してSiC光触媒粒子を製造する。すなわち、本実施形態に係るSiC光触媒粒子の製造方法は、溶融したケイ素源(S1)と、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とを含む融液(L1)を得ること、並びに、前記融液(L1)に炭素(C1)を溶解させて、前記融液(L1)に含まれるケイ素と前記炭素(C1)とを液相反応させることにより、ファセット面を有する固体のSiC光触媒粒子を得ること、を含む。また、本実施形態に係るSiC光触媒粒子の製造方法においては、前記融液(L1)が、添加元素源(M1)を含んでいてもよい。ここで、前記添加元素源(M1)は、金属単体及び金属元素を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。添加元素源(M1)は、融液(L1)への炭素(C1)の溶解度を向上させるために任意に添加されるものであってもよい。また、添加元素源(M1)は、SiCへのドーパントを含むものであってもよい。本実施形態においては、必ずしもケイ素源(S1)とともに添加元素源(M1)を混合する必要はない。
【0019】
1.1 ケイ素源(S1)
本実施形態においては、例えば、固体のケイ素源(S1)を加熱することで溶媒としての融液(L1)を得て、前記融液(L1)と接した炭素源から炭素(C1)を溶質として溶解させて溶液とし、融液(L1)中のケイ素と溶解した炭素(C1)とを液相反応させることによって固体のSiCを生成させる。このように、本実施形態においては、溶媒としての融液(L1)と溶質としての炭素(C1)とからなる溶液において、ケイ素と炭素との液相反応を生じさせることでSiC光触媒粒子を製造する。融液とされる前において、ケイ素源(S1)は、例えば、ケイ素単体又はケイ素を含む化合物の形態で、且つ、固体の形態を採り得る。
【0020】
融液とされる前のケイ素源(S1)の形状は、特に限定されるものではない。例えば、反応容器(例えば坩堝)の容量に応じて、適切な形状を選択することができる。具体的には、粒子状(粉末状)のほか、ウエハ状や、チャンクおよびブリケットのような塊状である単結晶体および多結晶体や、粉末を予めプレス等により加工した成形体でも構わない。ここで、粉末とは湿式のレーザー回折により粒度分布を測定した場合に平均粒子径が1mm以下となる固体の集合体のことをいう。ケイ素源(S1)が粒子状(粉末状)である場合、当該粒子は一次粒子であってもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。ケイ素源(S1)が粒子状である場合、その平均粒子径は、例えば、10nm以上、100nm以上、1μm以上、10μm以上又は100μm以上であってもよく、1mm以下、500μm以下又は300μm以下であってもよい。尚、本願にいうケイ素源(S1)の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0021】
液相反応前のケイ素源(S1)は、ケイ素単体であってもよいし、ケイ素を含む化合物であってもよい。例えば、金属ケイ化物であってもよい。具体的には、Si2Tiや、Si2Cr等の化合物であってもよい。また、ケイ素源(S1)は、さらに炭素を含んでもよく、例えば、TiSiC2のような化合物であっても良い。ケイ素源(S1)がケイ素を含む化合物である場合の形状についても、上述の形状と同様に、粒子状(粉末状)のほか、単結晶体や多結晶体、粉末を予めプレス等により加工した成形体でも構わない。
【0022】
1.2 固体の炭化ケイ素粒子(SC1)
融液(L1)が上述の溶融されたケイ素源(S1)とともに固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を含む場合、後述の液相反応において、当該固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の少なくとも一部が核として機能し得る。また、当該固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の一部が溶解して炭素源として機能し得る。特に、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)のうち、相対的にサイズの大きなものが、後述の液相反応における核として機能し易く、相対的にサイズの小さなものが、融液(L1)に溶解して炭素源として機能し易い。
【0023】
融液(L1)に含まれる固体の炭化ケイ素粒子(SC1)は、特に限定されないが、市販品の炭化ケイ素粒子をそのまま使用してもよく、粒子をさらに粉砕して使用してもよい。固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の結晶構造(多形)は、3C-SiCが望ましいが、必ずしもこれに限定されない。本開示の製造方法で得られるSiC光触媒粒子の多形は、多くの場合は固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の多形を継承するため、所望の多形と同一の多形であることが好ましいが、合成温度によって制御することも可能である。また、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)は、バルク体(塊状)の炭化ケイ素を粉砕して得られたものであってもよい。例えば溶液法で作製したバルク結晶を粉砕して、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得てもよい。固体の炭化ケイ素粒子(SC1)は一旦溶解させてもよい。また、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)は、フッ化水素酸を含む薬品によって表面の酸化物の除去等の前処理が施されたものであってもよい。また、アルカリなどの欠陥溶解の表面処理が施されたものであってもよい。
【0024】
固体の炭化ケイ素粒子(SC1)のサイズは特に限定されるものではない。特に、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の平均粒子径が、0.01μm以上300μm以下である場合に、優れた効果が得られ易い。固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の平均粒子径は、0.02μm以上200μm以下であってもよく、0.05μm以上150μm以下であってもよい。尚、本願にいう固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。尚、上述の通り、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)のうち、相対的にサイズの大きなものが、後述の液相反応における核として機能し易く、相対的にサイズの小さなものが、融液(L1)に溶解して炭素源として機能し易い。この点、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)が粒度分布を有する場合、一部の炭化ケイ素粒子(SC1)を核として機能させつつ、一部の炭化ケイ素粒子(SC1)を炭素源として機能させることができる。例えば、固体の炭化ケイ素粒子(SC)の平均粒子径D50に対する粒子径D10の比D10/D50は0.1以上1.0以下、又は、0.2以上0.8以下であってもよく、また、固体の炭化ケイ素粒子(SC)の平均粒子径D50に対する粒子径D90の比D90/D50は1.0以上3.0以下、又は、1.5以上2.5以下であってもよい。
【0025】
固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の積層欠陥密度は、低いことが好ましい。例えば、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の積層欠陥密度は、10.00%以下、7.00%以下、5.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.90%以下、0.80%以下、0.70%以下、0.60%以下、0.50%以下、0.40%以下、0.30%以下、0.20%以下又は0.10%以下であってもよい。積層欠陥密度の低い固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得る方法については、後述する。
【0026】
1.3 添加元素源(M1)
上述の通り、融液(L1)は、添加元素源(M1)を含んでいてもよい。本実施形態において、添加元素源(M1)は、金属単体及び金属元素を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。本実施形態において、添加元素として遷移金属元素や希土類金属元素を用いることができる。例えば、TiやCr等の遷移金属元素の添加によって、融液(L1)に対する炭素(C1)の溶解度を増大させることが可能である。このような効果を有する添加元素としては、Sc、Nd、Dy、Pr、Tb、Ti、Cr、Co、Al、Mn、Fe等が挙げられるが、これらに限定されない。また、添加元素源(M1)は、これらの金属単体であってもよいし、合金であってもよいし、これらの化合物であってもよい。また、添加元素源(M1)は、これらの金属と炭素との化合物であってもよく、例えばTiCであってもよいが、これに限定されない。これら添加元素の中でもTiやCrは、大きなカーボン溶解度が得られることが知られている(非特許文献5、6)。
【0027】
非特許文献5:D.Hofmann and M.Muller, Mater. Sci. Eng. B 61-62 (1999) 29-39
非特許文献6:K.Kusunoki, K. Kamei, N. Yashiro, K. Moriguchi, and N. Okada, Mater. Sci. Forum 679-680 2011 36-39
【0028】
また、本実施形態において、添加元素源(M1)としてSiCに対するドーパントを含むものを用いることもできる。例えば、後述するNはSiCにおいてn型のドーパントとして作用することが知られている。本実施形態において、n型ドーパントとしてNを例示するが、これに制限されるものではなく、例えば、Pであってもよい。また、AlはSiCにおいてp型のドーパントとして作用することが知られている。本実施形態において、p型ドーパントとしてAlを例示するが、これに制限されるものではなく、例えば、BやGa、Inであってもよい。ただし、本実施形態に係る製造方法における製造条件と特に相性が良いp型ドーパントはAlである。本実施形態において、Al源の形態は特に制限されるものではなく、単体であってもよいし、化合物であってもよい。単体のAlを用いる場合は、その形状は特に制限されるものではない。例えば、スライス加工や圧延等により板状に成形されたものであってもよいし、ブロック状であってもよいし、粒状や粒子状であってもよい。粒子状である場合、当該粒子は一次粒子であってもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。その平均粒子径(D50)は、例えば、20nm以上又は50nm以上であってもよく、500μm以下又は100μm以下であってもよい。
【0029】
Al源の別の形態として、Alを含む化合物を用いる場合、当該Alを含む化合物としては、例えば、アルミナ(酸化アルミニウム:Al2O3)、炭化アルミニウム(Al4C3)、ケイ酸アルミニウム、及び、SiAlONから選ばれる少なくとも1種を用いてもよい。また、Alを含む化合物は、他の金属材料との合金であってもよい。これらの形状は特に制限されるものではない。
【0030】
Al源は、1種のみが単独で用いられてもよいし、複数種類が組み合わされて用いられてもよく、また、単体のみが用いられてもよいし、化合物のみが用いられてもよいし、単体と化合物とが組み合わされて用いられてもよい。
【0031】
また、本実施形態においては、Alとともに添加する元素として、遷移金属元素や希土類金属元素を用いることもできる。例えば、Alを添加する場合、坩堝等のCとAlとが接触すると過剰な反応が生じることがある。遷移金属元素や希土類金属元素の中で、特にCuは、AlとCとの過剰な反応を抑制することができることが知られている(特許文献1)。
【0032】
特許文献1:国際公開第2016/038845号
【0033】
ケイ素源(S1)と、Al源との混合比は、ケイ素源(S1)中のSiとAl源中のAlとのモル比Al/Siが0.05以上となるような混合比であるとよい。特に、モル比Al/Siが0.10以上である場合に、光水分解活性に一層優れるSiCが得られやすい。モル比Al/Siの上限は、SiCの安定的な析出という観点から、2.0以下であってもよい。
【0034】
ケイ素源(S1)とAl源とを混合し、さらにAl以外の添加元素Mとして遷移金属元素や希土類金属元素を用いる場合は、SiとAlと添加元素Mの合計モル数を分母として、添加元素Mのモル数を分子とした比(M/(Si+Al+M))が、0.03以上、かつ、0.50以下であってもよい。
【0035】
添加元素源(M1)の形状は、ケイ素源(S1)と同様に特に限定されるものではなく、反応容器の容量に応じて、適切な形状を選択することができる。例えば、粒子状(粉末状)のほか、単結晶体や多結晶体、粉末を予めプレス等により加工した成形体でも構わない。ここで、粉末とは湿式のレーザー回折により粒度分布を測定した場合に平均粒子径が1mm以下となる固体の集合体をいう。添加元素源(M1)が粒子状である場合、当該粒子は一次粒子であってもよいし、一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。添加元素源(M1)が粒子状である場合、その平均粒子径は、例えば、10nm以上、100nm以上、1μm以上、10μm以上又は100μm以上であってもよく、1mm以下、500μm以下又は300μm以下であってもよい。尚、本願にいう添加元素源(M1)の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0036】
1.4 融液(L1)
本実施形態においては、上述のケイ素源(S1)を加熱して溶融させて、融液(L1)を得る。加熱の方法は特に限定されるものではなく、公知の加熱炉を用いて加熱すればよい。加熱の際の容器としては、例えば、後述の坩堝形状の容器を用いることができるが、SiC光触媒粒子の合成温度において破損することがないものであればよく、必ずしもこれに限定されない。融液(L1)には、溶融されたケイ素源(S1)とともに上記の固体の炭化ケイ素粒子(SC1)及び任意に添加元素源(M1)が混在する。ここで、融液(L1)において固体の炭化ケイ素粒子(SC1)や添加元素源(M1)を含ませるタイミングは、特に限定されるものではない。融液(L1)は、ケイ素源(S1)を加熱して溶融させた後に、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)及び任意に添加元素源(M1)を添加することによって得られたものであってもよい。或いは、融液(L1)は、ケイ素源(S1)と固体の炭化ケイ素粒子(SC1)と任意に添加元素源(M1)とを混合して混合物を得たうえで、当該混合物を加熱して少なくともケイ素源(S1)を溶融させることによって得られたものであってもよい。混合の方法は特に限定されるものではなく、メノウ乳鉢等を用いて人の手によって混合してもよいし、ボールミル等の混合装置を用いて機械的に混合してもよい。また、ケイ素源(S1)と固体の炭化ケイ素粒子(SC1)と任意に添加元素源(M1)とを反応容器に投入する際に、ランダムに投入することによって混合してもよい。さらに混合時間についても特に限定されるものではない。
【0037】
ケイ素源(S1)と固体の炭化ケイ素粒子(SC1)との混合比は特に限定されるものではなく、目的とするSiC光触媒粒子の生成量等に応じて適宜調整されればよい。また、ケイ素源(S1)と添加元素源(M1)との混合比も特に限定されるものではないが、一般的にケイ素と添加元素との共晶組成を用いる場合が多い。ここで添加元素としてTiを用いる場合においては、Ti含有量が原子組成で略40at%を超えるとSiCが生成しなくなるため、混合比に上限が存在する(非特許文献7)。
【0038】
非特許文献7:R. Tanaka,K. Seki,S. Komiyama,T. Ujihara,and Y. Takeda, Mater. Sci. Forum 600-603 2008 36-39
【0039】
1.5 炭素源(炭素(C1))
本実施形態においては、上述の通り、溶融されたケイ素源(S1)と固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とを含む融液(L1)に対して、炭素(C1)を溶解させる。融液(L1)へと炭素(C1)を供給する炭素源としては、種々のものが挙げられる。本実施形態においては、例えば、融液(L1)への炭素(C1)の供給が容易であることや融液(L1)に対して過度に反応し難いこと等を考慮して、炭素源として炭素製の坩堝を用いてもよい。すなわち、本実施形態に係るSiC光触媒粒子の製造方法は、ケイ素源(S1)と固体の炭化ケイ素(SC1)とを炭素製の坩堝に入れること、前記坩堝を加熱して前記坩堝内で前記融液(L1)を得ること、及び、前記坩堝から前記融液(L1)中に炭素(C1)を溶解させること、を含むものであってもよい。或いは、本実施形態においては、炭素製の坩堝以外の反応容器を使用することも可能である。例えば表面をSiCでコーティングした坩堝を使用してもよい。ただし、ケイ素を含んだ融液(L1)は金属との反応性が高いため、金属製の反応容器の使用は避けることが好ましい。ここで、坩堝の材質となる炭素材料としては、元素としての炭素を主成分として含んだ材料であればよい。例えば、黒鉛性炭素や、非黒鉛化性炭素(カーボンブラックやガラス状黒鉛等)等の単体炭素が採用され得る。本発明者らの知見では、特に炭素源として黒鉛製の坩堝を用いた場合に、溶液の保持を目的とする場合の耐久性の確保と、所望の液相反応とを両立させ易い。
【0040】
或いは、液相反応に利用する炭素源として、炭素製の坩堝を利用する他に、炭素を主成分として含んだ材料を前記ケイ素源(A1)や固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とともに混合してもよい。例えば、黒鉛性炭素や、非黒鉛化性炭素(カーボンブラックやガラス状黒鉛等)等の単体炭素が採用され得る。この場合の炭素源の形状は反応容器の内容量等に応じて選定され、特に限定されるものではない。融液(L1)に対して炭素を容易に溶解させる観点から、炭素源は粒子状であってもよい。炭素源が粒子状である場合、その平均粒子径は、例えば、10nm以上又は40nm以上であってもよく、150nm以下又は100nm以下であってもよい。尚、カーボンブラック以外の炭素源の粒子(例えば、粒子状の黒鉛)の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)D50である。また、カーボンブラックの平均粒子径とは、カーボンブラック凝集体を構成する最小の球状(微結晶による輪郭を有し、分離できない)成分を電子顕微鏡により測定して算出される平均直径(円相当直径の平均値)のことを意味する(カーボンブラック年鑑、60周年記念号、No.58、2008、カーボンブラック協会、第82頁)。一般には、カーボンブラック凝集体を構成する最小の球状粒子は分離できず、融着した状態で存在する。
【0041】
炭素源としてカーボンブラックを用いる場合、当該カーボンブラックとしては、粉末状のカーボンブラックを用いることが望ましいが、粉末が凝集したカーボンブラックを粉砕して用いてもよい。カーボンブラックには製造方法や原料によって、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等の種類があるが、本実施形態において採用され得るカーボンブラックの種類は特に制限されない。
【0042】
或いは、本実施形態に係る製造方法においては、上述したように、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の一部が炭素源として機能してもよい。すなわち、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)の一部が融液(L1)へと溶解する等して、炭素(C1)が供給されてもよい。
【0043】
1.6 溶液成長法
SiCは常圧においては固体と化学量論比が一致する融液が存在しない。そのため、SiCを液相法で合成する場合、溶媒に溶質を溶解させて、溶質を過飽和状態とすることで結晶を成長させる、溶液成長法と呼ばれる合成法を用いる。SiCの溶液成長では、Siを溶媒の構成成分とする、セルフフラックス法が用いられることが多い。溶液成長法によってSiCを合成する場合は、種結晶を用いてエピタキシャル成長させる方法と、溶液中にSiCを均質核形成もしくは坩堝壁や坩堝底に不均質核形成させる方法がある。本実施形態においては、後者の方法のうち、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を利用しつつ、SiC光触媒粒子を核形成させる。このとき、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)は、例えば、少なくとも一部が核として機能し得る。また、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)は、例えば、少なくとも一部が溶解して、ケイ素源や炭素源として機能し得る。いずれにせよ、融液(L1)中に固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を混在させつつ液相成長を行うことで、後述するようなファセット面を有し、かつ、低い積層欠陥密度を有するSiC光触媒粒子が得られる。
【0044】
本実施形態においては、上記の融液(L1)に炭素(C1)を溶解させて液相反応を生じさせることで、SiC光触媒粒子を含む生成物を得る。加熱の方法は特に限定されるものではなく、公知の加熱炉を用いて加熱すればよい。加熱の際の反応容器としては、例えば、上述の通り坩堝形状の容器を用いることができるが、SiC光触媒粒子の合成温度において破損することがないものであればよく、必ずしもこれに限定されない。炭素以外の材質からなる反応容器を用いる場合は、上記の融液(L1)に対して、炭素(C1)を含む材料を追加で導入すれば良い。
【0045】
本実施形態においては、液相反応時の溶液の温度(加熱温度)によってSiCの結晶構造、すなわち多形を制御することが可能である。具体的には、3C-SiCは略1700℃以下において、異種多形と比較して相対的に熱的安定となる相であり、6H-SiCや4H-SiCは略1700℃以上で安定となる相であることが知られている(非特許文献8)。混合物中のSiがすべて反応してSiCとなるまで、加熱時間に応じて、合成されるSiCの量が増加する。したがって、融液に含まれるSi量等に応じて最適な加熱時間は異なる。合成後に残ったケイ素の存在を確認することで最適な加熱時間を決定することもできる。加熱の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱するとよい。不活性ガスは、ArやHeであることが望ましい。よく知られた他の不活性ガスとしてはN2が挙げられるが、窒素はドーパントして結晶中に取り込まれn型ドーパントとして作用することが知られている。したがって、ArやHeとN2とを任意の比率で混合することで、SiC結晶中のN濃度を制御することが可能である。尚、液相反応時に溶液の温度を直接的に測定することは難しい。この場合、例えば、反応容器である坩堝の温度を指標として液相反応温度を制御してもよい。例えば、高周波誘導加熱炉を用いる場合、高周波誘導コイルへ投入する出力と、目的とする坩堝の温度との相関をあらかじめ測定することによって、出力で液相反応温度の制御を行ってもよい。また、溶液において上記の液相反応が生じる温度は、指標とされる坩堝の温度よりも低くてもよい。
【0046】
非特許文献8:窯業協会誌77 [4]1969 130-135
【0047】
本実施形態において、液相反応における溶液の温度は、例えば、1400℃以上2000℃以下であってもよい。これにより、ファセット面を有するSiC光触媒粒子をより効率的に生成させることができる。「液相反応における溶液の温度」とは、上記の加熱によって液相反応を生じさせる際、融液(L1)において最も高温となる部分の温度をいう。加熱炉を用いて加熱する場合は、当該加熱炉の設定温度(温度表示上の温度)であって最も高い温度をいう。液相反応における溶液の温度は、1450℃以上1950℃以下であってもよく、1500℃以上1900℃以下であってもよい。
【0048】
本実施形態において、液相反応における保持時間は、例えば、0分以上10時間以下であってもよい。これにより、ファセット面を有するSiC光触媒粒子をより効率的に生成させることができる。「液相反応における保持時間」とは、上記の溶液の温度にて保持される時間をいう。加熱炉を用いて加熱する場合は、当該加熱炉の設定温度となる出力を保持する時間をいう。液相反応における保持時間は、1分以上8時間以下であってもよく、10分以上5時間以下であってもよい。
【0049】
本実施形態においては、上記の液相反応を生じさせるにあたり、ケイ素源(S1)が溶融した後、融液(L1)が目標温度に達するまで、融液(L1)を昇温させることが好ましい。特に、上記の液相反応を生じさせるにあたり、ケイ素源(S1)が溶融した後、融液(L1)が目標温度に達するまでの間に、融液(L1)が昇温し続けるようにする(降温しないようにする)とよい。これにより、最終的に製造されるSiC光触媒粒子の粒径が小さく、BET比表面積が大きなものとなり易い。尚、ケイ素源(S1)が溶融して融液(L1)が得られたか否かは、ケイ素源(S1)の温度を直接的又は間接的に測定することで、判断することができる。例えば、固体のケイ素源(S1)を加熱して、当該ケイ素源(S1)の融点に達すると、ケイ素源(S1)の溶融潜熱によって昇温速度が低下する。すなわち、ケイ素源(S1)を加熱する際、ケイ素源(S1)の温度を直接的又は間接的に測定し、溶融潜熱による昇温速度の低下が確認されたタイミングで、ケイ素源(S1)が溶融して融液(S1)が生成しているものと判断することができる。本実施形態においては、このようにしてケイ素源(S1)が溶融して融液(L1)となった後、引き続き当該融液(L1)を昇温させる。
図16に、ケイ素源(S1)が溶融した後、融液(L1)が目標温度に達するまでにおける、融液(L1)の温度プロファイルの一例を示す。
図16に示されるように、ケイ素源(S1)の溶融開始時点t
1における温度は、例えば、ケイ素の融点近傍の温度である。また、目標温度は、上記の「液相反応における溶液の温度」と対応する。
図16に示されるように、ケイ素源(S1)の溶融開始時点t
1から、融液(L1)が目標温度に達した時点t
2までの時間Δt
12は、特に限定されるものではないが、例えば、5分以上5時間以下、又は、15分以上3時間以下であってもよい。ケイ素源(S1)の溶融開始時点t
1から、融液(L1)が目標温度に達した時点t
2までの平均昇温速度は、0℃/min超であればよく、0.1℃/min以上、0.5℃/min以上又は1.0℃/min以上であってもよく、20℃/min以下、15℃/min以下又は10℃/min以下であってもよい。
【0050】
また、本実施形態においては、融液(L1)の温度が目標温度に達した後の温度平衡時間Δt
23(
図16の時点t
2から冷却開始時点t
3までの時間)が、0時間以上2.0時間以下であることが好ましい。当該温度平衡時間Δt
23が2.0時間以下であることで、最終的に製造されるSiC光触媒粒子の粒径が小さく、BET比表面積が大きなものとなり易い。当該温度平衡時間Δt
23は、1.5時間以下、1時間以下、50分以下、40分以下、又は、30分以下であってもよい。尚、「融液(L1)の温度が目標温度に達した後の温度平衡時間Δt
23」は、上記の「液相反応における保持時間」とは異なるものである。「液相反応における保持時間」は、上述の通り、加熱炉を用いて加熱する場合、当該加熱炉の設定温度となる出力を保持する時間をいい、
図16において、加熱炉の出力上(加熱炉の温度表示上)での目標温度に到達した時点t
4から冷却開始t
3までの時間Δt
43を意味する。これに対し、「融液(L1)の温度が目標温度に達した後の温度平衡時間Δt
23」とは、融液(L1)の温度を直接的又は間接的に測定することにより特定されるものであり、当該融液(L1)の温度が目標温度に達した後、当該目標温度にて実際に維持される時間をいう。
図16に示されるように、加熱炉の表示上の温度が目標温度に到達して保持された後も、融液(L1)の実際の温度は上昇し続ける場合がある。すなわち、
図16に示されるように、「融液(L1)の実際の温度が目標温度に達した後の温度平衡時間Δt
23」は、通常、「液相反応における保持時間Δt
43」よりも短い。
【0051】
本実施形態において、液相反応における保持後(温度平衡後)の冷却速度は、例えば、1℃/分以上500℃/分以下であってもよい。これにより、ファセット面を有するSiC光触媒粒子をより効率的に生成させることができる。「液相反応における保持後(温度平衡後)の冷却速度」とは、上記の温度平衡時間が経過した後、平衡温度から1400℃を下回るまでの冷却速度をいう。当該冷却速度は、3℃/分以上400℃/分以下であってもよく、5℃/分以上300℃/分以下であってもよい。或いは、当該冷却速度が高速であるほど、細かなSiC光触媒粒子が得られ易い。この点、当該冷却速度は、10℃/分以上、20℃/分以上、30℃/分以上、40℃/分以上又は50℃/分以上であってもよい。
【0052】
1.7 反応雰囲気の窒素量を低減する工程
SiC光触媒粒子の結晶中の窒素量を低減させたい場合、上記の溶液成長法による合成を行う前に、反応雰囲気の窒素量を低減する工程を行ってもよい。反応雰囲気の窒素量を低減する方法としては、ベーキングによるものや、ゲッターによるものなどが挙げられる。特に、本実施形態に係る製造方法と相性が良いのは、ベーキングによって反応雰囲気の窒素量を低減する方法である。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、前記融液(L1)を得る前に系内をベーキングすること(前記融液(L1)を得る前にベーキングによって反応雰囲気の窒素量を低減すること)、を含むものであってもよい。ここで「系内」とは、SiCの合成が行われる反応系内を意味する。例えば加熱炉内部を意味するが、必ずしもこれに限定されない。
【0053】
SiCを合成する場合、SiCを合成する前に加熱炉内を真空排気し、その後ArまたはHeの不活性ガスに置換するとよい。真空排気により、炉内に存在していた大気由来のN
2やO
2が炉内から除去され得る。ただし、真空排気及び不活性ガス置換後においても、炉内に配置されている断熱材や黒鉛製の部材などに、大気に由来する窒素が吸着などにより残存することがあり、これらの残存窒素が合成時の加熱により炉内に放出され、融液に溶解し、合成しているSiC中に取り込まれることがある。これに対し、合成前に炉内をベーキングすることで、炉内の残存窒素を加熱除去することができ、その後のSiC合成時に取り込まれる窒素量を低減することができる。例えば、
図2に示す構成を炉内に形成し、上記のケイ素源(S1)等を保持している黒鉛製坩堝を坩堝軸6に接続し、高周波誘導加熱コイル4およびホットゾーン8よりも上方に退避させる。成形断熱材の内部にはホットゾーン8が設置されており、これが被加熱体となる。続いて、真空排気を行いながらホットゾーンを加熱することで、成形断熱材等の炉内構成物が間接的に加熱される。この工程により、吸着等により残存していた窒素が除去され得る。ベーキング工程後は、坩堝軸を下方に移動させて、上記のケイ素源や添加元素を保持している黒鉛製坩堝をホットゾーン内部に挿入し、間接加熱を行うことで、SiCの合成を行うことができる。
【0054】
1.8 除去工程
本実施形態においては上述の溶液成長法によってSiC光触媒粒子を含む生成物が得られる。ここで、本実施形態においては、必ずしも原料のすべてが反応するとは限らず、生成物としてのSiC光触媒粒子とともに残部(未反応物や反応容器からの固着物等)が存在し得る。当該残部が少ないほど、SiC光触媒粒子の量を相対的に増大させることができ、光触媒としての性能を向上させることができるものと考えられる。この点、本実施形態に係る製造方法は、上述の手順にて固体のSiC光触媒粒子を得た後に、前記固体のSiC光触媒粒子とともに存在する残部の少なくとも一部を除去すること、を含んでいてもよい。
【0055】
残部の一例としては、未反応のケイ素が挙げられる。すなわち、液相反応完了後のSiCを含む溶液を冷却して固体のSiC光触媒粒子を得る場合に、前述の未反応のケイ素を含んだまま溶液が固化することもあり得る。この場合、未反応のケイ素を酸によって除去することで、SiC光触媒粒子を優先的に取り出すことができる。この点、本実施形態においては、固体のSiC光触媒粒子を得た後に、前記固体のSiC光触媒粒子とともに存在する未反応のケイ素の少なくとも一部を酸洗浄処理によって除去する、除去工程を行ってもよい。この場合、フッ化水素酸と硝酸との混酸を用いて酸洗浄処理を行ってもよい。混酸におけるフッ化水素酸と硝酸との体積比は特に限定されないが、例えば、1:1~1:2であってもよい。
【0056】
或いは、本実施形態においては、残部として未反応の炭化ケイ素粒子(SC1)が存在する場合がある。未反応の炭化ケイ素粒子(SC1)については、表面張力等の要因によって、前記溶液に混合されずに溶液の表面に浮遊したものであり、溶液が固化した後、刷毛などで容易に除去可能である。刷毛で除去できないものについては、少なくとも一部が溶液と接触しており、溶解もしくは結晶成長等の反応が生じていると判断することができる。
【0057】
或いは、本実施形態においては、固体のSiC光触媒粒子とともに残部として上記の添加元素が存在する場合がある。添加元素についても、酸洗浄処理等によって、その少なくとも一部を除去することができる。この点、本実施形態においては、固体のSiC光触媒粒子を得た後に、前記固体のSiC光触媒粒子とともに存在する添加元素を酸洗浄処理によって除去する、除去工程を行ってもよい。この場合も、フッ化水素酸と硝酸との混酸を用いて酸洗浄処理を行ってもよい。混酸におけるフッ化水素酸と硝酸との体積比は特に限定されないが、例えば、1:1~1:2であってもよい。
【0058】
或いは、本実施形態においては、固体のSiC光触媒粒子とともに残部として未反応の炭素(或いは、反応容器から固体に固着した炭素)が存在する場合がある。残部としての炭素については、酸素含有雰囲気で加熱することによって、その少なくとも一部を除去することができる。この点、本実施形態においては、固体のSiC光触媒粒子を得た後に、前記固体のSiC光触媒粒子とともに存在する未反応の炭素を加熱除去する、除去工程を行ってもよい。この場合の加熱条件(加熱雰囲気、加熱温度、加熱時間)は、炭素を除去でき、且つ、SiCの酸化等の不要な反応が生じない条件であればよい。例えば、空気雰囲気下、650℃~750℃で1時間~20時間程度の加熱としてもよい。
【0059】
以上の通り、本実施形態において、除去工程とは、例えば、ケイ素を除去する工程、添加元素を除去する工程、炭素を除去する工程、ケイ素と添加元素と炭素とのうち2種類以上の元素で構成される化合物を除去する工程のいずれか1つ以上であってもよい。
【0060】
1.9 固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得る方法
上述の通り、本実施形態においては、溶融されたケイ素源(S1)と固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とを含む融液(L1)を用いる。上述の通り、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)として市販品を用いることも可能であるが、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)として積層欠陥密度の低いものを用いることで、最終的に製造されるSiC光触媒粒子の積層欠陥密度が一層低いものとなり易い。市販の炭化ケイ素粒子(SC1)は、積層欠陥密度が十分に低いものとはいい難い。積層欠陥密度の低い炭化ケイ素粒子(SC1)は、例えば、以下の方法によって得ることができる。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、ケイ素源(S2)を加熱して融液(L2)を得ること、前記融液(L2)に炭素(C2)を溶解させて、前記融液(L2)に含まれるケイ素と前記炭素(C2)とを液相反応させることにより、固体の炭化ケイ素(SC2)を得ること、並びに、前記固体の炭化ケイ素(SC2)を砕くことで、前記固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得ること、を含んでいてもよい。
【0061】
1.9.1 融液(L2)を得ること
融液(L2)はケイ素源(S2)を加熱することで得られる。加熱の方法は特に限定されるものではなく、公知の加熱炉を用いて加熱すればよい。加熱の際の容器としては、例えば、上述の坩堝形状の容器を用いることができるが、SiCの合成温度において破損することがないものであればよく、必ずしもこれに限定されない。ケイ素源(S2)は、ケイ素単体であってもよいし、ケイ素を含む化合物であってもよい。ケイ素源(S2)は、上述のケイ素源(S1)と同種であってもよいし、異種であってもよい。融液(L2)は、上述の融液(L1)とは異なり、固体の炭化ケイ素粒子を含んでいなくてもよい。また、融液(L2)は、添加元素源(M2)を含んでいてもよい。ここで、添加元素源(M2)は、金属単体及び金属元素を含む化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種である。添加元素源(M2)は、上述の添加元素源(M1)と同種であってもよいし、異種であってもよい。
【0062】
1.9.2 固体の炭化ケイ素(SC2)を得ること
上述の融液(L2)に炭素(C2)を溶解させることで、液相反応が生じ、固体の炭化ケイ素(SC2)が得られる。融液(L2)へと炭素(C2)を供給する炭素源は、上述の融液(L1)へと炭素(C1)を供給する炭素源と同種であってもよいし、異種であってもよい。本実施形態においては、例えば、融液(L2)への炭素(C2)の供給が容易であることや融液(L2)に対して過度に反応し難いこと等を考慮して、炭素源として炭素製の坩堝を用いてもよい。すなわち、本実施形態に係る製造方法は、ケイ素源(S2)を炭素製の坩堝に入れること、前記坩堝を加熱して前記坩堝内で前記融液(L2)を得ること、及び、前記坩堝から前記融液(L2)中に炭素(C2)を溶解させること、を含むものであってもよい。或いは、本実施形態においては、炭素製の坩堝以外の反応容器を使用することも可能である。例えば表面をSiCでコーティングした坩堝を使用してもよい。ただし、ケイ素を含んだ融液(L2)は金属との反応性が高いため、金属製の反応容器の使用は避けることが好ましい。ここで、坩堝の材質となる炭素材料としては、元素としての炭素を主成分として含んだ材料であればよい。例えば、黒鉛性炭素や、非黒鉛化性炭素(カーボンブラックやガラス状黒鉛等)等の単体炭素が採用され得る。本発明者らの知見では、特に炭素源として黒鉛製の坩堝を用いた場合に、溶液の保持を目的とする場合の耐久性の確保と、所望の液相反応とを両立させ易い。
【0063】
或いは、液相反応に利用する炭素源として、炭素製の坩堝を利用する他に、炭素を主成分として含んだ材料を前記ケイ素源(A2)とともに混合してもよい。例えば、黒鉛性炭素や、非黒鉛化性炭素(カーボンブラックやガラス状黒鉛等)等の単体炭素が採用され得る。この場合の炭素源の形状は反応容器の内容量等に応じて選定され、特に限定されるものではない。融液(L2)に対して炭素を容易に溶解させる観点から、炭素源は粒子状であってもよい。炭素源が粒子状である場合、その平均粒子径は、例えば、10nm以上又は40nm以上であってもよく、150nm以下又は100nm以下であってもよい。
【0064】
融液(L2)へと炭素(C2)を供給する炭素源としてカーボンブラックを用いる場合、当該カーボンブラックとしては、粉末状のカーボンブラックを用いることが望ましいが、粉末が凝集したカーボンブラックを粉砕して用いてもよい。カーボンブラックには製造方法や原料によって、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、サーマルブラック等の種類があるが、本実施形態において採用され得るカーボンブラックの種類は特に制限されない。
【0065】
本実施形態においては、上記のケイ素源(S2)を加熱することで融液(L2)を得て、ここに炭素(C2)を溶解させて液相反応を生じさせることで、固体の炭化ケイ素(SC2)を含む生成物を得てもよい。加熱の方法は特に限定されるものではなく、公知の加熱炉を用いて加熱すればよい。加熱の際の反応容器としては、例えば、上述の通り坩堝形状の容器を用いることができるが、SiCの合成温度において破損することがないものであればよく、必ずしもこれに限定されない。炭素以外の材質からなる反応容器を用いる場合は、上記のケイ素源(S2)に対して、炭素(C2)を含む材料を追加で導入してもよい。本実施形態においては、液相反応時の溶液の温度(加熱温度)によって固体の炭化ケイ素(SC2)の結晶構造、すなわち多形を制御することが可能である。具体的には、3C-SiCは略1700℃以下において、異種多形と比較して相対的に熱的安定となる相である6H-SiCや4H-SiCは略1700℃以上で安定となる相であることが知られている。混合物中のSiがすべて反応してSiCとなるまで、加熱時間に応じて、合成されるSiCの量が増加する。したがって、融液(L2)に含まれるSi量に応じて最適な加熱時間は異なる。合成後に残ったケイ素の存在を確認することで最適な加熱時間を決定することもできる。加熱の雰囲気は、不活性ガス雰囲気で加熱するとよい。不活性ガスは、ArやHeであることが望ましい。よく知られた他の不活性ガスとしてはN2が挙げられるが、窒素はドーパントして結晶中に取り込まれn型ドーパントとして作用することが知られている。したがって、ArやHeとN2とを任意の比率で混合することで、SiC結晶中のN濃度を制御することが可能である。尚、液相反応時に溶液の温度を直接的に測定することは難しい。この場合、例えば、反応容器である坩堝の温度を指標として液相反応温度を制御してもよい。溶液において上記の液相反応が生じる温度は、指標とされる坩堝の温度よりも低くてもよい。
【0066】
固体の炭化ケイ素(SC2)の結晶中の窒素量を低減させたい場合、上記の溶液成長法による合成を行う前に、反応雰囲気の窒素量を低減する工程を行ってもよい。反応雰囲気の窒素量を低減する方法としては、ベーキングによるものや、ゲッターによるものなどが挙げられる。特に、本実施形態に係る製造方法と相性が良いのは、ベーキングによって反応雰囲気の窒素量を低減する方法である。ベーキングについては上述の通りである。
【0067】
固体の炭化ケイ素(SC2)を合成する場合、その前に加熱炉内を真空排気し、その後ArまたはHeの不活性ガスに置換するとよい。真空排気により、炉内に存在していた大気由来のN2やO2が炉内から除去され得る。ただし、真空排気及び不活性ガス置換後においても、炉内に配置されている断熱材や黒鉛製の部材などに、大気に由来する窒素が吸着などにより残存することがあり、これらの残存窒素が合成時の加熱により炉内に放出され、融液に溶解し、合成しているSiC中に取り込まれることがある。これに対し、合成前に炉内をベーキングすることで、炉内の残存窒素を加熱除去することができ、その後のSiC合成時に取り込まれる窒素量を低減することができる。
【0068】
本実施形態においては上述の溶液成長法によって固体の炭化ケイ素(SC2)を含む生成物が得られる。ここで、本実施形態においては、必ずしも原料のすべてが反応するとは限らず、生成物としての固体の炭化ケイ素(SC2)とともに残部(未反応物や反応容器からの固着物等)が存在し得る。当該残部が少ないほど、固体の炭化ケイ素(SC2)の量を相対的に増大させることができ、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)としてより適切な形態となり得る。この点、本実施形態においては、上述の手順にて固体の炭化ケイ素(SC2)を得た後に、前記固体の炭化ケイ素(SC2)とともに存在する残部の少なくとも一部を除去すること、を含んでいてもよい。除去工程については上述の通りであり、ここでは詳細な説明を省略する。
【0069】
溶解されたケイ素源(S2)を含む融液(L2)に炭素(C2)を供給して液相反応を生じさせることによって得られる固体の炭化ケイ素(SC2)は、上述の炭化ケイ素粒子(SC1)とは異なり、粒子状である必要はない。固体の炭化ケイ素(SC2)は、例えば、バルク体(塊状)であってもよい。
【0070】
1.9.3 固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得ること
本実施形態においては、例えば、固体の炭化ケイ素(SC2)として、微細な単結晶が集合したバルク多結晶体が得られ、これを砕くことで、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)が得られる。例えば、バルク(塊)状の炭化ケイ素(SC2)を乳鉢やボールミルやジェットミル等を用いて微細化してもよい。このようにして得られる炭化ケイ素粒子(SC1)は、積層欠陥密度が低い。
【0071】
2.SiC光触媒粒子
以上の通り、本実施形態に係る方法によって、SiC光触媒粒子を製造することができる。尚、「粒子(粉末)」とは湿式のレーザー回折により粒度分布を測定した場合に平均粒子径が1mm以下となる固体の集合体をいう。本実施形態に係る方法によって製造されたSiC光触媒粒子は、ファセット面を有し、かつ、積層欠陥密度が低い。例えば、一実施形態に係るSiC光触媒粒子は、第1ファセット面と、前記第1ファセット面を囲む少なくとも1種以上の第2ファセット面とを有し、10.00%以下の積層欠陥密度を有し、かつ、0.01m2/g以上20.0m2/g以下のBET比表面積を有することを特徴とする。
【0072】
2.1 ファセット面
本実施形態に係る方法によって製造されたSiC光触媒粒子は、ファセット面を有することを特徴とする。ここでファセット面とは、結晶学的に平坦な面であり、例えば3C-SiCは、閃亜鉛鉱構造をとる。
図1に示すように、{111}面では一般にSi原子が、{-1-1-1}面ではC原子が最表面に露出する、すなわち表面において終端している原子が異なることが知られており、前述の場合は{111}面をSi面、{-1-1-1}面をC面と表現することが多い。ここで「{-1-1-1}」の「-」は、「1」の上に記載することがあるが、本明細書においては数字の前に記述することで代替している。本実施形態においては、SiC光触媒粒子がファセット面のみで構成されていても良いが、少なくとも一つのファセット面(第1ファセット面)が異なるファセット面(第2ファセット面)によって周囲を囲われていればよい。例えば、
図1に示す通り、周囲が{-1-1-1}面で構成された{111}面のような場合を意味する。ここでは{111}面および{-1-1-1}面について例示したが、必ずしもこれに限定されず、{200}、{220}、{311}、{420}、{422}、{511}等でもよく、さらにこれらに限定されない。さらにこれらの面と結晶学的に等価な面であっても良い。具体的には「-」が附された面でも良い。
【0073】
尚、SiC光触媒粒子のファセット面は、透過型電子顕微鏡における回折図形による方位解析や、電子後方散乱回折(EBSD)法等を用いてその方位を決定することができるが、形状から面方位が判別できる場合は、判別可能なファセット面とそれに隣接するファセット面とのなす角度を走査型電子顕微鏡等で計測することで、隣接するファセット面の方位指数を決定することが可能である。
【0074】
2.2 SiC光触媒粒子のBET比表面積
本発明者の新たな知見によると、本実施形態に係る方法によって製造されたSiC光触媒粒子は、そのBET比表面積が所定範囲内である場合に、特に光水分解性能が高くなる。具体的には、SiC光触媒粒子のBET比表面積は、0.01m2/g以上20.0m2/g以下であってもよい。SiC光触媒粒子のBET比表面積は、0.02m2/g以上、0.03m2/g以上、0.04m2/g以上、0.05m2/g以上、0.06m2/g以上、0.07m2/g以上、0.08m2/g以上、0.09m2/g以上又は0.10m2/g以上であってもよく、18.0m2/g以下、16.0m2/g以下、14.0m2/g以下、12.0m2/g以下、10.0m2/g以下、8.0m2/g以下、6.0m2/g以下、5.0m2/g以下、4.0m2/g以下、3.0m2/g以下、2.0m2/g以下、1.0m2/g以下、0.90m2/g以下、0.80m2/g以下、0.70m2/g以下、0.65m2/g以下、0.60m2/g以下、0.55m2/g以下、0.50m2/g以下、0.45m2/g以下、0.40m2/g以下又は0.35m2/g以下であってもよい。このように、本実施形態に係る方法によって製造されたSiC光触媒粒子は、小さなBET比表面積を有するものであってよい。尚、SiC光触媒粒子のBET比表面積が小さ過ぎると、SiC光触媒の粒子径が過剰に大きくなり、光触媒活性が低下する虞がある。また、SiC光触媒粒子のBET比表面積が大き過ぎると、SiC光触媒の粒子径が過剰に小さくなり、助触媒等を担持させたい場合に、それが困難となる。
【0075】
2.3 SiC光触媒粒子の積層欠陥密度
本発明者の新たな知見によると、本実施形態に係る方法によって製造されたSiC光触媒粒子は、低い積層欠陥密度を有し得る。これにより、光触媒としての光水分解性能が向上し易い。本実施形態に係る方法によって製造されたSiC光触媒粒子の積層欠陥密度は、例えば、10.00%以下、7.00%以下、5.00%以下、3.00%以下、2.00%以下、1.00%以下、0.90%以下、0.80%以下、0.70%以下、0.60%以下、0.50%以下、0.40%以下、0.30%以下、0.20%以下又は0.10%以下であってもよい。積層欠陥密度の下限は特に限定されず、0%であってもよい。尚、SiC光触媒の積層欠陥密度の測定方法については実施例にて詳述する。
【0076】
2.4 SiC光触媒粒子の平均粒子径
SiC光触媒粒子の平均粒子径は、特に限定されるものではないが、例えば、10nm以上、100nm以上、1μm以上、10μm以上又は100μm以上であってもよく、1mm以下、500μm以下又は300μm以下であってもよい。尚、本願にいうSiC光触媒粒子の平均粒子径とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0077】
2.5 SiC光触媒粒子の多形
SiC光触媒粒子の多形は、特に限定されるものではない。一実施形態に係るSiC光触媒粒子は、例えば、3C-SiC、4H-SiC及び6H-SiCのうちの少なくとも1種を含んでいてもよい。特に、SiC光触媒粒子が、3C-SiCを含む場合に、光触媒としてより優れた性能が得られ易い。
【0078】
2.6 その他
SiC光触媒粒子は、助触媒と呼ばれる異種材料を光触媒の表面上に担持させてもよい。助触媒は、水素発生用助触媒であってもよく、酸素発生用助触媒であってもよく、これらの組み合わせであってもよい。助触媒は、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Ru、Rh、Ir、Pt、Pd、Au等の金属;これらの酸化物;これらの硫化物;これらの複合酸化物;これらの複合硫化物などから選ばれる少なくとも1種であってもよい。当該硫化物は、これらの金属に硫黄又はチオウレアを添加したものであってもよい。中でも、CoOx(コバルト酸化物)等の金属酸化物が好ましい。ただし、助触媒は、必ずしもこれらに限定されない。また、これらの助触媒の担持方法は、含浸担持法や光電着法等が用いられるが、必ずしもこれらに限定されない。助触媒としての金属又は化合物と、上述のSiC光触媒粒子との各々を得た後に、当該金属又は化合物と当該SiC光触媒粒子とを接触させること等によって、SiC光触媒粒子の表面に助触媒としての金属や化合物を担持してもよい。或いは、助触媒が化合物である場合、SiC光触媒粒子の表面で助触媒としての当該化合物を合成することによって、SiC光触媒粒子の表面に当該化合物を担持してもよい。或いは、助触媒が金属である場合、SiC光触媒粒子の表面に当該金属を析出させることによって、SiC光触媒粒子の表面に当該金属を担持してもよい。或いは、助触媒が金属である場合、SiC光触媒粒子の表面で当該金属の化合物を分解することによって、SiC光触媒粒子の表面に当該金属を担持してもよい。このほか、種々の方法によりSiC光触媒粒子の表面に助触媒が担持され得る。
【実施例0079】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの内容に制限されるものではない。
【0080】
1.SiC光触媒粒子の作製
1.1 実施例1
以下に説明するように、混合及び加熱(液相反応)を含む合成工程と、未反応のケイ素等の除去を目的とした後処理工程との2つの工程を経て、SiC光触媒粉末を製造した。
【0081】
1.1.1 合成工程
図2に合成工程にて用いた装置の構成を概略的に示す。原料として100gに秤量したチャンク状のケイ素(株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ、グレード L-S(O))と5gに秤量した市販品の3C-SiC微粒子(a
BET=36.3m
2/g)とを黒鉛製の坩堝2(新日本テクノカーボン株式会社、IGS-743)に投入し、カーボン製の成形断熱材3の内部に設置し、高周波誘導コイル4を備えた高周波誘導加熱炉(第一機電株式会社、S08-5817)のチャンバー5内に導入した。続いて、チャンバー5内を、ロータリーポンプと油拡散ポンプとを用いて、10
-3Pa台まで真空引きを行った。続いて、大気圧となるように不活性ガスであるArガス(99.99%以上)を導入し、加熱を開始した。室温から合成温度である1500℃まで2時間かけて昇温することでチャンク状のケイ素を融液1とした後、1500℃で5時間保持することで、坩堝2から融液1へと炭素を溶解させ、融液中のケイ素と炭素と粒子状SiCとを液相反応させ、その後、降温時間を4時間として炉内を冷却して、ファセット面を有するSiC粒子を含む生成物を得た。ここで合成温度とは、坩堝2の内側の底部の温度である。また、ここで降温時間とは、合成温度を一定時間保持した後に、投入している出力を線形に0(電源をOFFにする)まで下げるための時間である。
【0082】
1.1.2 後処理工程
続いて、SiCを含む生成物からSiCを優先的に回収するために、以下の手順で、不要部分の除去を行った。合成工程を経た坩堝2内には、合成されたファセット面を有するSiC粒子と未反応のケイ素等とを含んだ固化物が存在していた。はじめに当該固化物を坩堝ごと縦方向にダイヤモンドバンドソーを用いて切断した。次に固化物の周囲に付着した黒鉛をダイヤモンドバンドソーで切削除去した。黒鉛が完全に除去されない場合もあるため、電気炉(アドバンテック社、KM-280)で、700℃で10時間、固化物の加熱を行い、残留した未反応の黒鉛を除去した。続いて、フッ化水素酸(キシダ化学、濃度46% 特級)と硝酸(キシダ化学、濃度60% 特級)とを体積比で1:1~1:2となるように混合した混酸を用いて、固化物における未反応のケイ素等を溶解させて除去した。その後、イオン交換水を加えて、pHで6~7となるまで数回洗浄した後、吸引ろ過を行い、SiC光触媒粒子を含む粉末を回収した。
【0083】
1.2 実施例2
合成工程における保持温度を1700℃とし、保持時間を1時間とし、降温時間を4時間としたこと以外は実施例1と同様である。
【0084】
1.3 実施例3
合成工程における保持温度を1700℃とし、保持時間を1時間とし、降温時間を1分としたこと以外は実施例1と同様である。
【0085】
1.4 実施例4
合成工程においてチャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を150g:4gに変更したこと以外は、実施例3と同様である。
【0086】
1.5 実施例5
合成工程における液相反応時に坩堝を、加減速を繰り返しながら正転と反転を交互に行うACRT(Accelerated Crucible Rotation Technique)法によって最大20rpmで回転させたこと以外は、実施例4と同様である。
【0087】
1.6 実施例6
合成工程における保持温度を1700℃とし、保持時間を1時間とし、降温時間を1分としたうえで、降温の開始と同時に坩堝をホットゾーンの内部から離脱するように引き上げたこと以外は実施例1と同様である。
【0088】
1.7 実施例7
合成工程における保持温度を1600℃とし、保持時間を1時間とし、降温時間を1分としたうえで、坩堝をホットゾーンの内部から離脱するように引き上げたこと以外は実施例1と同様である。
【0089】
1.8 実施例8
粒子状SiCに対して事前にフッ酸処理を施し、合成工程における保持温度を1700℃とし、保持時間を1時間とし、降温時間を1分としたうえで、坩堝をホットゾーンの内部から離脱するように引き上げたこと以外は実施例1と同様である。
【0090】
1.9 実施例9
合成工程においてチャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を100g:10gに変更したこと以外は、実施例8と同様である。
【0091】
1.10 実施例10
合成工程においてチャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を100g:20gに変更したこと以外は、実施例8と同様である。
【0092】
1.11 実施例11
合成工程においてチャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を25g:5gに変更し、保持温度を1600℃としたこと以外は、実施例8と同様である。
【0093】
1.12 実施例12
合成工程においてチャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を25g:10gに変更したこと以外は、実施例11と同様である。
【0094】
1.13 実施例13
SiC微粒子として以下の方法により作製されたものを用い、チャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を50g:5gに変更したこと以外は、実施例7と同様である。
【0095】
(SiC微粒子の作製方法)
以下に説明するように、混合及び加熱(液相反応)を含む第1工程と、未反応のケイ素等の除去を目的とした第2工程と、微粉砕を行う第3工程との3つの工程を経て、SiC光触媒粉末を製造した。
【0096】
1.13.1 第1工程
図2に第1工程にて用いた装置の構成を概略的に示す。原料として280gに秤量したチャンク状のケイ素(株式会社大阪チタニウムテクノロジーズ、グレード L-S(O))を黒鉛製の坩堝2(新日本テクノカーボン株式会社、IGS-743)に投入し、カーボン製の成形断熱材3の内部に設置し、高周波誘導コイル4を備えた高周波誘導加熱炉(第一機電株式会社、S08-5817)のチャンバー5内に導入した。続いて、チャンバー5内を、ロータリーポンプと油拡散ポンプとを用いて、10
-3Pa台まで真空引きを行った。続いて、大気圧となるように不活性ガスであるArガス(99.99%以上)を導入し、加熱を開始した。室温から合成温度である1500℃まで2時間かけて昇温することでチャンク状のケイ素を融液1とした後、1500℃で60時間保持することで、坩堝2から融液1へと炭素を溶解させ、融液中のケイ素と炭素と粒子状SiCとを液相反応させ、その後、4時間で室温まで冷却して、バルク(塊)状のSiCを含む生成物を得た。ここで合成温度とは、坩堝2の内側の底部の温度である。
【0097】
1.13.2 第2工程
続いて、SiCを含む生成物からSiCを優先的に回収するために、以下の手順で、不要部分の除去を行った。第1工程を経た坩堝2内には、合成されたSiCと未反応のケイ素等とを含んだ固化物が存在していた。はじめに当該固化物を坩堝ごと縦方向にダイヤモンドバンドソーを用いて切断した。次に固化物の周囲に付着した黒鉛をダイヤモンドバンドソーで切削除去した。黒鉛が完全に除去されない場合もあるため、電気炉(アドバンテック社、KM-280)で、700℃で10時間、固化物の加熱を行い、残留した未反応の黒鉛を除去した。続いて、フッ化水素酸(キシダ化学、濃度46% 特級)と硝酸(キシダ化学、濃度60% 特級)とを体積比で1:1~1:2となるように混合した混酸を用いて、固化物における未反応のケイ素等を溶解させて除去した。その後、イオン交換水で数回洗浄した後、メノウ乳鉢を用いて十分な時間粉砕を行った。塊状のSiCには間隙が存在するため、未反応のケイ素等が前記混酸で完全に除去されないまま当該間隙内に残留している虞がある。そのため、フッ化水素酸(キシダ化学、濃度46% 特級)と硝酸(キシダ化学、濃度60% 特級)とを体積比で1:1~1:2となるように混合した混酸を用いて、粉砕後のSiCに対して改めて酸洗浄処理を施し、未反応のケイ素等を溶解させて除去した。その後、イオン交換水を加えて、pHで6~7となるまで数回洗浄した後、吸引ろ過を行い、SiCを含む粉末を回収した。
【0098】
上記の合成工程1における条件を変化させつつ、前記バルク(塊)状のSiCを含む生成物を複数回合成し、それぞれ同様の手順で粉砕した。具体的には、前記1500℃で60時間保持した合成を2回、保持時間を100時間とした合成を1回、保持時間を150時間とした合成を3回実施し、粉砕品を混合して、次工程に用いた。
【0099】
1.13.3 第3工程
上記のようにして得られたSiC粉末に対して、ナノジェットマイザー(NJ-50-B)を用いてさらなる粉砕を行った。前記メノウ乳鉢で粉砕処理を行ったSiC粉末を原料として、高圧コンプレッサーを用いて粉砕を行った後、繰り返しの粉砕を行った。次にサイクロンを系内に入れて、粉砕した後、サイクロン分級を行った。分級工程では、サイクロン側または円筒ろ布側にそれぞれ微粒子が捕集されるが、本実施例では円筒ろ布から回収されたSiC微粒子を用いた。
【0100】
1.14 実施例14
市販されているCVD法で製造された3C-SiC多結晶ウエハをメノウ乳鉢で粉砕した後、微粉砕処理を行った。前記サイクロン分級工程において、サイクロン側に捕集された粒子を用いた粉砕を繰り返し行い、再度サイクロン分級を行い、円筒ろ布から回収されたSiC微粒子を原料に用いた。合成工程において、当該SiC微粒子に対して事前にフッ酸処理を施したものを用い、保持時間を56分としたこと以外は、実施例13と同様である。
【0101】
1.15 実施例15
実施例13におけるサイクロン分級工程において、サイクロン側に捕集された粒子を用いた粉砕を繰り返し行い、再度サイクロン分級を行い、円筒ろ布から回収されたSiC微粒子を原料に用いた以外は、実施例13と同様である。
【0102】
1.16 実施例16
合成工程における保持時間を20分としたこと以外は、実施例15と同様である。
【0103】
1.17 実施例17
実施例15における繰り返し粉砕後の、サイクロン分級において、サイクロン側から回収されたSiC微粒子を原料に用いた以外は、実施例13と同様である。
【0104】
1.18 実施例18
合成工程における保持時間を40分としたこと以外は、実施例17と同様である。
【0105】
1.19 実施例19
合成工程における保持時間を20分としたこと以外は、実施例17と同様である。
【0106】
1.20 実施例20
合成工程において、市販されている粒子状6H-SiCに対して事前にフッ酸処理を施したものを用い、チャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を25g:10gに変更し、保持温度を1700℃とし、保持時間を30分としたこと以外は、実施例6と同様である。
【0107】
1.21 実施例21
合成工程における保持温度を1600℃とし、保持時間を1時間としたこと以外は、実施例20と同様である。
【0108】
1.22 実施例22
SiC微粒子として、実施例13における1.13.1 第1工程および1.13.2 第2工程によって得られたSiCを含む粉末を用い、合成工程におけるチャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を50g:5gに変更したこと以外は、実施例21と同様である。
【0109】
1.23 比較例1
市販されている粒子状3C-SiCを光触媒粒子として用いた。
【0110】
1.24 比較例2
市販されているCVD法で製造された多結晶ウエハを微粉砕した粒子状3C-SiCを光触媒粒子として用いた。
【0111】
1.25 実施例23
成長時の温度を間接的に測定するためのW-Re熱電対を
図2に示すように黒鉛坩堝の上部に挿入して温度測定を行ったこと以外は実施例17と同様である。
【0112】
1.26 実施例24
合成工程における保持時間を2時間としたこと以外は実施例23と同様である。
【0113】
1.27 実施例25
合成工程における保持温度を1500℃としたこと以外は実施例23と同様である。
【0114】
1.28 実施例26
合成工程における保持時間を2時間としたこと以外は実施例25と同様である。
【0115】
1.29 実施例27
合成工程における昇温時間を2時間とし、保持時間を30分とし、続いて1分間で1550℃の保持温度に相当する出力を印加し、その後30分間さらに出力を保持したこと以外は、実施例25と同様である。
【0116】
1.30 実施例28
SiC微粒子を作製する際、第1工程において融液の加熱保持時間を60時間から150時間に変更してバルク(塊)状のSiCを含む生成物を得たこと以外は、実施例27と同様である。
【0117】
1.31 実施例29
チャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を25g:5gに変更したこと以外は実施例28と同様である。
【0118】
1.32 実施例30
チャンク状のケイ素とSiC微粒子との比率を100g:5gに変更したこと以外は実施例28と同様である。
【0119】
尚、上記実施例1~30のうち、実施例9~12、14及び20~30については、合成工程において、成長時の温度を間接的に測定するためのW-Re熱電対を
図2に示すように黒鉛坩堝の上部に挿入して温度測定を行った。一方、実施例1~8、13及び15~19については、熱電対を挿入せずに合成工程を行った。
【0120】
2.合成温度の測定
実施例1~30の各々の「液相反応における溶液の温度」を測定するために、
図3に示す装置によって事前実験を行った。具体的には、
図2における融液1を投入せずに、黒鉛製坩堝2の上部から熱電対9を前記黒鉛製坩堝2の内側底部まで挿入し、高周波誘導加熱炉の出力を上げて加熱を開始したのち、出力を一定値に保持した。前記黒鉛製坩堝2の内側底部の温度が安定していることを確認した後、出力を変動させた。出力と温度の相関を得ておくことで、出力で溶液の温度を制御した。本実施例では、当該溶液の温度を合成温度とした。
【0121】
3.冷却速度の測定
実施例1~30の各々の液相反応における保持後の冷却速度(保持温度から1400℃を下回るまでの冷却速度)を測定するために、
図3に示す装置によって事前実験を行った。具体的には、
図2における融液1を投入せずに、黒鉛製坩堝2の上部から熱電対9を前記黒鉛製坩堝2の内側底部まで挿入し、前記黒鉛製坩堝2の内側底部の温度が略1500℃となるように加熱を行い、温度が安定していることを確認した後、高周波誘導加熱炉の出力を1分間でオフにすると同時に、坩堝軸6を紙面上方に100mm/minの速度で140mm移動させることで、坩堝軸6と接続している前記坩堝2および熱電対9をホットゾーン8の内部から離脱するように紙面上方に移動させた。ここでSiの融点は略1400℃であるため、移動開始から1400℃まで冷却された時点の経過時間によって保持温度である略1500℃と略1400℃の温度差を除した速度を冷却速度とした。同様に、保持温度が略1600℃である場合や略1700℃である場合についても冷却速度を測定した。同様に、坩堝軸6を移動させずに高周波誘導加熱炉の出力を1分間でオフにした場合と、高周波誘導加熱炉の出力を4時間でオフにする場合における温度変化を測定し、冷却速度を求めた。結果を下記表1に示す。
【0122】
【0123】
4.SiC光触媒粒子の評価条件
4.1 SEMによる形態観察
前記工程を経て合成されたSiC光触媒粒子の形態をSEMにより観察した。
【0124】
4.2 粉末XRD測定による相同定
前記工程を経て合成されたSiC光触媒粒子の結晶構造は、粉末XRD法により同定を行った。具体的には、X線回折装置(リガク、全自動多目的X線回折装置 SmartLab)を用いて、CuKαを線源として、管電圧45kV、管電流200mAで、ステップ幅0.01°、スキャン速度1°/minで2θ/θスキャンを行った。相の同定については、X線解析ソフトウェア(リガク、PDXL)を用いてピークフィッティングを行ったのち、データベース(ICDD PDF-2)のPDFカード番号 03-065-0360(3C-SiC)、01-078-3294(4H-SiC)、01-078-3295(6H-SiC)、01-073-1662(15R-SiC)、01-089-2219(21R-SiC)を用いて、参照強度比(Reference Intensity Ratio:RIR)法により相同定と定量評価を行った。尚、解析ソフトウェアの特性上、相の定量値の合計値(多形混在率の合計値、mass%)が100%とならない場合がある。
【0125】
4.3 積層欠陥密度の測定
SiC光触媒粒子中の結晶欠陥(積層欠陥や点欠陥、粒界など)は励起電子-正孔の再結合サイトとなって光触媒としての活性を低下させることが推定される。すなわち、結晶欠陥が少ないほど、より多くの電子-正孔が光触媒反応に使用され易くなる。
【0126】
例えば粉末状の3C-SiCに対する積層欠陥密度は、X線回折パターンから求めるものとする。具体的には、前記X線回折装置を用いて、SiC光触媒に対してCuKαを線源とするX線回折パターンを取得し、X線解析ソフトウェア(リガク、PDXL)を用いてピークフィッティングを行ったのち、2θ=33.6°の積分強度と2θ=41.4°の積分強度との比xをとり、当該xを下記式に代入することで、3C-SiCに対する積層欠陥密度Y(%)を算出する(日本セラミックス協会学術論文誌 99 [6] 443-447 (1991))。この際、特にKβ線とフィルターエッジを除去する処理は行わない。
【0127】
【0128】
ここで、例えば、3C-SiC以外の多形が3C-SiCとともに混在する場合においては、2θ=33.6°の近傍に回折が見られることがある。その際は、例えばデータベース(ICDD PDF-2)を参照し、混在が推定される多形における2θ=33.6°の近傍の回折と、異なる面から得られる回折とのピークとの強度比を比較する。例えば、具体的には、4H-SiCと3C-SiCとが混在する場合、4H-SiCの場合は2θ=33.6°付近に回折が得られる。あるいは6H-SiCが混在する場合は、2θ=41.4°付近に回折が得られる。これらの回折強度における各多形の寄与率を求めるために、前記PDFカード番号01-078-3294(4H-SiC)、および、01-078-3295(6H-SiC)に記載されている下記回折の相対強度比を用いて差分を得る。前記PDFカードによると4H-SiCの2θ=33.6°と34.8°の回折強度は24.5:100となる。したがって、2θ=34.8°における回折強度から算出した4H-SiCに起因する2θ=33.6°の値を減算することで3C-SiCの積層欠陥に起因する回折強度を得ることが可能である。同様に、2θ=41.4°の回折における6H-SiCからの寄与を減ずるために、6H-SiCに起因する2θ=34.1°と41.4°の34.2:14.3の強度を用いた減算を行う。
【0129】
4.4 BET比表面積の測定
SiC光触媒のBET比表面積は、ガス吸着法を用いて測定することができる。具体的には、比表面積/細孔分布測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社、BELSORP MINI X)を用いて、吸着ガスを窒素とした定容法による測定を実施する。すなわち、-196℃の液体窒素中に試料が入ったガラス管を浸漬させ、管内を真空引きする。その後、相対圧(=吸着平衡圧/飽和蒸気圧)を変化させ、吸着窒素量を測定する。測定された吸着窒素量及び相対圧より、BET比表面積を求める。
【0130】
5.SiC光触媒粒子の評価結果
図4~15に、一例として、実施例1~3、6、7、13、14、16、17、19、21及び22について、SiC光触媒粒子のSEM像を示す。また、下記表2に、実施例1~22、比較例1及び2の各々のSiC光触媒粒子の製造条件を示す。また、下記表3に実施例1~22、比較例1及び2の各々のSiC光触媒粒子についてのXRDによる分析結果、積層欠陥密度(SF密度)、多形比率、BET比表面積、及び、平均粒子径(D50)を示す。また、下記表4に、実施例23~33の各々のSiC光触媒粒子の製造条件を示す。また、下記表5に実施例23~33の各々のSiC光触媒粒子についてのXRDによる分析結果、積層欠陥密度(SF密度)、多形比率、BET比表面積、及び、平均粒子径(D50)を示す。
【0131】
【0132】
【0133】
【0134】
【0135】
実施例1~30に係るSiC光触媒粒子は、第1ファセット面と、前記第1ファセット面を囲む少なくとも1種以上の第2ファセット面とを有するものである。また、表3及び5に示される通り、実施例1~30に係るSiC光触媒粒子は、比較例1および2に係る粒子状SiCと比較して、積層欠陥密度と、3C-SiC(111)のX線回折における半値全幅(FWHM)が著しく改善していることがわかる。積層欠陥密度については、未反応の粒子の内部における積層欠陥の増加がなく、また合成時にも新たな積層欠陥の形成も無いことが示されている。また、3C-SiC(111)の半値全幅は粒子表面近傍の面の乱れを示唆しており、粒子表面が高品質化していることがわかる。実施例1~30に係るSiC光触媒粒子は、ファセット面を有し、かつ、積層欠陥密度が低いことから、例えば、水分解用の光触媒として好適に使用できる。
【0136】
6.SiC光触媒粒子の製造条件のさらなる検討
実施例1~30のうちの一部の実施例について、
図16に示される「ケイ素源の溶融開始時点t
1から、融液が目標温度に達した時点t
2までの時間Δt
12」と、「融液の温度が目標温度に達した後の温度平衡時間Δt
23」とを測定した。当該時間t
1、t
2、t
12及びt
3の測定には、
図2に示されるように坩堝軸6に挿入された熱電対9により、坩堝内の融液の温度を間接的に測定することにより行った。
図16の「測定温度」は、熱電対9によって測定される温度プロファイルの一例に相当する。
図16に示されるように、坩堝内のケイ素源を加熱し、当該ケイ素源が溶融して融液が生成し始めると、溶融潜熱によって昇温速度が低下し、熱電対9によって測定される昇温速度も低下し、温度が一定となる。熱電対で温度を測定する場合、外部の擾乱の影響を受ける場合がある。そこで、ある時間t
nにおける温度差Δt
nは時間t
nの一つ前の測定温度t
n-1との差を取り、さらに前後の温度差Δt
n-1、Δt
n+1とΔt
nと平均(三項移動平均)を求め、Δt
n,aveを得た。このように熱電対9によって測定される温度が一定となった時点(昇温速度Δt
n,aveが0℃+0.03℃の範囲内に収まり始めた時点、あるいは、負となった時点)を、「ケイ素源の溶融開始時点t
1」とみなす。また、本実施例においては、加熱炉の温度表示上において昇温が完了して温度保持に移行した後も、融液の実際の温度が上昇し続ける。すなわち、上記の通り、ケイ素源が溶融して融液が生成することによって熱電対9による測定温度が一旦はほぼ一定となるが、その後、熱電対9による測定温度が再び上昇する。その後、熱電対9による測定温度が平衡に達する(加熱炉の設定保持温度と実質的に同じ温度となる)。熱電対9による測定温度が平衡に達した時点(昇温速度Δt
n,aveが0℃+0.03℃の範囲内に収まり始めた時点、あるいは、負となった時点)を、「融液(L1)が目標温度に達した時点t
2」とみなす。その後、熱電対9により測定される温度が一定となり、さらにその後、冷却開始とともに熱電対9により測定される温度が低下する。上述の時点t
2から冷却が開始される時点t
3までの時間を、「温度平衡時間Δt
23」とみなす。
【0137】
下記表6に、実施例9~12、14、20~30の各々について、「ケイ素源の溶融開始時点t1から、融液が目標温度に達した時点t2までの時間Δt12」及び「融液の温度が目標温度に達した後の温度平衡時間Δt23」を示す。また、参考までに、各々のBET比表面積、目標温度、加熱炉の設定上の昇温時間及び保持時間Δt43もあわせて示す。
【0138】
【0139】
本発明者が確認した限りでは、Δt12の間において融液の温度を上昇させ続ける(融液を昇温し続ける)ことで、SiC光触媒粒子のBET比表面積が大きくなる。その中でも特に、表6に示されるように、温度平衡時間Δt23が短いほうが、SiC光触媒粒子のBET比表面積が大きくなる傾向にあることがわかる。
【0140】
6.まとめ
実施例1~30に示される結果から、以下の方法によれば、ファセット面を有し、かつ、積層欠陥密度の低いSiC光触媒粒子が得られるといえる。
すなわち、本開示のSiC光触媒粒子の製造方法は、
溶融したケイ素源(S1)と、固体の炭化ケイ素粒子(SC1)とを含む融液(L1)を得ること、並びに、
前記融液(L1)に炭素(C1)を溶解させて、前記融液(L1)に含まれるケイ素と前記炭素(C1)とを液相反応させることにより、ファセット面を有する固体のSiC光触媒粒子を得ること、を含む。
【0141】
また、実施例1~30に示される結果から、上記の方法における固体の炭化ケイ素粒子(SC1)が以下の方法により得られるものである場合に、ファセット面を有し、かつ、積層欠陥密度がさらに低いSiC光触媒粒子が得られるといえる。すなわち、本開示のSiC光触媒粒子の製造方法は、
ケイ素源(S2)を加熱して融液(L2)を得ること、
前記融液(L2)に炭素(C2)を溶解させて、前記融液(L2)に含まれるケイ素と前記炭素(C2)とを液相反応させることにより、固体の炭化ケイ素(SC2)を得ること、並びに、
前記固体の炭化ケイ素(SC2)を砕くことで、前記固体の炭化ケイ素粒子(SC1)を得ること、を含むことが好ましい。
【0142】
また、表6に示される結果から、以下の方法によれば、ファセット面を有し、積層欠陥密度が低く、かつ、BET比表面積の大きな(粒子径の小さな)SiC光触媒粒子が得られるといえる。すなわち、本開示のSiC光触媒粒子の製造方法は、
上記の液相反応を生じさせるにあたり、ケイ素源(S1)が溶融した後、融液(L1)が目標温度に達するまで、融液(L1)を昇温させること、
を含むことが好ましく、また、
融液(L1)の温度が目標温度に達した後の温度平衡時間が、0時間以上2時間以下であることが好ましい。
【0143】
また、実施例1~30に示される結果から、本開示のSiC光触媒粒子は、例えば、以下の要件を満たす。すなわち、本開示のSiC光触媒粒子は、
第1ファセット面と、前記第1ファセット面を囲む少なくとも1種以上の第2ファセット面とを有し、
10.00%以下の積層欠陥密度を有し、かつ
0.01m2/g以上20.0m2/g以下のBET比表面積を有する。