(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119781
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】プラスチックボトルおよび充填製品
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20240827BHJP
B65D 85/72 20060101ALI20240827BHJP
A23L 2/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B65D1/02 233
B65D85/72 200
A23L2/00 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024025896
(22)【出願日】2024-02-22
(31)【優先権主張番号】P 2023026386
(32)【優先日】2023-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】309007911
【氏名又は名称】サントリーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】松山 智洋
(72)【発明者】
【氏名】高木 雄一
(72)【発明者】
【氏名】松尾 拓哉
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 直也
【テーマコード(参考)】
3E033
3E035
4B117
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033AA02
3E033BA15
3E033BA16
3E033BA18
3E033CA05
3E033DA03
3E033DB01
3E033DD05
3E033EA03
3E033EA04
3E033EA05
3E033EA06
3E033FA03
3E033GA02
3E035AA03
3E035BA04
3E035BC02
3E035BD04
3E035CA03
4B117LE10
4B117LP16
4B117LP17
(57)【要約】
【課題】耐圧性と成形性とを両立しうるプラスチックボトル、および、当該プラスチックボトルを用いた充填製品を実現する。
【解決手段】底面2側が有底筒状に形成されたプラスチックボトルであって、底面2の中央に設けられた突入部21、突入部21を包囲する接地部22、突入部21と接地部22とを接続する接続部23、および、突入部21と底面2の外周との間に延びる複数の溝部24、を備え、接続部23が、プラスチックボトルの外側に凸に曲面であり、底面2の外周側における溝部24の端部24aの、接地部22を基準とする高さH2が、接地部22を基準とする突入部21の高さH1より高い。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面側が有底筒状に形成されたプラスチックボトルであって、
前記底面の中央に設けられた突入部、
前記突入部を包囲する接地部、
前記突入部と前記接地部とを接続する接続部、および、
前記突入部と前記底面の外周との間に延びる複数の溝部、を備え、
前記接続部が、前記プラスチックボトルの外側に凸に曲面であり、
前記底面の外周側における前記溝部の端部の、前記接地部を基準とする高さが、前記接地部を基準とする前記突入部の高さより高いプラスチックボトル。
【請求項2】
前記接地部の直径が、前記底面の外接円の直径の65%以上80%以下である請求項1に記載のプラスチックボトル。
【請求項3】
それぞれの前記溝部の周方向の最大幅が、前記底面の外周の長さの5%以上7%以下である請求項1または2に記載のプラスチックボトル。
【請求項4】
重量が14g以上23g以下である請求項1または2に記載のプラスチックボトル。
【請求項5】
リサイクル材を含む請求項1または2に記載のプラスチックボトル。
【請求項6】
底面側が有底筒状に形成されたプラスチックボトルであって、
前記底面の中央に設けられた突入部、
前記突入部を包囲する接地部、
前記突入部と前記接地部とを接続する接続部、および、
前記突入部と前記底面の外周との間に延びる複数の溝部、を備え、
前記接続部が、前記プラスチックボトルの外側に凸に曲面であり、
前記底面の外周側における前記溝部の端部の、前記接地部を基準とする高さが、前記接地部を基準とする前記突入部の高さより高いプラスチックボトルに、内容物が充填されており、
前記内容物が凍結している充填製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックボトル、および、当該プラスチックボトルに内容物が充填されている充填製品に関する。
【背景技術】
【0002】
飲料などの液体製品を流通、販売、および保管などに供するための容器として、プラスチックボトルが汎用されている。これらの液体製品は、プラスチックボトルに充填され、密封された状態で、流通等に供される。容器が密封されているため、液体製品の状態が変化することによって内圧が上昇すると、プラスチックボトルに対して内側からの応力が加えられるため、かかる応力に耐えうるプラスチックボトルが提案されている。
【0003】
たとえば、特開2007-8506号公報(特許文献1)には、底部に特定の形状を設けることによって、レトルト処理における120~130℃の加熱条件下においても底部の反転変形(いわゆるバックリング)を生じにくい樹脂製壜体が開示されている。また、特開2009-208813号公報(特許文献2)には、底部に上げ底部を有し、当該上げ底部に補強リブが設けられているプラスチックボトルが開示されている。特許文献2のプラスチックボトルでは、通常の圧力上昇や飲料の高温充填時には上げ底部分の形状が確実に維持されるとともに、二次発酵などに起因する想定外の圧力上昇時には、当該上げ底部分が反転して圧力が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-8506号公報
【特許文献2】特開2009-208813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1および2のように、内圧の上昇に耐えうる耐圧構造について従来検討されてきたが、耐圧構造と容器の成形性との両立については改善の余地があった。特に、特許文献1および2のいずれにおいても、容器の底面にドーム状の耐圧構造が設けられているが、このようなドーム構造は、薄肉に成形することが難しい場合があった。これは、次に説明する理由による。
【0006】
プラスチックボトルを延伸ブロー成形する過程で、樹脂材料は、まず、ロッドにより延伸されて金型のドーム構造に対応する部分に上方から接触する。このとき樹脂材料は、金型に接触した際に温度が低下し、流動性が低下する。次に樹脂材料は、流動性が低下した状態でドーム構造に沿って水平方向に流れることになる。すなわち、従来のドーム構造を有するプラスチックボトルの成形では、樹脂材料の流動性が低下した状態で、樹脂材料の流れ方向が下方流れ(ロッド延伸による。)から水平流れ(ドーム構造に沿うことによる。)に変更されるため、流動性の観点で不利な条件での成形が強いられる。そのため、従来のプラスチックボトルでは、底部において樹脂材料が満遍なく行きわたらない事態が生じやすく、これによってバーストなどの不具合が生じる場合があった。
【0007】
そこで、耐圧性と成形性とを両立しうるプラスチックボトル、および、当該プラスチックボトルを用いた充填製品の実現が求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るプラスチックボトルは、底面側が有底筒状に形成されたプラスチックボトルであって、前記底面の中央に設けられた突入部、前記突入部を包囲する接地部、前記突入部と前記接地部とを接続する接続部、および、前記突入部と前記底面の外周との間に延びる複数の溝部、を備え、前記接続部が、前記プラスチックボトルの外側に凸に曲面であり、前記底面の外周側における前記溝部の端部の、前記接地部を基準とする高さが、前記接地部を基準とする前記突入部の高さより高いことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、プラスチックボトルの耐圧性と成形性とを両立しうる。そのため、たとえば、プラスチックボトルの肉厚を従来に比べて低減しながら、バックリングを回避でき、これによって省資源化に寄与する。
【0010】
また、本発明に係る充填製品は、底面側が有底筒状に形成されたプラスチックボトルであって、前記底面の中央に設けられた突入部、前記突入部を包囲する接地部、前記突入部と前記接地部とを接続する接続部、および、前記突入部と前記底面の外周との間に延びる複数の溝部、を備え、前記接続部が、前記プラスチックボトルの外側に凸に曲面であり、前記底面の外周側における前記溝部の端部の、前記接地部を基準とする高さが、前記接地部を基準とする前記突入部の高さより高いプラスチックボトルに、内容物が充填されており、前記内容物が凍結していることを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、プラスチックボトルに十分な耐圧性を付与してあるので、内容物の凍結に伴う内圧上昇によるプラスチックボトルの変形を抑制しやすい。これによって、内容物が凍結している充填製品を、流通等に好適に供することができる。また、耐圧性を維持しながらプラスチックボトルの肉厚を従来に比べて低減できるので、包材を省資源化した充填製品を提供できる。
【0012】
以下、本発明の好適な態様について説明する。ただし、以下に記載する好適な態様例によって、本発明の範囲が限定されるわけではない。
【0013】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、前記接地部の直径が、前記底面の外周の直径の65%以上80%以下であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、耐圧性と成形性とを両立し、かつ安定的に自立しやすいプラスチックボトルを提供できる。
【0015】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、それぞれの前記溝部の周方向の最大幅が、前記底面の外周の長さの7%以上21%以下であることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、耐圧性と成形性とを両立し、かつ搬送適性があるプラスチックボトルを提供できる。
【0017】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、重量が14g以上23g以下であることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、耐圧性と成形性とを両立し、かつ省資源化されたプラスチックボトルを提供できる。
【0019】
本発明に係るプラスチックボトルは、一態様として、リサイクル材を含むことが好ましい。
【0020】
この構成によれば、プラスチックボトル外観が、当該プラスチックボトルの用途において問題になることが少ない。また、原料選択の自由度が高くなる。
【0021】
本発明のさらなる特徴と利点は、図面を参照して記述する以下の例示的かつ非限定的な実施形態の説明によってより明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】第一の実施形態に係るプラスチックボトルの正面図である。
【
図2】第一の実施形態に係るプラスチックボトルの底部の正面断面図である。
【
図3】第一の実施形態に係るプラスチックボトルの底面図である。
【
図4】従来技術に係るプラスチックボトルの底部の正面断面図である
【
図5】第二の実施形態に係るプラスチックボトルの正面図である。
【
図6】第二の実施形態に係るプラスチックボトルの横断面図(
図5のVI-VI線における断面図)である。
【
図7】第二の実施形態に係るプラスチックボトルの横断面図(
図5のVII-VII線における断面図)である。
【
図8】第二の実施形態に係るプラスチックボトルの底面図である。
【
図9】第二の実施形態に係るプラスチックボトルの底部の断面図(
図8のIX-IX線における断面図)である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[第一の実施形態]
本発明に係るプラスチックボトルおよび充填製品の第一の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るプラスチックボトルを、飲料を充填して使用されるプラスチックボトル1(以下、単にボトル1という。)に適用した例について説明する。また、本発明に係る充填製品を、ボトル1に飲料が充填されている紅茶飲料製品に適用した例についても説明する。
【0024】
〔ボトルの構成〕
図1に示すように、本実施形態に係るボトル1は、底面2側が有底円筒状に形成されたプラスチックボトルである。より詳細には、ボトル1は、口部11と、口部11と連続し底面2の方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部12と、肩部12と連続する円筒状の胴部13と、胴部13に連続する底部14と、を備える(
図1)。なお、底部14のうち、ボトル1を設置する際に接地する部分を底面2と定義する。
【0025】
本実施形態に係るボトル1は、いわゆるペットボトルである。ボトル1は、二軸延伸ブロー成形などの延伸成形法によってプリフォームを延伸して得られる。本実施形態では、ボトル1はポリエチレンテレフタレート製である。なお、ボトル1を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレートが代表的であるが、ポリエチレンやポリプロピレンなどの他のプラスチック材料であってもよい。また、いずれのプラスチック材料を用いる場合であっても、その由来は限定されず、石油化学プロセスにより合成されたもの(いわゆるバージン材)、植物原料に由来するもの、使用済み容器等に由来するもの(いわゆるリサイクル材)、など、またはこれらの混合物でありうる。なお、リサイクル材とは、容器や包装材などの成形体として市場流通に供された後に、原料として使用可能なプラスチック材料に再生されたものをいう。かかる再生の方法としては、メカニカルリサイクルやケミカルリサイクルなどの手法が例示される。
【0026】
ボトル1の容量は特に限定されず、一般的に流通している280mL、350mL、500mLなど、200mL~2L程度とすることができ、250~750mLであることが好ましい。以下の説明では、ボトル1の満注容量が646mLである例について特に説明する。なお、図示した例において、ボトル1の全高は209mmであり、ボトル1の直径D1は71.5mmであり、ボトル1の周長は225mmである。
【0027】
ボトル1は、従来のボトルに比べて薄肉のボトルであってもよい。具体的には、ボトル1の満注容量(mL単位)に対するボトル1の重量(g単位)の比率が0.022g/mL以上0.092g/mL以下であることが好ましく、0.022以上0.058g/mL以下であることがより好ましい。満注容量に対する重量の比率が上記の範囲にあると、適切な強度を確保できる範囲で樹脂の使用量を十分に減らすことができ、ボトル1の省資源化および軽量化に資する。
【0028】
本実施形態に係るボトル1は、重量が15gである。また、前述のようにボトル1の満注容量が646mLであるので、ボトル1の満注容量に対するボトル1の重量の比率は0.023である。なお、この例のようにボトル1の重量が14g以上であると、ボトル1の肉厚を十分に確保しやすいため、強度および歩留まりの観点で良好である。また、ボトル1の重量が23g以下であると、省資源化の観点で好適である。
【0029】
なお、所望の重量のボトル1の重量を製造することは、当該所望の重量のプリフォームを延伸してボトル1を製造することによって得られうる。すなわち、14g以上23g以下のプリフォームを用いてボトル1を製造することが好ましい。
【0030】
ボトル1に収容される液体は特に限定されず、たとえば、清涼飲料水(炭酸飲料、果実飲料、紅茶飲料、コーヒー飲料、茶系飲料、ミネラルウォーター、豆乳類、野菜飲料、スポーツ飲料、ココア飲料など)、アルコール飲料、乳飲料などの飲料、スープなどの液体食品、ソースや醤油などの液体調味料、などが例示される。ボトル1は従来のプラスチックボトルに比べて耐圧性が高いため、内容物を凍結させる使い方をしても、ボトル1が破損しにくい。そのため、凍結状態の飲料の流通に適する。
【0031】
口部11、肩部12、および胴部13の構成は、従来のペットボトルに採用されている構成と同様であるので、詳細な説明を省略する。口部11は、液体の注ぎ口であり、キャップ(不図示)と螺合可能な雄ねじが設けられている。胴部13は円筒状に構成されており、ロールラベルを貼付可能な領域である。胴部13にはいくつかの周溝が設けられている。肩部12は、口部11と胴部13とを連続的に接続する。
【0032】
本実施形態において、底部14と胴部13とは、周溝15によって区分される。本実施形態では、周溝15は底面2から高さ13~16mmの領域に設けられる。なお、本実施形態では、胴部13に他の周溝16が設けられていてもよい。また、胴部13と底部14とは、周溝によって区分されるとは限らず、たとえば、略円筒状の胴部13と、当該略円筒状の径が底面2に向けて縮径しはじめる高さ方向の位置のうち、最も底面2に近い位置を、胴部13と底部14との境界として定義しうる。
【0033】
〔底面の構成〕
底面2には、突入部21、接地部22、接続部23、および溝部24が設けられている(
図2、
図3)。なお、
図2では、ボトル1を机などの平面の上に設置したときの当該平面を、仮想平面Pとして示している。
【0034】
突入部21は、底面2の中央の、接地部22からボトル1の内側に向けて突入した位置に設けられている。本実施形態において、仮想平面Pを基準とする突入部21の高さH1(接地部22を基準とする突入部21の高さと同義である。)は、6.7mmである。突入部21は、仮想平面Pと略平行に設けられており、したがって、ボトル1を机などの平面の上に設置したときに、当該平面と突入部21が平行になる。なお、口部11の側から見ると、突入部21が底面2と同心円状に配置されている。
【0035】
接地部22は、突入部21を包囲するように環状に設けられている。接地部22は、ボトル1を机などの平面の上に設置したときに、現に当該平面に接する領域である。なお、底面2が平面に接するとの旨の上記の記載は、底面2の全体が当該平面に接することを意味するのではなく、底面2の一部たる接地部22が当該平面に接することを意味する。
【0036】
本実施形態において、接地部22の直径D2は54.9mmである。したがって、接地部22の直径D2は、底面2の外周2a(底面の外接円の一例である。)の直径D1(ボトル1の直径D1に等しい。)の77%である。なお、接地部22は溝部24によって分断されており、連続的な環を形成しているわけではないが、分断部分を含めた仮想円Cの直径として接地部22の直径を捉えている。
【0037】
この例のように、接地部22の直径が底面2の外周2aの直径の65%以上であると、ボトル1が安定的に自立しやすいため好ましい。また、接地部22の直径が底面2の外周2aの直径の80%以下であると、延伸ブロー成形法によってボトル1を製造する際に、底面2に穴が空く不具合(いわゆるバースト)などが生じにくいので、ボトル1の歩留まりが高くなりやすい。
【0038】
接続部23は、突入部21と接地部22とを接続する部位である。より詳細には、接続部23は、突入部21の外周と接地部22とを連続的に接続する曲面として形成されており、当該曲面はボトル1の外側に凸である。このことも、底面2におけるバーストなどの不具合を回避することに寄与している。これは、バーストなどの発生が、典型的には、延伸ブロー成形のプロセス中に、金型の底面2に対応する部分に接触した樹脂材料の温度が低下して流動性が損なわれ、底面2の全体に満遍なく樹脂材料が行きわたりにくくなる場合があることに起因するところ、接続部23をボトル1の外側に凸の曲面として形成することで、突入部21、接続部23、および接地部22が連続的に接続されて、樹脂材料が円滑に流れやすくなるためである。
【0039】
溝部24は、突入部21と底面2の外周2aとの間に延びる溝状の部位であり、複数の溝部24(本実施形態では八つ。)が放射状に設けられている。溝部24は、接地部22および接続部23を横切って延在している。底面2の外周2a側における溝部24の端部24aは、仮想平面Pを基準とする高さH2(接地部22を基準とする高さと同義である。)が10mmの位置にある。したがって、溝部24の端部24aの高さは、突入部21の高さより高い。
【0040】
また、本実施形態では、溝部24が接地部22を分断する位置において、溝部24の周方向の幅が最大になる。当該幅は、11.3mmである。したがって、溝部24の周方向の最大幅Wは、底面2の外周2aの長さ(ボトル1の周長に等しい。)の5%である。この例のように、溝部24の周方向の最大幅Wが底面2の外周2aの長さの5%以上であると、溝部24によって底面2の耐圧性が向上しやすい。また、溝部24の周方向の最大幅Wが底面2の外周2aの長さの7%以下であると、接地部22の幅を十分に確保できるので、ボトル1が安定的に自立しやすい。
【0041】
なお、本実施形態において、溝部24は突入部21の外周と底面2の外周2aとを連続的に接続する曲面として形成されており、当該曲面はボトル1の外側に凸である。
【0042】
従来のボトルの底面3では、突入部31がボトルの内側に凸の曲面として形成されていることが一般的だった(
図4)。ボトルの内側に凸の形状は、内容物の膨張による内圧の増加に対する耐力の観点では有利だが、延伸ブロー成形のプロセス中に樹脂が流れにくい構造であるため、底面3におけるバーストなどの不具合を回避する観点では不利であった。本実施形態に係るボトル1では、ボトル1の外側に凸の曲面を採用することによって、従来のボトルに比べて成形性を改善すると同時に、溝部24の端部24aの高さを突入部21の高さより高くすることによって、従来のボトルと同等の耐力を実現した。
【0043】
〔飲料製品の構成およびボトルの作用効果〕
本実施形態に係る紅茶飲料製品(充填製品の例である。)は、ボトル1に紅茶飲料(内容物の例である。)が充填されている製品である。ボトル1の満注容量が646mLであるところ、室温で600mLの紅茶飲料が充填されており、その充填率は93%である。
【0044】
本実施形態に係る紅茶飲料製品は、紅茶飲料が凍結した状態で、流通、保管、および販売(以下、「流通等」という。)に供される。
【0045】
紅茶飲料は水を主成分とする液体であるので、凍結すると、凍結前の状態より体積が増加する。したがって、流通等に供される紅茶飲料製品において、内容物の体積は室温における体積(600mL)より大きい。凍結に伴う紅茶飲料の膨張によって、ボトル1の内側から外側に向く応力が発生するが、本実施形態に係るボトル1では底面2に上記の構成の突入部21、接地部22、接続部23、および溝部24を設けてあるので、当該応力による変形(いわゆるバックリング)を好適に抑制しうる。そのため、バックリングに起因して底面2が突出してボトル1の自立が妨げられる事態が生じにくい。これによって、紅茶飲料を凍結状態で好適に流通等に供しうる。また、本実施形態に係るボトル1は、凍結状態での流通等に供されうる強度を実現しつつ、薄肉化しやすい。
【0046】
また、本実施形態に係るボトル1は、延伸ブロー成形法によってボトル1を製造する際に、底面2にバーストなどの不具合が生じにくい構造であるため、この点においても薄肉化に適している。すなわち、ボトル1は総じて、凍結状態での流通等に供されうる強度と、生産時の歩留まりと、を両立しながら薄肉化しうるプラスチックボトルであり、省資源化に寄与しうる。
【0047】
[第二の実施形態]
本発明に係るプラスチックボトルおよび充填製品の第二の実施形態について、図面を参照して説明する。以下では、本発明に係るプラスチックボトルを、飲料を充填して使用されるプラスチックボトル4(以下、単にボトル4という。)に適用した例について説明する。なお、第一の実施形態と共通する構成要素は説明を省略または簡略化する。
【0048】
〔ボトルの構成〕
図5に示すように、本実施形態に係るボトル4は、底面5側が筒状に形成されたプラスチックボトルである。より詳細には、ボトル4は、口部41と、口部41と連続し底面5の方向に向かうにつれて徐々に拡径する肩部42と、肩部42と連続する筒状の胴部43と、胴部43に連続する底部44と、を備える(
図5)。なお、底部44のうち、ボトル4を設置する際に接地する部分を底面5と定義する。本実施形態において、底部44と胴部43との境界は、胴部43の一つの面に正対する方向から見た正面図(
図5)においてボトル4の幅が底面5に向けて縮小しはじめる高さ方向の位置として定義される。
【0049】
胴部43は、略四角筒状であり、さらに上側部分43aと下側部分43bとに区分される。上側部分43aは、横断面(
図6)において、四角形の角部分が丸み付けされた形状を有する。下側部分43bは、横断面(
図7)において、四角形が面取りされた略八角形の形状を有する。胴部43には、胴部43の外周にわたる周溝45が設けられている。なお、複数の周溝45の深さは、それぞれ独立に決定されうる。
【0050】
口部41は、液体の注ぎ口であり、キャップ(不図示)と螺合可能な雄ねじが設けられている。胴部43のうち上側部分43aは丸み付けされており、ロールラベルを貼付可能な領域である。胴部43のうち下側部分43bは角ばった形状を有し、この形状は、ボトル4がコンベア等で搬送される際に転倒しにくくなることに寄与する。肩部42は、口部41と胴部43とを連続的に接続する。
【0051】
ボトル4がペットボトルである点、使用されうる材料、取り得る容量、肉厚(満注容量に対するボトル4の重量)、ボトル4の重量、ボトル4の製造方法、および、ボトル4に収容されうる液体について、第一の実施形態に係るボトル1と同様である。
【0052】
〔底面の構成〕
底面5には、突入部51、接地部52、接続部53、および溝部54が設けられている(
図8)。なお、
図8では、ボトル4を机などの平面の上に設置したときの当該平面を、仮想平面Pとして示している。
【0053】
突入部51は、底面5の中央の、接地部52からボトル1の内側に向けて突入した位置に設けられている。突入部51は、仮想平面Pと略平行に設けられており、したがって、ボトル1を机などの平面の上に設置したときに、当該平面と突入部51が平行になる。
【0054】
接地部52の構成は、第一の実施形態における接地部22と概ね同様であるが、接地部52の直径の好ましい範囲についての定義が異なる。ボトル4が安定的に自立しやすくする観点では、接地部52の直径が底面2の外接円の直径の65%以上であることが好ましい。ボトル4の歩留まり向上の観点では、接地部52の直径が底面5の外接円の直径の80%以下であることが好ましい。
【0055】
接続部53および溝部54の構成は、第一の実施形態における接続部23および溝部24と同様である。
【0056】
〔ボトルの作用効果〕
本実施形態に係るボトル4は、第一の実施形態に係るボトル1と同様の作用効果を奏する。すなわち、ボトル4は、収容されている飲料が凍結した際に底面5のバックリングが生じにくく、かつ、成形時にバースト等の不具合が生じにくい。本実施形態に係るボトル4も、飲料を凍結状態で流通等に供するための容器として好適である。
【0057】
〔その他の実施形態〕
最後に、本発明に係るプラスチックボトルおよび充填製品のその他の実施形態について説明する。なお、以下のそれぞれの実施形態で開示される構成は、矛盾が生じない限り、他の実施形態で開示される構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0058】
上記の第一の実施形態では、接地部22の直径が底面2の外周2aの直径の77%である構成を例として説明し、接地部の直径が底面の外周の直径の65%以上であることおよび80%以下であることがそれぞれ好ましい旨を述べた。しかし、本発明に係るプラスチックボトルにおいて、底面の外接円の直径に対する接地部の直径の割合は、上記の範囲に限定されない。
【0059】
上記の第一の実施形態では、溝部24の周方向の最大幅Wが底面2の外周2aの長さの5%である構成を例として説明し、溝部の周方向の最大幅が底面の外周の長さの5%以上であることおよび7%以下であることがそれぞれ好ましい旨を述べた。しかし、本発明に係るプラスチックボトルにおいて、底面の外周の長さに対する溝部の周方向の最大幅の割合は、上記の範囲に限定されない。
【0060】
上記の第一の実施形態では、ボトル1の重量が15gである構成を例とて説明し、ボトル1の重量が14g以上であることおよび23g以下であることが好ましい旨を述べた。しかし、本発明に係るプラスチックボトルの重量は、上記の範囲に限定されない。
【0061】
上記の第一の実施形態および第二の実施形態に見られるように、本発明に係るプラスチックボトルは、略円筒状であってもよいし、略角筒状であってもよい。また、その他の形状であってもよい。
【0062】
上記の第一の実施形態および第二の実施形態では、接地部が環状である構成を例として説明した。しかし本発明において、接地部は突入部を包囲する位置に設けられていればよく、その形状は限定されない。
【0063】
その他の構成に関しても、本明細書において開示された実施形態は全ての点で例示であって、本発明の範囲はそれらによって限定されることはないと理解されるべきである。当業者であれば、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜改変が可能であることを容易に理解できるであろう。したがって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で改変された別の実施形態も、当然、本発明の範囲に含まれる。
【実施例0064】
以下では、実施例を示して本発明をさらに説明する。ただし、以下の実施例は本発明を限定しない。
【0065】
〔試験1:耐バースト性評価〕
(実施例1)
上記の第一の実施形態に係るボトル1と同一の外形形状のボトルを、重量15gのプリフォームを用いて成形した。このとき、金型の温度条件および延伸ロッドの運転条件を調整して、底部重量を0.9gに調整した。
【0066】
(比較例1)
底部の外形を
図4に示す従来技術のボトルと同一にしたほかは、実施例1と同様にボトルを成形した。
【0067】
(評価)
実施例1および比較例1のボトルを各100本作成して、それぞれの底部を目視で観察した。実施例1では、バーストが発生しているボトルは存在しなかった。一方、比較例では、40本のボトルでバーストが発生していた。すなわち、比較例1では40%のボトルにおいてバーストが発生した。
【0068】
(小括)
実施例1ではバーストが生じなかったのに対し、比較例1では40%のボトルにおいてバーストが発生した。このことより、実施例1のボトル形状ではバーストが生じにくいことが示された。なお当試験では、バースト発生率の違いが明確に現れることを期待して、底部重量(0.9g)を通常流通するボトルの底部重量に比べて小さく設定し、あえてバーストが生じやすい条件において試験を行った。実施例1のボトルでは、通常より厳しい条件であるにもかかわらず、バーストが生じなかったといえる。
【0069】
〔試験2:耐バックリング性評価(第一の実施形態)〕
(実施例2)
上記の第一の実施形態に係るボトル1と同一の外形形状のボトルを、重量15.0gのプリフォームを用いて成形した。このとき、金型の温度条件および延伸ロッドの運転条件を調整して、底部重量を1.6gに調整した。成形されたボトルに、Brix値0の紅茶飲料を600mL充填し、口部をキャップで封止した。紅茶飲料が充填されたボトルを、-17℃で24時間静置し、紅茶飲料を完全に凍結させて、サンプルを得た。
【0070】
(実施例3)
底部重量を1.3gに調整したほかは、実施例2と同様に試験を行った。なお、実施例2の底部重量は、実施例2におけるプリフォーム重量、ボトル形状、およびボトル容積の組合せにおいて、通常流通する製品における平均的な底部重量であり、実施例3の底部重量は、通常流通する製品における最低水準の底部重量である。
【0071】
(評価)
実施例2および実施例3の各例について、それぞれ10本のサンプルを作成した。各サンプルを目視で観察してバックリングの有無を確認するとともに、底部を接地面として机の上に設置したときの安定性を評価した。表1では、評価結果をA~Cの四水準で示しており、各水準の基準は下記の通りである。また、表1では、各例について、A~Cの各水準に属するサンプルの数を示している。
A:目視でバックリングが認められず、安定に自立する。
B:自立させたボトルにぐらつきが見られるが、ボトルの転倒には至らない。
C:自立させたボトルが転倒することがある。
【0072】
表1:耐バックリング性評価(第一の実施形態)
【表1】
【0073】
(小括)
実施例2および実施例3のいずれのボトルについても、凍結させたサンプルの転倒が見られなかった。特に、通常流通する製品における最低水準の底部重量である実施例3においても転倒が見られなかったことから、上記の第一の実施形態に係る外形形状を有するボトルを、凍結させた製品の流通等に好適に使用できると期待される。
【0074】
〔試験3:耐バックリング性評価(第二の実施形態)〕
(実施例4)
上記の第二の実施形態に係るボトル4と同一の外形形状のボトルを、重量18.0gのプリフォームを用いて成形した。このとき、金型の温度条件および延伸ロッドの運転条件を調整して、底部重量を2.2gに調整した。成形されたボトルに、Brix値4.45±0.15のスポーツ飲料を、ヘッドスペース容量が29mLになるように充填し、口部をキャップで封止した。なお、ヘッドスペース容量とは、ボトルに充填されたスポーツ飲料の液面とキャップとの間に存在する空気の体積である。スポーツ飲料が充填されたボトルを、-17℃で24時間静置し、スポーツ飲料を完全に凍結させて、サンプルを得た。
【0075】
(実施例5)
スポーツ飲料の充填量を、ヘッドスペース容量が23mLになるように調整したほかは、実施例4と同様に試験を行った。なお、実施例4のヘッドスペース容量は、実施例4におけるプリフォーム重量、ボトル形状、およびボトル容積の組合せにおいて、通常流通する製品における平均的な値であり、実施例5のヘッドスペース容量は、通常流通する製品における最低水準の値である。
【0076】
(実施例6)
底部重量を1.9gに調整したほかは、実施例4と同様に試験を行った。なお、実施例4の底部重量は、実施例4におけるプリフォーム重量、ボトル形状、およびボトル容積の組合せにおいて、通常流通する製品における平均的な底部重量であり、実施例6の底部重量は、通常流通する製品における最低水準の底部重量である。
【0077】
(実施例7)
スポーツ飲料の充填量を、ヘッドスペース容量が23mLになるように調整したほかは、実施例6と同様に試験を行った。
【0078】
(評価)
実施例4~7の各例について、各例のサンプルを3本ずつとしたほかは試験2と同様に評価を行った。
【0079】
表2:耐バックリング性評価(第二の実施形態)
【表2】
【0080】
(小括)
実施例4~7のいずれのボトルについても、凍結させたサンプルの転倒が見られなかった。特に、底部重量およびヘッドスペースの容量について、実際に流通しうる範囲のうちバックリングの観点で最も厳しい水準の値を取る条件とした実施例5~7においても転倒が見られなかったことから、上記の第二の実施形態に係る外形形状を有するボトルを、凍結させた製品の流通等に好適に使用できると期待される。