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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119798
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】タービンシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   F23L 15/00 20060101AFI20240827BHJP
   F22B 33/18 20060101ALI20240827BHJP
   F22D 1/36 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
F23L15/00 A
F22B33/18
F22D1/36
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024073672
(22)【出願日】2024-04-30
(62)【分割の表示】P 2021117148の分割
【原出願日】2016-06-03
(31)【優先権主張番号】1509651.4
(32)【優先日】2015-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(71)【出願人】
【識別番号】517423006
【氏名又は名称】キャッスル ヨーロピアン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 博子
(74)【代理人】
【識別番号】100168871
【弁理士】
【氏名又は名称】岩上 健
(72)【発明者】
【氏名】コヴァチェヴィッチ アレクサンダル
(57)【要約】
【課題】復水蒸気タービンを採用した発電システムを提供する。
【解決手段】発電システム(200)がボイラ(201)からの水蒸気が供給される復水蒸気タービン(210)を含み、ボイラ燃焼プロセスのための供給空気(202)がボイラへの流入前に少なくとも1つの圧縮機を備えた少なくとも1つの熱ポンプ(258)を含む熱ポンプシステム(254)によって予熱される。発電システムを用いて発電する方法もまた、開示される。熱を燃焼プロセスのガスから抽出する方法および装置もまた、開示される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電システムであって、
ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービンを含み、前記ボイラの燃焼プロセスのための供給空気が前記ボイラへの流入前に、少なくとも1つの熱ポンプを含む熱ポンプシステムによって予熱される、発電システム。
【請求項2】
前記熱ポンプシステムは、前記復水蒸気タービンからの前記蒸気を凝縮させるために用いられる冷却システムから熱を抽出する、請求項1記載の発電システム。
【請求項3】
前記熱ポンプシステムは、前記発電システムの煙道ガス冷却・凝縮プロセスから熱を抽出する、請求項1又は2記載の発電システム。
【請求項4】
前記熱ポンプシステムは、
回転機器からの廃熱、変換機器からの廃熱、前記蒸気タービンの冷却からの廃熱又は灰処分からの廃熱のうちの少なくとも1つから熱を抽出する、請求項1~3のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項5】
前記熱ポンプシステム又は他の熱交換システムは、太陽エネルギー源、地熱エネルギー源又は工場プロセスエネルギー源から成る群から選択された1つ又は複数のエネルギー源のうちの少なくとも1つから熱を抽出する、請求項1~4のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項6】
少なくとも1つの可変駆動熱ポンプが前記熱ポンプシステムで用いられる、請求項1~5のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項7】
前記熱ポンプシステムの前記熱ポンプは全て、可変駆動圧縮機を採用している、請求項6記載の発電システム。
【請求項8】
前記ボイラは、バイオマス燃焼ボイラである、請求項1~7のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項9】
前記ボイラは、流動床バイオマス燃焼ボイラである、請求項8記載の発電システム。
【請求項10】
前記ボイラは、流動床バイオマス燃焼ボイラであり、燃焼温度は、NOX生成を最小限に抑えるよう制御される、請求項9記載の発電システム。
【請求項11】
前記ボイラからの前記煙道ガスの熱は、前記ボイラの給水を加熱するために用いられる、請求項1~10のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項12】
前記復水蒸気タービンは、ボイラ給水予熱目的で蒸気抽出施設を備えていない、請求項8記載の発電システム。
【請求項13】
前記煙道ガス中の水は、冷却によって前記ボイラ給水からかつ/あるいは前記冷却により熱ポンプシステムの1つ又は複数の熱ポンプの熱抽出側から凝縮される、請求項11又は12記載の発電システム。
【請求項14】
前記煙道ガス中の前記水は、実質的に完全に凝縮される、請求項13記載の発電システム。
【請求項15】
前記煙道ガス中の水は、二段装置で凝縮され、前記復水蒸気タービンから戻ってきた凝縮水は、先ず最初に、直接に又は熱ポンプ装置を介して前記煙道ガスのための凝縮器/スクラバ装置で熱交換し、次に前記凝縮器/スクラバのための予備冷却器で前記ボイラから出た前記煙道ガスと熱交換する、請求項13又は14記載の発電システム。
【請求項16】
前記煙道ガスからの前記ガスおよび水のうちの少なくとも一方からの熱は、前記予備冷却器および前記凝縮器/スクラバ後に、前記ボイラに供給される燃料を乾燥させ又は加熱するために用いられる、請求項15記載の発電システム。
【請求項17】
前記復水蒸気タービンは、発電のために発電機に結合されている、請求項1~16のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項18】
変圧器が送電網への給電のために前記発電機に接続されている、請求項17記載の発電システム。
【請求項19】
前記復水蒸気タービンから戻っている前記凝縮水は、前記ボイラへの供給前に前記ボイラからの前記煙道ガスからの熱によってのみ加熱される、請求項1~18のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項20】
前記発電機の冷却および前記変圧器の冷却のうちの少なくとも一方から提供されるエネルギーが直接的熱交換により又は前記熱ポンプシステムの熱ポンプを介して前記復水タービンから戻っている前記凝縮水を予熱するために用いられる、請求項17又は18記載の発電システム。
【請求項21】
2つ以上の復水蒸気タービンが設けられている、請求項1~20のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項22】
2つ以上のボイラが設けられている、請求項1~21のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項23】
カーボン捕捉ユニットを更に含む、請求項1~22のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項24】
前記発電システムを始動するとともに/あるいは増強するとともにエンジン又は他の手段によって動力供給される発電機を更に含む、請求項1~23のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項25】
前記熱ポンプシステムの熱ポンプのための作業流体は、二酸化炭素、アンモニア、有機流体およびハロカーボンから成る群から選択される、請求項1~24のうちいずれか一に記載の発電システム。
【請求項26】
発電方法であって、前記方法は、
ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービンを含む発電システムを用意するステップを含み、前記ボイラの燃焼プロセスのための供給空気が前記ボイラへの流入前に、少なくとも1つの熱ポンプを含む熱ポンプシステムによって予熱される、発電方法。
【請求項27】
前記発電システムは、請求項1~25のうちいずれか一に記載の発電システムである、請求項26記載の発電方法。
【請求項28】
前記熱ポンプシステムの少なくとも1つの熱ポンプはまた、前記発電システム内に設けられていて調整された温度で作動されることにより利益をもたらす任意の機器に能動的冷却作用を及ぼし、
オプションとして、前記能動的冷却は、前記復水蒸気タービン、発電機、変圧器又は前記発電システムの他の回転機器のうちの少なくとも1つに提供される、請求項27記載の発電方法。
【請求項29】
燃焼プロセスのガスから熱を抽出する方法であって、前記方法は、
前記ガスを熱交換によって冷却して存在する水を凝縮させ、そして熱ポンプによって少なくとも凝縮相変化から抽出された熱をアップグレードするステップを含む、方法。
【請求項30】
燃焼システムのガスから熱を抽出する装置であって、
前記ガスを凝縮温度まで冷却する熱交換システムと、
凝縮相変化から抽出された熱をアップグレードする少なくとも1つの熱ポンプとを有する、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービンを採用した発電システムの提供、特に、ボイラへの燃料としてバイオマス又は一次燃料を採用する発電システムの提供に関する。
【背景技術】
【0002】
復水蒸気タービンを用いる従来型の蒸気サイクル発電プラントは、ボイラ給水をボイラ内での使用のための適当な温度まで昇温させるために蒸気タービンからの蒸気抽出を利用している。
【0003】
化石燃料ボイラでは、適当な温度は、ボイラの入口/出口面のところでの酸凝縮を回避するために比較的高い傾向がある。
【0004】
バイオマス燃料は、事実上、硫黄および他の酸性化物質がないという利点を有し、したがって、酸凝縮の恐れが大幅に軽減される。酸凝縮の恐れを生じさせる場合のあるNOX生成を制御するためにボイラ容器が加圧されるとともに火炎温度が調節される。したがって、このシステムの偏移(凝縮)点は、比較的高い温度のままである。
【0005】
最新型のボイラは、煙道ガスからのエネルギーを可能な限り最大に利用している。煙道ガスには十分な程度に酸性化ガスがない環境では、例えばバイオマス燃焼システムでは、そして火炎温度が調節される場合、システムは、煙道ガスの完全な凝縮を可能にすることさえ可能である。煙道ガスの凝縮は、燃料の潜熱を利用する可能性をもたらし、それにより低発熱量(LHV)熱効率が100%を超えるようにすることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
それにもかかわらず、蒸気サイクル発電プラントから動力を生じさせることができるオプションの範囲があるにもかかわらず、効率、融通性、エミッションおよび拡張性(スケーラビリティ)の面で改良を提供する要望が依然として存在する。
【0007】
特に二酸化炭素エミッションの面における環境に対する配慮もまた、発電プラントの設計の面においてますます今日的な意味を帯びている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、発電システムであって、
ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービンを含み、ボイラの燃焼プロセスのための供給空気がボイラへの流入前に、少なくとも1つの熱ポンプを含む熱ポンプシステムによって予熱されることを特徴とする発電システムを提供する。
【0009】
供給空気の予熱は、熱をエネルギー源、例えば低質エネルギー源から抽出する熱ポンプシステムの1つ又は複数の熱ポンプによって実施されるのが良い。有利には、低質エネルギー源は、復水蒸気タービンからの蒸気を凝縮又は復水させる(本明細書では、「凝縮」と「復水」は、区別なく使用される場合がある)ために用いられる冷却システムである。典型的な復水蒸気タービンシステムでは、この低質熱源は、典型的には、水を利用した冷却システム(「蒸気サイクル冷却水」)である。凝縮中の蒸気から抽出される熱は、通常、冷房又は冷却装置、例えば冷却塔に失われるかあるいは局部暖房(例えば、地域暖房システム)に用いられる場合がある。
【0010】
任意他の低質エネルギー源(「廃熱源」)は、熱ポンプシステムを介してアップグレードを行うために低質エネルギーを提供するために採用される場合がある。より有利には、2つ以上のエネルギー源、代表的には発電システムのエネルギー源が熱ポンプシステムによるアップグレードのためにエネルギーを提供するよう採用される。例えば、低質エネルギーは、発電システムの煙道ガス冷却・凝縮プロセスから供給される場合があり、これについては、例えば、特定の実施形態を参照して以下において更に説明する。発電システムと関連した他のエネルギー源は、回転機器(例えば、蒸気タービンによって動力供給される発電機又はエンジンもしくは発電システムを始動させるとともに/あるいは増強させる他の手段により動力供給される発電機)からの廃熱、変換機器(システムによって生じる電力を供給する1つ又は複数の変圧器)からの廃熱、蒸気タービン自体の冷却(潤滑などからの)放熱、および灰処分からの放熱のうちの1つ又は2つ以上を含む場合がある。
【0011】
熱ポンプシステムへの供給としてのこれらエネルギー源のうちの2つ又は3つ以上の使用、効率を向上させる。
【0012】
熱ポンプシステムは、熱エネルギーを貯蔵するエネルギー貯蔵装置、例えば水のタンクを含む場合がある。これは、熱ポンプシステムおよびかくして全体としての発電システムの融通性を増大させることができる。
【0013】
他の低質熱源、例えば、太陽熱(例えば、1枚又は2枚以上のソーラーパネルを介する)もしくは地熱源又は工場プロセスで用いられる冷却システムからのエネルギーを、復水蒸気タービンのための冷却システムおよびエネルギー発生システムのプラントプロセスに由来する上述の他のオプションからの熱の代替手段としてまたはこれに加えて、採用することができる。復水蒸気タービンからの蒸気を凝縮するために用いられる冷却システムからの熱を利用すると、有利には、蒸気サイクルの効率が向上する。
【0014】
ボイラ内での燃焼プロセスへの供給空気を予熱することにより、多くの利点が得られる。ボイラは、代表的には、ボイラ内の煙道ガスとの熱交換によって、燃焼プロセスへの流入に先立って到来空気を予熱するよう設計されている。煙道ガスは、例えば凝縮および酸性ガスにより生じる腐食に関する問題を回避するのに十分に高い温度に維持されなければならないので、各ボイラは、周囲空気温度の面で予想される局所条件に対処するよう設計されている。低温条件であっても空気を加熱するのに十分な能力が存在しなければならず、しかも問題を生じさせることなく排出を可能にするために許容可能な煙道ガス温度を依然として維持しなければならない。
【0015】
供給空気をボイラまたはボイラからの煙道ガス以外の手段によって選択された温度または温度範囲に加熱することが好ましいが、その理由は、これによりボイラ設計が互いに異なる天候条件または標高を有する互いに異なる場所に関して同一であることができるからである。
【0016】
可変駆動熱ポンプ(すなわち、1つまたは複数の可変駆動圧縮機を備えた熱ポンプ)の使用は、空気に供給される熱を調節して天候条件または他の変数とは無関係に所望の加熱された空気入力をボイラに提供することができるので好都合である。
【0017】
一般的に言えば、採用される熱ポンプシステムは、代表的には、複数の熱ポンプを含む。2つ以上の熱ポンプの使用が好都合である。熱ポンプは、熱品質の所要のアップグレードを可能にするよう並列かつ/あるいは直列に採用されるのが良い。熱ポンプシステムの出力は、1つまたは2つ以上のポンプをオフラインにし、1つまたは2つ以上のポンプをオンラインにすることによって所望に応じて調節できる。1つまたは2つ以上のポンプは、熱ポンプシステムの作動停止を必要とすることなく、補修または交換のためにオフラインにすることができる。熱ポンプシステムの各熱ポンプは、1つまたは2つ以上の圧縮機を有する。好ましくは、熱ポンプシステムの微調整のため、少なくとも1つの可変駆動熱ポンプが採用される。より好ましくは、採用される熱ポンプの全ては、可変駆動型(各々が1つまたは2つ以上の可変駆動圧縮機を有する)である。熱ポンプの数およびサイズは、所要のデューティ、例えば発電システムの1つまたは複数のボイラのサイズで決まる。ボイラは、代表的には、滑らかでかつ効果的な燃焼プロセスを提供するのを助けるよう数個の空気入口を有する。有利には、熱ポンプシステムは、ボイラの各空気入口について少なくとも1つの熱ポンプを含む。
【0018】
システムで採用される熱ポンプのための作業流体は、数種類の冷媒のうちの1つであって良く、かかる冷媒としては、ハロカーボン流体、有機流体、アンモニアおよび二酸化炭素が挙げられる。本発明の発電システムについて想定される温度および圧力条件に関し(代表的には、11℃から90℃を超える加熱用周囲空気)、二酸化炭素が特に有用であり、その理由は、二酸化炭素は、他の作業流体よりも高い作業圧力および温度で動作し、それにより効率的なエネルギー伝達が可能だからである。本発明で採用される熱ポンプシステムの熱ポンプは、入力と出力との間の適当な温度差が利用できる場合に3.6を超える相対成績係数(COP)で作動することができるので、他のエネルギー再利用技術と比較して高い効率を達成することができる。
【0019】
供給空気を加熱することにより、ボイラからの出力煙道ガスの温度が上昇する。供給空気温度を制御すると、その結果として、空気温度は一定であり、しかも天候および大気圧条件とは独立する。これにより、煙道ガスは、利用可能な高質エネルギー(熱)の信頼性のある源となる。有利には、煙道ガスの熱は、ボイラの給水(タービンから戻っている凝縮水およびオプションとして用いられる任意の補給水)を加熱するために用いられる。煙道ガスの温度の増大により、ボイラ給水をもしこのように構成されていなければ比較的低温のボイラ水入口温度である温度から予熱してボイラへの供給のための所要の/望ましい温度にすることができ、この場合、タービンから抽出された蒸気すなわちボイラ給水を加熱するためにタービンから分流された蒸気から追加のエネルギーを供給する従来方式は、用いられない。
【0020】
これにより、蒸気抽出施設を必要としない復水蒸気タービンを本システムに用いることができる。これは、タービンの構成が単純でありかつ所与の蒸気量から多くのエネルギーを抽出することができるので有利である。例えば、タービン装置は、蒸気の下流側への抽出を可能にするよう高い高さ位置にはない。その他の点において、本明細書において説明するシステムの復水蒸気タービンは、従来型であって良い。代表的には、高圧蒸気タービン段にはボイラからの高圧蒸気が供給される。用いられる蒸気は、ボイラ内での再熱のために戻され、次に低圧タービン段、代表的には「中圧」段に送り込まれ、次に「低圧」段に送り込まれる。つぎに、タービン段から出た蒸気は、凝縮または復水され、そして凝縮水がボイラでの再使用のために加熱されるとともに加圧され、それにより多量の蒸気が発生する。このタービン装置では、蒸気抽出により、従来型蒸気タービン装置の場合よりもより有効なエネルギーが低圧区分から抽出される。これが有利である理由は、これにより、低質燃料、例えばバイオマスに専用のボイラの蒸気生成プロフィールと一致したフォーマットでエネルギーの抽出が可能だからである。また、この構成により、極めて高い蒸気圧力および温度でのタービン内での蒸気膨張プロセスを開始させる必要性がなくなる。これが有利である理由は、その結果として、適度の蒸気パラメータでしかも特別なまたは高質構成材料を必要としないで比較的高い蒸気サイクル効率が得られる。
【0021】
蒸気がタービンから抽出されないので、同じ電力出力を達成するのに必要な入力蒸気が少なく、したがって、ボイラは、比較的小型で良く、しかも従来型ボイラおよびタービン装置を利用する場合よりも用いる材料が少ない。
【0022】
ボイラ給水を加熱するために煙道ガスを用いる場合、煙道ガス中に含まれる水を凝縮することがエネルギー効率が良い。好ましくは、煙道ガス中に含まれる水を完全にまたは実質的に完全に凝縮することが好ましい。これは、例えば、別個のユニットとして好ましくはボイラの外部に位置する二段構成を提供することによって達成でき、この場合、タービンから戻ってきた凝縮水は、最初に煙道ガスのための凝縮器/スクラバ装置内で熱交換し、次に凝縮器/スクラバのための予備冷却器内でボイラから出ている煙道ガスと熱交換する。
【0023】
凝縮器/スクラバは、煙道ガス中に存在する水を凝縮し、そして灰または他の望ましくない汚染物を燃焼プロセスから除去することができる。かくして、煙道ガスが2つの流れ、すなわち、ガスおよび水となる。これら両方は、幾分かの低質熱を含み、かかる低質熱は、例えば、ボイラのために供給される燃料を特にこれがバイオマス燃料、例えば木材チップである場合、乾燥させまたは予熱するために使用できる。より一般的に、煙道ガス冷却・凝縮システムからの低質熱は、何らかのデューティのため、例えばボイラへの供給空気の加熱、給水加熱またはバイオマスを乾燥させるために熱を供給するオプションのための発電システムの熱ポンプシステムの一部として使用できる。
【0024】
本明細書において説明する装置は、バイオマス燃焼ボイラ、特に適当な乾燥度ではなく、例えばミリングのような特定の処理を必要としないで、バイオマス、例えば(部分的に)乾燥させた木材チップを燃焼させることができる流動床ボイラに特に適している。バイオマスを燃焼させることによっては、化石燃料の場合に生じるような相当な量の酸性ガスを生じさせることはなく、したがって、本明細書において説明する機器、例えば有利な予備冷却・凝縮/スクラビング装置は、かかる腐食性物質に対応するよう設計される必要はない。バイオマスは、唯一のまたは一次燃料として使用でき、例えば、ボイラは、バイオマス、例えば木材を燃焼させることができる。しかしながら、バイオマスボイラはまた、バイオマスと関連して他の燃料を燃やすことができ(ボイラ内で同時に燃やすことができ)、かかる他の燃料は、例えば、石炭、かっ炭、都市ごみ(MSW)、ごみ燃料(RDF)、他のごみ、および農業バイオマス/非木材バイオマスである。
【0025】
ボイラの流動床組成を燃料混合物中に含まれる酸性度を吸収することができる程度まで変化させることによって構成できる木材バイオマス(例えば、石炭、かっ炭、農業またはごみ燃料)と一緒に他の燃料を同時に燃やそうとする意図が存在する場合がある。任意の追加の粒子が煙道ガス流中に含まれると見込まれる場合、適当な静電集塵器(ESP)がボイラ煙道ガス出口と煙道ガス凝縮装置との間に導入されるのが良い。
【0026】
発電システムは、電力の発生に適しており、この場合、復水蒸気タービンは、通常の仕方で発電機に結合されるのが良い。この場合、変圧器装置が送電網に従来方式で電力を供給するよう使用されるのが良い。システムの別の改造例が復水蒸気タービンからの凝縮物(給水)を予熱するためにタービンおよび/または発電機および/または変圧器から提供される熱エネルギーを利用するよう構成されるのが良く、その後、この凝縮水は、煙道ガスにより加熱される。この追加の加熱(エネルギー再利用)は、直接的に(熱交換機によって)行われても良くまたは熱ポンプによって行われても良い。用いられる1つまたは複数の熱ポンプは、スタンドアロン型のものであるのが良い。好都合には、1つまたは複数の熱ポンプは、ボイラに供給される空気を加熱するために用いられる熱ポンプシステムの一部である。
【0027】
一般に、発電システムの任意の部分から集められたエネルギー(低質)は、熱ポンプシステムの熱ポンプによってアップグレードされるのが良く、このアップグレードされたエネルギーは、ボイラに供給されている空気を加熱するために用いられるとともに/あるいは例えば復水蒸気タービンからの凝縮水(給水)を加熱する(予熱する)よう他のデューティのために使用できる。他のデューティとしては、燃料の乾燥および/または地域暖房装置への熱の供給が挙げられる。
【0028】
かくして、熱ポンプシステムはまた、熱が熱ポンプを通る給水または燃焼空気を予熱するために追加の熱を提供するよう捨てられ/放散され/放熱される他の箇所のうちの少なくとも1つからの低質熱を使用することができる。これは、灰、他の回転機器(煙道ガスファン、他のファン、給水ポンプ、機械式駆動装置など)および電気機器(例えば、抵抗器、変圧器など)から捨てられ/放散され/放熱された熱を含む。
【0029】
燃料および空気の入力の可変特性に取り組む際の融通性がボイラ内における標準化された燃焼プロセスを提供/作動させることができるようにする上で望ましい。したがって、可変燃料特性(水分および化学組成)に対応し、可変負荷を提供するとともに効率を部分負荷で最適化するために、全ての電気機械式駆動装置は、可変周波数コントローラを備えるのが良い。
【0030】
かくして、本発明の別の観点によって提供される好都合な構成例は、発電システムであって、
バイオマスを燃やすための流動床ボイラと、
流動床ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービンとを含み、
流動床ボイラ燃焼プロセスのための供給空気がボイラへの流入前に、少なくとも1つの熱ポンプを含む熱ポンプシステムによって予熱され、少なくとも1つの熱ポンプは、
タービンからの蒸気を凝縮させるために用いられる冷却システム、および
ボイラからの煙道ガスから熱を回収するために用いられる冷却システムのうちの少なくとも一方からエネルギーを抽出し、
ボイラからの煙道ガスは、ボイラ給水を加熱するために用いられることを特徴とする発電システムである。
【0031】
この構成例のボイラのための一次燃料は、バイオマスであるが、他の燃料も上述したようにこのボイラ内で用いて同時に燃やすことができる。
【0032】
好都合には、熱ポンプシステムは、タービンからの蒸気を凝縮させるために用いられる冷却システムから、またはボイラの煙道ガスから熱を回収するために用いられる冷却システムからの供給空気を加熱するために必要なエネルギーの全てを抽出することができる。代表的には、熱ポンプシステムは、少なくとも、タービンからの蒸気を凝縮するために用いられる冷却システムおよびボイラからの煙道ガスから熱を回収するために用いられる冷却システムからエネルギーを抽出する。
【0033】
熱ポンプシステムは、例えば上述したような煙道ガス冷却・凝縮システムによって煙道ガスによって更に加熱する前に、代表的には予熱段階としてボイラに戻る凝縮水を加熱するためにボイラへの空気供給の加熱に追加のデューティに熱を供給することができる。
【0034】
かかる構成では、例えば20%以上のボイラサイズの減少を同一の電力出力を備えた従来型蒸気サイクルプラントと比較して想定できる。
【0035】
本発明に関して上述した別のオプションとしての特徴もまた、発電システムのこの好都合の構成で採用できる。例えば、復水蒸気タービンを採用して発電機を従来方式で駆動することができる。
【0036】
ボイラに供給される空気を予熱するための熱ポンプの使用と煙道ガスの凝縮を組み合わせることによって、典型的な従来型蒸気タービン効率と比較して92%~100%以上の効率の増大を得ることができる。熱回収を考慮した場合、110%という高い低発熱量(LHV)熱効率を本明細書において説明するシステムで達成できる。かくして、例えば本明細書において説明するボイラおよび凝縮蒸気タービンシステムは、向上した効率を有する。タービン効率が42%以上であると仮定すると、ボイラ/タービンシステムは、選択した機器の組成および品質に応じて、本明細書において説明した構成により、例えば従来型構成の39%から45%以上への効率の向上を有することができる。
【0037】
本明細書において説明する発電システムは、先行技術の構成と比較して融通性がある。通常、制御のオプションとしては、ボイラ内での燃焼のための燃料と空気の供給量の変更および沸騰のための水の供給量の変更が挙げられる。ボイラに供給される空気を予熱するための熱ポンプの使用と煙道ガスを凝縮することによる熱の獲得の組み合わせにより、空気入力温度と供給水温度の両方もまた、所望の出力に合うように調節できる。この融通性のある構成は、「同時一体形蒸気・圧縮サイクル(Co-integrated Steam and Compression Cycle )(CSCC(登録商標))」を形成するよう熱ポンプ(用いられる冷媒のため)の圧縮サイクルと主蒸気サイクルの一体化として説明できる。
【0038】
特定の融通性は、特にボイラ中への空気温度の熱ポンプシステムの制御の使用と幾分かの熱を凝縮水に提供するための熱ポンプの使用のオプションの両方と組み合わされた場合、ボイラに戻る凝縮水を加熱するためにタービンからの蒸気抽出を用いないようにすることによって得られる。ボイラに供給される空気および水の迅速な微調整を行うと、入力(周囲)空気温度および燃料品質とは無関係にボイラの燃焼条件を維持することができる。それと同時に、送電網への出力は、熱ポンプシステムが迅速に調節可能なので容易に調節される。したがって、ボイラ‐タービン構成は、出力係数および周波数制御の変動を含む送電網への可変電気出力を提供するのに十分融通性を示すようになる。
【0039】
本明細書において説明する発電システムは、スケール変更可能である。例えば85MWt~300MWt以上のボイラ出力に基づくバイオマスボイラおよび復水蒸気タービン装置を利用することができる。大型ボイラおよび大型タービンを備えたシステムは、効率の向上をもたらすことができる。また、発電システムは、1つのボイラおよび1つの復水蒸気タービンを備えた構成には限定されないことは理解されよう。かくして、例えば、1つのボイラから2つ以上のタービン(例えば、2つのタービン)への供給を行う組み合わせを2つ以上のボイラが2つ以上のタービンのための蒸気を提供するよう採用される構成例とともに想定できる。各構成例では、各ボイラへの空気の加熱ならびに例えば上述したようなタービン凝縮水冷却システム、煙道ガス冷却・凝縮システムおよび他の低質熱源から熱を回収するための熱ポンプ技術の使用を採用することができる。
【0040】
バイオマスボイラまたは主として燃料を用いるボイラが用いられるとともに煙道ガスが効果的に冷却されるとともに凝縮される場合、出力煙道ガスは、二酸化炭素が比較的濃厚であり、酸性ガスまたは他の汚染物に関して僅かしか含まず、しかも熱ポンプシステムへの熱の供給としてバイオマス乾燥デューティまたは他のデューティについて用いられた場合、例えば20~50℃またはそれどころかこれ以下のオーダーの比較的低い温度を有する。かかるガス流は、炭素の捕捉に向いている。したがって、システムは、二酸化炭素を捕捉するための炭素捕捉ユニットを更に含むのが良い。例えば、適当な溶剤に二酸化炭素を吸収させることによって、吸収されたCO2を溶剤から遊離させて輸送および貯蔵のために圧縮することができる。CO2を分離する他の方法、例えば高圧メンブレン濾過、吸着/脱着(脱離)プロセスおよび極低温分離を採用することができる。地球に優しいバイオマスを用いるバイオマス燃焼ボイラは、原理的にはカーボンニュートラルなので、炭素捕捉ユニットの追加により、発電システムの二酸化炭素の収支をマイナスにすることができる。CO2を捕捉する場合、オプションとして本明細書において説明する発電システムにおいて熱の品質をアップグレードするための熱ポンプの使用によりまたは熱を必要とする他の用途のために利用することができる。
【0041】
本発明はまた、発電方法であって、この方法は、
ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービンを含む発電システムを用意するステップを含み、ボイラの燃焼プロセスのための供給空気がボイラへの流入前に、少なくとも1つの熱ポンプを含む熱ポンプシステムによって予熱されることを特徴とする発電方法を提供する。
【0042】
この方法により、オプションとしての特徴の任意のものまたは全てを含む本明細書において説明する発電システムを利用する。例えば、低質エネルギー源から熱を抽出する熱ポンプが使用される。低質エネルギー源は、復水蒸気タービンまたは本明細書において説明する発電システムと関連した他の低質エネルギー源のうちの任意のものから蒸気を凝縮させるために用いられる冷却システムであるのが良い。
【0043】
発電システムとは直接的には関連していない低質熱の他の源を復水蒸気タービンのための冷却システムからの熱の代替手段としてまたはこれに加えて採用することができる。例えば、太陽光または地熱源からまたは工場プロセスで採用される冷却システムからのエネルギーを使用することができる。
【0044】
燃焼システムからのガスの凝縮により、ガスの冷却からの熱と凝縮相変化の潜熱の両方の回収が可能である。この回収と1つまたは複数の熱ポンプの使用と組み合わせて冷却手順またはプロセスから得られた低質熱をアップグレードして効果的な能動的冷却作用を提供することは、煙道ガスが利用可能な任意のシステムで利用できる。
【0045】
かくして、本発明は、燃焼プロセスのガスから熱を抽出する方法であって、この方法は、
ガスを熱交換によって冷却して存在する水を凝縮させ、そして熱ポンプによって少なくとも凝縮相変化から抽出された熱をアップグレードするステップを含むことを特徴とする方法を提供する。
【0046】
有利には、熱交換器のための能動的冷却が少なくとも1つの可変駆動熱ポンプおよび少なくとも1つの可変循環ポンプを用いることによって採用される。
【0047】
好都合には、ガスを冷却するために二段法が採用される。好ましくは煙道ガスを生じさせるボイラまたは燃焼プロセスからの他のガス源の外部に位置する二段構造を別個のユニットとして提供するのが良い。ガスは、先ず最初に、冷却されて第1の熱交換システムによって高質熱を抽出し、次に第2の熱交換システムによって凝縮温度まで冷却される。
【0048】
凝縮温度に達するために3つ以上の熱交換段を採用するのが良い。
【0049】
凝縮器/スクラバ構造を第2の熱交換システムとして採用することができる。
【0050】
少なくとも1つの熱ポンプが凝縮段から得られた熱をアップグレードするために用いられる。これにより、回収された熱は、例えばバイオマスボイラ発電システムに関連して本明細書において説明したように、より有用な仕事をすることができる。
【0051】
オプションとして、燃焼プロセスからのガスを凝縮点まで冷却したあとにかかるガス中の残りの熱を利用することができる。ガスが2つの流れになると、ガスと水およびこれら両方は、幾分かの低質熱を含み、この熱を使用することができる。別の1つのまたは複数の熱交換器を用いてガスまたは凝縮水流から得られた残留熱をアップグレードすることができる。
【0052】
この熱抽出方法を一般に燃焼プロセスからのガスに利用することができ、状況に応じてエネルギーの節約という利点が得られる。本明細書において説明するバイオマスシステムとの併用が特に好都合であり、融通性を発電プラントに追加する。
【0053】
他の使用方法は、内燃エンジンガス(「排ガス」)の使用を含むことができる。内燃エンジンを用いて発電機を駆動する場合、排ガスならびにエンジンのための冷却システムから熱を抽出するのが良い。一例を以下において説明する。
【0054】
発電システム、例えば本明細書において説明したボイラ・タービン装置ならびにボイラシステム一般を採用する燃焼発電プラントは、始動のために電気供給を必要とする。電気は、ボイラおよび関連のタービンが作動レベルで稼働する前に必要とされる。電気を送電網から供給することができるが、送電網の電源が利用できる場合にのみ供給できる。
【0055】
望ましくは、発電プラントは、「自力起動」能力を備えている。プラントは、電源の外部からの入力を必要としないで起動するよう構成されている。これは、起動手順において用いられる発電機(これらのオプションの全ては、並列作動状態の単一のまたは多数の組立体であるのが良い)に電力供給する内燃エンジン(燃焼タービンまたは燃料電池)の提供によって達成できる。エンジン、代表的にはガス動力式ピストンエンジンは、融通性があるという利点を有し、電力出力は、変化する負荷に対処するよう調節されるのが容易である。他の液体または気体燃料、例えばディーゼル、バイオディーゼル、天然ガス、合成ガス、バイオガス、重燃料(HFO)、液化石油ガス(LPG)、液化天然ガス(LNG)、水素などを使用することができる。
【0056】
内燃エンジンは、始動時だけでなく、プラントの融通性を増大させる手段としても発電に使用できる。追加の電力をエンジンを作動させることにより全体として発電プラントの出力に加えることができる。エンジン/発電機システムが出力において融通性があるので、エンジンシステムは、プラントの全体的出力を小刻みに増大させる能力を与えることができる。
【0057】
有利には、エンジン冷却システムからの熱は、暖房に使用するために熱交換器によって抽出され、例えば、ボイラへの空気および/または水入力を加熱する。有利には、燃焼エンジンのガスから熱を抽出する上述の方法は、エンジンからの排ガスに用いられる。かくして、エンジンは、二段装置を備えるのが良い。排ガスを先ず最初に冷却して第1の熱交換システムによって高質熱を抽出し、次に第2の熱交換システムによって凝縮温度まで冷却する。少なくとも1つの熱ポンプを用いて凝縮ステップからの熱をアップグレードし、それにより有用な仕事を実施することができる。熱ポンプは、他の低質熱源から熱を除くために用いられるポンプであっても良くまたはこのデューティに専用であっても良い。熱ポンプは、スタンドアロン型であっても良くまたは本発明の電力システムの熱ポンプシステムの一部であっても良い。
【0058】
煙道ガスからの熱を抽出する方法と同様、本発明は、燃焼システムのガスから熱を抽出する装置であって、
ガスを凝縮温度まで冷却する熱交換システムと、
少なくとも凝縮相変化から抽出された熱をアップグレードする少なくとも1つの熱ポンプとを有することを特徴とする装置を提供する。
【0059】
エンジンからのその作動中に抽出される熱を用いて燃焼空気または給水(凝縮水)を直接にかつ即座に加熱することができまたはあとで使用するために適当な熱貯蔵装置に貯蔵することができる。エンジンから放出された熱を用いて上述のプラントの主熱サイクル内で発電プロセスを補充することができる。
【0060】
この装置は、本明細書において説明した方法および発電システムに関して上述した特徴のうちの任意のものまたは全てを有するのが良い。
【図面の簡単な説明】
【0061】
図1】発電システムの略図である。
図2】発電システムの単純化された概略ブロック図である。
図3】発電システムの単純化されたブロック図であり、熱ポンプシステム内でのアップグレードのために低質熱を回収する仕方を強調して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
図1は、ボイラ4、この実施例では、少なくとも一次燃料としてバイオマス、例えば木材チップを燃やす流動床ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービン装置2を含む発電システム1の略図である。
【0063】
蒸気サイクル
【0064】
システム1で動作する蒸気サイクルを次のように説明することができる。燃料サイロ6からのバイオマス燃料を流動床ボイラ4内において空気中で燃焼させる。熱をボイラ内で用いて水を沸騰させ、そして高圧蒸気を発生させ、この高圧蒸気をボイラ4からライン8経由で送ってタービン2の高圧タービン10(HP,TURB.)を駆動する。使用済みの蒸気を従来方式で再熱のためにライン12経由でボイラ4に戻す。再熱された蒸気を次にライン14経由でタービン2の低圧タービン16(LP.TURB.)に送る。代表的には、「中」および「低」圧タービンシステムが動力の抽出を最大にするよう用いられる。低圧タービン16から出た蒸気をライン20によって示された冷却水系統の使用により凝縮器18内で凝縮または復水させる。
【0065】
凝縮した蒸気を凝縮水ポンプ22によって予熱用熱交換器24中に圧送し、この予熱用熱交換器は、ライン30,32によって示唆されているように発電機26および変圧器28のための冷却システムから抽出された熱を利用する。
【0066】
つぎに、凝縮水をライン34経由で送って熱回収システム36内で更に加熱し、この熱回収システムは、煙道ガス(Flue Gas)という見出しで以下において更に説明するボイラ4からの煙道ガスを利用する。最後に、加熱状態の凝縮水を加圧するとともにライン38、貯蔵タンク39(「ドラム」)、給水ポンプ40およびライン42経由でボイラ4に戻して蒸気に戻す。所要の補給水を給水処理プラント44から送り出す。
【0067】
燃料
【0068】
供給される燃料は、この実施形態では、木材チップである。流動床燃焼システムがボイラ4内で用いられ、この流動床燃焼システムは、原燃料の特定の処理、例えばミリング(milling )を必要としない。しかしながら、原燃料46を燃料乾燥プラント48内で乾燥させ、その後サイロ6に送り、サイロ6は、ボイラ4内の燃焼プロセスへの供給を行う。約9%から50%の範囲にある水分が想定されるシステムに適しているが、決定的ではない。
【0069】
供給空気
【0070】
空気を空気加熱器50経由でボイラ4に供給する。空気を1つまたは複数の可変駆動熱ポンプ52によって空気加熱器50内で加熱し、かかる可変駆動熱ポンプは、タービン2の凝縮器18のための冷却水システム(ライン20)から熱を抽出する。つぎに、加熱空気をファンまたは1つまたは複数のファン54経由でボイラ4に圧送する。比較的低質熱の他の源を代替的にまたは追加的に用いることができる。しかしながら、凝縮器タービン冷却水系統の使用により、蒸気サイクルからのエネルギーの抽出量が増え、それにより効率が高められる。この構成により、ボイラ4への空気を本質的に周囲空気温度とは無関係に、しかもボイラ内の熱交換を必要としないで、一般的に用いられているように出て行く煙道ガスと一緒に一定の温度で供給することができる。
【0071】
煙道ガス
【0072】
煙道ガスは、ボイラ4から出てライン56経由で熱回収ユニット36に至る。ボイラへの加熱空気の供給の結果として、煙道ガスは、温度が一定でありかつ周囲温度空気がボイラに送り込まれてこれが出るときに煙道ガスによって加熱される従来構成の場合よりも幾分高温である。熱回収ユニット36は、煙道ガスを二段で処理する。段Iでは、ボイラ4から出た煙道ガスを凝縮器タービン18からボイラに戻っている凝縮水と熱交換することによって予備冷却される。段IIでは、凝縮器スクラバユニットは、煙道ガス中の蒸気を凝縮させて灰を除去する。熱回収ユニット36の段II内の煙道ガスの冷却および凝縮は、ライン34経由でボイラに戻っている凝縮蒸気を加熱することによって得られる。
【0073】
かくして、煙道ガスは、2つの流れ、すなわち、ガスおよび水となる。両方は、幾分低質の熱(例えば約40℃の温度を有する)を含み、そしてこれらのいずれか一方または両方は、燃料乾燥ユニット48に送られて(ライン58,60およびポンプ62経由で)ボイラのために供給された燃料を乾燥させる。
【0074】
電力出力
【0075】
この実施例では、凝縮蒸気タービン2は、発電機26を駆動して電気を生じさせ、この電気は、変圧器28によって送電網64への供給に適した形態に変換される。生じた電力の一部分は、ポンプ、例えばポンプ22,42,54,62に電力および熱ポンプ52に電力供給するために用いられる「自己消費」64のために利用される。
【0076】
上述した図1の装置のエネルギー効率および周囲温度に対する敏感性の欠如により、標準化されかつよりコンパクトな発電システムの使用を可能にし、それにより従来の既知の装置で実現できる電力出力よりも高い所与の電力出力を生じさせる。
【0077】
図2は、図1の発電システムに類似した発電システムの概略ブロック図であり、全体として、質量およびエネルギーの流れを示している。
【0078】
図2では、燃料100および加熱空気101をボイラ102に供給する。ボイラ102内で燃料を燃やすことによって生じた蒸気104をタービン106に供給する。タービン106からの機械的動力108が発電機を駆動して電気112を発生させ、この電気は、変圧器114によって調節されて送電網118への電力供給116として適したものとなる。
【0079】
タービン106からの使用済み蒸気を冷却回路120によって凝縮して凝縮液122を生じさせ、この凝縮液を予熱器124および煙道ガス熱回収ユニットII(126)およびI(128)経由でボイラ102に戻す。凝縮液120はまた、加圧されて適当な温度および圧力状態にあるボイラへの供給物となる。
【0080】
冷却回路120(代表的には水冷却回路)が比較的低質熱130を提供し、この低質熱は、熱回収ユニット132内で用いられて(熱ポンプ装置によって)ボイラ102のための到来空気134を加熱し、それにより加熱状態の空気101を生じさせる。冷却回路120からの熱130を例えば地域暖房のために外部熱供給源136として用いることができる。熱130の更に別の用途は、熱を熱回収ユニット138経由で予熱器124に供給することであるのが良く、予熱器124は、タービン106からの凝縮水122を加熱する。熱回収ユニット138にも発電機110のための冷却回路から熱140を供給するのが良い。この実施例では、熱142はまた、変圧器114を冷却するために用いられるとともに別の回収ユニット144経由で供給される冷却回路から予熱器124に回収される。
【0081】
ボイラ102から出た煙道ガス146は、戻っている凝縮水122によって熱回収ユニットI(128)内で予備冷却される。予備冷却された煙道ガス148は、次に、熱回収ユニットII(126)内で凝縮された蒸気中に存在する水によって更に冷却され、熱回収ユニットII(126)もまた冷却剤として戻っている凝縮水122を利用する。熱回収ユニットII(126)から出た冷却乾燥状態の煙道ガス150は、次に、図1の構成例に示されているように燃料を乾燥させるために更に用いられるのが良い。つぎに、冷却乾燥状態の煙道ガス150を炭素捕捉ユニット151内で処理して二酸化炭素を回収するのが良い。煙道ガスから得られた凝縮水152もまた例えば図1に示されているように燃料を乾燥させるために利用するのが良い。
【0082】
この実施例では、熱回収ユニット132は、熱ポンプシステムの一部として熱ポンプによって提供される。理解されるように、本発明のシステムの他の熱回収は、各場合において、熱交換器、熱ポンプまたは熱交換器と熱ポンプの両方の組み合わせを利用することによって行われるのが良い。
【0083】
例えば、図2に示されているユニット126,128,138,144のうちの任意の1つの熱回収ユニットは、熱交換器、熱ポンプまたは熱交換器と熱ポンプの両方を用いるのが良い。
【0084】
図3は、図1の形式に類似した一般的な形式の発電システム200の特徴を単純化されたブロック図で示している。この図は、熱ポンプシステムのための低質エネルギーの回収に焦点が向けられている。この実施例では、熱ポンプシステムは、幾つかの源からの低質熱を集め、そして熱ポンプを用いて熱をアップグレードし、それにより幾つかの有用な加熱機能を実行する。
【0085】
気サイクル
【0086】
発電システムは、空気202、燃料204および加熱加圧状態の水206が供給される燃焼ボイラ201を含む。ボイラ200によって生じた蒸気は、ライン208によって蒸気タービン210に送られる。使用済み蒸気は、凝縮器212内で凝縮され、そして圧縮ポンプ216を含むライン214によって再使用のためにボイラ201に戻される。
【0087】
煙道ガス
【0088】
ボイラ201からの煙道ガス(ライン218)をユニット220、例えば図1を参照して上述した二段熱回収ユニット36内で冷却するとともに凝縮させる。凝縮に続く残りのガス(大抵の場合、窒素および二酸化炭素)は、オプションとしての炭素捕捉ユニット222まで進むことができる。
【0089】
電力出力
【0090】
この実施例では、凝縮蒸気タービン210は、発電機224を駆動して電気を発生させ、この電気は、変圧器226によって送電網228への供給に適した形態に変換される。生じた電力の一部分は、例えばポンプに電力供給するために用いられる「自己消費」230のために利用される。
【0091】
この実施例では、始動モータ・発電機ユニット232は、システム200の始動の際に使用できる。モータは、例えばガスピストンエンジンまたはガスタービンであるのが良い。モータ・発電機ユニット232はまた、より慣例的に用いられて電気を発生させるための必要に応じて稼働されることによりシステム200の出力を増大させることができる。これは、システム200の融通性を高める。
【0092】
熱回収・熱ポンプシステム
【0093】
破線234は、ライン214を経てボイラ201に戻っている凝縮液を加熱するための煙道ガス熱回収・凝縮ユニットからの熱の使用を示している。
【0094】
図中の他の全ての破線は、種々の源からの低質熱の回収、熱ポンプシステムの熱ポンプによる熱のアップグレードおよび種々のデューティのためのアップグレードされた熱の使用を示している。
【0095】
かくして、低質熱は、破線236,238,240,242,244,248,250によって示されているようにそれぞれ変圧器226、発電機234、タービン240の冷却、タービン212のための凝縮器、煙道ガス熱回収・凝縮装置220、煙道ガス炭素捕捉装置222、およびモータ・発電ユニット232から回収される。
【0096】
この実施例では、低質熱回収の全ては、熱ポンプシステム254の一部として連結線252によって示唆されているようにためられる。熱ポンプシステムは、オプションとしての熱貯蔵装置256、例えば水のタンクを含む。
【0097】
熱ポンプシステムは、可変駆動圧縮機熱ポンプを含む。つぎのように各デューティについて1つまたは2つ以上の熱ポンプが次のように、すなわち、符号258のところでボイラへの空気入力202の加熱のため、符号260のところでライン214でボイラに戻っている凝縮水を加熱するため、そして符号262のところでバイオマス燃料204を乾燥させるために各デューティについて採用される。
【0098】
また、この図では、所望ならば制御システム268によってアクセス可能である地域暖房システム(DH送電網266)へのアップグレードされた熱の供給のための符号264で示されている別の熱ポンプまたはポンプのオプションとしての使用が示されている。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-05-29
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電システムであって、
ボイラからの蒸気が供給される復水蒸気タービンであって、前記ボイラの燃焼プロセスのための空気及び/又は給水の供給前記ボイラへの流入前に、少なくとも1つの可変駆動圧縮機を含む熱ポンプシステムによって予熱され、少なくとも1つの前記可変駆動圧縮機は、少なくとも、水分及び化学組成を含む変動する燃料の入力特性と、空気温度を含む変動する空気の入力特性とに対応するために、負荷変動を容易にすると同時に部分負荷での効率を最適化するように動作可能であ、前記復水蒸気タービンと、
発電のための発電機と、
送電網への給電のために前記発電機に接続される変圧器とを含み、
前記発電システムは、前記発電機の冷却および前記変圧器の冷却のうちの少なくとも一方から提供されるエネルギーが、直接的熱交換により又は前記熱ポンプシステムの熱ポンプを介して、前記復水蒸気タービンから戻っている凝縮水を予熱するために用いられる、ように構成される、発電システム。
【外国語明細書】