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特開2024-11980価格予測システム、価格予測方法、および価格予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011980
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】価格予測システム、価格予測方法、および価格予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240118BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114362
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 記吉
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中古車等の中古商材の市場価格を簡易に精度良く予測する価格予測システム、価格予測方法および価格予測プログラムを提供する。
【解決手段】価格予測システム1は、中古品である商材についての状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、上記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、上記商材が属する3つの価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル17と、価格推移クラス毎に、商材についての商材態様と上記経過年数に対する取引価格の推移との関係を機械学習した、価格推移クラス毎の価格予測モデル18a~18cと、価格予測の対象である対象商材の商材態様に基づき、クラス分類モデル17を用いて対象商材の価格推移クラスを決定し、決定した価格推移クラスの価格予測モデルを用いて、対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部15と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデルと、
前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデルと、
価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部と、
を備える、
価格予測システム。
【請求項2】
前記価格推移クラスは、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の減少率である価格減少率の統計値に基づいて定められる、
請求項1に記載の価格予測システム。
【請求項3】
前記商材態様には、前記商材の色、等級、傷、補修の情報が含まれる、
請求項1に記載の価格予測システム。
【請求項4】
前記商材は、同一の商品カテゴリに属する商品である、
請求項1に記載の価格予測システム。
【請求項5】
前記商材は、車両であって、
前記商材態様は、前記車両の色、等級、傷、部品交換、過去の車両点検日の情報を含む、
請求項1に記載の価格予測システム。
【請求項6】
中古品である商材について、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様についての情報である態様情報と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移についての情報である価格推移情報と、を収集する収集部と、
前記商材を、前記価格推移情報に基づき、前記経過年数に対する価格の下がりやすさを示す複数の価格推移クラスのいずれかに分類する分類部と、
前記商材の前記商材態様と、前記商材が属する前記価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル生成し、および前記価格推移クラスごとに、前記商材についての前記商材態様と前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した前記価格推移クラスごとの価格予測モデルを生成するモデル生成部と、
を備える、
請求項1ないし5のいずれか一項に記載の価格予測システム。
【請求項7】
価格予測システムのコンピュータが行う価格予測方法であって、
中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデルを取得するステップと、
前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデルを取得するステップと、
価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測するステップと、
を有する、
価格予測方法。
【請求項8】
価格予測システムのコンピュータを、
中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル、
前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデル、
価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を推定する価格予測部、
として機能させる価格予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中古商品である商材の市場価格を予測する価格予測システム、価格予測方法、および価格予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中古車の販売実績と残価率補正用データに基づき中古車の査定要因に影響されない基準残価率を算出する基本残価率算出処理部と、販売が開始されてからの時間経過に伴い変化する中古車ごとの基準評価率の遷移を指数関数で表した残価減衰モデル関数を生成する残価減衰モデル生成処理部と、中古車の商品特性(評価点)を代入し学習させることで残価減衰モデル関数の係数と中古車ごとの商品特性との関係をモデル化する関係モデル関数生成処理部と、現行車の残価減衰モデル関数に基づき当該現行車の将来における残価率を算出する残価率予測処理部と、を有する商品価値評価装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002-117275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、中古車の市場価格は、個々の中古車ごとに、様々な査定項目の評価点に応じて、販売開始後の時間経過に対し異なる価格推移を辿り得る。このため。上記評価装置のように、中古車の市場価格の予測に用いるモデルを機械学習により生成する場合、予測の精度を向上するためには、例えば、車種、色、グレード、装備、メンテナンス履歴などの査定要因の評価点の大小に応じた複数のグループごとに、価格予測のモデルを数多く準備することが必要となり、モデルの生成や価格予測の処理が煩雑となり得る。
【0005】
本発明の目的は、中古車等の中古商材の市場価格を、簡易に精度良く予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデルと、前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデルと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部と、を備える、価格予測システムである。
本発明の他の態様によると、前記価格推移クラスは、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の減少率である価格減少率の統計値に基づいて定められる。
本発明の他の態様によると、前記商材態様には、前記商材の色、等級、傷、補修の情報が含まれる。
本発明の他の態様によると、前記商材は、同一の商品カテゴリに属する商品である。
本発明の他の態様によると、前記商材は、車両であって、前記商材態様は、前記車両の色、等級、傷、部品交換、過去の車両点検日の情報を含む。
本発明の他の態様によると、中古品である商材について、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様についての情報である態様情報と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移についての情報である価格推移情報と、を収集する収集部と、前記商材を、前記価格推移情報に基づき、前記経過年数に対する価格の下がりやすさを示す複数の価格推移クラスのいずれかに分類する分類部と、前記商材の前記商材態様と、前記商材が属する前記価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル生成し、および前記価格推移クラスごとに、前記商材についての前記商材態様と前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した前記価格推移クラスごとの価格予測モデルを生成するモデル生成部と、を備える。
本発明の他の態様は、価格予測システムのコンピュータが行う価格予測方法であって、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデルを取得するステップと、前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデルを取得するステップと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測するステップと、を有する、価格予測方法である。
本発明の他の態様は、価格予測システムのコンピュータを、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル、前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデル、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を推定する価格予測部、として機能させる価格予測プログラムである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、中古車等の中古商材の市場価格を、簡易に精度良く予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る価格予測システムの構成を示す図である。
図2図2は、価格予測システムが取得する商材態様および価格推移情報の一例を示す図である。
図3図3は、価格予測部における動作を示す機能ブロック図である。
図4図4は、価格予測システムが実行する価格予測方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る価格予測システムの構成を示す図である。価格予測システム1は、中古品である商材(以下、中古商材ともいう)の一例である中古車の、現在及び又は将来の市場価格を推定または予測する(以下、単に予測するという)。ここで、市場価格とは、市場においてその中古商材に認められ得る残存価値をいい、本実施形態では、一例として、市場でのその中古商材の売買における取引価格をいう。価格予測システム1は、中古商材である中古車の市場価格として、中古車市場におけるその中古車の現在又は将来の平均的な取引価格を予測する。予測結果としての取引価格は、価格の値又は価格の値範囲であり得る。
【0010】
価格予測システム1は、インターネット等の通信ネットワーク3を介して、市場における中古車の売買についての情報を提供する情報提供サーバ2から、中古車売買についての取引情報を取得する。取引情報には、例えば、売買された中古車の車両態様についての情報と、取引価格についての情報と、を含み得る。車両態様には、例えば、その中古車の車種、車名、年式、色、等級(グレード)、装備、走行距離、新品としての最初の販売日、最初の販売日からの経過年数、メンテナンス履歴(例えば、交換した部品、過去の車両点検日など)の情報が含まれ得る。上記車両態様についての情報は、本開示における、中古品である商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様についての情報である態様情報に相当する。
【0011】
また、上記取引情報に含まれる取引価格の情報は、実際の売買における価格(以下、売買価格)のほか、中古車販売店がその中古車に値付けした販売価格であり得る。例えば、取引価格の情報には、その中古車が実際に販売されるまでに値付けされた年度ごとの販売価格(例えば、各年の12月の販売価格)と、実際に販売されたときの売買価格と、の情報が含まれ得る。上記取引価格の情報は、本開示における、中古商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移(以下、単に価格推移ともいう)についての情報である価格推移情報に相当する。ここで、「最初の販売日」とは、現在は中古品であるその商材が、最初に新品として販売されたときの販売日をいう。
【0012】
図1には、一つの情報提供サーバ2が示されているが、価格予測システム1が上記取引情報を取得する情報提供サーバ2は、複数であってもよい。そのような、一つ又は複数の情報提供サーバ2の全体は、いわゆるビッグデータとして上記取引情報を価格予測システム1に提供し得る。
【0013】
価格予測システム1は、プロセッサ10と、メモリ11と、通信装置12と、を有する。通信装置12は、価格予測システム1が、直接に又はインターネット等の通信ネットワーク3を介して間接に情報提供サーバ2等の他の装置と通信するための、有線通信装置及び又は無線通信装置である。
メモリ11は、不揮発性及び揮発性の半導体メモリで構成される。メモリ11には、後述するモデル生成部133により生成されるクラス分類モデル17と価格予測モデル18a、18b、18cとが記憶される。
【0014】
プロセッサ10は、例えば、CPU等のプロセッサを備えるコンピュータである。プロセッサ10は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、プロセッサ10は、機能要素又は機能ユニットとして、モデル取得部13と、対象情報取得部14と、価格予測部15と、を備える。モデル取得部13は、機能要素又は機能ユニットである収集部131と、分類部132と、モデル生成部133と、で構成される。
【0015】
プロセッサ10が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ10がメモリ11に記憶された価格予測プログラム16を実行することにより実現される。価格予測プログラム16は、上記の機能要素を実現するほか、メモリ11からクラス分類モデル17および価格予測モデル18a、18b、18cを読み出して、コンピュータであるプロセッサ10を、これらのモデルとしても機能させる。
【0016】
なお、価格予測プログラム16は、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、プロセッサ10が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0017】
モデル取得部13は、収集部131、分類部132、およびモデル生成部133を用いて、クラス分類モデル17および価格予測モデル18a、18b、18cを生成して取得する。
【0018】
収集部131は、中古品である個々の商材について、その商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様についての情報である態様情報と、価格推移についての情報である価格推移情報と、を収集する。
具体的には、収集部131は、中古商材である複数の中古車について、それぞれの中古車の車両態様の情報を、上記態様情報として収集する。また、収集部131は、それぞれの中古車の、年ごとの販売価格、および売買価格を含む、価格推移の情報を、その中古車の価格推移情報として収集する。
【0019】
図2は、収集部131が収集する中古車の取引情報の内容の一例を示す図である。図示の例では、車両態様(商材態様)は、その中古車の車種、車名、年式、色、グレード(等級)、装備、走行距離、最初の販売日、最初の販売日からの経過年数、メンテナンス履歴を含む。装備には、たとえば、その車名の車両におけるオプション装備が含まれる。メンテナンス履歴には、車両点検日と、交換された部品と交換日の情報が含まれている。これに加えて、車両態様には、傷の有無、傷の補修、事故歴等の情報を含んでも良い。
【0020】
また、取引価格情報には、最初の販売日である2010年5月12日における売買価格と、その車両の購入者が2015年にその車両を下取りに出した後の、中古車販売店における1年ごとの店頭価格と、2019年にその車両が他の購入者により購入されたときの売買価格と、が含まれている。
なお、図2において、()内は、対応する項目の具体的な車名、装備名、日付、部品名、価格等を示しているものと理解されたい。
【0021】
分類部132は、収集部131が収集した個々の中古商材についての価格推移情報に基づき、それらの中古商材を、最初の販売日からの経過年数に対する価格の下がりやすさを示す価格推移指標に基づいて、複数の価格推移クラスに分類する。ここで、価格推移指標は、例えば、その中古商材の、最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の減少率(以下、価格減少率ともいう)の統計値である。具体的には、価格推移指標は、例えば、最初の販売日から現在までの、年間の価格減少率の平均値、最大値、最小値、又は中央値などであり得る。
【0022】
上記価格推移クラスへの分類は、従来技術に従い、回帰分析、クラス分類モデル17、決定木(Decision Tree、 DT)、ランダムフォレスト(Random Forests、 RF)、Gradient Boosting Decision Tree(GBDT)、XGBoost、LightGBMなどの、既知の分類手法を用いるものとすることができる。
本実施形態では、分類部132は、中古商材を、例えば、経過年数に対する価格の下がりやすさの程度が「大」「中」「小」である3つの価格推移クラスに分類する。
【0023】
モデル生成部133は、中古品である商材についての、上記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、上記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、上記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデルを生成する。また、モデル生成部133は、上記価格推移クラスごとに、中古品である商材についての、商材態様と、上記経過年数に対する取引価格の推移である価格推移と、の関係を機械学習した、価格推移クラスごとの価格予測モデルを生成する。
【0024】
クラス分類モデル17および価格予測モデル18は、例えば、ニューラルネットワークを用いた機械学習モデルである。価格予測モデル18は、例えば、時系列データである価格推移のデータを効果的に取り扱うことのできる、LSTM(ロング・ショート・ターム・メモリ)またはGRU(ゲート付き回帰型ユニット)を含むRNN(リカレント・ニューラルネットワーク)、及び又は1次元CNN(コンボリューショナル・ニューラルネットワーク)であり得る。
【0025】
具体的には、モデル生成部133は、収集部131が収集した個々の中古車についての態様情報と、分類部132が分類した各中古車の価格推移クラスと、を教師データとして用いて、態様情報が示す車両態様(すなわち、商材態様)と、価格推移クラスと、の関係を機械学習させたクラス分類モデル17を生成する。モデル生成部133は、上記生成したクラス分類モデル17を、メモリ11に記憶する。
【0026】
モデル生成部133は、また、収集部131が収集した個々の中古車についての態様情報と価格推移情報を教師データとして用いて、価格推移クラスごとに、中古車の車両態様と、最初の販売日からの経過年数に対する価格推移と、の関係を機械学習させた、上記3つの価格推移クラスごとの価格予測モデル18a、18b、18cを生成する。以下、価格予測モデル18a、18b、18cを総称して価格予測モデル18ともいうものとする。
【0027】
例えば、モデル生成部133は、収集部131が収集した複数の中古車についての車両態様に基づいて、上記生成したクラス分類モデル17を用いて、それらの中古車を価格推移クラスに分類する。そして、モデル生成部133は、価格推移クラスごとに、上記中古車のそれぞれの車両態様と、それらの中古車について収集部131が収集した価格推移情報と、の関係を価格予測モデル18に機械学習させる。価格予測モデル18は、例えば、予測結果として、現在及び又は将来(例えば、1年経過ごと)の取引価格についての、それぞれ最も尤度の高い一の値、及び又は、所定の値以上の尤度を持つ値範囲、を出力するものとすることができる。
モデル生成部133は、上記生成した価格推移クラスごとの価格予測モデル18を、メモリ11に記憶する。
【0028】
対象情報取得部14は、価格予測の対象である中古商材(以下、対象商材という)についての態様情報を取得する。例えば、中古商材の購入希望者または販売者は、スマートフォン等の携帯端末や、パーソナルコンピュータ等の端末装置を用いて、購入又は販売を希望する中古商材の態様情報を、通信ネットワーク3等を介して価格予測システム1へ送信するものとすることができる。対象情報取得部14は、通信装置12により、それらの中古商材の態様情報を受信して取得する。
本実施形態では、対象情報取得部14は、価格予測の対象である中古車両(以下、対象車両という)の車両態様の情報を、その対象車両の態様情報として取得する。
【0029】
価格予測部15は、対象情報取得部14が取得した対象商材の態様情報に基づき、モデル生成部133が生成した価格予測モデル18を用いて、その対象商材の現在及び又は将来についての取引価格を予測する。具体的には、価格予測部15は、まず、対象商材の商材態様に基づき、クラス分類モデル17を用いて、その対象商材の価格推移クラスを決定する。そして、価格予測部15は、上記決定した価格推移クラスの価格予測モデル18を用いて、その対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する。
【0030】
本実施形態では、一例として、価格予測部15は、モデル生成部133が生成した価格予測モデル18を用いて、価格予測の対象である中古車両(以下、対象車両という)の車両態様に基づき、クラス分類モデル17を用いて対象車両の価格推移クラスを決定し、上記決定した価格推移クラスの価格予測モデル18を用いて、その対象車両の現在又は将来の取引価格を推定する。
【0031】
図3は、価格予測部15における動作を機能ブロック図として示したものである。図3には、価格予測モデル18における、価格推移クラスに応じた価格予測モデル18の選択機能が、モデル選択部151として示されている。上述したように、価格予測部15は、対象情報取得部14が取得した対象商材の態様情報に基づいて、クラス分類モデル17によりその対象商材の価格推移クラスを決定する。そして、モデル選択部151により、上記決定した価格推移クラスに応じた価格予測モデル18を選択し、選択した価格予測モデル18に、上記対象商材の態様情報を入力する。そして、価格予測部15は、上記選択した価格予測モデル18が出力した取引価格の予測値を出力する。
【0032】
上記の構成を有する価格予測システム1は、中古商材の価格推移クラスごとの価格予測モデル18を用いて、中古商材の現在又は将来の取引価格(市場価格)を予測する。このため、価格予測システム1では、中古商材の様々な商材態様に応じて多数のモデルを用いる構成に比べて、使用するモデルの数を低減して、簡易に精度良く中古商材の市場価格を予測することができる。
【0033】
次に、図4に示すフロー図を参照して、価格予測システム1のコンピュータであるプロセッサ10が実行する価格予測方法について説明する。
【0034】
まず、価格予測システム1は、中古品である個々の商材(中古商材)についての、商材態様と、その商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル17を取得する(S100)。また、価格予測システム1は、価格推移クラスごとに中古商材についての商材態様と価格推移との関係を機械学習した、価格推移クラスごとの価格予測モデル18を取得する(S102)。
【0035】
上述したように、価格予測システム1は、収集部131、分類部132、およびモデル生成部133により、クラス分類モデル17、および価格推移クラスごとの価格予測モデル18を生成して取得する。
【0036】
次に、価格予測システム1は、対象情報取得部14により、価格予測の対象である中古商材(対象商材)についての態様情報を取得する(S104)。そして、価格予測システム1は、対象情報取得部14が取得した対象商材の態様情報に基づき、クラス分類モデル17を用いて、その対象商材の価格推移クラスを決定する(S106)。そして、価格予測部15は、上記決定した価格推移クラスの価格予測モデル18を用いて、その対象商材の現在又は将来の価格を予測して(S108)、処理を終了する。
【0037】
なお、価格予測システム1は、ステップS108において一の対象商材の現在又は将来の取引価格を予測したあとに、ステップS104に戻って処理を繰り返し、他の対象商材の取引価格の予測を行うものすることができる。
【0038】
[他の実施形態]
上述した実施形態では、価格予測システム1は、中古品である商材(中古商材)として中古車の取引価格を予測するものとした。ただし、価格予測システム1が取引価格の予測を行う対象は、中古車には限られず、中古品の売買が成立し得る任意の商材であるものとすることができる。
【0039】
そのような商材は、例えば、エアコンや冷蔵庫などの電化製品、家具、バッグなどのいわゆるブランド品、あるいは家屋などの建物であり得る。
【0040】
価格推移指標は、上述した実施形態では、年間の価格減少率の平均値、最大値、最小値、又は中央値などの統計値であるものとしたが、これには限られない。価格推移指標は、経過年数に対する価格の下がりやすさを示す任意の値であり得る。例えば、価格推移指標は、経過年数に対する価格推移を所定の数式(例えば、多項式)で近似したときの、当該数式の特定の項(例えば、最も次数の高い項)の係数であり得る。
【0041】
クラス分類モデル17、および価格推移クラスごとの価格予測モデル18は、上述した実施形態では、モデル取得部13が生成するものとしたが、他の装置において同様の手法により生成されるものとしてもよい。この場合には、モデル取得部13は、単に、通信装置12を用いて、上記他の装置から、クラス分類モデル17、および価格推移クラスごとの価格予測モデル18を受信して取得するものとすることができる。
【0042】
また、価格予測システム1は、上述した実施形態では、すべての機能要素が一つの装置において実現されるものとしたが、この構成には限られない。例えば、価格予測システム1は、上述した機能要素の全部または一部が複数の装置において分散して実現され、これらの装置が通信ネットワーク3により通信可能に接続されて構成されてもよい。
【0043】
なお、本発明は上記の実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
例えば、クラス分類モデル17が分類する価格推移クラスは、上述した実施形態では3つであるものとしたが、2以上の任意の数であるものとすることができる。また、モデル取得部13が取得する価格推移クラスごとの価格予測モデル18の数は、上述した実施形態では3つであるものとしたが、クラス分類モデル17が分類する価格推移クラスの数と同じ任意の数とすることができる。
【0044】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上述した実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0045】
(構成1)中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデルと、前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデルと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部と、を備える、価格予測システム。
構成1の価格予測システムによれば、中古商材の価格推移クラスごとの価格予測モデルを用いて、中古商材の現在又は将来の取引価格を予測するので、中古商材の様々な商材態様に応じて多数のモデルを用いる構成に比べて、使用するモデルの数を低減して簡易に精度良く中古商材の市場価格を予測することができる。
【0046】
(構成2)前記価格推移クラスは、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の減少率である価格減少率の統計値に基づいて定められる、構成1に記載の価格予測システム。
構成2の価格予測システムによれば、価格推移クラスを客観的に定めることができる。
【0047】
(構成3)前記商材態様には、前記商材の色、等級、傷、補修の情報が含まれる、構成1または2に記載の価格予測システム。
構成3の価格予測システムによれば、中古商材の状態を適切に反映した取引価格を予測することができる。
【0048】
(構成4)前記商材は、同一の商品カテゴリに属する商品である、構成1に記載の価格予測システム。
構成4の価格予測システムによれば、商品カテゴリの特性に依存する価格推移要因の影響を排除して、同一カテゴリの中古商材についての市場価格を精度よく予測することができる。
【0049】
(構成5)前記商材は、車両であって、前記商材態様は、前記車両の色、等級、傷、部品交換、過去の車両点検日の情報を含む、構成1または2に記載の価格予測システム。
構成5の価格予測システムによれば、中古車両の市場価格を簡易に精度良く予測することができる。
【0050】
(構成6)中古品である商材について、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様についての情報である態様情報と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移についての情報である価格推移情報と、を収集する収集部と、前記商材を、前記価格推移情報に基づき、前記経過年数に対する価格の下がりやすさを示す複数の価格推移クラスのいずれかに分類する分類部と、前記商材の前記商材態様と、前記商材が属する前記価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル生成し、および前記価格推移クラスごとに、前記商材についての前記商材態様と前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した前記価格推移クラスごとの価格予測モデルを生成するモデル生成部と、を備える、構成1ないし5のいずれかに記載の価格予測システム。
構成6の価格予測システムによれば、適切なクラス分類モデル、および価格推移クラスごとの価格予測モデルを生成して、中古商材についての精度の良い市場価格予測を行うことができる。
【0051】
(構成7)価格予測システムのコンピュータが行う価格予測方法であって、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデルを取得するステップと、前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデルを取得するステップと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測するステップと、を有する、価格予測方法。
構成7の価格予測方法によれば、中古商材の様々な商材態様に応じた数のモデルを用いる構成に比べて、少ない数のモデルを用いて簡易に精度良く中古商材の市場価格を予測することができる。
【0052】
(構成8)価格予測システムのコンピュータを、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の下がりやすさを示す、前記商材が属する価格推移クラスと、の関係を機械学習したクラス分類モデル、前記価格推移クラスごとに、前記商材についての、前記商材態様と、前記経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を機械学習した、前記価格推移クラスごとの価格予測モデル、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、前記クラス分類モデルを用いて前記対象商材の前記価格推移クラスを決定し、前記決定した前記価格推移クラスの前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を推定する価格予測部、として機能させる価格予測プログラム。
構成8の価格予測プログラムによれば、少ない数のモデルを用いて簡易に精度良く中古商材の市場価格を予測することのできる価格予測システムを実現することができる。
【符号の説明】
【0053】
1…価格予測システム、2…情報提供サーバ、3…通信ネットワーク、10…プロセッサ、11…メモリ、12…通信装置、13…モデル取得部、131…収集部、132…分類部、133…モデル生成部、14…対象情報取得部、15…価格予測部、151…モデル選択部、16…価格予測プログラム、17…クラス分類モデル、18、18a、18b、18c…価格予測モデル。
図1
図2
図3
図4