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特開2024-11981価格予測システム、価格予測方法、および価格予測プログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011981
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】価格予測システム、価格予測方法、および価格予測プログラム
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/10 20120101AFI20240118BHJP
【FI】
G06Q50/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114363
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 記吉
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC20
(57)【要約】      (修正有)
【課題】中古車等の中古商材の市場価格を簡易に精度良く予測する価格予測システム、、方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】価格予測システムは、中古品である商材についての状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係を夫々機械学習した複数の価格予測モデル18a~18eと、価格予測の対象である対象商材の商材態様に基づき、複数の価格予測モデル18a~18eを用いて、対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部15と、を備える。価格予測部15は、複数の価格予測モデル18a~18eのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの価格予測モデルを選択し、選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した取引価格の予測値について重み付け演算を行い、重み付け演算の結果を、対象商材の現在又は将来の取引価格についての最終的な予測値として出力する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部と、を備え、前記価格予測部は、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測システム。
【請求項2】
前記複数の価格予測モデルは、それぞれ、前記商材の前記商材態様のデータおよび前記取引価格の推移のデータを含む学習データの、相異なるセットを用いた機械学習により生成される、請求項1に記載の価格予測システム。
【請求項3】
前記重み付け演算は、重み付き加算または加重平均演算である、
請求項1または2に記載の価格予測システム。
【請求項4】
前記重み付け演算において、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力する前記予測値に割り当てられる重みには、前記価格予測精度が高いほど大きな値が用いられる、
請求項3に記載の価格予測システム。
【請求項5】
中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルを取得する取得ステップと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する予測ステップと、を備え、前記予測ステップでは、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測方法。
【請求項6】
価格予測システムのコンピュータを、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデル、および、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部、として機能させる価格予測プログラムであって、前記価格予測部は、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、中古商品である商材の市場価格を予測する価格予測システム、価格予測方法、および価格予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、販売対象の中古車の車種の現在の市況に関する市況情報を取得し、過去における上記車種の市況に関する参照用市況情報と販売価格との間の3段階以上の連関度を取得し、この連関度を元に、取得した市況情報に応じた販売価格を推定する、中古車販売価格推定システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2021-68334号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
中古車の取引価格を推定する方法として、市況情報を用いず、それぞれの中古車の状態及び又はメンテナンス履歴と、その中古車の取引価格との関係を機械学習させた一の価格予測モデルを用いる方法があり得る。
このような、機械学習により生成される価格予測モデルの予測精度は、一般に、機械学習の際に用いられた学習データに依存する。例えば、インターネットを介して取得することのできるビッグデータを価格予測モデルの学習データとして用いる場合、ビッグデータの中には、データ生成の際の測定誤差により、価格予測モデルがそのデータを用いて学習してしまうと、不可避的に予測精度が低下してしまうような時系列データ(例えば、価格推移のデータ)が存在し得る。
【0005】
このため、従来のように一の価格予測モデルを用いて予測を行う構成では、所望の予測精度をもつ価格予測モデルが生成されるまで、機械学習を繰り返し行う必要が生じ、処理が煩雑となり得る。また、価格予測モデルの予測精度は、学習データに依存して、例えば、特定の価格推移カーブを有する商材については予測精度が高いが、他の価格推移カーブを有する商材については予測精度が低い、ということがあり得る。このため、一の価格予測モデルを用いて、相異なる価格推移特性を持つ様々な中古車の価格を常に高い精度で予測することは困難となり得る。
【0006】
本発明の目的は、中古車等の中古商材の市場価格を、簡易に精度良く予測することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一の態様は、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部と、を備え、前記価格予測部は、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測システムである。
本発明の他の態様によると、前記複数の価格予測モデルは、それぞれ、前記商材の前記商材態様のデータおよび前記取引価格の推移のデータを含む学習データの、相異なるセットを用いた機械学習により生成される。
本発明の他の態様によると、前記重み付け演算は、重み付き加算または加重平均演算である。
本発明の他の態様によると、前記重み付け演算において、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力する前記予測値に割り当てられる重みには、前記価格予測精度が高いほど大きな値が用いられる。
本発明の他の態様は、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルを取得する取得ステップと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する予測ステップと、を備え、前記予測ステップでは、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測方法である。
本発明の他の態様は、価格予測システムのコンピュータを、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデル、および、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部、として機能させる価格予測プログラムであって、前記価格予測部は、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測プログラムである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、中古車等の中古商材の市場価格を、簡易に精度良く予測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る価格予測システムの構成を示す図である。
図2図2は、価格予測システムが取得する商材態様および価格推移情報の一例を示す図である。
図3図3は、価格予測部における動作を示す機能ブロック図である。
図4図4は、価格予測システムが実行する価格予測方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る価格予測システムの構成を示す図である。価格予測システム1は、中古品である商材(以下、中古商材ともいう)の一例である中古車の、現在及び又は将来の市場価格を推定または予測する(以下、単に予測するという)。ここで、市場価格とは、市場においてその中古商材に認められ得る残存価値をいい、本実施形態では、一例として、市場でのその中古商材の売買における取引価格をいう。価格予測システム1は、中古商材である中古車の市場価格として、中古車市場におけるその中古車の現在又は将来の平均的な取引価格を予測する。予測結果としての取引価格は、価格の値又は価格の値範囲であり得る。
【0011】
価格予測システム1は、インターネット等の通信ネットワーク3を介して、市場における中古車の売買についての情報を提供する情報提供サーバ2から、中古車売買についての取引情報を取得する。取引情報には、例えば、売買された中古車の車両態様についての情報と、取引価格についての情報と、を含み得る。車両態様には、例えば、その中古車の車種、車名、年式、色、等級(グレード)、装備、走行距離、新品としての最初の販売日、最初の販売日からの経過年数、メンテナンス履歴(例えば、交換した部品、過去の車両点検日など)の情報が含まれ得る。上記車両態様についての情報は、本開示における、中古品である商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様についての情報である態様情報に相当する。
【0012】
また、上記取引情報に含まれる取引価格の情報は、実際の売買における価格(以下、売買価格)のほか、中古車販売店がその中古車に値付けした販売価格であり得る。例えば、取引価格の情報には、その中古車が実際に販売されるまでに値付けされた年度ごとの販売価格(例えば、各年の12月の販売価格)と、実際に販売されたときの売買価格と、の情報が含まれ得る。上記取引価格の情報は、本開示における、中古商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移(以下、単に価格推移ともいう)についての情報である価格推移情報に相当する。ここで、「最初の販売日」とは、現在は中古品であるその商材が、最初に新品として販売されたときの販売日をいう。
【0013】
図1には、一つの情報提供サーバ2が示されているが、価格予測システム1が上記取引情報を取得する情報提供サーバ2は、複数であってもよい。そのような、一つ又は複数の情報提供サーバ2の全体は、いわゆるビッグデータとして上記取引情報を価格予測システム1に提供し得る。
【0014】
価格予測システム1は、プロセッサ10と、メモリ11と、通信装置12と、を有する。通信装置12は、価格予測システム1が、直接に又はインターネット等の通信ネットワーク3を介して間接に情報提供サーバ2等の他の装置と通信するための、有線通信装置及び又は無線通信装置である。
メモリ11は、不揮発性及び揮発性の半導体メモリで構成される。メモリ11には、後述するモデル取得部13により取得される価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eが記憶される。
【0015】
プロセッサ10は、例えば、CPU等のプロセッサを備えるコンピュータである。プロセッサ10は、プログラムが書き込まれたROM、データの一時記憶のためのRAM等を有する構成であってもよい。そして、プロセッサ10は、機能要素又は機能ユニットとして、モデル取得部13と、対象情報取得部14と、価格予測部15と、を備える。モデル取得部13は、機能要素又は機能ユニットとして、収集部131とモデル生成部132とを備える。
【0016】
プロセッサ10が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ10がメモリ11に記憶された価格予測プログラム16を実行することにより実現される。価格予測プログラム16は、上記の機能要素を実現するほか、メモリ11から後述する価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eの一部又は全部を読み出して、コンピュータであるプロセッサ10を、これらのモデルとしても機能させる。
【0017】
なお、価格予測プログラム16は、コンピュータ読み取り可能な任意の記憶媒体に記憶させておくことができる。これに代えて、プロセッサ10が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0018】
モデル取得部13は、収集部131およびモデル生成部132を用いて、中古品である商材についての、商材態様と価格推移との関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルを生成して取得する。本実施形態では、特に、上記複数の価格予測モデルは、それぞれ、中古品である商材の商材態様のデータおよび価格推移のデータを含む学習データの、相異なるセットを用いた機械学習により生成される。
【0019】
収集部131は、中古品である個々の商材について、その商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様についての情報である態様情報と、価格推移についての情報である価格推移情報と、を収集する。
具体的には、収集部131は、中古商材である複数の中古車について、それぞれの中古車の車両態様の情報を、上記態様情報として収集する。また、収集部131は、それぞれの中古車の、年ごとの販売価格、および売買価格を含む、価格推移の情報を、その中古車の価格推移情報として取得する。
【0020】
図2は、収集部131が収集する中古車の取引情報の内容の一例を示す図である。図示の例では、車両態様(商材態様)は、その中古車の車種、車名、年式、色、グレード(等級)、装備、走行距離、最初の販売日、最初の販売日からの経過年数、メンテナンス履歴を含む。装備には、たとえば、その車名の車両におけるオプション装備が含まれる。メンテナンス履歴には、車両点検日と、交換された部品と交換日の情報が含まれている。これに加えて、車両態様には、傷の有無、傷の補修、事故歴等の情報を含んでも良い。
【0021】
また、取引価格情報には、最初の販売日である2010年5月12日における売買価格と、その車両の購入者が2015年にその車両を下取りに出した後の、中古車販売店における1年ごとの店頭価格と、2019年にその車両が他の購入者により購入されたときの売買価格と、が含まれている。
なお、図2において、()内は、対応する項目の具体的な車名、装備名、日付、部品名、価格等を示しているものと理解されたい。
【0022】
モデル生成部132は、中古品である商材についての商材態様と価格推移との関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルを生成する。上述したように、本実施形態では、特に、これら複数の価格予測モデルは、それぞれ、中古品である商材の商材態様のデータおよび前記価格推移のデータを含む学習データの、相異なるセットを用いた機械学習により生成される。
【0023】
具体的には、モデル生成部132は、収集部131が収集した個々の中古車についての態様情報と価格推移情報を教師データとして用いて、中古車の車両態様と、最初の販売日からの経過年数に対する価格推移と、の関係を機械学習させた、複数の価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eを生成する。以下、価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eを総称して価格予測モデル18ともいうものとする。価格予測モデル18は、例えば、ニューラルネットワークを用いた機械学習モデルである。具体的には、価格予測モデル18は、例えば、時系列データである価格推移のデータを効果的に取り扱うことのできる、LSTM(ロング・ショート・ターム・メモリ)またはGRU(ゲート付き回帰型ユニット)を含むRNN(リカレント・ニューラルネットワーク)、及び又は1次元CNN(コンボリューショナル・ニューラルネットワーク)であり得る。
【0024】
モデル生成部132は、特に、中古車の車両態様のデータおよび価格推移のデータを含む学習データの、それぞれ相異なるセットを用いた機械学習により、価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eを生成する。これにより、価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eは、機械学習に用いた学習データのセットの内容に依存して、相異なる価格予測精度を有するものとなり得る。
【0025】
モデル生成部132は、また、上記機械学習により生成した価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eについて、上記機械学習に用いたものと同じ学習データのセット又は異なる学習データのセットを用いて、それぞれの取引価格の予測精度(以下、価格予測精度ともいう)を算出する。
モデル生成部132は、上記生成したそれぞれの価格予測モデル18と、その価格予測精度とを、メモリ11に記憶する。
【0026】
対象情報取得部14は、価格予測の対象である中古商材(以下、対象商材という)についての態様情報を取得する。例えば、中古商材の購入希望者または販売者は、スマートフォン等の携帯端末や、パーソナルコンピュータ等の端末装置を用いて、購入又は販売を希望する中古商材の態様情報を、通信ネットワーク3等を介して価格予測システム1へ送信するものとすることができる。対象情報取得部14は、通信装置12により、それらの中古商材の態様情報を受信して取得する。
本実施形態では、対象情報取得部14は、価格予測の対象である中古車両(以下、対象車両という)の車両態様の情報を、その対象車両の態様情報として取得する。
【0027】
価格予測部15は、価格予測の対象である対象商材の商材態様に基づき、複数の価格予測モデルを用いて、対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する。本実施形態では、特に、価格予測部15は、複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの価格予測モデルを選択し、選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した取引価格の予測値について重み付け演算を行い、重み付け演算の結果を、対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する。
【0028】
図3は、価格予測部15における動作を機能ブロック図として示したものである。具体的には、価格予測部15は、まず、メモリ11に記憶された複数の価格予測モデル18a、18b、18c、18d、18eのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの価格予測モデル18を選択する。図3では、一例として、3つの価格予測モデル18a、18c、18eが選択されている。そして、価格予測部15は、図3に示すように、対象情報取得部14が取得した対象車両の車両態様の情報に基づき、上記選択した価格予測モデル18a、18c、18eのそれぞれが出力した取引価格の予測値について重み付け演算を行い、重み付け演算の結果を、対象車両の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する。上記重み付け演算は、例えば、重み付き加算(例えば、重みの総和を1とする)または加重平均演算であり得る。
【0029】
ここで、上記重み付け演算において、上記選択した価格予測モデル18のそれぞれが出力する取引価格の予測値に割り当てる重みには、その価格予測モデル18の価格予測精度が高いほど大きな値を用いるものとすることができる。
【0030】
上記の構成を有する価格予測システム1は、相異なる学習データのセットを用いて機械学習が行われた複数の価格予測モデル18のうち、価格予測精度の高い順に選択した少なくとも2つ価格予測モデル18のそれぞれが出力する予測値の重み付け演算の結果を、最終的な取引価格の予測値として出力する。
【0031】
このため、価格予測システム1では、一の価格予測モデルを用いる従来構成とは異なり、機械学習の際に用いる学習データに依存して予測精度の低い価格予測モデルが生成されてしまった場合でも、価格予測モデルの学習をやり直す必要がない。
また、価格予測システム1では、価格予測精度の異なる複数の価格予測モデル18からの予測値の重み付け演算結果を最終的な予測値とするので、複数の価格予測モデル18からの予測値が最終的な予測値に与える貢献度を容易に調整して、相異なる価格推移特性を持つ様々な中古商材(例えば、中古車)の価格を、高い精度で安定に予測することが可能となる。
すなわち、価格予測システム1では、中古車等の中古商材の市場価格を、簡易に精度良く予測することができる。
【0032】
また、上述したように、価格予測システム1では、上記重み付け演算において、それぞれの価格予測モデル18の予測値に割り当てる重みを、価格予測精度が高いほど大きな値とすることができる。これにより、価格予測システム1では、価格予測精度のより高い価格予測モデル18の予測値が、最終的な予測値に対しより高い貢献度を有することとなるので、最終的な予測値の予測精度が高く維持され得る。
【0033】
次に、図4に示すフロー図を参照して、価格予測システム1のコンピュータであるプロセッサ10が実行する価格予測方法について説明する。
【0034】
まず、価格予測システム1は、中古商材についての商材態様と価格推移との関係を機械学習した、複数の価格予測モデル18を取得する(S100)。上述したように、価格予測システム1は、収集部131およびモデル生成部132により、複数の価格予測モデル18を生成して取得する。
【0035】
続いて、価格予測システム1の価格予測部15は、上記取得した複数の価格予測モデル18から、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの価格予測モデル18を選択する(S102)。
【0036】
次に、対象情報取得部14は、価格予測の対象である中古商材(対象商材)についての態様情報を取得する(S104)。価格予測システム1は、対象情報取得部14が取得した対象商材の態様情報に基づき、上記選択した複数の価格予測モデル18から、対象商材の現在又は将来の取引価格の複数の予測値を取得する(S106)。そして、価格予測システム1は、上記取得した複数の予測値の重み付け演算結果を、最終的な取引価格の予測値として出力する(S108)。
【0037】
上記において、ステップS100は、本開示における取得ステップに相当し、ステップS102からS106は、本開示における予測ステップに相当する。
【0038】
なお、価格予測システム1は、ステップS108において一の対象商材についての現在又は将来の取引価格の最終予測値を出力したあとに、ステップS104に戻って処理を繰り返し、他の対象商材の取引価格の予測を行うものすることができる。
【0039】
[他の実施形態]
上述した実施形態では、価格予測システム1は、中古品である商材(中古商材)として中古車の取引価格を予測するものとした。ただし、価格予測システム1が取引価格の予測を行う対象は、中古車には限られず、中古品の売買が成立し得る任意の商材であるものとすることができる。
【0040】
そのような商材は、例えば、エアコンや冷蔵庫などの電化製品、家具、バッグなどのいわゆるブランド品、あるいは家屋などの建物であり得る。
【0041】
価格予測モデル18は、上述した実施形態では、モデル取得部13が生成するものとしたが、他の装置において同様の手法により生成されるものとしてもよい。この場合には、モデル取得部13は、単に、通信装置12を用いて、上記他の装置から、複数の価格予測モデル18を、それらの価格予測精度の情報と共に受信して取得するものとすることができる。
【0042】
また、価格予測システム1は、上述した実施形態では、すべての機能要素が一つの装置において実現されるものとしたが、この構成には限られない。例えば、価格予測システム1は、上述した機能要素の全部または一部が複数の装置において分散して実現され、これらの装置が通信ネットワーク3により通信可能に接続されて構成されてもよい。
【0043】
なお、本発明は上記の実施形態の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
例えば、モデル取得部13が取得する価格予測モデル18の数は、上述した実施形態では5であるものとしたが、2以上の任意の数であるものとすることができる。
また、価格予測部15が選択する価格予測モデル18の数は、上述した実施形態では3であるものとしたが、2以上であって且つモデル取得部13が取得した価格予測モデル18の数以下の任意の数であるものとすることができる。
【0044】
[上記実施形態によりサポートされる構成]
上述した実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0045】
(構成1)中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部と、を備え、前記価格予測部は、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測システム。
構成1の価格予測システムによれば、複数の価格予測モデルの予測値の重み付け演算結果を最終的な予測値とするので、一の価格予測モデルを用いる従来構成とは異なり、所望の予測精度なるように価格予測モデルの再学習を繰り返す必要がなく、市場における中古商材の取引価格を簡易に精度良く予測することができる。
【0046】
(構成2)前記複数の価格予測モデルは、それぞれ、前記商材の前記商材態様のデータおよび前記取引価格の推移のデータを含む学習データの、相異なるセットを用いた機械学習により生成される、構成1に記載の価格予測システム。
構成2の価格予測システムによれば、相異なる価格予測精度を有する複数の価格予測モデルを容易に生成して取得することができる。
【0047】
(構成3)前記重み付け演算は、重み付き加算または加重平均演算である、構成1または2に記載の価格予測システム。
構成3の価格予測システムによれば、複数の価格予測モデルからの取引価格の予測値が最終的な予測値に与える貢献度を容易に調整することができる。
【0048】
(構成4)前記重み付け演算において、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力する前記予測値に割り当てられる重みには、前記価格予測精度が高いほど大きな値が用いられる、構成3に記載の価格予測システム。
構成4の価格予測システムによれば、価格予測精度のより高い価格予測モデル18の予測値が、最終的な予測値に対してより高い貢献度を有するようにすることができるので、最終的な予測値の予測精度が高く維持され得る。
【0049】
(構成5)中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデルを取得する取得ステップと、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する予測ステップと、を備え、前記予測ステップでは、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測方法。
構成5の価格予測方法によれば、複数の価格予測モデルの予測値の重み付け演算結果を最終的な予測値とするので、所望の予測精度なるように価格予測モデルの再学習を繰り返す必要がなく、市場における中古商材の取引価格を簡易に精度良く予測することができる。
【0050】
(構成6)価格予測システムのコンピュータを、中古品である商材についての、前記商材の状態及び又はメンテナンス履歴を含む商材態様と、前記商材の最初の販売日からの経過年数に対する取引価格の推移と、の関係をそれぞれ機械学習した複数の価格予測モデル、および、価格予測の対象である対象商材の前記商材態様に基づき、複数の前記価格予測モデルを用いて、前記対象商材の現在又は将来の取引価格を予測する価格予測部、として機能させる価格予測プログラムであって、前記価格予測部は、前記複数の価格予測モデルのうち、価格予測精度の高い順に少なくとも2つの前記価格予測モデルを選択し、前記選択した価格予測モデルのそれぞれが出力した前記取引価格の予測値について重み付け演算を行い、前記重み付け演算の結果を、前記対象商材の現在又は将来の取引価格についての、最終的な予測値として出力する、価格予測プログラム。
構成6の価格予測プログラムによれば、市場における中古商材の取引価格を簡易に精度良く予測することのできる価格予測システムを実現することができる。
【符号の説明】
【0051】
1…価格予測システム、2…情報提供サーバ、3…通信ネットワーク、10…プロセッサ、11…メモリ、12…通信装置、13…モデル取得部、131…収集部、132…モデル生成部、14…対象情報取得部、15…価格予測部、16…価格予測プログラム、18、18a、18b、18c、18d、18e…価格予測モデル。
図1
図2
図3
図4