(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119829
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/071 20100101AFI20240827BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20240827BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20240827BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240827BHJP
C12P 21/02 20060101ALI20240827BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
C12N5/071
C12N5/0735 ZNA
C12N5/074
C12N5/10
C12P21/02 A
C12N5/0735
C12N5/071 ZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024081561
(22)【出願日】2024-05-20
(62)【分割の表示】P 2020500191の分割
【原出願日】2018-07-02
(31)【優先権主張番号】10-2017-0083861
(32)【優先日】2017-06-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】518017901
【氏名又は名称】チャ バイオテック カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユー,ジ ミン
(72)【発明者】
【氏名】キム,エ リ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法、前記方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液、及び幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法を提供する。
【解決手段】幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階と、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階と、幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を回収する段階と、を含む幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法、該方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液、及び該方法を含む幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法が提供される。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して、幹細胞由来の皮膚前駆細胞(stem cell derived epidermal progenitor cell)に分化させる段階と、
前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階と、
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液を回収する段階と、を含む幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液を製造する方法。
【請求項2】
前記アスコルビン酸の濃度は0.03ないし3μMであり、ヒドロコルチゾンの濃度は0.05ないし5μg/mlであることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
幹細胞を幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階は、120ないし600時間培養することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞及び人工多能性幹細胞からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階は、10ないし350時間培養することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階は、前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を無血清培地で培養することにより行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
幹細胞を幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階以前に、前記幹細胞を、血清を含む培地で10ないし350時間培養する段階を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン1を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン1を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上を10ng/ml以上の濃度で含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液。
【請求項11】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質10(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン1を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項10に記載の培養液。
【請求項12】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質10(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン1を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上を10ng/ml以上の濃度で含むことを特徴とする請求項10に記載の培養液。
【請求項13】
幹細胞を、アスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階と、
前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階と、
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞馴化培養液を回収する段階と、を含む幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法。
【請求項14】
前記アスコルビン酸の濃度は0.03ないし3μMであり、ヒドロコルチゾンの濃度は0.05ないし5μg/mlであることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
幹細胞を幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階は、120ないし600時間培養することによって行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記幹細胞は、胚性幹細胞、成体幹細胞及び人工多能性幹細胞からなる群から選択された一つ以上であることを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項17】
幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階は、10ないし350時間培養することにより行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階は、前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を無血清培地で培養することにより行われる、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
幹細胞を幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階以前に、前記幹細胞を、血清を含む培地で10ないし350時間培養する段階を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項20】
前記タンパク質は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質13(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン1を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法、前記方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液、及び幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
幹細胞は多分化能があって特定細胞に分化し、胚性幹細胞と、成体幹細胞と、人工多能性幹細胞とに分けられる。現在まで成体幹細胞の研究はほとんど骨髄で行われており、一部では脂肪組織あるいは臍帯血から幹細胞を分離及び培養する方式で行われている。しかし、骨髄及び脂肪組織細胞は侵襲的な方法で採取されるが、壮年期や老年期の患者から分離した幹細胞の場合、分化能及び増殖力が減少する。また、臍帯血の場合に採取が容易ではあるが、臍帯血内の幹細胞の含量は低い。臍帯(umbilical cord:UC)及び胎盤(placenta)は骨髄または脂肪由来細胞とは異なり、すでに体から分離された組織から抽出するため、非侵襲である。また、胚芽由来幹細胞とは異なり、倫理的側面からも自由である。よって、最近難治性または再生医学の有用な材料として脚光を浴びており、原始細胞として増殖能及び分化能を同時に満たすことができ、組織の再生だけではなく組織の特性に合わせて分化した後で使用できるという利点を有する。
【0003】
一方、細胞治療剤は、体内移植後の生存率が高くなく、免疫拒絶反応を引き起こす可能性があって、実際の臨床適用で広範かつ安定的に成功した例を見出し難い。それにより、細胞治療剤の代わりに、細胞の条件培養液が注目を浴びている。細胞の条件培養液(または細胞培養液という)は、細胞を培養した後で得られた細胞を含まない培地であって、細胞の成長に欠かせない様々な成分、例えば、サイトカイン、成長因子などが含まれている。細胞培養液は、細胞の成長を促進させたり、特定の成分を分離するために使用されており、この他にも、培養液自体に様々な疾患の治療に応用されている。
【0004】
本発明者らは有用なタンパク質の含有量を高めるために、最適の培養条件を確立し、これにより、以前の細胞培養液を製造する環境では発現されていないか、または非常に少ない量でのみ発現されることが知られている様々なタンパク質を含有する細胞培養液を開発した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一態様は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法を提供する。
【0006】
他の態様は、前記方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を提供する。
【0007】
他の態様は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様は、幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階と、前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階と、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を回収する段階と、を含む幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法を提供する。
【0009】
用語「幹細胞」は、分化能(potency)及び自己再生能(self-renewal)を持つ細胞を意味する。幹細胞は、分化能力によって全分化能(pluripotency)、多分化能(multipotency)、または単一分化能(unipotency)に分けられる。前記幹細胞は、胚性幹細胞(embryonic stem cell:ESC)(着床前の胚芽内細胞)、成体幹細胞(adult stem cell)(各組織や臓器に存在する未分化細胞)及び人工多能性幹細胞(induced pluripotent stem cell:iPSC)(体細胞に遺伝子及び/またはタンパク質を挿入して脱分化が誘導された細胞、または誘導多能性幹細胞)からなる群から選択された一つ以上でありうる。
【0010】
前記幹細胞は、間葉系幹細胞でありうる。用語「間葉系幹細胞(Mesenchymal sterm cell:MSC)」は成体幹細胞であって、多分化能及び自己再生能を持ち、増殖能に優れて遺伝的に安定している。前記間葉系幹細胞は、脂肪、軟骨、骨、骨髄間質、筋肉、神経などを作るのに役に立つ細胞であり、多様な細胞、例えば、脂肪細胞、軟骨細胞、皮膚細胞及び骨細胞などに分化する。
【0011】
前記幹細胞は、分化能及び自己再生能を持つものであれば、その種類や由来は制限されない。前記幹細胞は、例えば、哺乳動物、ヒト、猿、豚、馬、牛、羊、犬、猫、マウス、または兎などに由来したものでありうる。前記幹細胞は、分離された臍帯、胎盤、脂肪、骨髄、臍帯血、または羊水に由来したものでありうる。用語「分離された」とは、自然に発生する細胞または組織の環境とは異なる環境に存在することを意味する。
【0012】
用語「臍帯(umbilical cord」は、哺乳類の胎児が胎盤で成長できるように母体と胚とを連結する緒を意味し、一般的にホウォートンゼリーで取り囲まれている3個の血管、すなわち、2個の臍動脈及び1個の臍静脈で構成された組織でありうる。用語「胎盤(placenta)」は、哺乳類の妊娠の中に胎児のために作られる器官を意味し、胎盤の一方は母体と接しており、もう一方は、胎児と接しており、その間の空間に母体の血液が込められており、胎児に栄養分を供給するものでありうる。胎盤は羊膜、絨毛膜、脱落膜の3層で構成されている。羊膜は、胎児を取り囲んでいる薄くて透明な膜であり、羊水が入っており、羊水及び/または羊膜には胎児の幹細胞が存在する。脱落膜は、受精卵が子宮に着床されるために子宮の上皮細胞が変形して形成された膜であり、母体の幹細胞が存在する。絨毛膜は、胎児や羊水を取り囲んでいる羊膜と脱落膜との間にある膜であって、受精卵で発生して卵膜の一部を構成する。胎盤由来の幹細胞は、胎児または母体に由来したものでありうる。羊水由来の幹細胞は、胎児に由来したものでありうる。臍帯または胎盤路に由来した幹細胞は、その量が非常に豊かで増殖がよくでき、他の細胞への分化も可能である。用語「骨髄(bone marrow)」は、赤血球、白血球及び血小板などを含む血液細胞を作る組織を意味する。用語「臍帯血(cord blood)」は、分娩後に新生児の臍帯から出た血液を意味する。用語「脂肪」は、体脂肪を意味し、脂肪に由来した幹細胞は収得が容易であり、脂肪細胞の約1%が幹細胞であると推定されるため、収率が高い。
【0013】
前記方法は、分離された臍帯、胎盤、脂肪、骨髄、臍帯血または羊水を収得する段階を含む。前記分離された臍帯、胎盤、脂肪、骨髄、臍帯血または羊水は、通常の解剖学的な方法によって得ることができる。前記臍帯、胎盤、羊水または臍帯血は、母親の母体から出産後に分離された臍帯、胎盤、羊水または臍帯血でありうる。前記分離された臍帯、胎盤、羊水または臍帯血は、分離された後で速かに滅菌された容器及び氷に入れて保管される。
【0014】
胎盤の場合、例えば、胎盤内に存在する胎盤組織を滅菌されたはさみで複数の部位に切り取ることにより得る。前記胎盤組織は、羊膜、絨毛膜、または脱落膜でありうる。臍帯の場合、例えば、臍帯を胎盤から分離することで得る。前記臍帯から動脈及び静脈をさらに除去できる。脂肪の場合、例えば、腹部または太ももの皮下脂肪層の脂肪吸引(liposuction)を行うことによって得る。得られた胎盤組織、臍帯または脂肪は、抗生物質、例えば、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシン、またはそれらの組み合わせが含まれているリン酸緩衝食塩水(phosphate buffered saline:PBS)で1回、2回または3回以上洗浄することで組織に存在する血液などの汚染物質を除去できる。
【0015】
前記方法は、分離された臍帯、胎盤または脂肪を直接酵素と反応させるか、または滅菌されたはさみなどを使ってさらに細かく切り取った後で酵素と反応させる段階を含むことができる。例えば、前記分離された臍帯、胎盤または脂肪を滅菌されたはさみなどを使ってさらに細かく(例えば、約20mm以下、または約10mm以下)切り取った後、細切された細胞を酵素と反応させるのである。
前記方法は、幹細胞を収得する段階を含む。前記幹細胞を収得する方法は、当業者に公知の方法で行われる。臍帯または胎盤の場合、例えば、前記分離された臍帯または胎盤を培養容器に付着させ、5ないし20日、10ないし20日、または10ないし15日培養する段階と、前記培養された臍帯または胎盤から細胞が伸び出ることを確認する段階、及び/または臍帯または胎盤と分離酵素とを反応させる段階を含む。または、臍帯または胎盤の場合、例えば、前記分離された臍帯または胎盤と分離酵素とを反応させる段階を含む。前記分離酵素は、コラゲナーゼを含む。前記コラゲナーゼは、コラーゲンのペプチド結合を破壊する酵素を意味し、コラゲナーゼタイプI、タイプII、タイプIII、タイプIVまたはこれらの組み合わせを含むものでありうる。前記分離酵素は、10U/mlないし4000U/ml、20U/mlないし2000U/ml、50U/mlないし800U/ml、100U/mlないし400U/ml、150U/mlないし300U/ml、または200U/mlのコラゲナーゼを含む。また、前記分離酵素は、トリプシン、ディスパーゼまたはこれらの組み合わせを含むものでありうる。また、前記分離酵素を含む溶液は、コラゲナーゼ、トリプシン、ディスパーゼまたはこれらの組み合わせを含む水、塩水(saline)、例えば、HBSS(Hank’s Balanced Salt Solution)を含むものでありうる。前記臍帯または胎盤と分離酵素とを反応させる段階は振とうまたは静置によって行われる。前記振とうまたは静置は、約20℃ないし約40℃、約30℃ないし約40℃、約35℃ないし約40℃、または約37℃で行われ、1ないし20時間、2ないし10時間、4ないし9時間、または5ないし6時間行われる。脂肪の場合、例えば、前記分離された脂肪と分離酵素とを反応させる段階を含むことができる。前記分離酵素は、コラゲナーゼ、トリプシン、ディスパーゼまたはこれらの組み合わせを含むものでありうる。前記分離酵素を含む溶液は、コラゲナーゼ、トリプシン、ディスパーゼまたはこれらの組み合わせを含む水、塩水、例えば、HBSSを含むものでありうる。前記脂肪と分離酵素とを反応させる段階は、振とうまたは静置により行われる。
【0016】
さらに、前記臍帯、胎盤または脂肪と分離酵素とを反応させた後で分離酵素を不活性化するための過程を行うことができ、例えば、血清を添加して酵素反応を停止させることができる。また、前記臍帯、胎盤または脂肪と分離酵素とを反応させた後で臍帯、胎盤または脂肪から幹細胞を得る方法は、当業者に公知の方法によって行われ、例えば、遠心分離した後で細胞体(strainer)を使って細胞を分離して行われる。
【0017】
前記方法は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階以前に、前記幹細胞を、血清を含む培地で培養する段階を含む。前記血清は、ウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)、仔ウシ血清(bovine calf serum:BCS)またはこれらの組み合わせでありうる。前記血清は、分化培地の総体積対比約1%ないし約50%、約2%ないし約25%、約5%ないし約20%、約7.5%ないし約12.5%、または約10%である。前記培地は、線維芽細胞成長因子-4(fibroblast growth factor-4:FGF-4)及び/またはヘパリンを含むものである。前記培地の中でFGF-4の濃度は、約10ng/mlないし約40ng/ml、約20ng/mlないし約30ng/ml、または約25ng/mlである。前記培地の中でヘパリンの濃度は、約0.5μg/mlないし約2μg/ml、約0.5μg/mlないし約1.5μg/mlまたは約1μg/mlである。前記培地は抗生物質を含む。前記抗生剤は、ペニシリン、ストレプトマイシン、ゲンタマイシンまたはこれらの組み合わせを含む。前記培地の中で抗生物質の濃度は、約10μg/mlないし約250μg/ml、約25μg/mlないし約100μg/ml、約40μg/mlないし約65μg/ml、または約50μg/mlである。
前記方法は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階以前に、前記幹細胞を、血清を含む培地で10ないし350時間培養する段階を含む。前記培養は10ないし350時間、20ないし170時間、または50ないし70時間、または0.5ないし14日、1日ないし7日、または2日ないし3日行われる。前記培養は、分離された幹細胞をP0にすることである。前記培養の継代数は特に制限されるものではなく、所望の増殖細胞の数によって適当に継代数を選択できる。前記培養の継代数は、1ないし20継代、2ないし10継代、3ないし7継代、または4ないし5継代行うことで必要な数の累積増殖細胞を得る。
【0018】
前記方法は、前記幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階を含む。前記幹細胞は、アスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化する。 用語「分化(differentiation)」は、細胞が分裂増殖して成長する間に互いに構造や機能が特殊化する現象、すなわち、生物の細胞、組織などがそれぞれに与えられたところを行うために形態や機能が変わることを意味する。特定細胞類型への分化程度を測定または判断することは、当業界で公知の方法によって行われる。また、前記分化は、流細胞分析または免疫細胞化学などの技法を使って細胞表面標識(例えば、組織-特異的または細胞-標識特異的抗体で細胞を染色する)及び細胞形態の変化を測定しつつ、光学顕微鏡または共焦点顕微鏡を使って細胞形態を調査することで、または重合酵素連鎖反応(polymerase chain reaction:PCR)及び遺伝子-発現プロファイルなどの当業界で公知の技法を使って遺伝子発現相の変化を測定することで確認される。
【0019】
前記幹細胞は、周辺微細環境(stem cell niche)によって細胞の分裂、分化または移動というような行動様相が変わる。前記幹細胞は、周辺微細環境からの刺激によって遺伝子発現様相が変わることがあり、これによって分化する細胞が変わる。
【0020】
前記分化培地は、アスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む。アスコルビン酸は抗酸化特性を持つ有機化合物であって、ビタミンCの一種であり、水溶性であり、分子式はC6H8O6を持つ。前記アスコルビン酸はL-アスコルビン酸である。前記アスコルビン酸は、アスコルビン酸またはその塩の形態である。前記アスコルビン酸の塩は、無機酸塩、アルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩であり、例えば、塩酸塩、硝酸塩、硫酸塩などの無機酸塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩などのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩などであり、例えば、L-アスコルビン酸ナトリウム、L-アスコルビン酸マグネシウム、L-アスコルビン酸カリウム、L-アスコルビン酸カルシウムなどのL-アスコルビン酸塩である。前記アスコルビン酸は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞の増殖及び基底膜形成(basement membrane formation)に影響を与える。培地の中の前記アスコルビン酸の濃度は、約0.03μMないし約3μM、約0.05ないし約2μM、約0.1ないし約1μM、または約0.1μMないし約0.5μMである。
【0021】
前記ヒドロコルチゾンは副腎皮質ホルモンの一種であり、分子式C21H30O5を持つ。前記ヒドロコルチゾンは、ヒドロコルチゾンまたはその塩の形態を持つ。前記ヒドロコルチゾンの塩は酸付加塩であり、例えば、塩酸、硝酸、リン酸、硫酸、臭素化水素酸、ヨウ化水素酸、亜硝酸、亜リン酸などの無機酸塩、脂肪族モノ及びジカルボン酸、フェニル-置換されたアルカノエート、ヒドロキシアルカノエート及びアルカンジオエート、芳香族酸類、脂肪族及び芳香族スルホン酸などの無毒性有機酸などである。ヒドロコルチゾンは、皮膚前駆細胞への分化能を刺激する因子であって、小さくは脂質合成(lipid synthesis)と細胞膜(plasma membrane)の構成に役割を果たし、表皮層の上部に位置する角質層の形成を促進させる。培地の中の前記ヒドロコルチゾンの濃度は、約0.05μg/mlないし約5μg/ml、約0.075μg/mlないし約3.5μg/ml、約0.1μg/mlないし約2.5μg/ml、約0.2μg/mlないし約1.25μg/ml、約0.3μg/mlないし約1μg/ml、または約0.4μg/mlないし約0.6μg/mlである。
前記分化培地は、細胞培養に用いられるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI1640、F-10、F-12、DMEM/F12、α-MEM(α-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、MacCoy’s 5A培地、AmnioMax complete培地、AminoMaxII complete培地、EBM-2 Basal培地、Chang’s Medium及びMesenCult-XFからなる群から選択された一つ以上を含む。前記分化培地は血清を含む。前記血清は、ウシ胎児血清(fetal bovine serum:FBS)、仔ウシ血清(bovine calf serum:BCS)またはこれらの組み合わせでありうる。前記血清は、分化培地の総体積対比約1%ないし約50%、約2%ないし約25%、約5%ないし約20%、または約7.5%ないし約12.5%である。
【0022】
前記方法は、前記幹細胞を分化培地で120ないし600時間、150ないし500時間、180ないし450時間、または200ないし300時間、または5ないし25日、6ないし21日、7ないし18日、8ないし15日、または9ないし12日培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させることを含む。
【0023】
皮膚は表皮層、真皮層及び皮下脂肪層で構成される。表皮層の最も下の部分には基底層が位置し、新たな表皮細胞(keratinocyte、皮膚組織細胞または角質形成細胞)は、細胞分裂を通じてこの基底層で形成され、形成された表皮細胞は表皮層の上部の死んだ細胞を続けて代替する。このような過程は皮膚細胞の再生を誘導する。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、表皮層、例えば、基底層を構成する細胞である。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、表皮細胞の前駆細胞である。
【0024】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、その分化能及び自己再生能が幹細胞に比べて制限された細胞である。例えば、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、100%の分化能を持つ細胞または任意の%の分化能を持つ幹細胞から、0%の分化能を持つ細胞または任意の%より低い%の分化能を持つ細胞に転換された細胞である。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、幹細胞由来の表皮前駆細胞、分化した皮膚前駆細胞、分化した表皮細胞、皮膚幹細胞または表皮幹細胞と互換的に使われる。
【0025】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、分化培地で培養する前の幹細胞に比べて、ケラチン5(Krt5)、ケラチン1(Krt1)及びケラチン14(Krt14)からなる群から選択された一つ以上の発現が増加したものでありうる。すなわち、前記幹細胞が皮膚前駆細胞に分化しつつKrt5、Krt1及びKrt14からなる群から選択された一つ以上の発現が増加する。前記増加は、遺伝子の発現、すなわち、mRNAの量またはタンパク質の量が2倍以上、4倍以上、8倍以上、10倍以上、または20倍以上増加したものである。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、分化程度によってKrt10及び/またはインボルクリン(Involucrin:IVL)を多量に発現する分化後期に到逹していない状態に分化する。前記発現は、例えば、リアルタイム重合酵素連鎖反応法(real-time PCR:RT-PCR)、または免疫ブロット(Immunoblot:IB)などの技法を使って遺伝子発現上の変化を測定することで確認される。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、一定のサイズの円形の特異的な形態を示すものである。
前記方法は、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階を含む。
【0026】
前記培養は、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で継代培養なしに培養して行われる。前記培地は、タンパク質生産に適した培地であって、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞が培養される過程で、細胞間の相互作用を介して有用なタンパク質を生産し、かつ細胞の外に分泌できる培地を意味する。前記培地は、無血清培地である。前記培地は、塩化コリン、フェノールレッド(またはフェノースルホンフタレイン)またはこれらの組み合わせを含まない培地である。前記培地は、細胞培養に用いられるものであれば、特に制限されるものではなく、例えば、DMEM(Dulbecco’s Modified Eagle’s Medium)、MEM(Minimal Essential Medium)、BME(Basal Medium Eagle)、RPMI1640、F-10、F-12、DMEM/F12、α-MEM(α-Minimal Essential Medium)、G-MEM(Glasgow’s Minimal Essential Medium)、IMDM(Iscove’s Modified Dulbecco’s Medium)、MacCoy’s 5A培地、AmnioMax complete培地、AminoMaxII complete培地、EBM-2 Basal培地、Chang’s Medium及びMesenCult-XFからなる群から選択された一つ以上を含む。
【0027】
前記方法は、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を、培地で10ないし350時間、15ないし200時間、20ないし170時間、または40ないし80時間、または0.5ないし15日、1ないし8日、1.5ないし4日、または2ないし3日培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させることを含む。
【0028】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物は、分化した皮膚前駆細胞を培地で培養する過程中、または培養した後で収得した培地、分化した皮膚前駆細胞、またはそれらの混合物を意味する。
【0029】
前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、培地で培養されつつ細胞間の相互作用を通じて細胞の外に皮膚前駆細胞由来のタンパク質を分泌できる。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、周辺環境からの刺激によって遺伝子発現様相が変わり、これによって、幹細胞由来の皮膚前駆細胞から分泌されるタンパク質の種類及びその量も変わる。前記刺激は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞が培養される培地及び/または培養時間を含む。すなわち、培養される培地及び/または培養時間によって幹細胞由来の皮膚前駆細胞から分泌されるタンパク質の種類及びその量が変わり、幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液内に存在するタンパク質の組成及び含量も変わる。
【0030】
前記方法は、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を回収する段階を含む。前記回収は、分化した皮膚前駆細胞を培地で培養する過程中、または培養した後で収得された、幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物またはその上澄み液をそのまま収得するものである。前記回収は、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養する過程中、または培養した後で収得された、幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物またはその上澄み液を遠心分離するか、またはフィルタで濾過して、分化した皮膚前駆細胞及び/または巨大分子をとり除いた後で収得するものである。
【0031】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞が細胞の外に分泌するタンパク質を含む。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞は、培地で培養されることでタンパク質を生産して分泌する。前記タンパク質は、サイトカイン、成長因子などの有用なタンパク質を含む。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、下記の
図5に記載のタンパク質を含む。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases 2:TIMP2)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP1)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン1を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0032】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン2を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上の濃度を約10pg/ml以上、約15pg/ml以上、または約20pg/ml以上含む。
【0033】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、グルーチョ(groucho:GRO)、潜在性TGF-ベータ結合タンパク質(latent TGF-beta binding protein 1:latent TGF-beta bp1)、クロスベインレス-2(Crossveinless-2:CV-2)、スマッド4(Smad4)、インターロイキン-8(interleukin-8:IL-8)、アクチビンC(ActivinC)、インターロイキン-6(interleukin-6:IL-6)、マクロファージ炎症タンパク質2(macrophage inflammatory protein 2:MIP2)、及びアクチビンA(ActivinA)からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0034】
幹細胞を前記分化培地で培養して皮膚前駆細胞に分化させることで収得された、分化した皮膚前駆細胞を培地で培養する場合、幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含まない培地で培養することで、収得された細胞を培地で培養する場合に比べて、または通常の皮膚前駆細胞を培地で培養する場合に比べて、細胞の培養物中及び/または細胞由来のタンパク質中の前記有用なタンパク質の量が増加する。前記増加は、例えば、リアルタイム重合酵素連鎖反応法(real-time PCR:RT-PCR)、免疫ブロット(IB)、または酵素結合免疫吸着分析法(Enzyme-Linked ImmunoSorbent Assay:ELISA)などの技法を使って遺伝子発現相の変化を測定することで確認される。
【0035】
他の態様は、幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階と、前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階と、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を回収する段階と、を含む幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を提供する。
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞が細胞の外に分泌するタンパク質を含んでもよく、下記の
図5に記載のタンパク質を含んでもよい。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン2を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)からなる群から選択された一つ以上を含む。
【0036】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、分化した皮膚前駆細胞を培地で培養した後で得られる条件培養液(conditioned media)であって、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞が培養される過程中で細胞間の相互作用を通じて細胞の外に分泌するタンパク質を含む。前記タンパク質は、サイトカイン、成長因子などの有用なタンパク質を含む。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液は、培養液内の複数の有用なタンパク質を高濃度で含んでおり、前記製造方法によれば、前記過程を繰り返して行う場合にも、有用なタンパク質の組成及びその濃度の一定な幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を収得する。
【0037】
他の態様は、幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階と、前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階と、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を回収する段階と、を含む幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法を提供する。
【0038】
前記幹細胞をアスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含む分化培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞に分化させる段階と、前記分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞を培地で培養して幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物を生成させる段階と、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞の培養物から幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を回収する段階と、タンパク質とについては前記の通りである。
【0039】
前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞から生産されたタンパク質は、分化した幹細胞由来の皮膚前駆細胞が培地で培養される過程中で細胞間の相互作用を通じて細胞の外に分泌される有用なタンパク質を含む。前記タンパク質は、サイトカイン、成長因子などの有用なタンパク質を含む。前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法によって生産されたタンパク質は、複数の有用なタンパク質を高濃度で含んでおり、前記生産方法によれば、前記過程を繰り返して行う場合にも、有用なタンパク質の組成及びその濃度の一定なタンパク質を収得する。また、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞からタンパク質を生産する方法によれば、複数の有用なタンパク質を量産できる。
【発明の効果】
【0040】
一態様による幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液を製造する方法、及び前記方法によって生産された幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液によれば、前記幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液内に有用なタンパク質を多量含むことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】皮膚由来の未分化表皮細胞(skin derived undifferentiated keratinocyte)を表皮細胞に分化させた後、及び胎盤由来の幹細胞及び臍帯由来の幹細胞を分化培地で11日間皮膚前駆細胞に分化させた後、各細胞の形態を示す図面である。
【
図2】胎盤由来の幹細胞を分化培地で皮膚前駆細胞に分化させる過程中、3日、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日、19日及び21日にKrt5、Krt1、IVL、Krt14、及びKrt10の発現レベルを測定した結果を示す図面である。
【
図3】胎盤由来の幹細胞を分化培地で皮膚前駆細胞に分化させる過程中、3日、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日、19日及び21日にKrt14のタンパク質レベルを測定した結果を示す図面である。
【
図4】胎盤由来の幹細胞を分化培地で皮膚前駆細胞に分化させる過程中、3日、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日、19日及び21日にKrt14のタンパク質レベルを測定した結果を示す図面である。
【
図5】幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液で発現量の多いサイトカインのうち、上位24種を示す図面である。
【
図6】幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液(分化培養液)、未分化幹細胞培養液(未分化培養液)、及び通常の表皮細胞培養液(表皮細胞培養液)において、ニドゲン-1の濃度を示す図面である。
【
図7A】胎盤由来の幹細胞の表面抗原特性を示す結果を示す図面である。
【
図7B】胎盤由来の幹細胞にそれぞれ分化誘導物質を添加し、脂肪細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞に分化を誘導した結果を示すイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施例を通じてさらに詳細に説明する。しかし、これらの実施例は本発明を例示的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれらの実施例に限定されるものではない。
【0043】
実施例1:幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液の製造及び幹細胞由来の皮膚前駆細胞から生産されたタンパク質成分の確認
1.幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液の製造
(1)幹細胞から皮膚前駆細胞への分化
正常分娩した健康な母親から事前に十分な説明に基づく同意(informed consent)を受け、正常の胎盤の分娩時に収集された胎盤から臍帯を分離した。分離された胎盤及び臍帯それぞれを、Ca/Mgを含んでいない(free)ダルベッコ・リン酸緩塩緩衝食塩水(Dulbecco’s Phosphate-Buffered Saline:DPBS)で2ないし5回洗浄して血液除去した。次いで、胎盤組織を1ないし5mmほどのサイズに切り取った。また、臍帯から動脈及び静脈を除去した後、1ないし5mmほどのサイズに臍帯を切り取った。次いで、前記胎盤及び臍帯それぞれを培養容器に付着して10ないし15日培養をし、前記培養された組織から細胞が伸び出ることを確認した後、5ないし6時間200U/mlのコラゲナーゼIを加えて胎盤由来の幹細胞及び臍帯由来の幹細胞をそれぞれ分離した。
【0044】
胎盤由来の幹細胞が間葉系幹細胞の特性を示すかどうかを確認するために、表面タンパク質の分析のために流細胞分析を行った。細胞をDPBSを使って洗浄し、2%のFBSが含まれているDPBSに入れてCD44、CD73、CD90、CD105、CD45、CD34、CD31、CD29、CD49、CD9、HLA-ABC、及びHLA-ER抗体と約20分間反応させた。次いで、流細胞分析機(FACS Calibur,Becton Bickinson)を通じて表面抗原特性を分析した。
図7Aは、胎盤由来の幹細胞の表面抗原特性を示す結果を示す図面である。
図7Aに示したように、胎盤由来の幹細胞でCD44、CD73、CD90、CD105、CD29、CD49、CD9及びHLA-ABCの発現量が多く現れたことから、前記胎盤由来の幹細胞が間葉系幹細胞の性格を持つということが分かる。
【0045】
また、胎盤由来の幹細胞の分化能分析のために、脂肪細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞への分化を誘導した。次いで、脂肪細胞への分化を誘導した試料はOil Red Oで染色し、軟骨細胞への分化を誘導した試料はAlcian blueで染色し、骨芽細胞への分化を誘導した試料はAlizarin Red Sで染色して、分化能を分析した。
図7Bは、胎盤由来の幹細胞にそれぞれ分化誘導物質を添加し、脂肪細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞に分化を誘導した結果を示すイメージである。
図7Bに示したように、前記分離された細胞は、間葉系幹細胞のような多分化能を持つものであって、それからそれぞれ脂肪細胞、骨芽細胞及び軟骨細胞に分化が誘導されたということが分かる。前記分離された細胞を100ないし5,000細胞/cm
2の濃度でマルチフラスコに分注し、前記細胞をP0として、25ng/mlの線維芽細胞成長因子-4(fibroblast growth factor-4:FGF-4)、1μg/mlのヘパリン、50μg/mlのゲンタマイシン、及び10%の牛胎児血清(Fetal Bovine Serum:FBS)が含有されているMEM alpha GlutaMAX(PS-CM)培地で37℃、5%のCO
2の条件で2日間、5継代の間継代培養した。
【0046】
次いで、培養された細胞にDMEM/F12(Dulbecco’s Modified Eagle Medium:Nutrient Mixture F-12)培地と0.3μMのアスコルビン酸、0.5μg/mlのヒドロコルチゾン、及び10%のFBSを含む分化培地をマルチフラスコに5ml/cm2になるように添加し、37℃、5%のCO2の条件の下で11日間培養した。対照群は、アスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含まない培地で培養したものを使った。
【0047】
図1は、皮膚由来の未分化表皮細胞を表皮細胞に分化させた後、及び胎盤由来の幹細胞及び臍帯由来の幹細胞を分化培地で11日間皮膚前駆細胞に分化させた後、各細胞の形態を示す図面である。胎盤由来の幹細胞及び臍帯由来の幹細胞それぞれは、分化培地で皮膚前駆細胞の形態に類似した小さくて一定のサイズの円形の細胞状に分化した。
図1に示したように、胎盤由来の幹細胞及び臍帯由来の幹細胞は、分化培地で培養された後で皮膚前駆細胞の形態を示すということが分かる。
【0048】
(2)分化した皮膚前駆細胞での遺伝子発現の確認
(2.1)リアルタイム重合酵素連鎖反応法(real-time PCR:RT-PCR)の分析
(1)の胎盤由来の幹細胞を皮膚前駆細胞に分化させる過程中、中期及び末期段階に発現する遺伝子であるKrt5、Krt1、IVL、Krt14、及びKrt10の発現レベルをRT-PCRで測定した。
【0049】
胎盤由来の幹細胞を皮膚前駆細胞に分化させる過程中、3日、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日、19日及び21日に細胞を収得し、フェノール/クロロホルムを使って細胞からRNAを抽出した。抽出されたRNAを逆転写してcDNAを合成した。cDNAの遺伝子発現の程度は、Applied Biosystems 700配列検出システム(Foster City,CA,USA)上で、RT-PCRで分析した。この時、合成されたcDNA、下記の表1に記載のKrt5、Krt1、IVL、Krt14、及びKrt10それぞれに特異的なプリマーセット、2xTaqManマスター混合物及び20xpremade TaqMan遺伝子発現分析(Applied Biosystems)キットを用いた。PCR条件は、次の通りである:95℃で10分、95℃で15秒及び60℃で1分、40回繰り返し。Krt5、Krt1、IVL、Krt14、及びKrt10のmRNAレベルを、ヒトグリセルアルデヒド-3-リン酸デヒドロゲナーゼ(Glyceraldehyde3-phosphate dehydrogenase:GAPDH)数値に正規化した。
【0050】
【0051】
図2は、胎盤由来の幹細胞を皮膚前駆細胞に分化させる過程中、3日、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日、19日及び21日にKrt5、Krt1、IVL、Krt14、及びKrt10遺伝子の発現レベルを測定した結果を示す。Y軸は、ヒトGAPDHに正規化した前記遺伝子の発現量を示す。
図2に示したように、分化が進みつつ5日以後に皮膚前駆細胞の分化段階で中期に発現するKrt14のmRNAレベルが増加した。
【0052】
(2.2)免疫ブロット(Immunoblot:IB)
(1)の胎盤由来の幹細胞を皮膚前駆細胞に分化させる過程中、中期段階に発現する遺伝子であるKrt14の発現レベルを免疫ブロットで測定した。
【0053】
胎盤由来の幹細胞を皮膚前駆細胞に分化させる過程中、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日、19日及び21日に細胞を収得し、収得した細胞を細胞溶解バッファで溶解した。前記細胞溶解バッファは、RIPAバッファ(Thermofisher)及びプロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche,Inc.,Indianapolis,IN,USA)を含むものを使った。細胞溶解物に含まれているタンパク質を定量し、各試験群及び対照群において、タンパク質20μgを7.5%のポリアクリルアミドゲルの電気泳動法(Sodium dodecyl sulphate-polyacrylamide gel electrophoresis:SDS-PAGE)で分離した。分離されたタンパク質を、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜(EMD Millipore,Billerica,MA,USA)に移動させた。前記PVDF膜を1次抗体と4℃で一晩中反応させた。翌日、前記PVDF膜をTweenとTris、NaClが含有されているTBST溶液で洗浄し、HRPが結合された2次抗体と常温で反応させた。タンパク質バンドを、増加した化学発光(Enhanced chemiluminescence:ECL)キットシステム(EMD Millipore)を使って可視化した。
【0054】
図3及び
図4は、胎盤由来の幹細胞を分化培地で皮膚前駆細胞に分化させる過程中、3日、5日、7日、9日、11日、13日、15日、17日、19日及び21日にKrt14のタンパク質レベルを測定した結果を示す。
図3及び
図4に示したように、胎盤由来の幹細胞は、分化培地で培養された5日以後からKrt14タンパク質の量が段々増加したということが分かる。一方、胎盤由来の幹細胞は、アスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含まない培地で培養された後、Krt14遺伝子が発現しないか、または非常に低い程度に発現するということが分かった。
【0055】
(3)幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液の製造
(1)で分化した皮膚前駆細胞から培養液を生産した。
(1)で分化した皮膚前駆細胞から分化培地を除去し、DPBSで洗浄して残留血清を除去した。次いで、塩化コリン及びフェノールレッドを含まないDMEM/F12培地を培養プレートに2ないし3ml/cm2になるように添加し、37℃、5%のCO2の条件で2ないし4日間培養した。その後、分化した皮膚前駆細胞及び培地が混合された皮膚前駆細胞の培養物から上澄み液を回収した。次いで、前記上澄み液を0.22μmのフィルタでろ過して分化した皮膚前駆細胞培養液を収得した。対照群は、アスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含まない培地で培養された胎盤由来の幹細胞(以下、未分化幹細胞)及び通常の表皮細胞それぞれに培地を添加し、かつ培養して回収された培養液を使った。
【0056】
(4)幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液のタンパク質成分の分析
(3)で収得した、分化した皮膚前駆細胞培養液内で細胞由来のタンパク質の成分をセクリトム分析で確認した。具体的に総507種のサイトカインのレベルを確認した。
セクレトーム分析は、RayBioヒトサイトカイン抗体アレイ(RayBio Human Cytokine Antibody Array)のプロトコルによって、RayBioTM カスタムL-シリーズヒトサイトカインアレイ(RayBioTM Custom L-Series Human Cytokine Array)(RayBiotech,Norcross,GA)を用いて行った。得られたスポットの相対強度は、イメージJによって測定され、背景除去(background subtraction)によって補正された。結果は、2回判読結果の平均値で示した。
【0057】
図5は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液で発現量の多いサイトカインのうち、上位24種を示す図面である。表2は、分化した皮膚前駆細胞培養液で多量に発現するサイトカイン24種を示したものである。分化した皮膚前駆細胞培養液は、トロンボスポンジン(TSP)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質1(Tissue inhibitor of metalloproteinases 1:TIMP1)、組織メタロプロテアーゼ阻害物質2(Tissue inhibitor of metalloproteinases1:TIMP2)、エクトジスプラシン-A2(EDA-A2)、X連鎖エクトジスプラシン-A受容体(X-linked ectodysplasin-A receptor:XEDAR)、アンジオポエチン-1、酸性かつシステイン豊富な分泌タンパク質(secreted protein acidic and rich in cysteine:SPARC)、上皮細胞成長因子類似及び二つのフォリスタチン類似のドメイン2を持つ膜貫通タンパク質/トモレグリン-1(Transmembrane protein with EGF-like and two Follistatin-like domains 1/Tomoregulin-1:TMEFF1/Tomoregulin-1)、ニドゲン-1、インスリン類似成長因子結合タンパク質-3(Insulin-like growth factor-binding protein-3:IGFBP-3)、トロンボスポンジン-2、腫瘍懐死因子関連の活性誘導サイトカイン(TNF-related activation-induced cytokine:TRANCE)、及びインターロイキン-15受容体アルファ(interleukin-15receptor alpha:IL-15Rアルファ)などを多量に含有するということが分かる。
【0058】
【0059】
(5)幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液内のタンパク質濃度の分析
前記分化した皮膚前駆細胞培養液で表2のタンパク質が多量分泌するということを確認し、これらの分泌量を、酵素結合免疫吸着分析法(enzyme-linked immunosorbent assay:ELISA)で定量的に分析した。対照群は、アスコルビン酸及びヒドロコルチゾンを含まない培地で培養された胎盤由来の幹細胞(以下、未分化幹細胞)に培地を添加し、2ないし4日間培養して回収された培養液、及び表皮細胞に培地を添加し、2ないし4日間培養して回収された培養液を使った。ELISAキットは、トロンボスポンジンに対してDTP00B(R&D system,Minieapolis,MN)、ニドゲン-1に対してELH-Nidogen 1(Raybiotec,Norcross,GA)、TRANCEに対してMBS262463(Mybiosource)、IL-15Rアルファに対してELH-IL15RA(Raybiotec,Norcross,GA)を用い、製造社の指示に従って行った。いずれも450nmでマイクロプレートリーダーEpoch(BioTek Inc.)を使って吸光度を測定し、Gen5(2.00)ソフトウェアを用いて分析した。
【0060】
下記の表3は、分化した皮膚前駆細胞培養液でトロンボスポンジン、ニドゲン-1、TRANCE、及びIL-15Rアルファの濃度を測定した結果である。分化した皮膚前駆細胞培養液は、ニドゲン、トロンボスポンジンなどを多量含むということが分かる。
図6は、幹細胞由来の皮膚前駆細胞培養液、未分化幹細胞培養液及び通常の表皮細胞培養液におけるニドゲン-1の濃度を示したものである。
図6に示したように、分化した皮膚前駆細胞培養液は、未分化幹細胞培養液及び通常の表皮細胞培養液に比べてニドゲン-1の含量が10倍以上高いということが分かる。
【0061】
【0062】
【配列表】
【外国語明細書】