(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011985
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】繊維状フィルタ
(51)【国際特許分類】
B01D 39/14 20060101AFI20240118BHJP
D06M 15/564 20060101ALI20240118BHJP
D06M 10/10 20060101ALI20240118BHJP
【FI】
B01D39/14 Z
D06M15/564
D06M10/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114379
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】308013436
【氏名又は名称】小島プレス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴章
【テーマコード(参考)】
4D019
4L031
4L033
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019AA03
4D019BA02
4D019BA03
4D019BA04
4D019BA12
4D019BA13
4D019BA17
4D019BA18
4D019BB02
4D019BB03
4D019BB05
4D019BC12
4D019CB06
4D019CB07
4D019DA06
4L031AB01
4L031AB34
4L031CB13
4L031DA11
4L033AB01
4L033AB07
4L033AC15
4L033CA50
(57)【要約】
【課題】実用上問題ない程度に通気性を維持しつつ、強度を高めることができる繊維状フィルタを提供すること。
【解決手段】本発明の一態様である繊維状フィルタは、繊維を含有する基材と、前記基材の前記繊維を被覆する有機高分子の蒸着重合膜と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維を含有する基材と、
前記基材の前記繊維を被覆する有機高分子の蒸着重合膜と、
を備えることを特徴とする繊維状フィルタ。
【請求項2】
前記基材は、複数の前記繊維を含有し、
前記蒸着重合膜は、複数の前記繊維の各々を被覆する、
ことを特徴とする請求項1に記載の繊維状フィルタ。
【請求項3】
前記有機高分子は、ポリウレアである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維状フィルタ。
【請求項4】
前記ポリウレアは、
少なくとも一つのエーテル結合と、
脂肪族構造または脂環族構造と、
を有することを特徴とする請求項3に記載の繊維状フィルタ。
【請求項5】
前記有機高分子は、少なくとも一つのエーテル結合を有する、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の繊維状フィルタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、繊維状フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車、電気機器、医療または土木建築等の各種分野において、濾過フィルタまたはセパレータ等の様々な用途に繊維状フィルタが使用されている。一般に、繊維状フィルタは、不織布等の通気性を有する繊維材を用いて構成される。この繊維状フィルタの通気性は、使用する繊維材に含まれる繊維間の隙間によって保持されている。
【0003】
このような繊維状フィルタの一例として、例えば、ポリエステル系短繊維と、当該ポリエステル系短繊維同士の繊維交絡点を固着する熱可塑性エラストマーと、を含有する水処理用の濾過フィルタ(水処理ろ材)が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
また、上述した繊維状フィルタの通気性は、使用する繊維材に含まれる繊維の密度を制御することにより、用途に応じて調整することが可能である。例えば、繊維状フィルタに含まれる繊維の密度を減少させることにより、この繊維状フィルタの通気性を、その用途に応じて要求される程度に高めることができる。
【0006】
しかしながら、繊維状フィルタ中の繊維の密度を減少させた場合、上記のように通気性は高まるものの、繊維状フィルタの強度が低下してしまい、これに起因して、繊維状フィルタが濾過等の用途に耐えられず破損する恐れがある。また、上記繊維状フィルタの破損を回避するために繊維状フィルタ中の繊維の密度を増大させた場合、繊維状フィルタの通気性が過度に低下してしまい、これに起因して、繊維状フィルタを、要求される用途に使用できない恐れがある。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであって、実用上問題ない程度に通気性を維持しつつ、強度を高めることができる繊維状フィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る繊維状フィルタは、繊維を含有する基材と、前記基材の前記繊維を被覆する有機高分子の蒸着重合膜と、を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る繊維状フィルタは、上記の発明において、前記基材は、複数の前記繊維を含有し、前記蒸着重合膜は、複数の前記繊維の各々を被覆する、ことを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る繊維状フィルタは、上記の発明において、前記有機高分子は、ポリウレアである、ことを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る繊維状フィルタは、上記の発明において、前記ポリウレアは、少なくとも一つのエーテル結合と、脂肪族構造または脂環族構造と、を有することを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る繊維状フィルタは、上記の発明において、前記有機高分子は、少なくとも一つのエーテル結合を有する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、繊維状フィルタの通気性を実用上問題ない程度に維持しつつ、当該繊維状フィルタの強度を高めることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタに用いられる繊維基材の一構成例を示す図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタの繊維断面の一例を示す断面模式図である。
【
図4】
図4は、ポリウレアの分子間の拘束力を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、添付図面を参照して、本発明に係る繊維状フィルタの好適な実施形態について詳細に説明する。なお、本実施形態により、本発明が限定されるものではない。また、図面は模式的なものであり、各要素の寸法の関係、各要素の比率などは、現実のものとは異なる場合があることに留意する必要がある。図面の相互間においても、互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている場合がある。また、各図面において、同一構成部分には同一符号が付されている。
【0016】
(繊維状フィルタの構成)
まず、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタの構成について説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタの一構成例を示す図である。
図1としては、この繊維状フィルタ10の一部分の外観を撮像したSEM(走査型電子顕微鏡)写真が示されている。本発明の実施形態に係る繊維状フィルタ10は、繊維等を含有して構成されるフィルタであり、
図1に示すように、繊維2を含有する繊維基材1と、繊維基材1の繊維2を被覆する蒸着重合膜3とを備える。
【0017】
繊維基材1は、通気性を有する基材であり、例えば
図1に示すように、繊維2を含有する。
図2は、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタに用いられる繊維基材の一構成例を示す図である。
図2としては、含有する繊維2が蒸着重合膜3で被覆されていない状態にある繊維基材1の一部分の外観を撮像したSEM写真が示されている。例えば
図2に示すように、繊維基材1は、複数の繊維2を含有し、これら複数の繊維2を互いに交差させた状態で固着することによって形成される。これら複数の繊維2の各交差部分は、熱圧着等の手法によって固着されてもよいし、樹脂等のバインダによって固着されてもよい。すなわち、繊維基材1は、複数の繊維2の他に、これら複数の繊維2同士を固着するバインダをさらに含有してもよい。当該バインダとしては、オレフィン系樹脂やポリエステル系樹脂に例示される熱可塑性樹脂等が挙げられる。
【0018】
また、
図2に示すように、繊維基材1は、複数の空隙4を有する。複数の空隙4の各々は、複数の繊維2における各繊維間の隙間であり、繊維基材1の厚さ方向(
図2の紙面に垂直な方向)の両面に通じている。繊維基材1の通気性は、これら複数の空隙4によって保持される。
図1、2に示すように、繊維基材1は、繊維状フィルタ10においても、複数の空隙4を有している。すなわち、繊維基材1の通気性は、含有する繊維2が蒸着重合膜3によって被覆された状態であっても、これら複数の空隙4によって保持されている。
【0019】
このような繊維基材1は、不織布によって構成されてもよいし、織布、織物または紙等の繊維状部材によって構成されてもよい。また、繊維基材1は、
図1、2に例示したように複数の繊維2を含有する基材であってもよいし、単一の繊維を含有する基材であってもよい。例えば、繊維基材1が単一の繊維を含有するものである場合、繊維基材1は、単一の長尺な繊維を折り重ねる等して、隣り合う繊維間に隙間のある網目状等の基材に形成されてもよい。繊維基材1が含有する繊維2は、有機繊維であってもよいし、無機繊維であってもよい。繊維2に採用される有機繊維としては、天然繊維または化学繊維が挙げられる。当該天然繊維としては、例えば、麻、綿、絹等が挙げられる。当該化学繊維としては、例えば、ポリエステル系繊維(ポリエチレンテレフタレート繊維等)、ポリオレフィン系繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、アクリル系繊維等が挙げられる。繊維2に採用される無機繊維としては、例えば、カーボン繊維、ガラス繊維、金属繊維等が挙げられる。
【0020】
蒸着重合膜3は、
図1に示すように、繊維基材1に含まれる繊維2を被覆する有機高分子の膜である。蒸着重合膜3は、原材料であるモノマーまたはオリゴマーを公知の蒸着重合法によって繊維基材1上で重合反応させることにより、繊維基材1の繊維2に成膜される。例えば、繊維基材1が複数の繊維2を含有する場合、蒸着重合膜3は、これら複数の繊維2の各々を被覆するように成膜される。
【0021】
図3は、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタの繊維断面の一例を示す断面模式図である。
図3に示すように、蒸着重合膜3は、繊維基材1に含まれる全ての繊維2の外表面(ここでは外周面)を、繊維2の長手方向まわりの全域に亘って被覆する。これら全ての繊維2は、蒸着重合膜3によって被覆されることによって強化される。具体的には、これら全ての繊維2の各々における破断強度、耐薬品性および耐熱性が、それぞれ、蒸着重合膜3で被覆されていない場合に比べて高くなる。繊維状フィルタ10の破断強度、耐薬品性および耐熱性の各々は、このように蒸着重合膜3で被覆された繊維2を含有する繊維基材1を備えることにより、蒸着重合膜3を備えていない場合に比べて高くなる。
【0022】
また、蒸着重合膜3は、繊維基材1における繊維2の形状(外形)に沿って、隣り合う繊維2間の隙間(すなわち空隙4)を閉塞しないように成膜される。この際、蒸着重合膜3の膜厚は、繊維基材1における繊維2の間隔や密度等を考慮し、過度に厚くならないよう設定されることが好ましい。このような蒸着重合膜3が繊維基材1に含まれる繊維2の外表面に成膜されたとしても、繊維状フィルタ10は、
図1に示すように、繊維基材1に複数の空隙4が存在する状態を保持する。これにより、繊維状フィルタ10の通気度は、その用途において実用上問題ない程度に維持される。
【0023】
本明細書において、通気度は、繊維状フィルタ10の通気性を数値化したものである。具体的には、通気度は、1cm2の面積の領域を、1秒間で、どの程度の空気が通過するかを意味する数値である。繊維状フィルタ10の通気性は、通気度が大きい値であるほど高い。このような通気度は、JIS L 1096の通気性試験によって測定することができる。
【0024】
上記のような蒸着重合膜3を構成する有機高分子としては、例えば、ポリウレア、ポリウレタン、ポリアミド、ポリイミド等が挙げられる。ポリウレアは、アミン系化合物とイソシアネート系化合物との重合反応(詳細には重付加反応)によって生成される。ポリウレアは、以下に示す一般式(1)によって表される化学構造を有する。
【0025】
【0026】
一般式(1)において、R1基は、アミン系化合物に由来する有機基である。R2基は、イソシアネート系化合物に由来する有機基である。R1基およびR2基は、各々、脂肪族構造、脂環族構造および芳香族構造から任意に選択される化学構造を有する。これらR1基およびR2基は、互いに同じ有機基であってもよいし、異なる有機基であってもよい。また、R1基およびR2基の各々において、水素原子は、置換基によって置換されていてもよい。
【0027】
本明細書において、脂肪族構造は、脂肪族化合物が有する化学構造であり、具体的には、複数の炭素原子が直鎖状または分枝状に結合している構造である。脂環族構造は、脂環式化合物が有する化学構造であり、具体的には、複数の炭素原子が環状に結合した炭素環を一つ以上含む構造である。なお、脂環族構造における炭素環には、芳香族性を有する炭素環(ベンゼン環等)は含まれない。芳香族構造は、芳香族化合物が有する化学構造であり、具体的には、芳香族性を有する炭素環(ベンゼン環等)を一つ以上含む構造である。
【0028】
ポリウレアの一原材料としてのアミン系化合物は、上述したR1基と複数のアミノ基とを有する化合物である。例えば、このアミン系化合物としては、炭素数が6~20の直鎖アルキルジアミン、1,3-シクロヘキシルアミン、ジエチレントリアミン、3,3’-ジアミノジプロピルアミン、ビスヘキサメチレンジアミン、ビス(アミノメチル)ノルボルナン、ポリエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、N,N’-ビス(2-アミノエチル)-1,3-プロパンジアミン、2,2’-オキシビス(エチルアミン)、2,2’-ジアミノ-N-メチルジエチルアミン、ジエチレングリコールビス(3-アミノプロピル)エーテル、1,14-ジアミノ-3,6,9,12-テトラオキサテトラデカン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、トリス(2-アミノエチル)アミン、トリス(3-アミノプロピル)アミン、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、1,4-シクロヘキサンジアミン、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン、1,4-ブタンジオールビス(3-アミノプロピル)エーテル、トリエチレンテトラミン、イソホロンジアミン等が挙げられる。
【0029】
また、ポリウレアの一原材料としてのイソシアネート系化合物は、上述したR2基と複数のイソシアネート基(-NCO基)とを有する化合物である。例えば、このイソシアネート系化合物としては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン4,4’-ジイソシアナート、ジイソシアン酸イソホロン、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-ジイソシアナトシクロヘキサン等が挙げられる。
【0030】
ポリウレタンは、アルコール系化合物とイソシアネート系化合物との重合反応(詳細には重付加反応)によって生成される。ポリウレタンは、以下に示す一般式(2)によって表される化学構造を有する。
【0031】
【0032】
一般式(2)において、R1基は、アルコール系化合物に由来する有機基である。R2基は、イソシアネート系化合物に由来する有機基である。一般式(2)中のR1基およびR2基は、各々、上述した一般式(1)中のR1基およびR2基と同様である。
【0033】
ポリウレタンの一原材料としてのアルコール系化合物は、上述したR1基と複数の水酸基とを有する化合物である。例えば、このアルコール系化合物としては、ジオール等が挙げられる。なお、ポリウレタンの一原材料としてのイソシアネート系化合物は、上述したポリウレアの一原材料として用いられるイソシアネート系化合物と同様である。
【0034】
ポリアミドは、アミン系化合物とカルボン酸系化合物との重合反応(詳細には重縮合反応)によって生成される。ポリアミドは、以下に示す一般式(3)によって表される化学構造を有する。
【0035】
【0036】
一般式(3)において、R1基は、アミン系化合物に由来する有機基である。R2基は、カルボン酸系化合物に由来する有機基である。一般式(3)中のR1基およびR2基は、各々、上述した一般式(1)中のR1基およびR2基と同様である。
【0037】
ポリアミドの一原材料としてのカルボン酸系化合物は、上述したR2基と複数のカルボキシル基またはアシル基とを有する化合物である。例えば、このカルボン酸化合物としては、ジカルボン酸、複数のアシル基を有するカルボン酸塩化物(アシル化合物)等が挙げられる。なお、ポリアミドの一原材料としてのアミン系化合物は、上述したポリウレアの一原材料として用いられるアミン系化合物と同様である。
【0038】
なお、ポリイミドとしては、特に一般式は示さないが、公知のポリイミドを用いることができる。例えば、ポリイミドは、R1基を有するアミン系化合物とR2基を有するカルボン酸系化合物との重合反応(詳細には重縮合反応)によってポリイミド前駆体を生成し、当該ポリイミド前駆体をイミド化することによって得られる。このようなポリイミドは、アミン系化合物に由来するR1基とカルボン酸系化合物に由来するR2基とを有する。
【0039】
上述した蒸着重合膜3を構成する有機高分子のうち、ポリウレア、ポリアミドおよびポリイミドは、ポリウレタンに比して耐薬品性および耐熱性に優れている。このため、繊維状フィルタ10の耐薬品性および耐熱性を向上させるという観点から、蒸着重合膜3を構成する有機高分子は、ポリウレア、ポリアミドおよびポリイミドから選択される1種以上であることが好ましい。
【0040】
また、上述した蒸着重合膜3を構成する有機高分子のうち、ポリウレアおよびポリウレタンは、モノマーまたはオリゴマー等の原材料の重付加反応によって生成される。このため、ポリウレアおよびポリウレタンの各々における生成反応時(重合反応時)には、副生成物が発生しない。これに対し、ポリアミドおよびポリイミドは、原材料の重縮合反応によって生成される。このため、ポリアミドおよびポリイミドの各々における生成反応時(重合反応時)には、水または塩酸等の副生成物が発生する。
【0041】
ここで、繊維基材1の繊維2上に蒸着重合膜3を成膜するための蒸着重合装置においては、例えば、当該装置内の真空環境下で蒸着重合が行われる。このため、蒸着重合膜3を構成する有機高分子としてポリアミドやポリイミド等の重縮合反応系の化合物を用いる場合、副生成物を除去するための排気ポンプ等の設備を蒸着重合装置に導入する等して、蒸着重合装置内の真空状態を確保する必要がある。この場合、蒸着重合装置に要する手間およびコストが増大する恐れがある。
【0042】
したがって、繊維状フィルタ10の生産性の観点から、蒸着重合膜3を構成する有機高分子は、ポリウレアおよびポリウレタンから選択される1種以上の重付加反応系の化合物であることが好ましい。これらの中でも、ポリウレアは、重付加反応系の化合物であるポリウレタンに比して、重合反応の速度が極めて速いという利点を有している。このため、繊維状フィルタ10の生産効率の向上という観点から、蒸着重合膜3を構成する有機高分子は、ポリウレアであることがより好ましい。
【0043】
また、上述した蒸着重合膜3を構成する有機高分子のうち、ポリウレアは、ポリウレタン、ポリアミドおよびポリイミドに比して、分子間の拘束力が高いという特徴を有している。
図4は、ポリウレアの分子間の拘束力を説明する図である。蒸着重合膜3を構成する有機高分子としてポリウレアを用いた場合、蒸着重合膜3においては、例えば
図4に示すように、ポリウレア中の互いに隣り合う複数のウレア基31、32の間で、分子間水素結合が各々2つ形成される。詳細には、一方のウレア基31に含まれる酸素原子毎に、他方のウレア基32に含まれる2つの水素原子が分子間で水素結合している。ポリウレタンは、このような複数の分子間水素結合を有しているため、ポリウレタン、ポリアミドおよびポリイミドに比して、分子間の拘束力が高いことから耐薬品性および耐熱性に優れている。したがって、繊維状フィルタ10の耐薬品性および耐熱性を向上させるという観点から、蒸着重合膜3を構成する有機高分子は、ポリウレアであることが特に好ましい。
【0044】
また、上述した蒸着重合膜3を構成する有機高分子は、繊維状フィルタ10の破断強度をより高めるという観点から、少なくとも一つのエーテル結合(-O-結合)を有することが好ましい。詳細には、上記有機高分子は、例えば、一般式(1)~(3)に例示されるように、原材料に由来するR1基およびR2基を有する。上記有機高分子は、少なくとも一つのエーテル結合を、R1基に有していてもよいし、R2基に有していてもよいし、R1基およびR2基の両方に有していてもよい。上記有機高分子が少なくとも一つのエーテル結合を有する場合、蒸着重合膜3の柔軟性(伸縮性)が向上する。これにより、蒸着重合膜3は、繊維基材1における繊維2の動きに追従して柔軟に変形することができる。この結果、蒸着重合膜3の繊維2に対する密着性が高まることから、繊維基材1における蒸着重合膜3の強度がより高まり、延いては、繊維状フィルタ10の破断強度がより高まる。
【0045】
上記有機高分子が少なくとも一つのエーテル結合を有するためには、例えば、上記有機高分子の原材料にエーテル結合が含まれることが好ましい。この場合、少なくとも一つのエーテル結合は、一方の原材料のR1基に含まれていてもよいし、他方の原材料のR2基に含まれていてもよいし、これらのR1基およびR2基の両方に含まれていてもよい。以下に、上記有機高分子の原材料の一例として、少なくとも一つのエーテル結合を有する化合物の化学構造例を示す。なお、上記有機高分子の原材料は、以下に示す化学構造の化合物(1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタン)に限定されない。
【0046】
【0047】
また、上述した蒸着重合膜3を構成する有機高分子は、繊維状フィルタ10の耐熱性をより高めるという観点から、上述した脂肪族構造、脂環族構造および芳香族構造のうち、脂肪族構造または脂環族構造を有することが好ましい。詳細には、上記有機高分子は、原材料に由来するR1基およびR2基を有し、脂肪族構造または脂環族構造を、R1基およびR2基の少なくとも一つに有することが好ましい。上記有機高分子が脂肪族構造または脂環族構造を有することにより、繊維基材1における蒸着重合膜3の耐熱性がより高まり、この結果、繊維状フィルタ10の耐熱性がより高まる。また、上記有機高分子が脂肪族構造または脂環族構造を有することにより、蒸着重合膜3の紫外線による劣化を抑制することができる。
【0048】
上記有機高分子が脂肪族構造または脂環族構造を有するためには、例えば、上記有機高分子の原材料に脂肪族構造または脂環族構造が含まれることが好ましい。この場合、肪族族構造または脂環族構造は、一方の原材料のR1基に含まれていてもよいし、他方の原材料のR2基に含まれていてもよいし、これらのR1基およびR2基の両方に含まれていてもよい。以下に、上記有機高分子の原材料の一例として、脂肪族構造または脂環族構造を有する化合物の化学構造例を示す。なお、上記有機高分子の原材料は、以下に示す化学構造の化合物(4,4’-メチレンジシクロヘキシルジイソシアナート(水添MDI))に限定されない。
【0049】
【0050】
特に、繊維状フィルタ10の耐薬品性、耐熱性および破断強度をより高めるという観点から、蒸着重合膜3を構成する有機高分子は、少なくとも一つのエーテル結合と、脂肪族構造または脂環族構造とを有するポリウレアであることがより一層好ましい。例えば、当該ポリウレアは、上述した一般式(1)中のR1基およびR2基の少なくとも一つに、一つ以上のエーテル結合と、脂肪族構造または脂環族構造とを有してもよい。この場合、一つ以上のエーテル結合と脂肪族構造または脂環族構造とは、R1基およびR2基のうち同一の有機基に含まれてもよいし、R1基とR2基とに分かれて含まれてもよい。すなわち、少なくとも一つのエーテル結合は、当該ポリウレアの一方の原材料であるアミン系化合物に含まれてもよいし、他方の原材料であるイソシアネート系化合物に含まれてもよい。同様に、脂肪族構造または脂環族構造は、当該アミン系化合物に含まれてもよいし、当該イソシアネート系化合物に含まれてもよい。蒸着重合膜3が当該ポリウレアで構成されることにより、この蒸着重合膜3を有する繊維状フィルタ10の耐薬品性、耐熱性および破断強度がより高まる。
【0051】
(繊維状フィルタの製造方法)
つぎに、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタの製造方法について説明する。当該製造方法では、例えば、蒸着重合膜3を構成する有機高分子の原材料として複数種類のモノマーまたはオリゴマーを蒸着重合装置の供給ポッドに入れて所定の温度に加熱し、事前に準備した不織布等の繊維基材1をこの蒸着重合装置内へ搬送しながら、当該原材料の蒸気を繊維基材1に供給する。これにより、繊維基材1上で当該原料を重合反応させて有機高分子を生成し、得られた有機高分子を繊維基材1に蒸着させて、繊維基材1に含まれる全ての繊維2に蒸着重合膜3を成膜する。このように繊維基材1中の繊維2に蒸着重合膜3を順次成膜することにより、目的とする繊維状フィルタ10が製造される。得られた繊維状フィルタ10は、ロール状に巻き取る等して、蒸着重合装置から取り出される。
【0052】
上記の製造方法では、繊維基材1に複数の繊維2が含まれる場合、これら複数の繊維2の各外表面(個々の繊維2の外表面)に蒸着重合膜3を成膜することができる。また、得られる繊維状フィルタ10の通気度、破断強度および耐薬品性等の特性は、蒸着重合膜3に用いる原材料の種類、繊維2に成膜する蒸着重合膜3の膜厚等を制御することにより、用途に応じて適した程度に調整することができる。
【0053】
(用途)
つぎに、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタの用途について説明する。本実施形態に係る繊維状フィルタ10は、その用途に応じて適した通気性(通気度)と破断強度とを有し、耐薬品性および耐熱性等に優れたフィルタである。このような繊維状フィルタ10は、自動車、電気機器、医療および土木建築等の各種分野の用途に使用することが可能である。例えば、繊維状フィルタ10は、固液分離処理の濾過フィルタ、空調の通気フィルタ、各種装置の遮音フィルタ、セパレータ等、様々な用途に使用することができる。
【0054】
以上、説明したように、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタ10では、繊維基材1が含有する繊維2を、有機高分子の蒸着重合膜3によって被覆している。このため、繊維状フィルタ10の通気性(通気度)を高めるために、繊維基材1における繊維2の密度を減少させる必要が無く、繊維2に成膜する蒸着重合膜3の膜厚を制御することにより、繊維状フィルタ10の通気性を調整することができる。したがって、繊維2の密度の減少に伴う繊維基材1の強度の低下を回避できるとともに、繊維基材1の繊維2の強度を蒸着重合膜3によって高めることができる。これにより、繊維状フィルタ10の通気性を、その用途において実用上問題ない程度に維持しつつ、繊維状フィルタ10の強度を高めることができる。これに加え、繊維基材1の繊維2の耐薬品性および耐熱性等の特性を蒸着重合膜3によって高めることができるため、繊維状フィルタ10の通気性を上記の通り維持しつつ、繊維状フィルタ10の上記特性を高めることができる。
【0055】
また、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタ10では、繊維基材1に含まれる複数の繊維2の各々を、蒸着重合膜3によって被覆している。このため、繊維基材1が、複数の短繊維を組み合わせた不織布や、複数の繊維からなる織物等、複数の繊維を含有する基材であっても、繊維基材1に含まれる個々の繊維2を、蒸着重合膜3によって強化することができる。これにより、複数の繊維2を含有するタイプの繊維状フィルタ10の通気性を上記の通り維持しつつ、繊維状フィルタ10の強度を高めることができ、さらには、繊維状フィルタ10の耐薬品性および耐熱性等の特性を高めることができる。
【0056】
また、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタ10では、蒸着重合膜3を構成する有機高分子としてポリウレアを用いている。このため、ポリウレアが有する優れた耐薬品性および耐熱性と、重合反応が比較的速く且つ重合反応時に副生成物が発生しないというポリウレアの特徴とを享受することができ、これにより、繊維状フィルタ10の生産効率を向上させるとともに、繊維状フィルタ10の耐薬品性および耐熱性をより高めることができる。
【0057】
また、本発明の実施形態に係る繊維状フィルタ10では、上述した蒸着重合膜3を、少なくとも一つのエーテル結合を有する有機高分子によって構成している。このため、蒸着重合膜3の柔軟性(伸縮性)を高めることができる。これにより、繊維基材1における繊維2の動きに追従して蒸着重合膜3を柔軟に変形させることができるから、繊維2に対する蒸着重合膜3の密着性が向上するとともに、繊維状フィルタ10の強度をより高めることができる。
【0058】
特に、蒸着重合膜3を構成する有機高分子として、少なくとも一つのエーテル結合と、脂肪族構造または脂環族構造とを有するポリウレアを用いることにより、蒸着重合膜3の柔軟性をより一層高めることができるとともに、蒸着重合膜3の耐熱性をより一層高めることができる。この結果、繊維状フィルタ10の強度および耐熱性をより一層高めることができる。
【実施例0059】
以下、本発明の実施例および本発明に対する比較例を示し、本発明について更に具体的に説明する。なお、本発明は、以下の実施例に限定して解釈されるものではない。
【0060】
(繊維状フィルタのサンプル)
実施例および比較例の各々における繊維状フィルタのサンプルの作製方法について説明する。実施例のサンプルの作製方法では、ロール・トゥ・ロール型の蒸着重合装置を用い、この蒸着重合装置の供給ポッドに有機高分子の原材料をセットし、セットした原材料を所定の温度に加熱した。なお、有機高分子の原材料としては、アミン系化合物とイソシアネート系化合物とを用いた。アミン系化合物としては、ジエチレントリアミンまたは1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタンを用いた。イソシアネート系化合物としては、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンを用いた。
【0061】
つぎに、上記蒸着重合装置に繊維基材をセットし、ロール・トゥ・ロールの搬送方式で上記蒸着重合装置内に繊維基材を順次搬送しながら、上記供給ポッドから各原材料の蒸気を繊維基材上に供給した。これにより、繊維基材上において当該各原材料を重合反応させて有機高分子を生成し、得られた有機高分子を繊維基材に蒸着させて、繊維基材に含まれる繊維に蒸着重合膜を成膜した。このとき、繊維基材としては、ポリエチレンテレフタレート繊維を含有する不織布を用いた。この不織布の繊維密度は、40g/m2であった。繊維基材の搬送速度は、2m/minとした。また、得られた蒸着重合膜を構成する有機高分子は、上述したアミン系化合物とイソシアネート系化合物との重付加反応によるポリウレアであった。
【0062】
上記のように蒸着重合膜を繊維に成膜した繊維状フィルタは、実施例のサンプルとして、ロール状に巻き取って上記蒸着重合装置から取り出した。上記サンプルの作製においては、実施例毎に、蒸着重合膜の有機高分子または膜厚を変更した。
【0063】
一方、比較例のサンプルは、繊維に蒸着重合膜を成膜する前の繊維基材とした。具体的には、比較例のサンプルとして、繊維密度が40g/m2の不織布と、繊維密度が80g/m2の不織布とを用いた。
【0064】
(通気度の測定)
通気度の測定では、JIS L 1096の通気性試験を行った。これにより、実施例および比較例の各サンプルについて、1cm2の面積の領域を1秒間で通過する空気の量(体積)を、通気度として測定した。
【0065】
(破断強度の測定)
破断強度の測定では、JIS K 7127を参考にしてサンプルの引張試験を行い、当該サンプルの破断強度を測定した。詳細には、上述した方法によって作製したサンプルから、幅が10mmであり長さが100mmである試験片(シート)を切り取り、得られた試験片を、当該試験片の長手方向が引張方向となるように引張試験装置にチャックした。このとき、チャック後の試験片は、チャック間距離が50mmとなるように加工した。その後、この引張試験装置によって試験片をその長手方向に引張し、これにより、当該試験片が破断するまでの歪みおよび応力を測定した。この測定した応力が、当該試験片の破断強度として得られた。
【0066】
(耐薬品性の評価)
耐薬品性の評価では、JIS K 7114を参考にしてサンプルの耐薬品試験を行った。詳細には、上述した方法によって作製したサンプルから、寸法が50mm角の試験片を切り取り、得られた試験片を、23℃の環境下で試薬に浸漬し、当該試験片の浸漬前後での形状の変化を確認した。このとき、試薬としては、水酸化ナトリウム、1規定の塩酸、アンモニアの3種類を用いた。これら3種類の試薬の各々について、試験片を浸漬し、試薬別に試験片の形状の変化を確認した。試験片の形状の変化は、浸漬前の試験片の寸法と浸漬後の試験片の寸法との差によって確認した。
【0067】
(実施例1)
実施例1では、サンプルとして、ジエチレントリアミンと1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの重合反応によるポリウレアの蒸着重合膜(以下、蒸着重合膜Aという)が繊維基材(不織布)の各繊維に成膜された繊維状フィルタを用いた。この実施例1のサンプルにおいて、蒸着重合膜Aの膜厚は6μmとした。実施例1のサンプルについて、上述した通気度、破断強度および耐薬品性の各評価を行った。実施例1のサンプルおよび評価結果は、後述の表1に示す通りである。
【0068】
(実施例2)
実施例2では、サンプルとして、1,2-ビス(2-アミノエトキシ)エタンと1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサンとの重合反応によるポリウレアの蒸着重合膜(以下、蒸着重合膜Bという)が繊維基材(不織布)の各繊維に成膜された繊維状フィルタを用いた。この実施例2のサンプルにおいて、蒸着重合膜Bの膜厚は、実施例1と同じ6μmとした。実施例2のサンプルについて、上述した通気度、破断強度および耐薬品性の各評価を行った。実施例2のサンプルおよび評価結果は、表1に示す通りである。
【0069】
(実施例3)
実施例3では、サンプルとして、実施例1と同じ蒸着重合膜Aが繊維基材(不織布)の各繊維に成膜された繊維状フィルタを用いた。この実施例3のサンプルにおいて、蒸着重合膜Aの膜厚は、3μmとした。実施例3のサンプルについて、上述した通気度、破断強度および耐薬品性の各評価を行った。実施例3のサンプルおよび評価結果は、表1に示す通りである。
【0070】
(比較例1)
比較例1では、サンプルとして、蒸着重合膜が繊維に成膜されていない不織布を用いた。すなわち、比較例1のサンプルは、上述した実施例1~3の各サンプルにおける蒸着重合膜の成膜前の繊維基材と同じである。この比較例1のサンプルにおいて、不織布の繊維密度は、40g/m2とした。比較例1のサンプルについて、上述した通気度、破断強度および耐薬品性の各評価を行った。比較例1のサンプルおよび評価結果は、表1に示す通りである。
【0071】
(比較例2)
比較例2では、サンプルとして、蒸着重合膜が繊維に成膜されていない不織布を用いた。この比較例2のサンプルにおいて、不織布の繊維密度は、比較例1の2倍である80g/m2とした。比較例2のサンプルについて、上述した通気度、破断強度および耐薬品性の各評価を行った。比較例2のサンプルおよび評価結果は、表1に示す通りである。
【0072】
【0073】
なお、表1において、「A」は「蒸着重合膜A」を意味し、「B」は「蒸着重合膜B」を意味する。また、「耐薬品性」欄において、「〇」は「耐薬品性が良好である」ことを意味し、「×」は「耐薬品性が不良である」ことを意味する。
【0074】
表1に示すように、実施例1~3のいずれにおいても、フィルタの用途において実用上問題ない程度の通気度が得られ、且つ、比較例1の不織布(蒸着重合膜が成膜されていない繊維状フィルタ)に比べて破断強度を2倍以上に高めることができた。
【0075】
一方、比較例2では、上述したように不織布の繊維密度を増大させることにより、比較例1よりも破断強度を高めることはできたが、比較例1に比べて通気度が著しく低下した。これに対し、実施例1~3では、上述したように繊維密度が比較例1と同じであるにも拘らず、繊維密度を増大させた比較例2よりも破断強度を高めることができ、通気度についても、比較例2よりも増大させることができた。これら実施例1~3の中でも、特に実施例3では、蒸着重合膜Aの膜厚を実施例1の膜厚の1/2に薄くすることにより、比較例2よりも大きい破断強度を維持しつつ、実施例1、2に比べて通気度をより高めることができた。
【0076】
また、耐薬品性の評価において、実施例1~3では、水酸化ナトリウム、1規定の塩酸およびアンモニアのいずれの試薬に対しても、浸漬の前後でサンプルに形状の変化は見られず、原形を維持していた。すなわち、実施例1~3のいずれにおいても、耐薬品性は良好であった。一方、比較例1、2では、上記3種類の試薬のいずれにおいても、サンプルを試薬に浸漬した後、当該サンプルは、試薬中に溶解して無くなった。すなわち、比較例1、2のいずれにおいても、耐薬品性は不良であった。
【0077】
なお、上述した実施形態および実施例により本発明が限定されるものではなく、上述した各構成要素を適宜組み合わせて構成したものも本発明に含まれる。その他、上述した実施形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれる。