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特開2024-119857分散型アクティブサスペンションシステム用のアキュムレータ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119857
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】分散型アクティブサスペンションシステム用のアキュムレータ
(51)【国際特許分類】
   B60G 17/015 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B60G17/015 B
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024083999
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2020569009の分割
【原出願日】2019-06-14
(31)【優先権主張番号】62/691,132
(32)【優先日】2018-06-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/740,823
(32)【優先日】2018-10-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/684,899
(32)【優先日】2018-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】512321121
【氏名又は名称】クリアモーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】ベルター,ジョゼフ,トーマス
(72)【発明者】
【氏名】シノワ,ジェイソン,スティーブン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両のサスペンションシステム構成要素のアキュムレータの適切な容量決定によって、車両の乗り心地品質を改善する。
【解決手段】油圧シリンダにスライド式に挿入され、圧縮チャンバと拡張チャンバとに分割するピストンと、油圧シリンダから外に延びるピストンロッドと、圧縮チャンバと流体連通した第1ポートと、拡張チャンバと流体連通した第2ポートとを含む油圧ポンプと、圧縮チャンバと流体を交換するように構成された圧縮アキュムレータと、拡張チャンバと流体を交換するように構成された拡張アキュムレータと、を含むサスペンションシステム構成要素であって、油圧ポンプが少なくとも68.95バールの第1設定差圧を発生させたときに、12Hzの周波数と5mmのピーク間振幅とを有する外部入力に呼応する前記サスペンションシステム構成要素の観測剛性は80N/mmを超えない、サスペンションシステム構成要素。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を少なくとも部分的に規定する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダにスライド式に挿入され、それにより、前記内部空間を圧縮チャンバと拡張チャンバとに分割するピストンと、
前記ピストンに取り付けられ、前記油圧シリンダから外に延びるピストンロッドと、
前記圧縮チャンバと流体連通した第1ポートと、前記拡張チャンバと流体連通した第2ポートとを含む油圧ポンプと、
前記圧縮チャンバと流体を交換するように構成された圧縮アキュムレータと、
前記拡張チャンバと流体を交換するように構成された拡張アキュムレータと、
を含むサスペンションシステム構成要素であって、
前記油圧ポンプが少なくとも1,000psiの第1設定差圧を発生させたときに、12Hzの周波数と5mmのピーク間振幅とを有する外部入力に呼応する前記サスペンションシステム構成要素の観測剛性は80N/mmを超えない、サスペンションシステム構成要素。
【請求項2】
前記第1設定差圧は1,000psiの値を有する、請求項1に記載のサスペンションシステム構成要素。
【請求項3】
前記観測剛性は、5M/mm、10N/mm、又は25N/mm以上である、請求項1又は2に記載のサスペンションシステム構成要素。
【請求項4】
前記観測剛性は、80N/mm、70N/mm、又は50N/mm以下である、請求項1~3のいずれか一項に記載のサスペンションシステム構成要素。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載のサスペンションシステム構成要素を含むサスペンションシステムを含む車両。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載の複数のサスペンションシステム構成要素を含むサスペンションシステムを含む車両。
【請求項7】
ばね上質量及びばね下質量をさらに含み、前記複数のサスペンションシステム構成要素の各サスペンションシステム構成要素は、前記車両のばね下質量と前記車両のばね上質量との間に配置される、請求項6に記載の車両。
【請求項8】
前記複数のサスペンションシステム構成要素の各サスペンションシステム構成要素は流体的に分離される、請求項6又は7に記載の車両。
【請求項9】
車両用のサスペンションシステム構成要素であって、
第1流体量を収容する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダにスライド可能に受け入れられ、それにより、前記油圧シリンダの少なくとも一部分を拡張チャンバと圧縮チャンバとに分割するピストンと、
前記ピストンに取り付けられたピストンロッドと、
第2流体量を収容する圧縮アキュムレータであって、前記圧縮チャンバと直接的に流体連通した圧縮アキュムレータと、
第3流体量を収容する拡張アキュムレータであって、前記拡張チャンバと直接的に流体連通した拡張アキュムレータと、
前記圧縮チャンバ及び前記拡張チャンバの両方と流体連通したポンプと、を含み、
前記第2量は、前記第1量よりも多く、前記第3量は、前記第1量よりも多い、サスペンションシステム構成要素。
【請求項10】
前記第2量は、3スリーよりも大きい第1倍率だけ前記第1量よりも多い、請求項9に記載のサスペンションシステム構成要素。
【請求項11】
前記第1量は、3よりも大きい第2倍率だけ前記第2量よりも多い、請求項10に記載のサスペンションシステム構成要素。
【請求項12】
前記第1倍率及び第2倍率はそれぞれ10未満である、請求項11に記載のサスペンションシステム構成要素。
【請求項13】
請求項9~12のいずれか一項に記載の複数のサスペンションシステム構成要素を含む、車両用サスペンションシステム。
【請求項14】
請求項13に記載のサスペンションシステムを含む車両。
【請求項15】
油圧システム用の埋め込み式アキュムレータアセンブリであって、
第1内部空間を少なくとも部分的に規定する第1アキュムレータハウジングと、
前記第1内部空間を第1気体充填チャンバと第1油圧流体チャンバとに分割する第1ピストンと、
を含む第1アキュムレータと、
第2内部空間を少なくとも部分的に規定する第2アキュムレータハウジングと、
前記第2内部空間を第2気体充填チャンバと第2油圧流体チャンバとに分割する第2ピストンと、
を含む第2アキュムレータと、を含み、
前記第2アキュムレータの少なくとも一部分は、前記第1内部空間内に配置される、埋め込み式アキュムレータアセンブリ。
【請求項16】
前記第1アキュムレータは、流体が前記第1油圧流体チャンバに入るのを可能にする1つ又は複数のポートをさらに含み、前記第2アキュムレータは、流体が前記第2油圧流体チャンバに入るのを可能にする1つ又は複数のポートをさらに含む、請求項15に記載の埋め込み式アキュムレータアセンブリ。
【請求項17】
前記第2アキュムレータは、前記第1内部空間内に完全に配置される、請求項15又は16に記載の埋め込み式アキュムレータアセンブリ。
【請求項18】
前記第2アキュムレータは、前記第1油圧流体チャンバ内に少なくとも部分的に配置される、請求項15~17のいずれか一項に記載の埋め込み式アキュムレータアセンブリ。
【請求項19】
前記第2アキュムレータの全体は、前記第1油圧流体チャンバ内に配置される、請求項18に記載の埋め込み式アキュムレータアセンブリ。
【請求項20】
前記第1アキュムレータハウジングの壁の一部分は、前記第2アキュムレータハウジングの壁の一部分に取り付けられる、請求項15~19のいずれか一項に記載の埋め込み式アキュムレータアセンブリ。
【請求項21】
前記第1アキュムレータハウジング及び前記第2アキュムレータハウジングは、壁の少なくとも一部分を共有する、請求項15~20のいずれか一項に記載の埋め込み式アキュムレータ。
【請求項22】
前記第1アキュムレータハウジングの外面と前記第2アキュムレータハウジングの内面との間のギャップをさらに含む、請求項15~21のいずれか一項に記載の埋め込み式アキュムレータ。
【請求項23】
前記ギャップは、前記第1油圧流体チャンバへの流れを制限する流体制限要素として機能する、請求項22に記載の埋め込み式アキュムレータ。
【請求項24】
前記ギャップは、前記第1油圧流体チャンバからの流れを制限する流体制限要素として機能する、請求項22に記載の埋め込み式アキュムレータ。
【請求項25】
前記ギャップは、流体慣性抵抗要素として機能する、請求項22に記載の埋め込み式アキュムレータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年6月14日に出願された米国仮特許出願第62/684,899号、2018年6月28日に出願された米国仮特許出願第62/691,132号、及び2018年10月3日に出願された米国仮特許出願第62/740,823号の利益を米国特許法第119条(e)のもとに主張するものであり、これらの各特許の開示は、参照によりその全体を援用される。
【背景技術】
【0002】
車両用のアクティブサスペンションシステムは、パッシブ又はセミアクティブサスペンションシステムにまつわる公知の問題及び妥協点のいくつかを解決する可能性を有する。しかし、アクティブサスペンションシステムを製品車両に実装する取り組みは、原因及び問題解決策が技術的にまだ分かっていないいくつかの複雑な問題によって失敗してきた。
【発明の概要】
【0003】
一態様では、内部空間を少なくとも部分的に規定する油圧シリンダと、油圧シリンダにスライド式に挿入され、それにより、内部空間を圧縮チャンバと拡張空間とに分割するピストンと、ピストンに取り付けられ、油圧シリンダから外に延びるピストンロッドと、圧縮チャンバと流体連通する第1ポートと拡張チャンバと流体連通する第2ポートとを含む油圧ポンプと、圧縮チャンバと流体を交換するように構成された圧縮アキュムレータと、拡張チャンバと流体を交換するように構成された拡張アキュムレータとを含むサスペンションシステム構成要素が開示される。特定の実施形態では、油圧ポンプが第1設定差圧を発生させるときに、周波数が12Hzでピーク間振幅が5mmの外部入力に呼応したサスペンションシステム構成要素の観測剛性は80N/mmを超えず、第1設定差圧は、少なくとも1,000psiの値を有する。特定の実施形態では、第1設定差圧は1,000psiの値を有する。特定の実施形態では、観測剛性は、5M/mm、10N/mm、又は25N/mm以上である。特定の実施形態では、観測剛性は、80N/mm、70N/mm、又は50N/mm以下である。
【0004】
別の態様では、前述のサスペンションシステム構成要素を含むサスペンションシステムを含む車両が開示される。特定の実施形態では、車両は、本明細書で説明するように、複数のサスペンションシステム構成要素を含むサスペンションシステムを含む。特定の実施形態では、車両は、ばね上質量及びばね下質量をさらに含み、複数のサスペンションシステム構成要素の各サスペンションシステム構成要素は、車両のばね下質量と車両のばね上質量との間に配置される。特定の実施形態では、車両の各サスペンションシステム構成要素は、車両の他の任意のサスペンションシステム構成要素から流体的に切り離される。
【0005】
別の態様では、第1流体量を収容する油圧シリンダと、油圧シリンダにスライド可能に受け入れられ、それにより、油圧シリンダの少なくとも一部分を拡張チャンバと圧縮チャンバとに分割するピストンと、ピストンに取り付けられたピストンロッドと、第2流体量を収容する圧縮アキュムレータであって、圧縮チャンバと直接的に流体連通する圧縮アキュムレータと、第3流体量を収容する拡張アキュムレータであって、拡張チャンバと直接的に流体連通する拡張アキュムレータと、圧縮チャンバ及び拡張チャンバの両方と流体連通するポンプであって、第2量は第1量よりも多く、第3量は第1量よりも多いポンプと、を含む車両用のサスペンションシステム構成要素が開示される。特定の実施形態では、第2量は、3以上の第1倍率だけ第1量よりも多い。特定の実施形態では、第1量は、3以上の第2倍率だけ第2量よりも多い。特定の実施形態では、第1倍率及び第2倍率は、それぞれ10未満である。複数の前記サスペンションシステム構成要素を含む車両のサスペンションシステムと、前記サスペンションシステムを含む車両とが同じく開示される。
【0006】
さらに別の態様では、第1アキュムレータ及び第2アキュムレータを含む第1アキュムレータを含む埋め込み式アキュムレータアセンブリが開示される。第1アキュムレータは、第1内部空間を少なくとも部分的に規定する第1アキュムレータハウジングと、第1内部空間を第1気体充填チャンバと第1油圧流体チャンバとに分割する第1ピストンとを含むことができる。第2アキュムレータは、第2内部空間を少なくとも部分的に規定する第2アキュムレータハウジングと、第2内部空間を第2気体充填チャンバと第2油圧流体チャンバとに分割する第2ピストンとを含むことができる。第2アキュムレータの少なくとも一部分は、第1内部空間内に配置することができる。
【0007】
特定の実施形態では、埋め込み式のアキュムレータアセンブリは、流体が第1油圧流体チャンバに出入りするのを可能にする1つ又は複数のポートと、流体が第2油圧流体チャンバに出入りするのを可能にする1つ又は複数のポートとを含む。特定の実施形態では、第2アキュムレータは、第1内部空間内に完全に配置される。特定の実施形態では、第2アキュムレータは、第1油圧流体チャンバ内に少なくとも部分的に配置される。特定の実施形態では、第2アキュムレータの全体は、第1油圧流体チャンバ内に配置される。特定の実施形態では、第1アキュムレータハウジングの壁の一部分は、第2アキュムレータハウジングの壁の一部分に取り付けられる。特定の実施形態では、第1アキュムレータハウジング及び第2アキュムレータハウジングは、壁の少なくとも一部分を共有する。
【0008】
特定の実施形態では、埋め込み式アキュムレータアセンブリは、第1アキュムレータハウジングの外面と第2アキュムレータハウジングの内面との間にギャップを含むことができる。特定の実施形態では、ギャップは、第1油圧流体チャンバへの流れを制限する流体制限要素として機能する。特定の実施形態では、ギャップは、第1油圧流体チャンバからの流れを制限する流体制限要素として機能する。特定の実施形態では、ギャップは、流体慣性抵抗要素として機能する。
【0009】
添付図面は、一定の縮尺で作図されることを意図されていない。図面では、様々な図で示される各同一の、又はほぼ同一の構成要素は同じ数字で表すことができる。明瞭にするために、すべての図面において、構成要素ごとに符号をつけていないこともある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】車両が移動できる路面の様々な例示的形状を示している。
図2a】ダンパを圧縮/拡張行程の1つの段階で示している。
図2b】ダンパを圧縮/拡張行程の1つの段階で示している。
図2c】ダンパを圧縮/拡張行程の1つの段階で示している。
図3】アクティブサスペンションシステム構成要素の実施形態を示している。
図4】第1サスペンション位置にあるアクティブサスペンションシステム構成要素の実施形態を示している。
図5】第2サスペンション位置にある図4の実施形態を示している。
図6】第3サスペンション位置にある図4の実施形態を示している。
図7】1つ又は複数の弁を含むアクティブサスペンションシステム構成要素の実施形態を示している。
図8】1つ又は複数の弁を含むアクティブサスペンションシステム構成要素の実施形態を示している。
図9】観測剛性と設定差圧との間の関係を示すグラフを示している。
図10】コンプライアント機構を含むアクティブサスペンションシステム構成要素の実施形態を示している。
図11】コンプライアント機構の剛性と設定差圧との間の関係を示すグラフを示している。
図12】コンプライアント機構を有するサスペンションシステム構成要素の観測剛性と設定差圧との間の関係を示すグラフを示している。
図13】単一の油圧アキュムレータの実施形態を示している。
図14】埋め込み式アキュムレータアセンブリの実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
車両は通常、様々なサスペンションシステム構成要素を含むサスペンションシステムを含む。車両の油圧サスペンションシステム構成要素は、油圧シリンダにスライド可能に受け入れられ、それにより、油圧シリンダの少なくとも一部分を圧縮チャンバと拡張チャンバとに分割するピストンを含むことができる。このピストン/シリンダ構成は、通常、ダンパと呼ばれる。ダンパは、(例えば、ホイール又はホイールアセンブリを含むことができる)車両のばね下質量と(例えば、車両シャーシ又は車体を含むことができる)車両のばね上質量との間に配置することができる。ダンパが比較的低い剛性(例えば、ダンパーが十分に「柔性」)の場合に、ダンパは、ばね下質量のある程度の動作を可能にし、一方、ばね上質量の動作を少なくとも部分的に妨げる。例えば、十分に柔性のサスペンションシステムを有する車両では、車両のホイールは、起伏のある地形を移動することができ、一方、車体は比較的水平のままであり、車両の乗車人が快適と知覚する乗り心地をもたらす。他方で、ダンパが比較的高い剛性(例えば、ダンパが十分に「剛性」)の場合に、ばね下質量の動作は、ホイールからダンパを通って車体まで最小限の損失のみで伝達することができる。その結果、過度に剛性のサスペンションシステムを有する車両は、不快な、又は「荒い」乗り心地を乗車人にもたらすと認識され得る。
【0012】
油圧式アクティブサスペンションシステム構成要素では、油圧ポンプは、ダンパの圧縮チャンバとダンパの拡張チャンバとの間に流体的に配置することができる。本発明者が認識し、本明細書で説明するように、(例えば、ダンパの圧縮又は拡張時の)この油圧ポンプの回転は慣性を伴うことができ、この慣性は、特定の走行状態時にダンパに望ましくない高剛性をもたらすことがあり、その結果、乗り心地が悪くなる。さらに、本発明者が認識したように、油圧ポンプの導入により、観測されるシステム剛性は、入力の周波数に依存するようになり、特に、システムは、比較的低い周波数を有する入力に呼応して許容できる低い剛性を示すが、比較的高い周波数を有する入力に呼応して望ましくない高い剛性を示すことがある。特に、油圧式サスペンションシステム構成要素の性能に関して、ポンプ慣性の効果を少なくとも部分的に軽減する装置及び方法が本明細書で説明される。
【0013】
さらに、本明細書で詳細に説明するように、アクティブサスペンションシステムは、パッシブ又はセミアクティブサスペンションシステムよりもはるかに広範な流体圧力及び広範な持続差圧にわたって動作することができる。本明細書で説明するように、ポンプ慣性とアクティブサスペンションシステム構成要素に見られる圧力及び差圧の範囲との両方、並びに他の理由から、本発明者は、アクティブサスペンションシステム構成要素の動作にまつわる様々な問題の根源的な原因を解明した。全動作範囲にわたり、広範な入力周波数に呼応して、所望の剛性を維持し、それにより、能動的に懸架された車両において、様々な走行状態にわたってより望ましい乗り心地を得ることを可能にするように構成されたサスペンションシステム構成要素を含む、アクティブサスペンションシステムの性能の改善を可能にする様々な方法及び装置が本明細書で説明される。
【0014】
ここで図を参照すると、様々な車両、サスペンションシステム、及びサスペンションシステム構成要素のいくつかの非限定的実施形態が以下に詳細に説明される。当然のことながら、これらの実施形態に関連して説明される様々なシステム、構成要素、特徴部、及び方法は、個別に、及び/又は任意の望ましい組み合わせのいずれでも使用することができるが、本開示は、本明細書で説明する特定の実施形態だけに限定されない。
【0015】
図1は、路面2上を移動する車両1を示している。車両1のホイール3は、接地面4で路面に接触している。車両が路面を移動するときに、路面の特定の垂直変位5は、サスペンションシステムによって吸収できるものよりも実質的に大きいような十分な大きさを有している。これらの変位は、クラスI変位と呼ばれる。車両1は、ダンパ(ショックアブソーバとも呼ばれる)及び/又はばねを含むパッシブ又はセミアクティブサスペンションシステム(図示せず)を含むことができる。
【0016】
車両1のすぐ周辺の道路の拡大部分6は、様々なより小さい垂直変位7を含む路面を示している。これらの変位は、クラスI変位5よりも小さく、車両1のサスペンションシステムのほぼ動作範囲内である。これらの変位は、本明細書においてクラスII変位と呼ばれる。典型的な速度(20~50mph)での典型的な車両走行では、クラスIIの道路誘発変位は、実際上車体に伝えられるが、パッシブ及びセミアクティブサスペンションシステムを有する車両のショックアブソーバによって素速く減衰することができる。
【0017】
ホイール3のすぐ周辺の路面のさらなる拡大部分8は、路面がさらなる垂直変位9を含むことを示している。本明細書において、クラスIII変位と呼ばれるこれらのさらなる変位は、クラスII変位よりも小さい。これらのクラスIIIの路面変位を移動することで誘発されるばね下質量の垂直動作は、通常、ばね下質量に伝達されるが、車体を含むばね上質量には実際上伝わることができず、パッシブ又はセミアクティブサスペンションシステムのダンパによってさらに減衰することができる。本明細書での開示において、クラスIの変位は、車両1のサスペンションシステムの動作範囲よりも大きい特徴的範囲を有する変位とみなされ、クラスII変位は、サスペンションシステムの動作範囲よりも小さく、車両のサスペンションシステムの動作範囲の1/8よりも大きい特徴的範囲を有する変位であり、クラスIII変位は、車両のサスペンションシステムの動作範囲の1/8よりも小さい特徴的範囲を有する変位である。
【0018】
理想的には、車両のサスペンションシステムは、実際上、道路入力からのすべての動揺を吸収し、それにより、車体の任意の動作をなくす。しかし、サスペンションシステムは通常、動作範囲を限定されており、したがって、実際上、そのような動程限界に近い、又はそのような動程限界を超える範囲を有する動揺を吸収することはできない。ほとんどのパッシブ及びセミアクティブショックアブソーバの動作範囲は、通常、10cm~15cmの範囲にある。したがって、これらの限界を超える道路高さの変動(例えば、道路高さは数メートル以上変わることがある)は、車両のサスペンションシステムによって吸収することができない。したがって、車両のショックアブソーバの動作範囲内にある道路高さの変化の効果のみを最適に軽減することができる。例えば、サスペンションシステムは、クラスI変位によるものを除いて、クラスII及びクラスIII変位による車体の動作を少なくとも部分的に抑制することができる。
【0019】
車両1のダンパが十分な剛性になっている場合、不均一な路面を移動することで誘発された垂直動作は、実際上(及び望ましくない形で)、ばね下質量からダンパを通って車体に伝達され得る。他方で、ダンパが(任意の平行なばね要素と共に)十分な柔性である場合、サスペンションシステムが、特定の周波数範囲内のばね下質量の動作を「吸収」し、それと同時に(例えば、車体を含む)ばね上質量の動作を最小限にすることが可能である。路面から車体への動揺のそのような伝達を最小限にするために、車両のサスペンションシステム構成要素は、特定の周波数範囲内(例えば、10~15Hz)の動作に対して十分に柔性であるように設計されたダンパを含むことができる。
【0020】
図2a~図2cは、圧縮/拡張の様々な段階時の例示的な油圧ダンパ101を示している。油圧ダンパは、油圧シリンダ103にスライド可能に受け入れられ、それにより、シリンダの少なくとも一部分を圧縮チャンバ111と拡張チャンバ109とに分割するピストン107を含む。ピストンロッド113は、ピストン107に取り付けることができ、油圧シリンダ103から外に延びることができる。Lで示すダンパの長さは、油圧シリンダ103のベース部とピストンロッド113の先端部との間の距離を指すと解釈される。この長さは、シリンダ内のピストンの位置によって決まり、ピストンをシリンダ103に対して拡張方向121に動かすと、ダンパは拡張し(長さLが長くなる)、一方、ピストンをシリンダ103に対して圧縮方向119に動かすと、ダンパは圧縮される(長さLが短くなる)。ダンパは、圧縮チャンバ111を拡張チャンバ109に流体的に接続する流路123と、さらには、流路123に沿って流体配置された流れ制御要素125とをさらに含む。パッシブサスペンションシステムでは、この流れ制御要素125は、一定幅のオリフィスとすることができる。セミアクティブサスペンションシステムでは、この流れ制御要素125は、制御可能な(例えば、ソレノイド)弁又は可変絞り穴とすることができる。アクティブサスペンションシステムでは、この流れ制御要素125は、それに代えて、又はそれに加えて、油圧ポンプを含むことができる。流路は、シリンダの外にあるとして図示されているが、様々な実施形態では、その代わりに、流路は完全にシリンダ内にある少なくとも一部分(例えば、流路は、少なくとも部分的にピストン107内に収容することができる)を含むことができる。
【0021】
続けて図2a~図2cを参照して、油圧ダンパの圧縮時に(例えば、図2aに示すものから図2cに示すものへのダンパ位置の変化時に)、ピストンロッド113の増大分がシリンダ103に入り、それにより、流体にとって利用可能なシリンダ103内の容積量を減ずる。その結果、流体はシリンダ103から外に移動する。図示するように、アキュムレータ127は、移動した流体を受け入れるために利用することができる。さらに、油圧ダンパの拡張時に(例えば、図20aに示すものから図20bに示すものへのダンパ位置の変化時に)、ピストンロッド113の減少分がシリンダ103に残り、それにより、流体にとって利用可能なシリンダ103内の容積量を増加させる。結果として、流体は、アキュムレータ127からシリンダ103に流入する。例えば、ピストン107が、シリンダのハウジングと、又はシリンダのハウジングに取り付けられた1つ又は複数の「出っ張り止め」と接触したときに、(図2bに示すような)ダンパの最大拡張又は(図2cに示すような)ダンパの最大圧縮を引き起こすことができ、そのため、ダンパはさらに拡張又は圧縮することができない。
【0022】
所与の時点で油圧シリンダ103内に収容される液体量は、ピストンロッドが油圧シリンダ103に挿入される、及び/又は油圧シリンダ103から引き出されるときに変わることができる。図2bに示すように、ダンパが最大限に拡張したときに、油圧シリンダ103内で最大流体量(Vmaxで表す)になる。図2cに示すように、ダンパが最大限に圧縮されたときに、油圧シリンダ内に収容される最小流体量(Vminで表す)になる。当業者には分かるように、本明細書に示す実施形態は例示である。当然のことながら、様々なダンパ構成(例えば、様々なピストン形状、非対称のピストン構成、様々なロッド配置など)を利用することができる。
【0023】
したがって、車両の動作時に、油圧シリンダ内に収容される流体量は、VminとVmaxとの間で変わることができる。ダンパが拡張する、及び圧縮されるときに、シリンダ内の流体量が変わるという問題に対処するために、図2に示すように、アキュムレータ127を使用することができるのは公知である。アキュムレータ127は、加圧気体チャンバから流体チャンバを分離する浮動ピストン又はブラダを含むことができる。或いは、アキュムレータは、ばね付勢式のピストンを含むことができる。アキュムレータは、ダンパの圧縮時に、内部チャンバから流体を受け入れるように構成することができる。さらに、アキュムレータは、ダンパの拡張時に、流体を内部チャンバに供給するようにさらに構成することができる。アキュムレータは、温度変化に伴う流体体積変化を助けることができる。
【0024】
したがって、パッシブダンパでは、アキュムレータの容量は、通常、ダンパの最大圧縮と最大拡張との間の流体量の変化に対応するように大きさを決められる。言い換えると、アキュムレータ容量は、Vmax-Vminによって与えられる値と実質的に同じ容量を有するように大きさを決められる。温度効果に対処するために、比較的少量の付加的な容量をアキュムレータ内に含むことができるが、この少量の付加的容量を別として、通常、アキュムレータ容量は、Vmax-Vminで与えられる値に比較的近く維持され、その理由は、そのような値を超える任意の大幅な増量はコストを上げ、特に、システムの大きさを増大させ、これは、多くの場合コンパクトな自動車用途での実装を大幅に困難にし得る。
【0025】
図3は、アクティブサスペンションシステムのサスペンションシステム構成要素の実施形態を示している。図示した実施形態では、油圧ポンプ201は、ダンパの圧縮チャンバ111とダンパの拡張ダンパ109との間に流体配置されて示されている。様々な実施形態では、ポンプは、ギヤポンプ(例えば、内接ギヤポンプ(例えば、ジェロータ、クレセントポンプ)、外接ギヤポンプ)、ベーンポンプ、可変容量型ポンプ、又は当技術分野で公知の他の任意のタイプの適切なポンプとすることができる。図示したように、ポンプ201は、モータ205に動作可能に連結することができる。モータは、例えば、電気モータ(例えば、BLDCモータ)とすることができる。図3に示すサスペンションシステム構成要素は、例えば、車両のアクティブサスペンションシステムで使用することができる。
【0026】
例示した図3のアクティブサスペンションシステム構成要素では、ポンプ201は、ダンパの圧縮又は拡張を能動的に行うために利用することができる。例えば、能動圧縮が望ましい場合に、正味流体流れを圧縮チャンバ211から拡張チャンバ209に流入させるために、モータ205を使用して、ポンプ201を第1方向に能動的に回転駆動することができる。能動拡張に対して、正味流体流れを拡張チャンバ209から圧縮チャンバ211に流入させるために、モータ205は、ポンプ201を第2方向に能動的に回転駆動することができる。したがって、アクティブサスペンションシステムを使用することで、パッシブ又はセミアクティブサスペンションシステムと比較して、車両位置に対する改善された制御(例えば、ばね上質量とばね下質量との間の距離に対する制御)が可能になる。
【0027】
この開示において、「能動圧縮」及び「能動拡張」という用語は、それぞれポンプの能動動作によりダンパが圧縮された、又は拡張した状況を説明するのに使用される。能動圧縮又は能動拡張では、モータ205は、電気エネルギ源(例えば、バッテリ、コンデンサ、交流機、又は発電機)から電気エネルギを受け取ることができ、受け取った電気エネルギを、ポンプ201に加えられるトルクの形態の機械エネルギに変換することができる。次いで、ポンプ201は、機械エネルギ(例えば、加えられたトルク)を油圧エネルギ(例えば、流体差圧、流れなど)に変換するように機能することができる。さらに、「能動的力」とは、ポンプの能動動作によって生じる差圧により、ピストンに付与される力を指す。対照的に、「外部力」という用語は、ポンプの能動動作によっては生じない入力と解釈される外部入力により、ピストンに付与される力を指す。外部入力には、路面の形状(例えば、窪み、隆起)から生じる入力、車両のコーナリング、ブレーキ、又は加速により生じる力、或いは評価時にダイナモメータによってピストンロッドに加えられる力/変位を含むことができる。この開示において、「外部圧縮」及び「外部拡張」という用語は、外部入力により生じ、ポンプの能動動作によっては生じない、それぞれダンパの圧縮又は拡張を説明するのに使用される。自動車両の動作中に、ダンパは、例えば、地表面入力(例えば、道路の隆起を越える走行)及び/又はブレーキ、加速、及びコーナリングなどの車両操縦などの外部入力によって誘発される外部力により、外部圧縮を受けることがある。さらに、ダンパは、例えば、道路の窪みを横切る走行などの地表面入力及び/又はブレーキ、加速、及びコーナリングなどの車両操縦によって誘発される外部力により、外部拡張を受けることがある。
【0028】
図3を考察し、ポンプが作動を停止している(すなわち、ポンプは、能動的に動作しておらず、差圧を発生させない)と仮定すると、ピストンロッドに作用する圧縮方向の力をもたらす外部入力は、圧縮チャンバ111内の流体を拡張チャンバ109内の流体よりも加圧することができ、それにより、圧縮チャンバ111内の流体と拡張チャンバ109内の流体と間に差圧を生じさせる。この差圧は、外部入力(例えば、路面入力)が継続している限り持続する。この差圧が、ポンプに関係する慣性に打ち勝つのに十分な場合に、流体は、圧縮チャンバ111からポンプ201を通り(それにより、ポンプを回転させ)、拡張チャンバ109に流入することができる。これは、ダンパを圧縮することができ、ダンパは、結果的に、外部入力に呼応したばね上質量の過剰な動作を減衰させるか、又はそうでなければ防止する。当業者には分かるように、この挙動は、パッシブダンパの挙動と極めて似ている。
【0029】
しかし、ポンプに関係する回転慣性が大きい場合に、所与の外部入力から生じる差圧は、ポンプ201に関係する回転慣性に打ち勝つことができない。そのような場合に、ポンプ201は、一定の角度位置のままのことがあり、又は使用可能な時間内に必要な量の流体を送るほど十分に速く回転することができないこともあり、それにより、実際上、圧縮チャンバ111から出る流体流れを妨げる、又は遅らせる。この場合に、油圧ダンパ103は、外部入力に呼応して圧縮若しくは縮小することができないか(例えば、油圧ダンパ103は「油圧的にロックされ得る」)、又は外部入力に呼応して十分な速度で圧縮若しくは縮小することができない。さらに、拡張方向121の外部入力に対して、同様の減少が起こり得る。したがって、ダンパは、望ましくない高い剛性を示すことがあり、道路入力は、全く、又は最小限にしか防振されない、又は減衰されない状態で、ばね下質量からダンパを通って車体に伝達されることがある。その結果、乗り心地は低下し、「荒い」乗り心地をもたらすことがある。観測剛性は、(a)ダンパ動作での高い加速、(b)ポンプに関係する慣性に打ち勝つのに十分な差圧を発生させることができない小振幅の外部入力又は低加速度をもたらす外部入力、及び/又は(c)十分な時間の間に、ポンプの慣性に打ち勝つ差圧を発生させることができない高周波数の外部入力に呼応して、特に高くなることがある。
【0030】
荒い乗り心地問題は、ポンプが能動動作状態の間にさらに顕著になることがある。図3に戻って、モータ205は、ポンプ201を駆動して、時計方向か又は反時計方向のいずれかの回転によって、設定差圧を発生させることができる。例えば、モータ205によってポンプ201を駆動して、圧縮チャンバ111内の流体圧力が、拡張チャンバ109内の流体圧力を超え、それにより、拡張方向121の能動力を付与するような設定差圧を発生させることができる。これは、例えば、コーナリング事象時に、車体を実質的に水平に維持するために行うことができる。ポンプが設定差圧を発生させるように駆動されている間に、圧縮方向119の外部入力が、ピストンロッドに加えられる場合に(例えば、車両が隆起に当たり、一方、それと同時に、アクティブサスペンションシステムが、コーナリング時に車体を支持するように動作する場合に)、油圧チャンバのチャンバ間の流体流れは、ポンプの慣性質量により事実上阻止され得る。すなわち、外部入力が、ポンプの慣性だけでなく、モータ205によってポンプ201に加えられるトルクも超えるほど十分に大きくない限り、油圧ダンパは、外部入力に呼応して望ましくない高い剛性を示し、外部入力の力は、油圧ダンパ101を通って車体に伝達され得る。
【0031】
本発明者は、特定の態様において、この「荒い乗り心地」問題は、図4図6の例示的な実施形態に示すように、2つの分離したアキュムレータを有するサスペンションシステム構成要素を利用することで、少なくとも部分的に抑えることができると認識した。2つのアキュムレータとして、圧縮アキュムレータ350及び拡張アキュムレータ352を含むことができる。図示したように、特定の実施形態では、圧縮アキュムレータ350は、圧縮チャンバ111と直接的に流体連通することができる。本明細書において、圧縮アキュムレータは、圧縮チャンバと「直接的に」流体連通するとされ、その理由は、流体は、ポンプを通過することなく、圧縮アキュムレータ350から圧縮チャンバ111に流れることができるからである。さらに、特定の実施形態では、拡張アキュムレータ352は、拡張チャンバ109と直接的に流体連通することができる。特定の実施形態では、1つ又は複数の弁(例えば、セミアクティブ弁、可変オリフィス弁など)は、圧縮チャンバ111と圧縮アキュムレータ350との間、及び/又は拡張チャンバ109と拡張アキュムレータ352との間に流体配置することができる。
【0032】
図示した実施形態では、ダンパの外部圧縮時に、ポンプの慣性が大きく、外部入力によって生じた差圧が負ける場合でさえ、流体は、圧縮チャンバ111から圧縮アキュムレータ350に流れることができ、それと同時に、拡張アキュムレータ352から拡張チャンバ109への流体流れが起こることができる。その結果、ダンパは、任意の流体流れがポンプを通り抜けることを必要とすることなく圧縮することができる。図4図6は、圧縮行程時の様々な時点におけるサスペンションシステム構成要素を示している。図5では、ダンパは、図4と比較して圧縮されている。図5図4と比較すると分かるように、この圧縮は、(流体流れがポンプを全く通らないと仮定して)圧縮チャンバ111に収容された液体量を減じ、圧縮アキュムレータ250に収容された液体量を増加させ、拡張アキュムレータ352に収容された液体量を減じ、拡張チャンバ109に収容された液体量を増加させることができる(明瞭にするために、液体は薄いグレーの充填物として示されている)。これらの傾向は、図6図5と比較すると分かるように、ダンパがさらに圧縮される限り継続する。
【0033】
したがって、外部圧縮の正味効果は、流体流れが圧縮チャンバ111から出ることと、流体流れが拡張チャンバ109に入ることとであるが、特に、任意の流体が油圧ポンプ201を通過する必要はない。さらに、外部拡張の場合に、流体は、拡張チャンバ109から拡張アキュムレータ352に流入することができ、同時に、流体は、圧縮アキュムレータ350から圧縮チャンバ111に流入することができる。したがって、外部拡張時の正味効果は、流体流れが拡張チャンバ109から出ることと、流体流れが圧縮チャンバ111に入ることとであり、この場合も、流体が油圧ポンプ201を通過する必要はない。したがって、ポンプに関係する慣性は、実際上無視することができ、荒い乗り心地問題は回避することができる。この構成は、外部圧縮に関して、システムを十分に柔性にすることができるが、同様の動作状態下で、システムの応答性を低くすることもできる。
【0034】
特定の実施形態では、圧縮アキュムレータ及び拡張アキュムレータは共に、油圧シリンダの外に配置される。特定の実施形態では、図4図6に示すように、各アキュムレータは、内部アキュムレータチャンバを少なくとも部分的に規定するアキュムレータハウジング354a~bを含む。特定の実施形態では、このアキュムレータハウジング354a~bは、円筒形とすることができる。特定の実施形態では、アキュムレータは、バリア356a~bをさらに含むことができ、このバリア356a~bは、内部アキュムレータチャンバを、液体を少なくとも部分的に充填される液体チャンバ358a~bと、気体を少なくとも部分的に充填される気体チャンバ360a~bとに分割する。図4図6の例示的な実施形態では、バリア360a~bは、アキュムレータハウジング354a~b内にスライド可能に受け入れられるピストンである。他の実施形態では、バリア360a~bは、可撓性ブラダとすることができる。本明細書において、アキュムレータの「容量」とは、アキュムレータハウジング内に配置される流体の総量を指す。したがって、例えば、分離した液体チャンバ358a~b及び気体チャンバ360a~bを有するアキュムレータの場合に、アキュムレータの容量は、(a)所与の時点での液体チャンバ内の液体量と、(b)所与の時点での気体チャンバ内の気体の体積との合計を指すと解釈される。
【0035】
本発明者は、特定の実施形態において、ダンパの全行程にわたって所望の性能を達成するために、圧縮アキュムレータは、完全な圧縮行程(例えば、最大拡張から最大圧縮まで)の間に、圧縮チャンバから移動した液体の全量を収容できるように容量を決められるのが好ましいと認識した。さらに、拡張アキュムレータは、完全な拡張行程(例えば、最大圧縮から最大拡張まで)の間に、拡張チャンバから移動する流体の全量を収容できるように容量を決められるのが好ましい。相応して、特定の実施形態では、任意の所与のもので、圧縮アキュムレータに収容される流体量は、ダンパの油圧シリンダに収容される流体量を超える。さらに、特定の実施形態では、任意の所与の時点で、拡張アキュムレータに収容される流体量は、ダンパの油圧シリンダに収容される流体量を超える。これにより、アキュムレータはそれぞれ、パッシブ又はセミアクティブサスペンションシステムに通常見られるアキュムレータよりもかなり大きくなる。
【0036】
図4図6に示すアクティブサスペンションシステム構成要素では、圧縮アキュムレータ350に収容される流体量は、ダンパの油圧シリンダに収容される流体量にほぼ等しい。図6に示すように、油圧ダンパが最大圧縮に近くなると、ダンパの圧縮チャンバ111内の液体量はゼロに近くなり、圧縮アキュムレータ350の液体チャンバに収容される液体の量が増大する。圧縮アキュムレータは気体チャンバ及び液体チャンバの両方を含むので、液体チャンバの容積が大きくなるにつれて、気体チャンバの容積が相応して小さくなる。公知の気体法則により、気体チャンバのそのような圧縮は、気体チャンバに保持された気体の圧力を高くし、それにより、圧縮アキュムレータの有効剛性を高くする。その結果、圧縮アキュムレータの剛性は、ダンパが圧縮されるにつれて高くなる。圧縮アキュムレータの容積が、ダンパの油圧シリンダの流体量とほぼ同じ場合に、圧縮アキュムレータは、ダンパが圧縮されたときに過度な剛性になることがある。これは、ダンパが十分に圧縮されたときに、乗り心地を悪くすることがある。同様の理由から、拡張アキュムレータは、ダンパ101が拡張したときに、過度な剛性になることがあり、ダンパが十分に拡張した場合に、乗り心地を悪くする可能性がある。
【0037】
大規模な外部圧縮事象時に、圧縮アキュムレータの剛性が高くなりすぎるのを回避するために、本発明者は、圧縮アキュムレータに収容される流体量が、ダンパの油圧シリンダに収容される流体量を第1倍率だけ超えるように、圧縮アキュムレータの容量を決めることができると認識した。特定の実施形態、特に、柔性の圧縮アキュムレータが望ましい実施形態では、第1倍率は3を超えることができる。他の実施形態では、第1倍率は1.5を超えることができる。第1倍率は、実装上の制約によって限定されることがあり、その理由は、圧縮アキュムレータの容量が大きくなるほど、自動車の制約を受けた空間内での実装が困難になるからである。様々な実施形態では、第1倍率は、5、2.5、又は2を超えることができない。
【0038】
同様の理由から、大規模な外部拡張事象時に、圧縮アキュムレータの剛性が高くなりすぎるのを回避するために、本発明者は、拡張アキュムレータに収容される流体量が、ダンパの油圧シリンダに収容される流体量を第2倍率だけ超えるように、拡張アキュムレータの容量を決めることができると認識した。特定の実施形態、特に、柔性の拡張アキュムレータが望ましい実施形態では、第2倍率は3を超えることができる。他の実施形態では、第2倍率は1.5を超えることができる。第2倍率は、実装上の制約によって限定されることがあり、その理由は、拡張アキュムレータの容量が大きくなるほど、自動車の制約を受けた空間内での実装が困難になるからである。様々な実施形態では、第2倍率は、5、2.5、又は2を超えることができない。
【0039】
自動車用途での実装に利用できる空間が限定されているため、特定の状況では、上記に規定した比較的大きい容量を有するアキュムレータを車両のサスペンションシステムに装着するのは実際的でない、又は不可能なことさえあり、例えば、車両において、流体量がダンパの油圧シリンダの流体量を超える圧縮アキュムレータ、及び/又は流体量がダンパの油圧シリンダの流体量を超える拡張アキュムレータを含むサスペンションシステム構成要素を実装するのは実際的でない、又は不可能である。そのような実装上の制約を考慮して、本発明者は、前に開示した容量よりも容量が小さいアキュムレータが使用される場合でさえ、構成要素がダンパの全行程にわたって所望の剛性を維持することを可能にするために、アクティブサスペンションシステム構成要素に様々な修正を行うことができると認識した。これらの修正には、例えば、本明細書に開示するように、適切な大きさのバイパス弁、圧力逃がし機構、コンプライアンス要素の追加、及び/又は他のコンプライアント機構を含むことができる。
【0040】
図7は、アクティブサスペンションシステム構成要素の実施形態を示している。図7の実施形態は、図4の実施形態と同様であり、1つ又は複数のバイパス弁403を含むバイパス流路401が組み込まれている。バイパス弁403は、大振幅の外部圧縮又は外部拡張事象(例えば、クラスI又はクラスII変位を移動することで引き起こされるものなど)中に、それぞれ、圧縮チャンバ111からバイパス流路401を通って、拡張チャンバ109に至る流れ、又は拡張チャンバ109からバイパス流路401を通って圧縮チャンバ111に至る流れを可能にするように開くことができる。このように、少なくとも、バイパス弁の特定の動作モードの間に、流体は、ポンプ201の回転を必要とすることなく(例えば、ポンプの慣性は、実際上無視することができる)、圧縮チャンバ111と拡張チャンバ109との間を流れることができる。したがって、圧縮アキュムレータ350及び/又は拡張アキュムレータ352は、それぞれVmax及びVminよりも小さくすることができ、その理由は、圧縮アキュムレータ350及び拡張アキュムレータ352が、それぞれ外部圧縮又は外部拡張時に、もはや圧縮チャンバ111及び拡張チャンバ109からの全流体を収容する必要がないからである。
【0041】
特定の実施形態では、バイパス弁403は、1対の吹出弁を含むことができ、対の各吹出弁は、対の他の吹出弁に対して反対の向きに配置される。これらの実施形態では、各吹出弁は、ポンプが発生させるように構成された最大動作差圧を超えるそれぞれのクラッキング圧力を有するように構築することができる。特定の実施形態では、バイパス弁403は、1対の圧力バランス式吹出弁を含むことができる。特定の実施形態では、バイパス弁403は、少なくとも1つの周波数依存逆止弁を含むことができる。特定の実施形態では、バイパス弁403は、1対の周波数依存逆止弁を含むことができ、対の各周波数依存逆止弁は、対の他の弁に対して反対の向きに配置される。利用できる周波数依存逆止弁の例は、ISBN 978-0-470-51020-9、John C. DixonによるShock Absorber Handbookの245ページに記載されている。好ましい実施形態では、各周波数依存逆止弁は、弁の両端間の差圧が第1閾値周波数を超える周波数に変わったときに開き(例えば、弁の一方の側から他方への流れを可能にし)、差圧が、閾値周波数を超えない周波数に変わったときに閉じるように(例えば、弁の一方の側から他方への流れを実質的に阻止するように)構築することができる。そのように周波数選択弁を構築することで、(通常、差圧の周波数変動が比較的小さい)ポンプの能動動作中に閉じることができ、(通常、差圧の周波数変動が比較的大きい)副次的な乗り心地事象によって引き起こされる外部圧縮又は外部拡張に対して開くことができる。それに加えて、又はそれに代えて、周波数依存逆止弁は、第1閾値周波数を超える周波数を有する外部入力に呼応して少なくとも部分的に開き、第1閾値周波数を超えない周波数を有する外部入力に呼応して少なくとも部分的に閉じるように構成することができる。様々な実施形態では、第1閾値周波数は、3Hz(典型的な車両の車体の固有周波数に近い)~12Hz(典型的な車両のホイールホップ周波数に近い)とすることができる。
【0042】
図7は、ポンプ201が、設定差圧を確立するように能動的に動作しているときの例示的なアクティブサスペンションシステム構成要素を示している。「設定差圧」とは、モータを用いてポンプを能動的に駆動することで生じる差圧を指すと解釈される。図7では、ポンプ201に第1方向601のトルクを加えて、ポンプ201に設定差圧を発生させように電気モータ(図示せず)に命令することができ、それにより、拡張チャンバ109内の流体の圧力は、圧縮チャンバ111内の流体の圧力を差分だけ超える。説明において、バイパス弁403は閉じ、ダンパ101の長さは固定され、システム内の液体は実際非圧縮性と仮定する。ダンパの長さは固定されると仮定し、液体は、実際上非圧縮性であるので、実際上、拡張チャンバ111に出入りする流体流れはなく、実際上、圧縮チャンバ109に出入りする流れはない。
【0043】
最初に、まず電気モータが、ポンプ201にトルクを加えると、ポンプ201は回転して、一部の流体に圧縮アキュムレータ350の液体チャンバ358aからポンプ201を通って、拡張アキュムレータ352の液体チャンバ358bに流入させる。液体は、圧縮チャンバ350の液体チャンバ358aから流出するので、相応して、圧縮アキュムレータ350の気体チャンバ360aの容積は大きくなる(それぞれの気体チャンバ360aに収容された気体の圧力が落ちる)。さらに、液体は、拡張アキュムレータ352の液体チャンバ358bに流入するので、相応して、拡張アキュムレータ352の気体チャンバ360bの容積は小さくなる(それぞれの気体チャンバ360bに収容されたアズの圧力が高くなる)。圧縮アキュムレータ350の気体チャンバ360a内の気体と拡張アキュムレータ352の気体チャンバ360b内の気体との間の圧力の差は、設定差圧に等しい。理論的には(ポンプ201、ピストン107、及び弁403にわたって漏れがないと仮定すると)、設定差圧が確立された後、システム内にもはや流体流れはなく、ポンプは一定の角度位置のままである。実際には、ポンプ201、ピストン107、及び/又は弁403にわたってある程度の量の漏れが常にあり、そのため、ポンプは、漏れを補償して設定差圧を維持するために、連続的に回転する必要があり得る。
【0044】
すでに説明したように、アクティブサスペンションシステム構成要素の観測剛性は、ポンプが差圧を加えるために能動的に動作している間に発生する外部入力に呼応して、望ましくない高いレベルに達することがある。そのような状況は、例えば、車両が、コーナリングをしながら、路面形状部(例えば、隆起、窪み)を移動するときに起こることがある。コーナリング中の車両の本来の傾向は、車両のうちの回転中心に最も近い側が持ち上がることである。したがって、コーナリング事象中に、設定差圧を確立して、車両を水平にする、及び/又は車両のロールを最小限にするために、アクティブサスペンションシステム構成要素のポンプ201を能動的に動作させることが望ましい。そのようなコーナリング事象中に、車両の内側ホイールが(例えば、路面形状部を移動することで)外部入力を受け、その結果、拡張方向801の外部入力がピストンに加えられることがあり得る。ポンプの能動動作中に、外部入力に呼応してアクティブサスペンションシステム構成要素の剛性が高くなるために、特定の外部入力が、ポンプ201の能動動作と同時に発生した場合に、乗り心地の低下が起こり得る。
【0045】
観測剛性の増大及び相応する乗り心地の低下は、比較的低い周波数の外部入力と比較して、比較的高い周波数の外部入力(例えば、地表面における一連の小さく反復する凹凸など)の場合に特に顕著なことがある。観測剛性のそのような周波数依存に対する1つの解釈は、周波数が十分に低い外部入力は、ポンプ201の慣性の影響を受けづらく、それにより、流体がポンプを流れるのを可能にし、観測剛性を低くするということである。ホイールホップに関係する周波数など周波数が比較的高い外部入力では、ポンプの高い加速度を必要とすることがあり、したがって、ポンプの慣性の影響をより受けやすいことがある。そのような比較的高い周波数を有する外部入力に呼応してポンプを通過する(漏れを無視した)流れは実際上阻止されることがあり、それにより、実際上観測剛性を高くする。別の説明又は追加説明として、能動的に制御されるバイパス弁を使用して、ポンプを迂回する場合に、バイパス弁の開閉に伴う最小応答時間が通常存在する。高い周波数の外部入力に対して、事象の持続時間が、バイパス弁が要する最小応答時間よりも短い場合に、弁は効果がなくなることがある。さらに、サスペンションシステム構成要素の様々な流路内の流体質量は、実際上、高い周波数における流体流れを阻止して、観測剛性を高くすることがある流体慣性抵抗及び/又はインピーダンスをもたらすことができる。
【0046】
乗り心地品質のそのような低下を回避するために、本発明者は、サスペンションシステム構成要素の観測剛性が、予測される設定差圧の全範囲にわたって、さらに入力周波数の範囲にわたって考慮されなければならないと認識した。図9は、y軸で示す周波数が12Hzの外部入力に呼応した例示的なサスペンションシステム構成要素の剛性とx軸で示す設定差圧との関係を示している。垂直破線901は、通常の走行状態時に予測される最大設定差圧を示すために、図16に示されている。本発明者は、標準的な地表面上での通常の走行環境において、典型的な重量、ピストンサイズ、及びピストンロッドサイズを有する車両に対して、最大設定差圧は、約1,000psiとすることができると認識した。さらに、水平破線903は、(典型的な車両のホイールホップ周波数に近い)12Hzの外部入力に呼応した、望ましい最大剛性を強調するために、図5に示されている。曲線910~918は、様々な容量の外部アキュムレータ(曲線910は、最小の拡張アキュムレータ容量を有する構成要素を示し、曲線918は、最大の拡張アキュムレータ容量を有する構成要素を示している)を有するサスペンションシステム構成要素の観測剛性を示している。圧縮アキュムレータの容量に基づく挙動に対して同様の曲線を描くことができる。ほとんどの車両のホイールホップ固有周波数は、約12Hzであるので、12Hzの周波数が選択されたが、他の周波数も考えられる。当業者には分かるように、そのような曲線は、各アキュムレータのプリチャージ圧力及び気体体積量を含む様々なアキュムレータパラメータによっても決まり得る。
【0047】
図16から分かるように、曲線910、912、914で表されるサスペンションシステム構成要素は、最大設定差圧未満の設定差圧で、望ましい最大剛性を超える剛性を有する。したがって、曲線910、912、914で表されるサスペンションシステム構成要素は、少なくとも特定の状態で乗り心地の低下が生じる可能性がある。他方で、910~914のものよりも大きい拡張アキュムレータ容量を有する、曲線916、918で表されるサスペンションシステム構成要素の観測剛性は、最大設定差圧よりも小さい任意の設定差圧に対して望ましい最大剛性を超えない。したがって、曲線916、918で表されるサスペンションシステム構成要素は、少なくとも通常の走行状態下で、乗り心地の低下が生じる可能性がない。
【0048】
したがって、本発明者は、最大設定差圧未満の任意の設定差圧に対して、第1周波数を有する外部入力に呼応した構成要素の観測剛性が、好ましくは、望ましい最大剛性を超えないようにサスペンションシステム構成要素を構築することができると認識した。綿密な実験及びシミュレーションの結果として、本発明者は、ポンプが1000psiの設定差圧を発生させるように動作するときに、第1周波数及び第1ピーク間振幅を有する外部入力に呼応したサスペンションシステム構成要素の観測剛性が、望ましい第1最大剛性値を超えないように、サスペンションシステム構成要素を構築することが好ましいと認識した。特定の実施形態では、第1周波数は12Hzとすることができ、その理由は、12Hzが、ほぼ、民生車両に典型的なホイールホップ周波数だからであり、第1ピーク間振幅は5mmとすることができ、その理由は、5mmが、路面に典型的な変位にほぼ一致するからである。特定の実施形態では、望ましい第1最大剛性値は、80N/mmとすることができる。本発明者は、通常の走行状態時に、ポンプを能動的に動作させて、車両の望ましい姿勢を維持するのに十分な力を能動的に加える場合でさえ、所与の値が、アクティブサスペンションシステム構成要素の過度の剛性により、典型的な車両の乗り心地が低下するリスクを最小限にすると認識した。様々な実施形態では、第1周波数は8~15Hzの任意の値とすることができ、第1ピーク間振幅は、3~7mmの任意の値とすることができる。
【0049】
上記のように、特定の用途では、(例えば、実装上の制約に対処するために)拡張アキュムレータ及び/又は圧縮アキュムレータの容量を上記の式によって与えられる値未満の値まで小さくし、一方で、それでもなお、上記の望ましい観測剛性範囲内に維持することが望ましい。本発明者は、そのようなサスペンションシステム構成要素は、付加的なコンプライアント機構を使用することで構築することができると認識した。
【0050】
例えば、図10は、ハウジングと、ピストン1005と、ピストン1005の第1面に取り付けられた第1ばね1003と、ピストン1005の第2面に取り付けられた第2ばね1007とを含むコンプライアント機構1001を有するサスペンションシステム構成要素を示している。示していないが、図10のサスペンションシステム構成要素は、1つ又は複数のバイパス弁を含むバイパス流路を含むこともできる。図示した実施形態では、ピストン1005の第1面は、圧縮チャンバ111内の流体の圧力に等しい圧力を有する流体に接触し、一方、ピストン1005の第2面は、拡張チャンバ109内の流体の圧力に等しい圧力を有する流体に接触している。流体に接触した第1面の面積と流体に接触した第2面の面積とは等しく、この場合に、設定差圧に比例する、ピストン1005に作用する力が存在する。この力は、第1ばね1003を拡張させ、第2ばね1007を圧縮することができる。特定の実施形態では、流体に接触した第1面の面積と流体に接触した第2面の面積とは実際上等しく、一方、他の実施形態では、これらの面積は実際上異なることができる。
【0051】
特定の実施形態では、第1ばね1003及び第2ばね1007は、標準コイルばねにおいて公知のように、変位の少なくとも一部の範囲にわたって実際上一定のばね定数を有する。これらの実施形態では、コンプライアント機構1001の剛性は、有効差圧にかかわらず一定である。コンプライアント機構1001の剛性は、設定差圧により、ばね1001、1007の少なくとも1つが「底に達する」のに十分なピストンの移動が得られるまで一定に維持することができ、ばねは、底に達した時点で実際上無限の剛性になる。この挙動は図11に示されており、図11は、y軸上のコンプライアント機構の剛性とx軸上の有効差圧とを示している。図11から分かるように、剛性は、所与の有効差圧1107で、第1ばね1003及び第2ばね1007の少なくとも1つが底に達し、それにより、コンプライアント機構の剛性が急勾配1105で高くなるまで、設定差圧の第1範囲1101にわたって実際上一定である。ばねの底突きを回避するために、各第1ばね1003及び第2ばね1007の長さは、各方向における予測最大有効差圧と、第1ばね1003及び第2ばね1007のそれぞれのばね定数と、流体に接触したピストン1005の第1面の面積と、流体に接触したピストン1005の第2面の面積とを考慮して決められるべきである。それに代えて、又はそれに加えて、第1ばね及び/又は第2ばねは、剛性の急な変化を防止するように設計された1つ又は複数の非線形部分を含むことができる。
【0052】
引き続き図11を参照して、ポンプの拡張チャンバ109側のコンプライアンスは、拡張アキュムレータ352及びコンプライアント機構1001の両方によってもたらすことができる。通常、2つのコンプライアント要素が回路に存在する場合に、システム全体のコンプライアンスは、コンプライアンスが最も大きい(すなわち、剛性が最も小さい)要素のコンプライアンスによって決まる。図17では、剛性拡張アキュムレータ352(したがって、拡張アキュムレータ352のコンプライアンス)は、有効差圧によって変わる。他方で、コンプライアント機構1001の剛性は、少なくとも設定差圧1101の第1範囲にわたって、有効圧力とは無関係である。
【0053】
その結果、拡張アキュムレータ352及びコンプライアント機構1001の両方を組み込んだサスペンションシステム構成要素の観測組み合わせ剛性が図12に示されている。有効差圧の初期の範囲1201にわたって、拡張アキュムレータ352は、ばね機構1001よりも柔性であり、そのため、サスペンションシステム構成要素の観測剛性は、拡張アキュムレータ352の剛性によって決まる。設定差圧が上昇すると、拡張アキュムレータ352の剛性、ひいてはサスペンションシステム構成要素の観測全体剛性は高くなる。結局、拡張アキュムレータ352は、ばね機構1001よりも剛性になり、この時点で、サスペンションシステム構成要素の観測剛性は、少なくとも、コンプライアント機構1001のばね1003、1007の1つが底に達するまで、コンプライアント機構1001の剛性によって決まる。コンプライアント機構1001が使用される場合、拡張アキュムレータ352が、設定圧力の全範囲にわたって(予測される最大設定圧力まで)望ましい最大剛性未満のままである必要はもはやなく、したがって、より小さい拡張アキュムレータの使用を可能にする。反対方向の設定差圧に対して、同じ理論が圧縮アキュムレータに当てはまる。特定の実施形態では、コンプライアント機構1001は、(a)サスペンションシステム構成要素が、12Hzの周波数と5mmのピーク間振幅とを有する外部入力に呼応し、望ましい最大剛性よりも小さい観測剛性を有し、(b)コンプライアント機構1001が、最大設定差圧であっても底に達しない十分な長さを有するように構築することができる。特定の実施形態では、コンプライアント機構1001は、ポンプが1000psiの設定差圧を発生させるように駆動される場合に、サスペンションシステム構成要素が、12Hzの周波数と5mmのピーク間振幅とを有する外部入力に呼応し、望ましい最大剛性よりも小さい観測剛性を有するように構築することができる。特定の実施形態では、望ましい最大剛性は、80N/mmである。特定の実施形態では、観測剛性はresp内である。
【0054】
特定の周波数及び振幅を有する振動外部入力に呼応するアクティブサスペンションシステム構成要素(例えば、本明細書に開示した実施形態のいずれかによるアクティブサスペンションシステム構成要素)の観測剛性を求める例示的な方法が以下に開示される。例示的な方法では、ダンパは、ショックダイナモメータ(当技術分野ではダイノ(dyno)と呼ばれることが多い)においてほぼ中間行程位置に保持される。ポンプの能動動作時に、サスペンションシステム構成要素の観測剛性を評価するために、サスペンションシステム構成要素のポンプを任意選択的に駆動して(例えば、モータによってポンプにトルクを加えることができる)、ポンプの両端間に設定差圧(例えば、1000psiの設定差圧)を発生させることができる。この設定差圧は、どちらの方向でもよい。ダンパは、行程の中間に保持されている(すなわち、縮小も、又は拡張もすることができない)ので、ポンプの能動動作は、設定差圧を発生させ、設定差圧を継続して維持することができる。ポンプが設定差圧を維持するように能動的に駆動された状態で、静止状態が達成されると、ダイナモメータは、プログラム化された外部入力をピストンロッドの先端に加えるように動作することができる。このプログラム化された外部入力は、第1周波数(例えば、車両のホイールホップ周波数である、例えば、12Hzに従って変わる(例えば、ピストンロッドの一端に加えられ、ピストンに伝えられる)、振動する一連の変位を含むことができる。例えば、ダイナモメータは、油圧シリンダのハウジングに対して、ピストンロッドを(したがって、ピストンを)特定の量だけ振動する態様で連続的に反復移動させるように命令することができる。特定の実施形態では、外部入力のピーク間振幅は5mmとすることができる。特定の場合に、外部入力は、振動する一連の変位だけで構成することができる。他の場合に、振動する一連の変位を直流状のオフセット力と重ね合わせることができるのは有益であり得、そのため、ピストンは絶えず移動し、静止摩擦効果は無視することができる。外部入力を加えているときに、(直接関連する)油圧ダンパの長さ及びピストンの位置、及び/又は外部入力に呼応して、油圧システムによってピストンロッドに加えられる反力は、リアルタイムに観測することができ、観測剛性を求めるために、外部入力の既知の特性と共に使用することができる。本明細書で説明したように、この剛性は、設定差圧及び/又は入力周波数に依存するので、観測剛性について言及する場合に、対応する設定差圧及び入力周波数を明記することが必要であり得る。
【0055】
特定の実施形態では、車両は、本明細書に開示したものなどの複数のサスペンションシステム構成要素を含むことができる。例えば、1つのサスペンションシステム構成要素は、車両の各ホイールに配置することができる。したがって、4輪車両は、4つの異なるサスペンションシステム構成要素を有することができる。特定の実施形態では、各サスペンションシステム構成要素は、車両の他の各サスペンションシステム構成要素から油圧的に分離することができるので、単一の車両内の異なるサスペンションシステム構成要素間の流体連通は防止することができる。他の実施形態では、例えば、強化したロール防止制御を行うために、異なるサスペンションシステム構成要素間の流体連通が存在し得る。
【0056】
本明細書において、「流体」とは、液体及び気体を指す。本明細書において、少なくとも1つの動作状態の間に、流体が第1構成要素から第2構成要素に流れることができる流路が存在する場合に、第1構成要素は、第2構成要素と「流体連通」するとされる。本明細書において、少なくとも第1動作状態の間に、流体が第1構成要素から第2構成要素に流れることができ、少なくとも第2動作状態の間に、流体が第1構成要素から第2構成要素に流れるのを妨げられる流路が存在する場合に、第1構成要素は、第2構成要素と「選択的に流体連通」するとされる。当業者には分かるように、選択的な流体連通は、例えば、少なくとも1つの弁を使用して達成することができ、この弁は、第1動作状態(例えば、弁が「開」位置にある場合)では、実際上、流体流れが弁を通過するのを可能にするが、第2動作状態(例えば、弁が「閉」位置にある場合)では、実際上、流体流れが弁を通過するのを妨げる。本明細書において、流体が第1構成要素から第2構成要素に流れることができる流路が存在し、流路の油圧抵抗を制御可能に変えることができる場合に、第1構成要素は、第2構成要素と「可変的に流体連通」するとされる。当業者には分かるように、可変流体連通は、例えば、可変オリフィス弁又は他の流れ制御弁を使用して達成することができる。
【0057】
本明細書において、電気モータとは、電気エネルギを機械エネルギに変換することができる任意の装置を指す。電気モータの非限定的例として、ブラシレスdcモータ(BLDCモータ)がある。電気モータは、特定の動作モードでは電気発電機として動作することができ、他の動作モードでは電気モータとして動作することができる。油圧ポンプとは、機械エネルギを油圧エネルギ(例えば、2つの異なるチャンバ間の差圧)に変換することができる任意の装置を指す。油圧ポンプは、特定の動作モードでは油圧モータとして動作することができ、他の動作モードでは油圧ポンプとして動作することができる。
【0058】
埋め込み式油圧アキュムレータアセンブリ
油圧システムは、例えば、車両内、特に、車両のサスペンションシステム内を含む様々な用途で使用されている。特定の用途は、所与の油圧システムが物理的に収まらなければならない限定された空間だけを与えることができる。したがって、実装サイズ及び空間上の制約は、例えば、自動車用途などの特定の用途への油圧システムの組み込みの大きな障害であり得る。この障害は、複数のアキュムレータを使用する油圧システムに対して特に顕著であり得るが、その理由は、油圧システム内の各アキュムレータがある程度の空間を占有し、油圧システムの総空間の一部をなすからである。複数のアキュムレータを油圧システムに実装する際の適応性の向上、及び/又は複数のアキュムレータを使用する油圧システムに対する実装サイズの縮小を可能にする埋め込み式アキュムレータアセンブリの実施形態が本明細書に開示される。
【0059】
特定の油圧システムでは、例えば、油圧システムの様々な部分に存在する油圧ノイズを軽減し、及び/又は油圧システムの様々な部分に柔性を付与するために、複数のアキュムレータを使用することが望ましい。しかし、油圧システムを使用する一部の用途では、油圧システムの実装に利用できる空間量に厳しい制限が存在することがある。自動車用途では、例えば、油圧システムの実装に利用可能な空間は、そのようなシステムが、例えば、車両のボンネット下、車体下、車両のホイール格納部などにある利用可能な空間に収まらなければならないことから通常制約される。複数のアキュムレータの使用により、油圧システムの実装サイズが大きくなり得るので、複数のアキュムレータを組み込むのは、物理的実装許容範囲が極めて制約される一部の用途(例えば、車両サスペンションシステム)では法外に困難になることがある。したがって、本発明者は、複数の独立して機能するアキュムレータはそのままに、実装要求を緩和することを可能にするために、複数のアキュムレータを単一のハウジングに組み込むことの利益を認識した。そのような「埋め込み式アキュムレータ」アセンブリのさらなる利益には、長い油圧流体経路を制限することと、油圧システムの全体的な単純化とを含むこともできる。
【0060】
一態様では、埋め込み式アキュムレータアセンブリが開示される。埋め込み式アキュムレータアセンブリは、内部空間を少なくとも部分的に規定するハウジングを含む第1アキュムレータを含むことができる。内部空間は、例えば、ピストン(例えば、浮動ピストン、若しくはばね付勢式ピストン)、弾性ダイヤフラム、又は閉鎖ブラダなどの機械部材によって、第1チャンバと第2チャンバとに分割することができる。機械部材は、封止要素(例えば、Oリング)を含むことができ、第1チャンバ内の任意の流体が、第2チャンバ内の任意の流体から分離されるように、アキュムレータハウジングの壁に封止する形で連結することができる。特定の実施形態では、第1チャンバは、圧縮可能な流体(例えば、気体)を収容し、気体充填チャンバと称することができる。第2チャンバは、非圧縮性油圧流体を少なくとも部分的に充填することができ、油圧流体チャンバと称することができる。特定の実施形態では、第1チャンバは、代替として、又は追加として、ピストンをハウジングに機械的に取り付けるばね要素を含むことができる。
【0061】
特定の実施形態では、第2アキュムレータは、第1アキュムレータの内部空間内に(例えば、第1アキュムレータの第1チャンバ又は第2チャンバ内に)配置することができる。この第2アキュムレータは、主アキュムレータの環境内で独立して機能することができる。第2アキュムレータを第1アキュムレータの内部空間内に配置することで、システムの機能性を最大限に維持しながら、総実装空間を縮小することができる。特定の用途では、所与の油圧システムの総実装サイズが埋め込み式アキュムレータを利用することで縮小されない場合でさえ、そのような埋め込み式アキュムレータは、それにもかかわらず、油圧システムを制約された空間に収めるための付加的な適応性を付与することができる。
【0062】
一部の実施形態では、機械オフセットのアレイが、浮動ピストンの上部及び/又は底部の面に固定して取り付けられる。これらのオフセットは、ピストンが一方向に最大限に伸長した場合に、ピストン面と他の平面との間の粘性流の効果を誘発する油圧ノイズを防止するのに寄与することができる。
【0063】
図13は、アキュムレータ1、特に、浮動ピストンタイプの気体充填アキュムレータの実施形態を示している。アキュムレータ1は、内部空間を少なくとも部分的に規定する円筒形のアキュムレータハウジング2を含むことができる。図示した実施形態では、封止要素4(例えば、Oリング)を介してアキュムレータハウジング2の壁の内面に封止連結された浮動ピストン3が、アキュムレータハウジング2内にスライド可能に配置されている。図示したように、ピストン3は、アキュムレータの内部空間を気体充填チャンバ5と油圧流体チャンバ6とに分割している。ガス充填チャンバ5は、気体又は他の圧縮可能流体を収容し、一方、油圧流体チャンバは、非圧縮性油圧流体を少なくとも部分的に充填さている。気体は、アキュムレータハウジング2に対するピストン4の移動に呼応して、ピストン4に復元力を付与する加圧不活性気体とすることができる。アキュムレータ1は、油圧流体が油圧流体チャンバと油圧システムの他の部分との間で出入りするのを可能にするように構成された1つ又は複数のポートをさらに含むことができる。特定の実施形態では、アキュムレータ1は、単一のポートだけを含み、一方、他の実施形態では、アキュムレータ1は、少なくとも第1ポート16及び第2ポート17を含むことができる。
【0064】
図14は、埋め込み式のアキュムレータアセンブリの実施形態の図解である。例示的な埋め込み式アキュムレータアセンブリは、図13に関連して説明したものと実質的に同様の第1アキュムレータ1を含む。第1アキュムレータは、第1内部空間を少なくとも部分的に規定する第1アキュムレータハウジング2と、第1アキュムレータハウジングの壁の内面に(例えば、Oリングを介して)封止連結されたピストンと、第1内部空間を第1気体充填チャンバ5と第1油圧流体チャンバ6とに分割するピストン3とを含むことができる。
【0065】
図示した埋め込み式アキュムレータアセンブリは、第2アキュムレータ9をさらに含む。第2アキュムレータ9の少なくとも一部分は、第1アキュムレータ1の第1内部空間内に(例えば、第1油圧流体チャンバ6内に)配置することができる。第2アキュムレータは、第2内部空間を少なくとも部分的に規定する第2アキュムレータハウジング10と、(例えば、第2ピストンに含まれる封止要素13(例えば、Oリング)を介して)第2アキュムレータハウジング10の壁の内面に封止連結された第2ピストン12とを含むことができる。第2ピストン12は、第2アキュムレータ9の内部空間を第2気体充填チャンバ14と第2油圧流体チャンバ15とに分割することができる。第2アキュムレータ9は、油圧流体が第2油圧流体チャンバに出入りするのを可能にする1つ又は複数のポート16、17をさらに含むことができる。当業者には分かるように、第2アキュムレータ9は、第2アキュムレータのサイズにより、第2アキュムレータ9が第1アキュムレータの内部空間(例えば、油圧流体チャンバ6)内に部分的に、又は完全に収まるのが可能になることを除いて、主アキュムレータ1と実質的に同様の機構を介して機能する。第2アキュムレータ9は、主アキュムレータ1の環境内で独立して動作することができる。第2アキュムレータが第1アキュムレータの内部空間に少なくとも部分的に配置される、2つのアキュムレータの開示した物理配置は、システムの機能性を維持しながら、全体的な実装要件を緩和することができる。
【0066】
特定の実施形態では、ギャップ18は、第2アキュムレータハウジング10の外側部分と第1アキュムレータハウジング2の内側部分との間に存在することができる。特定の実施形態では、このギャップは、それぞれのハウジングの幾何形状に合わせて環状とすることができる。特定の実施形態では、第1アキュムレータに出入りする有益な油圧流体の流れ特性を得るために、ギャップ18を調整することが望ましい。例えば、ギャップ18は、適切なサイズとされた場合に、流体制限要素及び/又は流体慣性抵抗要素として機能することができる。ギャップ18の大きさを制御することで、油圧抵抗及び/又は油圧慣性抵抗は、油圧システム全体に対して制御することができる。
【0067】
特定の実施形態では、第1アキュムレータハウジング及び第2アキュムレータハウジングは、1つ又は複数の壁又は壁の一部分を共有することができる。さらに、特定の実施形態では、第2アキュムレータは、第1油圧流体チャンバ6内に少なくとも部分的に配置されるのではなくて、又は配置されるのに加えて、例えば、第1気体充填チャンバなどの第1内部空間の別の部分に少なくとも部分的に配置することができる。さらに、図14の埋め込み式アキュムレータアセンブリは、2つのアキュムレータシステムを示しているが、本開示はこの点について限定されない。他の実施形態は、第1アキュムレータの第1内部空間内に配置された複数のアキュムレータを備えることができ、又は第2アキュムレータの第2内部空間内に第3アキュムレータを備えることもできる。さらに、システムは、第1アキュムレータ及び/又は第2アキュムレータが、図示した気体充填アキュムレータではなくて、スプリングで付勢されたアキュムレータとすることができるように簡単に修正可能であるのは明白である。
【0068】
本教示が、様々な実施形態及び例に関連して説明されたが、本教示がそのような実施形態又は例に限定されることは意図されていない。反対に、本教示は、当業者には明らかなように、様々な代替案、修正形態、及び同等物を包含する。
図1
図2a
図2b
図2c
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
【手続補正書】
【提出日】2024-06-11
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を少なくとも部分的に規定する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダにスライド式に挿入され、それにより、前記内部空間を圧縮チャンバと拡張チャンバとに分割するピストンと、
前記ピストンに取り付けられ、前記油圧シリンダから外に延びるピストンロッドと、
前記圧縮チャンバと流体連通した第1ポートと、前記拡張チャンバと流体連通した第2ポートとを含む油圧ポンプと、
前記圧縮チャンバと流体を交換するように構成された圧縮アキュムレータと、
前記拡張チャンバと流体を交換するように構成された拡張アキュムレータと、
を含むサスペンションシステム構成要素であって、
前記油圧ポンプが少なくとも68.95バールの第1設定差圧を発生させたときに、12Hzの周波数と5mmのピーク間振幅とを有する外部入力に呼応する前記サスペンションシステム構成要素の観測剛性は80N/mmを超えない、サスペンションシステム構成要素。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0003
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0003】
一態様では、内部空間を少なくとも部分的に規定する油圧シリンダと、油圧シリンダにスライド式に挿入され、それにより、内部空間を圧縮チャンバと拡張空間とに分割するピストンと、ピストンに取り付けられ、油圧シリンダから外に延びるピストンロッドと、圧縮チャンバと流体連通する第1ポートと拡張チャンバと流体連通する第2ポートとを含む油圧ポンプと、圧縮チャンバと流体を交換するように構成された圧縮アキュムレータと、拡張チャンバと流体を交換するように構成された拡張アキュムレータとを含むサスペンションシステム構成要素が開示される。特定の実施形態では、油圧ポンプが第1設定差圧を発生させるときに、周波数が12Hzでピーク間振幅が5mmの外部入力に呼応したサスペンションシステム構成要素の観測剛性は80N/mmを超えず、第1設定差圧は、少なくとも1,000psi(技術常識に基づき単位換算すると約68.95バール。以下、同じ)の値を有する。特定の実施形態では、第1設定差圧は1,000psiの値を有する。特定の実施形態では、観測剛性は、5/mm、10N/mm、又は25N/mm以上である。特定の実施形態では、観測剛性は、80N/mm、70N/mm、又は50N/mm以下である。
【外国語明細書】