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特開2024-119859不均一なピンを有する頭部安定化機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119859
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】不均一なピンを有する頭部安定化機器
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/14 20160101AFI20240827BHJP
【FI】
A61B90/14
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024084249
(22)【出願日】2024-05-23
(62)【分割の表示】P 2021516661の分割
【原出願日】2019-09-25
(31)【優先権主張番号】62/736,057
(32)【優先日】2018-09-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520051861
【氏名又は名称】プロ メッド インストゥルメンツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】マーティンズ、ジャン、エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】シューエル、マティアス、イー.
(57)【要約】      (修正有)
【課題】頭部または首の外科手術中または検査中に用いられることがある頭部安定化機器を提供する。
【解決手段】頭蓋クランプの形態を有する頭部安定化機器は第1のピンアセンブリと第2のピンアセンブリとを含む。前記ピンアセンブリは互いに反対側に配置され、前記第1のピンアセンブリが第1のピンを有する一方、前記第2のピンアセンブリが一対のピンを有する。前記頭蓋クランプで用いられる前記ピンは不均一である。この点で、前記頭蓋クランプは前記患者の頭部に両側から等しい力を加えることができる。さらに、各ピン位置における圧力は同等又は実質的に同等にすることができる。これにより、前記患者の頭部を安定化するのに使用する際に各ピンが同じまたは同様の骨侵入をなし得る。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療処置中に患者の頭部を安定化する頭蓋クランプであって、
(a)第1のアームであって、第1の横向き部分に連結された第1の直立部分を有するものである、前記第1のアームと、
(b)第2のアームであって、第2の横向き部分に連結された第2の直立部分を有するものである、前記第2のアームと、
(c)前記第1のアームまたは前記第2のアームに連結可能な少なくとも2つのピンアセンブリと、
(d)前記患者の頭蓋に係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された複数のピンであって、前記ピンアセンブリの各々は当該複数のピンのうちの少なくとも1つを有するものであり、前記患者の頭部の第1の側にある第1の数のピンは、前記患者の頭部を挟んで前記第1の側と対向する前記患者の頭部の第2の側にある第2の数のピンよりも多い又は少ないものであり、前記患者の頭部の前記第1の側に位置する前記複数のピンのうちの第1のピンは、前記患者の頭部の前記第2の側に位置する前記複数のピンのうちの第2のピンおよび第3のピンと均一ではないものである、前記複数のピンと
を有する頭蓋クランプ。
【請求項2】
請求項1に記載の頭蓋クランプにおいて、前記第2のピンおよび第3のピンは、前記第1のピンと比較して形状が異なるものである、頭蓋クランプ。
【請求項3】
請求項1に記載の頭蓋クランプにおいて、前記第1のピンは第1のテーパ部分を有するものであり、当該第1のテーパ部分は第1の半径を有する第1の円錐形状を有するものであり、前記第2のピンおよび第3のピンの各々は第2のテーパ部分を有するものであり、当該第2のテーパ部分は第2の半径を有する第2の円錐形状を有するものであり、前記第2の半径は前記第1の半径より小さいものである、頭蓋クランプ。
【請求項4】
請求項1に記載の頭蓋クランプにおいて、前記頭蓋クランプが前記患者の頭部を安定化するのに用いられているとき、前記第2のピンおよび前記第3のピンの各接触面積は前記第1のピンの接触面積よりも小さいものである、頭蓋クランプ。
【請求項5】
請求項1に記載の頭蓋クランプにおいて、前記第1のピンは第1の侵入深さでの断面において第1の円形領域を有するものであり、前記第2のピンおよび第3のピンの各々は前記第1の侵入深さでの断面において第2の円形領域を有するものである、頭蓋クランプ。
【請求項6】
請求項5に記載の頭蓋クランプにおいて、前記第2の円形領域は前記第1の円形領域よりも小さいものである、頭蓋クランプ。
【請求項7】
請求項1に記載の頭蓋クランプにおいて、さらに、前記複数のピンによって前記患者の頭部に加えられる力の量を調整するように構成された力調整機構を有するものである、頭蓋クランプ。
【請求項8】
請求項7に記載の頭蓋クランプにおいて、前記力調整機構は前記ピンアセンブリの選択された1つにのみ関連付けられているものである、頭蓋クランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年9月25日に出願された「不均一なピンを有する頭部安定化機器」と題する米国仮特許出願第62/736,057号の優先権を主張するものであり、その開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
開示される機器及び方法は、患者の安定化に関し、特に、頭部安定化機器として知られている安定化機器を用いた頭部及び首の安定化に関する。前記頭部安定化機器は頭部固定機器(以下、「HFDs」または単数形で「HFD」ともいう)ともいう。HFDは、様々な外科処置及び他の医療処置の間、例えば、特定の姿勢で患者の頭部を確実に支持することが望ましい頭部または首の外科手術中または検査中に用いられることがある。様々な安定化機器が製作され使用されてきたが、本発明者よりも前には誰も本書に記載したような発明の製作や使用をしていないと考えられる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 国際公開第99/29252号
(特許文献2) 米国特許第7,730,563号明細書
(特許文献3) 米国特許出願公開第2002/042618号明細書
(特許文献4) 欧州特許出願公開第2014251号明細書
【発明の概要】
【0003】
本明細書は、発明を具体的に示し明確に請求する特許請求の範囲により結論付けられるが、本発明は添付の図面と併せて特定の実施例についての以下の説明からより良く理解されるであろう。添付の図面において、同一の参照符号は同一の要素を特定する。
【図面の簡単な説明】
【0004】
図1図1は、例示的なHFDの斜視図を示す。
図2図2は、図1のHFDのピンホルダーアセンブリの部分正面図を示し、ピンホルダーアセンブリが単一のピンを保持するように構成されていることを示す。
図3図3は、図1のHFDの他のピンホルダーアセンブリの部分正面図を示し、ピンホルダーアセンブリが一対のピンを保持するように構成されていることを示す。
図4図4は、図2のピンホルダーアセンブリの一部の拡大断面図を示す。
図5図5は、図3のピンホルダーアセンブリの一部の拡大断面図を示す。
図6図6は、例示的なHFDに例示的な力分布を重ねたものを示す。
図7図7は、HFDの単一ピン側での頭蓋骨へのピンの侵入を表す画像出力を示す。
図8図8は、HFDの2ピン側での頭蓋骨へのピンの侵入を表す画像出力を示す。
図9図9は、図1のHFDで使用可能な他の例示的なピンを示す。
図10図10は、図1のHFDで使用可能な他の例示的なピンを示す。
【0005】
図面は決して限定することを意図するものではなく、発明の様々な実施形態は、図面において必ずしも表されていない他の方法を含め様々な他の方法で実施され得ることが企図される。本明細書に組み込まれ本明細書の一部を形成する添付の図面は、本発明のいくつかの態様を示し、本明細書と共に本発明の原理を説明するのに役立つ。しかしながら、本発明は示したとおりの構成に限定されないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明の特定の実施例の以下の説明は、本発明の範囲を限定するために用いられるべきではない。本発明の他の実施例、特徴、態様、実施形態、及び利点が、本発明を実施するために企図される例、最良の形態の1つである以下の説明から当業者に明らかになるであろう。理解されるように、本発明は、本発明から全く逸脱することなく、他の異なる自明な態様が可能である。したがって、図面及び説明は、本質的に例示的なものであり、限定的と見なされるべきではない。
【0007】
I.例示的なHFDおよびピン構成
図1は、頭蓋クランプ(10)の形態における例示的なHFDを示す。本実施例はHFDをU字形の頭蓋クランプとして示しているが、本明細書の教示を考慮すれば当業者に理解されるように、他の形態のHFDに適用し得る。頭蓋クランプ(10)は第1のアーム(12)と第2のアーム(14)とを有する。第1のアーム(12)は、第2のアーム(14)と連結可能であり、U字形を有する頭蓋クランプ(10)を形成する。第1のアーム(12)は、直立部分(16)と、横向き部分(18)とを有する。同様に、第2のアーム(14)は、直立部分(20)と、横向き部分(22)とを有する。頭蓋クランプ(10)は、第1のアーム(12)を第2のアーム(14)に対して、又はその逆に移動させることにより、様々な頭部サイズに対応するように調整可能である。頭蓋クランプ(10)はさらに、取付接合面(24)を介して他の構造、例えば位置決めアダプタまたは手術台などとさらに連結可能なベースユニットなどと連結可能である。図1の例に示すように、第1のアーム(12)の直立部分(16)はピンアセンブリ(100)に連結し、第2のアーム(14)の直立部分(20)はピンアセンブリ(200)に連結する。
【0008】
ここで図2に示すように、ピンアセンブリ(100)は、患者の頭部に加えられる頭蓋クランプ(10)の締め付け力の量を調整するように構成されたトルクねじ(102)を備える。トルクねじ(102)は、ホイール(104)と、スリーブ(106)と、バネ(図示せず)と、細長部材(110)とを有する。スリーブ(106)は、アーム(12)の直立部分(16)のねじ穴と螺合するねじ外面を有する。スリーブ(106)は内部空間を有し、当該内部空間にはバネが配置されている。基端部で、バネはホイール(104)に連結する。先端部で、バネは細長部材(110)のフランジに接触する。ホイール(104)は、ホイール(104)の回転に対応してスリーブ(106)の回転が生じるように、スリーブ(106)に連結されている。この構成では、ホイール(104)が回転されると、ホイール(104)およびスリーブ(106)が、ホイール(104)の回転方向に応じてねじ込み係合に基づき直立部分(16)に対して移動する。
【0009】
細長部材(110)は、ホイール(104)の穴を貫通し、その基端部がねじ(112)に固定されている。細長部材(110)はその先端部で、ピン(116)を保持するピンホルダー(114)を保持する。使用中、ピン(116)の少なくとも先端部先端(118)が患者の頭部に接触する。ホイール(104)が回転し、それによりホイール(104)およびスリーブ(106)がピンアセンブリ(100、200)間で患者の頭部に向かって先端方向に移動するとき、バネが圧縮され、それにより患者頭部に向かう方向へ細長部材(110)により大きな力がかかる。細長部材(110)が、ピン(116)を保持するピンホルダー(114)を保持するので、細長部材(110)におけるこの力の増大は、患者頭部に接触するピン(116)における力の増大と一致する。ピン(116)によって患者頭部に加えられる力は、ホイール(104)を反対方向に回転させることによって減少させることができる。
【0010】
図3を参照すると、図示されるようにピンアセンブリ(200)はアーム(14)の直立部分(20)に連結する。本実施例では、ピンアセンブリ(200)と直立部分(20)間のこの連結は、後述するように枢動位置が設定されると、アーム(14)の直立部分(20)に対するピンアセンブリ(200)の横方向の位置が固定されるようになっている。ピンアセンブリ(200)はロッカーアーム(202)を有し、当該ロッカーアーム(202)は、患者の頭部に接触するように構成されたピン(206)を保持するピンホルダー(204)を保持する。ロッカーアーム(202)は、直立部分(20)の穴を通って延びる軸B1を中心に回転調整可能である。この回転は、ロッカーアーム(202)の回転可能位置を所定の位置でロックし、または調整のためにロック解除することができるように、選択的に制御することができる。本明細書の教示を考慮すれば、回転調整のためロックおよびロック解除状態を提供するようにピンアセンブリ(200)を構成する様々な方法が、当業者には明らかであろう。また、ピンアセンブリ(200)は、ピン(214)によって長手方向に定義される軸B4を中心にロッカーアーム(202)を枢動調整可能なように構成されている。回転調整か枢動調整かに関わらず、上述したようなピンアセンブリ(100)のトルクねじ(102)を介して患者の頭部に加えられる力により、ピンアセンブリ(200)および患者の頭部に接触するように構成されたそのピン(206)からも患者頭部に力が加わる。
【0011】
頭蓋クランプ(10)についての上記構成により、患者の頭部を安定化することができる。限定するものではなく一例として、成人の頭部の安定化処置において、ピンアセンブリ(100)によって加えられる力は約270ニュートン~約360ニュートンの間とすることができる。ただし、用いられる正確な力の量は、処置の種類、患者の骨の構造や状態などを考慮した外科医の所与のニーズに従って測定すべきである。いくつかの例において、用いられる力の正確な量はピン(116)およびピン(206)が頭蓋骨に固定されるが当該骨を完全に貫通することはないような量であってよい。繰り返しになるが、他の場合と同様に上記に示した例示的な力の範囲は、単なる例であり、いかなる方法においても限定または制限するものとして解釈されるべきではない。したがって、いくつかの他の例では、用いられる安定化力は、約270ニュートン~360ニュートンの間という上記範囲よりも大きく又は小さくすることができることを理解されたい。
【0012】
図6に示すように、いくつかの例においてトルクねじ(102)は、
で表す加えられた合力を示すゲージまたは目盛りを備えるように構成されている。トルクねじ(102)の目盛りで示されるように360ニュートンの力が加えられる例では、この力は、ピンアセンブリ(100)によって加えられる力を
として、また、ピンアセンブリ(200)に加えられる力を
として示すように、ピンアセンブリ(100、200)により両側に加えられる。患者の頭部が完全に丸く且つ各側に1つずつ頭蓋ピンを備えそれらの頭蓋ピンが共通の長手方向軸を有する理想的な仕組みの場合では、F(ベクトル)およびF(ベクトル)はそれぞれ360ニュートンになるであろう。このように、等しい反対方向の力が患者の頭部側面に加えられる。ピンアセンブリ(100)を伴う単一のピン(116)と、ロッカーアーム(202)を有するピンアセンブリ(200)を伴う一対のピン(206)とを用いる3ピン構成では、一対のピン(206)によって加えられる力が当該対となる各ピン(206)間で分けられるため、力の分布が異なる。したがって、簡略化された例では、F(ベクトル)の360ニュートンの力が前記対となる各ピン(206)間で均等に分けられ、単一のピン(116)がトルクスクリュー(102)の目盛りまたはゲージに示されるような360ニュートンの力を加えると、各ピン(206)が180ニュートンの力を加えるようになっている。この例では、患者頭部の各側に加えられる力は360ニュートンで等しくなる。
【0013】
上記患者の頭部に加えられる力は、患者頭部のピンが接触するところに加えられる最終的な圧力についての重要な変数である。数式1に示すように、圧力は加えられた力に直接的に関係し、圧力Pが力Fを面積Aで割った値に等しいという関係にある。
【0014】
【数1】
【0015】
頭蓋クランプ(10)を見ると、ピンアセンブリ(100)を有する側の圧力は、力F(ベクトル)を面積で割ったものとして計算されることとなる。この場合、ピンアセンブリ(100)を有する側の面積、面積Aは、ピン(116)によって患者の頭部にもたらされる接触面積に等しい。ピンアセンブリ(200)を有する側の圧力は、力F(ベクトル)を面積で割るように同様に計算することができる。2ピン側では、上述したように力F(ベクトル)が2つのピン(206)間で分けられる。また、各ピン(206)は付随の面積Aを有する。そのため、各ピン(206)が患者頭部に接触する2ピン側の圧力は、力F(ベクトル)の半分をピン(206)によってもたらされる接触面積Aで割ったものに等しい。
【0016】
一方のピンアセンブリが単一のピンを有し、他方のピンアセンブリが一対のピンを有する3ピン機構を用いる頭蓋クランプ構成では、各ピンに同じ構成を用いることにより、患者頭部に接触する各ピンの接触領域が等しくなる、すなわちA=Aとなる。しかしながら、2ピン側の力F(ベクトル)は2つのピンに分けられるため、2ピン側の各ピンが頭部に接触するところの圧力は、1ピン側の単一のピンが頭部に接触するところの圧力と比べて低くなる。全てのピン位置で同形のピン構成を用いた頭蓋クランプのCTスキャンを表す図7および図8の例に示されているように、この圧力の違いは頭蓋骨へのピンの侵入深さの違いに繋がり得る。図7に見られるように、単一ピン側のピンは深く侵入しすぎて頭蓋骨を突き破っている。図8に見られるように、2ピン側の一対のピンは頭蓋骨にほとんど侵入していない。この圧力の不均衡性およびピンによる頭蓋骨侵入へのその影響は、患者頭部の安定化の堅固さ又は完全性を損なう可能性がある。
【0017】
ピンアセンブリ(100、200)並びにピン(116)およびピン(206)を備えた頭蓋クランプ(10)に戻ると、図1図5に示す例は、異なる構成のピンを用いて、ピン(116、206)の1つが安定化のために患者頭部に接触する各位置で均一又はより均一な圧力を達成する。例えば、いくつかの例において、使用中にピンアセンブリ(200)の各ピン(206)がピンアセンブリ(100)の単一のピン(116)によって生成される圧力に等しい圧力を生成するよう頭蓋クランプ(10)を構成することが望ましい。以下でさらに説明する図示の例では、これは、異なるピン角度を有するピンを用い、それにより接触面積を変化させて上記数式に従い圧力に影響を与えることにより達成される。いくつかの他の例では、使用中にピンアセンブリ(100)のピンがピンアセンブリ(200)の各ピン(206)によって生成される圧力に等しい圧力を生成するよう頭蓋クランプ(10)を構成することが望ましい場合がある。
【0018】
一例において、ピンアセンブリ(100)は、接触領域Aを有する単一のピン(116)を有する。さらに、本実施例において、2ピン側で用いる各ピン(206)の接触面積は単一ピン側の接触面積Aの半分である。上で説明したように、力F(ベクトル)=力F(ベクトル)であり、2ピン側の力F(ベクトル)が2つのピン(206)間で分配されることが分かっている場合、各ピン(206)の圧力は下記数式2のように表すことができる。
【0019】
【数2】
【0020】
数式2は以下の数式3に簡略化することができ、これはピン(116)での圧力を計算するのと同式である。
【0021】
【数3】
【0022】
したがって、2ピン側のピン(206)の接触面積を減少させることにより、ピン(206)の圧力が増大し単一ピン側のピン(116)の圧力と一致する。この均一な圧力プロファイルまたは分布により、ピン(116、206)が患者の頭部に接触する各位置で骨への均一な侵入がもたらされ、これにより、より堅固で確実な安定化が促進される。これはまた、2ピン側で許容可能な骨への侵入を達成しようとする際に単一ピン側での過度な圧力使用を回避する機能を提供し、それにより患者の外傷を減らす。また、上記均一な圧力分布は、患者頭部の各側に加えられる力を同等に維持することにより達成される。
【0023】
ここで図4を参照すると、ピン(116)は、断面で示されており、当該ピン(116)を通って延びる長手方向軸LA1を定義する。また、ピン(116)は、本体部分(120)と、テーパ部分(122)とを有する。ピン(116)はさらに、先端部先端(118)からピン(116)に沿って基端部側に延びる軸B2を定義する。長手方向軸LA1と軸B2の交点はピン角度α1を定義する。
【0024】
ここで図5を参照すると、ピン(206)は、断面で示されており、ピン(206)を通って延びる長手方向軸LA2を定義する。また、ピン(206)は、本体部分(208)と、テーパ部分(210)とを有する。ピン(206)はさらに、先端部先端(212)からピン(206)に沿って基端部側に延びる軸B3を定義する。長手方向軸LA2と軸B3の交点はピン角度α2を定義する。
【0025】
図4および図5に示すように、片側に単一のピン(116)および反対側に一対のピン(206)を有する頭蓋クランプ(10)の構成では、それらのピン角度が異なる。すなわち、ピン(116)はα1のピン角度を有し、一対のピン(206)の各々はα2のピン角度を有し、ピン角度α1はピン角度α2と等しくない。頭蓋クランプ(10)の1つの例において、ピン(206)は、ピン(116)のピン角度α1よりも小さなピン角度α2を有する。いくつかの例において、第1のピン角度および第2のピン角度はそれぞれ、約3度~約45度の範囲内にある。いくつかの他の例では、この範囲は約3度~約23度とすることができる。頭蓋クランプ(10)のいくつかの例において、2ピン側のピン(206)のピン角度α2は、単一ピン側の単一のピン(116)のピン角度α1よりも約1度以上小さい。頭蓋クランプ(10)の更なる他の例では、ピン(116)のピン角度α1とピン(206)のピン角度α2の差は、1度より大きくても小さくてもよい。また、上記の例で述べた約1度の差は非限定的なものであって、ピン(116)のピン角度α1とピン(206)のピン角度α2の差についての単なる一例に過ぎない。例えば、頭蓋クランプ(10)のいくつかの例において、2ピン側のピン(206)のピン角度α2は、単一ピン側のピン(116)のピン角度α1よりも約5度以上小さい。他の例では、ピン(206)のピン角度α2とピン(116)のピン角度α1の差は、ピン(206)のピン角度α2がピン(116)のピン角度α1の約半分であるようになっている。頭蓋クランプ(10)の他の例では、ピン(116)のピン角度α1およびピン(206)のピン角度α2はそれぞれ約3度~約45度の範囲内にあるとともに、ピン角度α1とピン角度α2間の差は少なくとも約1度ある。頭蓋クランプ(10)の他の例では、ピン(116)のピン角度α1およびピン(206)のピン角度α2はそれぞれ約3度~約23度の範囲内にあるとともに、ピン角度α1とピン角度α2間の差は少なくとも約1度である。頭蓋クランプ(10)の更なる他の例のでは、2ピン側のピン(206)のピン角度α2は、単一ピン側のピン(116)のピン角度α1よりも約1度~約5度小さい。
【0026】
ピン角度α2が小さいほど、ピン(206)の接触面積が小さくなり、したがって、ピン(206)に加えられ及びピン(206)を通じて加えられる力がより小さな接触面積に適用され、それにより圧力が増大する。例えば、ピン(116、206)の円錐形の場合、接触面積または表面積は、次の数式4で表すことができる。ここで、A=表面積、r=円錐の半径、h=円錐の高さである。
【0027】
【数4】
【0028】
ピン角度が減少するにつれて、半径が減少し、したがって表面積が減少する。逆に、ピンの角度が大きいほど、半径が大きくなり、表面積が大きくなる。上に示したように、これらの表面積はピンの接触面積と相関があり、これはピンによって患者頭部に加えられる圧力に直接的に影響を及ぼす。
【0029】
面積または接触面積を評価することができる他の方法は、頭蓋骨に対する所与の侵入深さでの断面におけるピンの円形面積を考慮することによるものである。頭蓋クランプ(10)のいくつかの例において、2ピン側のピン(206)のこの円形領域は、単一ピン側のピン(116)のこの円形領域より少なく、または小さい。頭蓋クランプ(10)のいくつかの例において、2ピン側のピン(206)のこの円形領域は、単一ピン側のピン(116)のこの円形領域よりも0.6倍以下小さい。頭蓋クランプ(10)の他の例では、ピン(116)と比較したピン(206)の断面円形面積の差の大きさは、0.6倍小さい円形面積を有する上記の例よりも大きくても小さくてもよい。頭蓋クランプ(10)のいくつかの例において、2ピン側のピン(206)のこの円形領域は、単一ピン側のピン(116)のこの円形領域の約半分である。
【0030】
頭蓋クランプ(10)のいくつかの例において、2ピン側のピン(206)は単一ピン側のピン(116)と比較して形状が異なり、したがって、ピン(116、206)はこの点で均一ではない。本明細書の教示を考慮すれば、ピン(116、206)、ピン角度、接触面積などを特徴付ける他の方法が当業者には明らかであろう。したがって、上記の例は非網羅的で非限定的であると見なされるべきである。
【0031】
ここで図9および図10を参照すると、頭蓋クランプ(10)およびピンアセンブリ(100、200)の任意のピンの代わりに使用可能な代替の例示的なピン(316、416)が示されている。一実施例において、ピン(116)の代わりにピン(316)またはピン(416)が用いられる。さらに、ピン(316、416)はより大きなピン角度(α3、α4)を有する例を示す。図9および図10の実施例では、ピン角度(α3、α4)は約45度であるが、他の例では、ピン角度は約45度より大きくても小さくてもよい。
【0032】
ピン角度(α3、α4)は、ピン角度(α1、α2)に関して上述したのと同様の方法で定義される。より具体的には、ピン(316)は、図9にその断面が示されており、ピン(316)を通って延びる長手方向軸LA3を定義する。また、ピン(316)は、本体部分(320)と、テーパ部分(322)とを有する。ピン(316)はさらに、先端部先端(318)からピン(316)に沿って基端部側に向かって延びる軸B5を定義する。長手方向軸LA3と軸B5の交点はピン角度α3を定義する。
【0033】
同様に、ピン(416)は、図10にその断面が示されており、ピン(416)を通って延びる長手方向軸LA4を定義する。また、ピン(416)は、本体部分(420)と、テーパ部分(422)とを有する。ピン(416)はさらに、先端部先端(418)からピン(416)に沿って基端部側に延びる軸B6を定義する。長手方向軸LA4と軸B6の交点はピン角度α4を定義する。
【0034】
ピン(116)を、より大きなピン角度(α3、α4)を有するピン(316)またはピン(416)のいずれかと交換すると、その結果、使用中にピンアセンブリ(100)のピン(316、416)がピンアセンブリ(200)の各ピン(206)によって生じる圧力に等しい圧力を生じるように頭蓋クランプ(10)が構成される。例えば、圧力を一致させる1つの方法に2ピン側のピン角度を小さくすることがあるが、圧力を一致させる他の方法には単一ピン側のピン角度を大きくすることがある。ピン(116)の代わりにピン(316、416)を用いることでこの後者のアプローチが取られ、一方、全てのピンにピン(116)のような構成を用いる代わりに2ピン側でピン(206)を用いることで、圧力を一致させるための上記前者のアプローチが取られる。尚、本明細書の教示を考慮すれば、患者の頭部の片側または両側のピンを変更して、均一またはより均一な圧力の適用を達成する他の方法が当業者には理解されるであろう。
【0035】
さらに図9および図10を参照すると、各ピン(316、416)は上記で定義されたように約45度のピン角度を有するが、ピン(416)は、ピン(316)と比較してより大きな円錐形部分を有する形状を有する。上記数式4からの接触面積の計算に関して、これは、より大きな半径およびより大きな高さの上記円錐形部分を有するピン(416)へ変換される。これは、ピン(316、416)が頭蓋骨に侵入するときに、ピン(416)がより大きな接触表面積を提供できることを意味する。このようにして、ピン(416)を用いるときに加えられる力はより広い領域に分散され、したがってより低い圧力を提供することができる。ここで、使用中、ピン(316、416)がピン(316)の円錐形状または円錐高さよりも深く侵入するような場合に、ピン(416)のより大きな接触面積がピン(316)との差をもたらすことに留意されたい。本明細書の教示を考慮すれば、形状構成などのパラメータに基づいて接触面積に影響を与える他の方法が当業者には明らかであろう。
【0036】
II.例示的な組み合わせ
以下の実施例は、本明細書における教示を組み合わせ又は適用しうる様々な非網羅的な方法に関する。以下の実施例は、本出願または本出願の後続の提出書類のいずれかの時点において提示されうるいずれかの請求項の対象範囲を制限することを意図していないことを理解すべきである。以下の実施例は、単なる例示を目的に提供されているに過ぎない。本明細書における様々な教示は他の多くの方法で構成され適用されてもよいことが企図される。また、いくつかの変形例では以下の実施例で言及される特定の特徴を省略しうることも企図される。
【0037】
実施例1
医療処置中に患者の頭部を安定化するための機器であって、(a)前記患者の頭蓋に係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された第1のピンを有する第1のピンアセンブリであって、前記第1のピンは第1のピン角度を有するものである、前記第1のピンアセンブリと、(b)前記患者の頭蓋に係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された一対のピンを有する第2のピンアセンブリであって、前記一対のピンの各ピンは前記第1のピンの前記第1のピン角度とは異なる第2のピン角度を有するものである、前記第2のピンアセンブリとを有する機器。
【0038】
実施例2
実施例1に記載の機器において、前記第1のピンアセンブリおよび前記第2のピンアセンブリは、前記患者の頭部を挟んで対向する側に配置されるように構成されている、機器。
【0039】
実施例3
実施例1~2のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記第1のピンの長手方向の断面は、前記第1のピンの長手方向軸と前記第1のピンの先端部先端から前記第1のピンに沿って基端部側に延びる前記第1のピンの軸との交差によって前記第1のピン角度を定義するものであり、前記一対のピンの各ピンそれぞれの長手方向の断面は、前記一対のピンの各ピンの長手方向軸と、前記一対のピンの各ピンそれぞれの先端部先端から前記第一対のピンの各ピンそれぞれに沿って基端部側に延びる前記一対のピンの各ピンそれぞれの軸との交点によって、第2のピン角度を定義するものである、機器。
【0040】
実施例4
実施例1~3のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記第2のピン角度は前記第1のピン角度よりも小さいものである、機器。
【0041】
実施例5
実施例1~4のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記第1のピン角度および前記第2のピン角度は、安定化するときに前記第1のピンおよび前記一対のピンがそれぞれ前記患者頭部に接触するところで前記患者の頭部に加えられる圧力が実質的に等しくなるように構成されている、機器。
【0042】
実施例6
実施例1~5のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記第1のピン角度および前記第2のピン角度は、前記患者の頭部を安定化するときに、前記第1のピンおよび前記一対のピンがそれぞれ実質的に等しい骨侵入深さを有するように構成されている、機器。
【0043】
実施例7
実施例1~6のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記機器は、選択的に調整可能に連結することができる第1のアームおよび第2のアームを備えた頭蓋クランプを有するものであり、前記第1のアームは第1の横向き部分に連結された第1の直立部分を有するものであり、前記第2のアームは第2の横向き部分に連結された第2の直立部分を有するものであり、前記第1のピンアセンブリは前記第1の直立部分に連結するものであり、前記第2のピンアセンブリは前記第2の直立部分に連結するものである、機器。
【0044】
実施例8
実施例1~7のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記第1のピン角度および前記第2のピン角度はそれぞれ約3度~約23度の範囲内にあり、前記第1のピン角度と前記第2のピン角度との差は少なくとも約1度である、機器。
【0045】
実施例9
実施例1~8のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記第1のピン角度および前記第2のピン角度はそれぞれ約3度~約45度の範囲内にあり、前記第1のピン角度と前記第2のピン角度との差は少なくとも約1度である、機器。
【0046】
実施例10
実施例1~9のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記第1のピンアセンブリは、前記第1のピンによって前記患者の頭部に加えられる力の量を調整するように構成された力調整機構を有するものであり、前記患者の頭部を安定化するときに前記第1のピンによって加えられる力の量は約270ニュートン~約360ニュートンの間である、機器。
【0047】
実施例11
実施例1~10のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記患者の頭部を安定化するときに前記一対のピンの各ピンによって加えられる力は約135ニュートン~約180ニュートンである、機器。
【0048】
実施例12
実施例1~11のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記一対のピンの各ピンの前記第2のピン角度は、前記第1のピンの前記第1のピン角度よりも約1度以上小さいものである、機器。
【0049】
実施例13
実施例1~11のいずれか1つ又はそれ以上に記載の機器において、前記一対のピンの各ピンの前記第2のピン角度は、前記第1のピンの前記第1のピン角度よりも約1度~約5度小さいものである、機器。
【0050】
実施例14
医療処置中に患者の頭部を安定化するための機器であって、2若しくはそれ以上のピンアセンブリを有し、各ピンアセンブリは、前記患者の頭蓋と係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された少なくとも1つのピンを有するものであり、前記2若しくはそれ以上のピンアセンブリのうちの選択された1つのピンアセンブリの前記少なくとも1つのピンは第1のピン角度を有するものであり、前記2若しくはそれ以上のピンアセンブリのうちの他の選択された1つピンアセンブリの前記少なくとも1つのピンは第2のピン角度を有するものであり、前記第1のピン角度と前記第2のピン角度は異なるものである、機器。
【0051】
実施例15
医療処置中に患者の頭部を安定化するための機器であって、(a)前記患者の頭蓋に係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された単一のピンを有する第1のピンアセンブリと、(b)前記患者の頭蓋に係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された一対のピンを有する第2のピンアセンブリであって、前記一対のピンおよび前記単一のピンは不均一である、前記第2のピンアセンブリとを有する、機器。
【0052】
実施例16
実施例15に記載の機器において、前記一対のピンは、前記単一のピンと比較して形状が異なるものである、機器。
【0053】
実施例17
医療処置中に患者の頭部を安定化するための機器であって、(a)前記患者の頭蓋と係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された単一のピンを有する第1のピンアセンブリであって、前記第1のピンは第1のテーパ部分を有するものであり、当該第1のテーパ部分は第1の半径を有する第1の円錐形状を有するものである、前記第1のピンアセンブリと、(b)前記患者の頭蓋と係合して前記患者の頭部を安定化するように構成された一対のピンを有する第2のピンアセンブリであって、前記一対のピンのそれぞれは第2のテーパ部分を有するものであり、当該第2のテーパ部分は第2の半径を有する第2の円錐形状を有するものであり、前記第2の半径は前記第1の半径より小さいものである、前記第2のピンアセンブリとを有する機器。
【0054】
実施例18
実施例17に記載の機器において、前記機器が前記患者の頭部を安定化するのに用いられるとき、前記一対のピンの各ピンの接触面積は前記単一のピンの接触面積よりも小さいものである、機器。
【0055】
実施例19
実施例17~18のいずれか1つ若しくはそれ以上に記載の機器において、前記単一のピンは第1の侵入深さで、断面において第1の円形領域を有するものであり、前記一対のピンの各ピンは前記第1の侵入深さで、断面において第2の円形領域を有するものである、機器。
【0056】
実施例20
請求項19に記載の機器において、前記第2の円形領域は前記第1の円形領域よりも小さいものである、機器。
【0057】
III.その他
本明細書に説明されている教示、表現、実施形態、実施例などのいずれか1つ若しくはそれ以上は、本明細書に説明されている他の教示、表現、実施形態、実施例などのいずれか1つ若しくはそれ以上と組み合わせ得ることが理解されよう。したがって、以下に説明する教示、表現、実施形態、実施例などは、相互に分離していると見なされるべきではない。本明細書の教示を考慮すれば、本明細書の教示を組み合わせることができる様々な好適な方法が当業者には明らかであろう。そのような修正及び変形は特許請求の範囲内に含まれることが意図される。
【0058】
本発明の様々な実施形態を示し説明してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明した方法及びシステムの更なる適応が当業者による好適な修正によって達成され得る。そのような潜在的な修正のいくつかが言及されてきたが、その他のものが当業者には明らかであろう。例えば、上述した実施例、実施形態、幾何学形状、材料、寸法、比率、及び工程などは、例示的であり、必須ではない。したがって、本発明の範囲は、以下の請求項の観点で考慮されるべきであり、明細書及び図面において示され説明された構造及び動作の詳細に限定されないものと理解される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【外国語明細書】