(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119868
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】病態および状態の処置に使用するための、エナンチオマー的に精製されたGPERアゴニスト
(51)【国際特許分類】
C07D 405/04 20060101AFI20240827BHJP
A61K 31/473 20060101ALI20240827BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 15/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240827BHJP
A61P 5/30 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C07D405/04 CSP
A61K31/473
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P15/00
A61P9/00
A61P25/00
A61P5/30
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024087006
(22)【出願日】2024-05-29
(62)【分割の表示】P 2021504360の分割
【原出願日】2019-07-22
(31)【優先権主張番号】62/701,726
(32)【優先日】2018-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】521031279
【氏名又は名称】リネウス セラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(72)【発明者】
【氏名】ナターレ クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ムーニー パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ガリアンテス ティナ
(72)【発明者】
【氏名】ルーク ウェイン
(57)【要約】
【課題】病態および状態の処置に使用するための、エナンチオマー的に精製されたGPERアゴニストを提供すること。
【解決手段】本開示は、1)Gタンパク質共役型エストロゲン受容体活性を調節する、特定の結晶形態、塩、および共結晶を含む、エナンチオマー的に精製された化合物SRR G-1、またはその誘導体、2)エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬および化粧品組成物、および3)ヒトおよび動物において、これらの受容体を介して媒介される病状および状態ならびに美容上の状態を処置または予防する方法、ならびにそれらの関連する方法を提供する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
【化1】
1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの式を含む化合物またはその誘導体であって、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンまたはその誘導体のキラル純度が、約90%以上である、化合物またはその誘導体。
【請求項2】
XRPD分析の証拠によると結晶性であるか、XRPD分析の証拠によると非晶質であるか、または結晶性材料および非晶質材料の混合物である、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オン、またはその誘導体のキラル純度が、その反対のエナンチオマーを実質的に含まない、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの形態が、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約20.54、約20.71、約21.25、および約21.86で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態A;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約13.98、約15.44、約19.67、約21.55、および約22.05で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態B;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約10.73、約12.77、約13.49、約16.09、および約20.60で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態C、から選択されるか、非晶質であるか、またはそれらの組み合わせ、である、請求項1に記載の化合物。
【請求項5】
1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態が、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約20.54、約20.71、約21.25、および約21.86で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態A;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約13.98、約15.44、約19.67、約21.55、および約22.05で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態B;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約10.73、約12.77、約13.49、約16.09、および約20.60で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態C、またはそれらの組み合わせ、から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態が、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約20.54、約20.71、約21.25、および約21.86で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態A、である、請求項5に記載の化合物。
【請求項7】
1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態が、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約9.56、約10.53、約17.03、約20.54、約20.71、約21.25、約21.86、約24.67、および約28.06で表されるXRPDパターンをさらに特徴とする結晶形態A、である、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態が、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約9.56、約10.53、約10.81、約13.02、約14.66、約14.79、約16.23、約17.03、約20.54、約20.71、約21.25、約21.86、約24.67、および約28.06で表されるXRPDパターンをさらに特徴とする結晶形態A、である、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
その誘導体が、塩または共結晶である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
その誘導体が、ベンゼンスルホン酸を用いて、(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸を用いて、エタン-1,2-ジスルホン酸を用いて、塩酸を用いて、メタンスルホン酸を用いて、ナフタレン-2-スルホン酸を用いて、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸を用いて、硫酸を用いて、p-トルエンスルホン酸を用いて、またはそれらの組み合わせを用いて形成された塩または共結晶から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項11】
その誘導体が、ベンゼンスルホン酸を用いて形成された塩または共結晶である、請求項10に記載の化合物。
【請求項12】
その誘導体が、(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸を用いて形成された塩または共結晶である、請求項10に記載の化合物。
【請求項13】
その誘導体が、ナフタレン-2-スルホン酸を用いて形成された塩または共結晶である、請求項10に記載の化合物。
【請求項14】
治療有効量の請求項1に記載の化合物、薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む医薬組成物。
【請求項15】
治療有効量の請求項1に記載の化合物、化粧品として許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む化粧品組成物。
【請求項16】
それを必要とする対象における疾患または障害を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその誘導体を対象に投与することを含む方法。
【請求項17】
疾患または障害が、がん、子宮内膜炎、前立腺炎、多嚢胞性卵巣症候群、尿失禁、ホルモン関連障害、聴覚障害、ほてり、多汗症、高血圧、脳卒中、虚血、心筋梗塞、拡張型心筋症、肥満、インスリン抵抗性、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、更年期障害の症状、炎症、関節リウマチ、変形性関節症、リンパ増殖性疾患、骨髄増殖性疾患、好酸球増加症、組織球増殖症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、全身性肥満細胞症、静脈血栓症、塞栓症、うつ病、不眠症、不安、神経障害、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、タンパク尿性腎疾患、血管疾患、および胸腺萎縮、からなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
性交後の妊娠の可能性を予防または低減する方法であって、治療有効量の請求項14に記載の医薬組成物を対象に投与することを含む方法。
【請求項19】
対象がヒトまたは動物である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
それを必要とする対象における2型糖尿病を処置または予防する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその誘導体を対象に投与することを含む方法。
【請求項21】
がんが、生殖がん、ホルモン依存性がん、白血病、大腸がん、前立腺がん、乳がん、卵巣癌、子宮内膜がん、子宮癌肉腫、胃がん、直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮頚がん、子宮体がん、卵巣がん、精巣がん、膀胱がん、腎臓がん、脳/CNSがん、頭頸部がん、咽頭がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、B細胞リンパ腫、T細胞リンパ腫、ブドウ膜黒色腫、トリプルネガティブ乳がん、多発性骨髄腫、黒色腫、急性白血病、リンパ性白血病、有毛細胞白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、絨毛癌、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽頭のがん、食道のがん、喉頭のがん、腎臓がん、リンパ腫、バーキットリンパ腫、肉腫、血管肉腫、膠芽腫、髄芽腫、星状細胞腫、およびメルケル細胞癌、からなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項22】
それを必要とする対象における皮膚色素沈着を増加させる、または皮膚色素沈着の喪失を予防するまたは好転させる方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその誘導体を対象に投与することを含む方法。
【請求項23】
それを必要とする対象における皮膚保護の方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその誘導体を、対象に投与することを含む方法。
【請求項24】
抗肥満剤、免疫療法剤、化学療法剤、標的キナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗感染症剤、ブロモドメイン阻害剤、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択される1つまたは複数の追加の治療剤をさらに含む、請求項1に記載の化合物またはその誘導体。
【請求項25】
疾患もしくは障害を引き起こしている、または疾患もしくは障害に関与しているがんまたは細胞が、GPERを発現する、請求項17に記載の方法。
【請求項26】
それを必要とする対象における、がんを処置または予防する、がんの再発を予防する、またはがんの進行を阻害する方法であって、治療有効量の請求項1に記載の化合物またはその誘導体を対象に投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の利益
本発明は、国立衛生研究所の国立癌研究所により付与された助成金番号2R44CA228695-02に基づく米国政府の支援によってなされたものである。米国政府は、本発明にある特定の権利を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0002】
【特許文献1】国際公開WO2007/19180パンフレット
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の実施形態は、Gタンパク質共役型エストロゲン受容体(GPER)のエナンチオマー的に精製されたアゴニスト、エナンチオマー的に精製された(enantiomerically purified)SRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物、ならびにそれを必要としている対象において病態および状態を処置する方法、ならびにGPER受容体を介して媒介される病態および状態を処置する方法に関する。
エストロゲンは、体全体の複数の複雑な生理学的応答を媒介する。この応答は、受容体へのエストロゲンの結合を介して媒介される。古典的な受容体は、エストロゲンなどのステロイドに結合し、転写因子として機能する可溶性の細胞質/核タンパク質である。これらの受容体は、転写活性を媒介するエストロゲン受容体アルファおよびベータ(2つの密接に関連するタンパク質)として知られている。GPERは、7回膜貫通型Gタンパク質共役型受容体であり、エストロゲンにも高い親和性(Kd約6nM)で結合し、環状アデノシン一リン酸シグナル伝達、カルシウム動員、およびホスファチジルイノシトール-3,4,5-トリスリン酸産生を含む、迅速な細胞応答を媒介する。
【0004】
発症、進行、および/または治療への応答が、GPERシグナル伝達の内因性および/または薬理学的活性化によって影響を受ける場合がある疾患としては、がん(がんの予防、がんの再発の予防、およびがんの進行の阻害を含み;特に黒色腫、膵臓、リンパ腫、ブドウ膜黒色腫、非小細胞肺がん、乳がん、生殖および他のホルモン依存性がん、白血病、結腸がん、前立腺、膀胱がん)、子宮内膜炎、前立腺炎、多嚢胞性卵巣症候群、膀胱制御を含む生殖(泌尿生殖器)、ホルモン関連障害、聴覚障害、ほてりおよび多汗症を含む心血管疾患、高血圧、脳卒中、肥満、糖尿病、骨粗鬆症、血液疾患、血管疾患、または中でも静脈血栓症、アテローム性動脈硬化症などの状態、ならびにうつ病、不眠症、不安、神経障害、多発性硬化症を含む、中枢および末梢神経系の障害、パーキンソン病およびアルツハイマー病などの神経変性疾患、ならびに炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病(シリアック病)および関連する腸の障害、が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】SSR G-1ジクロロメタン溶媒和物の原子変位楕円体図を示す。
【
図6】標識キラル中心を有するSRR G-1を示す。
【
図7】単結晶構造から生成されたSRR G-1ジクロロメタン溶媒和物の計算によるXRPDパターンを示す。
【
図8】SRR G-1 形態Aの原子変位楕円体図を示す。
【
図9】SRR G-1 形態Aの計算による実験的XRPDパターンを示す。
【
図10】SRR G-1 形態A、B、およびCのXRPDパターンを示す。
【
図11】SRR G-1 形態Aのサーモグラムを示す。
【
図12】SRR G-1 形態AのDVS等温線を示す。
【
図13】SRR G-1 形態Bの原子変位楕円体図を示す。
【
図14】SRR G-1 形態Bの計算による実験的XRPDパターンを示す。
【
図15】SRR G-1 形態Bのサーモグラムを示す。
【
図16】混合物SRR G-1 形態BおよびCのDSCサーモグラムを示す。
【
図17】SRR G-1 形態CのXRPDインデクシング結果を示す。
【
図18】SRR G-1 形態CのDSCサーモグラムを示す。
【
図19】pH溶解度試験(I/II)後の残留固体のXRPD重ね合わせを示す。
【
図20】pH溶解度試験(II/II)後の残留固体のXRPD重ね合わせを示す。
【
図21】生体関連培地におけるSRR G-1遊離塩基の溶解度を示す。
【
図22】SGFにおける溶解度試験後のSRR G-1のXRPD重ね合わせを示す。
【
図23】FaSSIFにおける溶解度試験後のSRR G-1のXRPD重ね合わせを示す。
【
図24】FeSSIFにおける溶解度試験後のSRR G-1のXRPD重ね合わせを示す。
【
図25】SRR G-1塩のXRPDパターンを示す。
【
図26】SRR G-1ベシル酸塩 形態Aの原子変位楕円体図を示す。
【
図27】SRR G-1ベシル酸塩 形態Aの計算による実験的XRPDパターンを示す。
【
図28】SRR G-1ベシル酸塩 形態Aのサーモグラムを示す。
【
図29】SRR G-1カンシル酸塩 形態Aのインデクシング結果を示す。
【
図30】5~19°(2θ)で示されるSRR G-1カンシル酸塩 形態AのXRPDパターンを示す。
【
図31】SRR G-1カンシル酸塩 形態Aのサーモグラムを示す。
【
図32】SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aのインデクシング結果を示す。
【
図33】SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aのサーモグラムを示す。
【
図34】YUMM1.7黒色腫細胞を使用する増殖アッセイの結果を示す。このアッセイでは、細胞を、500nMのラセミ混合物(G-1)、またはG-1の単一エナンチオマー、すなわちSRR G-1およびRSS G-1により処理した。点線は開始細胞集団数を示す。n=群あたり5反復。*はp<0.05を示す、エラーバー=±s.d。
【
図35】SRR G-1遊離塩基を投与されたラットにおけるSRR G-1の血漿濃度を示す。
【
図36】SRR G-1ベシル酸塩を投与されたラットにおけるSRR G-1の血漿濃度を示す。
【
図37】SRR G-1ナプシル酸塩を投与されたラットにおけるSRR G-1の血漿濃度を示す。
【
図38】SRR G-1遊離塩基、SRR G-1ベシル酸塩、およびSRR G-1ナプシル酸塩を投与されたラットにおけるSRR G-1の血漿濃度の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
定義
本発明で使用する場合、下記の用語は示された意味を有する。
本発明の化合物、組成物および方法を説明する前に、本発明は、記載された特定のプロセス、製剤、化合物、組成物、または方法論に限定されず、これらは変更可能であることを理解されたい。本明細書で使用する用語は、特定のバージョンまたは実施形態のみを説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本明細書の実施形態の範囲を限定することを意図していないことも理解されたい。他に定義されない限り、本明細書で使用する技術用語および科学用語はすべて、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されているものと類似または同等の任意の方法および材料を、本発明の実施形態の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法、デバイスおよび材料をここで説明する。本明細書で言及される全ての刊行物、は、その全体が参照により組み込まれる。本明細書のいかなるものも、本明細書の実施形態が先行発明のためにそのような開示に先行する権利がないことを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0007】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用する場合、「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈上別段の明確な指示がない限り、複数の指示対象を含むことにもまた留意されたい。
本発明で使用する場合、「約」という用語は、それが使用されている数のプラスまたはマイナス20%の数値を意味する。したがって、約50%とは、40%~60%の範囲を意味する。
「含む(comprising)」という用語が移行句として使用される実施形態または特許請求の範囲において、そのような実施形態はまた、「含む(comprising)」という用語を「からなる(consisting of)」または「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で置き換えることを想定することができる。
【0008】
本明細書で使用する場合、「からなる(consists of)」または「からなる(consisting of)」という用語は、化合物、組成物、製剤または方法が、特定の特許請求の範囲に記載された実施形態または請求項に具体的に列挙された要素、ステップ、または成分のみを含むことを意味する。
本明細書で使用する場合、「から本質的になる(consisting essentially of)」または「から本質的になる(consists essentially of)」という用語は、化合物、組成物、製剤または方法が、特定の特許請求の範囲に記載された実施形態または請求項に具体的に列挙された要素、ステップ、または成分のみを含むことを意味し、かつ特定の実施形態または請求項の基本的および新規の特性に実質的に影響を及ぼさない追加の要素、ステップまたは成分を含んでもよい。例えば、明記された状態(例えば、がんおよび/または肥満)を処置する製剤または方法における唯一の活性成分は、特定の実施形態または請求項において具体的に列挙された治療薬である。
【0009】
本明細書で使用する場合、「その誘導体」という用語は、それが参照する化合物の任意の分子形態を指し、その塩、その薬学的に許容される塩、そのエステル、その遊離塩基、その溶媒和物、その水和物、そのN-オキシド、その包接化合物、そのプロドラッグ、その同位体(例えば、トリチウム、重水素)、それらの共結晶、および前述の任意の組み合わせを含むがこれらに限定されない。
本明細書に開示される化合物には、非対称中心が存在する。これらの中心を、キラル炭素原子の周りの置換基の配置に応じて、記号「R」または「S」で示す。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマー、およびエピマー形態を含むすべての立体化学的異性体形態、およびそれらの混合物を包含することを理解されたい。化合物の個々の立体異性体は、キラル中心を含む市販の出発物質から合成的に、あるいはエナンチオマー生成物の混合物の調製、それに続く分離、例としてジアステレオマーの混合物への変換、その後の分離または再結晶によって、クロマトグラフィー技術、すなわちキラルクロマトグラフィーカラムでのエナンチオマーの直接分離によって、または当技術分野において既知である任意の他の適切な方法によって、調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は、市販されているか、または当技術分野において既知の技術によって作製および分離することができる。さらに、本明細書に開示される化合物は、幾何異性体として存在し得る。本発明は、シス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(entgegen)(E)、およびツザメン(zusammen)(Z)異性体、ならびにそれらの適切な混合物すべてを含む。さらに、化合物は互変異性体として存在する場合があり;互変異性体すべて、本発明によって提供される。さらに、本明細書に開示される化合物は、非溶媒和形態ならびに薬学的に許容される溶媒、例として水、エタノールなどとの溶媒和形態で存在し得る。一般に、溶媒和形態は、非溶媒和形態と同等であると考えられている。
【0010】
本明細書で使用する場合、「キラル純度」および「エナンチオマー過剰率」(ee)という用語は互換性があり、各エナンチオマーのモル分率間の絶対差の測定値を指す場合があり、ほとんどの場合、百分率として表される。%エナンチオマー過剰率は、式:
%ee=|A-B|×100
(式中、AおよびBは、A+B=1となる混合物中のエナンチオマーのそれぞれのモル分率である。)により決定してもよい。ラセミ混合物のエナンチオマー過剰率は0%であるが、完全に純粋な単一のエナンチオマーのエナンチオマー過剰率は100%である。一例として、R異性体が70%、Sが30%の試料では、エナンチオマー過剰率は40%になる。これはまた、40%の純粋なRと60%のラセミ混合物(これは、全体の組成に30%のRと30%のSとを与える)との混合物と考えることができる。
【0011】
本明細書で単独でまたは組み合わせて使用される「実質的に含まない」という用語は、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、円偏光二色性(CD)、またはその他の化学分析方法、などの分析方法の定量化の範囲内に異性体が存在しないことを指す。
【0012】
本発明で使用する場合、「薬学的に許容される塩」とは、健全な医学的判断の範囲内で、過度な毒性、刺激、アレルギー反応などを伴わず、患者の組織と接触して使用するのに好適であり、合理的な利益/リスク比に見合う、それらの塩または共結晶を示すことを意味する。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。例えば、Berge et al. (1977) J. Pharm. Sciences, Vol. 66(1), 1-19は、代表的な薬学的に許容される塩を詳細に説明している。薬学的に許容される「塩」は、任意の酸付加塩または共結晶であり、好ましくは、ハロゲン酸塩、例として臭化水素酸塩、塩酸塩、フッ化水素酸塩、およびヨウ化水素酸塩;無機酸塩、例として、例えば、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、およびリン酸塩;有機酸塩、例として、例えば、スルホン酸塩(メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、またはp-トルエンスルホン酸塩)、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、安息香酸塩、グルコン酸塩、乳酸塩、マンデル酸塩、粘液酸塩、パモ酸塩、パントテン酸塩、シュウ酸塩、およびマレイン酸塩;ならびにアミノ酸塩、例としてアスパラギン酸塩またはグルタミン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸塩、エタン-1,2-ジスルホン酸塩、塩酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフタレン-2-スルホン酸塩、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸塩、硫酸塩、およびp-トルエンスルホン酸塩を含むがこれらに限定されない、薬学的に許容される酸付加塩または共結晶である。薬学的に許容される塩は、一酸もしくは二酸付加塩、例として、二塩酸塩、二硫酸塩、二リン酸塩、または二有機酸塩であってもよい。薬学的に許容される塩は、本開示の生成物の特定の光学異性体との相互作用またはその沈殿についての予想されるまたは既知の選好に基づいて選択する必要のないキラルまたはアキラル試薬として使用される。
【0013】
本明細書で使用される「治療的に許容される塩」という用語は、水溶性または油溶性または分散性であり、本明細書で定義されたように治療的に許容される、本明細書に開示される化合物の塩または共結晶または双性イオン形態を表す。塩は、化合物の最終的な単離および精製中に、または遊離塩基の形態の適切な化合物を好適な酸と反応させることによって別々に、または治療的に許容される塩の代わりにある塩を使用することによって調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、パラトルエンスルホン酸塩(p-トシル酸塩)、およびウンデカン酸塩、が挙げられる。また、本明細書に開示される化合物の塩基性基は、塩化、臭化、およびヨウ化メチル、エチル、プロピル、およびブチル;硫酸ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミル;塩化、臭化およびヨウ化デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリル(steryl);および臭化ベンジルおよびフェネチル、で四級化することができる。治療的に許容される付加塩を形成するために使用することができる酸の例としては、無機酸、例として塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸、ならびに有機酸、例としてシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸が挙げられる。したがって、本発明は、本明細書に開示される化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウム、およびカルシウム塩などを企図する。
【0014】
本発明で使用する場合、「患者」および「対象」という用語は互換性があり、本発明の化合物により処置され得る任意の生体を意味すると解釈され得る。したがって、「患者」および「対象」という用語は、任意の非ヒト哺乳動物、霊長類またはヒトを含み得るが、これらに限定されない。一部の実施形態では、「患者」または「対象」は、成人、子供、乳児、または胎児である。一部の実施形態では、「患者」または「対象」はヒトである。一部の実施形態では、「患者」または「対象」は、哺乳動物、例としてマウス、ラット、他のげっ歯類、ウサギ、イヌ、ネコ、ブタ、ウシ、ヒツジ、ウマ、霊長類、またはヒトである。
【0015】
本明細書で使用される「治療有効量」または「治療用量」という用語は互換性があり、組織、系、動物、個体またはヒトにおいて、研究者、獣医、医師または他の臨床専門家によって求められている、臨床的、生物学的または医学的応答を誘発する活性剤または医薬化合物または組成物の量を指す場合がある。臨床的、生物学的または医学的応答としては、例えば、以下、すなわち、(1)疾患、状態または障害の素因を有する場合があるが、疾患、状態もしくは障害の病状または症状をまだ経験または示していない個体における疾患、状態または障害を予防すること、(2)疾患、状態もしくは障害の病状または症状を経験または示している個体におけるその疾患、状態または障害を阻害すること、あるいはその疾患、状態もしくは障害の病状および/または症状のさらなる発現を阻止すること、ならびに(3)疾患、状態もしくは障害の病状または症状を経験または示している個体におけるその疾患、状態または障害を改善すること、あるいは個体が経験または呈した病状および/または症状を好転させること、のうちの1つまたは複数を挙げてもよい。
本明細書で使用される「投与する」、「投与すること」または「投与」という用語は、化合物または化合物の薬学的に許容される塩または組成物のいずれかを対象に直接投与することを指す。
【0016】
「処置する」という用語は、特定の障害、疾患または状態の予防(prophylaxis)、特定の障害、疾患または状態に関連する症状の緩和、および/または特定の障害、疾患、または状態に関連する症状の予防(prevention)を意味すると解釈され得る。一部の実施形態では、この用語は、障害、疾患または状態の進行を遅らせること、または特定の障害、疾患または状態に関連する症状を緩和することを指す。一部の実施形態では、この用語は、特定の障害、疾患、または状態に関連する症状を緩和することを指す。一部の実施形態では、この用語は、特定の障害、疾患、または状態に関連する症状を緩和することを指す。一部の実施形態では、この用語は、特定の障害、障害、または状態のために損なわれた、または失われた機能を回復することを指す。
【0017】
「予防する」という用語は、特定の障害、疾患または状態を予防すること、および/または特定の障害、疾患または状態の再発を予防することを意味すると解釈され得る。
「単位剤形」という用語は、ヒト対象および他の動物用の単位投薬量として好適な物理的に別個の単位を指し、各単位は、好適な医薬賦形剤と共同して、所望の治療効果を生み出すように計算された所定量の活性材料を含む。
本明細書で使用される「疾患」という用語は、すべて、正常な機能を損なうヒトもしくは動物の体またはその部分の1つの異常な状態を反映しており、通常、兆候と症状を区別することによって現れ、ヒトまたは動物の生存期間または生活の質を低下させる、という点において、「障害」、「症候群」、および「状態」(病状の場合のように)という用語と一般に同義であることが意図され、これらの用語と互換的に使用される。
「併用療法」という用語は、本開示に記載されている病状または障害を処置するための2つ以上の治療剤の投与を意味する。そのような投与は、実質的に同時に、例として、一定の比率の活性成分を有する単一のカプセルもしくは投薬量提示により、または各活性成分についての複数の別個のカプセルにより、これらの治療剤を共投与することを包含する。加えて、そのような投与はまた、同一患者における各タイプの治療剤を連続的に使用することを含み、個々の治療剤の送達は、1~24時間、1~7日、または1週間以上離れている。いずれの場合も、処置レジメンは、本明細書に記載の状態または障害の処置における薬物併用の有益な効果を提供するであろう。
【0018】
化合物
多くの有機化合物は、光学活性形態で存在する、すなわち、それらは、平面偏光面を回転させる能力を有する。光学活性化合物を説明する際に、接頭辞RおよびSを、そのキラル中心の周りの分子の絶対配置を示すために使用する。所与の化学構造に対して、立体異性体と呼ばれるこれらの化合物は、互いに鏡像であることを除いて同一である。特定の立体異性体はエナンチオマーと呼ばれることもあり、そのような異性体の混合物は、多くの場合、エナンチオマー混合物またはラセミ混合物と呼ばれる。
立体化学的純度は、医薬品の分野において重要であり、この分野では、10種類の最も多く処方された薬物のうちの8種類がキラリティーを呈する。適切な例は、R-エナンチオマーよりも100倍強力であることが知られている、β-アドレナリン遮断剤であるプロプラノロールのS-エナンチオマーによって提供される。
【0019】
本発明の実施形態は、エナンチオマー的に精製されたG-1を含む化合物および疾患の処置における使用方法を包含する。G-1は、エナンチオマーである、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オン(以下、「SRR G-1」または「LNS8801」と呼ぶ)、および1-((3aR,4S,9bS)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オン(以下、「RSS G-1」または「LNS8812」と呼ぶ)のラセミ混合物である。
【0020】
【化1】
エナンチオマー的に精製されたG-1は、その1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オン エナンチオマーの方を、対応する1-((3aR,4S,9bS)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オン エナンチオマーよりも選択して精製されている。特に記載がない限り、SRR G1またはその誘導体は、非晶質形態、またはA、B、Cなどの任意の結晶性固体形態、またはそれらの組み合わせを含む、任意の物理的形態を含む。
【0021】
ある特定の実施形態では、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの化合物(「SRR G-1」とも呼ばれる)またはその誘導体は、約90%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約91%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約92%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約93%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約94%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約95%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約96%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約97%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約97.5%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約98%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.1%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.2%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.3%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.4%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.5%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.6%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.7%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.75%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.8%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.9%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.91%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.92%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.93%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.94%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.95%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.96%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.97%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.98%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、約99.99%以上のキラル純度を有する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、定量化の範囲内でその反対のエナンチオマーを含まない。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体は、その反対のエナンチオマーを実質的に含まない。
【0022】
本明細書に記載のSRR G-1の実施形態のいずれかにおいて、化合物が、XRPD分析の証拠によると結晶性であるか、XRPD分析の証拠によると非晶質であるか、または結晶性および非晶質材料の混合物である。
本明細書に記載のSRR G-1の実施形態のいずれかにおいて、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの形態は、
図10のXRPDパターンを特徴とする結晶形態A、
図10のXRPDパターンを特徴とする結晶形態B、
図10のXRPDパターンを特徴とする結晶形態C、非晶質、またはそれらの組み合わせ、から選択される。
【0023】
本明細書に記載のSRR G-1の実施形態のいずれかにおいて、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態は、
図10のXRPDパターンを特徴とする結晶形態A、
図10のXRPDパターンを特徴とする結晶形態B、
図10のXRPDパターンを特徴とする結晶形態C、またはそれらの組み合わせ、から選択される。
ある特定の実施形態では、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態は、
図10のXRPDパターンを特徴とする結晶形態Aである。
【0024】
本明細書に記載のSRR G-1の実施形態のいずれかにおいて、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの形態は、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約20.54、約20.71、約21.25、および約21.86で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態A;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約13.98、約15.44、約19.67、約21.55、および約22.05で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態B;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約10.73、約12.77、約13.49、約16.09、および約20.60で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態C、非晶質、またはそれらの組み合わせ、から選択される。
【0025】
本明細書に記載のSRR G-1の実施形態のいずれかにおいて、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態は、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約20.54、約20.71、約21.25、および約21.86で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態A;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約13.98、約15.44、約19.67、約21.55、および約22.05で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態B;ピークが、2θ(±0.20)度単位において約10.73、約12.77、約13.49、約16.09、および約20.60で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態C、またはそれらの組み合わせ、から選択される。
【0026】
ある特定の実施形態では、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態は、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約20.54、約20.71、約21.25、および約21.86で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態Aである。ある特定の実施形態では、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約9.56、約10.53、約17.03、約20.54、約20.71、約21.25、約21.86、約24.67、および約28.06で表されるXRPDパターンをさらに特徴とする結晶形態A。ある特定の実施形態では、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.75、約9.56、約10.53、約10.81、約13.02、約14.66、約14.79、約16.23、約17.03、約20.54、約20.71、約21.25、約21.86、約24.67、および約28.06で表されるXRPDパターンをさらに特徴とする結晶形態A。
【0027】
ある特定の実施形態では、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態は、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約13.98、約15.44、約19.67、約21.55、および約22.05で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態Bである。ある特定の実施形態では、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約13.98、約14.19、約15.44、約19.67、約20.82、約21.55、約22.05、約24.65、約26.18、および約28.18で表されるXRPDパターンをさらに特徴とする結晶形態B。ある特定の実施形態では、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約7.60、約9.71、約13.98、約14.19、約15.44、約18.61、約19.67、約20.82、約21.55、約22.05、約24.65、約26.18、および約28.18で表されるXRPDパターンをさらに特徴とする結晶形態B。
【0028】
ある特定の実施形態では、1-((3aS,4R,9bR)-4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-3a,4,5,9b-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オンの結晶形態は、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約10.73、約12.77、約13.49、約16.09、および約20.60で表されるXRPDパターンを特徴とする結晶形態Cである。ある特定の実施形態では、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約7.69、約8.62、約10.73、約12.77、約13.49、約16.09、約19.86、約20.60、約22.05、および約22.98で表されるXRPDパターンをさらに特徴とする結晶形態C。
【0029】
本明細書に記載のSRR G-1またはその誘導体の実施形態のいずれかにおいて、その誘導体は、塩または共結晶である。
本明細書に記載のSRR G-1またはその誘導体の実施形態のいずれかにおいて、その誘導体は、ベンゼンスルホン酸を用いて、(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸を用いて、エタン-1,2-ジスルホン酸を用いて、塩酸を用いて、メタンスルホン酸を用いて、ナフタレン-2-スルホン酸を用いて、ナフタレン-1,5-ジスルホン酸を用いて、硫酸を用いて、p-トルエンスルホン酸を用いて、またはそれらの組み合わせを用いて、形成された塩または共結晶から選択される。
【0030】
ある特定の実施形態では、その誘導体は、ベンゼンスルホン酸を用いて形成された塩または共結晶である。
ある特定の実施形態では、その誘導体は、(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸を用いて形成された塩または共結晶である。
ある特定の実施形態では、その誘導体は、ナフタレン-2-スルホン酸を用いて形成された塩または共結晶である。
ある特定の実施形態では、その誘導体は、ベンゼンスルホン酸を用いて形成された塩または共結晶であり、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約4.26、約6.51、約6.71、約16.86、約18.92、約19.99、約20.29、約20.75、約21.46、約22.06、約22.12、および約23.99で表されるXRPDパターンを特徴とする。
【0031】
ある特定の実施形態では、その誘導体は、(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸を用いて形成された塩または共結晶であり、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約5.97、約11.98、約12.69、約13.41、約16.23、約17.79、約18.03、約18.77、および約19.69で表されるXRPDパターンを特徴とする。
【0032】
ある特定の実施形態では、その誘導体は、ナフタレン-2-スルホン酸を用いて形成された塩または共結晶であり、ピークが、2θ(±0.20)度単位において約6.17、約12.63、約12.84、約13.75、約14.39、約16.79、約17.07、約17.64、約19.22、約19.44、約20.43、約21.26、約21.78、約22.60、約23.38、約26.07、および約27.63で表されるXRPDパターンを特徴とする。
【0033】
本明細書に記載のSRR G-1の実施形態のいずれかにおいて、SRR G-1またはその誘導体では500nMの濃度で、SRR G-1とその反対のエナンチオマーとのラセミ混合物と比較して、YUMM1.7の4日間増殖アッセイにおける細胞増殖の阻害が約2.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約3倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約3.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約4倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約4.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約5.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約6倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約6.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約7倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約7.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約8倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約8.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約9倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約9.5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約10倍以上増加する。または、これらの値の任意の2つの間の範囲。
【0034】
ある特定の実施形態では、SRR G-1の化合物、またはその誘導体は、その反対のエナンチオマーを実質的に含まず、500nMの濃度で、SRR G-1とその反対のエナンチオマーとのラセミ混合物と比較して、YUMM1.7の4日間増殖アッセイにおける細胞増殖の阻害が約7.8倍以上増加する。
【0035】
本明細書に記載のSRR G-1の実施形態のいずれかにおいて、SRR G-1またはその誘導体では500nMの濃度で、SRR G-1の反対のエナンチオマーまたはその誘導体と比較して、YUMM1.7の4日間増殖アッセイにおける細胞増殖の阻害が約5倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約10倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約15倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約20倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約25倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約30倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約35倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約40倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約45倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約50倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約55倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約60倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約65倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約70倍以上増加する。ある特定の実施形態では、SRR G-1またはその誘導体では、細胞増殖の阻害が約75倍以上増加する。または、これらの値の任意の2つの間の範囲。
【0036】
ある特定の実施形態では、SRR G-1の化合物、またはその誘導体は、その反対のエナンチオマーを実質的に含まず、500nMの濃度で、SRR G-1の反対のエナンチオマーまたはその誘導体と比較して、YUMM1.7の4日間増殖アッセイにおける細胞増殖の阻害が約39.5倍以上増加する。
本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、SRR G-1またはその誘導体は、RSS G-1またはその誘導体と比較して、より大きな所望の薬理活性を有する。本明細書に記載の実施形態のいずれかにおいて、RSS G-1またはその誘導体の存在は、SRR G-1との併用療法の望ましくない薬理活性に追加されるであろう。
医薬組成物
本明細書の一部の実施形態は、本明細書の実施形態のエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体、および薬学的もしくは美容的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルを含む医薬もしくは化粧品組成物に関する。
【0037】
一部の実施形態では、本明細書の実施形態に従って使用するためのエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬もしくは化粧品組成物は、1つもしくは複数の薬学的もしくは美容的に許容される担体または賦形剤を使用して従来の方法で処方することができる。
【0038】
担体は、製剤の他の成分と適合性があり、そのレシピエントに有害ではないという意味で「許容され」なければならない。適切な製剤は、選択された投与経路によって異なる。周知の技術、担体、および賦形剤のいずれも、好適であるものとして、かつ当技術分野で理解されているように使用することができる。本明細書に開示されるエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬もしくは化粧品組成物は、当技術分野において既知である任意の方法で、例えば、従来の混合、溶解、懸濁、造粒、糖衣錠製造、浮上、乳化、カプセル化、封入、または圧縮プロセスによって製造してもよい。
【0039】
エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬もしくは化粧品組成物としては、経口投与、直腸投与、経鼻投与、局所(皮膚、口腔、舌下および眼内を含む)投与、経膣投与、または非経口(筋肉内、皮下および静脈内を含む)投与に好適なものが挙げられる。本発明による組成物はまた、ボーラス、舐剤またはペーストとして提示してもよい。経口投与用の錠剤およびカプセルは、従来の賦形剤、例として、結合剤、充填剤、潤滑剤、崩壊剤、または湿潤剤を含み得る。錠剤は、当技術分野において周知の方法に従ってコーティングすることができる。経口液体調製物は、例えば、水性もしくは油性懸濁液、溶液、エマルション、シロップまたはエリキシルの形態であってもよく、あるいは使用前に水または他の好適なビヒクルで構成するための乾燥製品として提示してもよい。このような液体調製物は、従来の添加剤、例として懸濁化剤、乳化剤、非水性ビヒクル(食用油を含んでもよい)、または防腐剤を含んでもよい。所望であれば、上記の製剤を、当技術分野において周知の標準的方法を使用して、組成物中の活性成分の持続放出特性を提供するように適合させることができる。
【0040】
本発明の実施形態であるエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物において、本発明による化合物は、好ましくは薬学的に許容される担体との混合体で処方される。一般に、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物を、経口投与することが好ましいが、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含むある特定の医薬組成物は、好ましくは非経口的に、特に、静脈内または筋肉内剤形により、ならびに他の非経口経路を介して、例として経皮、口腔、皮下、座薬、または吸入もしくは鼻腔内を含む他の経路を介して、投与してもよい。経口剤形は、好ましくは、錠剤またはカプセル(好ましくは、硬質もしくは軟質ゼラチンまたは他のタンパク質もしくはポリマーカプセル)の形態で投与される。エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む静脈内および筋肉内医薬組成物は、好ましくは、滅菌生理食塩水において投与される。もちろん、当業者は、本発明の組成物を不安定することも、それらの治療活性を損なうことなく、特定の投与経路について、本明細書の教示内の製剤を改変して、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む多数の医薬組成物を提供してもよい。
【0041】
非経口注射に好適なエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物は、生理学的に許容される滅菌水溶液または非水溶液、分散液、懸濁液、またはエマルションを含んでもよく、または滅菌注射溶液もしくは分散液中に復元するための滅菌粉末を含んでもよい。好適な水性および非水性担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールなど)、それらの好適な混合物、オリーブ油などの植物油を含むトリグリセリド、またはオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが挙げられる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合には必要とされる粒径の維持によって、および/または界面活性剤の使用によって維持することができる。
【0042】
エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含むこれらの医薬もしくは化粧品組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および/または分散剤などのアジュバントを含み得る。組成物の微生物汚染の防止は、種々の抗菌剤および抗真菌剤、例えば、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などを加えることによって達成することができる。等張剤、例えば、糖、塩化ナトリウムなどを含めることが望ましい場合もある。エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む注射用医薬もしくは化粧品組成物の長期吸収は、吸収を遅らせることができる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチンの使用によってもたらすことができる。
【0043】
経口投与用のエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物の固体剤形としては、カプセル、錠剤、粉末、顆粒、ポリマーガラス内での安定化、脂質型液体中での溶解、固化した液体中での溶解、および自己乳化脂質中での溶解が挙げられる。そのような固体剤形において、活性化合物を、クエン酸ナトリウムまたはリン酸二カルシウムなどの少なくとも1つの不活性な従来の賦形剤(または担体)、または(a)充填剤または増量剤、例えば、デンプン、ラクトース、スクロース、マンニトール、またはケイ酸;(b)結合剤、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、スクロース、またはアカシア;(c)保湿剤、例えばグリセロール;(d)崩壊剤、例えば、寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカデンプン、アルギン酸、ある特定の複合ケイ酸塩、または炭酸ナトリウム;(e)溶解遅延剤(solution retarder)、例えば、パラフィン;(f)吸収促進剤、例えば、第四級アンモニウム化合物;(g)湿潤剤、例えば、セチルアルコールまたはグリセロールモノステアレート;(h)吸着剤、例えば、カオリンまたはベントナイト;および/または(i)潤滑剤、例えば、タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、またはそれらの混合物、と混合する。カプセルおよび錠剤の場合、剤形はまた、緩衝剤を含んでいてもよい。
【0044】
類似タイプのエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む固体医薬組成物はまた、ラクトースまたは乳糖などの賦形剤、ならびに高分子量ポリエチレングリコールを使用して、軟質もしくは硬質ゼラチンカプセル中の充填剤として使用してもよい。
エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物の固体剤形、例として、錠剤、糖衣錠、カプセル、および顆粒を、腸溶性コーティングおよび当技術分野において周知の他のコーティングなどのコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。それらはまた、不透明化剤を含有してもよく、それらはまた、1つまたは複数の活性化合物を遅延して放出するような組成のものであり得る。使用可能な包埋組成物の例は、ポリマー物質およびワックスである。活性化合物はまた、適宜、1つまたは複数の上記の賦形剤とともにマイクロカプセル化された形態であり得る。
【0045】
経口投与用のエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物の液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルション、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシルが挙げられる。活性化合物に加えて、液体剤形は、当技術分野で一般的に使用される不活性希釈剤、例として、水または他の溶媒、可溶化剤および乳化剤、例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油、特に、綿実油、落花生油、トウモロコシ胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、ゴマ種子油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、ソルビタンの脂肪酸エステル、またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
【0046】
そのような不活性希釈剤の他に、組成物としてはさらに、アジュバント、例として湿潤剤、乳化剤および懸濁化剤、甘味剤、香味剤、および芳香剤も挙げることができる。
懸濁液は、活性化合物に加えて、懸濁化剤、例えば、エトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトールもしくはソルビタンエステル、微晶質セルロース、アルミニウムメタヒドロキシド(aluminum metahydroxide)、ベントナイト、寒天もしくはトラガント、またはこれらの物質の混合物などを含んでもよい。
【0047】
直腸投与または経膣投与用のエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬組成物は、該当する場合、活性剤および任意の追加の化合物を、通常の室温では固体であるが体温では液体であり、したがって直腸または膣腔で融解し活性物質を放出する好適な非刺激性賦形剤または担体、例えばココアバター、ポリエチレングリコール、または座薬ワックスなどと混合することによって調製することができる。
局所投与用のエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬もしくは化粧品組成物の剤形としては、眼、耳または鼻への投与に好適な軟膏、粉末、スプレー吸入剤、および滴薬が挙げられる。化合物を、減菌条件下で、生理学的に許容される担体、および必要とされ得る任意の防腐剤、緩衝剤、および/または噴射剤と混合する。眼科用製剤、眼軟膏、粉末、および溶液もまた、本発明の範囲内であると企図される。
【0048】
一部の実施形態では、本明細書の実施形態に従って使用するためのエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬もしくは化粧品組成物は、少なくとも1つの日焼け止め剤をさらに含む。ある特定の実施形態では、医薬組成物は、少なくともサンスクリーンローションをさらに含む。より油性の実施形態では、医薬もしくは化粧品組成物は、処方された日焼け止めもしくはサンスクリーンローション、およびエナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む。
エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む活性化合物または医薬もしくは化粧品組成物は、広い投薬量範囲にわたって有効であり得、一般に治療有効量で投与することができる。しかし、実際に投与される化合物または組成物の量は、通常、処置を受ける状態、選択された投与経路、投与される実際の化合物または組成物、個々の患者の年齢、体重、および反応、患者の症状の重症度などを含む関連する状況に従って、医師によって決定されることが理解されるであろう。
【0049】
一部の実施形態では、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬もしくは化粧品組成物は、約0.001%~約50%の本明細書に開示される1つもしくは複数の化合物または組成物を含み得る。一部の実施形態では、1つもしくは複数の化合物または組成物は、約0.001%~約50%、約0.001%~約45%、約0.001%~約40%、約0.001%~約30%、約0.001%~約20%、約0.001%~約10%、約0.001%~約5%、約0.01%~約50%、約0.01%~約45%、約0.01%~約40%、約0.01%~約30%、約0.01%~約20%、約0.01%~約10%、約0.01%~約5%、約0.05%~約50%、約0.05%~約45%、約0.05%~約40%、約0.05%~約30%、約0.05%~約20%、約0.05%~約10%、約0.1%~約50%、約0.1%~約45%、約0.1%~約40%、約0.1%~約30%、約0.1%~約20%、約0.1%~約10%、約0.1%~約5%、約0.5%~約50%、約0.5%~約45%、約0.5%~約40%、約0.5%~約30%、約0.5%~約20%、約0.5%~約10%、約0.5%~約5%、約1%~約50%、約1%~約45%、約1%~約40%、約1%~約35%、約1%~約30%、約1%~約25%、約1%~約20%、約1%~約15%、約1%~約10%、約1%~約5%、約5%~約45%、約5%~約40%、約5%~約35%、約5%~約30%、約5%~約25%、約5%~約20%、約5%~約15%、約5%~約10%、約10%~約45%、約10%~約40%、約10%~約35%、約10%~約30%、約10%~約25%、約10%~約20%、約10%~約15%の量、またはこれらの範囲のうちの1つの範囲内の値である。具体例として、約0.001%、約0.01%、約0.05%、約0.1%、約0.25%、約0.5%、約0.75%、約1%、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、またはこれら値の任意の2つの間の範囲を挙げてもよい。上記はすべて、組成物の質量百分率を表す。一部の実施形態では、組成物は局所投与に好適である。一部の実施形態では、組成物は経口投与に好適である。一部の実施形態では、組成物は、経口投与、非経口(皮下、皮内、筋肉内、静脈内、関節内、および髄内を含む)投与、腹腔内投与、経粘膜投与、経皮投与、直腸投与、経鼻投与、局所(皮膚、口腔、舌下および眼内を含む)投与、または経腟投与に好適である。
【0050】
一部の実施形態では、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む化合物または医薬もしくは化粧品組成物は、治療有効量である。一部の実施形態では、治療有効量は、約0.01mg~約1000mg、約0.01mg~約900mg、約0.01mg~約800mg、約0.01mg~約700mg、約0.01mg~約600mg、約0.01mg~約500mg、約0.01mg~約400mg、約0.01mg~約300mg、約0.01mg~約200mg、約0.01mg~約100mg、0.1mg~約1000mg、約0.1mg~約900mg、約0.1mg~約800mg、約0.1mg~約700mg、約0.1mg~約600mg、約0.1mg~約500mg、約0.1mg~約400mg、約0.1mg~約300mg、約0.1mg~約200mg、約0.1mg~約100mg、約1mg~約1000mg、約1mg~約900mg、約1mg~約800mg、約1mg~約700mg、約1mg~約600mg、約1mg~約500mg、約1mg~約400mg、約1mg~約300mg、約1mg~約200mg、約1mg~約100mg、約10mg~約1000mg、約50mg~約1000mg、約100mg~約1000mg、約200mg~約1000mg、約300mg~約1000mg、約400mg~約1000mg、約500mg~約1000mg、約10mg~約500mg、約50mg~約500mg、約100mg~約500mg、約10mg~約300mg、約50mg~約300mg、約100mg~約300mg、約10mg~約150mg、約50mg~約150mg、約60mg~約120mg、約50mg~約120mg、またはこれらの値の任意の2つの間の範囲であり得る。具体例としては、例えば、約1000mg、約900mg、約800mg、約700mg、約750mg、約600mg、約500mg、約400mg、約450mg、約300mg、約250mg、約200mg、約175mg、約150mg、約125mg、約120mg、約110mg、約100mg、約90mg、約80mg、約70mg、約60mg、約50mg、約30mg、約20mg、約10mg、約5mg、約1mg、約0.1mg、約0.01mg、または上記に開示された範囲の間の任意の値が挙げられる。
【0051】
一部の実施形態では、治療有効量は、例えば、処置を行う特定の使用、化合物または組成物の投与方法、患者の健康および状態、ならびに処方医の判断に従って変えることができる。エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む医薬もしくは化粧品組成物中の化合物または組成物の割合もしくは濃度は、投薬量、化学的特性(例えば、疎水性)、および投与経路を含む複数の要因に応じて変えることができる。例えば、化合物または組成物は、非経口投与用に、約0.1~約10%質量/体積の化合物または組成物を含む生理学的緩衝水溶液で提供することができる。化合物または組成物のいくつかの典型的な用量範囲は、1日あたり約1μg/kg体重~約1g/kg体重である。一部の実施形態では、用量範囲は、1日あたり約0.01mg/kg体重~約100mg/kg体重である。投薬量は、疾患または障害の進行のタイプおよび程度、特定の患者の全体的な健康状態、選択された化合物または組成物の相対的生物学的有効性、賦形剤の処方、およびその投与経路などの変数に依存する可能性が高い。有効用量は、インビトロまたは動物モデルの試験システムから得られた用量反応曲線から推定することができる。
【0052】
患者に投与される、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む化合物または医薬もしくは化粧品組成物の量は、投与されているもの、予防または治療などの投与の目的、患者の状態、投与方法などに応じて変化する。治療用途において、組成物は、疾患およびその合併症の症状を治癒させるか、または少なくとも部分的に阻止するのに十分な量で、すでに疾患に罹患している患者に投与することができる。
エナンチオマー的に精製されたSRR G-1を含む医薬組成物、またはその誘導体を含む医薬組成物のいずれにおいても、本明細書に記載されたものは、1つまたは複数の追加の治療剤を有し得る。
【0053】
追加の治療剤は、減量薬、血糖降下薬、インスリン増感剤、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)受容体アゴニスト、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤、インスリン、インスリンアナログ、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤、アルファグルコシダーゼ阻害剤(AGI)、胆汁酸封鎖剤(BAS)、交感神経遮断性ドーパミン受容体アゴニスト(sympatholytic dopamine receptor agonist)、インクレチン、高血圧薬、脂質修飾剤、抗肥満剤、免疫療法剤、化学療法剤、標的キナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗感染症剤、ブロモドメイン阻害剤、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0054】
免疫療法剤は、PD-1阻害剤(ペンブロリズマブ、ニボルマブ、抗PD-1)、PD-L1阻害剤(すなわち、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、抗PD-L1)、CTLA-4阻害剤(すなわち、イピリムマブ、抗B7-1/B7-2、抗CTLA-4)、IL-2、IL-7、IL-12、腫瘍溶解性ウイルス(タリモジェンラヘルパレプベック)、シトシンリン酸-グアノシン、オリゴデオキシヌクレオチド、イミキモド、レシキモド、ならびにIgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)(TIGIT)を標的とする抗体、誘導性共刺激分子(ICOS)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子3(TIM3)、T細胞活性化のVドメイン含有Igサプレッサー(V-domain containing IG supressor of T cella ctivation)(VISTA)、OX40、グルココルチコイド誘発性TNF受容体(GITR)、CD40、CD47、CD94/NKG2A、キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0055】
化学療法剤は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ドセタキセル、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、オキサリプラチン、テモゾロミド、タキサン、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
標的キナーゼ阻害剤は、は、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、SU6656、スニチニブ、ソラフェニブ、セルメチニブ、ルキソリチニブ、ペガプタニブ、パゾパニブ、ニロチニブ、ムブリチニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、イマチニブ、イブルチニブ、ゲフィチニブ、フォスタマチニブ、エルロチニブ、エルダフィチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、クリゾチニブ、コビメチニブ、セツキシマブ、ボスチニブ、ビニメチニブ、アキシチニブ、アファチニブ、アダボセルチブ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0056】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、ジビノスタット(Givinostat)、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
抗感染症剤は、オリタバンシン(Orbactiv)、ダルババンシン(Dalvance)、テジゾリドホスフェート、(Sivextro)、クリンダマイシン、リネゾリド(Zyvox)、ムピロシン(Bactroban)、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(SeptraまたはBactrim)、テトラサイクリン、バンコマイシン、ダプトマイシン、フルオロキノリン、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0057】
ブロモドメイン阻害剤は、OTX015/MK-8628、CPI-0610、BMS-986158、ZEN003694、GSK2820151、GSK525762、INCB054329、INCB057643、ODM-207、RO6870810、BAY1238097、CC-90010、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、RVX-000222、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
使用方法
本明細書に提供されるのは、疾患または障害の処置または予防を必要とする対象における疾患または障害を処置または予防する方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む治療有効量の化合物または医薬組成物を対象に投与することを含む方法である。
【0058】
疾患または障害の処置または予防を必要とする対象における疾患または障害を処置または予防する方法であって、本明細書に記載の、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1またはその誘導体を含む治療有効量の化合物または医薬組成物を対象に投与することを含む方法において、SRR G-1による処置は、外科療法、化学療法、抗PD-1療法、標的分子療法もしくは抗増殖療法、または高周波アブレーション療法から選択される1つまたは複数の追加療法の前に、追加療法と共に、または追加療法の後に、アジュバントとして作用する。
一部の実施形態は、疾患または障害を引き起こしている、または疾患または障害に関与しているがんまたは細胞がGPERを発現する方法を説明している。
本明細書に記載の任意の実施形態において、対象は、ヒトまたは動物である。
一部の実施形態では、前記疾患または障害は、がん、子宮内膜炎、前立腺炎、多嚢胞性卵巣症候群、尿失禁、ホルモン関連障害、聴覚障害、ほてり、多汗症、高血圧、脳卒中、虚血、心筋梗塞、拡張型心筋症、肥満、インスリン抵抗性、骨粗鬆症、アテローム性動脈硬化症、更年期障害の症状、炎症、関節リウマチ、変形性関節症、リンパ増殖性疾患、骨髄増殖性疾患、好酸球増加症、組織球増殖症、発作性夜間ヘモグロビン尿症、全身性肥満細胞症、静脈血栓症、塞栓症、うつ病、不眠症、不安、神経障害、多発性硬化症、パーキンソン病、アルツハイマー病、炎症性腸疾患、クローン病、セリアック病、タンパク尿性腎疾患(proteinuric renal disease)、血管疾患、および胸腺萎縮、からなる群から選択される。
【0059】
一部の実施形態は、性交後の妊娠の可能性を予防または低減する方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
一部の実施形態は、脂質プロファイルの回復を必要とする対象における脂質プロファイルを回復する方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
【0060】
一部の実施形態は、それを必要とする対象における2型糖尿病を処置または予防する方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
【0061】
2型糖尿病は、6.5%を超えるかまたはそれに等しいA1Cレベル、126mg/dLを超える空腹時血漿グルコース(FPG)量、および200mg/dLを超える経口グルコース負荷試験(OGTT)量、からなる群から選択される一連の特徴によって診断される疾患である。2型糖尿病の対象は、脂質異常症、高血圧、およびアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を発症するリスクがより高い。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、糖尿病の症状を処置する。実施形態では、対象を本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、A1Cレベルを6.5%未満、6.4%~5.7%の間、または5.7未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、空腹時血漿グルコース(FPG)を、126mg/dL未満、125mg/dL~110mg/dL、110mg/dL未満、または100mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、経口グルコース負荷試験(OGTT)を、200mg/dL未満、199mg/dL~140mg/dLの間、または140mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、血圧を、130/80mmHg未満、120/80mmHg未満、110/80mmHg未満、または100/80mmHg未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、血糖値を70mg/dL未満、または50mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、脂質異常症、高血圧、またはアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)を発症するリスクを、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下させる。
【0062】
前糖尿病は、約5.7%~約6.4%のA1Cレベル、約100mg/dL~約125mg/dLの空腹時血漿グルコース(FPG)量、および約140mg/dL~約200mg/dLの経口グルコース負荷試験(OGTT)量、からなる群から選択される一連の特徴に基づいて診断される。前糖尿病の対象はまた、耐糖能異常、空腹時血糖異常、またはインスリン抵抗性により診断することができる。前糖尿病の対象は、高血糖、脂質異常症、高血圧、およびアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、心血管代謝疾患、慢性腎臓病、早期腎症、網膜症、心血管疾患、および生体力学的合併症を発症するリスクがより高い。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、前糖尿病の症状を処置する。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、A1Cレベルを6.4%未満、または5.7未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、空腹時血漿グルコース(FPG)を、125mg/dL未満、110mg/dL未満、または100mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、経口グルコース負荷試験(OGTT)を、199mg/dL未満、または140mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、血圧を、130/80mmHg未満、120/80mmHg未満、110/80mmHg未満、または100/80mmHg未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、血糖値を70mg/dL未満、または50mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、高血糖、脂質異常症、高血圧、およびアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、心血管代謝疾患、慢性腎臓病、早期腎症、網膜症、心血管疾患、および生体力学的合併症を発症するリスクを、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下させる。
【0063】
A1C、グルコース、インスリン、ホメオスタシスモデルによるインスリン抵抗性評価(HOMA-IR)、尿中8-iso-PGF2α、脂肪組織における酸化ストレス、およびGLUT4のカルボニル化のレベルの増加を特徴とする状態によって、耐糖能障害、空腹時血糖障害、インスリン抵抗性、前糖尿病、または2型糖尿病の診断がなされる。本明細書に記載の状態の対象は、前糖尿病、2型糖尿病、高血糖、脂質異常症、高血圧、およびアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、心血管代謝疾患、慢性腎臓病、早期腎症、網膜症、心血管疾患、および生体力学的合併症を発症するリスクがより高い。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、状態を処置する。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、A1Cレベルを6.4%未満、または5.7未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、空腹時血漿グルコース(FPG)を、125mg/dL未満、110mg/dL未満、または100mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、経口グルコース負荷試験(OGTT)を、199mg/dL未満、または140mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、血圧を、130/80mmHg未満、120/80mmHg未満、110/80mmHg未満、または100/80mmHg未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、血糖値を70mg/dL未満、または50mg/dL未満に低下させる。実施形態では、対象を、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体の投与によって処置し、前糖尿病、2型糖尿病、高血糖、脂質異常症、高血圧、およびアテローム動脈硬化性心血管疾患(ASCVD)、心血管代謝疾患、慢性腎臓病、早期腎症、網膜症、心血管疾患、および生体力学的合併症を発症するリスクを、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、または約100%低下させる。
【0064】
実施形態では、1つまたは複数の追加の治療剤は、減量薬、抗高血糖薬、インスリン増感剤、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)受容体アゴニスト、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤、インスリン、インスリンアナログ、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤、アルファグルコシダーゼ阻害剤(AGI)、胆汁酸封鎖剤(BAS)、交感神経遮断性ドーパミン受容体アゴニスト(sympatholytic dopamine receptor agonist)、インクレチン、高血圧薬、脂質修飾剤、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得るが、これらに限定されない。
【0065】
実施形態では、減量薬は、ジエチルプロピオン(diethyproprion)、フェンジメトラジン、フェンテルミン、オルリスタット、フェンテルミン/トピラマート徐放(ER)、ロルカセリン、ナルトレキソンER/ブプロピオンER、およびリラグルチド、からなる群から選択される。実施形態では、ジエチルプロピオン(diethyproprion)を、25mgで投与する。実施形態では、フェンジメトラジンを、35mgまたは105mgで投与する。実施形態では、フェンテルミンを、8mg、15mg、30mg、または37.5mgで投与する。実施形態では、オルリスタットを、60mgまたは120mgで投与する。実施形態では、フェンテルミン/トピラマート徐放を、フェンテルミン3.75mg/トピラマート23mg、フェンテルミン7.5mg/トピラマート46mg、またはフェンテルミン15mg/トピラマート92mgで毎日投与する。実施形態では、ロルカセリンを、10mgまたは20mgで投与する。実施形態では、ナルトレキソンER/ブプロピオンERを、ナルトレキソン8mg/ブプロピオン90mgで投与する。実施形態では、リラグルチドを、1.2mg、1.8mg、または3mgで投与する。
【0066】
実施形態では、血糖降下薬は、メトホルミンおよびアカルボースからなる群から選択される。実施形態では、メトホルミンを、500mg、625mg、750mg、850mg、2000mg、2500mg、または1グラムで投与する。実施形態では、アカルボースを、25mg、50mg、または100mgで投与する。
実施形態では、インスリン増感剤は、チアゾリジンジオン(TZD)、ピオグリタゾン、およびロシグリタゾンからなる群から選択される。実施形態では、ピオグリタゾンを、15mg、30mg、または45mgで投与する。実施形態では、ロシグリタゾンを、2mg、4mg、または8mgで投与する。
【0067】
実施形態では、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)受容体アゴニストは、リラグルチド、エキセナチド、アルビグルチド、およびデュラグルチドからなる群から選択される。実施形態では、リラグルチドを、1.2mg、1.8mg、または3mgで投与する。実施形態では、エキセナチドを、2mgで投与する。実施形態では、アルビグルチドを、30mgまたは50mgで投与する。実施形態では、デュラグルチドを、0.75mgまたは1.5mgで投与する。
実施形態では、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤は、エンパグリフロジン、カナグリフロジン、およびダパグリフロジンからなる群から選択される。実施形態では、エンパグリフロジンを、5mg、10mg、12.5mg、または25mgで投与する。実施形態では、カナグリフロジンを、50mg、100mg、150mg、または300mgで投与する。
実施形態では、インスリンは、インスリンアナログ、基礎インスリンアナログ、中性プロタミンHagedorn(NPH)、速効型インスリンアナログ、および吸入インスリンからなる群から選択される。
【0068】
実施形態では、インスリンアナログは、グラルギン、デグルデク、およびデテミルからなる群から選択される。実施形態では、グラルギンを、100単位または300単位で投与する。実施形態では、デグルデクを、30単位、100単位、200単位、300単位、または600単位で投与する。実施形態では、デテミルを、100単位または300単位で投与する。
実施形態では、速効型インスリンアナログは、リスプロ、アスパルト、およびグルリジンからなる群から選択される。実施形態では、リスプロを、50単位、75単位、100単位、300単位、または1000単位で投与する。実施形態では、アスパルトを、50単位、90単位、210単位、300単位、700単位、または1000単位で投与する。実施形態では、グルリジンを、300単位または1000単位で投与する。
【0069】
実施形態では、スルホニル尿素は、アセトヘキサミド、カルブタミド、クロルプロパミド、グリシクラミド(トルヘキサミド)、メタヘキサミド、トラザミド、トルブタミド、グリベンクラミド(グリブリド)、グリボルヌリド、グリクラジド、グリピジド、グリキドン、グリソキセピド、グリクロピラミド、およびグリメピリド、からなる群から選択される。実施形態では、アセトヘキサミドを、250mgまたは500mgで投与する。実施形態では、カルブタミドを、250mgまたは500mgで投与する。実施形態では、クロルプロパミドを、100mgまたは250mgで投与する。実施形態では、トラザミドを、100mg、250mg、または500mgで投与する。実施形態では、トルブタミドを、250mgまたは500mgで投与する。実施形態では、グリベンクラミドを、5mgで投与する。実施形態では、グリピジドを、2.5mg、5mg、または10mgで投与する。実施形態では、グリメピリドを、1mg、2mg、3mg、4mg、6mg、または8mgで投与する。
【0070】
実施形態では、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤は、リナグリプチン、サクサグリプチン、およびアログリプチンからなる群から選択される。実施形態では、リナグリプチンを、2.5mg、5mg、10mg、または25mgで投与する。実施形態では、サクサグリプチンを、2.5mgまたは5mgで投与する。実施形態では、アログリプチンを、6.25mg、12.5mg、または25mgで投与する。
実施形態では、アルファグルコシダーゼ阻害剤(AGI)は、アカルボース、ミグリトール、およびボグリボースからなる群から選択される。実施形態では、アカルボースを、25mg、50mg、または100mgで投与する。実施形態では、ミグリトールを、25mg、50mg、または100mgで投与する。実施形態では、ボグリボースを、0.2mgまたは0.3mgで投与する。
【0071】
実施形態では、胆汁酸封鎖剤(BAS)は、コレスチラミン、コレスチポール、およびコレセベラムからなる群から選択される。実施形態ではコレスチラミンを、800mg、1グラム、または4グラムで投与する。実施形態ではコレスチポールを、1グラムまたは5グラムで投与する。実施形態では、コレセベラムを、375mg、625mg、1.875グラム、または3.75グラムで投与する。
実施形態では、交感神経遮断性ドーパミン受容体アゴニストは、ブロモクリプチンメシル酸塩である。実施形態では、ブロモクリプチンメシル酸塩を、0.8mg、2.5mg、または5mgで投与する。
実施形態では、高血圧薬は、アンギオテンシン変換酵素阻害剤(ACEI)、アンギオテンシンII受容体遮断薬(ARB)、ベータ遮断薬、カルシウムチャネル遮断薬(CCB)、およびチアジド系利尿薬からなる群から選択される。
【0072】
実施形態では、脂質修飾剤は、エゼチミブ、シンバスタチン、プロタンパク質転換酵素サブチリシン-ケキシン9型セリンプロテアーゼ(PCSK9)のモノクローナル抗体阻害剤、エボロクマブ、アリロクマブ、フィブラート、ナイアシン、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)およびオメガ3脂肪酸、からなる群から選択される。実施形態では、エゼチミブを、10mgで投与する。実施形態では、シンバスタチンを、5mg、10mg、20mg、40mg、または80mgで投与する。実施形態では、エボロクマブを、140mgまたは420mgで投与する。実施形態では、アリロクマブを、75mg、150mg、または300mgで投与する。実施形態では、ナイアシンを、375mg、500mg、750mg、または1グラムで投与する。
処置有効性は、血中のインスリンレベルを測定することによって評価することができる。通常の空腹時インスリンレベルは、5未満である。約8.0の空腹時インスリンレベルでは前糖尿病の2倍のリスクがもたらされ、約25の空腹時インスリンでは前糖尿病の約5倍のリスクがもたらされる。実施形態では、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体を、それを必要とする対象に投与することによって、空腹時インスリンレベルを、5未満、8未満、または25未満に低下させる。
【0073】
尿中8-iso-PGF2αは、酸化ストレス誘発性脂質過酸化の十分に確立されたマーカーである。尿中8-iso-PGF2αの上昇は、全身性酸化ストレスの発生を示す。処置有効性は、脂肪組織中の尿中8-iso-PGF2αレベルを測定することによって評価することができる。実施形態では、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体を、それを必要とする対象に投与することによって、尿中8-iso-PGF2αレベルを低下させる。
処置有効性は、脂肪組織中の酸化ストレスのレベルを測定することによって評価することができる。酸化ストレスを、以下の酵素、すなわち、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルドケトレダクターゼ、およびグルタチオンS-トランスフェラーゼのうちのいずれかの増加によって測定する。実施形態では、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体を、それを必要とする対象に投与することによって、以下の酵素、すなわち、スーパーオキシドジスムターゼ2(SOD2)、カタラーゼ、グルタチオンペルオキシダーゼ、ペルオキシレドキシン、アルデヒドデヒドロゲナーゼ、アルドケトレダクターゼ、およびグルタチオンS-トランスフェラーゼのうちの1つまたは複数のレベルを低下させる。
【0074】
処置有効性は、GLUT4のカルボニル化のレベルを測定することによって評価することができる。過栄養時の脂肪組織では、酸化ストレスにより、グルコース輸送チャネル付近のGLUT4のカルボニル化を含む、多数のタンパク質の広範な酸化およびカルボニル化が起こり、GLUT4活性が失われる。GLUT4のカルボニル化および酸化による不活性化により、インスリン抵抗性がもたらされる場合がある。実施形態では、本明細書に開示される任意の実施形態による、化合物もしくは組成物、またはそれらの誘導体を、それを必要とする対象に投与することによって、GLUT4カルボニル化のレベルを低下させる。
【0075】
一部の実施形態は、それを必要とする対象における、がんを処置または予防する、がんの再発を予防する、がんの進行を阻害する、追加の治療の前に癌を縮小させる、または追加の治療の前に循環腫瘍細胞もしくは転移を減少させる方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
一部の実施形態では、前記がんは、生殖がん、ホルモン依存性がん、白血病、大腸がん、前立腺がん、乳がん、卵巣癌、子宮内膜がん、子宮癌肉腫、胃がん、直腸がん、肝臓がん、膵臓がん、肺がん、子宮がん、子宮頸がん、子宮頚がん、子宮体がん、卵巣がん、精巣がん、膀胱がん、腎臓がん、脳/CNSがん、頭頸部がん、咽頭がん、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、多発性骨髄腫、黒色腫、急性白血病、リンパ性白血病、有毛細胞白血病、急性骨髄性白血病、ユーイング肉腫、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、絨毛癌、横紋筋肉腫、ウィルムス腫瘍、神経芽細胞腫、口腔/咽頭のがん、食道のがん、喉頭のがん、腎臓がん、リンパ腫、バーキットリンパ腫、肉腫、血管肉腫、膠芽腫、髄芽腫、星状細胞腫、およびメルケル細胞癌、からなる群から選択される。
【0076】
特定の実施形態では、がんは、黒色腫、大腸がん、非小細胞肺がん、および膵臓がんからなる群から選択される。
一部の実施形態は、それを必要とする対象における皮膚色素沈着を増加させる、または皮膚色素沈着の喪失を予防または好転させる方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
一部の実施形態は、それを必要とする対象における皮膚保護の方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
【0077】
一部の実施形態は、それを必要とする対象における皮膚色素沈着を増加させることを含む皮膚保護の方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
一部の実施形態は、それを必要とする対象における皮膚がんから皮膚を保護する方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
一部の実施形態は、それを必要とする対象における、皮膚色素沈着を増加させることを含む、皮膚がんから皮膚を保護する方法であって、本明細書に開示される任意の実施形態による、治療有効量の化合物もしくは組成物、またはその誘導体を対象に投与することを含む方法を説明する。
【0078】
実施形態では、方法は、1つまたは複数の追加の治療剤の共投与を含み得る。実施形態では、共投与は、本明細書に記載の、エナンチオマー的に精製されたSRR G-1もしくはその誘導体を含む同一の医薬組成物の部分、またはエナンチオマー的に精製されたSRR G-1もしくはその誘導体を含む別個の医薬組成物であり得る。実施形態では、共投与は、同時で、実質的に同時で、本明細書に記載の組成物の投与の前または後であり得る。
追加の治療剤は、減量薬、血糖降下薬、インスリン増感剤、グルカゴン様ペプチド1(GLP1)受容体アゴニスト、ナトリウムグルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤、インスリン、インスリンアナログ、スルホニル尿素、ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤、アルファグルコシダーゼ阻害剤(AGI)、胆汁酸封鎖剤(BAS)、交感神経遮断性ドーパミン受容体アゴニスト(sympatholytic dopamine receptor agonist)、インクレチン、高血圧薬、脂質修飾剤、抗肥満剤、免疫療法剤、化学療法剤、標的キナーゼ阻害剤、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤、抗感染症剤、ブロモドメイン阻害剤、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。
【0079】
免疫療法剤は、PD-1阻害剤(ペンブロリズマブ、ニボルマブ、抗PD-1)、PD-L1阻害剤(すなわち、アテゾリズマブ、アベルマブ、デュルバルマブ、抗PD-L1)、CTLA-4阻害剤(すなわち、イピリムマブ、抗B7-1/B7-2、抗CTLA-4)、IL-2、IL-7、IL-12、腫瘍溶解性ウイルス(タリモジェンラヘルパレプベック)、シトシンリン酸-グアノシン、オリゴデオキシヌクレオチド、イミキモド、レシキモド、ならびにIgおよびITIMドメインを有するT細胞免疫受容体(T cell immunoreceptor with Ig and ITIM domains)(TIGIT)を標的とする抗体、誘導性共刺激分子(ICOS)、リンパ球活性化遺伝子3(LAG-3)、T細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子3(TIM3)、T細胞活性化のVドメイン含有Igサプレッサー(V-domain containing IG supressor of T cella ctivation)(VISTA)、OX40、グルココルチコイド誘発性TNF受容体(GITR)、CD40、CD47、CD94/NKG2A、キラー免疫グロブリン受容体(KIR)、ならびにそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。
【0080】
化学療法剤は、シクロホスファミド、メトトレキサート、5-フルオロウラシル、ドキソルビシン、ドセタキセル、ブレオマイシン、ビンブラスチン、ダカルバジン、ムスチン、ビンクリスチン、プロカルバジン、エトポシド、シスプラチン、エピルビシン、カペシタビン、フォリン酸、オキサリプラチン、テモゾロミド、タキサン、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。
標的キナーゼ阻害剤は、ベムラフェニブ、ダブラフェニブ、トラメチニブ、バンデタニブ、SU6656、スニチニブ、ソラフェニブ、セルメチニブ、ルキソリチニブ、ペガプタニブ、パゾパニブ、ニロチニブ、ムブリチニブ、レンバチニブ、ラパチニブ、イマチニブ、イブルチニブ、ゲフィチニブ、フォスタマチニブ、エルロチニブ、エルダフィチニブ、ダサチニブ、カボザンチニブ、クリゾチニブ、コビメチニブ、セツキシマブ、ボスチニブ、ビニメチニブ、アキシチニブ、アファチニブ、アダボセルチブ、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、ボリノスタット、ロミデプシン、チダミド、パノビノスタット、ベリノスタット、バルプロ酸、ジビノスタット(Givinostat)、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。
【0081】
抗感染症剤は、オリタバンシン(Orbactiv)、ダルババンシン(Dalvance)、テジゾリドホスフェート、(Sivextro)、クリンダマイシン、リネゾリド(Zyvox)、ムピロシン(Bactroban)、トリメトプリム、スルファメトキサゾール、トリメトプリム-スルファメトキサゾール(SeptraまたはBactrim)、テトラサイクリン、バンコマイシン、ダプトマイシン、フルオロキノリン、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。
【0082】
ブロモドメイン阻害剤は、OTX015/MK-8628、CPI-0610、BMS-986158、ZEN003694、GSK2820151、GSK525762、INCB054329、INCB057643、ODM-207、RO6870810、BAY1238097、CC-90010、AZD5153、FT-1101、ABBV-744、RVX-000222、およびそれらの組み合わせ、からなる群から選択され得る。
【実施例0083】
実験セクション
スキーム1
【化2】
G-1の合成は、Org. Biomol. Chem., 2010,8, 2252-2259に記載されており、これは、参照により本明細書に組み込まれ、スキーム1に示されている。無水アセトニトリル(2.0cm
3)中の触媒量のSc(OTf)
3(0.492g、1.0mmol)を、アセトニトリル(25cm
3)中の6-ブロモピペロナール(2.30g、10.0mmol)、p-アミノアセトフェノン(1.30g、10.0mmol)、およびシクロペンタジエン(3.30g、50.0mmol)の混合物に加えた。反応混合物を周囲温度(約23℃)で2.0時間撹拌した。揮発性物質を減圧下で除去した。残留物を、酢酸エチル-ヘキサン(10:90)を使用する分取シリカゲルカラムクロマトグラフィーによって精製して、G-1(4.03g、98%、d.r.=94:6)を白色固体として得た。微量のジアステレオマーを、再結晶によって実質的に除去し、SRR G-1とRSS G-1とのラセミ混合物を得た。
【0084】
(実施例1)
SRR G-1およびRSS G-1エナンチオマーの単離
Tocris Bioscienceから購入した、高度に精製されたG-1の試料、すなわち,(±)1-(4-(6-ブロモベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-イル)-(3aS*,4R*,9bR*)-テトラヒドロ-3H-シクロペンタ[c]キノリン-8-イル)エタン-1-オン(純度99.4%)から始め、この材料を、90:10:0.1(体積/体積/体積)メチルtert-ブチルエーテル/エタノール/ジエチルアミン中に溶解し、Chrialpak1A樹脂を充填したカラムを使用した分取クロマトグラフィーにかけた。溶出は90:10:0.1(体積/体積/体積)メチルtert-ブチルエーテル/エタノール/ジエチルアミンを用いて行い、各エナンチオマーに対応する画分を収集し、濃縮して固体にした。単結晶X線構造解析により、早期に溶出するエナンチオマーが、SRR G-1エナンチオマーであると決定した。
【0085】
(実施例2)
SRR G-1多形スクリーニング
実施例1に従って調製されたSRR G-1から始めて、固体のスラリーから単離された固体、または溶液の急速および緩慢蒸発による固体、ならびに冷却による固体を分析する多形スクリーニング研究を行った(表1)。形態Aと呼ばれる無水形態と形態Bと呼ばれるモノジクロロメタン溶媒和物の2つの結晶形態を特定した。高温にさらされると、形態Bの結晶形態が脱溶媒和して形態Cの結晶形態を形成する。非晶質材料を、2つの異なる方法で精製されたSRR G-1から生成した;SRR G-1のジエチルエーテル溶液を迅速蒸発させるか、またはSRR G-1のジクロロメタン溶液(の溶液)から回転蒸発させる。
【0086】
【0087】
SRR G-1の単結晶構造決定(形態B)
実施例1に従って調製したSRR G-1から始めて、好適な単結晶をジクロロメタン溶液から成長させ、単結晶X線回折法によって分析した。構造を決定することに成功した。
【0088】
蒸発ステップ後、ジクロロメタンの溶液から単結晶を生成した。およそ0.19×0.14×0.03mm3の寸法の無色薄板状物を、ランダム配向でポリマーループに取り付けた。予備検査およびデータ収集を、銅アノードマイクロフォーカス密閉型X線管(Cu Kα λ=1.54184Å)およびDectris Pilatus3 R200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えたRigaku SuperNova回折計で実施した。データ収集のためのセル定数および配向マトリックスを、3.4920°<θ<77.1910°の範囲の6979反射の設定角度を使用した最小二乗法精密化によって得た。空間群を、プログラムCRYSALISPROによって、P212121(国際表記一覧表 19番)であると決定した。データを、室温で155.132°の最大回折角(2θ)まで収集した。
【0089】
フレームを、CRYSALISPROにより積算した。合計10119反射を収集し、そのうち4368が特有のものであった。ローレンツおよび偏光補正をデータに適用した。Cu Kα線について線形吸収係数は5.144mm-1である。CRYSALISPROを使用して経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.676~1.000の範囲であった。等価の反射強度を平均化した。平均化の一致因子(agreement factor)は、強度に基づいて3.4%であった。
構造を、SHELXTを使用して直接法によって解析した。残りの原子は、後続の差フーリエ合成により位置を決定した。構造を、SHELXL-2014を使用して精密化した。SRR G-1の水素原子を、独立して精密化した。ジクロロメタンの水素原子は精密化に含まれていたが、それらが結合している原子に乗るように拘束した。構造を、関数:
【0090】
【数1】
を最小化することにより、完全行列最小二乗法にて精密化し、
ここで、重みwは1/[σ
2(F
o
2)+(0.0464P)
2+(0.1905P)](式中、P=(F
o
2+2F
c
2)/3)として定義される。散乱因子は、「国際結晶学データ集(International Tables for Crystallography)」から採用した。精密化に使用された4368反射のうち、強度が不確かさの2倍より大きい[I>2σ(I)]、4071反射のみを、フィット残差Rの計算に使用した。精密化の最終サイクルには334の変数パラメーターが含まれ、拘束0であり、
【0091】
【数2】
の、それぞれ重み付けのない一致因子および重み付した一致因子で最終サイクルを収束させた。単位重み(適合度)の観測値の標準偏差は1.07であった。最終差フーリエにおける最高ピークは、電子密度が0.398e/Å
3であった。最小負ピーク値は-0.438e/Å
3であった。
【0092】
計算によるX線粉末回折(XRPD)パターン。MERCURY、ならびに単結晶データからの原子座標、空間群および単位胞パラメーターを使用して、Cu線についての計算によるXRPDパターンを生成させた。原子変位楕円体およびパッキング図原子変位楕円体図を、MERCURYを使用して作成した。原子を50%確率異方性熱的楕円体として表している。パッキング図および追加の図をMERCURYにより生成した。水素結合は、破線で表す。キラル中心の評価を、PLATONを使用して実施した。絶対配置は、分子キラリティー指定則を使用して評価する。
【0093】
結晶系は直方晶系であり、空間群はP212121である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=6.43156(10)Å、b=13.0752(2)Å、c=25.2941(4)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=2127.09(6)Å3、である。標準不確かさは、結晶学的括弧表記で書かれおり、例えば、0.123(4)は0.123±0.004に相当する。式量は497.20g mol-1、Z=4であり、計算による密度は1.553g cm-3になる。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメーターのさらなる詳細は、表2にまとめられている。得られた構造の品質は、のフィット残差R 0.0348(3.48%)によって示されるように、高い。2%~6%の範囲のR因子は、最も確実に決定される構造であると言われている。
【0094】
【0095】
SSR G-1ジクロロメタン溶媒和物の原子変位楕円体図を
図1に示す。単結晶構造の非対称単位において観察された分子は、SSRエナンチオマーの提案された分子構造と一致している。
図1に示す非対称単位には、1つのSSR G-1分子および1つのジクロロメタン分子が含まれている。
a、b、およびcの結晶軸に沿って見たパッキング図を、それぞれ
図2~4に示す。
図5に示すように、アミンから、隣接する分子のカルボニルへの水素結合により、b軸に沿って1次元の水素結合ネットワークが生成される。
【0096】
絶対構造は、結晶によるX線異常散乱の分析を通じて決定することができる。異常散乱は、フリーデル対間の強度差によって評価される。反射データをθ
maxまで測定した場合、フリーデルカバレッジは95%であった。フラックパラメーターとして知られる精密化パラメーターxは、反転双晶の2つの構成成分の相対的存在量をコード化する。この構造は、精密化モデルを1-xの割合、およびそれを反転したものをx含む。低い標準不確かさが得られた場合、フラックパラメーターは、解析した構造が正しい場合は0に近く、反転モデルが正しい場合には1に近いはずである。
図1に示すSSR G-1ジクロロメタン溶媒和物の構造の測定されたフラックパラメーターは-0.018であり、標準不確かさは0.013であり、これは反転を識別する力が強いことを示している。
【0097】
絶対構造に関する追加情報は、ベイズ統計学をバイフット差に適用することによって評価することができる。この分析は、絶対構造のさまざまな仮説に対する一連の確率を提供する。この分析により、ホーフト yパラメーターが生成され、これは、フラック xパラメーターと同じように解釈される。加えて、この分析によって、絶対構造が正しいか、正しくないか、またはラセミ双晶であるという3つの確率が得られる。今回のデータセットの場合、(フラックと同等である)ホーフト yパラメーターは-0.020(11)であり、構造が正しい確率は1.000であり、構造が正しくないか、またはラセミ双晶である確率はどちらも10
-200未満である。
絶対配置は、
図6にラベル付けされている。これは、SRR G-1の構成と一致している。
図7は、単結晶構造から生成されたSRR G-1ジクロロメタン溶媒和物の計算によるXRPDパターンを示す。計算によるXRPDパターンは、表1にまとめられている多形スクリーニング研究において形態BのXRPDパターンを示していると特定されたバルク試料に割り当てられたものと同一である。
位置パラメーターおよびそれらの推定標準偏差、異方性変位因子係数(anisotropic displacement factor coefficients)、結合距離、結合角、水素結合および角度、ならびにねじれ角についての表が示されている。
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
実施例1に従って調製したSRR G-1から始めて、形態A 結晶形態の好適な単結晶をイソプロパノール溶液から成長させ、単結晶X線回折法によって分析した。構造を決定することに成功した。単結晶X線分析は、およそ0.203×0.137×0.033mm3の寸法の無色プレートを、ランダム配向でポリマーループに取り付けて、このプレート上で実施した。予備検査およびデータ収集を、銅アノードマイクロフォーカス密閉型X線管(Cu Kα λ=1.54184Å)およびDectris Pilatus3 R200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えたRigaku SuperNova回折計で実施した。データ収集のためのセル定数および配向マトリックスを、4.7640°<θ<77.3860°の範囲の9009反射の設定角度を使用した最小二乗法精密化によって得た。空間群を、プログラムCRYSALISPROによって、P212121であると決定した。データを、室温で155.264°の最大回折角(2θ)まで収集した。
【0105】
フレームを、CRYSALISPROにより積算した。合計17299の反射を収集し、そのうち7561が特有のものであった。ローレンツおよび偏光補正をデータに適用した。Cu Kα線の線形吸収係数は3.206mm-1である。CRYSALISPROを使用して経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.733~1.000の範囲であった。等価の反射強度を平均化した。平均化の一致因子は、強度に基づいて2.74%であった。
構造を、SHELXTを使用して直接法によって解析した。残りの原子は、後続の差フーリエ合成により位置を決定した。構造を、SHELXL-2014を使用して精密化した。水素原子を、独立して精密化した。構造を、関数:
【0106】
【数3】
を最小化することにより、完全行列最小二乗法にて精密化し、
ここで、重みwは、1/[σ
2(F
o
2)+(0.0401P)
2+(0.3205P)](式中、P=(F
o
2+2F
c
2)/3)として定義される。散乱因子は、「国際結晶学データ集」から採用した。精密化に使用された7561の反射のうち、強度が不確かさの2倍より大きい[I>2σ(I)]、6752の反射のみを、フィット残差Rの計算に使用した。精密化の最終サイクルには613の変数パラメーターが含まれ、拘束0であり、
【0107】
【数4】
の、それぞれ重み付けのない一致因子および重み付した一致因子により最終サイクルを収束させた。単位重み(適合度)の観測値の標準偏差は1.04であった。最終差フーリエにおける最高ピークは、電子密度が0.319e/Å
3であった。最小負ピーク値は-0.454e/Å
3であった。
【0108】
結晶系は直方晶系であり、空間群はP2
12
12
1である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=6.50106(9)Å、b=17.3547(2)Å、c=32.6957(4)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=3688.85(9)Å
3、である。分子量は412.27g mol
-1、Z=8であり、計算による密度は1.485g cm
-3になる。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメーターのさらなる詳細は、表9にまとめられている。形態Aの原子変位楕円体図を
図8に示す。示されている非対称単位には、2つのエナンチオピュアなSRR G-1分子が含まれている。構造から、絶対配置を確定的に決定した。SRR G-1には、C114(C214)、C113(C213)、およびC19(C29)に位置する3つのキラル中心が含まれており、それぞれR、S、およびR配置で結合している。単結晶構造から生成された形態Aの計算によるXRPDパターンを
図9に示し、実験パターンと比較する。
【0109】
【0110】
(実施例3)
形態および多形データ
SRR G-1は、2つの特徴的な多形すなわち形態AおよびC;溶媒和物、すなわち形態B;ならびに非晶質材料を形成する。結晶形態のXRPDパターンを、
図10において比較する。形態Bは、100~120℃間の高温にさらされると脱溶媒和して形態CになるモノDCM溶媒和物である。脱溶媒和物である形態Cは、129℃付近で融解開始を示す。形態Aは、すべての温度で熱力学的に安定な形態であり(形態Cにモノトロピックに関連する)、178℃付近で融解開始を示す。非晶質材料は物理的に安定ではなく、高温または高湿度のいずれかにさらされると、結晶化して形態Aになる。形態については、以下の後続のセクションにてより詳細に説明する。
【0111】
結晶形態A
形態Aは、は無水であり、178℃付近で融解を開始する。形態Aは、熱力学的に最も安定した形態であり、形態Cにモノトロピックに関係する。形態Aは、ジクロロメタン以外の種々の有機溶媒および有機/水溶媒系を利用した複数の結晶化技術から決まって得られた。
結晶形態Aについて観察されたXRPDピークを、表10に列挙する。
【0112】
【0113】
形態Aのサーモグラムを、
図11に示す。熱重量分析(TGA)データは、最高266℃まで質量損失がないことを示しており、無水形態に一致している。DSCは、176℃(68J/g)付近で開始する単一の吸熱を示す。事象を、ホットプレート上で融解として視覚的に確認した。分解によると思われる変色が、融解時に認められた。
形態Aの動的蒸気収着等温線は、この形態が低い吸湿性を呈することを示している(
図12)。収着/脱着サイクルによる質量変化は、0.3質量%未満であった。ヒステリシスは観察されなかった。動的蒸気収着実験から回収された材料は、XRPDによると形態Aであった。
【0114】
結晶形態B
形態Bは、DCMから形態C(脱溶媒和形態)との混合物として決まって生成されるモノジクロロメタン溶媒和物である。形態Bは、100~120℃間の高温にさらされると完全に脱溶媒和して形態Cになる。
形態Bの単結晶構造は既知である。結晶系は直方晶系であり、空間群はP2
12
12
1である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=6.43156(10)Å、b=13.0752(2)Å、c=25.2941(4)Å、α=90°、β=90°、γ=90°、V=2127.09(6)Å
3、である。式量は497.20g mol
-1、Z=4であり、計算による密度は1.553g cm
-3になる。非対称単位には、1つのエナンチオピュアなSSR G-1分子および1つのジクロロメタン分子が含まれている。この構造には、C8、C9、およびC13に位置する3つのキラル中心が含まれており(
図13を参照)、これらは、それぞれR、S、およびR配置で結合している。単結晶構造から生成された形態Bの計算によるXRPDパターンを
図14に示し、実験パターンと比較する。
結晶形態態Bについて観察されたXRPDピークを、表11に列挙する。
【0115】
【0116】
形態Bのサーモグラムを、
図15に示す。熱重量分析(TGA)曲線は、177℃までで約15.3%の質量損失を呈し、これは、0.9mol/mol DCMの揮発に一致している。損失は、DSCサーモグラムにおいて脱溶媒和吸熱(最大104℃)および再結晶発熱(最大140℃)と同時に発生する。再結晶した材料は、形態Aの融解と一致する176℃付近で開始する最終的な融解吸熱を呈する。形態Bと形態Cとの混合物のDSCサーモグラムを
図16に示す。混合物は、脱溶媒和吸熱(最大101℃)を呈し、続いて、脱溶媒和形態である形態Cの融解吸熱(128℃付近で開始)を呈する。
形態Bの物理的安定性を調査した。120℃にさらされると、形態Cへの完全な脱溶媒和が起こった。90~100℃に25分間さらすと、ほぼ完全な脱溶媒和が明らかになった。70℃(またはそれ未満)での減圧においては、脱溶媒和が起こるのに十分ではなかった。
【0117】
結晶形態C
形態Cは、形態B(モノDCM溶媒和物)の脱溶媒和によって生成され、129℃付近で融解開始を伴う脱溶媒和物である。
形態CのXRPDパターンでは、インデクシングに成功し、このことは、形態Cが単結晶相から構成されていることを示唆している(
図17)。化学組成が正しいと仮定すると、これは、SRR G-1の4つの分子を含む直方晶系の単位胞を有する。したがって、インデクシングの結果から計算された462.88Å
3の式単位体積は、計算による密度が1.479g cm
-3の無水形態に一致する。
結晶形態態Cについて観察されたXRPDピークを、表12に列挙する。
【0118】
【0119】
形態Cの示差走査熱量測定(DSC)サーモグラムを、
図18に示す。DSCは、129℃(23J/g)付近で開始する単一の吸熱を呈する。事象を、ホットプレート上で融解として視覚的に確認した。
非晶質
精製されたSRR G-1から生成した非晶質材料の物理的安定性を調査した。非晶質材料は、高温(60℃で4日以内)または高湿度(75%RHで12日以内)のいずれかにさらされると、結晶化して形態Aになった。このことは、非晶質材料が評価された条件で安定ではないということを示している。
結晶形態の相対的熱力学的安定性
【0120】
固体の相転移は、熱力学的に可逆的または不可逆的であり得る。特定の転移温度で可逆的に変態する結晶形態は、エナンチオトロピック多形と呼ばれる。結晶形態がこれらの条件下で相互変換できない場合、系はモノトロピックである(1つの熱力学的に安定な形態)。いくつかの規則は、多形の相対的熱力学的安定性を予測すること、および多形間の関係がエナンチオトロピックであるかモノトロピックであるかを予測することに役立つ。ここでは、統計力学的根拠に基づいて正当化された密度規則および融解熱規則を、モノトロピーまたはエナンチオトロピーの指針として使用する。
【0121】
分子結晶の最密充填についてのKitaigorodskiiの原理に基づく密度規則によれば、絶対零度での非水素結合系の場合、より強い分子間ファン・デル・ワールス相互作用のために、最も安定な多形が最も高い密度を有するという。したがって、この規則によれば、最も効率的な充填を備えた結晶構造はまた、自由エネルギーが最も低い。このことは、水素結合(長距離効果)が結晶充填の主要パラメーターではないと想定している。形態Aの単結晶構造および形態Cのインデクシング結果から決定された密度は、絶対零度で、形態Aが形態Cよりも安定であることを示唆している(それぞれ1.485および1.479g cm
-3)。
熱量測定データから得られた融解開始および融解熱は、すべての温度における形態の相対的物理的安定性を推定するのに有用である(
図11および18)。融解熱の規則から、より高い融解形態の方が、融解熱がより低い場合、2つの形態はエナンチオトロピックであり、そうでない場合、それらはモノトロピックである。この系の密度および融解熱の規則は、モノトロピック関係と一致しているように見える。
【0122】
相互変換実験を実施して、形態Aと形態Cとの間の熱力学的関係を実験的に試験した。相互変換または競合スラリー実験は、溶解性のより低い(より安定な)結晶がより溶解性の高い結晶形態を犠牲にして成長するための経路を提供する溶液媒介プロセスである。溶媒和物の形成または分解の他に、相互変換実験から得られるより安定な多形は、熱力学的により安定な多形であるほどエネルギーがより低く、したがって溶解度が低いため、使用する溶媒に依存しない。溶媒の選択は、多形変換の反応速度論に影響し、多形間の熱力学的関係には影響しない。飽和溶液を生成し、次にほぼ等量の2つの多形からなる混合物に加えた。試料を9日間スラリー化し、固体を採取してXRPDにより分析した。相互変換研究の結果により、形態Aが、形態Cと比較して室温で熱力学的に、より安定であることが確認される。実験的に測定された室温での相対安定性、密度規則に基づいて提示された絶対零度での相対安定性、および融解熱規則によって決定されたモノトロピズムはすべて、形態Aがどの温度でも形態Cよりも安定であることを意味する。
SRR G-1 形態Aの溶解度
【0123】
【表13】
SRR G-1(形態A) pH緩衝液中での溶解度測定
溶解度測定を、37℃で24時間、pH緩衝液(2.0~8.0)中のSRR G-1(結晶形態態A)について実施した。結果を表14にまとめた。XRPDパターンを、
図19および
図20に示す。24時間後、すべてのpH緩衝液中において化合物の形態変化は観察されなかった。SRR G-1のpH2.0~8.0での溶解度は0.72μg/mL未満であった。
【0124】
【0125】
SRR G-1(形態A) 生体関連(BioRelovent)媒体中での溶解度測定
速度論的溶解度測定を、3つの生体関連媒体(SGF(pH1.8)、FaSSIF(pH6.5)およびFeSSIF(pH5.0))中において、37℃にて1、2、4および24時間でSRR G-1(結晶形態A)について実施した。結果を表15および
図21にまとめた。湿ケーキのXRPDパターンを、
図22~24に示す。3つの生体関連媒体中における1、2、4、および24時間後の試料では、形態の変化は観察されなかった。SRR G-1の最高の溶解度は、FeSSIF(約0.037mg/mL)中で観察された。
【0126】
【表15】
化合物SRR G-1のpKa、LogD
7.4およびLogPを、MarvinSketch5.6.0.2によって予測し、結果は、SRR G-1のpKaが1.90(塩基、0~14のpH範囲)、LogD
7.4は5.32、LogPは5.32であると示された。pKa滴定試験では、pKa値が3~11の範囲で観察されなかったことが示され、これは予測結果と一致していた。LogD
7.4を、pH7.4のリン酸緩衝液およびn-オクタノールの溶媒系を使用してフラスコ振とう法により測定した。LogD
7.4およびLogPの詳細な結果を表16に示した。水相へのSRR G-1遊離塩基の溶解度は<0.82μg/mLよりも低かったため、pKa値が小さいことを考慮して、LogD
7.4を>3.22、LogPを>3.22と決定した。
【0127】
【0128】
装置的技法
示差走査熱量測定(DSC)
DSCを、Mettler-Toledo DSC3+またはDSC822e示差走査熱量計を使用して実施した。タウラグ(tau lag)調整を、インジウム、スズ、亜鉛を用いて実施する。温度およびエンタルピーを、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、亜鉛を用いて調整する。次に、調整を、オクタン、サリチル酸フェニル、インジウム、スズ、亜鉛を用いて検証する。試料を密閉したアルミニウムDSCパンに入れ、質量を正確に記録した。次に、パンをDSCセル内に挿入した。試料パンとして構成された秤量したアルミニウムパンを、セルの基準側に置いた。試料分析の前に、パンの蓋に穴を開けた。試料を、10℃/分で-30℃から250℃まで分析した。DSCサイクル法により、0℃/分で-30℃から100℃まで加熱し、-30℃に戻り、次いで250℃まで加熱した。
【0129】
動的蒸気収着/脱着(DVS)
水分収着/脱着データを、VTI SGA-100蒸気収着分析器で収集した。較正標準としてNaClおよびPVPを使用した。分析前に試料を乾燥させなかった。収着および脱着データを、窒素パージ下にて10%RH間隔で5%~95%RHの範囲にわたって収集した。分析に使用した平衡基準は、5分での質量変化が0.0100%未満であり、最長平衡化時間は3時間であった。試料の初期水分含有量についてはデータを補正しなかった。
【0130】
熱重量分析(TGA)
Mettler-Toledo TGA/DSC3分析計を使用して、熱重量分析を実施した。温度およびエンタルピーの調整を、インジウム、スズ、および亜鉛を使用して実施し、インジウムを用いて検証した。平衡を、シュウ酸カルシウムを用いて検証した。試料をアルミニウムオープンパンに入れた。パンを密閉し、蓋に穴を開け、次にTG炉内に挿入した。試料パンとして構成された秤量したアルミニウムパンを、基準プラットフォーム上に置いた。炉を窒素下で加熱した。各試料を、10℃/分で周囲温度から350℃まで加熱した。サーモグラムは参照温度(x軸)でプロットされているが、結果は試料温度に従って報告する。
【0131】
X線粉末回折(XRPD)
XRPDパターンを、長い微小焦点源を使用して生成されたCu放射線の入射ビームを使用するPANalytical X’Pert PRO MPDまたはPANalytical Empyrean回折計により収集した。楕円傾斜型多層膜ミラー(elliptically graded multilayer mirror)を使用して、Cu Kα 試料を通過したX線の焦点を、検出器上に合わせた。分析の前に、シリコン標本(NIST SRM 640e)を分析して、Si 111ピークの観測位置がNIST認定位置と一致していることを確認した。試料の標本を3μm厚フィルム間に挟み、透過形状で分析した。ビームストップ、短い散乱防止エクステンション(short antiscatter extension)、および散乱防止ナイフエッジを使用して、空気によって発生するバックグラウンドを最小限に抑えた。入射ビームおよび回折ビーム用のソーラースリットを使用して、軸発散によるブロードニングおよび非対称性を最小限に抑えた。回折パターンを、標本から240mmの位置にある走査式位置検知型検出器(X’Celerator)およびData Collectorソフトウェアv.2.2bまたは5.5を使用して収集した。
【0132】
(実施例4)
塩データ
結晶性および無水SRR G-1ベシル酸塩、カンシル酸塩、およびナプシル酸塩を単離することに成功した。3つすべてを、1:1の化学量論的塩として得た。これらの場合、変色しない結晶性塩を高収率で提供するには、種晶添加が非常に重要であった。
図25において、塩のXRPDパターンを、遊離塩基形態Aと比較する。スケールアップおよび塩の特性評価については、以下の後続のセクションにてより詳細に説明する。
SRR G-1ベシル酸塩 形態A
SRR G-1ベシル酸塩 形態Aは、無水1:1化学量論的塩であり、186℃付近で見かけの融解を開始する。水中の塩の不均化は明らかではなかった。
【0133】
SRR G-1ベシル酸塩 形態Aの単結晶構造を決定することに成功した。したがって、およそ0.23×0.09×0.04mm3の寸法の無色の針状物を、ランダム配向でポリマーループに取り付けた。予備検査およびデータ収集を、銅アノードマイクロフォーカス密閉型X線管(Cu Kα λ=1.54184Å)およびDectris Pilatus3 R200Kハイブリッドピクセルアレイ検出器を備えたRigaku SuperNova回折計で実施した。データ収集のためのセル定数および配向行列を、4.2570°<θ<77.0580°の範囲の13177反射の設定角度を使用して、最小二乗法精密化によって得た。空間群を、プログラムCRYSALISPROによって、P21であると決定した。データを、室温で155.242°の最大回折角(2θ)まで収集した。
【0134】
フレームを、CRYSALISPROにより積算した。合計26894の反射を収集し、そのうち10520が特有のものであった。ローレンツおよび偏光補正をデータに適用した。Cu Kα線の線形吸収係数は3.323mm-1である。CRYSALISPROを使用して経験的吸収補正を適用した。透過係数は0.837~1.000の範囲であった。等価の反射強度を平均化した。平均化の一致因子は、強度に基づいて3.3%であった。
構造を、SHELXTを使用して直接法によって解析した。残りの原子は、後続の差フーリエ合成により位置を決定した。構造を、SHELXL-2014を使用して精密化した。水素原子を、独立して精密化した。構造を、関数:
【0135】
【数5】
を最小化することにより、完全行列最小二乗法にて精密化し、
ここで、重みwは1/[σ
2(F
o
2)+(0.0401P)
2+(0.3205P)](式中、P=(F
o
2+2F
c
2)/3)として定義される。散乱因子は、「国際結晶学データ集」から採用した。精密化に使用された10520の反射のうち、強度が不確かさの2倍より大きい[I>2σ(I)]、9411の反射のみを、フィット残差Rの計算に使用した。精密化の最終サイクルには723の変数パラメーターが含まれ、拘束1であり、
【0136】
【数6】
の、それぞれ重み付けのない一致因子および重み付した一致因子で最終サイクルを収束させた。単位重み(適合度)の観測値の標準偏差は1.05であった。最終差フーリエにおける最高ピークは、電子密度が0.311e/Å
3であった。最小負ピーク値は-0.280e/Å
3であった。
【0137】
結晶系は単斜晶系であり、空間群はP2
1である。セルパラメーターおよび計算による体積は:a=14.1207(3)Å、b=8.74139(11)Å、c=21.5361(4)Å、α=90°、β=106.1889(19)°、γ=90°、V=2552.89(8)Å
3、である。式量は570.44g mol
-1、Z=4であり、計算による密度は1.484g cm
-3になる。結晶データおよび結晶学的データ収集パラメーターの詳細は、表17にまとめられている。ベシル酸塩 形態Aの原子変位楕円体図を
図26に示す。示されている非対称単位には、2つのSRR G-1カチオンおよび2つのベシレートアニオンが含まれている。-SO
3部分は、両アニオンの回転障害によりモデル化した。MERCURY、並びに単結晶構造からの原子座標、空間群および単位胞パラメーターを使用して生成された、Cu線についての計算によるXRPDパターンを
図27に提供し、実験パターンと比較する。
【0138】
【表17】
SRR G-1ベシル酸塩 形態Aについて観察されたXRPDピークを、表18に列挙する。
【0139】
【表18】
溶液の
1H NMRスペクトルは、SRR G-1およびベンゼンスルホン酸の1:1の化学量論的塩と一致している。残留溶媒は明らかではなく、非溶媒和形態と一致している。
【0140】
SRR G-1ベシル酸塩 形態Aのサーモグラムを、
図28に提供する。186℃まで質量損失はごくわずかであることがTGAによって明らかであり、無水形態と一致している。DSCは、186℃付近で開始する鋭い吸熱を呈す。この事象は、分解と同時に融解が起こったことに起因すると思われる。164℃付近の小さな吸熱もまた、明らかである。この吸熱の性質は不明である。
水中の不均化の可能性を調査した。SRR G-1ベシル酸塩 形態Aを、水中で4日間スラリー化した。過剰な固体を回収し、遊離塩基またはベンゼンスルホン酸の形跡についてXRPDによって再分析した。回収された材料はSRR G-1ベシル酸塩 形態Aであり、評価された条件下で不均化が起こらなかったことを示している。
【0141】
以下では、SRR G-1ベシル酸塩 形態Aを生成するための1グラムスケール手順を説明する。モル当量0.50gのベンゼンスルホン酸一水和物を、1.17gのSRR G-1遊離塩基形態Aを含む容器に加えた。さらに、少量のSRR G-1ベシル酸塩 形態Aを種晶として加えた。酢酸エチル7mLを加え、続いて超音波処理した。固体の大部分が溶解し、黄色の溶液が得られたが、直後に白色固体の沈殿を得た。スラリーの移動および濾過を容易にするために、酢酸エチルをさらに3mL加えた。固体を減圧濾過により回収し、4mLの酢酸エチルですすぎ、続いて室温で終夜減圧下に置いた。およそ0.99グラムのSRR G-1ベシル酸塩 形態Aを得た。
SRR G-1カンシル酸塩 形態A
SRR G-1カンシル酸塩 形態Aは、無水1:1化学量論的塩であり、172℃で見かけの融解を開始する。
【0142】
SRR G-1カンシル酸塩 形態AのXRPDパターンでは、インデクシングに成功し、このことは、形態Aが主に単結晶相から構成されていることを示唆している(
図29)。SRR G-1カンシル酸塩 形態Aは、2つのSRR G-1カチオンおよび2つのカンシレートアニオンを収容することができる三斜晶系単位胞を有する。インデクシングの結果から計算された737.9Å
3の式単位体積は、計算による密度が1.451g cm
-3の無水形態に一致する。XRPDパターンには、SRR G-1カンシル酸塩 形態A、遊離塩基の既知の多形、または(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸に関連しない少数の微小ピークも含まれている。これらの追加のピークを、
図30においてアスタリスクにより強調表示している。
【0143】
SRR G-1カンシル酸塩 形態Aについて観察されたXRPDピークを、表19に列挙する。
【0144】
【0145】
溶液の
1H NMRスペクトルは、SRR G-1および(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸の1:1の化学量論的塩と一致している。残留溶媒は明らかではなく、非溶媒和形態と一致している。
SRR G-1カンシル酸塩 形態Aのサーモグラムを、
図31に提供する。171℃まで質量損失はごくわずかであることがTGAによって明らかであり、無水形態と一致している。DSCは、172℃付近で開始する鋭い吸熱を呈する。この事象は、分解と同時に融解が起こったことに起因すると思われる。
以下では、SRR G-1カンシル酸塩 形態Aを生成するための750mgスケール手順を説明する。モル当量(0.9)未満、0.43gの(1S)-(+)-カンファー-10-スルホン酸を、0.86gのSRR G-1遊離塩基形態Aおよび酢酸エチル10mLで構成される懸濁液を含む容器に加え、少量の未溶解の固体を含む黄色の懸濁液を提供した。SRR G-1カンシル酸塩 形態Aの種晶を加え、懸濁液を超音波処理して即座に沈殿させた。試料をさらに約10分間超音波処理した後、およそ1時間放置してスラリー化した。白色固体を減圧濾過により回収し、2mLの酢酸エチルですすぎ、続いて室温で終夜減圧下に置いた。およそ0.75グラムのSRR G-1カンシル酸塩 形態Aを得た。
【0146】
SRR G-1ナプシル酸塩 形態A
SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aは、無水1:1化学量論的塩であり、194℃で見かけの融解を開始する。水性スラリーからのXRPDの結果に基づくと、塩の不均化は水中で起こる。
SRR G-1ナプシル酸塩 形態AのXRPDパターンでは、インデクシングに成功し、このことは、形態Aが主に単結晶相から構成されていることを示唆している(
図32)。SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aは、4つのSRR G-1カチオンおよび4つのナプシレートアニオンを収容することができる単斜晶系単位胞を有する。インデクシングの結果から計算された707.3Å
3の式単位体積は、計算による密度が1.457g cm
-3の無水形態に一致する。XRPDパターンには、4.4°(2θ)付近に、SRR G-1ナプシル酸塩 形態A、遊離塩基の既知の多形、またはナフタレン-2-スルホン酸に関連しない小さな弱いピークも含まれている。
SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aについて観察されたXRPDピークを、表20に列挙する。
【0147】
【表20】
溶液の
1H NMRスペクトルは、SRR G-1およびナフタレン-2-スルホン酸の1:1の化学量論的塩と一致している。残留溶媒は明らかではなく、非溶媒和形態と一致している。
【0148】
SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aのサーモグラムを、
図33に提供する。193℃までで質量損失がおよそ0.5%であることがTGAによって明らかである。損失の大部分は約100℃を超えて発生する。上述のNMRでは有機溶媒は観察されなかったため、損失は、約0.2mol/molの水の揮発によるものと想定される。このことは、塩が限定された吸湿性を呈する場合があることを示唆している。DSCは、194℃付近で開始する鋭い吸熱を呈する。この事象は、分解と同時に融解が起こったことに起因すると思われる。
【0149】
水中の不均化の可能性を調査した。SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aを、水中で5日間スラリー化した。過剰な固体を回収し、遊離塩基またはナフタレン-2-スルホン酸(napthtlane-2-sulfonic acid)の形跡についてXRPDによって再分析した。回収された材料は遊離塩基 形態Aであり、評価された条件下で不均化が起こらなかったことを示している。
以下では、SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aを生成するための600mgスケール手順を説明する。SRR G-1ナプシル酸塩 形態Aの種晶およびモル当量0.39gのナフタレン-2-スルホン酸を、0.73gのSRR G-1遊離塩基形態Aおよび9mLの酢酸エチルの懸濁液を含む容器に加えた。少量の未溶解固体を含む黄色の懸濁液を超音波処理し、白色の沈殿が起こった。スラリーをさらに約5分間超音波処理し、次に固体を減圧濾過により回収し、2mLの酢酸エチルですすぎ、室温にて終夜減圧下で乾燥させた。およそ0.63グラムのSRR G-1ナプシル酸塩 形態Aを得た。
【0150】
(実施例5)
YUMM1.7増殖アッセイ
YUMM1.7細胞を、解凍後少なくとも1回継代培養し、5%FBS(Invitrogen)および1%抗生物質-抗真菌剤(gibco)を含むDMEM中で37℃、5%CO2にて培養した。増殖アッセイは、15,000個の細胞を12ウェルプレートにプレーティングし、試験される条件ごとに5反復して実施した。培地および薬物を、2日目にリフレッシュした。4日目に、細胞を、0.25mlの0.05%トリプシンをEDTA(Invitrogen)と共に使用して5分間トリプシン処理してプレートから分離し、0.75mlの培養培地と混合し、血球計算盤を使用して計数した。
【0151】
500nMの各組成物を用いて実施したYUMM1.7増殖アッセイにおける4日間の増殖後の平均細胞数を、表21に示す。同一データを、
図34にグラフ形式で示す。細胞計数は数万になる(つまり、100は約1,000,000である)。開始細胞数は15,000であった。RSS G-1は、倍加数がビヒクルとほぼ同一数であった。ラセミG-1は、倍加数がビヒクルで見られるものの約半分に減少した。驚くべきことに、SRR G-1では、倍加数が、G-1によってもたらされた減少から予想された、ビヒクルで見られたもののちょうど1/4ではなく1/10未満に減少した。
【0152】
【0153】
(実施例6)
前臨床ラットの薬物動態結果
ラットにおけるSRR G-1遊離塩基、SRR G-1ベシル酸塩、およびSRR G-1ナプシル酸塩の血漿濃度を、経口投与後に測定した。3匹の絶食した雄ラットを、10mg/kgSRR G-1遊離塩基、SRR G-1ベシル酸塩、またはSRR G-1ナプシル酸塩を0.5%ヒドロキシプロピルメチルセルロース、99.5%水中の懸濁液として経口送達させて処置した。SRR G-1投与の0.5、1、2、4、8、および24時間後に血漿を単離し、LC-MS/MSを使用して血漿濃度を測定した。結果をそれぞれ表22~24に示す。このデータのグラフ表示を
図35~37に示す。
図38は、3つの結果すべての比較を示す。
【0154】
【0155】
【0156】
【0157】
(実施例7)
SRR G-1およびRSS G-1のADME毒性
ADME-Tox:インビトロ吸収
薬物トランスポーター(蛍光分析による阻害)
対照のパーセントは、以下の式を使用して計算した。阻害のパーセントは、100から対照のパーセントを差し引くことによって計算した。IC50値(対照値の50%阻害をもたらす濃度)を、ヒルの式を使用した濃度反応曲線の非線形回帰分析によって決定した。
【0158】
【数7】
化合物は、試験化合物の存在下での個々の読み取り値である。T1は、試験化合物の非存在下での平均読み取り値である。バックグラウンド(P-gpおよびBCRPの場合)は、参照阻害剤の最高有効濃度の存在下での平均読み取り値である。バックグラウンド(OATP1B1、OATP1B3、OAT1、OAT3、およびOCT2の場合)は、試験化合物と基質の両方の非存在下での平均読み取り値である。
【0159】
ADME-Tox:インビトロ代謝
シトクロムP450阻害(HPLC-UV/VISおよびHPLC-MS/MS検出)
各基質の代謝産物に対応するピーク面積を記録した。次に、対照活性のパーセントを、試験化合物の存在下で得られたピーク面積を試験化合物の非存在下で得られたピーク面積と比較することによって計算した。続いて、阻害パーセントは、各化合物の100から対照活性パーセントを差し引くことによって計算した。IC50値(対照値の50%阻害をもたらす濃度)を、ヒルの式曲線フィッティングを使用した濃度反応曲線の非線形回帰分析によって決定した。
トランスポーター阻害結果 - 10μMのSRR G-1またはRSS G-1を用いてアッセイした場合、以下のトランスポーターは50%を超えて阻害された。SRR G-1の場合:OATP1B1 82.5%。RSS G-1の場合:OCT2 - 53.2%、OATP1B1 - 91.2%、およびOATP1B3 - 74.3%。
【0160】
シトクロムP450阻害結果 - 10μMのSRR G-1またはRSS G-1を用いてアッセイした場合、以下のものは50%を超えて阻害された。SRR G-1の場合:CYP2D6 - 74.3%およびCYP2C8 - 66.7%。RSS G-1の場合:CYP2C9 - 50.4%。
シトクロムP450誘導結果 - 3つの異なるヒト細胞株からの肝細胞を、SRR G-1またはRSS G-1と共に1μM、10μM、および100μMでインキュベートした。SRR G-1の場合:CYP1A2は、3つの細胞株のうち1つのみにおいて1μMと10μMの両方で誘導され、CYP3A4は、3つの細胞株のうち2つにおいて10μMのみで誘導された。RSS G-1の場合:CYP1A2は、3つの細胞株のうち2つにおいて10μMと100μMの両方で誘導された。
【0161】
(実施例8)
オフターゲット選択性アッセイ
GPCR cAMP調節
細胞処理 - cAMP Hunter細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量20μmで白色壁の384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。cAMP調節を、DiscoverX HitHunter cAMP XS+アッセイを使用して測定した。
Gsアゴニストフォーマット - アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。培地を細胞から吸引し、15μLの2:1 HBSS/10mM Hepes:cAMP XS+ Ab試薬と交換した。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中の4×試料を生成した。4.5μLの4×試料を細胞に加え、37℃または室温で30または60分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
【0162】
Giアゴニストフォーマット - アゴニスト測定のために、細胞を、EC80フォルスコリンの存在下で試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。培地を細胞から吸引し、15μLの2:1 HBSS/10mM Hepes:cAMP XS+ Ab試薬と交換した。試料ストックの中間希釈を実施して、4×EC80フォルスコリンを含むアッセイ緩衝液中の4×試料を生成した。4.5μLの4×試料を細胞に加え、37℃または室温で30または60分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
アンタゴニストフォーマット - アンタゴニスト測定のために、細胞を試料と共にプレインキュベートし、続いてEC80濃度でアゴニストチャレンジを行った。培地を細胞から吸引し、10μLの1:1 HBSS/Hepes:cAMP XS+ Ab試薬に交換した。5μLの4×化合物を細胞に加え、37℃または室温で30分間インキュベートした。4.5μLの4×EC80アゴニストを細胞に加え、37℃または室温で30または60分間インキュベートした。Gi共役型GPCRの場合、EC80フォルスコリンが含まれていた。
シグナル検出 - 適切な化合物のインキュベーション後、20μLのcAMP XS+ ED/CL溶解カクテルとの1時間のインキュベーション、続いて20μLのcAMP XS+ EA試薬との室温での3時間のインキュベーションによってアッセイシグナルを生成した。化学発光シグナル検出のためにPerkinElmer Envision(商標)装置を使用して、シグナル生成後にマイクロプレートを読み取った。
【0163】
データ分析 - 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。Gsアゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(最大対照の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)。Gsアンタゴニストモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(EC80対照の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)。Giアゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(1-(試験試料の平均RLU-MAX対照の平均RLU)/(ビヒクル対照の平均RLU-最大対照の平均RLU))。Giアンタゴニストまたはネガティブアロステリックモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(試験試料の平均RLU-EC80対照の平均RLU)/(フォルスコリン陽性対照の平均RLU-EC80対照の平均RLU)。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0164】
カルシウム動員
細胞処理 - 細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞(10,000細胞/ウェル)を、総量50μL(200細胞/L)で黒色壁の透明底ポリ-D-リシンコーティング384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。すべての読み出しのDMSO濃度は≦0.2%である。
色素ローディング-アッセイを、HBSS/20mM Hepes中の1×色素(DiscoverX、カルシウムNo WashPLUSキット、カタログ番号90-0091)、1×添加剤A、および2.5mM プロベネシドからなる1×色素ローディング緩衝液で実施した。プロベネシドを、新たに調製した。試験前に、細胞に色素を添加した。培地を細胞から吸引し、25μLの色素ローディング緩衝液と交換した。細胞を、37℃で45分間、次に室温で20分間インキュベートした。
【0165】
アゴニストフォーマット - アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。色素添加後、細胞をインキュベーターから取り出し、FLIPR Tetra(MDS)を使用してHBSS/20mM Hepes中の25μLの2×化合物を加えた。化合物を加え、アゴニスト活性をFLIPR Tetraで測定した。カルシウム動員を2分間監視し、5秒ベースラインを読み取った。
アンタゴニストフォーマット - 細胞を試料と共にプレインキュベートし、色素を添加し、FLIPR Tetra(MDS)に移し、次いで、EC80濃度のアゴニストでチャレンジを行った。カルシウム動員を2分間監視し、5秒ベースラインを読み取った。
【0166】
データ分析 - FLIPR読み取り - 曲線下の面積を、2分読み取り全体について計算した。化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。アゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RFU-ビヒクル対照の平均RFU)/(平均最大RFU対照リガンド-ビヒクル対照の平均RFU)。アンタゴニストモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(試験試料の平均RFU-ビヒクル対照の平均RFU)/(EC80対照の平均RFU-ビヒクル対照の平均RFU)。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0167】
核内ホルモン受容体
細胞処理 - PathHunter NHR細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量20μLで白色壁の384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。アッセイ培地には、存在するホルモンのレベルを下げるために、チャコール-デキストラン濾過を行った血清が含まれていた。
アゴニストフォーマット - アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中の5×試料を生成した。3.5μLの5×試料を細胞に加え、37℃または室温で3~16時間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
【0168】
アンタゴニストフォーマット - アンタゴニスト測定のために、細胞をアンタゴニストと共にプレインキュベートし、続いてEC80濃度でアゴニストチャレンジを行った。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中の5×試料を生成した。3.5μLの5×試料を細胞に加え、37℃または室温で60分間インキュベートした。ビヒクル濃度は1%であった。4.5μLのアッセイ緩衝液中の6×EC80アゴニストを細胞に加え、37℃または室温で3~16時間インキュベートした。
シグナル検出 - アッセイシグナルを、12.5または15μL(50%体積/体積)のPathHunter検出試薬カクテルの単回添加、続いて室温での1時間のインキュベーションによって生成した。化学発光シグナル検出のためにPerkinElmer Envision(商標)装置を使用して、シグナル生成後にマイクロプレートを読み取った。
【0169】
データ分析 - 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。アゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(平均最大対照リガンド-ビヒクル対照の平均RLU)。アンタゴニストモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1-(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(EC80対照の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU))。選択性アッセイでは、リガンド応答により受容体活性が低下する(構成的に活性な標的を有するインバースアゴニスト)ことに注意すべきである。これらのアッセイの場合、インバースアゴニスト活性は、以下の式を使用して計算した:インバースアゴニスト活性%=100%×((ビヒクル対照の平均RLU-試験試料の平均RLU)/(ビヒクル対照の平均RLU-MAX対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0170】
KINOMEscan結合アッセイ
タンパク質発現 - ほとんどのアッセイにおいて、キナーゼタグ付きT7ファージ株を、24ウェルブロック内でBL21株由来の大腸菌宿主において並行して増殖させた。大腸菌を、対数増殖期まで増殖させ、凍結ストックからのT7ファージに感染させ(感染多重度=0.4)、溶解するまで32℃で振とうしながらインキュベートした(90~150分)。溶解液を遠心分離(6,000×g)し、濾過(0.2μm)して細胞破片を除去した。残りのキナーゼをHEK-293細胞で産生させ、その後qPCR検出のためにDNAでタグ付けした。
捕捉リガンド産生 - ストレプトアビジンコーティング磁性ビーズを、ビオチン化小分子リガンドで室温にて30分間処理して、キナーゼアッセイ用のアフィニティ樹脂を生成させた。リガンド結合ビーズを過剰なビオチンでブロックし、ブロッキング緩衝液(SeaBlock(Pierce)、1% BSA、0.05% Tween20、1mM DTT)で洗浄して、非結合リガンドを除去し、非特異的ファージ結合を減少させた。
【0171】
結合反応集合体 - 1×結合緩衝液(20% SeaBlock、0.17×PBS、0.05% Tween20、6mM DTT)中でキナーゼ、リガンド結合アフィニティビーズ、および試験化合物を合わせることによって、結合反応を組み立てた。すべての反応を、ポリプロピレン384ウェルプレート内にて最終体積0.02mLで実施した。アッセイプレートを室温で1時間振とうしながらインキュベートし、アフィニティビーズを洗浄緩衝液(1×PBS、0.05% Tween20)により洗浄した。次に、ビーズを溶出緩衝液(1×PBS、0.05% Tween20、0.5μM非ビオチン化アフィニティリガンド)中に再懸濁し、室温で30分間振とうしながらインキュベートした。溶出液中のキナーゼ濃度を、qPCRによって測定した。
【0172】
シグナル検出 - 溶出液中のキナーゼ濃度を、qPCRによって測定した。qPCR反応物を、2.5μLのキナーゼ溶出液を、0.15μMのアンプリコンプライマーおよび0.15μMのアンプリコンプローブを含む7.5μLのqPCRマスターミックスに加えることによって組み立てた。qPCRプロトコルは、95℃での10分間のホットスタート、それに続く95℃で15秒間、60℃で1分間の35サイクルで構成されていた。
データ分析 - 応答計算パーセント
【0173】
【数8】
試験化合物=SRR G-1
陰性対照=DMSO(100%対照)
陽性対照=対照化合物(0%対照)
対照のパーセントは、次の式を使用して応答パーセントに変換した:応答パーセント=(100-対照パーセント)。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
データ分析 - 結合定数(Kds)
結合定数(Kds)は、ヒルの式:
【0174】
【数9】
を使用して標準的用量反応曲線により計算した。ヒル勾配を-1に設定した。
曲線は、Levenberg-Marquardtアルゴリズムを用いた非線形最小二乗フィッティングを使用してフィッティングさせた。
【0175】
イオンチャネルアッセイ
細胞処理 - 細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量20μLで黒色壁の透明底ポリ-D-リシンコーティング384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。
色素ローディング-アッセイを、1×色素および該当する場合2.5mMプロベネシドからなる1×色素ローディング緩衝液で実施した。プロベネシドを、新たに調製した。試験前に、細胞に色素を添加した。細胞を、37℃で30~60分間インキュベートした。
アゴニスト/オープナーフォーマット - アゴニスト測定のために、細胞を試料と共にインキュベートして、応答を誘導した。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中で2~5×試料を生成した。10~25μLの2~5×試料を細胞に加え、37℃または室温で30分間インキュベートした。最終アッセイビヒクル濃度は1%であった。
【0176】
アンタゴニスト/ブロッカーフォーマット - アンタゴニスト測定のために、細胞を試料と共にプレインキュベートした。試料ストックの中間希釈を実施して、アッセイ緩衝液中で2~5×試料を生成した。色素添加後、細胞をインキュベーターから取り出し、必要に応じてEC80アゴニストの存在下で10~25μLの2~5×試料を細胞に加えた。プレート温度を平衡化するために、細胞を、暗所で室温にて30分間インキュベートした。ビヒクル濃度は1%であった。
シグナル検出 - 化合物活性をFLIPR Tetra(MDS)で測定した。
データ分析 - 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。アゴニストモードアッセイの場合、活性百分率は、以下の式を使用して計算した:活性%=100%×(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(平均最大対照リガンド-ビヒクル対照の平均RLU)。アンタゴニストの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1-(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(EC80対照の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0177】
トランスポーターアッセイ
細胞処理 - 細胞株を、標準手順に従って冷凍庫ストックから拡大させた。細胞を、総量25μLで黒色壁の透明底ポリ-D-リシンコーティング384ウェルマイクロプレートに播種し、試験前に適切な時間で37℃にてインキュベートした。
ブロッカー/アンタゴニストフォーマット - 細胞プレーティングおよびインキュベーション後、培地を除去し、1×HBSS/0.1%BAS中の25μLの1×化合物を加えた。化合物を、細胞と共に37℃で30分間インキュベートした。
色素ローディング-アッセイを、1×色素、および1×HBSS/20mM Hepesからなる1×色素ローディング緩衝液で実施した。化合物のインキュベーション後、25μLの1×色素をウェルに加えた。細胞を、37℃で30~60分間インキュベートした。
【0178】
シグナル検出 - 色素インキュベーション後、マイクロプレートを、蛍光シグナル検出のためにPerkinElmer Envision(商標)機器に移した。
データ分析 - 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。ブロッカーモードアッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1-(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(陽性対照の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
酵素アッセイ
酵素調製物-酵素調製物を、種々のベンダーから調達した - AChE(R&D Systems)、COX1およびCOX2(BPS Bioscience)、MAOA(Sigma)、PDE3AおよびPDE4D2(Signal Chem)。
【0179】
酵素活性アッセイ - 酵素アッセイでは、基質の消費または生成物の生成のいずれかを経時的に測定することによって酵素活性を決定する。各酵素アッセイにおいて異なる検出方法を使用して、基質および生成物の濃度を測定した。AChE:基質を加える前に、酵素および試験化合物を室温で15分間プレインキュベートした。アセチルチオコリンおよびDTNBを加え、室温で30分間インキュベートした。405nmでの吸光度を測定することによりシグナルを検出した。COX1およびCOX2:酵素ストックを、アッセイ緩衝液(40mM Tris-HCl、1×PBS、0.5mM フェノール、0.01% Tween20+100nM ヘマチン)で希釈し、室温で30分間化合物と平衡化させた(結合インキュベーション)。アラキドン酸(1.7μM)およびAmpliflu Red(2.5μM)を調製し、反応プレートに分注した。プレートを、590nmおよび励起波長544nmでの発光検出を用いた蛍光光度計で直ちに読み取った。MAOA:基質を加える前に、酵素および試験化合物を37℃で15分間プレインキュベートした。キヌラミンを加えることにより反応を開始させ、37℃で30分間インキュベートした。NaOHを加えることにより反応を停止させた。形成された4-ヒドロキシキノリン(4-hydroquioline)の量を、380nmおよび励起波長310nmでの発光検出を用いた分光蛍光測定法により測定した。PDE3AおよびPDE4D2:基質を加える前に、酵素および試験化合物を室温で15分間プレインキュベートした。cAMP基質(EC80に等しい濃度で)を加え、室温で30分間インキュベートした。9mM IBMXを加えることにより、酵素反応を停止させた。HitHunter(登録商標)cAMP検出キットを使用して、シグナルを検出した。
【0180】
シグナル検出 - 各アッセイについて、マイクロプレートを、PerkinElmer Envision(商標)機器に移し、記載されているように読み取った。
データ分析 - 化合物活性を、CBISデータ分析スイート(ChemInnovation、CA)を使用して分析した。酵素活性アッセイの場合、阻害百分率は、以下の式を使用して計算した:阻害%=100%×(1-(試験試料の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU)/(陽性対照の平均RLU-ビヒクル対照の平均RLU))。一次スクリーニングの場合、応答パーセントは0%または100%に制限され、計算による応答パーセントはそれぞれ負の値または100より大きい値を返した。
【0181】
オフターゲット選択性アッセイの結果
SRR G-1およびRSS G-1の両方について、10μMまでの濃度での用量反応フォーマットでの78のアッセイにおいて、潜在的なオフターゲットに対する選択性について試験した。SRR G-1のみについては、測定可能なIC50またはEC50は、カンナビノイド受容体1での2.5μM、HTR2Bでの8.2μM、OPRD1での0.87μM、およびOPRM1での6.68μMであった。RSS G-1のみについては、測定可能なIC50またはEC50は、カンナビノイド受容体1での3.1μM、ADRA2Aでの2.07μM、HTR1Aでの2.1μM、およびARでの4.76μMであった。