(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119900
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】優性遺伝性カテコラミン誘発多形性心室頻拍の治療のための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
A61K 48/00 20060101AFI20240827BHJP
A61P 9/06 20060101ALI20240827BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20240827BHJP
A61K 35/761 20150101ALI20240827BHJP
A61K 35/763 20150101ALI20240827BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20240827BHJP
A61K 9/10 20060101ALI20240827BHJP
A61K 38/16 20060101ALI20240827BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20240827BHJP
C12N 15/861 20060101ALN20240827BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20240827BHJP
C12N 15/869 20060101ALN20240827BHJP
C12N 15/863 20060101ALN20240827BHJP
C12N 15/866 20060101ALN20240827BHJP
C12N 7/01 20060101ALN20240827BHJP
C12Q 1/68 20180101ALN20240827BHJP
C12N 15/864 20060101ALN20240827BHJP
C07K 14/015 20060101ALN20240827BHJP
【FI】
A61K48/00 ZNA
A61P9/06
A61K35/76
A61K35/761
A61K35/763
A61K9/127
A61K9/10
A61K38/16
A61K48/00
C12N15/12
C12N15/861 Z
C12N15/867 Z
C12N15/869 Z
C12N15/863 Z
C12N15/866 Z
C12N7/01
C12Q1/68
C12N15/864 100Z
C07K14/015
【審査請求】有
【請求項の数】25
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024091467
(22)【出願日】2024-06-05
(62)【分割の表示】P 2020552905の分割
【原出願日】2019-04-05
(31)【優先権主張番号】102018000004253
(32)【優先日】2018-04-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(71)【出願人】
【識別番号】518289014
【氏名又は名称】イスティトゥティ クリニシ サイエンティフィシ マウジェリ エスピーエー エスビー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100196298
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 高雄
(72)【発明者】
【氏名】シルビア ジー プリオリ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア マッザンティ
(72)【発明者】
【氏名】マルコ デネグリ
(72)【発明者】
【氏名】カルロ ナポリターノ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)、特に常染色体優性様式で遺伝する疾患の形態を治療するための組成物および方法を提供する。
【解決手段】必要とするヒト患者における優性カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)を治療する方法であって、カルセクエストリン2(CASQ2)をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療上有効量を前記患者に投与するステップを含む方法である。本開示の組成物および方法は、例えば、リアノジン受容体2およびカルモジュリン1(CALM1)やCALM3などのカルモジュリンの突然変異によって引き起こされるCPVTを治療するために使用することができる。本開示は、とりわけ、アデノ随伴ウイルスベクターを含む、常染色体優性CPVTに罹患しているヒト患者などの患者へのCASQ2導入遺伝子の送達に利用可能な様々なベクターを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
必要とするヒト患者における優性カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)を治療
する方法であって、
カルセクエストリン2(CASQ2)をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療上有
効量を前記患者に投与するステップを含む方法。
【請求項2】
優性CPVTを有すると診断されたヒト患者における不整脈を低減する方法であって、
CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療上有効量を前記患者に投与する
ステップを含む方法。
【請求項3】
優性CPVTを有すると診断されたヒト患者におけるカルシウム恒常性を回復する方法
であって、
CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療上有効量を前記患者に投与する
ステップを含む方法。
【請求項4】
優性CPVTを有すると診断されたヒト患者における遅延後脱分極事象を低減する方法
であって、
CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療上有効量を前記患者に投与する
ステップを含む方法。
【請求項5】
必要とするヒト患者における優性カテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPVT)の治療
処置に用いられる、カルセクエストリン2(CASQ2)をコードする導入遺伝子を含む
組成物。
【請求項6】
優性CPVTを有すると診断されたヒト患者における不整脈の低減に用いられる、カル
セクエストリン2(CASQ2)をコードする導入遺伝子を含む組成物。
【請求項7】
優性CPVTを有すると診断されたヒト患者におけるカルシウム恒常性の回復に用いら
れる、カルセクエストリン2(CASQ2)をコードする導入遺伝子を含む組成物。
【請求項8】
優性CPVTを有すると診断されたヒト患者における遅延後脱分極事象の低減に用いら
れる、カルセクエストリン2(CASQ2)をコードする導入遺伝子を含む組成物。
【請求項9】
前記患者は、リアノジン受容体2(RYR2)をコードする内因性遺伝子において機能
獲得型突然変異を示す、請求項1~8のいずれかに記載の方法または用いられる組成物。
【請求項10】
前記RYR2の突然変異は、RYR2アゴニストと接触していない心筋細胞と比較して
、前記RYR2アゴニストと接触している心筋細胞における細胞質カルシウム放出の増加
をもたらす、請求項9に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項11】
前記RYR2の突然変異は、R4497C、N4104K、N4895D、R176Q
、G178A、R420W、L433P、P1067S、S2246L、G2273R、
F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2504M、K3717
R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、V4319-K432
4dup、R4651I、V4771I、F4851L、A4860G、I4867M、
P4902S、および/またはR4959Qである、請求項9または10に記載の方法ま
たは用いられる組成物。
【請求項12】
前記患者は、カルモジュリンをコードする内因性遺伝子において突然変異を示す、請求
項1~8のいずれかに記載の方法または用いられる組成物。
【請求項13】
前記カルモジュリンは、CALM1である、請求項12に記載の方法または用いられる
組成物。
【請求項14】
前記突然変異は、心筋細胞の筋小胞体からのカルシウム放出のCALM1阻害を低減す
る、請求項13に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項15】
前記突然変異を宿すCALM1は、心筋細胞の筋小胞体からのカルシウム放出を直接活
性化する、請求項13に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項16】
前記突然変異は、約50nMから約5μMのCa2+濃度を有する水溶液中に存在する
CALM1-RYR2複合体におけるRYR2のオープン構造の安定性を高める、請求項
13に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項17】
前記CALM1の突然変異は、N97SまたはN53Iである、請求項13~16のい
ずれかに記載の方法または用いられる組成物。
【請求項18】
前記カルモジュリンは、CALM3である、請求項12に記載の方法または用いられる
組成物。
【請求項19】
前記突然変異を宿すCALM3は、心筋細胞の筋小胞体からのカルシウム放出を直接活
性化する、請求項18に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項20】
前記CALM3突然変異は、A103Vである、請求項18または19に記載の方法ま
たは用いられる組成物。
【請求項21】
前記突然変異は、ヘテロ接合性である、請求項1~20のいずれかに記載の方法または
用いられる組成物。
【請求項22】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%同一であ
るアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする、請求項1~21のいずれかに記載の方
法または用いられる組成物。
【請求項23】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも90%同一であ
るアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする、請求項22に記載の方法または用いら
れる組成物。
【請求項24】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも95%同一であ
るアミノ酸配列を有するタンパク質をコードする、請求項23に記載の方法または用いら
れる組成物。
【請求項25】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列を有するタンパク質をコード
する、請求項24に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項26】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号2の核酸配列と少なくとも85%同一である核
酸配列を有する、請求項1~25のいずれかに記載の方法または用いられる組成物。
【請求項27】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号2の核酸配列と少なくとも90%同一である核
酸配列を有する、請求項26に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項28】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号2の核酸配列と少なくとも95%同一である核
酸配列を有する、請求項27に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項29】
前記CASQ2導入遺伝子は、配列番号2の核酸配列を有する、請求項28に記載の方
法または用いられる組成物。
【請求項30】
前記組成物は、ベクターである、請求項1~29のいずれかに記載の方法または用いら
れる組成物。
【請求項31】
前記ベクターは、ウイルスベクターである、請求項30に記載の方法または用いられる
組成物。
【請求項32】
前記ウイルスベクターは、アデノ関連ウイルス(AAV)、アデノウイルス、レンチウ
イルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス
、ワクシニアウイルス、および合成ウイルスから成る群から選択される、請求項31に記
載の方法または用いられる組成物。
【請求項33】
前記合成ウイルスは、キメラウイルス、モザイクウイルス、または偽型化ウイルスであ
る、および/または、外来タンパク質、合成ポリマー、ナノ粒子、または小分子を含む、
請求項32に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項34】
前記ウイルスベクターは、AAVである、請求項32に記載の方法または用いられる組
成物。
【請求項35】
前記AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AA
V7、AAV8、AAV9、またはAAVrh74血清型である、請求項34に記載の方
法または用いられる組成物。
【請求項36】
前記ウイルスベクターは、偽型化AAVである、請求項31に記載の方法または用いら
れる組成物。
【請求項37】
前記偽型化AAVは、AAV2/8である、請求項36に記載の方法または用いられる
組成物。
【請求項38】
前記偽型化AAVは、AAV2/9である、請求項36に記載の方法または用いられる
組成物。
【請求項39】
前記AAVは、組み換えキャプシドタンパク質を含む、請求項34に記載の方法または
用いられる組成物。
【請求項40】
前記組成物は、リポソーム、小胞、合成小胞、エキソソーム、合成エキソソーム、デン
ドリマー、またはナノ粒子である、請求項1~29のいずれかに記載の方法または用いら
れる組成物。
【請求項41】
前記導入遺伝子は、心筋細胞において前記CASQ2の発現を誘導するプロモーターに
作動可能に連結される、請求項1~40のいずれかに記載の方法または用いられる組成物
。
【請求項42】
前記プロモーターは、デスミンプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、ミ
オシン軽鎖2プロモーター、アルファアクチンプロモーター、トロポニン1プロモーター
、Na+/Ca2+交換体プロモーター、ジストロフィンプロモーター、クレアチンキナ
ーゼプロモーター、アルファ7インテグリンプロモーター、脳性ナトリウム利尿ペプチド
プロモーター、アルファBクリスタリン/小熱ショックタンパク質プロモーター、アルフ
ァミオシン重鎖プロモーター、または心房性ナトリウム利尿因子プロモーターである、請
求項41に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項43】
前記プロモーターは、デスミンプロモーターである、請求項42に記載の方法または用
いられる組成物。
【請求項44】
前記組成物を前記患者に投与すると、前記患者の心臓細胞においてCASQ2の発現が
増加する、請求項1~43のいずれかに記載の方法または用いられる組成物。
【請求項45】
前記心臓細胞は、心筋細胞である、請求項44に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項46】
前記CASQ2の発現は、前記細胞におけるCASQ2タンパク質を測定することによ
って評価される、請求項44または45に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項47】
前記CASQ2の発現は、前記細胞におけるCASQ2mRNAを測定することによっ
て評価される、請求項44または45に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項48】
前記CASQ2mRNAの発現は、前記細胞において約1.5倍~約3.5倍増加する
、請求項47に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項49】
前記CASQ2mRNAの発現は、前記細胞において約2倍~約3倍増加する、請求項
48に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項50】
前記CASQ2mRNAの発現は、前記細胞において約2.5倍~約3倍増加する、請
求項49に記載の方法または用いられる組成物。
【請求項51】
前記組成物を前記患者に投与すると、RYR2、トリアジン、および/またはジャンク
チンの発現は、前記患者の心臓細胞において実質的に変化しない、請求項1~50のいず
れかに記載の方法または用いられる組成物。
【請求項52】
前記組成物は、静脈内、髄腔内、皮内、経皮、非経口、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮的
、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、および/または経口投与によっ
て前記患者に投与される、請求項1~51のいずれかに記載の方法または用いられる組成
物。
【請求項53】
キットであって、
CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物と、
添付文書と、
を含み、
前記添付文書は、請求項1~52のいずれかに記載の方法に従って、優性CPVTを患
っている患者に前記組成物を投与するようにキットのユーザーに指示する、キット。
【請求項54】
前記組成物は、ベクターである、請求項53に記載のキット。
【請求項55】
前記ベクターは、ウイルスベクターである、請求項54に記載のキット。
【請求項56】
前記ウイルスベクターは、AAV、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス
、ポックスウイルス、バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、およびワクシニアウイ
ルスから成る群から選択される、請求項55に記載のキット。
【請求項57】
前記ウイルスベクターは、AAVである、請求項56に記載のキット。
【請求項58】
前記AAVは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AA
V7、AAV8、AAV9、またはAAVrh74血清型である、請求項57に記載のキ
ット。
【請求項59】
前記ウイルスベクターは、偽型化AAVである、請求項55に記載のキット。
【請求項60】
前記偽型化AAVは、AAV2/8である、請求項59に記載のキット。
【請求項61】
前記偽型化AAVは、AAV2/9である、請求項59に記載のキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、核酸バイオテクノロジーの分野に関し、遺伝的な遺伝性障害を治療するため
の組成物および方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
カテコラミン誘発多形性心室頻拍(Catecholaminergic polym
orphic ventricular tachycardia:CPVT)は、心臓
細胞におけるカルシウムシグナリングの調節不全を特徴とする。優性CPVTの患者は、
特に心臓拡張期において、心筋細胞の筋小胞体からのカルシウムの過剰または調節不全の
放出を示すことが多い。このカルシウムの放出は、期外収縮性心拍を生じさせ得る活動電
位で終了する一連のシグナリング事象を引き起こす。これは、不整脈につながる可能性が
ある。不整脈は、治療せずに放置すると、致命的になり得る。CPVTの症状をうまく改
善するために利用可能な戦略は不足しており、この疾患を治癒する治療法が必要である。
【発明の概要】
【0003】
本明細書に記載されるのは、ヒト患者などの患者における優性遺伝性カテコラミン誘発
多形性心室頻拍(CPVT)の治療のための組成物および方法である。本開示の組成物お
よび方法は、優性CPVTを患っている患者への機能的カルセクエストリン2(CASQ
2)タンパク質をコードする遺伝子の送達に関する。例えば、本明細書に記載の組成物お
よび方法を用いて、機能的CASQ2タンパク質をコードする導入遺伝子を、ウイルス遺
伝子治療によって患者に送達してもよい。導入遺伝子は、心臓細胞(例えば、心筋細胞)
などの患者の細胞におけるCASQ2の発現を促進するようなやり方で送達されてもよい
。本開示は、CASQ2をコードする遺伝子の送達によって、機能的CASQ2タンパク
質を既に発現しておりむしろ別のカルシウム調節タンパク質における1つ以上の有害な突
然変異に苦しんでいる患者のCPVTを改善できるという発見に部分的に基づく。例えば
、患者は、リアノジン受容体2(RYR2)をコードする遺伝子の機能獲得型突然変異お
よび/またはカルモジュリン1(CALM1)やカルモジュリン3(CALM3)などの
カルモジュリンをコードする遺伝子の突然変異など、優性CPVTを引き起こす様々な突
然変異のうちの1つ以上を示し得る。本明細書に記載の組成物および方法を用いて、種々
のカルシウム調節タンパク質に突然変異が存在するにもかかわらず、変異内因性遺伝子の
機能的バージョンを提供する必要なしに、優性CPVTを有する患者において心臓カルシ
ウム調節を回復し得る。
【0004】
第1の態様において、本発明は、CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治
療上有効量を患者(例えば、それを必要とするヒト患者などの哺乳動物)に投与すること
によって、患者における優性CPVTを治療または予防する方法を特徴とする。
【0005】
別の態様において、本開示は、CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療
上有効量を優性CPVTを有すると診断された患者(例えば、ヒト患者などの哺乳動物)
に投与することによって、患者における不整脈を低減する方法を特徴とする。例えば、本
開示は、CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療上有効量を優性CPVT
を有すると診断された患者(例えば、ヒト患者などの哺乳動物)に投与することによって
、患者における不整脈事象の量を低減する方法を特徴とする。本開示はさらに、CASQ
2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療上有効量を優性CPVTを有すると診断さ
れた患者(例えば、ヒト患者などの哺乳動物)に投与することによって、患者における不
整脈事象の頻度を低減する方法を特徴とする。
【0006】
別の態様において、本開示は、CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の治療
上有効量を優性CPVTを有すると診断された患者(例えば、ヒト患者などの哺乳動物)
に投与することによって、患者の心臓におけるカルシウム恒常性を回復する方法を特徴と
する。
【0007】
さらなる態様において、本開示は、CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の
治療上有効量を優性CPVTを有すると診断された患者(例えば、ヒト患者などの哺乳動
物)に投与することによって、患者の心筋細胞などにおける自発的なカルシウム放出を低
減する方法を特徴とする。
【0008】
さらなる態様において、本開示は、CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物の
治療上有効量を優性CPVTを有すると診断された患者(例えば、ヒト患者などの哺乳動
物)に投与することによって、患者における遅延後脱分極を低減する方法を特徴とする。
【0009】
本開示の上記の態様のいずれかに係るいくつかの実施形態において、患者は、RYR2
をコードする内因性遺伝子において機能獲得型突然変異を示す。例えば、RYR2の突然
変異は、RYR2アゴニストと接触していない心筋細胞と比較して、RYR2アゴニスト
と接触している心筋細胞における細胞質カルシウム放出の増加をもたらし得る。特に、R
YR2の突然変異は、R4497C、N4104K、N4895D、R176Q、G17
8A、R420W、L433P、P1067S、S2246L、G2273R、F230
7L、E2311D、L2344P、R2474S、T2504M、K3717R、L3
778F、G3926D、G3946S、Q4159P、V4319-K4324dup
、R4651I、V4771I、F4851L、A4860G、I4867M、P490
2S、および/またはR4959Qであってもよい。
【0010】
例えば、患者は、上記のRYR2の突然変異のうちの2つ以上の組み合わせを有し得る
。いくつかの実施形態において、患者は、R4497C突然変異と、N4104K、N4
895D、R176Q、G178A、R420W、L433P、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、またはR4959Q突然変異とを有する。
【0011】
いくつかの実施形態において、患者は、N4104K突然変異と、R4497C、N4
895D、R176Q、G178A、R420W、L433P、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0012】
いくつかの実施形態において、患者は、N4895D突然変異と、R4497C、N4
104K、R176Q、G178A、R420W、L433P、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0013】
いくつかの実施形態において、患者は、R176Q突然変異と、R4497C、N41
04K、N4895D、G178A、R420W、L433P、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0014】
いくつかの実施形態において、患者は、G178A突然変異と、R4497C、N41
04K、N4895D、R176Q、R420W、L433P、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0015】
いくつかの実施形態において、患者は、R420W突然変異と、R4497C、N41
04K、N4895D、R176Q、G178A、L433P、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0016】
いくつかの実施形態において、患者は、G178A突然変異と、R4497C、N41
04K、N4895D、R176Q、R420W、L433P、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0017】
いくつかの実施形態において、患者は、L433P突然変異と、R4497C、N41
04K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、P1067S、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0018】
いくつかの実施形態において、患者は、P1067S突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、S224
6L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0019】
いくつかの実施形態において、患者は、S2246L突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0020】
いくつかの実施形態において、患者は、G2273R突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0021】
いくつかの実施形態において、患者は、F2307L突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、E2311D、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0022】
いくつかの実施形態において、患者は、E2311D突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、L2344P、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0023】
いくつかの実施形態において、患者は、L2344P突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、R2474S、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0024】
いくつかの実施形態において、患者は、R2474S突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、T2
504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0025】
いくつかの実施形態において、患者は、T2504M突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0026】
いくつかの実施形態において、患者は、K3717R突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、L3778F、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0027】
いくつかの実施形態において、患者は、L3778F突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、G3926D、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0028】
いくつかの実施形態において、患者は、G3926D突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3946S、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0029】
いくつかの実施形態において、患者は、G3946S突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、Q4159P、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0030】
いくつかの実施形態において、患者は、Q4159P突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0031】
いくつかの実施形態において、患者は、V4319-K4324dup突然変異と、R
4497C、N4104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L4
33P、P1067S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L
2344P、R2474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D
、G3946S、Q4159P、R4651I、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0032】
いくつかの実施形態において、患者は、R4651I突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、V4771I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0033】
いくつかの実施形態において、患者は、V4771I突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、F4851L、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0034】
いくつかの実施形態において、患者は、F4851L突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、A486
0G、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0035】
いくつかの実施形態において、患者は、A4860G突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F485
1L、I4867M、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0036】
いくつかの実施形態において、患者は、I4867M突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F485
1L、A4860G、P4902S、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0037】
いくつかの実施形態において、患者は、P4902S突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F485
1L、A4860G、I4867M、およびR4959Q突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0038】
いくつかの実施形態において、患者は、R4959Q突然変異と、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、R420W、G178A、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F485
1L、A4860G、I4867M、およびP4902S突然変異のうちの1つ以上とを
有する。
【0039】
いくつかの実施形態において、患者は、カルモジュリンをコードする内因性遺伝子にお
いて突然変異を示す。例えば、患者は、心筋細胞の筋小胞体からのカルシウム放出のCA
LM1阻害を低減する突然変異などのCALM1の突然変異を示し得る。いくつかの実施
形態において、突然変異を宿すCALM1は、心筋細胞の筋小胞体からのカルシウム放出
を直接活性化する。例えば、突然変異は、約50nMから約5μMのCa2+濃度(例え
ば、約50nM、100nM、150nM、200nM、250nM、300nM、35
0nM、400nM、450nM、500nM、550nM、600nM、650nM、
700nM、750nM、800nM、850nM、900nM、950nM、1μM、
2μM、3μM、4μM、または5μMのCa2+濃度)を有する水溶液中に存在するC
ALM1-RYR2複合体におけるRYR2のオープン構造の安定性を高め得る。いくつ
かの実施形態において、CALM1の突然変異は、N97SまたはN53Iである。
【0040】
いくつかの実施形態において、患者は、心筋細胞の筋小胞体からのカルシウム放出の直
接活性化をもたらす突然変異などのCALM3の突然変異を示す。いくつかの実施形態に
おいて、CALM3の突然変異はA103Vである。
【0041】
いくつかの実施形態において、RYR2またはカルモジュリン(例えば、CALM1お
よび/またはCALM3)の突然変異は、ヘテロ接合性である。
【0042】
いくつかの実施形態(例えば、ヒト患者を治療する実施形態)において、CASQ2導
入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、配列番
号1のアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92
%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または1
00%同一である)アミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。CASQ2導入遺伝
子は、配列番号1のアミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するタンパ
ク質をコードし得る。例えば、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対
して最大50個の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36
、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、
または50個の保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードし得る。いくつかの実
施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対して最大25
個の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、
12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、ま
たは25個の保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形
態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対して最大10個の
保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保
存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、C
ASQ2導入遺伝子は、保存的アミノ酸置換によってのみ配列番号1のアミノ酸配列と異
なるアミノ酸配列を有するものをコードする。
【0043】
いくつかの実施形態(例えば、ヒト患者を治療する実施形態)において、CASQ2導
入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対して1つ以上の非保存的アミノ酸置換を有す
るタンパク質をコードする。例えば、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配
列に対して最大50個の非保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、
8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、
22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、3
5、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48
、49、または50個の非保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードし得る。い
くつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対し
て最大25個の非保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、
10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、2
3、24、または25個の保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードする。いく
つかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対して
最大10個の非保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、ま
たは10個の保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードする。
【0044】
いくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列と
少なくとも85%同一である(例えば、配列番号3のアミノ酸配列と85%、86%、8
7%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、9
7%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)アミノ酸配列を有する
タンパク質をコードする。CASQ2導入遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列に対して
1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するタンパク質をコードし得る。例えば、CASQ2
導入遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列に対して最大50個の保存的アミノ酸置換(例
えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、1
6、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29
、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、
43、44、45、46、47、48、49、または50個の保存的アミノ酸置換)を有
するタンパク質をコードし得る。いくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は
、配列番号3のアミノ酸配列に対して最大25個の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2
、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、1
8、19、20、21、22、23、24、または25個の保存的アミノ酸置換)を有す
るタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配
列番号3のアミノ酸配列に対して最大10個の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3
、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質を
コードする。いくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、保存的アミノ酸置
換によってのみ配列番号3のアミノ酸配列と異なるアミノ酸配列を有するものをコードす
る。
【0045】
いくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列に
対して1つ以上の非保存的アミノ酸置換を有するタンパク質をコードする。例えば、CA
SQ2導入遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列に対して最大50個の非保存的アミノ酸
置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、
15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、2
8、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41
、42、43、44、45、46、47、48、49、または50個の非保存的アミノ酸
置換)を有するタンパク質をコードし得る。いくつかの実施形態において、CASQ2導
入遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列に対して最大25個の非保存的アミノ酸置換(例
えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、1
6、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個の保存的アミノ酸
置換)を有するタンパク質をコードする。いくつかの実施形態において、CASQ2導入
遺伝子は、配列番号3のアミノ酸配列に対して最大10個の非保存的アミノ酸置換(例え
ば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、または10個の保存的アミノ酸置換)を有す
るタンパク質をコードする。
【0046】
いくつかの実施形態(例えば、ヒト患者を治療する実施形態)において、CASQ2導
入遺伝子は、配列番号2の核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、配列番号2
の核酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93
%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同
一である)核酸配列を有する。
【0047】
いくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号4の核酸配列と少な
くとも85%同一である(例えば、配列番号4の核酸配列と85%、86%、87%、8
8%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、9
8%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する。
【0048】
いくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子を含む組成物は、ウイルスベクタ
ーなどのベクターである。ウイルスベクターは、例えば、アデノ関連ウイルス(AAV)
、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、バキュロウイ
ルス、単純ヘルペスウイルス、ワクシニアウイルス、または合成ウイルス(例えば、キメ
ラウイルス、モザイクウイルス、または偽型化ウイルス、および/または、外来タンパク
質、合成ポリマー、ナノ粒子、および/または小分子を含むウイルス)であってもよい。
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、A
AV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAVrh74血
清型ベクターなどのAAVベクターである。AAVベクターは偽型化されてもよい。いく
つかの実施形態において、偽型化AAVベクターは、AAV2/8またはAV2/9であ
る。
【0049】
いくつかの実施形態において、組成物は、ベクター(例えば、AAV1、AAV2、A
AV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh7
4、AAV2/8、またはAV2/9ベクターに例示される上記のAAVベクターなどの
ウイルスベクター)であり、ベクターは、約1x106ゲノムコピー(GC)/kg~約
1x1018GC/kgの用量(例えば、約1x106GC/kg、2x106GC/k
g、3x106GC/kg、4x106GC/kg、5x106GC/kg、6x106
GC/kg、7x106GC/kg、8x106GC/kg、9x106GC/kg、1
x107GC/kg、2x107GC/kg、3x107GC/kg、4x107GC/
kg、5x107GC/kg、6x107GC/kg、7x107GC/kg、8x10
7GC/kg、9x107GC/kg、1x108GC/kg、2x108GC/kg、
3x108GC/kg、4x108GC/kg、5x108GC/kg、6x108GC
/kg、7x108GC/kg、8x108GC/kg、9x108GC/kg、1x1
09GC/kg、2x109GC/kg、3x109GC/kg、4x109GC/kg
、5x109GC/kg、6x109GC/kg、7x109GC/kg、8x109G
C/kg、9x109GC/kg、1x1010GC/kg、2x1010GC/kg、
3x1010GC/kg、4x1010GC/kg、5x1010GC/kg、6x10
10GC/kg、7x1010GC/kg、8x1010GC/kg、9x1010GC
/kg、1x1011GC/kg、2x1011GC/kg、3x1011GC/kg、
4x1011GC/kg、5x1011GC/kg、6x1011GC/kg、7x10
11GC/kg、8x1011GC/kg、9x1011GC/kg、1x1012GC
/kg、2x1012GC/kg、3x1012GC/kg、4x1012GC/kg、
5x1012GC/kg、6x1012GC/kg、7x1012GC/kg、8x10
12GC/kg、9x1012GC/kg、1x1013GC/kg、2x1013GC
/kg、3x1013GC/kg、4x1013GC/kg、5x1013GC/kg、
6x1013GC/kg、7x1013GC/kg、8x1013GC/kg、9x10
13GC/kg、1x1014GC/kg、2x1014GC/kg、3x1014GC
/kg、4x1014GC/kg、5x1014GC/kg、6x1014GC/kg、
7x1014GC/kg、8x1014GC/kg、9x1014GC/kg、1x10
15GC/kg、2x1015GC/kg、3x1015GC/kg、4x1015GC
/kg、5x1015GC/kg、6x1015GC/kg、7x1015GC/kg、
8x1015GC/kg、9x1015GC/kg、1x1016GC/kg、2x10
16GC/kg、3x1016GC/kg、4x1016GC/kg、5x1016GC
/kg、6x1016GC/kg、7x1016GC/kg、8x1016GC/kg、
9x1016GC/kg、1x1017GC/kg、2x1017GC/kg、3x10
17GC/kg、4x1017GC/kg、5x1017GC/kg、6x1017GC
/kg、7x1017GC/kg、8x1017GC/kg、9x1017GC/kg、
または1x1018GC/kgの用量)で患者に投与される。いくつかの実施形態におい
て、ベクターは、約1x108GC/kg~約1x1016GC/kgの用量(例えば、
約1x108GC/kg、2x108GC/kg、3x108GC/kg、4x108G
C/kg、5x108GC/kg、6x108GC/kg、7x108GC/kg、8x
108GC/kg、9x108GC/kg、1x109GC/kg、2x109GC/k
g、3x109GC/kg、4x109GC/kg、5x109GC/kg、6x109
GC/kg、7x109GC/kg、8x109GC/kg、9x109GC/kg、1
x1010GC/kg、2x1010GC/kg、3x1010GC/kg、4x101
0GC/kg、5x1010GC/kg、6x1010GC/kg、7x1010GC/
kg、8x1010GC/kg、9x1010GC/kg、1x1011GC/kg、2
x1011GC/kg、3x1011GC/kg、4x1011GC/kg、5x101
1GC/kg、6x1011GC/kg、7x1011GC/kg、8x1011GC/
kg、9x1011GC/kg、1x1012GC/kg、2x1012GC/kg、3
x1012GC/kg、4x1012GC/kg、5x1012GC/kg、6x101
2GC/kg、7x1012GC/kg、8x1012GC/kg、9x1012GC/
kg、1x1013GC/kg、2x1013GC/kg、3x1013GC/kg、4
x1013GC/kg、5x1013GC/kg、6x1013GC/kg、7x101
3GC/kg、8x1013GC/kg、9x1013GC/kg、1x1014GC/
kg、2x1014GC/kg、3x1014GC/kg、4x1014GC/kg、5
x1014GC/kg、6x1014GC/kg、7x1014GC/kg、8x101
4GC/kg、9x1014GC/kg、1x1015GC/kg、2x1015GC/
kg、3x1015GC/kg、4x1015GC/kg、5x1015GC/kg、6
x1015GC/kg、7x1015GC/kg、8x1015GC/kg、9x101
5GC/kg、または1x1016GC/kgの用量)で患者に投与される。いくつかの
実施形態において、ベクターは、約1x1010GC/kg~約1x1014GC/kg
の用量(例えば、約1x1010GC/kg、2x1010GC/kg、3x1010G
C/kg、4x1010GC/kg、5x1010GC/kg、6x1010GC/kg
、7x1010GC/kg、8x1010GC/kg、9x1010GC/kg、1x1
011GC/kg、2x1011GC/kg、3x1011GC/kg、4x1011G
C/kg、5x1011GC/kg、6x1011GC/kg、7x1011GC/kg
、8x1011GC/kg、9x1011GC/kg、1x1012GC/kg、2x1
012GC/kg、3x1012GC/kg、4x1012GC/kg、5x1012G
C/kg、6x1012GC/kg、7x1012GC/kg、8x1012GC/kg
、9x1012GC/kg、1x1013GC/kg、2x1013GC/kg、3x1
013GC/kg、4x1013GC/kg、5x1013GC/kg、6x1013G
C/kg、7x1013GC/kg、8x1013GC/kg、9x1013GC/kg
、または1x1014GC/kgの用量)で患者に投与される。
【0050】
いくつかの実施形態において、組成物は、リポソーム、小胞、合成小胞、エキソソーム
、合成エキソソーム、デンドリマー、またはナノ粒子である。
【0051】
いくつかの実施形態において、CASQ2をコードする導入遺伝子は、心筋細胞におい
てCASQ2の発現を誘導するプロモーターに作動可能に連結される。例えば、プロモー
ターは、デスミンプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、ミオシン軽鎖2プ
ロモーター、アルファアクチンプロモーター、トロポニン1プロモーター、Na+/Ca
2+交換体プロモーター、ジストロフィンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモータ
ー、アルファ7インテグリンプロモーター、脳性ナトリウム利尿ペプチドプロモーター、
アルファBクリスタリン/小熱ショックタンパク質プロモーター、アルファミオシン重鎖
プロモーター、または心房性ナトリウム利尿因子プロモーターであってもよい。いくつか
の実施形態において、プロモーターは、デスミンプロモーターである。
【0052】
いくつかの実施形態において、デスミンプロモーターは、内因性ヒトデスミン転写開始
部位に関してヌクレオチド-984から+76の核酸配列を有する領域、または、この核
酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86 %、87%、88%、8
9%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、9
9%、または100%同一である)領域を含む。いくつかの実施形態において、デスミン
プロモーターは、内因性ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-973から-
693の核酸配列を有する領域、または、この核酸配列と少なくとも85%同一である(
例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、
94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である)領域を
含む。いくつかの実施形態において、デスミンプロモーターは、内因性ヒトデスミン転写
開始部位に関してヌクレオチド-984から-644の核酸配列を有する領域、または、
この核酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%
、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%
、99%、または100%同一である)領域を含む。いくつかの実施形態において、デス
ミンプロモーターは、内因性ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-269か
ら+76の核酸配列を有する領域、または、この核酸配列と少なくとも85%同一である
(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%
、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である)領域
を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、デスミンプロモーターは、(i)内因性ヒトデスミン転
写開始部位に関してヌクレオチド-973から-693の核酸配列、または、(ii)内
因性ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-973から-693の核酸配列に
少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、9
0%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、ま
たは100%の配列同一性)、を有する第1の領域を含む。デスミンプロモーターはさら
に、(i)内因性ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-269から+76の
核酸配列、または、(ii)内因性ヒトデスミン転写開始部位に関するヌクレオチド-2
69から+76の核酸配列に少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、
87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、
97%、98%、99%、または100%の配列同一性)、を有する第2の領域を含んで
もよい。いくつかの実施形態では、第1の領域は、第2の領域に作動可能に連結される。
例えば、第1の領域は、介在するヌクレオチドの有無にかかわらず、第2の領域に直接連
結されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の領域は、第2の領域の5’に位置
する(すなわち、第1の領域の3’末端が第2の領域の5’末端に連結される)。いくつ
かの実施形態において、第1の領域は、第2の領域の3’に位置する(すなわち、第1の
領域の5’末端が第2の領域の3’末端に連結される)。
【0054】
いくつかの実施形態において、デスミンプロモーターは、(i)内因性ヒトデスミン転
写開始部位に関してヌクレオチド-984から-644の核酸配列、または、(ii)内
因性ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-984から-644の核酸配列に
少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、9
0%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、ま
たは100%の配列同一性)、を有する第1の領域を含む。デスミンプロモーターはさら
に、(i)内因性ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-269から+76の
核酸配列、または、(ii)内因性ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-2
69から+76の核酸配列に少なくとも85%の配列同一性(例えば、85%、86%、
87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、
97%、98%、99%、または100%の配列同一性)、を有する第2の領域を含んで
もよい。いくつかの実施形態において、第1の領域は、第2の領域に作動可能に連結され
る。例えば、第1の領域は、介在するヌクレオチドの有無にかかわらず、第2の領域に直
接連結されてもよい。いくつかの実施形態において、第1の領域は、第2の領域の5’に
位置する(すなわち、第1の領域の3’末端が第2の領域の5’末端に連結される)。い
くつかの実施形態において、第1の領域は、第2の領域の3’に位置する(すなわち、第
1の領域の5’末端が第2の領域の3’末端に連結される)。
【0055】
本開示の組成物および方法と併せて使用され得る例示的なデスミンプロモーターは、G
ao et al., Journal of Biological Chemist
ry 273:6402-6409(1998)に記載されており、その開示は参照によ
りその全体が本明細書に組み込まれる。
【0056】
いくつかの実施形態において、組成物を患者に投与すると、患者の心臓細胞(例えば、
心筋細胞)においてCASQ2の発現が増加する。例えば、CASQ2の発現は、当該技
術分野において既知であり本明細書に記載される遺伝子発現アッセイを使用してCASQ
2タンパク質またはCASQ2mRNAを測定することによって評価することができる。
組成物を患者に投与すると、心臓細胞におけるCASQ2発現は、例えば、約1.1倍~
約10倍、またはそれ以上(例えば、約1.1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.
5倍、1.6倍、1.7倍、1.8倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍
、2.4倍、2.5倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3
.2倍、3.3倍、3.4倍、3.5倍、3.6倍、3.7倍、3.8倍、3.9倍、4
倍、4.1倍、4.2倍、4.3倍、4.4倍、4.5倍、4.6倍、4.7倍、4.8
倍、4.9倍、5倍、5.1倍、5.2倍、5.3倍、5.4倍、5.5倍、5.6倍、
5.7倍、5.8倍、5.9倍、6倍、6.1倍、6.2倍、6.3倍、6.4倍、6.
5倍、6.6倍、6.7倍、6.8倍、6.9倍、7倍、7.1倍、7.2倍、7.3倍
、7.4倍、7.5倍、7.6倍、7.7倍、7.8倍、7.9倍、8倍、8.1倍、8
.2倍、8.3倍、8.4倍、8.5倍、8.6倍、8.7倍、8.8倍、8.9倍、9
倍、9.1倍、9.2倍、9.3倍、9.4倍、9.5倍、9.6倍、9.7倍、9.8
倍、9.8倍、10倍、またはそれ以上)増加し得る。例えば、CASQ2発現は、心臓
細胞において約1.5倍~約3.5倍(例えば、約.5倍、1.6倍、1.7倍、1.8
倍、1.9倍、2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5倍、2.6倍、
2.7倍、2.8倍、2.9倍、3倍、3.1倍、3.2倍、3.3倍、3.4倍、また
は3.5倍)増加し得る。いくつかの実施形態において、CASQ2発現は、細胞におい
て約2倍~約3倍(例えば、約2倍、2.1倍、2.2倍、2.3倍、2.4倍、2.5
倍、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、または3倍)増加する。いくつかの実施
形態において、CASQ2発現は、細胞において約2.5倍~約3倍(例えば、2.5倍
、2.6倍、2.7倍、2.8倍、2.9倍、または3倍)増加する。
【0057】
いくつかの実施形態において、組成物を患者に投与すると、RYR2、トリアジン、お
よび/またはジャンクチンの発現は、例えばタンパク質および/またはmRNA発現を評
価することによって判断されるように、患者の心臓細胞(例えば、心筋細胞)において実
質的に変化しない。例えば、組成物を患者に投与すると、RYR2、トリアジン、および
/またはジャンクチンの発現は、10%未満(例えば、9.9%、9.8%、9.7%、
9.6%、9.5%、9.4%、9.3%、9.2%、9.1%、9%、8.9%、8.
8%、8.7%、8.6%、8.5%、8.4%、8.3%、8.2%、8.1%、8%
、7.9%、7.8%、7.7%、7.6%、7.5%、7.4%、7.3%、7.2%
、7.1%、7%、6.9%、6.8%、6.7%、6.6%、6.5%、6.4%、6
.3%、6.2%、6.1%、6%、5.9%、5.8%、5.7%、5.6%、5.5
%、5.4%、5.3%、5.2%、5.1%、5%、4.9%、4.8%、4.7%、
4.6%、4.5%、4.4%、4.3%、4.2%、4.1%、4%、3.9%、3.
8%、3.7%、3.6%、3.5%、3.4%、3.3%、3.2%、3.1%、3%
、2.9%、2.8%、2.7%、2.6%、2.5%、2.4%、2.3%、2.2%
、2.1%、2%、1.9%、1.8%、1.7%、1.6%、1.5%、1.4%、1
.3%、1.2%、1.1%、1%、0.9%、0.8%、0.7%、0.6%、0.5
%、0.4%、0.3%、0.2%、0.1%、0.01%、0.001%、またはそれ
以下)増加および/または減少する。
【0058】
いくつかの実施形態において、組成物は、静脈内、髄腔内、筋肉内、皮内、経皮(tr
ansdermal)、非経口、鼻腔内、皮下、経皮的(percutaneous)、
気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、および/または経口投与によって
患者に投与される。
【0059】
別の態様において、本発明は、CASQ2をコードする導入遺伝子を含む組成物を含む
キットを特徴とする。キットはさらに、本発明の上記態様のうちのいずれかおよび/また
は上記実施形態のうちのいずれかの方法に従って、患者(例えば、ヒト患者)の優性CP
VTまたはその症状を治療するために患者に組成物を投与するようにキットのユーザーに
指示する添付文書を含んでもよい。
【0060】
前述の態様のいくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のア
ミノ酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、配列番号1のアミノ酸配列と85%
、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%
、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)アミノ酸
配列を有するタンパク質をコードする。
【0061】
前述の態様のいくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子は、配列番号2の核
酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、配列番号2の核酸配列と85%、86%
、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%
、97%、98%、99%、99.9%、または100%同一である)核酸配列を有する
ものをコードする。
【0062】
前述の態様のいくつかの実施形態において、CASQ2導入遺伝子を含む組成物は、ウ
イルスベクターなどのベクターである。ウイルスベクターは、例えば、アデノ随伴ウイル
ス(AAV)、アデノウイルス、レンチウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス、
バキュロウイルス、単純ヘルペスウイルス、またはワクシニアウイルスであってもよい。
いくつかの実施形態において、ウイルスベクターは、AAV1、AAV2、AAV3、A
AV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、またはAAVrh74血
清型ベクターなどのAAVベクターである。AAVベクターは偽型化されてもよい。いく
つかの実施形態において、偽型化AAVベクターは、AAV2/8またはAV2/9であ
る。
【0063】
前述の態様のいくつかの実施形態において、組成物は、リポソーム、小胞、合成小胞、
エキソソーム、合成エキソソーム、デンドリマー、またはナノ粒子である。
【0064】
前述の態様のいくつかの実施形態において、CASQ2をコードする導入遺伝子は、心
筋細胞においてCASQ2の発現を誘導するプロモーターに作動可能に連結される。例え
ば、プロモーターは、デスミンプロモーター、ミオシン軽鎖2プロモーター、アルファア
クチンプロモーター、トロポニン1プロモーター、、Na+/Ca2+交換体プロモータ
ー、ジストロフィンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、アルファ7インテ
グリンプロモーター、脳性ナトリウム利尿ペプチドプロモーター、アルファB-クリスタ
リン/小熱ショックタンパク質プロモーター、アルファミオシン重鎖プロモーター、また
は心房性ナトリウム利尿因子プロモーターであってもよい。
【定義】
【0065】
本明細書において、用語「約」は、記載される値のプラスマイナス10%以内の値を指
す。
【0066】
本明細書において、用語「カルモジュリン1」(「CALM1」)および「カルモジュ
リン3」(「CALM3」)は、例えば筋肉細胞(例えば、心筋細胞)において二次メッ
センジャーとして発現されるカルモジュリンカルシウム結合タンパク質を指す。CALM
1およびCALM3は、二価カルシウムイオンの細胞質濃度の調節を支援する。野生型C
ALM1の例示的なアミノ酸配列は、NCBI参照配列番号NP_008819.1に見
られる。同様に、野生型CALM3の例示的なアミノ酸配列は、NCBI参照配列番号N
P_001316851.1に見られる。
【0067】
本明細書において、用語「カルセクエストリン2」および「CASQ2」は、例えば、
心筋細胞などの筋肉組織における二価カルシウムの細胞質濃度の調節に関与するカルシウ
ム結合タンパク質を指す。ヒトでは、CASQ2をコードする自然発生遺伝子は、1番染
色体上に位置し、「PDIB2」としても知られる。用語「カルセクエストリン2」、「
CASQ2」、および「PDIB2」は、本明細書において互換的に使用され、野生型の
CASQ2だけでなく、野生型CASQ2タンパク質の変種およびそれをコードする核酸
も指す。野生型ヒトCASQ2のアミノ酸配列は、本明細書では配列番号1として提供さ
れ、当該技術分野においてNCBI参照配列番号NP_001223.2として特徴付け
られる。さらに、野生型ヒトCASQ2の核酸配列は、本明細書では配列番号2として提
供され、当該技術分野においてNCBI参照配列番号NM_001232.3として特徴
付けられる。本明細書に記載の組成物および方法と併せて使用され得るCASQ2導入遺
伝子は、配列番号1のアミノ酸配列と少なくとも85%同一である(例えば、配列番号1
のアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、
93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、または100
%同一である)アミノ酸配列を有するタンパク質をコードする導入遺伝子、および、配列
番号1のアミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸置換(例えば、最大5、最大1
0、最大15、最大20、最大25、最大30、最大35、最大40、最大45、または
最大50個の保存的アミノ酸置換)および/または1つ以上の非保存的アミノ酸置換(例
えば、最大5、最大10、最大15、最大20、最大25、最大30、最大35、最大4
0、最大45、または最大50個の非保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコード
する導入遺伝子を含む。本明細書に記載の組成物および方法と併せて使用され得る例示的
なCASQ2導入遺伝子は、配列番号2のアミノ酸配列と少なくとも85%同一である(
例えば、配列番号2のアミノ酸配列と85%、86%、87%、88%、89%、90%
、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.
9%、または100%同一である)核酸配列を有するものを含む。本明細書におけるCA
SQ2導入遺伝子はさらに、例えば、野生型CASQ2の親和性の最大25%以内の親和
性(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%
、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%
、22%、23%、24%、または25%以内の親和性)および/または野生型CASQ
2の化学量論から25%以下の範囲内(例えば、25%、24%、23%、22%、21
%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11
%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、またはそれ以下
の範囲内)で逸脱する化学量論で、二価カルシウムを重合および結合する能力を保持する
前述のタンパク質のフラグメントをコードするものを含む。カルシウム結合親和性および
化学量論を評価するために使用することができるアッセイの例は、当該技術分野で既知で
あり、例えば、Johnson et al. Methods Mol. Biol.
173:89-102(2002)に記載されており、その開示は参照によりその全体
が本明細書に組み込まれる。
【0068】
本明細書において、用語「カテコラミン誘発多形性心室頻拍」および「CPVT」は、
致命的な不整脈に対する患者の高い感受性を特徴とする遺伝性チャネル病を指す。常染色
体優性および常染色体劣性変種というこの疾患の2つの形態が記載されている。この疾患
の常染色体優性型は、心臓リアノジン受容体2型(RYR2)遺伝子の突然変異に関連付
けられ、常染色体劣性変種は、CASQ2遺伝子の突然変異に関連付けられる(例えば、
Priori et al., Circulation 104(Supplemen
t II):335(2001)、および、Lahat et al., Am. J.
Hum. Genet. 69:1378-1384(2001)を参照。それらの開
示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。本明細書において区別なく「優
性CPVT」および「常染色体優性CPVT」と呼ばれる優性遺伝性の疾患を有する患者
は、典型的に、交感神経活性化に応答して双方向性および多形性心室頻拍を呈する。優性
CPVTを有する患者の安静時心電図プロファイルは目立たず、心臓構造が保たれている
。CPVTの不整脈は、本明細書において「自発的カルシウム放出」または「SCR」と
呼ばれる、活動電位によって引き起こされないカルシウム放出事象によって誘発される。
SCRは、単一のカルシウム放出ユニット(CRU)を伴う局所的事象として始まるが、
隣接するCRUに拡散することもあり、その結果、より多くのカルシウム放出が引き起こ
され、細胞全体のカルシウム波が発生する。筋小胞体からの異常なカルシウム放出が発生
すると、その後に続く活動電位が心臓全体に伝播し、期外収縮性心拍を引き起こす可能性
がある。この一連の事象が繰り返されると、撃発不整脈活動が誘発される。優性CPVT
は、βアドレナリン作動性刺激中にSCRの発生を促進することが示されているリアノジ
ン受容体2(RYR2)の突然変異によって引き起こされることが多い。このカルシウム
活性の調節不全の結果として生じる不整脈は、致命的な不整脈につながる可能性がある(
例えば、Liu et al., Circulation Research 99:
292-298(2006)を参照。その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込
まれる)。優性CPVTに関連付けられるRYR2の突然変異には、R4497C、N4
104K、N4895D、R176Q、G178A、R420W、L433P、P106
7S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2
474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、
Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F485
1L、A4860G、I4867M、P4902S、およびR4959Qが含まれる。
【0069】
本明細書において、タンパク質の突然変異は、「AA1-N-AA2」の形態を使用し
て表され、AA1は、目的のタンパク質の野生型形態のN位に生じるアミノ酸を表し、A
A2は、タンパク質の変異形態のN位に生じるアミノ酸を表す。例えば、RYR2突然変
異体「R4497C」は、野生型RYR2タンパク質の4497位のアルギニン残基がシ
ステイン残基で置き換えられているRYR2の変異形を指す。RYR2突然変異体「V4
319-K4324dup」は、野生型RYR2のアミノ酸残基V4319からK432
4をコードするヌクレオチドが複製され、これらアミノ酸をコードする18ヌクレオチド
の追加のインスタンスの挿入(例えば、野生型RYR2遺伝子のヌクレオチド12955
および12956の間の残基GTCGAAGGTGCTAAAAAG(配列番号7)の挿
入)をもたらす、RYR2遺伝子の変異形を指す。
【0070】
本明細書において、用語「保存的突然変異」、「保存的置換」、または「保存的アミノ
酸置換」は、極性、静電荷、および立体体積などの同様の物理化学的特性を示す1つ以上
の異なるアミノ酸に対する1つ以上のアミノ酸の置換を指す。これらの特性は、以下の表
1に、20個の自然発生アミノ酸のそれぞれについて要約される。
【0071】
【0072】
この表から、保存的アミノ酸ファミリーには、例えば、(i)G、A、V、L、I、P
、およびM、(ii)DおよびE、(iii)C、S、およびT、(iv)H、K、およ
びR、(v)NおよびQ、および(vi)F、Y、およびWが含まれることが分かる。し
たがって、保存的突然変異または置換は、同じアミノ酸ファミリーのメンバーを1つのア
ミノ酸で置換するものである(例えば、ThrをSerで置換する、または、ArgをL
ysで置換する)。
【0073】
本明細書において、用語「デスミンプロモーター」は、(i)ヒトデスミン転写開始部
位に関してヌクレオチド-984から+76までで定義される内因性ヒトデスミンプロモ
ーターの核酸配列を有するポリヌクレオチド、および、(ii)その変種および機能的部
分を指す。例えば、本開示の組成物および方法と併せて使用され得るデスミンプロモータ
ーには、ヒトデスミン転写開始部位に関してヌクレオチド-984から+76までの核酸
配列と少なくとも85%同一(例えば、85%、86%、例えば、85%、86%、87
%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97
%、98%、99%、または99.9%、またはそれ以上同一)であり、導入遺伝子がプ
ロモーターに作動可能に連結される際に細胞(例えば、哺乳動物細胞、ヒト細胞、または
ヒト心筋細胞などの真核細胞)におけるCASQ2導入遺伝子の発現を促進するものが含
まれる。本明細書に記載の組成物および方法と併せて使用され得るデスミンプロモーター
のさらなる例は、Gao et al., Journal of Biologica
l Chemistry 273:6402-6409(1998)に記載されており、
その開示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。本明細書においてプロモータ
ーなどの転写調節エレメントとの関連で使用される場合、用語「機能的部分」は、標的細
胞において目的の遺伝子の転写を刺激する能力を保持するより大きな核酸の部分を指す。
例えば、内因性ヒトデスミンプロモーターは、デスミン転写開始部位に関して、ヌクレオ
チド-984から+76を含む。より大きな核酸の転写活性化特性を保持することができ
るこの遺伝子座の機能的部分の例は、デスミン転写開始部位に関して、ヌクレオチド-9
73から-693を含む領域である。他の例は、デスミン転写開始部位に関して、ヌクレ
オチド-269から+76を含む領域である。
【0074】
同様に、本明細書において、用語「サイトメガロウイルスプロモーター」、「ミオシン
軽鎖2プロモーター」、「アルファアクチンプロモーター」、「トロポニン1プロモータ
ー」、「Na+/Ca2+交換体プロモーター」、「ジストロフィンプロモーター」、「
クレアチンキナーゼプロモーター」、「アルファ7インテグリンプロモーター」、「脳性
ナトリウム利尿ペプチドプロモーター」、「アルファBクリスタリン/小熱ショックタン
パク質プロモーター」、「アルファミオシン重鎖プロモーター」、および「心房性ナトリ
ウム利尿因子プロモーター」はそれぞれ、野生型内因性ヒトサイトメガロウイルスプロモ
ーター、ミオシン軽鎖2プロモーター、アルファアクチンプロモーター、トロポニン1プ
ロモーター、Na+/Ca2+交換体プロモーター、ジストロフィンプロモーター、クレ
アチンキナーゼプロモーター、アルファ7インテグリンプロモーター、脳性ナトリウム利
尿ペプチドプロモーター、アルファBクリスタリン/小熱ショックタンパク質プロモータ
ー、アルファミオシン重鎖プロモーター、および心房性ナトリウム利尿因子プロモーター
、ならびにその変種および機能的部分を指す。
【0075】
本明細書において突然変異との関連で使用される場合、用語「ヘテロ接合性」は、患者
が特定の遺伝子の1つの突然変異アレル、すなわち突然変異母方アレルまたは突然変異父
方アレルのいずれかを有する場合を指す。
【0076】
本明細書において突然変異との関連で使用される場合、用語「ホモ接合性」は、患者が
特定の遺伝子の2つの突然変異アレル、すなわち突然変異母方アレルおよび突然変異父方
アレルを有する場合を指す。
【0077】
本明細書において、用語「機能獲得型突然変異」は、タンパク質内の1つ以上のアミノ
酸の置換、挿入、および/または欠失によってタンパク質の機能が増強される突然変異を
指す。例えば、リアノジン受容体2(RYR2)タンパク質は、心筋細胞の筋小胞体から
細胞質ゾルへの二価カルシウムイオンの放出を仲介するチャネルタンパク質である。RY
R2の場合における例示的な機能獲得型突然変異は、筋小胞体からのRYR2媒介性カル
シウム輸出の上昇をもたらすものである。RYR2の機能獲得型突然変異には、R449
7C、N4104K、N4895D、R176Q、G178A、R420W、L433P
、P1067S、S2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L234
4P、R2474S、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3
946S、Q4159P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I
、F4851L、A4860G、I4867M、P4902S、および/またはR495
9Qなどが含まれる。
【0078】
本明細書において、用語「作動可能に連結された」は、第2の分子(例えば、第2の核
酸)に第1の分子(例えば、第1の核酸)が結合することを指し、これら分子は、第1の
分子が第2の分子の機能に影響を与えるように配置される。2つの分子は、単一の隣接す
る分子の一部であってもなくてもよく、互いに隣接していてもしていなくてもよい。例え
ば、プロモーターが細胞内の目的の転写可能なポリヌクレオチド分子の転写を調節する場
合、プロモーターは転写可能なポリヌクレオチド分子に作動可能に連結される。さらに、
転写調節エレメントの2つの部分は、一方の部分の転写活性化機能が他方の部分の存在に
よって悪影響を受けないようにそれらが結合されている場合、互いに作動可能に連結され
る。2つの転写調節エレメントは、リンカー核酸(例えば、介在する非コード核酸)を介
して互いに作動可能に連結され得るか、または介在するヌクレオチドなしに互いに作動可
能に連結され得る。
【0079】
参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列に関する「パーセント(%)配列同一性
」は、配列を整列(アライメント)し必要に応じてギャップを導入して最大パーセントの
配列同一性を達成した後の、参照ポリヌクレオチドまたはポリペプチド配列における核酸
またはアミノ酸と同一である候補配列における核酸またはアミノ酸のパーセンテージとし
て定義される。パーセント核酸またはアミノ酸配列同一性を決定する目的でのアラインメ
ントは、例えば、BLAST、BLAST-2、またはMegalignソフトウェアな
どの公開されているコンピュータソフトウェアを利用して、当業者の能力の範囲内で種々
の方法で行うことができる。当業者は、比較される配列の全長にわたって最大のアライン
メントを達成するために必要な任意のアルゴリズムを含む、配列アラインメントのための
適切なパラメーターを決定することができる。例えば、パーセント配列同一性値は、配列
比較コンピュータプログラムBLASTを用いて生成してもよい。実例として、所与の核
酸またはアミノ酸配列Bに対する所与の核酸またはアミノ酸配列Aのパーセント配列同一
性(言い換えると、所与の核酸またはアミノ酸配列Bに対して特定のパーセント配列同一
性を有する所与の核酸またはアミノ酸配列A)は、以下のように計算される:
100×(分数X/Y)
ここで、Xは、配列アラインメントプログラム(BLASTなど)によってそのプログラ
ムのAとBとのアラインメントで完全な一致としてスコア付けされたヌクレオチドまたは
アミノ酸の数であり、Yは、Bにおける核酸の総数である。核酸またはアミノ酸配列Aの
長さが核酸またはアミノ酸配列Bの長さと等しくない場合、Bに対するAのパーセント配
列同一性は、Aに対するBのパーセント配列同一性と等しくない。
【0080】
本明細書において、用語「医薬組成物」は、ヒトに例示される哺乳動物などの対象に影
響を与えているまたは影響を与える可能性のある特定の疾患や状態を予防、治療、または
制御するために対象に投与される治療薬を、任意に1つ以上の薬学的に受容可能な賦形剤
、希釈剤、および/または担体と組み合わせて含む混合物を指す。
【0081】
本明細書において、用語「薬学的に受容可能」は、合理的なベネフィット‐リスク比に
見合った過度の毒性、刺激、アレルギー反応、およびその他の問題なしに、哺乳動物(例
えば、ヒト)などの対象の組織との接触に適した化合物、材料、組成物、および/または
剤形を指す。
【0082】
本明細書において、用語「リアノジン受容体2」および「RYR2」は、例えば心筋細
胞において筋小胞体の外側に位置するカルシウムチャネルタンパク質を指す。RYR2は
、筋小胞体からの二価カルシウムの放出を仲介し、これにより、心臓の収縮につながる活
動電位を刺激する。野生型ヒトRYR2の例示的なアミノ酸配列は、NCBI参照配列番
号NP_001026.2に見られる。
【0083】
本明細書において、用語「リアノジン受容体2アゴニスト」および「RYR2アゴニス
ト」は、RYR2チャネルタンパク質のカルシウム放出特性を刺激する薬剤を指す。例示
的なRYR2アゴニストには、カフェイン、エピネフリン、トリフルオロペラジン、およ
びマウロカルシンなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0084】
本明細書において、用語「サンプル」は、対象から分離された標本(例えば、血液、血
液成分(例えば、血清または血漿)、尿、唾液、羊水、脳脊髄液、組織(例えば、胎盤ま
たは皮膚)、膵臓液、絨毛膜絨毛サンプル、または細胞)を指す。対象は、例えば、遺伝
性心臓障害(例えば、優性カテコラミン誘発多形性心室頻拍などの頻脈)などの、本明細
書に記載の疾患に罹患している患者であってもよい。
【0085】
本明細書において、表現「特異的に結合する」および「結合する」は、特異的に、カル
シウム結合タンパク質などの、リガンドまたは受容体などによって認識されるイオン、塩
、小分子、および/またはタンパク質の異種集団における、二価カルシウムイオンなどの
特定の分子またはイオンの存在を決定する結合反応を指す。種(例えば、二価イオン)に
特異的に結合するリガンド(例えば、カルシウム結合タンパク質)は、例えば、1mM未
満のKDで種に結合し得る。例えば、種に特異的に結合するリガンドは、最大100μM
(例えば、1pMから100μMの間)のKDで種に結合し得る。別の分子またはイオン
への特異的結合を示さないリガンドは、その特定の分子またはイオンに1mM(例えば、
1μM、100μM、500μM、1mM、またはそれ以上)を超えるKDを示し得る。
特定のタンパク質に対するリガンドの親和性を決定するために、様々なアッセイフォーマ
ットを用いてもよい。例えば、固相ELISAアッセイは、標的タンパク質に特異的に結
合するリガンドを同定するために日常的に使用されている。特定のタンパク質結合を決定
するために利用可能なアッセイフォーマットと条件の説明については、例えば、Harl
ow & Lane, Antibodies, A Laboratory Manu
al, Cold Spring Harbor Press, New York(1
988)、および、Harlow & Lane, Using Antibodies
, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbo
r Press, New York(1999)を参照されたい。標的イオン(例えば
、二価カルシウムイオン)に対するリガンドの親和性を決定するために利用可能な例示的
なアッセイは、例えば、Johnson et al. Methods Mol. B
iol. 173:89-102(2002)に記載されており、その開示は参照により
その全体が本明細書に組み込まれる。
【0086】
本明細書において、用語「対象」および「患者」は、本明細書に記載の特定の疾患や状
態(例えば、常染色体優性カテコラミン誘発多形性心室頻拍などの遺伝性心臓障害)の治
療を受ける生物を指す。対象および患者の例には、本明細書に記載の疾患や状態の治療を
受けているヒトなどの哺乳動物が含まれる。
【0087】
本明細書において、用語「頻脈」は、所与の種の通常の安静時心拍数を超える、患者(
例えば、優性CPVTを有するヒト患者)によって示される心拍数を指す。ヒト患者の治
療の場合、頻脈には、患者の心拍数が1分あたり100拍を超える場合が含まれる。頻脈
を監視するための方法は当該技術分野で既知であり、例えば、後述の実施例1に記載され
る。
【0088】
本明細書において、用語「転写調節エレメント」は、目的の遺伝子の転写を少なくとも
部分的に制御する核酸を指す。転写調節エレメントは、遺伝子転写を制御するか、または
制御するのを助けるプロモーター、エンハンサー、および他の核酸(例えば、ポリアデニ
ル化シグナル)を含み得る。転写調節エレメントの例は、例えば、Goeddel, G
ene Expression Technology: Methods in En
zymology 185(Academic Press, San Diego,
CA, 1990)に記載されている。
【0089】
本明細書において、用語「治療する」または「治療」は、治療処置を指し、その目的は
、CPVT、特に優性なCPVTなどの遺伝性心臓障害の進行などの望ましくない生理学
的変化または障害を予防または減速(軽減)することである。CPVT治療の場合、有益
または望ましい臨床結果には、検出可能か検出不可能かにかかわらず、症状の緩和、疾患
の程度の減少、疾患の安定した(すなわち、悪化しない)状態、疾患の進行の遅延または
減速、病状の改善または緩和、および寛解(部分的または全体的)が含まれるが、これら
に限定されない。CPVT(例えば、優性CPVT)を有する患者の治療は、本明細書に
記載の治療薬の投与後の特定期間に患者によって示される不整脈事象(例えば、頻脈事象
)の量または頻度の減少(例えば、本明細書に記載のCASQ2導入遺伝子をコードする
ウイルスベクターなどのベクターの投与後に患者によって示される不整脈事象(例えば、
頻脈事象)の量または頻度の減少)などの1つ以上の検出可能な変化に現れ得る。例えば
、本明細書に記載の組成物および方法を使用する優性CPVT患者の治療の成功の兆候は
、治療薬の投与前の期間(例えば、同じ長さの期間)に患者によって示される不整脈事象
(例えば、頻脈事象)の量および/または頻度に対して、治療薬の投与後の特定期間に患
者によって示される不整脈事象(例えば、頻脈事象)の量または頻度が、1%、2%、3
%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、
35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、
85%、90%、95%、または100%減少したという知見を含む。CPVT患者の治
療の成功の別の臨床的兆候には、患者への治療薬の投与後、患者の心筋細胞(例えば、心
筋細胞)における細胞質カルシウム([Ca2+])の平均拡張期濃度が、例えば、1%
、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%
、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%
、またはそれ以上減少したという知見を含む。治療の成功のさらに別の兆候は、患者(例
えば、患者の心筋細胞などの心臓細胞)におけるCASQ2の発現が治療薬の投与後に増
加したという知見である。CASQ2の発現は、例えば、1%、2%、3%、4%、5%
、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%
、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%
、95%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、
800%、900%、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍
、またはそれ以上増加し得る。CASQ2タンパク質の濃度は、例えば、本明細書に記載
のELISAアッセイを含む、当該技術分野で既知のタンパク質検出アッセイを用いて、
ex vivoで決定されてもよい。CASQ2をコードする核酸の濃度は、例えば、本
明細書に記載の核酸検出アッセイ(例えば、RNASeqアッセイ)を用いて、ex v
ivoで決定されてもよい。
【0090】
本明細書において、用語「ベクター」は、複製および/または発現などの目的で、目的
の遺伝子を細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)に送達するためのビヒクルとし
て機能し得るDNAまたはRNAなどの核酸を指す。本明細書に記載の組成物および方法
と併せて有用な例示的なベクターは、プラスミド、DNAベクター、RNAベクター、ビ
リオン、または他の適切なレプリコン(例えば、ウイルスベクター)である。外因性タン
パク質をコードするポリヌクレオチドを原核生物または真核生物の細胞に送達するために
、様々なベクターが開発されている。このような発現ベクターの例は、例えば、WO19
94/11026に開示されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
本明細書に記載の発現ベクターは、ポリヌクレオチド配列、ならびに、例えば、タンパク
質の発現および/またはこれらのポリヌクレオチド配列の哺乳動物細胞のゲノムへの組み
込みに使用される追加の配列エレメントを含む。本明細書に記載の導入遺伝子の発現に利
用可能な特定のベクターには、遺伝子転写を誘導するプロモーターおよびエンハンサー領
域などの調節配列を含むプラスミドが含まれる。導入遺伝子の発現のための他の有用なベ
クターは、これらの遺伝子の翻訳速度を高めるか、または遺伝子転写から生じるmRNA
の安定性または核輸出を改善するポリヌクレオチド配列を含む。これらの配列エレメント
には、例えば、5’および3’非翻訳領域、内部リボソーム侵入部位(IRES)、およ
び発現ベクターで運ばれる遺伝子の効率的な転写を指示するためのポリアデニル化シグナ
ル部位が含まれる。本明細書に記載の発現ベクターはまた、そのようなベクターを含む細
胞の選択のためのマーカーをコードするポリヌクレオチドを含み得る。適切なマーカーの
例には、アンピシリン、クロラムフェニコール、カナマイシン、またはヌールセオスリシ
ンなどの抗生物質に対する耐性をコードする遺伝子が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【
図1】後述の実施例1に記載のマウスCASQ2遺伝子治療実験で使用されるpAAV2.1-CMV-CASQ2-IRES-eGP構成物の図である。ベクターは、5’から3’の方向に、5’AAV2逆方向末端反復(ITR)、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、シミアンウイルス40(SV40)イントロン(intron)、野生型マウスカルセクエストリン2(CASQ2)導入遺伝子、内部リボソーム侵入部位(IRES)、強化緑色蛍光タンパク質(eGFP)導入遺伝子、ウッドチャック転写後調節エレメント(WPRE)、ウシ成長ホルモン(BGH)ポリアデニル化配列、および3’AAV2ITRを含む。後述の実施例1で使用されるpAAV2.1-CMV-CASQ2-IRES-eGFP構成物は、AAV9キャプシドにパッケージされ、こうして組み換えAAV2/9ベクターを生成した。
【
図2】エピネフリン(2mg/kg)とカフェイン(120mg/kg)への曝露時の、常染色体優性CPVTのモデルであるR4496C/+ヘテロ接合性ノックインマウス(Ryr2-Het)における不整脈事象のパーセンテージ(比率)に対するpAAV2.1-CMV-CASQ2-IRES-eGFPベクターの効果を示すグラフである。黒いバー(左)は、未治療の全てのRyR2-Hetマウス(n=5)がエピネフリンとカフェインの投与後に不整脈を示したことを示す。グラフの右側の結果は、pAAV2.1-CMV-CASQ2-IRES-eGFPベクター(n=4)に感染したRyR2-Hetマウスのいずれも不整脈を発症しなかったことを示す。
【
図3】野生型マウスおよび未治療またはpAAV2.1-CMV-CASQ2-IRES-eGFPベクターで治療したRYR2R4496C/+マウスの心筋組織におけるCASQ2、心臓RYR2、トリアジン、およびジャンクチンのmRNA発現を示すグラフである。結果は、野生型マウス(WT、白いバー)におけるmRNA発現に対して正規化されたmRNAの発現倍率(発現量)として報告される。黒いバーは、野生型(WT)に対する、未治療のRYR2R4496C/+ヘテロ接合性ノックインマウス(Ryr2-Het)のmRNA転写物の発現倍率(発現量)を示す。灰色のバーは、野生型(WT)に対する、pAAV2.1-CMV-CASQ2-IRES-eGFPベクター(Ryr2-Het AAV9-CASQ2)で治療したRYR2R4496C/+ヘテロ接合性ノックインマウスにおけるmRNA転写物の発現倍率(発現量)を示す。
【
図4】R4496C/+ヘテロ接合性ノックインマウスにおいて抗不整脈効果を示すことが見出された別のAAVベクターの種々の成分を示す図である。ベクターは、5’および3’AAV2ITRが隣接するCASQ2発現カセットを含む。発現カセットは、デスミンプロモーターに作動可能に連結された野生型CASQ2をコードする導入遺伝子を含む。
【
図5】4エピネフリン(2mg/kg)およびカフェイン(120mg/kg)への曝露時の、R4496C/+ヘテロ接合性ノックインマウス(Ryr2-Het)における不整脈事象のパーセンテージ(比率)に対する、
図4に示されるベクターを含む組み換え偽型化AAV2/8の効果を示すグラフである。黒いバー(左)は、未治療のRyR2-Hetマウス(n=9)の約44%(9体中4体)がエピネフリンとカフェインの投与後に不整脈を示したことを示しす。グラフの右側の結果は、CASQ2をコードするrAAV2/8ベクターに感染したRyR2-Hetマウス(n=9)のいずれも不整脈を発症しなかったことを示す。
【発明を実施するための形態】
【0092】
本明細書では、ヒト患者などの患者においてカテコラミン誘発多形性心室頻拍(CPV
T)、特に常染色体優性CPVTを治療する組成物および方法を記載する。優性CPVT
は、心筋細胞の2価カルシウムイオンの濃度を調節する1つ以上のタンパク質の突然変異
によって引き起こされる。例えば、優性CPVTは、リアノジン受容体2(RYR2)タ
ンパク質の様々な突然変異、特に筋小胞体からのRYR2を介した二価カルシウムイオン
の放出を上方制御する機能獲得型突然変異に関連付けられる。以下に説明するように、こ
れは、心拍で終了するシグナリング事象と筋収縮事象との連鎖につながる。優性CPVT
はまた、カルモジュリン1(CALM1)やCALM3などのカルモジュリンタンパク質
の機能喪失型突然変異にも関連付けられる。これらのタンパク質は、二価のカルシウムイ
オンを結合および隔離することによって細胞質カルシウムの調節を助け、それによって活
動電位の伝播を防ぐ。拡張期、すなわち心臓の弛緩の期間、の筋小胞体からの過剰なカル
シウム放出は、不整脈を引き起こす可能性のある期外収縮性心拍を生じさせる。
【0093】
本開示は、優性CPVTが、機能的RYR2、CALM1、またはCALM3タンパク
質またはそれらをコードする導入遺伝子を患者に提供する必要なしに治療され得るという
発見に部分的に基づく。本明細書に記載の組成物および方法を用いて、優性CPVTを有
するヒト患者などの患者は、機能的カルセクエストリン2(CASQ2)タンパク質をコ
ードする導入遺伝子の投与によって治療され得る。CASQ2を投与すると、心臓のカル
シウム恒常性が回復し、不整脈事象が減少し、正常な心拍が戻る。
【0094】
本明細書に記載の組成物および方法を用いて、機能的CASQ2タンパク質をコードす
る導入遺伝子を、リポソーム、小胞、エクソソーム、デンドリマー、またはナノ粒子の使
用など、以下に記載する他のアプローチの中でも、ウイルス遺伝子治療によって患者に送
達することができる。以下の節では、優性CPVTの基となる病態生理学の概要、および
、患者に機能的CASQ2導入遺伝子を提供するために利用可能な例示的なベクターおよ
びその他の遺伝子送達ビヒクルについて説明する。
【0095】
優性CPVT
CPVTは、致命的な不整脈に対する高い感受性を特徴とする遺伝性チャネル病である
。常染色体優性および常染色体劣性変種という、この疾患の2つの形態が報告されている
。常染色体優性は心臓のRYR2遺伝子の突然変異に関連付けられ、常染色体劣性変種は
心臓のCASQ2遺伝子の突然変異に関連付けられる(Priori et al.,
Circulation 104(Supplement II):335(2001)
、および、Lahat et al., Am. J. Hum. Genet. 69
:1378-1384(2001))。臨床観察では、CPVTの優性な形態を有する患
者は、交感神経の活性化に応答して双方向性および多形性心室頻拍を発症するが、安静時
の心電図プロファイルは目立たず、心臓構造が保たれることが示されている。
【0096】
優性CPVTの基となる病理は、心臓の興奮収縮連関を維持するための基本であるカル
シウム誘発性カルシウム放出(CICR)と呼ばれる生理学的メカニズムの異常な機能に
関連している。心筋細胞の膜にある電位依存性イオンチャネルの高度に調整された開閉に
よって、心臓の活動電位が生じる。活動電位のプラトー期に、電位依存性L型Ca2+チ
ャネルが開くことで、原形質膜におけるCa2+の流入が可能になる。このプロセスは、
カルシウムトランジェントを引き起こし、筋小胞体Ca2+放出チャネル:RYR2の開
口を誘発する(Bers, Nature 415:198-205(2002))。こ
れらの局所放出は、カルシウム放出ユニット(CRU)と呼ばれる特殊な構造で起こる。
CRUは、筋小胞体の膜が細胞膜に並置されている横行小管(T管)のレベルに優先的に
局在する。1つのCRUは、細胞膜上のL型Ca2+チャネルに近接する、筋小胞体膜に
またがるRYR2のクラスターによって形成される(Franzini-Armstro
ng, et l., Ann. NY Acad. Sci. 1047:76-85
(2005))。筋小胞体から放出されたCa2+は、トロポニンCに結合し、ミオシン
フィラメントに一連のアロステリック変化を誘発して筋線維の収縮を引き起こす。その後
のCa2+の除去は、RYR2の同時閉鎖と、Ca2+を筋小胞体ストア内へと送り返す
筋小胞体Ca2+ATPアーゼの作用とによって媒介される。
【0097】
Ca2+トランジェント終了の別の成分は、Na+-Ca2+交換体(NCX)である
。NCXは、細胞に取り込まれた3つのNa+イオン(3つの正電荷)毎に、1つのCa
2+イオン(2つの正電荷)を押し出す。こうして、NCXは、正味の内向き脱分極電流
、すなわち、一過性内向き電流(Iti)を生成することによって、Ca2+を除去する
(Pieske, et al., Circ. Res. 85:38-46(199
9))。NCXは、例えばRYR2遺伝性突然変異の場合などカルシウム過負荷を特徴と
する条件下で、Ca2+の除去にとって非常に重要となる。
【0098】
CPVTの不整脈は、活動電位によって引き起こされないCa2+放出事象(自発的カ
ルシウム放出(SCR)と呼ばれる)によって誘発される。SCRは、単一のCRUが関
与する局所的事象として始まるが、隣接するCRUに拡散することもあり、その結果、よ
り多くのCa2+放出が引き起こされ、細胞全体のカルシウム波が発生する。SCRがカ
ルシウム波を引き起こす確率は、筋小胞体Ca2+含有量と、筋小胞体カルシウム閾値と
呼ばれるCa2+放出を誘発するCa2+濃度との間のバランスに影響される。RYR2
機能は、この閾値を制御する上で重要な役割を果たす。CPVTに関連するいくつかのR
YR2突然変異は、SCRが容易に誘導されるように筋小胞体カルシウム閾値を低下させ
ることによって作用することが示唆されている(Venetucci et al.,
Nat. Rev. Cardiol. 9:561-75(2012))。
【0099】
異常なCa2+漏出が発生すると、細胞質Ca2+濃度が上昇し、細胞は、Ca2+恒
常性の崩壊を防ぎCa2+の生理学的拡張期レベルを再確立するメカニズムを活性化する
必要がある。Iti電流は、活動電位の完了後に一過性膜脱分極を生じ、これは、遅延後
脱分極(DAD)として知られている。DADの振幅がNa+チャネル活性化の電圧閾値
に達すると、撃発活動電位が生成される。活動電位が心臓全体に伝播すると、期外収縮性
心拍が起こる。この一連の事象が繰り返され、いくつかのDADが伝播活動電位の生成閾
値に達すると、撃発不整脈活動が誘発される。いくつかの研究では、RYR2の突然変異
は、β-アドレナリン作動性刺激中にSCRの発生を促進し、次にDADを誘発し、致命
的な不整脈につながる活動を誘発することが示されている(Liu et al., C
irculation Research 99:292-298(2006))。
【0100】
常染色体優性CPVTのためのRYR2R4496C/+ノックインマウスモデルの生
成および特徴付け(例えば、Cerrone et al., M, Circulat
ion Research 96:e77-e82(2005)、および、US7,74
1,529を参照)は、この疾患の病態メカニズムに対する優れた洞察を提供する。RY
R2R4496C/+ヘテロ接合性マウスは、ヒトCPVTを再現し、アドレナリン作動
性に誘発された双方向性および多型性心室性不整脈を発症する。ヒトのR4497C突然
変異に対応するマウスのR4496C突然変異は、内腔カルシウムに対するRYR2チャ
ネルの感受性を高め、筋小胞体からのカルシウムの自発的放出を促進する。
【0101】
優性CPVTを引き起こす可能性のある突然変異の例は、R4497C、N4104K
、N4895D、R176Q、G178A、R420W、L433P、P1067S、S
2246L、G2273R、F2307L、E2311D、L2344P、R2474S
、T2504M、K3717R、L3778F、G3926D、G3946S、Q415
9P、V4319-K4324dup、R4651I、V4771I、F4851L、A
4860G、I4867M、P4902S、およびR4959Qである。優性CPVTに
つながる可能性のあるCALM1の突然変異には、N97SおよびN53Iが含まれ、優
性CPVTにつながる可能性のあるCALM3の突然変異の例はA103Vである。
【0102】
ヒトのR4997Cなどの不整脈を引き起こすRYR2、CALM1、および/または
CALM3突然変異によって起こるCPVTは、これらのタンパク質をコードする機能的
導入遺伝子を患者に提供する必要なしに治療できることが発見されている。本明細書に記
載の組成物および方法を用いて、優性CPVTを有する患者は、CASQ2導入遺伝子を
含む送達ビヒクルの投与によって治療することができる。本明細書に記載の組成物および
方法と併せて有用なCASQ2の送達のための例示的なビヒクルを以下に詳細に記載する
。
【0103】
CASQ2遺伝子治療によるCPVT治療
CASQ2導入遺伝子
本明細書に記載の組成物および方法を用いて、CASQ2をコードする導入遺伝子を、
病理を治療するために、優性CPVTを有するヒト患者などの患者に提供することができ
る。CASQ2導入遺伝子は、本明細書に記載の遺伝子治療のための他の組成物の中でも
、様々なベクター(例えば、ウイルスベクター)を介して患者に送達され得る。いくつか
の実施形態(例えば、ヒト患者を治療する実施形態)において、CASQ2導入遺伝子は
、以下に示す配列番号1に提示される野生型ヒトCASQ2のアミノ酸配列と少なくとも
85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%
、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%、ま
たは100%同一である)アミノ酸配列を有するタンパク質をコードする。本明細書に記
載の組成物および方法と併せて使用するためのCASQ2導入遺伝子には、配列番号1の
アミノ酸配列に対して1つ以上の保存的アミノ酸置換を有するタンパク質をコードするも
のが含まれる。例えば、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に対して最
大50個の保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、
11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、2
4、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37
、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、または
50個の保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードし得る。CASQ2導入遺伝
子は、付加的または代替的に、配列番号1のアミノ酸配列に対して1つ以上の非保存的ア
ミノ酸置換を有し得る。例えば、CASQ2導入遺伝子は、配列番号1のアミノ酸配列に
対して最大50個の非保存的アミノ酸置換(例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、
9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22
、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、
36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、4
9、または50個の非保存的アミノ酸置換)を有するタンパク質をコードし得る。
【0104】
いくつかの実施形態(例えば、ヒト患者を治療する実施形態)において、CASQ2導
入遺伝子は、以下に示す配列番号2に提示される野生型ヒトCASQ2の核酸配列と少な
くとも85%同一である(例えば、85%、86%、87%、88%、89%、90%、
91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9
%、または100%同一である)核酸配列を有する。
本明細書に記載の組成物および方法と併せて有用な例示的な野生型CASQ2アミノ酸
および核酸配列を、以下の表2に記載する。
【0105】
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【0106】
本明細書におけるCASQ2導入遺伝子はさらに、例えば、野生型CASQ2の親和性
の最大25%以内の親和性(例えば、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%
、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、
19%、20%、21%、22%、23%、24%、または25%以内の親和性)および
/または野生型CASQ2の化学量論から25%以下の範囲内(例えば、25%、24%
、23%、22%、21%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%
、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%
、1%、またはそれ以下の範囲内)で逸脱する化学量論で、二価カルシウムを重合および
結合する能力を保持する前述のタンパク質のフラグメントをコードするものを含む。カル
シウム結合親和性および化学量論を評価するために使用することができるアッセイの例は
、当該技術分野で既知であり、例えば、Johnson et al. Methods
Mol. Biol. 173:89-102(2002)に記載されており、その開
示は参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0107】
転写調節エレメント
本明細書に記載のCASQ2導入遺伝子は、導入遺伝子がプロモーターに作動可能に連
結されるように、ベクター、プラスミド、または本明細書に記載の他の核酸送達ビヒクル
などの送達ビヒクルに組み込まれてもよい。本明細書に記載の組成物および方法と併せて
有用な例示的なプロモーターは、患者(例えば、ヒト患者)の心筋細胞などの心臓細胞に
おいて導入遺伝子の発現を誘導するものである。例えば、本明細書に記載の遺伝子送達ビ
ヒクルにおいてCASQ2の発現を誘導するために用いられ得るプロモーターには、デス
ミンプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、ミオシン軽鎖2プロモーター、
アルファアクチンプロモーター、トロポニン1プロモーター、Na+/Ca2+交換体プ
ロモーター、ジストロフィンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、アルファ
7インテグリンプロモーター、脳性ナトリウム利尿ペプチドプロモーター、アルファB-
クリスタリン/小熱ショックタンパク質プロモーター、アルファミオシン重鎖プロモータ
ー、または心房性ナトリウム利尿因子プロモーターが含まれるが、これらに限定されない
。
【0108】
外因性核酸を標的細胞に送達するためのベクター
核酸送達用のウイルスベクター
ウイルスゲノムは、患者の標的細胞(例えば、ヒト細胞などの哺乳動物細胞)のゲノム
への目的の遺伝子の効率的な送達に利用可能な豊富なベクター供給源を提供する。ウイル
スゲノムは、このようなゲノム内に含まれるポリヌクレオチドが通常、一般化または特殊
化された形質導入によって標的細胞のゲノムに組み込まれるため、遺伝子送達のための特
に有用なベクターである。これらのプロセスは、自然のウイルス複製サイクルの一部とし
て発生し、遺伝子の統合を誘導するためにタンパク質や試薬を追加する必要はない。本明
細書に記載の組成物および方法と併せて使用され得るウイルスベクターの例には、AAV
、レトロウイルス、アデノウイルス(例えば、Ad5、Ad26、Ad34、Ad35、
およびAd48)、パルボウイルス(例えば、アデノ関連ウイルス)、コロナウイルス、
オルトミクソウイルス(例、インフルエンザウイルス)、ラブドウイルス(例、狂犬病お
よび小胞性口内炎ウイルス)、パラミクソウイルス(例、はしかおよびセンダイ)などの
負鎖RNAウイルス、ピコルナウイルスおよびアルファウイルスなどの正鎖RNAウイル
ス、およびアデノウイルス、ヘルペスウイルス(例、ヘルペスシンプレックスウイルス1
型および2型、エプスタインバーウイルス、サイトメガロウイルス)、およびポックスウ
イルス(例、ワクシニア、改変ワクシニアアンカラ(MVA)、鶏痘およびカナリア痘)
を含む二本鎖DNAウイルスがある。本明細書に記載の組成物および方法と併せて使用さ
れ得る他のウイルスには、例えば、ノーウォークウイルス、トガウイルス、フラビウイル
ス、レオウイルス、パポーバウイルス、ヘパドナウイルス、および肝炎ウイルスが含まれ
る。レトロウイルスの例には、トリ白血病肉腫、哺乳類のC型、B型ウイルス、D型ウイ
ルス、HTLV-BLVグループ、レンチウイルス、スプマウイルスが含まれる(Cof
fin, J. M., Retroviridae: The viruses an
d their replication, In Fundamental Viro
logy, Third Edition, B. N. Fields, et al
., Eds., Lippincott-Raven Publishers, Ph
iladelphia, 1996)。他の例としては、ネズミ白血病ウイルス、ネズミ
肉腫ウイルス、マウス乳房腫瘍ウイルス、ウシ白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ネ
コ肉腫ウイルス、トリ白血病ウイルス、ヒトT細胞白血病ウイルス、ヒツジ内因性ウイル
ス、ギボンエイプ白血病ウイルス、メイソンファイザーサルウイルス、シミアン免疫不全
ウイルス、シミアン肉腫ウイルス、ラウス肉腫ウイルス、およびレンチウイルスがある。
ベクターの他の例は、例えば、US5,801,030に記載されており、その開示は、
遺伝子治療で使用するウイルスベクターに関するため、参照により本明細書に組み込まれ
る。
【0109】
核酸送達用のAAVベクター
いくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物および方法の核酸は、患者の標
的心臓細胞(例えば、心筋細胞)などの細胞へのrAAVベクターおよび/またはビリオ
ンの導入を容易にするために、rAAVベクターおよび/またはビリオンに組み込まれる
。本明細書に記載の組成物および方法と併せて有用なrAAVベクターには、(1)CA
SQ2導入遺伝子、および(2)異種遺伝子の組み込みおよび発現を促進するウイルス核
酸を含む組み換え核酸構成物が含まれる。ウイルス核酸は、DNAのビリオン内への複製
およびパッケージング(例えば、機能的ITR)のためにシスで必要とされるAAVのそ
れらの配列を含み得る。このようなrAAVベクターは、マーカーまたはレポーター遺伝
子も含んでもよい。有用なrAAVベクターには、1つ以上の自然発生AAV遺伝子の全
体または一部が削除されているが、機能的な隣接ITR配列を保持しているものが含まれ
る。AAVITRは、特定の用途に適した任意の血清型(例えば、血清型2に由来する)
であり得る。rAAVベクターを使用する方法は、例えば、Tal et al., J
. Biomed. Sci. 7:279-291(2000)、および、Monah
an and Samulski, Gene Delivery 7:24-30(2
000)に記載されており、それらの開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関す
るため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0110】
本明細書に記載の核酸およびベクターは、細胞内への核酸またはベクターの導入を容易
にするために、rAAVビリオンに組み込むことができる。AAVのキャプシドタンパク
質は、ビリオンの外部の非核酸部分を構成し、AAVキャップ遺伝子によってコードされ
る。キャップ遺伝子は、ビリオンの組み立てに必要な3つのウイルスコートタンパク質で
あるVP1、VP2、およびVP3をコードする。rAAVビリオンの構成は、例えば、
US5,173,414、第5,139,941、第5,863,541、第 5,86
9,305、第6,057,152、および第6,376,237、ならびに、Rabi
nowitz et al., J. Virol. 76:791-801(2002
)およびBowles et al., J. Virol. 77:423-432(
2003)に記載されており、それらの開示は、遺伝子送達のためのAAVベクターに関
するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0111】
本明細書に記載の組成物および方法と併せて有用なrAAVビリオンには、AAV1、
2、3、4、5、6、7、8および9を含む様々なAAV血清型に由来するものが含まれ
る。異なる血清型のAAVベクターおよびAAVタンパク質の構成および使用は、例えば
、Chao et al., Mol. Ther. 2:619-623(2000)
、Davidson et al., Proc. Natl. Acad. Sci.
USA 97:3428-3432(2000)、Xiao et al., J.
Virol. 72:2224-2232(1998)、Halbert et al.
, J. Virol. 74:1524-1532(2000)、Halbert e
t al., J. Virol. 75:6615-6624(2001)、およびA
uricchio et al., Hum. Molec. Genet. 10:3
075-3081(2001)に記載されており、それらの開示は、遺伝子送達のための
AAVベクターに関するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0112】
本明細書に記載の組成物および方法と併せて有用なものには、偽型化rAAVベクター
もある。偽型化ベクターには、所与の血清型(例えば、AAV1、AAV3、AAV4、
AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、またはAAV9)以外の血清型に由来するキ
ャプシド遺伝子で偽型化された所与の血清型(例えば、AAV2)のAAVベクターが含
まれる。例えば、代表的な偽型化ベクターは、AAV血清型8またはAAV血清型9に由
来するキャプシド遺伝子で偽型化された治療タンパク質をコードするAAV2ベクターで
ある。偽型化rAAVビリオンのrAAVビリオンおよび使用を含む技術は、当該技術分
野で既知であり、例えば、Duan et al., J. Virol. 75:76
62-7671(2001)、Halbert et al., J. Virol.
74:1524-1532(2000)、Zolotukhin et al., Me
thods, 28:158-167(2002)、およびAuricchio et
al., Hum. Molec. Genet., 10:3075-3081(20
01)に記載されている。
【0113】
ビリオンキャプシド内に突然変異があるAAVビリオンは、変異していないキャプシド
ビリオンよりも効果的に特定の細胞型を感染させるために用いられ得る。例えば、適切な
AAV突然変異体は、AAVを特定の細胞型に標的化することを容易にするためのリガン
ド挿入突然変異体を有し得る。挿入突然変異体、アラニンスクリーニング突然変異体、お
よびエピトープタグ突然変異体を含むAAVキャプシド突然変異体の構成および特徴付け
は、Wu et al., J. Virol. 74:8635-45(2000)に
記載されている。本発明の方法で使用することができる他のrAAVビリオンには、ウイ
ルスの分子育種およびエキソンシャッフリングによって生成されるキャプシドハイブリッ
ドが含まれる。例えば、Soong et al., Nat. Genet., 25
:436-439(2000)、およびKolman and Stemmer, Na
t. Biotechnol. 19:423-428(2001)を参照のこと。
【0114】
標的細胞への導入遺伝子の送達のための付加的方法
トランスフェクション技術
本明細書に記載の転写調節エレメントに作動可能に連結されたCASQ2導入遺伝子な
どのCASQ2導入遺伝子を標的細胞に導入するために利用可能な技術は、当該技術分野
で既知である。例えば、エレクトロポレーションは、対象の細胞に静電ポテンシャルを印
加することによって哺乳動物細胞(例えば、ヒト標的細胞)を透過性にするために使用す
ることができる。このようにして外部電界にさらされたヒト細胞などの哺乳動物細胞は、
その後、外因性核酸の取り込みを受けやすくなる。哺乳動物細胞のエレクトロポレーショ
ンは、例えば、Chu et al., Nucleic Acids Researc
h 15:1311(1987)に詳細に記載されており、その開示は、参照により本明
細書に組み込まれる。類似の技術であるNucleofectionTM(核酸を遺伝子注
入する技術)は、真核細胞の核への外因性ポリヌクレオチドの取り込みを刺激するために
、印加電界を利用する。NucleofectionTMおよびこの技術を実行するために
有用なプロトコルは、例えば、Distler et al., Experiment
al Dermatology 14:315(2005)、およびUS2010/03
17114に詳細に記載されており、それらの開示は、参照により本明細書に組み込まれ
る。
【0115】
標的細胞のトランスフェクションに有用なさらなる技術には、スクイーズポレーション
法が含まれる。この技術は、印加応力に応答して形成される膜状の細孔を介した外因性D
NAの取り込みを刺激するために、細胞の急速な機械的変形を誘発する。この技術は、ヒ
ト標的細胞などの細胞内への核酸の送達にベクターを要しないという点で有利である。ス
クイーズポレーションは、例えば、Sharei et al., Journal o
f Visualized Experiments 81:e50980(2013)
に詳細に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0116】
リポフェクションは、標的細胞のトランスフェクションに有用な別の技術である。この
方法は、リポソームへの核酸のロードを含み、これは、リポソームの外部に向かって、四
次またはプロトン化アミンなどのカチオン性官能基を呈示することが多い。これによって
、細胞膜の陰イオン性によりリポソームと細胞との間の静電相互作用を促進し、最終的に
、例えばリポソームと細胞膜との直接融合または複合体のエンドサイトーシスによって、
外因性核酸の取り込みをもたらす。リポフェクションは、例えば、US7,442,38
6に詳細に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。細胞膜と
のイオン相互作用を利用して外来核酸の取り込みを誘発する類似の技術には、細胞をカチ
オン性ポリマー-核酸複合体と接触させることが含まれる。細胞膜との相互作用に有利な
正電荷を与えるようにポリヌクレオチドと結合する例示的なカチオン性分子は、活性化デ
ンドリマー(例えば、Dennig, Topics in Current Chem
istry 228:227(2003)に記載されており、その開示は参照により本明
細書に組み込まれる。)、および、ジエチルアミノエチル(DEAE)デキストランであ
り、これらのトランスフェクション剤としての使用は、例えば、Gulick et a
l., Current Protocols in Molecular Biolo
gy 40:I:9.2:9.2.1(1997)に詳細に記載されており、その開示は
、参照により本明細書に組み込まれる。磁気ビーズは、緩やかで効率的な方法で標的細胞
をトランスフェクトするために使用できる別のツールである。この方法は、核酸の取り込
みを指示するために印加された磁場を利用するからである。この技術は、例えば、US2
010/0227406に詳細に記載されており、その開示は、参照により本明細書に組
み込まれる。
【0117】
標的細胞による外因性核酸の取り込みを誘導するための別の有用なツールは、レーザー
フェクションであり、これは、細胞を穏やかに透過性にし、ポリヌクレオチドが細胞膜に
浸透できるようにするために、細胞を特定の波長の電磁放射に曝露することを含む技術で
ある。この技術は、例えば、Rhodes et al., Methods in C
ell Biology 82:309(2007)に詳細に記載されており、その開示
は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0118】
微小胞は、本明細書に記載の方法に従って標的細胞のゲノムを改変するために利用可能
な別の潜在的なビヒクルを表す。例えば、糖タンパク質VSV-Gと、ヌクレアーゼなど
のゲノム修飾タンパク質との共過剰発現によって誘導された微小小胞を使用して、タンパ
ク質を細胞内に効率的に送達し、その後、遺伝子または調節配列などの目的のポリヌクレ
オチドの共有結合取り込みのために細胞のゲノムを調製するように内因性ポリヌクレオチ
ド配列の部位特異的開裂を触媒する。真核細胞の遺伝子改変のための、ゲシクルとも呼ば
れるこのような小胞の使用は、例えば、Quinn et al., Genetic
Modification of Target Cells by Direct D
elivery of Active Protein [abstract]. In
: Methylation changes in early embryonic
genes in cancer [abstract], in: Proceed
ings of the 18th Annual Meeting of the A
merican Society of Gene and Cell Therapy
; 2015 May 13, Abstract No.122に詳細に記載されてい
る。
【0119】
遺伝子編集技術による標的遺伝子の組み込み
上記に加えて、目的の遺伝子をヒト細胞などの標的細胞に組み込むために利用可能な様
々なツールが開発されている。標的遺伝子をコードするポリヌクレオチドを標的細胞に組
み込むために利用可能な方法の1つは、トランスポゾンの使用を伴う。トランスポゾンは
、トランスポザーゼ酵素をコードするポリヌクレオチドであり、5’および3’切除部位
に隣接する目的のポリヌクレオチド配列または遺伝子を含む。トランスポゾンが細胞に送
達されると、トランスポザーゼ遺伝子の発現が始まり、結果的に、目的の遺伝子をトラン
スポゾンから開裂する活性酵素が生じる。この活動は、トランスポザーゼによるトランス
ポゾン切除部位の部位特異的認識によって媒介される。場合によっては、これらの切除部
位は、末端反復または逆方向末端反復であり得る。トランスポゾンから切除されると、目
的の遺伝子は、細胞の核ゲノム内に存在する同様の切除部位のトランスポザーゼ触媒開裂
によって、哺乳動物細胞のゲノムに組み込まれ得る。これにより、目的の遺伝子を、相補
的な切除部位において開裂核DNAに挿入することができ、その後の哺乳類細胞ゲノムの
DNAに目的の遺伝子を結合するホスホジエステル結合の共有核酸連結により、組み込み
プロセスが完了する。場合によっては、トランスポゾンは、標的遺伝子をコードする遺伝
子が最初にRNA産物に転写され、その後、哺乳動物細胞ゲノムに組み込まれる前にDN
Aに逆転写されるようなレトロトランスポゾンであり得る。例示的なトランスポゾンシス
テムは、ピギーバックトランスポゾン(例えば、WO2010/085699に詳細に記
載されている)およびSleeping Beautyトランスポゾン(例えば、US2
005/0112764に詳細に記載されている)であり、それらの開示は、目的の細胞
への遺伝子送達に使用するトランスポゾンに関連するため、参照により本明細書に組み込
まれる。
【0120】
標的遺伝子を標的細胞のゲノムに統合するための別のツールは、クラスター化して規則
的な配置の短い回文配列リピート(clustered regularly inte
rspaced short palindromic repeats(CRISPR
))/ Casシステムである。これは、もともとウイルス感染に対する細菌や古細菌の
適応防御メカニズムとして進化したシステムである。CRISPR/Casシステムには
、プラスミドDNA内のパリンドローム反復配列と、関連するCas9ヌクレアーゼとが
含まれる。このDNAとタンパク質のアンサンブルは、最初に外来DNAをCRISPR
遺伝子座に組み込むことにより、標的配列の部位特異的DNA開裂を指示する。これらの
外来配列とCRISPR遺伝子座のリピートスペーサーエレメントを含むポリヌクレオチ
ドは、次に宿主細胞で転写されてガイドRNAを作成し、その後、標的配列にアニーリン
グして、Cas9ヌクレアーゼをこの部位に局在化させることができる。このように、c
as9を標的DNA分子のすぐ近くにもたらす相互作用はRNA:DNAハイブリダイゼ
ーションによって支配されるため、非常に部位特異的なcas9を介したDNA開裂を外
来ポリヌクレオチドで引き起こすことができる。よって、目的の任意の標的DNA分子を
開裂するCRISPR/Casシステムを設計できる。この技術は、真核生物のゲノムを
編集するために利用されており(Hwang et al., Nature Biot
echnology 31:227(2013))、標的遺伝子をコードする遺伝子の組
み込み前にDNAを開裂するために標的細胞ゲノムを部位特異的に編集する効率的な手段
として利用可能である。遺伝子発現を調節するためのCRISPR/Casの使用は、例
えば、US8,697,359に記載されており、その開示は、ゲノム編集のためのCR
ISPR/Casシステムの使用に関連するため、参照により本明細書に組み込まれる。
目的の遺伝子を標的細胞に組み込む前にゲノムDNAを部位特異的に開裂するための代替
方法には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)および転写活性化因子様エフェクタ
ーヌクレアーゼ(TALEN)の使用が含まれる。CRISPR/Casシステムとは異
なり、これらの酵素には、特定の標的配列に局在するためのガイドポリヌクレオチドが含
まれない。代わりに、標的特異性は、これらの酵素内のDNA結合ドメインによって制御
される。ゲノム編集用途でのZFNおよびTALENの使用は、例えば、Urnov e
t al., Nature Reviews Genetics 11:636(20
10)およびJoung et al., Nature Reviews Molec
ular Cell Biology 14:49(2013)に記載されており、それ
らの開示は、ゲノム編集のための組成物および方法に関するため、参照により本明細書に
組み込まれる。
【0121】
標的遺伝子をコードするポリヌクレオチドを標的細胞のゲノムに組み込むために利用可
能な別のゲノム編集技術には、ゲノムDNAを部位特異的に開裂するように合理的に設計
できるARCUSTMメガヌクレアーゼの使用が含まれる。標的遺伝子をコードする遺伝子
を哺乳動物細胞のゲノムに組み込むためのこれらの酵素の使用は、そのような酵素につい
て確立された定義された構造活性相関の観点から有利である。一本鎖メガヌクレアーゼは
、特定のアミノ酸位置で修飾して、所望の位置でDNAを選択的に開裂するヌクレアーゼ
を生成し、標的細胞の核DNAへの標的遺伝子の部位特異的組み込みを可能にする。これ
らの一本鎖ヌクレアーゼは、例えば、US8,021,867およびUS8,445,2
51に詳しく記載されており、それらの開示は、ゲノム編集のための組成物および方法に
関するため、参照により本明細書に組み込まれる。
【0122】
導入遺伝子発現を測定する方法
患者の標的細胞(例えば、心筋細胞)によって発現されるCASQ2導入遺伝子の発現
レベルは、例えば、CASQ2導入遺伝子の転写に由来するmRNA転写物の濃度または
相対的存在量を評価することによって確認することができる。付加的または代替的に、遺
伝子発現は、CASQ2導入遺伝子の転写および翻訳によって生成されるCASQ2タン
パク質の濃度または相対的存在量を評価することによって決定することができる。タンパ
ク質濃度は、カルシウム存在量アッセイなどの機能アッセイを使用して評価することもで
きる。以下の節では、本明細書に記載の優性CPVTを有する患者などの患者への送達時
にCASQ2導入遺伝子の発現レベルを測定するために利用可能な例示的な技術について
説明する。導入遺伝子発現は、核酸配列決定、マイクロアレイ分析、プロテオミクス、i
n-situハイブリダイゼーション(例えば、蛍光in-situハイブリダイゼーシ
ョン(FISH))、増幅ベースのアッセイ、insituハイブリダイゼーション、蛍
光活性化セルソーティング(FACS)、ノーザン分析、および/またはmRNAのPC
R分析を含むがこれらに限定されない、当該技術分野で既知の多くの方法によって評価可
能である。
【0123】
核酸検出
本明細書に記載の組成物および方法と併せて分析に適した導入遺伝子発現検出方法デー
タセットを決定するための核酸ベースの方法には、イメージングベースの技術(例えば、
ノーザンブロッティングまたはサザンブロッティング)が含まれ、これは、導入遺伝子の
投与後の患者から得られる細胞と共に用いられ得る。ノーザンブロット分析は、当該技術
分野で周知の従来技術であり、例えば、Molecular Cloning, a L
aboratory Manual, second edition, 1989,
Sambrook, Fritch, Maniatis, Cold Spring
Harbor Press, 10 Skyline Drive, Plainvie
w, NY 11803-2500に記載されている。遺伝子および遺伝子産物の状態を
評価するための典型的なプロトコルは、例えば、Ausubel et al., ed
s., 1995, Current Protocols In Molecular
Biology, Units 2(Northern Blotting), 4(
Southern Blotting), 15(Immunoblotting) a
nd 18(PCR Analysis)に見られる。
【0124】
CASQ2発現を評価するために本明細書に記載の組成物および方法と併せて利用可能
な導入遺伝子検出技術にはさらに、マイクロアレイ配列決定実験(例えば、ハイスループ
ット配列決定またはディープ配列決定としても知られるサンガー配列決定および次世代配
列決定法)が含まれる。例示的な次世代配列決定技術には、イルミナ配列決定、イオント
レント配列決定、454配列決定、SOLiD配列決定、およびナノポア配列決定プラッ
トフォームが含まれるが、これらに限定されない。当技術分野で既知である他の配列決定
の方法も利用可能である。例えば、mRNAレベルでの導入遺伝子発現は、RNA-Se
qを使用して決定され得る(例えば、Mortazavi et al., Nat.
Methods 5:621-628(2008)に記載され、その開示は、参照により
その全体が本明細書に組み込まれる)。RNA-Seqは、サンプル中のRNA分子を直
接配列決定することで発現をモニタリングするための堅牢な技術である。簡単に言えば、
この方法は、RNAの平均長200ヌクレオチドへの断片化、ランダムプライミングによ
るcDNAへの変換、および二本鎖cDNAの合成を伴い得る(例えば、Agilent
TechnologyのJust cDNA DoubleStranded cDN
A Synthesis Kitを使用する)。そして、cDNAは、各ライブラリーの
配列アダプター(例えば、lllumina(R)/ Solexa)を追加することによ
って、配列決定用の分子ライブラリーに変換され、結果として得られる50~100ヌク
レオチドの読取りがゲノムにマッピングされる。
【0125】
マイクロアレイ技術は高解像度を提供するため、導入遺伝子の発現レベルは、マイクロ
アレイベースのプラットフォーム(一塩基多型アレイなど)を用いて決定されてもよい。
種々のマイクロアレイ法の詳細は、文献に記載されている。例えば、US6,232,0
68およびPollack et al., Nat. Genet. 23:41-4
6(1999)を参照のこと。それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込
まれる。核酸マイクロアレイを使用して、mRNAサンプルを逆転写および標識してcD
NAを生成する。その後、プローブを、固体支持体上に配列され固定化された1つ以上の
相補的核酸にハイブリダイズすることができる。アレイは、例えば、アレイの各メンバー
の配列および位置が既知であるように構成することができる。標識されたプローブと特定
のアレイメンバーとのハイブリダイゼーションは、プローブが由来するサンプルがその遺
伝子を発現していることを示す。発現レベルは、ハイブリダイズしたプローブ-サンプル
複合体から検出されたシグナルの量に従って定量化されてもよい。典型的なマイクロアレ
イ実験は、次のステップを含む:1)サンプルから単離されたRNAからの蛍光標識され
た標的の調製、2)マイクロアレイへの標識標的のハイブリダイゼーション、3)アレイ
の洗浄、染色、およびスキャン、4)スキャン画像の分析、および5)遺伝子発現プロフ
ァイルの生成。マイクロアレイプロセッサの一例は、Affymetrix社のGENE
CHIP(R)システムであり、これは市販されており、ガラス表面上でオリゴヌクレオチ
ドを直接合成することによって製造されたアレイを含む。当業者に既知の他のシステムを
用いてもよい。
【0126】
増幅ベースのアッセイは、患者への送達後の標的細胞における導入遺伝子の発現レベル
を測定するためにも使用できる。このようなアッセイでは、遺伝子の核酸配列は、増幅反
応(例えば、qPCRなどのPCR)のテンプレートとして機能する。定量的増幅では、
増幅産物の量は元のサンプルのテンプレートの量に比例する。適切な対照との比較によっ
て、本明細書に記載の原理に従って、使用される特定のプローブに対応する遺伝子の発現
レベルの尺度が提供される。TaqManプローブを使用するリアルタイムqPCRの方
法は当該技術分野で周知である。リアルタイムqPCRの詳細なプロトコルは、例えば、
Gibson et al., Genome Res. 6:995-1001(19
96)およびHeid et al., Genome Res. 6:986-994
(1996)に記載されており、それらの開示は、参照によりその全体が本明細書に組み
込まれる。本明細書に記載される遺伝子発現のレベルは、RT-PCR技術によって決定
することができる。PCRに使用されるプローブは、例えば、放射性同位元素、蛍光化合
物、生物発光化合物、化学発光化合物、金属キレーター、または酵素などの検出可能なマ
ーカーで標識され得る。
【0127】
タンパク質検出
導入遺伝子の発現はさらに、目的の遺伝子によってコードされる対応するタンパク質産
物(例えば、CASQ2)の濃度または相対的存在量を測定することによって決定するこ
とができる。タンパク質レベルは、当該技術分野で既知の標準的な検出技術を用いて評価
することができる。本明細書に記載の組成物および方法での使用に適したタンパク質発現
アッセイには、プロテオミクス法、免疫組織化学的および/またはウエスタンブロット分
析、免疫沈降、分子結合アッセイ、ELISA、酵素結合免疫濾過アッセイ(ELIFA
)、質量分析、質量分析免疫アッセイ、および生化学的酵素活性アッセイが含まれる。特
に、プロテオミクス法を使用して、マルチプレックスで大規模なタンパク質発現データセ
ットを生成することができる。プロテオミクス法は、質量分析を利用して、ポリペプチド
(例えば、タンパク質)および/または標的タンパク質のパネルに特異的な捕捉試薬(例
えば、抗体)を利用するペプチドマイクロアレイを検出および定量化して、サンプル(例
えば、単一細胞サンプルまたは複数細胞集団)で発現されるタンパク質の発現レベルを同
定および測定し得る。
【0128】
例示的なペプチドマイクロアレイは、基質に結合した複数のポリペプチドを有し、オリ
ゴヌクレオチド、ペプチド、またはタンパク質の、複数の結合したポリペプチドのそれぞ
れへの結合は、個別に検出可能である。あるいは、ペプチドマイクロアレイは、モノクロ
ーナル抗体、ポリクローナル抗体、ファージディスプレイバインダー、酵母ツーハイブリ
ッドバインダー、アプタマーを含むがこれらに限定されない複数のバインダーを含み得り
、これらは、特異的オリゴヌクレオチド、ペプチド、またはタンパク質結合を特異的に検
出することができる。ペプチドアレイの例は、US6,268,210、5,766,9
60、および5,143,854に見出すことができ、それらの開示は、参照によりその
全体が本明細書に組み込まれる。
【0129】
質量分析(MS)は、導入遺伝子の送達後の患者(例えば、ヒト患者)からの細胞にお
ける導入遺伝子発現を同定および特徴付けるために、本明細書に記載の方法と組み合わせ
て使用され得る。当該技術分野で既知の任意のMSの方法を用いて、目的のタンパク質ま
たはペプチドフラグメントを決定、検出、および/または測定することができる、例えば
、LC-MS、ESI-MS、ESI-MS/MS、MALDI-TOF-MS、MAL
DI-TOF/TOF-MS、タンデムMSなどを用いることができる。質量分析計は通
常、イオン源と光学系、質量分析計、およびデータ処理電子機器を備える。質量分析計に
は、飛行時間(TOF)や4倍(Q)などの走査型およびイオンビーム質量分析計が含ま
れ、イオントラップ(IT)、Orbitrap、フーリエ変換イオンサイクロトロン共
鳴(FT-ICR)などのトラッピング質量分析計を本明細書に記載の方法で用いてもよ
い。種々のMS方法の詳細は、文献に記載されている。例えば、Yates et al
., Annu. Rev. Biomed. Eng. 11:49-79, 200
9を参照のこと。その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0130】
MS分析の前に、患者から得られたサンプル中のタンパク質は、まず、化学的(例えば
、臭化シアン開裂を介して)または酵素的(例えば、トリプシン)消化によって、より小
さなペプチドに消化され得る。複雑なペプチドサンプルには、2D-PAGE、HPLC
、RPLC、アフィニティークロマトグラフィーなどのフロントエンド分離技術の使用も
有効である。次に、分解され任意に分離されたサンプルは、イオン源を用いてイオン化さ
れ、さらなる分析のための荷電分子が生成される。サンプルのイオン化は、例えば、エレ
クトロスプレーイオン化(ESI)、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、電
子イオン化、高速原子衝撃(FAB)/液体二次イオン化(LSIMS)、マトリックス
支援レーザー脱離/イオン化(MALDI)、フィールドイオン化、フィールド脱離、サ
ーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、および粒子ビームイオン化によって行われて
もよい。イオン化方法の選択に関する付加的な情報は、当業者に既知である。
【0131】
イオン化後、消化ペプチドをフラグメント化することにより、シグネチャーMS/MS
スペクトルを生成し得る。タンデムMSは、MS/MSとしても知られており、複雑な混
合物の分析に特に有用であり得る。タンデムMSは、MS選択の複数のステップを含み、
ステージ間で何らかの形のイオンフラグメンテーションが発生する。これは、空間で分離
された個々の質量分析計要素、または、MSステップを時間で分離した単一の質量分析計
を使用して、達成することができる。空間的に分離されたタンデムMSでは、要素は物理
的に分離されて別個であり、要素間の物理的な接続によって高真空が維持される。時間的
に分離されたタンデムMSでは、分離は、同じ場所にトラップされたイオンで達成され、
経時的に複数の分離ステップが行われる。その後、シグネチャーMS/MSスペクトルを
ペプチド配列データベース(SEQUESTなど)と比較してもよい。ペプチドへの翻訳
後修飾はまた、例えば、特定のペプチド修飾を可能にしながらデータベースに対してスペ
クトルを検索することによって決定され得る。
【0132】
医薬組成物
本明細書に記載のCASQ2導入遺伝子は、本明細書に記載されるように、優性CPV
Tを患っているヒト患者などの患者への投与のためのビヒクルに組み込まれてもよい。C
ASQ2導入遺伝子を含む、ウイルスベクターなどのベクターを含む医薬組成物は、当該
技術分野で既知の方法を用いて調製することができる。例えば、該組成物は、生理学的に
許容される担体、賦形剤、または安定剤(Remington’s Pharmaceu
tical Sciences 16th edition, Osol, A. Ed
.(1980)、参照により本明細書に組み込まれる)を使用して、凍結乾燥製剤または
水溶液などの所望の形態で調製することができる。
【0133】
本明細書に記載の核酸およびウイルスベクターの混合物は、1つ以上の賦形剤、担体、
または希釈剤と適切に混合された水中で調製することができる。分散液はまた、グリセロ
ール、液体ポリエチレングリコール、およびそれらの混合物、ならびに油中で調製しても
よい。通常の保管および使用条件下では、これらの製剤は、微生物の成長を防ぐための防
腐剤を含んでもよい。注射可能用途に適した剤形には、無菌の注射可能な溶液または分散
液の即時調製のための無菌の水溶液または分散液および無菌の粉末が含まれる(US5,
466,468に記載されており、その開示は参照により本明細書に組み込まれる)。い
ずれにせよ、製剤は無菌であり得、注射が容易な程度まで流動性であり得る。製剤は、製
造および保管の条件下で安定であり得、細菌および真菌などの微生物の汚染作用に対して
保存され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、
プロピレングリコール、および液体ポリエチレングリコールなど)、それらの適切な混合
物、および/または植物油を含む溶媒または分散媒体であり得る。適切な流動性は、例え
ば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散の場合に必要な粒子サイズの維持
によって、および界面活性剤の使用によって、維持され得る。微生物の作用の防止は、パ
ラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどの様々な抗菌剤
および抗真菌剤によって可能である。多くの場合、糖または塩化ナトリウムなどの等張剤
を含めることが好ましい。注射可能な組成物の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウ
ムおよびゼラチンなどの、吸収を遅らせる薬剤の組成物での使用によって可能である。
【0134】
例えば、本明細書に記載の医薬組成物を含む溶液は、必要に応じて適切に緩衝され得、
液体希釈剤は、最初に十分な生理食塩水またはグルコースで等張になる。これらの特定の
水溶液は、静脈内、筋肉内、皮下、および腹腔内投与に特に適している。これに関連して
、使用可能な無菌の水性媒体は、本開示に照らして当業者には既知であろう。例えば、1
回分の投薬量は、1mlの等張NaCl溶液に溶解され、1000mlの皮下溶解液に添
加されるか、または提案された注入部位に注射され得る。治療される対象の状態に応じて
、投薬量は必然的にいくらか変動する。投与の責任者は、いずれにせよ、個々の対象に適
切な用量を決定する。また、ヒトへの投与のために、調製物は、アメリカ食品医薬局生物
製剤部(FDA Office of Biologics)の基準によって要求される
無菌性、発熱原性、ならびに一般的な安全性および純度の基準を満たし得る。
【0135】
投与経路と投薬
導入遺伝子を含む、本明細書に記載のAAVベクターおよび他のベクターなどのウイル
スベクターは、様々な投与経路によって患者(例えば、ヒト患者)に投与され得る。投与
経路は、例えば、疾患の発症および重症度によって異なり、例えば、静脈内、髄腔内、皮
内、経皮(transdermal)、非経口、筋肉内、鼻腔内、皮下、経皮的(per
cutaneous)、気管内、腹腔内、動脈内、血管内、吸入、灌流、洗浄、および経
口投与を含む。血管内投与には、患者の血管系への送達が含まれる。いくつかの実施形態
において、投与は、静脈(静脈内)であると考えられる血管への投与であり、いくつかの
投与において、投与は、動脈(動脈内)であると考えられる血管への投与である。静脈に
は、内頸静脈、末梢静脈、冠状静脈、肝静脈、門脈、大伏在静脈、肺静脈、上大静脈、下
大静脈、胃静脈、脾静脈、下腸間膜静脈、上腸間膜静脈、頭静脈、および/または大腿静
脈が含まれるが、これらに限定されない。動脈には、冠状動脈、肺動脈、上腕動脈、内頸
動脈、大動脈弓、大腿動脈、末梢動脈、および/または繊毛動脈が含まれるが、これらに
限定されない。送達は、細動脈または毛細血管を介して、または細動脈または毛細血管へ
と行われ得ると考えられる。
【0136】
治療計画にはいろいろあり、多くの場合、疾患の重症度と患者の年齢、体重、および性
別によって決まる。治療は、様々な単位用量での標的細胞への導入遺伝子の導入に有用で
あるとして本明細書に記載されるベクター(例えば、ウイルスベクター)または他の薬剤
の投与を含み得る。各単位用量は、通常、所定量の治療用組成物を含む。
【0137】
導入遺伝子がウイルス遺伝子治療によって(例えば、AAV1、AAV2、AAV3、
AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAVrh74、AA
V2/8、またはAAV2/9ベクターなどの本明細書に記載のAAVベクターの投与に
よって)患者に送達される場合、ウイルスベクターは、例えば、約1x106ゲノムコピ
ー(GC)/kg~約1x1018GC/kgの用量で(例えば、約1x106GC/k
g、2x106GC/kg、3x106GC/kg、4x106GC/kg、5x106
GC/kg、6x106GC/kg、7x106GC/kg、8x106GC/kg、9
x106GC/kg、1x107GC/kg、2x107GC/kg、3x107GC/
kg、4x107GC/kg、5x107GC/kg、6x107GC/kg、7x10
7GC/kg、8x107GC/kg、9x107GC/kg、1x108GC/kg、
2x108GC/kg、3x108GC/kg、4x108GC/kg、5x108GC
/kg、6x108GC/kg、7x108GC/kg、8x108GC/kg、9x1
08GC/kg、1x109GC/kg、2x109GC/kg、3x109GC/kg
、4x109GC/kg、5x109GC/kg、6x109GC/kg、7x109G
C/kg、8x109GC/kg、9x109GC/kg、1x1010GC/kg、2
x1010GC/kg、3x1010GC/kg、4x1010GC/kg、5x101
0GC/kg、6x1010GC/kg、7x1010GC/kg、8x1010GC/
kg、9x1010GC/kg、1x1011GC/kg、2x1011GC/kg、3
x1011GC/kg、4x1011GC/kg、5x1011GC/kg、6x101
1GC/kg、7x1011GC/kg、8x1011GC/kg、9x1011GC/
kg、1x1012GC/kg、2x1012GC/kg、3x1012GC/kg、4
x1012GC/kg、5x1012GC/kg、6x1012GC/kg、7x101
2GC/kg、8x1012GC/kg、9x1012GC/kg、1x1013GC/
kg、2x1013GC/kg、3x1013GC/kg、4x1013GC/kg、5
x1013GC/kg、6x1013GC/kg、7x1013GC/kg、8x101
3GC/kg、9x1013GC/kg、1x1014GC/kg、2x1014GC/
kg、3x1014GC/kg、4x1014GC/kg、5x1014GC/kg、6
x1014GC/kg、7x1014GC/kg、8x1014GC/kg、9x101
4GC/kg、1x1015GC/kg、2x1015GC/kg、3x1015GC/
kg、4x1015GC/kg、5x1015GC/kg、6x1015GC/kg、7
x1015GC/kg、8x1015GC/kg、9x1015GC/kg、1x101
6GC/kg、2x1016GC/kg、3x1016GC/kg、4x1016GC/
kg、5x1016GC/kg、6x1016GC/kg、7x1016GC/kg、8
x1016GC/kg、9x1016GC/kg、1x1017GC/kg、2x101
7GC/kg、3x1017GC/kg、4x1017GC/kg、5x1017GC/
kg、6x1017GC/kg、7x1017GC/kg、8x1017GC/kg、9
x1017GC/kg、または1x1018GC/kgの用量で)患者に投与され得る。
いくつかの実施形態において、ベクターは、約1x108GC/kg~約1x1016G
C/kgの用量で(例えば、約1x108GC/kg、2x108GC/kg、3x10
8GC/kg、4x108GC/kg、5x108GC/kg、6x108GC/kg、
7x108GC/kg、8x108GC/kg、9x108GC/kg、1x109GC
/kg、2x109GC/kg、3x109GC/kg、4x109GC/kg、5x1
09GC/kg、6x109GC/kg、7x109GC/kg、8x109GC/kg
、9x109GC/kg、1x1010GC/kg、2x1010GC/kg、3x10
10GC/kg、4x1010GC/kg、5x1010GC/kg、6x1010GC
/kg、7x1010GC/kg、8x1010GC/kg、9x1010GC/kg、
1x1011GC/kg、2x1011GC/kg、3x1011GC/kg、4x10
11GC/kg、5x1011GC/kg、6x1011GC/kg、7x1011GC
/kg、8x1011GC/kg、9x1011GC/kg、1x1012GC/kg、
2x1012GC/kg、3x1012GC/kg、4x1012GC/kg、5x10
12GC/kg、6x1012GC/kg、7x1012GC/kg、8x1012GC
/kg、9x1012GC/kg、1x1013GC/kg、2x1013GC/kg、
3x1013GC/kg、4x1013GC/kg、5x1013GC/kg、6x10
13GC/kg、7x1013GC/kg、8x1013GC/kg、9x1013GC
/kg、1x1014GC/kg、2x1014GC/kg、3x1014GC/kg、
4x1014GC/kg、5x1014GC/kg、6x1014GC/kg、7x10
14GC/kg、8x1014GC/kg、9x1014GC/kg、1x1015GC
/kg、2x1015GC/kg、3x1015GC/kg、4x1015GC/kg、
5x1015GC/kg、6x1015GC/kg、7x1015GC/kg、8x10
15GC/kg、9x1015GC/kg、または1x1016GC/kgの用量で)患
者に投与される。いくつかの実施形態において、ベクターは、約1x1010GC/kg
~約1x1014GC/kgの用量で(例えば、約1x1010GC/kg、2x101
0GC/kg、3x1010GC/kg、4x1010GC/kg、5x1010GC/
kg、6x1010GC/kg、7x1010GC/kg、8x1010GC/kg、9
x1010GC/kg、1x1011GC/kg、2x1011GC/kg、3x101
1GC/kg、4x1011GC/kg、5x1011GC/kg、6x1011GC/
kg、7x1011GC/kg、8x1011GC/kg、9x1011GC/kg、1
x1012GC/kg、2x1012GC/kg、3x1012GC/kg、4x101
2GC/kg、5x1012GC/kg、6x1012GC/kg、7x1012GC/
kg、8x1012GC/kg、9x1012GC/kg、1x1013GC/kg、2
x1013GC/kg、3x1013GC/kg、4x1013GC/kg、5x101
3GC/kg、6x1013GC/kg、7x1013GC/kg、8x1013GC/
kg、9x1013GC/kg、または1x1014GC/kgの用量で)患者に投与さ
れる。
【実施例0138】
本明細書に記載の組成物および方法がどのように使用、製造、及び評価され得るかにつ
いての説明を当業者に提供するために、後述の実施例が挙げられる。後述の実施例は、本
発明の単なる例示であることを意図し、本発明者らが本発明であると考える範囲を限定す
ることを意図するものではない。
【0139】
実施例1:ヘテロ接合性RYR4496C/+マウスへのCASQ2の送達は、RYR2
、トリアジン、およびジャンクチンの発現とは独立した方法で不整脈を排除する。
材料および方法
動物の使用
動物を、イタリアのカルコにあるCharles River Laboratori
esで維持および飼育し、表現型の特徴付けのためにICS MaugeriSpa-S
Bに移送した。動物を、パヴィア大学によって動物福祉のための委員会で承認されたプロ
トコルに従って維持および研究した。
【0140】
ノックインR4496CRYR2マウスモデルの生成
本実施例に記載する実験では、ヒトRYR2R4997C突然変異の表現型を再現する
優性CPVTのヘテロ接合性RYR2R4496C/+ノックインマウスモデルを使用し
た。このマウスモデルの製造に関する詳細は、US7,741,529に記載されており
、その開示は、RYR2R4496C/+ノックインモデルの生成に関連するため、参照
により本明細書に組み込まれる。
【0141】
ベクターの設計および製造
これらの実験で使用したベクターのうちの1つの設計の詳細な説明は、US8,859
,517に提供されている。簡単に説明すると、UTR配列なしの、野生型マウスCAS
Q2(NCBI参照配列番号NM_009814.2)のコード配列を含む、偽型化アデ
ノ随伴血清型9ベクター(AAV2/9)を生成した。野生型マウスCASQ2をpGE
M-T-Easyベクター(Promega)にクローニングした。EcoRIを使用し
た酵素消化により、CASQ2導入遺伝子に対応するインサートをpGEMベクターから
切り出し、ビスシストロン性pIRESベクター(BD Biosciences,Ca
t. No:631605,Clontech、パロアルト、カリフォルニア州、米国)
においてサブクローニングした。その後、CASQ2導入遺伝子に対応するフラグメント
とそれに続くIRES配列を、特定のプライマーを使用したPCR増幅によってサブクロ
ーニングした(Not1酵素部位を含むフォワード5’CACAGCGGCCGCACA
ATGAAGAGGATTTACCTGCTCATGG-3’(配列番号5)およびリバ
ース5’-CGAAGCATTAACCCTCACTAAAGGG-3’(配列番号6)
)。アンプリコンを、NotIによる酵素消化によって、アデノ随伴ウイルス(AAV)
ベクターコアファシリティ(ティゲム、ナポリ、イタリア)によって提供されたアデノウ
イルスバックボーンベクターpAAV-2.1-eGFP、血清型9(ウシ成長ホルモン
(BGH)polyA配列およびCMVプロモーターを含む)に挿入した。全てのプラス
ミドの配列を決定した。
【0142】
AAVの製造は、ティゲムAAVベクターコアファシリティと協力して行った。AAV
ベクターを、HEK293細胞における次の3つのプラスミドの一過性トランスフェクシ
ョンを用いて製造した:pAd helper、pAAV rep-cap(パッケージ
ング)、およびpAAVCis(CASQ2インサートを含み、pAAV2.1-CMV
-eGFPプラスミドMCSにクローニング化される)。ウイルス力価を評価するために
リアルタイムPCRとドットブロット分析を行い、キャプシドタンパク質の存在と純度を
評価するためにSDSPAGEとそれに続くクーマシー(Coomassie)染色を行
った。感染性と無菌性も評価した。サービスは、1x1012ゲノムコピーを超える総収
量でPBS中のウイルス調製物とともに戻った。全てのAAV2/9-WT-mCASQ
2-IRES-eGFPストックを-80°Cで単一アリコートずつ凍結し、外科手術中
に解凍した。
【0143】
同様の組み換えAAV製造方法を使用して、これらの実験で調査した第2のベクターを
提供した。第2のベクターは、デスミンプロモーターに作動可能に連結された野生型CA
SQ2をコードする導入遺伝子を含む偽型化AAV2/8ベクターであった。この第2の
ベクターの様々な成分を
図4に示す。
【0144】
定量的リアルタイムPCR
RYR2R4496C/+マウスの心臓組織からおよびAAV9-WT-mCASQ2
IRES-eGFPウイルスベクターに感染したRYR2R4496C/+ヘテロ接合性
ノックインマウスからの総RNAを、RNeasyミニキット(Qiagen)で精製し
た。反応あたり1μgのテンプレートRNAの総量を、iScript cDNA合成キ
ット(Bio-Rad Laboratories、Inc.、米国)を用いて行ったR
T-PCRアッセイに使用した。種々の目的の遺伝子(RYR2CASQ2、トリアジン
、ジャンクチン)および参照遺伝子(GAPDH)のmRNAのリアルタイム定量化を、
CFX96検出モジュール(Bio-Rad Laboratories、Inc.)を
使用して光学96ウェルプレートで実施した。全サンプルを、特定のプライマーミックス
と既に報告されたプライマー(Denegri et al., Circulatio
n 129:267381(2014))を含む20ngのcDNAテンプレートを使用
して、SsoFast EvaGreen Supermixで3回分析した。リアルタ
イムPCRを、CFX96リアルタイムPCR検出システムを用いて行い、Bio-Ra
d CFX96 Managerソフトウェア(バージョン1.5)を用いて分析した。
【0145】
生体内(in vivo)実験
図1に示す構成物を含むAAVベクターを、生後8日目(P8)に25ゲージの注射器
でn=4の新生児マウスに6.4x10
11ゲノムコピーの用量で100μlの精製ウイ
ルスの腹腔内注射により送達した。合計n=5の同腹仔は治療されなかった。
【0146】
7週齢で、心電図検査(ECG)とラジオテレメトリーモニター(Data Scie
nces International)を、全てのマウスに全身麻酔(イソフルラン1
.5~3%)下で皮下移植した。手術から72時間回復した後、表現型の特徴付けを行っ
た。自発性不整脈の存在を評価するために、基礎心電図を記録した。直後に、アドレナリ
ン作動性誘発性不整脈に対するマウスの感受性を、腹腔内注射によってエピネフリン(2
mg/kg)およびカフェイン(120mg/kg)を投与することによってテストした
(Cerrone et al., M, Circulation Research
96:e77-e82(2005)、Liu et al., Circulatio
n Research 99:292-298(2006))。ECG記録が行われてい
る間、全ての動物は自由に動いていた。
【0147】
その後、優性遺伝性CPVTに対するモデル生物における該構成物の抗不整脈効果を調
査するために、この実験を、
図4に示すAAV2/8ベクターを使用して繰り返した。R
YR2R4496C/+ヘテロ接合性マウス(n=9)に、AAV2/8ベクターをkg
あたり6x10
13ベクターゲノム(vg)の用量で投与した。未治療のRYR2R44
96C/+ヘテロ接合性マウス(n=9)をコントロールとして使用した。投与後2ヶ月
で、マウスを、エピネフリンおよびカフェイン刺激下でin vivoでの電気生理学的
分析(ECG)によって評価した。
【0148】
結果
図2に示すように。CASQ2導入遺伝子をコードするAAVベクターのRYR2
R4
996C/+マウスへの投与の結果、カフェインおよびエピネフリン誘発性不整脈が完全
に抑制された。β-アドレナリン作動性刺激後、n=4のAAVCASQ2治療マウスは
いずれも不整脈活動を示さなかったが、n=5の未治療マウスは全て不整脈を示した。ま
た、RYR2
R4996C/+マウスにおけるCASQ2送達の治療効果は、RYR2ま
たは膜関連タンパク質であるトリアジンおよびジャンクチンの活性に依存しなかった。図
3に示すように、AAVCASQ2ベクターの投与の結果、心筋細胞におけるCASQ2
発現が上昇したが、該細胞におけるRYR2、トリアジン、またはジャンクチンの発現は
実質的に変化しなかった。
【0149】
図5に示すように、AAV2/8構成物を使用して同様の結果が得られた。特に、AA
V2/8-デスミン-CASQ2ベクターの投与の結果、RYR2
R4996C/+マウ
スにおけるカフェインおよびエピネフリン誘発性不整脈が完全に抑制された一方、未治療
のマウスの44%が不整脈を示した。
【0150】
まとめると、これらの結果は、優性CPVTのマウスモデルにおけるCASQ2導入遺
伝子送達が、双方向性および多型性不整脈の矯正を促進することを実証している。驚くべ
きことに、RYR2送達を必要とせずに、CASQ2遺伝子導入のみで、アドレナリン作
動性活性化により不整脈を引き起こす生理学的洞調律を予防することが分かった。マウス
優性CPVTモデルでのCASQ2遺伝子治療の結果、心筋細胞でのCASQ2発現が増
加し、抗不整脈性心臓収縮機能が回復した。
【0151】
これらの結果および本明細書で提示される説明を鑑みて、CASQ2遺伝子治療は、後
述の実施例2に示されるように、優性CPVTの治療のためのパラダイムとして使用する
ことができる。
【0152】
実施例2:CASQ2導入遺伝子を含むウイルスベクターの投与によるヒト患者の優性C
PVTの治療
当該技術分野で既知である従来の分子生物学技術を使用して、配列番号1のアミノ酸配
列を有する野生型ヒトCASQ2タンパク質(または配列番号1のアミノ酸配列と少なく
とも85%の配列同一性を有するその変種)などのCASQ2タンパク質をコードする遺
伝子を、ウイルスベクターに組み込みヒト患者への投与のために配合することができる。
例えば、優性CPVTを患っている患者に、心筋細胞におけるCASQ2発現を促進する
転写調節エレメントの制御下でCASQ2導入遺伝子を含むAAVベクターを投与するこ
とができる。AAVベクターは、AAV2の5’および3’逆方向末端反復の間にCAS
Q2導入遺伝子を組み込み、AAV8またはAAV9キャプシドタンパク質(AAV2/
8またはAAV2/9ベクターなど)によってキャプシド形成される偽型化ベクターであ
ってもよい。AAVベクターは、特に、静脈内、筋肉内、または皮下などの様々な投与経
路によって対象に投与することができる。
【0153】
ベクターを患者に投与した後、当該技術分野の専門家は、様々な方法によって、CAS
Q2遺伝子の発現、および治療に応答した患者の改善をモニターすることができる。例え
ば、医師は、導入遺伝子の投与後に患者が示す不整脈事象の量または頻度を分析すること
によって、患者の心機能をモニターすることができる。導入遺伝子の投与前に評価された
同等の期間と比較して、CASQ2導入遺伝子の投与後の特定期間に患者が不整脈活動を
ほとんどまたはまったく示さないという所見は、患者が治療に好意的に反応していること
を示唆し得る。その後の投与量は、必要に応じて決定して投与することができる。
【0154】
他の実施形態
本明細書で述べられている全ての出版物、特許、及び特許出願は、あたかも、それぞれ
独立した出版物又は特許出願が具体的且つ個別に参照により組み込まれることが示されて
いるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0155】
本発明はその具体的な実施形態と関係して記載されてきたものの、更なる変更が可能で
あり、また、本出願は、一般に本発明の原理に従って、且つ、本発明が関連する技術分野
において既知のまたは慣行されている範囲内にあり、前述の本質的な特徴に適用すること
ができ、そして特許請求の範囲に従った本発明からのこのような展開も含めて、本発明の
あらゆる変形、使用、又は適応を網羅する意図であると理解されるであろう。
【0156】
他の実施形態は、特許請求の範囲内にある。
前記合成ウイルスは、キメラウイルス、モザイクウイルス、または偽型化ウイルスである、および/または、外来タンパク質、合成ポリマー、ナノ粒子、または小分子を含む、請求項8に記載の医薬組成物。
前記プロモーターは、デスミンプロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、ミオシン軽鎖2プロモーター、アルファアクチンプロモーター、トロポニン1プロモーター、Na+/Ca2+交換体プロモーター、ジストロフィンプロモーター、クレアチンキナーゼプロモーター、アルファ7インテグリンプロモーター、脳性ナトリウム利尿ペプチドプロモーター、アルファBクリスタリン/小熱ショックタンパク質プロモーター、アルファミオシン重鎖プロモーター、または心房性ナトリウム利尿因子プロモーターであり、好ましくはデスミンプロモーターである、請求項1~14のいずれかに記載の医薬組成物。