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特開2024-119910アフリベルセプトの属性、並びにその特性決定及び修飾方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119910
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】アフリベルセプトの属性、並びにその特性決定及び修飾方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 21/02 20060101AFI20240827BHJP
   C07K 19/00 20060101ALI20240827BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20240827BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240827BHJP
   C07K 1/18 20060101ALI20240827BHJP
   C07K 1/20 20060101ALI20240827BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240827BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240827BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C12P21/02 C
C07K19/00 ZNA
C07K14/705
C07K16/18
C07K1/18
C07K1/20
C12N5/10
A61K39/395 N
A61K39/395 Y
A61P27/02
A61P35/00
C07K19/00
【審査請求】有
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024092790
(22)【出願日】2024-06-07
(62)【分割の表示】P 2021543385の分割
【原出願日】2020-01-29
(31)【優先権主張番号】62/798,903
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルオ,チャンジョウ
(72)【発明者】
【氏名】ベーレ,ダイアナ
(72)【発明者】
【氏名】ジェルムズ,マシュ―
(72)【発明者】
【氏名】クーンズ,スコット
(72)【発明者】
【氏名】ハン,シュエジュン
(72)【発明者】
【氏名】マシーズ,ケリー・エム・ジー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】アフリベルセプト種の混合物を含有する組成物を含む、アフリベルセプトの組成物を提供する。
【解決手段】アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を生産する方法であって、アフリベルセプト種の混合物を含む細胞培養液を、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)工程、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を含む精製プロセスに供することを含む、方法とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号3を含むアフリベルセプトのY92Lクリッピング種。
【請求項2】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物であって、前記組成物中のY92Lクリッピング種の量は、rCE-SDSによって判定して5.0%未満である、組成物。
【請求項3】
前記組成物中のY92Lクリッピング種の量が0.8%未満である、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記組成物中のY92Lクリッピング種の量が約0.4%である、請求項3に記載の組成物。
【請求項5】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物であって、前記アフリベルセプト種の少なくとも30%が、rCE-SDSによって判定して、N68位において占有されている、組成物。
【請求項6】
前記アフリベルセプト種の少なくとも50%がN68位において占有されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項7】
前記アフリベルセプト種の50~60%がN68位において占有されている、請求項6に記載の組成物。
【請求項8】
前記アフリベルセプト種の約39%、53%、54%、又は55%がN68位において占有されている、請求項5に記載の組成物。
【請求項9】
前記混合物中のY92Lクリッピング種の量が1%~3%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記混合物中のY92Lクリッピング種の量が0.8%未満である、請求項8に記載の組成物。
【請求項11】
前記混合物中のY92Lクリッピング種の量が約0.4%である、請求項8に記載の組成物。
【請求項12】
前記アフリベルセプト種の54~55%がN68位で占有されており、前記混合物中のY92Lクリッピング種の量は約1.1%である、請求項9に記載の組成物。
【請求項13】
前記アフリベルセプト種の54~55%がN68位で占有されており、前記混合物中のY92Lクリッピング種の量は約0.4%である、請求項11に記載の組成物。
【請求項14】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物であって、アフリベルセプト種の合計シアル酸含量が、LC-MSベースのペプチドマッピング法により判定して6.0~10.0mol/molタンパク質である、組成物。
【請求項15】
前記合計シアル酸含量が約6.8、8.5、又は9.5(mol/molタンパク質)である、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記合計シアル酸含量は約9.5mol/molタンパク質であり、前記アフリベルセプト種の54~55%がN68位で占有され、前記混合物中のY92Lクリッピング種の量は約1.1%である、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記合計シアル酸含量は約9.5mol/molタンパク質であり、前記アフリベルセプト種の54~55%がN68位で占有され、前記混合物中のY92Lクリッピング種の量は約0.4%である、請求項15に記載の組成物。
【請求項18】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物であって、前記アフリベルセプト種はFcドメイン中に1.0~12%のアフコシル化を含む、組成物。
【請求項19】
前記アフリベルセプト種は前記Fcドメイン中に10%未満のアフコシル化を含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記アフリベルセプト種は前記Fcドメイン中に約6%のアフコシル化を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
前記アフリベルセプト種は前記Fcドメイン中に5%未満のアフコシル化を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項22】
前記アフリベルセプト種は前記Fcドメイン中に約4%のアフコシル化を含む、請求項19に記載の組成物。
【請求項23】
前記アフリベルセプト種は、
a)N68に0.1~2.0(mol/molタンパク質)のシアル酸、
b)T33に1.0~25.0%のO-グリコシル化、
c)N36に70~99%のN-グリコシル化、
d)N68に20~75%のN-グリコシル化、
e)前記Fcドメイン中に0.1~1.0%の高マンノース、
f)前記Fcドメイン中に約26%のガラクトシル化、
g)前記Fcドメイン中に約1%のシアル化、又は
h)これらの任意の組み合わせを含む、請求項18~22のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項24】
前記アフリベルセプト種は、
a)N68に約0.7(mol/molタンパク質)のシアル酸、
b)T33に約4%のO-グリコシル化、
c)N36に約95%のN-グリコシル化、
d)N68に約26%のN-グリコシル化、
e)前記Fcドメイン中に約1%の高マンノース、
f)前記Fcドメイン中に約26%のガラクトシル化、
g)前記Fcドメイン中に約1%のシアル化、又は
h)これらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記アフリベルセプト種は、
a)N68に約0.8(mol/molタンパク質)のシアル酸、
b)T33に約8.3%のO-グリコシル化、
c)N36に約90.9%のN-グリコシル化、
d)N68に約51.9%のN-グリコシル化、
e)前記Fcドメイン中に約0.4%の高マンノース、
f)前記Fcドメイン中に約24.4%のガラクトシル化、
g)前記Fcドメイン中に約3.8%のシアル化、又は
h)これらの任意の組み合わせを含む、請求項23に記載の組成物。
【請求項26】
前記混合物中のY92Lクリッピング種の量が約0.4%である、請求項18~25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
PlGF及び/又はVEGF-Aに対するアフリベルセプト種の混合物を含む組成物の結合を増加させる方法であって、前記混合物中のY92Lクリッピング種の量を低減することを含む、方法。
【請求項28】
PlGFに対するアフリベルセプト種の混合物を含む組成物の結合を増加させる方法であって、アフリベルセプトのN68占有率を低減することを含む、方法。
【請求項29】
前記PlGFはPlGF-1である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記PlGFはPlGF-2である、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項31】
アニオン交換クロマトグラフィー工程、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー工程でアフリベルセプトを精製することを含む、請求項27に記載の方法。
【請求項32】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を生産する方法であって、
アフリベルセプト種の混合物を含む細胞培養液を、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)工程、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を含む精製プロセスに供することを含み、
AEX工程、続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)工程を含む精製プロセスと比較してより少ない量のY92Lクリッピング種が生産される、方法。
【請求項33】
前記精製プロセスはCEX工程を含まない、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を生産する方法であって、
a)アフリベルセプトを生産する細胞を収穫することと、
b)収穫した細胞培養液をタンパク質Aカラムに供することと、
c)アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、それに続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を実施することと、を含む、方法。
【請求項35】
AEXの後にHICが続く、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記方法はCEXを含まない、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
AEXの後にCEXが続く、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項34~37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記細胞は灌流又はフェドバッチによって成長する、請求項34~38のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記細胞は、酸析出、遠心分離、深層濾過、又はこれらの任意の組み合わせによって収穫される、請求項34~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
1つ以上のウイルス不活性化及び/又はウイルス濾過工程を更に含む、請求項34~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程を更に含む、請求項34~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
AEXを実施する前にCEXを実施することを含まない、請求項34~42のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施することを含まない、請求項34~43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、2019年1月30日出願の米国仮特許出願第62/798,903号明細書の利益を主張する。
【0002】
配列表
本願は、電子フォーマットの配列表と共に出願されている。配列表は、2020年1月29日に作成された、サイズが20.5kbの、A-2287-WO-PCT_SeqList.txtという名称のファイルとして提供される。電子フォーマットの配列表における情報は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、アフリベルセプト、具体的にはアフリベルセプトの属性に関する。本明細書では、アフリベルセプトの属性を特性決定及び修飾する方法、並びに特定の属性を備えるアフリベルセプトを含む組成物も提供される。
【背景技術】
【0004】
血管内皮増殖因子(VEGF)は、VEGF-Aとも称され、新しい血管の成長を促進し、VEGFR-1及びVEGFR-2に結合するシグナルタンパク質である。VEGFは、多くの腫瘍で上昇することが分かっており、血管新生における役割を有する。VEGFは、滲出加齢黄斑変性(AMD)の有意な態様である、脈絡膜血管新生(CNV)などの眼内血管新生において役割を有することも分かっている。
【0005】
VEGF阻害剤、例えば抗VEGF抗体及び断片並びにデコイ受容体又はキメラ受容体は、様々な病態、例えば癌及び眼障害などを処置するための治療薬として開発されてきた。例えば、抗VEGF抗体及び抗VEGF Fabは、両方ともそれぞれベバシズマブ及びラニビズマブとして市販されている。また、アフリベルセプト、VEGFR-Fc融合タンパク質又は「VEGF-trap」は、市販されている。
【0006】
アフリベルセプトは、VEGFR-1のIgドメイン2及びVEGFR-2のIgドメイン3に融合したIgG1 Fcドメインで構成される融合タンパク質である。アフリベルセプトは、滲出型AMDを含む様々な眼病態処置のためのEylea(登録商標)(Regeneron,Tarrytown,NY)として販売されており、硝子体内投与のために製剤化される。融合タンパク質は、特定の型の癌処置のためのZaltrap(登録商標)(ziv-アフリベルセプト)(Regeneron,Tarrytown,NY)としても販売されており、静脈内投与のために製剤化される。
【0007】
タンパク質の属性は、少なくともタンパク質生成物の品質において重要な役割を有し得る。したがって、本明細書では、アフリベルセプトの属性を特性決定及び修飾する方法、並びに属性を備えるアフリベルセプトを含む組成物、並びに関連する利点が提供される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、アフリベルセプト種の混合物を含有する組成物を含む、アフリベルセプトの組成物を提供する。本明細書ではアフリベルセプト種も提供される。一実施形態では、アフリベルセプトのある種は、アフリベルセプトの別の種よりも異なる1つ以上の属性を有する。いくつかの実施形態では、差異はある属性の有無である。別の実施形態では、その差異はある属性のレベル又は量である。本明細書では、アフリベルセプトの1つ以上の属性を特性決定する方法、並びにアフリベルセプトの1つ以上の属性を修飾する、アフリベルセプトを精製する、及びアフリベルセプトの組成物を生産する方法も提供される。
【0009】
本開示の一態様は、アフリベルセプトのY92Lクリッピング種(clipped species)である、アフリベルセプト種である。Y92Lクリッピング種は配列番号3を含み得る。
【0010】
本開示の別の態様は、Y92Lクリッピング種を含むアフリベルセプト種の混合物を含む組成物である。一実施形態では、組成物中のY92Lクリッピング種の量は、還元キャピラリ電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)により判定して5.0%未満である。一実施形態では、組成物中のY92Lクリッピング種の量は、rCE-SDSにより判定して0.8%未満である。いくつかの実施形態では、組成物中のY92Lクリッピング種の量は、rCE-SDSにより判定して、組成物の3.0%未満、1.0%~5.0%、若しくは1.0%~3.0%、約1.1%、約3.0%、又は約4.7%である。一実施形態では、組成物中のY92Lクリッピング種の量は、rCE-SDSにより判定して約0.4%である。
【0011】
本開示の別の態様では、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物は、アフリベルセプトのN68占有種(occupied species)を含む。一実施形態では、アフリベルセプト種の少なくとも30%が、rCE-SDSにより判定して、N68位で占有される。いくつかの実施形態では、アフリベルセプト種の少なくとも50%、50~60%、約39%、約53%、約54%、又は約55%がN68位で占有される。いくつかの実施形態では、組成物は、組成物の1%~3%、0.8%未満、約1.1%、又は約0.4%などのY92Lクリッピング種を更に含む。
【0012】
本開示は、アフリベルセプト種の合計シアル酸含量が、LC-MSベースのペプチドマッピングにより判定して6.0~10.0mol/molタンパク質である、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を更に提供する。一実施形態では、合計シアル酸含量は、約6.8、約8.5、約9.5mol/molタンパク質である。いくつかの実施形態では、合計シアル酸含量は約9.5mol/molタンパク質であり、ここでアフリベルセプト種の54~55%がN68位で占有され、混合物中のY92Lクリッピング種の量は約1.1%である。
【0013】
本開示の別の態様は、アフリベルセプト種がFcドメイン中に13%未満のアフコシル化を含む、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物である。アフコシル化の割合は、LC-MSベースのペプチドマッピングなどの当該技術分野で既知の任意の方法によって判定することができる。一実施形態では、アフリベルセプト種はFcドメイン中に1.0~12%のアフコシル化を含む。別の実施形態では、アフリベルセプト種は、Fcドメイン中に12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、又は5%未満のアフコシル化を含む。一実施形態では、アフリベルセプト種はFcドメイン中に10%未満のアフコシル化を含む。別の実施形態では、アフリベルセプト種はFcドメイン中に5%未満のアフコシル化を含む。別の実施形態では、アフリベルセプト種は、Fcドメイン中に約12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、又は4%のアフコシル化を含む。更に別の実施形態では、アフリベルセプト種はFcドメイン中に約4%のアフコシル化を含む。
【0014】
本開示の別の態様は、アフリベルセプト種が、N68に0.1~2.0(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に1.0~25.0%のO-グリコシル化、N36に70%~99%のN-グリコシル化、N68に20%~75%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に0.1~1.0%の高マンノース、Fcドメイン中に約26%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約1%のシアル化、又はこれらの任意の組み合わせを含む、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物である。アフリベルセプト種は、Fcドメイン中に13%未満のアフコシル化、例えばFcドメイン中に1.0~12%のアフコシル化、又はFcドメイン中に約12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、又は4%のアフコシル化、例えばFcドメイン中に5%未満のアフコシル化を更に含み得る。一実施形態では、アフリベルセプト種はFcドメイン中に約4%のアフコシル化を含む。
【0015】
混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.7(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約4%のO-グリコシル化、N36に約95%のN-グリコシル化、N68に約26%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約1%の高マンノース、Fcドメイン中に約26%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約1%のシアル化、Fcドメイン中に13%未満のアフコシル化、例えばFcドメイン中に1.0~12%のアフコシル化、若しくはFcドメイン中に約12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、又は4%のアフコシル化、又はこれらの任意の組み合わせを更に含み得る。一実施形態では、混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.7(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約4%のO-グリコシル化、N36に約95%のN-グリコシル化、N68に約26%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約1%の高マンノース、Fcドメイン中に約6%のアフコシル化、Fcドメイン中に約26%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約1%のシアル化、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0016】
混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.7(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約4%のO-グリコシル化、N36に約95%のN-グリコシル化、N68に約26%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約1%の高マンノース、Fcドメイン中に約26%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約1%のシアル化、Fcドメイン中に13%未満のアフコシル化、例えばFcドメイン中に1.0~12%のアフコシル化、若しくはFcドメイン中に約12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、又は4%のアフコシル化、0.8%未満、例えば約0.4%のY92Lクリッピング種、又はこれらの任意の組み合わせを更に含み得る。
【0017】
混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.8(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約8.3%のO-グリコシル化、N36に約90.9%のN-グリコシル化、N68に約51.9%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約0.4%の高マンノース、Fcドメイン中に約24.4%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約3.8%のシアル化、Fcドメイン中に13%未満のアフコシル化、例えばFcドメイン中に1.0~12%のアフコシル化、若しくはFcドメイン中に約12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、又は4%のアフコシル化、又はこれらの任意の組み合わせを更に含み得る。一実施形態では、混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.8(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約8.3%のO-グリコシル化、N36に約90.9%のN-グリコシル化、N68に約51.9%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約0.4%の高マンノース、Fcドメイン中に約4%のアフコシル化、Fcドメイン中に約24.4%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約3.8%のシアル化、又はこれらの任意の組み合わせを含む。
【0018】
混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.8(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約8.3%のO-グリコシル化、N36に約90.9%のN-グリコシル化、N68に約51.9%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約0.4%の高マンノース、Fcドメイン中に約24.4%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約3.8%のシアル化、Fcドメイン中に13%未満のアフコシル化、例えばFcドメイン中に1.0~12%のアフコシル化、若しくはFcドメイン中に約12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、又は4%のアフコシル化、0.8%未満、例えば約0.4%のY92Lクリッピング種、又はこれらの任意の組み合わせを更に含み得る。一実施形態では、混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.8(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約8.3%のO-グリコシル化、N36に約90.9%のN-グリコシル化、N68に約51.9%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約0.4%の高マンノース、Fcドメイン中に約4%のアフコシル化、Fcドメイン中に約24.4%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約3.8%のシアル化、約0.4%のY92Lクリッピング種、又はこれらの任意の組み合わせを含む。一実施形態では、混合物中のアフリベルセプト種は、N68に約0.8(mol/molタンパク質)のシアル酸、T33に約8.3%のO-グリコシル化、N36に約90.9%のN-グリコシル化、N68に約51.9%のN-グリコシル化、Fcドメイン中に約0.4%の高マンノース、Fcドメイン中に約4%のアフコシル化、Fcドメイン中に約24.4%のガラクトシル化、Fcドメイン中に約3.8%のシアル化、及び約0.4%のY92Lクリッピング種を含む。
【0019】
本開示は、混合物中のY92Lクリッピング種の量を低減することを含む、又はアフリベルセプトのN68占有率を低減することによる、胎盤成長因子(PlGF)及び/又はVEGF-Aに対するアフリベルセプト種の混合物を含む組成物の結合を増加させる方法を更に提供する。PlGFはPlGF-1又はPlGF-2であり得る。一実施形態では、混合物中のY92Lクリッピング種の量を低減する方法は、アニオン交換クロマトグラフィー工程、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー工程でアフリベルセプトを精製することを含む。
【0020】
本開示の別の態様は、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を生産する方法である。方法は、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)工程、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を含む、アフリベルセプト種の混合物を含む細胞培養液を精製プロセスに供することを含み得、ここでは、AEX工程、続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)工程を含む精製プロセスと比較して、より少ない量のY92Lクリッピング種が生産される。いくつかの実施形態では、精製プロセスはCEX工程を含まない。
【0021】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を生産する別の方法は、アフリベルセプトを生産する細胞を収穫すること、収穫した細胞培養液をタンパク質Aカラムに供すること、及びアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)又は疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を実施することを含む。いくつかの実施形態では、AEXの後にHICが続き、且つ任意選択的に、方法はCEXを含まない。いくつかの実施形態では、AEXの後にCEXが続く。一実施形態では、細胞は、灌流又はフェドバッチによって成長可能なチャイニーズハムスター卵巣(Chinese Hamster Ovary、CHO)細胞である。細胞は、酸析出、遠心分離、精密濾過、深層濾過、又はこれらの任意の組み合わせによって収穫することができる。方法は、1つ以上のウイルス不活性化及び/若しくはウイルス濾過工程、又は限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程を更に含み得る。いくつかの実施形態では、方法は、AEX、HIC、及び/又はサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施する前にCEXを実施することを含まない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】その構造上にマッピングされたアフリベルセプトの属性を示す。
図2】アフリベルセプトのY92Lクリッピング種の割合の関数としての、相対的VEGF-A結合(%)のグラフである。
図3】アフリベルセプトのN68占有率の割合の関数としての、相対的PlGF-1結合(%)のグラフである。
図4】アフリベルセプトを生産するプロセスの2つのバージョンを示す。第1のプロセスでは、AEXクロマトグラフィーの後にCEXが続く。第2のプロセスでは、AEXクロマトグラフィーの後にHICが続く。
図5】各ピークによって表されるアフリベルセプト種と共に、疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)画分(F1~F5)からのアフリベルセプトの還元キャピラリ電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)の結果を示す。
図6】アニオン交換、続いてカチオン交換を用いたプロセスで製造されたアフリベルセプト(DS)、及び、アニオン交換、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィーを用いたプロセスで製造されたアフリベルセプトの還元キャピラリ電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)の結果を示す。
図7】様々な培養条件中で成長したアフリベルセプトのY92Lクリッピング種の割合を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本開示は、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物、及びアフリベルセプトの様々な種を提供する。いくつかの実施形態では、アフリベルセプトのある種は、アフリベルセプトの別の種よりも異なる1つ以上の属性を有する。本明細書では、アフリベルセプトの1つ以上の属性を特性決定する方法、及びアフリベルセプトの1つ以上の属性を修飾する方法も提供される。
【0024】
一実施形態では、アフリベルセプトは、C末端リジンが存在しない配列番号1のアミノ酸配列を含む。別の実施形態では、アフリベルセプトは、C末端リジンが存在する配列番号2のアミノ酸配列を含む。
配列番号1
【化1】
配列番号2
【化2】
【0025】
本明細書では、アフリベルセプトの1つ以上の属性も提供される。属性は、脱アミド化、グリコシル化(例えば、O-グリコシル化、N-グリコシル化)、シアル化(例、NANA又はNGNAシアル化)、アフコシル化、マンノシル化(例えば、高マンノース)、ガラクトシル化、又はクリッピング(例えば、C末端又はN末端)を含み得る。一実施形態では、アフリベルセプトの属性は、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物の、脱アミド化、グリコシル化(例えば、O-グリコシル化、N-グリコシル化)、シアル化(例、NANA又はNGNAシアル化)、アフコシル化、マンノシル化(例えば、高マンノース)、ガラクトシル化、クリッピング(例えば、C末端又はN末端)、又はこれらの任意の組み合わせのレベル又は量によって特性決定される。
【0026】
いくつかの実施形態では、アフリベルセプトの属性の特性決定は、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物のVEGFRドメインの、脱アミド化、グリコシル化(例えば、O-グリコシル化、N-グリコシル化)、シアル化(例、NANA又はNGNAシアル化)、アフコシル化、マンノシル化(例えば、高マンノース)、ガラクトシル化、クリッピング(例えば、C末端又はN末端)、又はこれらの任意の組み合わせのレベル又は量による。別の実施形態では、アフリベルセプトの属性の特性決定は、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物のFcドメインの、脱アミド化、グリコシル化(例えば、O-グリコシル化、N-グリコシル化)、シアル化(例、NANA又はNGNAシアル化)、アフコシル化、マンノシル化(例えば、高マンノース)、ガラクトシル化、クリッピング(例えば、C末端又はN末端)、又はこれらの任意の組み合わせのレベル又は量による。一実施形態では、属性は、VEGFRドメインのシアル化及び/又はグリコシル化のレベル又は量である。一実施形態では、属性は、VEGFRドメインのシアル化、N-グリコシル化、O-グリコシル化、又はこれらの任意の組み合わせのレベル又は量である。別の実施形態では、属性は、Fcドメインの高マンノース、シアル化、アフコシル化、ガラクトシル化、又はこれらの任意の組み合わせのレベル又は量である。
【0027】
別の実施形態では、アフリベルセプトの属性の特性決定は、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物の、脱アミド化、グリコシル化(例えば、O-グリコシル化、N-グリコシル化)、シアル化(例、NANA又はNGNAシアル化)、アフコシル化、マンノシル化(例えば、高マンノース)、ガラクトシル化、クリッピング(例えば、C末端又はN末端)、又はこれらの任意の組み合わせの割合による。別の実施形態では、アフリベルセプトの属性の特性決定は、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物のアフリベルセプト又はアフリベルセプト種1モル当たりのグリカン(例えばシアル酸)のモル数による。
【0028】
いくつかの実施形態では、属性は、アフリベルセプトの特定のアミノ酸位置におけるものである。例えば、属性は、N84及び/若しくはN99における脱アミド化、N36、N88、N123、N196、若しくはこれらの任意の組み合わせにおけるシアル酸、T33におけるO-グリコシル化、N36、N68、N123、N196、若しくはこれらの任意の組み合わせにおけるN-グリコシル化、Y92Lにおけるクリッピング(例えば、配列番号1の最初の92個のアミノ酸(配列番号5)を欠く、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列を有するアフリベルセプト種をもたらす)、R153Dにおけるクリッピング(例えば、配列番号1の最初の153個のアミノ酸(配列番号8)を欠く、配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を有するアフリベルセプト種をもたらす)、又はこれらの任意の組み合わせのレベル又は量であり得る。いくつかの実施形態では、R153Dにおけるクリッピングは、配列番号1のアミノ酸配列を含むタンパク質をもたらし、ここでクリッピングされる最初の153個のアミノ酸(配列番号8)は、ジスルフィド結合を介してタンパク質と結合される。
配列番号3
【化3】
配列番号4
【化4】
配列番号5(配列番号1のアミノ酸1~92)
【化5】
配列番号6
【化6】
配列番号7
【化7】
配列番号8(配列番号1のアミノ酸1~153)
【化8】
【0029】
したがって、本明細書では、本明細書で開示される属性のうちの1つ以上を備えるアフリベルセプトも提供される。いくつかの実施形態では、アフリベルセプトのある種は、アフリベルセプトの別の種よりも異なる1つ以上の属性を有する。差異は、属性の有無、又は属性のレベル若しくは量であり得る。一実施形態では、アフリベルセプト種は、N84及び/若しくはN99において脱アミド化されるか、N36、N88、N123、N196、若しくはこれらの任意の組み合わせにおいてシアル化されるか、T33においてO-グリコシル化されるか、N36、N68、N123、N196、若しくはこれらの任意の組み合わせにおいてN-グリコシル化されるか、又はこれらの任意の組み合わせを受ける。
【0030】
別の実施形態では、アフリベルセプト種は、Y92Lにおいてクリッピングされる(例えば、配列番号1の最初の92個のアミノ酸(配列番号5)を欠く、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列を有するアフリベルセプト種をもたらす)。いくつかの実施形態では、クリッピングされるY92L種は、N99において脱アミド化されるか、N123及び/若しくはN196においてシアル化されるか、N123及び/若しくはN196においてN-グリコシル化されるか、又はこれらの任意の組み合わせを受ける。
【0031】
別の実施形態では、アフリベルセプト種は、R153Dにおいてクリッピングされる(例えば、配列番号1の最初の153個のアミノ酸(配列番号8)を欠く、配列番号6又は配列番号7のアミノ酸配列を有するアフリベルセプト種をもたらす)。いくつかの実施形態では、クリッピングされたR153D種は、N196においてシアル化され、且つ/又はN196においてN-グリコシル化される。
【0032】
本明細書では、特定の属性を備えるアフリベルセプト種の混合物を含む組成物も提供される。いくつかの実施形態では、アフリベルセプト種の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0.8%未満が、クリッピング種である(例えば、Y92L又はR153Dクリッピング種)。クリッピング種の量は、rCE-SDS又はトリプシンペプチドマッピングなどの当該技術分野で既知の任意の方法によって判定することができる。一実施形態では、組成物は、アフリベルセプト種の5.0%未満がY92Lクリッピング種である、アフリベルセプト種の混合物を含む。いくつかの実施形態では、アフリベルセプト種の10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0.8%未満が、Y92Lクリッピング種である。一実施形態では、組成物は、アフリベルセプト種の0.8%未満がY92Lクリッピング種である、アフリベルセプト種の混合物を含む。別の実施形態では、組成物は、アフリベルセプト種の0.5%未満がY92Lクリッピング種である、アフリベルセプト種の混合物を含む。いくつかの実施形態では、組成物中のY92Lクリッピング種の量は1%~10%、1.0%~5.0%、又は1.0%~3.0%である。いくつかの実施形態では、組成物中のY92Lクリッピング種の量は、組成物の約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、又は約6.0%である。いくつかの実施形態では、組成物中のY92Lクリッピング種の量は、組成物の約1.1%、約3.0%、又は約4.7%である。一実施形態では、組成物は、アフリベルセプト種の約0.4%がY92Lクリッピング種である、アフリベルセプト種の混合物を含む。
【0033】
本明細書では、アフリベルセプト種の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、又は90%がN68位において占有される(すなわち、グリコシル化される)、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物も提供される。N68位において占有されるアフリベルセプト種の量は、rCE-SDS又はペプチドマッピングなどの当該技術分野で既知の任意の方法によって判定することができる。いくつかの実施形態では、アフリベルセプト種の10%~90%、20%~70%、30%~60%、又は50~60%が、N68位において占有される。いくつかの実施形態では、N68位において占有されるアフリベルセプト種の量は、約39%、約53%、約54%、又は約55%である。
【0034】
本明細書では、アフリベルセプト種の合計シアル酸含量が、1.0~20.0mol/molタンパク質、2.0~15.0mol/molタンパク質、5.0~12.0mol/molタンパク質、又は6.0~10.0mol/molタンパク質である、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物も提供される。シアル酸の量は、質量分析法(LC-MS)ベースのペプチドマッピング、合計シアル酸法、又は合計親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)グリカンマッピングと組み合わせた、任意のペプチドマッピング又はグリカン分析法、例えば液体クロマトグラフィーなどの、当該技術分野で既知の任意の方法で判定することができる。一実施形態では、合計シアル酸含量は、約6.8、約8.5、又は約9.5mol/molタンパク質である。
【0035】
別の実施形態では、組成物は、混合物のグリカンプロファイルが、N88に約0.7のシアル酸(mol/molタンパク質)、T33に約4%のO-グリコシル化、N36に約95%のN-グリコシル化、N68に約26%のN-グリコシル化、そのFcドメインに約1%の高マンノース、そのFcドメインに約6%のアフコシル化、そのFcドメインに約26%のガラクトシル化、そのFcドメインに約1%のシアル化、又はこれらの任意の組み合わせを含む、アフリベルセプト種の混合物を含む。いくつかの実施形態では、グリカンプロファイルは、N36に約3.2のシアル酸(mol/molタンパク質)、N123に約1.6のシアル酸(mol/molタンパク質)、N196に約1.9のシアル酸(mol/molタンパク質)、そのVEGFRドメインに約7.4の合計シアル酸(mol/molタンパク質)、N123に約100%のN-グリコシル化、N196に約99%のN-グリコシル化、又はこれらの任意の組み合わせを更に含み得る。
【0036】
一実施形態では、組成物は、混合物のグリカンプロファイルが、N36に約3.2のシアル酸(mol/molタンパク質)、N88に約0.7のシアル酸(mol/molタンパク質)、N123に約1.6のシアル酸(mol/molタンパク質)、N196に約1.9のシアル酸(mol/molタンパク質)、そのVEGFRドメインに約7.4の合計シアル酸(mol/molタンパク質)、T33に約4%のO-グリコシル化、N36に約95%のN-グリコシル化、N68に約26%のN-グリコシル化、N123に約100%のN-グリコシル化、N196に約99%のN-グリコシル化、そのFcドメインに約1%の高マンノース、そのFcドメインに約6%のアフコシル化、そのFcドメインに約26%のガラクトシル化、そのFcドメインに約1%のシアル化、又はこれらの任意の組み合わせを含む、アフリベルセプト種の混合物を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、組成物は、組成物中のY92Lクリッピング種の量が、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、0.8%未満、1%~10%、1.0%~5.0%、若しくは1.0%~3.0%、約1.0%、約2.0%、約3.0%、約4.0%、約5.0%、若しくは約6.0%、又は約1.1%、約3.0%、約4.7%、若しくは約0.4%である、アフリベルセプト種の混合物を含み、アフリベルセプトの混合物のグリカンプロファイルは、N88に約0.7のシアル酸(mol/molタンパク質)、T33に約4%のO-グリコシル化、N36に約95%のN-グリコシル化、N68に約26%のN-グリコシル化、そのFcドメインに約1%の高マンノース、そのFcドメインに約6%のアフコシル化、そのFcドメインに約26%のガラクトシル化、そのFcドメインに約1%のシアル化、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、グリカンプロファイルは、N36に約3.2のシアル酸(mol/molタンパク質)、N123に約1.6のシアル酸(mol/molタンパク質)、N196に約1.9のシアル酸(mol/molタンパク質)、そのVEGFRドメインに約7.4の合計シアル酸(mol/molタンパク質)、N123に約100%のN-グリコシル化、N196に約99%のN-グリコシル化、又はこれらの任意の組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、アフリベルセプト種の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%、10%~90%、20%~70%、30%~60%、若しくは50~60%、又は約39%、約53%、約54%、若しくは約55%がN68位において占有される(すなわち、グリコシル化される)、アフリベルセプト種の混合物を更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1.0~20.0mol/molタンパク質、2.0~15.0mol/molタンパク質、5.0~12.0mol/molタンパク質、6.0~10.0mol/molタンパク質、約6.8、約8.5、又は約9.5mol/molタンパク質である、アフリベルセプト種の合計シアル酸含量を更に含む。
【0038】
一実施形態では、組成物は、アフリベルセプト種の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、若しくは90%、10%~90%、20%~70%、30%~60%、若しくは50~60%、又は約39%、約53%、約54%、若しくは約55%がN68位において占有される(すなわち、グリコシル化される)、アフリベルセプト種の混合物を含み、組成物中のアフリベルセプト種のグリカンプロファイルは、N88に約0.7のシアル酸(mol/molタンパク質)、T33に約4%のO-グリコシル化、N36に約95%のN-グリコシル化、N68に約26%のN-グリコシル化、そのFcドメインに約1%の高マンノース、そのFcドメインに約6%のアフコシル化、そのFcドメインに約26%のガラクトシル化、そのFcドメインに約1%のシアル化、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、グリカンプロファイルは、N36に約3.2のシアル酸(mol/molタンパク質)、N123に約1.6のシアル酸(mol/molタンパク質)、N196に約1.9のシアル酸(mol/molタンパク質)、そのVEGFRドメインに約7.4の合計シアル酸(mol/molタンパク質)、N123に約100%のN-グリコシル化、N196に約99%のN-グリコシル化、又はこれらの任意の組み合わせを更に含む。いくつかの実施形態では、組成物は、1.0~20.0mol/molタンパク質、2.0~15.0mol/molタンパク質、5.0~12.0mol/molタンパク質、6.0~10.0mol/molタンパク質、約6.8、約8.5、又は約9.5mol/molタンパク質である、アフリベルセプト種の合計シアル酸含量を更に含む。
【0039】
一実施形態では、組成物は、混合物中のY92Lクリッピング種の量が1%~3%(例えば、約1.1%、0.8%未満、又は約0.4%)であり、アフリベルセプト種の53~55%(例えば約54~55%)がN68位で占有され、合計シアル酸含量が約9.5mol/molタンパク質である、アフリベルセプト種の混合物を含む。
【0040】
本明細書では、アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を生産する方法も提供される。アフリベルセプトは哺乳動物の宿主細胞などの宿主細胞によって生成され得る。哺乳動物宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞であり得る。一実施形態では、方法は、アフリベルセプトを生産する宿主細胞を培養して収穫し、プロテインA、それに続いてアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、次いでカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)でタンパク質を精製することを含む。別の実施形態では、方法は、フェドバッチによって宿主細胞を培養し、細胞を収穫し、プロテインA、それに続いてアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、次いで疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)でタンパク質を精製することを含む。いくつかの実施形態では、AEX、それに続いてHICを含む方法は、HICの代わりにCEXを含む以外は同じ方法と比較して、より少ない量のY92Lクリッピング種を生産する。いくつかの実施形態では、AEX、それに続いてHICを含む方法は、HICの代わりにCEXを含む以外は同じ方法と比較して、1/2未満のY92Lクリッピング種を生産する。いくつかの実施形態では、AEX、それに続いてHICを含む方法は、CEX工程を含まない。いくつかの実施形態では、方法は、任意のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)工程を含まない。いくつかの実施形態では、方法は、AEXの前に任意のCEX工程を含まない。
【0041】
いくつかの実施形態では、方法は、フェドバッチ又は灌流によって宿主細胞を培養することを含む。灌流を含む方法によって培養する場合などのいくつかの実施形態では、細胞は、軟凝集、精密濾過、又はこれらの任意の組み合わせによって収穫することができる。フェドバッチによって培養する場合などのいくつかの実施形態では、細胞は、析出、遠心分離、深層濾過、又はこれらの任意の組み合わせによって収穫することができる。一実施形態では、細胞は、酸析出によって収穫される。酸は、酢酸又はクエン酸などの、当該技術分野で既知の任意のものであってよい。一実施形態では、酸析出は、約5.5、約5.0、約4.5、約4.0、約3.5、又は約3.0のpHにおけるものである。一実施形態では、酸析出は、約4.1、約4.2、約4.3、約4.4、約4.5、約4.6、約4.7、約4.8、約4.9、又は約5.0のpHにおけるものである。一実施形態では、酸析出は、3.0~4.0又は3.5~4.0のpHにおけるものである。別の実施形態では、pHは5.5±0.2、5.4±0.2、5.3±0.2、5.2±0.2、5.1±0.2、5.0±0.2、4.9±0.2、4.8±0.2、4.7±0.2、4.6±0.2、4.5±0.2、4.4±0.2、4.3±0.2、4.2±0.2、4.1±0.2、4.0±0.2、4.0±0.2、3.9±0.2、3.8±0.2、3.7±0.2、3.6±0.2、3.5±0.2、3.4±0.2、3.3±0.2、3.2±0.2、3.1±0.2、又は3.0±0.2である。酸析出は、約20℃、15℃、10℃、又は5℃の温度であってもよい。一実施形態では、温度は約20±3℃、19±3℃、18±3℃、17±3℃、16±3℃、15±3℃、14±3℃、13±3℃、12±3℃、11±3℃、10±3℃、9±3℃、8±3℃、7±3℃、6±3℃、5±3℃、又は4±3℃である。酸析出プロセスは、約30分、約45分、約60分、約75分、約90分、又は約105分間であってもよい。
【0042】
別の実施形態では、細胞は、酸析出、それに続いて深層濾過によって収穫される。深層濾過中の温度は、約20±3℃、19±3℃、18±3℃、17±3℃、16±3℃、15±3℃、14±3℃、13±3℃、12±3℃、11±3℃、10±3℃、9±3℃、8±3℃、7±3℃、6±3℃、5±3℃、又は4±3℃で実施され得る。一実施形態では、深層濾過の後にpH中和が続く。中和は、Tris塩基などの任意の塩基を用いて実施され得る。中和は、約20±3℃、19±3℃、18±3℃、17±3℃、16±3℃、15±3℃、14±3℃、13±3℃、12±3℃、11±3℃、10±3℃、9±3℃、8±3℃、7±3℃、6±3℃、5±3℃、又は4±3℃の温度で実施され得る。中和の標的pHは、約8.0、約7.5、約7.0、約6.5、又は約6.0であり得る。一実施形態では、pHは約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、約7.6、約7.7、約7.8、又は約7.9である。一実施形態では、pHは6.0~8.0、6.5~8.0、又は7.0~8.0である。別の実施形態では、pHは、8.0±0.2、7.9±0.2、7.8±0.2、7.7±0.2、7.6±0.2、7.5±0.2、7.4±0.2、7.3±0.2、7.2±0.2、7.1±0.2、7.0±0.2、6.9±0.2、6.8±0.2、6.7±0.2、6.6±0.2、6.5±0.2、6.4±0.2、6.3±0.2、6.2±0.2、6.1±0.2、又は6.0±0.2である。
【0043】
別の実施形態では、深層濾過の後に、pH中和、及び洗剤(例えばTriton)を使用したウイルス不活性化などのウイルス不活性化が続く。ウイルス不活性化は、20±3℃、19±3℃、18±3℃、17±3℃、16±3℃、15±3℃、14±3℃、13±3℃、12±3℃、11±3℃、10±3℃、9±3℃、8±3℃、7±3℃、6±3℃、5±3℃、又は4±3℃で実施され得る。いくつかの実施形態では、深層濾過の後にウイルス不活性化は実施されない。
【0044】
したがって、一実施形態では、宿主細胞はフェドバッチ又は灌流によって培養され、続いて酸析出、それに続いて深層濾過及びpH中和によって収穫される。別の実施形態では、宿主細胞はフェドバッチ又は灌流によって培養され、続いて酸析出、それに続いて深層濾過、pH中和、及びウイルス不活性化によって収穫される。
【0045】
収穫後、プロテインA親和性クロマトグラフィー、それに続いてアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、次いでカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)によりアフリベルセプトを細胞溶解物から精製してよい。別の実施形態では、精製は、プロテインA親和性クロマトグラフィー、それに続いてアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、次いで疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)によるものである。いくつかの実施形態では、AEX、それに続いてHICを含む方法は、HICの代わりにCEXを含む以外は同じ方法と比較して、より少ない量のY92Lクリッピング種を生産する。いくつかの実施形態では、AEX、それに続いてHICを含む方法は、HICの代わりにCEXを含む以外は同じ方法と比較して、1/2未満のY92Lクリッピング種を生産する。いくつかの実施形態では、AEX、それに続いてHICを含む方法は、CEX工程を含まない。いくつかの実施形態では、方法は、任意のサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)工程を含まない。いくつかの実施形態では、方法は、AEXの前に任意のCEX工程を含まない。
【0046】
いくつかの実施形態では、ウイルス不活性化及び/又は濾過工程は、プロテインA工程とAEX工程との間に実施される。いくつかの実施形態では、ウイルス不活性化及び/又はウイルス濾過工程は、最後のカラム精製(例えばCEX又はHIC)の後に実施される。一実施形態では、ウイルス濾過は、最後のカラム精製(例えばCEX又はHIC)の後に実施される。
【0047】
いくつかの実施形態では、プロテインA精製後などのウイルス不活性化は低pHによるものである。一実施形態では、ウイルス不活性化は、約4.0、約3.9、約3.8、約3.7、約3.6、約3.5、約3.4、約3.3、約3.2、約3.1、又は約3.0のpHにおけるものである。一実施形態では、酸析出は、3.0~4.0又は3.5~4.0のpHにおけるものである。別の実施形態では、pHは4.0±0.2、3.9±0.2、3.8±0.2、3.7±0.2、3.6±0.2、3.5±0.2、3.4±0.2、3.3±0.2、3.2±0.2、3.1±0.2、又は3.0±0.2である。いくつかの実施形態では、低pHウイルス不活性化の次は中和であり、中和の標的pHは、約5.5、約5.0、又は約4.5である。一実施形態では、pHは、4.5~6.0、4.5~5.5、5.0~6.0、又は5.0~5.5である。別の実施形態では、pHは、6.0±0.2、5.9±0.2、5.8±0.2、5.7±0.2、5.6±0.2、5.5±0.2、5.4±0.2、5.3±0.2、5.2±0.2、5.1±0.2、5.0±0.2、4.9±0.2、4.8±0.2、4.7±0.2、4.6±0.2、又は4.5±0.2である。いくつかの実施形態では、深層濾過は中和後に実施される。
【0048】
いくつかの実施形態では、クロマトグラフィー、並びに/又はウイルス不活性化/濾過、及び/若しくは深層濾過の後に、限外濾過/透析濾過(UF/DF)が実施される。いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えばポリソルベート)などの賦形剤が、UF/DF回復プール(recovery pool)に添加され、任意選択的に濾過される。
【0049】
クロマトグラフィー、ウイルス不活性化、ウイルス濾過、及び/又は限外濾過/透析濾過工程は、25±5℃、24±5℃、23±5℃、22±5℃、21±5℃、20±5℃、19±5℃、18±5℃、17±5℃、16±5℃、15±5℃、14±5℃、13±5℃、12±5℃、11±5℃、又は10±5℃で実施され得る。
【0050】
したがって、一実施形態では、アフリベルセプトは、プロテインA親和性クロマトグラフィー、それに続いてウイルス不活性化(例えば、低pH、それに続いて中和、及び任意選択的に深層濾過による)、AEX、HIC、ウイルス濾過、及びUF/DFによって、収穫された細胞から精製され得る。いくつかの実施形態では、界面活性剤(例えばポリソルベート)が添加される。いくつかの実施形態では、精製されたアフリベルセプトは、界面活性剤が添加された後に濾過される。
【0051】
本明細書では、PlGF(例えばPlGF-1又はPlGF-2)及び/又はVEGF-Aに対するアフリベルセプト種の混合物を含む組成物の結合を増加させる方法であって、混合物中のY92Lクリッピング種の量を低減することを含む、方法も提供される。いくつかの実施形態では、本方法は、アニオン交換クロマトグラフィー工程、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー工程でアフリベルセプトを精製することを含む。いくつかの実施形態では、方法は、図4に示す第2のプロセスなど、本明細書に記載される通りである。
【0052】
本開示は、アフリベルセプトのN68占有率を低減することを含む、PlGF(例えばPlGF-1又はPlGF-2)に対するアフリベルセプト種の混合物を含む組成物の結合を増加させる方法も提供する。いくつかの実施形態では、本方法は、図4に示す第1又は第2のプロセスなど、精製中のプロテインAに続くクロマトグラフィー工程を含む。
【0053】
詳細な説明及び以下の実施例は、本発明を例示するものであり、本発明は、それに限定するものとして解釈されるべきではない。本発明の説明に基づき、当業者によって様々な変更形態及び修正形態がなされ得、そうした変更形態及び修正形態は本発明に含まれる。
【実施例0054】
実施例1:アフリベルセプトの属性の影響
表1に示す方法によってアフリベルセプトの様々な属性を分析した。図1は、アフリベルセプト構造上にマッピングされたこれらの属性を示す。VEGF-A及びPlGF-1を結合するアフリベルセプトの能力に対する様々な属性の影響を判定し、結果を表1に示す。
【0055】
化学的及び翻訳後修飾の潜在的な存在を評価することに加えて、アフリベルセプトのアミノ酸配列を確認するために、ペプチドマッピングの特性決定、又は還元されたペプチドマッピングを実施した。ジチオスレイトールでの還元及びヨード酢酸ナトリウムでのアルキル化の後に、ペプチドマッピング分析をトリプシンでの酵素消化法により実施した。得られた切断断片を、水中アセトニトリルの増加勾配を用いた逆相超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)によって分離し、ペプチドを、高分解能線形イオントラップ質量分析計を用いたオンライン液体クロマトグラフィー質量分析(LC-MS/MS)によって同定した。
【0056】
親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)グリカンマッピングを用いて、アフリベルセプトのN結合グリカンを評価した。アフリベルセプトは5個のN結合グリコシル化部位を有し、1つは保存Fc領域上で主に二分岐複合体型であり、他の4個の部位はVEGF受容体領域上で主にシアル化グリカン種を含む二分岐複合体型である。アフリベルセプトのN結合グリカンを、親水性相互作用液体クロマトグラフィー(HILIC)UHPLCグリカンマップ分析によって評価した。この手順は、アフリベルセプトの還元及び変性、ペプチドNグリコシダーゼF(PNGase F)を用いたN結合グリカンの放出、蛍光標識を用いた誘導体化、並びに、増加する水中ギ酸アンモニウムの勾配を用いたHILIC UHPLCにより分離される標識化グリカンの蛍光検出を伴う。
【0057】
合計シアル酸法を実施して、シアル酸含量を判定した。アフリベルセプトのN結合グリカン由来の末端シアル酸を、酸性条件下で加水分解する。加水分解溶液中のシアル酸を、1,2-ジアミノ-4,5-メチレンオキシベンゼン(DMB)で標識化する。放出され、標識化されたシアル酸の調製物を水で希釈し、続いて、蛍光検出を用いた超高速液体クロマトグラフィー(UHPLC)により分析する。同じ方法で調製された既知の量のNANA標準の一連の注入及び対応するピーク面積を用いて、線形回帰分析を用いた標準曲線を生成する。続いて、生成された線形標準曲線を用いてシアル酸含量を判定する。
【0058】
中性被覆キャピラリを装備する高分解能キャピラリ電気泳動分離機器を用いて、アフリベルセプトのキャピラリ等電点電気泳動(cIEF)分析を実施した。キャピラリ中のpH勾配を介したアフリベルセプトの電気泳動により、アフリベルセプトはpH値がそのpIと等しくなるまで移動する。続いてアフリベルセプトは化学的に動化され(mobilized)、キャピラリ内の検出窓を通る際にUV吸光度(280nm)によって検出される。
【0059】
還元キャピラリ電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウムrCE-SDSを用いて、アフリベルセプトの純度を評価した。試料を、β-メルカプトエタノールを用いて還元し、SDSで変性させた。還元及び変性させたタンパク質を、流体力学的サイズに基づき分離し、ここで小径のタンパク質はより速く移動し、より大径のタンパク質はより遅く移動する。分析質をUV吸光度によって監視した。
【0060】
PlGF-1又はPlGF-2の結合を、生体分子相互作用を検出するビーズベースの増幅発光近接均質アッセイスクリーン(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay Screen)(AlphaScreen(登録商標)、PerkinElmer)を用いて判定した。このアッセイは、2つのビーズ型、アクセプタービーズ及びドナービーズを含む。ドナービーズは、フタロシアニン、光増感剤、及びストレプトアビジンを含有するヒドロゲルでコーティングされている。アクセプタービーズは、チオキセン誘導体及びマウスモノクローナル抗FITC抗体を含有するヒドロゲルでコーティングされている。ドナービーズは、ストレプトアビジンとビオチンとの間の相互作用を介してビオチン化PlGFに結合し、アクセプタービーズは、FITC標識化アフリベルセプトに結合する。このFITC標識化アフリベルセプトは、アフリベルセプト試験試料の競合者としての役割を果たす。FITC標識化アフリベルセプト及びビオチン化PlGFが互いに結合すると、アクセプタービーズ及びドナービーズは近接させられる。この錯体にレーザーを照射すると、ドナービーズによって周囲酸素が一重項酸素に変換される。ビーズが近接していると、アクセプタービーズへのエネルギー移動が起こってルミネセンス生成をもたらし、これを、AlphaScreen(登録商標)シグナル検出能力を備えるマイクロプレートリーダーで測定する。非結合アフリベルセプト試験試料が、ビオチン化PlGFに対するFITC標識化アフリベルセプトの結合を阻害するのに十分な濃度で存在する場合、ルミネセンス出力の用量依存性の減少が起きる。試験試料の活性は、相対効力又は相対結合(例えば相対結合%)を表す、対照標準の応答に対する試験試料の応答の比較によって判定する。
【0061】
VEGFAの結合を、生体分子相互作用を検出するビーズベースの増幅発光近接均質アッセイスクリーン(AlphaScreen(登録商標)、PerkinElmer)を用いて判定した。このアッセイは、2つのビーズ型、アクセプタービーズ及びドナービーズを含む。ドナービーズは、フタロシアニン、光増感剤、及びストレプトアビジンを含有するヒドロゲルでコーティングされている。アクセプタービーズは、チオキセン誘導体及びニッケルキレートを含有するヒドロゲルでコーティングされている。ドナービーズは、ストレプトアビジンとビオチンとの間の相互作用を介してビオチン化VEGFA-165に結合し、アクセプタービーズは、ニッケルキレートとヒスチジンとの間の相互作用のためにヒスチジン標識化VEGFR2に結合する。VEGFR2-His及びビオチン化VEGFA-165が互いに結合すると、アクセプタービーズ及びドナービーズは緊密に近接させられる。この錯体にレーザーを照射すると、ドナービーズによって周囲酸素が一重項酸素に変換される。ビーズが近接していると、アクセプタービーズへのエネルギー移動が起こってルミネセンス生成をもたらし、これを、AlphaScreen(登録商標)シグナル検出能力を備えるマイクロプレートリーダーで測定する。アフリベルセプトはビオチン化VEGFA-165に結合して、これがVEGFR2-Hisに結合することを防ぎ、それにより用量依存的にルミネセンス出力を減少させる。試験試料の活性は、相対効力又は相対結合(例えば相対結合%)を表す、対照標準の応答に対する試験試料の応答の比較によって判定する。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示すように、シアル化の他に、VEGF-A及びPlGF-1に結合するアフリベルセプトの能力に影響を与える属性は、Y92Lクリッピング及びN68グリコシル化占有率である。
【0064】
図2に示すように、Y92Lのクリッピングは、VEGF-Aに結合するアフリベルセプトの能力に著しい影響を与える。また、1%のY92Lクリッピングは、2%のVEGF-A結合損失をもたらすが、これは、アフリベルセプトの両方のVEGFR領域がVEGF-A結合における役割を有することを示唆する。図3に示すように、N68占有率の10%の増加は、アフリベルセプトのPlGF-1結合活性の4~5%の低下をもたらす。
【0065】
実施例2:アフリベルセプトのY92Lクリッピング及びN68占有率に影響を及ぼすプロセス工程
Y92Lクリッピングの増加は、アフリベルセプトのVEGF-A、PlGF-1、及びPlGF-2結合活性を低下させ、N68占有率の増加は、アフリベルセプトのPlGF-1及びPlGF-2結合活性を低下させるため、プロセスの特定の工程が、アフリベルセプトのY92Lクリッピング種のレベル及びN68占有率の量に影響を与え得るか否かを判定するためにアフリベルセプトの精製プロセスを調査した。
【0066】
アフリベルセプトを、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞中で発現させ、フェドバッチによって生産した。続いて、細胞を、酸析出、それに続いて深層濾過によって収穫した。続いて、ウイルス不活性化工程の前にpHを中和した。続いて、収穫した細胞培養液からタンパク質Aカラムでアフリベルセプトを精製し、次いで、ウイルス不活性化工程に供した。
【0067】
この第2のウイルス不活性化工程の後に、1つのプロセスは、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、それに続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を用い、第2のプロセスは、AEX、それに続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いた(図4)。どちらのプロセスでも、これらのクロマトグラフィー工程の後に、ウイルス濾過プールのウイルス濾過及び限外濾過/透析濾過(UF/DF)が続いた。続いてポリソルベートをUF/DF回収プールに添加し、続いて容器内に濾過した。
【0068】
フェドバッチプロセスから、特定の品質属性を満たす約60%のアフリベルセプトを得た。第1の精製プロセス(AEX、続いてCEX)は、第2のプロセス(AEX、続いてHIC)よりも高い収率を有した。表2は、AEX前の、第1のプロセス後の、及び第2のプロセス後の、アフリベルセプトの、Y92Lクリップ種の割合、N68占有率によるアフリベルセプトの割合、合計シアル酸濃度(mol/molタンパク質)、及びcIEFピーク1(アフリベルセプトの低シアル酸含有バージョンであるcIEFピークの群を指す)の割合を示す。表2には、カラム2及びカラム3クロマトグラフィー工程にわたるアフリベルセプトの収率パーセントも含まれる(第1のプロセスにはAEX及びCEX、第2のプロセスにはAEX及びHIC)。
【0069】
【表2】
【0070】
表2に示すように、AEX工程はアフリベルセプトのN68占有率を増加させ、HIC工程は、アフリベルセプトのY92Lクリッピング種を著しく減少させる。AEXはcIEFピーク1を減少させ、且つN68占有率を増加させ得、一方でHICはY92Lクリップを減少させ、且つN68占有率を増加させ得る。
【0071】
実施例3:アフリベルセプトのrCE-SDS分析
アニオン交換クロマトグラフィー、続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を用いるプロセスで製造されたアフリベルセプトの試料(DS)をHIC分析HPLCに供し、HIC溶出ピーク全体にわたり5つの画分を回収した。これらの画分を、還元キャピラリ電気泳動-ドデシル硫酸ナトリウム(rCE-SDS)によって分析し(図5)、これは、HIC HPLCは、クリッピングされたアフリベルセプト種及びN68グリコシル化種を部分的に分解することを示す。
【0072】
第2のプロセスによって生産されたアフリベルセプトと比較した、第1のプロセスによって生産されたアフリベルセプトのrCE-SDSを図6に示し、これは、Y92Lクリッピング種の収率は、第2のプロセスを用いると第1のプロセスと比較してより低くなり、一方で、第2のプロセスは第1のプロセスと比較してより高いN68占有率を有したことを示す。
【0073】
実施例4:VEGF-A、PlGF-1、及びPlGF-2結合アフリベルセプトに対する属性の影響
Y92Lで切断された、プロテインA及びカラム並びにカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を用いるプロセスから精製したアフリベルセプトの割合、並びにN68がグリコシル化されている、プロテインA及びカラム並びにカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を用いるプロセスから精製したアフリベルセプトの割合(N68占有率)を、rCE-SDSを用いて、図5に示す分析HPLC HIC画分のそれぞれに関して判定した。各画分を更に、VEGF-A並びにPlGF-1及びPlGF-2結合アッセイに供した。結果を表3に示す。
【0074】
【表3】
【0075】
表3に示すように、Y92Lにおけるアフリベルセプトのクリッピングは、VEGF-A及びPlGF結合に影響を及ぼす。Y92Lクリッピング種の割合がより高い画分は、VEGF-A並びにPlGF-1及びPlGF-2に対するより低い結合を示した。一方で、表3に示すように、N68占有率はPlGF結合には影響を及ぼすが、VEGF-A結合には影響を及ぼさない。N68がグリコシル化されている種の割合がより高い画分は、PlGF-1及びPlGF-2に対するより低い結合を示した。
【0076】
実施例5:アフリベルセプトのグリカンプロファイル
プロテインA、続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)を用いるプロセスから精製されたアフリベルセプトのグリカンプロファイルを、rCE-SDS(N68におけるN-グリコシル化%)及びLC-MSベースのペプチドマッピング(例えば、表4に列挙されるその他の属性)によって判定した。
【0077】
【表4】
【0078】
プロテインA、続いてアニオン交換クロマトグラフィー(AEX)及び疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を用いるプロセスから精製されたアフリベルセプトのグリカンプロファイルを、rCE-SDS(N68におけるN-グリコシル化及びY92Lクリッピング種%)及びLC-MSベースのペプチドマッピング(例えば、表5に列挙されるその他の属性)によって判定した。
【0079】
【表5】
【0080】
実施例6:Y92Lクリッピングに対する温度及びpHシフトの影響
アフリベルセプトを発現するCHO細胞のフェドバッチバイオリアクタ培養液を、培養6日目に温度及び/又はpHのシフトに供し、シフトされていない培養液と比較した。それぞれ異なるバイオリアクタ中の2つの対照培養液(図7、対照A、対照B)を、収穫するまで36℃、pH6.9で成長させた。それぞれ異なるバイオリアクタ中の2つの培養液(図7、温度シフトA、温度シフトB)を、36℃、pH6.9で成長させ、培養6日目に両方の温度を32.5℃に低下させ、収穫するまで32.5℃、pH6.9に維持した。1つの培養液(図7、pHシフト)を、36℃、pH6.9で成長させ、培養6日目にpHを6.8に低下させ、収穫するまで36℃、pH6.8に維持した。1つの培養液(図7、温度シフト及びpHシフト)を36℃、pH6.9で成長させ、培養6日目に両方の温度及びpHを32.5℃、pH6.8に低下させ、収穫するまで32.5℃、pH6.8に維持した。
【0081】
アフリベルセプトを、プロテインAを用いて各培養液の清浄化培養液ブロスから精製し、10、11、及び12日目にrCE-SDSによってY92Lクリッピング種の割合を判定した(図7)。全ての培養液で、Y92Lクリッピング種の割合は培養時間と共に増加した。6日目における値を低下させるための培養液温度及び/又はpHのシフトは、Y92Lクリッピング種の割合を対照(対照A、対照B)と比較して低下させた。温度シフトは、Y92Lクリッピング種の割合を低下させる上でpHシフトよりも効果的であり、Y92Lクリッピング種の割合を更に低下させるためのpHシフト及び温度シフトの組み合わせで効果は増加しなかった。
【0082】
本発明が様々な実施形態の観点から記載されたが、当業者であれば変形及び修正を想到するであろうことは理解されよう。したがって、添付の特許請求の範囲は、特許請求される本発明の範囲内にあるそのような均等な変形の全てを包含することを意図する。加えて、本明細書で使用される項目見出しは、構成を目的としているに過ぎず、記載される主題を限定するものと解釈すべきではない。
【0083】
本出願に引用された全ての参考文献は、あらゆる目的のために参照により明示的に本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【配列表】
2024119910000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アフリベルセプト種の混合物を含む組成物を生産する方法であって、
アフリベルセプト種の混合物を含む細胞培養液を、アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)工程、続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)工程を含む精製プロセスに供することを含む、方法。
【請求項2】
前記精製プロセスはCEX工程を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
a)アフリベルセプトを生産する細胞を収穫することと、
b)収穫した細胞培養液をタンパク質Aカラムに供することと、
c)アニオン交換クロマトグラフィー(AEX)、それに続いて疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)を実施することと、を含む、請求項1~2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
AEXの後にCEXが続く、請求項1及び3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞はチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞は灌流又はフェドバッチによって成長する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞は、酸析出、遠心分離、深層濾過、又はこれらの任意の組み合わせによって収穫される、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
1つ以上のウイルス不活性化及び/又はウイルス濾過工程を更に含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
限外濾過/透析濾過(UF/DF)工程を更に含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)を実施することを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
AEX工程、続いてカチオン交換クロマトグラフィー(CEX)工程を含む精製プロセスと比較してより少ない量のY92Lクリッピング種が生産される、請求項1及び3~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
Y92Lクリッピング種の量が2%未満、1%未満又は0.8%未満である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
Y92Lクリッピング種の量が約1.1%又は約0.4%である、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法によって製造されたアフリベルセプト種の混合物を含む組成物。
【外国語明細書】