(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119925
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】圧縮気体成分調整装置の連係制御方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/04 20060101AFI20240827BHJP
B01D 53/26 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
B01D53/04 230
B01D53/26 231
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024094790
(22)【出願日】2024-06-12
(62)【分割の表示】P 2021144451の分割
【原出願日】2021-09-06
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.BLUETOOTH
(71)【出願人】
【識別番号】000103921
【氏名又は名称】オリオン機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128794
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 庸悟
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 遼
(72)【発明者】
【氏名】奥原 木ノ実
(57)【要約】
【課題】圧縮気体成分調整装置の3台以上の複数台の機体について、稼働させる優先度を判断することでより適切に管理することができる圧縮気体成分調整装置の連係制御方法を提供する。
【解決手段】吸着剤が充填された二つの吸着筒10、20に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒10、20を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、前記3台以上の機体のそれぞれについて、露点変化、前記二つの吸着筒内の圧力が均圧となる状態である昇圧完了の有無及び省エネ率の各状態を、監視・学習し、吸着と排気の切替に係る優先度を判断し、その優先度に従って前記機体の前記切替操作を順次行う。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤が充填された二つの吸着筒に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、
前記圧縮気体成分調整装置の各機体における動作工程は、
前記二つの吸着筒のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の所要成分が前記吸着剤に吸着されることで調整気体を吐出させる吸着工程と、
該吸着工程によって調整された調整気体の一部を前工程で圧縮気体の所要成分を吸着した他方の吸着筒へ導いて吸着能力が低下した該他方の吸着筒に充填された前記吸着剤から前記所要成分を脱着パージさせるように排気させて該吸着剤を再生させる排気工程と、
前記排気工程の前記排気を止めて前記吸着工程へ移行するまでに前記排気がなされたことで降下した前記他方の吸着筒内の圧力を昇圧させる昇圧工程とを含み、
前記3台以上の機体において、予め設定された設定圧力と前記吸着筒内の圧力を監視するように設けられた圧力センサーの検出圧力情報とを比較することで前記昇圧工程の完了を判断し、前記昇圧工程が完了した前記機体から順次前記切替操作を行うことを特徴とする圧縮気体成分調整装置の連係制御方法。
【請求項2】
吸着剤が充填された二つの吸着筒に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、
前記圧縮気体成分調整装置の各機体における動作工程は、
前記二つの吸着筒のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の所要成分が前記吸着剤に吸着されることで調整気体を吐出させる吸着工程と、
該吸着工程によって調整された調整気体の一部を前工程で圧縮気体の所要成分を吸着した他方の吸着筒へ導いて吸着能力が低下した該他方の吸着筒に充填された前記吸着剤から前記所要成分を脱着パージさせるように排気させて該吸着剤を再生させる排気工程と、
前記排気工程の前記排気を止めて前記吸着工程へ移行するまでに前記排気がなされたことで降下した前記他方の吸着筒内の圧力を昇圧させる昇圧工程とを含み、
前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記昇圧工程における昇圧時間に対する昇圧した圧力の比として規定される圧力上昇の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力上昇の勾配の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力上昇の勾配の傾向とを比較し、前記過去の圧力上昇の勾配の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力上昇にかかる警報発報工程と、
前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記排気工程における前記排気を開始して前記吸着筒内の圧力が降下する際の降圧時間に対する降下した圧力の比として規定される圧力降下の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力降下の勾配の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力降下の勾配の傾向とを比較し、前記過去の圧力降下の勾配の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力降下にかかる警報発報工程と、
前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記吸着工程における前記吸着筒内の圧力の変動の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力の変動の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力の変動の傾向とを比較し、前記過去の圧力の変動の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力の変動にかかる警報発報工程とのうち、
少なくとも一つの警報発報工程によって、学習した傾向から外れた際の警報を発報している前記機体が存在する場合、該機体について、連係制御から除外し、警報が解除されたら連係制御に復帰させることを特徴とする圧縮気体成分調整装置の連係制御方法。
【請求項3】
前記3台以上の機体のうちアドレス「0」の機体を親機とし、アドレス「1」以降の子機と設定されている場合に、前記切替操作については前記アドレスの概念をなくし、該切替操作を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮気体成分調整装置の連係制御方法。
【請求項4】
連係している全ての機体で他の機体の切替状態を監視し、切替操作のタイミングがバッティングしないように順次切替操作を行うことを特徴とする請求項1又は2記載の圧縮気体成分調整装置の連係制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸着剤が充填された二つの吸着筒を交互に用いることで、圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の連係制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、圧縮気体成分調整装置の一種である吸着式の除湿装置(「ヒートレスドライヤー装置」ともいう)においては、乾燥した気体(例えば空気)を連続して吐出・供給するため、活性アルミナ、シリカゲル、合成ゼオライト或いは塩化リチウムなどの吸着剤を充填した吸着塔(以下、「吸着筒」ともいう。)が2塔設けられている。
一方の吸着塔に湿った圧縮空気を導いて吸着乾燥を行い、得られた乾燥空気を所定の供給先に供給する。同時に、得られた乾燥空気の一部を他方の吸着塔に導き、前段階の乾燥工程で吸湿して吸湿能力の低下した吸着剤から湿分を脱着し、さらにこの湿分を吸着塔からパージして吸着剤の再生を行う。なお、この再生工程では、一般的に、得られた乾燥空気の約20%の量を大気に放出する。
この一方の吸着塔における圧縮空気の乾燥工程と、他方の吸着塔における吸着剤の再生工程は同時に並行して行われる。また、これらの乾燥工程と再生工程は二つの吸着塔の間で交互に行われる。例えば、所定時間経過ごとに両吸着塔に接続された切換え弁を切換える。これにより、乾燥空気を製品空気として連続的に所定の供給先に供給することができる。
【0003】
また、従来、単体の圧縮気体成分調整装置としては、吸着剤が充填された二つの吸着塔のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の湿分が吸着除湿されることで乾燥気体を吐出させる乾燥工程と、該乾燥工程によって乾燥された圧縮気体の一部を前工程で圧縮気体の湿分を吸着除湿した他方の吸着塔へ導いて吸着能力が低下した吸着剤から湿分を脱着させると共に排気させて該吸着剤を再生させる再生工程とを並行して行い、これらの乾燥工程と再生工程とを二つの吸着塔の間で実質的に交互に行うことで乾燥気体を連続的に吐出させる圧縮気体の除湿における継続供給方法であって、前記再生工程においては各吸着塔についてそれぞれ設けられ、該吸着塔から供給される乾燥した圧縮気体によって開閉駆動される排気バルブを作動させて排気の制御を行い、前記排気バルブの開閉駆動に用いられる圧縮気体の圧力が予め設定した値よりも低下した場合に、二つの吸着塔の双方について再生工程の排気が止められた状態となるように、各吸着塔にかかるそれぞれの排気バルブを共に閉じた状態とし、その後に装置全体の運転を停止させることを特徴とする圧縮気体の除湿における継続供給方法(特許文献1参照)が、本出願人によって提案されている。
【0004】
また、従来の吸着剤(乾燥剤)を用いて安定的に低湿度雰囲気で収納物を保管しうる装置として、制御手段により間欠的に乾燥剤を再生処理して、扉によって密閉可能な庫内を除湿処理する複数の除湿ユニットを具備した自動低温保管装置の保管方法であって、最初の運転開始時より複数の除湿ユニットを常に時間差を設けて再生・除湿サイクルを実行させる(特許文献2参照)ものが、提案されている。
【0005】
さらに、従来、省エネ運転で両吸着筒内の吸着剤を並行して劣化させ、標準運転に戻った際の露点温度の変動を抑制し、吸着剤交換タイミングを同時としてランニングコストを低減する圧縮気体の除湿方法および除湿装置として、吸着剤17を充填する一対の吸着筒3,4を備え、所定の条件下における第1回目の省エネ運転として、パージ工程を停止しかつ一方の吸着筒除湿工程を継続し、2回目以降の省エネ運転は、パージ工程を停止しかつ前回の省エネ運転で除湿を行った吸着筒とは別の吸着筒で除湿工程を継続し、もしくは、2回目以降の省エネ運転として、パージ工程を停止しかつ各吸着筒の省エネ運転における除湿積算時間を比較し、少ない方の吸着筒で除湿工程を継続するもの(特許文献3参照)が、本出願人によって提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006-192402号公報(請求項2)
【特許文献2】特開2002-106889号公報(請求項6)
【特許文献3】特開2001-17821号公報(第1頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
圧縮気体成分調整装置の連係制御方法に関して解決しようとする問題点は、従来技術として、複数の除湿ユニットを、時間差を設けて再生・除湿サイクルを実行させるものが提案されているが、3台以上の複数台の機体の制御についてより最適化できる方法が提案されていないことにある。
そこで本発明の目的は、圧縮気体成分調整装置の3台以上の複数台の機体について、稼働させる優先度を判断することでより適切に管理することができる圧縮気体成分調整装置の連係制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記目的を達成するために次の構成を備える。
本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の一形態によれば、吸着剤が充填された二つの吸着筒に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、前記3台以上の機体のそれぞれについて、露点変化、昇圧時間、省エネ率及び吸着剤劣化の各状態を、監視・学習し、吸着と排気の切替に係る優先度を判断し、その優先度に従って前記機体の前記切替操作を順次行うことを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の一形態によれば、負荷条件の変化によって、連係している全ての前記機体を稼働する必要がなくなって一部の前記機体の稼働でよくなった場合、必要流量・目標露点から稼働が必要となる前記機体の数を判断し、前記優先度に従って稼働する前記機体と停止する前記機体を選別することを特徴とすることができる。
【0010】
また、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の一形態によれば、露点変化、昇圧時間、省エネ率の各状態を、監視・学習し、その傾向から吸着剤の劣化スピードを予測することで前記吸着剤の劣化の状況を監視・学習することを特徴とすることができる。
【0011】
また、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の一形態によれば、吸着剤が充填された二つの吸着筒に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、前記圧縮気体成分調整装置の各機体における動作工程は、前記二つの吸着筒のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の所要成分が前記吸着剤に吸着されることで調整気体を吐出させる吸着工程と、該吸着工程によって調整された調整気体の一部を前工程で圧縮気体の所要成分を吸着した他方の吸着筒へ導いて吸着能力が低下した該他方の吸着筒に充填された前記吸着剤から前記所要成分を脱着パージさせるように排気させて該吸着剤を再生させる排気工程と、前記排気工程の前記排気を止めて前記吸着工程へ移行するまでに前記排気がなされたことで降下した前記他方の吸着筒内の圧力を昇圧させる昇圧工程とを含み、前記3台以上の機体において、予め設定された設定圧力と前記吸着筒内の圧力を監視するように設けられた圧力センサーの検出圧力情報とを比較することで前記昇圧工程の完了を判断し、前記昇圧工程が完了した前記機体から順次前記切替操作を行うことを特徴とする。
【0012】
また、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の一形態によれば、吸着剤が充填された二つの吸着筒に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、前記圧縮気体成分調整装置の各機体における動作工程は、前記二つの吸着筒のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の所要成分が前記吸着剤に吸着されることで調整気体を吐出させる吸着工程と、該吸着工程によって調整された調整気体の一部を前工程で圧縮気体の所要成分を吸着した他方の吸着筒へ導いて吸着能力が低下した該他方の吸着筒に充填された前記吸着剤から前記所要成分を脱着パージさせるように排気させて該吸着剤を再生させる排気工程と、前記排気工程の前記排気を止めて前記吸着工程へ移行するまでに前記排気がなされたことで降下した前記他方の吸着筒内の圧力を昇圧させる昇圧工程とを含み、前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記昇圧工程における昇圧時間に対する昇圧した圧力の比として規定される圧力上昇の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力上昇の勾配の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力上昇の勾配の傾向とを比較し、前記過去の圧力上昇の勾配の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力上昇にかかる警報発報工程と、前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記排気工程における前記排気を開始して前記吸着筒内の圧力が降下する際の降圧時間に対する降下した圧力の比として規定される圧力降下の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力降下の勾配の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力降下の勾配の傾向とを比較し、前記過去の圧力降下の勾配の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力降下にかかる警報発報工程と、前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記吸着工程における前記吸着筒内の圧力の変動の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力の変動の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力の変動の傾向とを比較し、前記過去の圧力の変動の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力の変動にかかる警報発報工程とのうち、少なくとも一つの警報発報工程によって、学習した傾向から外れた際の警報を発報している前記機体が存在する場合、該機体について、連係制御から除外し、警報が解除されたら連係制御に復帰させることを特徴とすることを特徴とすることができる。
【0013】
また、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の一形態によれば、前記3台以上の機体のうちアドレス「0」の機体を親機とし、アドレス「1」以降の子機と設定されている場合に、前記切替操作については前記アドレスの概念をなくし、該切替操作を行うことを特徴とすることを特徴とすることができる。
【0014】
また、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の一形態によれば、連係している全ての機体で他の機体の切替状態を監視し、切替操作のタイミングがバッティングしないように順次切替操作を行うことを特徴とすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法によれば、圧縮気体成分調整装置の3台以上の複数台の機体について、稼働させる優先度を判断することでより適切に管理することができるという特別有利な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明に係る圧縮気体成分調整装置の形態例を示す回路図である。
【
図2】
図1の圧縮気体成分調整装置における動作の実施例を説明するタイムチャートである。
【
図3】
図1の圧縮気体成分調整装置における昇圧工程に関して圧力監視を行うことによる管理方法の実施例を説明するタイムチャートである。
【
図4】
図1の圧縮気体成分調整装置における排気工程に関して圧力監視を行うことによる管理方法の実施例を説明するタイムチャートである。
【
図5】本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の実施例を説明するタイムチャートである。
【
図6】本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の均圧制御のある実施例を説明するタイムチャートである。
【
図7】本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の均圧制御のある実施例を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の実施例を添付図面(
図1~7)に基づいて詳細に説明する。本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法は、吸着剤が充填された二つの吸着筒10、20に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、その二つの吸着筒10、20を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置(
図1参照)の3台以上の機体を連係させて制御する技術を対象としている。
【0018】
そして、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法によれば、前記圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体のそれぞれについて、露点変化、前記二つの吸着筒内の圧力が均圧となる状態である昇圧完了の有無及び省エネ率の各状態を、監視・学習し、吸着と排気の切替に係る優先度を判断し、その優先度に従って前記機体の前記切替操作を順次行うように制御される。
【0019】
この圧縮気体成分調整装置の連係制御方法によれば、圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体について、露点変化、前記二つの吸着筒内の圧力が均圧となる状態である昇圧完了の有無及び省エネ率という少なくとも3つの監視指標データの相関関係から算出される吸着と排気の切替に係る適正度と、さらにその適正度に関する算出結果や過去からの前記3つの監視指標データを学習することで得られる傾向や予測値として算出される吸着と排気の切替に係る適正度とから、吸着と排気の切替に係る優先度を判断し、その優先度に従って3台以上の機体の切替操作を順次行うように制御することができる。これによれば、圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体に関する稼働を最適化することができるという特別有利な効果を奏する。
【0020】
なお、前記3つの監視指標データのうち、露点変化については、基本的に、機体別に学習した露点推移から、露点上昇幅が大きい順に優先的に切替を行うことになる。そうすることで、機体のそれぞれの露点の上昇を抑え、結果的に安定した露点の供給が可能になる。また、省エネ率については、基本的に、機体別に学習した省エネ率の平均から、省エネ率が低い順に優先的に切替を行うことになる。そうすることで、機体のそれぞれの省エネ率の低下を抑え、結果的に安定して省エネ運転となりユーザーメリットが大きくなる。この省エネ運転については、例えば、本出願人によって提案された前記特許文献3に示されている方法を利用することができる。そして、省エネ率とは、1時間あたりの省エネ率(%)=省エネ運転によるパージ用電磁弁停止回数÷パージ用電磁弁最大動作回数×100(%)を時間平均したものとして設定することができる。
【0021】
また、前記の発明では、負荷条件の変化によって、連係している全ての前記機体を稼働する必要がなくなって一部の前記機体の稼働でよくなった場合、必要流量・目標露点から稼働が必要となる前記機体の数を判断し、前記優先度に従って稼働する前記機体と停止する前記機体を選別するようにしてもよい。これによれば、負荷条件の変化に対応し、圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体に関する稼働を最適化することができ、稼働効率を向上させることができる。
【0022】
また、前記の発明では、露点変化、前記二つの吸着筒内の圧力が均圧となる状態である昇圧完了の有無、省エネ率の各状態を、監視・学習し、その傾向から吸着剤の劣化スピードを予測することで前記吸着剤の劣化の状況を監視・学習するようにしても良い。これによれば、吸着剤の劣化については、情報取得のための特別なセンサー類を設けることなく、他の3つの監視指標データから算出するため、装置を簡素化できる。
【0023】
本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の他の実施例によれば、吸着剤が充填された二つの吸着筒に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、前記圧縮気体成分調整装置の各機体における動作工程は、前記二つの吸着筒のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の所要成分が前記吸着剤に吸着されることで調整気体を吐出させる吸着工程と、該吸着工程によって調整された調整気体の一部を前工程で圧縮気体の所要成分を吸着した他方の吸着筒へ導いて吸着能力が低下した該他方の吸着筒に充填された前記吸着剤から前記所要成分を脱着パージさせるように排気させて該吸着剤を再生させる排気工程と、前記排気工程の前記排気を止めて前記吸着工程へ移行するまでに前記排気がなされたことで降下した他方の前記吸着筒内の圧力を昇圧させる昇圧工程とを含み、前記3台以上の機体において、予め設定された設定圧力と前記吸着筒内の圧力を監視するように設けられた圧力センサーの検出圧力情報とを比較することで前記昇圧工程の完了を判断し、前記昇圧工程が完了した前記機体から順次前記切替操作を行うようにしてもよい。これによれば、昇圧工程のサイクル時間を適正化して稼働効率を向上することができ、昇圧が適正になされないことで生じる圧力変動による吸着剤の粉化(劣化)やバルブ類の故障などを未然に防止でき、装置の信頼性を向上できる。
【0024】
さらに、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の他の実施例によれば吸着剤が充填された二つの吸着筒に係る吸着と排気の切替操作を行うことで、該二つの吸着筒を交互に用いて圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させる圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体を連係させて制御する圧縮気体成分調整装置の連係制御方法であって、前記圧縮気体成分調整装置の各機体における動作工程は、前記二つの吸着筒のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の所要成分が前記吸着剤に吸着されることで調整気体を吐出させる吸着工程と、該吸着工程によって調整された調整気体の一部を前工程で圧縮気体の所要成分を吸着した他方の吸着筒へ導いて吸着能力が低下した該他方の吸着筒に充填された前記吸着剤から前記所要成分を脱着パージさせるように排気させて該吸着剤を再生させる排気工程と、前記排気工程の前記排気を止めて前記吸着工程へ移行するまでに前記排気がなされたことで降下した前記他方の吸着筒内の圧力を昇圧させる昇圧工程とを含み、前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記昇圧工程における昇圧時間に対する昇圧した圧力の比として規定される圧力上昇の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力上昇の勾配の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力上昇の勾配の傾向とを比較し、前記過去の圧力上昇の勾配の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力上昇にかかる警報発報工程と、前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記排気工程における前記排気を開始して前記吸着筒内の圧力が降下する際の降圧時間に対する降下した圧力の比として規定される圧力降下の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力降下の勾配の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力降下の勾配の傾向とを比較し、前記過去の圧力降下の勾配の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力降下にかかる警報発報工程と、前記吸着筒内の圧力を圧力センサーによって経時的に検出することで、過去の前記吸着工程における前記吸着筒内の圧力の変動の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力の変動の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力の変動の傾向とを比較し、前記過去の圧力の変動の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する圧力の変動にかかる警報発報工程とのうち、少なくとも一つの警報発報工程によって、学習した傾向から外れた際の警報を発報している前記機体が存在する場合、該機体について、連係制御から除外し、警報が解除されたら連係制御に復帰させるようにしてもよい。これによれば、不具合が発生した機体によって生じる製品気体の品質劣化を未然に防止でき、3台以上の複数台の機体から構成される全体装置の信頼性を向上できる。
【0025】
また、本発明では、前記3台以上の機体のうちアドレス「0」の機体を親機とし、アドレス「1」以降の子機と設定されている場合に、前記切替操作については前記アドレスの概念をなくし、該切替操作を行うようにしてもよい。これによれば、親機と子機とが連結されて制御される装置において、本発明に係る制御方法を適切に適用することができ、圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体に関する稼働を最適化することができ、稼働効率を向上させることができる。
【0026】
さらに、本発明では、連係している全ての機体で他の機体の切替状態を監視し、切替操作のタイミングがバッティングしないように順次切替操作を行うようにしてもよい。これによれば、3台以上の機体で切替操作が重なることを確実に防止できるため、複数台の機体から構成される全体装置システムについて極端な減圧や昇圧の変動を防止することができ、その全体装置システムにかかる不具合を未然に防止することができ、その全体装置システムに関する信頼性を向上できる。
【0027】
次に、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法に用いることができる単体ユニットとしての圧縮気体成分調整方法及び圧縮気体成分調整装置の形態例を添付図面(
図1~4)に基づいて詳細に説明する。この単体ユニット(一つの機体)としての圧縮気体成分調整方法及び圧縮気体成分調整装置は、基本的に、吸着剤が充填された二つの吸着筒10、20(
図1参照)を交互に用いることで、圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させるものである。
【0028】
本発明に係る各機体の圧縮気体成分調整方法については、以下に説明する吸着工程、排気工程、昇圧工程、切替工程や警報発報工程を備える。
吸着工程は、二つの吸着筒10(「CLM A」又は「A筒」とも表記する。)、20(「CLM B」又は「B筒」とも表記する。)のうち一方へ圧縮気体を導いて該圧縮気体の所要成分が吸着剤に吸着されることで調整気体(製品気体)を吐出させる工程である。なお、この吸着工程が一方の吸着筒(10又は20)で継続して実行されている間には、A筒(吸着塔10)とB筒(吸着塔20)との関係性が示された
図2によるように、他方の吸着筒(20又は10)では排気工程と昇圧工程とが順次実行されることになる。なお、本発明における吸着工程が調整気体を吐出させる工程であるのに対し、排気工程と昇圧工程とでは調整気体が吐出しない工程(再生工程)になっている。従って、この排気工程と昇圧工程とによって、再生工程が構成されている。
【0029】
排気工程は、前記吸着工程によって調整された調整気体の一部を前工程で圧縮気体の所要成分を吸着した前記他方の吸着筒(20又は10)へ導いて吸着能力が低下した該他方の吸着筒に充填された前記吸着剤から前記所要成分を脱着パージさせるように排気させて前記吸着剤を再生させる工程である。
【0030】
昇圧工程は、前記排気工程の前記排気を止めて前記吸着工程へ移行するまでに前記排気がなされたことで降下した前記他方の吸着筒内の圧力を昇圧させる工程である。なお、この際の前記他方の吸着筒内の圧力を昇圧させる気体は、継続して前記吸着工程によって調整された調整気体の一部であり、前記一方の吸着筒から供給されている。また、
図2に示すように、他方の吸着筒(20又は10)で昇圧工程が行われている際には、一方の吸着筒(10又は20)では継続して吸着工程が行われていることになる。
【0031】
また、切替工程や警報を発報する警報発報工程は、予め設定された設定時間を基準とし、予め設定された設定圧力の値と前記吸着筒(10及び20)内の圧力を監視するように設けられた圧力センサー(45及び46)の検出圧力情報の値とを比較することで判断がなされて実行される工程であって、所要の条件に到達した時点で、前記吸着工程と、前記排気工程及び前記昇圧工程とにかかる切替操作(一方の吸着筒(10又は20)においては吸着工程から排気工程への切替操作であり、他方の吸着筒(20又は10)においては昇圧工程から吸着工程への切替操作であって、吸着工程と前記再生工程との相互間の切替操作)や、警報の発報を行う工程になっている。
【0032】
以上の工程を備えることで、本発明に係る圧縮気体成分調整方法によれば、圧力スウィング法に用いられる二つの吸着筒10、20内部の圧力変化を経過時間と関連付けて監視し、圧縮気体の気体成分調整に係る工程をより適切に管理することができるという特別有利な効果を奏する。
【0033】
また、本形態例の切替工程は、前記昇圧工程について予め設定された昇圧設定時間を基準とし、予め設定された昇圧設定圧力と前記吸着筒10、20内の圧力を監視するように設けられた圧力センサー45、46の検出圧力情報とを比較することで判断がなされて、所要の条件に到達した時点で前記昇圧工程から前記吸着工程へ移行するように、前記吸着工程と、前記排気工程及び前記昇圧工程とにかかる切替操作を行う工程になっている。なお、一方の吸着筒が昇圧工程から次の吸着工程へ移行する際に、同時に他方の吸着筒では吸着工程から排気工程に移行することになる。また、一方の吸着筒で昇圧時間(昇圧工程)を延長している間は、他方の吸着筒では吸着時間(吸着工程)を延長していることになる。
【0034】
さらに具体的な例として昇圧工程に関連して本形態例では、
図2に示すように、前記昇圧設定時間として第1の昇圧設定時間(<a>秒)とその第1の昇圧設定時間(<a>秒)よりも長い時間の第2の昇圧設定時間(<c>秒)との2つが設定され、第1の昇圧設定時間(<a>秒)までに昇圧設定圧力に到達したことが圧力センサー45、46の検出圧力情報によって検知された場合には、第1の昇圧設定時間(<a>秒)になった時点で前記切替工程が行われ、第1の昇圧設定時間(<a>秒)から第2の昇圧設定時間(<c>秒)までに昇圧設定圧力に到達したことが圧力センサー45、46の検出圧力情報によって検知された場合には、その検知された時点で前記切替工程が行われ、第2の昇圧設定時間(<c>秒)までに昇圧設定圧力に到達したことが圧力センサー45、46の検出圧力情報によって検知されない場合には、第2の昇圧設定時間(<c>秒)になった時点で強制的に前記切替工程が行われるように設定されている。
【0035】
なお、本形態例における上述の昇圧工程に関連する昇圧設定圧力とは、例えば二つの吸着筒の間の圧力差とすることができ、例えば本形態例では圧力差が0(±0.05)MPaのタイミングで吸着筒の切り替えを行うように設定されている。なお、本発明はこのような相対的な圧力値(圧力差)を設定圧力として定めることに限定されるものではなく、それぞれの圧力値を設定圧力として定めることも可能である。
【0036】
これによれば、二つの吸着筒10、20にそれぞれ圧力センサー45、46を取り付け、各吸着筒10、20の監視を行うことで、二つの吸着筒10、20にかかる切り替えを、一定の時間管理から、両吸着筒10、20の圧力が同じになったタイミングとする圧力管理にすることになり、例えば再生空気量が減少した場合にも、安定した切り替えができる。このように、昇圧工程において二つの吸着筒10、20内の圧力が極力均一となるように昇圧時間(経過時間)をフレキシブルに変更調整することができるため、切り替え時の衝撃をより確実に無くすことができ、スムースな切り替えが可能となって、圧力変動による吸着剤の粉化(劣化)やバルブ類の故障が発生することを防止できる。また、オリフィス径を変更した場合にも、適切に昇圧させることが可能になる。
【0037】
また、本形態例では、前記第2の昇圧設定時間内に前記昇圧設定圧力まで昇圧できずに前記切替工程を複数回連続で行った場合は、異常と判断して警報を発報するように設定することができる。すなわち、通常工程で昇圧工程に入るため一方の排気バルブ(16又は26)を閉じて他方の排気バルブ(26又は16)と共に二つの排気バルブ(16及び26)を閉じた状態では、昇圧工程を完了することで二つの吸着筒(10及び20)内の圧力が均圧状態となるが、実際の昇圧が、昇圧設定時間(本形態例では第2の昇圧設定時間)を経過しても完了しない場合であって、それを繰り返す際には、異常と判断して警報を発報することになる。なお、本形態例では、昇圧が不十分な状態で前記切替工程を3回連続で行った場合を異常として判断するように設定されているが、本発明はこれに限定されず、その回数を適宜に設定すればよい。これによれば、気体洩れなどの故障の早期発見につながり、装置の信頼性を高め、稼働効率を高めることができる。
【0038】
また、本形態例では、前記切替工程毎に前記昇圧工程にかかる昇圧時間を記憶し、前記圧力センサーの故障時には、記憶していた過去の前記昇圧時間に基づいて算出される過去の切替にかかる切替時間によって前記切替工程を行うように設定することができる。これによれば、圧力センサーが故障した場合でも装置の運転を停止することなく、適切に継続でき、稼働効率を高めることができる。
【0039】
また、本形態例の警報発報工程は、
図2に示すように、前記吸着工程の後に前記排気を開始して前記排気工程が始まった時点から、吸着筒10、20内の圧力が予め設定された降圧設定圧力まで降下する時間として予め設定された降圧設定時間(<b>秒)を経過しても、降圧設定圧力と吸着筒10、20内の圧力を監視するように設けられた圧力センサー45、46の検出圧力情報とを比較することで、吸着筒10、20内の圧力が降圧設定圧力まで下がらなかったことを検知した場合に警報を発報する工程になっている。すなわち、排気バルブ(16又は26)を開くと吸着筒(10又は20)内が大気に開放されるため圧力がかからない状態になるが、実際の降圧時間(Y秒)が降圧設定時間(<b>秒)よりも長くなった場合(
図2(4)’)は、排気圧力の高圧異常と判断して警報を発報することになる。これによれば、通気路の詰まりなどの故障の早期発見につながり、装置の信頼性を高め、稼働効率を高めることができる。
【0040】
また、本発明にかかる警報発報工程としては、前述した工程の他に、人工知能(AI)技術を応用し、検出データを記憶・学習して将来の不具合を予測することで警報を出力することができる警報発報工程であって、以下に説明する圧力上昇にかかる警報発報工程、圧力降下にかかる警報発報工程、圧力の変動にかかる警報発報工程を備えることができる。本形態例では、これらの警報発報工程のうち少なくとも一つの警報発報工程を含むことで、不具合を早期に発見することができ、装置の信頼性を向上できる。なお、検出データを記憶・学習する際には、例えば、前述したような吸着、排気及び昇圧の工程によって構成される吸着サイクルのタイムテーブルを作成してデータを記録し、そのデータを用いて学習させるという手法を採ることができる。
【0041】
圧力上昇にかかる警報発報工程は、
図3に示すように、吸着筒10、20内の圧力を圧力センサー45、46によって経時的に検出することで、過去の前記昇圧工程における昇圧時間Xに対する昇圧した圧力Δpの比[Δp/X]として規定される圧力上昇の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力上昇の勾配m
Xの傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力上昇の勾配m
X’の傾向とを比較し、前記過去の圧力上昇の勾配の傾向から外れる場合(過去の勾配線に対して上下の許容範囲から外れる場合を含む)に異常と判断して警報を発報する工程になっている。
【0042】
圧力降下にかかる警報発報工程は、
図4に示すように、吸着筒10、20内の圧力を圧力センサー45、46によって経時的に検出することで、過去の前記排気工程における前記排気を開始して前記吸着筒10、20内の圧力が降下する際の降圧時間Yに対する降下した圧力Δpの比[Δp/Y]として規定される圧力降下の勾配の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力降下の勾配m
Yの傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力降下の勾配m
Y’の傾向とを比較し、前記過去の圧力降下の勾配の傾向から外れる場合(過去の勾配線に対して上下の許容範囲から外れる場合を含む)に異常と判断して警報を発報する工程になっている。
【0043】
圧力の変動にかかる警報発報工程は、吸着筒10、20内の圧力を圧力センサー45、46によって経時的に検出することで、過去の前記吸着工程における吸着筒10、20内の圧力の変動の傾向を記憶・学習し、学習した過去の圧力の変動の傾向と、前記圧力センサーによって経時的に検出した前記吸着筒内の実際の圧力の変動の傾向とを比較し、前記過去の圧力の変動の傾向から外れる場合(過去の勾配線に対して上下の許容範囲から外れる場合を含む)に異常と判断して警報を発報する工程になっている。
【0044】
次に、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の形態例について、
図1~4に基づいて詳細に説明する。本発明に係る圧縮気体成分調整装置は、吸着剤が充填された二つの吸着筒10、20を交互に用いることで、圧縮気体の気体成分を調整し、気体成分が調整された調整気体を継続的に吐出させるものであり、以下の構成を備える。
【0045】
先ず、導入された圧縮気体の所要成分を吸着する吸着剤が充填された第1吸着筒10及び第2吸着筒20を備える。なお、
図1では、第1吸着筒10が「CLM A」と表記され、第2吸着筒20が「CLM B」と表記されている。また、本形態例の吸着剤は、空気の湿分を吸着して乾燥空気を製品空気として吐出するもので、背景技術の欄で説明したような吸着式の除湿装置になっているが、本発明はこれに限定されるものではなく、適宜選択的に湿分(水蒸気)とは異なる他の気体成分を吸着できる吸着剤を用いることができるのは勿論である。それによれば、本発明は、所要の気体成分を除去して所要の気体成分の濃度を高めるように機能する圧縮気体成分調整装置として好適に適用できる。
【0046】
また、本形態例では、
図1に示すように、気体通路として、第1吸着筒10に圧縮気体を導く第1給気通路11、及び第2吸着筒20に圧縮気体を導く第2給気通路21と、第1吸着筒10から調整気体を吐出させる第1吐出通路13、及び第2吸着筒20から調整気体を吐出させる第2吐出通路23と、第1吸着筒10と第2吸着筒20を連通する吸着筒間接続路33と、第2吸着筒20で調整された調整気体の一部が吸着筒間接続路33を介して第1吸着筒10に導かれて吸着剤から所要成分を脱着パージして該吸着剤を再生させるように排気させる第1排気通路15、及び第1吸着筒10で調整された調整気体の一部が吸着筒間接続路33を介して第2吸着筒20に導かれて吸着剤から所要成分を脱着パージして該吸着剤を再生させるように排気させる第2排気通路25とを備えている。
【0047】
なお、吸着筒間接続路33には、
図1に示すようにオリフィス34が設けられており、このオリフィス34は所定の一定の圧力をかけることによって所定の一定の流量が得られるように作用する。従って、本形態例では、第1排気通路15又は第2排気通路25が開通して第1吸着筒10又は第2吸着筒20が大気に開放された場合、その大気に開放された第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内と給気される圧縮気体との圧力差によって、オリフィス34を通過する空気量は一定の流量となるように自動的にコントロールされる。
【0048】
また、本形態例では、
図1に示すように、上述の気体通路のうち給気通路11、21を開閉して切り替える「切替弁(
図2参照)」の弁機構の構成要素として、第1給気通路11を開閉する第1給気バルブ12、及び第2給気通路21を開閉する第2給気バルブ22と、第1給気バルブ12及び第2給気バルブ22の開閉切り替えを行うように作動する給気バルブ開閉手段30とを備えている。なお、
図1に示す形態例では、第1給気バルブ12及び第2給気バルブ22がコントロールバルブ(CTV)によって構成されており、給気バルブ開閉手段30がパイロットバルブ(PV1)によって構成されている。
【0049】
また、本形態例では、
図1に示すように、上述の気体通路のうち排気通路15、25を開閉して切り替える「排気弁(
図2参照)」の弁機構の構成要素として、第1排気通路15を開閉する第1排気バルブ16、及び第2排気通路25を開閉する第2排気バルブ26と、第1排気バルブ16の開閉を行うように作動する第1排気バルブ開閉装置17、及び第2排気バルブ26の開閉を行うように作動する第2排気バルブ開閉装置27とを備えている。なお、
図1に示す形態例では、第1排気バルブ16及び第2排気バルブ26がエキゾーストバルブ(EXV)によって構成されており、排気バルブ開閉手段が、第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27として配された二つのパイロットバルブ(PV2、PV3)によって構成されている。
【0050】
なお、本形態例の切替弁(
図2参照)の構成要素である給気バルブ開閉手段30を構成するパイロットバルブ(PV1)、第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27を構成する二つのパイロットバルブ(PV2、PV3)は、電磁制御弁であり、特許文献2及び3に記載されているように作動し、二つの吸着筒10、20から供給される圧縮気体によって、前述のコントロールバルブ(CTV)及びエキゾーストバルブ(EXV)を作動させて、前述の切替工程や、排気工程から昇圧工程への移行のための切替操作を実行するように配設されている。
【0051】
また、本形態例では、
図1に示すように、第1吸着筒10内の圧力を監視する第1圧力センサー45、及び第2吸着筒20内の圧力を監視する第2圧力センサー46とが配されている。なお、本形態例の第1圧力センサー45(PS1)は、第1吸着筒10の調整気体(本形態例では乾燥空気)が吐出される側である下流側であって、吸着筒間接続路33のオリフィス34に至る手前の管路(通気路)に装着されて、第1吸着筒10の圧力を計測検出して検出圧力情報を後述する制御装置50へ出力するように設けられている。また、本形態例の第2圧力センサー46(PS2)は、第2吸着筒20の調整気体(本形態例では乾燥空気)が吐出される側である下流側であって、吸着筒間接続路33のオリフィス34に至る手前(通気路)の管路に装着されて、第2吸着筒20の圧力を計測検出して検出圧力情報を後述する制御装置50へ出力するように設けられている。
【0052】
そして、本形態例では、第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46で得られた検出圧力情報が入力され、予め設定された設定時間を基準とし、前記検出圧力情報と予め設定された設定圧力とを比較することで判断し、所要の条件に到達した時点で、給気バルブ開閉手段30と排気バルブ開閉手段(第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27)とを作動させるように制御信号や、警告信号を出力する制御装置50とを備えている。
【0053】
以上の構成を備えることで、本発明に係る圧縮気体成分調整装置によれば、圧力スウィング法に用いられる二つの吸着筒10、20内部の圧力変化を経過時間と関連付けて監視し、圧縮気体の気体成分調整に係る工程を実行する装置の動作をより適切に管理することができるという特別有利な効果を奏する。
【0054】
また、
図1に示すように、本形態例では、以上構成の他に以下の構成を備えている。
14はチェックバルブ(CKV(1))であり、吐出される調整気体(本形態例では乾燥空気)が逆流しないように装着されている。また、42はチェックバルブ(CKV(2))であり、二つの吸着筒10、20の下流部から制御用としてパイロットバルブ(PV1)及び二つのパイロットバルブ(PV2、PV3)へ供給される圧縮気体が、逆流しないように装着されている。また、
図1において、AFと表記されているのはエアフィルタであり、IFがインレットフィルタ、OFがアウトレットフィルタである。また、
図1において、SLCはサイレンサであり、エキゾーストバルブ(EXV)の排気口となっており、排気騒音を低減するように配されている。さらに、
図1において、MSは、温湿度センサーである。
【0055】
次に、制御装置50の制御構成について、具体的な実施例を、
図2に基づいて説明する。
本形態例では、
図2に示すように、制御装置50では、第1排気バルブ16又は第2排気バルブ26を閉じて第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内を昇圧させる際の設定時間として、第1の昇圧設定時間(<a>秒)とその第1の昇圧設定時間(<a>秒)よりも長い時間の第2の昇圧設定時間(<c>秒)との2つが設定されている。
【0056】
そして、
図2に示す(X秒)は、実際に昇圧設定圧力(本実施例では二つの吸着筒10、20間の差圧が例えば0(±0.05)MPa、又はΔpになる圧力)までに達する時間の長さであり、第1の昇圧設定時間(<a>秒)までに昇圧設定圧力に到達したことが第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46の検出圧力情報によって検知された場合には、第1の昇圧設定時間(<a>秒)になった時点で給気バルブ開閉手段30及び第1排気バルブ開閉装置17又は第2排気バルブ開閉装置27を作動させて給気及び排気にかかる切り替えを行うように制御信号が、制御装置50によって出力される。なお、この昇圧設定圧力とは、第1圧力センサー45及び第2圧力センサー46の検出圧力情報によって算出される差圧であっても良いし、例えば圧縮気体成分調整装置に供給される給気圧が安定している場合は第1圧力センサー45又は第2圧力センサー46の検出圧力情報について個々に設定される圧力(Δp)であってもよい。これによる操作の例としては、例えば、
図2のタイムチャートにおいて、工程(1)から(2)に移行する時点のB筒(第2吸着筒20)で、実際の経過時間(X秒)が第1の昇圧設定時間(<a>秒)と同じになった場合、給気バルブ開閉手段30によって第2給気バルブ22を開いて給気がA筒(第1吸着筒10)からB筒20に切り替えられることによってB筒20で吸着工程が始まり、A筒10では第1排気バルブ開閉装置17によって第1排気バルブ16が開いて排気工程が始まるように切替操作がなされる。
【0057】
また、第1の昇圧設定時間(<a>秒)から第2の昇圧設定時間(<c>秒)までに昇圧設定圧力(差圧0(±0.05)MPa、又はΔp)に到達したことが第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46の検出圧力情報によって検知された場合には、その検知された時点で給気バルブ開閉手段30及び第1排気バルブ開閉装置17又は第2排気バルブ開閉装置27を作動させて給気及び排気にかかる切り替えを行うように制御信号が、制御装置50によって出力される。これによる操作の例としては、例えば、
図2のタイムチャートにおいて、工程(1)’から(2)’に移行する時点のB筒20で、実際の経過時間(X秒)が第1の昇圧設定時間(<a>秒)よりも長くなった場合、その(X秒)の時点で、給気バルブ開閉手段30によって第2給気バルブ22を開いて給気がA筒10からB筒20に切り替えられることによってB筒20で吸着工程が始まり、A筒10では第1排気バルブ開閉装置17によって第1排気バルブ16が開いて排気工程が始まるように切替操作がなされる。なお、
図2のタイムチャートにおいて、工程(3)から(4)に移行する際には、A筒10とB筒20の動作が逆になるが、上記と同様の切替操作がなされる。
【0058】
さらに、第2の昇圧設定時間(<c>秒)までに昇圧設定圧力(差圧0(±0.05)MPa、又はΔp)に到達したことが第1圧力センサー45及び/又は第2圧力センサー46の検出圧力情報によって検知されない場合には、第2の昇圧設定時間(<c>秒)になった時点で強制的に給気バルブ開閉手段30及び第1排気バルブ開閉装置17又は第2排気バルブ開閉装置27を作動させて給気及び排気を切り替える制御信号が、制御装置50によって出力される。これによる操作の例としては、例えば、
図2のタイムチャートにおいて、工程(3)’から(4)’に移行する時点のA筒10で、第2の昇圧設定時間(<c>秒)になっても設定圧力(Δp)に到達しない場合、その(<c>秒)の時点で、給気バルブ開閉手段30によって第1給気バルブ12を開いて給気がB筒20からA筒10に切り替えられることによってA筒10で吸着工程が始まり、B筒20では第2排気バルブ開閉装置27によって第2排気バルブ26が開いて排気工程が始まるように切替操作がなされる。
【0059】
以上の昇圧工程にかかる切替操作によれば、前述のようにスムースな切り替えが可能となって、圧力変動による吸着剤の粉化(劣化)やバルブ類の故障が発生することを防止できる。
【0060】
さらにまた、本形態例では、前記制御装置50によって、前記排気工程において排気を開始した時点から、第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内の圧力が予め設定された降圧設定圧力(Δp)の値まで降下する時間として予め設定された降圧設定時間(<b>秒)を経過しても、降圧設定圧力(Δp)の値と第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内の圧力を監視するように設けられた第1圧力センサー45又は第2圧力センサー46の検出圧力情報とを比較することで、第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内の圧力が降圧設定圧力(Δp)の値まで下がらなかった場合に警報を発報するための警報信号を出力するようになっている。
【0061】
これによる操作の例としては、例えば、
図2のタイムチャートにおいて、工程(4)’に示すようにB筒20で、降圧設定時間(<b>秒)になっても降圧設定圧力(Δp)に到達しない場合であって、実際の降圧時間(Y秒)が降圧設定時間(<b>秒)よりも長くなった場合には、前記制御装置50によって警報を発報するための警報信号が出力される。これによれば、前述のように信頼性と稼働効率を向上できる。
【0062】
また、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の他の形態例としては、警告信号出力手段として、第1吸着筒10内及び第2吸着筒20内の圧力を第1圧力センサー45及び第2圧力センサー46によって経時的に検出することで、第1排気バルブ16又は第2排気バルブ26を閉じて第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内を昇圧させる過去の昇圧工程における昇圧時間に対する昇圧した圧力の比[Δp/X]として規定される圧力上昇の勾配の傾向値と、第1排気バルブ16又は第2排気バルブ26を開いて第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内を降圧させる過去の排気工程における降圧時間に対する降下した圧力の比[Δp/Y]として規定される圧力降下の勾配の傾向と、過去の第1吸着筒10又は第2吸着筒20による吸着工程における第1吸着筒10内又は第2吸着筒20内の圧力の変動の傾向との各傾向のうちの少なくとも一つについて、記憶・学習し、学習した過去の傾向値と、前記第1圧力センサー及び前記第2圧力センサーによって経時的に検出した前記第1吸着筒内及び前記第2吸着筒内の実際の圧力の傾向とを比較し、前記過去の傾向から外れる場合に異常と判断して警報を発報する記憶・学習機能が設けられたものを備えるように構成することができる。これによれば、方法の発明として前述したように、装置の不具合を早期に発見することができ、装置の信頼性を向上できる。
【0063】
また、本形態例では、制御装置50を構成する情報処理装置が、記憶・学習機能が設けられた警告信号出力手段を構成する情報処理装置を兼ねるように構成することができる。 これによれば、一つの情報処理装置(記憶装置と演算装置を備えるコンピュータ装置)によって、圧縮気体成分調整装置の駆動制御と監視とを行って、適切に管理することができる装置を合理的に構成することができる。
【0064】
次に、本発明に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法の実施例を、
図5及び6のタイムチャート、
図7のフローチャートに基づいて詳細に説明する。この実施例は、親機「<F90>=0」と、その親機に連結され、その親機からの信号を受けて関連付けられて運転される子機「<F90>=1以降」とによって構成される圧縮気体成分調整装置の3台以上の複数台の機体を備えるものになっている。
【0065】
本実施例に係る圧縮気体成分調整装置の連係制御方法では、
図5に示すように、親機「<F90>=0」が運転を開始し、設定時間の一例として18秒後に、例えば
図1に記載の給気バルブ開閉手段30(
図5では吸気用電磁弁(A))を作動させてA筒10が吸気状態(吸着工程)になると共に最初の起点信号’CC’を送信し、その1秒後(設定時間の一例)に、例えば
図1に記載の第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27によって構成される排気バルブ開閉手段(
図5では電磁弁(D))を作動させてB筒20が排気工程(パージ工程)になる。
【0066】
また、複数の子機「<F90>=1以降」の運転開始については、前記最初の親機の起点信号’CC’を受けて、運転に係る優先度が高い順に、子機「<F90>=1」、子機「<F90>=6」、子機「<F90>=2」の運転を開始する。子機の運転の開始方法は、親機と同様に18秒後に給気バルブ開閉手段30を作動させてA筒10を吸着工程とし、その1秒後に排気バルブ開閉手段を作動させてB筒20をパージ工程とする。
【0067】
そして、親機で、B筒20がパージ工程になってから101秒後(設定時間の一例)に、そのB筒20がパージ工程から昇圧工程に切り替えられ、さらにその18秒後に給気バルブ開閉手段30を作動させてB筒20が吸着工程に切り換えられると共に第2の起点信号’CC’が子機に送信され、その1秒後にA筒10をパージ工程に切り替える。このとき、全ての子機では、前記の第2の起点信号’CC’を受けてB筒20でパージ工程を終了させて、昇圧工程を開始させる。
【0068】
次に、複数の子機の運転について、新しい基準による優先度が高い順(本実施例では、子機「<F90>=6」、<F90>=1」、子機「<F90>=2」の順)に、給気と排気に係る切替操作がなされる。本実施例では、先ず、子機「<F90>=6」において、親機の吸着工程の切替操作(A筒10からB筒20)がなされた(前記第2の起点信号’CC’が送信された)10秒後にB筒20を吸着工程に切り替え、その後1秒後にA筒20をパージ工程に切り替える。そして、子機「<F90>=1」においては、親機の吸着工程の切替操作(A筒10からB筒20)がなされた(前記第2の起点信号’CC’が送信された)30秒後にB筒20を吸着工程に切り替え、その後1秒後にA筒20をパージ工程に切り替える。さらに、子機「<F90>=2」においては、親機の吸着工程の切替操作(A筒10からB筒20)がなされた(前記第2の起点信号’CC’が送信された)50秒後にB筒20を吸着工程に切り替え、その後1秒後にA筒10をパージ工程に切り替える。
【0069】
そして、親機で、A筒10がパージ工程になってから101秒後に、そのA筒10がパージ工程から昇圧工程に切り替えられ、さらに18秒後に給気バルブ開閉手段30を作動させてA筒10が吸着工程に切り換えられると共に第3の起点信号’CC’が送信され、その1秒後にB筒20をパージ工程に切り替える。これに追従して、子機「<F90>=6」においては、第3の起点信号’CC’を受けて親機の吸着工程の切替操作の10秒後に、A筒10を吸着工程に切り替え、その1秒後にB筒20をパージ工程に切り替える。そして、子機「<F90>=1」においては、第3の起点信号’CC’を受けて親機の吸着工程の切替操作の30秒後に、A筒10を吸着工程に切り替え、その1秒後にB筒20をパージ工程に切り替える。さらに、子機「<F90>=2」においては、第3の起点信号’CC’を受けて親機の吸着工程の切替操作の50秒後に、A筒10を吸着工程に切り替え、その1秒後にB筒20をパージ工程に切り替える。そして、以上の工程が、順次繰り返されて継続運転される。
【0070】
次に、
図6及び7に基づいて、均圧制御がなされる際における圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体に関する制御方法の実施例について説明する。
先ず、
図6の上段に示す親機「<F90>=0」では、例えば給気バルブ開閉手段30(
図1参照)を作動させて二つの吸着筒10、20の一方が吸気状態(吸着工程)に切り替えられて起点信号’CC’を送信すると共に、その1秒後に例えば第1排気バルブ開閉装置17及び第2排気バルブ開閉装置27によって構成される排気バルブ開閉手段(
図1参照)を作動させて二つの吸着筒10、20の他方が排気工程(パージ工程)に切り替えられる。すなわち、
図7に示す親機「<F90>=0」のように、昇圧工程が完了して二つの吸着筒10、20が均圧になった際には吸気用電磁弁(給気バルブ開閉手段30)が切替作動して二つの吸着筒10、20とに係る吸着と再生の工程が切り替えられると共に起点信号’CC’が送信され、昇圧工程が完了しないでA筒10とB筒20とが均圧になっていない際には、パージ用電磁弁(排気バルブ開閉手段)が停止されて排気バルブが閉じた状態で昇圧工程が維持されるように制御される。
【0071】
これに追従して、
図6の中段に示す子機「<F90>=6」においては、前記の起点信号’CC’を受けて親機の吸気状態(吸着工程)の切替操作の10秒後(
図2の説明に関する第1の昇圧設定時間に相当)に前記昇圧工程において設定された圧力に達していないで次の延長された10秒間(
図2の説明に関する第2の昇圧設定時間に相当)の間に設定された圧力に達したその時点で、二つの吸着筒10、20の一方が吸気状態(吸着工程)に切り替えられて、その1秒後に二つの吸着筒10、20の他方が排気工程(パージ工程)に切り替える場合が示されている。すなわち、
図7に示す子機「<F90>=1以降」のように、親機から起点信号’CC’を受信して「’CC’受信完了かつ自身の遅延時間経過」の条件が満たされていると判断されて続いて昇圧工程が完了したと判断された際には二つの吸着筒10、20に係る吸着と再生の工程が切り替えられ、「’CC’受信完了かつ自身の遅延時間経過」の条件が満たされていないと判断された場合や昇圧工程が完了していないと判断された場合は、パージ用電磁弁(排気バルブ開閉手段)が停止されて排気バルブが閉じた状態で昇圧工程が維持されるように制御される。
【0072】
そして、
図6の下段に示す子機「<F90>=1」においては、第3の起点信号’CC’を受けて親機の吸気状態(吸着工程)の切替操作の30秒後(
図2の説明に関する第1の昇圧設定時間に相当)に前記昇圧工程において設定された圧力に達していないで、次の延長された10秒間(
図2の説明に関する第2の昇圧設定時間に相当)の間についても設定された圧力に達していない場合には、その延長された10秒後になった時点で、二つの吸着筒10、20に係る吸気状態(吸着工程)の切替操作が強制的になされ、その1秒後に二つの吸着筒10、20に係る排気工程(パージ工程)の切替操作が強制的になされる。
【0073】
これによれば、均圧制御と切替制御とを経時的に適切に関連付けることができ、圧縮気体成分調整装置の3台以上の機体に係る運転の最適化を図ることで、稼働効率を高めることができる。
【0074】
また、
図5~7の制御を行う実施例の機体間は有線で接続・通信しているが、Bluetoothやwifi等の無線通信を用いることで、複数台配置時の省スペース化、機種追加が容易になる。
【0075】
さらに、無線通信可能な集中コントロールモニタを設置することで、連結制御しているそれぞれの機体の運転状態(過去に学習した露点や圧力の変動や、そのデータから予測した故障内容や対策等も含む)、吸着剤やフィルタ等の消耗品の劣化状態(前述の予測した劣化スピード等も含む)をモニタリングでき、連結制御で現在どの機体が吸着しているか、前述の学習内容から次にどの機体が切替を行う予定なのかを「見える化」することができる。
【0076】
また、集中コントロールモニタとスマートフォンやタブレットをペアリングすることで、機体設置場所から離れた場所でも連結制御によって安定した露点、流量、圧力の圧縮空気が客先機器に供給できているかどうかを顧客にフィードバックできる。
【0077】
以上、本発明につき好適な形態例を挙げて種々説明してきたが、本発明はこの形態例に限定されるものではなく、発明の精神を逸脱しない範囲内で多くの改変を施し得るのは勿論のことである。
【符号の説明】
【0078】
10 第1吸着筒(A筒)
11 第1給気通路
12 第1給気バルブ
13 第1吐出通路
14 チェックバルブ(CKV(1))
15 第1排気通路
16 第1排気バルブ
17 第1排気バルブ開閉装置(パイロットバルブ(PV2))
20 第2吸着筒(B筒)
21 第2給気通路
22 第2給気バルブ
23 第2吐出通路
25 第2排気通路
26 第2排気バルブ
27 第2排気バルブ開閉装置(パイロットバルブ(PV3))
30 給気バルブ開閉手段(パイロットバルブ(PV1))
33 吸着筒間接続路
34 オリフィス
42 チェックバルブ(CKV(2))
45 第1圧力センサー
46 第2圧力センサー
50 制御装置