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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119953
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】有機化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 317/16 20060101AFI20240827BHJP
   C07D 307/10 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C07D317/16
C07D307/10
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024095582
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2020571316の分割
【原出願日】2020-02-07
(31)【優先権主張番号】P 2019022160
(32)【優先日】2019-02-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304023318
【氏名又は名称】国立大学法人静岡大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白井 淳
(72)【発明者】
【氏名】黒木 克親
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 暢之
(57)【要約】      (修正有)
【課題】光照射下でのヘテロ原子含有有機化合物の新たな製造方法を提供する。
【解決手段】式(1)で表される化合物の製造方法であって、式(2)で表される化合物を、光照射下で、フッ化ビニリデンと反応させる工程を含む製造方法。


[式中、Xは、O、S等、Rは、H又は1個以上の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基、Rは、H又は1価の有機基か、R及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個のCと一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成していてもよく、Rは、H又は1価の有機基、Rは、-CFCH、又は-CHCHFである。]
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1):
【化1】
[式中、
Xは、-O-、置換基を有していてもよいイミノ基、又は-S-を表し、
は、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、及び
は、水素原子、又は1価の有機基を表すか、或いは、
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成していてもよく;
は、水素原子、又は1価の有機基を表し;及び
は、-CFCH、又は-CHCHFである。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化2】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物を、
光照射下で、フッ化ビニリデンと反応させる工程Aを含む、
製造方法。
【請求項2】
Xが、-O-である、
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
が、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基である、
請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
が、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及びーORからなる群より選択される1個以上の置換基をそれぞれ有していてもよい、アルキル基又はアリール基であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基である、
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
が、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基
である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
が、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及びーORからなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基である、
請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成している、
請求項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
が、
水素原子、
ヒドロカルビル基、又は
ヒドロカルビルオキシ基
である、
請求項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
が、-CFCH、又は-CHCHFである、
請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
フッ化ビニリデンの少なくとも一部が、これを含有する微細気泡の形態で、前記式(2)で表される化合物を含有する液体中に導入される、
請求項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項11】
前記微細気泡の形態が、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である、
請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
フッ化ビニリデンを含有する気体の体積の、前記式(2)で表される化合物を含有する液体の体積に対する比が、0.01~1の範囲内である、
請求項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記工程Aの反応温度が130℃以下である、
請求項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
前記工程Aの光が紫外線を含有する、
請求項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項15】
式(1):
【化3】
[式中、
Xは、-O-、置換基を有していてもよいイミノ基、又は-Sーを表し、
は、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、及び
は、水素原子、又は1価の有機基を表すか、或いは、
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成していてもよく;
は、水素原子、又は1価の有機基を表し;及び
は、-CFCH、又は-CHCHFを表す。]
で表される化合物(但し、3,3-ジフルオロ-2-メチル-2-ブタノール、及び4,4-ジフルオロ-2-メチル-2-ブタノールを除く。)。
【請求項16】
フッ化ビニリデン含有組成物であって、
(1)フッ化ビニリデン、及び
(2)液体媒体を含有し、且つ
前記フッ化ビニリデンの少なくとも一部は、前記液体媒体中に、微細気泡として分散している、組成物。
【請求項17】
前記液体媒体は、水、及びフッ化ビニリデンの貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体である、請求項16に記載のフッ化ビニリデン含有組成物。
【請求項18】
前記微細気泡の形態が、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である、請求項16又は17に記載の組成物。
【請求項19】
含フッ素オレフィン含有組成物であって、
(1)含フッ素オレフィン(但し、フッ化ビニリデンを除く。)、及び
(2)液体媒体を含有し、且つ
前記含フッ素オレフィンの少なくとも一部は、前記液体媒体中に、微細気泡として分散している、組成物。
【請求項20】
前記含フッ素オレフィンは、
式(3):
【化4】
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はフルオロアルキル基を表す。但し、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子である。]
で表される化合物である、請求項19に記載の含フッ素オレフィン含有組成物。
【請求項21】
前記液体媒体は、水、及び前記式(3)で表される含フッ素オレフィン(但し、フッ化ビニリデンを除く。)の貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体である、請求項19又は20に記載の含フッ素オレフィン含有組成物。
【請求項22】
前記微細気泡の形態が、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である、請求項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、有機化合物の製造方法(具体的には、ヘテロ原子含有有機化合物の製造方法、より具体的には、光照射下でのヘテロ原子含有有機化合物の製造方法)等に関する。
【背景技術】
【0002】
有機化合物の製造方法(具体的には、ヘテロ原子含有有機化合物の製造方法)、より具体的には、光照射下でのヘテロ原子含有有機化合物の製造方法としては、例えば、非特許文献1には、UV照射下での1-(ポリフルオロアルキル)エタン-1,2-ジオールが報告されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Vladimir Cirkvaら、Journal of Fluorine Chemistry 94 (1999):p.141-156、
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
有機化合物の新たな製造方法(具体的には、ヘテロ原子含有有機化合物の製造方法、より具体的には、光照射下でのヘテロ原子含有有機化合物の新たな製造方法)の提供が求められている。
本開示は、有機化合物の製造方法(具体的には、ヘテロ原子含有有機化合物の製造方法、より具体的には、光照射下でのヘテロ原子含有有機化合物の製造方法)等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、前記課題を解決するための手段として、以下のものを提供する。
【0006】
項1.
式(1):
【化1】
[式中、
Xは、-O-、置換基を有していてもよいイミノ基、又は-S-を表し、
は、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、及び
は、水素原子、又は1価の有機基を表すか、或いは、
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成していてもよく;
は、水素原子、又は1価の有機基を表し;及び
は、-CFCH、又は-CHCHFである。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化2】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物を、
光照射下で、フッ化ビニリデンと反応させる工程Aを含む、
製造方法。
項2.
Xが、-O-である、
項1に記載の製造方法。
項3.
が、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基又はヘテロアリール基である、
項1又は2に記載の製造方法。
項4.
が、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及び-ORからなる群より選択される1個以上の置換基をそれぞれ有していてもよい、アルキル基又はアリール基であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基である、
項3に記載の製造方法。
項5.
が、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基
である、
項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
項6.
が、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及びーORからなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、アルキル基又はアリール基である、
項5に記載の製造方法。
項7.
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成している、
項1~6のいずれか一項に記載の製造方法。
項8.
が、
水素原子、
ヒドロカルビル基、又は
ヒドロカルビルオキシ基
である、
項1~7のいずれか一項に記載の製造方法。
項9.
が、-CFCH、又は-CHCHFである、
項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
項10.
フッ化ビニリデンの少なくとも一部が、これを含有する微細気泡の形態で、前記式(2)で表される化合物を含有する液体中に導入される、
項1~9のいずれか一項に記載の製造方法。
項11.
前記微細気泡の形態が、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である、
項10に記載の製造方法。
項12.
フッ化ビニリデンを含有する気体の体積の、前記式(2)で表される化合物を含有する液体の体積に対する比が、0.01~1の範囲内である、
項1~11のいずれか一項に記載の製造方法。
項13.
前記工程Aの反応温度が130℃以下である、
項1~12のいずれか一項に記載の製造方法。
項14.
前記工程Aの光が紫外線を含有する、
項1~13のいずれか一項に記載の製造方法。
項15.
式(1):
【化3】
[式中、
Xは、-O-、置換基を有していてもよいイミノ基、又は-S-を表し、
は、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、及び
は、水素原子、又は1価の有機基を表すか、或いは、
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成していてもよく;
は、水素原子、又は1価の有機基を表し;及び
は、-CFCH、又は-CHCHFを表す。]
で表される化合物(但し、3,3-ジフルオロ-2-メチル-2-ブタノール、及び4,4-ジフルオロ-2-メチル-2-ブタノールを除く。)。
項16.
フッ化ビニリデン含有組成物であって、
(1)フッ化ビニリデン、及び
(2)液体媒体を含有し、且つ
前記フッ化ビニリデンの少なくとも一部は、前記液体媒体中に、微細気泡として分散している、組成物。
項17.
前記液体媒体は、水、及びフッ化ビニリデンの貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体である、項16に記載のフッ化ビニリデン含有組成物。
項18.
前記微細気泡の形態が、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である、項16又は17に記載の組成物。
項19.
含フッ素オレフィン含有組成物であって、
(1)含フッ素オレフィン(但し、フッ化ビニリデンを除く。)、及び
(2)液体媒体を含有し、且つ
前記含フッ素オレフィンの少なくとも一部は、前記液体媒体中に、微細気泡として分散している、組成物。
項20.
前記含フッ素オレフィンは、
式(3):
【化4】
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はフルオロアルキル基を表す。但し、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子である。]
で表される化合物である、項19に記載の含フッ素オレフィン含有組成物。
項21.
前記液体媒体は、水、及び前記式(3)で表される含フッ素オレフィン(但し、フッ化ビニリデンを除く。)の貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体である、項19又は20に記載の含フッ素オレフィン含有組成物
項22.
前記微細気泡の形態が、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である、項19~21のいずれか一項に記載の組成物。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、有機化合物の新たな製造方法(具体的には、ヘテロ原子含有有機化合物の製造方法、より具体的には、光照射下でのヘテロ原子含有有機化合物の新たな製造方法)が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の製造方法に用いられる装置の概要を示す図である(実施例1~9)。
図2】本開示の製造方法に用いられる別の装置の概要を示す図である(実施例10)。
図3】本開示の製造方法に用いられる別の装置の概要を示す図である(実施例11)。
図4】液体媒体としての水中でのVdF微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例12)。
図5】液体媒体としてのイソプロピルアルコール中でのVdF微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例12)。
図6】液体媒体としての1,3-ジオキソラン中でのVdF微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例12)。
図7】液体媒体としてのDMF中でのVdF微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例12)。
図8】水中でのウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフである(実施例13)。
図9】水中でのVdFの濃度の経時変化を示すグラフである(実施例13)。
図10】イソプロビルアルコール中でのウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフである(実施例13)。
図11】イソプロビルアルコール中でのVdFの濃度の経時変化を示すグラフである(実施例13)。
図12】1,3-ジオキソラン中でのウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフである(実施例13)。
図13】1,3-ジオキソラン中でのVdFの濃度の経時変化を示すグラフである(実施例13)。
図14】DMF中でのウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフである(実施例13)。
図15】DMF中でのVdFの濃度の経時変化を示すグラフ(実施例13)である。
図16】1,3-ジオキソラン中での2,3,3,3-tetrafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図17】DMF中での2,3,3,3-tetrafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである。
図18】イソプロピルアルコール中での2,3,3,3-tetrafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図19】水中での2,3,3,3-tetrafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図20】1,3-ジオキソラン中でのhexafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図21】DMF中でのhexafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図22】イソプロピルアルコール中でのhexafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図23】水中でのhexafluoropropylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図24】水中での1-bromo-1-fluoroethylene微細気泡の粒子径及び個数の測定結果を示すグラフである(実施例15)。
図25】水中での2,3,3,3-tetrafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図26】イソプロピルアルコール中での2,3,3,3-tetrafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図27】1,3-ジオキソラン中での2,3,3,3-tetrafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図28】DMF中での2,3,3,3-tetrafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図29】水中でのhexafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図30】イソプロピルアルコール中でのhexafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図31】1,3-ジオキソラン中でのhexafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図32】DMF中でのhexafluoropropyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
図33】水中での1-bromo-1-fluoroethyleneの濃度の経時変化を示すグラフ、及びウルトラファインバブルの個数の経時変化を示すグラフ(実施例16)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
用語
本明細書中の記号及び略号は、特に限定のない限り、本明細書の文脈に沿い、本発明が属する技術分野において通常用いられる意味に理解できる。
本明細書中、語句「含有する」は、語句「から本質的になる」、及び語句「からなる」を包含することを意図して用いられる。
特に限定されない限り、本明細書中に記載されている工程、処理、又は操作は、室温で実施され得る。
本明細書中、室温は、10~40℃の範囲内の温度を意味することができる。
本明細書中、表記「Cn-Cm」(ここで、n、及びmは、それぞれ、数である。)は、当業者が通常理解する通り、炭素数がn以上、且つm以下であることを表す。
【0010】
当業者が、技術常識に基づき理解する通り、本明細書中、用語「含有量」及び用語「純度」は、文脈に応じて、相互互換的に使用され得る。
【0011】
国際標準化機構(ISO)ファインバブル技術専門委員会の定義(2013年)に従い、
本明細書中、「ファインバブル」は、直径100μm以下の気泡を意味し、及び
それぞれ当該「ファインバブル」に包含されるものである、
「マイクロバブル」は、直径1~100μmの気泡を意味し、及び
「ウルトラファインバブル」は、直径1μm以下の気泡を意味する。
【0012】
本明細書中、「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素、塩素、臭素、及びヨウ素が挙げられる。
【0013】
本明細書中、特に限定のない限り、「有機基」は、その構成原子として1個以上の炭素原子を含有する基を意味する。
本明細書中、特に限定のない限り、「1価の有機基」としては、ヒドロカルビル基を包含する。
本明細書中、特に限定のない限り、有機基の例は、ヒドロカルビル基、ヒドロカルビルオキシ基(例:アルコキシ基)、エステル基、エーテル基、ヒドロカルビルオキシ基(例:アルコキシ基)、エステル基、エーテル基(又はエーテル結合含有基)、アシル基、及びヘテロシクリル基(例:ヘテロアリール基、及び非芳香族複素環基)を包含する。
当該「有機基」は、例えば、1価の有機基であることができる。
本明細書中、特に限定のない限り、「1価の有機基」としては、ヒドロカルビル基が例示される。
【0014】
本明細書中、特に限定のない限り、「ヒドロカルビル基」は、その構成原子として、1個以上の炭素原子、及び1個以上の水素原子を含有する基を意味する。「ヒドロカルビル基」は、「炭化水素基」とも称され得る。
本明細書中、特に限定のない限り、「ヒドロカルビル基」としては、1個以上の芳香族ヒドロカルビル基で置換されていてもよい脂肪族ヒドロカルビル基(例:ベンジル基)、及び1個以上の脂肪族ヒドロカルビル基で置換されていてもよい芳香族ヒドロカルビル基(アリール基)が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族ヒドロカルビル基」は、直鎖状、分枝鎖状、環状、又はそれらの組み合わせであることができる。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族ヒドロカルビル基」は、飽和、又は不飽和であることができる。
本明細書中、特に限定のない限り、「脂肪族ヒドロカルビル基」としては、例えば、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、及びシクロアルキル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキル基」としては、例えば、メチル、エチル、プロピル(例:プロピル、イソプロピル)、ブチル(例:n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル)、ペンチル(例:n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル)、及びヘキシル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数1~10のアルキル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「アルケニル基」としては、例えば、ビニル、1-プロペニル、イソプロペニル、2-メチル-1-プロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、2-エチル-1-ブテニル、1-ペンテニル、2-ペンテニル、3-ペンテニル、4-ペンテニル、4-メチル-3-ペンテニル、1-ヘキセニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、4-ヘキセニル、及び5-ヘキセニル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数2~10のアルケニル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「アルキニル基」としては、例えば、エチニル、1-プロピニル、2-プロピニル、1-ブチニル、2-ブチニル、3-ブチニル、1-ペンチニル、2-ペンチニル、3-ペンチニル、4-ペンチニル、1-ヘキシニル、2-ヘキシニル、3-ヘキシニル、4-ヘキシニル、及び5-ヘキシニル等の、直鎖状、又は分枝鎖状の、炭素数2~6のアルキニル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「シクロアルキル基」としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、及びシクロヘプチル等の炭素数3~8のシクロアルキル基が例示される。
本明細書中、特に限定のない限り、「芳香族ヒドロカルビル基(アリール基)」としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、フェナンスリル基、アンスリル基、及びピレニル基が例示される。
【0015】
本明細書中、特に限定のない限り、「アルコキシ基」は、例えば、RO-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
本明細書中、特に限定のない限り、「エステル基」は、エステル結合(すなわち、-C(=O)-O-、又は-O-C(=O)-)を有する有機基を意味する。その例は、式:RCO-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基、および式:R-CO-R-(当該式中、Rはアルキル基であり、及びRはアルキレン基である。)で表される基を包含する。
【0016】
本明細書中、特に限定のない限り、「エーテル基」又は「エーテル結合含有基」は、エーテル結合(-O-)を有する基を意味する。
「エーテル基」又は「エーテル結合含有基」の例は、ポリエーテル基を包含する。ポリエーテル基の例は、式:R-(O-R-(当該式中、Rはアルキル基であり、Rは各出現において同一又は異なって、アルキレン基であり、及びnは1以上の整数である。)で表される基を包含する。アルキレン基は前記アルキル基から水素原子を1個除去して形成される2価の基である。
「エーテル基」又は「エーテル結合含有基」の例は、また、ヒドロカルビルエーテル基を包含する。ヒドロカルビルエーテル基は、基の内部及び/又は末端(若しくは付け根)に1個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基を意味する。「1個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基」は、1個以上のエーテル結合が挿入されているヒドロカルビル基であることができる。その例は、ヒドロカルビルオキシ基(例:ベンジルオキシ基)を包含する。
「1個以上のエーテル結合を有するヒドロカルビル基」の例は、1個以上のエーテル結合を有するアルキル基を包含する。「1個以上のエーテル結合を有するアルキル基」は、1個以上のエーテル結合が挿入されているアルキル基であることができる。本明細書中、このような基をアルキルエーテル基と称する場合がある。
【0017】
本明細書中、特に限定のない限り、「アシル基」は、アルカノイル基を包含する。本明細書中、特に限定のない限り、「アルカノイル基」は、例えば、RCO-(当該式中、Rはアルキル基である。)で表される基である。
【0018】
本明細書中、特に限定のない限り、「ヘテロアリール基」の例は、5員又は6員のヘテロアリール基、並びにこれらがベンゼン環と縮合した基を包含する。
本明細書中、特に限定のない限り、「5又は6員の単環性芳香族複素環基」の例は、ピロリル(例:1-ピロリル、2-ピロリル、3-ピロリル)、フリル(例:2-フリル、3-フリル)、チエニル(例:2-チエニル、3-チエニル)、ピラゾリル(例:1-ピラゾリル、3-ピラゾリル、4-ピラゾリル)、イミダゾリル(例:1-イミダゾリル、2-イミダゾリル、4-イミダゾリル)、イソオキサゾリル(例:3-イソオキサゾリル、4-イソオキサゾリル、5-イソオキサゾリル)、オキサゾリル(例:2-オキサゾリル、4-オキサゾリル、5-オキサゾリル)、イソチアゾリル(例:3-イソチアゾリル、4-イソチアゾリル、5-イソチアゾリル)、チアゾリル(例:2-チアゾリル、4-チアゾリル、5-チアゾリル)、トリアゾリル(例:1,2,3-トリアゾール-4-イル、1,2,4-トリアゾール-3-イル)、オキサジアゾリル(例:1,2,4-オキサジアゾール-3-イル、1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)、チアジアゾリル(例:1,2,4-チアジアゾール-3-イル、1,2,4-チアジアゾール-5-イル)、テトラゾリル、ピリジル(例:2-ピリジル、3-ピリジル、4-ピリジル)、ピリダジニル(例:3-ピリダジニル、4-ピリダジニル)、ピリミジニル(例:2-ピリミジニル、4-ピリミジニル、5-ピリミジニル)、及びピラジニル等の、環構成原子として、酸素、硫黄、及び窒素からなる群より選択される1個以上(例:1個、2個、又は3個)のヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール基が例示される。
【0019】
本明細書中、特に断りのない限り、「ヘテロ環」の例は、炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含有する5~7員ヘテロ環等を包含する。
本明細書中、特に断りのない限り、「ヘテロ環」の例は、非芳香族ヘテロ環及び芳香族ヘテロ環を包含する。
【0020】
本明細書中、特に断りのない限り、「炭素原子以外に窒素原子、硫黄原子及び酸素原子から選ばれるヘテロ原子を1~4個含有する5~7員ヘテロ環」の例は、ピロリジン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、ピペリジン、テトラヒドロピラン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、及びヘキサメチレンイミンを包含する。
【0021】
本明細書中、特に断りのない限り、「非芳香族ヘテロ環」の例は、3~8員の非芳香族ヘテロ環等が挙げられ、その具体例は、オキシラン、アゼチジン、オキセタン、チエタン、ピロリジン、ジヒドロフラン、テトラヒドロフラン、テトラヒドロチオフェン、イミダゾリジン、オキサゾリジン、イソオキサゾリン、ピペリジン、ジヒドロピラン、テトラヒドロピラン、テトラヒドロチオピラン、モルホリン、チオモルホリン、ピペラジン、ジヒドロオキサジン、テトラヒドロオキサジン、ジヒドロピリミジン、テトラヒドロピリミジン、アゼパン、オキセパン、チエパン、オキサゼパン、チアゼパン、アゾカン、オキソカン、チオカン、オキサゾカン、チアゾカン等を包含する。
【0022】
本明細書中、特に断りのない限り、芳香族ヘテロ環の例は、5又は6員芳香族ヘテロ環が挙げられ、その具体例の例は、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、1,2,3-オキサジアゾール、1,2,4-オキサジアゾール、1,3,4-オキサジアゾール、フラザン、1,2,3-チアジアゾール、1,2,4-チアジアゾール、1,3,4-チアジアゾール、1,2,3-トリアゾール、1,2,4-トリアゾール、テトラゾール、ピリジン、ピリダジン、ピリミジン、ピラジン、及びトリアジン等を包含する。
【0023】
製造方法
本開示の製造方法は、
式(1):
【化5】
[式中、
Xは、-O-、置換基を有していてもよいイミノ基、又は-S-を表し、
は、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、及び
は、水素原子、又は1価の有機基を表すか、或いは、
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成していてもよく;
は、水素原子、又は1価の有機基を表し;及び
は、-CFCH、又は-CHCHFである。]
で表される化合物の製造方法であって、
式(2):
【化6】
[式中の記号は前記と同意義を表す。]
で表される化合物を、
光照射下で、フッ化ビニリデンと反応させる工程Aを含む。
【0024】
本明細書中、前記式(1)で表さわれる化合物を、「式(1)の化合物」、又は「化合物(1)」と称する場合がある。
本明細書中、前記式(2)で表さわれる化合物を、「式(2)の化合物」、又は「化合物(2)」と称する場合がある。
【0025】
Xは、好ましくは、-O-である。
【0026】
は、好ましくは、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基である。
【0027】
は、好ましくは、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及びーORからなる群より選択される1個以上の置換基をそれぞれ有していてもよい、アルキル基又はアリール基であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基である。
【0028】
は、好ましくは、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基
である。
【0029】
は、好ましくは、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及びーORからなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよい、アルキル基又はアリール基であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基である。
【0030】
及びRは、好ましくは、
これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成している。
ここで、Xは好ましくはーOーであり、すなわち当該ヘテロ環は、好ましくは含酸素ヘテロ環である。当該環は、好ましくは5~6員環である。
当該ヘテロ環が有していてもよい置換基の好適な例は、アルキル基、アリール基、ヘテロアリール基、ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及び-ORを包含する。
【0031】
は、好ましくは、
水素原子、
ヒドロカルビル基、又は
ヒドロカルビルオキシ基
である。
は、より好ましくは、
水素原子、
C1-C6ヒドロカルビル基、又は
C1-C6ヒドロカルビルオキシ基
である。
【0032】
は、好ましくは、
-CFCH、又は-CHCHF
である。
【0033】
好ましくは、
Xは、-O-であり、及び
は、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基(好ましくはC6-C10アリール基)
[好ましくは、水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及び-ORからなる群より選択される1個以上の置換基をそれぞれ有していてもよい、アルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)又はアリール基(好ましくはC6-C10アリール基)であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)である。]
であり、
は、
水素原子、又は
1個以上の置換基を有していてもよいアルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)、又は1個以上の置換基を有していてもよいアリール基
[好ましくは、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基(好ましくはC6-C10アリール基)、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及び-ORからなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよい、アルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)又はアリール基(好ましくはC6-C10アリール基)であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)であり;
より好ましくは、
水素原子、又は
ケト基、ニトリロ基、ニトロ基、ハロゲン基、アリール基、-SOR、-SOR、-OP(=O)(OR)、及び-ORからなる群より選択される1個以上の置換基を有していてもよい、アルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)又はアリール基(好ましくはC6-C10アリール基)であり、及び
Rは、各出現において、同一又は異なって、水素原子、又はアルキル基(好ましくはC1-C6アルキル基)である。]
であるか、或いは
及びRは、好ましくは、
これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成してあり:
は、
水素原子、又は1価の有機基
(好ましくは、水素原子、ヒドロカルビル基、又はヒドロカルビルオキシ;及び
より好ましくは、水素原子、C1-C10ヒドロカルビル基、又はC1-C10ヒドロカルビルオキシ)であり;
は、
-CFCH、又は-CHCHF
である。
化合物(2)の好適な例は、ジオキソラン(例:1,3-ジオキソラン)、オルトギ酸メチル、及びオルトギ酸エチルを包含する。
【0034】
工程A
工程Aの反応は、例えば、フッ化ビニリデンを含有する気体を、化合物(2)を含有する液体に接触させることにより、実施され得る。
当該気体におけるフッ化ビニリデンの含有割合は高いことが好ましく、具体的には、例えば、80v/v%以上、90v/v%以上、95v/v%以上、98v/v%以上、又は99v/v%以上である。
当該接触は、好ましくは、例えば、
化合物(1)を含有する液体中に、フッ化ビニリデンを含有する微細気泡を導入することにより実施され得る。
当該微細気体におけるフッ化ビニリデンの含有割合は高いことが好ましく、具体的には、例えば、80v/v%以上、90v/v%以上、95v/v%以上、98v/v%以上、又は99v/v%以上である。
【0035】
好ましくは、フッ化ビニリデンの少なくとも一部は、これを含有する微細気泡の形態で、前記化合物(2)を含有する液体中に導入される。
【0036】
当該液体(すなわち、工程Aの液体媒体)は、
好ましくは、フッ化ビニリデンの貧溶媒である。
前記液体媒体は、水、及びフッ化ビニリデンの貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体であることができる。
【0037】
当該液体媒体の具体例は、
水;
アルコール溶媒[例:メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロピルアルコール、n-ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコール、ヘキサントリオール];
非芳香族炭化水素溶媒[例:ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、n-デカン、イソドデカン、トリデカン];
芳香族炭化水素溶媒[例:ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリン、ベラトロール、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、メチルナフタレン、アニソール、フェネトールニトロベンゼン、o-ニトロトルエン、メシチレン、インデン、ジフェニルスルフィド、アニソール、プロピオフェノン];
ケトン溶媒[例:アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ヘキサノン、メチルイソブチルケトン、ヘプタノン、ジイソブチルケトン、アセトニルアセトン、メチルヘキサノン、アセトフェノン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、プロピオフェノン、イソホロン、];
ハロゲン化炭化水素溶媒[例:ジクロロメタン、クロロホルム、クロロベンゼン];
エーテル溶媒[例:ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジイソプロピルエーテル、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)、ジオキサン、ジメトキシエタン、ジグライム、アニソール、フェネトール、1,1-ジメトキシシクロヘキサン、ジイソアミルエーテル、シクロペンチルメチルエーテル(CPME)、ジオキソラン、オルトギ酸メチル、オルトギ酸エチル];
エステル溶媒[例:酢酸エチル、酢酸イソプロピル、マロン酸ジエチル、3-メトキシ-3-メチルブチルアセテート、γ-ブチロラクトン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジメチル、α-アセチル-γ-ブチロラクトン];
ニトリル溶媒[例:アセトニトリル、ベンゾニトリル];
スルホキシド系溶媒[例:ジメチルスルホキシド、スルホラン];及び
アミド溶媒[例:N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N-ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン(NMP)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMI)、N,N-ジメチルアクリルアミド、N,N-ジメチルアセトアセトアミド(DMA)、N,N-ジエチルホルムアミド、N,N-ジエチルアセトアミド];並びに
これらの2種以上の組み合わせ
を包含する。
前記工程Aの反応基質の一部又は全部は、当該液体媒体としても機能してよく、及び同様に、前記液体媒体の一部又は全部は、前記反応基質としても機能してよい。
【0038】
前記液体中に導入されるフッ化ビニリデン全体に対する、微細気泡の形態で導入されるフッ化ビニリデンの割合は、より多いことが好ましい。
【0039】
当該微細気泡は、通常行われる方法によって発生させればよい。
当該方法としては、例えば、
(a)過飽和を利用する方法(具体的には、溶剤を収容した密閉容器で溶質ガスを加圧して十分量を溶解させ、次いで溶質ガスが加圧化で溶解した溶剤を解圧し、溶剤中に溶質ガスのマイクロバブルを発生させる方法);及び
(b)気液せん断法(すなわち、溶剤の渦流に溶質ガスを供給して溶剤中で溶質ガスをせん断して溶剤中に溶質ガスの微細気泡を発生させる方法)
が例示される。
本開示の方法における微細気泡は、これらのいずれかの方法を採用し、及び微細気泡発生装置を用いて発生させればよい。
当該微細気泡発生装置は、例えば、液体中に気体を注入し、これにより得られる気体/液体混合物の流れに、スタティックミキサーで剪断力を加えて液体の分割を繰り返すことで、液体中に微細気泡を作り出す機能を有するものであることができる。
微細気泡を発生する方式としては、加圧溶解方式、旋回流式、スタティックミキサー式、キャビテーション式、及びベンチュリー式が例示される。
【0040】
工程Aへの反応系へのフッ化ビニリデンの気体の供給量(又は供給速度)は、反応容器の大きさ、光の透過性、バブル発生装置の能力などを考慮して決定できる。
具体的には、例えば、1分間あたりに、反応系の反応液の体積に対して、
通常1~99vol%、好ましくは5~80vol%、より好ましくは10~50vol%のフッ化ビニリデンの気体を供給すればよい。
【0041】
当該微細気泡は、好ましくはウルトラファインバブルである。
なお、本明細書中、「ウルトラファインバブル」とは、国際標準化機構(ISO)の定義に従い、直径1μm以下の気泡を称する。
ウルトラファインバブルは、市販の装置[例:SMX554、SMX374、SMX115T、SMX115、ASG1、ASG2、MA3FS、MA3、MA5S、BA06S、及びAMB3(いずれもHACK UFB社)、並びにFBG-OS Type1(PMS者)]を使用して、調製可能である。
前記微細気泡の好適な形態は、
前記気体の泡の全個数に対して、
好ましくは、10nm~1μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が、
90%以上である形態;
より好ましくは、50nm~1μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が、
90%以上である形態;
50nm~500nmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が、
90%以上である形態
である。
【0042】
微細気泡の粒径、及び数、並びにこれらの分布及び平均粒径は、レーザー光を用い、ブラウン拡散相当径を個数基準で測定する方法である、ナノ粒子トラッキング解析法により、測定される。当該測定は、市販の装置である、NanoSight LM-10(NanoSight社)又はその同等品にて実施できる。
但し、当該ナノ粒子トラッキング解析方法で正確な測定ができない場合、別法により測定してもよい。
このような別法としては、
(1)ナノバブルの直径の測定方法としてパーティクルセンサPS100(製品名、北斗電子工業)又はその同等品を用いる方法、及び
(2)マイクロバブル及びナノバブルの両方の直径の測定方法として、島津ナノ粒子径分布測定装置SALD-7100(製品名、島津製作所)又はその同等品を用いる方法、並びに
(3)これらの測定方法を組み合わせて実施する方法
が挙げられる。
【0043】
前記工程Aの反応系における、フッ化ビニリデンを含有する気体の体積の、化合物(2)を含有する液体の体積に対する比は、
通常、0.01~1の範囲内;
好ましくは、0.02~0.9の範囲内;
より好ましくは、0.05~0.8の範囲内;及び
更に好ましくは、0.1~0.5の範囲内
である。
【0044】
工程Aの反応は、光照射下で実施される。
当該光照射に用いられる照射光としては、例えば、工程Aの反応を開始、及び/又は促進できる光であれば特に限定なく使用することができる。その光源の例は、低圧、中圧、若しくは高圧の水銀灯、タングステンランプ、及び発光ダイオード(LED)が挙げられる。
照射光は、好適に紫外線を含む光であることができる。
光照射の開始は、前記混合の、前、途中、同時、又は後であることができる。
光照射の強度は、工程Aの反応を開始、及び/又は促進できるエネルギーが供給される程度であればよく、これは、例えば、工程Aの反応が適当に進行するように、技術常識に基づき、光源の出力、及び光源と工程Aの反応系の距離等を調整することにより適宜調整することができる。
【0045】
工程Aの反応温度の下限は、
好ましくは-50℃、
より好ましくはー10℃、
更に好ましくは0℃、
より更に好ましくは10℃、及び
特に好ましくは20℃
であることができる。
工程Aの反応温度の上限は、
好ましくは130℃、
より好ましくは100℃、
更に好ましくは80℃、
より更に好ましくは50℃、及び
特に好ましくは30℃
であることができる。
工程Aの反応温度は、
好ましくは-10~130℃の範囲内、
より好ましくは0~100℃の範囲内、
更に好ましくは10~80℃の範囲内、及び
特に好ましくは10~50℃の範囲内、
より特に好ましくは10~30℃の範囲内、
であることができる。
また、工程Aの反応は、好適に室温で実施され得る。
当該反応温度であることにより、
工程Aの反応が不十分になる虞がある。
当該反応温度が高すぎると、コスト的に不利であり、及び望ましくない反応が起こる虞がある。
工程Aの反応温度の上限は、より低い方が、副反応を抑制し得る傾向がある。
工程Aの反応温度の下限は、より高い方が、目的の反応の進行が促進される傾向がある。
【0046】
工程Aの反応におけるフッ化ビニリデンの量の下限は、化合物(2)の1モルに対して、
好ましくは0.001モル、
より好ましくは0.002モル、及び
更に好ましくは0.003モル
であることができる。
前記量の上限は、化合物(2)の1モルに対して、
好ましくは10モル、
より好ましくは5モル、及び
更に好ましくは3モル
であることができる。
前記量は、化合物(2)の1モルに対して、
好ましくは0.001~10モルの範囲内、
より好ましくは0.002~5モルの範囲内、及び
更に好ましくは0.003~3モルの範囲内
であることができる。
当該量で反応を実施することにより、目的物が効率的に得られる。
【0047】
前記工程Aの光は、好ましくは、
紫外線を含有する。
当該紫外線は、
好ましくは、200nm~400nm、より好ましくは220nm~350nmの範囲内に主波長を有する紫外線である。
前記工程Aの光は、当該紫外線以外の光を含有してもよい。
当該光の照射は、例えば、水銀ランプ(例:低圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ)、UV-LED、又はエキシマランプ、或いはこれらの組み合わせを使用することにより、実施され得る。
【0048】
工程Aの反応系の、少なくとも一部へ、
好ましくは0.01W/m以上、
より好ましくは0.1W/m以上
更に好ましくは1W/m以上
より更に好ましくは、10W/m以上
の光照射密度で到達することが好ましい。
当該光照射密度の上限は、例えば、1000W/m、700W/m、500W/mであることができる。
当該光照射密度の範囲は、例えば、
0.01W/m~1000W/m
0.1W/m~700W/m
1W/m~500W/m
の範囲内であることができる。
【0049】
当該工程Aの反応時間の下限は、
好ましくは0.5時間、
より好ましくは1時間、
及び更に好ましくは1.5時間
であることができる。
当該工程Aの反応時間の上限は、
好ましくは72時間、
より好ましくは48時間、及び
更に好ましくは24時間
であることができる。
当該工程Aの反応時間は、
好ましくは、0.5~72時間の範囲内、
より好ましくは、1~48時間の範囲内、
及び更に好ましくは、1.5~24時間の範囲内
であることができる。
当該反応時間が短すぎると、工程Aの反応が不十分になる虞がある。
当該反応時間が長すぎると、コスト的に不利であり、及び望ましくない反応が起こる虞がある。
【0050】
当該反応は、不活性ガス(例、窒素ガス)の存在下、又は不存在下で実施され得る。 当該不活性ガスは、フッ化ビニリデンと共に工程Aの反応系に導入されてもよい。
【0051】
工程Aの反応は、好適に、反応開始剤(例:ラジカル反応開始剤)、及び光増感剤からなる群より選択される一種以上の存在下で実施され得る。
当該反応開始剤(例:ラジカル反応開始剤)の例は、
α-ジケトン化合物(例:ベンジル、ジアセチル)、
アシロイン化合物(例:ベンゾイン)、
アシロインエーテル化合物(例:ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル)、
チオキサントン化合物(例:チオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、チオキサントン-4-スルホン酸)、
アセトフェノン化合物(例:アセトフェノン、2-(4-トルエンスルホニルオキシ)-2-フェニルアセトフェノン、p-ジメチルアミノアセトフェノン、2,2’-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、p-メトキシアセトフェノン、2-メチル[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン)、
アミノ安息香酸化合物(例:2-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸(n-ブトキシ)エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4-ジメチルアミノ安息香酸2-エチルヘキシル)、
ハロゲン化合物(例:フェナシルクロライド、トリハロメチルフェニルスルホン)、
アシルホスフィンオキシド化合物、
過酸化物(例:ジ-t-ブチルパーオキサイド)、及び
アルキルフェノン化合物[例:Igracure 127(商品名、メルク社)]
を包含する。
当該反応開始剤の使用量は、フッ化ビニリデンの100モルに対して、
好ましくは0.00001~10モル、
より好ましくは0.0001~1モル、及び
更に好ましくは0.001~0.1モル
の範囲内であることができる。
【0052】
当該「光増感剤」の例は、
例えば、
ケトン化合物(例:アセトン)、
ベンゾフェノン化合物[例:ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン]、アントラセン化合物(例:アントラセン)、キノン化合物(例:アントラキノン、1,4-ナフトキノン)、チオピリリウム塩化合物、メロシアニン化合物、キノリン化合物、スチリル化合物、クマリン化合物、ケトクマリン化合物、チオキサンテン化合物、キサンテン化合物、オキソノール化合物、シアニン化合物、ローダミン化合物、ピリリウム塩化合物を包含する。等が例示される。
光増感剤は単独で又は2種以上組み合わせて使用できる。
【0053】
代表的に、スチリル化合物若しくはキノリン化合物、又はクマリン化合物が好ましい。 スチリル化合物若しくはキノリン化合物の具体例は、
2-(p-ジメチルアミノスチリル)キノリン、2-(p-ジエチルアミノスチリル)キノリン、4-(p-ジメチルアミノスチリル)キノリン、4-(p-ジエチルアミノスチリル)キノリン、2-(p-ジメチルアミノスチリル)-3,3-3H-インドール、2-(p-ジエチルアミノスチリル)-3,3-3H-インドール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジエチルアミノスチリル)ベンズオキサゾール、2-(p-ジメチルアミノスチリル)べンズイミダゾール、及び2-(p-ジエチルアミノスチリル)ベンズイミダゾール
を包含する。
【0054】
前記クマリン化合物の具体例は、
7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン、7-エチルアミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、4,6-ジエチルアミノ-7-エチルアミノクマリン、3-(2-ベンズイミダゾリル)-7-N,N-ジエチルアミノクマリン、7-ジエチルアミノシクロペンタ(c)クマリン、7-アミノ-4-トリフルオロメチルクマリン、1,2,3,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ-8-トリフルオロメチル(1)ベンゾピラノ-(9,9A,1-gh)-キノリジン-10-オン、7-エチルアミノ-6-メチル-4-トリフルオロメチルクマリン、及び1,2,3,4,5,3H,6H,10H-テトラヒドロ-9-カルベトキシ(1)ベンゾピラノ(9,9a,1-gh)-キノリジン-10
を包含する。
【0055】
本開示の製造方法によれば、原料転化率は、好ましくは10%以上、より好ましくは30%以上、及び更に好ましくは50%以上であることができる。
本開示の製造方法によれば、目的化合物の選択率は、好ましくは80%以上、及びより好ましくは90%以上であることができる。
本開示の製造方法によれば、目的化合物の収率は、好ましくは50%以上、及びより好ましくは70%以上であることができる。
【0056】
化合物
本開示の化合物は、
式(1):
【化7】
[式中、
Xは、-O-、置換基を有していてもよいイミノ基、又は-S-を表し、
は、水素原子、又は1個以上の置換基を有していてもよいヒドロカルビル基を表し、及び
は、水素原子、又は1価の有機基を表すか、或いは、
及びRが、これらがそれぞれ隣接しているX及び1個の炭素原子と一緒になって、1個以上の置換基を有していてもよいヘテロ環を形成していてもよく;
は、水素原子、又は1価の有機基を表し;及び
は、-CFCH、又は-CHCHFを表す。]
で表される化合物(但し、3,3-ジフルオロ-2-メチル-2-ブタノール、及び4,4-ジフルオロ-2-メチル-2-ブタノールを除く。)。
である。
当該化合物の好適な態様は、前記「有機組成物の製造方法」における化合物についての説明に基づき、理解され得る。
【0057】
組成物
本開示のフッ化ビニリデン含有組成物は、
(1)フッ化ビニリデン、及び
(2)フッ化ビニリデンの貧溶媒である液体媒体を含有し、且つ
前記フッ化ビニリデンは、少なくとも一部は、前記液体媒体中に、微細気泡として分散している。
【0058】
前記液体媒体は、好ましくは、水、及びフッ化ビニリデンの貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体である。
【0059】
前記フッ化ビニリデンは、前記貧溶媒に溶解しているもの以外のほとんどが、微細気泡として分散していることが、好ましい。
【0060】
前記微細気泡の形態は、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である。
【0061】
当該組成物における、フッ化ビニリデンを含有する気体の体積の、前記式(2)で表される化合物を含有する液体の体積に対する比は、
通常、0.01~1の範囲内;
好ましくは、0.02~0.9の範囲内;
より好ましくは、0.05~0.8の範囲内;及び
更に好ましくは、0.1~0.5の範囲内
である。
【0062】
前記平均分散粒子径は、
好ましくは10μm以下、
より好ましくは5μm以下、
更に好ましくは1μm以下、
より更に好ましくは500nm以下、
特に好ましくは300nm以下
であることができる。
【0063】
前記平均分散粒子径は、例えば、5nm以上、10nm以上、50nm以上、又は100nm以上であることができる。
好ましくは
【0064】
当該組成物は、密封可能な容器(例:ボンベ)内に入れられていてもよい。
本開示は、当該組成物を内封した、密封可能な容器(例:ボンベ)もまた提供する。
【0065】
前記気泡の形態は、
前記気体の泡の全個数に対して、
好ましくは、10nm~1μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が、
90%以上である形態;
より好ましくは、50nm~1μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が、
90%以上である形態;
50nm~500nmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が、
90%以上である形態
である。
当該組成物の詳細は、前記「有機組成物の製造方法」の説明に基づき、理解され得る。
【0066】
前記液体媒体は、好ましくは、水、及びフッ化ビニリデンの貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体である。
【0067】
当該組成物の製造方法は、前記「有機組成物の製造方法」で説明した、微細気泡の発生方法に基づき、理解され得る。
【0068】
前記微細気泡の形態は、好ましくは、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である。
当該形態の他の形態、又はより好ましい態様は、本開示の他の記載を参照して理解され得る。
【0069】
含フッ素オレフィン含有組成物
本開示は、以下の含フッ素オレフィン含有組成物も、また、提供する。
含フッ素オレフィン含有組成物であって、
(1)含フッ素オレフィン(但し、フッ化ビニリデンを除く。)、及び
(2)液体媒体を含有し、且つ
前記含フッ素オレフィンの少なくとも一部は、前記液体媒体中に、微細気泡として分散している、組成物。
【0070】
前記含フッ素オレフィンは、好ましくは、
式(3):
【化8】
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はフルオロアルキル基を表す。但し、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子である。]
で表される化合物である。
その具体例は、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、及びヘキサフルオロプロペンを包含する。
【0071】
前記液体媒体は、好ましくは、水、及び前記式(3)で表される含フッ素オレフィン(但し、フッ化ビニリデンを除く。)の貧溶媒である有機溶媒からなる群より選択される一種以上を含有する液体媒体である。
【0072】
前記微細気泡の形態は、好ましくは、前記気体の泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である。
当該「含フッ素オレフィン含有組成物(但し、フッ化ビニリデンを除く。)」の態様は、前記、フッ化ビニリデン含有組成物の記載を参照して、当業者に理解され得る。
【0073】
当該組成物の微細気泡は、通常行われる方法によって発生させることができる。
このような方法としては、例えば、(1)過飽和を利用する方法として、溶剤を収容した密閉容器で溶質ガスを加圧して十分量を溶解させ、次いで溶質ガスが加圧化で溶解した溶剤を解圧し、溶剤中に溶質ガスのマイクロバブルを発生させる方法が挙げられる。
また、別法として、気液せん断法、すなわち、溶剤の渦流に溶質ガスを供給して溶剤中で溶質ガスをせん断して溶剤中に溶質ガスの微細気泡を発生させる方法が、挙げられる。前記組成物の微細気泡は、これらのいずれかの方法で微細気泡マイクロバブルを発生させる装置を用いて発生させることができる。
【0074】
ナノバブル発生装置は,液体にガスを注入し,ガス/液体混合物の流れにスタティックミキサーで剪断力を加えて液体の分割を繰り返すことで,液体中にナノバブルを作り出す機能を有する。
マイクロバブルを発生する方式の例としては、加圧溶解方式、旋回流式、スタティックミキサー式、キャビテーション式、及びベンチュリー式などが挙げられる。
【0075】
微細気泡の粒径、及び数、並びにこれらの分布及び平均粒径の測定は、前記の方法により、実施できる。
【0076】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解され得るであろう。
【実施例0077】
以下、実施例によって本開示の態様を詳細に説明するが、本開示の態様はこれに限定されるものではない。
【0078】
実施例中の記号及び略号の意味を以下に示す。
VdF:ビニリデンフルオリド
【0079】
実施例1~3
実施例1~3において、VdFから、以下に示す化合物A~Dを製造した。
【化9】
各実施例では、図1~3に概要を示す装置及び条件を用いた。図中の直線は、パイプライン)を表すし、直線矢印は、流体の流動方向を表す。
図1に示す装置では、内部光照射型反応装置から取り出した反応液を、ファインバブル発生装置(図1に示すように、VdFボンベが取り付けられている。)へ供給し、これに、当該装置により発生させたVdFのファインバブルを含有せしめた後、当該VdFのファインバブルを含有する液を、前記反応装置に供給することで、反応液を循環させている。
図2に示す装置では、内部光照射型反応装置から取り出した反応液と、VdFガスと、を混合し、当該混合流体(気液スラグ流)を、反応器に供給することで、反応液を循環させている。
図3に示す装置では、ケラミフィルター(円筒ガス噴射管)により、VdFガスの気泡を反応液に供給し、及び他方、内部光照射型反応装置から取り出した反応液を、当該反応装置に再供給して、反応液を循環させている。
反応器から背圧バックプレッシャーレギュレーター(図中の、BPR)を介して、反応器に戻し、循環させている。
内部光照射型反応装置は、光源として、100W Hgランプを備える。
【0080】
(実施例1)
図1に概要を示す装置を用いて、1,3-ジオキソラン(48 mL)とアセトン(12 mL)の混合溶液を湯浴中のパイレックス(登録商標)製の反応器へ導入した。その後、内温を40℃に設定した。100W水銀ランプ照射下、溶液をポンプ(これは、図中に記載の通り、HPLCポンプを転用した。)により30 mL/minの速度で循環させながら、VdFをファインバブル発生装置を用いてを用いて微細気泡として4.0 mL/minの速度で導入した。2時間後に溶液をF-NMRで分析したところ、11%収率で付加体が得られた。表1に生成比をしめした。
【0081】
(実施例2)
実施例1で使用した装置と同じ装置を用いて、1,3-ジオキソラン(60 mL)とIRGACURE 127(63 mg, 0.2μmol)を湯浴中のパイレックス(登録商標)製の反応器へ導入した。その後、内温を40℃に設定した。100W水銀ランプ照射下、溶液をポンプ(これは、図中に記載の通り、HPLCポンプを転用した。)により30 mL/minの速度で循環させながら、VdFをファインバブル発生装置を用いてを用いて微細気泡として4.0 mL/minの速度で導入した。2時間後に溶液をF-NMRで分析したところ、44%収率で付加体が得られた。表1に生成比を示した。
【0082】
(実施例3)
反応時間を24時間に代えた以外は、実施例2と同様の方法で実施し、87%収率で付加体が得られた。表1に生成比を示した。
【表1】
【化10】
【0083】
実施例4~5
(実施例4)
1,3-ジオキソランをイソプロピルアルコールに代えた以外は、実施例1と同様の方法で実施し、32%収率で付加体が得られた。
表2に生成比率を示した。
(実施例5)
1,3-ジオキソランをイソプロピルアルコールに代えた以外は、実施例2と同様の方法で実施し、14%収率で付加体が得られた。
表2に生成比率を示した。
【表2】
【化11】
【0084】
実施例6
1,3-ジオキソランを2-メチル-1,3-ジオキソランに代えた以外は、実施例1と同様の方法で実施し、付加体GとHが得られた。
表3に生成比率を示した。
【表3】
【0085】
実施例7
【化12】
1,3-ジオキソランをオルトギ酸メチル(48 mL)に代えた以外は、実施例1と同様の方法で実施し、22%収率で付加体が得られた。
【0086】
実施例8
アセトンを加えず、1,3-ジオキソランの使用量を60 mLに代えた以外は、実施例1と同様の方法で実施し、12%収率で付加体が得られた。
表4に生成比率を示した。
【表4】
【0087】
実施例9
2-(2H-ヘキサフルオロプロピル)テトラヒドロフラン(18.5 g)とアセトン(0.4 g)とアセトニトリル(35 mL)の混合溶液を図1に概要を記載した反応器へ導入した。その後、内温を-30℃に設定した。100W水銀ランプ照射下、溶液を30 mL/minの速度で循環させながら、ヘキサフルオロプロペンを微細気泡として導入した。2時間後に溶液をF-NMRで分析したところ、90%収率でビス-2,5-(2Hヘキサフルオロプロピル)テトラヒドロフランが得られた。
【0088】
実施例10~11
(実施例10)
装置を図2に概要を示す装置へ代えた以外は、実施例1と同様の方法で実施し、9%収率で付加体が得られた。表5に生成比を示した。
【0089】
(実施例11)
装置を図3に概要を示す、ケラミフィルターを備えた装置へ代えた以外は、実施例1と同様の方法で実施し、3%収率で付加体が得られた。
表5に生成比を示した。
【表5】
【0090】
実施例12[VdF微細気泡の粒子径及び個数の測定]
微細気泡発生装置により形成される泡の粒子径は,ナノ粒子測定装置(NanoSight,日本カンタム・デザイン(株))により行った。測定条件は次のとおりとした。
・液体媒体:水、イソプロピルアルコール、1,3-ジオキソラン、DMF
・気体:VdF
・ナノバブル吐出圧力:3.0 MPa
・液体流量:28 mL/分
・気体流量:14 mL/分
測定の結果、測定し得た最少サイズ10nmの粒子径から泡の存在が確認された。結果を図4~7に示す。図において、横軸は泡の粒子径を、縦軸は、気液混合流体1mLあたりの各粒子径を有する泡の個数である。形成された泡は実質上全数(100%)が10~500 nmの粒子径を有しており,50~500 nmの粒子径を有する泡が泡の全個数の95%以上を占める。
【0091】
実施例13[VdFのウルトラファインバブルの経時観測]
測定に用いる液体媒体(水、イソプロピルアルコール、1,3-ジオキソラン、又はDMF)の50 mLを100mLデュラン瓶に入れ、超音波脱気および3回のAr置換により、当該液体媒体中の溶存気体を取り除く操作を行った。
実施例1で使用した装置と同じ装置を用いて、反応温度30℃に設定して、反応溶液を実流量28 mL/min、及びVdFを14 mL/minで送液し、GC-FIDによって飽和濃度を測定した。VdF濃度が飽和に達した時刻を0時間として、ウルトラファインバブルの個数、及び濃度を、0、1、2、4、8、24、48及び168時間後に測定した。その経時観測の結果を、図8~15に示した。
【0092】
実施例14
【化13】
2-(2H-ヘキサフルオロプロピル)テトラヒドロフラン(18.5 g)とアセトン(0.4 g)とアセトニトリル(35 mL)の混合溶液を反応器へ導入した。その後、内温を-30℃に設定した。100W水銀ランプ照射下、溶液を30 mL/minの速度で循環させながら、ヘキサフルオロプロペンを微細気泡として導入した。2時間後に溶液をF-NMRで分析したところ、90%収率でビス-2,5-(2Hヘキサフルオロプロピル)テトラヒドロフランが得られた。
【0093】
比較例1
【化14】
100W水銀ランプ照射下、温度を-30℃から-35℃に設定し、フォトリアクター内にある2-(2H-ヘキサフルオロプロピル)テトラヒドロフラン(18.5 g)、アセトン(0.4 g)のアセトニトリル(35 mL)溶液にヘキサフルオロプロペン(5.9 g)を導入した。6時間後、炭酸水素塩による中和を行い、反応混合物を乾燥後、蒸留精製し、沸点が98℃から100℃/0.6 kPaであるビス-2,5-(2Hヘキサフルオロプロピル)テトラヒドロフラン(12.4 g, 85%収率)が得られた。なお、反応2時間時点での収率は、60%であった。
【0094】
実施例15[各種微細気泡の粒子径及び個数の測定]
微細気泡発生装置により形成される泡の粒子径は,ナノ粒子測定装置(NanoSight,
日本カンタム・デザイン(株))により行った。測定条件は次のとおりとした。
・液体媒体:水、イソプロピルアルコール、1,3-ジオキソラン、DMF
・気体:2,3,3,3-tetrafluoropropylene、hexafluoropropylene、又は1-bromo-1-fluoroethylene
・ナノバブル吐出圧力:3.0 MPa
・液体流量:28 mL/分
・気体流量:14 mL/分
測定の結果、測定し得た最少サイズ10nmの粒子径から泡の存在が確認された。当該結果を図16~24に示す。各図において、横軸は泡の粒子径を、縦軸は、気液混合流体1mLあたりの各粒子径を有する泡の個数である。形成された泡は実質上全数(100%)が10~500 nmの粒子径を有しており、50~500 nmの粒子径を有する泡が泡の全個数の95%以上を占めた。
【0095】
実施例16[各種気体のウルトラファインバブルの経時観測]
測定に用いる液体媒体(水、イソプロピルアルコール、1,3-ジオキソラン、又はDMF)の50 mLを100mLデュラン瓶に入れ、超音波脱気および3回のAr置換により、当該液体媒体中の溶存気体を取り除く操作を行った。
実施例1で使用した装置と同じ装置を用いて、反応温度20-30℃に設定して、反応溶液を実流量28 mL/minで、及び2,3,3,3-tetrafluoropropylene、hexafluoropropylene 又は1-bromo-1-fluoroethyleneを14 mL/minで、それぞれ送液し、GC-FIDによって飽和濃度を測定した。濃度が飽和に達した時刻を0時間として、ウルトラファインバブルの個数、及び濃度を、0, 1, 2, 4, 8, 24, 48, 及び168時間後に測定した。その結果を図25~33に示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
【手続補正書】
【提出日】2024-07-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素オレフィン含有組成物であって、
(1)含フッ素オレフィン(但し、フッ化ビニリデンを除く。)、及び
(2)液体媒体を含有し、且つ
前記含フッ素オレフィンの少なくとも一部は、前記液体媒体中に、微細気泡として分散し、
前記液体媒体は、水、アルコール溶媒、非芳香族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、ニトリル溶媒、スルホキシド系溶媒、アミド溶媒、又は、これらの2種以上の組合せであり、
前記微細気泡の形態が、前記気泡の全個数に対する5nm~100μmの範囲内の粒子径を有する泡の個数の割合が90%以上である形態である、
組成物。
【請求項2】
前記含フッ素オレフィンは、
式(3):
【化1】
[式中、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4は、同一又は異なって、水素原子、フッ素原子、塩素原子、又はフルオロアルキル基を表す。但し、Ra1、Ra2、Ra3、及びRa4のうち、少なくとも1つは、フッ素原子である。]
で表される化合物である、請求項に記載の含フッ素オレフィン含有組成物。
【請求項3】
前記含フッ素オレフィンは、テトラフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、又はヘキサフルオロプロペンである、請求項2に記載の組成物。