(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119969
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】障害物判定装置、車両および障害物判定方法
(51)【国際特許分類】
G01S 15/04 20060101AFI20240827BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20240827BHJP
G01S 15/931 20200101ALI20240827BHJP
【FI】
G01S15/04
G08G1/16 C
G01S15/931
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096002
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2020132554の分割
【原出願日】2020-08-04
(71)【出願人】
【識別番号】322003857
【氏名又は名称】パナソニックオートモーティブシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 友亮
(72)【発明者】
【氏名】妹尾 竜太郎
(72)【発明者】
【氏名】河原 慎吾
(72)【発明者】
【氏名】近光 徹
(57)【要約】
【課題】障害物の判定精度を向上させることが可能な障害物判定装置および車両を提供する。
【解決手段】障害物判定装置は、移動体の第1位置と物体との間における検出波の第1往復経路と、第1位置から物体を経由して第1位置とは異なる移動体の第2位置まで戻るまでの検出波の第2往復経路との間の伝搬距離または伝搬時間の差異を判定する第1判定部と、第1判定部の判定結果に基づいて物体が障害物であるか否かについて判定する第2判定部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の第1位置と物体との間における検出波の第1往復経路と、前記第1位置から前記物体を経由して前記第1位置とは異なる前記移動体の第2位置まで戻るまでの検出波の第2往復経路との間の伝搬距離または伝搬時間の差異を判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果に基づいて前記物体が障害物であるか否かについて判定する第2判定部と、
を備え、
前記第1位置および前記第2位置は、前記移動体の進行方向および左右方向に対して互いに異なる位置であり、
前記第2判定部は、前記第1判定部により前記差異が閾値よりも大きい場合に、前記物体が非障害物であると判定する、
障害物判定装置。
【請求項2】
前記第1位置および前記第2位置は、更に、前記移動体の高さ方向に対して互いに異なる位置である、
請求項1に記載の障害物判定装置。
【請求項3】
前記物体が、前記移動体の進行方向に垂直な平面を有するか否かについて判定する第3判定部を備え、
前記第1判定部は、前記第3判定部により前記物体が前記平面を有すると判定された場合、前記差異を判定する、
請求項1または2に記載の障害物判定装置。
【請求項4】
請求項1~3の何れか1項に記載の障害物判定装置と、
前記第1位置に設けられ、物体を検出するための検出波を送波し、かつ、送波した検出波が前記物体から反射された第1反射波を受波する第1検出部と、
前記第2位置に設けられ、前記検出波が前記物体から反射された第2反射波を受波する第2検出部と、
を備える車両。
【請求項5】
第1判定部と第2判定部とを含む障害物判定装置により実施される障害物判定方法であって、
前記第1判定部によって、移動体の第1位置に設置された第1検出部と物体との間における検出波の第1往復経路と、前記第1位置から前記物体を経由して前記第1位置とは異なる前記移動体の第2位置に設置された第2検出部まで戻るまでの検出波の第2往復経路との間の伝搬距離または伝搬時間の差異を判定し、
前記第2判定部によって、前記差異の判定結果に基づいて前記物体が障害物であるか否かについて判定し、
前記第1位置および前記第2位置は、前記移動体の進行方向および左右方向に対して互いに異なる位置であり、
前記第2判定部によって、前記差異が閾値よりも大きい場合に、前記物体が非障害物であると判定する、
障害物判定方法。
【請求項6】
前記第1位置および前記第2位置は、更に、前記移動体の高さに対して互いに異なる位置である、
請求項5に記載の障害物判定方法。
【請求項7】
前記障害物判定装置はさらに第3判定部を含み、
前記第3判定部によって、前記物体が、前記移動体の進行方向に垂直な平面を有するか否かについて判定し、
前記第1判定部によって、更に、前記物体が前記平面を有すると判定された場合、前記差異を判定する、
請求項5または6に記載の障害物判定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、障害物判定装置、車両および障害物判定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、検出部(超音波センサ等)を車両(移動体)に搭載して、車両周辺に存在する壁等の障害物を検出可能な検出装置が知られている。例えば、特許文献1には、2つのセンサに基づいて算出される第1座標および第2座標の座標間距離と、2つのセンサに基づく反射強度とに基づいて物体が路面の面段差であるか否かについて判定可能な構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、立体駐車場等においては、車両の進行方向と重なる位置に梁等の物体(非障害物)が存在する場合がある。このような非障害物は、車両と衝突しない位置に存在するが、車両の進行方向と重なっているため、検出装置が当該非障害物を障害物であると誤判定してしまうおそれがあった。この誤判定に基づいて、車両において安全性向上のための制限制御がなされると、運転者が不快感を覚えたり、他車両の走行に影響を及ぼすおそれがある。
【0005】
また、特許文献1に記載の構成では、上記の座標間距離と、反射波における反射強度とに基づいて物体が路面の面段差であるか否かを判定しているが、反射強度は物体の材質や温湿度によって変動するため、精度が不安定なものとなる。つまり、特許文献1に記載の構成は、障害物を検出する構成として一定の限界があった。
【0006】
本開示の目的は、障害物の判定精度を向上させることが可能な障害物判定装置、車両および障害物判定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る障害物判定装置は、
移動体の第1位置と物体との間における検出波の第1往復経路と、前記第1位置から前記物体を経由して前記第1位置とは異なる前記移動体の第2位置まで戻るまでの検出波の第2往復経路との間の伝搬距離または伝搬時間の差異を判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果に基づいて前記物体が障害物であるか否かについて判定する第2判定部と、
を備え、
前記第1位置および前記第2位置は、前記移動体の進行方向および左右方向に対して互いに異なる位置であり、
前記第2判定部は、前記第1判定部により前記差異が閾値よりも大きい場合に、前記物体が非障害物であると判定する。
【0008】
本開示に係る車両は、
上記の障害物判定装置と、
前記第1位置に設けられ、物体を検出するための検出波を送波し、かつ、送波した検出波が前記物体から反射された第1反射波を受波する第1検出部と、
前記第2位置に設けられ、前記検出波が前記物体から反射された第2反射波を受波する第2検出部と、
を備える。
【0009】
本開示に係る障害物判定方法は、
第1判定部と第2判定部とを含む障害物判定装置により実施される障害物判定方法であって、
前記第1判定部によって、移動体の第1位置に設置された第1検出部と物体との間における検出波の第1往復経路と、前記第1位置から前記物体を経由して前記第1位置とは異なる前記移動体の第2位置に設置された第2検出部まで戻るまでの検出波の第2往復経路との間の伝搬距離または伝搬時間の差異を判定し、
前記第2判定部によって、前記差異の判定結果に基づいて前記物体が障害物であるか否かについて判定し、
前記第1位置および前記第2位置は、前記移動体の進行方向および左右方向に対して互いに異なる位置であり、
前記第2判定部によって、前記差異が閾値よりも大きい場合に、前記物体が非障害物であると判定する。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、障害物の判定精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本開示の第1の実施の形態に係る障害物判定装置が適用された車両を示すブロック図である。
【
図2A】第1検出部による第1往復経路を説明するための図である。
【
図2B】第1検出部および第2検出部による第2往復経路を説明するための図である。
【
図3】障害物判定装置における判定制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図4】本開示の第2の実施の形態に係る障害物判定装置が適用された車両を示すブロック図である。
【
図5A】平面を有する物体の検出を説明するための図である。
【
図5B】平面を有さない物体の検出を説明するための図である。
【
図6】第2の実施の形態に係る障害物判定装置における判定制御の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】第1検出部および第2検出部が進行方向にずれて配置された車両の一例を示す図である。
【
図8】第3の実施の形態に係る障害物判定装置における判定制御の動作例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(第1の実施の形態)
以下、本開示の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、本開示の第1の実施の形態に係る障害物判定装置100が適用された車両1を示すブロック図である。
【0013】
図1に示すように、車両1は、所定の進行方向に移動可能な移動体であり、第1検出部10と、第2検出部20と、障害物判定装置100とを備える。
【0014】
図2Aおよび
図2Bに示すように、第1検出部10および第2検出部20は、例えば超音波センサであり、車両1の前面部に設けられて、車両1の前方の物体2を検出する。
【0015】
なお、以下の説明においては、直交座標系(X,Y,Z)を使用する。後述する図においても共通の直交座標系(X,Y,Z)で示している。例えば、X方向が車両1の前後方向(進行方向)を示し、Y方向が車両1の左右方向、Z方向が車両1の上下方向(高さ方向)を示している。
【0016】
図2Aに示すように、第1検出部10は、車両1の前面部における第1位置に設けられており、物体2を検出するための検出波D1を送波し、かつ、送波した検出波D1が当該物体から反射された第1反射波D2を受波する。なお、第1検出部10は、第2検出部20が送波した第2検出波に基づく反射波を受波しても良い。
【0017】
第2検出部20は、車両1の前面部における第2位置に設けられており、第1検出部10が送波した検出波D3が物体から反射された第2反射波D4を受波する。なお、第2検出部20は、第2検出波を送波し、第2検出波に基づく反射波を受波しても良い。
【0018】
第1位置および第2位置は、車両1における高さ位置(Z方向の位置)が互いに異なっている。具体的には、第1位置(第1検出部10の位置)は、第2位置(第2検出部20の位置)よりも高い位置である。なお、第1検出部10と第2検出部20との位置関係は、逆であっても良い。
【0019】
図1に示すように、障害物判定装置100は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)および入出力回路を備えている。障害物判定装置100は、予め設定されたプログラムに基づいて、例えば車両1の進行方向(X方向)にある物体2が障害物であるか非障害物であるかを判定する。障害物判定装置100は、第1判定部110と、第2判定部120とを有する。
【0020】
第1判定部110は、車両1の前方に物体2があるか否かについて判定する。具体的には、第1判定部110は、第1検出部10または第2検出部20を用いて、物体2からの反射波を検出することにより、車両1の前方に物体2があるか否かについて判定する。
【0021】
第1判定部110は、車両1の進行方向に物体2があると判定した場合、第1検出部10が送波する検出波に係る、第1往復経路と第2往復経路との間の飛翔時間(伝搬時間)の差異を判定する。
【0022】
第1往復経路は、車両1の第1位置と物体2との間における超音波の経路である(
図2A参照)。第1往復経路は、第1検出部10が送波した検出波D1が、物体2に到達した後、当該物体2で反射して、第1反射波D2が第1検出部10まで戻る経路となる。
【0023】
第2往復経路は、車両1の第1位置から物体2までの経路と、物体2から車両1の第2位置までの経路とを合わせた経路である(
図2B参照)。第2往復経路は、第1検出部10が送波した検出波D3が、物体2に到達した後、当該物体2で反射して、第2反射波D4が第2検出部20に到達するまでの経路となる。
【0024】
第1判定部110は、第1往復経路に係る検出波の第1飛翔時間(第1値)と、第2往復経路に係る検出波の第2飛翔時間(第2値)との差異が所定の閾値より大きいか否かについて判定する。所定の閾値は、物体2が、車両1と衝突可能な程度の高さに位置する場合における、第1往復経路に係る第1値に基づく距離と、第2往復経路に係る第2値に基づく距離とが、略同じになる程度の、第1往復経路と第2往復経路との経路長の差に基づく値である。所定の閾値は、物体2と車両1との距離に応じて設定される。所定の閾値は、第1飛翔時間および第2飛翔時間が物体2と車両1との距離によって変動するため、物体2と車両1との距離毎に設定される。なお、第1値と第2値との差異は絶対値とする。
【0025】
図2Aに示すように、第1往復経路に係る検出波は、第1検出部10から送波される検出波D1と、物体2で反射する第1反射波D2である。また、
図2Bに示すように、第2往復経路に係る検出波は、第1検出部10から送波される検出波D3と、物体2から反射される第2反射波D4である。
【0026】
例えば、
図2Aに示すように、車両1の正面に位置する壁のような物体2Aが存在する場合、検出波が物体2Aを経由して反射波が車両1まで戻るまでの、各飛翔時間の差異は、物体2Aが車両1と衝突可能な位置に存在することから、所定の閾値以下となる。この場合、第1判定部110は、第1飛翔時間と第2飛翔時間との差異が所定の閾値以下であると判定する。
【0027】
また、例えば、
図2Bに示すように、車両1が衝突しない程度の高さに位置する梁のような物体2Bが存在する場合、各飛翔時間の差異は、物体2Bが車両1と衝突しない位置に存在することから、所定の閾値より大きくなる。この場合、第1判定部110は、第1飛翔時間と第2飛翔時間との差異が所定の閾値より大きいと判定する。
【0028】
第1判定部110による判定は、例えば、第1飛翔時間に対する第2飛翔時間の割合と、所定の閾値を比較することにより行われてもよい。この場合の、所定の閾値は、第1飛翔時間と第2飛翔時間の割合に応じた値に設定される。
【0029】
第2判定部120は、第1判定部110の判定結果に基づいて物体2が障害物であるか否かについて判定する。具体的には、第2判定部120は、第1判定部110により、第1飛翔時間と第2飛翔時間との差異が所定の閾値以下であると判定された場合、物体2が障害物であると判定する。
【0030】
そして、第2判定部120は、第1判定部110により、第1飛翔時間と第2飛翔時間との差異が所定の閾値より大きいと判定された場合、物体2が非障害物であると判定する。
【0031】
これにより、車両1の進行方向に梁等、車両1と衝突しないような物体2Bが存在する場合において、当該物体2Bを障害物であると誤判定することを抑制することができる。
【0032】
障害物判定装置100は、物体2が障害物であると判定した場合、物体2との距離に応じて、ブレーキ制御や、車両1の速度を緩める制御等の制限制御指令を、図示しない走行制御装置等に出力する。また、障害物判定装置100は、物体2が非障害物であると判定した場合、車両1の走行を制限する制御指令を出力しない。
【0033】
以上のように構成された障害物判定装置100における判定制御の動作例について説明する。
図3は、障害物判定装置100における判定制御の動作例を示すフローチャートである。
図3における処理は、車両1の前方にある物体を検出していることを前提としており、例えば、車両の走行中に適宜実行される。
【0034】
図3に示すように、障害物判定装置100は、第1飛翔時間および第2飛翔時間を取得する(ステップS101)。次に、障害物判定装置100は、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異があるか否かについて判定する(ステップS102)。なお、ステップS102では、第1飛翔時間と第2飛翔時間との差異が所定の閾値以下である場合、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異がないと判定され、第1飛翔時間と第2飛翔時間との差異が所定の閾値より大きい場合、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異があると判定される。
【0035】
判定の結果、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異がある場合(ステップS102、YES)、障害物判定装置100は、物体が非障害物であると判定する(ステップS103)。
【0036】
一方、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異がない場合(ステップS102、NO)、障害物判定装置100は、物体が障害物であると判定する(ステップS104)。ステップS103またはステップS104の後、本制御は終了する。
【0037】
以上のように構成された本実施の形態によれば、第1往復経路に係る第1飛翔時間と、第2往復経路に係る第2飛翔時間との差異の有無に基づいて、物体が障害物であるか否かについて判定する。その結果、梁のような車両1と衝突しないような物体を障害物であると誤判定することを抑制することができる。すなわち、本実施の形態では、障害物の判定精度を向上させることができる。
【0038】
そのため、障害物の誤判定により、車両1における安全性向上のための制限制御が行われることがないので、誤判定に基づく制限制御によって運転者が不快感を覚えたり、他車両の走行に影響を及ぼすことを抑制することができる。
【0039】
また、車両1の前方にある物体2に対して判定制御を行うので、車両1の前方にない物体に対して、無駄に判定制御を行うことを抑制することができる。
【0040】
(第2の実施の形態)
次に、本開示の第2の実施の形態について説明する。
図4は、本開示の第2の実施の形態に係る障害物判定装置100が適用された車両1を示すブロック図である。
【0041】
図4に示すように、車両1は、第1の実施の形態と同様に、第1検出部10、第2検出部20および障害物判定装置100を有する。第1検出部10および第2検出部20については、第1の実施の形態と同様である。
【0042】
なお、第1検出部10の位置(第1位置)は、車両1の前面部におけるY方向の中央に対応する位置であり、第2検出部20の位置(第2位置)は、車両1の前面部におけるY方向の端部に対応する位置である(
図5Aおよび
図5B参照)。また、第1位置と第2位置との高さ方向の位置関係は、第1の実施の形態と同様である。また、第1検出部10と第2検出部20との位置関係は逆であっても良い。
【0043】
障害物判定装置100は、第1判定部110および第2判定部120の他、第3判定部130を有する。
【0044】
第3判定部130は、車両1の前方にある物体2が、車両1の高さ方向(Z方向)および車両1の進行方向(X方向)に直交する直交方向(Y方向)に平行な平面を有するか否かについて判定する。
【0045】
第3判定部130による、物体2がY方向に平行な平面を有するか否かについての判定は、例えば、第1検出部10および第2検出部20を用いて、物体2の表面の複数の座標を算出する従来の技術を用いて行われる。
【0046】
第3判定部130は、例えば、算出した複数の座標における、車両1のX方向成分(進行方向成分)が略同じである場合、物体2が車両1の進行方向に垂直な平面を有すると判定する。
【0047】
第1判定部110は、第3判定部130により、物体2が車両1の進行方向に垂直な平面を有すると判定された場合、第1の実施の形態と同様に、第1往復経路と第2往復経路との関係性について判定する。
【0048】
例えば、第1検出部10および第2検出部20のそれぞれのY方向の位置が異なる構成であると、例えば、
図5Aに示すように、車両1の正面の壁が車両1の進行方向に垂直な平面を有する物体2Aである場合、第1検出部10から送波された検出波D1が物体2に到達するまでの経路(往路)と、物体2からの反射波が第2検出部20まで戻るまでの経路(復路)について、検出波D1の飛翔時間(経路の距離)と第2反射波D4の飛翔時間(経路の距離)は同じとなる。
【0049】
そのため、第1検出部10および第2検出部20のそれぞれのY方向の位置が異なることについての影響を考慮する必要がなく、第1往復経路に係る検出波(D1とD2)の第1飛翔時間と、第2往復経路に係る検出波(D3とD4)の第2飛翔時間との差異を、第1検出部10および第2検出部20の異なる高さ位置で精度よく検出することが可能である。
【0050】
しかし、
図5Bに示すように、車両1の進行方向の端に配置されたポール等の物体2Cにおいては、第2往復経路に係る検出波(D3とD4)の経路が二等辺三角形状にならない。そのため、第1往復経路に係る検出波と、第2往復経路に係る検出波の各飛翔時間の差異が大きくなってしまうので、障害物であるはずの物体2Cを非障害物であると判定する可能性がある。
【0051】
それに対し、本実施の形態では、平面を有する物体2Aに対して、第1判定部110および第2判定部120による判定制御が適用され、かつ、車両1の進行方向に垂直な平面を有さない物体2Cに対して当該判定制御が適用されないので、ポールのような物体2Cを非障害物と判定することを抑制することができる。
【0052】
なお、ポールのような物体2Cは、他の制御によって、障害物であるか否かを判定すれば良い。
【0053】
以上のように構成された、第2の実施の形態に係る障害物判定装置100における判定制御の動作例について説明する。
図6は、第2の実施の形態に係る障害物判定装置100における判定制御の動作例を示すフローチャートである。
図6における処理は、車両1の前方にある物体を検出していることを前提としており、例えば、車両の走行中に適宜実行される。
【0054】
図6に示すように、障害物判定装置100は、物体2が車両1の進行方向に垂直な平面を有するか否かについて判定する(ステップS201)。判定の結果、物体2が車両1の進行方向に垂直な平面を有さない場合(ステップS201、NO)、本制御は終了する。
【0055】
一方、物体が車両1の進行方向に垂直な平面を有する場合(ステップS201、YES)、障害物判定装置100は、第1飛翔時間および第2飛翔時間を取得する(ステップS202)。次に、障害物判定装置100は、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異があるか否かについて判定する(ステップS203)。
【0056】
判定の結果、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異がある場合(ステップS203、YES)、障害物判定装置100は、物体2が非障害物であると判定する(ステップS204)。
【0057】
一方、第1飛翔時間と第2飛翔時間とに差異がない場合(ステップS203、NO)、障害物判定装置100は、物体2が障害物であると判定する(ステップS205)。ステップS204またはステップS205の後、本制御は終了する。
【0058】
以上のように構成された第2の実施の形態によれば、障害物の判定精度を向上させることができる。また、車両1の進行方向に垂直な平面を有さない物体2を判定対象から除外できるので、障害物の判定精度をさらに向上させることができる。
【0059】
(第3の実施の形態)
次に、本開示の第3の実施の形態について説明する。本開示の第3の実施の形態に係る障害物判定装置100は、第1の実施の形態または第2の実施の形態に係る障害物判定装置100と同様の構成を有する。
【0060】
また、
図7に示すように、車両1における第2検出部20は、X方向の位置が第1検出部10と異なる位置に設けられている。つまり、第1位置および第2位置は、車両1における高さ位置および進行方向の位置の両方が互いに異なっている。なお、第1位置および第2位置は、車両1における高さ位置および進行方向の位置の何れか一方が互いに異なっていても良い。また、第1検出部10と第2検出部20との位置は、逆であっても良い。
【0061】
第1判定部110は、第1往復経路に基づく第1パラメータを用いて、物体2が障害物である場合の第1期待値と、物体2が非障害物である場合の第2期待値とを算出する。
【0062】
第1パラメータは、第1往復経路における検出波(D1とD2)の第1飛翔時間に基づいて算出される車両1と物体2との間の水平方向の距離である。
【0063】
第1期待値は、物体2が障害物(正対壁等)であると想定した場合の第2往復経路における距離である。第1期待値は、第1パラメータと、第1位置(第1検出部10の位置)の座標と、第2位置(第2検出部20の位置)の座標と、に基づいて、例えば式(1)によって算出される。
【0064】
【0065】
式(1)におけるE1は、第1期待値である。L1は、第1パラメータである。Dxは、第1位置のX座標と第2位置のX座標との差である。Dyzは、第1位置のY座標、Z座標および第2位置のY座標、Z座標から算出される値であり、YZ平面における第1位置と第2位置との間の距離である。なお、第1位置のX座標、Y座標、Z座標および第2位置のX座標、Y座標、Z座標の情報は、予めパラメータとして保有した値である。
【0066】
第2期待値は、物体2が障害物(梁等)であると想定した場合の第2往復経路における距離である。第2期待値は、第1パラメータと、第1位置の座標と、第2位置の座標と、物体のZ成分と、に基づいて、例えば式(2)によって算出される。
【0067】
【0068】
式(2)におけるE2は、第2期待値である。L2は、第1パラメータであるが、物体2が梁であることを想定した値であるので、式(3)により、算出される。Z1は、物体の座標のZ成分である。Z2は、第1位置の座標のZ成分である。Z3は、第2位置の座標のZ成分である。なお、式(2)における式(1)と同じ記号は、式(1)と同様の記号を示す。なお、Z1、Z2、Z3の情報は、予めパラメータとして保有した値である。
【0069】
【0070】
第1判定部110は、第2往復経路に基づく第2パラメータが、第1期待値と第2期待値のどちらに近いかを判定する。第2パラメータは、第2往復経路における検出波(D3とD4)の第2飛翔時間に基づいて算出される第2往復経路の距離である。
【0071】
具体的には、第1判定部110は、第2パラメータと第1期待値の差分の第1絶対値と、第2パラメータと第2期待値の差分の第2絶対値とを比較する。第1判定部110は、第1絶対値が第2絶対値より大きい場合、物体2が非障害物であると判定する。また、第1判定部110は、第1絶対値が第2絶対値以下である場合、物体2が障害物であると判定する。つまり、実際の伝搬距離または伝搬時間が第1期待値と第2期待値のうち、いずれに近いかを判定し、障害物であるか否かを判定する。
【0072】
なお、第1判定部110は、上述した第1絶対値に所定のオフセットを加算した値と第2絶対値とを比較してもよい。この場合、第1判定部110は、第1絶対値と所定のオフセットとの和が第2絶対値より大きい場合、物体2が非障害物であると判定する。また、第1判定部110は、第1絶対値と所定のオフセットとの和が第2絶対値以下である場合、物体2が障害物であると判定する。
【0073】
本実施の形態の構成にすることで、例えば、第1検出部10と第2検出部20との配置位置に進行方向成分のずれがある場合でも、梁のような非障害物を障害物と誤判定することを抑制することができる。
【0074】
以上のように構成された、第3の実施の形態に係る障害物判定装置100における判定制御の動作例について説明する。
図8は、第3の実施の形態に係る障害物判定装置100における判定制御の動作例を示すフローチャートである。
図8における処理は、車両1の前方に物体を検出していることを前提としており、例えば、車両の走行中に適宜実行される。
【0075】
図8に示すように、障害物判定装置100は、物体が車両の進行方向に垂直な平面を有するか否かについて判定する(ステップS301)。判定の結果、物体が車両の進行方向に垂直な平面を有さない場合(ステップS301、NO)、本制御は終了する。
【0076】
一方、物体が車両の進行方向に垂直な平面を有する場合(ステップS301、YES)、障害物判定装置100は、第1期待値および第2期待値を算出する(ステップS302)。次に、障害物判定装置100は、第2パラメータが第1期待値よりも第2期待値に近いか否かについて判定する(ステップS303)。なお、本実施の形態では、第1期待値および第2期待値を算出しているがこの構成に限らない。3つ以上の期待値を算出しておき、第2パラメータと3つ以上の期待値とをそれぞれ比較してもよい。また、本実施の形態の障害物判定装置100は、第2パラメータが第1期待値または第2期待値のいずれに近いかを判定していたがこれに限らない。例えば、第2パラメータと第1期待値との差分と、第2パラメータと第2期待値との差分と、の比を算出し、当該比と予め設けた閾値とを比較することで、障害物か否かを判定するようにしてもよい。以上のように、本実施の形態における障害物判定装置100は、実際の伝搬距離または伝搬時間と、前記第1期待値と、前記第2期待値とに基づいて障害物であるか否かを判定する。
【0077】
判定の結果、第2パラメータが第2期待値に近い場合(ステップS303、YES)、障害物判定装置100は、物体が非障害物であると判定する(ステップS304)。
【0078】
一方、第2パラメータが第2期待値に近くない場合(ステップS303、NO)、障害物判定装置100は、物体が障害物であると判定する(ステップS305)。ステップS304またはステップS305の後、本制御は終了する。
【0079】
以上のように構成された第3の実施の形態によれば、障害物の判定精度を向上させることができる。なお、第3の実施の形態では、第1の実施の形態や第2の実施の形態のように伝搬距離または伝搬時間の差異を判定する必要はない。第2パラメータと第1期待値および第2期待値との関係を比較することにより物体が障害物であるか否かを判定する。
【0080】
以上のように構成された第3の実施の形態によれば、障害物の判定精度を向上させることができる。また、各検出部の位置を考慮した期待値を算出した上で、障害物の判定制御を行うので、検出部の位置ずれによる判定誤差を吸収することができ、ひいては障害物の判定精度をさらに向上させることができる。
【0081】
なお、上記各実施の形態では、第1検出部および第2検出部が超音波センサであったが、本開示はこれに限定されず、レーダ等、検出波を送波および受波可能であるものである限り、超音波センサ以外のものであっても良い。
【0082】
また、上記各実施の形態では、第1検出部および第2検出部が車両の前面部に設けられていたが、本開示はこれに限定されず、車両の後面部等に設けられていても良い。
【0083】
また、上記各実施の形態では、各判定部が別々に設けられていたが、本開示はこれに限定されず、例えば、1つの判定部が各判定を行うようにしても良い。
【0084】
また、上記第1、第2の実施の形態では、往路と復路の経路の違いを検出するために用いる第1値および第2値が飛翔時間であったが、本開示はこれに限定されず、例えば、飛翔時間に基づく距離(伝搬距離)等であっても良い。
【0085】
また、上記第1、第2の実施の形態では、第1値と第2値との差異の判定基準を、第1値に対する第2値の割合としていたが、本開示はこれに限定されない。例えば、第1値の2乗に対する第2値の2乗の割合や、第1値と第2値との差分等、第1値と第2値との差異を判定可能なものであれば、どのようなものであっても良い。
【0086】
また、上記第3の実施の形態では、第1期待値、第2期待値、第1パラメータおよび第2パラメータを、往復経路の距離(伝搬距離)としたが、本開示はこれに限定されず、往復経路を検出波が飛翔する時間(伝搬時間)を算出して第1期待値、第2期待値、第1パラメータおよび第2パラメータとして用いても良い。
【0087】
また、上記各実施の形態では、車両の前方にある物体について障害物判定を行っていたが、本開示はこれに限定されず、例えば車両の後方にある物体について障害物判定を行うようにしても良い。
【0088】
また、上記各実施の形態では、車両の上方にある梁を障害物であると誤判定することを抑制するために用いたが、本開示はそれに限らない。例えば、車両の下方にある段差を障害物であると誤判定することを抑制するためにも用いることができる。
【0089】
また、上記各実施の形態では、車両の上方にある梁を障害物であると誤判定することを抑制するために用いたが、本開示はそれに限らない。例えば、車両の下方にある段差を障害物であると誤判定することを抑制するためにも用いることができる。
【0090】
また、上記各実施の形態では、移動体として車両を例示したが、本開示はこれに限定されず、車両以外の移動体であっても良い。
【0091】
その他、上記実施の形態は、何れも本開示を実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本開示の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本開示はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本開示の障害物判定装置は、障害物の判定精度を向上させることが可能な障害物判定装置および車両として有用である。
【符号の説明】
【0093】
1 車両
2 物体
2A 物体
2B 物体
2C 物体
10 第1検出部
20 第2検出部
100 障害物判定装置
110 第1判定部
120 第2判定部
130 第3判定部
D1 検出波
D2 第1反射波
D3 検出波
D4 第2反射波