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特開2024-119974ロボットマニピュレータの制御プログラムの生成
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  • 特開-ロボットマニピュレータの制御プログラムの生成 図1
  • 特開-ロボットマニピュレータの制御プログラムの生成 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119974
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ロボットマニピュレータの制御プログラムの生成
(51)【国際特許分類】
   B25J 9/22 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
B25J9/22 Z
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096306
(22)【出願日】2024-06-13
(62)【分割の表示】P 2022539640の分割
【原出願日】2020-12-22
(31)【優先権主張番号】102019135810.8
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(71)【出願人】
【識別番号】521181769
【氏名又は名称】フランカ エーミカ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】FRANKA EMIKA GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】スペニンガー、アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】メディナ ヘルナンデス、ホセ ラモーン
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ロボットマニピュレータによるタスク実行のための制御プログラムの生成を簡略化する。
【解決手段】本発明は、制御プログラム生成方法に関する以下のステップを含む:第1ロボットマニピュレータ(1)によってアプリケーションを実行し(S1)、同時に、軌道データおよび/またはレンチデータを決定し(S2)、記憶された時系列データから、第1ロボットマニピュレータ(1)の設計条件に関係なく、ロボットマニピュレータの制御プログラムの主要な要素であるロボットコマンドを決定し(S3)、記憶されたロボットコマンドと第2ロボットマニピュレータ(2)の設計条件とに基づいて第2ロボットマニピュレータ(2)の制御プログラムを生成する(S4)。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ロボットマニピュレータ(1)を用いて所定のアプリケーションを実行したことによる経験的データに基づいて、第2ロボットマニピュレータ(2)の制御プログラムを生成する方法であって、以下のステップを含むことを特徴とする制御プログラム生成方法:
-前記第1ロボットマニピュレータ(1)により所定のアプリケーションを実行し(S1)、
-所定のアプリケーションの実行中に前記第1ロボットマニピュレータ(1)の関節角センサ(3)による軌道データの時系列データ、および/または力および/またはトルクを検出するための前記第1ロボットマニピュレータ(1)のセンサユニット(5)によるレンチデータの時系列データを決定し(S2)、決定した時系列データを記憶ユニット(7)に記憶するステップと、前記軌道データは、前記第1ロボットマニピュレータ(1)の基準点に関する運動学的データまたは前記第1ロボットマニピュレータ(1)の関節角度に関するデータからなり、前記レンチデータは、前記第1ロボットマニピュレータ(1)と周囲にある物体との間に作用する力および/またはトルクからなるものであり、
-記憶された時系列データからロボットコマンドを決定し(S3)、決定されたロボットコマンドを記憶ユニット(7)に記憶し、ロボットコマンドは、前記第1ロボットマニピュレータ(1)の設計条件を参照せずに、前記各ロボットマニピュレータ用の制御プログラムの主要要素であり、かつ、
-前記記憶されたロボットコマンドに基づき、前記第2ロボットマニピュレータ(2)の設計条件に基づいて、前記第2ロボットマニピュレータ(2)の制御プログラムを生成する(S4)。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
ロボットコマンドは、以下のカテゴリのうちの少なくとも1つを含む:
-前記各ロボットマニピュレータの基準点の、所定の始点から所定の終点までの所定の経路曲線であって、前記経路曲線の終点を示す経路曲線と、
-経路曲線上の基準点の速度、
-経路曲線上の基準点の加速度、
-前記各ロボットマニピュレータの基準点が前記各ロボットマニピュレータの周囲の物体に与える力および/またはトルクと、
-前記各ロボットマニピュレータの回転アクチュエータの目標トルク。
【請求項3】
異なるカテゴリからの少なくとも2つの連続するロボットコマンドが決定され、ここで、2つの連続するカテゴリ的に異なるロボットコマンドの間のブレンド遷移が決定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
ブレンドの遷移は、連続的かつ遷移の時間に依存する所定関数コースによって実行される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記記憶された時系列データからのロボットコマンドの決定は、非線形最適化によって実行される、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記記憶された時系列データからのロボットコマンドの決定は、所定の人工ニューラルネットワークを適用することによって行われ、前記人工ニューラルネットワークの入力変数は前記記憶された時系列データであり、前記人工ニューラルネットワークの出力変数は複数の構造的に予め定められたロボットコマンドのそれぞれ選択された1つであり、前記予め定められたロボットコマンドのそれぞれ選択された1つのパラメータは前記記憶された時系列データに基づいて適応される、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記軌道データの時系列データの決定が、カメラユニットによって追加的に行われる、請求項1から6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記カメラユニットが外付けカメラユニットであることを特徴とする、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1ロボットマニピュレータ(1)および/または前記第2ロボットマニピュレータ(2)の設計条件が、以下の少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の方法、
-前記各ロボットマニピュレータの関節間の距離、
-前記各ロボットマニピュレータの関節数、
-前記各ロボットマニピュレータの回転アクチュエータがかけることができる最大トルク、
-前記ロボットマニピュレータのエンドエフェクタの種類と構成、
-前記各ロボットマニピュレータの閉ループ制御の仮想剛性、
-前記各ロボットマニピュレータのリンクや関節の材料剛性、
-前記各ロボットマニピュレータの幾何学的に可能な最大作業空間、
-前記各ロボットマニピュレータのアクチュエータの時定数および/または帯域幅、
-前記各ロボットマニピュレータの安全レベル、および/または現在の安全設定、および/または残留リスク、
-前記各ロボットマニピュレータの通信インターフェースの物理的な存在および/または構成、
-前記各ロボットマニピュレータのロボットアームの数、
-前記各ロボットマニピュレータの構成部品(特にリンク)の質量および/または慣性。
【請求項10】
第1制御ユニット(11)と第2制御ユニット(12)とを備えたロボットシステム(10)であって、
前記ロボットシステム(10)の第1ロボットマニピュレータ(1)により所定のアプリケーションを実行した経験データに基づいて、前記ロボットシステム(10)の第2ロボットマニピュレータ(2)用の制御プログラムを生成するための、ロボットシステムあり、
前記第1制御ユニット(12)は、前記第1ロボットマニピュレータ(1)を制御して前記所定のアプリケーション(S1)を実行させると共に、前記所定のアプリケーションの実行中に、前記第1ロボットマニピュレータ(1)の関節角センサ(3)による軌道データの時系列データおよび/または前記第1ロボットマニピュレータ(1)のセンサユニット(5)によるレンチデータの時系列データを決定して記憶ユニット(7)に記憶するように構成され、
前記軌道データは、前記第1ロボットマニピュレータ(1)の基準点または前記第1ロボットマニピュレータ(1)の関節角度に関する運動学データからなり、
前記レンチデータは、前記第1ロボットマニピュレータ(1)と周囲の物体との間に作用する力および/またはトルクからなり、
第1制御ユニット(11)は、記憶された時系列データからロボットコマンドを決定し、決定されたロボットコマンドを記憶ユニット(7)に記憶するように構成され、
ロボットコマンドは、前記第1ロボットマニピュレータ(1)の設計条件に関係なく、前記各ロボットマニピュレータの制御プログラムの主要な要素であり、
かつ、第2制御ユニット(12)は、記憶されたロボットコマンドと、第2ロボットマニピュレータ(2)の設計条件とに基づいて、第2ロボットマニピュレータ(2)の制御プログラムを生成する、ように構成されているロボットシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1ロボットマニピュレータにより所定のアプリケーションを実行した際の経験的データに基づいて、第2ロボットマニピュレータの制御プログラムを生成する方法、およびその方法を実行するための第1制御ユニットと第2制御ユニットと、を有するロボットシステムに関するものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
本発明の目的は、ロボットマニピュレータによるタスク実行のための制御プログラムの生成を簡略化することである。
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、独立請求項の特徴に起因する。有利な展開や実施形態は、従属請求項の目的である。
【0004】
本発明の第1の側面は、第1ロボットマニピュレータによって所定のアプリケーションを実行したことによる経験的データに基づいて、第2ロボットマニピュレータの制御プログラムを生成する方法に関するものであり、
-前記第1ロボットマニピュレータにより、前記所定のアプリケーションを実行して、
-所定のアプリケーションの実行中に:第1ロボットマニピュレータの関節角センサによる軌道データの時系列データおよび/または力および/またはトルクを検出するための第1ロボットマニピュレータのセンサユニットによるレンチデータの時系列データを取得し、得られた時系列データを記憶ユニットに記憶し、軌道データは第1ロボットマニピュレータの基準点に関するまたは第1ロボットマニピュレータの関節角に関する運動学データで構成され、レンチデータは第1ロボットマニピュレータと周囲の物体との間に働く力および/またはトルクで構成され、
-記憶された時系列データからロボットコマンドを決定し、決定されたロボットコマンドを記憶ユニットに記憶し、ロボットコマンドは、第1ロボットマニピュレータの設計条件を参照せずに、各ロボットマニピュレータの制御プログラムの主要な要素であり、
-前記記憶されたロボットコマンドと、前記第2ロボットマニピュレータの設計条件とに基づいて、前記第2ロボットマニピュレータの制御プログラムを生成する、
というステップを含む。
【0005】
さらに、好ましくは次のステップが行われる。
-前記第2ロボットマニピュレータの制御プログラムを前記第2ロボットマニピュレータの手段、特に前記第2ロボットマニピュレータの第2制御ユニットによって実行する。
【0006】
前記第1ロボットマニピュレータと前記第2ロボットマニピュレータは、必ずしも類似・同一設計ではなく、異なる技術的解決策や設計を有していてもよい。第1ロボットマニピュレータは、特に、所定のアプリケーションを実行するために第1制御プログラムを実行するために設計された、(第1)制御ユニットに接続されている。この第1制御プログラムは、特に第1ロボットマニピュレータに最適化されており、すなわち、アプリケーションが完全に第1ロボットマニピュレータによって実行できるように、第1ロボットマニピュレータにおける技術条件および設計ソリューションを考慮しており、これにより、第1制御プログラムは、特に第1ロボットマニピュレータの設計条件にも最適化されている。本発明の第1態様に係る方法の全てのステップは、好ましくは、第1制御ユニットによって実施される。あるいは、第2ロボットマニピュレータのための制御プログラムは、好ましくは、第1制御ユニットとは異なる第2制御ユニットによって生成される。
【0007】
本発明の第1の態様に係る方法の第1のステップにおいて、所定のアプリケーションは、第1ロボットマニピュレータによって実行される。具体的には、物体の移動、物体の把持、複数の物体からの物体の選択、選択した物体の把持、ワークピースの表面加工など、ロボットマニピュレータに典型的な他の作業が考えられる。
【0008】
この第1ロボットマニピュレータによる所定のアプリケーションの実行中に、特に第1制御ユニットによって、軌道データの時系列データが決定される。これは、第1ロボットマニピュレータの関節角センサからのセンサ値に基づいて行われる。この関節角センサは、特に、共通の関節で互いに接続された第1ロボットマニピュレータの2つのリンク間のそれぞれの角度を検出して出力するように設計されている。特に、これは、第1ロボットマニピュレータの離散的な関節角度の時系列データが利用できるように、離散的な時間ステップで、高い頻度で繰り返し実行される。第一ロボットマニピュレータの姿勢は、このように、各時点におけるすべての関節角度にわたって既知であり、そこから、第1ロボットマニピュレータの基準点の経路曲線が、デカルト座標系、特に第一固定座標系に対して決定することができる。
【0009】
第1ロボットマニピュレータの基準点は、好ましくは、第1ロボットマニピュレータの遠位端に概念的に位置し、より好ましくは、エンドエフェクタに概念的に位置する。軌道の概念は、さらに、経路曲線、すなわち、純粋に関節角度に関して、あるいは(また)第1ロボットマニピュレータの基準点のデカルト軌道に関して、動作の純粋に幾何学的な情報を含む。任意選択的に、軌道の概念は、幾何学的経路曲線の各位置が時間とも関連付けられるように、時間情報をさらに含み、この幾何学的経路曲線のトラバース中の基準点の速度および/または加速度も、幾何学的経路曲線の情報を介して知らされる。
【0010】
関節角度情報に加えて、または代替的に、この実施形態の所定のアプリケーションの間、第1ロボットマニピュレータによって、関節角度情報に基づく経路曲線または軌道のデカルト情報が、具体的には第1ロボットマニピュレータとロボットマニピュレータの周囲の物体との間に働く1以上の力および/またはトルクと同様に、検出される。後者は、特に、力および/またはトルクを検出するためのセンサユニット、好ましくは関節のトルクセンサ、またはロボット構造体の歪みゲージによって行われ、これにより、第1ロボットマニピュレータと周囲との間の力に関連する相互作用の時系列データが記録される。
【0011】
その結果、第1ロボットマニピュレータによる所定のアプリケーションの実行中の運動学的情報、および/または力/トルクに関する情報を得ることができる。これらのデータは、各時系列データに格納されているので、アプリケーションの実行過程の履歴を知ることができる。
【0012】
ロボットコマンドは、その後、この時系列データの情報から形成される。このようなロボットコマンドは、第1ロボットマニピュレータの設計条件にかかわらず、第1ロボットマニピュレータによって具体的にどのように実行されたかに基づいて、所定のアプリケーションを全般的にどのように実行するかについての機能情報を提供する。したがって、これらのロボットコマンドには、第1ロボットマニピュレータで有効なヤコビアン行列またはその(擬似)逆行列を介した変換、すなわち、第1の位置から第2の位置への物体の移動が、アクチュエータの相互関係の制御によって具体的にどのように実行されるべきかが考慮されていない。ロボットコマンドは、制御プログラムの機能ブロックとして抽象化され、原則的に、現在使用されているロボットマニピュレータのアーキテクチャとは無関係に実行される。したがって、基本的には、制御プログラムの実行中に、各ロボットマニピュレータの閉ループ制御の最外周ループのコマンドに対応する。
【0013】
この抽象化された情報に基づいて、次に、第2ロボットマニピュレータのための具体的な制御プログラムが生成され、第2ロボットマニピュレータのための完全な制御プログラムは、第2ロボットマニピュレータの設計条件、特に第2ロボットマニピュレータが何関節を有するか、冗長な第2ロボットマニピュレータであるか固有の第2ロボットマニピュレータであるか、現在第2ロボットマニピュレータ上に配置されているグリッパまたは一般的にどのタイプのエンドエフェクタかなどについて考慮する。
【0014】
本発明の有利な効果は、したがって、第1ロボットマニピュレータによるアプリケーションの実行中に経験的に得られたデータに基づいて、第2ロボットマニピュレータのための制御プログラムが提供され、この制御プログラムは、ロボットコマンドの形態で機能的に必須の情報を既に含んでおり、したがって、特に第2ロボットマニピュレータの周囲にある物体を検出するために、第2ロボットマニピュレータおよびそれによって実行されるアプリケーションとその制御プログラムにさらなるセンサが不要で、一般に、現在の状況に対して第2ロボットマニピュレータ用の制御プログラムが適応することになることである。むしろ、アプリケーションの実行は、第1ロボットマニピュレータによるアプリケーションの実行の経験的に決定された情報を含む、提供されたロボットコマンドに基づくものである。したがって、有利なことに、第2ロボットマニピュレータの制御プログラムの生成は、第1ロボットマニピュレータと第2ロボットマニピュレータが同一の構造であるか、またはこれら2つが構造または構成またはソフトウェアの点で異なるかどうかに関係なく、既に行われたアプリケーションの実行から情報を引き出すことができるので、著しく加速および簡略化される。
【0015】
有利な実施形態によれば、ロボットコマンドは、以下のカテゴリのうちの少なくとも1つを含んでいる。
-前記各ロボットマニピュレータの基準点の、所定の開始点から所定の終了点までの所定の経路曲線と、
-経路曲線上の参照点の速度と、
-経路曲線上の基準点の加速度と、
-各ロボットマニピュレータの基準点が各ロボットマニピュレータの周囲の物体に及ぼす力および/またはトルクと、
-各ロボットマニピュレータの回転アクチュエータの目標トルク。
【0016】
さらに有利な実施形態によれば、異なるカテゴリからの少なくとも2つの連続するロボットコマンドが決定され、2つの連続するカテゴリ的に異なるロボットコマンドの間の混合遷移が決定される。特に混合遷移は、選択されたロボットコマンド同士を滑らかに遷移させる。これは、例えば視覚と触覚を組み合わせて触覚と視覚を協調させるような、人間の直感的な行動に対応するものである。例えば、インピーダンス閉ループ制御といわゆる「ビジュアルサーボ」(光誘導路)からの移行は、重み関数としてジャンプのない滑らかな関数コースで生成される。
【0017】
さらなる有利な実施形態によれば、混合遷移は、連続的かつ遷移の時間にわたって時間に依存する所定の関数コースによって実行される。このような連続的な関数コースは、特にジャンプやキンクがなく、特に遷移の時間持続期間にわたって厳密に単調に下降または上昇する進行を示すものである。このような機能コースは、ロボットコマンドの適用間の移行を特にスムーズにするのに有利である。
【0018】
さらなる有利な実施形態によれば、ロボットコマンドは、非線形最適化によって、記憶された時系列データから決定される。特に非線形最適化では、選択したコマンドで仮想的に実行される時系列データと実際に実行される時系列データとの差を反映したコスト関数を使用する。このようなコスト関数は、次に非線形最適化の方法、特に勾配に基づく方法、進化法、遺伝的アルゴリズム、二次最適化法などによって最小化され、特に、逆算して、実際の時系列データにも対応する時系列データをもたらすロボットコマンドが選択されるようにする。こうして、最も適合するロボットコマンドが選択される。
【0019】
さらなる有利な実施形態によれば、ロボットコマンドは、所定の人工ニューラルネットワークを適用する手段によって記憶された時系列データから決定され、人工ニューラルネットワークの入力変数は記憶された時系列データであり、人工ニューラルネットワークの出力変数は複数の少なくとも構造的に予め定められたロボットコマンドのそれぞれの選択した1つであり、予め定められたロボットコマンドのそれぞれの選択した1つのパラメータは記憶された時系列データに基づいて適合させられる。人工ニューラルネットワークの利点は、柔軟性が高く、表現できる関数のクラスが広いことである。
【0020】
さらなる有利な実施形態によれば、軌道データの時系列データの決定は、カメラユニットによって追加的に実行される。カメラユニットは、好ましくは、ロボットマニピュレータ自体に配置される。さらに、カメラユニットは、好ましくはステレオカメラユニットであり、これにより、有利には、ロボットマニピュレータの経路曲線および/または基準点の軌道に関する空間情報がカメラユニットによって取得される。カメラユニットからの情報は、関節角センサからの情報と融合または補足されることが好ましい。
【0021】
さらなる有利な実施形態によれば、カメラユニットは、外部カメラユニットである。外部カメラユニットは、好ましくは、第1ロボットマニピュレータの周囲でフレーム上または他の支持体上に第1ロボットマニピュレータとは物理的に分離して配置される。有利には、非ロボットセンサからの情報も利用可能であり、これは、ロボットセンサと最適に補完され、より信頼性の高いデータソースを形成することが可能である。
【0022】
さらなる有利な実施形態によれば、第1ロボットマニピュレータおよび/または第2ロボットマニピュレータの設計条件は、以下のうちの少なくとも1つを含む。
-各ロボットマニピュレータの関節間の距離、
-各ロボットマニピュレータの関節数、
-各ロボットマニピュレータの回転アクチュエータがかけることができる最大トルク、
-各ロボットマニピュレータのエンドエフェクタの種類と構成、
-各ロボットマニピュレータの閉ループ制御の仮想剛性、特にインピーダンス閉ループ制御における仮想バネの剛性、
-各ロボットマニピュレータのリンクや関節の材料剛性、
-各ロボットマニピュレータの幾何学的に可能な最大作業空間、
-各ロボットマニピュレータのアクチュエータの時定数および/または帯域幅、
-各ロボットマニピュレータの安全レベル、現在の安全設定、残留リスク、
-各ロボットマニピュレータの通信インターフェースの物理的な存在および/または構成、
-各ロボットマニピュレータのロボットアームの数、
-各ロボットマニピュレータの構成部品(特にリンク)の質量および/または慣性。
【0023】
本発明の別の態様は、ロボットシステムの第1ロボットマニピュレータによって所定のアプリケーションを実行することからの経験的データに基づいて、ロボットシステムの第2ロボットマニピュレータのための制御プログラムを生成するために一緒に使用される第1制御ユニットおよび第2制御ユニットを含むロボットシステムに関し、第1制御ユニットは、所定のアプリケーションを実行するように第1ロボットマニピュレータを制御するように設計され、さらに、所定のアプリケーションの実行中に、第1ロボットマニピュレータの関節角センサによって軌道データの時系列データおよび/または第1ロボットマニピュレータのセンサユニットによってレンチデータの時系列データを決定し、決定された時系列データを記憶ユニットに記憶するように設計され、軌道データは、第1ロボットマニピュレータの基準点に関するおよび/または第1ロボットマニピュレータの関節角度に関する運動学データを含み、レンチデータは、第1ロボットマニピュレータと周囲の物体との間に作用する力および/またはトルクを含む、そして、第1制御ユニットは、記憶された時系列データからロボットコマンドを決定し、決定されたロボットコマンドを記憶ユニットに記憶するように構成され、ロボットコマンドは、第1ロボットマニピュレータの設計条件を参照することなく、各ロボットマニピュレータの制御プログラムの主要な要素であり、第2制御ユニットは、記憶されたロボットコマンドに基づいて、第2ロボットマニピュレータの設計条件に基づいて、第2ロボットマニピュレータの制御プログラムを生成するように設計されている。
【0024】
提案されたロボットシステムの利点および好ましいさらなる実施形態は、提案された方法に関連して上記でなされた説明の類推的かつ準用的な転送からもたらされる。
【0025】
さらなる利点、特徴および詳細は、以下の説明から得られ、図面を参照して、少なくとも1つの実施形態例が詳細に説明される。同一、類似および/または機能的に同一の部分は、同一の参照番号を用いて参照される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の例示的な実施形態による第1ロボットマニピュレータによって所定のアプリケーションを実行することからの経験的データに基づいて第2ロボットマニピュレータのための制御プログラムを生成する方法を示す。
図2図2に、図1の方法を実施するためのロボットシステムを示す。
【0027】
図中の表現は概略であり、縮尺通りではない。
【0028】
図1は、第1ロボットマニピュレータ1により所定のアプリケーションを実行した経験データに基づいて、第2ロボットマニピュレータ2の制御プログラムを生成する方法を示す。この方法の以下の説明は、図2のロボットシステム10にも言及する。したがって、理解のために両方の図を参照することができ、特に、以下の言及された参照符号は、図1および任意選択的に図2も参照することができる。第1ステップでは、第1ロボットマニピュレータ1による所定のアプリケーションの実行S1が行われる。このアプリケーションは、円柱状の箱から先の尖った物体を持ち上げることに関するものである。この目的のために、第1ロボットマニピュレータ1の設計条件、特に関節数、リンク形状、グリッパの形状に適合した第1ロボットマニピュレータ1の制御プログラムが予め定められている。アプリケーションの実行中、次のステップでは、第1ロボットマニピュレータ1の関節角センサ3による軌道データの時系列データと、第1ロボットマニピュレータ1のセンサユニット5によるレンチデータの時系列データとの決定S2が行われ、第1ロボットマニピュレータ1の各関節には、力とトルクを検出するセンサユニット5のトルクセンサと共に関節角センサ3が収容されている。これらの決定された時系列データは記憶ユニット7に記憶される。軌道データは、関節角度を第1ロボットマニピュレータ1のエンドエフェクタにおける基準点のデカルト位置コースに変換することにより、第1ロボットマニピュレータ1の基準点に対する上のデータを含む。一方、レンチデータは、第1ロボットマニピュレータ1と先の尖った物体との間に作用する力およびトルクを含む。さらに、記憶された時系列データからのロボットコマンドの決定S3と、決定されたロボットコマンドの記憶ユニット7への記憶とが続くが、ロボットコマンドは、第1ロボットマニピュレータ1の設計条件によらず、各ロボットマニピュレータの制御プログラムの主要な要素である。複合ロボットコマンドは、箱から所定の終点までの第1ロボットマニピュレータ1の基準点の所定の経路曲線を含み、これにより、経路曲線上の基準点の加速度と、先の尖った物体上の基準点でエンドエフェクタにより加えられる力およびトルクとを含む。これらのロボットコマンドは、合成されると、上述した第1ロボットマニピュレータ1の設計条件とは無関係なアプリケーションの機能シーケンスをもたらす。すべての時系列データが入力変数として人工ニューラルネットワークに供給され,ロボットコマンドの組合せが人工ニューラルネットワークの実行により出力に追従するように人工ニューラルネットワークを適用してロボットコマンドを決定する。続いて、記憶されたロボットコマンドと、第2ロボットマニピュレータ2の設計条件とに基づいて、第2ロボットマニピュレータ2の制御プログラムを生成S4が行われる。これらについては、図2の説明で詳しく解説している。
【0029】
図2は、ロボットシステム10の第1ロボットマニピュレータ1によって所定のアプリケーションを実行した経験的データに基づいて、ロボットシステム10の第2ロボットマニピュレータ2のための制御プログラムを生成する第1制御ユニット11および第2制御ユニット12を有するロボットシステム10を示す。この場合、ロボットマニピュレータ1は、冗長な自由度を持たない従来のワンアームロボットマニピュレータである。これに対し、第2ロボットマニピュレータ2は、2アーム式のロボットマニピュレータである。したがって、2つのロボットマニピュレータ1、2の設計条件は互いに異なる。第1制御ユニット11は、第1ロボットマニピュレータ1に設けられ、所定のアプリケーションの実行S1のために第1ロボットマニピュレータ1を制御し、所定のアプリケーションの実行中に、第1ロボットマニピュレータ1の関節角センサ3による軌道データの時系列データと、第1ロボットマニピュレータ1のセンサユニット5によるレンチデータの時系列データとを決定し、決定した時系列データを記憶ユニット7に記憶する。また、第1制御ユニット11は、記憶した時系列データからロボットコマンドを決定し、決定したロボットコマンドを第一制御ユニット11の一部である記憶ユニット7に記憶する。第2制御ユニット12は、第2ロボットマニピュレータ2上に配置され、記憶されたロボットコマンドに基づいて第2ロボットマニピュレータ2の設計条件に基づいて第2ロボットマニピュレータ2の制御プログラムを生成するために用いられる。
【0030】
本発明は、好ましい実施形態によってさらに例示され、詳細に説明されてきたが、本発明は、開示された実施例によって制限されるものではなく、本発明のために求められる保護の範囲から逸脱することなく、当業者によって、本発明から他の変形が導き出され得る。したがって、多様なバリエーションが存在することは明らかである。また、説明した例示的な実施形態は、実際には単なる例であり、例えば、本発明の保護の範囲、可能な用途または構成を制限するものとして理解されるべきではないことも明らかである。むしろ、前述の説明および図の説明により、当業者は、具体的な態様で例示的な実施形態を実施することができ、それによって、当業者は、開示された発明のアイデアを認識して、例示的な実施形態に記載された個々の要素の機能または配置に関して、特許請求の範囲によって規定された保護の範囲およびそれらの法的な同等物、例えば、さらなる説明を明細書に残すことなく、様々な変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0031】
1 第1ロボットマニピュレータ
2 第2ロボットマニピュレータ
3 関節角センサ
5 センサユニット
7 記憶ユニット
10 ロボットシステム
11 第1制御ユニット
12 第2制御ユニット
S1 実行
S2 決定
S3 決定
S4 生成
図1
図2