(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024011998
(43)【公開日】2024-01-25
(54)【発明の名称】車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/16 20060101AFI20240118BHJP
【FI】
B60N2/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022114403
(22)【出願日】2022-07-15
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中村 竜誠
(72)【発明者】
【氏名】萩原 豊之
【テーマコード(参考)】
3B087
【Fターム(参考)】
3B087BA15
3B087BB25
(57)【要約】
【課題】第1軸部材に対する第2軸部材のがたつきを抑制する。
【解決手段】車両用シートは、インナチューブ42と、その内側にインナチューブ42が挿入されるアウタチューブ44と、を備えている。車両用シートのシートポジションが調節される際に、アウタチューブ44はインナチューブ42に対して相対的に回転する。インナチューブ42とアウタチューブ44との間には、軸受部材46が介在している。軸受部材46は、インナチューブ42の外周面に接触することでインナチューブ42に対する回転径方向への変位が制限される第1接触部56を備えている。また、軸受部材46は、アウタチューブ44の内周面に接触することでアウタチューブ44に対する回転径方向への変位が制限される第2接触部64を備えている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートの骨格の一部を構成する第1軸部材と、
車両用シートの骨格の他の一部を構成すると共に筒状に形成され、その内側に前記第1軸部材が挿入され、車両用シートのシートポジションが調節される際に前記第1軸部材に対して相対的に回転する第2軸部材と、
前記第1軸部材が挿入されていると共に前記第2軸部材の端部に挿入された状態で前記第1軸部材と前記第2軸部材との間に介在し、前記第1軸部材の外周面に接触することで前記第1軸部材に対する回転径方向への変位が制限される第1接触部と、前記第2軸部材の内周面に接触することで前記第2軸部材に対する回転径方向への変位が制限される第2接触部と、を有する軸受部材と、
を備えた車両用シート。
【請求項2】
前記軸受部材は、前記第2軸部材の外側に配置されると共に前記第1接触部を有する外側筒状部と、前記第2軸部材の端部に挿入されると共に前記第2接触部を有する挿入部と、を備えている請求項1に記載の車両用シート。
【請求項3】
前記第1接触部が前記第1軸部材の外周面に回転周方向の全周で接触しており、
前記第2接触部が前記第2軸部材の内周面に回転周方向の複数個所で接触している請求項2に記載の車両用シート。
【請求項4】
前記挿入部には、該挿入部を回転周方向に分割するスリットが形成されている請求項2に記載の車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、溶接パイプと、この溶接パイプの端部に圧入されたブッシュと、を備えた車両用シートが開示されている。この文献に記載された溶接パイプは、側面の一部が開放されたパイプ状の鋼板を用いて形成されており、この鋼板の開放部が溶接によって結合された構成となっている。これにより、溶接パイプの内周面には、溶接によって形成された溶接ビードが溶接パイプの長手方向に沿って形成されている。その一方で、この文献に記載されたブッシュは、筒状に形成された筒部と、筒部の外周部から径方向外側へ向けて突出する圧入リブと、を備えている。そして、ブッシュが溶接パイプに圧入される際に圧入リブが溶接パイプに接触する。これにより、筒部の外周面と溶接パイプの内周面との間には、隙間が形成される。そしてさらに、この隙間に溶接パイプの溶接ビードを配置させることで、ブッシュに対して溶接ビードが影響することなくブッシュを溶接パイプに圧入させることが可能となっている。また、この文献に記載された車両用シートでは、固定軸が溶接パイプの内側に挿入された構成となっていると共に、ブッシュが固定軸と溶接パイプとの間に介在している構成となっている。そして、車両用シートのシートポジションが調節される際に、固定軸が溶接パイプに対して相対的に変位するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に記載された車両用シートのように、車両用シートのシートポジションが調節される際に、固定軸に対応する第1軸部材が溶接パイプに対応する第2軸部材に対して相対的に変位する構成では、第1軸部材に対する第2軸部材のがたつきを抑制することが肝要ではあるが、上記特許文献1に記載された構成には、この点で改善の余地がある。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、第1軸部材に対する第2軸部材のがたつきを抑制することができる車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートは、車両用シートの骨格の一部を構成する第1軸部材と、車両用シートの骨格の他の一部を構成すると共に筒状に形成され、その内側に前記第1軸部材が挿入され、車両用シートのシートポジションが調節される際に前記第1軸部材に対して相対的に回転する第2軸部材と、前記第1軸部材が挿入されていると共に前記第2軸部材の端部に挿入された状態で前記第1軸部材と前記第2軸部材との間に介在し、前記第1軸部材の外周面に接触することで前記第1軸部材に対する回転径方向への変位が制限される第1接触部と、前記第2軸部材の内周面に接触することで前記第2軸部材に対する回転径方向への変位が制限される第2接触部と、を有する軸受部材と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートによれば、車両用シートのシートポジションが調節される際に、第2軸部材が第1軸部材に対して相対的に回転する。ここで、第1軸部材と第2軸部材との間には、軸受部材が介在している。この軸受部材には、第1軸部材が挿入されている。また、この軸受部材は、第2軸部材の端部に挿入されている。ここで、軸受部材は、第1接触部及び第2接触部を備えている。第1接触部は、第1軸部材の外周面に接触している。これにより、軸受部材の第1軸部材に対する回転径方向への変位が制限される。また、第2接触部は、第2軸部材の内周面に接触している。これにより、軸受部材の第2軸部材に対する回転径方向への変位が制限される。このように、第1接触部及び第2接触部を有する軸受部材を第1軸部材と第2軸部材との間に設けることで、第1軸部材に対する第2軸部材のがたつきを抑制することができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートは、第1の態様の車両用シートにおいて、前記軸受部材は、前記第2軸部材の外側に配置されると共に前記第1接触部を有する外側筒状部と、前記第2軸部材の端部に挿入されると共に前記第2接触部を有する挿入部と、を備えている。
【0009】
第2の態様の車両用シートによれば、第1接触部が軸受部材の外側筒状部に設けられており、第2接触部が軸受部材の挿入部に設けられている。これにより、第1接触部と第1軸部材の外周面との接触圧力が第2接触部と第2軸部材の内周面との接触圧力に及ぼす影響を抑制することができる。その結果、軸受部材の第1軸部材及び第2軸部材への取付けを容易に行うことができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートは、第2の態様の車両用シートにおいて、前記第1接触部が前記第1軸部材の外周面に回転周方向の全周で接触しており、前記第2接触部が前記第2軸部材の内周面に回転周方向の複数個所で接触している。
【0011】
第3の態様の車両用シートによれば、第1接触部が第1軸部材の外周面に回転周方向の全周で接触しており、第2接触部が第2軸部材の内周面に回転周方向の複数個所で接触している。この構成では、第2接触部が第2軸部材の内周面との摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートは、第2の態様の車両用シートにおいて、前記挿入部には、該挿入部を回転周方向に分割するスリットが形成されている。
【0013】
第4の態様の車両用シートによれば、軸受部材の挿入部にスリットが形成されている。これにより、軸受部材の挿入部を第2軸部材の端部に挿入し易くすることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る車両用シートは、第1軸部材に対する第2軸部材のがたつきを抑制することができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態の車両用シートを示す斜視図である。
【
図2】本実施形態の車両用シートを示す側面図である。
【
図3】インナチューブ及びアウタチューブにおいて軸受部材が設けられた部分を示す斜視図であり、アウタチューブを上下方向及び左右方向に沿って切断した状態で示している。
【
図5】軸受部材を外側筒状部側から見た斜視図である。
【
図6】インナチューブ及びアウタチューブにおいて軸受部材が設けられた部分を上下方向及び左右方向に沿って切断した断面を示す斜視図であり、
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1~
図6を用いて、本発明の実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0017】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、車両の乗員が着座するシート本体12と、シート本体12を上下方向に昇降可能に支持するシート支持装置14と、を備えている。
【0018】
シート本体12は、乗員が着座する「座面16A」を備えたシートクッション16と、乗員の背部を支持するシートバック18と、乗員の頭部を支持するヘッドレスト20とを備えている。そして、シート本体12は、シート支持装置14によって下方側から支持されている。
【0019】
図2に示されるように、シート支持装置14は、車両用シート10の下方側の部分の骨格を構成するアッパフレーム22及びロアフレーム24を備えている。また、シート支持装置14は、リンク機構26と、エアスプリング28と、ダンパ30と、を備えている。
【0020】
アッパフレーム22には、シート本体12が固定されている。このアッパフレーム22は、左右方向に間隔をあけて配置された左右一対のレールメンバ22Aと、左右一対のレールメンバ22Aの前端部及び後端部をそれぞれ左右方向につなぐ図示しない前後一対の横メンバと、を含んで構成されている。これにより、アッパフレーム22を上方側から見た形状は矩形枠状になっている。また、アッパフレーム22は、図示しない前側の横メンバの後方側において左右一対のレールメンバ22Aの前端側を左右方向につなぐ第1軸部材としてのインナチューブ42を備えている。このインナチューブ42は、左右方向を軸方向とする円柱状又は円筒状に形成されている。
【0021】
また、左右一対のレールメンバ22Aの前後方向中央部同士は、板厚方向を上下方向とする板状の上側支持板部32を介して連結されている。この上側支持板部32には、後述するように、エアスプリング28が取り付けられている。
【0022】
ロアフレーム24は、アッパフレーム22の下方側に配置されており、図示しない車体のフロアに固定されている。このロアフレーム24は、左右方向に間隔をあけて配置された左右一対のレールメンバ24Aと、左右一対のレールメンバ24Aの前端部及び後端部をそれぞれ左右方向につなぐ図示しない前後一対の横メンバと、を含んで構成されている。これにより、ロアフレーム24を上方側から見た形状は矩形枠状になっている。
【0023】
また、一対のレールメンバ24Aの前後方向中央部同士は、板厚方向を上下方向とする板状の下側支持板部34を介して連結されており、この下側支持板部34には、後述するように、エアスプリング28が取り付けられている。
【0024】
リンク機構26は、左右一対のXリンク36を備えている。左右一対のXリンク36の上端部はアッパフレーム22に係合しており、左右一対のXリンク36の下端部はロアフレーム24に係合している。ここで、左右一対のXリンク36は、アッパフレーム22及びロアフレーム24と共に車両用シート10の下方側の部分の骨格を構成している。また、Xリンク36は、前方側から後方側へ向かうにつれて下方側に傾斜している第1リンク部38と、前方側から後方側へ向かうにつれて上方側に傾斜している第2リンク部40と、を備えている。第1リンク部38と第2リンク部40とは、前後方向の中央部において左右方向を軸方向として回動可能に連結されている。そして、左右一対の第1リンク部38が左右一対の第2リンク部40に対して相対的に回転することで、アッパフレーム22のロアフレーム24に対する昇降が許容されるようになっている。すなわち、リンク機構26の左右一対のXリンク36は、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して昇降可能な状態で、アッパフレーム22とロアフレーム24とを連結している。
【0025】
ここで、左右一対の第1リンク部38の前端部は、第2軸部材としてのアウタチューブ44を介して左右方向につながれている。このアウタチューブ44は、左右方向を軸方向とする円筒状に形成されており、車両用シート10の下方側の部分の骨格を構成している。また、アウタチューブ44には、インナチューブ42が挿入されている。これにより、左右一対の第1リンク部38が左右一対の第2リンク部40に対して相対的に回転する際に、アウタチューブ44がインナチューブ42に対して相対的に回転するようになっている。
【0026】
図3に示されるように、アウタチューブ44の左側の端部とインナチューブ42との間には、軸受部材46が設けられている。図示は省略するが、アウタチューブ44の右側の端部とインナチューブ42との間にも、軸受部材46が設けられている。そして、左右一対の軸受部材46は、アウタチューブ44をインナチューブ42に対して回転可能に支持させる部材として機能する。なお、図中に適宜示す矢印Z方向、矢印R方向及び矢印C方向は、アウタチューブ44のインナチューブ42に対する回転の回転軸方向の一方側、回転径方向の外側及び回転周方向の一方側をそれぞれ示すものとする。また、以下、単に軸方向、径方向、周方向を示す場合は、特に断りのない限り、アウタチューブ44のインナチューブ42に対する回転の回転軸方向、回転径方向、回転周方向を示すものとする。
【0027】
図3、
図4及び
図5に示されるように、軸受部材46は、樹脂材料を用いて形成されている。なお、左右一対の軸受部材46は互いに同一の構成となっている。そのため、以下においては、左側の軸受部材46について説明し、右側の軸受部材46の説明は省略する。
【0028】
軸受部材46は、円筒状に形成された外側筒状部48と、外側筒状部48の軸方向一方側の端部から、軸方向一方側へ向けて突出する挿入部50と、を備えている。
【0029】
図5及び
図6に示されるように、外側筒状部48の径方向外側の面は円筒面状に形成されている。また、外側筒状部48の外径は、アウタチューブ44の内径よりも大きくかつアウタチューブ44の外径と同じか小さな寸法に設定されている。
【0030】
外側筒状部48の内周部には、径方向内側へ向けて突出すると共に周方向に間隔をあけて配置された複数の内側突出部52が軸方向に沿って形成されている。本実施形態では、4つの内側突出部52が外側筒状部48の内周部に形成されている。4つの内側突出部52は周方向に沿って等間隔に配置されている。ここで、本実施形態の内側突出部52を軸方向から見た形状は、径方向内側へ向かうにつれて周方向への寸法が小さくなる略台形状に形成されている。4つの内側突出部52における突出方向先端側の面52Aは、軸方向他方側(挿入部50とは反対側)へ向かうにつれて径方向外側へ傾斜している。外側筒状部48の内周部において4つの内側突出部52が形成されていない部分54の内径は、インナチューブ42の外径よりも大きな内径に設定されている。また、外側筒状部48の内周部において4つの内側突出部52が形成されている部分の内径も、インナチューブ42の外径よりも大きな内径に設定されている。
【0031】
外側筒状部48の内周部における軸方向一方側の端部(挿入部50側の端部)は、第1接触部56となっている。この第1接触部56の径方向内側の面56Aは、円筒面状に形成されている。また、第1接触部56の内径は、インナチューブ42の外径よりもやや小さな内径に設定されている。これにより、インナチューブ42が第1接触部56の内側に圧入状態で挿入されるようになっている。
【0032】
図4及び
図6に示されるように、挿入部50は、外側筒状部48の軸方向一方側の端部における径方向内側の部分から軸方向一方側へ向けて突出する筒状に形成された基部58を備えている。本実施形態の基部58には、当該基部58を周方向に分割する複数のスリット60が形成されている。本実施形態では、4つのスリット60が基部58に形成されており、4つのスリット60の周方向の間隔は等間隔となっている。これにより、基部58(挿入部50)が周方向に4分割されている。なお、以下の説明において、4分割された基部58の各々を基部片62と呼ぶことがある。
【0033】
各々の基部58の径方向外側の面58Aは円筒面状に形成されている。また、基部58の径方向外側の面58Aの外径は、アウタチューブ44の内径よりも小さな外径に設定されている。
【0034】
各々の基部58の径方向内側の面58Bは円筒面状に形成されている。また、基部58の径方向内側の面58Bの内径は、インナチューブ42の外径よりも大きな内径に設定されている。さらに、基部58の径方向内側の面58Bの内径は、軸方向一方側(外側筒状部48とは反対側)へ向かうにつれて次第に大きくなっている。
【0035】
また、挿入部50は、基部58の径方向外側の面58Aから径方向外側へ向けて突出する複数の第2接触部64を備えている。本実施形態では、4つの第2接触部64が設けられており、4つの第2接触部64はそれぞれ周方向に沿って等間隔に配置されている。また、4つの第2接触部64は、各々の基部片62の周方向の中央に配置されている。
【0036】
4つの第2接触部64を軸方向から見た形状は、径方向外側が湾曲している半円形状に形成されている。本実施形態では、4つの第2接触部64が、各々の基部片62における軸方向他方側の端部から軸方向の中間部にかけての範囲において径方向外側へ向けて突出した構成となっている。また、4つの第2接触部64の突出方向の先端部における挿入部50の外径の大部分は、アウタチューブ44の内径よりも大きな外径に設定されている。なお、本実施形態では、第2接触部64における軸方向一方側の端部64Aの基部片62からの突出高さが、軸方向一方側へ向かうにつれて次第に小さくなっている。また、第2接触部64における軸方向一方側の端部64Aの周方向への寸法が、軸方向一方側へ向かうにつれて次第に小さくなっている。
【0037】
図3及び
図6に示されるように、以上説明した軸受部材46には、インナチューブ42が挿入されている。また、軸受部材46の挿入部50は、アウタチューブ44の端部に挿入されている。これにより、軸受部材46がインナチューブ42とアウタチューブ44の端部との間に介在している状態となっている。
【0038】
インナチューブ42が軸受部材46に挿入された状態では、インナチューブ42の外周面と軸受部材46の外側筒状部48の第1接触部56とが周方向の全周にかけて接触している。
【0039】
また、軸受部材46の挿入部50がアウタチューブ44の端部に挿入された状態では、アウタチューブ44の軸方向他方側の端と軸受部材46の外側筒状部48の軸方向一方側の端とが接触している。また、軸受部材46の挿入部50がアウタチューブ44の端部に挿入された状態では、各々の基部片62が径方向内側へ撓んでいると共に、各々の第2接触部64がアウタチューブ44の内周面に接触している。
【0040】
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
【0041】
図1及び
図2に示されるように、本実施形態の車両用シート10では、シート本体12に着座した乗員が図示しない操作部を操作することにより、シート本体12の座面16Aの高さを調節することができる。
【0042】
シート本体12に着座した乗員が操作部を操作することにより、空気供給源からの圧縮空気がエアスプリング28に供給されると、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して上昇する。その結果、シート本体12の座面16Aの高さを高めることができる。
【0043】
その一方で、シート本体12に着座した乗員が操作部を操作することにより、エアスプリング28内の空気が排出されると、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して下昇する。その結果、シート本体12の座面16Aの高さを下げることができる。
【0044】
ここで、
図2及び
図3に示されるように、アッパフレーム22がロアフレーム24に対して昇降すると、左右一対の第1リンク部38が左右一対の第2リンク部40に対して相対的に回転する。この時、アウタチューブ44がインナチューブ42に対して軸受部材46を支軸部として相対的に回転する。
【0045】
ところで、
図3~
図6に示されるように、本実施形態では、軸受部材46の第1接触部56が、インナチューブ42の外周面に接触している。これにより、軸受部材46のインナチューブ42に対する径方向への変位が制限される。また、軸受部材46の第2接触部64は、アウタチューブ44の内周面に接触している。これにより、軸受部材46のアウタチューブ44に対する径方向への変位が制限される。このように、第1接触部56及び第2接触部64を有する軸受部材46をインナチューブ42とアウタチューブ44との間に設けることで、インナチューブ42に対するアウタチューブ44のがたつきを抑制することができる。
【0046】
また、本実施形態では、第1接触部56が軸受部材46の外側筒状部48に設けられており、第2接触部64が軸受部材46の挿入部50に設けられている。これにより、第1接触部56とインナチューブ42の外周面との接触圧力が第2接触部64とアウタチューブ44の内周面との接触圧力に及ぼす影響を抑制することができる。その結果、軸受部材46のインナチューブ42及びアウタチューブ44への取付けを容易に行うことができる。詳述すると、第1接触部56とインナチューブ42の外周面との接触圧力が高まることにより、軸受部材46の外側筒状部48の外径が大きくなったとしても、軸受部材46の挿入部50側の外径の変化が小さい。また、第2接触部64とアウタチューブ44の内周面との接触圧力が高まることにより、挿入部50側の外径が小さくなったとしても、軸受部材46の外側筒状部48側の内径の変化が小さい。これにより、インナチューブ42を軸受部材46に挿入した後に、軸受部材46の挿入部50をアウタチューブ44の端部に挿入する際に要する力が高くなることを抑制することができる。また、軸受部材46の挿入部50をアウタチューブ44の端部に挿入した後に、インナチューブ42を軸受部材46に挿入する際に要する力が高くなることを抑制することができる。その結果、軸受部材46のインナチューブ42及びアウタチューブ44への取付けを容易に行うことができる。
【0047】
また、本実施形態では、第1接触部56がインナチューブ42の外周面に周方向の全周で接触しており、4つの第2接触部64がアウタチューブ44の内周面に周方向の4個所で接触している。この構成では、第2接触部64とアウタチューブ44の内周面との摺動抵抗の増加を抑制することができる。
【0048】
本実施形態では、軸受部材46の挿入部50にスリット60が形成されていることにより、軸受部材46の挿入部50が周方向に分割されている。これにより、軸受部材46の挿入部50をアウタチューブ44の端部に挿入し易くすることができる。
【0049】
なお、本実施形態では、軸受部材46の挿入部50にスリット60を形成した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。軸受部材46の挿入部50にスリット60を形成するか否かについては、軸受部材46の挿入部50の外径及びアウタチューブ44の内径等を考慮して適宜設定すればよい。
【0050】
また、本実施形態では、第1接触部56がインナチューブ42の外周面に周方向の全周で接触しており、4つの第2接触部64がアウタチューブ44の内周面に周方向の4個所で接触している例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、第2接触部64がアウタチューブ44の内周面に周方向の全周で接触するような構成としてもよい。
【0051】
また、本実施形態では、第1接触部56が軸受部材46の外側筒状部48に設けられており、第2接触部64が軸受部材46の挿入部50に設けられている例について説明したが、本発明はこれに限定されない。軸受部材46において第1接触部56及び第2接触部64が設けられる位置は、軸受部材46の形状や寸法を考慮して適宜設定すればよい。
【0052】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0053】
10 車両用シート
42 インナチューブ(第1軸部材)
44 アウタチューブ(第2軸部材)
46 軸受部材
48 外側筒状部
50 挿入部
56 第1接触部
60 スリット
64 第2接触部