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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119982
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ロボット脊椎手術システム及び方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/30 20160101AFI20240827BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20240827BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20240827BHJP
【FI】
A61B34/30
A61B17/56
A61B34/20
【審査請求】有
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024096724
(22)【出願日】2024-06-14
(62)【分割の表示】P 2021524983の分割
【原出願日】2019-11-08
(31)【優先権主張番号】16/184,376
(32)【優先日】2018-11-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】507280594
【氏名又は名称】マコ サージカル コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】カン,ヒョシグ
(72)【発明者】
【氏名】ディン,ヂィエナン
(72)【発明者】
【氏名】ボウリング,デイヴィッド・ジーン
(72)【発明者】
【氏名】ジョーンズ,クリストファー・ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】マキューアン,グレッグ
(72)【発明者】
【氏名】グセルマン,ルーカス
(57)【要約】      (修正有)
【課題】脊椎手術を実施するためのロボットシステム及び方法を提供する。
【解決手段】ロボットシステム10は、スクリューを保持し、このスクリューを、回転軸を中心に回転させるためのツール30を備えたロボットマニピュレータを含む。スクリューはセルフタッピングであり、コントローラ32によって記憶される既知のねじ山形状を有する。ナビゲーションシステム12は、標的部位の位置を追跡する。追跡された標的部位の位置に基づいて、標的部位に対して計画された軌道に沿って手術用ツールの回転軸を維持するように、ロットマニピュレータの運動を制御する。自律操作モードまたは手動操作モード中、回転軸を中心としたスクリューの回転速度、及び/または計画された軌道に直線的に沿ったスクリューの前進速度は、メモリに記憶される既知のねじ山形状に比例するように制御される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロボットマニピュレータと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、スクリューを保持して回転軸を中心に前記ス
クリューを回転させるように構成される手術用ツールであって、前記スクリューはセルフ
タッピングであり、既知のねじ山形状を有する、前記手術用ツールと、
標的部位の位置を追跡するように構成されるナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータ及び前記ナビゲーションシステムに結合され、前記既知の
ねじ山形状を記憶するメモリを含むロボットコントローラと、
を含む、手術用ロボットシステムであって、
前記ロボットコントローラは、
追跡された前記標的部位の位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道に沿っ
て前記手術用ツールの前記回転軸を維持するように前記ロボットマニピュレータの運動を
制御することと、
前記回転軸を中心に前記スクリューをある回転速度で回転させ、前記計画された軌道に
沿って前記スクリューをある前進速度で直線的に前進させるように、前記手術用ツールを
自律的に制御することであって、前記回転速度及び前記前進速度は前記メモリに記憶され
ている前記既知のねじ山形状に比例する、前記手術用ツールを自律的に制御することと、
を行うように構成される、手術用ロボットシステム。
【請求項2】
前記手術用ツールは、スクリュードライバーを含む、請求項1に記載の手術用ロボット
システム。
【請求項3】
前記計画された軌道は、触覚オブジェクトによって定義される、請求項1に記載の手術
用ロボットシステム。
【請求項4】
前記触覚オブジェクトは、ライン触覚オブジェクトを含み、
前記ロボットコントローラは、前記スクリューが前記標的部位で計画された挿入深さに
到達したことを示すユーザへの触覚フィードバックを生成するように前記ロボットマニピ
ュレータを制御するように構成される、
請求項3に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項5】
前記ロボットコントローラは、前記計画された軌道に沿って前記回転軸を配置する、前
記手術用ツールの自律運動を引き起こすように構成される、請求項1に記載の手術用ロボ
ットシステム。
【請求項6】
前記スクリューを駆動するために加えられているトルクを判定するトルクセンサを含み

前記ロボットコントローラは、前記トルクがトルク閾値に達するか、または前記トルク
閾値を上回ると、前記ロボットコントローラは前記手術用ツールが前記スクリューを前記
標的部位に向けて駆動するのを停止させるように構成される、
請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項7】
前記トルクセンサは、電流測定回路を含む、請求項6に記載の手術用ロボットシステム
【請求項8】
前記ナビゲーションシステムは、ナビゲーションコントローラと、前記ナビゲーション
コントローラに結合される撮像デバイスとを含む、請求項1に記載の手術用ロボットシス
テム。
【請求項9】
前記ナビゲーションシステムは、前記手術用ツールを追跡する第一トラッカーと、前記
標的部位を追跡する第二トラッカーとを含む、請求項8に記載の手術用ロボットシステム
【請求項10】
前記ナビゲーションコントローラに結合されるディスプレイを含み、
前記ナビゲーションコントローラは、前記標的部位に対する前記スクリューの位置に関
連する情報を前記ディスプレイに出力するように構成される、
請求項8に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項11】
前記回転速度及び前記前進速度は、関係[δθ/δt=δD/δt*ピッチ/2π]に
従って前記既知のねじ山形状に比例し、
式中、δθ/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、ピッチは
前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数である、
請求項1に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項12】
ロボットマニピュレータと、
ナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータ及び前記ナビゲーションシステムと通信するロボットコン
トローラと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、回転軸を中心にスクリューを回転させる手術
用ツールと、
を含む、手術用ロボットシステムを使用して、標的部位に前記スクリューを配置する方
法であって、
前記スクリューを前記手術用ツールによって保持することであって、前記スクリューは
セルフタッピングであり、既知のねじ山形状を有する、前記保持することと、
前記既知のねじ山形状を前記ロボットコントローラのメモリに記憶することと、
前記ナビゲーションシステムによって前記標的部位の位置を追跡することと、
追跡された前記標的部位の位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道に沿っ
て前記回転軸を維持するように前記手術用ツールの運動を制御することと、
前記回転軸を中心に前記スクリューをある回転速度で回転させ、前記計画された軌道に
沿って前記スクリューをある前進速度で直線的に前進させるように、前記手術用ツールの
運動を自律的に制御することであって、前記回転速度及び前記前進速度は前記メモリに記
憶されている前記既知のねじ山形状に比例する、前記手術用ツールの運動を自律的に制御
することと、
を含む、方法。
【請求項13】
触覚オブジェクトによって前記計画された軌道を画定することをさらに含む、請求項1
2に記載の方法。
【請求項14】
前記触覚オブジェクトによって前記計画された軌道を画定することは、ライン触覚オブ
ジェクトによって前記計画された軌道を画定することを含み、
前記手術用ツールの運動を制御することは、前記スクリューが前記標的部位で前記計画
された挿入深さに到達したことを示すように、ユーザへの触覚フィードバックを前記ロボ
ットコントローラによって生成することをさらに含む、
請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記回転軸を前記計画された軌道に沿って配置するように前記手術用ツールの運動を自
律的に制御することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記スクリューを駆動するために加えられているトルクを判定することと、
前記トルクがトルク閾値に達するか、または前記トルク閾値を上回ると、前記手術用ツ
ールが前記スクリューを前進させ、及び回転させるのを停止することと、
を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
前記計画された軌道に対する前記回転軸の姿勢を追跡することを含む、請求項12に記
載の方法。
【請求項18】
前記標的部位における前記計画された挿入深さに対する前記スクリューの位置に関連す
る情報を表示することを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
前記回転速度及び前記前進速度は、関係[δθ/δt=δD/δt*ピッチ/2π]に
従って前記既知のねじ山形状に比例し、
式中、δθ/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、ピッチは
前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数である、
請求項12に記載の方法。
【請求項20】
センサを含むロボットマニピュレータと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、スクリューを保持して回転軸を中心に前記ス
クリューを回転させるように構成される手術用ツールであって、前記スクリューはセルフ
タッピングであり、既知のねじ山形状を有する、前記手術用ツールと、
標的部位の位置を追跡するように構成されるナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータ及び前記ナビゲーションシステムに結合され、前記既知の
ねじ山形状を記憶するメモリを含むロボットコントローラと、
を含む、手術用ロボットシステムであって、
前記ロボットコントローラは、
追跡された前記標的部位の位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道上で前
記手術用ツールの前記回転軸を維持するように前記ロボットマニピュレータの運動を制御
することと、
前記センサを用いて、ユーザが加えた力を検出することと、
前記標的部位内に前記スクリューを埋め込むために前記ユーザが加えた力に基づいて、
前記回転軸を中心とした前記スクリューの回転速度または前記計画された軌道に直線的に
沿った前記スクリューの前進速度の一方を制御することと、
前記ユーザが加えた力に、そして前記メモリに記憶された前記既知のねじ山形状に、前
記前進速度及び前記回転速度が比例するように、前記スクリューの前記前進速度または前
記回転速度の他方を自律的に制御することと、
を行うように構成される、手術用ロボットシステム。
【請求項21】
前記手術用ツールは、トリガを含み、
前記センサは、前記トリガに結合され、前記ユーザの入力を示す信号を生成するように
構成される、
請求項20に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項22】
前記ロボットコントローラは、前記信号に基づいて前記回転速度を制御し、前記回転速
度及び前記既知のねじ山形状に比例するように前記前進速度を自律的に制御する、請求項
21に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項23】
前記ロボットコントローラは、関係[δθ/δt=δD/δt*ピッチ/2π]に従っ
て前記回転速度及び前記既知のねじ山形状に比例するように前記前進速度を自律的に制御
し、
式中、δθ/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、ピッチは
前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数である、
請求項22に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項24】
前記ロボットコントローラは、前記信号に基づいて前記前進速度を制御し、前記前進速
度及び前記既知のねじ山形状に比例するように前記回転速度を自律的に制御する、請求項
21に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項25】
前記ロボットコントローラは、関係[δθ/δt=δD/δt*ピッチ/2π]に従っ
て前記前進速度及び前記既知のねじ山形状に比例するように前記回転速度を自律的に制御
し、
式中、δθ/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、ピッチは
前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数である、
請求項24に記載の手術用ロボットシステム。
【請求項26】
ロボットマニピュレータと、
ナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータ及び前記ナビゲーションシステムと通信するロボットコン
トローラと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、回転軸を中心にスクリューを回転させる手術
用ツールと、
を含む、手術用ロボットシステムを使用して、標的部位に前記スクリューを配置する方
法であって、
前記スクリューを前記手術用ツールによって保持することであって、前記スクリューは
セルフタッピングであり、既知のねじ山形状を有する、前記保持することと、
前記既知のねじ山形状を前記ロボットコントローラのメモリに記憶することと、
前記ナビゲーションシステムによって前記標的部位の位置を追跡することと、
追跡された前記標的部位の位置に基づいて前記標的部位に対して計画された軌道に沿っ
て前記回転軸を維持するように前記手術用ツールの運動を自律的に制御することと、
前記センサを用いて、ユーザが加えた力を検出することと、
前記標的部位内に前記スクリューを埋め込むために前記ユーザが加えた力に基づいて、
前記回転軸を中心とした前記スクリューの回転速度または前記計画された軌道に直線的に
沿った前記スクリューの前進速度の一方を制御することと、
前記ユーザが加えた力に、そして前記メモリに記憶された前記既知のねじ山形状に、前
記前進速度及び前記回転速度が比例するように、前記スクリューの前記前進速度または前
記回転速度の他方を自律的に制御することと、
を含む、方法。
【請求項27】
前記センサは、前記加えた力を検出するために前記手術用ツールに配置される力/トル
クセンサを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記回転軸を前記計画された軌道に沿って配置するように前記手術用ツールの運動を自
律的に制御することを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項29】
前記手術用ツールは、トリガを含み、
前記トリガは、前記センサに結合され、前記ユーザの入力を示す信号を生成するように
構成される、
請求項26に記載の方法。
【請求項30】
前記回転速度または前記前進速度の一方を制御することは、
前記信号に基づいて前記回転速度を制御することと、
関係[δθ/δt=δD/δt*ピッチ/2π]に従って前記回転速度及び前記既知の
ねじ山形状に比例するように前記前進速度を自律的に制御することであって、式中、δθ
/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、ピッチは前記スクリュ
ーの単位長さあたりのねじ山の数である、前記前進速度を自律的に制御することと、
を含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記回転速度または前記前進速度の一方を制御することは、
前記信号に基づいて前記前進速度を制御することと、
関係[δθ/δt=δD/δt*ピッチ/2π]に従って前記前進速度及び前記既知の
ねじ山形状に比例するように前記回転速度を自律的に制御することであって、式中、δθ
/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、ピッチは前記スクリュ
ーの単位長さあたりのねじ山の数である、前記回転速度を自律的に制御することと、
を含む、請求項29に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本国際出願は、2019年11月8日に出願された米国非仮特許出願第16/184,
376号の優先権及び利益を主張するものであり、その内容及び開示全体は、参照により
本明細書に組み込まれる。
【0002】
患者の脊椎に外科手術を実施するロボットシステムはよく知られている。例えば、ロボ
ットシステムは、患者の脊椎に椎弓根スクリューを配置するために現在利用されている。
【0003】
患者が椎弓根スクリューの配置を伴う手術を必要とする場合、術前撮像及び/または術
中撮像は、治療が必要な患者の解剖学的形態(この場合は患者の脊椎)を視覚化するため
によく使用される。次に、外科医は、画像に関して、及び/または画像から作成された3
Dモデルに関して、椎弓根スクリューを配置するべき位置を計画する。この計画は、例え
ば画像及び/または3Dモデル内における所望の姿勢を特定することによって、それらが
配置される特定の椎骨に対する各椎弓根スクリューの位置及び向き(すなわち、姿勢)を
決定することを含む。計画が設定されると、この計画は実行のためにロボットシステムに
転送される。
【0004】
典型的には、ロボットシステムは、ロボットマニピュレータを含み、このロボットマニ
ピュレータは、患者の上方で、かつ配置される椎弓根スクリューの所望の向きにアライメ
ントされた所望の軌道に沿って、ツールガイドを位置決めする。また、ロボットシステム
は、ナビゲーションシステムを含み、このナビゲーションシステムは、ロボットマニピュ
レータが外科医の計画に従って所望の軌道に沿ってツールガイドを配置することができる
ように、患者の解剖学的形態に対するツールガイドの位置を決定する。場合によっては、
ナビゲーションシステムは、マニピュレータ及び患者に取り付けられる追跡デバイスを含
み、ロボットシステムは、所望の軌道を維持するため、外科手術中の患者の動きを監視し
て必要に応じてツールガイドを動かすことにより、外科手術中の患者の動きに応答するこ
とができる。
【0005】
ツールガイドが所望の軌道にアライメントを取るように位置決めされると、ロボットマ
ニピュレータは、アライメントを維持するように制御される。その後、外科医は、ツール
ガイドを介して、椎骨に隣接してカニューレを位置決めする。外科医は、従来の穿孔ツー
ルをカニューレに挿入し、椎弓根スクリュー用のパイロットホールを穿孔する。次に、外
科医は、穿孔ツールを取り外し、椎弓根スクリュードライバーを用いて椎弓根スクリュー
をパイロットホール内の適所にねじ込む。この方法論では、ロボットマニピュレータがパ
イロットホールの穿孔の際に、または椎弓根スクリューの挿入の際に、ほとんど、または
まったく役割を果たさないため、ロボットマニピュレータはあまり利用されていない。
【発明の概要】
【0006】
一実施形態では、ロボットマニピュレータと、このロボットマニピュレータに結合され
、回転軸を中心に回転して患者の脊椎にインプラントを配置する手術用ツールとを含む手
術用ロボットシステムが提供される。ロボットコントローラをロボットマニピュレータに
結合し、手術用ツールの運動を制御して、回転軸を所望の軌道に沿って設置し、回転軸を
所望の軌道に沿って維持し、及び患者の脊椎中へのインプラントの挿入を制御することで
インプラントを所望の位置に設置する。ロボットコントローラは、インプラントが所望の
位置から所定の距離内に入るまで、インプラントを患者の脊椎内に配置する手術用ツール
の自律運動を引き起こすように構成され、その後、インプラントが所望の位置に配置され
るまで手術用ツールの手動操作を制御するように構成される。
【0007】
別の実施形態では、ロボットマニピュレータと、このロボットマニピュレータに結合さ
れ、回転軸を中心に回転する手術用ツールとを含む手術用ロボットシステムを使用して、
患者の脊椎にインプラントを配置する方法が提供される。この方法は、回転軸を所望の軌
道に沿って配置するように手術用ツールの運動を制御することを含む。また、方法は、イ
ンプラントが所望の位置に配置されるように、所望の軌道に沿って回転軸を維持し、患者
の脊椎内へのインプラントの挿入を制御する。インプラントの挿入を制御することは、イ
ンプラントが所望の位置から所定の距離内に入るまで、患者の脊椎にインプラントを配置
する手術用ツールの自律運動を引き起こし、その後、インプラントが所望の位置に配置さ
れるまで手術用ツールの手動操作を制御することを含む。
【0008】
別の実施形態では、ロボットマニピュレータと、ロボットマニピュレータに結合され、
患者の皮膚を切開する皮膚切開ツールとを含む手術用ロボットシステムが提供される。ス
キントラッカーを患者の皮膚に取り付けて患者の皮膚を追跡する。ロボットコントローラ
をロボットマニピュレータに結合し、触覚オブジェクトに対する皮膚切開ツールの運動を
制御する。触覚オブジェクトは、患者の皮膚における所望の位置で切開が行われるように
定義される。
【0009】
別の実施形態では、ロボットマニピュレータと、ロボットマニピュレータに結合された
皮膚切開ツールと、患者の皮膚を追跡するために患者の皮膚に取り付けられたスキントラ
ッカーとを含む手術用ロボットシステムを使用して、患者の皮膚に切開を形成する方法が
提供される。この方法は、スキントラッカーが患者に取り付けられている間に、ポインタ
を用いて所望の切開位置を特定することを含む。また、方法は、ナビゲーションシステム
を用いて所望の位置の動きを追跡すること、及び触覚オブジェクトに対する皮膚切開ツー
ルの運動を制御することを含む。触覚オブジェクトは、患者の皮膚における所望の位置で
切開が行われるように、標的(ターゲット)座標系で定義される。
【0010】
別の実施形態では、ロボットマニピュレータと、ロボットマニピュレータに結合され、
回転軸を中心に回転して患者の脊椎内にインプラントを受容するホールを形成する手術用
ツールとを含む手術用ロボットシステムが提供される。ロボットコントローラをロボット
マニピュレータに結合し、手術用ツールの運動を制御して、回転軸を所望の軌道に沿って
配置し、回転軸を所望の軌道に沿って維持し、及び患者の脊椎へのホールの形成を制御す
ることでインプラントを所望の位置に配置する。手術用ツールは、インプラント用のパイ
ロットホールを形成するドリルと、このドリルに統合(一体化)され、インプラントのヘ
ッド用のシートを形成するように形成されたリーマとを含む。
【0011】
別の実施形態では、インプラントを受容するホールを形成する手術用ツールが提供され
る。手術用ツールは、インプラント用のパイロットホールを形成するドリルを含む。ドリ
ルは、近位端部及び遠位端部を備えたシャフトを有する。リーマは、遠位端部から近位に
離れたシャフト上の位置でドリルに統合される。リーマは、インプラントのヘッド用のシ
ートを形成するように形成される。
【0012】
別の実施形態では、ロボットマニピュレータと、このロボットマニピュレータに結合さ
れ、回転軸を中心に回転する手術用ツールとを用いて、患者の脊椎にホールを形成する方
法が提供される。この方法は、手術用ツールの運動を制御して、回転軸を所望の軌道に沿
って配置し、回転軸を所望の軌道に沿って維持し、及び患者の脊椎へのホールの形成を制
御することを含み、そして、インプラントを所望の位置に配置する。患者の脊椎に形成さ
れるホールは、インプラント用のパイロットホール、及びインプラントのヘッド用のシー
トを含む。パイロットホール及びシートの少なくとも一部分を同時に形成する。
【0013】
別の実施形態では、ナビゲーションシステム、ロボットマニピュレータ、及び回転軸を
中心にスクリューを回転させるためにロボットマニピュレータに結合された手術用ツール
を含む手術用ロボットシステムが提供され、スクリューはセルフタッピングであり、既知
のねじ山形状を有する。ナビゲーションシステムは、標的(ターゲット)部位の位置を追
跡するように構成される。ロボットコントローラは、ロボットマニピュレータ及びナビゲ
ーションシステムに結合され、既知のねじ山形状を記憶するメモリを含む。ロボットコン
トローラは、追跡された標的部位の位置に基づいて、標的部位に対して計画された軌道に
沿って回転軸を維持するように、ロボットマニピュレータの運動を制御するように構成さ
れる。また、ロボットコントローラは、回転軸を中心にスクリューをある回転速度で回転
させ、計画された軌道に沿ってスクリューをある前進速度で直線的に前進させるように、
手術用ツールを自律制御するように構成され、これら回転速度及び前進速度は、メモリに
記憶された既知のねじ山形状に比例する。
【0014】
別の実施形態では、ナビゲーションシステム、ロボットマニピュレータ、及び回転軸を
中心にスクリューを回転させるためにロボットマニピュレータに結合された手術用ツール
を含む手術用ロボットシステムを使用して、標的部位内にスクリューを配置する方法が提
供される。この方法は、手術用ツールを用いてスクリューを保持することを含み、このツ
ールはセルフタッピングであり、既知のねじ山形状を有する。この方法は、既知のねじ山
形状をロボットコントローラのメモリに記憶することを含む。この方法は、ナビゲーショ
ンシステムを用いて標的部位の位置を追跡することを含む。この方法は、追跡された標的
部位の位置に基づいて、標的部位に対して計画された軌道に沿って回転軸を維持するよう
に手術用ツールの運動を制御することを含む。この方法は、回転軸を中心にスクリューを
ある回転速度で回転させ、計画された軌道に沿ってスクリューをある前進速度で直線的に
前進させるように手術用ツールの運動を自律制御することを含み、回転速度及び前進速度
はメモリに記憶された既知のねじ山形状に比例する。
【0015】
別の実施形態では、センサを有するロボットマニピュレータを含む手術用ロボットシス
テムが提供される。手術用ロボットシステムは、手術用ツールを含み、この手術用ツール
は、ロボットマニピュレータに結合され、スクリューを保持して回転軸を中心にスクリュ
ーを回転させるように構成され、スクリューはセルフタッピングであり、既知のねじ山形
状を有する。手術用ロボットシステムは、標的部位の位置を追跡するように構成されるナ
ビゲーションシステムを含む。手術用ロボットシステムは、ロボットコントローラを含み
、このロボットコントローラは、ロボットマニピュレータ及びナビゲーションシステムに
結合され、既知のねじ山形状を記憶するメモリを含む。ロボットコントローラは、追跡さ
れた標的部位の位置に基づいて、標的部位に対して計画された軌道上で手術用ツールの回
転軸を維持するように、ロボットマニピュレータの運動を制御するように構成される。ロ
ボットコントローラは、センサを用いてユーザが加える力を検出するように構成される。
ロボットコントローラは、標的部位にスクリューを埋め込むためにユーザが加える力に基
づいて、回転軸を中心としたスクリューの回転速度または計画された軌道に直線的に沿っ
たスクリューの前進速度の一方を制御するように構成される。ロボットコントローラは、
ユーザが加えた力に、そしてメモリに記憶された既知のねじ山形状に、前進速度及び回転
速度が比例するように、スクリューの前進速度または回転速度の他方を自律制御するよう
に構成される。
【0016】
別の実施形態では、手術用ロボットシステムを使用して標的部位にスクリューを配置す
る方法が提供される。手術用ロボットシステムは、ロボットマニピュレータ、ナビゲーシ
ョンシステム、これらロボットマニピュレータ及びナビゲーションシステムと通信するロ
ボットコントローラを含む。手術用ロボットシステムは、回転軸を中心にスクリューを回
転させるためにロボットマニピュレータに結合される手術用ツールを含む。ロボットマニ
ピュレータはセンサを含む。この方法は、手術用ツールを用いてスクリューを保持するこ
とを含み、このスクリューはセルフタッピングであり、既知のねじ山形状を有する。この
方法は、既知のねじ山形状をロボットコントローラのメモリに記憶することを含む。この
方法は、ナビゲーションシステムを用いて標的部位の位置を追跡することを含む。この方
法は、追跡された標的部位の位置に基づいて、標的部位に対して計画された軌道に沿って
回転軸を維持するように手術用ツールの運動を制御することを含む。この方法は、センサ
を用いてユーザが加える力を検出することを含む。この方法は、標的部位にスクリューを
埋め込むためにユーザが加える力に基づいて、回転軸を中心としたスクリューの回転速度
または計画された軌道に直線的に沿ったスクリューの前進速度の一方を制御することを含
む。この方法は、ユーザが加えた力に、そしてメモリに記憶された既知のねじ山形状に、
前進速度及び回転速度が比例するように、自律的に、スクリューの前進速度または回転速
度の他方を自律制御することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】ロボット手術システムの斜視図である。
図2図1のシステムで使用される手術用ロボットアームの斜視図である。
図3】脊椎手術を実施するために撮像デバイスと組み合わせて使用されるロボット手術システムの斜視図である。
図4】ドリルに結合されるハウジングを含む手術用ツールに結合されたロボットアームの部分斜視図である。
図5】ドライバー及びスクリューに結合された手術用ツールに結合されるロボットアームの部分斜視図である。
図6】別の手術用ツールの立面図である。
図7】椎弓根内にパイロットホールを穿孔する様子を示す図である。
図8】椎弓根スクリューをパイロットホールにねじ込む様子を示す図である。
図9A】電流出力対深さを示す図であり、穿孔がユーザの計画に従っていることを確認するために使用することができる図である。
図9B】電流出力対深さを示す図であり、椎弓根スクリューの挿入がユーザの計画に従っていることを確認するために使用することができる図である。
図10A】ロボットアームに取り付けられる皮膚切開ツールを示す図である。
図10B】ロボットアームに取り付けられる別の皮膚切開ツールを示す図である。
図11】ロボットアームに取り付けられるJamshidi針を示す図である。
図12】インプラントを所望の位置に配置する1つの手術中に実行されるサンプルステップのフローチャートである。
図13】切開を行う1つの手術中に実行されるサンプルステップのフローチャートである。
図14】椎弓根スクリューをパイロットホールにねじ込む様子を示す図である。
図15】インプラントを所望の位置に配置する1つの手術中に実行されるサンプルステップのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1及び図2を参照すると、さまざまな外科手術に使用されることのできる手術用ロボ
ットシステム10が示されている。さまざまな外科手術は、脊椎手術、例えば、椎弓根ス
クリュー、他のスクリュー、または他のタイプのインプラントが脊椎内に配置される脊椎
手術を含むが、これらには限定されない。ロボットシステム10は、ローカライザ14及
び追跡デバイス16を含むナビゲーションシステム12と、1つ以上のディスプレイ18
と、ロボットマニピュレータ(例えば、ベース22やテーブルなどに取り付けられたロボ
ットアーム20)とを備える。ロボットアーム20は、ベース22に回転自在に結合され
たベースリンク24と、ベースリンク24から遠位端部28まで連続的に延在する複数の
アームリンク26とを含む。アームリンク26は、ロボットアーム20内の複数の関節を
中心に枢動/回転する。脊椎手術を実施する際に使用する手術用ツールは、例えば、概し
て符号30で示されている。手術用ツール30は、ロボットアーム20の遠位端部28に
枢動可能に連結されることができる。
【0019】
ロボットコントローラ32は、手術用ツール30の操作中に、ロボットアーム20の制
御、または外科医へのガイダンスを提供するように構成される。一実施形態では、ロボッ
トコントローラ32は、ロボットアーム20を介してユーザに触覚フィードバックを提供
するように、ロボットアーム20を制御する(例えば、その関節用モータを制御すること
によって)ように構成される。この触覚フィードバックは、外科医が外科手術に関連する
所定の仮想境界を越えて手術用ツール30を手動で動かすことを制約し、または抑制する
のに役立つ。このような触覚フィードバックシステム及び仮想境界を定義する関連した触
覚オブジェクトは、例えば、2006年2月21日に出願されて、「Haptic Gu
idance System And Method」と題された、Quaidらの米国
特許第8,010,180号、及び/または、2012年12月21日に出願されて、「
Systems And Methods For Haptic Control O
f A Surgical Tool」と題された、Ottoらの米国特許出願公開第2
014/0180290号に記載されており、これらのそれぞれは参照によりその全体が
本明細書に組み込まれる。一実施形態では、ロボットシステム10は、Fort Lau
derdale、FL、USAのMAKO Surgical Corp.によって製造
されたRIO(商標)ロボットアームインタラクティブ整形外科システムである。
【0020】
いくつかの実施形態では、ロボットアーム20は、外科手術を実施するために、所定の
ツールパス(経路)及び/または他の所定の運動に基づいて自律的に動作する。そのよう
な運動は、外科手術の間に、及び/または手術の前に、定義され得る。さらなる実施形態
では、手動制御及び自律制御の組み合わせを利用する。例えば、ユーザが手術用ツール3
0に力を加えてロボットアーム20の運動を引き起こす手動モードと、ユーザがペンダン
トを保持してロボットアーム20が自律的にツールパスに追従するように制御する半自律
モードとの両方を用いるロボットシステムは、2015年6月4日に出願されて、「Ro
botic System And Method For Transitionin
g Between Operating Modes」と題された、Bowlingら
の米国特許第9,566,122号に記載されており、これは参照によりその全体が本明
細書に組み込まれる。
【0021】
ナビゲーションシステム12は、標的座標系に関して手術室内のさまざまなオブジェク
トの運動を追跡するようにセットアップされる。そのようなオブジェクトは、例えば、手
術用ツール30、対象となる患者の解剖学的形態(1つ以上の椎骨など)、及び/または
他のオブジェクトを含む。ナビゲーションシステム12は、標的座標系におけるそれらの
相対的な位置及び向きを外科医に表示する目的で、そして場合によっては、患者の解剖学
的形態に関連付けられ、及び標的座標系に関して(例えば、手術用ナビゲーションでよく
知られている座標系変換を介して)定義された仮想境界に対する手術用ツール30の運動
を制御し、または制約する目的で、これらのオブジェクトを追跡する。
【0022】
手術用ナビゲーションシステム12は、ナビゲーションコントローラ36を収容するコ
ンピュータカートアセンブリ34を含む。ナビゲーションコントローラ36及びロボット
コントローラ32は、合わせて、ロボットシステム10の制御システムを形成する。ナビ
ゲーションインタフェースは、ナビゲーションコントローラ36と操作可能に通信する。
ナビゲーションインタフェースは、コンピュータカートアセンブリ34に調整可能に取り
付けられるディスプレイ18を含む。キーボード及びマウスなどの入力デバイスを使用し
てナビゲーションコントローラ36に情報を入力し、またはその他の方法によってナビゲ
ーションコントローラ36のある特定の態様を選択/制御することができる。タッチスク
リーン(図示せず)または音声起動(voice-activation)を含む他の入力デバイスの使用
も考えられる。
【0023】
ローカライザ14は、ナビゲーションコントローラ36と通信する。示された実施形態
において、ローカライザ14は、光学的ローカライザであり、カメラユニット(感知デバ
イスの一例)を含む。カメラユニットは、1つ以上の光学的位置センサを収容する外側筐
体を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも2つの光センサ、時には3つ以上の光セ
ンサを用いる。光センサは、別個の電荷結合素子(CCD)であってもよい。カメラユニ
ットは、調整可能なアームに取り付けられ、光学センサを、理想的には障害物のない、以
下で説明される追跡デバイス16の視野内に配置する。いくつかの実施形態において、カ
メラユニットは、回転ジョイントを中心に回転することによって、少なくとも1の自由度
で調整可能である。他の実施形態では、カメラユニットは、2以上の自由度で調整可能で
ある。
【0024】
ローカライザ14は、光センサから信号を受信するために光センサと通信するローカラ
イザコントローラ(図示せず)を含む。ローカライザコントローラは、有線か無線かいず
れかの接続(図示せず)を介してナビゲーションコントローラ36と通信する。そのよう
な接続の1つは、IEEE1394インタフェースであることができ、このIEEE13
94インタフェースは、高速通信及びアイソクロナスリアルタイムデータ転送用のシリア
ルバスインタフェース規格である。また、接続は、企業独自のプロトコルを使用すること
ができる。他の実施形態では、光センサは、ナビゲーションコントローラ36と直接通信
する。
【0025】
位置及び向きの信号及び/またはデータは、オブジェクトを追跡する目的でナビゲーシ
ョンコントローラ36に伝送される。コンピュータカートアセンブリ34、ディスプレイ
18及びローカライザ14は、2010年5月25日に発行され、「Surgery S
ystem」と題された、Malackowskiらの米国特許第7,725,162号
に記載されたものと同様であることができ、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0026】
ロボットコントローラ32及びナビゲーションコントローラ36は、それぞれまたは合
わせて、1つ以上のパーソナルコンピュータまたはラップトップコンピュータと、データ
及びコンピュータ可読インストラクションの記憶に適しているメモリとを含むことができ
、メモリは、ローカルメモリ、外部メモリ、クラウドベースメモリ、ランダムアクセスメ
モリ(RAM)、不揮発性RAM(NVRAM)、フラッシュメモリまたは他の適切な形
式のメモリなどであることができる。ロボットコントローラ32及びナビゲーションコン
トローラ36は、それぞれ、または合わせて、マイクロプロセッサなどの1つ以上のプロ
セッサを含み、これらのプロセッサは、メモリに記憶されたインストラクションを処理し
、またはメモリに記憶されたアルゴリズムを処理し、本明細書に記載される機能を実行す
ることができる。これらのプロセッサは、どのようなタイプのプロセッサでもよく、マイ
クロプロセッサやマルチプロセッサシステムであることができる。追加的に、または代替
的に、ロボットコントローラ32及びナビゲーションコントローラ36は、それぞれ、ま
たは合わせて、1つ以上のマイクロコントローラ、フィールドプログラマブルゲートアレ
イ、システムオンチップ、ディスクリート回路、及び/または本明細書に記載される機能
を実行することができる他の適切なハードウェア、ソフトウェア、またはファームウェア
を含むことができる。ロボットコントローラ32及びナビゲーションコントローラ36は
、ロボットマニピュレータ、コンピュータカートアセンブリ34によって運ばれることが
でき、及び/またはいずれかの他の適切な位置に取り付けられることができる。ロボット
コントローラ32及び/またはナビゲーションコントローラ36には、以下に説明される
ようなソフトウェアがロードされる。ソフトウェアは、ローカライザ14から受信する信
号を、追跡されるオブジェクトの位置及び向きを表すデータに変換する。
【0027】
図3を参照すると、ナビゲーションシステム12は、本明細書ではトラッカーとも称さ
れる複数の追跡デバイス16を含む。図示された実施形態では、複数のトラッカー16が
患者の別個の椎骨に結合されている。場合によっては、トラッカー16は、ボーンスクリ
ュー、ボーンピンなどを介して骨の一部分に固定される。他の場合には、棘突起または脊
椎の他の部分の上にクランプを使用してトラッカー16を取り付けることができる。さら
なる実施形態では、トラッカー16は、他の組織タイプまたは解剖学的形態の部分に取り
付けられることができる。トラッカー16が取り付けられている解剖学的形態に対するト
ラッカー16の位置は、ポイントベースの登録などの登録技法によって決定されることが
でき、これらの登録技法では、デジタルプローブ73(例えば、それ自体マーカーを備え
たナビゲーションポインタ)を使用して骨上の骨標識(ランドマーク)上でタッチオフす
るか、または表面ベースの登録のために骨上のいくつかのポイントでタッチオンする。従
来の登録技法を用いて、トラッカー16の姿勢を患者の解剖学的形態、例えば治療される
椎骨Vに相関させることができる。
【0028】
他のタイプの登録も可能であり、例えば、椎骨Vの棘突起に取り付けられる機械的クラ
ンプであって、クランプを取り付ける棘突起の形状を特定する触覚センサ(図示せず)を
含む前記機械的クランプを備えたトラッカー16を使用することができる。次に、棘突起
の形状を登録のために棘突起の3Dモデルにマッチングさせることができる。触覚センサ
と、追跡デバイス16上の3つ以上のマーカーとの間の既知の関係は、ナビゲーションコ
ントローラ36に予めロードされる。この既知の関係に基づいて、患者の解剖学的形態に
対するマーカーの位置を決定することができる。
【0029】
また、ベーストラッカー16は、手術用ツール30の姿勢を追跡するためにベース22
に結合される。他の実施形態では、別個のトラッカー16は、例えば製造時に手術用ツー
ル30に統合されて手術用ツール30に固定されることができ、または外科手術に備えて
手術用ツール30に別個に取り付けられることができる。いずれの場合も、手術用ツール
30の作業用端部は、ベーストラッカー16または他のトラッカーによって追跡される。
作業用端部には、手術用ツール30の付属品の遠位端部であることができる。そのような
付属品は、ドリル、バー、ソー、電気焼灼デバイス、スクリュードライバー、タップ、手
術用ナイフ、Jamshidi針などであることができる。
【0030】
図示された実施形態では、トラッカー16は、受動型(パッシブ)トラッカーである。
この実施形態において、各トラッカー16は、ローカライザ14からの光を反射して光セ
ンサに戻すために、少なくとも3つの受動追跡(パッシブトラッキング)素子またはマー
カーMを含む。他の実施形態では、トラッカー16は、能動型(アクティブ)トラッカー
であり、光センサに赤外光などの光を伝送する発光ダイオードまたはLEDを含むことが
できる。受信した光信号に基づいて、ナビゲーションコントローラ36は、従来の三角測
量技術を使用して、ローカライザ14に対するトラッカー16の相対的な位置及び向きを
示すデータを生成する。場合によっては、より多くの、またはより少ないマーカーを用い
ることができる。例えば、追跡されるオブジェクトが線を中心に回転可能である場合、2
つのマーカーを使用して、この線の周りのさまざまな位置でマーカーの位置を測定するこ
とにより、この線の向きを決定することができる。なお、上記ではローカライザ14及び
トラッカー16が光学追跡技術を利用するものとして説明されているが、代替的に、また
は追加的に、電磁追跡、高周波追跡、慣性追跡、それらの組み合わせなど、他の追跡モダ
リティを利用してオブジェクトを追跡することができることを理解されたい。
【0031】
また、手術用ツール30が、所望の切開境界の外側で、患者の皮膚に不注意に接触した
り、貫入したりすることがないように、患者の皮膚表面を追跡することが望ましい場合が
ある。この目的のため、接着性の裏地を有する能動型マーカーまたは受動型マーカーなど
の皮膚貼付マーカーMを患者の皮膚に貼付して患者の皮膚に関連する境界を画定するよう
にしてもよい。そのようなマーカーMのアレイは、実質的に外周リング74(円形、矩形
など)の邪魔をせず、外科手術がリング74の内側で継続されるように、外周リング74
内に設けられることができる(すなわち、リングは、対象となる切開や椎骨の周りの患者
の皮膚上に配置される)。適切なスキンマーカーアレイの1つは、Stryker Le
ibinger GmbH&Co KG(BotzingerStraβe41、D-7
9111 Freiburg、Germany)によって製造されているSpineMa
sk(登録商標)トラッカーである。また、2015年5月13日に出願されて、「Na
vigation System For And Method Of Tracki
ng The Position Of A Work Target」と題された、S
choeppらの米国特許出願公開第2015/0327948号も参照されたい。これ
は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。他の適切なスキントラッカーを使用
することも考えられる。デジタルプローブも使用して、皮膚表面及び/または切開をマッ
ピングすることもできる。但し、マッピングすると、さらにデジタル化しなければ皮膚の
動きを検出することはできないが、貼付されたトラッカーアレイは、患者の皮膚の動きを
検出することができる。
【0032】
外科手術の開始前に、追加データがナビゲーションコントローラ36にロードされる。
トラッカー16の位置及び向き、ならびに先にロードされたデータに基づいて、ナビゲー
ションコントローラ36は、作業用端部が適用される組織に対する、手術用ツール30の
作業用端部の位置及び手術用ツール30の向きを決定する。追加データは、手術用ツール
30の作業用端部に対する、トラッカー16またはそのマーカーMの位置及び/または向
きに関する幾何学的形状データなどの較正データを含むことができる。また、この較正デ
ータは、既知の幾何学的形状のトラッカー16上で較正プローブまたは較正ディボットを
使用して、手術用ツール30の作業用端部の位置を、例えばそれ自体のトラッカーまたは
ベーストラッカー16に対して決定することなどによって、術前または術中に決定される
ことができる。追加データは、トラッカー16を患者の解剖学的形態またはその3Dモデ
ルに関連付ける変換データなどの登録データを含むことができる。いくつかの実施形態に
おいて、ナビゲーションコントローラ36は、これらのデータをロボットコントローラ3
2に転送する。次に、ロボットコントローラ32は、このデータを使用して、米国特許第
8,010,180号または第9,566,122号に記載されているように、ロボット
アーム20を制御することができ、これらは両方とも参照により先に本明細書に組み込ま
れる。
【0033】
また、ナビゲーションコントローラ36は、対象となる組織に対して手術用ツール30
の作業用端部の相対位置を示す画像信号を生成する。これらの画像信号はディスプレイ1
8に与えられる。ディスプレイ18は、これらの信号に基づいて、外科医及びスタッフが
手術部位に対する手術用ツール30の相対位置を見ることを可能にする画像を生成する。
上記に考察されるようなディスプレイ18は、コマンドのエントリを可能にする、タッチ
スクリーンまたは他の入力/出力デバイスを含むことができる。
【0034】
示される実施形態において、手術用ツール30の姿勢は、ナビゲーションシステム12
を使用して、ベーストラッカー16を介してベース22の位置を追跡し、ロボットアーム
20の関節からの関節エンコーダデータ及び手術用ツール30とロボットアーム20との
間の既知の幾何学的形状の関係に基づいて、手術用ツール30の姿勢を計算することによ
って、決定されることができる。最終的に、ローカライザ14及び追跡デバイス16は、
手術用ツール30の姿勢及び患者の解剖学的形態の決定を可能にするので、ナビゲーショ
ンシステム12は、手術用ツール30と患者の解剖学的形態との間の相対的な関係を認識
することができる。そのようなナビゲーションシステムの1つは、2013年9月24日
に出願されて、「Navigation System Including Opti
cal And Non-Optical Sensors」と題された、Wuの米国特
許第9,008,757号に示され、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0035】
手術中に、ある特定の手術用タスクについて、ユーザは、ロボットアーム20を手動で
操作し(例えば、ロボットアームを動かし、またはロボットアームの運動を引き起こし)
、手術用ツール30を操作して、穿孔、切断、ソーイング、リーミング、インプラント挿
入などのような外科的処置を患者に実施する。ユーザが手術用ツール30を操作すると、
ナビゲーションシステム12は、手術用ツール30及び/またはロボットアーム20の位
置を追跡し、触覚フィードバック(例えば、力のフィードバック)をユーザに提供し、患
者の解剖学的形態に対して登録されている(またはマッピングされている)1つ以上の所
定の仮想境界を越えて手術用ツール30を動かす(または手術用ツールの運動を引き起こ
す)ユーザの能力を制限し、その結果、非常に正確で、再現性のある穿孔、切断、ソーイ
ング、リーミング、及び/またはインプラントの配置が行われる。
【0036】
一実施形態において、ロボットアーム20は、受動方式で動作し、外科医が仮想境界を
越えて手術用ツール30を動かそうとするときに触覚フィードバックを提供する。触覚フ
ィードバックは、ロボットアーム20内の1つ以上のアクチュエータ(例えば、関節用モ
ータ)によって生成され、ケーブル駆動トランスミッションなどの可撓性トランスミッシ
ョンを介してユーザに伝達される。ロボットアーム20が触覚フィードバックを提供して
いないとき、ユーザは、ロボットアーム20を自由に動かすことができる。他の実施形態
では、参照により本明細書に先に組み込まれた、米国特許第9,566,122号に示さ
れるものと同様に、ロボットアーム20は、同様の方法でユーザによって操作されるが、
ロボットアーム20は、能動方式で動作する。例えば、ユーザが手術用ツール30に力を
加えると、この力を力/トルクセンサが測定し、この力/トルクセンサからの測定値に基
づくユーザの所望の運動(動き)をロボットアーム30がエミュレートする。他の手術用
タスクについて、ロボットアーム20は自律的に動作する。
【0037】
図4及び5を参照すると、ロボットアーム20の遠位端部28に結合された手術用ツー
ル30が示されている。より具体的には、カップリング40が手術用ツール30とロボッ
トアーム20の遠位端部28との間に提供されることで、遠位端部28に対する軸Aを中
心とした手術用ツール30の回転が可能になる。図4において、手術用ツール30は、椎
弓根スクリュー、他のスクリュー、または他のタイプのインプラントのためのパイロット
ホールを穿孔するドリル42を含む。ドリル42は、回転軸Rを中心に回転するように配
置される。図5において、手術用ツール30は、椎弓根スクリューPSまたは他のインプ
ラントを駆動するために、回転軸Rを中心に回転するように回転軸Rに沿って配置される
ドライバー44(例えば、スクリュードライバー)を含む。
【0038】
手術用ツール30は、ハウジング45を含む。駆動系(例えば、モータ)は、ドリル4
2、ドライバー44または他の付属品を駆動するためにハウジング45内に位置する。駆
動系は可変速であることができる。ハンドル46は、ハウジング45に設けられ、グリッ
プを含み、外科手術中に、ユーザは、このグリップを把持し、手術用ツール30及び/ま
たはロボットアーム20を操作する。
【0039】
さらに、ハウジング45は、ドリル42、ドライバー44または他の付属品を駆動系に
取り外し可能に取り付けるために、コレット47または他のタイプのカプラを含む。場合
によっては、減速機48(図5を参照)が、コレット47に取り外し可能に取り付けられ
て、ある特定の付属品に使用されてもよい。減速機48は、駆動系に直接連結される場合
と比較して、付属品の回転速度を低下させるトランスミッションまたはギヤ配列を含む。
減速機は、より遅い回転速度が望ましい場合に役立つ。また、トリガ49が設けられても
よく、このトリガは、ドリル42及び/またはドライバー44の速度を制御し、ロボット
アーム20の運動を開始し、または回転軸Rを所望の軌道にアライメントさせる(位置合
わせする)ことなどを行う。トリガ49は、ロボットアーム20及び/または手術用ツー
ル30を制御する信号を、ロボットコントローラ32(ツールコントローラを含むことが
できる)に通信することができる。
【0040】
図6に示される別の実施形態では、カップリング40の1つの端部は、軸Aを中心とす
る回転のために手術用ツール30を支持する。カップリング40のもう1つの端部は、ハ
ウジング45を支持する。ハウジング45は、カップリング40に固定されてもよいし、
またはカップリング40内で回転軸Rを中心とする回転のために支持されてもよい。換言
すれば、ハウジング45は、カップリング40内で受動的に回転することができる。ただ
し、同時に、カップリング40は、ハウジング45の位置を正確に制御することができる
ように、カップリング40に対する回転軸Rに沿ったハウジング45の軸方向の動きを制
限する。トラッカー(図示せず)をハウジング45に取り付けて、ハウジング45の位置
及び/または向きを追跡することで、回転軸Rを、及び/またはハウジング45に取り付
けられた付属品の遠位端部を追跡することができる。回転シャフト60は、ハウジング4
5内で回転自在に支持される。回転シャフト60は、付属品(例えば、図に示されるよう
なドライバー44)に結合する遠位インタフェース/コレット62と、モータなどのトル
ク源、手動回転用の回転可能なハンドルなどのような動力源に結合する近位インタフェー
ス/コレット64とを含む。例えば、ユーザがハンドピース66を把持し、モータの動作
をトリガし、モータが回転シャフト60を介してドライバー44に、そして最終的には椎
弓根スクリューPSにトルクを伝達させることができるように、ドライバー44は、遠位
インタフェース62/回転シャフト60に結合されて示され、内部モータを備えるハンド
ピース66は、近位インタフェース64に結合されて示されている。この構成により、ユ
ーザは、椎弓根スクリューPSを挿入するときにトルクフィードバックを直接感じること
ができる。
【0041】
術前撮像及び/または術中撮像を用いて治療が必要な患者の解剖学的形態(患者の脊椎
など)を視覚化することができる。外科医は、画像に関して、及び/またはこれらの画像
から作成された3Dモデルに関して、椎弓根スクリューPSを配置するべき位置を計画す
る。この計画は、例えば、画像及び/または3Dモデル内における所望の姿勢を特定する
ことによって、各椎弓根スクリューPSの姿勢を、それらが配置される特定の椎骨Vに対
して決定することを含む。これは、患者の解剖学的形態の3Dモデルに関して別個の椎弓
根スクリューPSの3Dモデルを作成し、または位置決めすることを含むことがある。計
画が設定されると、この計画は実行のためにロボットシステム10に転送される。
【0042】
ロボットシステム10を、撮像デバイス50(例えば、図3に示されるCアーム)とと
もに使用することで、任意の術前画像、例えば、手術前に取得されるX線、CTスキャン
若しくはMRI画像に加えて、またはそれらの代わりに、患者の解剖学的形態の術中画像
を取得することができる。撮像デバイス50からの術中画像は、患者の脊椎に配置される
椎弓根スクリューPSの所望の向きに対するドリル42またはドライバー44の実際の位
置を決定するのに役立つことができる。別々の追跡デバイス16を各椎骨Vに用いて、椎
弓根スクリューPSまたは他のインプラントを椎骨V内に配置するときに、各椎骨Vと、
別個の椎骨Vに対するドリル42及び/またはドライバー44の対応する姿勢とを別々に
追跡することができる。
【0043】
ロボットシステム10は、椎弓根スクリューPSの所望の姿勢を評価し、椎弓根スクリ
ューPSの所望の姿勢に対応する、仮想境界(例えば、触覚オブジェクト)、所定のツー
ルパス、及び/または他の自律運動インストラクションを作成し、ロボットアーム20の
運動を制御し、手術用ツール30のドリル42及びドライバー44は、最終的にユーザの
計画に従って椎弓根スクリューPSを配置する方法で制御される。これは、例えば、外科
手術中に、手術用ツール30の軌道と椎弓根スクリューPSの所望の姿勢とのアライメン
トを取ること、例えば、椎弓根スクリューPSの所望の姿勢と回転軸Rとのアライメント
を取ることを確実にすることを含むことができる。
【0044】
他の実施形態では、ユーザは、手術中に所望の軌道及び/またはスクリュー配置を計画
することができる。例えば、ユーザは、対象となる解剖学的形態、例えば椎骨Vに対して
所望の刺入点にドリル42を配置し、回転軸Rの軌道が所望の向きになっていることをデ
ィスプレイ18が示すまでドリル42の方向付けを行うことができる。ユーザがこの軌道
に満足すると、ユーザは、制御システムに入力(例えば、タッチスクリーン、ボタン、フ
ットペダルなど)を提供して、この軌道を手術中に維持される所望の軌道として設定する
ことができる。回転軸Rを維持して所望の軌道に沿ったままとするために手術用ツール3
0の運動を制約するように作成される触覚オブジェクトは、図4に示されるようなライン
触覚オブジェクトLHであることができる。ライン触覚オブジェクトLHは、さらに以下
に説明されるような開始点SPと、ドリル42、椎弓根スクリューPSなどの所望の深さ
を画定する標的(ターゲット)点TPと、刺出点EPとを含んでよい。他の触覚オブジェ
クトの形状、サイズなどを含むことも考えられる。
【0045】
図7及び8を参照すると、椎骨Vの1つが示されている。脊椎固定術などの外科手術中
に、外科医は、椎弓根領域を介して椎骨Vの椎体100内に1つ以上の椎弓根スクリュー
PSを挿入することができる。椎弓根スクリューPSを挿入する前に、外科医は、ドリル
42を用いて、椎体100にパイロットホール102を開けることができる。代替的な実
施形態では、自己穿孔、セルフタッピングのボーンスクリューを用いる場合などで、パイ
ロットホールを除外することができる。例えば、2009年12月29日に発行されて、
「Self-drilling bone screw」と題された、Stefan A
uthの米国特許第7,637,929号の教示を参照されたい。これは参照によりその
全体が本明細書に組み込まれる。
【0046】
一実施形態では、穿孔が始まる前に、ロボットシステム10は、パイロットホール10
2の所望の向きと合わせて、所望の軌道と手術用ツール30の回転軸Rとのアライメント
を自律的に取ることで、所望の軌道に沿って回転軸Rを配置するように手術用ツール30
の運動を制御する。この場合、ロボットアーム20は、所望の軌道に沿っているが、椎体
100の上方に間隔をあけて(図4に示されるように)ドリル42を自律的に位置決めす
ることができるため、ドリル42は椎体100にまだ接触していない。このような自律的
な位置決めは、ユーザが手術用ツール30のトリガを引くことによって、またはその他の
方法で運動を開始する入力を制御システムに提供することによって、開始されることがで
きる。場合によっては、最初に、手術用ツール30のツール中心点(TCP)が所望の軌
道を提供するライン触覚オブジェクトLHの開始点SPから所定の距離内(所定の開始球
面内)へと移動させられる。TCP(例えば、バーの重心、ドリルチップの中心など)が
開始点SPから所定の距離内に入ると、トリガを引く(または代替的にフットペダルを押
す、または別の入力を動かす)ことで、ロボットアーム20は、自律的に、所望の軌道上
で手術用ツール30のアライメントを取り、この手術用ツール30を位置決めするように
なる。例えば、2012年12月21日に出願されて、「Systems And Me
thods For Haptic Control Of A Surgical T
ool」と題された、Ottoらの米国特許出願公開第2014/0180290号の教
示を参照されたい。これは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。ロボットアー
ム20は、術前計画に基づいて手術用ツール30を患者から一定の距離に移動させるよう
にプログラムされてもよいし、またはTCPを軌道上の最も近い点に移動させるようにし
てもよい。手術用ツール30が所望の姿勢になると、ロボットシステム10は、所望の軌
道上に回転軸Rを保つため、すなわち、ライン触覚オブジェクトLHとのアライメントを
取るために、患者の動きを追跡し、必要に応じてロボットアーム20を自律的に調整する
ことで、所望の軌道上に手術用ツール30の回転軸Rを効果的に保持することができる。
【0047】
ロボットシステム10が手術用ツール30を所望の軌道上に保持している間、ユーザは
、手術用ツール30を手動で操作して、ライン触覚オブジェクトLHに沿って椎体100
に向けてドリル42を動かし(またはドリルの運動を引き起こし)、パイロットホール1
02を穿孔することができる。受動型ロボットアーム20を使用する場合など、場合によ
っては、ユーザがライン触覚オブジェクトLH及び所望の軌道から外れる方法で手術用ツ
ール30を動かそうとしても、ロボットシステム10は、触覚フィードバックをユーザに
提供することにより、所望の軌道に沿って留まるように、ユーザによる手術用ツール30
の動きを制約する。ユーザは、手術用ツール30の制約のない動きのために、ロボットア
ーム20をフリーモードに戻したい場合、ユーザは、刺出点EPに達するまで、手術用ツ
ール30をライン触覚オブジェクトLHに沿って、患者から離れるように引き戻すことが
できる。
【0048】
次に、ユーザは、パイロットホール102を所望の深さまで穿孔する。穿孔速度は、ト
リガを介してユーザによって制御されることができ、または患者の解剖学的形態に対する
ドリル42の特定の位置に基づいて自動的に制御されることができる。例えば、ドリル4
2の回転速度は、椎体Vへの最初の穿孔中には高く(速く)設定されることができるが、
椎体Vへのさらなる穿孔中は遅くされることができ、そして最終的な深さへの最終穿孔中
はさらに遅く設定されることができる。また、制御システムは、ロボットコントローラ3
2と通信する1つ以上のセンサS(例えば、1つ以上の力センサ、力/トルクセンサ、ト
ルクセンサ、圧力センサ、光センサなど)を介したライン触覚によるガイド中に、接触/
接触力を監視することができる。有意な接触/接触力が検出されない場合、これは、手術
用ツール30が軟組織を通過していることを意味するため、制御システムは、手術用ツー
ル30のモータまたは他の動力源(例えば、RFエネルギー、超音波モータなど)を作動
させないようにする。骨との接触が検出される場合(例えば、光学的に、感知された力が
所定の閾値を上回る場合など)、制御システムは、モータまたは他の動力源を作動させる
ことができる。また、ユーザは、接触/接触力を受動的に感じて、スイッチをトリガして
動力源を作動させることができる。
【0049】
ユーザがパイロットホール102を所望の深さに到達させたとき、例えば、標的点TP
に達したとき、所望の軌道に沿ったユーザの動きを制約するために使用される仮想境界(
例えば、触覚オブジェクト)もまた、触覚フィードバックを介して示すことができる。ま
た、別個の仮想境界を使用して、所望の深さを設定することができる。他の場合には、ロ
ボットシステム10は、パイロットホール102を所望の深さまで自律的に穿孔すること
ができる。さらなる場合では、ロボットシステム10は、最初は自律的に穿孔することが
できるが、その後、最終的な穿孔を手動で行うことができ、また、その逆を行うこともで
きる。パイロットホール102が形成されると、ドライバー44を使用して椎弓根スクリ
ューPSを配置することができる。いくつかの実施形態では、パイロットホール102が
不要であることがあり、椎弓根スクリューPSは、ロボットシステム10によって配置さ
れるガイドワイヤ上に、またはいかなるガイダンスもなく、配置されることができる。自
己穿孔、セルフタッピングのボーンスクリューを用いる場合などでは、パイロットホール
が不要な場合がある。例えば、2009年12月29日に発行され、「Self-dri
lling bone screw」と題された、Stefan Authの米国特許第
7,637,929号の教示を参照されたい。これは参照によりその全体が本明細書に組
み込まれる。
【0050】
ナビゲーションシステム12を使用して各椎骨Vを別々に連続的に追跡し、ドリル42
の運動を追跡することの1つの利点は、椎弓根スクリューPSを脊髄103に近接して挿
入することができることであり、そのため、椎弓根スクリューPS及びそれらの対応する
パイロットホール102の配置は、脊髄103との相互作用または損傷を回避するように
正確にアライメント(位置決め)されなければならない。外科医が不適切な角度でパイロ
ットホール102の穿孔を行い、及び/または深すぎる穿孔を行うと、椎弓根スクリュー
PSまたはパイロットホール102を穿孔するために使用されるドリル42が脊髄103
を損傷する可能性がある。結果的に、ナビゲーションシステム12を使用して、患者の解
剖学的形態、具体的には術前画像及び/または術中画像内で輪郭を描かれるような解剖学
的形態に対するドリル42及び/またはドライバー44の姿勢を追跡することで、脊髄1
03を避けることができる。
【0051】
具体的には図7を参照すると、穿孔が完了すると、ドリル42が椎体100から取り外
され、コレット47を介して駆動系からドリル42が取り外され、ドライバー44が駆動
系(減速機48の有無を問わない)に結合される。椎弓根スクリューPSは、パイロット
ホール102の1つに配置するために、ドライバー44の遠位端部に取り付けられる。元
のライン触覚オブジェクトは、椎弓根スクリューPSを駆動するためにも使用されること
ができ、または新しい開始点、標的点、及び刺出点を含む新しいライン触覚オブジェクト
が、ドライバー44及び/または椎弓根スクリューPSを取り付けるときに作成されるこ
とができる。この場合、ロボットコントローラ32がハウジング45に連結される付属品
を識別することができるように、ドリル42及び/またはドライバー44は、RFIDタ
グまたは他の識別デバイスを含むことができる。ハウジング45は、タグを読み取って取
り付けられている付属品を判断するために、ロボットコントローラ32と通信する、対応
するRFIDリーダーなどを有することができる。次に、この情報に基づいて、コントロ
ーラは、新しいライン触覚オブジェクトを作成し、新しいライン触覚オブジェクトにアク
セスし、またはその他の方法により新しいライン触覚オブジェクトを決定することができ
る。同様に、ロボットコントローラ32が取り付けられる椎弓根スクリューPSのサイズ
/タイプを判断することもできるように、椎弓根スクリューPSにもRFIDタグを取り
付けることができ、ドライバー44が同様のリーダーを有することができる。したがって
、ライン触覚オブジェクトは、ドライバー44及び/または椎弓根スクリューPSに基づ
くものとすることができ、ロボットアーム20を正確に制御して、その特定の椎弓根スク
リューPSを所望の位置、例えば、患者の解剖学的形態に対する所望の向き及び深さに配
置することができる。
【0052】
さらに、RFIDタグか、またはビジョンカメラなどの他の検出デバイスかいずれかを
介した付属品の自動検出により、制御システムは、ロボットシステム10によって利用さ
れる任意の外科手術ソフトウェアを、ここではドライバー44が連結されているため、ド
ライバー44に関連する次の画面に進めることができ、ユーザのために異なるプロンプト
、指示などを与えることができる。音声認識、ジェスチャセンシング、またはその他の入
力デバイスを使用して、ソフトウェアを進めること、及び/または治療される次の椎骨1
00に変更すること、及び/または手術が行われている椎体100の(側)面を変更する
ことができる。これもまた、手術用ツール30の位置に基づくことができる。例えば、取
り付けられた付属品のTCPをユーザが特定の椎骨Vの一方の側に他方の側よりも近づけ
て手動で配置した場合、ソフトウェアは、椎骨Vの一方の側に対応するように自動的に進
むことができる。選択された椎骨V及び手術の側面は、ディスプレイ18によって視覚的
に、またはオーディオ入力/出力を介して確認されることができる。
【0053】
この場合も、ドリル42が制御されるのとほぼ同じ方法で、ロボットシステム10が手
術用ツール30を所望の軌道上に保持している間、ユーザは、手術用ツール30を手動で
操作して、ライン触覚オブジェクトLHに沿って椎体100に向けてドライバー44及び
椎弓根スクリューPSを動かして(またはこのドライバー及び椎弓根スクリューの運動を
引き起こして)、パイロットホール102内に椎弓根スクリューPSを挿入することがで
きる。受動型ロボットアーム20を使用する場合など、場合によっては、ロボットシステ
ム10は、手術用ツール30が所望の軌道にアライメントされたままの状態で所望の軌道
に沿って留まるように、手術用ツール30のためのユーザの動きを制約することによって
手術用ツール30の運動を制御する。これは、ユーザが所望の軌道から外れる方法で手術
用ツール30を動かそうとした場合に、ユーザに触覚フィードバックを提供することによ
って達成することができ、したがって、そのような場合でも、ロボットアーム20は、イ
ンプラントが所望の位置に配置されるように、患者の脊椎中へのインプラントの挿入を制
御することができる。次に、ユーザは、椎弓根スクリューPSをパイロットホール102
内の所望の位置まで、例えば、所望の向きで所望の深さまで駆動する。駆動速度は、トリ
ガを介してユーザによって制御され、または患者の解剖学的形態に対するドライバー44
及び/または椎弓根スクリューPSの特定の位置に基づいて自動的に制御されることがで
きる。例えば、ドライバー44の回転速度は、椎体V内への最初の挿入中には高く設定さ
れることができるが、椎体V内へのさらなる挿入中は遅くされることができ、そして最終
的な深さへの最終埋め込み中はさらに遅く設定されることができる。
【0054】
ユーザが椎弓根スクリューPSを所望の深さに到達させたとき、所望の軌道に沿ったユ
ーザの動きを制約するために使用される仮想境界(例えば、ライン触覚オブジェクト)を
触覚フィードバックを介して示すこともできる。また、別個の仮想境界を使用して、所望
の深さを設定することができる。他の場合には、ロボットシステム10は、椎弓根スクリ
ューPSを所望の深さまで自律的に挿入することができる。さらなる場合では、ロボット
システム10は、椎弓根スクリューPSを最初は初期深さまで自律的に駆動することがで
きるが、その後、最終的な深さまでの最終的な埋め込みを手動で行うことができ、また、
その逆を行うこともできる。一例では、椎弓根スクリューPSは、最終的な深さから所定
の距離(ナビゲーションシステム12によって決定されるような)内になるまでは自律的
に配置される。この時点で、ユーザは、ユーザが椎弓根スクリュー30の締め付けを感じ
ることができるような手術用ツール30を用いて、手動で椎弓根スクリューPSの埋め込
み完了させるか、または別のツール(電動または手動の)を使用して、椎弓根スクリュー
PSの配置を完了させる。ユーザは、制御システムにより、ディスプレイ18を介して、
椎弓根スクリューPSが最大の深さに達するまでに何回転残っているかを指令されること
ができ、及び/またはディスプレイ18は、椎弓根スクリューPSのさらなる駆動がどの
程度必要とされているかをユーザに容易に視覚化することができるように、椎弓根スクリ
ューPS、解剖学的形態、及び/または標的点をグラフィカルに表すことができる。
【0055】
いくつかの手術において、すべてのパイロットホールがまず穿孔され、その後、すべて
の椎弓根スクリューPSがそれらの所望の位置内に駆動されるときなど、パイロットホー
ルの穿孔とインプラントの駆動との間で、回転軸Rが所望の軌道から離れてしまうことが
ある。そのような場合、各椎弓根スクリューPSを配置する前に、ロボットシステム10
は、まず前述される方法で椎弓根スクリューPSごとに所望の軌道と手術用ツール30の
回転軸Rとのアライメントを自律的に取ることによって、所望の軌道に沿って回転軸Rを
配置するように手術用ツール30の運動を制御することができる。
【0056】
1つの代替案において、椎弓根スクリューPSは、ロボットシステム10の支援で挿入
され、ロボットコントローラ32は、回転軸Rを中心とした回転速度及び計画された軌道
に沿った前進速度が椎弓根スクリューのねじ山形状に比例するように挿入を制御する。例
えば、ねじ山形状は、椎弓根スクリューPSの長さ、ねじ山の直径、ねじ山の深さ、ヘッ
ドサイズ及びねじ山のピッチPのいずれか1つ以上を含むことができる。図14は、標的
(ターゲット)部位に隣接する椎弓根スクリューPSの開始位置を示す。この場合、線形
触覚オブジェクトLHによって指定される計画された軌道とともに、標的部位は椎骨Vと
して示されている。椎弓根スクリューPSと椎体100との間のねじ式のインタフェース
は、椎弓根スクリューが正しく挿入されない場合に、骨、スクリューPS、ドライバー4
4または手術用ツール30に損傷を与える危険性がある。骨は、おそらく最も弱い材料で
あるので、スクリューが正しく挿入されない場合、損傷を受ける可能性が最も高くなる。
不適切な挿入は、例えば、回転軸Rを中心とした回転が不十分な状態で椎弓根スクリュー
PSが軌道LHに沿って直線的に前進する場合に起こることがある。これが原因で、ねじ
山に隣接する骨材料がせん断され、骨の中に押し込まれるようになる可能性がある。別の
例において、不適切な挿入は、例えば、椎弓根スクリューPSが軌道LHに沿った前進が
不十分な状態で回転軸Rを中心に回転する場合に起こることがあり、これが原因で、ねじ
山に隣接する骨材料がせん断され、ねじ山に沿って押し戻されるようになり、事実上ホー
ルを開けすぎてしまう可能性がある。いずれの例においても、不適切な挿入の結果、椎弓
根スクリューPSを骨に固定する骨材料の強度及び量が減少する。
【0057】
図14は、この潜在的なリスクに対処するための位置制御を使用する挿入のため、椎体
100に隣接する開始点Doにある椎弓根スクリューPSを示す。スクリューを挿入する
ための位置制御は、手術全体を通して適切な深さ位置及び角度または回転位置が維持され
ることを確実にする。上記の実施形態に示されるように、椎体100にパイロットホール
を形成してもよいし、またはパイロットホールを必要としないように自己穿孔及びセルフ
タッピングのスクリューを用いた手術を行ってもよい。椎弓根スクリューPSの開始点D
oは、椎体100に隣接しており、すなわち、スクリューのどの部分も椎体100に貫入
する前の状態である。代替案では、開始点Doは、手術全体を通して適切な位置制御を確
実にするために、安全マージンとして椎体100から一定の距離だけ離隔されることがで
きる。挿入の深さDは、軌道LHに沿って進み、椎体100内への椎弓根スクリューPS
の挿入を完了するために計画された深さとしての最終的な深さDfに至る。
【0058】
ロボットコントローラ32は、回転速度及び軌道LHに沿った前進速度が椎弓根スクリ
ューPSのねじ山のピッチPに比例するように、椎弓根スクリューPSの挿入を制御する
ように構成される。椎弓根スクリューPSは既知の幾何学的形状を有し、ナビゲーション
システム12内に仮想で提示される。ねじ山のピッチPは、単位長さあたりのねじ山の数
として定義される。特定の例では、図14に示される椎弓根スクリューは、1インチあた
り12個のねじ山のピッチを有することができる。他の例示的な椎弓根スクリューPSは
、1インチあたり8、10、14、16個または他の数のねじ山を有することができる。
ロボットアーム20と椎弓根スクリューPSとの間に定義された関係と、ロボットシステ
ム10のメモリに記憶される椎弓根スクリューPSの既知の形状とを有することで、ロボ
ットコントローラ32は、特定のねじ山のピッチを有する椎弓根スクリューを挿入するた
めに適切な回転速度及び前進速度に確実に確保するように構成される。
【0059】
椎弓根スクリューPSのねじ山形状は、術前または術中にロボットシステム10のメモ
リに記憶されることができる。一例では、椎弓根スクリューPSは、手術計画の一部分と
して選択され、椎弓根スクリューPSの対応するねじ山形状は、椎弓根スクリューPSに
関連付けられ、計画に入力される。術中の手術のために計画がロードされると、ロボット
システム10は、即時アクセスのために、既知のねじ山形状をメモリに記憶させる。別の
例では、オペレータは、異なる椎弓根スクリューPSを手動で選択することができ、また
はロボットシステム10の操作に関連するGUIを使用してねじ山形状を手動で入力する
ことができる。入力されたねじ山形状は、メモリに記憶されるデータベースから取得され
ることができ、またはオペレータが選択された椎弓根スクリューPSに関連するオフライ
ン仕様からそのような情報を取得することから導出されることができる。これらの例のい
ずれかでは、GUIを使用してオペレータが入力した後に、ねじ山形状をメモリに記憶す
ることができ、その後、ロボットシステム10は、入力されたねじ山形状を用いて本明細
書に記載の制御技法を実行することができる。さらに別の例では、ロボットシステム10
に直接接続され、または無線で接続される測定ツールを利用して、任意の意図された椎弓
根スクリューPSをスキャンまたは測定し、ねじ山形状を抽出し、測定されたねじ山形状
をロボットシステム10のメモリに伝送することができる。
【0060】
椎弓根スクリューのねじ山のピッチ、角度位置または回転位置と、挿入深さまたは軌道
に沿った前進との間の関係は、式[θ=D*(ピッチ/2π)]によって決定され、式中
、θは角度位置であり、Dは単位長さでの挿入深さであり、ピッチは椎弓根スクリューP
Sの単位長さあたりのねじ山数である。ロボットコントローラ32は、この関係を使用し
て、椎弓根スクリューの挿入を制御する。例えば、時間について1階微分すると、角度位
置の変化率、つまり回転速度δθ/δtは、挿入深さの変化率、つまり前進速度δD/δ
tにピッチを乗算し、2πで除算したものに等しい。これは、次のように表すことができ
る。δθ/δt=δD/δt*(ピッチ/2π)(式1)
【0061】
上記のように、ロボットアームは、能動方式で動作することができ、ユーザが力を手術
用ツールに加えると、この力を力/トルクセンサが測定する。ロボットアームは、力/ト
ルクセンサからの測定値に基づいて、ユーザの所望の運動をエミュレートする。ロボット
コントローラ32は、加えられた力の方向に、そして加えられた力の大きさに比例したロ
ボットアーム20の変位を命令するように構成されることができる。さらに、ロボットコ
ントローラ32は、ねじ山のピッチに対する椎弓根スクリューPSの回転速度と前進速度
との間の比例関係を維持するように構成される。
【0062】
1つの代替案では、図15に示されるように、インプラントを配置する方法が提供され
る。図15は、スクリューを骨の中に配置するなど、インプラントを所望の位置に配置す
るための外科手術で実行されることができるサンプルステップのフローチャートを示す。
ステップ400では、最初にインプラントを受容するように解剖学的形態を形成する。こ
のような形成は、(1)患者に切開を形成すること(図13も参照)、(2)開創器で組
織を開創すること、(3)解剖学的形態内にパイロットホールを穿孔すること、(4)解
剖学的形態内に雌ねじを切ることなど、いくつかのステップを含むことができる。すべて
の手術において、すべての形成ステップを実行する必要はない。例えば、自己穿孔、セル
フタッピングのスクリューが用いられている場合、パイロットホールを穿孔し、または雌
ねじを切る別個のステップは必要とされない。
【0063】
図14のように、手術計画に従って、回転軸Rが計画された軌道LHにアライメントさ
れていない場合、または他の理由で回転軸Rが所望の軌道から離れた場合、ステップ40
2では、回転軸Rのアライメントを取る(位置決めを行う)。具体的には、ステップ40
2において、ロボットシステム10は、手術用ツール30の運動を制御して回転軸Rを所
望の軌道に沿って配置する。これは、ロボットシステム10が手術用ツール30の自律運
動を引き起こし、回転軸Rを所望の軌道に沿って配置することを含むことができる。ある
いは、ロボットシステム10は、回転軸Rが計画された軌道LHに沿って配置されるまで
、ユーザが手動モードで力/トルクを加えることで手術用ツール30を動かすことを可能
にしてもよい。ロボットシステム10は、適切なアライメントを示すフィードバック(視
覚、可聴、及び/または触覚)をユーザに生成することができる。いくつかの例において
、誘引性触覚は、ツールの位置が誘引性触覚によって定義される閾値距離まで軌道LHに
近くになるように、ツール30を計画された軌道LHに向かって引き寄せるために利用さ
れることができる。
【0064】
回転軸Rが所望の軌道上に配置されると、ステップ404において、ロボットシステム
10は、回転軸Rを所望の軌道に沿って維持するように動作する。これは、手術用ツール
30の運動を、自律的であろうと手動であろうと制約することを含むことができるため、
手術用ツール30は、インプラントが所望の位置に配置されるまで、手術全体を通して所
望の軌道とのアライメントが取られたままである。
【0065】
患者の椎骨V内へのインプラントの挿入は、インプラントが所望の位置に配置されるよ
うに、ステップ406~410で行われる。ステップ406及び408において、ロボッ
トシステム10は、手術用ツール30の自律運動を引き起こし、計画された軌道に沿った
直線的なツールの自律前進を制御するのと同時に、回転軸Rを中心とした手術用ツールの
自律回転を制御する。前進及び回転の自律制御は、上述の式1によって定義される、ねじ
山のピッチに関連している。ねじ山のピッチによって決定される自律制御は、椎弓根スク
リューの適切な挿入を確実にし、周囲の骨組織への損傷を引き起こさないようにする。
【0066】
自律制御は、ステップ410の完了まで継続し、ロボットシステム10は、インプラン
トを所望の位置に、すなわち、手術計画に従った最終的な挿入深さに配置する。
【0067】
ステップ400~410は、複数の代替案においてはユーザによって命令されることが
できる。第一例では、ロボットシステム10は、完全な自律性で実行するように構成され
ることができる。すなわち、ユーザがロボットシステム10に操作を実行するように命令
すると、ロボットシステム10は、操作が完了するまで、さらなるユーザ入力なしで操作
を実行する。代替の実施形態では、ユーザは、操作の自律的な実行を開始させることに続
き、ボタンを押し続けること、フットスイッチを押し続けることまたは他の連続的な入力
制御などによって継続的な入力を提供し、入力が停止した場合、例えば、ボタンまたはフ
ットスイッチが解放された場合に、ロボットシステム10が操作の実行を一時停止するよ
うにしてもよい。自律制御と協働して、ユーザは、操作を実行する速度を調節することが
できる。ボタンやフットスイッチに加えて、ユーザが複数の離散した速度に関するステッ
プワイズ機能でロボットの速度の増加または減少を命令することができるように、追加の
制御(装置)を設けることができる。追加の速度制御(装置)は、ボタン、セレクタ、ダ
イヤルまたは他の適切な制御のセットを含むことができる。
【0068】
さらなる実施形態では、この方法は、ユーザが手術用ツールに力を加え、この力を力/
トルクセンサが測定する能動方式で、ロボットシステム10を使用することを含む。ロボ
ットシステムは、力/トルクセンサからの測定値に基づいて、ユーザの所望のロボットア
ームの運動をエミュレートする。この実施形態では、ユーザは、ロボットシステムを自律
モードに切り替え、インプラントを挿入するために自律制御操作の実行を命令することが
できる。ロボットシステム10は、ユーザによって加えられた入力を示す信号を力/トル
クセンサから受信し、入力の力の大きさに比例した速度で自律制御を実行する。ロボット
システム10は、ユーザが制御(装置)から手を離した場合またはその他の方法によって
力/トルクセンサに力が入力されない場合、操作の実行を一時停止するようにさらに構成
されることができる。
【0069】
さらなる実施形態では、この方法は、図4図6に示される手術用ツール30を含み、
ユーザの入力を示す信号をロボットコントローラ32に通信することができるトリガ49
を有するロボットシステム10を使用することを含む。ロボットシステム10は、トリガ
49の押し込み量(操作量)に応じて、インプラントの挿入中に、回転軸Rを中心とした
回転速度か、または軌道に沿った前進かのいずれか一方をユーザが制御するようなモード
で動作するように構成されることができる。ステップ406~410では、ユーザは、回
転速度または前進速度を制御するために、例えば、トリガ49を可変的に押し込むことに
よって入力を提供する。ロボットシステムは、前進速度または回転速度の一方を制御する
ことによって入力に応答し、上述の式1に定義された関係に従って、ねじ山のピッチに比
例するインプラントの設置の両方の態様を維持する。
【0070】
ステップ410の後、インプラントが所望の位置に配置された状態で、ステップ412
では、ツールをインプラントから引き抜く。インプラントを骨の中に前進させる場合と同
様に、ユーザは、椎骨Vから離れる方向に手術用ツールに力を入力して、手術用ツールの
引き抜きを命令することができる。あるいは、ロボットシステム10は、インプラントが
配置されると、ユーザからのさらなる入力なしに、手術用ツールを自律的に引き抜くこと
ができる。ステップ400~412で説明されているプロセスは、追加のインプラントを
配置するために新たに実行され、そしてすべてのインプラントが手術計画に従って配置さ
れるまで継続されることができる。
【0071】
部分的椎間関節切除術は、手術用ツール30が椎弓根スクリューPSのヘッドを最終的
に受容するための滑らかな骨表面を提供しながら実施されることができる。切除量は、ユ
ーザの計画に基づいて、すなわち、3Dモデル中のヘッドの位置を決定することによって
定義されることができる。ヘッド形状に対応するバーまたは予め形成されたリーマ70を
使用して、材料を除去することができる。場合によっては、ドリル42は、別個のツール
を回避するために、図7の隠線に示されるように、リーマをその中に組み込むことができ
、その結果、ドリル42は、パイロットホールを形成するためのより小さな輪郭の穿孔シ
ャフトを有し、及びより近位に椎弓根スクリューPSのヘッド用のシート72を形成する
ためのリーマ70が配置され、そのため、パイロットホール102及びシート72の少な
くとも一部分を同時に形成することができる。示される実施形態では、ドリル42は、近
位端部及び遠位端部を有する穿孔シャフトと、遠位端部にあるドリルチップとを有する。
リーマ70は、ドリル42が標的椎体内の所望の深さまで挿入されると、リーマ70がフ
ァセットの近くに位置するように、ドリル先端から近位に間隔をあけて配置される。任意
の適切なドリル及び/またはリーマの切断機能を用いて、ホールを形成することができ、
例えば、インプラントを受容するために患者の脊椎にパイロットホール及びシートを形成
することができる。
【0072】
ロボットコントローラ32を使用して、ドライバー44での椎弓根スクリューPSの駆
動に関連するトルクを測定することにより、椎弓根スクリューPSの挿入を制御すること
ができる。より具体的には、椎弓根スクリューPSを椎体100に挿入するために必要な
トルクは、椎体100に椎弓根スクリューPSが深く配置されるほど増加し、パイロット
ホール102の端部に達するとさらに増加する。結果として、手術用ツール30内のモー
タのトルク出力は、椎弓根スクリューPSが所望の深さに到達したかどうか、及び/また
はパイロットホール102の端部に到達したかどうかを示すことができる。ロボットコン
トローラ32は、このトルクを監視し(例えば、トルクセンサを介して、モータの消費電
流などを監視することなどによって)、それに応じてドライバー44の回転を制御する。
例えば、閾値トルクに達すると、ドライバー44を停止させることができる。
【0073】
図9A及び9Bを参照すると、制御システムは、トルク出力、例えば、電流または他の
測定された力のパラメータを使用して、挿入中のドリル42または椎弓根スクリューPS
の位置を確認することが可能であってもよい。これは、追跡デバイス16が椎骨100に
対して不注意に動く場合に特に有用であることができ、これは他の方法で検出されず、穿
孔またはスクリューの駆動の際にエラーをもたらす可能性がある。例えば、椎骨100を
撮影した術前及び/または術中画像を使用して、椎骨100についての骨塩密度(BMD
)の体積マップを生成することができる。ロボット手術のためのそのようなBMDマップ
の生成及び利用は、2016年6月28日に出願されて、「Robotic Syste
ms And Methods For Controlling A Tool Re
moving Material From A Workpiece」と題された、M
octezuma de la Barreraらの米国特許出願公開第2017/00
00572号に示され、記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。穿
孔中またはスクリュー駆動中に、制御システムは、BMDマップを評価して、3Dモデル
及びユーザの計画に従って、骨に対するドリル42/椎弓根スクリューPSの接触点(す
なわち、ドリル/椎弓根スクリューPSが計画に従っている場合には現在の接触点)にお
けるBMDを予測することができる。次に、制御システムは、手術用ツール30の電流若
しくはトルクまたは相互作用力の対応する値を予測し(例えば、力/トルクセンサを使用
して)、その値を測定された実際の値と比較して、閾値を超える不一致が見つかったかど
うかを判定することができる。不一致が見つかった場合、その不一致は、手術を停止した
り、計画を更新したりするために使用することができる。図9Bは、椎弓根スクリューP
Sの挿入の電流、トルク及び力のプロファイルを示す。事実上、スクリュー駆動中、ロボ
ットシステム10は、スクリューの挿入の電流、トルク及び力のプロファイルを監視して
、椎弓根スクリューが計画された軌道を追従することを示すことができる。また、挿入ト
ルクのプロファイルは、骨の骨粗鬆症の程度を示すために使用されることができる。
【0074】
また、超音波トランスデューサ(図示せず)を患者の皮膚の裏側に取り付けて、患者の
解剖学的形態及び外科手術の進行のリアルタイム画像を生成することができる。術中画像
を使用して、椎弓根スクリューPSが計画された所望の軌道を追従しているかどうかを判
断したり、ドリル42または椎弓根スクリューPSが神経や内側または外側の皮質境界を
含むいずれかの重要な構造に近づいているかどうかを判断したりすることができる。
【0075】
図10Aを参照すると、手術用ツール30の付属品の1つは、メス、電気メス、鋭利な
チップを有する他のツールなどの皮膚切開ツール80を含むことができる。皮膚切開ツー
ル80は、ドリル42及び/またはドライバー44と同様に取り付けられてもよく、ある
いは別個のエンドエフェクタの一部分であって、カップリング40に取り付ける架台(マ
ウント)81に連結されてもよく、皮膚切開Iは、前述されているものと同様の方法で、
触覚ガイダンス、すなわち、仮想境界(例えば、触覚オブジェクト)を用いて行われるこ
とができ、すなわち、切開Iを作成するときに仮想境界を用いて、患者の皮膚における所
望の切開に関してユーザの運動(動き)を制約することができる。一例では、デジタルプ
ローブ73は、所望の切開位置に接触し、関連した境界/触覚オブジェクトを作成するた
めに使用されることができる。別の例では、デジタル化することによって、及び/または
術前の方法によって、リング74の姿勢に基づいて3D皮膚モデルを決定することができ
、制御システムが椎弓根スクリューの配置の所望の計画を使用し、この皮膚モデルに基づ
いて切開Iの位置を決定することができる。
【0076】
図10Bを参照すると、デジタルプローブ73と同様の他のタイプのポインタも切開の
所望の位置を特定するために使用することができ、他のタイプのポインタは、皮膚切開ツ
ール80、エンドエフェクタまたは他の構成要素に取り付けられて、切開の位置を示すた
めに患者の皮膚に可視光LTを投影することができるレーザポインタLPなどである。そ
のようなレーザポインタは、最初に所望の軌道と皮膚切開ツール80の回転軸Rとのアラ
イメントを取り、その後、レーザポインタLPを作動させることにより、所望の軌道に沿
って光を投射するために使用されることができる。皮膚切開ツール80の代替形態は、図
10Bに示され、ロボットアームによって適所に保持されるツールガイドTGを介して配
置される。スキントラッカー(例えば、リング74)を介して達成される患者の皮膚の追
跡により、ナビゲーションシステム12もまた、皮膚モデル(例えば、表面モデル、点群
など)及び皮膚モデルと所望の軌道の交点に基づいて切開Iの所望の位置を近似的に決定
することができ、これにより、ユーザは、触覚フィードバックによって患者の皮膚におけ
る所望の位置で所望の切開を行うことができる。
【0077】
触覚オブジェクトは、切開の作成をガイドする触覚フィードバックを確立するためにさ
まざまな方法で定義されることができる(例えば、図10Aに示されるV字型触覚オブジ
ェクトVHを参照)。触覚オブジェクトは、皮膚切開ツールの幅、皮膚切開の所望の長さ
及び/または切開の所望の深さに基づいて定義されることができる。また、所望の切開の
深さは、最大切開深さの範囲内でユーザによって制御されることができ、最大切開深さは
、触覚オブジェクトの一部分としてプログラムされた最大切開深さか、または、皮膚切開
ツール80がエンドエフェクタのツールガイドTGにおけるガイド開口部(図示せず)を
介して所定の点を越えてスライドするのを防止するために使用されることができる機械的
停止のいずれかによって決定されることができる。
【0078】
図11を参照すると、手術用ツール30の付属品の1つは、例えば、Jamshidi
針、スタイレットを備えた別のアクセスカニューレなどのワイヤ挿入ツール90を含むこ
とができる。ワイヤ挿入ツール90は、皮膚切開ツール80と同様に取り付けられるか、
または別個のエンドエフェクタの一部分であり、カップリング40に取り付ける架台(マ
ウント)91に固定的に連結されることができる。ワイヤ挿入ツール90と架台91との
間に相対的な動きが許容されない場合、すなわち、それらが互いに固定されている場合、
ワイヤ挿入ツール90は、ライン触覚オブジェクトLHによってガイドされて、皮膚切開
Iに入り、骨、例えば椎骨上の標的点TPに達することができる。架台91が開口部93
を備えたツールガイドTGを含む場合など、ワイヤ挿入ツール90と架台91との間の相
対的な軸方向のスライド運動が許容される場合、ツールガイドTGは、所望の向きに位置
決めされることができ、ワイヤ挿入ツール90は、ツールガイドTGの開口部93に沿っ
て挿入されることができる。標的点TPまでの相対距離、ワイヤ挿入ツール90の長さ及
びツールガイド位置に応じて、ワイヤ挿入ツール90は、ドリル42及び/またはドライ
バー44について前述されるものと同じ方法で、ライン触覚オブジェクトLHを介してガ
イドされることができる。
【0079】
図12は、スクリューを骨の中に配置するなど、インプラントを所望の位置に配置する
ための外科手術で実行されることができるサンプルステップのフローチャートを示す。ス
テップ200では、最初にインプラントを受容するように解剖学的形態を形成する。この
ような形成は、(1)患者に切開を形成すること(図13も参照)、(2)組織開創器で
組織を開創すること、(3)開創された組織内にカニューレを配置すること、(4)解剖
学的形態内にパイロットホールを穿孔すること、(5)解剖学的形態内に雌ねじを切るこ
となど、いくつかのステップを含むことができる。
【0080】
回転軸Rが所望の軌道にアライメントされていない場合、または他の理由で回転軸Rが
所望の軌道から離れた場合、ステップ202では、回転軸Rのアライメントを取る。具体
的には、ステップ202において、ロボットシステム10は、回転軸Rを所望の軌道に沿
って配置するように手術用ツール30の運動を制御する。これは、回転軸Rを所望の軌道
に沿って配置するように手術用ツール30の自律運動を引き起こすロボットシステム10
を含むことができる。
【0081】
回転軸Rが所望の軌道上に配置されると、ステップ204において、ロボットシステム
10は、回転軸Rを所望の軌道に沿って維持するように動作する。これは、ユーザが手術
用ツール30を脊椎に向けて手動で動かしている間、またはユーザが脊椎に向けた手術用
ツール30の運動を手動で引き起こしている間、手術用ツール30が所望の軌道にアライ
メントされたままであるように、手術用ツール30の運動を制約することによって、手術
用ツール30の手動操作を制御することを含むことができる。
【0082】
患者の脊椎内へのインプラントの挿入は、ステップ206及び208で行われ、インプ
ラントが所望の位置に配置する。ステップ206において、ロボットシステム10は、イ
ンプラントが所望の位置から所定の距離内に入るまで、手術用ツール30の自律運動を引
き起こし、インプラントを患者の脊椎内に配置する。その後、ステップ208において、
ユーザは、手術用ツール30を手動操作し、ロボットシステム10は、インプラントが所
望の位置に配置されるまで、手術用ツール30のそのような手動操作を制御する。ロボッ
トシステム10は、例えば、インプラントが所望の位置に到達したことを示す触覚フィー
ドバックを、ロボットコントローラ32を用いてユーザに生成することによって、そのよ
うな手動操作を制御することができる。インプラントが所望の位置に配置されると、ステ
ップ210において、手術用ツール30は解剖学的形態から引き抜かれ、すべてのインプ
ラントが配置されるまで手術は進められる。
【0083】
図13は、患者の皮膚に切開Iを形成するために実行されるサンプルステップのフロー
チャートを示す。ステップ300では、まず、スキントラッカー(例えば、リング74)
が患者に取り付けられている状態で、ポインタを用いて切開の所望の位置を識別する。一
例では、ポインタは、デジタルプローブ73を含み、このデジタルプローブ73は、所望
の切開位置に接触して切開Iの所望の位置を識別し、関連した境界/触覚オブジェクトを
作成するために使用されることができる。別の例では、レーザポインタLPを使用して、
切開の所望の位置を識別することができる。
【0084】
ステップ302では、切開Iの所望の位置が識別されると、皮膚(及び切開Iのための
皮膚上の所望の位置)は、前述の方法でナビゲーションシステム12を用いて追跡される
ことができる。
【0085】
皮膚及び切開Iのための所望の位置が追跡されているため、ロボットシステム10は、
ステップ304において、切開のために作成された触覚オブジェクトに関して皮膚切開ツ
ール80の運動を制御することができる。触覚オブジェクトは、患者の皮膚におけるの所
望の位置で切開が行われるように、標的座標系で定義される。一例では、ロボットシステ
ム10は、皮膚切開ツール80の手動操作を制御することによって、触覚オブジェクトに
対する皮膚切開ツール80の運動を制御することができる。これは、ユーザが皮膚切開ツ
ール80を手動で動かしている間、またはユーザが皮膚切開ツール80の運動を手動で引
き起こしている間、皮膚切開ツール80が所望の位置で切開Iを行うように、触覚オブジ
ェクトで定義される仮想境界に対して皮膚切開ツール80の運動を制約することによって
行われることができる。ロボットシステム10は、皮膚切開ツール80が切開Iの所望の
深さに達したこと、またはそうでなければ皮膚切開ツール80が切開Iについて所望の限
界値に達したことを示す触覚フィードバックをユーザに生成することによって、触覚オブ
ジェクトに対する皮膚切開ツール80の運動を制約することができる。切開Iが所望の位
置で行われると、皮膚切開ツール80は、ステップ306において、解剖学的形態から引
き抜かれ、すべての切開が行われるまで手術は進められる。
【0086】
本明細書に記載のシステム及び方法は、椎弓根スクリューPS、他のスクリュー、ファ
スナまたは他のインプラントを患者に配置するために用いられることができることを理解
されたい。したがって、椎弓根スクリューPSが一例として全体を通して言及されている
としても、本明細書に記載されているものと同じシステム及び方法を利用して、患者の任
意の解剖学的形態を治療することができ、及び/または任意のインプラントを患者に、例
えば、股関節、膝、大腿骨、脛骨、顔、肩、脊椎などに配置することができる。例えば、
ロボットアーム20も使用して、脊椎インプラント用のケージを配置すること、ロッドを
配置することまたは他の構成要素を配置することができ、ロボットアームを椎間板切除術
または他の手術に使用することができる。他の手術のために、異なるエンドエフェクタも
ロボットアーム30に取り付けることができる。場合によっては、エンドエフェクタは、
関節アームも含み、この関節アームは、インプラントの挿入、すなわち、インプラントを
所望の姿勢で配置することを容易にする。エンドエフェクタの関節アームは、インプラン
トを配置するために同じ方法で制御されるロボットアーム20の単なる縮小版であっても
よいし、またはインプラントを位置決めするように制御される別の機構であってもよい。
ナビゲーションシステム12は、光学ベースのトラッカーを備えた光学ナビゲーションシ
ステムを含むことができるが、超音波を介して物体を追跡する超音波ナビゲーションシス
テム、RFエネルギーを介して物体を追跡する無線周波数ナビゲーションシステム、及び
/または電磁信号を介して物体を追跡する電磁ナビゲーションシステムなどの他のモダリ
ティを追加的に、または代替的に使用することができる。他のタイプのナビゲーションシ
ステムの使用もまた考えられる。場合によっては、本明細書に記載のモデルが三角形メッ
シュ、ボクセルを使用する体積モデルまたは他のタイプの3D及び/または2Dモデルを
含むことができることも理解されたい。
【0087】
以上では、いくつかの実施形態について説明してきた。しかし、本明細書で論じられて
いる実施形態は、網羅的であることや本発明をいずれかの特定の形態に限定することを意
図するものではない。使用されている用語は、限定ではなく、説明の言葉という性質のも
のであることを意図するものである。上記の教示に照らして多くの修正形態及び変形形態
が可能であり、本発明は、具体的に説明されているもの以外のものでも実施されることが
できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12
図13
図14
図15
【手続補正書】
【提出日】2024-07-08
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術システムであって、
ロボットマニピュレータとナビゲーションシステムと1つ以上のコントローラと含み、
前記ロボットマニピュレータは、
力センサと、
前記ロボットマニピュレータに結合され、スクリューを保持して回転軸を中心に前記スクリューを回転させるように構成された手術用ツールであって、前記スクリューが既知のねじ山形状を有する、手術用ツールと、
を含み、
前記ナビゲーションシステムは、標的の解剖学的形態の位置及び向きを追跡するように構成され、
前記1つ以上のコントローラは、前記ロボットマニピュレータ及び前記ナビゲーションシステムに結合され、前記既知のねじ山形状を示す値を記憶するメモリを含み、
前記1つ以上のコントローラは、
追跡された前記標的の解剖学的形態の位置及び向きに基づいて前記ロボットマニピュレータを制御して前記手術用ツールの前記回転軸を前記標的の解剖学的形態に対して計画された軌道上に維持することと、
前記力センサにより、ユーザによって加えられた力を検出することと、
前記手術用ツールの回転速度を制御して前記回転軸を中心に前記スクリューを回転させ、及び前記手術用ツールの前進速度を制御して前記計画された軌道に沿って前記スクリューを直線的に前進させることであって、前記回転速度及び前記前進速度が前記ユーザによって加えられた力に基づくとともに前記メモリに記憶された前記既知のねじ山形状を示す値に比例することと、
を行うように構成されている、
手術システム。
【請求項2】
前記計画された軌道は、線形触覚オブジェクトによって定義される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項3】
前記1つ以上のコントローラは、
前記手術用ツールの回転軸を前記線形触覚オブジェクト上に制約することと、
前記線形触覚オブジェクトから外れる方法で前記手術用ツールの回転軸を動かそうとすることに応答して触覚フィードバックを生成することと、
を行うように構成されることによって、前記手術用ツールの前記回転軸を前記計画された軌道上に維持する、請求項2に記載の手術システム。
【請求項4】
前記1つ以上のコントローラは、前記標的の解剖学的形態で前記スクリューが計画された挿入深さに到達したことに応答して触覚フィードバックを生成するように前記ロボットマニピュレータを制御するように構成されている、請求項2に記載の手術システム。
【請求項5】
前記1つ以上のコントローラは、前記力センサにより、前記ユーザによって力が加えられなくなったことを検出し、これに応答して、前記計画された軌道に沿って前記スクリューを直線的に前進させることを一時停止するように構成されている、請求項1に記載の手術システム。
【請求項6】
前記手術用ツールは、前記スクリューを前記標的の解剖学的形態内に駆動するためにトルクを加え、
トルクセンサは、前記手術用ツールによって加えられたトルクを検出するように構成され、
前記1つ以上のコントローラは、前記トルクがトルク閾値に達するか、または前記トルク閾値を上回ったことを検出することに応答して、前記手術用ツールが前記スクリューを前記標的の解剖学的形態内に駆動することを停止するように構成されている、
請求項1に記載の手術システム。
【請求項7】
前記スクリューと前記標的の解剖学的形態との接触力を検出するように構成されたセンサをさらに含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項8】
前記1つ以上のコントローラは、前記回転軸を前記計画された軌道に沿って配置するために前記ロボットマニピュレータを制御して前記手術用ツールを自律的に移動させるように構成されている、請求項1に記載の手術システム。
【請求項9】
前記1つ以上のコントローラは、1つ以上のセンサを利用して前記スクリューの挿入プロファイルを特定するように構成され、前記挿入プロファイルは、前記スクリューの挿入電流、挿入トルク及び/又は挿入力のうちの1つ以上に関連する、請求項1に記載の手術システム。
【請求項10】
前記1つ以上のコントローラは、前記スクリューの挿入プロファイルを利用して前記スクリューが前記計画された軌道に追従しているか否かを判定するように構成されている、請求項9に記載の手術システム。
【請求項11】
前記ナビゲーションシステムは、ナビゲーションコントローラ、ディスプレイ、及び前記標的の解剖学的形態に結合されたトラッカーをさらに含み、
前記ナビゲーションコントローラは、前記ディスプレイに、前記スクリューと前記標的の解剖学的形態との間の相対的な空間的な関係を示すグラフィカルな情報を出力するように構成されている、
請求項1に記載の手術システム。
【請求項12】
前記手術用ツールは、スクリュードライバーを含む、請求項1に記載の手術システム。
【請求項13】
前記力センサは、前記手術用ツールに配置される、請求項1に記載の手術システム。
【請求項14】
前記回転速度及び前記前進速度は、関係[δθ/δt=δD/δt*P/2π]に従って前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数に比例し、
式中、δθ/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、Pは前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数である、
請求項1に記載の手術用システム。
【請求項15】
手術システムの作動方法であって、
前記手術システムは、
力センサと、スクリューを保持して回転軸を中心に前記スクリューを回転させるように構成された手術用ツールであって、前記スクリューが既知のねじ山形状を有する手術用ツールと、を含むロボットマニピュレータと、
標的の解剖学的形態の位置及び向きを追跡するように構成されたナビゲーションシステムと、
前記ロボットマニピュレータ及び前記ナビゲーションシステムに結合され、前記既知のねじ山形状を示す値を記憶するメモリを含む1つ以上のコントローラと、
を含み、
前記1つ以上のコントローラが、追跡された前記標的の解剖学的形態の位置及び向きに基づいて前記ロボットマニピュレータを制御して前記手術用ツールの前記回転軸を前記標的の解剖学的形態に対して計画された軌道上に維持すること、
前記1つ以上のコントローラが、前記力センサにより、ユーザによって加えられた力を検出することと、
前記1つ以上のコントローラが、前記手術用ツールの回転速度を制御して前記回転軸を中心に前記スクリューを回転させ、及び前記手術用ツールの前進速度を制御して前記計画された軌道に沿って前記スクリューを直線的に前進させることであって、前記回転速度及び前記前進速度が前記ユーザによって加えられた力に基づくとともに前記メモリに記憶された前記既知のねじ山形状を示す値に比例することと、
を含む、方法。
【請求項16】
前記計画された軌道は、線形触覚オブジェクトによって定義され、
前記1つ以上のコントローラが、
前記手術用ツールの回転軸を前記線形触覚オブジェクト上に制約することと、
前記線形触覚オブジェクトから外れる方法で前記手術用ツールの回転軸を動かそうとすることに応答して触覚フィードバックを生成することと、
を行うことによって、前記手術用ツールの回転軸を前記計画された軌道上に維持することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のコントローラが、前記標的の解剖学的形態で前記スクリューが計画された挿入深さに到達したことに応答して触覚フィードバックを生成するように前記ロボットマニピュレータを制御することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記手術用ツールは、前記スクリューを前記標的の解剖学的形態内に駆動するためにトルクを加え、
前記1つ以上コントローラが、トルクセンサにより、前記外科用ツールによって加えられたトルクを検出することと、
前記1つ以上のコントローラが、前記トルクがトルク閾値に達するか、または前記トルク閾値を上回ったことを検出することに応答して、前記手術用ツールが前記スクリューを前記標的の解剖学的形態内に駆動することを停止することと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記1つ以上のコントローラが、センサを用いて、前記スクリューと前記標的の解剖学的形態との接触力を検出することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記1つ以上のコントローラが、前記回転軸を前記計画された軌道に沿って配置するために前記ロボットマニピュレータを制御して前記手術用ツールを自律的に移動させることを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項21】
前記1つ以上のコントローラが、1つ以上のセンサを用いて、前記スクリューの挿入プロファイルを特定することであって、前記挿入プロファイルは、前記スクリューの挿入電流、挿入トルク及び/又は挿入力のうちの1つ以上に関連することと、
前記1つ以上のコントローラが、前記スクリューの挿入プロファイルを利用して前記スクリューが前記計画された軌道に追従しているか否かを判定することと、
を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項22】
前記1つ以上のコントローラが、前記回転速度及び前記前進速度を決定することであって、前記回転速度及び前記先進速度は、関係[δθ/δt=δD/δt*P/2π]に従って前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数に比例し、式中、δθ/δtは前記回転速度であり、δD/δtは前記前進速度であり、Pは前記スクリューの単位長さあたりのねじ山の数であること、を含む、請求項15に記載の方法。