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特開2024-119988固相微量抽出デバイス、保管装置、および操作装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119988
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】固相微量抽出デバイス、保管装置、および操作装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/10 20060101AFI20240827BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N1/10 C
G01N1/00 101K
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024097172
(22)【出願日】2024-06-17
(62)【分割の表示】P 2022510916の分割
【原出願日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/889,271
(32)【優先日】2019-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】501351357
【氏名又は名称】レステック・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100163061
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】ゴメス-リオス,ジャーマン・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ケーン,トーマス・イー
(57)【要約】      (修正有)
【課題】個別の固相微量抽出デバイスを保管装置壁にまたは互いに接触させないのを保証するように構成され得る。
【解決手段】固相微量抽出デバイス保管装置400が、固相微量抽出デバイス300の時計構造部310との整合性を有するように径方向に配置される時計構造部インターフェース406として2つのスリットを有する。別の実施形態では、ブレードフィン310のテーパ部分が、固相微量抽出デバイス保管装置400のテーパ状先端部245およびオリフィスの軸中心を基準としてわずかにオフセットされた固相微量抽出デバイス300を成功裏に嵌合するのを支援するための追加の機構を提供する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相微量抽出デバイスであって、
少なくとも1つの平坦な表面を有する基体と、
前記少なくとも1つの平坦な表面の少なくとも一部分に配置される吸着剤層と、
前記基体から延在するテーパ状先端部と、
受け取りデバイスの据え付け部分に取り外し可能に取り付けられるように構成される受け用マウントと、
前記受け取りデバイスを基準とした前記平坦な表面のラジアル配向を固定するように構成される時計構造部と
を備える、固相微量抽出デバイス。
【請求項2】
前記時計構造部が、前記受け取りデバイスの相補的な凸部または相補的な凹部の少なくとも一方に対応する凹部または凸部のうちの少なくとも一方を有し、その結果、前記固相微量抽出デバイスが前記受け取りデバイスに設置されるときに、前記時計構造部が、前記受け取りデバイスを基準として前記固相微量抽出デバイスの前記ラジアル配向を所定の数のラジアル位置までに制限する、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項3】
所定の数のラジアル位置が、単一のラジアル位置から構成される、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項4】
所定の数のラジアル位置が、2つの異なるラジアル位置を含む、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項5】
前記固相微量抽出デバイスが、前記受け用マウント上での前記少なくとも1つの平坦な表面の前記ラジアル配向の視覚表示を含む、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項6】
前記固相微量抽出デバイスが、被覆ブレードスプレーデバイスである、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項7】
前記受け用マウントが、ピペット先端部受け用マウントであり、前記据え付け部分が、前記ピペット先端部受け用マウントに取り外し可能に係合されるように構成されるピペッター先端部据え付け部分である、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項8】
前記受け取りデバイスが、ピペッターである、請求項7に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項9】
前記受け取りデバイスが、固相微量抽出デバイス操作装置である、請求項7に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項10】
前記基体が、電気伝導性の部分を含む、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項11】
前記受け用マウントが、前記固相微量抽出デバイスを前記受け取りデバイスに設置するときに前記受け取りデバイスの前記据え付け部分に電気的に接続されるように構成される電気伝導性端子を含む、請求項10に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項12】
前記受け用マウントの少なくとも一部分が、前記基体の前記電気伝導性の部分および前記受け用マウントの前記電気伝導性端子に電気的に接続される電気伝導性層を含む、請求項11に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項13】
前記受け用マウントが、前記基体の前記電気伝導性の部分および前記受け用マウントの前記電気伝導性端子に電気的に接続される電極を含む、請求項11に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項14】
前記受け用マウントが、電気伝導性高分子から構成され、前記基体の前記電気伝導性の部分に電気的に接続され、前記固相微量抽出デバイスを前記受け取りデバイスに設置するときに前記受け取りデバイスの前記据え付け部分に電気的に接続されるように構成される、請求項10に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項15】
固相微量抽出デバイス保管装置であって、
チャンバを囲んで画定する保管装置壁と、
固相微量抽出デバイスの基体および受け用マウントを受けて保持するように各々が構成される、前記保管装置壁に配置される複数のオリフィスと、
前記固相微量抽出デバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、前記固相微量抽出デバイスを前記所定のラジアル配向で固定するように各々が構成される、前記保管装置壁に配置される複数の時計構造部インターフェースと
を備え、
前記チャンバが、前記固相微量抽出デバイスの前記基体を受け入れるように構成され、前記基体、および前記基体から延在するテーパ状先端部が、前記保管装置壁または前記固相微量抽出デバイス保管装置に配置される任意の隣接する固相微量抽出デバイスに接触しないように構成されている、固相微量抽出デバイス保管装置。
【請求項16】
前記複数のオリフィスが、一次元アレイで配置される、請求項15に記載の固相微量抽出デバイス保管装置。
【請求項17】
前記複数のオリフィスが、二次元アレイで配置される、請求項15に記載の固相微量抽出デバイス保管装置。
【請求項18】
固相微量抽出デバイス操作装置であって、
操作装置シャフトと、
前記操作装置シャフトの端部に配置される据え付け部分であって、前記据え付け部分が、固相微量抽出デバイスのピペット先端部受け用マウントに取り外し可能に係合されるように構成されるピペッター先端部据え付け部分である、据え付け部分と、
前記固相微量抽出デバイスの前記ピペット先端部受け用マウントを前記据え付け部分に設置するように、前記据え付け部分に配置される電気伝導性接点であって、前記電気伝導性接点が、前記ピペット先端部受け用マウントの電気伝導性端子に電気的に接続される、電気伝導性接点と、
前記ピペット先端部受け用マウントを前記据え付け部分から切り離すように構成される取り外し装置と、
前記固相微量抽出デバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、前記固相微量抽出デバイスを前記所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェースと
を備える、固相微量抽出デバイス操作装置。
【請求項19】
前記取り外し装置が、取り外し装置シャフトである、請求項18に記載の固相微量抽出デバイス操作装置。
【請求項20】
前記取り外し装置が、電気絶縁材料を含む、請求項18に記載の固相微量抽出デバイス操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれている、2019年8月20日に出願され、「Radially Oriented Device for Storing and Dispensing Analyte Collection Devices」と題される米国仮特許出願第62/889、271号の利益および優先権を主張するものである。
【0002】
本出願は、固相微量抽出デバイス、固相微量抽出デバイス保管装置、および固相微量抽出デバイス操作装置を対象とする。特に、本出願は、固相微量抽出デバイス、固相微量抽出デバイス保管装置、ならびに時計構造部および時計構造部インターフェースを含む固相微量抽出デバイス操作装置を対象とする。
【背景技術】
【0003】
(被覆ブレードデバイス)
被覆ブレードスプレー(CBS:Coated Blade Spray)は、試料からの対象の被分析物質の収集、および、その後の、基体スプレー事象(つまり、エレクトロスプレーイオン化)を介しての質量分析システムへの直接的なインターフェースを促進する、文献(Pawliszynら、米国特許第9,733,234号(特許文献1))で既に説明されている固相微量抽出(SPME:solid phase microextraction)ベースの分析技術である。
【0004】
「被覆ブレードスプレー」、「CBSブレード」、および「ブレードデバイス」は、本明細書では、同じ意味で使用される。
【0005】
CBSベースの化学分析には2つの基本的なステージが存在する:(1)被分析物質の収集、および、その後の、(2)機器分析。被分析物質の収集は、ブレードデバイスの吸着剤被覆端部を試料に直接に浸漬することによって実施される。液体試料の場合、抽出ステップが、一般に、バイアルまたはウェルプレートに収容される試料を用いて実施される。
【0006】
被分析物質の収集後、ブレードデバイスが試料から取り出され、一連の洗浄ステップ後、ブレードデバイスが分析のための質量分析計(MS:mass spectrometer)の入口に提示される。この方式では、ブレードデバイスが複数回の移送ステップを受ける。したがって、手動のおよびロボットによる自動の両方の取り扱い環境のためには、各々のこれらのステップにおいてブレードデバイスを高い信頼性で配置することが重要である。
【0007】
MS化学分析デバイスに関しては、ブレードデバイスが、収集した被分析物質を解放してエレクトロスプレーイオン化プロセスを促進することを目的として抽出物質のプレウェッティングを必要とする。次いで、基体の非被覆エリアとMSシステムの入口との間に電位差が適用され、それによりCBSデバイスの先端部のところで電子スプレーを発生させる。高い信頼性のランツーラン(run-to-run)精度を保証するためにブレードとMSシステムとの間の電界が再現可能に形成されなければならない。したがって、MSスキマーコーンの開口部を基準としてブレードデバイスを適切に配置することが非常に重要であり、これにはブレードデバイスのラジアル配向(または、回転方向の向き)が含まれる。
【0008】
一般に、ブレードデバイスのブレード部分が、上側側部および下側側部である2つの側部を有する。いくつかの事例では、多様な吸着剤被覆物がブレードの各々の平坦な側部に存在してよく、したがって、2回の試料分析が順番に実施され得る:最初に、上側側部の分析が実施され、次いで、下側側部の第2の分析が実施される。他の例では、等しい吸着剤被覆物がブレードの各々の平坦な側部に存在してよく、したがって、2回の試料分析が順番に実施され得るが、これは異なる機器内で実施され得:最初に、機器Aにおいて上側側部の分析が実施され、次いで、機器Bにおいて下側側部の第2の分析が実施される。いずれの事例も、ブレードのラジアル配向がやはり重要である。
【0009】
上記の開示は、いずれも、質量分析計への入口部分を基準として個別のブレードデバイスを適切に配置するために個別のブレードデバイスを手動で取り扱うことを説明するものである。他の例が、大型のホルダでのブレードデバイスの一次元アレイおよび二次元アレイを説明している。これらの実施形態は、2つ以上のブレードデバイスを収容することができる剛体支持体を有する。この配置構成の例には米国特許第7,259,019号(特許文献2)が含まれる。これらの例は、一般に、標準的な実験室試料採取プラスチック製品に位置合わせされ、最も一般的には、8×12のウェルの配置構成を有するマイクロタイタートレイに位置合わせされ、ウェルが約9mmの中心部分を有する。互いにも密接するように配置されるより小型の試料ウェルを有する高密度トレイも市販されており、これは標準的な試料トレイの設置面積を維持することを目的とする。
【0010】
MSデバイスへの入口が単一であることを理由として、これらのアレイベースのデザインを使用する場合では試料分析ステージが依然として連続プロセスである。大型のアレイ内の選択したブレードデバイスが、エレクトロスプレーイオン化のために配置される。このデザインは、ブレードデバイスのアレイ全体を概してMSの近傍に配置することにもなるという欠点を有し、これが、エレクトロスプレーイオン化プロセス中に隣接するブレードデバイスの間で電気的および/または化学的クロストークの無視できないリスクをもたらす。これにより、特に、生体液の臨床的および法医学的スクリーニングなどの証拠保全の試料分析用途が被害を受ける。
【0011】
したがって、CBSデバイスの自動化された取り扱いの必要性が存在し、ここでは、標準的なマイクロタイタートレイを使用する試料抽出プロセス中に密接配置のアレイ配置構成が維持され、またここでは、個別のブレードデバイスが質量分析計のイオン化領域に導入される。本明細書で開示される本発明は、サンプリングから分析までのプロセス全体においてブレードのラジアル配置の追加的な要求に対処するものである。
【0012】
(マイクロピペッターデバイスの説明)
正確な量の液体を輸送するための実験室での一般的なツールはマイクロピペッターである。この配置構成の例には、米国特許第4,284,604号(特許文献3)、米国特許第5,650,124号(特許文献4)、および米国特許第7,421,913号(特許文献5)が含まれる。マイクロピペッターは、一定量の液体をデバイスに引き入れて次いで液体を計量分配するのに、多様な機構を採用する。標準的なピペッターの正確なボリューム容量は0.1μLから10mLである。試料汚染のリスクを低減するために、使い捨てのピペット先端部が採用される。ピペッターをマイクロピペット先端部に押し入れることによりマイクロピペット先端部がピペッターに設置され、摩擦により先端部が定位置で維持される。液体が計量分配された後、先端部がピペッターの端部から外され、プロセス全体が繰り返される。
【0013】
高レベルの並行プロセスのために多くの液体移送ステップが実施される事例では、2つ以上の液体計量分配チャンネルを採用するマイクロピペッターデバイスが利用可能である。この配置構成の例には、米国特許第5,021,217号(特許文献6)が含まれる。このデバイスも、使い捨ての先端部の摩擦嵌合による取り付け機構を採用する。
【0014】
分かり易いように、「ピペット」、「ピペッター」、「マイクロピペッター」、および「マルチチャンネルピペッター」という用語は、本明細書では同じ意味で使用される。「ピペット先端部」および「マイクロピペット先端部」という用語も同じ意味で使用される。
【0015】
均等な液体ボリュームが引き出されて、各先端部に供給される。装着を容易にするために、ピペッターアレイ内での先端部の位置が保管ラック内での先端部の位置に位置合わせされる。
【0016】
マルチチャンネルピペットデバイスは、一次元アレイおよび2次元アレイの保管ラックにおいてピペット先端部と共に使用され、その結果、一列の使い捨ての先端部がマイクロピペッターに並列に設置され得る。
【0017】
マイクロピペッターの技術はロボットシステムに対しても適合されており、ここでは、液体移送のシークエンスの全体が手動ユニットのために採用されるものと同じであるが、自動化されている。
【0018】
実験室には普遍的にマイクロピペッターが存在することを理由として、手動での使用される場合およびロボットオートメーションのセットアップに統合される場合の両方で、マイクロピペッターの技術の物理的寸法に対してのCBSデバイスの適合性を維持することが有利である。
【0019】
(マイクロピペット先端部)
マイクロピペッターを採用する多くの用途が化学汚染を受けやすいことを理由として、使い捨ての1回使用のピペット先端部が利用可能である。嵌合した先端部の上でデバイスを中央に配置してデバイスを先端部の開口部に優しく打ち込むことにより、標準的なマイクロピペット先端部がピペッターデバイスに装填される。先端部が摩擦を介して設置され、使用の準備が整う。使用後、通常、使い捨ての先端部の上側リップに係合されて摩擦接続に打ち勝つように押される、デバイスのシャフトに周りにある摺動可能なシースである、先端部取り外し装置により、汚れのついたマイクロタイター先端部がデバイスから取り外される。試料抽出のために修正されたピペット先端部の例には米国特許第7,595,026号(特許文献7)が含まれる。
【0020】
一般的なマイクロピペット先端部は円錐形であり、通常のオペレーションではラジアル配向を必要としない。
【0021】
自動化されたピペット操作ロボットでのキャリーオーバーを防止するために導電性先端部が使用される。導電性先端部の例として、原材料のポリプロピレンに黒鉛を追加することによりピペット先端部を電気伝導性にし、先端部に不透明黒色の外観を与える、ということがある。ピペット先端部の一部分が導電性であるような代替的実施形態が米国特許第9,346,045号(特許文献8)に説明されている。電気容量を測定することにより、ロボットワークステーションでの先端部の相対位置が確認される。電流を測定することにより先端部の液体の充填レベルが試料・試薬容器内で決定され得、その結果、先端部の浸漬深さが充填レベルに合うように調整され得る。
【0022】
標準的な試料採取の取り扱いの実践では先端部が頻繁に交換されることを理由として、複数の先端部がラックに保管され、ラックでは先端部が環境汚染から保護される。上で説明したアレイ位置の通例を維持するために、使い捨ての先端部の大量保管には、一般に、その中心位置を合わせられる標準的な先端部を用いる、8×12である96個の先端部のアレイまたは96の倍数個の先端部が採用される。これにより、マルチチャンネルピペットデバイスに直接に装填することが可能となり、実験室内でのおよびオートメーションワークステーションプラットフォーム上での標準的なラックの設置面積が維持される。
【0023】
マイクロピペット先端部を収容するためのラック容器は、標準的なピペット先端部のラジアル配向を維持する要素を有しない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】米国特許第9,733,234号
【特許文献2】米国特許第7,259,019号
【特許文献3】米国特許第4,284,604号
【特許文献4】米国特許第5,650,124号
【特許文献5】米国特許第7,421,913号
【特許文献6】米国特許第5,021,217号
【特許文献7】米国特許第7,595,026号
【特許文献8】米国特許第9,346,045号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0025】
例示の一実施形態では、固相微量抽出デバイスが、少なくとも1つの平坦な表面を有する基体と、少なくとも1つの平坦な表面の少なくとも一部分に配置される吸着剤層と、基体から延在するテーパ状先端部と、受け取りデバイスの据え付け部分に取り外し可能に取り付けられるように構成される受け用マウントと、受け取りデバイスを基準とした平坦な表面のラジアル配向を固定するように構成される時計構造部とを含む。
【0026】
別の例示の実施形態では、固相微量抽出デバイス保管装置が、チャンバを囲んで画定する保管装置壁と、固相微量抽出デバイスの基体および受け用マウントを受けて保持するように各々が構成される、保管装置壁に配置される複数のオリフィスと、固相微量抽出デバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、固相微量抽出デバイスを所定のラジアル配向で固定するように各々が構成される、保管装置壁に配置される複数の時計構造部インターフェースとを含む。チャンバが、固相微量抽出デバイスの基体を受け入れるように構成され、基体、および基体から延在するテーパ状先端部が、保管装置壁または固相微量抽出デバイス保管装置に配置される任意の隣接する固相微量抽出デバイスに接触しないように離れたところにある。
【0027】
別の例示の実施形態では、固相微量抽出デバイス操作装置が、操作装置シャフトと、操作装置シャフトの端部に配置される据え付け部分であって、据え付け部分が、固相微量抽出デバイスのピペット先端部受け用マウントに取り外し可能に係合されるように構成されるピペッター先端部据え付け部分である、据え付け部分と、固相微量抽出デバイスのピペット先端部受け用マウントを据え付け部分に設置するように据え付け部分に配置される電気伝導性接点であって、電気伝導性接点が、ピペット先端部受け用マウントの電気伝導性端子に電気的に接続される、電気伝導性接点と、ピペット先端部受けマウントを据え付け部分から切り離すように構成される取り外し装置と、固相微量抽出デバイスの時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、固相微量抽出デバイスを所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェースとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】市販のマイクロピペッターおよび使い捨てのピペット先端部の関連の機械的要素を示す図である。
図2(a)】図2(a)は、本開示の実施形態による、市販のマイクロピペッターにインターフェース接続されるための接続要素に一体化される固相微量抽出デバイスを示す図である。
図2(b)】図2(b)は、本開示の実施形態による、市販のマイクロピペッターにインターフェース接続されるための接続要素に一体化される固相微量抽出デバイスを示す図である。
図3(a)】図3(a)は、本開示の実施形態による、保管容器に収容された状態の、ラジアル配向の制御のためのフィン要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
図3(b)】図3(b)は、本開示の実施形態による、保管容器に収容された状態の、ラジアル配向の制御のためのフィン要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
図4】本開示の実施形態による、フィン要素を有する固相微量抽出デバイスのラジアル配向の制御を促進するための機械的要素の3つの実施例を備える固相微量抽出デバイス保管装置を示す図である。
図5】本開示の実施形態による、フィン要素を有する適切に嵌合された固相微量抽出デバイスを備える固相微量抽出デバイス保管装置の3つの実施例を示す図である。
図6】本開示の実施形態による、固相微量抽出デバイスに電圧を印加するための接続要素内にある一体化される電極表面を備えるマイクロピペッター接続要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
図7】本開示の実施形態による、一体化される電極を有する固相微量抽出デバイスとの電気的な接続を実現するように修正されたマイクロピペッターを示す図である。
図8】本開示の実施形態による、ブレードデバイスに電圧を印加するための接続要素内に存在する一体化される電極を備えるマイクロピペッター接続要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
図9】本開示の実施形態による、固相微量抽出デバイスのラジアル配向を2つの位置のうちの1つの位置にするように制御するための、接続要素の周りに配置される2つスロットを備えるマイクロピペッター接続要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
図10】本開示の実施形態による、ピペッターに装着された状態の(ピペッターがさらに、固相微量抽出デバイスとの電気的な接続を実現するために修正されている)、固相微量抽出デバイスを2つの考えられる位置のうちの1つの位置に方向付けるための等価の構造部を有する修正されたピペッターへの、2つのスロットを備える固相微量抽出デバイスの装着を示す図である。
図11】本開示の実施形態による、1つの位置に対しての固相微量抽出デバイスのラジアル配向を制御するための、接続要素の周りに非対称に配置される3つのスロットと、一体化される電極と、を備えるマイクロピペッター接続要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
図12】本開示の実施形態による、ピペッターに装着された状態の(ピペッターがさらに、固相微量抽出デバイスとの電気的な接続を実現するために修正されている)、固相微量抽出デバイスを1つの考えられる位置に方向付けるための等価の構造部を有する修正されたピペッターへの、3つのスロットを備える固相微量抽出デバイスの装着を示す図である。
図13(a)】図13(a)は、本開示の実施形態による、2つの考えられる位置のうちの1つの位置に対しての固相微量抽出デバイスのラジアル配向を制御するための、接続要素の周りに配置される2つの中空突出部を備えるマイクロピペッター接続要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
図13(b)】図13(b)は、本開示の実施形態による、1つの位置に対しての固相微量抽出デバイスのラジアル配向を制御するための、接続要素の周りに非対称に配置される3つの中空突出部を備えるマイクロピペッター接続要素を有する固相微量抽出デバイスを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
可能な限り、図面を通して同じ部分を表すのに同じ参照符号が使用される。
【0030】
現在に至るまで、ラジアルの位置決めを追加的に必要とする、使い捨ての先端部を装填したり外したりするためのマイクロピペットデバイスの機械的要素に合うように適合されたマイクロスケールの試料採取デバイスは存在しない。
【0031】
CBSブレードは分析器(ほとんどの事例で、質量分析計)の供給源に装填されるときに特定のラジアル配向を必要とする公称平坦であるストリップであることから、すべての使用ステージにおいてブレードのラジアル配向の制御が所望される。試料採取および分析のワークフローを通してブレードデバイスのラジアル配向を維持するような複数の実施例が開示される。ブレードデバイスの大量保管時にブレードデバイスの向きを維持するような実施例が提示される。さらに、ラジアル配向を維持しながら標準的なマイクロピペットの機械的デバイスにブレードデバイスがインターフェース接続され得るような実施例が提示される。
【0032】
CBSブレードのさらなる要求が、スプレー分析中にブレードに電圧バイアスを印加することである。修正されたCBSブレードがデバイスの一部分としてのブレードに電圧バイアスを印加するのを可能にする要素をさらに包含することが望ましい。本明細書で説明される本発明の実施形態が、スプレー分析中に印加される電圧バイアスを有するブレードを有する。電極要素と、試料分析中に必要である電圧を印加するための電気伝導性の先端部の使用と、を描いている本発明の実施例が開示される。
【0033】
本明細書では、分析のワークフローの全体における固相微量抽出デバイスのラジアル配向を制御するための解決策が開示される。この解決策は、手動のおよび自動の両方の実験室用途に機械的に適合される。この解決策は、分析実験室システムで一般的である機械規格に従うものであり、これが、本明細書で開示される固相微量抽出デバイスを実験室により迅速に採用するのを促進するために、ピペッターおよび大量保管デバイスなどの装着した実験室デバイスに直接に一体化されることを含む。
【0034】
本明細書で使用される「約」は、特に明記しない限り、「約」によって修飾される値の±15%の分散を示す。
【0035】
本明細書で使用される「固相微量抽出(solid phase microextraction)」は、限定しないが、高分子の吸着剤被覆物で被覆される固体の基体を含み、ここでは、被覆物が、基体に物理的にまたは化学的に取り付けられる、金属粒子、シリカベースの粒子、金属-高分子粒子、高分子粒子、またはその組み合わせを含むことができる。いくつかの非限定の実施例では、固体の基体が基体の表面に配置される少なくとも1つの凹部分または凸部を有し、上記基体が、少なくとも1つの凹部分または凸部の中にまたはその上に配置される少なくとも1つの高分子吸着剤被覆物を有する。「固相微量抽出」という用語はさらに、固体の基体上で磁性粒子または磁性分子を収集するための少なくとも1つの磁気構成要素を収容する少なくとも1つの凹部または凸部を備える固体の基体を含む。
【0036】
図1が、一般的な市販の手動マイクロピペッター100を示す。ピペッターが、最初に液体をピペット先端部110に引き入れて次いで液体を計量分配することができるプランジャ変位ベースのデバイス(plunger displacement-based device)である。プランジャ機構は示されないが、ピペッターのハウジング108においてプランジャシャフト102とピペット端部109との間に存在する。
【0037】
(示されないが、一般に別個のホルダに嵌合される)先端部110の上でピペッターデバイス100を中央に配置してピペッターデバイス100を先端部の開口部112に優しく打ち込むことにより、標準的なマイクロピペット先端部がピペッターデバイス100に装填される。先端部100が、ピペット端部109の円錐形の外側表面104に対しての摩擦を介して、設置され、使用の準備が整う。
【0038】
操作者が、最初に、プッシュボタン101を押し下げ、ピペット先端部110を対象の液体に浸漬する。ブッシュボタンを解放することで一定量の液体がピペット先端部の容器部分113に引き入れられる。再びプッシュボタン101を押し下げることにより液体が移送され、液体が計量分配される。
【0039】
所望の回数の液体移送オペレーションの後、先端部取り外し装置ボタン105を押し下げることにより、ピペット先端部110がピペッターから外される。このオペレーションが先端部取り外し装置106をピペットシャフト103の長さ方向に沿わせて押し、取り外し装置の底部表面107がピペット先端部110をピペッター端部109の円錐形の外側表面104から離す。さらに、必要に応じて、この手順の全体が繰り返される。
【0040】
手動のバーションのピペットデバイスが示されるが、自動化されたバーションおよびロボットのバージョンが同じの関連の要素を有する。
【0041】
ピペット端部109の円錐形状および寸法、取り外し装置シャフトの底部表面107、およびピペット先端部カップ111が、当技術分野では、標準化されている。一実施形態では、本明細書で開示される固相微量抽出デバイスが、装着された実験室設備に容易にインターフェース接続されるためにこれらの標準化された寸法に合うように適合される。
【0042】
図2(a)および(b)を参照すると、固相微量抽出デバイス200の基本要素が、少なくとも1つの平坦な表面235を有する基体230と、少なくとも1つの平坦な表面235の少なくとも一部分に配置される吸着剤層240と、基体230から固相微量抽出デバイス200の分析端部の方に延在するテーパ状先端部245と、受け取りデバイス100の据え付け部分104に取り外し可能に取り付けられるように構成される受け用マウント210と、を含む。基体230が、限定しないが、約4mmの幅×約400mmの長さ×0.5mmの厚さを有する任意適切な寸法を有することができる。基体230が、限定しないが、ステンレス鋼などの、限定しないが、導電性材料を含む、任意適切な材料から作られ得る。吸着剤層240が、限定しないが、高分子粒子(例えば、C18基を用いて修正されたシリカ)および結合剤(例えば、ポリアクリロニトリル)、を含む抽出相吸着剤を含むことができる。
【0043】
一実施形態では、固相微量抽出デバイス200が、標準的なピペット先端部110の寸法に合うように適合されたCBSデバイスである。ブレード部分220が、ピペッター端部109上の据え付け部分104に取り付けられるように構成される受け用マウント210としてのカップを装備する。受け用マウント210が基体230に固定され、吸着剤層240およびテーパ状先端部245から反対側の端部に配置される。受け用マウント210の内側表面215が、標準的な市販のピペット先端部カップ111との整合性を有するように、摩擦嵌合機構を採用するように成形される。受け用マウント210が、限定しないが、ポリプロピレンなどの、標準的なピペット先端部との整合性を有する電気絶縁高分子、または、限定しないが、炭素含浸ポリプロピレン(carbon impregnated polypropylene)などの、電気伝導性高分子から作られ得る。
【0044】
図3(a)および(b)を参照すると、一実施形態では、固相微量抽出デバイス200が、受け取りデバイス100を基準とした平坦な表面235のラジアル配向を固定するように構成される時計構造部305(clocking feature)を有する。「時計」は、平坦な表面235のラジアル配向を示すためのパラダイムとしてアナログの時計文字盤の周りでの針の通過を暗に意味することを意図される。一実施形態では、時計構造部305が、受け取りデバイス100の相補的な凸部または相補的な凹部の少なくとも一方に対応する凹部または凸部のうちの少なくとも一方を有し、その結果、固相微量抽出デバイス200が受け取りデバイス100に設置されるときに、時計構造部305が、受け取りデバイス100を基準として固相微量抽出デバイス200のラジアル配向を所定の数のラジアル位置までに制限する。所定の数のラジアル位置が単一のラジアル位置または2つのラジアル位置から構成され得るか、あるいは任意適切なより多い数のラジアル位置を含むことができる。固相微量抽出デバイス200が、受け用マウント210上での少なくとも1つの平坦な表面235のラジアル配向の視覚表示を有することができる。このような視覚表示が、平坦な表面235自体を見ることができない場合の少なくとも1つの平坦な表面235のラジアル配向を示す働きをすることができる。
【0045】
一実施形態では、固相微量抽出デバイス200がピペッター適合CBSデバイス300であり、受け用マウント210がピペット先端部受け用マウント210であり、据え付け部分104が、ピペット先端部受け用マウント210に取り外し可能に係合されるように構成されるピペッター先端部据え付け部分104である。本明細書で使用される「取り外し可能」は、ピペッター先端部据え付け部分104またはピペット先端部受け用マウント210にダメージを与えることのない取り外しを示す。受け取りデバイス100が、限定しないが、ピペッター100または固相微量抽出デバイス操作装置700(後で説明する)を含む、任意適切なデバイスであってよい。
【0046】
別の実施形態では、ピペット先端部受け用マウント210が、時計構造部305として機能する、ピペット先端部受け用マウント210から等距離に延在する2つのフィン突出部310を有する。この構成では、2つのフィン突出部310が存在することにより、ブレードのラジアル位置状態320を2つの離れた等価の位置(つまり、0°および180°)にするのを低減する。ここで描かれる2つのフィンのデザインは例示を目的としており、したがって、より多くのまたはより少ないフィンを採用する他の構成も採用され得るか、あるいは、据え付け部分104に係合されるときの固相微量抽出デバイス200のラジアル回転を制限するようなピペット先端部受け用マウント210上の他の構造部も考えられる。フィン凸部310がラジアル位置を制御するために、鍵と鍵穴の構成でフィン凸部310が受け取りデバイス100に係合される。
【0047】
図4および図5が、嵌合されているときの固相微量抽出デバイス300を方向付ける固相微量抽出デバイス保管装置400を示す。固相微量抽出デバイス保管装置400が、チャンバ401を囲んで画定する保管装置壁405と、保管装置壁405に配置される複数のオリフィス420であって、複数のオリフィス420の各々が固相微量抽出デバイス200の基体230および受け用マウント210を受けて保持するように構成される、複数のオリフィス420と、保管装置壁405に配置される複数の時計構造部インターフェース406であって、複数の時計構造部インターフェース406の各々が固相微量抽出デバイス200の時計構造部305を所定のラジアル配向に誘導し、固相微量抽出デバイス200を所定のラジアル配向で固定するように構成される、複数の時計構造部インターフェース406と、を有する。チャンバ401が、固相微量抽出デバイス200の基体230を受け入れるように構成され、基体230、および基体230から延在するテーパ状先端部245が、保管装置壁405または固相微量抽出デバイス保管装置400に配置される任意の隣接する固相微量抽出デバイス200に接触しないように離れたところにある。複数のオリフィス420が、限定しないが、一次元アレイまたは二次元アレイを含めた、任意適切なパターンでまたはパターンを有しないように、配置され得る。固相微量抽出デバイス保管装置に嵌合された個別の固相微量抽出デバイス300のラジアル配向がすべて同じであってよいか、または試料取り扱い・分析のオペレーションによって必要とされる場合に異なっていてもよい。
【0048】
一実施形態では、固相微量抽出デバイス保管装置400が、固相微量抽出デバイス300の時計構造部310との整合性を有するように径方向に配置される時計構造部インターフェース406として2つのスリット410を有する。別の実施形態では、ブレードフィン310のテーパ部分が、固相微量抽出デバイス保管装置400のテーパ状先端部245およびオリフィス420の軸中心を基準としてわずかにオフセットされた固相微量抽出デバイス300を成功裏に嵌合するのを支援するための追加の機構を提供する。ブレードフィン310および対応する時計構造部インターフェース406が、固相微量抽出デバイス保管装置400に係合されるときに固相微量抽出デバイス300の配置を単一の位置にさらに制限するための非対称の構成を有することができる。
【0049】
一実施形態では、時計構造部インターフェース406が、固相微量抽出デバイス保管装置400に嵌合されるときの固相微量抽出デバイス300を適切に位置合わせするのを促進するための、オフィリス420を囲む誘導凸部430を有する。固相微量抽出デバイス300が時計構造部インターフェース406に対しての時計構造部310の向きを基準としてラジアル方向において軸をずらされる場合、誘導凸部430がポイント432に向かってテーパ状になっており、オリフィス420の基部のところで谷形状435を形成するように接合される。誘導凸部430のテーパ部分が、固相微量抽出デバイス保管装置400に嵌合されているときに固相微量抽出デバイス300を適切に配置するために軸のずれた固相微量抽出デバイス300を誘導して再び位置合わせするための機構を提供する。
【0050】
固相微量抽出デバイス保管装置400内での固相微量抽出デバイス300の向きが、手動の操作者または自動化された使用の位置決めの要求との整合性を維持するように構成され得る。図5が、排他的ではない、固相微量抽出デバイス保管装置400に嵌合された固相微量抽出デバイス300の3つの考えられる配置構成を示す。固相微量抽出デバイス保管装置400のチャンバ401が、個別の固相微量抽出デバイス300を保管装置壁405にまたは互いに接触させないのを保証するように構成され得る。固相微量抽出デバイスの完全性を保証するために固相微量抽出デバイス保管装置400で追加の壁構造またはバリア構造(図示せず)が採用されてもよい。
【0051】
図6を参照すると、一実施形態では、電気伝導性の固相微量抽出デバイス600が、電気伝導性の部分605を有する基体230を有する。受け用マウント210が、電気伝導性の固相微量抽出デバイス600を受け取りデバイス100に設置するときに受け取りデバイス100の据え付け部分104に電気的に接続されるように構成される、受け用マウント210の内側表面215に配置される電気伝導性端子616を有する。受け用マウント210の少なくとも一部分が、基体230の電気伝導性の部分605および受け用マウント210の電気伝導性端子616に電気的に接続される電気伝導性層617を有することができる(または、受け用マウント210が電極を有することができる)。
【0052】
電気伝導性端子616が、受け用マウント210の内側表面215の全体または一部をカバーすることができる。一実施形態では、電気伝導性端子616の存在が、電気伝導性の固相微量抽出デバイス600を据え付け部分104に取り付けるのに使用される摩擦嵌合機構に干渉しないか、または使用後に電気伝導性の固相微量抽出デバイス600を受け取りデバイス100から取り外すための取り外し装置シャフト107の使用に干渉しない。
【0053】
一実施形態では、受け用マウントが電気伝導性層から構成され、基体230の電気伝導性の部分605に電気的に接続され、電気伝導性の固相微量抽出デバイス600を受け取りデバイス100に設置するときに受け取りデバイス100の据え付け部分104に電気的に接続されるように構成される。
【0054】
図7を参照すると、一実施形態では、固相微量抽出デバイス操作装置700(拡大される細部710にも示される)が、操作装置シャフト103と、操作装置シャフト103の端部に配置される据え付け部分104であって、据え付け部分104が、固相微量抽出デバイス200のピペット先端部受け用マウント210に取り外し可能に係合されるように構成されるピペッター先端部据え付け部分104である、据え付け部分104と、を有する。電気伝導性接点704が、固相微量抽出デバイス200のピペット先端部受け用マウント210を据え付け部分104に設置するように据え付け部分104に配置され、電気伝導性接点704がピペット先端部受け用マウント210の電気伝導性端子616に電気的に接続される。取り外し装置106が、ピペット先端部受けマウント210を据え付け部分104から切り離すように構成され、時計構造部インターフェース406が、固相微量抽出デバイス200の時計構造部305を所定のラジアル配向に誘導し、固相微量抽出デバイス200を所定のラジアル配向で固定するように構成される。取り外し装置106が取り外し装置シャフト106であってよい。取り外し装置106が、全体としてまたは部分的に、電気絶縁材料から構成され得る。電気絶縁材料が、必要な経路までの電気流れを絶縁するために必要に応じて固相微量抽出デバイス操作装置700の種々の部分に組み込まれ得る。
【0055】
一実施形態では、電気伝導性接点704が、ピペッター先端部据え付け部分104の外側表面に適用される導電層である。
【0056】
一実施形態では、固相微量抽出デバイス操作装置700に組み込まれる電解回路が、試料分析中、電気伝導性の固相微量抽出デバイス600に電圧を提供し、固相微量抽出デバイス操作装置700の電気伝導性接点704に繋げられる高電圧電力供給源709を有する。電気伝導性の固相微量抽出デバイス600がピペッター先端部据え付け部分104に係合される場合、ブレード部分220の帯電が可能となる。好適には、電気伝導性接点704の存在が、電気伝導性の固相微量抽出デバイス600をピペッター先端部据え付け部分104に取り付けるのに使用される摩擦嵌合機構に干渉しないか、または使用後に電気伝導性の固相微量抽出デバイス600を受け取りデバイス100から取り外すための取り外し装置シャフト106の使用に干渉しない。
【0057】
固相微量抽出デバイス操作装置700は電気伝導性の固相微量抽出デバイス600の帯電を可能にするように修正されているが、一実施形態では、標準的なピペッターの液体取り扱い機能がすべて維持される。これにより、標準的なピペット先端部を用いる基本的な液体の取り扱いまたはCBS関連のタスクを個別に実施するのに単一のハンドツールまたはオートメーションアクセサリを使用することが可能となる。したがって、固相微量抽出デバイス操作装置700上の取り外し装置シャフト106が導電性先端部に適合することができ、電気絶縁材料の1つまたは複数の層で作られてもよい。
【0058】
電気伝導性の固相微量抽出デバイス600を設置すること、帯電させること、および外すことのために必要である要素を維持しながら、標準的なピペッターの液体取り扱い要素のすべてを排除するより単純な固相微量抽出デバイス操作装置700も含まれる。これらの固相微量抽出デバイス操作装置700の実施形態は、標準化される据え付け部分104、取り外し装置シャフト107、および電気伝導性接点704を有するピペッター端部109を備える基本的なピペットシャフト106から構成される。手動使用のバージョンおよびロボット使用のバーションの単純化された固相微量抽出デバイス操作装置700が適合されてもよい。
【0059】
図8を参照すると、一実施形態では、固相微量抽出デバイス200が、基体203に接続されて受け用マント210に位置する別個の電極816を有し、固相微量抽出デバイス操作装置700が、高電圧電力供給源に電気的に接続される電気伝導性接点704を有する。
【0060】
図9を参照すると、一実施形態では、時計構造部305が、受け用マウント210の外側リムに沿う等距離を実現するスロット910する。導電層616が受け用マウント210の内側表面215に取り付けられる。受け用マウント210のために導電性高分子が採用される事例では、導電層616が排除されてもよい。
【0061】
図10を参照すると、固相微量抽出デバイス900の拡大される細部710が固相微量抽出デバイス操作装置1000に装填されるように配置されており、ピペッターシャフト103および据え付け部分104が、時計構造部305としての2つのスロット910に係合されるための時計構造部インターフェース406としての凸部804を有する。凸部804およびスロット901が、固相微量抽出デバイス操作装置700を基準として0°または180°位置に固相微量抽出デバイス900の位置を制限するためのキー溝機構として動作する。ここで描かれる2つのスロットのデザインは例示を目的とし、限定的であることを意図されない。より多くのまたはより少ないスロット910を採用する他の構成が使用されてもよく、固相微量抽出デバイス操作装置700に係合されるときに固相微量抽出デバイス900のラジアル方向の回転が制限されるような受け用マウント210上にある他の構造部も考えられ得、またはスロット910が固相微量抽出デバイス操作装置1000に配置されて代わりに凸部804が固相微量抽出デバイス900から延在してもよく、あるいは、固相微量抽出デバイス900および固相微量抽出デバイス操作装置1000の両方のためにスロット910および凸部804が存在してもよい。
【0062】
図11および12を参照すると、一実施形態では、固相微量抽出デバイス1100が、受け用マウント210の径方向中心を基準とした非対称の配置構成の3つのスロット910を有する。この配置構成はブレード部分220のラジアルの位置決めを制限する。ピペッターシャフト103および据え付け部分104が、時計構造部305としての固相微量抽出デバイス1100の3つのスロット910に係合されるための時計構造部インターフェース406としての凸部804を有し、それによりブレード部分220の1回のラジアル配向を可能にする。
【0063】
図13(a)を参照すると、一実施形態では、固相微量抽出デバイス1300が、時計構造部305としての、内側表面1310aおよび外側表面1310bを有する2つの中空凸部を用いてのブレード部分220の所定のラジアル配向で設定される。中空凸部1310aおよび1310bのラジアル位置が、時計構造部インターフェース406としての凸部804に対応する。この方式では、固相微量抽出デバイス1300が二重の機能を実施する:(1)内側表面1310aが凸部804を受けるように構成される;(2)外側表面1310bのテーパ形状が、固相微量抽出デバイス1300の形状およびラジアル方向の配置構成に適合するスロット410を有する固相微量抽出デバイス保管装置400に固相微量抽出デバイス1300を誘導するように構成される。受け用マウント210の上側表面215上の電気伝導性端子616が、固相微量抽出デバイス操作装置700とブレード部分220との間の電気的な接続を実現することができる。図13(b)を参照すると、別の実施形態では、内側表面1310aおよび外側表面1310bを有する3つの中空凸部を組み込むことにより、固相微量抽出デバイス1350のラジアル位置を、固相微量抽出デバイス操作装置700を基準とした単一の位置に固定することになる。
【0064】
上記本明細書は例示の実施形態を示して説明するものであるが、当業者は、種々の変更形態が作られ得ること、および本発明の範囲から逸脱することなくその要素に対して均等物を代用することができること、を理解されたい。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく特定の状況または材料を本発明の教示に適合させるように多くの修正形態が作られ得る。したがって、本発明は、本発明を実施するのに最良と考えられる形態として開示される特定の実施形態のみに限定されることを意図されない。しかし、本発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるすべての実施形態を有することになる。
図1
図2(a)】
図2(b)】
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13(a)】
図13(b)】
【手続補正書】
【提出日】2024-06-17
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相微量抽出デバイスであって、
少なくとも1つの表面を有する基体と、
前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に配置される吸着剤層と、
前記基体から延在する微量抽出デバイス先端部と、
受け取りデバイスの据え付け部分に取り外し可能に取り付けられるように構成される受け用マウントと、
前記受け取りデバイスを基準とした前記表面のラジアル配向を固定するように構成されるとともに、前記受け用マウントと一体化した時計構造部と
を備え、
前記時計構造部が、前記受け取りデバイスの相補的な凸部または相補的な凹部の少なくとも一方に対応する凹部または凸部のうちの少なくとも一方を有し、その結果、前記固相微量抽出デバイスが前記受け取りデバイスに設置されるときに、前記時計構造部が、前記受け取りデバイスを基準として前記固相微量抽出デバイスの前記ラジアル配向を所定の数のラジアル位置までに制限し、
前記時計構造部が有する前記凹部または前記凸部は、前記受け用マウントの表面に設けられている、
固相微量抽出デバイス。
【請求項2】
所定の数のラジアル位置が、単一のラジアル位置から構成される、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項3】
所定の数のラジアル位置が、2つの異なるラジアル位置を含む、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項4】
前記固相微量抽出デバイスが、前記受け用マウント上での前記少なくとも1つの表面の前記ラジアル配向の視覚表示を含む、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項5】
前記固相微量抽出デバイスが、被覆ブレードスプレーデバイスである、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項6】
前記受け用マウントが、ピペット先端部受け用マウントであり、前記据え付け部分が、前記ピペット先端部受け用マウントに取り外し可能に係合されるように構成されるピペッター先端部据え付け部分である、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項7】
前記受け取りデバイスが、ピペッターである、請求項6に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項8】
前記受け取りデバイスが、固相微量抽出デバイス操作装置である、請求項6に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項9】
前記基体が、電気伝導性の部分を含む、請求項1に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項10】
前記受け用マウントが、前記固相微量抽出デバイスを前記受け取りデバイスに設置するときに前記受け取りデバイスの前記据え付け部分に電気的に接続されるように構成される電気伝導性端子を含む、請求項9に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項11】
前記受け用マウントの少なくとも一部分が、前記基体の前記電気伝導性の部分および前記受け用マウントの前記電気伝導性端子に電気的に接続される電気伝導性層を含む、請求項10に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項12】
前記受け用マウントが、前記基体の前記電気伝導性の部分および前記受け用マウントの前記電気伝導性端子に電気的に接続される電極を含む、請求項10に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項13】
前記受け用マウントが、電気伝導性高分子から構成され、前記基体の前記電気伝導性の部分に電気的に接続され、前記固相微量抽出デバイスを前記受け取りデバイスに設置するときに前記受け取りデバイスの前記据え付け部分に電気的に接続されるように構成される、請求項9に記載の固相微量抽出デバイス。
【請求項14】
固相微量抽出デバイスおよび固相微量抽出デバイス保管装置を備える固相微量抽出システムであって、
前記固相微量抽出デバイスは、
少なくとも1つの表面を有する基体と、
前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に配置される吸着剤層と、
前記基体から延在する微量抽出デバイス先端部と、
受け取りデバイスに取り外し可能に取り付けられるように構成される受け用マウントであって、前記受け取りデバイスは、前記固相微量抽出デバイス保管装置である、受け用マウントと、
前記受け取りデバイスを基準とした前記表面のラジアル配向を固定するように構成されるとともに、前記受け用マウントと一体化した時計構造部と
を備え、
前記時計構造部が、前記受け取りデバイスの相補的な凸部または相補的な凹部の少なくとも一方に対応する凹部または凸部のうちの少なくとも一方を有し、その結果、前記固相微量抽出デバイスが前記受け取りデバイスに設置されるときに、前記時計構造部が、前記受け取りデバイスを基準として前記固相微量抽出デバイスの前記ラジアル配向を所定の数のラジアル位置までに制限し、
前記時計構造部が有する前記凹部または前記凸部は、前記受け用マウントの表面に設けられており、
前記固相微量抽出デバイス保管装置は、
チャンバを囲んで画定する保管装置壁と、
前記固相微量抽出デバイスの前記基体および前記受け用マウントを受けて保持するように各々が構成される、前記保管装置壁に配置される複数のオリフィスと、
前記固相微量抽出デバイスの前記時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、前記固相微量抽出デバイスを前記所定のラジアル配向で固定するように各々が構成される、前記保管装置壁に配置される複数の時計構造部インターフェースと
を備え、
前記チャンバが、前記固相微量抽出デバイスの前記基体を受け入れるように構成され、前記基体、および前記基体から延在する前記微量抽出デバイス先端部が、前記保管装置壁または前記固相微量抽出デバイス保管装置に配置される任意の隣接する固相微量抽出デバイスに接触しないように構成されている、固相微量抽出システム。
【請求項15】
前記固相微量抽出デバイスが、被覆ブレードスプレーデバイスである、請求項14に記載の固相微量抽出システム。
【請求項16】
前記複数のオリフィスが、二次元アレイで配置される、請求項14に記載の固相微量抽出システム。
【請求項17】
固相微量抽出デバイスおよび固相微量抽出デバイス操作装置を備える固相微量抽出システムであって、
前記固相微量抽出デバイスは、
少なくとも1つの表面を有する基体と、
前記少なくとも1つの表面の少なくとも一部分に配置される吸着剤層と、
前記基体から延在する微量抽出デバイス先端部と、
受け取りデバイスの据え付け部分に取り外し可能に取り付けられるように構成されるピペット先端部受け用マウントであって、前記受け取りデバイスは前記固相微量抽出デバイス操作装置であり、前記ピペット先端部受け用マウントは電気伝導性端子を含む、ピペット先端部受け用マウントと、
前記受け取りデバイスを基準とした前記表面のラジアル配向を固定するように構成されるとともに、前記ピペット先端部受け用マウントと一体化した時計構造部と
を備え、
前記時計構造部が、前記受け取りデバイスの相補的な凸部または相補的な凹部の少なくとも一方に対応する凹部または凸部のうちの少なくとも一方を有し、その結果、前記固相微量抽出デバイスが前記受け取りデバイスに設置されるときに、前記時計構造部が、前記受け取りデバイスを基準として前記固相微量抽出デバイスの前記ラジアル配向を所定の数のラジアル位置までに制限し、
前記時計構造部が有する前記凹部または前記凸部は、前記ピペット先端部受け用マウントの表面に設けられており、
前記固相微量抽出デバイス操作装置は、
操作装置シャフトと、
前記操作装置シャフトの端部に配置される据え付け部分であって、前記据え付け部分が、前記固相微量抽出デバイスのピペット先端部受け用マウントに取り外し可能に係合されるように構成されるピペッター先端部据え付け部分である、据え付け部分と、
前記固相微量抽出デバイスの前記ピペット先端部受け用マウントを前記据え付け部分に設置するように、前記据え付け部分に配置される電気伝導性接点であって、前記電気伝導性接点が、前記ピペット先端部受け用マウントの電気伝導性端子に電気的に接続される、電気伝導性接点と、
前記ピペット先端部受け用マウントを前記据え付け部分から切り離すように構成される取り外し装置と、
前記固相微量抽出デバイスの前記時計構造部を所定のラジアル配向に誘導し、前記固相微量抽出デバイスを前記所定のラジアル配向で固定するように構成される時計構造部インターフェースと
を備える、固相微量抽出システム。
【請求項18】
前記取り外し装置が、取り外し装置シャフトである、または、前記取り外し装置が、電気絶縁材料を含む、請求項17に記載の固相微量抽出システム。
【請求項19】
前記ピペット先端部受け用マウントの少なくとも一部分が、前記基体の電気伝導性の部分および前記ピペット先端部受け用マウントの電気伝導性端子と電気的に接続される電気伝導性層を含む、または、
前記ピペット先端部受け用マウントが、前記基体の電気伝導性の部分および前記ピペット先端部受け用マウントの電気伝導性端子に電気的に接続される電極を含む、または、
前記ピペット先端部受け用マウントが、電気伝導性高分子から構成され、前記基体の電気伝導性の部分に電気的に接続され、前記固相微量抽出デバイスを前記受け取りデバイスに設置するときに前記受け取りデバイスの前記据え付け部分に電気的に接続されるように構成される、請求項17に記載の固相微量抽出システム。
【請求項20】
前記固相微量抽出デバイスが、被覆ブレードスプレーデバイスである、請求項17に記載の固相微量抽出システム。
【外国語明細書】