IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱瓦斯化学株式会社の特許一覧

特開2024-119992殺菌及び洗浄用組成物、その製造方法、及びそれを用いた殺菌及び洗浄方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024119992
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】殺菌及び洗浄用組成物、その製造方法、及びそれを用いた殺菌及び洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 3/39 20060101AFI20240827BHJP
   C11D 1/06 20060101ALI20240827BHJP
   C11D 3/36 20060101ALI20240827BHJP
   C11D 3/06 20060101ALI20240827BHJP
   C11D 3/33 20060101ALI20240827BHJP
   C11D 3/30 20060101ALI20240827BHJP
   A01N 37/02 20060101ALI20240827BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20240827BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20240827BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
C11D3/39
C11D1/06
C11D3/36
C11D3/06
C11D3/33
C11D3/30
A01N37/02
A01P3/00
A01N59/00 A
A01N25/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024097408
(22)【出願日】2024-06-17
(62)【分割の表示】P 2020555692の分割
【原出願日】2019-11-11
(31)【優先権主張番号】P 2018212261
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2019118563
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004466
【氏名又は名称】三菱瓦斯化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】杉本 和志
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 守悟
(72)【発明者】
【氏名】印南 享
(72)【発明者】
【氏名】君塚 健一
(57)【要約】      (修正有)
【課題】安定性、殺菌性が向上され、さらにスケール除去能を有する殺菌及び洗浄用組成物、また、過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たす、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供する。さらに、前記組成物の製造方法及び前記組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法も提供する。
【解決手段】過酢酸を0.001~30質量%、過酸化水素を0.001~30質量%、酢酸及び/又はその塩を1~70質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%、及び水を含む、殺菌及び洗浄用組成物であって、前記組成物のpHが、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酢酸を0.001~30質量%、過酸化水素を0.001~30質量%、酢酸及び/又はその塩を1~70質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%、及び水を含む、殺菌及び洗浄用組成物であって、
前記殺菌及び洗浄用組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項2】
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤をさらに含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記リン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を0.0001~5質量%含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記リン酸系安定剤が、ピロリン酸又はその塩、リン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩、ニトリロトリスメチレンホスホン酸又はその塩、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸又はその塩からなる群より選択され、好ましくは1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩である、請求項2又は3に記載の組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩、ピコリン酸又はその塩、ジピコリン酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N”-三酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N”’,N”’-六酢酸又はその塩、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸又はその塩、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン又はその塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸、及び(S,S)-エチレンジアミン-N,N’-二コハク酸又はその塩のいずれかを含み、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、請求項2又は3のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項7】
過酢酸を0.001~1.5質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.00001~0.1質量%含み、
前記希釈組成物のpH値が、4.0~10.0である、請求項6に記載の希釈組成物。
【請求項8】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
【請求項9】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
【請求項10】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
【請求項11】
前記添加剤、酢酸、アルカリ、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する、請求項10に記載の製造方法。
【請求項12】
少なくとも下記成分を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含む、請求項6又は7に記載の希釈組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水及び酢酸
(ii)酢酸塩又はアルカリ
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
【請求項13】
前記希釈工程が、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含む、請求項12に記載の希釈組成物の製造方法。
【請求項14】
請求項1~5のいずれか一項に記載の組成物又は請求項6若しくは7に記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
【請求項15】
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法のいずれかである、請求項14に記載の殺菌及び洗浄方法。
【請求項16】
前記医療用器具が、透析用器具である、請求項14又は15に記載の殺菌及び洗浄方法。
【請求項17】
過酢酸を0.01~30質量%、過酸化水素を0.1~30質量%、酢酸を1~60質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%、及び水を含む、殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項18】
安定剤をさらに含む、請求項17に記載の組成物。
【請求項19】
前記安定剤を0.01~5質量%含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記安定剤が、リン酸系安定剤である、請求項18又は19に記載の組成物。
【請求項21】
前記リン酸系安定剤が、ピロリン酸、リン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸からなる群より選択され、好ましくはピロリン酸である、請求項20に記載の組成物。
【請求項22】
キレート剤をさらに含む、請求項17~21のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項23】
キレート剤を0.01~2質量%含む、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リンゴ酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、及びジピコリン酸からなる群より選択される、請求項22又は23に記載の組成物。
【請求項25】
請求項17~24のいずれか1項に記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項26】
過酢酸を0.001~0.2質量%、過酸化水素を0.01~2質量%、酢酸を0.01~1質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.00001~0.1質量%含む、請求項25に記載の希釈組成物。
【請求項27】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項17~24のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
【請求項28】
請求項17~24のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、下記工程(A)及び(B)を含む、前記組成物の製造方法。
工程(A) 少なくとも、酢酸、30~65質量%の過酸化水素水溶液、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合する工程
工程(B) 工程(A)で得られた水溶液(a)を20~60℃で1日以上静置する工程
【請求項29】
前記工程(A)が、キレート剤を混合することをさらに含む、請求項28に記載の組成物の製造方法。
【請求項30】
請求項17~24のいずれか一項に記載の組成物の製造方法であって、下記工程(C)~(E)を含む、前記組成物の製造方法。
工程(C) 少なくとも、酢酸、30~65質量%の過酸化水素水溶液を混合する工程
工程(D) 工程(C)で得られた水溶液(c)を20~60℃で1日以上静置する工程
工程(E) 工程(D)で得られた水溶液(d)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水を混合する工程
【請求項31】
前記工程(E)において、さらにキレート剤を混合する、請求項30に記載の組成物の製造方法。
【請求項32】
少なくとも下記成分を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含む、請求項25又は26に記載の希釈組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
【請求項33】
前記希釈工程が、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含む、請求項32に記載の希釈組成物の製造方法。
【請求項34】
請求項17~24のいずれか一項に記載の組成物又は請求項25若しくは26に記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
【請求項35】
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法のいずれかである、請求項34に記載の殺菌及び洗浄方法。
【請求項36】
前記医療用器具が、透析用器具である、請求項34又は35記載の殺菌及び洗浄方法。
【請求項37】
過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含む、
殺菌及び洗浄用組成物であって、
前記殺菌及び洗浄用組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項38】
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩のいずれかを含み、好ましくは1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩である、請求項37に記載の組成物。
【請求項39】
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩のいずれかを含み、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、請求項37又は38に記載の組成物。
【請求項40】
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であって、
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、請求項37~39のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項41】
前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含む、請求項37~40のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項42】
リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上をさらに含む、請求項37~41のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項43】
さらに、添加剤としてすず酸ナトリウムを含む、請求項37~42のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項44】
前記すず酸ナトリウムを0.0001~5質量%含む、請求項43に記載の組成物。
【請求項45】
過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤としてすず酸ナトリウムを含む、
殺菌及び洗浄用組成物であって、
前記殺菌及び洗浄用組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
【請求項46】
前記すず酸ナトリウムを0.0001~5質量%含む、請求項45に記載の組成物。
【請求項47】
さらに、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含む、請求項45又は46のいずれかに記載の組成物。
【請求項48】
前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含む、請求項47に記載の組成物。
【請求項49】
前記組成物のpH値が、5.0~9.0である請求項37~48のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項50】
請求項37~49のいずれか1項に記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項51】
過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含み、
前記殺菌及び洗浄用希釈組成物のpH値が、4.0~10.0である、請求項50に記載の殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項52】
過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤としてすず酸ナトリウムを含み、
前記殺菌及び洗浄用希釈組成物のpH値が、4.0~10.0である、請求項50に記載の殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【請求項53】
前記過酸化水素が、超純過酸化水素である、請求項37~49のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項50~52のいずれか一項に記載の希釈組成物。
【請求項54】
前記酢酸が、超純酢酸である、請求項37~49のいずれか一項に記載の組成物、又は請求項50~53のいずれか一項に記載の希釈組成物。
【請求項55】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項37~49、53、及び54のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上
【請求項56】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項37~49、53、及び54のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
【請求項57】
前記添加剤、酢酸及びアルカリを混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する、請求項56に記載の製造方法。
【請求項58】
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、請求項37~49、53、及び54のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
【請求項59】
前記混合工程において、Al、Zr、及びNbからなる群より選択される金属を添加することをさらに含む、請求項55~58のいずれか一項に記載の組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に医療用器具の殺菌・洗浄に適する殺菌及び洗浄用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、過酸水溶液は広く医療用器具の殺菌・洗浄に使われている(特許文献1~4)。
しかしながら、従来の過酸水溶液は、安定性、殺菌性、スケール除去能の点で必ずしも満足のいくものではない。
【0003】
また、従来、医療機器の殺菌・洗浄には、酸性やアルカリ性の薬品が使用されており、過酸水溶液もその1つである。しかしながら、酸性やアルカリ性の薬品が使用されるために、その廃液が下水排除基準を満たさないまま排水されて、コンクリート製の下水道管が損傷している例が後を絶たない。下水道管の損傷は、下水への排水ができなくなると共に、道路陥没を引き起こす可能性もあり、早急な対応が必要である。このような背景のもと、東京都下水道局は、2019年1月に、透析排水と下水道管についての注意喚起を発表した。東京都下水道局では、排水についての下水排除基準を水素イオン濃度(pH)が5を超え9未満の範囲内に収めることを求めている。
【0004】
医療機器の殺菌・洗浄に用いる殺菌及び洗浄用過酢酸組成物としては、酸性の過酢酸水溶液(特許文献5)、アルミニウム腐食抑制性の酸性酸化剤含有組成物(特許文献6)、アルカリ性の殺菌洗浄用製剤(特許文献7)などが知られている。しかしながら、これらの組成物は、必ずしも排水についての下水排除基準を満たすものとは言えない。よって、依然として、配水管を傷めない洗浄剤に対するニーズも存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2007-507599号公報
【特許文献2】特表2013-505929号公報
【特許文献3】特開2015-40209号公報
【特許文献4】特開2016-17056号公報
【特許文献5】特開2010-184868号公報
【特許文献6】WO2010/095231号公報
【特許文献7】特表2016-532634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
安定性、殺菌性が向上され、さらにスケール除去能を有する殺菌及び洗浄用組成物が求められている。また、過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たす、医療機器殺菌及び洗浄用組成物に対するニーズも存在する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、過酢酸へ特殊なアニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸)を添加することにより、従来の過酢酸水溶液より安定性、殺菌性を向上することができ、さらにスケール除去能を有する殺菌及び洗浄用組成物を提供することができることを見出した。また、本発明者らは、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を添加することにより、過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たす、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供することができることも見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、下記の実施形態を含む。
【0009】
<1>
過酢酸を0.001~30質量%、過酸化水素を0.001~30質量%、酢酸及び/又はその塩を1~70質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%、及び水を含む、殺菌及び洗浄用組成物であって、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
<2>
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤をさらに含む、<1>に記載の組成物。
<3>
前記リン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を0.0001~5質量%含む、<2>に記載の組成物。
<4>
前記リン酸系安定剤が、ピロリン酸又はその塩、リン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩、ニトリロトリスメチレンホスホン酸又はその塩、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸又はその塩からなる群より選択され、好ましくは1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩である、<2>又は<3>に記載の組成物。
<5>
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩、ピコリン酸又はその塩、ジピコリン酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N”-三酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N”’,N”’-六酢酸又はその塩、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸又はその塩、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン又はその塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸、及び(S,S)-エチレンジアミン-N,N’-二コハク酸又はその塩のいずれかを含み、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、<2>又は<3>のいずれかに記載の組成物。
【0010】
<6>
<1>~<5>のいずれかに記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
<7>
過酢酸を0.001~1.5質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.00001~0.1質量%含み、
前記希釈組成物のpH値が、4.0~10.0である、<6>に記載の希釈組成物。
【0011】
<8>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
<9>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
<10>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<1>~<5>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
<11>
前記添加剤、酢酸、アルカリ、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する、<10>に記載の製造方法。
<12>
少なくとも下記成分を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含む、<6>又は<7>に記載の希釈組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水及び酢酸
(ii)酢酸塩又はアルカリ
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
<13>
前記希釈工程が、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含む、<12>に記載の希釈組成物の製造方法。
【0012】
<14>
<1>~<5>のいずれかに記載の組成物又は<6>若しくは<7>に記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
<15>
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法のいずれかである、<14>に記載の殺菌及び洗浄方法。
<16>
前記医療用器具が、透析用器具である、<14>又は<15>に記載の殺菌及び洗浄方法。
【0013】
<17>
過酢酸を0.01~30質量%、過酸化水素を0.1~30質量%、酢酸を1~60質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%、及び水を含む、殺菌及び洗浄用組成物。
<18>
安定剤をさらに含む、<17>に記載の組成物。
<19>
前記安定剤を0.01~5質量%含む、<18>に記載の組成物。
<20>
前記安定剤が、リン酸系安定剤である、<18>又は<19>に記載の組成物。
<21>
前記リン酸系安定剤が、ピロリン酸、リン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸からなる群より選択され、好ましくはピロリン酸である、<20>に記載の組成物。
<22>
キレート剤をさらに含む、<17>~<21>のいずれかに記載の組成物。
<23>
キレート剤を0.01~2質量%含む、<22>に記載の組成物。
<24>
前記キレート剤が、エチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リンゴ酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、及びジピコリン酸からなる群より選択される、<22>又は<23>に記載の組成物。
【0014】
<25>
<17>~<24>のいずれかに記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
<26>
過酢酸を0.001~0.2質量%、過酸化水素を0.01~2質量%、酢酸を0.01~1質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.00001~0.1質量%含む、<25>に記載の希釈組成物。
【0015】
<27>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<17>~<24>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
<28>
<17>~<24>のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、下記工程(A)及び(B)を含む、前記組成物の製造方法。
工程(A) 少なくとも、酢酸、30~65質量%の過酸化水素水溶液、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合する工程
工程(B) 工程(A)で得られた水溶液(a)を20~60℃で1日以上静置する工程
<29>
前記工程(A)が、キレート剤を混合することをさらに含む、<28>に記載の組成物の製造方法。
<30>
<17>~<24>のいずれかに記載の組成物の製造方法であって、下記工程(C)~(E)を含む、前記組成物の製造方法。
工程(C) 少なくとも、酢酸、30~65質量%の過酸化水素水溶液を混合する工程
工程(D) 工程(C)で得られた水溶液(c)を20~60℃で1日以上静置する工程
工程(E) 工程(D)で得られた水溶液(d)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水を混合する工程
<31>
前記工程(E)において、さらにキレート剤を混合する、<30>に記載の組成物の製造方法。
<32>
少なくとも下記成分を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含む、<25>又は<26>に記載の希釈組成物の製造方法。
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
<33>
前記希釈工程が、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含む、<32>に記載の希釈組成物の製造方法。
【0016】
<34>
<17>~<24>のいずれかに記載の組成物又は<25>若しくは<26>に記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
<35>
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法のいずれかである、<34>に記載の殺菌及び洗浄方法。
<36>
前記医療用器具が、透析用器具である、<34>又は<35>記載の殺菌及び洗浄方法。
【0017】
<37>
過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含む、
殺菌及び洗浄用組成物であって、
前記殺菌及び洗浄用組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
<38>
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩のいずれかを含み、好ましくは1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩である、<37>に記載の組成物。
<39>
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩のいずれかを含み、好ましくはエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、<37>又は<38>に記載の組成物。
<40>
前記リン系安定剤が、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であって、
前記カルボン酸系安定剤が、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である、<37>~<39>のいずれかに記載の組成物。
<41>
前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含む、<37>~<40>のいずれかに記載の組成物。
<42>
リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上をさらに含む、<37>~<41>のいずれかに記載の組成物。
<43>
さらに、添加剤としてすず酸ナトリウムを含む、<37>~<42>のいずれかに記載の組成物。
<44>
前記すず酸ナトリウムを0.0001~5質量%含む、<43>に記載の組成物。
<45>
過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤としてすず酸ナトリウムを含む、
殺菌及び洗浄用組成物であって、
前記殺菌及び洗浄用組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。
<46>
前記すず酸ナトリウムを0.0001~5質量%含む、<45>に記載の組成物。
<47>
さらに、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含む、請求項45又は46のいずれかに記載の組成物。
<48>
前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含む、<47>に記載の組成物。
<49>
前記組成物のpH値が、5.0~9.0である<37>~<48>のいずれかに記載の組成物。
【0018】
<50>
<37>~<49>のいずれかに記載の組成物と、
追加の水
とを含む、殺菌及び洗浄用希釈組成物。
<51>
過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含み、
前記殺菌及び洗浄用希釈組成物のpH値が、4.0~10.0である、<50>に記載の殺菌及び洗浄用希釈組成物。
<52>
過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤としてすず酸ナトリウムを含み、
前記殺菌及び洗浄用希釈組成物のpH値が、4.0~10.0である、<50>に記載の殺菌及び洗浄用希釈組成物。
【0019】
<53>
前記過酸化水素が、超純過酸化水素である、<37>~<49>のいずれかに記載の組成物、又は<50>~<52>のいずれかに記載の希釈組成物。
<54>
前記酢酸が、超純酢酸である、<37>~<49>のいずれかに記載の組成物、又は<50>~<53>のいずれかに記載の希釈組成物。
【0020】
<55>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<37>~<49>、<53>、及び<54>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上
<56>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<37>~<49>、<53>、及び<54>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
<57>
前記添加剤、酢酸及びアルカリを混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する、<56>に記載の製造方法。
<58>
少なくとも下記成分を混合する混合工程を含む、<37>~<49>、<53>、及び<54>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
<59>
前記混合工程において、Al、Zr、及びNbからなる群より選択される金属を添加することをさらに含む、<55>~<58>のいずれかに記載の組成物の製造方法。
【0021】
<60>
<37>~<49>、<53>及び<54>のいずれかに記載の組成物又は上記<50>~<54>のいずれかに記載の希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法。
【0022】
<61>
前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法のいずれかである、<60>に記載の殺菌及び洗浄方法。
【0023】
<62>前記医療用器具が、透析用器具である、<60>又は<61>に記載の殺菌及び洗浄方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明の一実施形態によれば、過酢酸へ特殊なアニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸)を添加することにより、従来の過酢酸水溶液より安定性、殺菌性を向上することができ、さらにスケール除去能を有する殺菌及び洗浄用組成物を提供することができる。本発明の別の実施形態によれば、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を添加することにより、過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たす、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供することができ、この本発明の組成物は、pH値が下水排除基準を満たすため、使用後の廃液を中和処理する必要なく排水することができる。本発明の組成物はいずれも、医療用器具の中でも特に透析用器具の殺菌・洗浄に適している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施形態A]
A-1.殺菌及び洗浄用組成物
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水を含む。
【0026】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、そのpH値が4.0~10.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、例えば、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0,8.5、9.0,9.5、10.0などであってよいが、これらの値に限定されない。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、例えば、4.0~10.0、4.0~9.5、4.0~9.0、4.0~8.5、4.0~8.0、4.0~7.5、4.0~7.0、4.0~6.5、4.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、4.5~10.0、4.5~9.5、4.5~9.0、4.5~8.5、4.5~8.0、4.5~7.5、4.5~7.0、4.5~6.5、4.5~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0~10.0、5.0~9.5、5.0~9.0、5.0~8.5、5.0~8.0、5.0~7.5、5.0~7.0、5.0~6.5、5.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.1~10.0、5.1~9.5、5.1~9.0、5.1~8.5、5.1~8.0、5.1~7.5、5.1~7.0、5.1~6.5、5.1~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.2~10.0、5.2~9.5、5.2~9.0、5.2~8.5、5.2~8.0、5.2~7.5、5.2~7.0、5.2~6.5、5.2~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.3~10.0、5.3~9.5、5.3~9.0、5.3~8.5、5.3~8.0、5.3~7.5、5.3~7.0、5.3~6.5、5.3~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.4~10.0、5.4~9.5、5.4~9.0、5.4~8.5、5.4~8.0、5.4~7.5、5.4~7.0、5.4~6.5、5.4~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.5~10.0、5.5~9.5、5.5~9.0、5.5~8.5、5.5~8.0、5.5~7.5、5.5~7.0、5.5~6.5、5.5~6.0であってよい。本発明の好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0超である。本発明の好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5超10以下である。本発明の好ましい別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5超9以下である。
【0027】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸を0.001~30質量%、過酸化水素を0.001~30質量%、酢酸及び/又はその塩を1~70質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であってよい。
【0028】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、前記過酢酸を0.01~15質量%、前記過酸化水素を0.01~25質量%、前記酢酸及び/又はその塩を1~60質量%、及び前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~2質量%含み得るものであって、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であってよい。
【0029】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、前記過酢酸を0.05~15質量%、前記過酸化水素を0.02~20質量%、前記酢酸及び/又はその塩を5~50質量%、及び前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~1質量%含み得るものであって、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であってよい。
【0030】
本発明の一実施形態において、上記の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤をさらに含み得る。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、リン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤の濃度は、0.0001~5質量%であってよい。
【0031】
以下、各成分について説明する。
【0032】
(1)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、アニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を含む。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられるポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸は、下記の一般式で表される。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩などであってよいが、これらに限定されない。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩は、好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸である。
-(O-R)n-O-R-COOH
(式中、Rはラウリル基であり、Rはエチレン基であり、Rはメチレン基であり、nは1~30の数を表す。)
【0033】
好ましい実施形態において、nは、2~20であってよい。好ましい実施形態において、nは例えば、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15であってよいが、これらに限定されない。より好ましい実施形態において、nは4.5又は10である。
【0034】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられるポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の分子量は、300~1200であってよい。好ましい実施形態において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の分子量は、400~1000である。
【0035】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の濃度は、0.001~5質量%であってよい。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の濃度は、好ましくは0.001~2質量%であってよく、より好ましくは0.001~1質量%であってよい。
【0036】
(2)その他の成分
<過酸化水素>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素が含まれる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素は、それ自体、殺菌・洗浄能力を有するため、組成物全体の殺菌・洗浄効果を高めるのに寄与するだけでなく、酢酸との平衡反応により十分な量の過酢酸の生成及び維持(水溶液中における安定性)に寄与している。よって、酢酸と過酸化水素との組み合わせにより、さらに本発明の組成物の殺菌・洗浄効果を高めることができる。
【0037】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酸化水素の濃度は、好ましくは0.001~30質量%、より好ましくは0.01~25質量%、さらにより好ましくは0.02~20質量%である。過酸化水素の濃度が低すぎると酢酸との平衡反応により生成する過酢酸の量が十分でなく、本発明の殺菌・洗浄効果が十分に発揮されない場合がある。一方、過酸化水素の濃度が高すぎても前記効果は高まらず、かえって安全性に問題が生じる場合がある。
【0038】
<酢酸及び/又はその塩>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる酢酸及び/又はその塩としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0039】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における酢酸及び/又はその塩の濃度は、好ましくは1~70質量%であってよく、より好ましくは1~60質量%であり、さらにより好ましくは5~50質量%である。
【0040】
<過酢酸>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる過酢酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0041】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、好ましくは0.001~30質量%であってよく、より好ましくは0.01~15質量%であり、さらにより好ましくは0.05~15質量%である。
【0042】
<安定剤>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加物として安定剤を含んでよい。安定剤を入れることにより、過酸化水素の安定性が向上する。安定剤としては、過酸化水素の安定剤であればいずれも使用できるが、例えばリン酸系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を用いることができる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるリン系安定剤としては、例えば、ピロリン酸又はその塩、リン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩、ニトリロトリスメチレンホスホン酸又はその塩、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸又はその塩が挙げられるが、これらに限定されない。リン系安定剤は、好ましくは、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩である。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるカルボン酸系安定剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩、ピコリン酸又はその塩、ジピコリン酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N”-三酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N”’,N”’-六酢酸又はその塩、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸又はその塩、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン又はその塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸、及び(S,S)-エチレンジアミン-N,N’-二コハク酸又はその塩が挙げられるが、これらに限定されない。カルボン酸系安定剤は、好ましくは、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩である。
【0043】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、安定剤の濃度は、好ましくは0.0001~5質量%であってよく、より好ましくは0.0001~2質量%であり、さらにより好ましくは0.0002~1質量%である。
【0044】
<その他の成分>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物には、さらに必要に応じて、一般的な殺菌及び洗浄用薬剤等に使用される添加剤など、例えば界面活性剤、増粘剤、香料、着色剤、加水分解酵素等が適宜配合されていてもよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、過酸化水素、酢酸、過酢酸、及び必要に応じて添加する安定剤その他の添加剤以外の残分は、主として水である。
【0045】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、希釈することなくそのまま用いるか、あるいは任意の濃度に希釈して殺菌及び洗浄用希釈組成物とすることができる。希釈剤としては通常、水が用いられる。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0046】
A-2.殺菌及び洗浄用希釈組成物
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水、並びに希釈剤として追加の水を含む。各成分については、上述した通りである。
【0047】
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、上記の殺菌及び洗浄用希釈組成物を水で希釈することにより作製され得る。上述のように、希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0048】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸を0.001~1.5質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.00001~0.1質量%含むものであってよい。
【0049】
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、前記過酢酸を0.001~0.5質量%、前記過酸化水素を0.005~1質量%、前記酢酸及び/又はその塩を0.05~5質量%、及び前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.00005~0.05質量%含み得る。
【0050】
A-3.殺菌及び洗浄用組成物及び殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
を混合する混合工程を含むものであってよい。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0051】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
を混合する混合工程を含むものであってよい。
【0052】
上記酢酸塩としては、水溶液とした際にアルカリ性である酢酸塩であればよく、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸ルビジウム、酢酸ストロンチウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸アンモニウムを用いることができるがこれらに限定されない。本発明の一実施形態において、酢酸塩は、酢酸ナトリウムであってよい。本発明の別の実施形態において、酢酸塩は、酢酸カリウムであってよい。
【0053】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
を混合する混合工程を含むものであってよい。
【0054】
この製造方法では、中和熱が発生し平行移動速度が増加して反応が加速され得る。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0055】
上記アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化ルビジウム、水酸化ストロンチウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、アンモニアなどを用いることができるがこれらに限定されない。本発明の一実施形態において、アルカリは、水酸化ナトリウムであってよい。本発明の別の実施形態において、アルカリは、水酸化カリウムであってよい。
【0056】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
を混合する混合工程を含むものであってよい。リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上を添加することにより、希釈後のpHの変化をより少なくすることができる。この製造方法において、(iii)としてリン酸塩、クエン酸塩を使用する場合には、中和熱が発生せず、作業性が良い。また、この製造方法において、(iii)としてトリス塩基を用いる場合には、中和熱が発生し平行移動速度が増加して反応が加速され得る。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0057】
上記リン酸塩としては、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。リン酸のナトリウム塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられるがこれらに限定されない。リン酸のカリウム塩としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0058】
上記トリス塩基とは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを意味する。
【0059】
アルカリ又はトリス塩基を使用する上記の製造方法は、添加剤、酢酸、アルカリ又はトリス塩基、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する工程を含み得る。この製造方法では、中和熱が発生するため、添加剤、酢酸、及びアルカリ又はトリス塩基を混合することにより発生する中和熱を利用して、30~50℃で過酸化水素水を混合することができ、これにより平行移動速度が増加して反応を加速させることができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(A)及び(B):
工程(A) 少なくとも、(i)添加剤、(ii)過酸化水素水及び酢酸、(iii)酢酸塩又はアルカリ、又はリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上、並びに(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合する工程と;
工程(B) 工程(A)で得られた水溶液(a)を1日以上静置する工程
とを含むものであってよい。工程(A)で得られた水溶液(a)を工程(B)において静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。酢酸塩、リン酸塩、又はクエン酸塩を用いる実施形態において、工程(B)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(B)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。アルカリ又はトリス塩基を用いる実施形態においては、上述のように、中和熱の発生により、反応を加速することができる。
【0061】
本発明のさらに別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(C)~(E):
工程(C) 少なくとも、(ii)過酸化水素水及び酢酸、および(i)添加剤を混合する工程と;
工程(D) 工程(C)で得られた水溶液(c)を1日以上静置する工程と;
工程(E) 工程(D)で得られた水溶液(d)、(iii)酢酸塩、又はアルカリ、又はリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上、(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、並びに水を混合する工程
とを含むものであってよい。工程(C)で得られた水溶液(c)を静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。工程(D)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(D)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。その後、平衡状態に達した水溶液(d)に酢酸塩、又はアルカリ、又は、リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上、並びに水を混合する。
【0062】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩、又はアルカリ、又はリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上
(iv)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含むものであってよい。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法において、前記希釈工程は、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含み得る。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。
【0063】
[実施形態B]
B-1.殺菌及び洗浄用組成物
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水を含む。
【0064】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸を0.01~30質量%、過酸化水素を0.1~30質量%、酢酸を1~60質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%含むものであってよい。
【0065】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、前記過酢酸を0.1~15質量%、前記過酸化水素を1~25質量%、前記酢酸を1~50質量%及び前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~2質量%含み得る。
【0066】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、前記過酢酸を0.5~15質量%、前記過酸化水素を2~20質量%、前記酢酸を5~50質量%及び前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~1質量%含み得る。
【0067】
以下、各成分について説明する。
【0068】
(1)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、アニオン界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を含む。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられるポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸は、下記の一般式で表される。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸の塩は、例えばナトリウム塩、カリウム塩などであってよいが、これらに限定されない。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩は、好ましくはポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸である。
-(O-R)n-O-R-COOH
(式中、Rはラウリル基であり、Rはエチレン基であり、Rはメチレン基であり、nは1~30の数を表す。)
【0069】
好ましい実施形態において、nは、2~20であってよい。好ましい実施形態において、nは例えば、4、4.5、5、5.5、6、6.5、7、7.5、8、8.5、9、9.5、10、11、12、13、14、15であってよいが、これらに限定されない。より好ましい実施形態において、nは4.5又は10である。
【0070】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられるポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の分子量は、300~1200であってよい。好ましい実施形態において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の分子量は、400~1000である。
【0071】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の濃度は、0.001~5質量%であってよい。ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の濃度は、好ましくは0.001~2質量%であってよく、より好ましくは0.001~1質量%であってよい。本発明の一実施形態において、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩の濃度は、0.01~5質量%、0.01~2質量%、0.01~1質量%などであってよい。
【0072】
(2)その他の成分
<過酸化水素>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素が含まれる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素は、それ自体、殺菌・洗浄能力を有するため、組成物全体の殺菌・洗浄効果を高めるのに寄与するだけでなく、酢酸との平衡反応により十分な量の過酢酸の生成及び維持(水溶液中における安定性)に寄与している。よって、酢酸と過酸化水素との組み合わせにより、さらに本発明の組成物の殺菌・洗浄効果を高めることができる。
【0073】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酸化水素の濃度は、好ましくは0.1~30質量%、より好ましくは1~25質量%、さらにより好ましくは2~20質量%である。過酸化水素の濃度が低すぎると酢酸との平衡反応により生成する過酢酸の量が十分でなく、本発明の殺菌・洗浄効果が十分に発揮されない場合がある。一方、過酸化水素の濃度が高すぎても前記効果は高まらず、かえって安全性に問題が生じる場合がある。
【0074】
<酢酸>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる酢酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0075】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における酢酸の濃度は、好ましくは1~60質量%であってよく、より好ましくは1~50質量%であり、さらにより好ましくは5~50質量%である。
【0076】
<過酢酸>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる過酢酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0077】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、好ましくは0.01~30質量%であってよく、より好ましくは0.1~15質量%であり、さらにより好ましくは0.5~15質量%である。
【0078】
<安定剤>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、安定剤を含んでよい。安定剤を入れることにより、過酸化水素の安定性が向上する。安定剤としては、過酸化水素の安定剤であればいずれも使用できるが、例えばリン酸系安定剤を用いることができる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるリン系安定剤としては、例えばピロリン酸、リン酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリスメチレンホスホン酸、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸が挙げられるが、これらに限定されない。リン系安定剤は、好ましくは、ピロリン酸である。
【0079】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、安定剤の濃度は、好ましくは0.01~5質量%であってよく、より好ましくは0.01~2質量%であり、さらにより好ましくは0.02~1質量%である。
【0080】
<キレート剤>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、キレート剤を含んでよい。キレート剤を入れることにより、スケールの生成抑制、スケールの除去、タンパク除去等の効果が向上する。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるキレート剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸、クエン酸、リンゴ酸、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)、及びジピコリン酸が挙げられるが、これらに限定されない。キレート剤は、好ましくは、ジピコリン酸である。
【0081】
<その他の成分>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物には、さらに必要に応じて、一般的な殺菌及び洗浄用薬剤等に使用される添加剤など、例えば界面活性剤、増粘剤、香料、着色剤、加水分解酵素等が適宜配合されていてもよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、過酸化水素、酢酸、過酢酸、及び必要に応じて添加する安定剤その他の添加剤以外の残分は、主として水である。
【0082】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物のpHは7以下であり、好ましくはpH5以下である。pH7を超えると過酸化水素、過酢酸が分解し、安定性が低下する場合がある。
【0083】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、希釈することなくそのまま用いるか、あるいは任意の濃度に希釈して殺菌及び洗浄用希釈組成物とすることができる。希釈剤としては通常、水が用いられる。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0084】
B-2.殺菌及び洗浄用希釈組成物
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水、並びに希釈剤として追加の水を含む。各成分については、上述した通りである。
【0085】
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、上記の殺菌及び洗浄用希釈組成物を水で希釈することにより作製され得る。上述のように、希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0086】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸を0.001~0.2質量%、過酸化水素を0.01~2質量%、酢酸を0.01~1質量%、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.00001~0.1質量%含むものであってよい。
【0087】
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、前記過酢酸を0.005~0.1質量%、前記過酸化水素を0.01~1質量%、前記酢酸を0.05~0.5質量%、及び前記ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.0001~0.1質量%含み得る。
【0088】
B-3.殺菌及び洗浄用組成物及び殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
を混合する混合工程を含むものであってよい。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0089】
本発明の別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(A)及び(B):
工程(A) 少なくとも、酢酸、30~65質量%の過酸化水素水溶液、及びポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を混合する工程と;
工程(B) 工程(A)で得られた水溶液(a)を20~60℃で1日以上静置する工程
とを含むものであってよい。工程(A)で得られた水溶液(a)を工程(B)において静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。工程(B)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(B)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物の製造方法において、前記工程(A)は、キレート剤を混合することをさらに含み得る。キレート剤については、上述した通りである。
【0090】
本発明のさらに別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(C)~(E):
工程(C) 少なくとも、酢酸、30~65質量%の過酸化水素水溶液を混合する工程と;
工程(D) 工程(C)で得られた水溶液(c)を20~60℃で1日以上静置する工程と;
工程(E) 工程(D)で得られた水溶液(d)、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水を混合する工程
とを含むものであってよい。工程(C)で得られた水溶液(c)を静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。工程(D)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(D)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。その後、平衡状態に達した水溶液(d)にポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩、及び水を混合する。本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。本発明の殺菌及び洗浄用組成物の製造方法において、前記工程(E)は、さらにキレート剤を混合することを含み得る。キレート剤については、上述した通りである。
【0091】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)過酸化水素水
(ii)酢酸
(iii)ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩
を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含むものであってよい。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法において、前記希釈工程は、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含み得る。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0092】
[実施形態C]
C-1.殺菌及び洗浄用組成物
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、及び水、ならびに添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含む。
【0093】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、そのpH値が4.0~10.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、例えば、4.0、4.5、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0,8.5、9.0,9.5、10.0などであってよいが、これらの値に限定されない。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、例えば、4.0~10.0、4.0~9.5、4.0~9.0、4.0~8.5、4.0~8.0、4.0~7.5、4.0~7.0、4.0~6.5、4.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、4.5~10.0、4.5~9.5、4.5~9.0、4.5~8.5、4.5~8.0、4.5~7.5、4.5~7.0、4.5~6.5、4.5~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0~10.0、5.0~9.5、5.0~9.0、5.0~8.5、5.0~8.0、5.0~7.5、5.0~7.0、5.0~6.5、5.0~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.1~10.0、5.1~9.5、5.1~9.0、5.1~8.5、5.1~8.0、5.1~7.5、5.1~7.0、5.1~6.5、5.1~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.2~10.0、5.2~9.5、5.2~9.0、5.2~8.5、5.2~8.0、5.2~7.5、5.2~7.0、5.2~6.5、5.2~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.3~10.0、5.3~9.5、5.3~9.0、5.3~8.5、5.3~8.0、5.3~7.5、5.3~7.0、5.3~6.5、5.3~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.4~10.0、5.4~9.5、5.4~9.0、5.4~8.5、5.4~8.0、5.4~7.5、5.4~7.0、5.4~6.5、5.4~6.0であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.5~10.0、5.5~9.5、5.5~9.0、5.5~8.5、5.5~8.0、5.5~7.5、5.5~7.0、5.5~6.5、5.5~6.0であってよい。本発明の好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5.0超である。本発明の好ましい実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5超10以下である。本発明の好ましい別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物のpH値は、5超9以下である。
【0094】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であってよい。
【0095】
本発明の一実施形態において、上記の殺菌及び洗浄用組成物は、リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上をさらに含み得る。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上の濃度は、0.01~70質量%であってよい。
【0096】
本発明の一実施形態において、上記の殺菌及び洗浄用組成物は、すず酸ナトリウムをさらに含み得る。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、すず酸ナトリウムの濃度は、0.0001~5質量%であってよい。
【0097】
本発明の別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸を0.001~15質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~70質量%、過酸化水素を0.001~25質量%、及び水を含み、
添加剤としてすず酸ナトリウムを含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であってよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、すず酸ナトリウムの濃度は、0.0001~5質量%であってよい。
【0098】
本発明の一実施形態において、上記の殺菌及び洗浄用組成物は、リン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤をさらに含み得る。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、前記リン系安定剤の濃度は0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよく、前記カルボン酸系安定剤の濃度は0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよい。
【0099】
以下、各成分について説明する。
【0100】
(1)添加剤
(1-1)安定剤
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、及び水を含み、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含み得る。これらの安定剤を添加することにより、過酸化水素の安定性が向上するとともに、殺菌及び洗浄用組成物のpH値を4.0~10.0に調整することができる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤のみを含んでもよく、すず酸ナトリウムと組み合わせて含んでもよい。また、本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上をさらに含み得る。
【0101】
<リン系安定剤>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてリン系安定剤を含み得る。リン系安定剤としては、過酸化水素を安定化し、かつカルボン酸系安定剤と共に添加することにより殺菌及び洗浄用組成物のpH値を上記の範囲に調整することができるものであればいずれも使用できる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるリン系安定剤としては、例えばピロリン酸又はその塩、リン酸又はその塩、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩、ニトリロトリスメチレンホスホン酸又はその塩、2-ホスホノブタン-1,2,4-トリカルボン酸又はその塩、及びエチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸又はその塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、リン系安定剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であってよい。本発明の別の実施形態において、リン系安定剤は、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩であってよい。本発明のさらに別の実施形態において、リン系安定剤は、ピロリン酸又はその塩であってよい。本発明の好ましい実施形態において、リン系安定剤は、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩であってよい。
【0102】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、リン系安定剤の濃度は、0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよく、好ましくは0.0001~0.30質量%であってよく、より好ましくは0.0001~0.20質量%であり、さらにより好ましくは0.0001~0.10質量%であってよい。
【0103】
<カルボン酸系安定剤>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてカルボン酸系安定剤を含み得る。カルボン酸系安定剤としては、過酸化水素を安定化し、かつリン系安定剤と共に添加することにより殺菌及び洗浄用組成物のpH値を上記の範囲に調整することができるものであればいずれも使用できる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いることができるカルボン酸系安定剤としては、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩、ピコリン酸又はその塩、ジピコリン酸又はその塩、ニトリロ三酢酸又はその塩、N-(2-ヒドロキシエチル)エチレンジアミン-N,N’,N”-三酢酸又はその塩、トリエチレンテトラミン-N,N,N’,N”,N”’,N”’-六酢酸又はその塩、1,3-プロパンジアミン-N,N,N’,N’-四酢酸、1,3-ジアミノ-2-プロパノール-N,N,N’,N’-四酢酸、N-(2-ヒドロキシエチル)イミノ二酢酸又はその塩、N,N-ジ(2-ヒドロキシエチル)グリシン又はその塩、グリコールエーテルジアミン四酢酸、及び(S,S)-エチレンジアミン-N,N’-二コハク酸又はその塩が挙げられるが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、カルボン酸系安定剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩であってよい。本発明の別の実施形態において、カルボン酸系安定剤は、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩であってよい。本発明の好ましい実施形態において、カルボン酸系安定剤は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩であってよい。
【0104】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、カルボン酸系安定剤の濃度は、0.0001質量%以上0.5質量%未満であってよく、好ましくは0.0001~0.30質量%であってよく、より好ましくは0.0001~0.20質量%であり、さらにより好ましくは0.0001~0.10質量%であってよい。
【0105】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、
前記リン系安定剤として、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩、ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP)又はその塩のいずれかを含み、
前記カルボン酸系安定剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)又はその塩のいずれかを含み得る。
【0106】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、
前記リン系安定剤として、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)又はその塩を含み、
前記カルボン酸系安定剤として、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)又はその塩を含み得る。
【0107】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満、及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001質量%以上0.5質量%未満含むものであってよい。
【0108】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001~0.30質量%、及び前記及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001~0.30質量%含むものであってよい。
【0109】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001~0.20質量%、及び前記及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001~0.20質量%含むものであってよい。
【0110】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物は、前記リン系安定剤を0.0001~0.10質量%、及び前記及び前記カルボン酸系安定剤を0.0001~0.10質量%含むものであってよい。
【0111】
(1-2)すず酸ナトリウム
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、及び水を含み、添加剤としてすず酸ナトリウムを含み得る。すず酸ナトリウムを添加することにより、過酸化水素の安定性が向上するとともに、殺菌及び洗浄用組成物のpH値を4.0~10.0に調整することができる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、添加剤としてすず酸ナトリウムを単独で含んでもよく、リン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤と組み合わせて含んでもよい。
【0112】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、前記すず酸ナトリウムの濃度は、0.0001~5質量%であってよく、好ましくは0.0001~1質量%、より好ましくは0.0001~0.5質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.2質量%であってよい。
【0113】
(1-3)リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、過酢酸、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、及び水を含み、添加剤としてリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上をさらに含み得る。リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上を添加することにより、希釈後のpHの変化をより少なくすることができる。
【0114】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられ得るリン酸塩としては、リン酸のナトリウム塩、リン酸のカリウム塩等が挙げられるが、これらに限定されない。リン酸のナトリウム塩としては、例えば、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸三ナトリウム等が挙げられるがこれらに限定されない。リン酸のカリウム塩としては、例えば、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸三カリウム等が挙げられるがこれらに限定されない。
【0115】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられ得るトリス塩基とは、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンを意味する。
【0116】
(2)その他の成分
<過酸化水素>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素が含まれる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中には、過酸化水素は、それ自体、殺菌・洗浄能力を有するため、組成物全体の殺菌・洗浄効果を高めるのに寄与するだけでなく、酢酸との平衡反応により十分な量の過酢酸の生成及び維持(水溶液中における安定性)に寄与している。よって、酢酸と過酸化水素との組み合わせにより、さらに本発明の組成物の殺菌・洗浄効果を高めることができる。
【0117】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酸化水素の濃度は、0.001~25質量%であってよく、好ましくは0.005~20質量%、より好ましくは0.01~15質量%、さらにより好ましくは0.02~10質量%であってよい。過酸化水素の濃度が低すぎると酢酸との平衡反応により生成する過酢酸の量が十分でなく、本発明の殺菌・洗浄効果が十分に発揮されない場合がある。一方、過酸化水素の濃度が高すぎても前記効果は高まらず、かえって安全性に問題が生じる場合がある。
【0118】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いる過酸化水素としては、超純過酸化水素を用いることができる。超純過酸化水素に含まれる不純物としては、アルミニウム(10ppt以下)、鉄(10ppt以下)、ナトリウム(5ppt以下)が挙げられる。超純過酸化水素は、このように含まれる不純物が少ないため、得られる殺菌及び洗浄用組成物の安定性を向上させることができる。
【0119】
<酢酸及び/又はその塩>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる酢酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。酢酸の塩としては、水溶液とした際にアルカリ性である酢酸塩であれば特に限定されず、例えば、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸ルビジウム、酢酸ストロンチウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0120】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における酢酸及び/又はその塩の濃度は、0.01~70質量%であってよく、好ましくは0.05~60質量%であってよく、より好ましくは0.1~55質量%であり、さらにより好ましくは0.2~50質量%であってよい。
【0121】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において、酢酸及び/又はその塩の濃度は、過酢酸の濃度の3.5~250倍であってよい。本発明の一実施形態において、酢酸及び/又はその塩の濃度は、過酢酸の濃度の3.5~250倍、3.5~150倍、3.5~100倍、5~250倍、5~150倍、5~100倍、10~250倍、10~150倍、10~100倍、などであってよい。本発明の好ましい実施形態において、酢酸及び/又はその塩の濃度は、過酢酸の濃度の10~250倍、10~150倍、10~100倍であってよい。酢酸及び/又はその塩の濃度が上記の濃度であれば、殺菌及び洗浄対象物に付着した炭酸カルシウム等のカルシウムスケールを十分に除去することができる。
【0122】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いる酢酸としては、超純酢酸を用いることができる。超純酢酸に含まれる不純物としては、アルミニウム(10ppt以下)、鉄(10ppt以下)、ナトリウム(10ppt以下)が挙げられる。超純酢酸は、このように含まれる不純物が少ないため、得られる殺菌及び洗浄用組成物の安定性を向上させることができる。
【0123】
<過酢酸>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物において用いられる過酢酸としては、当技術分野で通常用いられるものを用いることができる。
【0124】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、0.001~15質量%であってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、例えば、0.001質量%、0.005質量%、0.01質量%、0.1質量%、0.3質量%、0.4質量%、0.5質量%、0.6質量%、1.0質量%、3.0質量%、4.0質量%、5.0質量%、10質量%、15質量%であってよいが、これらに限定されない。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、例えば、0.001~15質量%、0.001~10質量%、0.001~5質量%、0.001~3質量%、0.005~15質量%、0.005~10質量%、0.005~5質量%、0.005~3質量%、0.01~15質量%、0.01~10質量%、0.01~5質量%、0.01~3質量%、0.1~15質量%、0.1~10質量%、0.1~5質量%、0.1~3質量%、0.3~15質量%、0.3~10質量%、0.3~5質量%、0.3~3質量%、0.4~15質量%、0.4~10質量%、0.4~5質量%、0.4~3質量%、0.5~15質量%、0.5~10質量%、0.5~5質量%、0.5~3質量%、0.6~15質量%、0.6~10質量%、0.6~5質量%、0.6~3質量%、1.0~15質量%、1.0~10質量%、1.0~5質量%、1.0~3質量%、などであってよい。本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物中における過酢酸の濃度は、好ましくは0.001~10質量%であってよく、より好ましくは0.005~5質量%であり、さらにより好ましくは0.01~3質量%であってよい。
【0125】
<その他の成分>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物には、さらに必要に応じて、一般的な殺菌及び洗浄用薬剤等に使用される添加剤など、例えば界面活性剤、増粘剤、香料、着色剤、加水分解酵素等が適宜配合されていてもよい。本発明の殺菌及び洗浄用組成物中、過酸化水素、酢酸及び/又はその塩、過酢酸、及び必要に応じて添加する安定剤その他の添加剤以外の残分は、主として水である。
【0126】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物は、希釈することなくそのまま用いるか、あるいは任意の濃度に希釈して殺菌及び洗浄用希釈組成物とすることができる。希釈剤としては通常、水が用いられる。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0127】
C-2.殺菌及び洗浄用希釈組成物
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸、酢酸及び/又はその塩、過酸化水素、及び水、並びに添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含み、さらに希釈剤として追加の水を含む。各成分については、上述した通りである。
【0128】
本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物は、上記の殺菌及び洗浄用希釈組成物を水で希釈することにより作製され得る。上述のように、希釈倍率は、殺菌及び洗浄用希釈組成物として殺菌及び洗浄効果を発揮する濃度にすることができる希釈倍率であればよく、特に限定されないが、好ましくは1~10000倍、より好ましくは1~1000倍である。
【0129】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸の濃度が、0.001~1.5質量%であってよく、好ましくは0.001~1.0質量%、より好ましくは0.005~0.5質量%、さらにより好ましくは0.01~0.3質量%であってよい。
【0130】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、酢酸及び/又はその塩の濃度が、0.01~7質量%であってよく、好ましくは0.05~6質量%、より好ましくは0.1~5.5質量%、さらにより好ましくは0.2~5質量%であってよい。
【0131】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酸化水素の濃度が、0.001~2.5質量%であってよく、好ましくは0.005~2質量%、より好ましくは0.01~1.5質量%、さらにより好ましくは0.02~1.0質量%であってよい。
【0132】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であるものであってよい。
【0133】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、リン系安定剤の濃度が、0.0001~0.05質量%であってよく、好ましくは0.0001~0.03質量%、より好ましくは0.0001~0.02質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.01質量%であってよい。
【0134】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、カルボン酸系安定剤の濃度が、0.0001~0.05質量%であってよく、好ましくは0.0001~0.03質量%、より好ましくは0.0001~0.02質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.01質量%であってよい。
【0135】
本発明の別の実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、過酢酸を0.001~1.5質量%、酢酸及び/又はその塩を0.01~7質量%、過酸化水素を0.001~2.5質量%、及び水を含み、
添加剤としてすず酸ナトリウムを含み、
前記組成物のpH値が、4.0~10.0であるものであってよい。
【0136】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物は、すず酸ナトリウムの濃度が、0.0001~0.5質量%であってよく、好ましくは0.0001~0.1質量%、より好ましくは0.0001~0.05質量%、さらにより好ましくは0.0001~0.02質量%であってよい。
【0137】
C-3.殺菌及び洗浄用組成物及び殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩
を混合する混合工程を含むものであってよい。この製造方法では、中和熱が発生せず、作業性が良い。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0138】
上記酢酸塩としては、水溶液とした際にアルカリ性である酢酸塩であればよく、例えば酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、酢酸リチウム、酢酸ベリリウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム、酢酸カルシウム、酢酸ルビジウム、酢酸ストロンチウム、酢酸セシウム、酢酸バリウム、酢酸アンモニウムを用いることができるがこれらに限定されない。本発明の一実施形態において、酢酸塩は、酢酸ナトリウムであってよい。本発明の別の実施形態において、酢酸塩は、酢酸カリウムであってよい。
【0139】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)アルカリ
を混合する混合工程を含むものであってよい。この製造方法では、中和熱が発生し平行移動速度が増加して反応が加速され得る。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0140】
上記アルカリとしては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化ベリリウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化ルビジウム、水酸化ストロンチウム、水酸化セシウム、水酸化バリウム、アンモニアなどを用いることができるがこれらに限定されない。本発明の一実施形態において、アルカリは、水酸化ナトリウムであってよい。本発明の別の実施形態において、アルカリは、水酸化カリウムであってよい。
【0141】
アルカリを使用する上記の製造方法は、添加剤、酢酸及びアルカリを混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する工程を含み得る。この製造方法では、中和熱が発生するため、添加剤、酢酸及びアルカリを混合することにより発生する中和熱を利用して、30~50℃で過酸化水素水を混合することができ、これにより平行移動速度が増加して反応を加速させることができる。
【0142】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)リン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上
を混合する混合工程を含むものであってよい。この製造方法において、(iii)としてリン酸塩、クエン酸塩を使用する場合には、中和熱が発生せず、作業性が良い。また、この製造方法において、(iii)としてトリス塩基を用いる場合には、中和熱が発生し平行移動速度が増加して反応が加速され得る。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。各成分を混合する順序は任意であってよく、本発明の殺菌及び洗浄用組成物では、混合した各成分が平衡状態となっている。
【0143】
(iii)としてトリス塩基を使用する場合、上記の製造方法は、添加剤、酢酸及びトリス塩基を混合した後、30~50℃で過酸化水素水を混合する工程を含み得る。この製造方法では、中和熱が発生するため、添加剤、酢酸及びトリス塩基を混合することにより発生する中和熱を利用して、30~50℃で過酸化水素水を混合することができ、これにより平行移動速度が増加して反応を加速させることができる。
【0144】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(A)及び(B):
工程(A) 少なくとも、(i)添加剤、(ii)過酸化水素水及び酢酸、並びに(iii)酢酸塩、又はアルカリ、又はリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上
を混合する工程と;
工程(B) 工程(A)で得られた水溶液(a)を1日以上静置する工程
とを含むものであってよい。工程(A)で得られた水溶液(a)を工程(B)において静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。酢酸塩を用いる実施形態において、工程(B)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(B)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。アルカリ又はトリス塩基を用いる実施形態においては、上述のように、中和熱の発生により、反応を加速することができる。
【0145】
本発明のさらに別の実施形態において、殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、下記工程(C)~(E):
工程(C) 少なくとも、(ii)過酸化水素水及び酢酸、および(i)添加剤を混合する工程と;
工程(D) 工程(C)で得られた水溶液(c)を1日以上静置する工程と;
工程(E) 工程(D)で得られた水溶液(d)、(iii)酢酸塩、又はアルカリ、又はリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上、並びに水を混合する工程
とを含むものであってよい。工程(C)で得られた水溶液(c)を静置することにより、水溶液が平衡状態に達する。工程(D)において静置する温度は、好ましくは20~60℃であるが、より好ましくは20~50℃である。また、工程(D)において静置する時間は、好ましくは1日以上であり、例えば2日以上、3日以上、5日以上、10日以上、30日以上などであってよい。その後、平衡状態に達した水溶液(d)に酢酸塩、又はアルカリ、又はリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上、並びに水を混合する。
【0146】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物の製造方法は、前記混合工程において、Al、Zr、及びNbからなる群より選択される金属を添加することをさらに含み得る。前記混合工程において上記のような金属を添加することにより、原料混合(調合)時における混合物の安定性を向上させることができる。本発明の殺菌及び洗浄用組成物に添加される金属は、例えば、金属の標準原液として添加することができる。好ましい実施形態において、金属の標準原液は、例えば、濃度1,000ppmの標準原液であり得る。本発明の殺菌及び洗浄用組成物に添加される金属の濃度は、1000ppb以下の範囲であってよく、例えば500ppb以下、1ppb~200ppb、10ppb~150ppb、50~100ppbであってよい。好ましい実施形態において、前記混合工程において添加される金属はAlである。
【0147】
本発明の一実施形態において、殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法は、少なくとも下記成分:
(i)添加剤
(ii)過酸化水素水及び酢酸
(iii)酢酸塩、又はアルカリ、又はリン酸塩、クエン酸塩、及びトリス塩基から選択される1種以上
を混合する混合工程と、
得られた混合液を希釈する希釈工程
とを含むものであってよい。水溶液が平衡状態に達することにより、水溶液中には過酢酸も存在することになるが、混合工程において、過酢酸が加えられていてもよい。各成分については上述した通りである。本発明の殺菌及び洗浄用希釈組成物の製造方法において、前記希釈工程は、前記混合工程で得られた混合物と水とを混合することを含み得る。希釈剤として用いられる水は、例えば純水、超純水、蒸留水、精製水、注射用水、水道水などが用いられ得る。
【0148】
[殺菌及び洗浄用組成物を用いた殺菌及び洗浄方法]
本発明の上記殺菌及び洗浄用組成物又は上記殺菌及び洗浄用希釈組成物はいずれも、例えば、医療用器具、飲料食品容器、工業排水、空調設備の冷却水、衣類、調理器具、食器、浴室、台所、洗濯槽、風呂釜、家具、ペットの殺菌、洗浄等に用いることができる。
【0149】
本発明の一実施形態において、上記殺菌及び洗浄用組成物又は上記殺菌及び洗浄用希釈組成物を用いる、医療用器具の殺菌及び洗浄方法が提供される。本発明の殺菌及び洗浄方法において、前記医療用器具の殺菌及び洗浄方法が、浸漬法、噴霧法、塗布法のいずれかであってよい。本発明の医療用器具の殺菌及び洗浄方法において、用いる殺菌及び洗浄用組成物又は殺菌及び洗浄用希釈組成物の量や、殺菌及び洗浄する時間は、微生物の種類や量、洗浄用組成物又は殺菌及び洗浄用希釈組成物の濃度などに従って、適宜選択することができる。
【0150】
本発明の殺菌及び洗浄方法において、前記医療用器具としては、透析用器具、内視鏡用器具、外科手術器具、産科・泌尿器科用器具、麻酔装置類、人工呼吸装置類、歯科用器具、注射針などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の殺菌及び洗浄方法は、前記医療用器具は、好ましくは透析用器具である。
【実施例0151】
以下に、本発明の実施例を示す。しかしながら、これらの実施例は、本発明の実施形態を例示するものであって、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0152】
[実施形態A]
<過酸化水素濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の過酸化水素濃度は酸化還元滴定により行った。具体的には試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、純水100mL、1.8mol/L硫酸を10mL加えて検液とした。この検液にフェロイン試液を数滴加えて、0.1mol/L硫酸セリウム(IV)溶液で滴定し、過酸化水素濃度を算出した。
【0153】
<酢酸及び過酢酸濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の酢酸及び過酢酸濃度は中和滴定により行った。具体的には試料約0.1gを精密に量り、100mLビーカーに入れ、純水約50mLを加えて検液とした。この検液を0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、第一変曲点での添加量から酢酸濃度、第一変曲点から第二変曲点までの添加量から過酢酸濃度を算出した。
【0154】
<安定性試験>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の全過酸化物濃度は、ヨウ素還元滴定法により行った。具体的には試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、純水100mL、1.8mol/L硫酸10mLを加えた後、10質量%のヨウ化カリウム溶液10mL、1質量%モリブデン酸アンモニウム溶液を数滴加えて検液とした。この検液に0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液を滴下し、指示薬にでんぷんを使用して液の青紫色が消失し無色となったところを終点として、遊離したヨウ素を定量した。そのヨウ素量から、過酸化水素換算で全過酸化物濃度を算出した。
【0155】
殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の安定度は仕込み時の全過酸化物濃度(TPO)を100とし、測定時の全過酸化物濃度の比率により算出し、下記のように評価した。
A:93%以上(良好)
B:90%以上93%未満(実用可能)
C:90%未満(実用不可)
【0156】
<芽胞懸濁液の調整>
セレウス菌標準菌株(Microbiologics社製、製品名:Bacillus cereus ATCC10876)をNGKG寒天培地(AZONE株式会社製、製品名:サニスペック生培地)に塗布し、35℃で7日間培養した。この寒天培地に減菌蒸留水を加え、菌体をコンラージ棒で掻き取り採取し、遠心分離により減菌蒸留水で洗浄した。芽胞型のみを得るため80℃で10分間加熱し生残した菌を芽胞懸濁液とした。
【0157】
<殺菌試験>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を減菌蒸留水で40~300倍に希釈し、過酢酸濃度が90~200ppmとなるように試料液を調製した。各試料液5mLに芽胞懸濁液50μLを加え、25℃で120分間作用させた。作用後、0.1mol/L減菌チオ硫酸ナトリウム溶液で10倍に希釈し、セレウス菌検出用培地(日水製薬株式会社製、製品名:コンパクトドライX-BC)を用いて35℃で48時間培養し生菌数を測定した。また、芽胞懸濁液の生菌数を測定し、開始時の生菌数とした。
【0158】
<実施例A-1>
純水21.0gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.02g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MP Biomedicals,Inc.製)を0.01g、酢酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を55.8g、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)を9.0g、45質量%の過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:SER45)を14.2g、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸(花王株式会社、製品名:カオーアキポRLM-45)を0.01g、PE容器内で混合した。調合時の全過酸化物濃度は6.1%であった。混合後、25℃で7日間熟成することで過酸化水素5.8質量%、酢酸8.6質量%、過酢酸0.45質量%、酢酸ナトリウム33.6質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.01質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01質量%、ポリオキシエチレン(4.5)ラウリルエーテル酢酸0.01質量%、pH5.1の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)について、安定性試験及び殺菌試験を実施した。その結果は表A-1~表A-2に示した([表1]~[表2]に示す。)。
【0159】
<実施例A-2~A-4、参考例A-1>
表A-1に記載された通りの配合とした以外は、実施例A-1と同様にして、殺菌及び洗浄用組成物を作製した。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)について、安定性試験及び殺菌試験を実施した。その結果は表A-1~表A-2に示した。
【0160】
<比較例A-1>
純水37.1gとピロリン酸(純正化学株式会社製、製品名:二りん酸)を0.2g、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)を37.5g、45質量%の過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:SER45)を14.2g、PE容器内で混合した。調合時の全過酸化物濃度は6.1%であった。混合後、50℃で2日間、25℃で2日間熟成することで過酸化水素7.5質量%、酢酸32.4質量%、過酢酸6.0質量%、ピロリン酸0.2質量%、pH1.1の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)について、安定性試験及び殺菌試験を実施した。その結果は表A-1~表A-2に示した。
【0161】
上記の通り、本発明によれば、過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たす、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供することができる。
【0162】
<表A-1>
【表1】

【0163】
<表A-2>
【表2】

【0164】
[実施形態B]
<殺菌及び洗浄用組成物中の過酸化水素濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の過酸化水素濃度は酸化還元滴定により行った。具体的には殺菌及び洗浄用組成物の試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、20質量%硫酸を10mL加えて検液とした。この検液にフェロイン試液を数滴加えて、0.1mol/L硫酸セリウム(IV)溶液で滴定し、過酸化水素濃度を算出した。
【0165】
<殺菌及び洗浄用組成物中の酢酸及び過酢酸濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の酢酸濃度及び過酢酸濃度は中和滴定により行った。具体的には殺菌及び洗浄用組成物の試料約0.1gを精密に量り、100mLビーカーに入れ、純水約50mLを加えて検液とした。この検液を0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、第一変曲点での添加量から酢酸濃度を算出し、第一変曲点から第二変曲点までの添加量から過酢酸濃度を算出した。
【0166】
<殺菌及び洗浄用組成物の安定性試験>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の全過酸化物濃度は、ヨウ素還元滴定法により行った。具体的には殺菌及び洗浄用組成物の試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、純水100mL、20質量%硫酸10mLを加えた後、10質量%のヨウ化カリウム溶液10mL、1質量%モリブデン酸アンモニウム溶液を数滴加えて検液とした。この検液に0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液を滴下し、指示薬にでんぷんを使用して液の青紫色が消失し無色となったところを終点として、遊離したヨウ素を定量した。そのヨウ素量から、過酸化水素換算で全過酸化物濃度を算出した。
【0167】
本発明の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の安定度は仕込み時の全過酸化物濃度(TPO)を100とし、測定時の全過酸化物濃度の比率により算出し、下記のように評価した。
A:93%以上(良好)
B:90%以上93%未満(実用可能)
C:90%未満(実用不可)
【0168】
<芽胞懸濁液の調製>
セレウス菌標準菌株(Microbiologics社製、製品名:Bacillus cereusATCC10876)をNGKG寒天培地(AZONE株式会社製、製品名:サニスペック生培地)に塗布し、35℃で7日間培養した。この寒天培地に減菌蒸留水を加え、菌体をコンラージ棒で掻き取り採取し、遠心分離により減菌蒸留水で洗浄した。芽胞型のみを得るため80℃で10分間加熱し生残した菌を芽胞懸濁液とした。
【0169】
<殺菌試験>
本発明の殺菌及び洗浄用水溶液(過酢酸組成物)を減菌蒸留水で希釈し、過酢酸の濃度が1000ppmとなるように試料液を調製した。各試料液5mLに芽胞懸濁液50μLを加え、25℃で5~30分間作用させた。作用後、0.1mol/L減菌チオ硫酸ナトリウム溶液で10倍に希釈し、セレウス菌検出用培地(日水製薬株式会社製、製品名:コンパクトドライX-BC)を用いて35℃で48時間培養し生菌数を測定した。また、芽胞懸濁液の生菌数を測定し、開始時の生菌数とした。
【0170】
<炭酸カルシウムスケールの作成>
塩化カルシム(富士フイルム和光純薬株式会社製)と炭酸水素ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を純水に溶解し、炭酸カルシム水溶液(CaCO3として900mg/L)を調製した。SUS316板(厚み1.0×縦40×横40mm)を120℃で加熱しながら炭酸カルシウム水溶液を合計20mL滴下し、炭酸カルシウムスケールを作成した。
<スケール除去試験>
本発明の殺菌及び洗浄用水溶液(過酢酸組成物)を蒸留水で希釈し、過酢酸濃度が200ppmの試料液を調製した。各試料液10mLに炭酸カルシウムスケールが付着したSUS316板を1時間浸漬した後、純水10mLで洗浄し、乾燥した。炭酸カルシウムスケールが付着したSUS316板の試料液への浸漬前後での重量変化量をスケール除去量とした。スケール除去量は比較例1に記載の値を1とした場合の相対値として示した。スケール除去能はスケール除去量の数値が大きい方が高い。
【0171】
<タンパクの吸着>
タンパク質としてウシ血清アルブミン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を使用した。ウシ血清アルブミンを純水に溶解し、0.3質量%のアルブミン溶液を調製した。固体TC測定用試料ボートにSUS304球(AZONE株式会社製)を約0.5g入れ、アルブミン溶液を1mL滴下し、40℃で2時間真空乾燥させ、SUS304球にアルブミンを吸着させた。
【0172】
<タンパク除去試験>
本発明の殺菌及び洗浄用水溶液(過酢酸組成物)を蒸留水で希釈し、過酢酸濃度が200ppmの試料液を調製した。各試料液20mLにアルブミンが吸着したSUS304球の入った固体TC測定用試料ボートを入れ、40℃の水槽で1時間振とうした。その後、純水10mLで洗浄し、40℃で2時間真空乾燥し、固体TC測定装置(株式会社島津製作所製、製品名:TOC-VCSN、SSM-5000A)で全炭素量を測定し、炭素量から残存タンパク量を算出した。残存タンパク除去量は比較例1に記載の値を1とした場合の相対値として示した。タンパク除去能は残存タンパク量の数値が小さい方が高い。
【0173】
<実施例B-1>
35質量%の過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製:35%過酸化水素)、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)、ピロリン酸(純正化学株式会社製、製品名:二りん酸)、純水、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸(花王株式会社製、製品名:カオーアキポRLM-100)を用いて、過酸化水素11.5質量%、酢酸37.5質量%、ピロリン酸0.2%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0%となるよう混合した。混合後、25℃で11日間静置することで過酢酸6.5質量%、過酸化水素8.4質量%、酢酸32.5質量%、ピロリン酸0.2質量%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0質量%の殺菌及び洗浄用組成物を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験、スケール除去試験、タンパク除去試験を実施した。その結果は表B-1、表B-3、及び表B-5に示した([表3]、[表5]、及び[表7]に示す。)。
【0174】
<実施例B-2~B-13、比較例B-1~B-10>
実施例B-1と同様にして、表B-1及び表B-2([表3]及び[表4]に示す。)に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験、スケール除去試験、タンパク除去試験を実施した。その結果は表B-1~表B-5に示した([表3]~[表7]に示す。)。
【0175】
<実施例B-14>
35質量%の過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製:35%過酸化水素)、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)、ピロリン酸(純正化学株式会社製、製品名:二りん酸)、純水、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸(花王株式会社製、製品名:カオーアキポRLM-100)を用いて、過酸化水素15.2質量%、酢酸9.3質量%、ピロリン酸0.05質量%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0質量%となるよう混合した。混合後、25℃で11日間静置することで過酢酸1.6質量%、過酸化水素14.5質量%、酢酸8.1質量%、ピロリン酸0.05質量%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0質量%の殺菌及び洗浄用組成物を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験、スケール除去試験、タンパク除去試験を実施した。その結果は表B-1及び表B-3に示した。
【0176】
<実施例B-15、比較例B-11>
実施例B-14と同様にして、表B-1及び表B-2に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験を実施した。その結果は表B-1~表B-4に示した。
【0177】
<実施例B-16>
35質量%の過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製:35%過酸化水素)、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)(イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)、純水、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸(花王株式会社製、製品名:カオーアキポRLM-100)を用いて、過酸化水素12.1質量%、酢酸59.1質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.7質量%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0質量%となるよう混合した。混合後25℃で11日間静置することで過酢酸13.7質量%、過酸化水素5.4質量%、酢酸48.4質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.7質量%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0質量%の殺菌及び洗浄用組成物を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験を実施した。その結果は表B-1及び表B-3に示した。
【0178】
<実施例B-17、比較例B-12>
実施例B-16と同様にして、表B-1及びB-表2に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験を実施した。その結果は表B-1~表B-4に示した。
【0179】
<実施例B-18>
35質量%の過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製:35%過酸化水素)、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)(イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)、純水、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸(花王株式会社製、製品名:カオーアキポRLM-100)を用いて、過酸化水素20.3質量%、酢酸10.2質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.1質量%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0質量%となるよう混合した。混合後25℃で11日間静置することで過酢酸2.4質量%、過酸化水素19.3質量%、酢酸8.4質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.1質量%、ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル酢酸1.0質量%の殺菌及び洗浄用組成物を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験を実施した。その結果は表B-1~表B-4に示した。
【0180】
<実施例B-19、比較例B-13>
実施例B-18と同様にして、表B-1及び表B-2に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、殺菌試験及び安定性試験を実施した。その結果は表B-1~表B-4に示した。
【0181】
<表B-1>
【表3】

【0182】
<表B-2>
【表4】

【0183】
<表B-3>
【表5】

【0184】
<表B-4>
【表6】

【0185】
<表B-5>
【表7】

【0186】
上記の通り、本発明によれば、過酢酸へ特殊なアニオン界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸)を添加することにより、従来の過酢酸水溶液より安定性、殺菌性を向上することができ、さらにスケール除去能、タンパク除去能を有する殺菌及び洗浄用組成物を提供することができることが示された。
【0187】
[実施形態C]
【0188】
<殺菌及び洗浄用組成物中の過酸化水素濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の過酸化水素濃度は酸化還元滴定により行った。具体的には試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、純水100mL、1.8mol/L硫酸を10mL加えて検液とした。この検液にフェロイン試液を数滴加えて、0.1mol/L硫酸セリウム(IV)溶液で滴定し、過酸化水素濃度を算出した。
【0189】
<殺菌及び洗浄用組成物中の酢酸及び過酢酸濃度の測定方法>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の酢酸濃度及び過酢酸濃度は中和滴定により行った。具体的には殺菌及び洗浄用組成物の試料約0.1gを精密に量り、100mLビーカーに入れ、純水約50mLを加えて検液とした。この検液を0.1mol/L水酸化ナトリウム溶液で滴定し、第一変曲点での添加量から酢酸濃度を算出し、第一変曲点から第二変曲点までの添加量から過酢酸濃度を算出した。
【0190】
<殺菌及び洗浄用組成物の全過酸化物濃度(TPO)>
本発明において、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の全過酸化物濃度は、ヨウ素還元滴定法により行った。具体的には試料約0.1gを精密に量り、250mLの三角フラスコに入れ、純水100mL、1.8mol/L硫酸10mLを加えた後、10質量%のヨウ化カリウム溶液10mL、1質量%モリブデン酸アンモニウム溶液を数滴加えて検液とした。この検液に0.1mol/Lチオ硫酸ナトリウム溶液を滴下し、指示薬にでんぷんを使用して液の青紫色が消失し無色となったところを終点として、遊離したヨウ素を定量した。そのヨウ素量から、過酸化水素換算で全過酸化物濃度を算出した。
【0191】
<殺菌及び洗浄用組成物の安定度>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)の安定度は仕込み時の全過酸化物濃度(TPO)を100とし、測定時の全過酸化物濃度の比率により算出した。
【0192】
<芽胞懸濁液の調整>
セレウス菌標準菌株(Microbiologics社製、製品名:Bacillus cereus ATCC10876)をNGKG寒天培地(AZONE株式会社製、製品名:サニスペック生培地)に塗布し、35℃で7日間培養した。この寒天培地に減菌蒸留水を加え、菌体をコンラージ棒で掻き取り採取し、遠心分離により減菌蒸留水で洗浄した。芽胞型のみを得るため80℃で10分間加熱し生残した菌を芽胞懸濁液とした。
【0193】
<殺菌試験>
本発明の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を減菌蒸留水で40~300倍に希釈し、過酢酸濃度が90~200ppmとなるように試料液を調製した。各試料液5mLに芽胞懸濁液50μLを加え、25℃で120分間作用させた。作用後、0.1mol/L減菌チオ硫酸ナトリウム溶液で10倍に希釈し、セレウス菌検出用培地(日水製薬株式会社製、製品名:コンパクトドライX-BC)を用いて35℃で48時間培養し生菌数を測定した。また、芽胞懸濁液の生菌数を測定し、開始時の生菌数とした。
【0194】
<実施例C-1>
純水22.0gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.17g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MPBiomedicals,Inc.製)を0.11g、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)を18.0g、酢酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を45.6g、45質量%の過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製、製品名:SER45)を14.2g、PE容器内で調合した。調合時の全過酸化物濃度は6.1%であった。調合後、25℃で7日間熟成し、過酸化水素5.6質量%、酢酸17.1質量%、過酢酸1.1質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)0.1質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)0.1質量%、pH5.1の透析装置洗浄用として使用される過酢酸組成物を得た。得られた過酢酸組成物については、調合してから25℃で14日後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-1に示した([表8]に示す。)。安定度は、下記のように評価した。
A:94.5%以上(良好)
B:93.8%以上94.5%未満(実用可能)
C:93.8%未満(実用不可)
【0195】
<実施例C-2~C-14、比較例C-1~C-6>
添加剤として表C-1に記載されたものを用いた以外は、実施例C-1と同様にして、表C-1に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-1に示した。表中に示されている、DTPP、すず酸Na・3HO、及びDTPAとしては、下記のものを用いた。
・ジエチレントリアミンペンタメチレンホスホン酸(DTPP、三菱ガス化学株式会社製、精製品)
・すず酸ナトリウム三水和物(すず酸Na・3HO、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA、株式会社同仁化学研究所製)
【0196】
<実施例C-15~C-20>
表C-2([表9]に示す。)に記載されたとおりの配合とし、50℃で1日間熟成した以外は、実施例C-1と同様にして、表C-2に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから上記50℃で1日間の熟成、並びに25℃で20日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-2に示した。安定度は、下記のように評価した。
A:93.0%以上(良好)
B:90.0%以上93.0%未満(実用可能)
C:90.0%未満(実用不可)
【0197】
<実施例C-21~C-22、比較例C-7~C-12>
表C-3([表10]に示す。)に記載されたとおりの配合とし、25℃で21日間熟成した以外は、実施例C-1と同様にして、表C-3に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから25℃で21日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-3に示した。安定度は、下記のように評価した。
A:98.0%以上(良好)
B:96.0%以上98.0%未満(実用可能)
C:96.0%未満(実用不可)
【0198】
表中に示されている、50%フィチン酸、及びNaOHとしては、下記のものを用いた。
・50質量%フィチン酸溶液(50%フィチン酸、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・水酸化ナトリウム(NaOH、富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0199】
<実施例C-23~C-25、比較例C-13~C-14>
表C-4([表11]に示す。)に記載されたとおりの配合とした以外は、実施例C-21と同様にして、表C-4に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから25℃で21日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-4に示した。安定度は、下記のように評価した。
A:97.0%以上(良好)
B:94.0%以上97.0%未満(実用可能)
C:94.0%未満(実用不可)
【0200】
表中に示されている、ピロリン酸としては、下記のものを用いた。
・ピロリン酸(純正化学株式記会社製、製品名:二りん酸)
【0201】
<比較例C-15~C-21>
表C-5([表12]に示す。)に記載されたとおりの配合とし、25℃で11日間熟成した以外は、実施例C-21と同様にして、表C-5に示す濃度の殺菌及び洗浄用組成物を得た。殺菌及び洗浄用組成物について、調合してから25℃で21日間経過後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-5に示した。安定度は、下記のように評価した。
A:97.0%以上(良好)
B:93.0%以上97.0%未満(実用可能)
C:93.0%未満(実用不可)
【0202】
表中に示されている、ジピコリン酸、及びEDTMPとしては、下記のものを用いた。
・ジピコリン酸(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・エチレンジアミンテトラメチレンホスホン酸(EDTMP、東京化成工業株式会社製)
【0203】
<表C-1>
【表8】

【0204】
<表C-2-1>
【表9-1】

【0205】
<表C-2-2>
【表9-2】

【0206】
<表C-3-1>
【表10-1】

【0207】
<表C-3-2>
【表10-2】

【0208】
<表C-4>
【表11】

【0209】
<表C-5>
【表12】

【0210】
<実施例C-26~C-29>
下記に、本発明の殺菌及び洗浄用組成物の製造方法について検討した結果を例として表C-6に示す([表13]に示す。)。アルカリを用いた実施例C-26及びC-28では、酢酸塩を用いた実施例C-27及びC-29と比較して、中和熱による反応速度の増加が認められた。
【0211】
<表C-6>
【表13】

【0212】
<実施例C-101>
純水20.0gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.02g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MP Biomedicals,Inc.製)を0.01g、85質量%の水酸化カリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を28.4g、氷酢酸(昭和電工株式会社製、製品名:99%純良酢酸)を37.4g、45質量%の過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:SER45)を14.2g、PE容器内で混合した。調合時の全過酸化物濃度は6.1%であった。混合後、50℃で1日間熟成し、25℃になるまで冷却することで過酸化水素5.7質量%、酢酸10.7質量%、過酢酸0.33質量%、酢酸カリウム44.7質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸0.01質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.01質量%、pH5.1の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)について、安定性試験を実施した。その結果は表C-7に示した([表14]に示す。)。
【0213】
<実施例C-102~C-104、比較例C-101>
表C-7に記載された配合に変更した以外は、実施例C-101と同様にして、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)について、安定性試験を実施した。その結果は表C-7に示した。安定度は、下記のように評価した。
A:良好
B:実用可能
C:実用不可
・リン酸水素二ナトリウム十二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・クエン酸ナトリウム二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(2-アミノ-1-ヒドロキシメチル-1,3-プロパンジオール、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・2-(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジニル)エタンスルホン酸(HEPES、株式会社同仁化学研究所)
【0214】
<表C-7>
【表14】
【0215】
<実施例C-105>
純水22.2gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.02g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MPBiomedicals,Inc.製)を0.01g、超純酢酸(関東化学株式会社製、規格:Ultrapur)を18.0g、酢酸ナトリウム三水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)を45.6g、45質量%の過酸化水素水(三菱ガス化学株式会社製、製品名:SER45)を14.2g、PE容器内で調合した。調合時の全過酸化物濃度は6.1%であった。調合後、25℃で7日間熟成し、過酸化水素5.6質量%、酢酸17.1質量%、過酢酸1.0質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)0.01質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)0.01質量%、pH5.1の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)については、調合してから25℃で42日後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-8に示した([表15]に示す。)。
【0216】
<実施例C-106~C-108>
表C-8に記載された配合に変更した以外は、実施例C-105と同様にして、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)について、安定性試験を実施した。その結果は表C-8に示した。安定度は、下記のように評価した。
A:良好
B:実用可能
C:実用不可
・35質量%の超純過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:UELM35)
【0217】
<表C-8>
【表15】

【0218】
<実施例C-109>
硫酸カリウムアルミニウム十二水和物(富士フイルム和光純薬株式会社製)1.8gを100gの純水に溶かし、Al水溶液(Al:1000ppm)を調製した。純水31.0gと60質量%の1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP、イタルマッチジャパン株式会社製、製品名:デイクエスト2010)を0.02g、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム・二水和物(EDTA・2Na・2HO、MPBiomedicals,Inc.製)を0.01g、超純酢酸(関東化学株式会社製、規格:Ultrapur)を38.1g、水酸化ナトリウム(富士フイルム和光純薬株式会社製)を13.4g、35質量%の超純過酸化水素(三菱ガス化学株式会社製、製品名:UELM35)を17.5g、Al水溶液(1000ppm)を0.005g、PE容器内で調合した。調合時の全過酸化物濃度は6.1%であった。調合後、25℃で7日間熟成し、過酸化水素5.6質量%、酢酸17.5質量%、過酢酸1.1質量%、1-ヒドロキシエチリデン-1,1-ジホスホン酸(HEDP)0.01質量%、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム(EDTA・2Na)0.01質量%、pH5.1の殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)については、調合してから25℃で21日後に全過酸化物濃度(TPO)を測定し、安定度を算出した。その結果は表C-9に示した([表16]に示す。)。
【0219】
<実施例C-110~C-112、参考例C-102>
表C-9に記載された配合に変更した以外は、実施例C-109と同様にして、殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)を得た。得られた殺菌及び洗浄用組成物(過酢酸組成物)について、安定性試験を実施した。その結果は表C-9に示した。安定度は、下記のように評価した。
A:良好
B:実用可能
C:実用不可
・Zr標準液(Zr:1000ppm)(富士フイルム和光純薬株式会社製)
・Nb標準液(Nb:1000ppm)(富士フイルム和光純薬株式会社製)
【0220】
<表C-9>
【表16】

【0221】
上記の通り、本発明によれば、添加剤としてリン系安定剤及び/又はカルボン酸系安定剤を添加することにより、過酸化物の安定性が高く、かつ排水が下水排除基準を満たす、医療機器殺菌及び洗浄用組成物を提供することができることが示された。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
過酢酸を0.001~30質量%、過酸化水素を0.001~30質量%、酢酸及び/又はその塩を1~70質量%、ポリオキシエチレンラウリルエーテル酢酸又はその塩を0.001~5質量%、及び水を含む、殺菌及び洗浄用組成物であって、
前記殺菌及び洗浄用組成物のpH値が、4.0~10.0である、殺菌及び洗浄用組成物。