(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001200
(43)【公開日】2024-01-09
(54)【発明の名称】中温用水性ガス転換反応触媒、この製造方法、及びこれを用いた水素の製造方法
(51)【国際特許分類】
B01J 23/80 20060101AFI20231226BHJP
B01J 37/03 20060101ALI20231226BHJP
B01J 37/08 20060101ALI20231226BHJP
B01J 37/06 20060101ALI20231226BHJP
B01J 37/02 20060101ALI20231226BHJP
B01J 37/18 20060101ALI20231226BHJP
C01B 3/16 20060101ALI20231226BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20231226BHJP
【FI】
B01J23/80 M
B01J37/03 B
B01J37/08
B01J37/06
B01J37/02 101Z
B01J37/18
C01B3/16
C01B32/50
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174290
(22)【出願日】2023-10-06
(62)【分割の表示】P 2021520589の分割
【原出願日】2019-10-15
(31)【優先権主張番号】10-2018-0122646
(32)【優先日】2018-10-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】592000705
【氏名又は名称】リサーチ インスティチュート オブ インダストリアル サイエンス アンド テクノロジー
(71)【出願人】
【識別番号】515084292
【氏名又は名称】漢陽大学校産学協力団
【氏名又は名称原語表記】Industry-University Cooperation Foundation Hanyang University
(74)【代理人】
【識別番号】100102532
【弁理士】
【氏名又は名称】好宮 幹夫
(74)【代理人】
【識別番号】100194881
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 俊弘
(74)【代理人】
【識別番号】100215142
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 徹
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョン-ウ
(72)【発明者】
【氏名】ソ ヨン-ウン
(72)【発明者】
【氏名】コウ ドン-ジュン
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン チェオン-ウ
(57)【要約】 (修正有)
【課題】200~450℃の温度で触媒の活性を高く保持し、高い一酸化炭素転換率を有する水性ガス転換反応触媒、前記触媒の製造方法及び前記触媒を用いた水素の製造方法を提供する。
【解決手段】全触媒金属に対して、銅(Cu)40~80モル%、亜鉛(Zn)15~50モル%、アルミニウム(Al)1~13モル%を含む触媒活性成分を含み、触媒粒子の表層にアルミニウムリッチ(rich)層が存在する、水性ガス転換反応触媒を提供する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
全触媒金属に対して、銅(Cu)40~80モル%、亜鉛(Zn)15~50モル%、アルミニウム(Al)1~13モル%を含む触媒活性成分を含み、触媒粒子の表層にアルミニウムリッチ(rich)層が存在し、
前記アルミニウムリッチ層は、触媒粒子の表層から2~10nmの厚さにアルミニウムを30質量%以上含む、水性ガス転換反応触媒。
【請求項2】
Cu前駆体、Zn前駆体が含まれた金属前駆体溶液を沈殿剤溶液に注入し、銅及び亜鉛を共沈させて銅-亜鉛共沈物を生成する銅-亜鉛共沈段階;
Al前駆体溶液を、前記銅-亜鉛共沈物を含む溶液に注入し、前記銅-亜鉛共沈物の表面にアルミニウムを沈殿させて表面にアルミニウムリッチ層を有するCuZnAl触媒前駆物質を製造するAl沈殿段階;及び
前記CuZnAl触媒前駆物質を焼成してCuZnAl触媒を製造する焼成段階;
を含み、
前記CuZnAl触媒は、全触媒金属に対して、銅(Cu)40~80モル%、亜鉛(Zn)15~50モル%、アルミニウム(Al)1~13モル%を含む触媒活性成分を含み、
前記アルミニウムリッチ層は、触媒粒子の表層から2~10nmの厚さにアルミニウムを30質量%以上含む、水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項3】
前記Cu、Zn共沈段階は、前記Cu前駆体、Zn前駆体が含まれた金属前駆体溶液及び沈殿剤溶液の混合物を常温(20℃)~80℃の温度で30分~180分間熟成することにより行うものである、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項4】
前記Al前駆体溶液は、熟成中にpHが0.05~0.2の範囲に減少してから回復する現象が起こった後に注入するものである、請求項3に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項5】
前記Al前駆体溶液は、熟成中に銅-亜鉛共沈物が無結晶型から結晶型に変更された後に注入するものである、請求項3に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項6】
前記Al沈殿段階は、銅-亜鉛共沈物を含む溶液にAl前駆体溶液を注入した後、常温(20℃)~80℃の温度で15~60分間熟成することにより行うものである、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項7】
前記Cu前駆体、Zn前駆体が含まれた金属前駆体溶液は、0.01M~1.5Mの濃度を有し、CuイオンとZnイオンのモル比は50:50~80:20である、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項8】
前記Cu前駆体、Zn前駆体及びAl前駆体は、NO3
-、SO4
2-、CH3COO-、HCOO-、Cl-及びI-からなるグループから選択される少なくとも一つのアニオンを有する塩である、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項9】
前記Cu前駆体、Zn前駆体が含まれた金属前駆体溶液は、pH5~8になるまで沈殿剤溶液に注入される、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項10】
前記沈殿剤は、アルカリ金属、Li、Na、Kまたはアンモニウムの炭酸塩または重炭酸塩、NaOH及びNH4OHからなるグループから選択される少なくとも一つの沈殿剤である、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項11】
前記沈殿剤溶液は温度が常温(20℃)~80℃であり、pHが6~9である、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項12】
前記沈殿剤溶液は、0.01M~1.2Mの濃度を有するものである、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項13】
前記Al前駆体溶液の濃度は0.01~1.5Mである、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項14】
前記Al前駆体溶液はpH5~7になるまで注入される、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項15】
前記Al沈殿段階で得られたCuZnAl触媒前駆物質を含む溶液を濾過及び洗浄してCuZnAl触媒前駆物質を得る濾過及び洗浄段階;
得られたCuZnAl触媒前駆物質を100℃~300℃のオーブンで22~24時間乾燥させる乾燥段階を含む、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項16】
前記焼成段階は300℃~500℃で行われる、請求項2に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項17】
CuZnAl触媒を280~500℃の水素雰囲気下で還元反応を行う還元段階を含む、請求項2乃至16のいずれか一項に記載の水性ガス転換反応触媒の製造方法。
【請求項18】
請求項1の触媒、又は請求項2乃至16のいずれか一項に記載の方法で製造された触媒を提供して水性ガス転換反応を行う段階を含む、水素の製造方法。
【請求項19】
前記触媒は280~500℃の水素雰囲気下で還元されたものである、請求項18に記載の水素の製造方法。
【請求項20】
前記水性ガス転換反応は、反応温度200~450℃及び水蒸気/一酸化炭素のモル比が1.0~3.0である条件で行う、請求項18に記載の水素の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一酸化炭素(CO)及び水(H2O)を二酸化炭素(CO2)及び水素(H2)に転換するのに使用可能な高活性の水性ガス転換触媒及びその製造方法、並びに該触媒を使用し、中温範囲で一酸化炭素を含むガス混合物に水を含む反応によって水素及び二酸化炭素に転換する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水素は、様々な産業分野に適用され、技術の高付加価値化を図ることのできる基礎物質であって、石油化学産業だけでなく、燃料電池などの次世代エネルギー源として重要な役割を果たしている。そこで、高純度の水素生産や生産コストを下げる触媒や工程技術に対する様々な形態の研究が進められている。
【0003】
水素を生産する技術には、化石燃料の水蒸気改質触媒反応によって水素を製造する方法、及び一酸化炭素を含む混合ガスの水性ガス転換触媒反応を用いて水素を生産する方法がある。このうち、水性ガス転換反応は、一酸化炭素を水蒸気と反応させて水素と二酸化炭素に転換する反応であり、発熱反応であって、反応式は下記(1)の通りである。
【0004】
CO+H2O→H2+CO2, △H=-41.1kJ/mol(1)
【0005】
水性ガス転換反応は、一般的に、高温水性ガス転換(High Temperature Shift、HTS)反応と低温水性ガス転換(Low Temperature Shift、LTS)反応の二つの段階を経て一酸化炭素から水素を生産する。通常の場合、常用工程において高温水性ガス転換反応は300~450℃付近で行われ、多量の一酸化炭素転換に用いられ、低温水性ガス転換反応は200~300℃付近で行われ、高温水性ガス転換で反応した後、残りの一酸化炭素を転換して高純度化に用いられる。
【0006】
水性ガス転換(WGS)反応は、平衡転換率の影響を受けて温度に敏感に作動し、これにより生成物の組成が決定される。これは、上述のように、水性ガス転換反応が発熱反応であって、高温では逆反応が進められて水素と二酸化炭素が反応して一酸化炭素を生成する反応が起こるようになるということを意味する。したがって、上記水性ガス転換反応においては、温度条件を低温に保持することが水素生成の観点からより有利である。
【0007】
一方、高温水性ガス転換反応時の触媒は、一般的に鉄(Fe)をベースとし、反応を安定して誘導するためにクロム(Cr)を少量添加して使用するため、クロムによって鉄のシンタリング(sintering)が防止されるとともに、活性の増進が起こり、反応速度が速くなって大量の一酸化炭素(CO)を処理するが、発熱反応により高温に曝されるため、初期の一酸化炭素のモル量の2~4%が残るようになる。そこで、残りの一酸化炭素を除去するために、低温水性ガス転換反応触媒の使用が求められる。上記低温水性ガス転換反応触媒は、銅-亜鉛(Cu-Zn)をベースとし、反応条件に応じて平衡転換率に至るようになるため、低温では99%以上の一酸化炭素転換率を示す。
【0008】
したがって、様々な銅-亜鉛をベースとした水性ガス転換触媒が開発され、用いられている。例えば、韓国登録特許第1551509号のように、銅、亜鉛及びアルミナを含有した水性ガス転換触媒が開発されているが、一酸化炭素の転換率を高めるための触媒が依然として求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、一酸化炭素から水素ガスを製造する方法において、200~450℃の温度で触媒の活性を高く保持し、高い一酸化炭素転換率を有する触媒、上記触媒の製造方法及び上記触媒を用いた水素の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面は、全触媒金属に対して、銅(Cu)40~80モル%、亜鉛(Zn)15~50モル%、アルミニウム(Al)1~13モル%を含む触媒活性成分を含み、触媒粒子の表層にアルミニウムリッチ(rich)層が存在する水性ガス転換反応触媒を提供するものである。
【0011】
本発明の他の側面は、Cu前駆体、Zn前駆体が含まれた金属前駆体溶液を沈殿剤溶液と混合し、銅及び亜鉛を共沈させて、銅-亜鉛共沈物を生成する銅-亜鉛共沈段階;Al前駆体溶液を上記銅-亜鉛共沈物を含む溶液に注入し、上記銅-亜鉛共沈物の表面にアルミニウムを沈殿させて、表面にアルミニウムリッチ層を有するCuZnAl触媒前駆物質を製造するAl沈殿段階;及び上記CuZnAl触媒前駆物質を焼成してCuZnAl触媒を製造する焼成段階を含む水性ガス転換反応触媒の製造方法を提供する。
【0012】
本発明のさらに他の側面は、本発明の触媒または本発明の方法で製造された触媒と水性ガス転換反応のための混合ガスとを反応させて水素を製造する方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明による水性ガス転換反応触媒は、高温水性ガス転換反応と低温水性ガス転換反応の中間温度領域である250~350℃で作動が容易であり、高い触媒活性を有し、発熱反応による高温条件でも優れたCO転換率を示し、低い水蒸気/二酸化炭素の比率条件でも安定した高性能を示す。さらに、水熱耐久性に優れており、長時間高温水蒸気に曝されても不活性化が生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】従来の1-ステップ水性ガス転換反応触媒の製造方法の工程の流れを示す。
【
図2】本発明による2-ステップ水性ガス転換反応触媒の製造方法の工程の流れを示す。
【
図3】比較例1によって製造された銅ベースの触媒の一部を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したイメージを示す。
【
図4】実施例1によって製造された水性ガス転換反応触媒の一部を透過電子顕微鏡(TEM)で撮影したイメージを示す。
【
図5】実施例1の水性ガス転換触媒の製造時に、1番目の熟成過程及び2番目の熟成過程中に現れた時間の経過によるpH変化を示すグラフである。
【
図6a】実施例1によって製造された触媒の粒子をTEMで撮影したイメージである。
【
図6b】上記
図6aの触媒の粒子において、アルミニウムの重量比または原子比を測定するために設定した触媒の粒子内の任意の位置を示す。
【
図7】表1の比較実験例1及び実験例1のうち、300℃で100時間の間のCO転換率を比較したグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。しかし、本発明の実施形態は、様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0016】
従来の高温水性ガス転換反応-低温水性ガス転換反応の連続反応システムは、上述したように、連続反応システムの作動温度が異なり、温度に応じて触媒を異ならせて使用する必要があるため、工程を単純化することは困難であるという問題点がある。
【0017】
そして、水素は水蒸気の解離により生成されるが、ルシャトリエの原理によって反応物の濃度が高いほど、正反応が起こりやすくなる。また、水蒸気の解離速度は、二酸化炭素の生成速度より遅いことから、量論比より多い水蒸気を供給し、解離により生成される酸素原子を円滑に供給しなければCO転換率を高く保持することができないため、水性ガス転換反応は一酸化炭素及び水蒸気が量論比的に1モル:1モルで反応するが、実際の常用工程では水蒸気量を過剰に供給する。
【0018】
このとき、酸素の供給が円滑でないと、Fe触媒において一酸化炭素からの炭素沈積が生じて、触媒の不活性化が発生しやすくなるため、このように水蒸気を過剰に供給する場合、初期に供給された水を水蒸気に変換させるエネルギーとして、量論比で供給されるエネルギーよりも非常に高いエネルギーが必要とされるという問題点がある。
【0019】
また、高温水性ガス転換反応の反応器に供給される反応ガスの温度は300℃以上であるため、水蒸気/二酸化炭素のモル比が3.0である水蒸気を暖めるためには、莫大なエネルギーが必要であり、反応熱を回収しても不足するエネルギーをボイラーなどの外部熱源によって供給しなければならない。
【0020】
そして、低温水性ガス転換触媒は、銅をベースとして、低い温度でも水性ガス転換反応を進めることができるが、水蒸気への長時間露出には耐久性が低く、過剰なCOの供給により反応熱が高くなり、高温に曝される場合、銅の焼結により活性の低下を引き起こすという問題点がある。
【0021】
これにより、従来には、
図1のような1-ステップの方法で製造された銅、亜鉛及びアルミニウムを含む水性ガス転換触媒を開発していたが、触媒の一酸化炭素転換率は高くない。
【0022】
したがって、本発明は、一定範囲の温度で触媒の活性を保持し、かつ高い一酸化炭素転換率を有する触媒、上記触媒の製造方法、及び上記触媒を用いた水素の製造方法を提供する。
【0023】
本発明において、用語「共沈」は「沈殿」とも称することができ、これは、溶液内の沈殿対象または全ての沈殿対象を沈殿させることを意味する。
【0024】
本発明において、中温とは250~350℃を意味する。
【0025】
本発明は、金属触媒の全体に対してCu40~80モル%、Zn15~50モル%、Al1~13モル%を含む触媒活性成分を含む水性ガス転換反応触媒を提供する。
【0026】
本発明の触媒において、上述したように、成分を制御する理由について詳細に説明する。
【0027】
Cuは活性金属であって、水性ガス転換反応の触媒に必須な元素であり、その含量が40モル%未満であると、活性点の個数が減少する恐れがある。一方、その含量が80モル%を超えると、活性は十分に生じるが、Cu粒子のサイズが大きくなって、触媒の活性が低下する恐れがある。
【0028】
Znは、水性ガス転換反応において、Cuの構造的安定剤の役割を果たす元素であり、その含量が15モル%未満であると、ZnがCuの構造的安定の役割を十分に果たすには十分でないという問題がある。一方、その含量が50モル%を超えると、Cuの割合が減少し、触媒の活性が減少する恐れがある。
【0029】
アルミニウムは、一般的に親水性を有し、水の分解が起こりやすいという利点がある。
【0030】
このとき、アルミニウムの含量が1モル%未満であると、触媒の構造的または電子的活性を増進させるには不十分であるという問題があり、13モル%を超えると、アルミニウム前駆体の結晶構造がハイドロタルサイト(hydrotalcite)となって、活性に有利でないという問題がある。
【0031】
上記水性ガス転換反応触媒は、触媒粒子の表層にアルミニウムリッチ(rich)層が存在することが好ましい。したがって、本発明の触媒は、表面に親水性のアルミニウムが多量存在し、水の分解を起こしやすいため、長時間水蒸気に曝されても活性金属である銅を保護する役割を果たし、触媒の耐久性を向上させることができる。
【0032】
このとき、アルミニウムは、主に水性ガス転換触媒の外側に分布し、上記アルミニウムリッチ層とは、触媒粒子の表層から触媒粒子の半径の約0.1~10%であることを指す。
【0033】
本発明による水性ガス転換触媒は200~450℃、より好ましくは250~350℃で高い活性を有し、上記温度で一酸化炭素転換率が98.5%以上である水性ガス転換触媒を提供する。
【0034】
本発明は、水性ガス転換反応触媒を製造する方法を提供する。
本発明の水性ガス転換反応触媒を製造する方法は、Cu前駆体、Zn前駆体が含まれた金属前駆体溶液を沈殿剤溶液と混合し、銅及び亜鉛を共沈させ、銅-亜鉛共沈物を生成する銅-亜鉛共沈段階;Al前駆体溶液を、上記銅-亜鉛共沈物を含む溶液に注入し、上記銅-亜鉛共沈物の表面にアルミニウムを沈殿させて表面にアルミニウムリッチ層を有するCuZnAl触媒前駆物質を製造するAl沈殿段階;及びCuZnAl触媒前駆物質を焼成してCuZnAl触媒を製造する焼成段階を含む。
【0035】
このとき、Cu、Zn共沈段階を行った後、Al沈殿段階を行うものとして、製造方法の概略的な流れを
図2に示した。
【0036】
Cu、Zn共沈段階
上記Cu、Zn共沈段階は、沈殿剤溶液にCu前駆体とZn前駆体とを注入して沈殿物を合成するものであって、Cu前駆体及びZn前駆体溶液を製造し、沈殿剤が含まれた溶液にCu前駆体及びZn前駆体が含まれた溶液を注入することによりCu及びZnを共沈させるものである。
【0037】
上記Cu前駆体は、Cu2+をカチオンとし、アニオン部分はNO3
-、SO4
2-、CH3COO-、HCOO-、Cl-及びI-で構成されたグループから選択された金属前駆体である。
【0038】
上記Zn前駆体は、Zn2+をカチオンとし、アニオン部分はNO3
-、SO4
2-、CH3COO-、HCOO-、Cl-及びI-で構成されたグループから選択された金属前駆体である。
【0039】
上記Cu、Zn共沈段階は熟成過程を含むが、上記熟成過程は、銅-亜鉛共沈物を含む溶液を合成し、30分~180分間の範囲内で沈殿剤の初期温度と同じ温度で行うことを含む。
【0040】
Cu、Zn前駆体の含量
上記水性ガス転換反応触媒の製造方法において、Cu及びZn前駆体を含む溶液の濃度は0.1M~1.5Mである。上記Cu及びZn前駆体を含む溶液の濃度が0.1M未満であると、Cu及びZn前駆体の量が少なく、触媒を形成するのに困難があり、1.5Mを超えると、溶液状態とし難いという問題がある。Cu前駆体とZn前駆体のモル比は50:50~80:20である水性ガス転換反応触媒の製造方法を提供する。上記のCu前駆体とZn前駆体のモル比が0:100~50:50未満の場合、活性点の個数が少なく、触媒の活性が低くなる。これにより、CO転換率の減少などのような問題が生じる可能性がある。一方、Cu前駆体とZn前駆体のモル比が80:20超過~100:0の場合、Znの含量が低く、Cuの粒子が増大する。これにより、Cuが露出される部分が多くなるため、触媒の活性が保持されにくいという問題が生じる可能性がある。
【0041】
沈殿剤
上記Cu、Zn共沈段階で使用される上記沈殿剤は、弱塩基性を有することが好ましく、例えば、アルカリ金属であるLi、Na、Kまたはアンモニウムの炭酸塩または重炭酸塩、NaOH及びNH4OHからなるグループから選択される少なくとも一つの沈殿剤を含む。
【0042】
金属前駆体を注入する前の沈殿剤溶液の温度は、常温(20℃)~80℃であり、pHは約6~9である水性ガス転換反応触媒の製造方法を提供する。金属前駆体を注入する前の沈殿剤溶液の温度が80℃を超えると、溶液の水が蒸発する可能性が高く、粒子の形成過程が速くなり均一に分散した形態の触媒を合成し難い。さらに、20℃未満の場合、沈殿反応が起こりにくく、触媒を製造するのに長時間がかかるという問題がある。また、pHが9を超えると、直ちに酸化物が形成されるという問題があり、pHが6未満の場合は沈殿物が形成されないという問題がある。
【0043】
したがって、上記沈殿剤の初期濃度は0.01M~1.2Mであり、沈殿剤の初期濃度が0.01M未満である場合、金属前駆体を沈殿させるために沈殿剤水溶液の体積が大幅に増加するため、非効率的に触媒を合成するようになるという問題が生じ、1.2Mを超える場合、金属前駆体を注入した後、達成しようとするpHを達成することができないという問題が生じる可能性がある。但し、上記沈殿剤の濃度は、上記提示されたpHの範囲を保持できる濃度であることが好ましい。
【0044】
Cu及びZn沈殿段階
上記Cu及びZn沈殿段階は、Cu及びZn前駆体が含まれた溶液を沈殿剤に注入することにより、銅-亜鉛共沈物を製造することができる。
Cu及びZn前駆体が含まれた溶液を沈殿剤に注入するとき、pHが5~8になるまで注入する。上記溶液を注入してpHが5未満になると、Cu及びZnがともに沈殿剤と反応し、後にAlを沈殿させることができないという問題があり、上記溶液を注入してpH8にならないと、Cu及びZnが十分に沈殿されず、触媒の活性が低下するという問題がある。
【0045】
Al沈殿段階
上記Al沈殿段階は、Al前駆体を、上記銅-亜鉛共沈物を含む溶液に注入することにより、AlをCu、Zn沈殿物の表面に沈殿させることができる。これにより、本発明で得ようとする触媒粒子の表層にアルミニウムリッチ(rich)層が存在する触媒を得ることができる。
上記Al前駆体は、Al3+をカチオンとし、アニオン部分はNO3
-、SO4
2-、CH3COO-、HCOO-、Cl-及びI-で構成されたグループから選択された金属前駆体である。
【0046】
Al前駆体の含量
Al前駆体溶液の濃度は0.01~1.5Mである。上記Al前駆体溶液の濃度が0.01M未満であると、Al前駆体の量が少なく、溶媒の量が多くて、触媒を製造するのに長時間がかかるため、触媒を形成するのに困難があり、1.5Mを超えると、Al前駆体の溶解度が高くないため、溶液状態とし難い問題がある。
【0047】
上記Al前駆体溶液は、上記Cu、Zn共沈段階の熟成中に、pHが0.05~0.2程度減少してから回復する現象が起こった後に注入するものであり、このとき、pHが0.05~0.2程度減少してから回復する現象とは、銅-亜鉛沈殿物が無結晶型から結晶型に変更されることを意味する。したがって、上記Al前駆体溶液は、Cu、Zn共沈段階の熟成中に、Cu-Zn沈殿物が無結晶型から結晶型に変更された後に、Al前駆体溶液を注入することができる。
【0048】
上記Al沈殿段階は熟成過程を含むが、この時、熟成過程は、銅-亜鉛共沈物を含む溶液にAl前駆体溶液を注入した後、15分~60分間の範囲内で沈殿剤の初期温度と同じ温度で熟成過程を行うことを含む。
【0049】
このとき、Al前駆体溶液は、pHが5~7になるまで注入する。上記溶液を注入してpHが5未満になると、沈殿されないAlが多くなって工程の効率に問題があり、上記溶液を注入してpH7にならないと、Alが十分に沈殿されないため、触媒の活性が低下するという問題がある。
【0050】
濾過及び洗浄段階
上記濾過及び洗浄段階は、上記Al沈殿段階において、後続的に濾過及び洗浄過程を通じてCuZnAl触媒前駆物質を除く不要なイオンを除去することで、CuZnAl触媒前駆物質を得る濾過及び洗浄段階を含む。このとき、CuZnAl触媒前駆物質を蒸留水に入れ攪拌して、固体に残っている不要なイオンを希釈させ、濾過装置を用いて固体を回収する。このような過程を数回繰り返す。
【0051】
乾燥段階
上記乾燥段階は、製造されたCuZnAl触媒前駆物質の水分を除去するために必要であり、上記濾過及び洗浄段階で得られた上記CuZnAl触媒前駆物質を100℃以上300℃以下のオーブンで22~24時間乾燥させる乾燥段階を含む。このとき、乾燥段階の温度が100℃未満の場合、水分が除去されるのに長時間がかかり、300℃を超える場合には、結晶構造が酸化物の状態に変わってCuZnAl触媒前駆物質の特性を把握し難いという問題がある。
【0052】
焼成段階
上記焼成段階は、触媒を活性化する前に、酸化物形態に変形するために必要であり、300~500℃で焼成する焼成段階を含む。このとき、焼成段階の温度が300℃未満の場合、酸化物形態への変形が十分に行われず、活性化した後、触媒の安定性に問題点が生じる可能性があり、500℃を超える場合、高温により粒子が大きくなるという問題がある。
【0053】
本発明は、本発明の触媒または本発明の製造方法によって製造された触媒を280~500℃の水素雰囲気下で還元反応を行う還元段階を含む水性ガス転換反応触媒の製造方法を提供する。
【0054】
本発明は、水素の製造方法を提供する。
本発明は、水素の製造方法に先立ち、本発明による水性ガス転換反応触媒を280~500℃の水素雰囲気下で還元反応を行う還元段階を含む。
【0055】
このとき、還元段階は、銅酸化物を活性を有する金属状態の銅に変形するために必要であり、還元段階の温度が280℃未満の場合、還元が十分に起こらない恐れがあり、500℃を超える場合、高温のためCuとZnが合金化されるか、粒子サイズが大きくなるという問題がある。
【0056】
上記水性ガス転換反応のための混合ガスの組成は、一酸化炭素を含む必要があり、例えば、1.5モル%H2、25.5モル%N2、60モル%CO、13モル%CO2を含む混合ガスであってもよい。
【0057】
本発明は、本発明による触媒または本発明の製造方法によって製造された触媒を用いた水素の製造方法を提供する。
【0058】
本発明における水素の製造方法は、水性ガス転換反応において、本発明による触媒または本発明の製造方法によって製造された触媒を提供する段階を含む水素の製造方法を提供する。
【0059】
上記触媒は、280~500℃の水素雰囲気下で還元されたものであってもよい。
【0060】
本発明による水素の製造方法において、上記段階の反応温度は200~450℃であり、水蒸気/一酸化炭素のモル比は1.0~3.0である条件で水性ガス転換反応を用いて水素を製造する水素の製造方法を提供する。
【0061】
上記反応温度が200℃未満の場合、水素を生産するのに必要な活性化エネルギーよりも、供給されるエネルギーが低い恐れがあり、450℃を超える場合、水素製造反応は発熱反応であるため、温度が高いほど、逆反応が進められて反応が制限されるという問題が生じる。また、水蒸気/一酸化炭素のモル比が1.0未満の場合、一酸化炭素を使い切れず、水素がその分だけ合成されないという問題が生じ、3.0を超える場合、未反応した過剰の水蒸気を分離しなければならないという問題が生じる。
【0062】
本発明による水素の製造方法において、上記水性ガス転換反応は副生ガスからの水素生産、合成ガスからの水素生産、化石燃料からの改質反応を通じて水素と一酸化炭素を生産したガスからの水素生産、燃料電池の燃料改質器からの水素生産または石油化学工程を含む水素の製造方法を提供する。
【0063】
以下、具体的な実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。下記の実施例は、本発明の理解を助けるための例示に過ぎず、本発明の範囲がこれに限定されるものではない。
【0064】
実施例
1.水性ガス転換反応触媒の製造
実施例1
まず、Cu前駆体とZn前駆体が含まれた金属前駆体溶液及びAl前駆体溶液をそれぞれ準備した。Cu前駆体とZn前駆体のモル比は70:30であり、Al前駆体のモル比は全金属イオンに対して4%であった。準備されたCu前駆体とZn前駆体が混合された金属前駆体溶液の濃度は1.2Mであり、Al前駆体溶液の濃度も1.2Mであった。また、各金属前駆体のアニオン部分はNO3-を使用した。沈殿のために、塩基性であるNaHCO3を使用して濃度が0.1Mである水溶液(沈殿剤溶液、pH約8)を準備した。
【0065】
すべての溶液が準備されると、上記沈殿剤溶液を加熱して温度を約70℃にした後、Cu前駆体とZn前駆体が含まれた金属前駆体溶液を注入して、pHが約6になるようにした。これは、
図5において0~約15分程度に該当するが、注入された溶液(Cu及びZn前駆体が含まれた溶液)が酸性であるため、pHが減少する傾向にあることが分かった。
【0066】
熟成過程は、pHがもはや減少しない時点(
図5の約15分)から開始される。次に、沈殿物が生成されると、約1時間の間、同じ温度で1番目の熟成過程を経る。熟成過程の間、pHが約0.1程度に減少してから回復する現象が発見されるが、これは、沈殿物が無結晶型から結晶型に変わっていることを意味する(
図5において約30分でのpH)。
【0067】
この現象が現れた後、45分後(
図5において約75分)にAl前駆体溶液を注入した。Al前駆体溶液を注入した後、約30分程度の熟成過程を行った。
【0068】
熟成過程を経た沈殿物を濾紙を用いて濾過して回収し、蒸留水を使用して回収された沈殿物を洗浄することで、不要なイオンを除去した。
【0069】
その後、105℃に設定したオーブンで、上記回収された沈殿物を約12時間乾燥して触媒前駆物質を製造した。
上記製造された触媒前駆物質をマッフル炉(muffle furnace)にて400℃(5℃/min)の温度下で3時間焼成して触媒を製造した。
【0070】
上記実施例1の触媒の製造過程に対する概略図を
図2に示した。
実施例1によって作られた水性ガス転換触媒の一部に対し、透過電子顕微鏡(TEM)から得られたイメージを
図4に示した。
【0071】
比較例1
Cu、Zn、及びAl前駆体が混合された1.2Mの濃度の金属前駆体溶液175mLを準備した。その後、実施例1と同じ温度及びpHの沈殿剤水溶液でCu、Zn、及びAl前駆体が混合された金属前駆体溶液を沈殿剤に注入して沈殿過程を行い、熟成過程は1時間30分を行った。そして、濾過、洗浄、乾燥、及び焼成過程はすべて実施例1と同じ条件で行って触媒を合成した。
【0072】
上記比較例1の触媒の製造過程に対する概略図を
図1に示した。
比較例1によって作られた水性ガス転換触媒の一部に対し、透過電子顕微鏡(TEM)から得られたイメージを
図3に示した。
【0073】
2.CuZnAl触媒における各金属の分布比較
実施例1によって製造された触媒の粒子をTEMで撮影したイメージを
図6aに示し、上記アルミニウムの含量は、走査電子顕微鏡(TEM)のEDS(Energy Dispersive Spectrometer)を用いて触媒粒子内の位置別アルミニウムの濃度を分析し、その結果を表1に示した。
図6bは、表1のスペクトル1~6の触媒粒子内の位置を示す。
【0074】
【0075】
上記表1に示すように、本発明の方法によって製造された触媒粒子の表層部分にAl含量または比率がCu及びZnに比べて著しく高く現れることが分かった。また、アルミニウムリッチ層は、
図6bの1、3、5のスペクトルのような質量比及び原子比を示す。
【0076】
3.触媒の構造による一酸化炭素転換率の比較評価
実施例1及び比較例1の各触媒の試験片を直径2cm、高さ3cmのサイズに成形し、600℃で1時間焼成した。また、評価を行う前に、触媒を水素で還元させた。還元ガスはH2 50mL/min、N2 450mL/minを質量流量制御計で混合して触媒層に引き込み、400℃まで1℃/minの昇温速度で上昇させながら、常圧で(1atm)還元した。
【0077】
焼成及び還元された実施例1及び比較例1の各触媒について、反応ガス供給部、液状蒸発部、水性ガス転換反応部、冷却部、分析部で構成された固定層触媒反応システムで性能を評価した。質量流量調節計を用いて、反応ガスを模写して供給し、その組成は、1.5モル%H2、25.5モル%N2、60モル%CO、13モル%CO2であった。水のような液状の反応物は、高圧定量ポンプを使用して蒸発部に供給し、250℃に予熱した後、反応部に供給されるようした。水蒸気が含まれた反応ガスは、触媒が充填されたSUS316材質のチューブ管に供給され、触媒の上端部に熱電対で温度を測定して、反応温度を調節した。
【0078】
実験例1~3
焼成及び還元された上記実施例1の触媒5ml(約6g)を触媒反応システムに装入し、供給ガスの水蒸気と一酸化炭素のモル比(S/C)を2.0(実験例1)、2.5(実験例2)、3.0(実験例3)に変換して、触媒の活性を測定し、各実験例毎に反応温度を200~450℃に変化させながら水性ガス転換反応を行った。
【0079】
比較実験例1~3
上記実験例1~3と同様に実施し、且つ比較例1によって製造された触媒を使用し、供給ガスの水蒸気と一酸化炭素の比率(S/C比率)を2.0(比較実験例1)、2.5(比較実験例2)、3.0(比較実験例3)に変化させながら水性ガス転換反応を行った。
【0080】
生成物は、凝縮器を経て残りの水蒸気を水に凝縮し、残りの生成ガスをガスクロマトグラフィー(GC、USA、Agilent 7890)のTCD分析機を用いて定量分析した。上記実験例1~3及び比較実験例1~3のCOの転換率を毎50℃の間隔で表2に示した。
【0081】
【0082】
触媒の耐久性を比較するために、S/Cが2である条件で、300℃で100時間の間、水性ガス転換反応を行った結果、現れたCO転換率の比較を
図7に示した。また、長時間(50時間)の性能評価の後、触媒の反応温度によるCO転換率を[表3]にまとめた。
【0083】
【0084】
上記表3に示すように、本発明による実験例1のCuZnAl触媒は、比較実験例1のCuZnAl触媒に比べて反応温度による一酸化炭素転換率が著しく高く、50時間が経過した後にも比較実験例1のCuZnAl触媒に比べて優れた一酸化炭素転換率を示した。
【0085】
以上のように、本発明の実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想を逸脱しない範囲内で多様な修正及び変形が可能であることは、当技術分野における通常の知識を有する者には自明である。