IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニプロ株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図1
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図2
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図3
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図4
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図5
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図6
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図7
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図8
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図9
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図10
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図11
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図12
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図13
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図14
  • 特開-ダブルルーメンカテーテル 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120010
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ダブルルーメンカテーテル
(51)【国際特許分類】
   A61M 25/00 20060101AFI20240827BHJP
   A61M 1/36 20060101ALI20240827BHJP
   A61M 25/14 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
A61M25/00 530
A61M1/36 141
A61M25/00 534
A61M25/14 512
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024098302
(22)【出願日】2024-06-18
(62)【分割の表示】P 2021525998の分割
【原出願日】2020-05-29
(31)【優先権主張番号】P 2019108759
(32)【優先日】2019-06-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000135036
【氏名又は名称】ニプロ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】中村 拓真
(72)【発明者】
【氏名】藤木 裕也
(72)【発明者】
【氏名】中井 翔太
(57)【要約】      (修正有)
【課題】血管壁へのへばりつきを生じにくくすると共に再循環を抑えたダブルルーメンカテーテルを提供する。
【解決手段】ダブルルーメンカテーテルは、基端から先端に延びる管腔を形成する周壁101と、管腔を、長手方向に延びる第1通路110及び第2通路120に区画する隔壁102とを備えている。第1通路110及び第2通路120は、先端側開口の位置が揃っており、隔壁102は、第1通路110及び第2通路の先端側開口よりも先端側に突出した突出部103を有している。第1通路110は、両側に第1先端部周壁115及び第2先端部周壁116が形成される、先端側開口から軸方向に延びる第1通路スリット111を有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基端から先端に延びる管腔を形成する周壁と、
前記管腔を、長手方向に延びる第1通路及び第2通路に区画する隔壁とを備え、
前記第1通路及び前記第2通路は、先端側開口の位置が揃っており、
前記隔壁は、前記第1通路及び前記第2通路の先端開口よりも先端側に突出した突出部を有し、
前記第1通路は、両側に第1先端部周壁及び第2先端部周壁が形成される、前記先端側開口から軸方向に延びる第1通路スリットを有している、ダブルルーメンカテーテル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はダブルルーメンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
血液透析分野において、患者の血管から血液を抜き出して、体外において処理をした後、処理をした血液を血管に戻すことが行われる。緊急に透析を行う場合又はシャントの形成が困難な場合には、血管に挿入したカテーテルにより脱血と返血とを行う。
【0003】
このような場合、脱血用の通路と返血用の通路とを有するダブルルーメンカテーテルが用いられる。ダブルルーメンカテーテルには、良好な挿入性、脱血送血不良の低減、及び再循環の低減等を実現することが求められている。
【0004】
これらの要求を満たすために、脱血用の通路と返血用の通路とのエンドホールの位置をずらしたり、側壁にサイドホールを設けたりすることが検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-104486号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ダブルルーメンカテーテルにおいて脱血用の通路と送血用の通路とはあらかじめ決められていることが一般的であるが、長期間留置する場合には閉塞や狭窄に対応するために、一時的に脱血側と送血側とを入れ替える逆接続を行う場合がある。順接続の場合に再循環を低減できるようにエンドホールの位置をずらした場合には、逆接続の場合に再循環がより生じやすくなる場合がある。
【0007】
さらに、カテーテルが血管壁にへばりつくと、脱血不良が生じてしまう。また、血液が滞留することによる血栓が発生する場合もある。再循環だけでなく、これらの問題も生じにくいカテーテルが求められている。
【0008】
本開示の課題は、血管壁へのへばりつきを生じにくくすると共に再循環を抑えたダブルルーメンカテーテルを実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示のダブルルーメンカテーテルの第1の態様は、基端から先端に延びる管腔を形成する周壁と、管腔を、長手方向に延びる第1通路及び第2通路に区画する隔壁とを備え、周壁は、第1通路側と第2通路側とにおいて先端の位置が揃っており、隔壁は、周壁の先端よりも先端側に突出した突出部を有し、第1通路は、周壁の周方向中央部において、周壁の一部が切り欠かれて形成された第1通路スリットを先端部に有している。
【0010】
ダブルルーメンカテーテルの第1の態様は、突出部を有するため、再循環を低減することができる。さらに、周壁の一部が切り欠かれて形成された第1通路スリットを有し、血管壁のへばりつきが生じにくい。
【0011】
ダブルルーメンカテーテルの第1の態様において、第2通路は、周壁の周方向中央部において、周壁の一部が切り欠かれて形成された第2通路スリットを先端部に有していてもよい。このような構成とすることにより、血管壁のへばりつきがより生じにくくなる。
【0012】
この場合において、第2通路スリットは、第1通路スリットよりも長手方向長さが異なるように構成することができる。このような構成とすることにより、各スリットの基端部の配置が長手方向位置で異なるため、順接続時又は逆接続時の再循環を生じにくくできる。再循環をさらに低減することができる。
【0013】
ダブルルーメンカテーテルの第1の態様において、第1通路は、第1通路スリットよりも基端側に、周壁を貫通する第1通路貫通孔を有していてもよい。このような構成とすることにより、第1通路スリットでの血管壁のへばりつきをより生じにくくできる。
【0014】
この場合において、第1通路貫通孔は、複数設けられ千鳥状に配置されていてもよい。このような構成とすることにより、第1通路貫通孔部分での血管壁のへばりつきをさらに生じにくくすることもできる。さらに、隣接する第1通路貫通孔は、第1通路スリットを挟んで互いに反対側に設けられていてもよい。
【0015】
ダブルルーメンカテーテルの第1の態様において、第2通路は周壁を貫通する第2通路貫通孔を有し、第2通路貫通孔は、千鳥状に配置されていてもよい。このように構成することにより、血管壁へのへばりつきをより生じにくくすることができる。さらに、隣接する第2通路貫通孔は、第1通路スリットを挟んで互いに反対側に設けられていてもよい。このようにすることにより、逆接続時におけるへばりつきをさらに低減できる。
【0016】
この場合において、最も基端側の第2通路貫通孔は、第1通路スリットよりも基端側に位置してもよい。このような構成とすることにより、逆接続時の再循環をさらに生じにくくすることができる。
【0017】
この場合において、第1通路は、第1通路スリットよりも基端側に、周壁を貫通する第1通路貫通孔を有し、最も先端側の第1通路貫通孔と、最も基端側の第2通路貫通孔とは第1通路スリットを挟んで反対側に位置していてもよい。このような構成とすることにより、再循環をさらに生じにくくすることができる。
【0018】
本開示のダブルルーメンカテーテルの第3の態様は、基端から先端に延びる管腔を形成する周壁と、管腔を、長手方向に延びる第1通路及び第2通路に区画する隔壁とを備え、周壁は、第1通路側と第2通路側とにおいて先端の位置が揃っており、第1通路及び第2通路は、それぞれ隔壁の側端の位置から周壁の一部が切り欠かれて形成された第1通路スリット及び第2通路スリットを先端部に有し、先端側から見て周壁及び隔壁の先端面が略S字形状となっていてもよい。このような構成とすることにより、再循環を低減できる。
【0019】
ダブルルーメンカテーテルの第3の態様において、第1通路スリットと第2通路スリットとは、周方向の互いに反対側に位置していてもよい。このような構成とすることにより再循環をさらに低減できる。
【0020】
ダブルルーメンカテーテルの第3の態様において、第1通路スリット及び第2通路スリットは、先端側において基端側よりもスリット幅を狭くすることができる。このような構成とすることにより、スリット基端部付近の脱血圧を抑え、血管壁へのへばりつきをより生じにくくできる。
【0021】
本開示のトンネラの一態様は、シャフト部と、シャフト部の基端側に設けられ、ダブルルーメンカテーテルが接続される接続部とを備え、ダブルルーメンカテーテルは、周壁に囲まれた管腔を2つの通路に区画する隔壁が先端側に突出した突出部を有し、接続部は、2つの通路の一方に挿入されて嵌合する挿入部と、挿入部とシャフト部との間に設けられた非挿入部とを有し、非挿入部は、シャフト部の基端よりも外径が小さく、挿入部の先端よりも外径が大きく、且つ長さが突出部の長さ以上である。
【0022】
このような構成とすることにより、突出部を有しているダブルルーメンカテーテルにも容易に接続することができる。
【0023】
トンネラの一態様において、非挿入部の半径と挿入部の半径との差は、ダブルルーメンカテーテルの隔壁の肉厚以下とすることができる。このような構成とすることにより、突出部の折れ曲がりを小さくすることができる。
【0024】
本開示のトンネラの他の態様は、シャフト部と、シャフト部の基端側に設けられ、ダブルルーメンカテーテルの通路の一方に挿入される挿入部と、シャフト部と挿入部とを連結する湾曲連結部とを備え、挿入部をダブルルーメンカテーテルの通路の一方に挿入した場合に、シャフト部の中心軸とダブルルーメンカテーテルの中心軸とが一致する。このような構成とすることにより、接続部にシースを被せることが容易にできる。
【0025】
本開示のカテーテル複合体の一態様は、本開示のダブルルーメンカテーテルとトンネラとを備えている。
【0026】
カテーテル複合体の一態様は、ダブルルーメンカテーテルと前記トンネラとの接続部を覆うシースをさらに備えていてもよい。
【発明の効果】
【0027】
本開示のダブルルーメンカテーテルによれば、へばりつきを生じにくくすると共に再循環を抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は第1の実施形態に係るダブルルーメンカテーテルを示す斜視図である。
図2図2は第1の実施形態に係るダブルルーメンカテーテルを示す上面図である。
図3図3は第1の実施形態に係るダブルルーメンカテーテルを示す側面図である。
図4図4は第1の実施形態に係るダブルルーメンカテーテルを示す底面図である。
図5図5は第1の実施形態に係るダブルルーメンカテーテルを示す正面図である。
図6図6は第1の実施形態の第1変形例に係るダブルルーメンカテーテルを示す上面図である。
図7図7は第1の実施形態の第1変形例に係るダブルルーメンカテーテルを示す底面図である。
図8図8は第1の実施形態の第2変形例に係るダブルルーメンカテーテルを示す上面図である。
図9図9は第1の実施形態の第2変形例に係るダブルルーメンカテーテルを示す底面図である。
図10図10は第1の実施形態の第3変形例に係るダブルルーメンカテーテルを示す上面図である。
図11図11は第1の実施形態の第3変形例に係るダブルルーメンカテーテルを示す底面図である。
図12図12は第2の実施形態に係るダブルルーメンカテーテルを示す斜視図である。
図13図13は第2の実施形態に係るダブルルーメンカテーテルを示す側面図である。
図14図14は一実施形態に係るトンネラを示す側面図である。
図15図15はトンネラの変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1図5に示すように、第1の実施形態のダブルルーメンカテーテルは、樹脂等からなるチューブであり、基端から先端に延びる管腔を形成する周壁101と、管腔を第1通路110及び第2通路120に区画する隔壁102とを備えている。周壁101は、第1通路110側と第2通路120側とにおいて先端の位置が揃っているため、第1通路110のエンドホールと第2通路120のエンドホールの位置が揃っている。隔壁102は、周壁101の先端よりも先端側に突出した突出部103を有し、突出部103は、平面U字状である。
【0030】
本実施形態のダブルルーメンカテーテルは、第1通路110側と第2通路120側とにおいて周壁101の先端の位置が揃っているため、逆接続時の再循環を抑制できる。また、突出部103を設けることにより、さらに再循環を低減する効果が得られる。
【0031】
本実施形態のダブルルーメンカテーテルは、第1通路110の先端部に第1通路スリット111と複数の第1通路貫通孔112を有し、第2通路120の先端部に複数の第2通路貫通孔122を有している。周壁101の先端部は第1通路スリット111を挟んで第1先端部周壁115と第2先端部周壁116とを有している。第2通路貫通孔122は第1通路スリット111の先端部と第1通路貫通孔112との間に配置される。より詳しくは、最も基端側の第2通路貫通孔122は第1通路スリット111の基端と最も先端側の第1通路貫通孔との間に位置している。
【0032】
本実施形態のダブルルーメンカテーテルは、第1通路スリット111を有しているため、第1通路110を脱血ルーメンとした場合に、第1通路110に吸い込まれる血液の流れが先端のエンドホールに集中しないように分散させることができる。従って、第2通路120の先端部から流出した血液がそのまま第1通路110に吸い込まれる再循環の発生を抑えることができる。また、血流が分散することにより血管壁がカテーテルにへばりつきにくくすることができる。さらに、開口箇所を増やすことにより、血栓による閉塞を起こりにくくすることもできる。
【0033】
本実施形態のダブルルーメンカテーテルは、周壁101の周方向中央部に設けられた第1通路スリット111を挟んで第1先端部周壁115と第2先端部周壁116を有することで、第1通路スリット111の剛性の低下を防ぎ、使用時において血管壁等からの押圧によって周壁101先端部が閉塞又は狭窄されることを防ぐことができる。
【0034】
また、第1通路110は、第1通路貫通孔112を有している。これにより、第1通路110に吸い込まれる血液の流れをさらに分散させて、カテーテルが血管壁にへばりつきにくくすることができる。血管壁へのへばりつきを低減する観点からは、第1通路貫通孔112を、第1通路スリット111とはできるだけずれた位置に設けることが好ましい。血管壁へのへばりつきは、第1通路貫通孔112を千鳥配置にすることでさらに低減できる。第1通路貫通孔112を千鳥配置にする場合、隣接する第1通路貫通孔112をできるだけずれた位置に配置することが好ましい。例えば、隣接する2つの第1通路貫通孔112における、第1通路貫通孔112と周壁101が形成する円の中心とを結ぶ直線がなす角を120°~180°とすることが好ましい。但し、第1通路貫通孔112は長手方向に直列に配置することもできる。
【0035】
第1通路110を返血ルーメンとした場合には、第1通路スリット111により血液の流れ出しが分散されるため、第1通路110から流れ出た血液がそのまま第2通路120のエンドホールから吸い込まれる再循環を生じにくくすることができる。また、第2通路120の先端部に第2通路貫通孔122が設けられているため、第2通路120に吸い込まれる血液の流れも分散する。これにより、逆接続時における再循環率をさらに低減することができる。この観点から、最も基端側の第2通路貫通孔は第1通路スリット111よりも基端側に位置することが好ましい。さらに、第2通路貫通孔122により、逆接続時における血管壁のへばりつきを低減することもできる。血管壁のへばりつきを低減する観点から、第2通路貫通孔122も千鳥配置とすることが好ましい。この場合、隣接する第2通路貫通孔122をできるだけずれた位置に配置することが好ましく、例えば、隣接する2つの第2通路貫通孔122における、第2通路貫通孔122と周壁101が形成する円の中心とを結ぶ直線がなす角を120°~180°とすることが好ましい。
【0036】
第2通路貫通孔122を設けることにより、第2通路120の先端部が血栓等の影響により閉塞したとしても、第2通路貫通孔122により第2通路120の開存させることが可能となる。
【0037】
再循環を低減する観点から、最も基端側の第2通路貫通孔122は、最も先端側の第1通路貫通孔112よりも先端側で且つ第1通路スリット111の基端よりも基端側に設けられていることが好ましい。また、第1通路貫通孔112及び第2通路貫通孔122をいずれも千鳥配置とする場合には、再循環をさらに生じにくくする観点から、最も基端側の第2通路貫通孔122が、最も先端側の第1通路貫通孔112と第1通路スリット111を挟んで反対側となるようにすることが好ましい。
【0038】
本実施形態のダブルルーメンカテーテルにおいて、第1通路スリット111は、周壁101の第1通路110部分の周方向中央部に設けられている。このように構成することにより、第1通路スリット111を挟んだ両側に第1先端部周壁115及び第2先端部周壁116が形成される。第1通路スリット111を周方向中央部に設けることにより、第1先端部周壁115又は第2先端部周壁116の少なくとも一方の剛性が低くなって、血管内留置時に第1通路110のエンドホールが閉塞されることを避けることができる。第1通路スリット111の幅W1は、特に限定されないが、カテーテルの外径φ1の15%~35%程度が好ましい。第1通路スリット111の長さL1は、特に限定されないが、カテーテルの外径φ1の1.5倍~2.5倍程度が好ましい。本実施形態においては、カテーテルの外径φ1は4.3mmであり、第1通路スリット111の幅W1は1mm、長さL1は8mmである。第1通路スリット111は壁面にRを設けることが好ましい。
【0039】
第1通路貫通孔112は、周壁101を貫通して第1通路110と外部とをつなぐサイドホールであり、長手方向に互いに間隔をおいて複数設けられている。本実施形態は、第1通路貫通孔112が2個である例を示すが、第1通路貫通孔112は3個以上設けられていてもよい。本実施形態において、隣接する第1通路貫通孔112が、第1通路110の長手方向にも幅方向にもずれた位置に配置された、いわゆる千鳥状に配置されており、さらに、第1通路スリット111を挟んで交互に反対側に配置されている。第1通路貫通孔112は、長手方向に等間隔に設けることができるが、不等間隔に設けることもできる。
【0040】
第2通路貫通孔122は、周壁101を貫通して第2通路120と外部とをつなぐサイドホールであり、長手方向に互いに間隔をおいて複数設けられている。本実施形態は、第2通路貫通孔122が2個である例を示すが、第2通路貫通孔122は3個以上設けられていてもよい。第2通路貫通孔122も千鳥状に配置されている。最も基端側の第2通路貫通孔122が、最も先端側の第1通路貫通孔112に対して、第1通路スリット111を挟んで反対側に配置されるようにすることが好ましく、第1通路貫通孔112と第2通路貫通孔122とが全体として千鳥状に配置されていることがより好ましい。
【0041】
最も先端側の第2通路貫通孔122は、周壁101の先端からある程度間隔をおいて配置することが好ましい。具体的には、貫通壁の端部から最も先端側の第2通路貫通孔122の中心までの距離を、カテーテルの外径φ1の0.8倍~1.5倍程度とすることが好ましい。また、全ての第1通路貫通孔112及び第2通路貫通孔122は、長手方向に等間隔で設けられていることが好ましい。この場合、隣接する貫通孔の中心同士の距離を、貫通孔の直径の3.5倍~5.5倍程度とすることが好ましい。例えば、外径φ1が4.3mmのカテーテルの場合、各貫通孔を5mm間隔で配置することができる。但し、第1通路貫通孔112の長手方向の間隔と第2通路貫通孔122の長手方向の間隔とは異なっていてもよい。また、全ての第1通路貫通孔112及び第2通路貫通孔122が不等間隔で配置されていてもよい。第1通路貫通孔112及び第2通路貫通孔122の直径は、特に限定されないが、カテーテルの外径φ1の15%~35%程度が好ましい。
【0042】
第1通路貫通孔112の直径と第2通路貫通孔122の直径とは、同じであっても異なっていてもよい。また、第1通路貫通孔112及び第2通路貫通孔122のうちの一部の直径が異なっていてもよい。
【0043】
本実施形態のダブルルーメンカテーテルは、種々の変形が可能である。例えば、図6及び図7に示す第1変形例のように、第1通路貫通孔112を設けなくてもよい。第1変形例において、第2通路貫通孔122を直列に設けているが、第2通路貫通孔122は千鳥に配置することもできる。
【0044】
図8及び図9に示す第2変形例のように、第2通路貫通孔122に代えて第2通路スリット121を設けることもできる。第2通路120にもスリットを設けることにより、第2通路120を脱血ルーメンとした場合に血管壁へのへばりつきが抑制される。第2通路スリット121は、長手方向の長さL2を第1通路スリット111の長さL1よりも短くすることができる。具体的には、L2はL1の80%~45%程度とすることが好ましい。但し、L2をL1と同じにすることもできる。なお、第1通路貫通孔112及び第2通路貫通孔122の少なくとも一方を設けることもできる。
【0045】
また、第2通路側に、第2通路貫通孔及び第2通路スリットのいずれも設けられていない構成とすることもできる。さらに、図10及び図11に示す第3変形例のように、第1通路スリット111に代えて第1通路貫通孔112を設けることもできる。この場合も、第2通路120側には、第2通路貫通孔122及び第2通路スリット121の少なくとも1方を設けることができる。
【0046】
本実施形態及び各変形例において、突出部103が角部を有さない平面U字である例を示したが、突出部103はこのような形状に限らず、平面方形状又は台形状等の角部を有する形状であってもよい。
【0047】
図12及び図13には、第2の実施形態のダブルルーメンカテーテルを示す。第2の実施形態のダブルルーメンカテーテルは、第1通路210及び第2通路220がそれぞれ、第1通路スリット211及び第2通路スリット221を有している。第1通路スリット211及び第2通路スリット221は、隔壁202の側端の位置から周壁201の一部が切り欠かれて形成されている。また、第1通路スリット211と第2通路スリット221とは、周方向の互いに反対側に位置している。このため、第2の実施形態のダブルルーメンカテーテルを先端側から見た場合に周壁201及び隔壁202の先端面は略S字状となっている。
【0048】
また、第1通路スリット211及び第2通路スリット221はそれぞれ隔壁側スリット線212、222と対向スリット線213、223及びこれらを接続する接続スリット線214、224とを含む。接続スリット線214、224は略U字形状を有する。本実施形態において、隔壁側スリット線212、222は隔壁202の表面と略一致しているが、このような態様に限定されず、隔壁側スリット線212、222と隔壁202の表面との間にそれぞれ周壁が存在していてもよい。
【0049】
また、第1通路スリット211と第2通路スリット221とが周方向の互いに反対側に位置しているため、脱血側と送血側の血液の流れも離され、第1通路210を脱血側とした場合も返血側とした場合も再循環を生じにくくすることができる。
【0050】
本実施形態において、第1通路スリット211及び第2通路スリット221は、周壁201における幅(スリット幅)が先端側において基端側よりも狭くなっている。このため、脱血ルーメンとした側の通路の先端が大きくつぶれ閉塞する現象を生じにくくすることができる。また、スリットの基端側においてスリット幅が大きいため、接続スリット線214付近への脱血圧の集中を抑えることができる。但し、第1通路スリット211及び第2通路スリット221のスリット幅は、一定としたり、先端側において基端側よりも広くしたりすることもできる。
【0051】
第1通路スリット211及び第2通路スリット221の最大スリット幅は、特に限定されないが、カテーテルの外径φ1の15%~35%程度が好ましい。スリットの長さは、特に限定されないが、カテーテルの外径φ1の1.5倍~2.5倍程度が好ましい。
【0052】
第2の実施形態のダブルルーメンカテーテルにおいても、第1通路貫通孔及び第2通路貫通孔の少なくとも一方を設けることができる。第1通路貫通孔及び第2通路貫通孔の配置は、第1の実施形態及びその変形例と同様にすることができる。また、第2の実施形態のダブルルーメンカテーテルにおいても、隔壁202に突出部を設けることができる。
【0053】
各実施形態及び変形例に係るダブルルーメンカテーテルは、シャントを形成せずに透析を行う場合等に血管内に留置して脱血及び返血を行うために用いることができる。カテーテルの基端側には、必要に応じてハブ及びコネクタ等を接続することができる。
【0054】
各実施形態及び変形例に係るダブルルーメンカテーテルは、皮下へのトンネリングのためのトンネラを先端に接続した、カテーテル複合体とすることができる。先端のトンネラにより皮下トンネルを形成すると共にダブルルーメンカテーテルを皮下トンネル内に導入した後、トンネラを取り外すことにより、皮下トンネルを経由してダブルルーメンカテーテルを血管内に配置することができる。接続するトンネラは特に限定されないが、例えば、図14に示すようなものを用いることができる。
【0055】
図14に示すトンネラ300は、シャフト部301とシャフト部301の基端に設けられた接続部302とを有している。シャフト部301は先細になった先端部311と、定径の本体部312と、細径部313とを有している。シャフト部301の基端には、シースの抜け止めとなるテーパー部314が設けられている。
【0056】
細径部313は、シャフト部301を屈曲させ易くするために設けられており、図14においては2つ設けられているが、1つでも、3つ以上であってもよい。また、設けなくてもよい。
【0057】
接続部302は、ダブルルーメンカテーテルに挿入される挿入部321と、挿入部321とシャフト部301との間に設けられた非挿入部322とを有している。
【0058】
挿入部321は、非挿入部322よりも外径が小さく、ダブルルーメンカテーテルの第1通路又は第2通路に挿入して嵌合可能な最大外径を有している。図14においては、挿入部321の基端側に他の部分よりも拡径された拡径部324を設けることにより、挿入されたカテーテルが挿入部321から容易に抜けないようにしている。但し、挿入部321をダブルルーメンカテーテルに挿入して抜けないようにできればよく、挿入部321を基端側から先端側に次第に拡径するストレートなテーパー状としたり、いわゆるたけのこ形状等としたりすることもできる。
【0059】
挿入部321の少なくとも基端の外径は、ダブルルーメンカテーテルの第1通路又は第2通路の最大高さよりも僅かに小さくした方が、挿入部321の挿入が容易となり好ましい。また、挿入部321の最大外径(拡径部324の外径)は、ダブルルーメンカテーテルの第1通路又は第2通路の最大高さよりも僅かに大きくした方が、挿入部321がカテーテルから抜け落ちにくくできるので好ましい。挿入部321の長さは、特に限定されないが、抜けにくくする観点からは5mm以上とすることが好ましく、操作性の観点からは25mm以下とすることが好ましい。なお、通路の最大高さHmaxは、図5に示すように隔壁の表面から周壁の内面までの鉛直方向の最大距離である。
【0060】
非挿入部322は、挿入部321の非挿入部側の端部よりも外径が大きく、挿入部321と非挿入部322との間に第1の段差322aが生じている。一方、非挿入部322は、シャフト部301の基端に設けられたテーパー部314の基端よりも外径が小さく、非挿入部322とシャフト部301との間には第2の段差322bが生じている。
【0061】
ところで、トンネラが接続されたカテーテル複合体により皮下トンネルを形成するカ際には、カテーテルの先端にトンネラを接続した接続部分が覆われるように、トンネラをシースに挿入して使用することが一般的である。このため、シースに挿入できるように、カテーテルとトンネラとをできるだけ凹凸なく接続できるようにすることが重要である。
【0062】
非挿入部322を設けていない従来のトンネラ場合は、接続部とシャフト部との間に大きな段差が生じる。このため、突出部を有するダブルルーメンカテーテルに従来のトンネラを挿入すると、接続部とシャフト部との間の大きな段差により突出部は大きく外側に折れ曲がるため、突出部がシースからはみ出して接続部を覆うことができない。
【0063】
しかし、本実施形態のトンネラ300の場合、第1の段差322aは小さな段差であるため、挿入部321の根元までダブルルーメンカテーテルに挿入しても突出部は大きく折れ曲がらず、突出部がシースからはみ出すことはない。また、非挿入部322が設けられていることで、突出部の配置スペースを確保することができると共に、ダブルルーメンカテーテルの先端部からシャフト部301までに距離ができるため、シースを被せる際に径方向に可動させやすくなる。さらに、非挿入部322とテーパー部314との間に段差322bが設けられていることで、非挿入部322に沿って配置される突出部とシースとが端面方向で突き当たるのを回避することができる。このため、シースに接続部をスムーズに挿入することができる。
【0064】
非挿入部322の外径は、非挿入部322がダブルルーメンカテーテルの第1通路又は第2通路内に侵入しないように、第1通路又は第2通路の最大高さ又は最大幅よりも大きいことが好ましい。一方、シースへの挿入をスムーズに行うか観点からは、第1の段差322aにより折れ曲がったカテーテルの突出部の先端が、トンネラを接続していない側の通路の周壁を越えてはみ出さないようにすることが好ましい。また、非挿入部322の長さは、ダブルルーメンカテーテルの突出部の長さと同じかそれよりも長くすることが好ましい。また、第2の段差322bの大きさは、突出部の肉厚以上とすることが好ましい。
【0065】
挿入部321の最大外径及び非挿入部の外径は、特に限定されるわけではないが、上記のような効果を得る観点から、挿入部321の最大外径を通路の最大高さHmaxの1.1倍~1.4倍程度とし、非挿入部の外径を通路の最大高さHmaxの約1.5倍~1.9倍程度とすることが好ましい。
【0066】
第1通路と第2通路との最大高さが等しく、先端位置が揃っているダブルルーメンカテーテルの場合は、挿入部321は第1通路と第2通路のどちらに挿入することもできるが、一方の通路にスリットが設けられている場合には、スリットが設けられていない方の通路に挿入した方が、挿入部321が抜けにくくすることができるので好ましい。
【0067】
本実施形態のトンネラ300は、突出部を有するダブルルーメンカテーテルと組み合わせて用いた場合にも、シースにスムーズに挿入することができ、カテーテルの配置が容易となる。但し、本実施形態のトンネラ300は、突出部を有していないダブルルーメンカテーテルと組み合わせて用いることもできる。
【0068】
また、各実施形態のダブルルーメンカテーテルは、図15に示すようなトンネラ300Aと組み合わせることもできる。トンネラ300Aは、シャフト部301と、ダブルルーメンカテーテル350の第1通路351又は第2通路352に挿入される挿入部321と、シャフト部301と挿入部321との間に設けられ、略S字状に湾曲した湾曲連結部331とを有している。湾曲連結部331は、挿入部321をダブルルーメンカテーテル350の通路の一方に挿入した場合に、シャフト部301の中心軸とダブルルーメンカテーテル350の中心軸とが一致するように構成されている。このように構成することで、トンネラとダブルルーメンカテーテルとの間に大きな凹凸が生じず、カテーテルとトンネラの接続部分をシースで容易に覆うことができる。ここで、中心軸が一致するとは、中心軸同士が完全に重なり合っている場合だけでなく、シースに挿入する邪魔にならない範囲で、いずれかの方向に数mm程度ずれている場合も含む。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本開示のダブルルーメンカテーテルは、血管壁へのへばりつきを生じにくくすると共に再循環を抑えることができ、血液透析用カテーテル等として有用である。
【符号の説明】
【0070】
101 周壁
102 隔壁
103 突出部
110 第1通路
111 第1通路スリット
112 第1通路貫通孔
115 第1先端部周壁
116 第2先端部周壁
120 第2通路
121 第2通路スリット
122 第2通路貫通孔
201 周壁
202 隔壁
210 第1通路
211 第1通路スリット
212 隔壁側スリット線
213 対向スリット線
214 接続スリット線
220 第2通路
221 第2通路スリット
222 隔壁側スリット線
223 対向スリット線
224 接続スリット線
300 トンネラ
301 シャフト部
302 接続部
311 先端部
312 本体部
313 細径部
314 テーパー部
321 挿入部
322 非挿入部
322a 第1の段差
322b 第2の段差
324 拡径部
331 湾曲連結部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15