(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120016
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】眼をマスク装置で処置するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/01 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A61F9/01
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098475
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2021179461の分割
【原出願日】2016-12-05
(31)【優先権主張番号】62/262,900
(32)【優先日】2015-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510017365
【氏名又は名称】アヴェドロ・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】AVEDRO,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】フリードマン,マーク・ディー
(72)【発明者】
【氏名】アドラー,デスモンド
(57)【要約】 (修正有)
【課題】眼を光増感剤、例えば、架橋処置で処置するためにマスク装置を採用するシステムおよび方法を提供する。
【解決手段】眼処置は、マスク装置を第一および第二の眼の上に位置付ける。マスク装置の後側は、顔に接近し、前側は、顔から遠位にある。マスク装置は、前側と後側との間に伸長し、第一および第二の眼を挟んで伸長するチャンバを画定する外壁を包含する。前側は、第一の眼のための光活性化光が、第一の眼の上に位置付けられるチャンバの第一のセクションに供給されることを可能にする第一の透過領域を包含する。前側は、第二の眼のための光活性化光が、第二の眼の上に位置付けられる第二のセクションに供給されることを可能にする第二の透過領域を包含する。システムは、周囲空気とは異なるガスを貯蔵する少なくとも一つのガス源を包含する。システムは、ガスをチャンバに供給するガス供給システムを包含する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼を処置するためのシステムであって、:
マスク装置が前側および後側を包含し、
後側が顔に接近して位置付けられるように構成され、
前側が顔から遠位に位置付けられるように構成され、
マスク装置が少なくとも前側と後側との間に伸長する外壁を包含し、
外壁が第一および第二の眼を挟んで伸長するチャンバを画定し、
チャンバが第一のセクションおよび第二のセクションを包含し、
第一のセクションが第一の眼の上に位置付けられるように構成され、
第二のセクションが第二の眼の上に位置付けられるように構成され、
前側が第一のセクションの上に配置された第一の透過領域および第二のセクションの上に配置された第二の透過領域を包含し、
第一の透過領域が第一の眼のための第一の光活性化光が第一のセクションに供給されることを可能にし、
第二の透過領域が第二の眼のための第二の光活性化光が第二のセクションに供給されることを可能にする、
顔の第一および第二の眼の上に位置付けられるように構成されるマスク装置と;
周囲空気とは異なるガスを貯蔵する少なくとも一つのガス源と;
ガス供給システムが貯蔵されたガスをマスク装置のチャンバに供給するように構成される、少なくとも一つのガス源をマスク装置に連結するガス供給システムと、を含むシステム。
【請求項2】
ガスが周囲空気中の環境濃度の酸素よりもより大きい増加した濃度の酸素を包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
ガス供給システムがチャンバの第一のセクションにつながる第一のポートと、チャンバの第二のセクションに伸長する第二のポートと、を包含する請求項1記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも一つのガス源が、
マスク装置に連結され、第一のガスが第一のポートを介して第一のセクションに流れることを可能にする第一の開口を包含する第一のガス源と、
マスク装置に連結され、第二のガスが第二のポートを介して第二のセクションに流れることを可能にする第二の開口を包含する第二のガス源と、を包含する請求項3記載のシステム。
【請求項5】
第一のガスおよび第二のガスが異なるガス混合物を有する、請求項4記載のシステム。
【請求項6】
ガス供給システムが第一のガス源の第一の開口を閉じる第一のシールと、第二のガス源の第二の開口を閉じる第二のシールとを包含し、
第一のシールが剥がされて第一のガスが第一のセクションに流れることを選択的に可能にするように構成され、
第二のシールが剥がされて第二のガスが第二のセクションに流れることを選択的に可能にするように構成される、請求項4記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも一つのガス源がマスク装置から離隔したガス源を包含し、
ガス供給システムが第一のポートからガス源まで伸長する第一のチューブと、
第二のポートからガス源まで伸長する第二のチューブと、を包含する請求項3記載のシステム。
【請求項8】
マスク装置が第一の拡散器および第二の拡散器を包含し、
第一のポートが第一の拡散器につながり、
第二のポートが第二の拡散器につながり、
第一の拡散器が第一のガスを顔の第一のこめかみに向けて供給して第一のセクションに流れる第一のガスの乱流または背圧を最小化するように構成され、
第二の拡散器が第二のガスを顔の第二のこめかみに向けて供給して第二のセクションに流れる第二のガスの乱流または背圧を最小化するように構成される、請求項3記載のシステム。
【請求項9】
第一の光活性化光または第二の光活性化光の少なくとも一つを供給するように構成される少なくとも一つの照明装置をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
第一の光活性化光および第二の光活性化光が異なる処置パラメータに従って供給される、請求項1記載のシステム。
【請求項11】
第一の透過領域が前側に形成される第一のアパーチャであり、
第二の透過領域が前側に形成される第二のアパーチャである、請求項1記載のシステム。
【請求項12】
第一の透過領域が前側に形成される第一の窓を包含し、
第二の透過領域が前側に形成される第二の窓である、請求項1記載のシステム。
【請求項13】
マスク装置が少なくとも一つのガス源からのガスを所定の圧力で保つように構成される、請求項12記載のシステム。
【請求項14】
マスク装置に連結され、第一の溶液を第一の眼に供給するように構成される第一の溶液アプリケータと、
マスク装置に連結され、第二の溶液を第二の眼に供給するように構成される第二の溶液アプリケータと、をさらに含む請求項1記載のシステム。
【請求項15】
第一の溶液および第二の溶液が異なる光増感剤処方を包含する、請求項14記載のシステム。
【請求項16】
ガスが第一のセクションから第二のセクションまでおよび逆にチャンバにわたって流れることができる、請求項1記載のシステム。
【請求項17】
マスク装置がマスク装置のチャンバの第一のセクションと第二のセクションとを分離する内壁を包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項18】
眼を処置するための方法であって、:
マスク装置が前側および後側を包含し、
後側が顔に接近して位置付けられるように構成され、
前側が顔から遠位に位置付けられるように構成され、
マスク装置が少なくとも前側と後側との間に伸長する外壁を包含し、
外壁が第一および第二の眼を挟んで伸長するチャンバを画定し、
チャンバが第一のセクションおよび第二のセクションを包含し、
第一のセクションが第一の眼の上に位置付けられるように構成され、
第二のセクションが第二の眼の上に位置付けられるように構成され、
前側が第一のセクションの上に配置された第一の透過領域および第二のセクションの上に配置された第二の透過領域を包含する、
マスク装置を顔の第一および第二の眼の上に位置付ける工程と;
第一の光活性化光を第一の透過領域を介して第一の眼に供給する工程または第二の光活性化光を第二の透過領域を介して第二の眼に供給する工程の少なくとも一つと;
ガス供給システムを介してマスク装置に連結される少なくとも一つのガス源からマスク装置のチャンバに周囲空気とは異なるガスを供給する工程と、を含む方法。
【請求項19】
第一の浸漬時間に従って第一の光増感剤溶液を第一の眼に供給する工程または第二の浸漬時間に従って第二の光増感剤溶液を第二の眼に供給する工程の少なくとも一つをさらに含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
第一の光増感剤溶液および第二の光増感剤溶液が異なる光増感剤処方を有する、請求項19記載の方法。
【請求項21】
第一の光増感剤溶液が第一の眼に最初に供給され;
第一の浸漬時間に従って第一の光増感剤溶液が供給された後で、第一の光活性化光が照明装置によって第一の眼に供給され;
第一の眼への第一の光活性化光の供給中に第二の光増感剤溶液が第二の眼に供給され;
第一の光活性化光が第一の眼に供給され、第二の光増感剤溶液が第二の浸漬時間に従って供給された後で、第二の光活性化光が同じ照明装置によって第二の眼に供給される、請求項19記載の方法。
【請求項22】
ガスが周囲空気中の環境濃度の酸素よりもより大きい増加した濃度の酸素を包含する、請求項18記載の方法。
【請求項23】
少なくとも一つのガス源が第一のガス源および第二のガス源を包含し、少なくとも一つのガス源からのガスを供給する工程が:
第一のガス源からの第一のガスをマスク装置の第一のポートを介して第一のセクションに供給する工程と;
第二のガス源からの第二のガスをマスク装置の第二のポートを介して第二のセクションに供給する工程と、を包含する請求項18記載の方法。
【請求項24】
第一のガスおよび第二のガスが異なるガス混合物を有する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
ガス供給システムが第一のガス源の第一の開口を閉じる第一のシールと第二のガス源の第二の開口を閉じる第二のシールとを包含し、
第一のガスを供給する工程が第一のシールを剥がして第一のガスが第一のセクションに流れることを可能にする工程を包含し、
第二のガスを供給する工程が第二のシールを剥がして第二のガスが第二のセクションに流れることを可能にする工程を包含する、請求項23記載の方法。
【請求項26】
チャンバに流れるガスの乱流を最小化するためにガスが顔のこめかみに向けて供給される、請求項18記載の方法。
【請求項27】
第一の光活性化光および第二の光活性化光が実質的に異なる照明パラメータに従って供給される、請求項18記載の方法。
【請求項28】
第一の光活性化光が第一の照明装置によって第一の眼に供給され;
第二の光活性化光が第二の照明装置によって第二の眼に供給され;
第一の光活性化光の供給の少なくとも一部が第二の光活性化光の供給の少なくとも一部の間に起こる、請求項18記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、内容全体が引用例として本明細書に組み入れられる、2015年12月3日に出願された米国仮特許出願第62/262,900号の優先権および利益を主張する。
【0002】
発明の背景
技術分野
本開示は、眼の障害を処置するためのシステムおよび方法、より詳細には、眼を光増感剤、例えば、架橋処置で処置するためにマスク装置を採用するシステムおよび方法に関する。
【0003】
背景技術
架橋処置は、障害、例えば、円錐角膜を患う眼を処置するために採用されることができる。とりわけ、円錐角膜は、角膜内の構造的変化が角膜を脆弱化し異常な円錐形状に変化させる、眼の変性障害である。架橋処置は、円錐角膜によって脆弱化した区域を強化および安定化させ、望ましくない形状変化を防ぐことができる。
【0004】
架橋処置は、外科処置、例えば、レーザー角膜内切削形成(LASIK)手術後に採用されることもできる。例として、LASIK後拡張症として公知の合併症は、LASIK手術によって引き起こされた角膜の菲薄化および脆弱化に起因して起こり得る。LASIK後拡張症では、角膜は、進行性スティープ化(膨隆)を経験する。それゆえに、架橋処置は、LASIK手術後の角膜の構造を強化および安定化させ、LASIK後拡張症を防ぐことができる。
【0005】
発明の概要
本開示の態様によれば、システムおよび方法は、眼を光増感剤、例えば、架橋処置で処置するためにマスク装置を採用する。例として、一つの実施態様によれば、眼を処置するためのシステムは、顔の第一および第二の眼の上に位置付けられるように構成されるマスク装置を包含する。マスク装置は、前側および後側を包含する。後側は、顔に接近して位置付けられるように構成され、前側は、顔から遠位に位置付けられるように構成される。マスク装置は、少なくとも前側と後側との間に伸長する外壁を包含する。外壁は、第一および第二の眼を挟んで伸長するチャンバを画定する。チャンバは、第一のセクションおよび第二のセクションを包含する。第一のセクションは、第一の眼の上に位置付けられるように構成される。第二のセクションは、第二の眼の上に位置付けられるように構成される。前側は、第一のセクションの上に配置された第一の透過領域および第二のセクションの上に配置された第二の透過領域を包含する。第一の透過領域は、第一の眼のための第一の光活性化光が第一のセクションに供給されることを可能にする。第二の透過領域は、第二の眼のための第二の光活性化光が第二のセクションに供給されることを可能にする。システムは、周囲空気とは異なるガスを貯蔵する少なくとも一つのガス源を包含する。システムは、少なくとも一つのガス源をマスク装置に連結するガス供給システムを包含する。ガス供給システムは、貯蔵されたガスをマスク装置のチャンバに供給するように構成される。
【0006】
もう一つの実施態様によれば、眼を処置するための方法は、マスク装置を顔の第一および第二の眼の上に位置付けることを包含する。マスク装置は、前側および後側を包含する。後側は、顔に接近して位置付けられるように構成され、前側は、顔から遠位に位置付けられるように構成される。マスク装置は、少なくとも前側と後側との間に伸長する外壁を包含する。外壁は、第一および第二の眼を挟んで伸長するチャンバを画定する。チャンバは、第一のセクションおよび第二のセクションを包含する。第一のセクションは、第一の眼の上に位置付けられるように構成される。第二のセクションは、第二の眼の上に位置付けられるように構成される。前側は、第一のセクションの上に配置された第一の透過領域および第二のセクションの上に配置された第二の透過領域を包含する。方法は、第一の光活性化光を第一の透過領域を介して第一の眼に供給することまたは第二の光活性化光を第二の透過領域を介して第二の眼に供給することの少なくとも一つを包含する。方法は、周囲空気とは異なるガスを少なくとも一つのガス源からマスク装置のチャンバに供給することを包含する。少なくとも一つのガス源は、ガス供給システムを介してマスク装置に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の態様による、角膜コラーゲンの架橋を生じさせるために、架橋剤および光活性化光を眼の角膜に供給する例示的なシステムを図示する。
【
図2A】本開示の態様による、角膜架橋処置中に適用されるリボフラビンおよび光活性化光(例えば、紫外線A(UVA)光)が関与する光化学速度論的反応の図を図示する。
【
図2B】
図2Aに示す光化学速度論的反応に影響を及ぼすことができるパラメータの図を図示する。
【
図3】本開示の態様による、光化学速度論的反応のモデルを採用する例示的なシステムを図示する。
【
図4】本開示の態様による、所望の生体力学的変化を達成するための処置パラメータを提供するために、光化学速度論的反応のモデルを採用する例示的なシステムを図示する。
【
図5】本開示の態様による、所望の生体力学的変化を達成するための処置パラメータを決定するために、光化学速度論的反応のモデルを採用する例示的な方法を図示する。
【
図6】本開示の態様による、マスク装置による眼処置を適用するための例示的なシステムを図示する。
【
図7】本開示の態様による、マスク装置による眼処置を適用するためのもう一つの例示的なシステムを図示する。
【
図8】本開示の態様による、マスク装置による眼処置を適用するためのなおももう一つの例示的なシステムを図示する。
【
図9】本開示の態様による、マスク装置による眼処置を適用するためのさらなる例示的なシステムを図示する。
【
図10】本開示の態様による、マスク装置による眼処置を適用するためのなおもさらなる例示的なシステムを図示する。
【
図11】本開示の態様による、マスク装置による眼処置を適用するための追加的な例示的なシステムを図示する。
【
図12A】本開示の態様による、処置システムが外部酸素ガス源を採用する、マスク装置による眼処置を適用するための例示的なシステムを図示する。
【
図12B】本開示の態様による、酸素ガスが最小限の乱流/背圧で外部酸素ガス源から供給される、
図12Aの例示的なシステムをさらに図示する。
【
図12D】本開示の態様による、拡散器が最小限の乱流/背圧で酸素ガスを供給する、
図12Cのマスク装置のための例示的な拡散器を図示する。
【0008】
本開示が様々な変形および代替形態を受け入れることができる一方で、その特定の実施態様を図面に例として示し、本明細書に詳細に記載する。しかし、本開示を特定の開示された形態に限定することを意図するものではなく、むしろ、意図としては、本開示の本質内である全ての変形、均等物および代替形態を網羅することにあることが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、眼1の角膜2のコラーゲンの架橋を生じさせるための例示的な処置システム100を図示する。処置システム100は、角膜2に架橋剤130を適用するためのアプリケータ132を包含する。例示的な実施態様では、アプリケータ132は、点眼器、注射器または光増感剤130を滴として角膜2に適用する同様のものであることができる。架橋剤130は、架橋剤130が角膜上皮2aを通じて角膜基質2bの皮下領域まで通過することを可能にする処方で提供されることができる。あるいは、角膜上皮2aは、架橋剤130がより直接的に皮下組織に適用されることを可能にするために、剥がされるさもなければ切開されることができる。
【0010】
処置システム100は、光源110と、光を角膜2に向けるための光学要素112とを備えた照明装置を包含する。光は、角膜2に架橋活性を生じさせるために、架橋剤130の光活性化を引き起こす。例として、架橋剤は、リボフラビンを包含することができ、光活性化光は、紫外線A(UVA)(例えば、約365nm)光を包含することができる。あるいは、光活性化光は、もう一つの波長、例えば、可視波長(例えば、約452nm)を包含することができる。以下にさらに記載されるように、角膜架橋は、光化学速度論的反応のシステムによって、角膜組織内に化学結合を生成することにより、角膜強度を改善する。例として、リボフラビンおよび光活性化光は、角膜組織を安定化および/または強化させて、病気、例えば、円錐角膜またはLASIK後拡張症に対処するために適用されることができる。
【0011】
処置システム100は、光源110および/または光学要素112を包含するシステム100の態様を制御する一つまたは複数のコントローラ120を包含する。実施態様では、角膜2は、より広範に架橋剤130(例えば、点眼器、注射器などで)で処置されることができ、光源110からの光活性化光は、特定のパターンによって処置される角膜2の領域に選択的に向けられることができる。
【0012】
光学要素112は、光源110によって放射された光活性化光を角膜2上の特定のパターンに向け、集めるための一つまたは複数のミラーまたはレンズを包含することができる。光学要素112は、光源110によって放射された光の波長を部分的に遮り、架橋剤130を光活性化するために角膜2に向けられる光の特定の波長を選択するためのフィルタをさらに包含することができる。加えて、光学要素112は、光源110によって放射された光のビームを分割するための一つまたは複数のビームスプリッタを包含することができ、光源110によって放射された光を吸収するための一つまたは複数のヒートシンクを包含することができる。光学要素112は、光活性化光を角膜2内の特定の焦点面、例えば、架橋活性が所望される皮下領域2bに特定の深さで、正確かつ精密に集めることもできる。
【0013】
さらに、光活性化光の特定の状態は、角膜2の選択された領域で所望の度合いの架橋を達成するために調節されることができる。波長、帯域幅、強度、電力、場所、浸透の深さおよび/または処置の期間(露光サイクル、暗サイクルの期間および暗サイクル期間に対する露光サイクルの比)の任意の組み合わせによって光活性化光を精密に供給するために、一つまたは複数のコントローラ120は、光源110および/または光学要素112の操作を制御するために使用されることができる。
【0014】
架橋剤130の光活性化のためのパラメータは、例として、所望の架橋を達成するために必要とされる時間の量を減らすために調整されることができる。例示的な実施態様では、時間は、分単位から秒単位まで減らされることができる。一部の機器構成が5mW/cm2の放射照度で光活性化光を適用する一方で、所望の架橋を達成するために必要とされる時間を減らすために、光活性化光のより大きい放射照度、例えば、5mW/cm2の倍数を適用することができる。角膜2に吸収されるエネルギーの合計照射量は、有効照射量として説明されることができ、角膜上皮2aの区域を通じて吸収されるエネルギーの量である。例として、角膜表面2Aの領域に対する有効照射量は、例として、5J/cm2であるまたは20J/cm2もしくは30J/cm2ほど高いことができる。記載された有効照射量は、エネルギーの単一の適用からまたはエネルギーの繰り返される適用から供給されることができる。
【0015】
処置システム100の光学要素112は、光活性化光の適用を空間的および時間的に調節するために、デジタルマイクロミラーデバイス(DMD)を包含することができる。DMD技術を使用して、光源110からの光活性化光は、半導体チップ上のマトリクスに置かれた微視的に小さいミラーによって生成される精密な空間的パターンに投影される。各ミラーは、投影された光のパターンに一つまたは複数の画素を表す。DMDによって、トポグラフィー誘導された架橋を行うことができる。トポグラフィーによるDMDの制御は、いくつかの異なる空間的および時間的な放射照度および照射量プロファイルを採用することができる。これらの空間的および時間的な照射量プロファイルは、連続波の照明を使用して生成することができるが、先に記載したように種々の周波数およびデューティサイクル状態で照明源をパルス化することによって、パルス照明を介して調節されることもできる。あるいは、DMDは、連続波の照明を使用する最終的な柔軟性を与えるために、異なる周波数およびデューティサイクルを画素ごとに調節することができる。または代替として、パルス照明および調節されたDMD周波数の両方と、デューティサイクルの組み合わせとを組み合わせることができる。これは、特定の量の空間的に決定された角膜架橋を可能にする。この空間的に決定された架橋は、処置前計画および/またはリアルタイムモニタリングならびに処置中の角膜架橋の調節のために、線量測定、干渉法、光干渉断層法(OCT)、角膜トポグラフィーなどと組み合わされることができる。線量測定システムの態様は、以下にさらに詳細に記載される。また、臨床治療前の患者情報は、患者固有の処置前計画を生成するために、有限要素生体力学的コンピュータモデリングと組み合わせられることができる。
【0016】
光活性化光の供給の態様を制御するために、実施態様は、多光子励起顕微鏡法の態様を採用することもできる。とりわけ、特定の波長の単一の光子を角膜2に供給するよりもむしろ、処置システム100は、架橋を開始するために組み合わさる、より長い波長、すなわち、より低いエネルギーの複数の光子を供給することができる。有利には、より長い波長は、より短い波長よりもより小さい度合いで角膜2内に散乱し、より長い波長の光がより短い波長の光よりもより効果的に角膜2に浸透することを可能にする。光増感剤による光の吸収がより長い波長ではずっと少ないため、角膜内のより深い深さに入射した照射の遮蔽効果も、従来の短い波長の照明よりも減る。これは、深さ固有の架橋に対する向上した制御を可能にする。例として、一部の実施態様では、架橋剤130の分子を励起して以下にさらに記載される光化学速度論的反応を生じさせるために必要なエネルギーの約半分を各光子が持つ、二つの光子を採用することができる。架橋剤分子が両方の光子を同時に吸収する場合、それは、活性ラジカルを角膜組織に放出するために十分なエネルギーを吸収する。実施態様は、架橋剤分子が例として、三つ、四つまたは五つの光子を同時に吸収しなければならず、活性ラジカルを放出するように、より低いエネルギーの光子を利用することもできる。複数の光子のほぼ同時吸収の可能性は低く、そのため、励起光子の高い流束が必要とされることができ、高い流束は、フェムト秒レーザーを通じて供給されることができる。
【0017】
多数の条件およびパラメータが架橋剤130による角膜コラーゲンの架橋に影響を及ぼす。例として、光活性化光の放射照度および照射量は、架橋の量および速度に影響を及ぼす。
【0018】
架橋剤130がとりわけリボフラビンである場合、UVA光が連続的に(連続波(CW))またはパルス光として適用されることができ、この選択は、架橋の量、速度および程度に影響を与える。UVA光がパルス光として適用される場合、露光サイクル、暗サイクルの期間および暗サイクル期間に対する露光サイクルの比は、結果として生じる角膜補強に影響を与える。パルス光照明は、同じ量または照射量の供給されるエネルギーの連続波の照明によって達成され得るよりも、より大きいまたはより小さい角膜組織の補強を生成するために使用されることができる。好適な長さおよび周波数の光パルスは、より最適な化学増幅を達成するために使用されることができる。パルス光処置の場合、オン/オフデューティサイクルは、約1000/1~約1/1000であることができ、放射照度は、約1mW/cm2~約1000mW/cm2平均放射照度であることができ、パルス速度は、約0.01Hz~約1000Hzまたは約1000Hz~約100,000Hzであることができる。
【0019】
処置システム100は、DMDを採用すること、光源110を電子的にオンおよびオフすることならびに/または機械的もしくは光電子(例えば、ポッケルスセル)シャッタもしくは機械的チョッパもしくは回転アパーチャを使用することによって、パルス光を生じさせることができる。DMDの画素固有の調節能力ならびに調節された周波数、デューティサイクル、放射照度および角膜に供給される照射量に基づく後続の剛性付与を理由として、様々な量の屈折矯正を可能にするために、複雑な生体力学的剛性パターンが角膜に付与されることができる。これらの屈折矯正は、例として、近視、遠視、乱視、不正乱視、老視ならびに眼疾患、例えば、円錐角膜、ペルーシド角膜辺縁変性、LASIK後拡張症および角膜の生体力学的変質/変性などの他の疾患を理由とする複雑な角膜屈折面矯正の組み合わせが関与し得る。DMDシステムおよび方法の特定の効果は、ランダム化された非同期パルスのトポグラフィーパターニングを可能にし、2Hz~84Hzのパルス周波数に対し光過敏性てんかん発作またはフリッカーバーティゴを誘発する可能性を排除する、非周期的でかつ均一に現れる照明を生成することである。
【0020】
例示的な実施態様が階段状のオン/オフパルス光関数を採用することができるものの、光を角膜に適用するための他の関数が類似の効果を達成するために採用されることができることが理解される。例として、光は、正弦関数、のこぎり波関数または他の複雑な関数もしくは曲線または関数もしくは曲線の任意の組み合わせによって、角膜に適用されることができる。実際、オン/オフ値の間により緩やかな移行があり得る場合には、関数が実質的に階段状であり得ることが理解される。加えて、放射照度がオフサイクル中にゼロの値まで減少する必要はなく、オフサイクル中にゼロを超え得ることが理解される。所望の効果は、二つ以上の値の間で放射照度を変動させる曲線に従って光を角膜に適用することによって達成されることができる。
【0021】
光活性化光を供給するためのシステムおよび方法の例は、例として、これらの出願の内容全体が引用例として本明細書に組み入れられる、2011年3月18日に出願された「Systems and Methods for Applying and Monitoring Eye Therapy」という表題の米国特許出願公報第2011/0237999号、2012年4月3日に出願された「Systems and Methods for Applying and Monitoring Eye Therapy」という表題の米国特許出願公報第2012/0215155号、2013年3月15日に出願された「Systems and Methods for Corneal Cross-Linking with Pulsed Light」という表題の米国特許出願公報第2013/0245536号に記載される。
【0022】
酸素の追加も角膜補強の量に影響を及ぼす。人間の組織内では、O
2含有量は、大気と比較して非常に低い。しかし、角膜における架橋の速度は、それが光活性化光によって照射されるときのO
2の濃度と関係がある。したがって、所望の量の架橋が達成されるまで架橋の速度を制御するために、照射中にO
2の濃度を能動的に増加または減少させることは有利であり得る。酸素は、架橋処置中に多数の異なるやり方で適用され得る。一つの手法は、O
2によってリボフラビンを過飽和させることが関与する。このように、リボフラビンが眼に適用されるとき、より高い濃度のO
2がリボフラビンと共に角膜に直接的に供給され、リボフラビンが光活性化光に暴露されるときにO
2が関与する反応に影響を及ぼす。もう一つの手法によれば、定常状態のO
2(選択された濃度の)は、角膜を選択された量のO
2に暴露し、O
2を角膜に侵入させるために、角膜の表面で維持されることができる。
図1に示すように、例として、処置システム100は、酸素源140および選択された濃度の酸素を角膜2に任意で供給する酸素供給装置142も包含する。架橋処置中に酸素を適用するための例示的なシステムおよび方法は、例として、これらの出願の内容全体が引用例として本明細書に組み入れられる、2010年10月21日に出願された「Eye Therapy」という表題の米国特許第8,574,277号、2012年10月31日に出願された「Systems and Methods for Corneal Cross-Linking with Pulsed Light」という表題の米国特許出願公報第2013/0060187号に記載される。
【0023】
リボフラビンが放射エネルギー、特に光を吸収するとき、それは、光活性化を受ける。リボフラビン光活性化のための二つの光化学速度論的経路、I型およびII型がある。I型およびII型機構の両方に関与している反応の一部は以下の通りである:
【数1】
【0024】
本明細書に記載される反応においては、Rfは、基底状態のリボフラビンを表す。Rf*
1は、励起一重項状態のリボフラビンを表す。Rf*
3は、三重項励起状態のリボフラビンを表す。Rf・-は、リボフラビンの還元ラジカルアニオン形態である。RfH・は、リボフラビンのラジカル形態である。RfH2は、リボフラビンの還元形態である。DHは、基質である。DH・+は、中間ラジカルカチオンである。D・は、ラジカルである。Doxは、基質の酸化形態である。
【0025】
リボフラビンは、反応(r1)~(r3)に示すように、その三重項励起状態Rf*
3に励起される。三重項励起状態Rf*
3から、リボフラビンは、一般的にI型またはII型機構に従って、さらに反応する。I型機構では、基質は、励起状態リボフラビンと反応して、水素原子または電子の伝達によってそれぞれラジカルまたはラジカルイオンを生じさせる。II型機構では、励起状態リボフラビンは、酸素と反応して、一重項分子酸素を形成する。一重項分子酸素は、次に、組織に作用して、追加的な架橋された結合を作り出す。
【0026】
角膜の酸素濃度は、UVA放射照度および温度によって調節され、UVA露光の初めにすぐに減少する。特定のデューティサイクル、周波数および放射照度のパルス光を利用して、I型およびII型の光化学速度論的機構の両方からの入力は、より大きい量の光化学的効率を達成するために、採用されることができる。さらに、パルス光を利用することは、リボフラビンが関与する反応の速度を調節することを可能にする。反応の速度は、パラメータの一つ、例えば、放射照度、照射量、オン/オフデューティサイクル、リボフラビン濃度、浸漬時間およびその他を調節することによって、必要に応じて、増加または減少のいずれかをされる。さらに、反応および架橋速度に影響を及ぼす追加的な成分が角膜に添加されることができる。
【0027】
UVA放射が酸素欠乏後まもなく停止される場合、酸素濃度は、増加し(補充され)始める。酸素がラジカル種と相互作用して鎖終結過酸化物分子を形成することによってフリーラジカル光重合反応を阻害することが可能であるという理由で、過剰な酸素は、角膜架橋プロセスにおいて弊害となり得る。パルス速度、放射照度、照射量および他のパラメータは、より最適な酸素再生速度を達成するために、調整されることができる。酸素再生速度を計算および調整することは、所望の量の角膜補強を達成するために反応パラメータを調整することのもう一つの例である。
【0028】
酸素含有量は、酸素拡散が反応の反応速度に追いつく非常に薄い角膜層を除き、角膜の至るところで、様々な化学反応によって欠乏し得る。この拡散が制御されるゾーンは、酸素を摂取する基質の反応能が減少するにつれ、角膜内へより深く徐々に移動する。
【0029】
リボフラビンは、放射照度が増加するにつれ、より大きい程度まで、可逆的または不可逆的に還元(不活化)されるおよび/または光分解される。光子最適化は、還元リボフラビンがI型反応で基底状態リボフラビンに戻ることを可能にすることによって達成されることができる。I型反応における還元リボフラビンの基底状態への戻り速度は、多数の要因によって決定される。これらの要因は、パルス光処置のオン/オフデューティサイクル、パルス速度周波数、放射照度および照射量を非限定的に包含する。さらに、リボフラビン濃度、浸漬時間および酸化剤を包含する他の薬剤の添加は、酸素摂取の速度に影響を及ぼす。デューティサイクル、パルス速度周波数、放射照度および照射量を包含するこれらのおよび他のパラメータは、より最適な光子効率を達成し、リボフラビン光増感のためのI型のみならずII型の光化学速度論的機構の両方を有効に使用するために選択されることができる。さらに、これらのパラメータは、より最適な化学増幅効果を達成するようなやり方で選択されることができる。
【0030】
しかし、先の光化学速度論的反応(r1)~(r8)に加えて、本発明者らは、リボフラビン光活性化中に起こる以下の光化学速度論的反応(r9)~(r26)も特定した:
【数2】
【0031】
図2Aは、先の反応(r1)~(r26)に提供される光化学速度論的反応の図を図示する。図は、UVA光活性化光下でのリボフラビン(Rf)の光化学的変換および電子伝達を介した様々な供与体(DH)との相互作用の概要である。示されるように、架橋活性は、:(A)反応(r6)~(r8)で一重項酸素の存在を通じて(II型機構);(B)反応(r4)~(r17)で酸素を使用せずに(I型機構);ならびに(C)反応(r13)~(r17)で過酸化物(H
2O
2)、スーパーオキシド(O
2
-)およびヒドロキシルラジカル(・OH)の存在を通じて起こる。
【0032】
図2Aに示すように、本発明者らは、架橋活性が過酸化物、スーパーオキシドおよびヒドロキシルラジカルが関与する反応からより大きい度合いで生じることも見出した。架橋活性は、一重項酸素が関与する反応からおよび非酸素反応からはより小さい度合いで生じる。反応(r1)~(r26)に基づく一部のモデルは、それぞれの反応によって生じる架橋活性のレベルを説明することができる。例として、架橋活性を生じさせる際に一重項酸素がより小さい役割を果たす場合には、モデルは、一重項酸素からの結果として生じる架橋活性を定数として扱うことによって単純化されることができる。
【0033】
全ての反応は、反応(r1)~(r3)に提供されるようなRf3
*から開始する。Rf3
*のクエンチングは、反応(r10)で基底状態Rfとの化学反応を通じておよび反応(r9)で水との相互作用による不活化を通じて起こる。
【0034】
先に記載したように、過剰な酸素は、角膜架橋プロセスにおいて弊害となり得る。
図2Aに示すように、システムが光子制限および酸素豊富になるとき、架橋は、スーパーオキシド、過酸化物およびヒドロキシルラジカルが関与するさらなる反応から離脱し得る。実際、一部のケースでは、過剰な酸素は、正味の架橋の破壊対架橋の生成をもたらし得る。
【0035】
先に記載したように、多種多様の要因が架橋反応の速度および架橋に起因して達成される生体力学的剛性の量に影響を及ぼす。多数のこれらの要因は、相関し、一つの要因を変化させることは、もう一つの要因に予期せぬ影響を与え得る。しかし、架橋処置の異なる要因の間の関係を理解するためのより包括的なモデルが先に特定した光化学速度論的反応(r1)~(r26)によって提供される。それゆえに、システムおよび方法は、酸素動態および架橋活性の統一的記載を提供するこの光化学速度論的架橋モデルに従って、架橋処置のための様々なパラメータを調整することができる。モデルは、処置パラメータの異なる組み合わせに基づく期待される成果を評価し、所望の結果を提供する処置パラメータの組み合わせを特定するために採用されることができる。パラメータは、例として、適用される架橋剤の濃度および/もしくは浸漬時間;光活性化光の照射量、波長、放射照度、期間および/もしくはオン/オフデューティサイクル;組織の酸素化条件;ならびに/または追加的な薬剤および溶液の存在を非限定的に包含することができる。
【0036】
図2Bに示すように、反応のシステムの態様は、異なるパラメータによって影響を及ぼされ得る。例として、光活性化光がシステムに供給される放射照度は、システムで利用可能な光子に影響を及ぼし、後続の反応のためのRf
3
*を生じさせる。また、システムにより多い酸素を供給することは、酸素に基づく反応を活発にする。一方で、光活性化光をパルス化することは、酸素拡散の追加的な時間を可能にすることによって、還元リボフラビンが基底状態リボフラビンに戻る能力に影響を及ぼす。当然ながら、反応のシステムを制御するために、他のパラメータを変動させることができる。
【0037】
ある実施態様では、
図3は、処置パラメータおよび/または他の関連情報からの結果として生じる架橋の量を決定するために先に特定した光化学速度論的反応(r1)~(r26)に基づくモデルを採用する例示的なシステム100を図示する。コントローラ120は、プロセッサ122およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体124を包含する。記憶媒体124は、光源110からの光活性化光が架橋剤で処置される角膜の選択された領域に供給されるときの架橋の量を決定するためのプログラム命令を記憶する。とりわけ、反応(r1)~(r26)に基づく光化学速度論的モデル126は、過酸化物、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルおよび/または一重項酸素の組み合わせを包含する活性酸素種(ROS)が関与する反応からの結果として生じる架橋を決定するための第一のセットのプログラム命令Aおよび酸素が関与しない反応からの架橋を決定するための第二のセットのプログラム命令Bを包含することができる。コントローラ120は、処置パラメータおよび/または他の関連情報に関する入力を受ける。コントローラ120は、次に、入力に基づいて、プログラム命令AおよびBを実行し、角膜の選択された領域の三次元架橋分布に関する情報を出力することができる。三次元架橋分布は、次に、角膜の選択された領域における所望の処置を達成するために、光源110、光学要素112、架橋剤130、アプリケータ132、酸素源140および/または酸素供給装置142の態様を制御する方法を決定するために採用されることができる。(当然ながら、
図3に示すシステム100およびこのプロセスは、同じ角膜の二つ以上の選択された領域の処置のために使用されることができる。)
【0038】
一つの実施態様によれば、三次元架橋分布は、角膜の選択された領域における架橋および活性酸素種の効果に起因する治癒反応に対応する閾値の深さを計算するために評価されることができる。追加的にまたは代替として、三次元架橋分布は、角膜の選択された領域における生体力学的組織反応に対応する生体力学的組織剛性閾値の深さを計算するために評価されることができる。角膜における治癒反応および/または生体力学的組織剛性の深さに関する情報は、光源110、光学要素112、架橋剤130、アプリケータ132、酸素源140および/または酸素供給装置142の態様を制御する方法を決定するために採用されることができる。特定の治癒反応および/または生体力学的組織剛性は、角膜の特定の深さで望ましいこともでき、望ましくないこともできる。
【0039】
もう一つの実施態様によれば、
図4は、角膜の所望の生体力学的変化、例えば、屈折矯正を達成するための処置パラメータを決定するために、光化学速度論的モデル126を採用する例示的なシステム100を図示する。
図3のように、コントローラ120は、プロセッサ122およびコンピュータ読み取り可能な記憶媒体124を包含する。しかし、
図4の例では、記憶媒体124は、所望の生体力学的変化を達成するためにどの処置パラメータが採用されることができるかを決定するためのプログラム命令125を記憶する。プログラム命令125は、(i)過酸化物、スーパーオキシド、ヒドロキシルラジカルおよび/または一重項酸素の組み合わせを包含する活性酸素種(ROS)が関与する反応および(ii)酸素が関与しない反応からの結果として生じる架橋を決定するために反応(r1)~(r26)を採用する光化学速度論的モデル126に基づく。
【0040】
光化学速度論的モデル126を使用して、処置される角膜組織の至るところで結果として生じる架橋の三次元分布は、処置パラメータの組み合わせに対して決定されることができる。先に記載したように、架橋処置のためのパラメータは、適用される架橋剤の濃度および/もしくは浸漬時間;光活性化光の照射量、波長、放射照度、期間、オン/オフデューティサイクルおよび/もしくは他の照明パラメータ;組織の酸素化条件;ならびに/または追加的な薬剤および溶液の存在を包含することができる。光化学速度論的モデル126から決定される架橋の結果として生じる分布は、角膜の特定の生体力学的変化と相関があることができる。例として、架橋の分布と屈折変化との間に相関関係がある。
【0041】
図4に示すように、コントローラ120は、角膜の初期生体力学的状態に関する入力12および角膜の所望の生体力学的変化、例えば、屈折矯正を示唆する入力14を受ける。初期生体力学的状態は、例として、先に参照された米国特許出願公報第2012/0215155号に記載された手法によって決定されることができる。一部のケースでは、入力12は、コントローラ120と通信連結される計測システムによって提供されることができる。初期生体力学的状態が任意の処置に先立ってまたは処置中の角膜の状態を反映し得ることが理解される。
【0042】
入力12、14は、角膜トポグラフィー(すなわち、形状)、角膜強度(すなわち、剛性)および/または角膜厚さに換算して表現される。例として、屈折矯正の場合の所望の生体力学的変化は、(医師によって)ジオプターで指定された矯正、例えば、「1.5ジオプター矯正」から決定されることができる。
【0043】
角膜の所望の生体力学的変化は、光化学速度論的モデル126によって決定されるような架橋の特定の分布と相関があり得る。そのようにして、コントローラ120は、入力12によって指定された初期生体力学的状態を有する角膜において入力14によって指定された所望の生体力学的変化を生じさせることができる特定の架橋の分布16を決定するために、プログラム命令125を実行することができる。所望の生体力学的変化のための架橋の分布16を決定した後、コントローラ120は、指定された架橋の分布を達成するための処置パラメータのセットを規定することができる。
【0044】
架橋の分布16は、二つ以上のセットの処置パラメータによって、多くのケースにおいて達成されることができる。例として、光化学速度論的反応に依存して、類似の架橋の分布は、(i)より長い量の時間のより低い照射量の光活性化光または(ii)より短い量の時間のより高い照射量の光活性化光を適用することによって達成されることができる。したがって、架橋の分布16を達成するための二つ以上のセットの処置パラメータ18が特定されることができる。
【0045】
二つ以上の可能なセットの処置パラメータ18によって、医師は、特定の好ましいパラメータ、例えば、処置時間または光活性化光の照射量について、処置を最適化することができる。例として、医師は、より短い処置時間を達成するために、処置パラメータを最適化することができる。この優先設定のために、コントローラ120は、より短い照明期間にわたり架橋の分布16を生み出すより大きい照射量の光活性化光を提供する照明パラメータのセットを規定することができる。逆に、医師は、より小さい照射量の光活性化光を採用するために、処置パラメータを最適化することができる。この第二の優先設定の場合、コントローラ120は、より長い照明期間にわたり架橋の分布16を生み出すより小さい照射量の光活性化光を提供する照明パラメータのセットを規定することができる。
【0046】
概して、架橋の分布16を達成するために、コントローラ120は、先に記載したように、処置パラメータA、B、C、D、Eなどのセットのための値の異なる組み合わせ18の任意のものを特定することができる。医師は、一つまたは複数のこれらの処置パラメータに対する優先設定を設定することができる。例として、医師は、パラメータAに対する好ましい値または好ましい値の範囲を最初に設定することができる。それに応じて、コントローラ120は、架橋の分布16を達成しつつ、パラメータAに対する優先設定を満たす残りのパラメータB、C、D、Eなどの値の組み合わせを指定することができる。医師は、最適化されたセットの処置パラメータ18aに到達するためのさらなる優先設定に基づいて、パラメータB、C、Dおよび/またはEなどの値の選択を行うことができる。処置パラメータ最適化のプロセスは、処置パラメータの値が種々の優先度を有する優先設定を満たすために漸増的に調整されるにつて、反復されることができる。
【0047】
一部の実施態様では、医師は、コントローラ120に連結されたユーザーインターフェース(図示せず)を介して、一連の選択および他の入力を通じて最適化プロセスを管理することができる。一部のケースでは、入力12、14も、そのようなユーザーインターフェースを通じて提供されることができる。
【0048】
最終的なセットの処置パラメータ18aは、次に、角膜の選択された領域における所望の処置を達成するために、光源110、光学要素112、架橋剤130、アプリケータ132、酸素源140、酸素供給装置142などの態様を制御する方法を決定するために採用されることができる。
【0049】
それに対応して、
図5は、所望の生体力学的変化を達成するための処置パラメータを決定するために、光化学速度論的反応(r1)~(r26)のモデルを採用するための例示的な方法600を図示する。工程602では、角膜の初期生体力学的状態に関する情報を受ける。工程604では、角膜の所望の生体力学的変化、例えば、屈折矯正に関する情報を受ける。工程606では、架橋の分布が初期生体力学的状態を有する角膜の所望の生体力学的変化を達成するために決定される。工程608では、一つまたは複数のセットの処置パラメータが架橋の分布を達成するために決定される。工程608と対応して、処置パラメータに対する一つまたは複数の優先設定を工程610で受けることができ、処置パラメータは、架橋の分布を達成するために処置システム(例えば、例示的なシステム100)で具現化されることができる最終的なセットの処置パラメータを決定するための一つまたは複数の優先設定に基づいて工程612で最適化されることができる。
【0050】
反応(r1)~(r26)に提供された光化学速度論的反応のさらなる態様は、内容全体が引用例として本明細書に組み入れられる、2016年4月27日に出願された「Systems and Methods for Cross-Linking Treatments of an Eye」という表題の米国特許出願第15/140,184号に記載される。
【0051】
図6は、患者の両方の眼1a、bに架橋処置を適用するための例示的な処置システム300を図示する。先に記載された処置システムの態様は、処置システム300に組み入れられることができる。
図6に示すように、処置システム300は、患者の顔3上に位置付けられ、右眼1aおよび左眼1bの両方の上にフィットするように構成されるマスク装置301を包含する。マスク装置301は、患者の頭の周囲に着用されることができるストラップ(図示せず)によって患者の顔3上の所定の位置に保たれることができる。そのようにして、一部の態様では、マスク装置301は、一対のゴーグルまたは同様のものに似ていることができる。あるいは、マスク装置301を所定の位置に保つために、医療用テープまたは同様のものをマスク装置301および顔3に適用することができる。あるいは、マスク装置301は、患者があおむけになっている間、追加的な支持なしで、患者の顔3に安定的にもたれるように形成されることができる。一部のケースでは、処置中にまぶたが閉じないように保つために、検鏡を眼1a、b各々に適用することができる。そのようなケースでは、マスク装置301は、周囲にフィットするさもなければ検鏡の使用に適応するような寸法にされることができる。マスク装置301は、正常角膜上皮ありの(「epi-on」とも知られる)または正常角膜上皮なしの(「epi-off」とも知られる)架橋処置のために採用されることができる。
【0052】
マスク装置301は、前側301aおよび後側301bを有するボディによって画定され、前側301aが顔3から遠位に位置付けられ、後側301bが顔3に接近して(例えば、もたれて)位置付けられる。後側301bは、顔3を受けるための開口を画定することができる。ボディは、少なくとも前側301aと後側301bとの間に伸長する外壁301cを包含する。壁301cは、右眼および左眼1a、bを挟んで伸長するチャンバ302を画定する。チャンバ302は、右眼1aの上に位置付けられる右セクション302aおよび左眼1bの上に位置付けられる左セクション302bを包含する。各セクション302a、bは、それぞれの眼1a、bの角膜への架橋処置の適用を容易にする。セクション302a、bは、一方の眼の処置が他方の眼の処置に影響を及ぼすいかなる可能性も減らすために、
図6に示す内壁303によって物理的に分割されることができる。マスク装置301の態様は、プラスチックおよび/または他の好適な素材から形成されることができる。
【0053】
右アプリケータ332aおよび左アプリケータ332bは、それぞれ右セクション302aおよび左セクション302bのために具現化されることができる。
図6に示すように、アプリケータ332a、bは、マスク装置301に連結されることができる。右アプリケータ332aは、第一の光増感剤溶液、例えば、第一のリボフラビン処方を右眼1aの角膜に適用することができる。左アプリケータ332bは、第二の光増感剤溶液、例えば、第二のリボフラビン処方を左眼1bの角膜に適用することができる。例として、各アプリケータ332a、bは、そこから光増感剤溶液が角膜に滴下されるさもなければ供給され得るそれぞれの開口333a、bを包含する点眼器、注射器または同様のものの態様を包含することができる。第一の光増感剤溶液および第二の光増感剤溶液は、右眼および左眼1a、bの処置の間の類似または相違に依存して、類似のまたは異なる処方を有することができる。さらに、第一の光増感剤溶液および第二の光増感剤溶液は、類似のまたは異なる浸漬時間で、それぞれの右眼および左眼1a、bに適用されることができる。
【0054】
初期量の光増感剤溶液を眼1a、bに供給するためにアプリケータ332a、bを採用することに加えて、アプリケータ332a、b(または他の類似のアプリケータ)は、眼1a、bに周期的に注水し、処置中にそれらを湿潤に保つためにさらに採用されることができる。例として、眼1a、bは、生理食塩水または追加的な光増感剤溶液を注水されることができる。また、アプリケータ332a、bまたは他の類似のアプリケータは、他の薬剤を含有する溶液を適用することができる。例として、そのような薬剤は、特にepi-on処置の場合、架橋活性の量を向上させることができる。他の薬剤は、架橋剤によって生じた架橋活性を抑えることができる。なおも他の薬剤は、抗菌処置を提供するために、抗生物質を包含することができる。
【0055】
前側301aは、右セクション302aの上に配置された右透過領域304aおよび左セクション302bの上に配置された左透過領域304bを包含する。右透過領域304aは、第一の光活性化光が右セクション302aを通り右眼1aに供給されることを可能にする。左透過領域304bは、第二の光活性化光が左セクション302bを通り左眼1bに供給されることを可能にする。
図6に示すように、右透過領域304aおよび左透過領域304bは、それぞれそこを通じて第一の光活性化光および第二の光活性化光が供給され得るアパーチャである。外壁301cは、前側301aのための構造を提供することができ、右透過領域304aおよび左透過領域304bのためのアパーチャを画定することができる。眼1a、bが例としてリボフラビンを包含する光増感剤溶液で処置された場合、対応する光活性化光は、先に記載したように、紫外線光であることができる。
【0056】
処置システム300は、第一の光活性化光を右眼1aにまたは第二の光活性化光を左眼1bに供給するためにマスク装置300に対して位置付けられることができる照明装置306を包含することもできる。一部の実施態様では、照明装置306は、右透過領域304aまたは左透過領域304bの上に、例えば、スタンドによって、別個に支持されることができる。
【0057】
照明装置306は、先に記載したように、光源110および光学要素112の態様を包含することができる。また、コントローラ120は、光源110および/または光学要素112を制御するために採用されることができる。第一の光活性化光または第二の光活性化光は、右眼および左眼1a、bの処置の間の類似または相違に依存して類似のまたは異なるパラメータに従って、供給されることができる。例として、光活性化光の照射量、照射、パターン、パルス/連続波および他の処置パラメータが先に記載したように、制御されることができる。
【0058】
マスク装置301は、ある濃度の酸素ガスが眼1a、bに供給されることを可能にする。先に記載したように、酸素ガスは、光活性化中に架橋活性を向上させるさもなければ影響を及ぼす。
図6に示すように、各セクション302a、bは、マスク装置301に連結されたそれぞれの酸素源340a、bを包含することができる。右酸素源340aからの酸素は、マスク装置301の右ポート308aを通じて右セクション302aに選択的に放出されることができる。左酸素源340bからの酸素は、マスク装置301の左ポート308bを通じて左セクション302bに選択的に放出されることができる。放出は、それぞれ酸素源304a、bとポート308a、bとの間に設置されたシール310a、bを剥がすことによって、制御されることができる。例として、シール310a、bは、医師によって手で剥がされ得るプルオフタブであることができる。第一の透過領域304aおよび第二の透過領域304bがアパーチャであり得るものの、チャンバ302は、架橋活性を所望のように制御するために、酸素源340a、bからの十分な酸素を保持することが可能である。実際、酸素ガスは、酸素ガスの供給に先立ってチャンバ302を充填し得る周囲空気よりもより重く、酸素ガスがチャンバ302に残る一方で、周囲空気は、チャンバ302から流れることができる(例えば、患者の顔があおむけである場合)。先に記載したように、マスク装置301の後側301bは、顔3を受けるために開口を画定することができる。眼1a、bへの酸素ガスの有効な供給を促進するために、後側301bに沿った外壁301cは、好ましくは、(例えば、特に角膜表面の後部で酸素ガスの漏れを防ぐために)顔3に対して実質的に完全なシールを形成するように成形される。一部の実施態様では、酸素ガスは、実質的に2.5L/minで供給されることができるが、例として約1.0L/minほど低い速度で効率的に供給されることができる。
【0059】
一つの照明装置のみが利用可能な場合、眼1a、bは、交互に光活性化光で処置されることができる。例として、
図6に示すように、照明装置306は、第二の光活性化光を供給するために、左透過領域304bの上に位置付けられる。同じ照明装置306は、第二の光活性化光が左眼1bに供給された後で、第一の光活性化光を右眼1aに供給するために右透過領域304aの上に位置付けし直されることもできる。
【0060】
有利には、マスク装置301は、他方の眼が光増感剤溶液で処置されることを可能にしつつ、一方の眼が光活性化光で処置されることを可能にする。
図6に示すように、左眼1bが既にアプリケータ332bからの第二の光増感剤溶液に浸漬された後で光活性化光を受けつつ、右眼1aは、アプリケータ332aからの第一の光増感剤溶液で浸漬されることができる。左眼1bへの光活性化光の適用が完了した後で、照明装置306は、第一の光活性化光を右眼1aに供給するために、右透過領域304aの上に位置付けし直されることができる。眼1a、bの両方が一部の処置工程を同時に受けることを可能にすることによって、合計処置時間は、一つの照明装置306のみが利用可能な場合でも有意に減らされることができる。例として、マスク装置によって、単一の照明装置306は、処置パラメータに依存して、少なくとも四対の眼を一時間で処置するために使用されることができる。
【0061】
概して、本明細書に記載される例示的なシステムは、先に記載したように、角膜の所望の生体力学的変化を達成するための処置パラメータを決定するために、光化学速度論的モデル126を採用することができる。そのようにして、処置システム300は、速度論的モデル126によって決定された工程に従って、酸素のみならず光活性化光の供給のためのパラメータを具現化するために採用されることができる。例示的な実施態様では、照明装置306は、例えば、1.5mW/cm2または3mW/cm2の低い放射照度で、初期期間、例えば、30分処置の最初の5分間の間、UV光を眼に適用するために操作されることができる。速度論的モデル126は、酸素ガスの添加なしで、架橋活性が望ましい(例えば、最適な)速度で起こることを示唆することができる。しかし、初期期間後、速度論的モデル126は、架橋活性が酸素制限になることを示唆することができる。このように、処置システム300によって提供される処置は、初期期間後、酸素源からチャンバ302へ酸素ガスを導入することができる。
【0062】
図6の例示的な実施態様が一つの照明装置306のみを採用し得るものの、他の実施態様は、二つ以上の照明装置306を包含することができる。
図7に示すように、例示的な処置システム400は、右透過領域304aの上に位置付けられる右照明装置406aおよび左透過領域304bの上の左照明装置406bを包含することができる。そのようにして、処置システム400は、眼1a、bの両方が同時に処置されることを可能にする。
【0063】
さらに、
図6の照明装置306がマスク装置301から切り離されることができるものの、照明装置406a、bまたはそれらの態様は、一部のケースでは、マスク装置301に固定して連結されることができる。
【0064】
図6の例示的な実施態様のアプリケータ332a、bがマスク装置301に連結されるものの、他の実施態様は、あるいは、そのようなアプリケータをマスク装置301から切り離すことができる。
図8に示すように、例示的な処置システム500は、第一の光増感剤溶液を右眼1aに適用するために右透過アパーチャ304aをまたは第二の光増感剤溶液を左眼1bに適用するために左透過アパーチャ304bを通じて選択的に位置付けし直され、導入される別の架橋アプリケータ532を包含することができる。
【0065】
図6の例示的な実施態様ではチャンバ302の右セクション302aを左セクション302bから分離するために内壁303を採用することができるものの、
図9は、チャンバ302におけるそのような壁の使用を省くマスク装置601を備えた例示的なシステム600を図示する。この実施態様では、右セクション302aと左セクション302bとは、構造によって(完全には)分離されず、右セクション302aに侵入する酸素ガスは、左セクション302bに流れることができ、逆も同じである。このように、ポート308a、bの両方は、チャンバ302全体を酸素ガスで充填するために使用されることができる。
【0066】
図10は、酸素源740に連結された単一のポート708を備えたマスク装置701を包含する例示的なシステム700を図示する。ポート708を介して酸素源740から供給される酸素は、チャンバ302の右セクション302aと左セクション302bの両方を充填する。
【0067】
図6の例示的な実施態様の右透過領域304aおよび左透過領域304bがアパーチャであり得るものの、
図11は、マスク装置801を備えた例示的なシステム800を図示し、右透過領域804aおよび左透過領域804bは、所望の処置パラメータに従って、光活性化光がチャンバ302を通過し、眼1a、bに適用されることを可能にする透明な材料から形成された窓である。有利には、マスク装置801は、酸素源340a、bからチャンバ302に供給される酸素ガスを保存することができる有効な筐体を提供する。一部のケースでは、そのような筐体は、酸素ガスが所望の圧力下で保存されることを可能にする。さらなるケースでは、マスク装置801は、酸素ガスがチャンバ302で望ましくない圧力を生じさせないことを確実にする通気口を包含することができる。
【0068】
図6の例示的な実施態様の酸素源340a、bがマスク装置301に連結されるものの、他の実施態様は、マスク装置から離隔した酸素源を採用することができる。
図12A~Dに示すように、例示的な処置システム900は、右セクション302aにつながる右ポート908aおよび左セクション302bにつながる左ポート908bを備えたマスク装置901を包含する。右ポート908aおよび左ポート908bは、それぞれ右チューブおよび左チューブ909a、bを介して同じ外部酸素源940に連結されることができる。右チューブおよび左チューブ909a、bは、外部酸素源に連結されるy字スプリッタ909cまで伸長することができる。例として、外部酸素源940は、酸素ガスをチャンバ302に供給するために、弁によって制御されることができる。右セクション302aおよび左セクション302bが
図12Bに示す内壁によって分離されない場合、ポート908a、bの両方を介して酸素源940から供給される酸素ガスは、チャンバ302全体を充填する。あるいは、右セクション302aおよび左セクション302bが内壁によって分離される場合、ポート908a、bを介して酸素源940から供給される酸素ガスは、それぞれのセクション302a、bを充填する。あるいは、右ポート908aおよび左ポート908bは、それぞれ右チューブおよび左チューブ909a、bを介して別々の外部酸素源に連結されることができる。
【0069】
概して、本明細書に記載される処置システムは、酸素ガスが最小限の乱流および背圧でチャンバに導入され、所望の量の酸素が眼1a、bに予測可能に供給されるように構成される。
図12Bにも示すように、そのような乱流/背圧は、酸素ガスを顔3のこめかみ4a、bに向けることによって最小化されることができる。とりわけ、右ポート908aは、酸素ガスを右こめかみ4aに向ける右拡散器911aにつながり、左ポート908bは、酸素ガスを左こめかみ4bに向ける左拡散器911bにつながる。拡散器911a、bは、それぞれのチューブ909a、bからの後側301bの開口を通りそれぞれのこめかみ4a、bに向かう酸素ガスに角度を付けるように構成されることができる。乱流および背圧を最小化することに加えて、酸素ガスは、直接的に眼1a、bの上に流れないように向けられ、それにより眼1a、bの望ましくない乾燥を最小化する。一旦酸素ガスがこめかみ4a、bに達すると、酸素ガスは、眼1a、bの上を流れる。先に記載したように、酸素ガスは、酸素ガスの供給に先立ってチャンバ302を充填し得る周囲空気よりもより重く、酸素ガスは、眼1a、bの上のチャンバ302に残ることができる。
【0070】
図12Cは、マスク装置901の態様をさらに図示する。例として、マスク装置901は、示されるようにy軸に沿って右側から左側まで約21.5cmであり、示されるようにz軸に沿って上から下まで約8.5cmであり、示されるようにx軸に沿って前側から後側まで約9.5cmであることができる。
図12Dは、例として、それぞれの角度が付いた表面912a、bおよび他の構造が酸素空気をそれぞれのこめかみ4a、bに向ける拡散器911a、bの一つをさらに図示する。示されるように、それぞれのポート908a、bも、酸素空気をより効率的に向けるために、(角度が付いた表面912a、bと組み合わせて)角度を付けられることができる。例として、拡散器911a、bは、示されるようにy軸に沿って約2.2cmであり、示されるようにz軸に沿って約2.2cmであり、示されるようにx軸に沿って約1.9cmであることができる。
【0071】
概して、実施態様は、周囲空気とは異なるガスを貯蔵する少なくとも一つのガス源および少なくとも一つのガス源をマスク装置に連結するガス供給システムを採用することができ、ガス供給システムが貯蔵されたガスをボディのチャンバに供給する。先の特定の実施態様では、酸素源によって提供されるガスは、周囲空気中の環境濃度の酸素よりもより大きい増加した濃度の酸素を包含する。
【0072】
マスク装置301が架橋処置に関連して先に記載されたものの、マスク装置301は、眼1a、bのための他の処置を提供するために追加的にまたは代替として使用されることができる。例として、マスク装置301は、抗菌処置のために採用されることができる。実際、マスク装置301は、抗菌効果のために、光増感剤、例えば、リボフラビンを適用し、光活性化することもできる。他の抗菌処置では、酸素源340a、bからの酸素と組み合わせて、抗生物質薬剤がアプリケータ332a、bで適用されることができる。そのような抗生物質薬剤の適用は、単に抗生物質薬剤を空気に適用するよりもより有効であり得る。実際、より高濃度の酸素が提供される場合、より低量の抗生物質薬剤を採用し得る。
【0073】
先に記載したように、本開示の一部の態様によれば、先に記載し図示した手順の一部のまたは全ての工程は、コントローラ(例えば、コントローラ120)の制御下で自動化または誘導されることができる。一般的に、コントローラは、ハードウェアおよびソフトウェア要素の組み合わせとして具現化されることができる。ハードウェアの態様は、マイクロプロセッサ、論理回路、通信/ネットワークポート、デジタルフィルタ、メモリまたは論理回路を包含する動作可能に連結されたハードウェア構成要素の組み合わせを包含することができる。コントローラは、コンピュータ読み取り可能な媒体上に記憶され得るコンピュータ実行可能コードによって指定された操作を行うように適応されることができる。
【0074】
先に記載したように、コントローラは、ソフトウェアまたは記憶された命令を実行するプログラム可能処理装置、例えば、従来の外部コンピュータまたはオンボードフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)もしくはデジタル信号プロセッサ(DSP)であることができる。概して、任意の処理または評価のための本開示の実施態様によって採用される物理的プロセッサおよび/またはマシンは、コンピュータおよびソフトウェア技術の当業者によって理解されるように、本開示の例示的な実施態様の教示に従ってプログラムされた、一つまたは複数のネットワーク化されたまたはネットワーク化されていない汎用コンピュータシステム、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、マイクロコントローラおよび同様のものを包含することができる。物理的プロセッサおよび/またはマシンは、画像取込装置と外部ネットワーク化されることができ、または画像取込装置に内在するように統合されることができる。適切なソフトウェアは、ソフトウェア技術の当業者によって理解されるように、例示的な実施態様の教示に基づいて、通常の技術を有するプログラマーによって容易に作製されることができる。加えて、例示的な実施態様の装置およびサブシステムは、電気技術の当業者によって理解されるように、用途特有の集積回路の作製によってまたは従来の構成要素回路の適切なネットワークを相互接続することによって具現化されることができる。このように、例示的な実施態様は、ハードウェア回路および/またはソフトウェアのいかなる特定の組み合わせにも限定されない。
【0075】
コンピュータ読み取り可能な媒体の任意の一つまたは組み合わせ上に記憶されて、本開示の例示的な実施態様は、例示的な実施態様の装置およびサブシステムを制御し、例示的な実施態様の装置およびサブシステムを動作させ、例示的な実施態様の装置およびサブシステムが人間のユーザーと相互作用することをできるようにするソフトウェアおよび同様のものを包含することができる。そのようなソフトウェアは、デバイスドライバ、ファームウェア、オペレーティングシステム、開発ツール、アプリケーションソフトウェアおよび同様のものを非限定的に包含することができる。そのようなコンピュータ読み取り可能な媒体は、実施態様で行われる処理の全てまたは一部(処理が分散される場合)を行うための本開示の実施態様のコンピュータプログラム製品をさらに包含することができる。本開示の例示的な実施態様のコンピュータコードデバイスは、スクリプト、解釈可能なプログラム、ダイナミックリンクライブラリ(DLL)、Java(登録商標)クラスおよびアプレット、完全な実行可能プログラムならびに同様のものを非限定的に包含する、任意の好適な解釈可能なまたは実行可能コード機構を包含することができる。さらに、本開示の例示的な実施態様の処理の部分は、より良い性能、信頼性、コストおよび同様のもののために分散されることができる。
【0076】
コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的な形態は、例として、フロッピーディスク、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の好適な磁気媒体、CD-ROM、CDRW、DVD、任意の他の好適な光学媒体、パンチカード、紙テープ、光学マークシート、孔もしくは他の光学的に認識可能なしるしのパターンを備えた任意の他の好適な物理的媒体、RAM、PROM、EPROM、FLASH-EPROM、任意の他の好適なメモリチップもしくはカートリッジ、搬送波またはコンピュータが読み取ることができる任意の他の好適な媒体を包含することができる。
【0077】
本開示が一つまたは複数の特定の実施態様を参照しながら記載された一方で、当業者は、本開示の本質および範囲を逸することなく多くの変更がなされ得ることを認識する。これらの実施態様およびそれらの自明な変形態様の各々は、本開示の本質および範囲内にあるものと企図される。本開示の態様に従う追加的な実施態様は、本明細書に記載されるいかなる実施態様からのいかなる数のフィーチャを組み合わせることもできることが企図される。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼を処置するためのシステムであって、:
マスク装置が前側および後側を包含し、
後側が顔に接近して位置付けられるように構成され、
前側が顔から遠位に位置付けられるように構成され、
マスク装置が少なくとも前側と後側との間に伸長する外壁を包含し、
外壁が眼を挟んで伸長するチャンバを画定し、
前側が、光活性化光が眼に供給されることを可能にする透過領域を包含し、
顔の眼の上に位置付けられるように構成されるマスク装置と;
周囲空気とは異なるガスを貯蔵する少なくとも一つのガス源と;
ガス供給システムが貯蔵されたガスをマスク装置のチャンバに供給するように構成される、少なくとも一つのガス源をマスク装置に連結するガス供給システムと;
マスク装置に連結され、処置を達成するためにマスク装置のチャンバに供給されるガスに関するパラメータを決定するように構成されるプロセッサであって、プロセッサが処理をモニタリングすることなくパラメータを決定し、処置を達成するプロセッサ、を含むシステム。
【請求項2】
ガスが周囲空気中の環境濃度の酸素よりもより大きい増加した濃度の酸素を包含する、請求項1記載のシステム。
【請求項3】
パラメータが、眼の少なくとも一つで架橋活性を達成するための酸素化条件に関係する、請求項2記載のシステム。
【請求項4】
少なくとも一つのガス源が、チューブを介してマスク装置に連結されるガス源を含む、
請求項1記載のシステム。
【請求項5】
透過領域を介して、光活性化光を供給するように構成される少なくとも一つの照明装置をさらに含む、請求項1記載のシステム。
【請求項6】
少なくとも一つの照明装置は、第一の光活性化光を第一の眼に供給するように構成された第一の照明装置と、第二の光活性化光を第二の眼に供給するように構成された第二の照明装置とを含み、
第一の光活性化光および第二の光活性化光が異なる処置パラメータに従って供給される、請求項1記載のシステム。
【請求項7】
透過領域が前側に形成される第一のアパーチャと、前側に形成される第二のアパーチャとを含み、
前記第一のアパーチャは、第一の光活性化光が第一の眼に供給されることを可能にするように構成され、
前記第二のアパーチャは、第二の光活性化光が第二の眼に供給されることを可能にするように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項8】
透過領域が前側に形成される第一の窓と、前側に形成される第二の窓とを包含し、
前記第一の窓は、光活性化光が第一の眼に供給されることを可能にするように構成され、
前記第二の窓は、光活性化光が第二の眼に供給されることを可能にするように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項9】
マスク装置が少なくとも一つのガス源からのガスを所定の圧力で保つように構成される、請求項1記載のシステム。
【請求項10】
パラメータが、眼の少なくとも一つで抗菌効果を達成するための酸素化条件に関係する、請求項1記載のシステム。
【外国語明細書】