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特開2024-120022全身型若年性特発性関節炎および川崎病を診断および識別するための組成物および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120022
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】全身型若年性特発性関節炎および川崎病を診断および識別するための組成物および方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20240827BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20240827BHJP
【FI】
G01N33/53 D
G01N33/543 545A
G01N33/543 541B
G01N33/543 541A
G01N33/543 575
G01N33/543 595
G01N33/543 597
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024098692
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2022084414の分割
【原出願日】2017-11-10
(31)【優先権主張番号】62/420,991
(32)【優先日】2016-11-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.プルロニック
(71)【出願人】
【識別番号】519167380
【氏名又は名称】アセンダント ディーエックス, エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】パトリシア ベックマン
(72)【発明者】
【氏名】リンジー ラザフォード
(72)【発明者】
【氏名】アンナ デイリー
(72)【発明者】
【氏名】オミード モガダム
(72)【発明者】
【氏名】エリザベス メリンズ
(57)【要約】
【課題】 全身型若年性特発性関節炎および川崎病を診断および識別するための組成物および方法の提供。
【解決手段】 全身型若年性特発性関節炎(sJIA)を有する患者を診断し、該患者と川崎病(KD)および他の熱性疾患を有する患者と識別するための方法、組成物、キットなどを提供する。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
図面に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、35U.S.C.第119条(e)の下で、2016年11月11日に出願された米国特許出願第62/420,991号(参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に対しての優先権を主張するものである。
【0002】
本開示の実施形態は、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)を有する患者を診断し、川崎病(KD)および他の熱性疾患を有する患者と識別するための方法、組成物、キットなどに関する。
【背景技術】
【0003】
若年性特発性関節炎(JIA)は、1000人の小児うちの1人に起こる自己免疫疾患であり、小児における関節痛(関節炎)であることを特徴とする(2)。JIAは、全身型若年性特発性関節炎(sJIA)を含む小児におけるいくつかの異なる種類の関節炎を包含し、全てのJIAケースの10%を占める希少疾患であり、その全身作用ゆえに最も重篤な形態である(3、4)。希少疾患は、200,000人未満の個人が罹患している疾患として定義される(5)。sJIAの発症は、患者の特定の年齢または性別に分けて扱うことはないが、1歳または2歳ぐらいの若い小児において、歩行または這ったときに関節痛のために最初に確認されることが多い(6)。罹患患者の約40%において、疾患の経過は単周期的(monocyclic)であり、変動的な持続期間を伴う。しかしながら、sJIA患者のうちの約60%において、疾患は多周期的(polycyclic)な経過として現れ、休止期間(sJIAの不活性状態)およびフレア期間(sJIAの活性状態)を伴う(7)。
【0004】
sJIAに関連する身体を衰弱させるフレアに加えて、ポリシリックなsJIA患者のうちの10%はまた、sJIAの重篤な合併症であるマクロファージ活性化症候群(MAS)に罹患し、これは疾患の活動期中に発症する。MASは、活性化T細胞およびマクロファージからのサイトカインの放出によって引き起こされ、その結果、sJIAフレアと同様の症状が生じ、この2つを識別することが困難となる。MASは、sJIAを有する小児における死亡の最も重篤で重大な原因の1つであり、全てのsJIA関連死の2/3を引き起こす(8)。sJIAは、小児の関節炎の中で最大の罹患率を占め、発育不全および重篤な関節破壊をもたらす。MASに加えて、活性sJIAおよび心臓病併発のために患者のうちの7%が死亡する(9)。
【0005】
sJIAの診断は、現在、臨床所見に基づいており、該所見には、関節痛、2週間にわたる毎日の発熱、および以下の症状のうちの少なくとも1つ:発疹、関節炎、漿膜炎、肝脾腫、および全身性リンパ節腫脹が含まれる。C反応性タンパク質(CRP)および赤血球沈降速度(ESR)は、全身性炎症の現在のマーカーであり、sJIAフレア中に上昇する(10、11)。sJIAの適時診断は、悪性腫瘍、川崎病(KD)、ならびに他の自己免疫疾患および炎症性疾患と症状が同様であり得るので、非常に困難であり得る。さらに、かなりの数の小児において診断が遅れ、患者の25%超で3ヶ月を超える遅延がある(12)。sJIAの早期診断により、患者がより迅速に治療を開始することが可能になることによって、疾患によって引き起こされる多くの長期の合併症および恒久的障害が軽減される。
【0006】
sJIAの現在の治療は非常に高価である可能性があり、薬物の多くは持続性があり、多くの場合において有害な副作用を有する。過去には、全身性グルココルチコイドおよび非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)が処方されていたが、これらの薬物は、しばしば疾患の間中にわたって長期間処方され、多くの副作用に関連する(13)。2011年に、抗IL-6療法「トシリズマブ(tocilizumab)」がsJIAの最初のFDA認可治療となった。より最近では、「アナキンラ(anakinra)」として既知であるインターロイキン-1受容体アンタゴニスト療法がsJIAの治療として認可されている(14、15)。これらの薬物は両方とも、sJIAの治療に有効であることが示されている。
【0007】
小児リウマチ病学コミュニティ内では、sJIAを診断すること、また、sJIAと川崎病などの他の種類の原因不明の発熱(FI)病とを識別すること、との両方ができる診断検査に対する重要でまだ満たされていない必要性が存在するとの共同のコンセンサスがある。このような診断検査は、これらの障害を診断を行うのに現在関連している医療費を著しく低減し得る現在、sJIAの症状を示す患者は、疾患の原因を決定するために複数の血液検査、精密検査、および侵襲的処置を受け、大抵は入院し、全ての他の診断が考慮から除外されるまで抗生物質で処理される(16)。
本明細書中にさらに記載するように、本開示は、sJIAを有する患者を診断し、sJIAとKDおよび他の熱性疾患を有する患者と識別するための方法、組成物、キットなどを提供することにより、まだ満たされていない必要性を満たすものである。したがって、本明細書に記載された実施形態は、有利なことに、診断時間および診断費用を実質的に減少し、これにより、患者の痛みを軽減させ、これらの状態に罹患した患者に対する適切な治療の享受および該治療への迅速なアクセスを提供する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Woo,P.(2006)Systemic Juvenile Idiopathic Arthritis:Diagnosis,Management,and Outcome.Nature Clinical Practice Rheumatology2.
【非特許文献2】Huang,Jing-Long.(2012)New Advances in Juvenile Idiopathic Arthritis,Chang Gung MedJ35.
【非特許文献3】Pascual,V.(2005)Role of Interleukin-1(IL-1)in the Pathogenesis of Systemic Onset Juvenile Idiopathic Arthritis and Clinical Response to IL-1 Blockade.Journal of Experimental Medicine201,1479-1486.
【非特許文献4】Aronson,J.K.(2006)Editors’View Rare Diseases and Orphan Drugs,British Journal of Clinical Pharmacology61,243-245.
【非特許文献5】Reiff,A.(2012)Treatment of Systemic Juevnile Idiopathic Arthritis with Tocilizulmab-the Role of Anti-Interleukin-6 Therapy after a Decade of Treatment Biologics in Therapy,Cancer Biology and Therapy2,1-12.
【非特許文献6】Ling,X.B.;Park,J.L.;Carroll,T.;Nguyen,K.D.;Lau,K.;Macaubas,C.;Chen,E.;Lee,T.;Sandborg,C.;Milojevic,D.;Kanegaye,J.T.;Gao,S.;Burns,J.;Schilling,J.;Mellins,E.D.(2010)Plasma Profiles in Active Systemic Juvenile Idiopathic Arthitis:Biomarkers and Biological Implications,PROTEOMICS10,4415-4430.
【非特許文献7】Gorelik,Mark et.al(2013)Follistatin-like Protein 1 and Ferritin/Erythrocyte Sedimentation Rate Ratio are Potential Biomarkers for Dysregulated Gene Expression and Macrophage Activation Syndrome in Systemic Juvenile Idiopathic Arthritis.The Journal of Rheumatology40,1191-1199.
【非特許文献8】Ravelli,Angelo;Martini,Alberto.(2007)Juvenile Idiopathic Arthritis.The Lancet36.767-778.
【非特許文献9】Vastert,S.J.;Kuis,W.;Grom,A.A.(2009)Systemic JIA:New Developments in the Understanding of the Pathophysiology and Therapy.Best Pract Clin Rhuematol 23,655-664.
【非特許文献10】Mottonen,T.;Hannonen,P.;Leirisalo-Repo,M.;Nissila,M.;Kautiainen,H.;Korpela,M.;Laasonen,L.;Julkunen,H.;Luukkainen,R.;Vuori,K.;Paimela,L.;Blafield,H.;Hakala,M.;Ilva,K.;Yli-Kerttula,U.;Puolakka,K.;Jarvinen,P.;Hakola,M.;Piirainen,H.;Ahonen,J.;Palvimaki,I.;Forsberg,S.;Koota,K.;Friman,C.(1999)Comparison of Combination Therapy with Single-Drug Therapy in Early Rheumatoid Arthritis:a Randomized Trial.The Lancet 353,1568-1573.
【非特許文献11】Childhood Arthritis and Rheumatology Alliance(CARRA):Unpublished Data,2013.
【非特許文献12】Pascual,Virginia;Allantaz,Florence;Patel,Pinakeen;Palucka,Karolina,A;Chaussabel,Damien;Banchereau,Jacques(2008)How the Study of Children With Rheumatic Diseases Identified Interferon-α and Interleukin-1as Novel Therapeutic Targets.Immunological Reviews223,39-59.
【非特許文献13】Angeloni,Stephen et.al(2013)A Collection of Methods and Protocols for Developing multiplex assays with xMap Technology,Luminex xMap Cookbook.1st edition,1-116.15.Microbead Trappind Device(2012).
【非特許文献14】Microbead Trappind Device(2012).
【非特許文献15】DeJager,W.;Velthuis,H.T.;Prakken,B.J.;Kuis,W.;Rijkers,G.T.(2003)Simulataneous Detection of 15 Human Cytokines in a Single Sample of Stimulated Peripheral Blood Mononuclear Cells.Clinical and Vaccine Immunology10,133-139.
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本本開示の一般的態様によれば、対象における全身型若年性特発性関節炎(sJIA)を診断する方法であって、(i)対象から得られた生体試料中の複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、該複数のバイオマーカーがカルプロテクチンおよびフォリスタチン様タンパク質-1(FSTL-1)を含む、工程と、(ii)該複数のバイオマーカーの各々のレベルを各バイオマーカーについての対応する所定の診断閾値と比較し、それにより、対象におけるsJIAの診断を提供する工程と、を含む、方法を提供する。ある種のより特定的な実施形態において、カルプロテクチンおよびFSTL-1に加えて、複数のバイオマーカーは、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つをさらに含む。さらに他のより特定的な実施形態において、複数のバイオマーカーは、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つをさらに含む。有利なことに、本開示の方法は、少数のバイオマーカーのみの発現レベルを評価しながら、sJIAに対する非常に高いレベルの診断感度および特異性を提供する。いくつかの実施形態において、例えば、本方法において使用される複数のバイオマーカーは、2つ以下のバイオマーカー、3つ以下のバイオマーカー、4つ以下のバイオマーカー以下、または5つ以下バイオマーカーを含む。
【0010】
sJIAを診断するための非常に有効なアプローチを提供する本開示の方法に加えて、ある種の実施形態において、本方法は、対象におけるsJIAの診断と川崎病(KD)の診断とを識別する手段、および/または対象におけるsJIAの診断と熱性疾患(FI)の診断とを識別するための手段を有利に提供する。したがって、別の態様によれば、本開示は、対象における全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、川崎病(KD)、および熱性疾患(FI)の診断を識別する方法であって、(i)対象から得られた生体試料中の複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、該複数のバイオマーカーがカルプロテクチンおよびフォリスタチン関連タンパク質1(FSTL-1)を含む、工程と、(ii)該複数のバイオマーカーの各々のレベルを各バイオマーカーについての対応する所定の診断閾値と比較し、それにより、対象におけるSJIA、KD、またはFIの診断を提供する工程と、を含む、方法を提供する。より特定的な実施形態において、複数のバイオマーカーは、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つをさらに含む。他のより特定的な実施形態において、複数のバイオマーカーは、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つをさらに含む。本開示のこの態様のいくつかの実施形態において、本方法において使用される複数のバイオマーカーは、2つ以下のバイオマーカー、3つ以下のバイオマーカー以下、4つ以下のバイオマーカー、または5つ以下のバイオマーカーを含む。
【0011】
本開示のさらに別の一般的態様によれば、SJIA、KD、またはFIの診断を有することが疑われる対象における治療の必要性についての医師による決定を容易にする方法であって、(i)対象から得られた生体試料中の複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、該複数のバイオマーカーがカルプロテクチンおよびフォリスタチン関連タンパク質1(FSTL-1)を含む、工程と、(ii)対象におけるSJIA、KD、およびFIの診断を識別するために、該複数のバイオマーカーの各々のレベルを各バイオマーカーについての対応する所定の診断閾値と比較し、それにより、SJIA、KD、またはFIの治療を対象に行う必要性についての医師による決定を容易にする工程と、を含む、方法を提供する。より特定的な実施形態において、複数のバイオマーカーは、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つをさらに含む。他の特定の実施形態において、複数のバイオマーカーは、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つをさらに含む。有利なことに、ある種の特定の実施形態において、複数のバイオマーカーは、2つ以下のバイオマーカー、3つ以下のバイオマーカー以下、4つ以下のバイオマーカー以下、または5つ以下バイオマーカーを含む。本開示の方法に従ってsJIA、KD、および/またはFIの陽性診断をする際に、医師には、治療の決定に関する明確性が提供される。例えば、sJIAの陽性診断は、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、生物学的薬剤、ならびに関節内および経口ステロイドからなる群から選択される1つ以上の薬剤などの、sJIAに好適な1つ以上の治療介入を対象に行うための決定を容易にすることができる。対照的に、本開示の方法によるKDの陽性診断は、免疫グロブリン静注(IVIG)を行うようなKDに好適な1つ以上の治療介入を対象に行うための医師による治療決定を容易にすることができる。
【0012】
一般的に、本開示の方法のいずれかに従って、生体試料(例えば、血液試料、血漿試料、または他の種類の試料)中のバイオマーカーのレベルを決定する工程は、当該技術分野で既知の利用可能な様々な技術のいずれかによって行うことができる。ある種の特定の実施形態において、例えば、各バイオマーカーのレベルを決定する工程は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光アッセイ(IFA)、サンドイッチアッセイ、磁気捕捉アッセイ、微小球(microsphere)捕捉アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、表面増強ラマン分光法(SERS)、フローサイトメトリー、および質量分析からなる群から選択されるアッセイを行うことを含む。
【0013】
さらに別の一般的態様によれば、本開示は、対象におけるsJIA、KD、および/またはFIを診断または識別するのに好適な診断キットであって、例えば、対象から得られる生体試料中の複数のバイオマーカーのレベルを決定するのに有効な作用物質(例えば、結合作用物質)を含む、キットを提供する。ある種の特定の実施形態において、キットは、少なくともカルプロテクチンおよびフォリスタチン関連タンパク質1(FSTL-1)のレベルを決定するための作用物質を含む。他のある種の実施形態において、キットは、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つのレベルを決定するための作用物質をさらに含むことができる。さらに他の特定の実施形態において、キットは、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つのレベルを決定するための作用物質をさらに含む。多くの実施形態において、評価中のバイオマーカーのレベルを決定するのに有効な作用物質は、抗体、その結合断片、および/または評価中のバイオマーカーに特異的であり、そのレベルを定量化するのに有効な他の好適な結合作用物質を含む。例えば、いくつかの実施形態において、本開示のキットは、検査する複数のバイオマーカーに特異的な抗体またはその抗原結合断片を含む、ラテラルフロー装置または他の同等の装置を含む。
【0014】
本開示のさらに別の一般的態様は、治療の必要性についての医師による決定を容易にするために、対象におけるSJIAの進行をモニタリングする方法であって、(i)対象から生体試料を得る工程と、(ii)生体試料において複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、該複数のバイオマーカーが少なくともS100A12、CRP、およびカルプロテクチンを含む工程と、(iii)該複数のバイオマーカーの各々のレベルを対応する所定の診断閾値と比較し、それにより、対象におけるSJIAをモニタリングする工程と、を含む、方法を提供する。例えば、対象におけるS100A12、CRP、およびカルプロテクチンの、それらの所定の診断閾値に対するレベルの上昇は、休止sJIA段階から活性sJIAフレア段階への進行を予測することが有利に見出された。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図1B】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図1C】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図1D】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図1E】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図1F】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図1G】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図1H】群間の平均値の統計的有意差(p値<0.05)を示す、8つのバイオマーカーの分散分析(ANOVA)データを示している。
図2A】カルプロテクチン(A)、FSTL-1(B)、血清アミロイドタンパク質(C)、およびC反応性タンパク質(D)の分散分析(ANOVA)データを示している。KDおよび/またはsJIAにおけるタンパク質発現は、他の疾患状態(FC(熱性疾患)、KD、および健常な対照)と比較してアップレギュレートしている。
図2B】カルプロテクチン(A)、FSTL-1(B)、血清アミロイドタンパク質(C)、およびC反応性タンパク質(D)の分散分析(ANOVA)データを示している。KDおよび/またはsJIAにおけるタンパク質発現は、他の疾患状態(FC(熱性疾患)、KD、および健常な対照)と比較してアップレギュレートしている。
図2C】カルプロテクチン(A)、FSTL-1(B)、血清アミロイドタンパク質(C)、およびC反応性タンパク質(D)の分散分析(ANOVA)データを示している。KDおよび/またはsJIAにおけるタンパク質発現は、他の疾患状態(FC(熱性疾患)、KD、および健常な対照)と比較してアップレギュレートしている。
図2D】カルプロテクチン(A)、FSTL-1(B)、血清アミロイドタンパク質(C)、およびC反応性タンパク質(D)の分散分析(ANOVA)データを示している。KDおよび/またはsJIAにおけるタンパク質発現は、他の疾患状態(FC(熱性疾患)、KD、および健常な対照)と比較してアップレギュレートしている。
図3-1】タンパク質の様々な組み合わせを使用した異なる診断パネルを使用して、4つのグループ(フレア、KD、FC(熱性疾患)、および健常な対照)を互いに識別できることを示している。各組み合わせは、WRTKD、FC(熱性疾患)、および健常な対照の感度および特異性に変動がある。しかしながら、sJIAフレア試料の感度および特異性は、評価された全ての組み合わせに対して100%で維持されている。CRP、カルプロテクチン、FSTL1、A2M、Apo-A1、S100A12、SAA、およびSAPを含む8つのバイオマーカーパネル(A)、CRP、カルプロテクチン、FSTL1、SAPを含む4つのバイオマーカーパネル(B)、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL1を含む3つのバイオマーカーパネル(C)、FSTL1を含む1つのバイオマーカーパネル(D)、カルプロテクチンおよびFSTL1を含む2つのバイオマーカーパネル(E)、FSTL1、カルプロテクチン、およびSAPを含む3つのバイオマーカーパネル(F)、およびカルプロテクチン、CRP、S100A12、およびFSTL1を含む4つのバイオマーカーパネル(G)が含まれる。
図3-2】タンパク質の様々な組み合わせを使用した異なる診断パネルを使用して、4つのグループ(フレア、KD、FC(熱性疾患)、および健常な対照)を互いに識別できることを示している。各組み合わせは、WRTKD、FC(熱性疾患)、および健常な対照の感度および特異性に変動がある。しかしながら、sJIAフレア試料の感度および特異性は、評価された全ての組み合わせに対して100%で維持されている。CRP、カルプロテクチン、FSTL1、A2M、Apo-A1、S100A12、SAA、およびSAPを含む8つのバイオマーカーパネル(A)、CRP、カルプロテクチン、FSTL1、SAPを含む4つのバイオマーカーパネル(B)、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL1を含む3つのバイオマーカーパネル(C)、FSTL1を含む1つのバイオマーカーパネル(D)、カルプロテクチンおよびFSTL1を含む2つのバイオマーカーパネル(E)、FSTL1、カルプロテクチン、およびSAPを含む3つのバイオマーカーパネル(F)、およびカルプロテクチン、CRP、S100A12、およびFSTL1を含む4つのバイオマーカーパネル(G)が含まれる。
図3-3】タンパク質の様々な組み合わせを使用した異なる診断パネルを使用して、4つのグループ(フレア、KD、FC(熱性疾患)、および健常な対照)を互いに識別できることを示している。各組み合わせは、WRTKD、FC(熱性疾患)、および健常な対照の感度および特異性に変動がある。しかしながら、sJIAフレア試料の感度および特異性は、評価された全ての組み合わせに対して100%で維持されている。CRP、カルプロテクチン、FSTL1、A2M、Apo-A1、S100A12、SAA、およびSAPを含む8つのバイオマーカーパネル(A)、CRP、カルプロテクチン、FSTL1、SAPを含む4つのバイオマーカーパネル(B)、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL1を含む3つのバイオマーカーパネル(C)、FSTL1を含む1つのバイオマーカーパネル(D)、カルプロテクチンおよびFSTL1を含む2つのバイオマーカーパネル(E)、FSTL1、カルプロテクチン、およびSAPを含む3つのバイオマーカーパネル(F)、およびカルプロテクチン、CRP、S100A12、およびFSTL1を含む4つのバイオマーカーパネル(G)が含まれる。
図3-4】タンパク質の様々な組み合わせを使用した異なる診断パネルを使用して、4つのグループ(フレア、KD、FC(熱性疾患)、および健常な対照)を互いに識別できることを示している。各組み合わせは、WRTKD、FC(熱性疾患)、および健常な対照の感度および特異性に変動がある。しかしながら、sJIAフレア試料の感度および特異性は、評価された全ての組み合わせに対して100%で維持されている。CRP、カルプロテクチン、FSTL1、A2M、Apo-A1、S100A12、SAA、およびSAPを含む8つのバイオマーカーパネル(A)、CRP、カルプロテクチン、FSTL1、SAPを含む4つのバイオマーカーパネル(B)、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL1を含む3つのバイオマーカーパネル(C)、FSTL1を含む1つのバイオマーカーパネル(D)、カルプロテクチンおよびFSTL1を含む2つのバイオマーカーパネル(E)、FSTL1、カルプロテクチン、およびSAPを含む3つのバイオマーカーパネル(F)、およびカルプロテクチン、CRP、S100A12、およびFSTL1を含む4つのバイオマーカーパネル(G)が含まれる。
図3-5】タンパク質の様々な組み合わせを使用した異なる診断パネルを使用して、4つのグループ(フレア、KD、FC(熱性疾患)、および健常な対照)を互いに識別できることを示している。各組み合わせは、WRTKD、FC(熱性疾患)、および健常な対照の感度および特異性に変動がある。しかしながら、sJIAフレア試料の感度および特異性は、評価された全ての組み合わせに対して100%で維持されている。CRP、カルプロテクチン、FSTL1、A2M、Apo-A1、S100A12、SAA、およびSAPを含む8つのバイオマーカーパネル(A)、CRP、カルプロテクチン、FSTL1、SAPを含む4つのバイオマーカーパネル(B)、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL1を含む3つのバイオマーカーパネル(C)、FSTL1を含む1つのバイオマーカーパネル(D)、カルプロテクチンおよびFSTL1を含む2つのバイオマーカーパネル(E)、FSTL1、カルプロテクチン、およびSAPを含む3つのバイオマーカーパネル(F)、およびカルプロテクチン、CRP、S100A12、およびFSTL1を含む4つのバイオマーカーパネル(G)が含まれる。
図4】フレア「活性sJIA」および休止「不活性sJIA」試料に関するタンパク質発現を評価するモニタリング研究の結果を示している。評価された3つのバイオマーカーは、疾患状態(A~C)の変化、典型的にはフレアの増加および休止の減少を伴った、発現の変化を示している。タンパク質変化は、異なる種類の治療によって影響を受ける可能性があると思われる(D)。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書にさらに記載するように、本開示は、一般的に、対象における全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、川崎病(KD)、および熱性疾患(FI)を診断および識別するための方法および組成物に関する。典型的には、本方法は、対象から得られた生体試料中の特定のバイオマーカーのレベルを決定し、そのレベルを各バイオマーカーについての対応する所定の診断閾値と比較し、それにより、その比較に基づいて対象におけるSJIA、KD、および/またはFIの診断を識別することを含む。したがって、本明細書に記載されたバイオマーカーおよび方法は、他では状態を区別するのが難しい3つの診断し、それらを識別するための、簡単で、迅速で、信頼性があり、費用効果が高い手段の基礎を形成する。
【0017】
本開示の実施は、別段の指示がない限り、当該技術分野範囲内である薬理学、化学、生化学、組換えDNA技術、および免疫学の従来方法を使用する。このような技術は文献に十分に説明されている。例えば、Handbook of Experimental Immunology,Vols.I-IV(D.M.Weir and C.C.Blackwell eds.,Blackwell Scientific Publications)、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth
Publishers,Inc.,current addition)、Sambrookら, Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Methods In Enzymology(S.Colowick and N. Kaplan eds.,Academic Press,Inc.)を参照のこと。
【0018】
上記または後述に関わらず、本明細書に引用された全ての公表物、特許、および特許出願は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「a」、「an」」、および「the」は、内容がそうでないことを明確に示していない限り、複数の対象を含む。
【0020】
「約」との用語は、特に所与の量に関して、±5%の偏差を包含することを意味する。
【0021】
「ポリペプチド」および「タンパク質」との用語は、アミノ酸残基のポリマーを指し、対象由来の好適な生体試料において検出可能である限り、最小の長さに限定されない。したがって、ペプチド、オリゴペプチド、二量体、多量体など、ならびに完全長タンパク質およびその断片が含まれる。これらの用語には、例えば、ポリペプチドの発現後修飾、例えば、グリコシル化、アセチル化、リン酸化、ヒドロキシル化、酸化などが含まれる。
【0022】
「対象」、「個体」、および「患者」との用語は、本明細書において互換的に使用され、診断、予後、治療、または療法が所望される任意の哺乳動物対象、特にヒトを指す。他の対象には、ウシ、イヌ、ネコ、モルモット、ウサギ、ラット、マウス、ウマなどが含まれ得る。いくつかの場合において、本発明の方法は、限定するものではないが、マウス、ラット、およびハムスターを含むげっ歯類ならびに霊長類を含む、実験動物、獣医学的応用、および疾患用動物モデルの開発における使用を見出す。
【0023】
本明細書で使用される場合、「生体試料」とは、対象から単離された組織または流体の試料を指し、限定するものではないが、例えば、血液、血漿、血清、糞便、尿、骨髄、胆汁、髄液、リンパ液、皮膚試料、皮膚の外分泌物、呼吸器、腸、および泌尿生殖路、涙、唾液、乳、血液細胞、器官、生検、ならびに限定するものではないが、培養培地中の細胞および組織、例えば、組換え細胞、および細胞成分の増殖に由来する馴化培地を含む、インビトロ細胞培養成分の試料が含まれる。
【0024】
「実質的に精製された」とは、天然の環境から取り出され、少なくとも約60%、70%、80%、90%、95%、99%、またはそれ以上、天然に関連する他の成分から単離または分離された核酸分子、タンパク質、抗体、または他の生体成分を指す。
【0025】
バイオマーカーおよび検出方法
本開示は、sJIA、KD、および/またはFIの診断および識別において有利に使用することができる特定のバイオマーカーおよびバイオマーカーの組み合わせの発見に基づく。一般的に言えば、本開示のバイオマーカーは、SJIA、KD、およびFIを有する患者から得られた試料中で示差的に発現される生体化合物、特にタンパク質を含む。より特定的には、本開示のバイオマーカーは、典型的には、健常な対照と比較したときのおよび/または互いに比較したとき(例えばsJIA対KD対FI)の、SJIA、KD、およびFIを有する対象から得られた試料中の量および/または頻度の差を示す。
【0026】
本開示の実施において使用することができるバイオマーカーは、本明細書にさらに記載および例示されており、限定するものではないが、アルファ-2-マクログロブリン(A2M)、アポリポタンパク質A1(APOA-I)、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、血清アミロイドA(SAA)、血清アミロイドP(SAP)、S100A12、FSTL-1、および/またはそれらの組み合わせが含まれる。例えば、一実施形態において、本開示に従って使用されるバイオマーカーの組み合わせは、少なくともFSTL-1を含む。別の実施形態において、本開示に従って使用されるバイオマーカーの組み合わせは、少なくともカルプロテクチンおよびFSTL-1を含む。さらに別の実施形態において、本開示に従って使用されるバイオマーカーの組み合わせは、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL-1を含む。さらに別の実施形態において、本開示に従って使用されるバイオマーカーの組み合わせは、少なくともカルプロテクチン、FSTL-1、およびSAPを含む。さらなる実施形態において、本開示の文脈で使用されるバイオマーカーの組み合わせは、少なくともCRP、カルプロテクチン、FSTL1、およびSAPを含む。別の実施形態において、本開示の文脈で使用されるバイオマーカーの組み合わせは、少なくともCRP、カルプロテクチン、FSTL-1、およびS100A12を含む。さらなる実施形態において、本開示の文脈で使用されるバイオマーカーの組み合わせは、少なくともCRP、カルプロテクチン、FSTL-1、A2M、Apo-A1、S100A12、SAA、およびSAPを含む。
【0027】
ある種の実施形態において、本開示(例えば、本開示の方法、キット、装置、および/または他の態様)に従って使用されるバイオマーカーの組み合わせは、sJIA、KD、およびFIを診断または識別するために本明細書に開示された2つ以下、3つ以下、4つ以下、または5つ以下のバイオマーカーを含む。
【0028】
一般的に、一方の試料中のポリペプチドの量が他方の試料中のポリペプチドの量と統計的に有意に異なる場合、2つの試料間でバイオマーカーが示差的に発現されている。例えば、ある種の実施形態において、ポリペプチドが、比較される他の試料中で存在しているものよりも、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%以上多い場合、あるいは一方の試料中で検出可能であり、他方では検出可能でない場合、ポリペプチドは2つの試料において示差的に発現されている。
【0029】
さらに、一般的には、sJIA、KD、またはFIに罹患している患者の試料においてポリペプチドを検出する頻度が、対照試料のものよりも統計的に有意に高いまたは低い場合、ポリペプチドは2組の試料において示差的に発現されている。例えば、ある種の実施形態において、ポリペプチドが、少なくとも約120%、少なくとも約130%、少なくとも約150%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約500%、少なくとも約700%、少なくとも約900%、または少なくとも約1000%以上高い頻繁または低い頻度で、他方の組の試料よりも一方の組の試料で観察される場合、ポリペプチドは2組の試料において示差的に発現されている。
【0030】
診断対象から得られる生体試料は、多くの実施形態において、血液または血漿であるが、該生体試料はまた、本質的には、発現されたバイオマーカーを含む体液、組織、または細胞由来の任意の試料であり得る。本明細書で使用される「対照」試料とは、罹患していない血液、血漿、組織、または細胞などの生体試料を指す。すなわち、対照試料は、健常な対象(例えば、sJIA、KD、FI、またはこれらの状態に関連する状態もしくは症状を有していないことが既知である個体)から得られる。生体試料は、従来技術により対象から得ることができる。例えば、静脈穿刺により、血液を得ることができる。既知の方法に従って全血を分画することにより、血漿および血清を得ることができる。固体組織試料を得るための外科技術はまた、当該技術分野で周知である。
【0031】
一般的に、バイオマーカーの「対照量」は、sJIA、KD、および/またはFIを診断または識別するために、マーカーの検査量に対して比較される任意の量または量の範囲であることができる。例えば、バイオマーカーの対照量は、sJIA、KD、および/またはFIを有さない人におけるバイオマーカーの量であり得る。対照量は、絶対量(例えば、g/ml)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)であり得る。
【0032】
バイオマーカーの「検査量」とは、検査される試料中に存在するバイオマーカーの量を指す。検査量は、絶対量(例えば、g/ml)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかであり得る。
【0033】
バイオマーカーの「診断量」とは、一般的に、単独で検討される場合またはバイオマーカーの特定の組み合わせとの併用で検討される場合のいずれかにおいて、sJIA、KD、および/またはFIの特定の診断または示差診断と合致する対象試料中のバイオマーカーの量(例えば、閾値量または範囲)を指す。診断量は、絶対量(例えば、g/ml)または相対量(例えば、シグナルの相対強度)のいずれかであり得る。
【0034】
本明細書の方法を実施するために使用される好適な対照および診断値または範囲の決定は、本開示を考慮した当業者によって容易に決定され得ることが理解されるであろう。
【0035】
試料中のバイオマーカーの発現レベルを決定することはまた、当該技術分野で既知の利用可能な任意の好適な方法を用いて実施することができることも理解されるであろう。さらに、バイオマーカーの発現レベルの測定は直接的または間接的であり得る。例えば、RNAまたはタンパク質のレベルは、既知の技術によって直接的に定量化することができる。あるいは、バイオマーカーの量は、cDNA、増幅されたRNAもしくはDNAのレベルを測定することにより、または関心のあるバイオマーカーの発現レベルを示すRNA、タンパク質、もしくは他の分子(例えば、代謝物)の量もしくは活性を測定することによって間接的に決定することができる。
【0036】
ある種の実施形態において、バイオマーカーの発現レベルは、関心のあるタンパク質またはポリペプチドもしくはペプチド断片を特異的に認識する抗体(または他の結合作用物質)を用いて、バイオマーカータンパク質またはポリペプチドもしくはそのペプチド断片のレベルを測定することによって決定される。そのようなアッセイには、限定するものではないが、免疫組織化学染色(IHC)、ウェスタンブロッティング、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、「サンドイッチ」イムノアッセイ、蛍光イムノアッセイ、免疫沈降アッセイが含まれ、その実施は当該技術分野で周知である(例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、Ausubel et al,eds,1994,Current Protocols in Molecular Biology,Vol.1,John Wiley&Sons,Inc.,New Yorkを参照のこと)。
【0037】
バイオマーカーが試料中に存在する場合、バイオマーカーは、好適なインキュベーション条件下でバイオマーカーに特異的に結合する抗体と抗体-バイオマーカー複合体を形成する。それにより、生体試料中の抗体-バイオマーカー複合体の量を決定し、所定の診断閾値量または範囲と比較し、決定されたレベルが陽性または示差診断を示すかどうかを決定することができる。
【0038】
本開示による1つ以上のバイオマーカーのレベルを決定するために抗体を使用する場合、そのような抗体は、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を用いて調製することができる(例えば、Coligan,Current Protocols in Immunology(1991);Harlow&Lane,Antibodies:A Laboratory Manual(1988);Goding,Monoclonal Antibodies:Principles and Practice(2d ed.1986);およびKohler&Milstein,Nature256:495-497(1975)を参照のこと)。例えば、バイオマーカー抗原を使用してマウス、ラット、ウサギ、モルモット、サル、またはヒトなどの哺乳動物を免疫化して、ポリクローナル抗体を産生することができる。所望する場合、バイオマーカー抗原をウシ血清アルブミン、チログロブリン、およびキーホールリンペットヘモシアニンなどの担体タンパク質に結合させることができる。宿主種に応じて、様々なアジュバントを使用して免疫学的応答を増加させることができる。そのようなアジュバントには、限定するもではないが、フロイントアジュバント、無機ゲル(例えば水酸化アルミニウム)、および界面活性物質(例えば、リゾレシチン、プルロニックポリオール、ポリアニオン、ペプチド、油エマルジョン、キーホールリンペットヘモシアニン、およびジニトロフェノールなど)が含まれる。ヒトに使用されるアジュバントの中で、BCG(バシル・カルメット・ゲラン(bacillicalmete-Guerin))およびコリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium parvum)が特に有用である。
【0039】
培地での継代細胞株による抗体分子の産生を提供する任意の技術を用いて、バイオマーカー抗原に特異的に結合するモノクローナル抗体を調製することができる。これらの技術には、限定するものではないが、ハイブリドーマ技術、ヒトB細胞ハイブリドーマ技術、およびEBVハイブリドーマ技術(Kohler et al.,Nature256,495-97,1985;Kozbor et al.,J.Immunol.Methods81,3142,1985;Cote et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.80,2026-30,1983;Cole et al.,Mol.Cell.Biol.62,109-20,1984)が含まれる。
【0040】
さらに、「キメラ抗体」の産生のために開発された技術を使用することができる(Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.81,6851-55,1984;Neuberger et al.,Nature312,604-08,1984;Takeda et al.,Nature314,452-54,1985)。キメラ抗体は、例えばWO93/03151およびその他に記載されるようにして構築することができる。WO94/13804に記載されている「ダイアボディー」などの多価および多重特異的な(multi specific)免疫グロブリン由来の結合タンパク質も使用することができる。所望する場合、モノクローナル抗体および他の抗体も「ヒト化」することができる。ヒト化抗体は、当該技術分野で既知の確立されている組換え法を使用して作製することができる(例えば、米国特許第5,565,332号;PLoS Medicine4(5),928-36,2007)。
【0041】
あるいは、単鎖抗体の産生について記載された技術を当技術分野で既知の方法を使用して適合させて、特定の抗原に特異的に結合する単鎖抗体を産生することができる。関連する特異性を有するが異なるイディオタイプ組成を有する抗体を、コンビナトリアル免疫グロブリンライブラリーからの鎖シャフリング(chain shuffling)によって作製することができる(Burton,Proc.Natl.Acad.Sci.88,11120-23,1991)。ハイブリドーマcDNAを鋳型として使用したPCRなどのDNA増幅法を使用して、単鎖抗体を構築することもできる(Thirion et al.,Eur.J.Cancer Prev.5,507-11,1996)。単鎖抗体は、単一特異性または二重特異性であり得、2価または4価であり得る。4価の二重特異性単鎖抗体の構築は、他例えば、Coloma&Morrison,Nat.Biotechnol.15,159-63,1997に教示されている。2価の二重特異性単鎖抗体の構築は、Mallender&Voss,J.Biol.Chem.269,199-206,1994に教示されている。
【0042】
下記に記載するように、単鎖抗体をコードするヌクレオチド配列は、手動または自動ヌクレオチド合成を用いて構築され、標準的な組換えDNA法を用いて発現構築物にクローニングされ、細胞内に導入されて、コード配列を発現する。あるいは、例えば繊維状ファージ技術を使用して、単鎖抗体を直接作製することができる(Verhaar et al.,Int.J.Cancer61,497-501,1995;Nicholls et al.,J.Immunol.Meth.165,81-91,1993)。
【0043】
バイオマーカー抗原に特異的に結合する抗体は、リンパ球集団中でのインビボ産生を誘導することにより作製するか、あるいは文献に開示されるように(Orlandi et
al.,Proc.Natl.Acad.Sci.86,3833 3837,1989;Winter et al.,Nature349,293 299,1991)、高度に特異的な結合試薬の免疫グロブリンライブラリーまたはパネルをスクリーニングすることにより作製することができる。
【0044】
抗体は、当該技術分野で周知の方法によって精製することができる。例えば、関連する抗原が結合したカラムを通過させることにより、抗体をアフィニティー精製することができる。次いで、高い塩濃度の緩衝液を用いて、結合した抗体をカラムから溶出させることができる。
【0045】
バイオマーカーに「特異的に(または選択的に)結合する」または「特異的に(または選択的に)免疫反応性を示す」抗体とは、タンパク質および他の生物製剤の不均一な集団中におけるタンパク質の存在を決定する結合反応を指す。したがって、指定された免疫測定条件下で、抗体(または他の結合作用物質)は一般的に、バックグラウンドの少なくとも2倍で特定のタンパク質に結合し、試料中に存在する他のタンパク質には有意な量で実質的には結合しない。典型的には、特定のまたは選択的な反応は、バックグラウンドシグナルまたはノイズの少なくとも2倍であり、より典型的にはバックグラウンドの10~100倍より大きい。
【0046】
生体試料中のバイオマーカーの存在の検出またはその定量化のための抗体またはその断片の使用は周知であり、理解されている。そのような方法は、一般的に、例えば、(i)生体試料を抗体と接触させること、ここで、該試料は、組織(例えば、ヒト、動物など)、生体液(例えば、血液、尿、痰、精液、羊水、唾液など)、生体抽出物(例えば、組織または細胞ホモジネートなど)、タンパク質マイクロチップ(例えば、Arenkov P,et al.,Anal Biochem.,278(2):123-131(2000)を参照のこと)、またはクロマトグラフィーカラムなどである、および(ii)基質に結合した抗体を定量化することを含む。この方法は、上記および本明細書のその他の箇所で定義したような試料に抗体を供する前に、抗体を固体支持体に共有的、静電的、または可逆的に結合させる予備工程をさらに含んでもよい。
【0047】
様々な診断アッセイ技術が当該技術分野で既知であり、例えば、競合的結合アッセイ、直接的または間接的サンドイッチアッセイ、および不均一相または均一相のいずれかで行われる免疫沈降アッセイがある(Zola,Monoclonal Antibodies:A Manual of Techniques,CRC Press,Inc.,(1987),pp147-158)。
【0048】
ある種の実施形態において、低含量の血漿タンパク質について試料を濃縮し、それによりバイオマーカーの検出を容易にするために、分析前に生体試料を分画することができる。試料中のタンパク質の結合特性または試料中のタンパク質の特性に基づいて試料の複雑性を低減する多くの方法がある。
【0049】
一実施形態において、例えば、サイズ排除クロマトグラフィーを使用し、試料中のタンパク質サイズに応じて試料を分画することができる。利用可能な試料の量が少ない生体試料については、サイズ選択スピンカラムを使用することが好ましい。一般的に、カラムから溶出する第1の画分(「画分1」)は、最も高い割合の高分子量タンパク質を有し、画分2は、低い割合の低分子量タンパク質を有し、画分3は、さらにより低い割合の高分子量タンパク質を有し、画分4は、最低量の大きなタンパク質を有する、などである。次いで、バイオマーカーの検出のために、各画分をイムノアッセイ、気相イオン分光測定(gas phase ion spectrometry)などによって分析することができる。
【0050】
別の実施形態において、試料を陰イオン交換クロマトグラフィーによって分画することができる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、試料中のタンパク質をその電荷特性に従って大まかに分画することを可能にする。例えば、Q陰イオン交換樹脂を使用することができ(例えば、Q HyperD F、Biosepra)、試料を異なるpHを有する溶出液で連続的に溶出させることができる。陰イオン交換クロマトグラフィーは、より大きな負電荷を持った試料中のバイオマーカーを他の種類のバイオマーカーから分離することを可能にする。高pHの溶出液で溶出されるタンパク質は弱い負電荷を持ちやすく、低pHの溶出液で溶出するタンパク質は強い負電荷を持ちやすい。したがって、試料の複雑性を低減することに加え、陰イオン交換クロマトグラフィーは、タンパク質をそれらの結合特性に応じて分離する。
【0051】
さらに別の実施形態において、試料をヘパリンクロマトグラフィーによって分画することができる。ヘパリンクロマトグラフィーは、ヘパリンとの親和性相互作用および荷電特性に基づいて試料中のバイオマーカーの分画を可能にする。硫酸化ムコ多糖であるヘパリンは正電荷を有する部分を有するバイオマーカーに結合し、試料を異なるpHまたは塩濃度を有する溶出液で連続的に溶出することができる。低pHの溶出液で溶出されたバイオマーカーは、弱い正電荷をより持ちやすい。高pHの溶出液で溶出したバイオマーカーは、強い正電荷をより持ちやすい。したがって、ヘパリンクロマトグラフィーはまた、試料の複雑性を低減し、バイオマーカーをその結合特性に応じて分離する。
【0052】
さらに別の実施形態において、特定の特性、例えばグリコシル化を有するタンパク質を単離することによって、試料を分画することができる。例えば、試料をレクチンクロマトグラフィーカラム(糖に対して高い親和性を有する)に通過させることによって、試料を分画することができる。グリコシル化タンパク質はレクチンカラムに結合し、非グリコシル化タンパク質はフロースルーを通過する。次いで、グリコシル化タンパク質を、糖、例えば、N-アセチル-グルコサミンを含有する溶出液でレクチンカラムから溶出し、さらなる分析に利用可能である。
【0053】
別の実施形態において、連続抽出プロトコルを用いて試料を分画することができる。連続抽出では、試料を一連の吸着剤に暴露して、試料から異なる種類のバイオマーカーを抽出する。例えば、試料を第1の吸着剤に適用してある種のタンパク質を抽出し、非吸着タンパク質(すなわち、第1の吸着剤に結合しなかったタンパク質)を含有する溶出液を収集する。次いで、この画分を第2の吸着剤に暴露する。これにより、この画分から様々なタンパク質がさらに抽出される。次いで、この第2の画分を第3の吸着剤に暴露するなどする。
【0054】
任意の好適な材料および方法を用いて、試料の連続抽出を行うことができる。例えば、異なる吸着剤を含む一連のスピンカラムを使用することができる。別の例において、底部に異なる吸着剤を含むマルチウェルを使用することができる。別の例において、気相イオン分光測定における使用に適合されたプローブ上で連続抽出を行うことができ、プローブの表面はバイオマーカーを結合するための吸着剤を含む。この実施形態において、試料をプローブ上の第1の吸着剤に適用し、その後に吸着剤を溶出液で洗浄する。第1の吸着剤に結合しないバイオマーカーを溶出液で除去する。この画分中に存在するバイオマーカーをプローブ上の第2の吸着剤に適用するなどできる。気相イオン分光測定計プローブで連続抽出を行う利点は、連続抽出プロトコルの各工程で様々な吸着剤に結合するバイオマーカーを気相イオン分光測定計を用いて直接分析することができることである。
【0055】
さらに別の実施形態において、試料中のバイオマーカーを高分解能電気泳動、例えば、一次元または二次元ゲル電気泳動によって分離することができる。バイオマーカーを含む画分を単離し、さらに気相イオン分光測定計により単離することができる。二次元ゲル電気泳動を用いて、バイオマーカー用スポットの二次元アレイを作成することが好ましい。例えば、Jungblut and Thiede,Mass Spectr.Rev.16:145-162(1997)を参照されたい。
【0056】
二次元ゲル電気泳動は、当該技術分野で既知の方法を用いて行うことができる。(例えば、Deutscher ed.,Methods In Enzymology vol.182を参照のこと)。典型的には、試料中のバイオマーカーは、例えば等電点電気泳動によって分離され、その際、試料中のバイオマーカーは、その正味電荷がゼロ(すなわち等電点)であるスポットに達するまでpH勾配で分離される。この第1の分離工程は、バイオマーカーの一次元アレイをもたらす。一次元アレイ中のバイオマーカーは、第1の分離工程で使用されるものとは一般的に異なる技術を用いてさらに分離される。例えば、二次元において、等電点電気泳動によって分離されたバイオマーカーが、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS-PAGE)の存在下で電気泳動によるポリアクリルアミドゲルを用いてさらに分離される。SDS-PAGEは、分子量に基づいてさらなる分離を可能にする。典型的には、二次元ゲル電気泳動は、1000~200,000Daの範囲の分子質量を有する化学的に異なるバイオマーカーを複合混合物中にあっても分離することができる。
【0057】
二次元アレイ中のバイオマーカーは、当該技術分野で既知の任意の好適な方法を用いて検出することができる。例えば、ゲル中のバイオマーカーを標識または染色することができる(例えば、クマシーブルーまたは銀染色)。ゲル電気泳動により、本開示の1つ以上のバイオマーカーの分子量に対応するスポットが生じる場合、このスポットをデンシトメトリー分析または気相イオン分光測定によってさらに分析することができる。例えば、スポットをゲルから切り出して、気相イオン分光測定によって分析することができる。あるいは、バイオマーカーを含有するゲルを、電場をかけることにより不活性膜にトランスファーすることができる。次いで、バイオマーカーの分子量におおよそ対応する膜上のスポットを気相イオン分光測定によって分析することができる。気相イオン分光測定では、スポットをMALDIまたはSELDIなどの任意の好適な技術を用いて分析することができる。気相イオン分光測定分析の前に、プロテアーゼ(例えばトリプシン)などの切断試薬を用いて、スポット中のバイオマーカーをより小さな断片に切断することが望ましい場合がある。バイオマーカーを小さな断片に消化することにより、スポット中のバイオマーカーのマスフィンガープリントが提供され、所望する場合、これを使用してバイオマーカーの同一性を決定することができる。
【0058】
さらに別の実施形態において、高速液体クロマトグラフィー(HPLC))を使用して、試料中のバイオマーカーの混合物を極性、電荷、サイズなどのそれらの異なる物理的性質に基づいて分離することができる。HPLC機器は、典型的には、リザーバ、移動相、ポンプ、インジェクタ、分離カラム、および検出器からなる。試料中のバイオマーカーは、試料のアリコートをカラムに注入することによって分離される。混合物中の異なるバイオマーカーは、移動液相と固定相との間の分配挙動の相違に起因して異なる速度でカラムを通過する。1つ以上のバイオマーカーの分子量および/または物理的性質に対応する画分を収集することができる。次いで、この画分を気相イオン分光測定により分析して、バイオマーカーを検出することができる。
【0059】
任意選択により、バイオマーカーを分析前に改変して、その分解能を向上させ、またはその同一性を決定することができる。例えば、バイオマーカーを分析前にタンパク質分解消化に供してもよい。任意のプロテアーゼを使用することができる。バイオマーカーを別個の数の断片に切断する可能性が高いトリプシンなどのプロテアーゼが特に有用である。消化から生ずる断片はバイオマーカーのフィンガープリントとして機能し、それにより、それらの検出を間接的に可能にする。これは、問題のバイオマーカーについて混同され得る同様の分子質量を有するバイオマーカーが存在する場合に特に有用である。
【0060】
また、タンパク質分解の断片化は高分子量バイオマーカーに有用であるが、その理由は、より小さなバイオマーカーは、質量分析により、より簡単に分解されるからである。別の例において、バイオマーカーを改変して検出分解能を向上することができる。例えば、ノイラミニダーゼを用いて、糖タンパク質から末端シアル酸残基を除去し、陰イオン吸着剤への結合性を向上させ、検出分解能を向上させることができる。別の例において、バイオマーカーは、分子バイオマーカーに特異的に結合する特定の分子量のタグを結合させることによって改変することができ、さらにそれらを区別する。任意選択により、そのように改変されたバイオマーカーを検出した後、改変されたバイオマーカーの物理的特性および化学的特性をタンパク質データベース(例えばSwissProt)でマッチングさせることによって、バイオマーカーの同一性をさらに決定することができる。
【0061】
調製後、試料中のバイオマーカーは典型的には検出用基板上で捕捉される。従来の基板には、タンパク質の存在についてその後に探査される、抗体がコーティングされた96ウェルプレートまたはニトロセルロース膜が含まれる。あるいは、微小球、微粒子、マイクロビーズ、ビーズまたは他の粒子に結合されたタンパク質結合分子を、バイオマーカーの捕捉および検出に使用することができる。タンパク質結合分子は、抗体、ペプチド、ペプトイド、アプタマー、小分子リガンド、または粒子表面に結合された他のタンパク質結合捕捉作用物質であり得る。各タンパク質結合分子は「固有の検出可能な標識」を含むことができ、該標識は、他のタンパク質結合分子に結合された他の検出可能な標識から区別することができるように固有にコード化され、多重アッセイにおいてバイオマーカーの検出を可能にする。例には、限定するものではないが、既知の蛍光強度を有するカラーコード(color-coded)微小球(例えば、Luminex(Austin、Tex.)により作製されたxMAP技術を有する微小球を参照のこと;量子ドットナノ結晶を含有する、例えば、異なる比率および組み合わせの量子ドットカラーを有する微小球(例えば、LifeTechnologies(Carlsbad、Calif.)によって作製されたQdotナノ結晶;ガラスコーティング金属ナノ粒子(例えば、Nanoplex Technologies,Inc.(Mountain View、Calif.)によって作製されたSERSナノタグを参照のこと;バーコード材料(例えば、Nanoplex Technologies,Inc.によって作製されたナノバーコードなどのサブミクロンサイズのストライプ金属ロッドを参照のこと)、カラーバーコードを有するコード化微粒子(例えば、Vitra Bioscience,vitrabio.comにより作製されたCellCardを参照のこと)、デジタルホログラフィックコードイメージを伴うガラス微粒子(例えば、lllumina(San Diego、Calif.)により作製されたCyVeraマイクロビーズを参照のこと);化学発光色素、色素化合物の組み合わせ;および検出可能に異なるサイズのビーズが含まれる。例えば、米国特許第5,981,180号、米国特許第7,445,844号、米国特許第6,524,793号、Ruslingら(2010)Analyst135(10):2496-2511;Kingsmore(2006)Nat.Rev.Drug Discov.5(4):310-320,Proceedings Vol.5705 Nanobiophotonics and Biomedical Applications II,Alexander N.Cartwright;Marek Osinski,Editors,pp.114-122;Nanobiotechnology Protocols Methods in Molecular Biology,2005,Volume303(これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)を参照のこと)。
【0062】
上述のように、捕捉試薬は周知であり、ある種の実施形態において有利に使用することができる。捕捉試薬は、一般的に、特定の標的分子または標的分子群に特異的に結合する分子または分子群を指す。例えば、捕捉試薬は2つ以上の抗体を含むことができ、その各抗体は別個の標的分子に対する特異性を有する。捕捉試薬は、標的分子に特異的に結合することができる、有機もしくは無機化学物質または生体分子、ならびにすべてのそれらの断片、類似体、相同体、結合体、および誘導体の任意の組み合わせであり得る。
【0063】
捕捉試薬は、複数の標的と複合体を形成することができる単一の分子、例えば、異なる標的に対して複数の結合部位を有する多量体融合タンパク質を含むことができる。捕捉試薬は、各々が異なる標的に対する特異性を有する複数の分子を含むことができ、それにより、複数の捕捉試薬-標的複合体をもたらす。ある種の実施形態において、捕捉試薬は、抗体などのタンパク質から構成される。
【0064】
捕捉試薬は、検出可能な部分で直接標識することができる。例えば、抗バイオマーカー抗体を検出可能な部分に直接結合させて、本発明の方法、装置、およびキットで使用することができる。あるいは、捕捉試薬-バイオマーカー複合体の検出は、バイオマーカーまたは捕捉試薬-バイオマーカー複合体に特異的に結合する二次試薬によって行うことができる。二次試薬は、任意の生体分子であり得、好ましくは抗体である。二次試薬は、典型的には検出可能な部分で標識される。いくつかの実施形態において、捕捉試薬または二次試薬はビオチンに結合され、検出可能な部分タグを有するアビジンまたはストレプトアビジンと接触させる。
【0065】
抗体、捕捉試薬、または他の分子とともに使用される検出可能な部分または標識は、一般的に、検出可能なシグナルを直接的または間接的のいずれかで生じさせることができる。本開示で使用するのに好適な検出可能な部分および標識には、限定するものではないが、放射性同位体、蛍光色素、例えば、フルオレセイン、フィコエリトリン、Cy-3、Cy-5、アロフィコシアニン、DAPI、テキサスレッド(Texas Red)、ローダミン、オレゴングリーン(Oregon green)、ルシファーイエローなど、緑色蛍光タンパク質(GFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed)、青色蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、セリアンサスオレンジ(Cerianthus Orange)蛍光タンパク質(cOFP)、アルカリホスファターゼ(AP)、ベータ-ラクタマーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、アデノシンデアミナーゼ(ADA)、アミノグリコシドホスホトランスフェラーゼ(neor、G418r)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ(DHFR)、ハイグロマイシン-B-ホスホトランスフェラーゼ(HPH)、チミジンキナーゼ(TK)、lacZ(α-ガラクトシダーゼをコードしている)、およびキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(XGPRT)、ベータ-グルクロニダーゼ(gus)、胎盤性アルカリホスファターゼ(PLAP)、分泌型胎盤アルカリホスファターゼ(Secreted Embryonic Alkaline Phosphatase)(SEAP)、またはホタルもしくは細菌ルシフェラーゼ(LUC)が含まれる。酵素タグは、それらの同族の基質とともに使用される。この用語はまた、既知の蛍光強度のカラーコード微小球(例えば、Luminex(Austin、Tex.)により作製されたxMAP技術を有する微小球を参照のこと;量子ドットナノ結晶を含有する、例えば、異なる比率および組み合わせの量子ドットカラーを有する微小球(例えば、Life Technologies(Carlsbad、Calif.)によって作製されたQdotナノ結晶;ガラスコーティング金属ナノ粒子(例えば、Nanoplex Technologies,Inc.(Mountain View、Calif.)によって作製されたSERSナノタグを参照のこと;バーコード材料(例えば、Nanoplex Technologies,Inc.によって作製されたナノバーコードなどのサブミクロンサイズのストライプ金属ロッドを参照のこと)、カラーバーコードを有するコード化微粒子(例えば、Vitra Bioscience,vitrabio.comにより作製されたCellCardを参照のこと)、およびデジタルホログラフィックコードイメージを伴うガラス微粒子(例えば、lllumina(San Diego、Calif.)により作製されたCyVeraマイクロビーズを参照のこと)が含まれる。本開示の実施に関連する標準的な手順の多くと同様に、当業者は、さらなる標識を使用できることを理解するであろう。
【0066】
抗体を検出可能な部分に結合するための当該技術分野で既知の任意の方法を用いることができ、Hunterら,Nature,144:945(1962);Davidら,Biochem.,13:1014(1974);Painら,J.Immunol.Methods,40:219(1981);およびNygren,J.Histochem.and Cytochem.,30:407(1982)ならびにその他で記載されるものが含まれる。
【0067】
いくつかの実施形態において、バイオチップをタンパク質の捕捉および検出に使用することができる。多くのタンパク質バイオチップが当該技術分野で記述されている。これらには、例えば、Packard BioScience Company(Meriden Conn.)、Zyomyx(Hayward、Calif.),Phylos(Lexington、Mass.)その他により作製されたタンパク質バイオチップが含まれる。一般的に、タンパク質バイオチップは表面を有する基板を含む。捕捉試薬または吸着剤は基板表面に結合される。しばしば、表面は複数のアドレス可能な(addressable)位置を含み、その各々がその位置に結合された捕捉試薬を有する。捕捉試薬は、他のバイオマーカーを特定の様式で捕捉するポリペプチドまたは核酸などの生体分子であり得る。あるいは、捕捉試薬は、陰イオン交換材料または親水性材料などのクロマトグラフィー材料であり得る。そのようなタンパク質バイオチップの例は、以下の特許または特許出願に記載されている:米国特許第6,225,047号(Hutchens and Yip,“Use of retentate chromatography to generate difference maps,”May1,2001)、国際公開第WO99/51773号(Kuimelis and Wagner,“Addressable protein arrays,”Oct.14,1999)、国際公開第WO00/04389号(Wagner et al.,“Arrays of protein-capture agents and methods of use thereof,”Jul.27,2000)、国際公開第WO00/56934号(Englert et al.,「Continuous porous matrix arrays,”Sep.28,2000)。
【0068】
一般的に、バイオマーカーを含有する試料は、結合を可能にするのに十分な時間バイオチップの活性表面上に留置される。次いで、結合していない分子を好適な溶出液を用いて表面から洗浄する。一般的に、溶出液がよりストリンジェントであるほど、洗浄後に、より強固にタンパク質が結合して保持されなければならない。次いで、保持されたタンパク質バイオマーカーは、例えば、質量分析、蛍光、表面プラズモン共鳴、エリプソメトリー、または原子間力顕微鏡などの任意の好適な手段によって検出することができる。
【0069】
質量分析、特に、SELDI質量分析は、本開示のバイオマーカーの検出に特に有用な方法である。いくつかの実施形態において、レーザー脱離飛行時間型質量分析計を使用することができる。レーザー脱離質量分析において、バイオマーカーを含む基板またはプローブが入口系統に導入される。イオンマーカーは、イオン化源からのレーザーによって気相に脱離され、イオン化される。生成したイオンは、イオン光学アセンブリによって収集され、次いで飛行時間型質量分析器において、イオンは短い高電圧領域を介して加速され、高真空チャンバ内にドリフト(drift)される。高真空チャンバの遠端において、加速されたイオンは、異なる時間で、感度が高い検出器表面に衝突する。飛行時間はイオンの質量の関数であるので、イオン形成とイオン検出器衝撃との間の経過時間を使用して、特定の質量電荷比のマーカーの有無を同定することができる。
【0070】
マトリックス支援レーザー脱離/イオン化質量分析(MALDI-MS)をまた、本明細書に記載のバイオマーカーを検出するのに使用することができる。MALDI-MSは、プローブ表面からタンパク質を完全に脱離するためのマトリックスとしばしば呼ばれるエネルギー吸収分子の使用を含む、質量分析方法である。MALDIは、例えば、米国特許第5,118,937号(Hillenkamp et al.)および米国特許第5,045,694号(Beavis and Chait)に記載されている。MALDI-MSでは、試料が典型的にはマトリックス材料と混合され、不活性プローブの表面上に留置される。例示的なエネルギー吸収分子には、ケイ皮酸誘導体、シナピン酸(「SPA」)、シアノヒドロキシ桂皮酸(「CHCA」)、およびジヒドロキシ安息香酸が含まれる。他の好適なエネルギー吸収分子は当業者に既知である。マトリックスが乾燥すると、分析物分子を封入する結晶が形成される。次いで、分析物分子がレーザー脱離/イオン化質量分析によって検出される。
【0071】
表面増強レーザー脱離/イオン化質量分析またはSELDI-MSは、複合混合物中のタンパク質などの生体分子の分画および検出のためにMALDIを改善したものを表す。SELDIは、タンパク質などの生体分子をタンパク質バイオチップの表面上へと、該表面上に結合された捕捉試薬を使用して捕捉する、質量分析方法である。典型的には、非結合分子は、解析前にプローブ表面から洗浄される。SELDIは、例えば、米国特許第5,719,060号(“Method and Apparatus for Desorption and Ionization of Analytes,”Hutchens and Yip,Feb.17,1998)、米国特許第6,225,047号(“Use of Retentate Chromatography to Generate Difference Maps,”Hutchens and Yip,May1,2001)、およびWeinbergerら,“Time-of-flight mass spectrometry,”in Encyclopedia of Analytical Chemistry,R.A.Meyers,ed.,pp11915-11918 John Wiley&Sons Chichesher,2000に記載されている。
【0072】
基板表面上のバイオマーカーを、気相イオン分光測定を使用して脱離およびイオン化することができる。基板上のバイオマーカーを分解する(resolved)ことが可能である限り、任意の好適な気相イオン分光測定計を使用することができる。気相イオン分光測定計により、バイオマーカーの定量化が可能となることが好ましい。一実施形態において、気相イオン分光測定計は質量分析計である。典型的な質量分析計では、バイオマーカーを表面上に含む基板またはプローブが質量分析計の入口系統に導入される。次いで、バイオマーカーは、レーザー、高速原子衝撃、高エネルギープラズマ、エレクトロスプレーイオン化、サーモスプレーイオン化、液体二次イオン質量分析、電界脱離などの脱離源によって脱離される。生成された脱離および気化した種は、脱離事象の直接的な結果としてイオン化される、プリフォームドイオン(preformed ion)または中性種(neutral)からなる。生成したイオンはイオン光学アセンブリによって収集され、次いで質量分析器により、通過イオンが分散および分析される。質量分析器から抜け出るイオンが検出器によって検出される。次いで、検出器により、検出されたイオンの情報が質量電荷比に変換される。バイオマーカーまたは他の物質の存在の検出は、典型的にはシグナル強度の検出を含む。これは、今度は、基板に結合したバイオマーカーの量および特性を反映することができる。質量分析計の構成要素(例えば、脱離源、質量分析装置、検出器など)のいずれかを、本明細書に記載された他の好適な構成要素または当該技術分野で既知の構成要素と組み合わせることができる。
【0073】
対象におけるSJIA、KD、およびFIの診断または識別を容易にすること加えて、本開示によるバイオマーカーの検出はまた、有益な代替的な用途をもたらす。例えば、いくつかの実施形態において、sJIA、KD、またはFIの治療的処置に対する対象の応答または応答性をモニタリングする方法を提供する。さらに、さらなる実施形態において、開示された方法およびバイオマーカーを使用して、インビボまたはインビトロでバイオマーカーの発現を調節する化合物をスクリーニングし、同定することができる。
【0074】
キットおよび装置
さらに別の態様において、本開示は、sJIA、KDおよび/またはFIを診断または識別するためのキットおよび装置であって、対象から得られた生体試料中の本明細書に記載されるバイオマーカーのレベルを検出および決定するために必要なまたは所望される作用物質を含有する、キットを提供する。
【0075】
例えば、キットは、バイオマーカー検出のための1つ以上の作用物質、ヒト対象から単離された生体試料を収容するための容器、作用物質を生体試料と反応させて生体試料中の少なくとも1つのバイオマーカーの存在を検出しおよび/またはそのレベルを決定するための指示印刷物といったものを含むことができる。これらの作用物質は、別個の容器中に包装することができる。キットはさらに、免疫測定などの好適なアッセイを行うための1つ以上の対照試料および試薬を含んでもよい。
【0076】
いくつかの実施形態において、キットは、アルファ-2-マクログロブリン(A2M)、アポリポタンパク質A1(APOA-I)、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、血清アミロイドA(SAA)、血清アミロイドP(SAP)、S100A12、およびFSTL-1からなる群から選択されるバイオマーカーなどの本明細書に開示される1以上のバイオマーカーに特異的に結合する抗体またはその結合断片を含む。より特定的な実施形態において、キットは、カルプロテクチンおよびFSTL-1に特異的な抗体または他の結合作用物質を含む。さらに別の実施形態において、キットは、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL-1に特異的な抗体または他の結合作用物質を含む。さらに別の実施形態において、キットは、カルプロテクチン、FSTL-1、およびSAPに特異的な抗体または他の結合作用物質を含む。さらなる実施形態において、キットは、CRP、カルプロテクチン、FSTL1、およびSAPに特異的な抗体または他の結合作用物質を含む。別の実施形態において、キットは、CRP、カルプロテクチン、FSTL-1、およびS100A12に特異的な抗体または他の結合作用物質を含む。さらなる実施形態において、キットは、CRP、カルプロテクチン、FSTL-1、A2M、Apo-A1、S100A12、SAA、およびSAPに特異的な抗体または他の結合作用物質を含む。
【0077】
いくつかの実施形態において、キットは、本明細書に記載のバイオマーカーおよびバイオマーカーの組み合わせに特異的な抗体または他の結合作用物質を含む、ELISAアッセイを行うための成分を含む。ある種の他の実施形態において、キットは、本明細書に記載のバイオマーカーおよびバイオマーカーの組み合わせに特異的な抗体または他の結合作用物質を含む、ラテラルフロー装置を含む。
【0078】
ある種の実施形態において、キットまたは装置は、本明細書中に開示された2つ以下、3つ以下、4つ以下、または5つ以下のバイオマーカーに特異的であり、sJIA、KD、およびFIを診断または識別するのに有効である、抗体を含む。
【0079】
キットまたは装置はまた、キットに含まれる組成物のための1つ以上の容器を含むことができる。組成物は、液体形態であってもよく、または凍結乾燥されていてもよい。組成物のための好適な容器には、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管が含まれる。容器は、ガラスまたはプラスチックを含む様々な材料から形成することができる。キットまたは装置はまた、sJIA、KD、およびFIを診断および識別する方法のための指示書を含む添付文書を含むことができる。
【0080】
したがって、ある種の実施形態において、キットおよび装置を使用して、対象がsJIAまたは例えば感染性疾患、特に、急性熱性疾患もしくは川崎病に起因するいくつかの他の炎症状態を有するかどうかを決定し、sJIAの診断と他の若年性特発性関節炎(JIA)疾患サブタイプとを区別することができる。別の例において、キットおよび装置を使用して、対象における臨床症状に先立つ初期sJIA炎症性フレアを予測することができる。別の例において、キットおよび装置を使用して、sJIAを有する患者の治療の有効性をモニタリングすることができる。さらなる例において、キットおよび装置を使用して、インビトロまたはインビボ動物モデルでのバイオマーカーのうちの少なくとも1つの発現を調節する化合物を同定し、治療の効果を決定することができる。
【0081】
以下に、本開示を実施するための特定の実施形態の例を示す。実施例は、例示目的のためにのみ提供し、本開示の範囲を決して限定することを意図するものではない。
【実施例0082】
実施例1
SJIAおよびKDの識別に有効なバイオマーカーの同定
合計39人の健常な対照対象、42人のKD対象、42人のFI対象、42人のsJIAフレア対象、および42人のsJIA休止対象由来の血漿試料を、5点希釈系列を使用して、タンパク質マイクロアレイにより検査した。アレイの設計は、各バイオマーカーに対する捕捉抗体の3つのスポットを含み、各試料について3つ組でのデータ収集が可能となるようにした。各アレイはまた、陽性対照およびブランク対照を含んだ。データをGraphPad Prismバージョン11を用いて処理し、統計的分析をSAS Institute Inc.のJMPproバージョン12で行った。
【0083】
分散分析(ANOVA)をスチューデントのt検定とともに使用し、これらの5つの群に対する統計学的に有意な平均値差(p値<(0.05))について、バイオマーカーを分析した。この分析により、1つ以上の群の平均値の中で、8つのタンパク質が統計学的な有意差を有していた。この分析の結果を図1および図2に図示する。さらに、これらの8つのタンパク質を用いた名義ロジスティック回帰分析により、8%の誤分類率で、5つの群全ての患者を互いに分けるできることが明らかになった。特に重要なことは、sJIAフレア試料と他の群の全てとを明確に識別できることである。正確に診断された試料の数を提供する名義ロジスティック回帰から作成された混同行列を使用したところ、診断sJIAフレア試料パネルの感度および特異性は100%であった。健常な対照群もまた、100%の感度および特異性を有していた。他の全ての群を識別するための感度および特異性は、少なくとも95%であった(図3)。
【0084】
これらの状態を識別可能に診断することについての明確性を提供できる有効かつ低費用のアッセイを提供するために、簡便性および使用の容易性が非常に重要である。したがって、高い感度および特異性を維持しつつ、他の群からsJIAフレアを分けるのに必要な最少数のバイオマーカーを同定することを模索した。以下の4つのバイオマーカータンパク質、C反応性タンパク質(CRP)、カルプロテクチン、フォリスタチン関連タンパク質1(FSTL1)、および血清アミロイドP(SAP)について行った名義ロジスティック回帰は、sJIAフレア群および健常な対照群の両方に対して、100%に維持された感度および特異性をもたらした。KDおよびFI群に対する感度および特異性は、4つのバイオマーカーパネルについてそれぞれ、86%、96%、および88%、95%へと、わずかに減少しただけであった。以下の3つのバイオマーカー、CRP、カルプロテクチン、およびFSTL-1について行った同じ分析はまた、sJIAフレアおよび健常な対照群に対して、100%に維持された感度および特異性をもたらしたが、KDおよびFI群に対する感度および特異性は80%超で維持された。さらなるバイオマーカーの組み合わせについて行った同様の分析を図3に示す。
【0085】
実施例2
患者のモニタリングおよびフレア発生の予測
この例では、sJIAの活性(フレア)および不活性(休止)段階中の患者でバイオマーカーを評価した。分析する血漿試料は、フレアおよび休止の明確なサイクルを経た同じ対象から収集した。この手法を使用して、3つの特定のバイオマーカー、CRP、カルプロテクチン、およびS100A12が、疾患状態の変化に関連する明確な発現パターン、すなわち、フレアが増加し、休止が減少することを示すことが見出された(図4)。したがって、これらのようなバイオマーカーは、例えば、sJIAを有する対象をモニタリングするための方法および/または活性フレアの開始を予測するための方法で使用し得る。
【0086】
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【0087】
他の実施形態および使用は、本開示および先行例に照らして当業者に明らかであろう。さらに、多くの変更および改変を本開示の実施形態に対して行うことができ、本開示から逸脱することなくそのような変更および改変を行うことができることを当業者ならば理解するであろう。したがって、添付の特許請求の範囲は、本開示の真意および範囲内に含まれる全てのそのような等価の変形物を包含することを意図している。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
対象における全身型若年性特発性関節炎(sJIA)を診断する方法であって、(i)前記対象から得られた生体試料中の複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、前記複数のバイオマーカーがカルプロテクチンおよびフォリスタチン関連タンパク質1(FSTL-1)を含む、工程と、(ii)前記複数のバイオマーカーの各々のレベルを対応する所定の診断閾値と比較し、それによって前記対象におけるsJIAの診断を提供する工程と、を含む、方法。
(項目2)
前記複数のバイオマーカーが、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記複数のバイオマーカーが、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目1または2に記載の方法。
(項目4)
前記複数のバイオマーカーが3つ以下のバイオマーカーを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記複数のバイオマーカーが4つ以下のバイオマーカーを含む、項目1~3のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記対象においてsJIAの診断と川崎病(KD)の診断とを識別することをさらに含む、項目1~5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記対象においてsJIAの診断と熱性疾患(FI)の診断とを識別することをさらに含む、項目1~6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記生体試料が血液または血漿である、項目1~7のいずれか一項に記載の方法。
(項目9)
各バイオマーカーのレベルを決定する前記工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光アッセイ(IFA)、サンドイッチアッセイ、磁気捕捉アッセイ、微小球捕捉アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、表面増強ラマン分光法(SERS)、フローサイトメトリー、および質量分析からなる群から選択されるアッセイを行うことを含む、項目1~8のいずれか一項に記載の方法。
(項目10)
対象における全身型若年性特発性関節炎(sJIA)、川崎病(KD)、および熱性疾患(FI)の診断を識別する方法であって、(i)前記対象から得られた生体試料中の複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、前記複数のバイオマーカーがカルプロテクチンおよびフォリスタチン関連タンパク質1(FSTL-1)を含む、工程と、(ii)前記複数のバイオマーカーの各々のレベルを対応する所定の診断閾値と比較し、それによって前記対象におけるSJIA、KD、またはFIの診断を提供する工程と、を含む、方法。
(項目11)
前記複数のバイオマーカーが、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記複数のバイオマーカーが、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目10または11記載の方法。
(項目13)
前記複数のバイオマーカーが3つ以下のバイオマーカーを含む、項目10~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記複数のバイオマーカーが4つ以下のバイオマーカーを含む、項目10~12のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記生体試料が血液または血漿である、項目10~14のいずれか一項に記載の方法。(項目16)
各バイオマーカーのレベルを決定する前記工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光アッセイ(IFA)、サンドイッチアッセイ、磁気捕捉アッセイ、微小球捕捉アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、表面増強ラマン分光法(SERS)、フローサイトメトリー、および質量分析からなる群から選択されるアッセイを行うことを含む、項目10~15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
SJIA、KD、またはFIの診断を有することが疑われる対象における治療の必要性についての医師による決定を容易にする方法であって、(i)前記対象から得られた生体試料中の複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、前記複数のバイオマーカーがカルプロテクチンおよびフォリスタチン関連タンパク質1(FSTL-1)を含む、工程と、(ii)前記対象におけるSJIA、KD、およびFIの診断を識別するために、前記複数のバイオマーカーの各々のレベルを対応する所定の診断閾値と比較し、それによってSJIA、KD、またはFIの治療を前記対象に行う必要性についての医師による決定を容易にする工程と、を含む、方法。
(項目18)
前記複数のバイオマーカーが、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目17に記載の方法。
(項目19)
前記複数のバイオマーカーが、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目17または18記載の方法。
(項目20)
前記複数のバイオマーカーが3つ以下のバイオマーカーを含む、項目17~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記複数のバイオマーカーが4つ以下のバイオマーカーを含む、項目17~19のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記生体試料が血液または血漿である、項目17~21のいずれか一項に記載の方法。(項目23)
各バイオマーカーのレベルを決定する前記工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光アッセイ(IFA)、サンドイッチアッセイ、磁気捕捉アッセイ、微小球捕捉アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、表面増強ラマン分光法(SERS)、フローサイトメトリー、および質量分析からなる群から選択されるアッセイを行うことを含む、項目17~22のいずれか一項に記載の方法。
(項目24)
前記SJIAの治療が、非ステロイド系抗炎症薬(NSAID)、疾患修飾性抗リウマチ薬(DMARD)、生物学的薬剤、ならびに関節内および経口ステロイドからなる群から選択される1つ以上の薬剤を含む、項目17~23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記KDの治療が免疫グロブリン静注(IVIG)を含む、項目17~24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
対象におけるsJIAを診断するためのキットであって、前記キットは、対象から得られた生体試料中の複数のバイオマーカーのレベルを決定するのに有効な結合作用物質を含み、前記複数のバイオマーカーがカルプロテクチンおよびフォリスタチン関連タンパク質1(FSTL-1)を含む、キット。
(項目27)
前記複数のバイオマーカーが、C反応性タンパク質(CRP)、血清アミロイドP(SAP)、およびS100A12のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目26に記載のキット。
(項目28)
前記複数のバイオマーカーが、アルファ-2マクログロブリン(A2M)、血清アミロイドA(SAA)、およびアポリポタンパク質A1のうちの少なくとも1つをさらに含む、項目26または27に記載のキット。
(項目29)
前記複数のバイオマーカーが3つ以下のバイオマーカーを含む、項目26~28のいずれか一項に記載のキット。
(項目30)
前記複数のバイオマーカーが4つ以下のバイオマーカーを含む、項目26~29のいずれか一項に記載のキット。
(項目31)
前記結合作用物質が抗体またはその結合断片である、項目26~30のいずれか一項に記載のキット。
(項目32)
前記キットが、前記対象においてsJIAの診断と川崎病(KD)の診断とを識別するのに有効である、項目26~31のいずれか一項に記載のキット。
(項目33)
前記キットが、前記対象においてsJIAの診断と熱性疾患(FI)の診断とを識別するのに有効である、項目26~32のいずれか一項に記載のキット。
(項目34)
前記キットがラテラルフロー装置を含む、項目26~33のいずれか一項に記載のキット。
(項目35)
前記キットが、複数のバイオマーカーに特異的な抗体またはその抗原結合断片を含むラテラルフロー装置を含む、項目26~34のいずれか一項に記載のキット。
(項目36)
治療の必要性についての医師による決定を容易にするために、対象におけるSJIAの進行をモニタリングする方法であって、(i)前記対象から生体試料を得る工程と、(ii)前記生体試料において、複数のバイオマーカーの各々のレベルを決定する工程であって、前記複数のバイオマーカーが少なくともS100A12、CRP、およびカルプロテクチンを含む、工程と、(iii)前記複数のバイオマーカーの各々のレベルを対応する所定の診断閾値と比較し、それによって前記対象におけるSJIAをモニタリングする工程と、を含む、方法。
(項目37)
前記対象におけるS100A12、CRP、およびカルプロテクチンのレベルの、それらの所定の診断閾値に対する上昇が、休止SJIA段階から活性SJIAフレア段階への進行を予測する、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記生体試料が血液または血漿である、項目36または37に記載の方法。
(項目39)
各バイオマーカーのレベルを決定する前記工程が、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、免疫蛍光アッセイ(IFA)、サンドイッチアッセイ、磁気捕捉アッセイ、微小球捕捉アッセイ、ウェスタンブロットアッセイ、表面増強ラマン分光法(SERS)、フローサイトメトリー、および質量分析からなる群から選択されるアッセイを行うことを含む、項目36~38のいずれか一項に記載の方法。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図2A
図2B
図2C
図2D
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図3-4】
図3-5】
図4
【外国語明細書】