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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120035
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】ソケット
(51)【国際特許分類】
   A44B 17/00 20060101AFI20240827BHJP
【FI】
A44B17/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099122
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2022531242の分割
【原出願日】2020-06-19
(71)【出願人】
【識別番号】000006828
【氏名又は名称】YKK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】北野 勝志
(57)【要約】      (修正有)
【課題】弾性係合部が外力を受け難い実質的に1ピース構成のソケットを提供する。
【解決手段】本発明は、スタッドと係合及び脱係合可能な金属製のソケットに係る。ソケットは、底部と、周側部と、複数の弾性係合部と、開口を規定するカバー部とを備える。複数の弾性係合部各々の一部は、カバー部の半径方向内側端よりも半径方向外側にあり、複数の弾性係合部各々の一部以外の他部はカバー部の半径方向内側端よりも半径方向内側にある。複数の弾性係合部は、基部と、膨出部とを備える。前記一部は基部を含む。底部は、複数の弾性係合部と同数の切開部を含む。基部は、底部における切開部の半径方向における外側端又は内側端から軸方向一方に立ち上がる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スタッド(60)と係合及び脱係合可能な金属製のソケット(1、1A、101)であって、
円形の底部(10、110)と、前記底部(10、110)の半径方向外側端部から軸方向一方に連続して延びる周側部(30、130)と、前記底部(10、110)から連続して延びる複数の弾性係合部(20、20A、120)と、前記周側部(30、130)から半径方向内側に連続して延び、半径方向内側端(41、141)にて前記スタッド(60)の係合凸部(62)を受け入れる開口(42、142)を規定するカバー部(40、140)とを備え、
前記複数の弾性係合部(20、20A、120)各々の一部は、前記カバー部(40、140)の前記半径方向内側端(41、141)よりも半径方向外側にあり、前記複数の弾性係合部(20、20A、120)各々の前記一部以外の他部は前記カバー部(40、140)の前記半径方向内側端(41、141)よりも半径方向内側にあり、
前記複数の弾性係合部(20、20A、120)は、前記底部(10、110)に繋がる基部(20a、20Aa、120a)と、前記基部(20a、20Aa、120a)から前記軸方向一方に延び、半径方向内側に膨出する膨出部(20b、20Ab、120b)とを備え、
前記複数の弾性係合部(20、20A、120)各々の前記一部は、前記基部(20a、20Aa、120a)を含み、
前記底部(10、110)は、前記複数の弾性係合部(20、20A、120)と同数の切開部(14、114)を含み、
前記基部(20a、20Aa、120a)は、前記底部(10、110)における前記切開部(14、114)の半径方向における外側端又は内側端から前記軸方向一方に立ち上がることを特徴とするソケット。
【請求項2】
前記底部(10、110)、前記周側部(30、130)、前記複数の弾性係合部(20、20A、120)、及び前記カバー部(40、140)は単一の金属部材から形成される請求項1に記載のソケット。
【請求項3】
前記膨出部(20b、20Ab、120b)は、前記膨出部(20b、20Ab、120b)において最も半径方向内側にある係合端(20c、20Ac、120c)と、前記基部(20a、20Aa、120a)とは反対側の端である先端(20d、20Ad、120d)とを含み、
前記複数の弾性係合部(20、20A、120)各々の前記一部は、前記先端(20d、20Ad、120d)を含み、
前記複数の弾性係合部(20、20A、120)各々の前記他部は、前記係合端(20c、20Ac、120c)を含む請求項1又は2に記載のソケット。
【請求項4】
前記複数の弾性係合部(20A)の前記基部(20Aa)は厚さを部分的に圧縮した薄肉部(21)を含む請求項1に記載のソケット。
【請求項5】
前記複数の弾性係合部(20、20A、120)は、前記底部(10、110)を部分的に切開しかつ曲げて形成され、前記切開部(14、114)は、前記複数の弾性係合部(20、20A、120)各々に対応する請求項1に記載のソケット。
【請求項6】
前記底部(10)は、周方向に隣り合う2つの前記切開部(14)間それぞれに設けたリブ部(15)を含む請求項1に記載のソケット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はソケットに関し、特にスタッドと係合及び脱係合な金属製のソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
スナップボタンは、相互に係合及び脱係合可能なソケット(雌スナップボタン)とスタッド(雄スナップボタン)からなり、衣類、鞄類等に多用されている。金属製のソケットとしては、ソケットシェルとリングの2部品を組み合わせた2部品構成が一般的であるが、次のような1ピース構成の金属製のソケットも知られている。すなわち、特許第4989520号公報(特許文献1)及び特許第5959515号公報(特許文献2)は、1枚の金属製の板を絞り加工等して形成される1ピース構成のソケットを開示している。これらのソケットには、複数の弾性係合部(スプリング部)がソケット本体の一部を切開しかつ曲げて形成される。これら弾性係合部は、ソケットに対してスタッドを係合又は脱係合する際に、スタッドの係合凸部によって半径方向外側に一時的に撓む部分である。1ピース構成の金属製のソケットは、2部品構成のものに比べて材料費や組立加工費を削減できるといった利点がある。
【0003】
しかしながら、特許文献1及び2に記載されるソケットでは、弾性係合部の特に突端部が実質的に外部に露出しているため、ソケットの保管時、輸送時、衣服等の生地への取付時、使用時等において弾性係合部が外部の物体等に接して外力を受け易く、これにより変形して撓み性が損なわれるおそれがある。
【0004】
このような特許文献1及び2のソケットに対して、実開昭59-174015号公報(特許文献3)に記載されるソケットは、弾性係合部の一部がカバー部材によって覆われ、弾性係合部が外力を受け難い構成となる。しかしながら、特許文献3のソケットは、スタット本体とカバー部材との2部品を組み合わせた2部品構成であるため、1ピース構成のソケットに比べて材料費や組立加工費が嵩むという問題がある。更に、2部品構成では経時的に各部品が分解したり、部品間の隙間に異物が混入するおそれもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4989520号公報
【特許文献2】特許第5959515号公報
【特許文献3】実開昭59-174015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従って、本発明は、弾性係合部が外力を受け難い実質的に1ピース構成のソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明によれば、スタッドと係合及び脱係合可能な金属製のソケットであって、円形の底部と、前記底部の半径方向外側端部から軸方向一方に連続して延びる周側部と、前記底部から連続して延びる複数の弾性係合部と、前記周側部から半径方向内側に連続して延び、半径方向内側端にて前記スタッドの係合凸部を受け入れる開口を規定するカバー部とを備え、前記複数の弾性係合部各々の一部は、前記カバー部の前記半径方向内側端よりも半径方向外側にあり、前記複数の弾性係合部各々の前記一部以外の他部は前記カバー部の前記半径方向内側端よりも半径方向内側にあることを特徴とするソケットが提供される。
【0008】
本発明によれば、各弾性係合部の一部がカバー部の半径方向内側端よりも半径方向外側にあり、カバー部によって実質的に覆われるため、各弾性係合部が外力を受け難くなる。また、本発明において、「連続して延び(る)」とは、ある部位(例えば底部)の金属材料がそのまま連続して延びて別の部位(例えば各弾性係合部や周側部)を形成することを意味し、従って、ある部位に別個の部材を付加等することにより別の部位が形成されることを意味しない。そのため、本発明では、底部をなす金属材料と周側部及び各弾性係合部をなす金属材料とは連続かつ一体であり、底部に別の部材を付加して周側部や各弾性係合部が形成されるものではない。同様に、周側部をなす金属材料とカバー部をなす金属材料とは連続かつ一体であり、周側部に別の部材を付加してカバー部が形成されるものではない。また、本発明において、前記底部、前記周側部、前記複数の弾性係合部、及び前記カバー部は単一の金属部品から形成される。そのため、ソケット自体は1ピース構成であり、ソケット自体は2つ以上の部品が組み合わされて構成されるものではない。
【0009】
本発明において、ソケットは、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、ステンレス鋼等の金属から形成される。
【0010】
本発明の一実施形態において、前記複数の弾性係合部は、前記底部に繋がる基部と、基部から前記軸方向一方に延び、半径方向内側に膨出する膨出部とを備え、前記膨出部は、前記膨出部において最も半径方向内側にある係合端と、前記基部とは反対側の端である先端とを含み、前記複数の弾性係合部各々の前記一部は、前記先端を含み、前記複数の弾性係合部各々の前記他部は、前記係合端を含む。本実施形態では、各弾性係合部の先端はカバー部の半径方向内側端よりも半径方向外側にあってカバー部により実質的に覆われる。これにより、各弾性係合部の先端が外部の物体等から外力を受けるような事態を低減するか又はなくすことができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、前記複数の弾性係合部各々の前記一部は、前記基部を含む。本実施形態では、各弾性係合部の基部はカバー部の半径方向内側端よりも半径方向外側にあってカバー部により実質的に覆われる。これにより、各弾性係合部の基部が外部の物体等から外力を受けるような事態を低減するか又はなくすことができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、前記複数の弾性係合部の前記基部は厚さを部分的に圧縮した薄肉部を含む。各弾性係合部の基部に薄肉部を加工することにより、基部の金属材料が薄肉部で硬化し、基部の強度を高めることができ、これにより各弾性係合部の撓み性を中長期的に維持することが可能となる。
【0013】
本発明の一実施形態において、前記複数の弾性係合部は、前記底部を部分的に切開しかつ曲げて形成され、前記底部は、前記複数の弾性係合部各々に対応する切開部を含む。また、別の一実施形態において、前記底部は、周方向に隣り合う2つの前記切開部間それぞれに設けたリブ部を含む。この本実施形態では、リブ部により、切開部を設けたことによる底部の強度の低下を補うことができる。また、ソケットが生地に取り付けられた状態においてリブ部が生地に食い込むため、中長期的にソケットが取付部材の軸部に対して回動するような事態を低減するか又はなくすことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、各弾性係合部の一部がカバー部の半径方向内側端よりも半径方向外側にあり、カバー部によって実質的に覆われるため、各弾性係合部が外力を受け難くなる。また、底部をなす金属材料と周側部及び各弾性係合部をなす金属材料とは連続かつ一体であり、同様に、周側部をなす金属材料とカバー部をなす金属材料とは連続かつ一体であるため、ソケット自体は、底部、周側部、複数の弾性係合部及びカバー部が単一の金属部品から形成された1ピース構成である。これにより、2部品構成のソケットに比べて材料費や組立加工費を削減しつつ、弾性係合部の撓み性が損なわれるような事態を低減するか又はなくすことができる。更に、2部品構成のソケットのように経時的に各部品が分解したり、部品間の隙間に異物が混入するようなおそれもない。本発明では、特にカバー部を含めた1ピース構成としたため、カバー部で各弾性係合部を外力から保護しつつ、外力を受け易いカバー部が周側部から分離するようなことがなく、非常に有益である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係るソケットの上面図である。
図2図2図1のソケットの底面図である。
図3図3図1のソケットの側面図である。
図4図4は、図1のソケットのA-A線断面矢視図である。
図5図5は、図1のA-A線に沿って破断したソケットの斜視図である。
図6図6は、ソケットを取付部材により衣服等の生地に取り付けた状態を示す断面図である。
図7図7は、スタッド(雄スナップボタン)を取付部材により生地に取り付けた状態を示す断面図である。
図8図8は、ソケットとスタッドの連結状態を示す断面図である。
図9図9は、第1実施形態のソケットの変形例を示す底面図である。
図10図10は、図9のソケットの、図4と同様の断面矢視図である。
図11図11は、図9のソケットの、図5と同様の破断斜視図である。
図12図12は、本発明の第2実施形態に係るソケットの上面図である。
図13図13図12のソケットの底面図である。
図14図14は、図12のソケットのB-B線断面矢視図である。
図15図15は、図12のB-B線に沿って破断したソケットの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のいくつかの実施形態を図面に基づいて説明するが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲及び均等の範囲内で適宜変更等が可能である。図1図2及び図3は、本発明の第1実施形態に係るソケット(雌スナップボタン)1の上面図、底面図及び側面図である。図4は、図1のソケット1のA-A線断面矢視図である。図5は、図1のA-A線に沿って破断したソケット1の斜視図である。以下のソケット1(1A、101)の説明において、上下方向は、別途指定しない限り、図4図10及び図14の紙面に基づくものとする。ソケット1は、1枚の金属製の板を絞り加工等して形成される1ピース構成であり、2つ以上の部品が組み合わされて構成されるものではない。ソケット1は、円形板状の底部10と、底部10から連続して上方に延びる一例として5つの弾性係合部20と、底部10の半径方向外側端から上方に連続して延びる周側部30と、周側部30から連続して上方かつ半径方向内側に湾曲状に延びるカバー部40とを備える。各弾性係合部20は、底部10を部分的に切開して上方に曲げて形成される。ソケット1の底部10上でかつ各弾性係合部20の半径方向内側の空間(2)は、図7及び図8に示すスタッド60の係合凸部62を着脱自在に受け入れる係合空間2である。周側部30は、底部10の半径方向外側端から上方に、ソケット1の軸線とほぼ平行に延びる。本明細書において、ソケット1の軸方向は上下方向と実質的に同義である。カバー部40は、その半径方向内側端41にて、スタッド60(図7等参照)の係合凸部62をソケット1の係合空間2に受け入れるための開口42を規定する。
【0017】
底部10は、中央に円形の底部開口11を有する。底部開口11は、ソケット1を衣服等の生地f1(図6等参照)に取り付ける際に、取付部材50(図6等参照)の軸部52を通すためのものである。底部開口11は上方の開口42よりも小さい。底部10における底部開口11の周囲には、下方に窪む環状凹部12と、環状凹部12の半径方向内側に隣接して上方に隆起する環状隆起部13とが設けられる。環状隆起部13の半径方向内側端が底部開口11を規定する。環状隆起部13は、その上下方向中間部に、径が段状にわずかに縮小する段部13aを有する。
【0018】
底部10における環状凹部12より半径方向外側の領域には、各弾性係合部20に対応する切開部14が円周方向に72度間隔で5つ存在する。各切開部14は底部10を上下に貫通する開口である。各切開部14は、弾性係合部20から切り離された略半長円形状の切断縁14aと、切断縁14aの2つの半径方向外側端間において弾性係合部20に連結する連結端辺14bとから規定される。連結端辺14bは、底部10の半径方向外側端よりも半径方向内側に位置する。各弾性係合部20は、各切開部14の連結端辺14bから上方に約90度近くまで折り曲げられ、底部10に対して立ち上げられる。各切開部14の連結端辺14bは各弾性係合部20の基端辺14bでもある。
【0019】
図2を参照して、切断縁14aは、連結端辺14bの両端から半径方向内側へとほぼ平行に直線状に延びる2つの直線縁14abと、2つの直線縁14abの半径方向内側端から更に半径方向内側に略半円形状にて突き出る半円縁14aaとからなる。半円縁14aaの中間点が切断縁14aにおいて最も半径方向内側の端である。切断縁14aの半径方向内側端及びその付近すなわち半円縁14aaの中間点及びその付近は、底部10における環状凹部12の領域にわずかに入る。この環状凹部12の領域に入る半径方向内側端部を除く切開部14は、環状凹部12に対して相対的に上方に隆起する底部10の主領域(底部10における環状凹部12、環状隆起部13及び後述するリブ部15を除く領域)に形成される。なお、環状隆起部13の段部13aの上下面は底部10の主領域の上下面と同じレベル位置であり、環状隆起部13の上端は底部10の主領域よりもわずかに上方に突き出る。
【0020】
底部10における円周方向に隣り合う2つの切開部14間の領域には、半径方向に細長く、下方に窪むリブ部15がそれぞれ設けられる。各リブ部15は底部10の下面側に凸となるとも言える。各リブ部15の半径方向内側端は環状凹部12に繋がる。各リブ部15の半径方向外側端は、各切開部14の連結端辺14bとほぼ同じ半径方向位置にある。各リブ部15が底部10の主領域から下方に窪む程度は、環状凹部12が窪む程度と同じである。リブ部15は切開部14を設けたことによる底部10の強度の低下を補う役割を果たす。
【0021】
各弾性係合部20は、基端辺(連結端辺)14bから上方に延びる基部20aと、基部20aから上方において半径方向内側に突き出るように断面略C字状に曲げられた膨出部20bとを備える。基部20aは、その下端部において基端辺14bから半径方向内側かつ上方へと湾曲し、次いで、上方の膨出部20bへと断面直線状に延びる。また、膨出部20bはその下端から上端(先端)20dへと円周方向に沿う幅が次第に縮小する。弾性係合部20の上端20dは、カバー部40に近接するが、カバー部40には接しない。膨出部20bは、弾性係合部20において最も半径方向内側の端である係合端20cを含む。
【0022】
図4に示す符号Lは、カバー部40の半径方向内側端41を通る、上下方向に沿う仮想線である(図4において左方にのみ示す)。仮想線Lはソケット1の軸線に平行である。図4の仮想線Lは、図2において円形の仮想線Lとして表される。図2の仮想線Lは上方の開口42に合致する。仮想線Lはカバー部40が弾性係合部20を覆う範囲を表すと言える。第1実施形態のソケット1において、初期状態にある弾性係合部20の基部20aと膨出部20bの上下端部とが仮想線Lよりも半径方向外側にあり、これらの部分がカバー部40の半径方向内側端41よりも半径方向外側にある弾性係合部20の、特許請求の範囲における「一部」である。また、膨出部20bの、係合端20cを含む上下方向中間部が仮想線Lよりも半径方向内側にあり、これらの部分がカバー部40の半径方向内側端41よりも半径方向内側にある弾性係合部20の、特許請求の範囲における「他部」である。このように、カバー部40が膨出部20bの上下方向中間部を除く弾性係合部20を覆うため、弾性係合部20が外部の物体等に接して外力を受けるような事態を低減するか又はなくすことができる。また、ソケット1は、特にカバー部40を含めた1ピース構成としたため、カバー部40で各弾性係合部20を外力から保護しつつ、外力を受け易いカバー部40が周側部30から分離するようなことがなく、非常に有益である。
【0023】
図6は、ソケット1を取付部材50により衣服等の生地f1に取り付けた状態を示す断面図である。取付部材50は、略円板状のベース部51と、ベース部51から同心状に突き出る円筒状の軸部52とを備える。軸部52は図6において加締められた状態で示される。取付部材50は、本体50Aとキャップ50Bとの2部品から構成される。本体50Aは軸部52とベースコア51aをなす。キャップ50Bは本体50Aのベースコア51aの半径方向外側端部に対して組み付けられ、キャップ50Bとベースコア51aがベース部51をなす。ソケット1を生地f1に取り付ける場合、図示しないボタン取付機の下方の支持ダイ上に取付部材50を載置し、上方のパンチダイにソケット1を保持させ、取付部材50とソケット1との間に生地f1を配置する。次いでパンチダイを降下させる。これにより、取付部材50の軸部52が生地f1を上方に貫通し、次いでソケット1の底部開口11を上方に通った後、パンチダイで加締められる。加締められた軸部52の末端はソケット1の環状隆起部13の段部13a上に受け止められる。このようにしてソケット1が生地f1に取り付けられる。ソケット1が生地f1に取り付けられた状態においてリブ部15が生地f1に食い込むため、中長期的にソケット1が取付部材50の軸部52に対して回動するような事態を低減するか又はなくすことができる。
【0024】
図7は、ソケット1に対して係合及び脱係合可能なスタッド(雄スナップボタン)60を取付部材70により生地f2に取り付けた状態を示す断面図である。スタッド60は1枚の金属板を加工してなり、ベース部61と、ベース部61から突き出る環状の係合凸部62とを備える。取付部材70は円板状のベース部71と、ベース部71から突き出る円筒状の軸部72とを備える。軸部72は図7において加締められた状態で示される。スタッド60のベース部61には、取付部材70の軸部72を通すための底部開口63が設けられる。係合凸部62は、突端付近にて外径が拡大する大径部62aと、大径部62aからベース部61側へと外径が縮小する括れ部62bとを含む。大径部62aの直径は、ソケット1の開口42の直径よりもわずかに小さく、かつ5つの弾性係合部20それぞれの係合端20cを結ぶ円の直径である係合端径よりもわずかに大きくなるように設定される。括れ部62bの外径はソケット1の係合端径とほぼ同じである。
【0025】
図8は、ソケット1とスタッド60の連結状態を示す断面図である。図8におけるスタッド60は図7とは上下を逆にして示される。ソケット1とスタッド60を連結する際、スタッド60の係合凸部62をソケット1の開口42から係合空間2に挿入する。この時、スタッド60の係合凸部62の大径部62aがソケット1の各弾性係合部20の係合端20cと接しつつ各弾性係合部20を半径方向外側に一時的に撓ませる。そして、大径部62aが係合端20cを越える否や、各弾性係合部20が半径方向内側の初期位置又はその付近に復帰する。これにより、図7に示すようにソケット1とスタッド60とが連結状態となる。この連結状態において、ソケット1の各弾性係合部20の膨出部20bはスタッド60の係合凸部62の括れ部62bに接するか又は近接する。
【0026】
図9は、第1実施形態のソケット1の変形例であるソケット1Aを示す底面図である。図10は、ソケット1Aの、図4と同様の断面矢視図である。図11は、ソケット1Aの、図5と同様の破断斜視図である。ソケット1Aは、以下に述べる5つの弾性係合部20Aの基部20Aaに薄肉部としての窪み21を設けた点以外は、上記したソケット1と実質的に同じ構成である。そのため、弾性係合部20A以外の構成について、同じ参照番号を用いてそれらの説明を省略すると共に、ソケット1について既述した点はソケット1Aについても同様に当てはまる。ソケット1Aの各弾性係合部20Aは、基部20Aaと、基部20Aaから上方において半径方向内側に突き出るように断面略C字状に曲げられた膨出部としての膨出部20Abとを備える。膨出部20Abは弾性係合部20Aにおいて最も半径方向内側の端である係合端20Acを含む。各弾性係合部20Aの基部20Aaには、基部20Aaの半径方向内側を向く面から半径方向外側へと窪む窪み21が設けられる。窪み(薄肉部)21は、基部20Aa及び基部20Aaに隣接する底部10の一部に対してプレスして半径方向に沿う厚さを部分的に圧縮してへこませた部分である。窪み21は、底部10の連結端辺(基端辺14b)付近から基部20Aaの基端辺14bを経て基部20Aaの上下方向ほぼ中間よりわずかに上まで延びる細長い長円形状である。また、窪み21は、基部20Aaの幅方向中央に設けられ、窪み21の幅(ソケット1の円周方向に沿う長さ)は基部20Aaの幅の約1/3である。各弾性係合部20Aの基部20Aa、特にその基端辺14bから基端辺14b付近の底部10にかけて窪み21を加工することにより、窪み21部分の金属材料が硬化し、弾性係合部20Aが半径方向内外に撓む中心部である基端辺14bを含む領域の強度を高めることができ、これにより各弾性係合部20Aの撓み性を中長期的に維持することが可能となる。
【0027】
図12及び図13は、本発明の第2実施形態に係るソケット101の上面図及び底面図である。図14は、図12のソケット1のB-B線断面矢視図である。図15は、図12のB-B線に沿って破断したソケット101の斜視図である。ソケット101は、1枚の金属製の板を絞り加工等して形成される1ピース構成である。ソケット101は、底部110と、底部110から連続して延びる6つの弾性係合部120と、底部110の半径方向外側端から上方に連続して延びる周側部130と、周側部130の上端から半径方向内側に連続して延びるカバー部140とを備える。各弾性係合部120は、底部110を部分的に切開し、半径方向内側に曲げて上方に隆起させて形成される。ソケット101の底部110上でかつ各弾性係合部120の半径方向内側の係合空間102は、図7及び図8に示すスタッド60の係合凸部62を着脱自在に受け入れる係合空間102である。周側部130は、底部110の半径方向外側端から上方に、ソケット101の軸線とほぼ平行に延びる。カバー部140は、その半径方向内側端141にて、スタッド60(図7等参照)の係合凸部62をソケット101の係合空間102に受け入れるための開口142を規定する。
【0028】
底部110は、底部開口113が設けられるほぼ水平な中央底部111と、中央底部111の半径方向外側端と周側部130の下端とを連結する周囲底部112とを含む。中央底部111における底部開口113と中央底部111の半径方向外側端との間には、下方に窪む環状凹部115が設けられる。
【0029】
周囲底部112は、その半径方向内側端から半径方向外側かつ上方へと傾斜する傾斜部112aと、傾斜部112aの上端から上方に凸となるよう湾曲する湾曲部112bと、湾曲部112bの半径方向外側端から半径方向外側に延びて周側部130の下端に繋がる周端部112cとを有する。周囲底部112における傾斜部112a及び湾曲部112bには、各弾性係合部120に対応する切開部114が円周方向に60度間隔で6つ存在する。各切開部114は周囲底部112を上下に貫通する開口である。各切開部114は、弾性係合部120から切り離された略コ字状の切断縁114aと、切断縁114aの2つの半径方向内側端間において弾性係合部120に連結する連結端辺114bとから規定される。連結端辺114bは、中央底部111と周囲底部112との境界に位置する。各弾性係合部120は、各切開部114の連結端辺114bから半径方向内側に折り曲げられ、周囲底部112に対して半径方向内側かつ上方に隆起する。各切開部114の連結端辺114bは各弾性係合部120の基端辺114bでもある。図13を参照して、切断縁114aは、連結端辺114bの両端から半径方向外側へとほぼ平行に直線状に延びる2つの側縁114abと、2つの側縁114abの半径方向外側端間を繋ぐ、ほぼ円周方向に沿う周縁114aaとからなる。
【0030】
各弾性係合部120は、基端辺(連結端辺)114bから上方に延びる基部120aと、基部120aから上方において半径方向内側に突き出るように断面略C字状に曲げられた膨出部120bとを備える。基部120aは、その下端部において基端辺114bから膨出部120bへと上方かつ半径方向外側へと斜めに断面ほぼ直線状に延びる。各弾性係合部120の円周方向に沿う幅は基端辺114bから上端(膨出部120bの先端)120dまでほぼ一定である。弾性係合部120の上端120dは、カバー部140に近接するが、カバー部140には接しない。膨出部120bは、膨出部120bにおいて最も半径方向内側の端である係合端120cを含む。
【0031】
図14に示す符号L’は、カバー部140の半径方向内側端141を通る、上下方向に沿う仮想線である(図14において左方にのみ示す)。図14の仮想線L’は、図13において円形の仮想線L’として表される。仮想線L’はカバー部140が弾性係合部120を覆う範囲を表すと言える。第2実施形態のソケット101において、初期状態にある弾性係合部120の一部は仮想線L’よりも半径方向外側にあり、前記一部以外の他部は仮想線L’よりも半径方向内側にある。更に詳しくは、膨出部120bの、先端120dを含む上端部と、膨出部120bの下半部における半径方向外側部分と、基部120aの下端部を除く半径方向外側部分とが仮想線L’よりも半径方向外側にある。また、膨出部120bの、係合端120cを含む半径方向内側部分と、基部120aの下端部を含む半径方向内側部分とが仮想線L’よりも半径方向内側にある。このようにカバー部140が弾性係合部120の一部を覆うため、弾性係合部120が外部の物体等に接して外力を受けるような事態を低減するか又はなくすことができる。
【符号の説明】
【0032】
1、1A、101 ソケット
2、102 係合空間
10、110 底部
14、114 切開部
15 リブ部
20、20A、120 弾性係合部
20a、20Aa、120a 基部
20b、20Ab、120b 膨出部
20c、20Ac、120c 係合端
20d、20Ad、120d 膨出部の先端
21 窪み(薄肉部)
30、130 周側部
40、140 カバー部
41、141 カバー部の半径方向内側端
42、142 開口
60 スタッド
図1
図2
図3
図4
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図15