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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120038
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】電極組立体、電池、及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/04 20060101AFI20240827BHJP
   H01M 50/538 20210101ALI20240827BHJP
   H01M 4/02 20060101ALI20240827BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240827BHJP
【FI】
H01M10/04 W
H01M50/538
H01M4/02 Z
H01M4/13
【審査請求】有
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024099182
(22)【出願日】2024-06-19
(62)【分割の表示】P 2022568437の分割
【原出願日】2022-08-18
(31)【優先権主張番号】202110955883.1
(32)【優先日】2021-08-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】110002848
【氏名又は名称】弁理士法人NIP&SBPJ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】▲はお▼ 飛
(57)【要約】      (修正有)
【課題】隣り合うタブ間の電気抵抗の差異を低減し、充電速度および温度上昇が低いという利点を十分に発揮し、電極組立体の過電流能力の向上と温度上昇の低減を図る電極組立体、及びこれを備えた電池を提供する。
【解決手段】電極組立体100は、第1タブ40が設けられた第1極片10と、第2タブ50が設けられた第2極片20と、前記第1極片と前記第2極片との間に設けられた分離膜30と、を備え、第1極片と分離膜と第2極片とが巻回されて電極組立体を形成する。前記第1極片は、第1集電体と、第1集電体の表面に設けられて第1塗布領域を形成する第1活物質層と、を有し、第1タブ及び第3タブ60は第1塗布領域に間隔をあけて設けられ、第1塗布領域を第1部分、第2部分及び第3部分に分け、第1部分、第2部分及び第3部分の長さの割合を1:(0.5-1.5):(0.5-1.5)にする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極組立体であって、
第1タブが設けられた第1極片と、
第2タブが設けられた第2極片と、
前記第1極片と前記第2極片との間に設けられた分離膜と、を備え、
前記第1極片と前記分離膜と前記第2極片とが巻回されて前記電極組立体が形成され、
前記電極組立体は、前記第1極片に設けられた第3タブをさらに含み、
前記第1極片は、第1集電体と、前記第1集電体の表面に設けられて第1塗布領域を形成する第1活物質層と、を有し、第1方向に沿って、前記第1タブと前記第3タブとは、 前記第1塗布領域に間隔をあけて設けられており、前記第1方向は前記電極組立体の巻回方向であり、
前記第1方向に沿って、前記第1タブ及び前記第3タブは、前記第1塗布領域を第1部分、第2部分及び第3部分に分け、前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分の長さの割合は、1:(0.5-1.5):(0.5-1.5)であり、
第3方向に沿って、前記電極組立体の表面における前記第1タブ、前記第2タブ、及び前記第3タブの投影が重ならなく、前記第3方向は、前記電極組立体の厚み方向であり、
前記第3方向に沿って、隣り合うタブ同士は少なくとも2層の前記第1極片または前記第2極片を介することを特徴とする電極組立体。
【請求項2】
前記第1活物質層には、第1溝と第3溝とが間隔をあけて設けられ、前記第1タブは、前記第1溝内に設けられ、前記第3タブは、前記第3溝内に設けられ、前記第1方向に沿って、前記第1活物質層の長さをLとし、前記第1溝と前記第3溝との間の距離をHとすると、|L/2-H|≦100mm、L≧700mmであり、
前記第1溝及び前記第3溝は、いずれも前記第1集電体を露出することを特徴とする、請求項1に記載の電極組立体。
【請求項3】
前記第1方向に直交する第2方向に沿って、前記第1溝は前記第1活物質層を貫通することを特徴とする、請求項2に記載の電極組立体。
【請求項4】
前記第1方向に直交する第2方向に沿って、第1溝の第1エッジは、第1集電体の第1側辺と面一であり、前記第1溝の第2エッジは、前記第1集電体の第2側辺と間隔をあけて設けられることを特徴とする、請求項2に記載の電極組立体。
【請求項5】
前記第1方向に沿って、前記第1タブの側辺と前記第1溝の側辺とは間隔をあけて設けられることを特徴とする、請求項2に記載の電極組立体。
【請求項6】
前記第1方向に沿って、前記第1タブの側辺と前記第1溝の側辺との距離は2~2.5mmであることを特徴とする、請求項5に記載の電極組立体。
【請求項7】
前記第1方向に沿って、前記第1タブの幅は6~8mmであり、前記第1溝121の幅は10~13mmであることを特徴とする、請求項5に記載の電極組立体。
【請求項8】
前記第1タブは、前記第1溝内に設けられ、前記第1集電体と接続される第1セグメントと、前記第1集電体が前記第1セグメントから離れた側に向かって折り曲げられて設けられた第2セグメントとを含むことを特徴とする、請求項2に記載の電極組立体。
【請求項9】
第2方向において、前記第1集電体は、対向配置された第1側辺及び第2側辺を有し、前記第1タブは、第1側辺から突出して設けられ、前記第3タブは、第2側辺から突出して設けられることを特徴とする、請求項1に記載の電極組立体。
【請求項10】
前記第1タブ及び前記第3タブは、前記第1集電体の側面の一部から前記第1集電体よりはみ出して形成されることを特徴とする、請求項1に記載の電極組立体。
【請求項11】
前記第2極片は、第2集電体と、前記第2集電体の表面に設けられて第2塗布領域を形成する第2活物質層とを有し、前記第2タブは、前記第2塗布領域に設けられることを特徴とする、請求項1に記載の電極組立体。
【請求項12】
前記第2タブは、前記第2塗布領域を第4部分と第5部分とに分け、前記第2極片の巻回方向に沿って、前記第4部分と前記第5部分との長さの割合は1:(0.5-1.5)であることを特徴とする、請求項11に記載の電極組立体。
【請求項13】
前記電極組立体は、前記第2塗布領域に設けられ、前記第2タブと間隔をあけて設けられた第4タブをさらに有し、前記第2タブおよび前記第4タブは、前記第2塗布領域を第4部分、第5部分および第6部分とに分け、前記第1方向に沿って、前記第4部分、前記第5部分および前記第6部分の長さの割合は1:(0.5-1.5):(0.5-1.5)であることを特徴とする、請求項11に記載の電極組立体。
【請求項14】
電池であって、
ケースと、請求項1~13のいずれかに記載の電極組立体とを含み、前記電極組立体は、前記ケース内に設けられることを特徴とする電池。
【請求項15】
電気機器であって、
回路素子と、請求項14に記載の電池とを含み、前記回路素子は前記電池と電気的に接続することを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学装置の技術分野に関し、特に、電極組立体及びそれを有する電池並びに電気機器に関する。
【背景技術】
【0002】
5Gの応用にともない、消費者のスマートフォンやタブレットPC等のポータブルエレクトロニクス製品に対する電池性能要求は益々高まっている。従来の電池では、電池および機械全体の温度が高くなるという問題があり、過度に高い温度では電池や電子機器の使用性能が低下してしまう。従来の電池では、両タブ構造を採用しており、電池全体の過電流能力は向上できないため、電池および機器全体の温度上昇はまだ高い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
以上の点に鑑みて、上記課題を解決すべく、電極組立体及びこれを備えた電池並びに電気機器を提案する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本願実施例によれば、第1タブが設けられた第1極片と、第2タブが設けられた第2極片と、前記第1極片と前記第2極片との間に設けられた分離膜と、を備え、前記第1極片と前記分離膜と前記第2極片とが巻回されて前記電極組立体が形成された電極組立体が提供される。前記電極組立体は、前記第1極片に設けられた第3タブをさらに含む。前記第1極片は、第1集電体と、前記第1集電体の表面に設けられ第1塗布領域を形成する第1活物質層と、を有し、第1方向に沿って、前記第1タブと前記第3タブとは、前記第1塗布領域に間隔をあけて設けられている。前記第1方向に沿って、前記第1タブ及び前記第3タブは、前記第1塗布領域を第1部分、第2部分及び第3部分に分け、前記第1部分、前記第2部分及び前記第3部分の長さの割合は、1:(0.5-1.5):(0.5-1.5)であり、好ましくは1:(0.8-1.2):(0.8-1.2)である。第3方向に沿って、前記電極組立体の表面における前記第1タブ、前記第2タブ、及び前記第3タブの投影が重ならなく、前記第3方向は、前記電極組立体の厚み方向であり、前記第3方向に沿って、隣り合うタブ同士は少なくとも2層の前記第1極片または前記第2極片を介する。本願実施例では、前記第1方向は、展開状態における極片の長手方向のことであり、電極組立体の巻回方向でもあり、前記第3方向は、前記電極組立体の厚み方向であり、第3方向は第1方向に垂直である。
【0005】
このように、前記電極組立体は、第1極片に第3タブを増設して電流を分流し、第1タブと第3タブが第1塗布領域を所定の割合で分割することで、隣り合うタブ間の電気抵抗の差異を低減し、充電速度および温度上昇が低いという利点を十分に発揮し、電極組立体の過電流能力の向上と温度上昇の低減を図る。
【0006】
さらに、複数のタブが互いにずらして設けられていることにより、タブの厚みが重なり合うことによる電極組立体の厚みの不均一性の問題を低減でき、複数回の充放電過程における電極組立体の変形の問題を改善する上で有利となる。また、隣り合うタブ同士は少なくとも2層の前記第1極片または前記第2極片を介し、好ましくは4層の極片を介することで、単層の極片への糊付けが多く、極片界面の不整合による循環界面の問題を回避するのに有利である。
【0007】
ある実施例では、前記第1活物質層には、第1溝と第3溝とが間隔をあけて設けられ、前記第1タブは、前記第1溝内に設けられ、前記第3タブは、前記第3溝内に設けられ、前記第1方向に沿って、前記第1活物質層の長さをLとし、前記第1溝と前記第3溝との間の距離をHとすると、|L/2-H|≦100mm、L≧700mmである。このようにすれば、タブ間距離が小さすぎることで短絡が発生する問題を低減できるとともに、第1塗布領域を第1タブと第3タブで所定の割合で分割することも容易になる。前記第1溝及び前記第3溝は、いずれも前記第1集電体を露出する。本願の一態様によれば、上記活物質層の欠失は、集電体を露出させるか、または集電体の表面にコーティングされた他のコーティング層を露出させることができる。
【0008】
ある実施例では、前記第1溝は、第2方向に沿って前記第1活物質層を貫通し、第1溝は、第1極片上にギャップ塗布によって形成され、極片の製造工程の難易度を低減することができる。前記第2方向は、前記第1方向と直交する。第2方向とは、極片展開状態において、極片の幅方向であり、電極組立体が巻回された状態での長手方向とも言える。
【0009】
ある実施例では、第2方向において、第1溝の第1エッジは、第1集電体の第1側辺と面一であり、第1溝の第2エッジは、第1集電体の第2側辺と間隔をあけて設けられているため、活物質層の損失を低減し、電池組立体のエネルギー密度を維持するのに有利である。
【0010】
ある実施例では、タブの活物質への接触の問題を低減させるために、前記第1方向において、前記第1タブの側辺と前記第1溝の側辺とは間隔をあけて設けられる。
【0011】
ある実施例では、前記第1方向において、前記第1タブの側辺と前記第1溝の側辺との距離は2~2.5mmであり、機器の公差限度内で第1タブを装着し、タブの活物質への接触の問題を低減した。
【0012】
ある実施例では、前記第1方向において、前記第1タブの幅は6~8mmであり、前記第1溝の幅は10~13mmであることにより、活物質の損耗過多に起因する電池のエネルギー密度の影響を低減している。
【0013】
ある実施例では、前記第1タブは、前記第1溝内に設けられ、前記第1集電体と接続される第1セグメントと、前記第1集電体が前記第1セグメントから離れた側に向かって折り曲げられて設けられた第2セグメントとを含み、折り曲げられたタブが極片に圧力を加えることで、タブと極片との接続関係の強化し、タブが外力によって極片から離れる問題を低減する。
【0014】
ある実施例では、第2方向において、前記第1集電体は、対向配置された第1側辺及び第2側辺を有し、前記第1タブは、第1側辺から突出して設けられ、前記第3タブは、第2側辺から突出して設けられ、電極組立体の巻回成形後に、第1タブと第3タブとがそれぞれ電極組立体の両端に位置し、第1タブと第3タブとの間の第1方向の距離を短くすることができ、電池の小型化が容易になる。
【0015】
ある実施例では、前記第1タブ及び前記第3タブは、前記第1集電体の側面の一部から前記第1集電体よりはみ出して形成されており、具体的には、第1タブ及び第3タブは、第1集電体を切り抜くことによって形成することができるため、第1活物質層の被覆面積を最大限に保つことができ、電極組立体のエネルギー密度を向上するのに有利である。
【0016】
ある実施例では、前記第2極片は、第2集電体と、前記第2集電体の表面に設けられ第2塗布領域を形成する第2活物質層と、を有し、前記第2タブは、前記第2塗布領域に設けられている。
【0017】
ある実施例では、前記第2タブは、前記第2塗布領域を第4部分と第5部分とに分け、前記第1方向に沿って、前記第4部分と前記第5部分との長さの割合が、1:(0.5-1.5)であり、好ましくは1:(0.8-1.2)であり、隣り合うタブ間における内部抵抗の差異の低減に有利である。
【0018】
ある実施例では、前記電極組立体は、前記第2塗布領域に設けられ、前記第2タブと間隔をあけて設けられた第4タブをさらに有し、前記第2タブおよび前記第4タブは、前記第2塗布領域を第4部分、第5部分および第6部分とに分け、前記第2極片の巻回方向において、前記第4部分、前記第5部分および前記第6部分の長さの割合は、1:(0.5-1.5):(0.5-1.5)であり、好ましくは1:(0.8-1.2):(0.8-1.2)である。このように、電流をさらに分流して、電極組立体の温度上昇を低減することができる。
【0019】
ある実施例では、第1極片は陰極片であり、第2極片は陽極片である。前記第1極片の巻回始め端集電体の対向する両面に第1活物質層を設けて第1極片の巻回始め端を両面領域とし、前記第2極片の巻回始め端集電体の対向する両面に第2活物質層を設けずに第2極片の巻回始め端を箔空領域とすると、リチウム析出の問題の発生を低減する上で有利である。
【0020】
ある実施例では、第1極片及び第2極片は、いずれも巻回始め端を両面領域とし、巻回終わり端を片面領域から空箔領域に移行させる構造として、両極片の活物質のバランスを図り、電極組立体のエネルギー密度を向上させるのに有利である。
【0021】
本願実施例は、ケースと、前記実施例にかかる電極組立体と、を備え、前記電極組立体は、前記ケース内に設けられる電池をさらに提供する。
【0022】
本願実施例は、回路素子と、前記実施例に記載の電池とを備え、前記回路素子は前記電池と電気的に接続する電気機器をさらに提供する。前記電気機器としては、携帯電話、パソコン、モバイル端末などの電子機器があげられるが、これらに限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、一実施例における電極組立体の巻回構造を示す図である。
図2図2は、図1に示した電極組立体における第1極片の展開構造の正面図及び側面図である。
図3図3は、図1に示した電極組立体における第2極片の展開構造の正面図及び側面図である。
図4図4は、図1に示す電極組立体の正面図である。
図5図5は、図1に示す電極組立体における第1極片及び第2極片のタブ取り外し後の極片の両側面の概略構成図である。
図6図6は、一実施形態におけるタブの取り外し後の極片の両側面の概略構成図である。
図7図7は、一実施形態におけるタブと極片との一部の接続構造の模式図である。
図8図8は、一実施形態における第1極片の両側面の概略構成図である。
図9図9は、一実施形態における第2極片の両側面の概略構成図である。
図10図10は、図8及び図9に示す極片を有する電極組立体の巻回構造の模式図である。
図11図11は、図10に示す電極組立体の正面図である。
図12図12は、一実施形態における第1極片の両側面の概略構成図である。
図13図13は、一実施形態における第2極片の両側面の概略構成図である。
図14図14は、図12及び図13に示す極片を有する電極組立体の巻回構造の模式図である。
図15図15は、図14に示す電極組立体の正面図である。
図16図16は、一実施形態における第1極片の両側面の概略構成図である。
図17図17は、一実施形態における第2極片の両側面の概略構成図である。
図18図18は、図16及び図17に示す極片を有する電極組立体の巻回構造の模式図である。
図19図19は、図18に示す電極組立体の正面図である。
図20図20は、比較例における電極組立体の概略構成図である。
図21図21は、図20に示す電極組立体における第1極片の正面図及び側面図である。
図22図22は、図20に示す電極組立体における第2極片の正面図および側面図である。
図23図23は、図20に示す電極組立体の隣り合うタブ間抵抗の検出結果ヒストグラムである。
図24図24は、図1に示す電極組立体の隣り合うタブ間抵抗の検出結果ヒストグラムである。
図25図25は、一実施例における電池の概略構成図である。
図26図26は一実施例における電気機器の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の目的、技術案および利点をより明らかにするために、以下、添付図面及び実施例に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、ここで説明される具体的な実施例は、本発明の説明のためのものであり、本発明を限定するものではないことは言うまでもない。
【0025】
本発明の説明において、「中心」、「縦方向」、「横方向」、「長さ」、「幅」、「厚さ」、「上」、「下」、「前」、「後」、「左」、「右」、「縦(垂直)」、「横(水平)」、「頂」、「底」、「内」、「外」、「時計回り」、「反時計回り」等の用語が示す方位や位置関係は、図面に示す方位や位置関係に基づくものであり、本発明の説明の容易化、簡略化のためのものであり、指す装置や素子が特定の方位、特定の方位に構成及び動作しているわけではなく、本発明を限定するものではない。また、「第1」、「第2」という用語は、説明の目的にのみ使用され、相対的重要性を示す、または暗示する、または示される技術的特徴の数を暗黙的に示すと理解されてはいけない。これにより、「第1」、「第2」が限定された特徴は、1つまたはそれ以上の特徴を明示的または暗示的に含み得る。本発明の説明において、「複数」とは、特に具体的に限定されない限り、2以上を意味する。
【0026】
以下の開示は、本発明の異なる構成を実現するため、多くの異なる実施の形態または例を提供するものである。以下、本発明の開示の簡略化のため、具体的な例の構成及び配置について説明する。もちろん、これらは例示に過ぎず、本発明の目的を限定するものではない。また、本発明は、異なる実施の形態において繰り返して数字やアルファベットを参照しているが、目的を簡単かつ明確化するために繰り返して参照しており、それ自体が議論されている異なる実施の形態や設定間の関係を表すものではない。
【0027】
図1図2図3図4を参照すると、本出願の第1実施形態おいて、電極組立体100は、第1極片10、第2極片20、及び分離膜30を含む。前記第1極片10と前記第2極片20とは極性が逆であり、前記分離膜30は前記第1極片10と前記第2極片20との間に設けられており、前記第1極片10と前記分離膜30と前記第2極片20とが巻回されて前記電極組立体100が形成されている。前記第1極片10には、第1タブ40と第3タブ60とが設けられ、前記第1タブ40、前記第3タブ60及び前記第1極片10は同極性であり、前記第2極片20には、第2タブ50が設けられ、前記第2タブ50及び前記第2極片20は同極性である。本願の電極組立体100は、第3タブ60を並列に接続することで、電極組立体100に流れる電流を分流し、電極組立体100の過電流能力を向上させる。
【0028】
具体的には、再び図2を参照すると、第1極片10は、第1集電体11と、前記第1集電体11の表面に設けられて第1塗布領域を形成する第1活物質層12とを有する。第1方向Aに沿って、前記第1活物質層12は帯状に延設され、前記第1タブ40及び前記第3タブ60は前記第1塗布域に間隔をあけて設けられている。前記第1タブ40及び前記第3タブ60は、前記第1極片10の巻回方向、すなわち電極組立体100の巻回方向に沿って、前記第1塗布領域を第1部分111、第2部分112及び第3部分113に分けている。前記第1部分111、前記第2部分112及び前記第3部分113の長さの割合は、1:(0.5-1.5):(0.5-1.5)であり、好ましくは、1:(0.8-1.2):(0.8-1.2)である。本願の実施例では、前記第1方向Aは、展開状態における極片の長手方向であり、電極組立体100の巻回方向でもある。
【0029】
さらに、再び図3を参照すると、前記第2極片20は、第2集電体21と、前記第2集電体21の表面に設けられて第2塗布領域を形成する第2活物質層22とを有し、前記第2タブ50は、前記第2塗布領域に設けられている。前記第2タブ50は、前記第2塗布領域を第4部分211と第5部分212とに分け、前記第2極片20の巻回方向、すなわち前記電極組立体100の巻回方向に沿って、前記第4部分211と前記第5部分212の長さの割合は、1:(0.5-1.5)であり、好ましくは1:(0.8-1.2)である。
【0030】
このように、前記電極組立体100は、第1極片10に第3タブ60を増設して電流を並列分流し、第1タブ40、第2タブ50及び第3タブ60がそれぞれ第1極片10と第2極片20上の活物質層長さを所定の割合で分割することで、隣り合うタブ間の電気抵抗の差異を低減し、隣り合うタブ間の内部抵抗を略同じにして、充電速度及び温度上昇が低減するという利点を十分に発揮し、電極組立体の過電流能力の向上と、電極組立体の温度上昇の低減とを図っている。
【0031】
図2及び図5を参照すると、前記第1活物質層12には、第1溝121と第3溝122とが間隔をあけて設けられており、前記第1タブ40は、前記第1溝121内に設けられており、前記第3タブ60は、前記第3溝122内に設けられている。前記第1方向Aに沿って、前記第1活物質層12の長さをL、前記第1溝121と前記第3溝122との間の距離をHとすると、|L/2-H|≦100mm、L≧700mmである。このようにすれば、タブ間距離が小さ過ぎることで短絡が発生する問題を低減できるとともに、第1タブ40と第3タブ60とで第1塗布領域を所定の割合で分割することを容易になる。前記第1溝121および前記第3溝122は、前記第1活物質層12が欠失して形成されている。本願の一態様によれば、前記第1活物質層12の欠失は、第1集電体11を露出させるか、または第1集電体11の表面にコーティングされた他のコーティング層を露出させることができる。
【0032】
前記第2活物質層22には、第2溝221が設けられており、前記第2タブ50は、前記第2溝221内に設けられている。前記第2溝221は、前記第1方向Aに沿って、前記第2活物質層22の略中間位置に位置している。前記第2溝221は、前記第2活物質層22が欠失して形成されている。本願の一態様によれば、前記第2活物質層22の欠失は、第2集電体21が露出させるか、または第2集電体21の表面にコーティングされた他のコーティング層を露出させることができる。
【0033】
活物質層の均一性を維持するために、集電体における溝に対応する箇所では、両側の表面の活物質層が共に欠失している。つまり、第1溝121、第2溝221及び第3溝122内の集電体の両側の表面はいずれも活物質層が設けられておらず、一部の空箔領域が形成されている。
【0034】
さらに、第2方向Bにおいて、前記第1溝121の第1エッジ1211は、前記第1集電体11の第1側辺114と面一であり、前記第1溝121の第2エッジ1212は、前記第1集電体11の第2側辺115と間隔をあけて設けられているため、活物質層の損失を低減し、電池組立体のエネルギー密度を維持するのに有利である。前記第2方向Bは、前記第1方向Aと直交する。前記第2方向Bとは、極片展開状態において、極片の幅方向であり、電極組立体100が巻回された状態での長手方向とも言える。前記第3溝122および前記第2溝221の構造は、前記第1溝121の構造と略同じであるため、説明を省略する。
【0035】
第1極片10および第2極片20の製造工程において、活物質層を集電体の表面に塗布した後、活物質層の対応する箇所において活物質の一部を化学試薬により洗浄し、集電体を露出させることにより前記第1溝121、第2溝221および第3溝122を得ることができる。また、活物質層を集電体に塗布する前に、対応する箇所にテープを貼り付け、集電体表面に活物質層を塗布した後に、テープを引き剥がして集電体を露出させることによって前記第1溝121、第2溝221及び第3溝122を得ることができる。
【0036】
図6を参照すると、本願の一実施例において、第2方向Bに沿って、前記第1溝121は前記第1活物質層12を貫通している。第1溝121は、第1極片10上にギャップ塗布によって形成することができ、即ち、集電体の表面に予め定められた手順に従って活物質層を間欠的に塗布して第1溝121や第3溝122等を形成し、極片の製造工程の難易度を低減することができる。
【0037】
図2及び図3を再度参照すると、前記第1方向Aに沿って、前記第1タブ40の側辺と前記第1溝121の側辺とは間隔をあけて設けることにより、タブが活物質に接触する問題を低減する。具体的には、前記第1タブ40の側辺と前記第1溝121の側辺との距離が2~2.5mmであり、機器の公差限度内で第1タブ40が装着し、タブが活物質に接触する問題が低減される。本願の実施例では、前記第1方向Aにおいて、前記第1タブ40の幅は6~8mmであり、前記第1溝121の幅は10~13mmであることにより、活物質の損耗過多に起因する電池のエネルギー密度の影響を低減している。前記第2タブ50及び第3タブ60の寸法は第1タブ40と略同一であり、前記第2溝221及び前記第3溝122の寸法は前記第1溝121の寸法と略同一である。
【0038】
再び図4を参照すると、第1実施例では、第1極片10は陰極片であり、第2極片20は陽極片であり、電極組立体100が巻回成形されたとき、第1タブ40、第2タブ50及び第3タブ60は電極組立体100の同一端に位置し、第2タブ50は第1タブ40及び第3タブ60の間に間隔をあけて設けられている。
【0039】
さらに、第3方向Cに沿って、前記電極組立体100の表面における前記第1タブ40、前記第2タブ50、及び前記第3タブ60の投影が重ならない。前記第3方向Cは、前記第1方向Aと直交する。本願の実施例では、前記第3方向Cが、電極組立体100の厚み方向であり、複数のタブが互いずらして設けられていることで、タブの厚みが重なり合うことによる電極組立体の厚みの不均一の問題を低減でき、複数回の充放電過程における電極組立体の変形の問題を改善する上で有利となる。前記第3方向Cにおいて、隣り合うタブ同士は少なくとも2層の前記第1極片10または前記第2極片20を介し、好ましくは4層の極片を介することで、単層の極片への糊付けが多く、極片界面の不整合による循環界面の問題を回避するのに有利である。
【0040】
図2および図7を参照すると、さらに、前記第1タブ40は、前記第1溝121内に設けられ、前記第1集電体11が接続される第1セグメント41と、前記第1集電体11が前記第1セグメント41から離れた側に向かって折り曲げられて設けられた第2セグメント42とを備え、折り曲げられたタブが極片に圧力を加えることで、タブと極片との接続関係の強化し、タブが外力によって極片から離れる問題を低減する。
【0041】
本願のある実施例では、前記第1タブ40及び前記第3タブ60は、前記第1集電体11の側面の一部から前記第1集電体11よりはみ出して形成されてもよい。前記第2タブ50は、前記第2集電体21の側面の一部から前記第2集電体21よりはみ出して形成されていてもよい。具体的には、第1タブ40及び第3タブ60は第1集電体11を切り抜くことにより形成し、第2タブ50は第2集電体21を切り抜くことにより形成することができ、これにより、第1活物質層12及び第2活物質層22の被覆面積を最大限に保つことができ、電極組立体100のエネルギー密度を向上するのに有利である。
【0042】
図8図9図10及び図11を参照すると、第2実施例の電極組立体200は、第1実施例の電極組立体100とほぼ同様であり、第2実施例では、第1極片10が陽極片であり、対応する第1タブ40及び第3タブ60が陽タブであり、第2極片20が陰極片であり、対応する第2タブ50が陰タブである点が異なる。電極組立体200が巻回成形された後、第1タブ40、第2タブ50及び第3タブ60は、電極組立体200の同一端に位置し、第2タブ50は、第1タブ40及び第3タブ60の間に間隔をあけて設けられる。
【0043】
図12図13図14図15を参照すると、第3実施例の電極組立体300は、第1実施例の電極組立体100とほぼ同様であるが、第3実施例において、第2方向Bに沿って、前記第1タブ40は前記第1集電体11の第1側辺114から突出して設けられている点と、前記第3タブ60は前記第1集電体11の第2側辺115から突出して設けられている点と、前記第2タブ50は、第2極片20における設置方向が前記第1タブと同じである点と、が異なる。電極組立体300が巻回成形された後、第2タブ50と第1タブ40とが電極組立体300の同一端に位置し、第1タブ40と第3タブ60とが電極組立体300の対向両端にそれぞれ位置し、第1タブ40と第3タブ60との間の第1方向Aの距離が短くすることができ、電池の小型化が容易になる。
【0044】
図16図17図18及び図19を参照すると、第4実施例の電極組立体400は、第1実施例の電極組立体100とほぼ同様であるが、第4実施例において、第2塗布領域に設けられ、第2タブ50と間隔をあけて設けられた第4タブ70をさらに備える点で異なる。前記第2タブ50及び前記第4タブ70は、前記第2塗布領域を第4部分211、第5部分212及び第6部分213に分け、前記第2極片の巻回方向に沿って、前記第4部分211、前記第5部分212及び前記第6部分213の長さの割合は、1:(0.5-1.5):(0.5-1.5)であり、好ましくは1:(0.8-1.2):(0.8-1.2)である。このように、電流をさらに分流して、電極組立体400の温度上昇を低減することができる。
【0045】
電極組立体400が巻回成形された後、第1タブ40、第2タブ50、第3タブ60及び第4タブ70は、電極組立体400の同一端に位置し、第2タブ50及び第4タブ70は、前記第1タブ40及び前記第3タブ60の間に間隔をあけて設けられる。
【0046】
本願のある実施例において、第1極片10は陰極片であり、第2極片20は陽極片である。前記第1極片10の巻回始め端集電体の対向する両面に第1活物質層12を設けて、第1極片10の巻回始め端に両面領域を形成する。前記第2極片20の巻回始め端集電体の対向する両面には第2活物質層22を設けず、第2極片20の巻回始め端に空箔領域を形成することで、電極組立体内部のリチウム析出の問題の発生を低減するのに有利である。
【0047】
本願のある実施例において、第1極片10及び第2極片20の巻回始め端は両面領域とし、巻回終わり端を片面領域から空箔領域に移行させる構造として、両極片の活物質のバランスを図り、電極組立体のエネルギー密度を向上させるのに有利である。
【0048】
図20図21および図22を参照すると、第1比較例では、電極組立体100’が第1実施例の電極組立体100とほぼ同様であるが、第1比較例では、第1タブ40が第1極片10の巻回始め端の空箔領域に設けられ、第3タブ60が第1極片10の第1塗布領域に設けられ、第1タブ40と第3タブ60とが第1塗布領域を所定の割合で分割していない点で異なる。図23を結合してみると、電極組立体100’は、巻回成形後、隣り合うタブ間の内部抵抗が大きく異なっていることが分かる。図24を参照すると、第1実施例では、第1比較例に比べて、電極組立体100を巻回成形した後、隣り合うタブ間の内部抵抗の差異が顕著に小さくなっている。
【0049】
以下の表内容は、第1実施例の電極組立体100と第1比較例の電極組立体100’の同じ充電方式での充電と温度上昇データの試験結果である。
【0050】
【表1】
【0051】
表1のデータから分かるように、第1実施例の電極組立体100における30min内での充電速度は、第1比較例に比べて3.2%向上しているため、第1実施例の電極組立体100は、第1タブ40及び第3タブ60を所定の割合で第1塗布領域に設けることにより、隣り合うタブ間の内部抵抗の差異を低減し、電極組立体100の過電流能力を効果的に高め、電極組立体100の充電速度を向上させることができることが証明された。
【0052】
【表2】
【0053】
表2のデータから分かるように、第1実施例の電極組立体100の温度上昇データは、第1比較例よりも4.2℃低くなっており、第1実施例の電極組立体100は、第1タブ40及び第3タブ60を所定の割合で第1塗布領域に設けることにより、隣り合うタブ間の内部抵抗の差異を低減し、効果的に電極組立体100の温度上昇を低減し、電極組立体100の安全性を向上させることができることが証明されている。
【0054】
図25を参照すると、本願実施例によれば、ケース501と、上記いずれかの実施例に記載されている電極組立体とを含み、上記電極組立体は上記ケース501内に設けられている電池500をさらに提供する。
【0055】
図26を参照すると、本願実施例によれば、回路素子601と、前記実施例における電池500とを含み、前記回路素子601は前記電池500と電気的に接続する電気機器600をさらに提供する。
【0056】
この電気機器600は、携帯電話、パソコン、モバイル端末などの電子機器が挙げられるが、これらに限られない。本発明は、上述の例示的な実施形態の詳細に限定されず、本発明の精神または本質的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形態で実施できることは当業者には明らかである。したがって、各実施形態は、本発明を制限するものではなく、例示と見なされるべきであり、本発明の範囲は、上記の説明により限定されることではなく、特許請求の範囲によって定義される。なお、特許請求の同等要素の意味および範囲におけるすべての変更は、本発明に含まれる。
【0057】
上記の各実施例は、ただ本発明の技術的解決策を説明するためのものであり、限定することを意図するものではなく、好ましい実施例を参照して、本発明について詳細に説明しているが、当業者は、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、本発明の技術的解決策を修正または同等に置換できることを理解すべきである。
【符号の説明】
【0058】
電極組立体 100、200、300、400、100’
第1極片 10
第1集電体 11
第1部分 111
第2部分 112
第3部分 113
第1側辺 114
第2側辺 115
第1活物質層 12
第1溝 121
第1エッジ 1211
第2エッジ 1212
第3溝 122
第2極片 20
第2集電体 21
第4部分 211
第5部分 212
第6部分 213
第2活物質層 22
第2溝 221
分離膜 30
第1タブ 40
第1セグメント 41
第2セグメント 42
第2タブ 50
第3タブ 60
第4タブ 70
電池 500
ケース 501
電気機器 600
回路素子 601
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26