(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120079
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】固体電池の界面層及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 10/058 20100101AFI20240827BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20240827BHJP
H01M 4/13 20100101ALI20240827BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240827BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240827BHJP
H01M 10/054 20100101ALN20240827BHJP
【FI】
H01M10/058
H01M10/0562
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M10/054
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024102485
(22)【出願日】2024-06-26
(62)【分割の表示】P 2022169427の分割
【原出願日】2015-10-28
(31)【優先権主張番号】62/131,955
(32)【優先日】2015-03-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/069,748
(32)【優先日】2014-10-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520159592
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ メリーランド, カレッジ パーク
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100152489
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 美樹
(72)【発明者】
【氏名】フー、リャンビン
(72)【発明者】
【氏名】ハン、シャオガン
(72)【発明者】
【氏名】ワックスマン、エリック ディ.
(72)【発明者】
【氏名】モー、イーフェイ
(57)【要約】
【課題】改善された電解質-電極界面インピーダンス特性を有する固体電池を提供すること。
【解決手段】固体状電解質及びハイブリッド電解質材料と接触する1つ以上の界面層は、無機(例えば、金属酸化物及び軟質の無機材料)又は有機材料(例えば、ポリマー材料、ゲル材料及びイオン伝導性液体)を含む。界面層は、カソード及び/又はアノードと固体状電解質との間の界面の電気的特性を向上(例えば、インピーダンスを減少)させることができる。界面層は、例えば、固体電池(例えば、固体状イオン伝導性電池)で使用されてもよい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせであって、
無機界面層である界面層と、
アノード材料と、
気孔を有する焼結固体状電解質(SSE)材料とを備え、
前記界面層は1nm~100nmの厚さを有し、前記気孔内で前記SSE材料の少なくとも一部と接触し、前記界面層は前記SSE材料と前記アノード材料との接触を増加させ、
前記無機界面層はAl2O3、TiO2、V2O5、Y2O3、及びこれらの組み合わせから選択された金属酸化物であるか、リチウム化されたAl2O3、リチウム化されたTiO2、リチウム化されたV2O5、リチウム化されたY2O3、及びこれらの組み合わせから選択されたリチウム化された金属酸化物である、無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項2】
無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせであって、
無機界面層である界面層と、
リチウム金属を有するアノード材料と、
気孔を有する焼結固体状電解質(SSE)材料とを備え、
前記界面層は1nm~100nmの厚さを有し、前記気孔内で前記SSE材料の少なくとも一部と接触し、前記界面層は前記SSE材料と前記アノード材料との接触を増加させ、
前記無機界面層はAl2O3、TiO2、V2O5、Y2O3、及びこれらの組み合わせから選択された金属酸化物であるか、リチウム化されたAl2O3、リチウム化されたTiO2、リチウム化されたV2O5、リチウム化されたY2O3、及びこれらの組み合わせから選択されたリチウム化された金属酸化物である、無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項3】
無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせであって、
無機界面層である界面層と、
アノード材料と、
気孔を有する焼結固体状電解質(SSE)材料とを備え、
前記界面層は1nm~100nmの厚さを有し、前記気孔内で前記SSE材料の少なくとも一部と接触し、前記界面層は前記SSE材料と前記アノード材料との接触を増加させ、
前記無機界面層はAl2O3、Y2O3、及びこれらの組み合わせから選択された金属酸化物であるか、リチウム化されたAl2O3、リチウム化されたY2O3、及びこれらの組み合わせから選択されたリチウム化された金属酸化物である、無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項4】
前記無機界面層はAl2O3、TiO2、V2O5、Y2O3、及びこれらの組み合わせから選択された金属酸化物である、請求項1又は請求項2に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項5】
前記無機界面層はAl2O3、Y2O3、及びこれらの組み合わせから選択された金属酸化物である、請求項3に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項6】
前記無機界面層はAl2O3又はリチウム化されたAl2O3である、請求項1~3のいずれか一項に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項7】
前記SSE材料は、リチウムペロブスカイト材料、Li3N、Li-β-アルミナ、リチウムスーパーイオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.86N0.14(LiPON)、Li9AlSiO8、Li10GeP2S12、リチウムガーネットSSE材料、ドープされたリチウムガーネットSSE材料、リチウムガーネット複合材料、及びこれらの組み合わせから選択された1つ以上のリチウムイオン伝導性SSE材料を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項8】
前記SSE材料は多孔質材料である、請求項1~7のいずれか一項に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか1項に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせを1つ以上含む、デバイス。
【請求項10】
前記デバイスは、固体状イオン伝導性電池であり、カソード材料をさらに含む、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
前記固体状イオン伝導性電池は、リチウムイオン伝導性固体電池であり、前記界面層は、請求項2の界面層である、請求項10に記載のデバイス。
【請求項12】
前記SSE材料は、孔にリチウム金属が収容された多孔質である、請求項9~11のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項13】
前記カソード材料は、リチウム含有カソード材料、任意に有機又はゲル状イオン伝導性電解質をさらに含む伝導性炭素材料、及びポリスルフィド材料から選択され、及び/又は、前記アノード材料は、リチウム金属、シリコン、任意に有機又はゲル状イオン伝導性電解質をさらに含む伝導性炭素材料から選択される、請求項10又は11に記載のデバイス。
【請求項14】
前記界面層、前記SSE材料、前記カソード材料、前記アノード材料、及び1つ以上の集電体はセルを形成し、前記固体状イオン伝導性電池は複数の前記セルを形成し、前記複数のセルのうちの隣接した各対がバイポーラプレートによって分離される、請求項10、11、又は13に記載のデバイス。
【請求項15】
前記気孔内での前記アノード材料の初期接触は、溶融された形態の前記アノード材料が前記無機界面層と接触すること、および、前記無機界面層が存在している前記気孔の表面を濡らすことによるものである、請求項1~3のいずれか一項に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【請求項16】
前記界面層は、前記気孔内で前記SSE材料の少なくとも一部及び前記アノード材料と接触する、請求項1~8のいずれか一項に記載の無機界面層と固体状電解質(SSE)との組み合わせ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願の相互参照]
本出願は、2014年10月28日に出願され、米国出願番号第62/069,748号に割当てられた仮特許出願、及び2015年3月12日に出願され、米国出願番号第62/131,955号に割当てられた仮特許出願に対する優先権を主張し、開示の内容は、参照として本明細書に援用する。
【0002】
[連邦政府支援による研究又は開発に関する陳述]
本開示は、エネルギー省によって授与されたDEAR0000384に基づく政府の支援によって行われた。政府は、本開示の特定の権利を有する。
【0003】
本開示は、固体電池の界面層に関する。具体的には、本開示は、カソード及び/又はアノードと電池の固体状電解質との間の界面層に関する。
【背景技術】
【0004】
固体状リチウム電池(SSLiBs)は、燃焼性液体電解質を含む従来のリチウム(Li)-イオン電池における低い安定性、限定された電圧、不安定な固体電解質界面(SEI)の形成、及び低いサイクル性能など、直面する主な問題に対する潜在的な解決策を提供する。固体状電解質(SSE)は、電気自動車用のSSLiBs、及び大規模なグリッドスケールのエネルギー貯蔵用の固体状Naイオン電池(SSNaBs)など、様々な固体電池の開発を可能にする材料である。LiSICON、チオLiSICON、ペロブスカイト、LiBH4、硫化物系ガラス/セラミック、SSLiBs用のLiガーネット、及びSSNaBs用のNASICONとベータ-アルミナなどの範囲が調査された。SSEのイオン伝導性の向上は、着実に進んでおり、硫化物系電解質で10-2S/cmの高い伝導性が得られ、これは、有機電解質の伝導率に匹敵する。しかし、完全なセル開発のためには、SSEと電極との間の界面インピーダンスが小さい安定した界面が重要である。表面コーティング、界面軟質化、バッファ層、例えば、LiNbO2、Nb、BaTiO3、及びカソード複合材中の添加剤、例えば、LBOを含む、SSEとカソードとの間の界面インピーダンスを減らすためのいくつかのアプローチが適用されている。しかし、アノード側の界面は、特に金属Liが使用される場合、ほとんど研究されていない。ペロブスカイト型(Li,La)TiO3、NASICON(特にTi系材料)、及び硫化物系ガラス電解質を含む多くの固体電解質が、金属性Liに対して安定でないことが考えられる。Li金属は、アノードとして最も低い電位(標準水素電極に対して-3.040)及び最も高い容量(3860mAh/g)を有するという事実を考慮すると、高エネルギー密度SSLiB開発のためにSSEとLi金属アノードとの間の界面を解決することが非常に重要である。
【0005】
様々なSSEの中で、ガーネット電解質は、(1)広い電気化学的窓を有し、Li金属に対して6Vまで安定であり;(2)加工柔軟性を伴って環境的に安定し;(3)室温で1mS/cmに近い高いイオン伝導性を有するため、SSLiBsに対して非常に魅力的である。10年以上前に発見されて以来、基礎的な研究によって、基礎となる機構の理解が深まり、Liイオン伝導性が向上した。しかし、ガーネットSSEを用いた高性能SSLiBsの成功的な実証は、まだほとんど進展していない。主な課題は、ガーネット電解質と電極材料との間の界面抵抗が、剛性セラミックの性質のために大きいことである。ガーネット電解質と統合するために、Li金属の加熱又は溶融さえも報告されている。しかし、界面に存在する微小な隙間及び潜在的な濡れの問題によって、界面における抵抗の減少が制限される傾向がある。Li金属とLLZOとの高い界面抵抗の源として、ガーネット表面上にLi2CO3が自然的に形成されることは、以前に確認された。研磨により表面の不純物を除去した後、より低い界面面積比抵抗(ASR)~109Ωcm2が成功的に達成された。それにもかかわらず、このように達成された界面インピーダンスは、SSLiBsに対して依然として高く、このような研磨方法は、平坦なガーネット電解質にのみ適用可能であり、セル形状と製造の拡張性を非常に制限する。
【0006】
その本質的な安全性のために、SSLiBsは、電気自動車、携帯電話、及び様々なその他の用途のための低コストで安全なエネルギー貯蔵の解決策を提供することができる。しかし、SSLiB界面は、典型的には平坦であり、低い比表面積のために高いインピーダンスを生じ、また、3D高表面積の界面を製造しようとする試みは、電圧サイクルによる膨張/収縮によって劣化したり、イオン輸送を妨げる電極-電解質界面における低い接触(例えば、気孔)によって高いインピーダンスを生じ得る。SSLiBsの現在の最先端の界面インピーダンスは、約1000Ω/cm2であり、これは有機電解質を有するLi+電池の100~1000倍である。このような高い界面インピーダンスは、SSLiBsの初速度の性能を制限するだけでなく、充放電サイクルの間顕著に増加し、電池サイクルの寿命に大きく影響を及ぼす。従って、大きな課題として、SSE電極界面には、特に(1)電荷移動及び輸送に対する大きな界面インピーダンス;及び(2)電気化学的充放電サイクルを有する界面の機械的劣化が存在する。
【0007】
また、SSLiBs及びSSNaBsの限られた成功を説明するSSEには、課題が存在する。これらの課題は、電極粒子-電解質粒子間、電極粒子間、及び電解質粒子間のセル内の大きな界面抵抗;SSEが一般的に脆弱であるため、サイクル中に構造の界面整合性が悪く;及び多くのアノード及びカソード材料と適合しない高い処理温度を必要とする。
【0008】
従って、改善された電解質-電極界面インピーダンス特性を有する固体電池が必要とされている。
【発明の概要】
【0009】
本開示は、固体状電解質(SSE)材料の少なくとも一部、又は、固体状電解質(SSE)材料の一表面又は全体表面と接触する1nm~100nmの厚さを有する無機又は有機界面層を提供する。無機界面層は、Al2O3、TiO2、V2O5、Y2O3、及びこれらの組み合わせから選択される金属酸化物であってもよい。無機界面層は、軟質の無機材料であってもよい。有機界面層は、i)ポリマー、ii)1つ以上のリチウム塩、及びポリマーを含むゲル材料、又はiii)リチウム塩及び1つ以上の溶媒を含むイオン伝導性有機材料であってもよい。
【0010】
SSE材料は、リチウムペロブスカイト材料、Li3N、Li-β-アルミナ、リチウムスーパーイオン伝導体(LISICON)、Li2.88PO3.86N0.14(LiPON)、Li9AlSiO8、Li10GeP2S12、リチウムガーネットSSE材料、ドープされたリチウムガーネットSSE材料、リチウムガーネット複合材料、及びこれらの組み合わせから選択された1つ以上のリチウムイオン伝導性SSE材料を含むことができる。SSE材料は、β’’-Al2O3、Na4Zr2Si2PO12(NASICON)、カチオンドープされたNASICON、及びこれらの組み合わせから選択されたナトリウムイオン伝導性SSE材料を含むことができる。SSE材料は、Mg1+x(Al、Ti)2(PO4)6、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料、及びこれらの組み合わせから選択されたマグネシウムイオン伝導性SSE材料であってもよい。
【0011】
本開示はまた、1つ以上の無機層及び/又は有機界面層を含むデバイスを提供する。デバイスは、固体状イオン伝導性電池であってもよくSSE材料、カソード材料、及びアノード材料をさらに含むことができる。固体状イオン伝導性電池は、リチウムイオン伝導性固体電池であってもよく、SSE材料は、リチウムイオン伝導性SSE材料と接触する1つ以上の界面層を有するリチウムイオン伝導性SSE材料であってもよい。固体状イオン伝導性電池は、ナトリウムイオン伝導性固体電池であってもよく、SSE材料は、ナトリウムイオン伝導性SSE材料と接触する1つ以上の界面層を有するナトリウムイオン伝導性SSE材料であってもよい。固体状イオン伝導性電池は、マグネシウムイオン伝導性固体電池であってもよく、SSE材料は、マグネシウムイオン伝導性SSE材料と接触する1つ以上の界面層を有するマグネシウムイオン伝導性SSE材料であってもよい。
【0012】
リチウムイオン伝導性固体電池の場合、カソード材料は、リチウム含有カソード材料、任意に有機又はゲル状イオン伝導性電解質をさらに含む伝導性炭素材料、及びポリスルフィド材料から選択されてもよく、及び/又はアノード材料は、リチウム金属、シリコン、任意に、有機又はゲル状イオン伝導性電解質をさらに含む伝導性炭素材料から選択されてもよい。ナトリウムイオン伝導性固体電池の場合、カソード材料は、ナトリウム含有カソード材料、硫黄、硫黄複合材料、及びポリスルフィド材料から選択されてもよく、及び/又はアノード材料は、イオン伝導性ナトリウム含有アノード材料、ナトリウム金属、スズ、リン、及び空気から選択されてもよい。マグネシウムイオン伝導性固体電池の場合、カソード材料は、マグネシウム含有カソード材料であってもよく、及び/又はアノード材料は、マグネシウム金属であってもよい。
【0013】
固体状イオン伝導性電池は、カソード側集電体及び/又はアノード側集電体をさらに含んでもよい。任意の固体状イオン伝導性電池では、界面層、SSE材料、イオン伝導性カソード材料、イオン伝導性アノード材料、及び1つ以上の集電体はセルを形成することができ、固体状イオン伝導性電池は複数のセルを含むことができ、隣接したセルの各対はバイポーラプレートで分離される。
【0014】
本開示の内容の性質及び目的の十分な理解のために、付随する図面と共に以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】リチウム化及びナトリウム化後に、Li及びNaイオンを伝導して界面インピーダンスを低減し、電極と共に膨張-収縮できる超薄膜ALD Al
2O
3である。
【
図2】界面層を有する高電圧Li-NMCセルの一例の概略図である。
【
図3】ゲル電解質が多孔質ガーネットペレットに圧入され、気孔が充填されていることを示すゲル電解質の製造手続を示す(概略的)グラフである。これは、ハイブリダイゼーション前の約50%の気孔率のガーネットペレット(左下)及びハイブリダイゼーション後のゲル電解質充填気孔(右下)を示す電子顕微鏡写真である。
【
図4】(a)は、ALD Al
2O
3コーティング及びLi金属浸透後の多孔質SSE試料の断面SEMである。(b)は、Li金属の高密度SSE界面における断面SEM及びEDSである。画像は、SSEの望ましいLi湿潤が得られたことを示している。
【
図5】(a)は、界面のイオン拡散を研究するための概略的な原子モデルである。(b)は、界面静電ポテンシャルのメソスケールの空間電荷モデルである。
【
図6】NMC-CNT-ガーネット複合カソード、Liアノード、及びガーネットSSEを有するSSLiBsの一例の概略図である。不燃性PFPE及びゲル電解質が中間層として界面インピーダンスを減少させるために使用され得る。
【
図7】電解質-電極界面における電荷輸送インピーダンス及び界面分解生成物、原子構造を確認するための計算技術である。
【
図8】ガーネット/Li金属界面の安定性及びSEM観察を示す。(a)は、300℃で12時間Li粉末と共に加熱前及び後のLLCZN粉末のXRDパターン比較である。(b)は、基準電極及び対向電極としてLi金属、及び作動電極としてPtを有するLLCZNのサイクリックボルタンメトリーである。走査速度は、1.0mV/sである。(c,d)は、LLCZNペレット上のALD-Al
2O
3をコーティングを有するLLCZN/Li(c)及びコーティングを有さないLLCZN/Li(d)の断面SEM画像である。
【
図9(a)】ALDコーティングの有無に係る対称的セル(Li/LLCZN/Li)の電気的特性であり、LLCZN上に1nm ALD-Al
2O
3コーティングを有する対称セルの概略図である。
【
図9(b)】ALDコーティングの有無に係る対称的セル(Li/LLCZN/Li)の電気的特性であり、電気化学的インピーダンス分光法(EIS)のナイキストプロット(Nyquist plot)である。(b)の挿入図は、高周波数で拡大したEISである。
【
図9(c)】ALDコーティングの有無に係る対称的セル(Li/LLCZN/Li)の電気的特性であり、71uA/cm
2の電流密度を有する定電流サイクル(Galvanostatic cycling)である。ALDコーティングのないセルLi/LLCZN/Liのサイクルが(c)にも示されている。
【
図9(d)】ALDコーティングの有無に係る対称的セル(Li/LLCZN/Li)の電気的特性であり、157uA/cm
2の電流密度を有する定電流サイクルである。
【
図9(e)】ALDコーティングの有無に係る対称的セル(Li/LLCZN/Li)の電気的特性であり、300uA/cm
2の電流密度を有する定電流サイクルである。
【
図9(f)】ALDコーティングの有無に係る対称的セル(Li/LLCZN/Li)の電気的特性であり、メッキ/ストライピングサイクル後及び前のセルのEISである。破線は、長いサイクル後のDC ASRを示す。
【
図10】Li金属アノード及びLLZCN電解質を有する高電圧セルである。(a)は、ALDコーティングされたLLCZN、Li金属アノード、LFMO/カーボンブラック/PVDF複合カソード及び液体有機電解質を使用して設計されたフルセルの概略図であり、FEC/FEMC/HFE(体積比20:60:20)中の1M LiPF
6の組成物は、複合カソードとガーネット電解質との間に界面層として添加される。(b)は、フルセルの第1、第6、第7のサイクル電圧プロファイルである。矢印は、新しい界面層が添加されたことを示す。(c)は、サイクル性能である。矢印は、新しい液体界面層を補充する第7サイクルを示す。(d)は、LEDデバイスを点灯させる作動セルである。左側写真の黄色のペレットは、ALD処理されたLLCZN固体電解質である。LEDは、プラスチック製ピンセットを使用してセルに接続される。
【
図11】ALD-Al
2O
3の有無に係るLi金属及びガーネット界面の第1原理計算である。LiAl
5O
8(a)及びLi
2CO
3(b)上の第一原理分子動力学シミュレーションからのLi金属の界面モデル。異なるLi化学ポテンシャル(c)Li金属に対応するμLi=0eV、及びリチウム化されたアルミナでLi化学ポテンシャルの範囲に対応するμ
Li=-0.06eV(d)、及びμ
Li=-1.23eV(e)でLLZO系の相平衡を示すLiグランド電位相図(grand potential phase diagram)である。
【
図12】PVDF-HFPゲル膜の(a)化学式、及び上面(b)と側面(c)のSEN画像である。
【
図13】ガーネット/カソード及びガーネット/ゲル/カソードセルのEISである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特許請求の範囲に記載された内容は、特定の実施形態に関して記載されるが、本明細書に記載の利点及び特徴の全てを提供しない実施形態を含む他の実施形態もまた、本開示の範囲にある。本開示の範囲から逸脱することなく、様々な構造的、論理的、工程段階、及び電子的変更を行うことができる。
【0017】
本開示は、固体状電解質(SSE)材料上に(例えば、物理的に接触する)配置された界面層を提供する。本開示はまた、このような界面層及びこのような界面層を含むデバイスを製造する方法を提供する。本開示はまた、ハイブリッド電解質材料、及びこのような材料及びこのような材料を含むデバイスの製造方法を提供する。
【0018】
本開示は、本開示に記載された界面層の組み込みによって電極-電解質界面抵抗を有意に減少させることができる驚くべき予測しない結果に基づく。本明細書(例えば、実施例1及び
図9)に記載したように、界面層の組み込みは界面抵抗の300倍の減少をもたらし、固体電池性能を実用的にする。
【0019】
本開示は、例えば、固体電池内の界面層として2種類の材料を含む。
1.有機系ポリマー、ゲル、及び液体イオン伝導体。これらは、例えば不燃性の有機電解質、例えばペルフルオロポリエーテル(PFPE)系電解質を含む。このような有機電解質は、発火することがなく、本質的に安全であることが確認されている。PFPE系有機電解質は、電解質粒界を横切る界面、又は、例えば電池性能を向上させるための電解質-電極界面を増加させることができる。PFPE系電解質は、例えば、リチウムイオン化学(lithium ion chemistry)を支持することができる。このようなPFPE系電解質はまた、Liイオン電池の作動に有利な通常の電解質よりもはるかに高いLi
+移動数を有する。移動数は、SSEと同様に1に近い。PFPE系電解質は、特にデバイス作動中に体積変化が発生する場合、固体-固体接触を顕著に改善する。例えば、PFPEは、メチルカーボネート末端PFPE(PFPE-DMCs)を形成するために官能化される。官能化されたPFPEは、大きな温度範囲にわたって液体として保持され、低毒性を示す。PFPE-DMSsは、例えば、周知のビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドリチウム塩(LiTFSI)を溶媒和できることが分かった。不燃性の非水性電解質がSSLiBs中の界面層として使用されるのは初めてである。また別の例は、例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO)又はポリフッ化ビニリデン(PVDF)中のLiClO
4などのポリマー電解質又はゲル電解質である。これらの軟質電解質は、優れた電荷輸送及び機械的完全性によって電極と電解質との間の接触を改善することができる。ゲル電解質は、非常に弾性があり、電極又はSSE表面を等角に(conformally)コーティングすることができ、SSEを充填して高密度のピンホールのない部材膜を形成することができる(
図3)。例えば、ガーネット粉末に浸透したゲル電解質は、全体のイオン伝導性を大きく増加させることができる。例えば、ゲルポリマー電解質は、以下のように製造することができる。0.25gのPVDF-HFPは、1時間、激しい撹拌(robust stirring)下で4.75gのアセトンに溶解する。次に、このような溶液は、スライドガラス上にキャストされ、溶媒が蒸発された後にゲルポリマーフィルムにする。粘性ゲル電解質は、電極又はガーネット電解質に塗布し、後で乾燥させてもよい。ガーネット又は電極複合材中のゲル電解質の充填は、真空濾過によって行ってもよい。
【0020】
2.無機系固体状界面材料。例えば、リチウム化後にイオン伝導性及び機械的に延性を有するALD超薄膜酸化物は、界面材料として使用される。電気化学的に反応したAl
2O
3は、延性及びイオン伝導性であり、電極-電解質界面を改善する。リチウム化後に、例えば、TiO
2及びAl
2O
3などの金属酸化物は、望ましい界面層になる。このような酸化物は、電気的に絶縁性であるにもかかわらず、薄いためにリチウム化することができる。例えば、原子層蒸着(ALD)によって蒸着された超薄膜酸化物は、Li及びNaイオンを効果的に伝導し、弾性及び延性が高く電極粒子を等角にコーティングすることができる(
図1)。例えば、第1ハーフサイクルの電気化学反応後の酸化物は、任意の亀裂又は破損なしに280%まで膨張することができる。また、ALD蒸着Al
2O
3は、Li金属とガーネット電解質との間の濡れを効果的に改善することができる。例えば、超薄膜(1~2nm)共形ALD Al
2O
3は、多孔質ガーネット電解質で金属リチウムの濡れ及び浸透を効果的に増加させることができる(参照、例えば、
図4及び
図8)。軟質のイオン伝導性固体は、所望の機械的延性および導電性を用いて接点およびサイクル性能を改善することができる。例えば、β-Li
3PS
4(LPS)は、ガーネットよりも軟質である。軟質のLPSスルフィドは、硬質酸化物ガーネット上にナノ接着界面層として使用されてもよい。計算によれば、少量のLPSがガーネット粒子間の電荷輸送を改善できることが示された。例えば、LPSは、乾式粉砕によってガーネットのようなSSE材料に適用することができ、前駆体を共に混合することによってLPSガーネット複合材を合成することができる。95%のガーネット及び5%のLPSを有する複合材は、望ましい加工性、電気化学的に安定したウィンドウ、及び高いイオン伝導性を有することが予想される。
【0021】
一態様では、本開示は界面層を提供する。界面層は、固体状電解質材料の少なくとも一部と接触する。界面層は、有機材料又は無機材料を含んでもよい。任意の特定の理論によって限定されることなく、界面層は電解質表面への電極の濡れ、界面を横切るイオン輸送、サイクル中の構造的完全性、又はこれらの組み合せを改善することによって、電極-固体状電解質界面のインピーダンスを減少させることを意図する。
【0022】
界面層は、イオン伝導性(例えば、1価、2価、又は3価イオン伝導性)である。例えば、界面層は、リチウムイオン伝導性、ナトリウムイオン伝導性、マグネシウムイオン伝導性、又は、アルミニウムイオン伝導性である。界面層は、イオン伝導性であるか、又は界面層の形成後にイオン伝導性になることが望ましい。例えば、特定の界面層、例えば、金属酸化物層は、Li又はNaアノードに露出した後、リチウム化又はナトリウム化した後にイオン伝導性になる。
【0023】
界面層は、SSEの表面上に有害な物質の形成を防止することができる。例えば、界面層は、電極とSSEとの間のイオン輸送を減少したり妨げる有害な物質、例えば、Li2CO3の形成を防止する。
【0024】
界面層の表面の少なくとも一部は、SSE材料の表面の少なくとも一部と接触する。界面層は、SSE材料の全ての表面(例えば、連続層)、又は、実質的に全て接触してもよい。界面層は、SSE材料と電極材料(例えば、カソード材料及び/又はアノード材料)との間にSSE材料の表面の一部又は表面と接触することが望ましい。SSE材料とカソード(例えば、軟質のイオン伝導性無機材料界面層又はイオン伝導性有機材料界面層)との間のSSE材料の一部と接触する界面層は、SSE材料とアノード(例えば、金属酸化物界面層)との間の一部と接触する界面と互いに異なり得る。例えば、SSE材料とカソードとの間にSSE材料の一部と接触する界面層は、軟質のイオン伝導性無機材料界面層又は軟質のイオン伝導性有機材料界面層であり、SSE材料とアノードとの間にSSE材料の一部と接触する界面層は、金属酸化物界面層である。SSE材料は、カソード部分及びアノード部分の1つ以上を有してもよい。カソード材料は、SSEのカソード部分に配置され、アノード部分は、SSEのアノード部分上に配置される。SSEのカソード部分及びアノード部分は、それぞれ個別の界面層を有することができ、個々の界面層は同じであっても互いに異なってもよい。
【0025】
界面層は、広範囲の厚さを有してもよい。界面層は、1nm~100nmの厚さを有することができ、その間の全ての整数nm値及び範囲を含む。
無機界面層は、金属酸化物を含んでもよい。例えば、界面層は、金属酸化物である。金属酸化物の例として、Al2O3、TiO2、V2O3、及びY2O3を挙げることができるが、これらに限定されない。このような金属酸化物界面層は、硬質界面層と呼ぶことができる。金属酸化物界面層は、当該技術分野で公知の方法によって形成され得る。例えば、金属酸化物層は、物理的蒸着法(例えば、スパッタリング)又は化学的蒸着法(例えば、原子層蒸着法(ALD))又は溶液に基づく方法(例えば、ゾルゲル法)によって形成される。
【0026】
無機界面層は、軟質の無機材料を含むことができる。例えば、無機界面層は、軟質の無機材料である。軟質の無機材料は、イオン伝導性材料であってもよい。軟質の無機材料は、本質的に伝導性であり得る。任意の特定の理論によって限定されることなく、軟質の無機材料は、電極と電解質との間の接触を改善し、電荷輸送及び機械的完全性を改善することができる。軟質の無機材料では、β-LiPS4(LPS)、Li10GeP2S12、Li3.25Ge0.25P0.75S4、ガラスセラミック、例えば、Li7P3S11、及びガラス質材料、例えば、Li2S-SiS2-Li3PO4を含んでいるが、それらに限定されることはない。例えば、硫化物系軟質無機材料(例えば、硫化物系固体状電解質材料)は、ガーネットよりも軟質である(例えば、LPSは、ガーネット系SSLiBsの界面層として使用することができる)。軟質の無機材料は、SSE材料上に個別層を形成してもよい。
【0027】
有機界面層は、イオン伝導性有機材料(例えば、ポリマー及び/又は有機溶媒)、及び任意にイオン性塩(例えば、Li塩、Na塩など)を含むことができる。このような有機界面層は、軟質の界面層と呼ぶことができる。イオン伝導性有機材料はまた、電気伝導性であることが望ましい。例えば、有機界面層は、ポリマー(例えば、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、フルオロポリマー例えば、ポリフッ化ビニリデン、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)、又は、その官能化された類似体(例えば、メチルカーボネート末端PFPEs)、及び共重合体(例えば、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレン)を含む。イオン性塩は、ポリマー中に溶解性である。ポリマーは、溶媒(例えば、有機溶媒)をさらに含んでもよい。
【0028】
また別の例として、有機界面層は、ゲル材料を含む。ゲル材料は、イオン伝導性ゲル材料であってもよい。ゲル材料は、1つ以上の金属イオン伝導性(例えば、Li+伝導度、Na+伝導度、及び/又はMg+伝導度)ポリマー及び/又は共重合体及び/又は金属イオン(例えば、Li+、Na+、及び/又はMg+)ホストポリマー及び/又は共重合体及び1つ以上のイオン性塩(例えば、Li塩、Na塩、Mg塩など)を含むことができる。ホストポリマー及び共重合体は、金属イオン/イオン性塩を可溶化することができる。ポリマーの例では、ポリ(エチレンオキシド)(PEO))、フルオロポリマー、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ペルフルオロポリエーテル(PFPE)、又は、その官能化された類似体(例えば、メチルカーボネート末端PFPEs)を含むが、これらに限定されず、共重合体の例では、ポリ(フッ化ビニリデン-co-ヘキサフルオロプロピレンを含んでいるが、それらに限定されることはない。例えば、塩は、リチウム塩(例えば、LiPF6、LiClO4、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドリチウム塩、及びこれらの組み合せ)である。イオン性塩(例えば、Li塩、Na塩など)は、広範囲の組成で存在し得る。例えば、イオン性塩は(存在する全体ポリマー及びイオン性塩に基づいて)、1から20重量%で存在し、その間の全ての0.1値及び範囲を含む。
【0029】
さらに別の例では、有機界面層は、1つ以上の溶媒(例えば、有機溶媒、例えば、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)、フルオロファ溶媒(例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、メチルトリフルオロ炭酸エチル(FEMC)、ヒドロフルオロエーテル(HFEs))、及びこれらの組み合せ)及び1つ以上のイオン性塩(例えば、Li塩、Na塩など)を含むイオン伝導性液体を含んでもよい。例えば、塩は、リチウム塩(例えば、LiPF6、LiClO4、ビス(トリフルオロメタン)スルホンアミドリチウム塩、及びこれらの組み合せ)である。例えば、イオン性塩は(存在する全体ポリマー及びイオン性塩に基づいて)1から20重量%で存在し、その間の全ての0.1値及び範囲を含む。
【0030】
軟質のイオン伝導性無機材料及び軟質のイオン伝導性有機材料(例えば、ポリマー材料、ゲル材料、又は、イオン伝導性液体)は、軟質材料である。軟質とは、このような材料が電極材料とSSE材料との間の連続したイオン伝導性経路を提供するために空隙(例えば、SSE表面特性に応じて形成される)を充填できるように圧縮できることを意味する。このような軟質の界面層は、一般的に構造的な破壊なしにサイクル中の電極体積変化を可能にするようにさらに延性である。
【0031】
界面層は、単一無機界面層材料又は単一有機界面層材料を含む個別層であってもよい。界面層は、無機界面層材料及び/又は有機界面層材料の1つ以上の個別層を含むことができる。界面層は、1つ以上の無機界面層材料及び/又は有機界面層材料を含む個別層であってもよい。
【0032】
界面層は、ピンホール部材であることが望ましい。界面層は、観察可能なピンホールがなくてもよい。ピンホールは、当該技術分野で公知の方法によって直接的又は間接的に観察され得る。例えば、ピンホールは、撮像方法(例えば、光学撮像、SEM撮像、及び/又はTEM撮像)によってで直接的に及び/又は電気的特性(例えば、抵抗又は抵抗率)測定によって間接的に観察され得る。
【0033】
任意のSSE材料を使用することができる。適切なSSE材料は、当該技術分野に公知である。適切なSSE材料は市販されており、当該技術分野で公知の方法によって製造することができる。
【0034】
SSE材料は、リチウムイオン伝導性材料であってもよい。例えば、SSE材料は、多孔質又は高密度のリチウムイオン伝導性SSE材料を含む。リチウムイオン伝導性SSE材料の例ではリチウムペロブスカイト材料(例えば、Li0.36La0.55□0.09TiO3(□=空格子))、Li3N(例えば、層状Li3N)、Li-β-アルミナ、リチウムスーパーイオン伝導体(LISICON)(例えば、Li14ZnGe4O16、)、Li2.88PO3.86N0.14(LiPON)、Li9AlSiO8、Li10GeP2S12、及びリチウムガーネットSSE材料を含んでいるが、それらに限定されることはない。リチウムガーネットSSE材料の例では、Li3-相リチウムガーネットSSE材料(例えば、Li3CTe2O12、ここでCは、ランタニド、例えば、Y、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Zr、Ta、又はこれらの組み合せ、Li3+xNd3Te2-xO12、ここでxは、0.05から1.5、Li5-相リチウムガーネットSSE材料(例えば、Li5La3M1
2O12、ここでM1は、Nb、Zr、Ta、Sb、又はこれらの組み合せ、カチオン性-置換Li5La3M1
2O12、例えば、Li6ALa3M1
2O12、ここでAは、Mg、Ca、Sr、Ba、又はこれらの組み合せ、Li7La3B2O12、ここでBは、Zr、Sn、又はこれらの組み合せ);Li6-相リチウムガーネットSSE材料(例えば、Li6DLa2M32O12、ここでDは、Ca、Sr、Ba、又はこれらの組み合せ、M3は、Nb、Ta、又はこれらの組み合せ);カチオンドープされたLi6La2BaTa2O12;カチオンドープされたLi6BaY2M1
2O12、ここでカチオンドーパントは、バリウム、イットリウム、亜鉛、又はこれらの組み合せ、Li7-相リチウムガーネットSSE材料(例えば、立方晶Li7La3Zr2O12及びLi7Y3Zr2O12);カチオンドープされたLi7La3Zr2O12;Li5+2xLa3、Ta2-xO12、ここでxは、0.1から1、Li6.8(La2.95、Ca0.05)(Zr1.75、Nb0.25)O12(LLCZN)、Li6.4Y3Zr1.4Ta0.6O12、Li6.5La2.5Ba0.5TaZrO12、Li6BaY2M1
2O12、Li7Y3Zr2O12、Li6.75BaLa2Nb1.75Zn0.25O12、又はLi6.75BaLa2Ta1.75Zn0.25O12)、リチウムガーネット複合材料(例えば、リチウムガーネット-伝導性炭素マトリックス(任意に硫黄を含む))を含むが、それらに限定されることはない。リチウムイオン伝導性SSE材料のその他の例では、立方晶ガーネット型材料、例えば、3mol%YSZドープされたLi7.06La3Zr1.94Y0.06O12及び8mol%YSZドープされたLi7.16La3Zr1.94Y0.06O12を含む。
【0035】
SSE材料は、ナトリウムイオン伝導性材料であってもよい。例えば、SSE材料は、β’’-Al2O3、多孔質又は高密度のNa4Zr2Si2PO12(NASICON)、カチオンドープされたNASICON(例えば、Na4ZrAlSi2PO12、Na4ZrFeSi2PO12、Na3Zr1.94Y0.06Si2PO12、Na4ZrSbSi2PO12、及びNa4ZrDySi2PO12)から選択されたSSE材料を含む。
【0036】
SSE材料は、マグネシウムイオン伝導性材料であってもよい。例えば、SSE材料は、Mg1+x(Al、Ti)2(PO4)6、NASICON型マグネシウムイオン伝導性材料(例えば、Mg1-2x(Zr1-xMx)4P6O24)及びMg1-2x(Zr1-xMx)(WO4)3、ここでxは、0.01から0.5)から選択されたSSE材料を含む。
【0037】
界面層及びデバイスは、当該技術分野で公知の方法を使用して製造することができる。例えば、金属酸化物層は、物理的蒸着法(例えば、スパッタリング)又は化学的蒸着法(例えば、原子層蒸着法(ALD))、又は、溶液に基づく方法(例えば、ゾルゲル法)によって形成される。ポリマー材料、ゲル材料、又は、イオン伝導性液体層は、当該技術分野で公知のポリマー又は液体コーティング法によって形成され得る。ポリマー材料層は、真空に基づく方法によって形成され得る。
【0038】
例えば、PFPE系電解質は、真空補助方法によってガーネット膜内に充填してもよい。ハイブリッド電解質は、粒子を通したイオン輸送の向上によりガーネットテープよりはるかに低いインピーダンスを有することが期待される。PFPE-LiTFSI電解質は、Li/ガーネット/Liの構成で対称セルを組み立てた後に充填してもよい。インピーダンスは、活性化エネルギー及びイオン伝導性を得るために温度を変化させて測定され得る。EISは、中間層としてPFPE系有機電解質前及び後に界面インピーダンスを調査するために使用され得る。異なる表面モフォロジー及び表面積を有するガーネットを製造することができる。
【0039】
また別の例として、ゲル電解質は、固体状/ゲルハイブリッド電解質を形成するために、ガーネット気孔に浸透し、電極と固体状電解質との間の高い界面抵抗を克服して電解質上の伝導度を増加させるのを助けることができる。ハイブリッド電解質は、デンドライトの成長及び浸透を防止し、リチウム金属2次電池内に従来の電解質の高伝導性を許容する役割をしてもよい。例えば、PVDF-HFPゲル電解質は、
図3に示すように、多孔質Li
7.06La
3Zr
1.94Y
0.06O
12ガーネットペレットに125MPaで一軸加圧された。
図3の電子顕微鏡写真で実証されたように、ガーネットは、加圧後のゲル電解質で充填された相互接続された気孔率を示す。ゲル電解質がSEM内で高い真空下に置かれた場合、高い蒸気圧化合物が揮発し、電解質が減少して、試験中に存在し得ない空の領域を残す。
【0040】
ALD-酸化物は、Liガーネット濡れを改善することができる。例えば、アノード側に、ガーネットの表面上にLi金属がコーティングされてもよい。Li金属とガーネットとの間の界面接触を増加させるために、ALD酸化物を適用して望ましい濡れをもたらすことができる(
図4(a)及び(b))。Li金属の濾過の深さは、温度及び期間に依存することが判明した。
【0041】
PFPE系電解質は、周知の方法を使用して製造することができる。例えば、1000から4000g/molの公称分子量を有する市販ヒドロキシル末端PFPEが改質されてメチルカーボネート末端PFPEs(PFPE-DMC)を形成し、望ましい熱安定性及び火炎抵抗を有することが期待される。PFPE-DMCsは、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiTFSI)のようなリチウム塩の望ましい溶解性を有することが期待される。電解質として溶解したLiTFSIを有するPFPE-DMCは、ガーネット電解質と同様に高い移動数t~0.9を有することが予想される。
【0042】
固体電池などのデバイスは、例えば当該技術分野で公知の方法を使用して形成され得る。例えば、現在LiB製造方法に周知の層大層方法は、Liガーネット-NMCセルを製造するために使用されてもよい。
【0043】
例えば、CNTsは、バインダ及び伝導性添加剤として使用されてもよい。まず、Al箔は、NMC/CNT複合材で蒸着される。次に中間温度(<500℃)でガーネットテープを製造することができる。真空下のデバイス内にPFPE又はゲル電解質が充填され得る。
【0044】
また別の例として、アノード側上のLi金属は、ALD酸化物をコーティングした後、ガーネット電解質の多孔質構造内に充填され得る。ガーネット気孔内にゲル電解質を充填することにより界面インピーダンスを著しく減少させることができる。セルは、金属集電体で完成させてもよい。ラボスケールでは、カソードにはAl箔を使用し、アノードにはCu箔を使用することができる。バイポーラ金属は、セル積層及び統合に使用することができる。電極と集電体との間の電気的接触を改善するために、薄膜グラフェン層が適用されてもよい。例えば、低費用グラフェンインクを使用することができる。
【0045】
また別の例として、ALDガーネットに対して、高密度のLiリッチガーネット膜は、ALD酸化物でコーティングされる。加熱工程が使用され、酸化物層をリチウム化するためにイオン伝導性を増加させて効果的なナノスケールの接着剤(nanoscale glue)を達成した。ALD酸化物は、気孔を充填して緻密層を形成してもよい。
【0046】
Li金属はアノードであり、濾過されたCNT及びガーネットが混合したNMCはカソードであり、ガーネット膜は電解質膜として使用されているデバイス構造の例が
図6に概説されている。層をパッキングした後、中間層物質に、例えば、PFPE又はゲル系電解質で充填して界面を改善することができる。
図2は、フルセルを層毎に製造する例を示す。末端にPFPE電解質を真空充填することができる。イオン及び電極の輸送経路は、濾過された伝導性炭素(例えば、CNT又はグラフェン)及びガーネットSSEによって提供することができる。Li金属は、ALD酸化物コーティングの助けでアノードとして適用することができる。
【0047】
ハイブリッド電解質は、軟質の有機材料又は軟質の無機材料とSSE材料(複合材料)の混合物を含んでもよい。例えば、複合材料は(存在する全体軟質の有機材料又は軟質の無機材料及びSSE材料に基づいて)1つ以上の軟質の有機材料又は軟質の無機材料の10から90重量%を含み、その間の全ての整数%値及び範囲を含む。ハイブリッド電解質は、SSE界面インピーダンスを低減することができる。
【0048】
例えば、乾式粉砕方法は、ガーネット粒子とLPSとを混合してガーネットの表面上にLPSのコンフォーマルコーティングを形成し、充放電工程中に構造完全性及び電荷輸送の界面を改善できるように使用され得る。例えば、複合材電解質は、複合材電解質の界面特性を改善するために、約5~10%LPSを有するガーネットで主になることができる。典型的な試験では、LPS及びガーネット電解質の前駆体は、以前に周知の方法を用いて混合される。次に、複合材は、例えば、加熱の速度250℃/時間にて1000℃で8時間不活性の雰囲気で焼成する。
【0049】
一態様において、本開示は、本開示の1つ以上の界面層及び/又は1つ以上のハイブリッド電解質材料を含むデバイスを提供する。例えば、デバイスは、電池などの電気化学的デバイスである。電池の例では固体電池又はフロー電池を含む。適切な電池構造の例は、当該技術分野において公知である。
【0050】
デバイスは、固体電池にすることができる。例えば、固体状イオン伝導性電池は、本開示の1つ以上の界面層及び/又は本開示の1つ以上のハイブリッド電解質材料を含み、SSE材料、カソード材料、及びアノード材料をさらに含んでもよい。
【0051】
適切な電極材料(カソード材料及びアノード材料)は、当該技術分野で公知である。適切な電極材料が市販されており、当該技術分野で公知の方法によって製造することができる。
【0052】
固体電池は、カソード側集電体(例えば、伝導性金属又は金属合金)及び/又はアノード側集電体(例えば、伝導性金属又は金属合金)をさらに含んでもよい。集電体に適切な金属及び金属合金は、当該技術分野で公知である。
【0053】
界面層、SSE材料、イオン伝導性カソード材料、イオン伝導性アノード材料、及び1つ以上の集電体は、セルで形成され得る。固体状イオン伝導性電池は、複数のセルを含んでもよく、当該セルのうちの隣接した各対は、バイポーラプレート(bipolar plate)によって分離されている。
【0054】
固体状イオン伝導性電池は、リチウムイオン伝導性固体電池であってもよく、界面層は、リチウムイオンSSE材料と接触する界面層である。カソード材料は、リチウム含有カソード材料(例えば、Li(NiMnCo)1/3O2(NMC)、LiCoO2、LiFePO4、Li2MMn3O8、Mは、Fe、Co、及びこれらの組み合わせから選択される)、任意に有機又はゲル状イオン伝導性電解質をさらに含む伝導性炭素材料(例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン)から選択されることができ、ポリスルフィド材料及び/又はアノード材料は、リチウム金属、シリコン、任意に有機又はゲル状イオン伝導性電解質をさらに含む伝導性炭素材料(例えば、グラファイト、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、及びグラフェン)及び酸素(例えば、空気)から選択されてもよい。
【0055】
固体状イオン伝導性電池は、ナトリウムイオン伝導性固体電池であってもよく、界面層は、ナトリウムイオンSSE材料と接触する界面層である。カソード材料は、ナトリウム含有カソード材料(例えば、Na2V2O5、P2-Na2/3Fe1/2Mn1/2O2、Na3V2(PO4)3、NaMn1/3Co1/3Ni1/3PO4、及びNa2/3Fe1/2Mn1/2O2@グラフェン複合材)、硫黄、硫黄複合材料から選択されることができ、ポリスルフィド材料及び/又はアノード材料は、ナトリウム金属、スズ、リン、及びイオン伝導性、ナトリウム含有アノード材料(例えば、Na2C8H4O4及びNa0.66Li0.22Ti0.78O2)及び酸素(例えば、空気)から選択されてもよい。
【0056】
固体状イオン伝導性電池は、マグネシウムイオン伝導性固体電池であってもよく、界面層は、マグネシウムイオンSSE材料と接触する界面層である。例えば、カソード材料は、マグネシウム含有カソード材料(例えば、ドープされた酸化マグネシウム)であってもよく、及び/又は、アノード材料は、マグネシウム金属であってもよい。
【0057】
1つ以上の界面層を含むデバイスの界面抵抗は、1つ以上の界面層を有さない同一のデバイスの抵抗より10倍以下、20倍以下、30倍以下、40倍以下、50倍以下、100倍以下、200倍以下、又は、300倍以下であってもよい。1つ以上の界面層を含むデバイスの界面抵抗は、750Ωcm2以下、500Ωcm2以下、400Ωcm2以下、300Ωcm2以下、200Ωcm2以下、100Ωcm2以下、50Ωcm2以下、40Ωcm2以下、30Ωcm2以下、20Ωcm2以下、10Ωcm2以下、50Ωcm2以下、4Ωcm2以下、3Ωcm2以下、又は2Ωcm2以下であってもよい。
【0058】
以下の実施例は、本開示を説明するために提示される。これらは、任意の方法に限定することを意図するものではない。
[実施例1]
以下の実施例は、本開示の界面層の製造例を提供する。
【0059】
リチウム金属アノードとガーネット電解質との間の大きな界面インピーダンスは、原子層蒸着法(ALD)によって超薄膜アルミニウムオキシド(Al2O3)を使用して解決された。Li7La2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.25O12(LLCZN)は、増加したリチウムイオン伝導性によってガーネット材料として使用されている。室温でDC界面インピーダンスの300倍減少(606Ωcm2から2Ωcm2)が観察され、リチウム金属/ガーネット界面インピーダンスを効果的に防止する。試験的に計算された結果によれば、酸化物コーティングは、ガーネット電解質表面と接触する金属性リチウムの濡れを可能にし、リチウム化されたアルミナ界面は、リチウム金属アノードとガーネット電解質との間の効果的なリチウムイオン輸送を許容することが分かる。リチウム金属アノード、ガーネット電解質及び高電圧カソードを有する作用セルは、本明細書に記載した界面化学を適用することによって実証された。
【0060】
原子層蒸着法(ALD)によってガーネット類似Li7La2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.25O12(LLCZN上に超薄膜Al2O3コーティングを導入し、Li金属とガーネットSSEの間の濡れを顕著に改善させ、DC界面を2Ωcm2まで300倍減少させることが実証された。試験的及び計算研究では、ガーネット/Li界面の改善に対するALD-Al2O3コーティングの可能なメカニズムを調べるために使用された。
【0061】
ガーネットLLCZN固体電解質の特性化。ガーネット構造の酸化物Li7La2.75Ca0.25Zr1.75Nb0.25O12(LLCZN)が合成され、焼結され、薄膜固体電解質ペレットで研磨された。一般的なガーネット組成は、Li7La3Zr2O12(LLZO)であり、La3+部位をCa2+で置き換えてZr4+部位をNb5+で同時に置き換えれば、Liイオン伝導性が増加して安定化された立方晶ガーネット相の長所を有する。
【0062】
Li金属とALD-Al
2O
3コーティングされたLLCZNの間の等角界面。Li金属とLLCZNガーネットとの間で観察された安定性に基づいて、2段階工程は、ペレットLLCZN上の等角界面を達成するように設計された。まず、約1nmの厚さのALD-Al
2O
3コーティングがガーネット表面に適用された。次に、1つのLi金属箔、50psiで油圧式プレッシャーを使用してガーネットペレット上に加圧した後、積層されたガーネット/Liペレットを、250℃で1時間、小さな圧力下で加熱した。対照試料は、ベアLLCZNペレットを使用して同一の方法で製造された。ALD-Al
2O
3コーティングされたガーネットに対して、SEMによって親密な等角界面(intimate、conformal interface)が観察された(
図8(c))。一方、等角対照試料は、明白な間隙(
図8(d))を示すが、これは、高い界面インピーダンスにつながる可能性があるために問題がある。Li金属は、Li金属融点180.5℃よりはるかに高い300~350℃の温度で長時間(24~168時間)加熱するまでガーネットLLZOを濡らすことができない。比較的低い温度でLi金属をガーネットと統合させる本発明者の2段階工程は、色センター(color center)又は亀裂を起こさない。ガーネット/Liのこのように観察された等角界面は、ALD酸化物コーティングによる直接的な結果である。
【0063】
LLCZN/Li金属の界面インピーダンス。Li金属とガーネットLLCZNとの間の界面インピーダンスを調査するために、
図9(a)に示した対称セルは、ALD-Al
2O
3コーティングの有無に応じて製造された。一貫性を最大限にしてALDの効果を分離するために、同一の手順によってセルが組み立てられ、焼結ペレットの同一の配置からガーネットを使用する。使用されたLLZCNペレットは、厚さ200μmであり、電極表面積0.49cm
2である。ALDコーティングされた試料は、露出した全ての表面上にAl
2O
3の約1nmの層を有する。試料は、22℃でEISによって測定し、インピーダンスに対する個別寄与度を確認した。得られた測定値は
図9(b)に提供される。2つの異なるアークが各試料に見られ、これらは等価回路に適合していた。バルク領域固有抵抗(ASR)は、高周波数xインターセプトを見つけるために、等価回路の適合から決定され、各々ALDコーティングの有無によってセルに対して26及び28Ωcm
2である。第1アークは、粒界インピーダンスを示し、容量は、ALDの有無によりセルに対して3.1×10
-9F及び2.1×10
-9Fである。粒界ASRは、ALDコーティングの有無によりセルに対して150Ωcm
2及び4500Ωcm
2であった。2つの場合に使用されたガーネットペレットは、同一の起源を使用するため、非ALD試料で顕著に高いASRは界面接触(前記
図8(d)に示されている)が低く、粒界及びLi金属/ガーネット界面インピーダンス周波数分散のオーバラップによる。第2アークは、界面インピーダンスの特性であり、容量は、ALDコーティングの有無によりセルに対して9.9×10
-4及び2.8×10
-5Fである。界面ASRは、セル当たり2つの電極があるため、電極表面積に対して正常化する前に抵抗を2に分けて計算した。ALD処理は、界面ASRをEISによって490Ωcm
2から16Ωcm
2に減少させることが分かる。このような減少は、場合によって次のような理由に起因する可能性がある。(1)Li金属及びSSE接触によるコンフォーマルコーティングは、効果的なイオン性伝達領域を増加させる;(2)250℃でLi金属と接触して形成された自発的にリチウム化されたAl
2O
3は、Liイオン伝導性でガーネットとLi金属との間でイオンを効果的に輸送し;(3)ALD層は、ガーネットの表面上にLi
2CO
3形成を防止する。
【0064】
本発明者は、ガーネットとLi金属界面を横切るLiイオン輸送能力及び界面インピーダンスを評価するために、DC Liメッキ及び剥離試験を行った。このような測定に使用される試料は、前記検討されたものと同一であった。71uA/cm
2の電流密度であり、ALDコーティングを有するLi/LLCZN/Liセルは、約2mVで速く安定化された。一方、ALDコーティングを有さない対照セルは、45mVのノイズのある分極された電位を示した。ALDコーティングを有するLi/LLCZN/Liセルは、任意の認知できる劣化を伴わずに数百回サイクルした。
図9(d)は、20分間、いずれの方向にも160uA/cm
2の電流密度及び約4.5mVでの安定した電圧応答での80時間のサイクルを示す。電流密度は、300uA/cm
2まで増加し、約8.5mVの分極電圧を起こした(
図9(e))。小さい分極を有する観察されたサイクルによれば、Liサイクル中の低い界面インピーダンス及び安定した界面は、ALD酸化物界面層によって得られることを確認している。安定した界面は、場合によりリチウム化されたAl
2O
3の高い耐久性によるものであり、これは、リチウム化及びナトリウム化されたAl
2O
3の機械的特性に対する文献と一致する。DC剥離/メッキ試験から計算されたASRは、サイクル試験前にEISによって測定されたバルクASRに類似する約28Ωcm
2であり、Li/ガーネット界面インピーダンス及び粒界インピーダンスの効果的な除去を示す。このような結果を確認するために、EISによるセルインピーダンスは、サイクル後に再び測定された。
【0065】
図9(f)では、サイクル後のLi/LLCZN/LiセルのEISは、サイクル前にEISによってプロットされ、DCサイクルから計算されたASRを表記する。このような図面に示すように、インピーダンスに対する残りの寄与は、サイクル前及び後にEISからのバルクASRとDC ASRとの間の一致により電解質のバルク伝導率と見られる。低周波数アークの不足により、Li/ガーネット界面インピーダンスと粒界抵抗とを効果的に防止することが確認される。このような効果は、サイクル中のLiメッキがLi金属/ガーネット界面を改善し、場合によっては、粒界内のリチウム含有量が増加し、粒界境界インピーダンスに空間電荷寄与を減少させるためであると考えられる。
【0066】
2つの対称セルの電気的なパラメータは、上記のEIS及びDCサイクルデータに基づいて表1に要約されている。サイクル後、粒界インピーダンスは観察されず、表1に含まれるインピーダンスに寄与しないことに留意する。これらの結果によれば、超薄膜ALD-Al2O3コーティングは、固体LLCZN/Li界面を通ってLiイオン輸送を促進することを明示している。
【0067】
【表1】
Li金属及びガーネット界面の第1原理計算。第1原理計算は、超薄膜ALD-Al
2O
3コーティング後にLi金属とガーネットの間の界面改善のメカニズムを調べるために使用された。第1に、様々なLi化学量論Li
xAl
2O
3+x/2(x=0.4から1.4)のリチウム化アルミナ薄膜上に対するLi金属の結合エネルギーが計算された。このような結果は、Li
xAl
2O
3+x/2(x=0.4から1.4)上でLi金属の間の強い化学的結合エネルギーが実証され、6.0から11.4eV/nm
2の範囲の高い結合エネルギーを有する。結局、このような強い界面結合は、Al
2O
3のコーティングされた固体電解質に対するLi金属の濡れを改善させる。リチウム化後の超薄膜アルミナは、優れたLiイオン伝導体であり、Li金属とガーネットの間の効果的なLiイオン輸送経路及び低い界面抵抗を提供する。ガーネット電解質は、空気に触れることなく製造することが困難であるため、ガーネットの表面上にLi
2CO
3が存在すると考えられる。これを考慮すると、Li
2CO
3の薄膜層がガーネットを覆うと仮定される。Li金属とLi
2CO
3層との間の界面結合エネルギーは、1.6eV/nm
2と計算され、これは、Liとリチウム化アルミナとの間の界面結合エネルギーよりもかなり低い(
図11(a),(b))。結合エネルギーが弱いと、接触面積が小さくなり、間隙及び間隔が形成される。ガーネット/Li界面内の間隙、間隔、及びLi
2CO
3の存在は、大きな界面抵抗を引き起こす。この計算結果は、超薄膜ALD-Al
2O
3コーティング後の界面インピーダンスの顕著な低下と一致する。
【0068】
第2に、第1原理からガーネット/Li金属に対して化学的界面安定性が計算された。LLZO系のLiグランド電位相図に基づいて(
図11(c))、Liと接触するベア立方晶LLZOに対して-27kJ/moleの小さい分解エネルギーが計算される。このような分解は、Li
2O、Zr、及びLa
2O
3の組成に対応し、ガーネットのLi減少に対する潜在的な傾向を示す。ドーピングされていないLLZOと比較し、本研究に使用されたドープされたガーネットLLCZNは、追加の分解組成物CaO及びNbを有するLi金属及び相平衡に対して同様の相安定性を有する。ガーネットのLi減少に対する比較的小さな熱力学駆動力は、Li金属に対して相対的な安定性を説明することができる。高温(>300℃)では、Li金属との接触によるガーネットの分解が進行し、第1原理計算に基づいて約50%までの体積膨張が顕著に起こる。これは、Li金属と共に加熱されたLLCZNの低角度シフトXRDピークの試験的な証拠によって裏付けられている。界面に局在するこのような大きな体積膨張は、ガーネット電解質を分解して、以前の試験的研究で示されたような機械的破壊を誘導し得る。また、ガーネット電解質の分解は、固体電解質界面(SEI)と同様の、低いLiイオン伝導性を有する界面層を形成する。このような分解された物質は、Li
2O/Li
2O
2、La
2O
3、Zr/Zr
xO、CaO、Nb/NbO
xを含有することがあり、優れた界面イオン性伝導に対して有害な、例えばLa
2ZrO7、Li
2CO
3などの空気汚染を含む可能性がある。一方、Liグランドカノニカル相図(
図11(d),(e))は、LLCZNと類似のガーネットLLZOが-0.06eV~-1.23eVの平衡Li化学電位(μ
Li)でリチウム化されたアルミナで安定化される。従って、ALD-Al
2O
3コーティングを導入すると、金属性Liとの反応によるガーネットの分解を防ぎ、Li金属アノードとのガーネット電解質に対する安定した高伝導性の界面を保持する。電圧を増加させずに長時間ガルバノスタットサイクルを行った試験結果は、Li金属とALDコーティングされたガーネットとの間の安定した界面に対する計算と一致する。
【0069】
全てのSSLiBsに対して、Li金属アノードとガーネット型LLCZN固体電解質との間の界面問題を解決するための革新的な戦略が開発された。Al2O3の超薄膜ALDコーティングは、DCサイクルによってDC界面ASRを606Ωcm2から2Ωcm2まで効果的に減少させ、サイクルによる粒界インピーダンスを顕著に減少させた。作用フルセルは、高電圧カソードLFMO、ガーネットLLCZN、及びLi金属アノードを使用して実証された。界面改善に対する可能なメカニズムは、次のような試験及び計算証拠に基づいて提案される:(1)ガーネット上のALD-Al2O3コーティングは、ガーネット/Liの等角界面を可能にする;(2)リチウム化されたアルミナの高い結合エネルギーは、等角界面を向上させる;(3)超薄膜リチウム化されたアルミナは、界面を通って高いLiイオン輸送経路を提供する;及び(4)Al2O3コーティングは、場合によりLi金属と接触するLi2CO3形成及びガーネット分解を防止し、ガーネット/Li界面安定性及び観察された電気的特性を保持する。このようなナノスケール界面エンジニアリングは、高いエネルギー密度、安全な全てのSSLiBsに対してLi金属とSSEとの間に界面問題を解決するための一般的な戦略を提供する。
【0070】
方法。物質合成。LLCZNガーネット電解質は、ゾルゲル法によって合成された。初期物質は、La(NO3)3(99.9%、Alfa Aesar社製)、ZrO(NO3)2(99.9%、Alfa Asear社製)、LiNO3(99%、Alfa Aesar社製)、NbCl5(99.99%、Alfa Aesar社製)及びCa(NO3)2(99.9%、Sigma Aldrich社製)である。化学量論量の化学物質を脱イオン水に溶解し、10%超過のLiNO3を添加して、高温合成中のリチウム揮発を補った。クエン酸及びエチレングリコール(モル比1:1)が溶液に添加された。このような溶液をホットプレート上で徐々に蒸発させ、撹拌によって前駆体ゲルを生成し、400℃で10時間加熱して有機物を燃焼させた。その後、得られた粉末をボールミルし、ペレットで加圧して800℃で10時間焼成した。次に、合成された粉末をペレットに一軸方向に加圧し、これを1050℃で同一の粉末で覆われたアルミナボート内で12時間焼結した。直径2.54,1.27,0.79cmの得られたLLCZNペレットを#200、#500、及び#1200(LECO)の細かいサンドペーパーを用いて平坦な表面を有する約150~200μmの厚さに均一に研磨した。
【0071】
特性化。SEM(走査型電子顕微鏡)は、Hitachi SU-70分析走査型電子顕微鏡で行った。相分析は、40kV及び40mAで作動するCu Kα放射源を用いて、LynxEye及びSolXを備えたD8 Advanced(Bruker AXS、WI、USA)上の粉末X線回折法(XRD)を用いて行った。
【0072】
LLCZN電解質ペレットの原子層蒸着法。原子層蒸着法は、Al2O3蒸着法のBeneqTFS 500で実行された。150℃の高密度窒素を、工程全体のキャリア気体として使用した。典型的に、1nmのAl2O3コーティングに対して、10 ALDサイクルが実行された。それぞれのサイクルは、純窒素ガス(4及び10秒、キャリア及び洗浄ガス)の流れによってで分離されたトリメチルアルミニウム(TMA、4秒、Al前駆体)及び水(4秒、酸化剤)のまた他の流れを含んである。Al2O3の超薄膜層は、原子力顕微鏡(AFM)を用いたSiウェハ上の対照に従って評価された。
【0073】
Li金属コーティングされたLLCZNの組み立て。薄膜Li箔ディスク(直径0.8cm及び厚さ0.2mm)を、超高純度Arで充填したグローブボックス内でALD-Al2O3処理されたLLCZNペレット上に置き、次いで積層されたLi/LLCZNペレットを250℃で60分間加熱して、ステンレス鋼ディスク(各1.5g)の6つによって0.26psiの圧力を適用する。このような小さな圧力は、ガーネットの表面上で溶融したリチウムの初期接触を助けると推定された。対照群に対し、新しく研磨されたLLCZNペレットは、同一の手順によってリチウム金属と共に組み立てられた。室温で冷却した後、薄膜リチウムディスクをペレット上に接着した。走査型電子顕微鏡(SEM)は、ピンセットによって分離することによって得られた試料の断面に対して実行された。
【0074】
第1原理計算は、密度汎関数理論(DFT)にPerdew-Burke-Ernzerhofの一般化勾配近似(GGA)とPAW(projector augmented-wave)アプローチによるVASP(Vienna Ab initio Simulation Package)を用いて行われた。グランド電位相図の物質エントリは、物質プロジェクトデータベースから得られた。非晶質Li金属のスラブ及びLi2CO3又はリチウム化されたアルミナのスラブを含む界面モデルは、30psの間、513Kで第1分子力学シミュレーションを使用して平衡化された。結合エネルギーは、界面のエネルギーから分離した表面スラブのエネルギーを引いた値として計算された。
【0075】
[実施例2]
以下の実施例は、本開示の界面層の製造の一例を提供する。
このような例は、ガーネット系SSEに焦点を合わせているが、その他のSSE化学物質にも公知の技術が適用可能であることが期待される。低い界面インピーダンス固体電池を得るために、次の技術的な問題を解決することが望ましい場合がある。電荷移動及び輸送のための大きな界面インピーダンス、及び電気化学的充放電サイクルの界面の機械的劣化。
【0076】
ガーネット及びLFMO電極のEISの界面が特性化された。ガーネットペレットの表面上の構造が界面インピーダンスを減少させることが分かった。PFPE不燃性の溶媒が製造され、PFPE/LiTFSI電解質を試験し、0~4.2ボルト(v)の電圧領域で電気化学的に安定であることが分かる。PVDF-HFPゲル膜を製造し、ゲル膜内のイオン性液体電解質の安定性及びインピーダンスを試験した。
【0077】
電解質/カソード界面の特性化、LLCZN固体状電解質のインピーダンス及びLFMO電極の界面インピーダンスが試験された。方法及び結果を以下に示す。
LLCZN(Li6.8(La2.95、Ca0.05)(Zr1.75、Nb0.25)O12)ガーネットは、次の以下のようにして合成された。LLZO-CaNbは、従来の固体状反応によって製造した。初期物質、Li(OH)、La(OH)3、Ca(OH)2、ZrO2、及びNb2O5は、平板ボールミルによって混合した後、700℃で48時間(h)焼成した。添加剤としてのLi3BO3粉末は、600℃でLi2CO3及びB2O3の混合物を加熱して製造された。焼成したLLZO-CaNb粉末は、平板ボールミルによって添加剤(Al2O3及びLi3BO3の両方、Al2O3単独又はLi3BO3単独)と混合した。混合物は、10MPaでペレットに型押して、790℃で40時間空気中で焼結した。
【0078】
Li2FeMn3O8(LFMO)の合成。LFMOは、変更された文献によって合成された。簡略に説明すると、まず、硝酸リチウム、硝酸鉄、硝酸マンガン(モル比2:1:3)及びグリシンを脱イオン水に溶解してグリシン硝酸塩混合溶液を製造した。硝酸塩対グリシンのモル比は、2:1である。次に、LFMO粉末は、300℃でグリシン硝酸塩溶液の燃焼反応後、700℃で2時間のアニーリングによって得られた。
【0079】
電池アッセンブリ及び電気化学的試験。酸素及び水分に対するLi金属の敏感性により、対称セル及びフルセルを含む全てのセルは、0.1及び0.01ppm下の水分及び酸素レベルを有し超高純度のアルゴン(99.999%)で充填されたグローブボックスで組み立てられて試験された。一般的なLLCZN/Liアッセンブリにおいて、Li箔は約0.2mmで加圧された後、直径0.79cmを有する薄いディスクでパンチングされた。薄いLi箔ディスクは、一対のプラスチック製ピンセットで一側又は両側にALD-Al2O3コーティングされたLLCZNペレット上に分散して徐々に加圧された。6つのステンレス鋼(合計9g)は、Li箔上に載せられた。次に、積層されたLi/ALD-Al2O3コーティングされたLLCZN/Liセルをグローブボックス内のオーブン内に入れ、次いで250℃で1時間加熱した後に室温まで自然冷却した。LLCZN/Liは使用の準備ができた。ステンレス鋼は、集電体として使用された。カソードディスクは、グローブボックスの外側に製造された。合成されたLFMOは、NMP(溶媒、N-メチル-2-ピロリドン)中80:10:10の質量比でカーボンブラック及びPVDFと完全に混合された。このような混合物は、清浄かつ平坦なAl箔上にコーティングされた。空気中で乾燥させた後、カソードスラリーでコーティングされたAl箔を真空オーブン内に入れ、110℃で一晩乾燥した。カソードディスク(直径0.79cm)でパンチングした。質量測定は、マイクロバランス(Sartorius)を用いて実施した。フルセルは、Li/ALD-Al2O3-LLCZNペレットのベア側上にカソードディスクを置いて組み立て、少量の高圧有機電解質がカソードとLLCZNペレットとの間に液体界面層として添加された。組み立てられたセルは、電気ケーブルと接続された鰐口クリップを使用して固定した。セルは、全ての試験中にグローブボックスで保持された。このような試験は、室温(23~25℃)で、グローブボックスからのフィードスルーを介してパイオロジック社(BioLogic)の電池テスタを用いて実行された。カット電圧は、3.5V及び5.3Vであり、電流密度は、0.1C(1C=150mA/g)であった。
【0080】
ゲル及びPFPE系の物質の合成及び特性化。不燃性PFPE系電解質。PFPE-DMCは、次の段階で製造された。まず、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン中のフルオロリンクD10(fluorolink D10)及びトリエチルアミンは、撹拌条件及び窒素の雰囲気下で0℃で溶解した後、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン中のクロロぎ酸メチルの溶液を滴下した。混合物を25℃で12時間撹拌した後、PFPE-DMC生成物は、濾過及び水及び塩水で洗浄した後、還元雰囲気下で蒸発させて得た。PFPE-DMC電解質は、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドをPFPE-DMC中に溶解してガーネット膜内に真空充填して製造され、ガーネット電解質とカソード材料との間の中間層として役割をする。
【0081】
CR2025コインセル内に構築されたLi/PFPE/Ti構造を使用してPFPE/LiTFSI電解質のサイクリックボルタンメトリー(CV)をテストした。セルの面積は、1.98cm2(半径=5/16インチ)であり、チタンカソードの面積は、0.712cm2(半径=5/32インチ)である。電圧範囲は、-0.3~4.2Vであり、電圧走査速度は、1mV/sである。
【0082】
反応電流密度は、0.3~4.2Vの領域において0.002mA未満であり、非常に小さい。最初の数サイクル後、CV曲線は安定する。このような2つの事実によれば、PFPE電解質は、0~4Vの間で電気化学的に安定であることを示している。また、PFPE電解質に対して、-0.3~4.2Vの電圧領域で明らかなピークが現れず、これは4.2Vより高い電圧でLi剥離(stripping)が発生し、-0.3Vより低い電圧でLiメッキ(platting)が発生することを意味する。0~4.2Vの電圧範囲でPFPE/LiTFSIの電気化学的安定性は、このような電解質がLLCZNガーネット電解質リチウムイオン電池の反応において安定することを保証し、ガーネットとカソードとの間の界面層として使用してもよい。
【0083】
ゲル系電解質。PVDF-HFP系ゲルポリマーは、次の段階によって製造された。0.25gのPVDF-HFPは、1時間の連続的撹拌下で4.75gのアセトン及び0.25gのDI水(95:5、m/m)の混合物に溶解した。溶液は、Al箔上にキャストされ、溶媒は、周辺温度で蒸発された。
図12は、PVDF-HFPゲル膜の(a)化学式、及び(b)上面及び(c)側面SEM画像を示す。100℃で2時間真空乾燥した後、均質な自立膜を得た。
【0084】
製造された多孔質膜を、0.1ppm未満の水及び酸素含量を有するアルゴンで充填されたグローブボックス内でテトラエチレングリコールジメチルエーテルとn-メチル-(n-ブチル)ピロリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Py14TFSI)との1:1体積比の混合物中の1M LiTFSI内の室温で30分間保持する。
【0085】
セルのサイクリックボルタンメトリー(CV)試験は、リチウムとチタンディスクとの間に高分子ゲル電解質膜を挟み込み、CR2032コインセル内に封止するように構成した。1mV/sの走査速度のサイクリックボルタンメトリーは、このような高分子ゲル電解質の安定した電気化学的窓が最大4.2Vであることを示唆している。-0.2Vの鋭いピークはLiメッキに対応し、0.1V周辺のピークはLi剥離に起因する。
【0086】
図13は、LCZN電解質/LFMOカソード界面におけるインピーダンスの低下に対するゲルポリマーの効果を示す。純粋なLLCZN電解質/LFMOカソードは、300kΩ×cm
2の大きい抵抗を示し、これは、中低周波数領域における電解質及びカソードのバルク抵抗と、電解質及びカソード間のかなりの界面抵抗から構成される。ゲル界面層の導入は、高いLiイオン伝導経路、電解質及びカソード間の等角及び弾性接触を提供し、拡大されたプロットの中間周波数領域に示されるように界面抵抗の大きい減少につながる。また、EIS曲線は、低周波数でワールブルグ・インピーダンスからなる異なる形状を示し、これは、金ブロック電極の容量挙動に対応する。
【0087】
LLCZNガーネット電解質とLFMO電極との間の界面インピーダンスが試験され、ガーネットペレットの表面上の構造が界面インピーダンスを低減することが分かった。
PVDF-HFPゲル膜を製造し、SEM下で望ましい気孔構造を示した。サイクル電気化学的試験は、ゲル電解質が0~4.2Vの間で電気化学的に安定であることを示した。これは、ガーネット電解質とLFMOカソードとの間の界面層として使用できることを意味する。LLCZN/ゲル/LFMOのEISを試験した。総インピーダンスは、界面層のないLLCZN/LFMO系に比べて減少した。
【0088】
また、PFPE不燃性の電解質が製造された。Li/PFPE/Ti系のサイクル電気化学的試験は、この電解質が、0~4.2Vの間で安定であることを示しており、これは、ガーネット電解質とLFMOカソードとの間の界面として使用できることを意味する。
【0089】
[実施例3]
以下の実施例は、本開示の界面層の製造の一例を提供する。
本明細書に開示された界面の工学的方法に基づいて、SSLiBは、Li金属アノード、ガーネット電解質、及び高電圧カソードを使用して成功的に設計されて作動した。このような構造は、アノード(金属酸化物)及びカソード(ポリマー/イオン伝導性液体)に対して異なる界面層を有する。このような構造の電気的特性を、
図11に示す。
【0090】
Li2FeMn3O8(LFMO)の合成。LFMOは、変更された文献によって合成された。簡略に説明すると、まず、硝酸リチウム、硝酸鉄、硝酸マンガン(モル比2:1:3)及びグリシンを脱イオン水に溶解してグリシン硝酸塩混合溶液を製造した。硝酸塩対グリシンのモル比は、2:1である。次に、LFMO粉末は、300℃でグリシン硝酸塩溶液の燃焼反応後、700℃で2時間のアニーリングによって得られた。
【0091】
電池アッセンブリ及び電気化学的試験。酸素及び水分に対するLi金属の敏感性のために、対称セル及び完全セルを含む全てのセルは、0.1及び0.01ppm未満の水分及び酸素レベルで超高純度のアルゴン(99.999%)が充填されたグローブボックス内で組み立ててテストした。一般的なLLCZN/Liアセンブリでは、Li箔は約0.2mmに加圧された後、直径0.79cmの薄膜ディスクでパンチングした。薄膜Li箔ディスクは、一対のプラスチック製ピンセットで一側又は両側にALD-Al2O3コーティングされたLLCZNペレット上に分散して徐々に加圧された。6つのステンレス鋼(合計9g)をLi箔上に載せた。次いで積層されたLi/ALD-Al2O3コーティングのLLCZN/Liセルをグローブボックス内のオーブンに入れ、250℃で1時間加熱した後に室温まで自然冷却した。その後、LLCZN/Liは、使用する準備ができた。集電体としてステンレス鋼が使用された。カソードディスクは、グローブボックスの外側に製造された。合成されたLFMOは、NMP(溶媒、N-メチル-2-ピロリドン)内で80:10:10の質量比でカーボンブラック及びPVDFと完全に混合した。このような混合物を清浄かつ平坦なAl箔上にコーティングした。空気中で乾燥した後、カソードスラリーコーティングされたAl箔は、真空オーブン内に入れて110℃で一晩乾燥した。カソードディスク(直径0.79cm)でパンチングした。質量測定は、マイクロバランス(Sartorius)を用いて実行された。Li/ALD-Al2O3-LLCZNペレットのベア側上にカソードディスクを置いてフルセルを組み立て、少量の高圧有機液体電解質は、液体界面層としてカソードとLLCZNペレットとの間に添加された。組み立てられたセルは、電気ケーブルと接続された鰐口クリップを使用して固定された。セルは、全ての試験の間グローブボックス内で保持された。試験は、室温(23~25℃)で、グローブボックスからのフィードスルーを介してパイオロジック社(BioLogic)の電池テスタを用いて実行された。カット電圧は3.5V及び5.3Vであり、電流密度は0.1C(1C=150mA/g)である。
【0092】
Li金属アノード及びALDコーティングされたLLCZNを有する作用セル(例えば、
図10(a))。開発されたLi金属アノードとガーネット電解質との間の効果的な界面は、潜在的に広範囲な高エネルギー密度Liイオン電池を可能にしてもよい。ガーネット電解質は、6Vまで安定であるため、Li
2FeMn
3O
8(LFMO)の高電圧化学は、カソード材料として選択された。LFMO、カーボンブラック(CB)、及びポリフッ化ビニリデン(PVDF、バインダ)を含むカソード電極は、Al箔上の従来のスラリーコーティングによって製造された。カソード複合材とガーネット界面との間の界面を改善するために、少量の液体有機電解質を添加してカソード/電解質界面層を形成した。高度にフッ素化された溶媒中に1.0MのLiPF
6を溶解することによって製造された有機電解質は、4.8Vまで安定であることが知られている。試験は、超高純度のアルゴンで満たされたグローブボックス内で密封されていないフルセルを用いて実施された。
図10(b)は、0.1C(1C=150mA/g)での第1サイクルの電圧プロファイルを示す。2つのグループの明確に定義されたプラトーが、放電に対して4.0V及び4.9V、充電に対して4.1V及び5.0Vと観察され、作用フルセル及びLi金属アノードを小さい過電位(0.1V)と実証した。セルは、第1サイクルでクーロン効率83%を有し、容量103mAh/g(LFMOの70%の理論的な比容量)を伝達する。次の5つのサイクルに対して、一般的に分解された容量(
図10(c))は、界面層中の揮発性有機溶媒の蒸発によるものである。それにもかかわらず、6つのサイクルでは、依然としてLFMOの特異的プラトーを示した(
図10(b))。セル試験は、6回目のサイクル後に停止し、界面層の新しい有機電解質を補充して再始動した。予想通り、セルは直ぐに回復し、容量は充分に定義された充放電プラトーで固有値の87%まで増加した(
図10(b),(c))。
図10(d)は、作用セルの写真を示す。発光ダイオード(LED)に電力を供給する。
【0093】
本開示は、1つ以上の特定の実施形態に対して開示されるが、本開示のその他の実施形態が本開示の範囲を逸脱せずに行われることが理解される。従って、本開示は、添付の請求の範囲及びその合理的な解釈によってのみ限定されるとみる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明。