IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社ワコムの特許一覧

<>
  • 特開-計算機によって実行される方法 図1
  • 特開-計算機によって実行される方法 図2
  • 特開-計算機によって実行される方法 図3
  • 特開-計算機によって実行される方法 図4
  • 特開-計算機によって実行される方法 図5
  • 特開-計算機によって実行される方法 図6
  • 特開-計算機によって実行される方法 図7
  • 特開-計算機によって実行される方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120109
(43)【公開日】2024-09-03
(54)【発明の名称】計算機によって実行される方法
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20240827BHJP
   G06F 3/0354 20130101ALI20240827BHJP
【FI】
G06F3/041 560
G06F3/0354 453
【審査請求】有
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024105952
(22)【出願日】2024-07-01
(62)【分割の表示】P 2023139758の分割
【原出願日】2019-04-24
(71)【出願人】
【識別番号】000139403
【氏名又は名称】株式会社ワコム
(74)【代理人】
【識別番号】110004277
【氏名又は名称】弁理士法人そらおと
(72)【発明者】
【氏名】門脇 淳
(57)【要約】
【課題】ペン位置が検出された場合にもしペン位置を割り当てるための論理領域が決定されていなくても、新たな論理領域を決定してペン位置を割り当てることを可能にする。
【解決手段】指が接触しているタッチ面内の位置であるタッチ位置と、ペンが接触しているタッチ面内の位置であるペン位置とのそれぞれを、タッチ面の座標系により表現された絶対座標により出力する方法であって、ペン位置が検出されたと判定した場合には、論理領域が決定済みであるか否かを判定し、決定済みであると判定した場合に、タッチ面の座標系により表現された該ペン位置を示す絶対座標を、決定済みの論理領域の座標系により表現された絶対座標に変換する一方、論理領域が決定済みでないと判定した場合、オペレーティングシステムによりフォーカスされているウインドウ領域などに基づいて論理領域を決定し、メモリ内に保持する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
計算機によって実行される方法であって、
指が接触しているタッチ面内の位置であるタッチ位置、及び、ペンが接触している前記タッチ面内の位置であるペン位置のいずれが検出されたかを判定し、
前記タッチ位置が検出されたと判定した場合には、前記タッチ面の座標系により表現された該タッチ位置を示す絶対座標を、該タッチ位置の移動した距離及び方向を示す相対座標に変換し、
前記ペン位置が検出されたと判定した場合には、論理領域が決定済みであるか否かを判定し、決定済みであると判定した場合に、前記タッチ面の座標系により表現された該ペン位置を示す絶対座標を、決定済みの前記論理領域の座標系により表現された絶対座標に変換する一方、前記論理領域が決定済みでないと判定した場合、オペレーティングシステムによりフォーカスされているウインドウ領域、カーソルが含まれているウインドウ領域、或いは、ユーザ操作又はアプリケーションによって設定された領域に基づいて前記論理領域を決定し、メモリ内に保持する、
方法。
【請求項2】
前記ペン位置の検出が所定期間停止した場合に、前記メモリから前記論理領域を削除する、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タッチ位置が検出されたと判定した場合に、前記メモリから前記論理領域を削除する、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ペン位置に続けて前記タッチ位置が検出されたと判定した場合に、該ペン位置を起点として前記相対座標を検出する、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タッチパッド用のシステムに関し、特に、計算機に対して指及びペンの両方による入力操作を可能にするタッチパッド用のシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
表示装置に重畳配置されたセンサ電極群を用いて、表示面に対するペン及び指それぞれの接触位置を時分割で検出し、オペレーティングシステムに供給する入力システムが知られている。特許文献1には、このような入力システムの一例が開示されている。オペレーティングシステムに供給された位置は、カーソルの移動制御や、描画アプリケーションに対する線画の入力などに用いられる。
【0003】
この種の入力システムからオペレーティングシステムに実際に供給されるデータは、通常、表示面の座標系により表現された座標となる。例えば、長方形である表示面の長辺をx軸、短辺をy軸として定まる二次元座標(x,y)が、ペンや指の接触位置としてオペレーティングシステムに供給される。以下、このように、ある表面の座標系により表現された座標を「絶対座標」と称する。
【0004】
また、ノート型のパソコンなどには、タッチパッドと呼ばれる入力システムを有するものがある。タッチパッドは、ユーザが指を滑らせることのできる平面(以下、「タッチ面」という)を有する装置であり、このタッチ面に対する指の接触位置(以下、「タッチ位置」という)を検出し、オペレーティングシステムに供給するよう構成される。特許文献2には、このようなタッチパッドの一例が開示されている。
【0005】
タッチパッドからオペレーティングシステムに実際に供給されるデータは、通常、タッチ位置の移動した距離及び方向を示すデータとなる。例えば、ある時点で検出されたタッチ位置(x,y)を終点とし、その直前に検出されたタッチ位置(x,y)を起点とするベクトルを示す座標(x-x,y-y)が、指のタッチ位置を示すデータとしてオペレーティングシステムに供給される。以下、このようにタッチ位置の移動した距離及び方向を示すデータを「相対座標」と称する。なお、起点となる座標が存在しない場合(すなわち、指がタッチ面に触れた直後)には、オペレーティングシステムへのデータ供給は行われない。相対座標を用いることで、ユーザは、相対的に狭いタッチ面上の同じ領域を繰り返し指でなぞることにより、相対的に広い表示面の全域にカーソルを移動させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6473554号
【特許文献2】米国特許第9207801号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、本願の発明者は、タッチ位置だけでなく、タッチ面に対するペンの接触位置(以下、「ペン位置」という)をも検出できるようにタッチパッドを構成することを検討している。
【0008】
しかしながら、本願の発明者がこのようなタッチパッドの実現に向けて詳細な検討を進めたところ、タッチパッドでペン入力を行えるようにしたとしても、線画の入力を正常に行うことは難しい、ということが判明した。つまり、線画を入力する場合には、タッチ面上の位置と表示面上の位置とが一対一に対応していなければならないが、タッチパッドの出力に用いられる相対座標ではそのような関係が成立しないため、線画を正常に入力できなくなるのである。
【0009】
タッチパッドからオペレーティングシステムに供給されるデータを相対座標から上述した絶対座標(この場合、タッチ面の座標系により表現された座標)に変更すれば、ひとまずペンによる線画の入力は可能になる。しかしながら、タッチ面は表示面に比べてかなり小さいことが一般的であるため、この構成によっても、細かい線画を入力することは難しい。加えて、タッチパッドからオペレーティングシステムに供給されるデータを絶対座標に変更してしまうと、上記したような相対座標のメリットが得られなくなるため、指によって行うカーソルの移動制御に支障が生ずることになる。
【0010】
したがって、本発明の目的の一つは、指によるカーソル制御、及び、ペンによる線画入力の両方を好適に実現できるタッチパッド用のシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によるタッチパッド用のシステムは、計算機に対して指及びペンの両方による入力操作を可能にするタッチパッド用のシステムであって、前記システムは、センサ電極群と、集積回路と、前記計算機で実行されるデバイスドライバとを含み、前記センサ電極群は、前記計算機の表示面とは別の領域であるタッチ面に重畳して配置され、前記集積回路は、前記センサ電極群を用いて、前記指が接触している前記タッチ面内の位置であるタッチ位置と、前記ペンが接触している前記タッチ面内の位置であるペン位置とのそれぞれを検出し、前記タッチ面の座標系により表現された絶対座標により、検出した前記タッチ位置及び前記ペン位置を前記デバイスドライバに供給するよう構成され、前記デバイスドライバは、前記集積回路から前記タッチ位置の供給を受けた場合には、該タッチ位置を、該タッチ位置の移動した距離及び方向を示す相対座標に変換して出力し、前記集積回路から前記ペン位置の供給を受けた場合には、該ペン位置を、該ペン位置の供給を受けた時点で保持している論理領域の座標系により表現された絶対座標に変換して出力する、タッチパッド用のシステムである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、集積回路から供給された接触位置の種別(タッチ位置又はペン位置)によって異なる方法でデバイスドライバが座標の変換を行うので、指によるカーソル制御、及び、ペンによる線画入力の両方を好適に実現することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の第1の実施の形態によるノートパソコン1を示す図である。
図2図1に示したノートパソコン1の内部構成及び機能ブロックを示す図である。
図3図2に示した集積回路31によって実行される位置検出を時系列で図示してなる図である。
図4図2に示したデバイスドライバ20が行う処理の詳細を示すフロー図である。
図5図4のステップS4で行われる論理領域の決定の説明図である。
図6】(a)は、図4のステップS5で行われる変換の説明図であり、(b)は、図4のステップS10で行われる変換の説明図である。
図7】(a)は、本発明の第1の実施の形態の第1の変形例による論理領域の決定方法を示す図であり、(b)は、本発明の第1の実施の形態の第2の変形例による論理領域の決定方法を示す図である。
図8】本発明の第2の実施の形態によるタッチパッド3を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施の形態によるノートパソコン1を示す図である。同図に示すように、ノートパソコン1は持ち運び可能に構成された計算機であり、筐体2と、タッチ面Tを有するタッチパッド3と、右クリックボタン4と、左クリックボタン5と、キーボード6と、表示面Hを有するディスプレイ7とを有して構成される。なお、図1の例では、タッチ面Tとは別に右クリックボタン4及び左クリックボタン5が設けられているが、タッチ面T自体をクリックボタンとして構成することも可能である。
【0016】
図2は、ノートパソコン1の内部構成及び機能ブロックを示す図である。同図に示すように、ノートパソコン1は、入出力回路11、CPU12、及びメモリ13がバス14を介して相互に接続された構成を有して構成される。
【0017】
CPU12はノートパソコン1の中央処理装置(Central Processing Unit)であり、メモリ13に記憶されるプログラムを読み出して実行する役割を担う。こうして実行されるプログラムには、ノートパソコン1のオペレーティングシステム、描画アプリケーションなどの各種アプリケーション、各種ハードウェアのデバイスドライバなどが含まれる。図2には、このうちタッチパッド3のデバイスドライバ20のみを図示している。
【0018】
ここで、図1には、ディスプレイ7の表示面H上に、カーソルCと、署名欄101を有する契約書100とが表示されている状態を示している。カーソルCは、CPU12がオペレーティングシステムを実行することによって表示され、契約書100は、CPU12が文書作成アプリケーションを実行することによって表示される。
【0019】
図2に戻り、メモリ13は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)などの主記憶装置と、ハードディスクなどの補助記憶装置とを含む記憶装置である。このようなメモリ13には、CPU12によって実行される各種プログラムと、この各種プログラムによって参照、生成、更新される各種データとが格納される。
【0020】
入出力回路11は、ノートパソコン1の内部及び外部に設置される各種ハードウェアをCPU12に接続するためのインターフェイスとして機能する回路である。具体的には、USB(Universal Serial Bus)規格に対応した回路などによって構成され得る。入出力回路11によってCPU12に接続されるハードウェアには、図2に示すように、タッチパッド3、右クリックボタン4、左クリックボタン5、キーボード6、ディスプレイ7が含まれる。
【0021】
右クリックボタン4及び左クリックボタン5はそれぞれ、押下したユーザがクリック感を感じられるように構成された押しボタンスイッチであり、クリック操作を入力するために用いられる。キーボード6は、複数の文字キー、複数の記号キー、複数の機能キーを含む各種のキーを含んで構成される。右クリックボタン4及び左クリックボタン5並びにキーボード6内の各種キーが押下されたという情報は、入出力回路11を介して、CPU12に通知される。
【0022】
ディスプレイ7は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイによって構成される表示装置である。このディスプレイ7は、CPU12から入出力回路11を介して供給される描画データに応じて、図1に示した表示面Hに文字や画像を表示する役割を果たす。
【0023】
タッチパッド3は、タッチパネル30及び集積回路31を有して構成される。このうちタッチパネル30は、静電容量方式に対応したタッチパネルであり、ノートパソコン1の表示面Hとは別の領域であるタッチ面T(図1を参照)と、タッチ面Tの直下に配置されたセンサ電極群とにより構成される。
【0024】
タッチ面Tは、ユーザが図1に示した指F及びペンPを滑らせることに適した平面によって構成される。タッチ面Tの具体的な構造は、特に電気的な機能を有しない単なる平板であってもよいし、いわゆるブギーボード(登録商標)のように、ペンPの軌跡がタッチ面T上で可視化される構造であってもよい。後者の構造については、第2の実施の形態で詳しく説明する。
【0025】
センサ電極群は、一例では、それぞれ長方形であるタッチ面Tの短辺方向に延在する複数の線状電極(以下、「X電極」と称する)と、それぞれ長方形であるタッチ面Tの長辺方向に延在する複数の線状電極(以下、「Y電極」と称する)とにより構成される。各X電極は、タッチ面Tの長辺方向に沿って等間隔に配置され、各Y電極は、タッチ面Tの短辺方向に沿って等間隔に配置される。ただし、センサ電極群の構成はこのようなものに限られず、例えば、マトリクス状に配置した複数の島状電極によってセンサ電極群を構成することも可能である。
【0026】
集積回路31は、上記センサ電極群を用いて、指Fが接触しているタッチ面T内の位置であるタッチ位置と、ペンPが接触しているタッチ面T内の位置であるペン位置とを検出する処理を行う。位置検出の具体的な方法は特に限定されないが、例えば、静電容量方式によるタッチ位置の検出と、アクティブ静電方式によるペン位置の検出とを時分割で行う、という検出方法を採用することが好ましい。集積回路31により検出されたタッチ位置及びペン位置は、入出力回路11を介して、デバイスドライバ20に供給される。この場合において、集積回路31からデバイスドライバ20に実際に供給されるデータは、タッチ面Tの座標系により表現された絶対座標となる。
【0027】
図3は、集積回路31によって実行される位置検出を時系列で図示してなる図である。同図に示すように、集積回路31は、タッチ位置の検出と、ペン位置の検出とを時分割で行うよう構成される。
【0028】
図3には、ユーザが、時刻t1までの間に、図1に示した署名欄101内にカーソルCを移動させるとともに署名欄101にフォーカスを与え、その後の時刻t2から時刻t3までの間に、署名欄101に自身の指名を記入する、という場合の例を示している。
【0029】
この例では、ユーザはまず、タッチ面T上で指Fを摺動させることによって、カーソルCを署名欄101内に移動させる。そして、図1に示した左クリックボタン5を押下することによって、署名欄101にフォーカスを与える(~時刻t1)。この間、集積回路31からはタッチ位置のみが連続して出力され、ペン位置は出力されないことになる。
【0030】
その後ユーザは、手にペンPを持ち、タッチ面T上で自身の氏名を入力する(時刻t2~時刻t3)。この間、集積回路31からはペン位置のみが連続して出力され、タッチ位置は出力されないことになる。
【0031】
図2に戻る。デバイスドライバ20は、タッチパネル30内のセンサ電極群や集積回路31などとともにタッチパッド用のシステムを構成する機能部であり、機能的に、タッチ位置変換処理部21と、ペン位置変換処理部22とを有して構成される。タッチ位置変換処理部21は、集積回路31から供給されたタッチ位置を示す座標(タッチ面Tの座標系により表現された絶対座標)を、該タッチ位置の移動した距離及び方向を示す相対座標に変換して出力する役割を果たす。一方、ペン位置変換処理部22は、集積回路31から供給されたペン位置を示す座標(タッチ面Tの座標系により表現された絶対座標)を、該ペン位置の供給を受けた時点で保持している論理領域(ユーザ操作によって設定される表示面H内の任意の領域。詳しくは後述する)の座標系により表現された絶対座標に変換して出力する役割を果たす。
【0032】
図4は、デバイスドライバ20が行う処理の詳細を示すフロー図である。以下、同図を参照しながら、デバイスドライバ20が行う処理について詳しく説明する。
【0033】
図4に示すように、デバイスドライバ20はまず、タッチパッド3からの割り込み発生を監視する(ステップS1)。そして、タッチパッド3からの割り込みが発生した場合、タッチパッド3から供給されたデータがペン位置及びタッチ位置のいずれであるかを判定する(ステップS2)。
【0034】
ステップS2においてペン位置であると判定した場合、デバイスドライバ20は、論理領域を決定済みであるか否かを判定する(ステップS3)。ここで決定済みでないと判定した場合、デバイスドライバ20は、オペレーティングシステムによりフォーカスされているウインドウ領域に基づいて、論理領域を決定する(ステップS4)。ステップS4で決定された論理領域は、デバイスドライバ20により、図2に示したメモリ13内に保持される。
【0035】
図5は、ステップS4で行われる論理領域の決定の説明図である。同図には、オペレーティングシステムによりディスプレイ7上に、サブウインドウ領域W2を含むウインドウ領域W1が表示されている例を示している。サブウインドウ領域W2は、例えば、図1に示した署名欄101である。
【0036】
ユーザ操作によりサブウインドウ領域W2にフォーカスが与えられているとすると、デバイスドライバ20は、このサブウインドウ領域W2の全体が含まれるように、論理領域Rの決定を行う。より具体的に説明すると、デバイスドライバ20は、長方形であるサブウインドウ領域W2の長辺と同じ長さの長辺を有し、かつ、タッチ面Tと同じ向きで同じアスペクト比を有する論理領域R1、及び、長方形であるサブウインドウ領域W2の短辺と同じ長さの短辺を有し、かつ、タッチ面Tと同じ向きで同じアスペクト比を有する論理領域R2、という2つの論理領域R1,R2のうち、それぞれをサブウインドウ領域W2の中央に揃えて配置した場合にサブウインドウ領域W2の全体が含まれることとなる一方(図5では、論理領域R1)を論理領域Rとして決定する。ただし、アスペクト比が等しくなくても構わない場合(すなわち、タッチ面T上に記入した線画が表示面H上で縦又は横に引き延ばされた状態になっても構わない場合)には、サブウインドウ領域W2そのものを論理領域として決定することとしてもよい。
【0037】
図4に戻る。ステップS4で論理領域を決定した場合、又は、論理領域を決定済みであるとステップS3において判定した場合、デバイスドライバ20は、集積回路31から供給されたペン位置を、決定した論理領域の座標系により表現された絶対座標に変換して出力する(ステップS5)。
【0038】
図6(a)は、ステップS5で行われる変換の説明図である。同図に示すように、タッチ面Tがx=0~x、y=0~yの領域であり、論理領域RがX=0~X、Y=0~Yの領域であるとすると、ステップS5で出力される絶対座標(X,Y)は、次の式(1)によって表される。
(X,Y)=(x×X/x,y×Y/y) ・・・(1)
【0039】
図4に戻る。ステップS5で絶対座標を出力したデバイスドライバ20は、ステップS1に戻って、タッチパッド3からの割り込み発生を監視する。ここで、デバイスドライバ20は、この監視を行っている間、前回のペン位置の供給からの時間の経過を計測する。そして、所定時間が経過した場合にステップS4で決定した論理領域がまだメモリ13内に保持されていれば、その論理領域を解除する(ステップS6,S7)。すなわち、メモリ13内から削除する。この後は、ステップS3の判定結果が「決定済みでない」に戻ることになる。
【0040】
次に、ステップS2においてタッチ位置であると判定した場合、デバイスドライバ20は、その時点でメモリ13内に論理領域が保持されていれば、ステップS10と同様にその論理領域を解除した後(ステップS8)、今回のタッチ位置の1つ前に供給されたタッチ位置又はペン位置を取得する(ステップS9)。そして、今回供給されたタッチ位置を、ステップS7で取得した位置からの距離及び方向を示す相対座標に変換して出力する(ステップS10)。
【0041】
図6(b)は、ステップS10で行われる変換の説明図である。同図に示す点PはステップS7で取得された位置であり、点PはステップS1で供給された位置である。また、図示したベクトルVは、点Pを起点、点Pを終点とするベクトルである。ステップS8の変換の結果として得られる相対座標は、このベクトルVのx方向成分V及びy方向成分Vを用いて、(V,V)と表される。
【0042】
図4に戻る。ステップS10で相対座標を出力したデバイスドライバ20は、ステップS1に戻って、タッチパッド3からの割り込み発生を監視する。その後は、上述した処理の繰り返しとなる。
【0043】
以上説明したように、本実施の形態によるタッチパッド用のシステムによれば、集積回路31から供給された接触位置の種別(タッチ位置又はペン位置)によって異なる方法でデバイスドライバ20が座標の変換を行うので、指Fによるカーソル制御、及び、ペンPによる線画入力の両方を好適に実現することが可能になる。
【0044】
また、本実施の形態によるタッチパッド用のシステムによれば、タッチ位置の移動した距離及び方向を示す相対座標によりタッチ位置が出力されるので、指Fにより、従来のタッチパッドと同様のカーソル制御を実現することが可能になる。
【0045】
さらに、本実施の形態によるタッチパッド用のシステムによれば、ペン位置の供給を受けた時点でデバイスドライバ20が保持している論理領域の座標系により表現された絶対座標によりペン位置が出力されるので、ペンPにより、表示面内の任意の領域に好適に線画を入力することが可能になる。
【0046】
また、本実施の形態によるタッチパッド用のシステムによれば、ペン位置に続けてタッチ位置が検出された場合に、該ペン位置を起点として相対座標が検出されることになるので、ペンPで最後に指定した表示面H上の位置からカーソルを移動させることが可能になる。
【0047】
なお、上記実施の形態では、オペレーティングシステムによりフォーカスされているウインドウ領域に基づいて論理領域を決定する例を説明したが、デバイスドライバ20は、その他の方法で論理領域を決定することも可能である。以下、そのような例を2つ挙げて説明する。
【0048】
図7(a)は、本実施の形態の第1の変形例による論理領域の決定方法を示す図である。本変形例によるデバイスドライバ20は、ノートパソコン1のカーソルCが含まれているウインドウ領域に基づいて論理領域を決定するように構成される。図7(a)の例では、表示面H上に2つのウインドウ領域W1,W2が表示されており、カーソルCは相対的に背面にあるウインドウ領域W1に含まれている。したがって、デバイスドライバ20は、図4のステップS4において、ウインドウ領域W1に基づいて論理領域Rを決定することになる。これによれば、背面にあるウインドウ領域(フォーカスされていないウインドウ領域)にも基づいて、論理領域Rを決定することが可能になる。
【0049】
なお、図7(a)の例では、論理領域Rの一部がウインドウ領域W2と重なっているが、このような領域についても、デバイスドライバ20は、通常どおりペン位置を示す絶対座標を出力すればよい。ウインドウ領域W2上に線画を表示することを可能にするか否かは、デバイスドライバ20から絶対座標の供給を受けたオペレーティングシステム又はアプリケーションが適宜決定すればよい。
【0050】
図7(b)は、本実施の形態の第2の変形例による論理領域の決定方法を示す図である。本変形例によるデバイスドライバ20は、ユーザ操作又はアプリケーションにより表示面H上に設定された領域に基づいて論理領域を決定するよう構成される。図7(b)の例では、いすれかのアプリケーションにより表示されているウインドウ領域W1の中に、ユーザ操作又はアプリケーションによって領域U(破線で囲まれた領域)が設定されており、本変形例によるデバイスドライバ20は、図4のステップS4において、この領域Uに基づいて論理領域Rを決定するよう構成される。これによれば、ウインドウ領域となっていない任意の領域にも基づいて、論理領域Rを決定することが可能になる。
【0051】
なお、領域Uの具体的な設定方法は特に限定されない。一例では、ユーザは、アプリケーションを論理領域設定モードにした状態でカーソルを対角線方向に移動させることにより領域Uを設定してもよいし、アプリケーションのメニュー画面において縦の長さ、横の長さ、及び位置を数値で指定することにより領域Uを設定してもよい。
【0052】
次に、本発明の第2の実施の形態によるタッチパッド用のシステムについて、説明する。本実施の形態によるタッチパッド用のシステムは、ペンPの軌跡がタッチ面T上で可視化される構造によりタッチ面Tが構成される点で、第1の実施の形態によるタッチパッド用のシステムと相違する。その他の点では第1の実施の形態によるタッチパッド用のシステムと同様であるので、同一の構成には同一の符号を付し、以下では、第1の実施の形態タッチパッド用のシステムとの相違点に着目して説明する。
【0053】
図8は、本実施の形態によるタッチパッド3を示す図である。同図に示すように、本実施の形態によるタッチパッド3は、タッチパネル30が感圧式ディスプレイ30A及びセンサ電極群30Bを有する点、及び、第1の実施の形態でも説明した右クリックボタン4及び左クリックボタン5をタッチパッド3内の構成として備える点で、第1の実施の形態によるタッチパッド3と相違する。
【0054】
本実施の形態によるタッチ面Tは、感圧式ディスプレイ30Aの表示面によって構成される。感圧式ディスプレイ30Aは、表示面が所定の閾値以上の圧力で押下された場合に、その部分の色が変化するように構成されたディスプレイである。色の変化を引き起こす圧力の閾値は、ペンPによってタッチ面Tに加えられる圧力よりも小さく、指Fによってタッチ面Tに加えられる圧力よりも大きい値に設定されており、したがって感圧式ディスプレイ30Aは、タッチ面TにペンPの軌跡を選択的に表示可能に構成される。
【0055】
また、感圧式ディスプレイ30Aは、所定の端子に所定値の電流を流し込むことによって、表示をリセット可能に構成される。リセットされた感圧式ディスプレイ30Aの表示面の色は、全体として、所定の閾値以上の圧力で押下される以前の色に戻る。したがってユーザは、ペンPにより、何も表示されていないタッチ面Tに新たに書き込んでいくことが可能になる。
【0056】
センサ電極群30Bは、第1の実施の形態で説明したセンサ電極群と同一の構成である。また、右クリックボタン4及び左クリックボタン5は、第1の実施の形態で説明した構成及び役割を有する。ただし、本実施の形態による右クリックボタン4及び左クリックボタン5は、集積回路31を介して、入出力回路11に接続される。
【0057】
集積回路31は、第1の実施の形態で説明した機能を有する他、右クリックボタン4又は左クリックボタン5が押下された場合に、押下されたことを示す情報を入出力回路11に供給するとともに、感圧式ディスプレイ30Aの上記所定の端子に上記所定の電流を流し込むよう構成される。したがって、本実施の形態による右クリックボタン4及び左クリックボタン5は、感圧式ディスプレイ30Aの表示を一括消去する一括消去ボタンを兼ねている。
【0058】
以上説明したように、本実施の形態によれば、ペンPの軌跡がタッチ面T上に表示される。したがって、書き込んだ内容をタッチ面T上で視認しながら、ペンPでの入力を進めることができるので、タッチ面Tでのペン入力をより快適に行うことが可能になる。
【0059】
また、感圧式ディスプレイ30Aを用いているので、液晶ディスプレイ等を用いる場合に比べて簡易な構成で、タッチ面TにペンPの軌跡を表示することが可能になる。
【0060】
なお、本実施の形態では右クリックボタン4及び左クリックボタン5が一括消去ボタンを兼ねる例を説明したが、右クリックボタン4及び左クリックボタン5の一方のみが一括消去ボタンを兼ねることとしてもよいし、右クリックボタン4及び左クリックボタン5とは別に一括消去ボタンを設けることとしてもよい。
【0061】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明はこうした実施の形態に何等限定されるものではなく、本発明が、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施され得ることは勿論である。
【0062】
例えば、上記各実施の形態では、ノートパソコンのタッチパッドに本発明を適用した例を説明したが、本発明は、ノートパソコン以外の装置に設けられるタッチパッドにも広く適用可能である。
【0063】
また、上記各実施の形態では、接触位置の種別により、デバイスドライバ20が行う座標変換の方法を変更することとしたが、任意のアプリケーション又はオペレーティングシステム上でのユーザ設定により、デバイスドライバ20が行う座標変換の方法を変更することとしてもよい。こうすれば、ユーザの希望により、指Fにより線画を入力することや、ペンPによりカーソルを制御することが可能になる。
【0064】
また、上記各実施の形態では、CPU12により実行されるデバイスドライバ20が座標の変換を行うこととしたが、集積回路31内でこの変換を行うこととしてもよい。この場合、デバイスドライバ20から集積回路31に対し、論理領域に関する情報を供給することが好ましい。
【符号の説明】
【0065】
1 ノートパソコン
2 筐体
3 タッチパッド
4 右クリックボタン
5 左クリックボタン
6 キーボード
7 ディスプレイ
11 入出力回路
12 CPU
13 メモリ
14 バス
20 デバイスドライバ
21 タッチ位置変換処理部
22 ペン位置変換処理部
30 タッチパネル
31 集積回路
100 契約書
101 署名欄
C カーソル
F 指
H 表示面
P ペン
R 論理領域
T タッチ面
W1 ウインドウ領域
W2 サブウインドウ領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8