(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024120128
(43)【公開日】2024-09-04
(54)【発明の名称】タイヤ摩耗センサ、タイヤの摩耗度測定システム、タイヤの摩耗度評価装置およびタイヤの摩耗度評価方法
(51)【国際特許分類】
G01B 7/00 20060101AFI20240828BHJP
B60C 19/00 20060101ALI20240828BHJP
B60C 23/00 20060101ALN20240828BHJP
【FI】
G01B7/00 W
G01B7/00 101H
B60C19/00 B
B60C19/00 E
B60C23/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021120925
(22)【出願日】2021-07-21
(71)【出願人】
【識別番号】000010098
【氏名又は名称】アルプスアルパイン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135183
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 克之
(74)【代理人】
【識別番号】100085453
【弁理士】
【氏名又は名称】野▲崎▼ 照夫
(74)【代理人】
【識別番号】100108006
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】田村 学
(72)【発明者】
【氏名】大野 裕樹
(72)【発明者】
【氏名】黒澤 利恵
(72)【発明者】
【氏名】今井 佑貴
(72)【発明者】
【氏名】中村 徳男
(72)【発明者】
【氏名】金子 雅史
(72)【発明者】
【氏名】瀬下 一成
【テーマコード(参考)】
2F063
3D131
【Fターム(参考)】
2F063AA30
2F063BA09
2F063CA28
2F063DA01
2F063DA05
2F063GA52
2F063ZA01
3D131BB01
3D131BB03
3D131BC23
3D131LA05
3D131LA06
3D131LA20
(57)【要約】
【課題】トレッド部表面に鉄の釘などを引き寄せる原因となる磁性体をタイヤのトレッド部に埋め込むことなく、タイヤのトレッド部の摩耗度を測定できるタイヤ摩耗センサを提供すること。
【解決手段】磁気の変化に基づいてタイヤ2の摩耗度を検知する、タイヤ2の内側21に配置されるタイヤ摩耗センサ1において、タイヤ2の内側21に配置された磁石11と、磁石11よりもタイヤ2の回転中心O側に配置され、磁石11が発する磁気を検知可能な磁気センサ12と、を有し、タイヤ2におけるトレッド部23の検知対象部24がタイヤ2の外側22に位置する磁性体3に接触したときに、磁気センサ12により磁石11が発する磁気を検知してタイヤ2の摩耗度を計測するタイヤ摩耗センサ1。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気の変化に基づいてタイヤの摩耗度を検知する、前記タイヤの内側に配置されるタイヤ摩耗センサにおいて、
前記タイヤの内側に配置された磁石と、
前記磁石よりも前記タイヤの回転中心側に配置され、前記磁石が発する磁気を検知可能な磁気センサと、を有し、
前記タイヤにおけるトレッド部の検知対象部が前記タイヤの外側に位置する磁性体に接触したときに、前記磁気センサにより前記磁石が発する磁気を検知して前記タイヤの前記摩耗度を計測することを特徴とする、タイヤ摩耗センサ。
【請求項2】
前記磁気センサを二つ有し、
二つの前記磁気センサは、前記回転中心側から前記タイヤの径方向に沿って見たときに、前記磁石に対して点対称な位置に配置されている、
請求項1に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項3】
前記磁気センサおよび前記磁石をそれぞれ二つ有し、
二つの前記磁気センサおよび二つの前記磁石はそれぞれ、前記回転中心側から前記タイヤの径方向に沿って見たときに、基準点に対して点対称な位置に配置されるとともに、
前記磁気センサおよび前記磁石が前記基準点を通る同一直線上に配置されている、
請求項1に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項4】
前記磁気センサは、前記磁石よりも前記基準点から離れた位置に配置されている、
請求項3に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項5】
前記磁石は磁化方向における一端側に軟磁性材料からなる軟磁性体層を有し、
前記磁化方向における前記一端側が他端側よりも前記タイヤの中心に近くなるように配置されている、
請求項1に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項6】
磁気の変化に基づいてタイヤの摩耗度を検知する、前記タイヤの内側に配置されるタイヤ摩耗センサにおいて、
前記タイヤの内側に配置された磁気センサを有し、
前記磁気センサは、前記タイヤにおけるトレッド部の検知対象部が前記タイヤの外側に位置する所定の磁気を発する磁気発生体に接触したときに、前記磁気センサにより前記磁気発生体が発する磁気を検知して前記タイヤの前記摩耗度を計測することを特徴とする、タイヤ摩耗センサ。
【請求項7】
前記磁気発生体は、異なる磁極が交互に複数対並んで構成されており、
前記磁気センサは、前記トレッド部に前記磁気発生体を接触させた状態で、磁極が並ぶ方向に沿って前記磁気発生体を動かしたときに、前記磁気発生体が発する磁気を検知する、
請求項6に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項8】
前記磁気発生体は、接触物との接触箇所において磁気を発生する電磁石であり、
前記磁気センサは、前記電磁石と接触した状態で前記タイヤを前記タイヤの周方向に転がしているときに前記電磁石が発する磁気を検知する、
請求項6に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項9】
前記電磁石は、前記タイヤの表面に接触させることにより前記タイヤに埋設されているワイヤを帯磁し、
前記磁気センサは、帯磁した前記ワイヤが発する磁気を検知する、
請求項8に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項10】
タイヤ摩耗センサに固有の機器IDを記憶する機器ID記憶部と、
計測した前記タイヤの前記摩耗度と前記機器IDとを関連付けて出力する摩耗度出力部と、を備えている、
請求項1~9のいずれか1項に記載のタイヤ摩耗センサ。
【請求項11】
磁気の変化に基づいてタイヤの摩耗度を検知する、前記タイヤの内側に配置されるタイヤ摩耗センサと、前記タイヤの外側に配置される磁性体とを備えた摩耗度測定システムであって、
前記タイヤ摩耗センサは、
前記タイヤの内側に配置された磁石と、
前記磁石よりも前記タイヤの回転中心側に配置され、前記磁石が発する磁気を検知可能な磁気センサと、を有し、
前記タイヤにおけるトレッド部の検知対象部が前記磁性体に接触したときに、前記磁気センサにより前記磁石が発する磁気を検知して前記タイヤの前記摩耗度を計測することを特徴とする、タイヤの摩耗度測定システム。
【請求項12】
前記磁性体の長手方向の長さは、前記タイヤの外周の長さよりも大きい、
請求項11に記載のタイヤの摩耗度測定システム。
【請求項13】
タイヤ摩耗センサの機器IDと、当該タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤとを関連付けて記憶するID情報記憶部と、
前記機器IDと関連付けられた前記タイヤの摩耗度を取得する計測値取得部と、
前記タイヤの前記摩耗度の閾値を記憶する閾値記憶部と、
前記タイヤの前記摩耗度が前記閾値を超えたときに、前記タイヤの前記摩耗度と関連付けられた前記機器IDおよび前記ID情報記憶部の情報に基づいて、交換が必要な前記タイヤを特定するタイヤ特定部と、を備えていることを特徴とする、
タイヤの摩耗度評価装置。
【請求項14】
前記ID情報記憶部は、前記機器IDと、前記タイヤと、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられた車両の種類とを記憶しており、
前記閾値記憶部は、前記車両の種類に応じた前記閾値を記憶しており、
前記タイヤ特定部は、前記タイヤの前記摩耗度が、前記車両の種類に応じた前記閾値を超えたときに、前記ID情報記憶部の情報に基づいて、交換が必要な前記タイヤを特定する、
請求項13に記載のタイヤの摩耗度評価装置。
【請求項15】
タイヤ摩耗センサに固有の機器IDと、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤを特定可能なタイヤ情報とを関連付けて出力し、
前記タイヤ摩耗センサが前記タイヤの摩耗度を計測し、
計測した前記摩耗度と、前記摩耗度を計測した前記タイヤ摩耗センサの前記機器IDと関連付けて出力することを特徴とする、タイヤの摩耗度評価方法。
【請求項16】
前記タイヤ摩耗センサは、前記タイヤを備えた車両が磁性体上または磁界発生体上を通過するときに、前記タイヤの前記摩耗度を計測する、
請求項15に記載のタイヤの摩耗度評価方法。
【請求項17】
タイヤ摩耗センサに固有の機器IDと、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤを特定可能なタイヤ情報とを取得して、両者を関連付けて記憶し、
前記タイヤの摩耗度を取得して、前記摩耗度と閾値とを比較し、
前記摩耗度に関連付けられた前記機器IDを取得し、前記機器IDおよび前記機器IDと関連付けられた前記タイヤ情報とに基づいて、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられた前記タイヤを特定することを特徴とする、タイヤの摩耗度評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タイヤの摩耗度を検知するタイヤ摩耗センサ、当該タイヤ摩耗センサを用いた摩耗度測定システム、摩耗度評価装置および摩耗度評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤの摩耗が進行すると、路面を走行するときのグリップ性能や、濡れた路面を走行するときのタイヤと路面との間の水を排出する排水性能が低下する。そこで、運転者や車両管理者は、タイヤのトレッド部の摩耗状態を点検し、安全性を確保するために使用限度を超える前にタイヤを交換する必要がある。目視による点検は、タイヤの溝に設けられたスリップサインの確認などにより行われるが、摩耗状態を誤って評価するおそれがある。また、点検作業は煩雑であるため、ユーザーによっては点検しないことも考えられる。トレッド部の摩耗状態が誤って評価されたり、評価されなかったりすると、使用限度を超えたタイヤが継続して使用されるおそれがあり、安全性の観点から好ましくない。
そこで、目視以外の方法によってタイヤの摩耗の程度を測定し、タイヤの性能が低下したことを検知するタイヤの摩耗度測定システムが提案されている。たとえば、特許文献1には、タイヤのトレッド部に埋設されたタイヤ摩耗検知用の磁石が放出する磁気を検知可能な磁気センサを、タイヤの内側面におけるタイヤ摩耗検知用の磁石に対向する位置に備えたタイヤ摩耗センサが記載されている。この装置は、タイヤのトレッド部の摩耗とともに埋設された磁石が摩耗することによって生じる磁界の変化を測定して、タイヤの摩耗の程度を検知する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のタイヤ摩耗センサは、トレッド部に埋め込まれた磁石の摩耗による磁気の変化に基づいてタイヤのトレッド部の摩耗度を測定する。このため、磁石はその一方をトレッド部の表面に露出させて、トレッド部とともに摩耗するようにタイヤに埋め込まれる。したがって、一般的なタイヤのトレッド部に磁石を内包させるための追加工が必要である。また、トレッド部表面に露出した磁石の磁気によって引き寄せられた鉄の釘などによりタイヤが傷つけられてパンクの原因となるおそれがあった。
本発明の目的は、トレッド部表面に鉄の釘などを引き寄せる原因となる磁石をタイヤのトレッド部に埋め込むことなく、タイヤのトレッド部の摩耗度を測定できるタイヤ摩耗センサ、当該タイヤ摩耗センサを用いた摩耗度測定システム、摩耗度評価装置および摩耗度評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は上述した課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
磁気の変化に基づいてタイヤの摩耗度を検知する、前記タイヤの内側に配置されるタイヤ摩耗センサにおいて、前記タイヤの内側に配置された磁石と、前記磁石よりも前記タイヤの回転中心側に配置され、前記磁石が発する磁気を検知可能な磁気センサと、を有し、前記タイヤにおけるトレッド部の検知対象部が前記タイヤの外側に位置する磁性体に接触したときに、前記磁気センサにより前記磁石が発する磁気を検知して前記タイヤの前記摩耗度を計測することを特徴とする、タイヤ摩耗センサ。
【0006】
トレッド部の摩耗に伴って磁石と磁性体との距離が変化することにより、タイヤの検知対象部がタイヤの外側に位置する磁性体に接触したときの磁気の状態が変化する。このため、磁気センサを用いて磁気の状態の変化を検知し、トレッド部の摩耗を測定することができる。
【0007】
タイヤ摩耗センサが前記磁気センサを二つ有し、二つの前記磁気センサは、前記回転中心側から前記タイヤの径方向に沿って見たときに、前記磁石に対して点対称な位置に配置されていてもよい。
タイヤ摩耗センサが前記磁気センサおよび前記磁石をそれぞれ二つ有し、二つの前記磁気センサおよび二つの前記磁石はそれぞれ、前記回転中心側から前記タイヤの径方向に沿って見たときに、基準点に対して点対称な位置に配置されるとともに前記磁気センサおよび前記磁石が前記基準点を通る同一直線上に配置されていてもよい。この場合、前記磁気センサは、前記磁石よりも前記基準点から離れた位置に配置されていてもよい。
【0008】
上記のように磁気センサおよび磁石をそれぞれ二つ設け、二つの磁気センサの出力を用いることにより、ノイズの影響を抑えることができる。また、二つの出力が同じ大きさで反対向きになるから、二つの出力の差として大きな出力を得ることができる。二つの磁気センサにより得られる出力は絶対値が同じであるため、一方が故障した場合でも他方の出力を用いてタイヤの摩耗度を評価することできる。したがって、タイヤ摩耗センサの冗長性が向上する。
【0009】
前記磁石は磁化方向における一端側に軟磁性材料からなる軟磁性体層を有し、前記磁化方向における前記一端側が他端側よりも前記タイヤの中心に近くなるように配置されていてもよい。
この構成により、タイヤの中心側に設けられた磁気センサにより検知される磁界を軟磁性体層によって小さくすることができる。このため、磁気センサの磁気飽和が起こり難くなり、タイヤ摩耗センサの計測精度が安定する。
【0010】
磁気の変化に基づいてタイヤの摩耗度を検知する、前記タイヤの内側に配置されるタイヤ摩耗センサにおいて、前記タイヤの内側に配置された磁気センサを有し、前記磁気センサは、前記タイヤにおけるトレッド部の検知対象部が前記タイヤの外側に位置する所定の磁気を発する磁気発生体に接触したときに、前記磁気センサにより前記磁気発生体が発する磁気を検知して前記タイヤの前記摩耗度を計測することを特徴とする、タイヤ摩耗センサ。
タイヤ摩耗センサは、タイヤの外側の磁気発生体からの磁気について、タイヤの摩耗に伴う変化をタイヤの内側に配置された磁気センサで検知することにより、タイヤの摩耗度を測定できる。
【0011】
前記磁気発生体は、異なる磁極が交互に複数対並んで構成されており、前記磁気センサは、前記トレッド部に前記磁気発生体を接触させた状態で、磁極が並ぶ方向に沿って前記磁気発生体を動かしたときに、前記磁気発生体が発する磁気を検知してもよい。
【0012】
前記磁気発生体は、接触物との接触箇所において磁気を発生する電磁石であり、前記磁気センサは、前記電磁石と接触した状態で前記タイヤを前記タイヤの周方向に転がしているときに前記電磁石が発する磁気を検知してもよい。
前記電磁石は、前記タイヤの表面に接触させることにより前記タイヤに埋設されているワイヤを帯磁し、前記磁気センサは、帯磁した前記ワイヤが発する磁気を検知してもよい。
【0013】
タイヤ摩耗センサは、タイヤ摩耗センサに固有の機器IDを記憶する機器ID記憶部と、計測した前記タイヤの前記摩耗度と前記機器IDとを関連付けて出力する摩耗度出力部と、を備えていてもよい。
この構成によりタイヤの摩耗度の測定値と機器IDとを関連付けて出力できるため、摩耗度が閾値を超えた交換が必要なタイヤを機器IDに基づいて特定することができる。
【0014】
磁気の変化に基づいてタイヤの摩耗度を検知する、前記タイヤの内側に配置されるタイヤ摩耗センサと、前記タイヤの外側に配置される磁性体とを備えた摩耗度測定システムであって、前記タイヤ摩耗センサは、前記タイヤの内側に配置された磁石と、前記磁石よりも前記タイヤの回転中心側に配置され、前記磁石が発する磁気を検知可能な磁気センサと、を有し、前記タイヤにおけるトレッド部の検知対象部が前記磁性体に接触したときに、前記磁気センサにより前記磁石が発する磁気を検知して前記タイヤの前記摩耗度を計測することを特徴とする、タイヤの摩耗度測定システム。
この構成によって磁気センサに到達する磁石からの磁気がトレッド部の摩耗の進行に伴って変化することを検知して、トレッド部の摩耗度を測定できる。
【0015】
前記磁性体の長手方向の長さは、前記タイヤの外周の長さよりも大きいことが好ましい。この構成によってトレッド部の検知対象部を確実に磁性体に接触させることができるため、タイヤの摩耗量を精度よく測定できる。
【0016】
タイヤ摩耗センサの機器IDと、当該タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤとを関連付けて記憶するID情報記憶部と、前記機器IDと関連付けられた前記タイヤの摩耗度を取得する計測値取得部と、前記タイヤの前記摩耗度の閾値を記憶する閾値記憶部と、前記タイヤの前記摩耗度が前記閾値を超えたときに、前記タイヤの前記摩耗度と関連付けられた前記機器IDおよび前記ID情報記憶部の情報に基づいて、交換が必要な前記タイヤを特定するタイヤ特定部と、を備えていることを特徴とする、タイヤの摩耗度評価装置。
この構成により、摩耗度評価装置は、タイヤ摩耗センサの機器IDに基づいて、交換が必要なタイヤを特定できる。
【0017】
前記ID情報記憶部は、前記機器IDと、前記タイヤと、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられた車両の種類とを記憶しており、前記閾値記憶部は、前記車両の種類に応じた前記閾値を記憶しており、前記タイヤ特定部は、前記タイヤの前記摩耗度が、前記車両の種類に応じた前記閾値を超えたときに、前記ID情報記憶部の情報に基づいて、交換が必要な前記タイヤを特定してもよい。
車両の種類および車両の種類に応じた閾値により、タイヤ交換の要否を、車両の種類、使用態様に応じてより適切に判断することができる。
【0018】
タイヤ摩耗センサに固有の機器IDと、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤを特定可能なタイヤ情報とを関連付けて出力し、前記タイヤ摩耗センサが前記タイヤの摩耗度を計測し、計測した前記摩耗度と、前記摩耗度を計測した前記タイヤ摩耗センサの前記機器IDと関連付けて出力することを特徴とする、タイヤの摩耗度評価方法。
この構成により、タイヤ摩耗センサの機器IDに基づいて、交換が必要なタイヤを特定することができる。
【0019】
前記タイヤ摩耗センサは、前記タイヤを備えた車両が磁性体上または磁界発生体上を通過するときに、前記タイヤの前記摩耗度を計測してもよい。
例えば、トラックやバスなどの車両が属する事業所の門などに磁性体または磁界発生体を配置しておくことで、出発時や帰着時に、タイヤ摩耗量を自動的に測定できる。また、積み荷によってタイヤへの荷重が変化するトラックの場合、出発時および帰着時は積み荷が無いため、積み荷の影響を排除した状態でタイヤの摩耗度を精度よく計測することができる。
【0020】
タイヤ摩耗センサに固有の機器IDと、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤを特定可能なタイヤ情報とを取得して、両者を関連付けて記憶し、前記タイヤの摩耗度を取得して、前記摩耗度と閾値とを比較し、前記摩耗度に関連付けられた前記機器IDを取得し、前記機器IDおよび前記機器IDと関連付けられた前記タイヤ情報とに基づいて、前記タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤを特定することを特徴とする、タイヤの摩耗度評価方法。
この構成により、タイヤ摩耗センサの機器IDに基づいて、交換が必要な前記タイヤを特定することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、タイヤに磁石を埋設することなく、タイヤの摩耗度を計測できるため、タイヤに埋設された磁石が釘などの金属を引き寄せることによって生じるパンクを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】(A)タイヤ摩耗センサが設けられた状態の断面図、(B)
図1A領域Sの拡大断面図
【
図2】(A)検知対象部近傍の磁気の断面図、(B)磁性体に接触したときの磁気の断面図
【
図3】(A)変形例のタイヤ摩耗センサの断面図、(B)磁性体と磁気センサの平面図
【
図4】(A)検知対象部近傍の磁気と二つの磁気センサとの関係を示す断面図、(B)磁性体に接触したときの磁気を示す断面図
【
図5】(A)他の変形例のタイヤ摩耗センサの断面図、(B)磁性体と磁気センサの平面図
【
図8】摩耗度測定システムの(A)断面図、(B)斜視図、(C)磁気発生体の平面図
【
図9】(A)摩耗度測定システムの変形例の斜視図、(B)磁気発生体の平面図
【
図11】タイヤ摩耗センサと磁性体とを備えた摩耗度測定システムの全体の概略図
【
図12】(A)タイヤ摩耗センサの機能ブロック図、(B)管理装置の機能ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照して説明する。各図面において同じ部材には同じ番号を付して、適宜、説明を省略する。
図1Aは、タイヤ摩耗センサ1がタイヤ2に設けられた状態を模式的に示す断面図であり、
図1Bは
図1Aの領域Sを拡大した断面図である。タイヤ摩耗センサ1は、タイヤ2の内側21に配置された磁石11と、磁石11よりもタイヤ2の回転中心O側に配置され、磁石11が発する磁気を検知可能な磁気センサ12と、を有している。タイヤ摩耗センサ1は、タイヤ2の内側21に配置されており、トレッド部23の検知対象部24が磁性体3と接触したときに磁石11からの磁気を測定し、測定した磁気の変化に基づいてタイヤ2の摩耗度を検知する。なお、摩耗度には、タイヤ2の溝の深さが含まれるが、タイヤ摩耗センサ1は摩耗度とともに他のタイヤ2に関する情報を併せて検知してもよい。
【0024】
磁石11は、合金磁石、フェライト磁石、磁土類磁石や、これらの粉粒体(磁性粉)が高分子材料中に分散されて形成されたゴム磁石、プラスチック磁石などを用いることができる。磁石11は、その磁化方向がタイヤ2の半径方向(Z軸方向)と一致するような姿勢でタイヤ摩耗センサ1内に配置される。ゴム磁石に用いられる高分子材料として、タイヤ2のトレッド部23に用いられるトレッドゴム組成物と同じ配合のゴム材料などを用いてもよい。
【0025】
磁石11は、磁気センサ12側の磁極端の表面において1mT以上の磁束密度を有することが好ましい。また、磁石11の磁気によって、車載される他の電子機器などに悪影響を与えないようにする観点から、磁石11の磁極端における表面磁束密度は600mT以下であることが好ましい。なお、表面磁束密度は、着磁された磁石11の表面にテスラメーターを直接接触させることにより測定される値である。
【0026】
磁気センサ12は、磁気の状態を検知して電気信号に変えるものであり、タイヤ2の内側21に配置されたタイヤ摩耗センサ1において、磁石11と対向し、かつ磁石11が発する磁気を検知可能な位置に配置されている。磁気センサ12として、例えば、磁気抵抗効果を用いたGMRセンサ、TMRセンサ、ホール効果を用いたホールセンサなどが挙げられる。
【0027】
図2Aはタイヤ2におけるトレッド部23の検知対象部24近傍における、磁石11が発する磁気Mを模式的に示す断面図であり、
図2Bは検知対象部24がタイヤ2の外側22に位置する磁性体3に接触したときの磁気Mを模式的に示す断面図である。
【0028】
タイヤ摩耗センサ1はケース内に磁石11と磁気センサ12とが、Z軸方向(タイヤ2の径方向)に離れて配置されており、検知対象部24がタイヤ2の外側22に位置する磁性体3に接触したときに、磁石11が発する磁気Mを磁気センサ12で検知してタイヤ2の摩耗度を計測する。タイヤ2の内側21に設けられた磁石11とタイヤ2の外側22の磁性体3との距離Dは、検知対象部24の摩耗度に応じて変化する。距離Dが変化すると磁性体3の磁石11に対する影響も変化し、磁気センサ12で検知される磁気Mも変化する。言い換えると、タイヤ2が摩耗すると、磁気センサ12で検知される磁気Mが変化する。
【0029】
すなわち、内側21にタイヤ摩耗センサ1が配置された検知対象部24が磁性体3の上を通過するときに磁石11からの磁気Mを磁気センサ12で測定して、磁石11から磁性体3までの距離Dを推定することができる。距離Dはタイヤ2のトレッド部23の摩耗の進行に伴って小さくなるから、磁気センサ12による磁界測定値に基づいてタイヤ2の摩耗度を評価可能である。したがって、タイヤ2のトレッド部23に磁石11を埋め込まずに、磁気センサ12で磁石11の磁気Mを測定してトレッド部23の摩耗度(タイヤ2の摩耗度)を評価することができる。
【0030】
磁性体3は、磁気Mに影響を及ぼす磁性体により構成されている。磁性体3は、例えば、鉄・ニッケル・コバルトおよびその合金などの強磁性体の板などを用いることができる。また、タイヤ摩耗センサ1と、磁性体3とを備えた摩耗度測定システムとして、本発明を実施することもできる。
【0031】
図3Aは、変形例に係るタイヤ摩耗センサ4を模式的に示す部分断面図である。タイヤ摩耗センサ4は、二つの磁気センサ42A、42Bを有している点において、タイヤ摩耗センサ1と異なっている。なお、以下では、磁気センサ42A、42Bを区別しない場合、適宜、磁気センサ42と記す。後述する磁石51A、51Bおよび磁気センサ52A、52Bについても、同様に、適宜、磁石51、磁気センサ52と記載する。
【0032】
タイヤ摩耗センサ4は、二つの磁気センサ42A、42Bからの差動信号に基づいて磁石11の磁気を検知する。磁気センサ42は、磁石11の着磁方向(Z軸方向)と交差するY軸方向の磁気を検知する。磁気センサ42の検知した磁気の差分出力を用いることにより、タイヤ2の摩耗度の検知精度がよくなる。なお、タイヤ摩耗センサ4は、図示しない磁気誘導部材を備えていてもよい。磁石11と磁気誘導部材との間に磁気センサ42を配置することにより、磁気センサ42の感度が向上する。
【0033】
図3Bは、タイヤ摩耗センサ4における磁石11と磁気センサ42A、42Bとの位置関係を模式的に示す平面図である。同図は、磁石11の磁化方向であるZ軸方向から平面視した位置関係を模式的に示している。磁気センサ42A、42Bは、磁化方向からみたときに、磁石11の外郭よりも外側に位置する部分を備えるように配置されている。この構成により、タイヤ摩耗センサ4は、タイヤ2の摩耗度の進行に伴うY軸方向の磁気の変化を精度良く測定することができる。
【0034】
二つの磁気センサ42A、42Bは、タイヤ2の回転中心O側(
図1A参照)からタイヤ2の径方向に沿って見たときに、磁石11に対して点対称な位置に配置されている。すなわち、
図1Aに示すように、タイヤ摩耗センサ4がタイヤ2の接地部すなわち下端に位置する場合、Z軸に沿って上から見たとき、磁石11を中心として点対称な位置に磁気センサ42A、42Bが配置されている。
【0035】
図4Aは、タイヤ2におけるトレッド部23の検知対象部24近傍における、磁石11が発する磁気Mと二つの磁気センサ42A、42Bとの関係を模式的に示す断面図である。
図4Bは検知対象部24がタイヤ2の外側22に位置する磁性体3に接触したときの磁気を模式的に示す断面図である。磁気センサ42A、42Bは、磁石11を中心として点対称に配置されているため、磁気センサ42A、42Bが測定する磁気Mは向きが反対方向で同じ大きさになる。対して、地磁気などの影響によって生じるノイズは、大きさおよび方向が同じである。このため、磁気センサ42A、42Bの出力の差をとることで、ノイズを取り除くとともに大きな出力が得られる。また、二つの磁気センサ42はそれぞれ、同じ大きさの磁気Mを検知するから、一方に問題が生じた場合、他方の磁気センサ42からの出力のみを用いて摩耗度を測定することができる。したがって、タイヤ摩耗センサ4の冗長性が良好になる。
【0036】
図5Aは、他の変形例に係るタイヤ摩耗センサ5を模式的に示す部分断面図であり、
図5Bは、タイヤ摩耗センサ5における磁石51A、51Bと磁気センサ52A、52Bとの位置関係を模式的に示す平面図である。これらの図に示すように、タイヤ摩耗センサ5は、磁石51および磁気センサ52をそれぞれ二つずつ有している点において、タイヤ摩耗センサ1と異なっている。
【0037】
タイヤ摩耗センサ5では、各磁石51に対応して、磁気センサ52がそれぞれ1つずつ設けられている。磁石51A、51B、および磁気センサ52A、52Bはそれぞれ、タイヤ2の回転中心O(
図1A参照)側からZ軸に沿って見たとき、基準点Bを基準にして点対称な位置に配置されている。また、磁気センサ52はそれぞれ、磁石51よりも基準点Bから離れた位置に配置されている。
【0038】
基準点Bは、二つの磁気センサ52を結ぶ線分の中点を回転中心O側からタイヤ2の径方向に投影したタイヤ摩耗センサ5の底面53上の(仮想)点であり、二つの磁石51を結ぶ線分の中点を回転中心側からタイヤ2の径方向に投影したタイヤ摩耗センサ5の底面53上の(仮想)点でもある。すなわち、二つの磁気センサ52を結ぶ線分の中点と、二つの磁石51を結ぶ線分の中点とは、底面に投影したときに重なる。
【0039】
二つの磁石51および二つの磁気センサ52は、基準点Bを通る同一の直線P上(同一直線上)に配置されている。すなわち、二つの磁石51および二つの磁気センサ52は、回転中心O(
図1A参照)側からタイヤ2の径方向であるZ軸方向に沿って、タイヤ摩耗センサ5の底面53上に投影したときに、基準点Bを通る同一の直線P上に位置するように、配置されている。
【0040】
なお、磁石51および磁気センサ52の数は、タイヤ摩耗センサ5の二組に限らず、三組以上としてもよい。また、組となる磁石51と磁気センサ52とは、同数でなくてもよい。例えば、1つの磁石51からの磁気Mを複数の磁気センサ52で検知する構成や、複数の磁石51からの磁気Mを一つの磁石51で検知する構成としてもよい。
【0041】
図6は変形例に係る磁石13を模式的に示す断面図である。磁石13は、硬磁性材料からなる硬磁性体層13aの磁化方向(Z軸方向)における一端131側すなわち磁気センサ12側に、軟磁性材料からなる軟磁性体層13bを有している。
【0042】
硬磁性体層13aは、磁化方向における一端131側が他端132側よりもタイヤ2の回転中心O(
図1A参照)に近くなるように配置されている。一端131側に設けられている硬磁性体層13aにより磁気MをY軸に平行な方向に誘導し、タイヤ2の内側21と外側22とにおいて、磁石11からの磁気Mの状態に差をつけることができる。すなわち、硬磁性体層13aの一端131側に軟磁性体層13bを設けることにより、
図2Aおよび
図2Bに示す磁石11の磁気Mと比較して、タイヤ2の内側21において回転中心O側に向かって広がる磁気Mを小さく、タイヤ2の外側22において回転中心Oの反対側に向かって広がる磁気Mを大きくすることができる。
【0043】
タイヤ2が摩耗していない初期状態において磁気センサ12側の磁気Mが大きいと、磁気センサ12が飽和状態になりやすいため、タイヤ2の摩耗に伴って生じる磁気Mの変動を大きくする必要がある。そして、初期状態における磁気センサ12側の磁気Mを小さくすることにより、磁気センサ12の磁気飽和を抑制できる。
【0044】
また、磁気センサ12は、タイヤ2の摩耗によって磁石11と磁性体3との距離D(
図2B参照)が変わることで生じる磁気Mの変動を測定する。このため、タイヤ2の外側22により強い磁気Mが出ていた方が磁気Mの分布が変わりやすくなり、磁気センサ12によって検知される磁気Mの変動が大きくなる。
【0045】
したがって、磁気センサ12側に、軟磁性材料からなる軟磁性体層13bを備えた磁石13を用いて、タイヤ2の内側21の磁気Mを小さくし、外側の磁気Mを大きくすることで、磁気センサ12による磁気Mの検知精度が向上する。
【0046】
硬磁性体層13aは、硬磁性材料であれば特に限定されない。酸化鉄を主成分とするフェライト(ハード・フェライト)、アルニコ(Al-Ni-Co合金)、サマリウムコバルトが挙げられる。軟磁性体層13bを構成する材料は、軟磁性材料であれば特に限定されない。パーマロイ(Fe-Ni合金)、他の鉄系材料であるセンダスト(Fe-Si-Al合金)、鉄系または非鉄系のアモルファス磁性合金、フェライト(ソフト・フェライト)などが例示される。これら例示した材料のうち、磁気センサ12側の一端131からのZ軸方向の磁気を抑制する観点から、センダストが好ましい。
【0047】
図6に示すように、軟磁性体層13bは硬磁性体層13aよりも薄いことが好ましい。軟磁性体層13bの厚さTbを硬磁性体層13aの厚さTaよりも小さくすることにより、軟磁性体層13bに磁路が形成され易くなるため、軟磁性体層13bは、硬磁性体層13aからの磁気を磁気センサ12とは反対側の他端132側に誘導しやすくなる。
【0048】
硬磁性体層13aの一端131側からの磁気の磁束密度を小さくする観点から、厚さTbと厚さTaとの比Tb/Taは、1/100以上1/1未満が好ましく、1/10以上1/2未満がより好ましく、1/7以上1/3未満がさらに好ましい。
【0049】
同様の観点から、軟磁性体層13bの厚さTbは、0.05mm以上1mm以下が好ましく、0.1mm以上0.5mm以下がより好ましく、0.15mm以上0.3mm以下がさらに好ましい。また、硬磁性体層13aの厚さTaは、0.1mm以上5mm以下が好ましく、0.3mm以上3mm以下がより好ましく、0.5mm以上2mm以下がさらに好ましい。
【0050】
なお、
図6では、磁石13の一部に軟磁性体層13bが設けられた態様を示したが、軟磁性体層13bは、磁石13と別体であってもよい。例えば、軟磁性体は磁石11と磁気センサ12との間に設けられていてもよい。
【0051】
図7はタイヤ2におけるトレッド部23の検知対象部24近傍における、タイヤ2の外側22に配置された磁気発生体71が発する磁気Mを模式的に示す断面図である。同図に示すタイヤ摩耗センサ6は、磁石11を備えておらず、タイヤ2の外側22に接する磁気発生体71の磁気Mを磁気センサ12により検知する。なお、磁気発生体71が発する磁気Mは常に所定の値である。磁気発生体71表面の磁気Mの磁束密度の所定の値は、例えば、1~200mTとすることができ、タイヤ2の摩耗進行に伴う磁気Mの変化を精度よく検知する観点から、3~10mTとすることが好ましい。
【0052】
磁気センサ12は、タイヤ2におけるトレッド部23の検知対象部24がタイヤ2の外側22に位置する磁気発生体71に接触したときに、磁気センサ12により磁気発生体71が発する磁気Mを検知してタイヤ2の摩耗度を計測する。
【0053】
タイヤ摩耗センサ6は、タイヤ2の内側21に取り付けられ、磁気Mを検出可能な磁気センサ12を備えており、板状の磁気発生体71がタイヤ2のトレッド部23に接触したときの磁気Mを計測する。磁気発生体71が発する磁気Mは常に所定の値であるため、磁気センサ12により計測される磁気Mは、磁気センサ12と磁気発生体71との距離Dによって変化する。そのため、磁気センサ12により計測された磁気Mに基づいて距離Dを検知できる。距離Dはタイヤ2のトレッド部23の摩耗に伴って変化するため、タイヤ摩耗センサ6は磁気Mの計測値に基づいてタイヤ2の摩耗度を検知することができる。
【0054】
図8Aおよび
図8Bは、タイヤ摩耗センサ6と磁気発生体71からなる摩耗度測定システム70を模式的に示す断面図および斜視図である。
図8Cは磁気発生体71の平面図である。
摩耗度測定システム70は、検知対象部24におけるタイヤ2の外側22の表面(タイヤ表面)に接するように磁気発生体71を配置して検知対象部24近くを移動させ、検知対象部24の内側21に配置されたタイヤ摩耗センサ6により磁気発生体71からの磁気を検知して、タイヤ2のトレッド部23の摩耗度を検出する。
【0055】
トレッド部23の摩耗によってゴムの量が減ることで、タイヤ摩耗センサ6の磁気センサ12と磁気発生体71との距離D(
図7参照)が小さくなる。タイヤ摩耗センサ6からの出力は、トレッド部23の摩耗に伴う距離Dの減少量の二乗に比例して大きくなる。このため、タイヤ摩耗センサ6の出力に基づいてタイヤ2の摩耗度を検出することができる。
【0056】
図8Cに示すように、磁気発生体71におけるタイヤ2の外側22の表面と接触する接触面は、異なる磁極が交互に複数対並んで構成されていてもよい。タイヤ摩耗センサ6の磁気センサ12は、トレッド部23に磁気発生体71を接触させた状態で、
図8Bに両側矢印で示した磁極が並ぶ方向に沿って磁気発生体71を動かしたときに、磁気発生体71が発する磁気M(
図7参照)を検知する。磁気発生体71を磁極が並ぶ方向に沿って動かすことにより、磁気センサ12からの出力が変化する。磁気センサ12で磁気Mのピーク値を検出することにより、トレッド部23の摩耗度を測定できる。例えば、磁気発生体71を移動させた際に得られたタイヤ摩耗センサ6からの出力の最大値に基づいてトレッド部23の厚さを測定する。なお、タイヤ2の外側22から見たときに、タイヤ摩耗センサ6が配置されている位置を判別できるように、例えば、タイヤ2の側面に配置位置を示す意匠を設けておいてもよい。
【0057】
図9Aは、変形例に係る摩耗度測定システム72を示す斜視図である。
図9Bは、磁気発生体73の構造を模式的に示す平面図である。摩耗度測定システム72は、磁気発生体73として、接触物であるタイヤ2との接触箇所において磁気を発生する電磁石を用いている。磁気発生体73として電磁石を用いることで、磁力の発生を測定時のみとすることができる。したがって、磁気発生体73が鉄釘等を引き寄せることを抑制できる。
【0058】
磁気発生体73の長手方向の長さLは、タイヤ2の外周の長さR以上である。このため、磁気発生体73と接触した状態でタイヤ2をその周方向に転がしているときに、磁気発生体73におけるタイヤ2と接触している部分の電磁石を駆動することにより、人手を介することなくタイヤ2の摩耗度を測定できる。例えば、事業所のゲートに磁気発生体73を設置し、トラック80が事業所のゲートを通過する際、磁気発生体73上をタイヤ2で通過させて、タイヤ2の摩耗度を計測することができる。
【0059】
タイヤ摩耗センサ6の磁気センサ12は、加速度センサを備えていてもよい。加速度センサにより、タイヤ摩耗センサ6が地面付近に位置することを検知したときに、磁気発生体71の電磁石を駆動すれば、磁気発生体73を効率よく稼働することができる。
【0060】
図10は、他の変形例に係る摩耗度測定システム74を模式的に示す断面図である。摩耗度測定システム74は、電磁石(磁気発生体)75によってタイヤ2に埋設されているスチールワイヤ25を帯磁させ、帯磁したスチールワイヤ25が発する磁気を検知する。同図に示すように、電磁石75をタイヤ2の外側22表面に接触させてタイヤ2に埋設されているスチールワイヤ25を帯磁させ、タイヤ摩耗センサ6によって帯磁したスチールワイヤ25が発する磁気を検知することでタイヤ2の摩耗度を検知できる。この場合、帯磁したスチールワイヤ25が、磁気発生体71(
図7、
図8Aおよび
図8B参照)と同様に機能する。
【0061】
電磁石75の磁界強度を一定とすれば、スチールワイヤ25の帯磁量がタイヤ2の摩耗度に応じて変化する。このため、タイヤ摩耗センサ6によってスチールワイヤ25の帯磁量を測定することにより、タイヤ2の摩耗度を検知することができる。なお、
図10に示すように、スチールワイヤ25はタイヤ2の全周にわたって設けられているため、電磁石75によりスチールワイヤ25を帯磁させることができる位置は、タイヤ摩耗センサ6が設けられた部分に限られない。すなわち、車両が停車したときにタイヤ摩耗センサ6が設けられた部分が路面に接していたとしても測定が可能となる。
【0062】
スチールワイヤ25を帯磁させて用いることで、小さな電磁石75を用いてタイヤ2の摩耗度を測定できる。このため、装置を小型化することでき、携帯に適したなハンディタイプの電磁石75を用いてタイヤ2の摩耗度を測定することが可能になる。
【0063】
図11は、タイヤ摩耗センサ1と磁性体3とを備えた、磁気の変化に基づいてタイヤ2の摩耗度を検知する、摩耗度測定システム90の全体を概略的に示す図である。同図にはタイヤ摩耗センサ1を示しているが、タイヤ摩耗センサ4、5、6を用いて摩耗度測定システム90を構成してもよい。なお、タイヤ摩耗センサ6を用いる場合、磁性体3の代わりに磁気発生体71、73を用いる。
【0064】
摩耗度測定システム90は、タイヤ2におけるトレッド部23の検知対象部24(
図2A参照)が、磁性体3に接触したときに、タイヤ摩耗センサ1の磁気センサ12により、磁石11が発する磁気を検知してタイヤ2の摩耗度を計測する。
【0065】
磁性体3の長手方向の長さLを、タイヤ2の外周の長さR以上とすることにより、トラック80のタイヤ2が通用門等に設置された磁性体3上を通過する際に、確実にタイヤ2におけるトレッド部23の検知対象部24を磁性体3と接触させることができる。このため、管理装置(摩耗度評価装置)100は、接触の際にタイヤ摩耗センサ1により計測、出力されたタイヤ2の摩耗度を用いてタイヤ2の摩耗度を管理できる。
【0066】
したがって、タイヤ2の摩耗の管理が重要なトラック80等を用いる業種においては、営業所や事業所の通用門などに磁性体3を配置しておくことで、日々の摩耗度の変化を自動的に確実に確認することができ、管理装置100や運転手のスマートホンなどにタイヤ交換が必要であることを通知することもできる。また、例えば、インターネットなどの広域通信ネットワーク120を介して、管理装置100からタイヤ会社110に交換用のタイヤ2を注文することもできる。
【0067】
図12Aはタイヤ摩耗センサ1の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、タイヤ摩耗センサ1は、計測部14、機器ID記憶部15、加速度センサ16、摩耗度出力部17および通信部18を備えている。
【0068】
計測部14は、タイヤの摩耗度を計測するものであり、上述した磁石11および磁気センサ12を備えている。機器ID記憶部15は、タイヤ摩耗センサ1に固有の機器IDを記憶する手段であり、汎用のメモリなどにより構成される。加速度センサ16は、タイヤ2の回転に伴ってタイヤ摩耗センサ1に加えられる加速度を測定するものであり、加速度の変化に基づいてタイヤ摩耗センサ1が設けられた部分の接地を検知する。摩耗度出力部17は、計測したタイヤ2の摩耗度と機器IDとを関連付けて、通信部18を介して管理装置100等の外部の装置に出力する。このため、管理装置100等は、機器IDに基づいて、タイヤ2の個体に摩耗情報を紐付した状態で取得し、管理することができる。
【0069】
図12Bは、管理装置100の構成を示す機能ブロック図である。同図に示すように、管理装置100は、ID情報記憶部101、計測値取得部102、閾値記憶部103、タイヤ特定部104および通信部105を備えており、例えば、CPUおよび記憶装置(RAM、ROM)を備えたコンピュータなどで構成される。
【0070】
ID情報記憶部101は、タイヤ摩耗センサに固有の機器IDと、タイヤ摩耗センサが取り付けられたタイヤとを関連付けて記憶している。ID情報記憶部101は、機器IDと、タイヤ(摩耗度、取り付けられた車輪など)と、タイヤ摩耗センサが取り付けられたトラック等の種類(車両の種類)とを記憶していてもよい。閾値記憶部103は、タイヤの摩耗度の閾値を記憶しており、閾値はトラック等の車両の種類に応じて設定されてもよい。また、閾値記憶部103は、タイヤの摩耗度の違いに合わせて複数種の閾値を記憶していてもよい。
【0071】
計測値取得部102は、タイヤ摩耗センサ1から機器IDと関連付けられたタイヤの摩耗度を取得する。そして、タイヤ特定部104は、タイヤの摩耗度が閾値を超えたときに、タイヤの摩耗度と関連付けられた機器IDおよびID情報記憶部101の情報に基づいて、交換が必要なタイヤを特定して出力する。タイヤ特定部104は、通信部105を介して当該出力を所定の通知先に通知してもよい。所定の通知先としては、例えば、交換が必要なタイヤが取り付けられたトラック等の車両に搭載されているコンピュータ、当該車両の運転者や管理者の携帯端末、交換が必要なタイヤを発注するタイヤ会社110等が挙げられる。
【0072】
ID情報記憶部101が車両の種類を記憶し、閾値記憶部103がトラック等の種類に応じて設定された閾値を記憶していてもよい。この場合、タイヤ特定部104は、タイヤの摩耗度が車両の種類に応じた閾値を超えたときに、ID情報記憶部101の情報に基づいて、交換が必要なタイヤを特定してもよい。例えば、車両の保安基準では、高速道路を走る車両の場合、乗用車、小型トラックまたは大型トラック・バスのいずれであるかにより、タイヤ交換が必要となる溝の深さが異なる。そこで、車両の種類および種類に応じて設定された閾値に基づいて、交換が必要なタイヤを特定することで、使用態様を踏まえた適切なタイミングでタイヤを交換することができる。
【0073】
なお、
図11では、インターネットを含んでもよい広域通信ネットワーク120を介して、管理装置100がタイヤの摩耗度を取得する例を示した。しかし、タイヤの摩耗度を取得する態様は、これに限られない。たとえば、管理装置100は、タイヤ摩耗センサ1から直接タイヤの摩耗度を取得したり、事業所内のイントラネットワークを介して取得したりしてもよい。
【0074】
図13は、本実施形態の摩耗度評価方法のフローチャートである。以下、各ステップについて説明する。
S1において、タイヤ摩耗センサは、タイヤ摩耗センサに固有の機器IDと、当該タイヤ摩耗センサを取り付けたタイヤを特定するためのタイヤ情報とを関連付けて出力する。S1は、後述するS2と同時かその前に実施すればよい。ここで、「タイヤ情報」としては、タイヤが取り付けられた車両および当該タイヤの位置、タイヤの種類などが挙げられる。車両の情報としては、車両を特定できる情報および車両の種類などが挙げられる。
【0075】
S2において、管理装置は、タイヤ摩耗センサから関連付けて出力された機器IDとタイヤ情報とを取得して、両者を関連付けてID情報記憶部に記憶する。
【0076】
S3において、タイヤ摩耗センサは、タイヤの摩耗度を計測する。タイヤ摩耗センサは、タイヤを備えた車両が磁性体上または磁界発生体上を通過するときに、タイヤの摩耗度を計測してもよい。例えば、車両が出入りする事業所等の出入口(ゲート)に磁性体または磁界発生体を設けておけば、事業所等から出発(帰着)する際にタイヤの摩耗度を計測することができる。これにより、車両が荷物を積載するトラック等である場合でも、荷物を積載しない状態で計測できるため、荷物の影響を排除してタイヤの摩耗度の検知精度を向上させることができる。
【0077】
S4において、タイヤ摩耗センサは、S3で計測したタイヤの摩耗度と、摩耗度を計測したタイヤ摩耗センサの機器IDとを関連付けて出力する。出力は、摩耗度の測定と同時、測定後、所定期間ごとのいずれでもよい。測定後に出力する場合、タイヤ摩耗センサは、複数の摩耗度をそのまま出力しても、複数の摩耗度の平均値として出力してもよい。平均値として出力することにより、測定誤差の影響を抑えることができる。
【0078】
S5において、管理装置は、S4で出力された摩耗度と、閾値記憶部に記憶されたタイヤの閾値とを取得し、摩耗度と閾値とを比較し、タイヤ交換の要否を判断する。通常、摩耗度が閾値に到達したタイヤについて、交換が必要とする。
【0079】
S6において、管理装置は、閾値に到達した摩耗度の計測値に関連付けられた機器IDを取得し、当該機器IDと関連付けて記憶しているタイヤ情報に基づいて、測定機器が取り付けられたタイヤすなわち摩耗度が閾値に達したタイヤを特定し、所定の出力先に出力する。ここで、所定の出力先としては、管理装置の表示装置、交換を要するタイヤを備えた車両の表示装置などが挙げられる。
【0080】
上述したタイヤ摩耗度評価方法によれば、摩耗度の測定値とタイヤとを、タイヤ摩耗センサの機器IDを介して1対1で対応させることができる。したがって、タイヤの摩耗度の測定と、タイヤ交換の要否の判断とを、異なる時と場所において行うことが可能になる。このため、車両の停車時にタイヤ摩耗センサを人が操作するのではなく、タイヤ摩耗センサから出力された摩耗度の測定値に基づいて、管理装置によって交換を要するタイヤを特定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
以上説明したように、本発明は、タイヤに磁石を埋設することなくタイヤの摩耗度を計測できるから、鉄の釘などを引き寄せることによるパンクの危険が小さい、タイヤ摩耗センサとして有用である。
【符号の説明】
【0082】
1、4、5、6:タイヤ摩耗センサ
2 :タイヤ
3 :磁性体
11 :磁石
12 :磁気センサ
13 :磁石
13a :硬磁性体層
13b :軟磁性体層
131 :一端
132 :他端
14 :計測部
15 :機器ID記憶部
16 :加速度センサ
17 :摩耗度出力部
18 :通信部
21 :内側
22 :外側
23 :トレッド部
24 :検知対象部
25 :スチールワイヤ
42、42A、42B:磁気センサ
51、51A、51B:磁石
52、52A、52B:磁気センサ
53 :底面
70、72、74、90:摩耗度測定システム
71、73、75:磁気発生体
80 :トラック(車両)
100 :管理装置(摩耗度評価装置)
101 :ID情報記憶部
102 :計測値取得部
103 :閾値記憶部
104 :タイヤ特定部
105 :通信部
110 :タイヤ会社
120 :広域通信ネットワーク
B :基準点
D :距離
M :磁気
O :回転中心
S :領域
Ta、Tb :厚さ
P :直線
L、R :長さ